説明

瞳孔検出装置および虹彩認証装置

【課題】まつげ等を瞳孔と間違って検出する等の誤検出をなくし瞳孔検出精度を向上させ、精度よくかつ高速に瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を提供する。
【解決手段】目画像の中から瞳孔の候補となりうる瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部210と、検出した複数の瞳孔候補の位置を保持する瞳孔候補保持部280と、複数の瞳孔候補のうち、瞳孔候補の中心位置から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を選択する瞳孔選択部290とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証等に用いられる虹彩認証装置に関し、特に目を含む画像(以下、「目画像」と略記する)の中から瞳孔の位置を検出する瞳孔検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より目画像の中から瞳孔の位置を検出する様々な方法が提案されており、たとえば、目画像の画像データ(以下、「目画像データ」と略記する)を2値化し、低輝度領域の中の円形の領域を検出する方法や、半径がrであり、中心座標が(x0、y0)である円の弧に対して画像強度I(x、y)の周回積分を計算し、半径rが増加するにしたがってrに関するこの量の部分的な導関数を計算する方法(たとえば特許文献1参照)等が知られている。また、まつげや外光反射の影響をなくして検出精度を上げる方法についてもいくつか提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特表平8−504979号公報
【特許文献2】特開2002−119477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの方法を用いて精度よく瞳孔を検出するためには膨大な画像データを高速に処理する必要があり、処理能力の高い大きなCPUや大容量メモリを用いても、現状では目画像の画像データをリアルタイムで処理することは難しい。また、画像データをリアルタイムで処理できる程度にCPUの処理量を減らすと検出精度が低下する等の課題があり実用的ではなかった。
【0004】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置および虹彩認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の瞳孔検出装置は、目画像の中から瞳孔の候補となりうる瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部と、瞳孔候補検出部が検出した瞳孔候補の位置を複数保持する瞳孔候補保持部と、瞳孔候補保持部に保持された瞳孔候補のうち瞳孔候補の中心位置から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を瞳孔として選択する瞳孔選択部とを備えたことを特徴とする。この構成により、精度よくかつ高速に瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を提供することができる。
【0006】
また本発明の瞳孔検出装置は、同心円状の複数の円をそれぞれ積分円として目画像上に設定し、積分円の円周上に位置する目画像の画像データを抽出する画像データ抽出部と、画像データ抽出部が抽出した画像データを積分円のそれぞれの円周に沿って積分する周回積分部と、複数の積分円の中から周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化するような積分円を検出する変化円検出部と、変化円検出部で検出した積分円の中心座標を瞳孔候補の座標位置として保持する瞳孔候補保持部と、瞳孔候補保持部で保持された瞳孔候補のうち、瞳孔候補の中心座標から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を選択する瞳孔選択部とを備えたことを特徴とする。この構成により、比較的小規模な回路を用いて、撮像部で撮像された画像データに対してリアルタイムで瞳孔検出することができる。
【0007】
また本発明の瞳孔検出装置の変化円検出部は、周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化する変化の大きさを評価値として出力し、瞳孔候補保持部は、入力データのうち最大の値をもつデータを検出する最大値検出器を直列に複数接続して構成され、瞳孔候補保持部に評価値を入力することにより、評価値の大きい順に瞳孔候補を保持する。この構成により評価値を用いて瞳孔候補を大きい順に並べることができる。
【0008】
また本発明の瞳孔検出装置の最大値検出器は、入力データを保持するレジスタと、レジスタに保持しているデータと入力データとを比較するコンパレータと、レジスタに保持しているデータまたは入力データのいずれかを選択して出力するセレクタとを備え、レジスタは、コンパレータの出力にもとづき、保持しているデータよりも入力データが大きい場合には入力データを保持し、セレクタは、コンパレータの出力にもとづき、レジスタが保持しているデータよりも入力データが大きい場合にはレジスタが保持しているデータを選択し、レジスタが保持しているデータよりも入力データが小さい場合には入力データを選択する構成であってもよい。この構成により、比較的簡単な回路で最大値検出器を実現できる。
【0009】
また本発明の瞳孔検出装置の瞳孔選択部は、複数の瞳孔候補に対して互いに距離の近いものを1つのグループとしてグループ分けを行い、それぞれのグループの中から瞳孔候補の数のもっとも多いグループ、または瞳孔候補の評価値の合計がもっとも高いグループを選択し、その選択されたグループの中から瞳孔位置を決定する構成であってもよい。この構成により、比較的簡単なアルゴリズムを用いて瞳孔選択部を実現することができる。
【0010】
本発明の虹彩認証装置は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の瞳孔検出装置を備えたことを特徴とする。この構成によって、精度よくかつ高速に瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を搭載した虹彩認証装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精度よくかつ高速に瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置および虹彩認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態における瞳孔検出装置を用いた虹彩認証装置について、図面を用いて説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置200を用いた虹彩認証装置100の回路ブロック図である。図1には、瞳孔検出装置200に加えて虹彩認証装置100を構成するために必要な撮像部120、照明部130、認証処理部140も示している。
【0014】
第1の実施の形態における虹彩認証装置100は、使用者の目画像を撮像する撮像部120、目画像の中から瞳孔位置とその半径を検出する瞳孔検出装置200、目画像から得られた虹彩コードを登録されている虹彩コードと比較して個人認証を行う認証処理部140、目画像取得に適した光量の近赤外線を照射し使用者の目とその周辺部分を照明する照明部130を備えている。
【0015】
撮像部120は、誘導ミラー121、可視光カットフィルタ122、レンズ123、撮像素子124および前処理部125を有する。本実施の形態においては、レンズ123として固定焦点レンズを用いることにより光学系の小型、軽量化と低コスト化を実現している。誘導ミラー121は使用者が自らの目を映すことにより目を正しい撮像位置へ誘導する。そして、使用者の目はレンズ123、可視光カットフィルタ122を通して撮像素子124で撮像される。前処理部125は、撮像素子124の出力信号から画像データ成分を取り出し、ゲイン調整等画像データとして必要な処理を行った上で、使用者の目画像データとして出力する。
【0016】
瞳孔検出装置200は瞳孔候補検出部210、瞳孔候補保持部280、瞳孔選択部290を有し、目画像の中から瞳孔位置とその半径を検出し、認証処理部140へ出力する。
【0017】
認証処理部140は、瞳孔検出装置200が検出した瞳孔中心座標および瞳孔半径にもとづき、目画像データの中から虹彩画像を切り出す。そして、虹彩画像を虹彩の模様を示す固有の虹彩コードに変換し、登録されている虹彩コードと比較することによって認証動作を実行する。
【0018】
つぎに、瞳孔検出装置200の瞳孔検出方法について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置200の瞳孔検出方法を説明するための図である。瞳孔を含む画像は図2(a)に示すように、瞳孔を示す円盤状の低輝度領域と、その外側に虹彩を示す円環状の中輝度領域とが存在する。したがって、瞳孔中心の位置座標(Xo、Yo)を中心として半径Rの積分円Cの円周に沿って画像データを周回積分すると図2(b)に示すように積分値Iは瞳孔半径Roのところでステップ状に変化することになる。そこで、積分値Iを半径Rで微分した値dI/dRが閾値(以下、「差分閾値」と記する)ΔIthを超えるときの積分円の半径を求めることにより瞳孔半径Roを知ることができる。
【0019】
以上の考え方にもとづき、瞳孔検出装置200は、瞳孔の位置座標(Xo、Yo)と瞳孔半径Roを検出する。まず、図2(d)に示すように中心座標が等しく半径の異なるn個の積分円C〜Cを目画像上に設定し、各々の積分円C(i=1〜n)に対してその円周上に位置する画像データを積分する。現実的には各々の積分円Cの円周上に位置する画素の画像データの平均値を計算するか、円周上に位置する画素の中から一定数(m個)の画素を選んでその画像データを加算する。第1の実施の形態においては同心円状の積分円の数nを20とし、各積分円Cの円周上に位置する画素の中からm=8画素を選んでその画像データを加算し周回積分の積分値Iとした。このとき、積分円C〜Cの中心が瞳孔中心と一致している場合には、上述したように、各積分円Cに対する積分値Iがステップ状に変化するので、積分値Iの半径Rに対する差分値ΔIを求めると瞳孔半径Roに等しいところで大きな極大値を示すことになる。ところが、積分円C〜Cの中心が瞳孔中心に一致しない場合は、積分値Iは緩やかに変化するので、その差分値ΔIは大きな値を示さない。したがって、差分値ΔIが差分閾値ΔIthよりも大きな値を示す積分円Cを求めることで、瞳孔の位置とその半径を求めることができる。
【0020】
そして、目画像上の各位置に積分円C〜Cを移動させて上述の動作を繰り返す。こうして差分値ΔIが大きな値を示すときの積分円Cの中心座標(X、Y)とそのときの半径Rを求めることにより、瞳孔の位置座標(Xo、Yo)と瞳孔半径Roを求めることができる。
【0021】
しかしながら、画像によっては偶発的に差分値ΔIが大きな値を示す可能性がある。特に、積分円の数nや各積分円上で選択する画素の数mを小さくすると計算量を減らすことができ高速な瞳孔検出が可能となるが、反面、偶発的に差分値ΔIが大きな値を示す可能性が高くなり瞳孔検出精度が低下する。そのため瞳孔検出装置200に輝度差算出部240を設け、積分円Cの各々に対して、円周上における輝度の最大値と最小値の差Bを求め、その差Bが所定の閾値(以下、「輝度差閾値」と記する)Bthより小さい場合に限り積分値I、あるいはその差分値ΔIが有効であるとすることで瞳孔検出精度の低下を防いでいる。
【0022】
図3は、輝度差算出部240の動作を説明するための図である。積分円C〜Cの中心が瞳孔中心と一致している場合には、各積分円Cは瞳孔領域内部、虹彩領域内部等、比較的輝度の均一な領域に位置するため、円周上の画像データの輝度ばらつきは小さい。図3(a)に、円環状の中輝度領域である虹彩領域に位置する積分円を示している。この場合、円周上の輝度の最大値と最小値との差Bは小さく、輝度差閾値Bth以下となる。しかし、たとえば図3(b)に示すように、積分円C〜Cの中心が黒いメガネフレームの一部に位置するときには、円周上の輝度はメガネフレーム上では低く皮膚の部分では高くなるため、輝度の最大値と最小値との差Bは大きくなる。このように、各積分円Cの円周上の輝度の最大値と最小値との差Bを求め、その差Bが輝度差閾値Bthより小さい場合に限り積分値I、あるいはその差分値ΔIが有効であるとすることで、メガネフレームを誤って瞳孔と判定する等の誤判定を防ぐことができ、瞳孔検出精度の低下を防止できる。
【0023】
なお、輝度差閾値Bthとしては円周上の輝度データの予想されるばらつきよりわずかに大きく設定することが望ましい。経験的には、虹彩の平均輝度と瞳孔の平均輝度との差よりも大きく、肌の平均輝度と瞳孔の平均輝度との差よりも小さく設定するとよい。たとえば、256階調の画像信号の場合、瞳孔の平均輝度が40階調程度、虹彩の平均輝度が100階調程度、肌の平均輝度が200階調程度となるため、輝度差閾値Bthとしては60〜160の間で設定するとよい。
【0024】
また、差分閾値ΔIthとしては、積分円が瞳孔上にある場合の積分値Iはおよそ40×8=320であり、積分円が虹彩上にある場合の積分値Iはおよそ100×8=800であるので、差分閾値ΔIthとしては、その差480の半分程度、すなわち240程度に設定するとよい。
【0025】
図4は、本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置200の回路ブロック図である。瞳孔検出装置200は、瞳孔候補検出部210、瞳孔候補保持部280、瞳孔選択部290を備えている。瞳孔候補検出部210は、目画像上に積分円C〜Cを設定し各積分円Cの円周上の画像データを抽出する画像データ抽出部220、抽出された画像データを積分円C毎に周回積分する周回積分部230、各積分円毎に画像データの最大値と最小値との差Bを求める輝度差算出部240、積分値Iの半径Rに対する差分値ΔIを求め差分値の最大値ΔIが差分閾値ΔIthよりも大きいときの差分値ΔIと積分円の半径Rを出力する変化円検出部250、積分円C〜Cの中心座標(X、Y)を示すポインタ部260を備えている。瞳孔候補保持部280は、変化円検出部250が差分閾値ΔIthよりも大きい差分値ΔIを出力したとき瞳孔候補を検出したものとみなし、複数の瞳孔候補の位置座標(X、Y)と半径Rを記憶し、瞳孔選択部290は、複数の瞳孔候補の中から1つの瞳孔を選び出す。
【0026】
図5は、画像データ抽出部220の回路図である。あわせて図5には1つの積分円Cに対応する加算器230および輝度差算出器240をも示している。画像データ抽出部220は部分フレームメモリ222とそこから画像データを引出すための引出し線Lから構成されている。部分フレ−ムメモリ222はファーストイン−ファーストアウト型(FIFO型)のラインメモリ224を複数個直列に接続したものである。そして、引出し線Lによって画像上で積分円Cに対応するm個の画素から画像データを引出している。なお、図を見やすくするため図5には1つの積分円Cとその円周上にある4個の画素データを引出す引出し線Lのみを示したが、第1の実施の形態においては20個の積分円C〜C20から各々8個ずつデータの引出し線が引出されている。
【0027】
そして、部分フレームメモリ222に1画素ずつ画像データを入力する毎に部分フレームメモリ222に保持されている画像全体が1画素ずつシフトするので、引出し線Lから引出される画像データも1画素ずつシフトすることになる。すなわち、部分フレームメモリ222に画像データを1画素分入力すると目画像上では積分円C〜Cが右に1画素分移動し、1ライン分の画像データを入力すると目画像上では積分円C〜Cが1ライン分下へ移動する。こうして、1フレーム分の画像データが部分フレームメモリ222に入力する間に、目画像上では積分円C〜Cが目画像全体を走査することになる。このときの積分円の中心座標(X、Y)はXカウンタ262およびYカウンタ264の出力によって示される。
【0028】
周回積分部230は積分円C〜Cの各々に対して独立な加算器230〜230を備え、各積分円Cの円周上に位置するm個の画像データを加算し、各々の加算結果を積分値Iとして変化円検出部250へ出力する。
【0029】
輝度差算出部240は積分円C〜Cの各々に対して独立な輝度差算出器240〜240を備え、各々の輝度差算出器240は積分円Cの円周上に位置するm個の画素データの最大値を検出する最大値検出器241、最小値を検出する最小値検出器242、最大値と最小値の差Bを計算する減算器243、差Bと輝度差閾値Bthとを比較するコンパレータ244を備えている。そしてn個の比較結果を変化円検出部250へ出力する。
【0030】
変化円検出部250は、減算器252〜252n−1、セレクタ253、コンパレータ254とを備える。減算器252は、各積分円Cに対する積分値Iの半径Rに対する差分を求める。すなわち、積分円C〜Cのうち、半径の1つ違う積分円CとCi−1とに対する積分値IとIi−1との差分値ΔIを求める。ただし、積分円Cに対する画像データの最大値と最小値との差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には差分値ΔIを強制的に0に設定する。そしてセレクタ253およびコンパレータ254は、差分値ΔIが差分閾値ΔIthより大きくなる積分円Cの半径Rを瞳孔候補保持部280に出力するとともに、その差分値ΔIも評価値Jとして瞳孔候補保持部280に出力する。このとき積分円Cに対する画像データの最大値と最小値との差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合、減算器252iは差分値ΔIを強制的に0に設定するので、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には半径Rが瞳孔候補保持部280に出力されることはない。図3を用いて説明したように、積分円C〜Cの中心が瞳孔の中心と一致している場合には、画素データの最大値と最小値との差Bはある限られた値以下となる。しかし、瞳孔の中心と一致していない場合には差Bは大きくなる。したがって、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合の情報を除くことにより誤検出の可能性を減らすことができ、瞳孔検出精度を上げることができる。
【0031】
図6は瞳孔候補保持部280および瞳孔選択部290の回路ブロック図である。瞳孔候補保持部280は、複数の最大値検出器280〜280がそれぞれ直列に接続されている。最大値検出器280の各々は、瞳孔候補のX座標、Y座標、半径Rおよび評価値Jの最大値を保持するレジスタ282、283、284および285、入力した評価値Ji−1とレジスタ285に保持している評価値Jとを比較するコンパレータ281、入力したX座標、Y座標、半径Rおよび評価値Jと保持しているX座標、Y座標、半径Rおよび評価値Jのいずれかを選択するセレクタ286、287、288および289を備えている。
【0032】
先頭の最大値検出器280には、積分円の座標を示すXカウンタ262およびYカウンタ264の出力X、Yが入力され、変化円検出部250の出力Rも入力されている。そして、変化円検出部250から出力される評価値Jがレジスタ285の保持している評価値Jよりも大きい場合には、それまでレジスタ282〜285に保持していたX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jをセレクタ286〜289を介して2番目の最大値検出器280に出力するとともに、新しく入力したX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jをレジスタ282〜285に保持する。評価値Jが評価値J以下の場合には新しく入力したX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jをセレクタ286〜289を介して2番目の最大値検出器280に出力する。
【0033】
2番目の最大値検出器280は、1番目の最大値検出器280から出力される評価値Jがレジスタ285の保持している評価値Jよりも大きい場合には、それまでレジスタ282〜285に保持していたX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jを3番目の最大値検出器280に出力するとともに、新しく入力したX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jをレジスタ282〜285に保持する。評価値Jが評価値J以下の場合には新しく入力したX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jを3番目の最大値検出器280に出力する。
【0034】
以下同様に、i番目の最大値検出器280は、上流側の最大値検出器280i−1から出力される評価値Ji−1がそれまで保持していた評価値Jよりも大きい場合には、それまで保持していたデータを下流側の最大値検出器280i+1に出力するとともに上流側のデータを保持する。評価値Ji−1が評価値J以下の場合には上流側のデータを下流側に出力する。
【0035】
その結果、先頭の最大値検出器280にはもっとも評価値の大きい瞳孔候補に対するX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jが保持され、2番目の最大値検出器280には2番目に評価値の大きい瞳孔候補に対するX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jが保持され、i番目の最大値検出器280にはi番目に評価値の大きい瞳孔候補に対するX座標X、Y座標Y、半径R、評価値Jが保持される。
【0036】
瞳孔選択部290は瞳孔候補保持部280に保持されている複数の瞳孔候補の中から、瞳孔候補の中心位置から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を1つ選び出し、その位置座標および半径を瞳孔の位置座標および半径として認証処理部140へ出力する。本実施の形態においては所定の距離を1.5画素とした。したがって、瞳孔選択部290は瞳孔候補のそれぞれについて、瞳孔候補の位置座標(X、Y)に隣接する上下左右の4画素と、斜め方向4画素分の合計8箇所の画素位置に含まれる瞳孔候補の数を数え、このときもっとも多くの瞳孔候補が含まれる瞳孔候補を真の瞳孔として選択する。もっとも多くの瞳孔候補が含まれる瞳孔候補が複数存在する場合には、それらの瞳孔候補のうち評価値Jのもっとも大きい瞳孔候補を真の瞳孔として選択する。その結果、瞳孔選択部290によって選択された瞳孔は、その周囲に他の瞳孔候補の存在する瞳孔となる。瞳孔選択部290は以上の動作を行う専用回路を用いて構成することも可能であるが、本実施の形態においては認証処理部140に設けられているCPU(図示せず)を用いて上述の処理を行っている。
【0037】
図7は瞳孔選択部290の動作を説明するための図である。瞳孔候補P、Pはまつげを瞳孔と間違って検出したものであり、瞳孔候補P〜P11は真の瞳孔を検出したものである。このように、一般に誤検出された瞳孔候補が密集することはほとんどないが、真の瞳孔の周囲には瞳孔候補が密集する傾向がある。これは瞳孔候補の検出精度に依存し、検出精度がよくなるほど密集する瞳孔候補の数は少なくなる。しかし、精度を上げても撮像素子に依存する1画素程度の誤差は残るため真の瞳孔の中心位置に隣接する画素位置には他の瞳孔候補の中心が存在する可能性が高い。したがって、周囲に他の瞳孔候補の存在する瞳孔候補を真の瞳孔として選択することにより、まつげ等を瞳孔と間違って検出する等の誤検出をなくし瞳孔検出精度を向上させることができる。
【0038】
ここで、瞳孔候補保持部280で検出する瞳孔候補の数k、および瞳孔選択部290で周囲に存在する瞳孔候補の数を数えるための画素位置の数は、瞳孔候補の検出精度、誤検出される瞳孔候補の数の見積もり等により決めることが望ましい。本実施の形態においては、真の瞳孔位置の上下左右に1つずつ瞳孔候補が集まる可能性を見越して、瞳孔候補の数を数えるための画素位置の数としては上下左右4画素と斜め方向4画素との合計8画素を含む領域に設定した。また、真の瞳孔の位置に瞳孔候補が9個(真の瞳孔1個、上下左右に各1個、斜め方向に各1個)集まり、誤検出される瞳孔候補が最大6個存在すると仮定して、検出する瞳孔候補の数kを15に設定した。
【0039】
このように、目画像の中から複数の瞳孔候補を検出し、複数の瞳孔候補の中から、瞳孔候補の中心位置に隣接する画素位置に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を選択することにより、まつげ等を瞳孔と間違って検出する等の誤検出をなくし、瞳孔検出精度を向上させることができる。
【0040】
つぎに、瞳孔検出装置200の動作について説明する。以下の説明では、目画像データが順次走査データであり、1フレームが、たとえば480ライン×640ピクセルのデジタルデータで構成されているものとする。図8は、本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置200の目画像1フレーム分の動作を示すフローチャートである。
【0041】
まず瞳孔検出装置200は1画素分の画像データを取り込む(S51)。取り込んだ画像データが1フレームの先頭のデータであれば(S52)、Yカウンタ263をリセットするとともに、瞳孔候補保持部280の各レジスタ282〜285をリセットする(S53)。取り込んだデータが1ラインの先頭のデータであれば(S54)、Xカウンタ262をリセットし、Yカウンタ264をインクリメントする(S55)。そして、Xカウンタ262をインクリメントする(S56)。
【0042】
つぎに、取り込んだ画像データを部分フレームメモリ222に取り込む。すると目画像上でn個の積分円C〜Cに対応する画素のうち各々の積分円Cからm個ずつ、n×m個の画像データが引出される。そして各積分円Cに対応する加算器230はそれぞれ画像データの積分値Iを算出し、輝度差算出器240は画像データの最大値と最小値との差Bを算出する。変化円検出部250はそれぞれの積分値Iの差分値ΔIを計算する。ただしこのとき、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には差分値ΔIを強制的に0とする(S57)。そして、比較器254が差分値ΔIと差分閾値ΔIthとを比較し(S58)、差分値ΔIが差分閾値ΔIthより大きい場合には、瞳孔候補保持部280はこのときのXカウンタ262、Yカウンタ264および積分円の半径Roを瞳孔候補として保持するとともにその差分値ΔIも評価値Joとして保持する。このとき瞳孔候補保持部280は評価値の大きい順に瞳孔候補を並べ替え最大k個の瞳孔候補を保持する(S59)。つぎに、取り込んだデータが1フレームの末尾のデータであるか否かを判定し(S60)、末尾でなければステップS51に戻る。
【0043】
入力される画像データが1フレームの最後の画素にいたったときは、瞳孔選択部290は、それぞれの瞳孔候補に対してその中心座標に隣接する画素位置に存在する他の瞳孔候補の数を計算し、その値がもっとも大きい瞳孔候補のX座標、Y座標および半径の値を真の瞳孔のX座標Xo、Y座標Yoおよび瞳孔半径Roとして虹彩認証処理部140へ出力する(S61)。
【0044】
以上の、ステップS51からステップS60までの一連の動作は、部分フレームメモリ222に画像データを1画素分入力する毎に実行される。たとえばフレーム周波数が30Hz、目画像が640×480画素で構成されている場合、1/(30×640×480)秒以下の時間で上記の一連の動作が実行される。そして、部分フレームメモリ222に1画素入力されると積分円は画像上で1画素分移動するので、1フレームの画像を入力する間に積分円が画像上を1回走査することになる。このようにして、比較的小規模な回路を用いて、撮像部120で撮像された画像データに対してリアルタイムで瞳孔検出することができる。
【0045】
なお、中心位置から所定の距離以内の近傍に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を複数の瞳孔候補の中から選択する方法は、上述の方法に限られるものではない。たとえば、複数の瞳孔候補に対して互いに距離の近いものを1つのグループとしてグループ分けし、それぞれのグループに含まれる瞳孔候補の数の多いもの、あるいは含まれる瞳孔候補の評価値の合計が高いもの等を手がかりにして真の瞳孔を選択する構成としてもよい。図9はこのような考え方にもとづいて瞳孔候補の中から瞳孔を選択するためのフローチャートである。
【0046】
まず、瞳孔選択部290は瞳孔候補を1つ取り込む。取り込んだ瞳孔候補のX座標、Y座標、半径および評価値をそれぞれXi、Yi、RiおよびJiとする(S71)。つぎに、X座標、Y座標および半径のそれぞれについて、瞳孔候補の値Xi、YiおよびRiとグループの平均値Xgj、YgjおよびRgj(jは0または正の整数)との差が所定の閾値Xth、YthおよびRthより小さくなるグループが存在するか調べる。すなわち、|Xi−Xgj|<Xth、|Yi−Ygj|<Yth、|Ri−Rgj|<Rthを満たすグループが存在するか調べる(S72)。存在する場合には、ステップS71で取り込んだ瞳孔候補をそのグループに追加する(S73)。存在しない場合には、ステップS71で取り込んだ瞳孔候補だけを含む新たなグループを作成する(S74)。つぎに、ステップS73で瞳孔候補を追加されたグループあるいはステップS74で新たに作成されたグループに対して平均値Xgj、YgjおよびRgjの再計算を行う(S75)。グループ分けの終えていない瞳孔候補が残っている場合はステップS71に戻る(S76)。すべての瞳孔候補のグループ分けを終えると、各々のグループに対して、そのグループに含まれる各瞳孔候補の評価値の合計ΣJを求める(S77)。そして、評価値の合計ΣJが最大のグループのX座標、Y座標および半径の平均値Xgj、YgjおよびRgjを瞳孔のX座標、Y座標および半径として虹彩認証処理部140へ出力する(S78)。
【0047】
以上の方法によれば、原理的には瞳孔候補の順序によりグループ分けの結果が変わる等の不安定さはあるが、誤検出される瞳孔候補は孤立しており、真の瞳孔を含む瞳孔候補の集まりは密集しているため、たとえばXth、Ythの値を予想される瞳孔半径の1/2程度に設定すれば事実上問題は発生しない。また、このフローによればデータ処理が比較的簡単であり高速動作に適している。
【0048】
また、本実施の形態の変化円検出部250のセレクタ253は、差分値ΔIの最大値とそのときの積分円Cの半径Rを選択する機能をもっている。しかしながら、瞳孔候補保持部280はもともと最大値を検出する機能をもっている。したがってセレクタ253として、単純に時分割で差分器252〜252n−1の出力と積分円の半径とを出力する構成とすることも可能である。
【0049】
なお、本実施の形態においては同心円状の積分円の数を20、1つの積分円から引出す画像データの数を8個としたが、これらの数は検出精度、処理時間、回路規模等との兼ね合いで決定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、精度よくかつ高速に瞳孔位置検出可能な瞳孔検出装置を提供することができるので、個人認証等に用いられる虹彩認証装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置を用いた虹彩認証装置の回路ブロック図
【図2】同実施の形態における瞳孔検出装置の瞳孔検出方法を説明するための図
【図3】同実施の形態における輝度差算出部の動作を説明するための図
【図4】同実施の形態における瞳孔検出装置の回路ブロック図
【図5】同実施の形態における画像データ抽出部の回路図
【図6】同実施の形態における瞳孔候補保持部および瞳孔選択部の回路ブロック図
【図7】同実施の形態における瞳孔選択部の動作を説明するための図
【図8】同実施の形態における瞳孔検出装置の目画像1フレーム分の動作を示すフローチャート
【図9】本発明の他の実施の形態における瞳孔候補の中から瞳孔を選択するためのフローチャート
【符号の説明】
【0052】
120 撮像部
130 照明部
140 認証処理部
200 瞳孔検出装置
220 画像データ抽出部
230 周回積分部
240 輝度差算出部
250 変化円検出部
260 ポインタ部
280 瞳孔候補保持部
290 瞳孔選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目画像の中から瞳孔の候補となりうる瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部と、
前記瞳孔候補検出部が検出した瞳孔候補の位置を複数保持する瞳孔候補保持部と、
前記瞳孔候補保持部に保持された瞳孔候補のうち、瞳孔候補の中心位置から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を瞳孔として選択する瞳孔選択部と
を備えたことを特徴とする瞳孔検出装置。
【請求項2】
同心円状の複数の円をそれぞれ積分円として目画像上に設定し、前記積分円の円周上に位置する目画像の画像データを抽出する画像データ抽出部と、
前記画像データ抽出部が抽出した画像データを積分円のそれぞれの円周に沿って積分する周回積分部と、
前記複数の積分円の中から前記周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化するような積分円を検出する変化円検出部と、
前記変化円検出部で検出した積分円の中心座標を瞳孔候補の座標位置として保持する瞳孔候補保持部と、
前記瞳孔候補保持部で保持された瞳孔候補のうち、瞳孔候補の中心座標から所定の距離以内の領域に他の瞳孔候補の中心位置が存在する瞳孔候補を選択する瞳孔選択部と
を備えたことを特徴とする瞳孔検出装置。
【請求項3】
前記変化円検出部は、前記周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化する変化の大きさを評価値として出力し、
前記瞳孔候補保持部は、入力データのうち最大の値をもつデータを検出する最大値検出器を直列に複数接続して構成され、前記瞳孔候補保持部に前記評価値を入力することにより、評価値の大きい順に瞳孔候補を保持することを特徴とする請求項2に記載の瞳孔検出装置。
【請求項4】
前記最大値検出器は、
入力データを保持するレジスタと、前記レジスタに保持しているデータと前記入力データとを比較するコンパレータと、前記レジスタに保持しているデータまたは前記入力データのいずれかを選択して出力するセレクタとを備え、
前記レジスタは、前記コンパレータの出力にもとづき、保持しているデータよりも前記入力データが大きい場合には前記入力データを保持し、
前記セレクタは、前記コンパレータの出力にもとづき、前記レジスタが保持しているデータよりも前記入力データが大きい場合には前記レジスタが保持しているデータを選択し、前記レジスタが保持しているデータよりも前記入力データが小さい場合には前記入力データを選択することを特徴とする請求項3に記載の瞳孔検出装置。
【請求項5】
前記瞳孔選択部は、複数の瞳孔候補に対して互いに距離の近いものを1つのグループとしてグループ分けを行い、それぞれのグループの中から瞳孔候補の数のもっとも多いグループ、または瞳孔候補の評価値の合計がもっとも高いグループを選択し、その選択されたグループの中から瞳孔位置を決定することを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の瞳孔検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の瞳孔検出装置を備えたことを特徴とする虹彩認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−25969(P2006−25969A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206932(P2004−206932)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】