石灰化減少方法
本発明は、カルシウム擬似薬を用いて対象の血管石灰化を治療する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に医療分野に関し、より具体的には石灰化を抑制、治療または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られおよび慢性腎疾患(CKD)の一般の合併症である血管石灰化は、心血管疾患の罹患率および死亡率のリスクを増大させる(Giachelli, C. J Am Soc Nephrol 15: 2959−64, 2004; Raggi, P. et al. J Am Coll Cardiol 39: 695−701, 2002)。CKDにおける血管石灰化の原因は未だ明らかにされていないが、関連する危険因子は、年齢、性別、高血圧、透析期間、糖尿病およびグルコース不耐症、肥満ならびにタバコの喫煙を含む(Zoccali C. Nephrol Dial Transplant 15: 454−7, 2000)。しかしながら、これらの通常の危険因子は、その患者集団における心血管系に起因する高い死亡率を、十分に説明していない。他の要因のうちで、最近の観察研究は、血清中のカルシウムリン生成物(CaxP)の増加をもたらす、カルシウムおよびリン代謝における特定の病変が、末期の腎疾患患者の動脈石灰化、およびおそらくは心血管疾患の発症に寄与することを、示唆している(Goodman, W. et al. N Engl J Med 342: 1478−83, 2000; Guerin, A. et al. Nephrol Dial Transplant 15:1014−21, 2000; Vattikuti, R. & Towler, D. Am J Physiol Endocrinol Metab, 286: E686−96, 2004)。
【0003】
進行CKDの他の顕著な特徴は、副甲状腺ホルモン(PTH)レベルの上昇およびミネラル代謝異常を特徴とする、二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)である。二次性HPT患者において観察される、カルシウム、リン、およびCaxPにおける上昇は、血管石灰化のリスク増加と関連付けられている(Chertow, G. et al Kidney Int 62: 245−52, 2002; Goodman, W. et al. N Engl J Med 342: 1478−83, 2000; Raggi, P. et al. J Am Coll Cardiol 39: 695−701, 2002)。カルシウム性リン酸塩結合剤および活性ビタミンDステロール投与などの、二次性HPTに対し一般的に用いられる治療介入は、高カルシウム血症および高リン血症をもたらす可能性があり(Chertow, G. et al. Kidney Int 62: 245−52, 2002; Tan, A. et al. Kidney Int 51: 317−23, 1997; Gallieni, M. et al. Kidney Int 42: 1191−8, 1992)、これらは、血管石灰化の発症または増悪と関連している。
【0004】
血管石灰化は、重要および重篤となる可能性のある慢性腎不全の合併症である。2つの異なる血管石灰化のパターンが特定されており(Proudfoot, D & Shanahan, C. Herz 26: 245−51, 2001)、尿毒症患者において両方の種類が存在することが一般的である(Chen, N. & Moe, S. Semin Nephrol 24: 61−8, 2004)。まず、中膜石灰化は、平滑筋細胞の骨芽細胞様細胞への形質転換に伴い血管の中膜で生じ、他方、アテローム発生は、泡沫化マクロファージおよび内膜過形成と関連している。
【0005】
中膜壁石灰化は、慢性腎不全のある比較的若年者において発症する可能性があり、および糖尿病患者においては、腎疾患が存在しない場合においても普通に見られる。動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在により、この種類の血管石灰化は、アテローム性動脈硬化症に関連する血管石灰化から区別される(Schinke T. & Karsenty G. Nephrol Dial Transplant 15: 1272−4, 2000)。アテローム硬化性血管石灰化は、動脈の内膜層に沿ったアテローム斑で生じる(Farzaneh−Far A. JAMA 284: 1515−6, 2000)。石灰化は通常、大きな、進行した病変において最も顕著であり、および年齢と共に増大する(Wexler L. et al. Circulation 94: 1175−92, 1996; Rumberger J. et al. Mayo Clin Proc 1999; 74: 243−52.)。アテローム性動脈硬化症のある患者における動脈石灰化の範囲は、一般に疾患の重篤度に対応する。中膜壁石灰化と異なり、アテローム性血管病変は、カルシウムを含有するか否かにかかわらず、動脈内腔を侵害し、血流に障害を生じさせる。アテローム斑へのカルシウムの局所沈着は、酸化脂質および他の酸化ストレスによる炎症ならびに単球およびマクロファージによる浸潤が原因で生じる可能性がある(Berliner J. et al. Circulation 91 : 2488−96, 1995)。
【0006】
末期の腎疾患患者の一部は、カルシフィラキシー形成または尿毒症性動脈石灰化と呼ばれる重篤な閉塞性動脈疾患を発症する。この症候群は、小動脈における多数のカルシウム沈着を特徴とする(Gipstein R. et al. Arch Intern Med 136: 1273−80, 1976; Richens G. et al. J Am Acad Dermatol. 6: 537−9, 1982)。この疾患のある患者において、動脈石灰化および血管閉塞は、組織の虚血および壊死をもたらす。末梢血管の関与は、下肢の皮膚の潰瘍または足もしくは手の指の壊疽をひきおこし得る。腹壁、大腿部および/または臀部の皮膚および皮下脂肪組織の虚血および壊死は、尿毒症性動脈石灰化の近位部の特徴である(Budisavljevic M. et al. J Am Soc Nephrol. 7: 978−82, 1996; Ruggian J. et al Am J Kidney Dis 28: 409−14, 1996)。この症候群は、肥満個体においてより頻繁に生じ、および明確でない理由によって、女性のほうが男性よりもより多く冒される(Goodman W. J. Nephrol. 15(6): S82−S85, 2002)。
【0007】
血清ミネラルレベルを正常化する最新治療、または血管組織もしくはインプラントの石灰化を抑制、阻害もしくは予防する最新治療は、限られた効力のものであり、許容しがたい副作用をひきおこす。従って、血管石灰化を阻害および予防する効果的な方法の必要性が、存在する。
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血管石灰化を阻害、抑制または予防する方法を提供する。一態様において、血管石灰化は、アテローム性硬化性石灰化であり得る。もう1つの態様において、血管石灰化は中膜石灰化であり得る。
【0009】
一態様において、対象は、慢性腎不全対象または末期の腎疾患に罹患していることがある。もう1つ態様において、対象は、透析前であり得る。更なる態様において、対象は尿毒症に罹患していることがある。もう1つの態様において、対象は、I型またはII型糖尿病に罹患していることがある。もう1つの対象において、対象は、心血管疾患に罹患していることがある。一態様において、対象はヒトであり得る。
【0010】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、式Iの化合物:
【0011】
【化3】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は、3−t−ブチル基でなく;
nは、0から5の範囲であり;
mは、1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジニル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0012】
一態様において、本発明の方法に使用されるカルシウム擬似化合物は、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミンまたはその薬学的に許容できる塩であることができる。
【0013】
もう1つの態様において、カルシウム擬似化合物は、式IIの化合物:
【0014】
【化4】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、そのそれぞれは非置換であるかまたは置換されていてよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、R6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0015】
一態様において、本発明の方法において使用されるカルシウム擬似化合物は、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン、またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0016】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、シナカルセットHClであることができる。
【0017】
一態様において、本発明は、対象にビタミンDステロールが前もって投与されている、血管石灰化の阻害、抑制、または予防方法を提供する。
【0018】
一態様において、ビタミンDステロールは、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールであることができる。一態様において、カルシウム擬似化合物は、ビタミンDステロールの投与の前または後に投与され得る。一態様において、カルシウム擬似化合物は、ビタミンDステロールと組み合わせて投与され得る。
【0019】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、RENAGEL(登録商標)と組み合わせて投与され得る。
【0020】
本発明はさらに、対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血清クレアチニンレベルを低下させる方法を提供する。一態様において、対象は、ビタミンDステロールの投与により上昇した血清クレアチニンレベルを被ることがある。
【0021】
(発明の詳細な説明)
I.概要
本発明は、血管石灰化を抑制、阻害、または予防する方法に関する。
【0022】
II.定義
本明細書において、「血管石灰化」は、血管における細胞外マトリックスハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)の結晶沈着の生成、成長または沈着を意味する。血管石灰化は、冠動脈、心臓弁膜、大動脈、および他の血管の石灰化を含む。この用語は、アテローム性硬化性石灰化および中膜壁石灰化を含む。
【0023】
「アテローム性硬化性石灰化」は、動脈の内膜層に沿ったアテローム斑に生じる血管石灰化を意味する。
【0024】
「中膜石灰化」、「中膜壁石灰化」、または「メンケベルグ硬化症」は、本明細書において、動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在を特徴とする石灰化を意味する。
【0025】
用語「治療」または「治療すること」は、必要とする患者に、病的血管石灰化状態の発生を阻害、抑制または後退させるカルシウム擬似化合物の量の投与を含む。血管石灰化を阻害することに関連する「阻害すること」は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の生成、成長または沈着を予防、遅延、または後退させることを意味する。本明細書において、疾病および疾患の治療は、本発明の化合物(またはその医薬塩、誘導体もしくはプロドラッグ)または前記化合物を含有する医薬組成物の、例えば、疼痛、炎症などの予防処置が必要と考えられる対象(すなわち、動物、例えばヒトなどの哺乳動物)への治療的投与もまた含むことを、意図する。治療はまた、必要であると診断されていない対象に、化合物または医薬組成物を投与すること、すなわち対象への予防的投与も含む。一般に、対象は、最初に医師免許を有する医師および/または認可された医師により診断を受け、本発明の化合物(単数または複数)または組成物の投与による予防処置および/または治療処置の計画が示唆、推奨または処方される。
【0026】
用語「治療的有効量」は、疾患の重症度および発生頻度における改善の目標を達成するカルシウム擬似化合物の量を意味する。疾患の重症度における改善は、血管石灰化を後退させること、並びに血管石灰化の進行を遅延させることを含む。一態様において、「治療的有効量」は、血清クレアチニンレベルを低下させるかまたは血清クレアチニンレベルにおける上昇を抑制するカルシウム擬似化合物の量を意味する。
【0027】
用語本明細書において、「対象」は、石灰化を発症もしくはこのリスクを有する、ヒトまたは他の哺乳動物を意味することを意図する。このような個体は、例えば、アテローム性動脈硬化症などの状態を伴う血管石灰化、狭窄、再狭窄、腎不全、糖尿病、補装具埋め込み、組織損傷または加齢に伴う血管疾患を発症しているか、またはそのリスクを有する。これらの予後および臨床適応は、当分野で公知である。本発明の方法により治療をうける個体は、例えば、糖尿病、慢性腎疾患、腎不全、腎臓移植または腎透析に付随する全身性のミネラル不均衡を有することがある。
【0028】
血管石灰化に関連するヒトアテローム性動脈硬化症、腎不全、高リン血症、糖尿病、加齢に伴う血管石灰化および他の状態の信頼できる指標となる動物モデルは、当分野で公知である。例えば、血管壁の石灰化の実験モデルは、Yamaguchi et al, Exp. Path. 25: 185−190, 1984に記載されている。
【0029】
III.カルシウム擬似化合物およびこれを含む医薬組成物、投与ならびに投与量
本明細書において、「カルシウム擬似化合物」という用語は、カルシウム感受性受容体に結合し、および内因性リガンドCa2+によるカルシウム感受性受容体活性化に対する閾値を低下させるコンフォメーション変化を引き起こし、それにより副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑える化合物を指す。これらのカルシウム擬似化合物は、カルシウム受容体のアロステリックモジュレーターとみなすこともできる。
【0030】
本発明に有用なカルシウム擬似化合物は、例えば、ヨーロッパ特許第933354号および第1235797号;国際公開番号WO01/34562号、WO93/04373号、WO94/18959号、WO95/11221号、WO96/12697号、WO97/41090号;米国特許第5,688,938号、第5,763,569号、第5,962,314号、第5,981,599号、第6,001,884号、第6,011,068号、第6,031,003号、第6,172,091号、第6,211,244号、第6,313,146号、第6,342,532号、第6,362,231号、第6,432,656号、第6,710,088号、第6,908,935号ならびに米国特許出願公開第2002/0107406号に開示されているものを含む。
【0031】
特定の実施形態において、カルシウム擬似化合物は、式Iの化合物およびこの薬学的に許容できる塩:
【0032】
【化5】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は3−t−ブチル基でなく;
nは0から5の範囲であり;
mは1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジ(ニ)ル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
から選択される。
【0033】
カルシウム擬似化合物はまた、式IIの化合物:
【0034】
【化6】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、そのそれぞれは、置換されているかまたは非置換であってよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、R6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
およびこの薬学的に許容できる塩から選択されることもできる。これらの化合物は、米国特許出願第20040082625号に詳細に記載されており、これは、本明細書に、参照として組み込まれる。
【0035】
本発明の一態様において、式IIの化合物は、式:
【0036】
【化7】
を有することができる。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、カルシウム擬似化合物は、式IIIの化合物:
【0038】
【化8】
[式中、
【0039】
【化9】
は、二重結合または単結合を表し;
R1は、Rbであり;
R2は、C1−8アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり;
R3は、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−8アルキルであり;
R4は、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−4アルキルであり;
R5は、独立して、それぞれの場合、H、C1−8アルキル、C1−4ハロアルキル、ハロゲン、−OC1−6アルキル、−NRaRdまたはNRdC(=O)Rdであり;
Xは、−CRd=N−、−N=CRd−、O、Sまたは−NRd−であり;
【0040】
【化10】
が二重結合の場合、Yは=CR6−または=N−であり、およびZは−CR7=または−N=であり;および
【0041】
【化11】
が単結合の場合、Yは−CRaR6−または−NRd−であり、およびZは−CRaR7−または−NRd−であり;および
R6は、Rd、C1−4ハロアルキル、−C(=O)Rc、−OC1−6アルキル、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、シアノ、ニトロ、−NRaS(=O)mRcまたは−S(=O)mNRaRaであり;
R7は、Rd、C1−4ハロアルキル、−C(=O)Rc、−OC1−6アルキル、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、シアノ、ニトロ、−NRaS(=O)mRcまたは−S(=O)mNRaRaであり;またはR6およびR7は一緒になって、0、1、2または3N原子ならびにSおよびOから選択される0、1または2原子を含有する3から6原子の飽和または不飽和の架橋を形成し、ここで該架橋は、R5から選択される0、1または2置換基により置換されており;ここでR6およびR7が、ベンゾ架橋を形成する場合、ベンゾ架橋は、NおよびOから選択される1または2原子を含有する3または4原子架橋によりさらに置換されていてよく、ここで該架橋は、C1−4アルキルから選択される0または1置換基により置換されており;
Raは、独立して、それぞれの場合、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−6アルキルであり;
Rbは、独立して、それぞれの場合、フェニル、ベンジル、ナフチル、またはN、OおよびSから選択され、2以下の原子がOおよびSから選択される1、2または3原子を含有する飽和または不飽和の5または6員環複素環であり、ここでフェニル、ベンジルまたは複素環は、C1−6アルキル、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OC1−6アルキル、シアノおよびニトロから選択される0、1、2または3置換基により置換されており;
Rcは、独立して、それぞれの場合、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり;
Rdは、独立して、それぞれの場合、H、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルまたはN、OおよびSから選択され、2以下の原子が、OおよびSから選択される1、2または3原子を含有する飽和または不飽和の5から6員環複素環であり、ここでC1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルおよび複素環は、C1−6アルキル、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OC1−6アルキル、シアノおよびニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)mRcおよび−S(=O)mNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;ならびに
mは、1または2である。]
およびこの薬学的に許容できる塩から選択され得る。
【0042】
式IIIの化合物は、米国特許出願第20040077619号に詳しく記載されている(これは、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0043】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミン・HCl(化合物A)である。もう1つの態様において、カルシウム擬似化合物は、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)である。
【0044】
本発明の方法において有用なカルシウム擬似化合物は、前述のカルシウム擬似化合物、並びにこの立体異性体、鏡像異性体、多型体、水和物および前述のいずれかの薬学的に許容できる塩を含む。
【0045】
本発明において有用なカルシウム擬似化合物は、無機酸または有機酸から誘導される薬学的に許容できる塩の形態において使用され得る。これらの塩は、限定するものではないが、以下:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、2−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、メシレートおよびウンデカン酸塩を含む。本発明の化合物がカルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、カルボキシ基の薬学的に許容できる適した塩は当業者に公知であり、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、第四級アンモニウムカチオンなどを含む。「薬理学的に許容できる塩」のさらなる例については、下記およびBerge et al. J. Pharm. Sci. 66: 1、1977 を参照されたい。本発明のある実施形態において、塩酸塩およびメタンスルホン酸の塩が、使用され得る。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、カルシウム受容体活性化合物は、シナカルセット(すなわち、N−(1−(R)−(1−ナフチル)エチル)−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−アミノプロパン)、シナカルセットHCl、およびメタンスルホン酸シナカルセットから選択され得る。シナカルセットHClおよびメタンスルホン酸シナカルセットなどのカルシウム擬似化合物は、非晶質粉末、結晶性粉末、およびこれらの混合物などの種々の形態であることができる。結晶性粉末は、多型体、擬多形体、晶癖、粉体組成物、および粒子形態を含む形態であることができる。
【0047】
投与のために、本発明の化合物は、指示された投与経路に適した1以上のアジュバントと通常組み合わされる。本化合物は、通常の投与のために、ラクトース、ショ糖、デンプン粉、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムならびにカルシウム塩、アカシアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、および/またはポリビニルアルコールと混合され、および錠剤化またはカプセル化され得る。或いは、本発明の化合物は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、落花生油、綿実油、ゴマ油、トラガントゴム、および/または種々の緩衝液に溶解され得る。他のアジュバントおよび投与方法は、医薬品業界において公知である。担体または希釈剤は、単独のまたはワックスと混合したモノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル、または当業界に公知の他の原料などの時間遅延物質を含むことができる。
【0048】
本医薬組成物は、固体形態(顆粒、粉末剤または座剤を含む)または液体形態(例えば、溶液、懸濁液またはエマルジョン)で製造することができる。本医薬組成物は、滅菌などの通常の製剤操作に供することができ、および/または防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などの通常のアジュバントを含有することができる。
【0049】
経口投与用固体剤形は、カプセル、錠剤、丸薬、粉末剤および顆粒を含むことができる。このような固体剤形において、活性化合物は、ショ糖、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合され得る。このような剤形はまた、通常の慣行に従って、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤などの不活性希釈剤以外の他の追加物質を含むことができる。カプセル、錠剤および丸薬の場合において、剤形は、緩衝化剤を含むこともできる。錠剤および丸薬は、腸溶性コーティングを用いてさらに調製され得る。
【0050】
経口投与用液体剤形は、水などの当分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含有する薬学的に許容できるエマルジョン、溶液、サスペンジョン、シロップおよびエリキシル剤を含むことができる。このような組成物は、湿潤剤、甘味剤、風味剤および香料などのアジュバントを含むこともできる。
【0051】
本明細書に開示されている組成物におけるカルシウム受容体活性化合物の治療的有効量は、対象あたりカルシウム擬似化合物の約1mgから約360mg、例えば約5mgから約240mg、または約20mgから約100mgの範囲である。いくつかの態様において、組成物におけるシナカルセットHClまたは他のカルシウム擬似化合物の治療的有効量は、約5mg、約15mg、約20mg、約30mg、約50mg、約60mg、約75mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約210mg、約240mg、約300mgまたは約360mgから選択することができる。
【0052】
カルシウム擬似化合物を単独で対象に投与することは可能であり得るが、本化合物は、通常、医薬組成物中の活性成分として存在している。従って、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのカルシウム擬似化合物の治療的有効量、または少なくとも1つのカルシウム擬似化合物の有効投与量を含むことができる。
【0053】
本明細書において、「有効投与量」は、単回投与、複数回投与または部分投与として提供される場合、カルシウム擬似化合物の治療的有効量を提供する量である。従って、例えば、化合物の有効量を投与するために錠剤、カプセルにおけるの2以上の単位投与量が必要とされる医薬組成物、または代替的に、カルシウム擬似化合物の有効量が組成物の一部を投与することにより投与される粉末剤、液体などの複数回投与医薬組成物などの本発明のカルシウム擬似化合物の有効投与量は、化合物の有効量よりも少ない、と等しい、またはよりも多い量を含む。
【0054】
或いは、カルシウム擬似化合物の有効量を投与するために錠剤、カプセルにおけるの2以上の単位投与量が必要とされる医薬組成物は、例えば個々の対象についての有効量を確実にするために、潜在的な副作用に対する個々の対象の感受性を減ずるために、または個々の対象に投与された-1以上の他の治療剤の再調整または減少する有効投与を可能にするなどのために、1以上の期間(例えば、1日1回投与、および1日2回投与)について有効量以下で投与することが可能である。
【0055】
本明細書に記載の医薬組成物の有効投与量は、単位剤形中の約1mgから約360mgの範囲であり、例えば単位剤形中の約5mg、約15mg、約30mg、約50mg、約60mg、約75mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約210mg、約240mg、約300mgまたは約360mgである。
【0056】
本発明のいくつかの態様において、本明細書に開示されている組成物は、血管石灰化の治療または予防のためのカルシウム擬似化合物の治療的有効量を含む。例えば、ある実施形態において、シナカルセットHClなどのカルシウム擬似化合物は、組成物の全重量に対し重量比で約1%から約70%(約5%から約40%、約10%から約30%または約15%から約20%など)の範囲の量で存在し得る。
【0057】
本発明の組成物は、カルシウム擬似化合物に加えて1以上の活性成分を含有することができる。追加の活性成分は、他のカルシウム擬似化合物であってよく、または異なる治療活性を有する活性成分であってよい。このような追加の活性成分の例は、例えば、ビタミンDおよびその類似体(この類似体は、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールおよびパリカルシトールなどのビタミンDステロールを含む。)などのビタミンおよびその類似体、抗生物質、炭酸ランタン、LIPITOR(登録商標)などの脂質低下薬、降圧薬、抗炎症薬(ステロイド系および非ステロイド系)、炎症性サイトカインの阻害剤(ENBREL(登録商標)、KINERET(登録商標))、および循環器薬を含む。組み合わせで投与する場合、治療剤を、同時もしくは異なる時間に投与される別々の組成物として製剤化でき、または治療剤を、単一の組成物として投与できる。
【0058】
組み合わせ療法の一態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)と共に使用され得る。一態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)の投与の前に投与され得る。もう1つの態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)と同時に投与され得る。更なる態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)の投与の後に投与され得る。本発明の組み合わせ療法を用いる病状の治療のための投与計画は、患者の種類、年齢、体重、性別および病状、疾患の重篤度、投与経路および用いられる特定の化合物を含む種々の因子に従い選択され、従って大きく変化し得る。
【0059】
IV.血管石灰化の評価
血管石灰化を検出し測定する方法は、当業界において公知である。一態様において、石灰化を測定する方法は、血管におけるカルシウム−リン沈着の範囲を直接検出および測定する方法を含む。
【0060】
一態様において、血管石灰化を直接測定する方法は、単純X線フィルム撮影、冠動脈造影法などのインビボ画像法;デジタル差分X線透視を含むX線透視;シネ蛍光写真法;通常の、ヘリカルおよび電子ビームコンピュータ断層撮影法;血管内超音波(IVUS);磁気共鳴画像法;ならびに経胸腔および経食道心エコー検査を含む。X線透視およびEBCTは、非侵襲的に石灰化を検出するために最も一般に用いられ、一方、シネ蛍光写真法およびIVUSは、血管形成術の前に、特定の病変における石灰化を評価するために冠動脈インターベンショナリストにより使用される。
【0061】
一態様において、血管石灰化は、単純X線フィルム撮影により検出され得る。この方法の利点は、フィルムの利用が可能であることおよびこの方法のコストの低さであるが、不利な点はその感度の低さである(Kelley M. & Newell J. Cardiol Clin. 1: 575−595, 1983)。
【0062】
もう1つの態様において、X線透視は冠動脈における石灰化を検出するために使用できる。X線透視により、中程度から大きい石灰化を検出できるが、小さな石灰化沈着物を検出する能力は低い(Loecker et al. J Am Coll Cardiol. 19: 1167−1172, 1992)。X線透視は、入院患者および外来患者環境の両方において広く利用可能であり、比較的安価であるが、いくつかの不都合な点を有する。低度から中程度までのみの感度に加えて、X線透視によるカルシウムの検出は、技師の技術および経験、並びに検査する撮影数に依存する。他の重要な要素は、透視装置のばらつき、患者の体型、椎骨および弁輪などの構造における、表面を覆う解剖構造および表面を覆う石灰化を含む。X線透視を用いてでは、カルシウムの透視の定量化が可能でなく、およびフィルムの文書化は、通常得られない。
【0063】
さらにもう1つの態様において、血管検出は、通常のX線コンピュータ断層撮影法(CT)により検出され得る。カルシウムは、X線ビームを減衰するので、X線コンピュータ断層撮影法(CT)は、血管石灰化を検出することにおいてきわめて感度がよい。通常のCTは、冠動脈石灰化の検出のために、X線透視よりも優れた性能があると考えられるが、その限界は、モーションアーチファクト、体積平均、呼吸によるミスレジストレーションおよびプラーク量の定量の不能をもたらす遅いスキャン時間である(Wexler et al. Circulation 94: 1175− 1192, 1996)。
【0064】
更なる態様において、石灰化は、ヘリカルまたはスパイラルコンピュータ断層撮影により検出され得、これは、通常のCTよりもかなり速いスキャン時間を有する。重複スライスも、カルシウムの検出を改善する。Shemeshらは、冠動脈造影上有意な冠動脈閉塞性疾患と比較する場合、91%の感度および52%の特異度を有するヘリカルCTによる冠動脈カルシウム画像を報告した(Shemesh et al. Radiology 197: 779−783、1995)。ただし、他の予備的データは、これらの加速されたスキャン時間でも、および特にシングルヘリカルCTを用いても、石灰化沈着物が心拍動のために不鮮明になり、小さな石灰化は見えなくなり得ることを示している(Baskin et al. Circulation 92(suppl I): I−651、1995)。従って、ヘリカルCTは、石灰化の検出においてX線透視および通常のCTよりも依然として優れている。ダブルへリックスCTスキャナーは、冠動脈石灰化の検出において、そのより高い解像度およびそのより薄いスライス機能により、シングルへリックススキャナーよりもより感度が高いと考えられる(Wexler et al、上記を参照)。
【0065】
もう1つの態様において、血管石灰化の検出のために電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)が、使用され得る。EBCTは、X線を発生させるために標準のX線管でなく電子銃および静止したタングステン「標的」を使用し、大変速いスキャン時間を可能にする。当初はシネまたは超高速CTと呼ばれたが、最新のスパイラルスキャナーもまたサブセカンドスキャン時間を達成しているので、現在は標準CTスキャンと区別するためにEBCTという用語が使用されている。冠動脈カルシウムを検出するために、EBCT画像は、3mmのスキャンスライス厚を用い、100msで測定される。テーブル増分により30から40の隣接するアキシャルスキャンが得られる。スキャンは、通常1回か2回の異なる息止めシーケンスの間に取得されるが、心拍動の影響を最小限にするために、拡張末期付近および心房収縮前に80%のRRインターバルの心電図信号により行う。速い画像収集時間は、心収縮に関連するモーションアーチファクトを実質的に除く。冠動脈において、動脈周囲脂肪より低いCT密度が、血液に対して著しい対照を成すため、混濁していない冠動脈はEBCTにより容易に特定され、一方、壁在性カルシウムは、血液に対して高いCT密度を有するため、明白である。さらに、スキャナーソフトウェアによりカルシウム面積および密度の定量化が可能になる。X線減弱係数、またはハウンズフィールド単位で測定したCT値、および石灰化沈着物の面積に基づく自由裁量による採点法が考案されている(Agatston et al. J Am Coll Cardiol. 15:827−832, 1990)。冠動脈カルシウムのスクリーニング検査は、10分か15分以内に終了され得、わずか数秒のスキャン時間を必要とするのみである。電子ビームCTスキャナーは、通常のCTスキャナーまたはスパイラルCTスキャナーよりも高価であり、比較的少数の施設において利用可能である。
【0066】
一態様において、血管内超音波(IVUS)は、血管石灰化、特に、冠動脈アテローム性動脈硬化症の検出に使用され得る(Waller et al. Circulation 85: 2305−2310、1992)。カテーテルの先端に回転型反射器を搭載したトランスデューサーを使用することにより、心臓カテーテル法の最中に冠動脈の断面画像診断画像を得ることが可能である。ソノグラムは、動脈内腔についてのみでなく、動脈壁の厚さおよび組織性状についても情報を提供する。石灰化は陰影を伴う高エコー域に見られ、繊維性非石灰化プラークは陰影を伴わない高エコー域に見られる(Honye et al. Trends Cardiovasc Med. 1: 305−311、1991)。IVUSの使用における不都合は、他の画像モダリティと対照的に、侵襲性であり、現在のところ、選択的冠動脈造影と共にのみ作動し、および冠動脈枝の限定された部位のみ視覚化することである。侵襲性ではあるが、冠動脈造影検査において正常所見を示す患者におけるアテローム性病変の関与を示すことができ、およびバルーン血管形成術およびアテローム切除装置の選択の前に狭窄病変の形態学的性状を明らかにするのに役立つ(Tuzcu et al. J Am Coll Cardiol. 27: 832−838, 1996)。
【0067】
もう1つの態様において、血管石灰化は、磁気共鳴画像法(MRI)により測定され得る。しかしながら、および冠動脈石灰化を検出するMRIの能力は、いくぶん限定されている。微小石灰化は、大量の軟組織を含有するボクセルの信号強度を実質的に変化させないので、このようなカルシウム蓄積における正味のコントラストは低い。従って、少量の石灰化のMRI検出は困難であり、冠動脈石灰化の検出におけるMRIの報告または期待される役割はない(Wexler et al.、上記を参照)。
【0068】
他の態様において、血管石灰化は、経胸壁(表面)心エコー検査により測定され得、これは、僧帽弁および大動脈心臓弁膜の石灰化の検出に対して特に感度が高い。しかしながら、利用制約された外部音響窓のため、冠動脈の透視の報告はほとんどない。近位冠動脈を可視化できることの多い経食道心エコー検査は、広く利用可能な方法である(Koh et al. Int J Cardiol. 43: 202−206, 1994. Fernandes et al. Circulation 88: 2532−2540, 1993)。
【0069】
もう1つの態様において、血管石灰化は、Van Kossaの方法によりエクスビボで評価され得る。この方法は、銀イオンが、電気化学列におけるその相対的位置により炭酸イオンまたはリン酸イオンにより溶液から置換されうるという原理に基づく。嗜銀性反応は、本来、光化学反応であり、その活性化エネルギーは、強い可視光または紫外光から供給される。組織の炭酸イオンまたはリン酸イオンの実証される形態は、常にカルシウムイオンに付随しているので、この方法は、組織のカルシウム沈着部位を明らかにすると考えることができる。
【0070】
石灰化を直接測定する他の方法は、限定するものではないが、蛍光抗体染色およびデンシトメトリーを含み得る。もう1つの態様において、血管石灰化を評価する方法は、血管石灰化の決定要因および/または危険因子を測定する方法を含む。このような因子は、限定するものではないが、リンの血清レベル、カルシウムおよびカルシウム×リン生成物、副甲状腺ホルモン(PTH)、低密度リポタンパクコレステロール(LDL)、高密度リポタンパクコレステロール(HDL)、トリグリセリド、ならびにクレアチニンを含む。これらの因子を測定する方法は、当業界において公知である。血管石灰化を評価する他の方法は、骨形成の因子を評価する方法を含む。このような因子は、骨特異性アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシン(OC)、I型コラーゲンのC末端プロペプチド(PICP)、およびI型コラーゲンのアミノ末端プロペプチド(PINP)などの骨形成マーカー;I型コラーゲンの架橋C−テロペプチド(ICTP)、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ、TRACPおよびTRAP5B、コラーゲン架橋のN−テロペプチド(NTx)およびコラーゲン架橋のC−テロペプチド(CTx)などの血清骨吸収マーカー;ならびにヒドロキシプロリン、遊離および全ピリジノリン(Pyd)、遊離および全デオキシピリジノリン(Dpd)、コラーゲン架橋のN−テロペプチド(NTx)、およびコラーゲン架橋のC−テロペプチド(CTx)などの尿骨吸収マーカーを含む。
【0071】
V.治療方法
一態様において、本発明は、個体における血管石灰化を阻害、抑制または予防する方法を提供する。本方法は、本発明のカルシウム擬似化合物の治療的有効量を個体に投与することを含む。一態様において、本発明の化合物の投与は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の形成、成長または沈着を、遅延または後退させる。本発明のもう1つの態様において、本発明の化合物の投与は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の生成、成長または沈着を予防する。
【0072】
本発明の方法は、血管石灰化を特徴とするアテローム性硬化性石灰化および中膜石灰化ならびに他の状態を予防または治療するために使用され得る。一態様において、血管石灰化は、慢性腎不全または末期の腎疾患と関連付けられ得る。もう1つの態様において、血管石灰化は、透析前、透析後または尿毒症と関連付けられ得る。更なる態様において、血管石灰化は、I型またはII型糖尿病と関連付けられ得る。さらにもう1つの態様において、血管石灰化は、心血管疾患と関連付けられ得る。
【0073】
一態様において、カルシウム擬似薬の有効量の投与は、大動脈石灰化を引き起こすことなく血清PTHを低下させることができる。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬の投与は、血清クレアチニンを低下させることができ、または血清クレアチニンレベルの上昇を予防することができる。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬の投与は、副甲状腺(PT)過形成を抑制することができる。
【0074】
カルシウム擬似薬は、単独で、またはビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)などの血管石灰化を治療するための他の薬剤と組み合わせて投与され得る。ビタミンDステロールは、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールを含むことができる。一態様において、カルシウム擬似化合物はビタミンDステロールの投与の前後に投与され得る。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬は、ビタミンDステロールと同時投与され得る。本発明の方法は、血管組織に対するカルシトリオールのミネラル沈着促進効果を抑制するために実施され得る。一態様において、本発明の方法は、カルシウム、リンおよびCa×P生成物の血清レベルを上昇させるカルシトリオールの作用を後退させるために使用され得、それにより血管石灰化を予防または阻害され得る。もう1つの態様において、本発明の方法は、血清クレアチニンレベルを安定化または低下させるために使用され得る。一態様において、疾患によるクレアチニンレベル上昇に加え、カルシトリオールなどのビタミンDステロールを用いる治療による、さらなるクレアチニンレベル上昇があり得る。
【0075】
さらに、外科治療および非外科治療と共にカルシウム擬似薬が、投与され得る。一態様において、本発明の方法は、透析とともに実施できる。
【0076】
以下の実施例は、本発明をさらに十分に説明するために提供するものであるが、その範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0077】
本実施例は、カルシウム擬似化合物N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミン・HCl(化合物A)が、大動脈石灰化を引き起こすことなく、二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)を伴う尿毒症ラットにおける血清PTHを低下させ、および血管組織に対するカルシトリオールのミネラル化促進効果を抑制したことを示す。
【0078】
動物
体重250gの雄Wistarラットを、Animal Breeding Facility of the University of Cordoba(スペイン)から購入した。ラットを12時間/12時間の明暗サイクル下におき、通常の食餌(カルシウム=0.9%、リン=0.6%)を自由摂取させた。実験プロトコルの見直しを行い、Ethics Committee for Animal Research of the Universidad de Cordoba(スペイン)の承認を得、および全てのラットは、米国医学研究学会(National Society for Medical Rsearch)により策定されたPrinciples of Laboratory Animal Care、および米国科学アカデミー(National Academy of Science)により作成された実験動物に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って人道的管理を受けた。
【0079】
5/6腎摘出
これらの実験に用いたCKDげっ歯類モデルを、元の機能しうる腎を6分の5(5/6)摘出する2段階手順である5/6腎摘出(5/6Nx)により作成した。第1段階において、キシラジン(5mg/kg、腹腔内)およびケタミン(80mg/kg、腹腔内)を用いてラットを麻酔し、腹部の左内外表面に5から8mmの切開を入れ、左腎を露出した。左腎動脈を見えるようにし、3つの分枝のうち2つをきつく縛り、その後、腎臓を梗塞について検査し、腹腔内の解剖学的中間位に戻した。腹壁および皮膚の切開を縫合糸を用いて縫合し、ラットを元のケージに戻した。1週間回復させた後、ラットを再度麻酔し、腹部の右内外表面に5から8mmの切開を入れた。右腎を露出して被包されていない状態にし、腎茎をクランプし縛って、腎臓を除去した。縛った腎茎を解剖学的中間位に戻し、腹部および皮膚の切開を縫合材料を用いて縫合した。ラットを元のケージで回復させた。擬似手術ラットに、腎手術以外、同じ手順を受けさせた。
【0080】
実験スケジュールを図1に示す。2番目の手術以後、食餌を、カルシウム含有量を減らし(0.6%)、リン含有量を増やした(0.9%)ものに変えた。ラットを無作為に6実験群に分けた(ベースライン体重の正規分布に基づいて):擬似手術群(n=13)(対照として使用)、5/6Nx+ビヒクル(生理食塩水)群(n=10)、5/6Nx+カルシトリオール80ng/kg(Calcijex,Abbot)(腹腔内、1日おき)群(n=10)、5/6Nx+化合物A1.5mg/kg/日(皮下)群(n=10)(Amgen,Thousand Oaks,CA USA)、5/6Nx+化合物A3mg/kg/日(皮下)(n=10)、または5/6Nx+カルシトリオール80ng/kgおよび化合物A1.5mg/kgの組み合わせ群(上述のように投与)(n=10)。処置を、14日間続けた。薬剤の最終投与の24時間後に、全身麻酔(腹腔内チオペンタールナトリウム)下で大動脈穿刺および放血によりラットを屠殺した。
【0081】
血液化学
処置期間の最後に、腹部大動脈から化学分析のための血液を採取した。イオン化カルシウムレベルの測定のための血液を、ヘパリン化シリンジで採取し、直ちにCiba−Corning 634 ISE Ca++/pH Analyzer(Ciba−Corning Essex,England)を用いて分析した。その後、遠心分離により血漿を分離し、アッセイに用いるまで−70℃で保存した。ラットPTH(1−34)免疫放射定量測定法アッセイキット(Immunotopics,San Clemente,CA)を用い、発売元の使用説明書に従ってPTHレベルを定量した。血清クレアチニン、リン、および総カルシウムを分光光度計(Sigma Diagnostics,St. Louis,MO,USA)により測定した。
【0082】
血管石灰化のエクスビボ評価
屠殺後に腹部大動脈を切開し、2つの部分に分割した。1つの部分を、10%緩衝化ホルマリンで固定し、ついでvon Kossa法によりミネラル化について染色した。もう1つの部分を、10%ギ酸でミネラルを除き、Price et al Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:317−27, 2000の方法に従って、上澄み中の動脈組織のカルシウムおよびリン含有量を測定した。
【0083】
統計学
数値を、平均値±標準誤差(SE)で表した。2つの異なる群の平均値間の差異を、t検定により測定し、3以上の群の平均値間の差異を、ANOVAで評価した。P<0.05を有意とみなした。
【0084】
クレアチニン
擬似手術ラットにおける平均血清クレアチニン濃度は、0.53±0.02mg/dlであった。予想されたように、全ての5/6Nxラットは、いずれの薬剤処置の前にも有意(P<0.05)に高いクレアチニンレベル(0.83±0.04から0.89±0.03mg/dl)を示し、群間の差異はなかった。カルシトリオールでの処置は、他の5/6Nx群に関してさらに有意な(P<0.05)血清クレアチニンレベル(1.05±0.07mg/dl)の上昇をもたらした。カルシトリオールと化合物Aの組み合わせは、化合物Aまたはビヒクル処置5/6Nxラットと比較する場合、クレアチニンレベル(0.93±0.05mg/dl)を有意に上昇させなかった。カルシトリオールと化合物Aの包含は、カルシトリオール誘発血清クレアチニンレベル上昇を抑制した。
【0085】
血清の生化学的パラメーター
イオン化カルシウム、リンおよびPTHの血清レベルを、図2から4に示す。5/6Nxおよび擬似手術群における血清イオン化カルシウムレベルは、類似していた(1.21±0.01mmol/lに対して1.23±0.01mmol/l)。1.5(1.20+0.02mmol/l)または3mg/kg(1.22±0.02mmol/l)の化合物Aで処置したラットにおける血清イオン化カルシウムレベルは、5/6Nxビヒクル処置群(1.21±0.01mmol/l)と相違しなかった。しかしながら、5/6Nxビヒクル処置群または化合物A単独処置群と比較する場合、カルシトリオール単独処置または化合物Aと組み合わせた処置は、有意に(P<0.05)高い血清イオン化カルシウムレベル(それぞれ1.28±0.02mmol/l、および1.26±0.01mmol/l)をもたらした(図2)。
【0086】
擬似手術群(6.9+0.7mg/dl)と、ビヒクル(6.5±0.4mg/dl)または1.5(6.6±0.3mg/dl)もしくは3mg/kg(6.9±0.4mg/dl)の化合物Aで処置した5/6Nxラット群との間の血清リンレベル(図3)は、相違しなかった。カルシトリオール単独の処置を受けたラットは、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較する場合、有意に(P<0.05)上昇した血清リンレベル(10.2±0.9mg/dl)を示した。化合物Aとカルシトリオールの組み合わせは、血清リンレベル(8.7±0,7mg/dl)を低下させる傾向を示したが、それでもなお有意に(P<0.05)、ビヒクル処置5/6Nxラットより高かった。
【0087】
擬似手術ラット(39.3±7.9pg/ml)と比較する場合、5/6Nxラット(118.7±27.7pg/ml)において、血清PTH濃度は有意に(P<0.05)上昇していた。使用した全ての処置は、擬似手術ラットと有意差がないレベルまで血清PTH濃度を下げた。しかしながら、カルシトリオールと化合物Aの組み合わせは、化合物A1.5mg/kg(73.5±12.8pg/ml)単独より、有意に(P<0.05)効果的なPTH抑制(13.8±2.6pg/ml)をもたらした(図4)。
【0088】
大動脈のミネラル含有量
カルシトリオール投与で観察される上昇した血清ミネラルレベルと一致して、カルシトリオールを用いた5/6Nxラット処置は、ビヒクル処置5/6Nxラット(2.3±0.2mg/g組織)と比較して有意に(P=0.009)上昇した大動脈カルシウム量(4.2±1.1mg/g組織)をもたらした(図5)。しかしながら、化合物Aを用いた処置は、ビヒクル処置5/6Nx(P=0.882)または擬似手術ラット(P=0.777)と同様の大動脈カルシウム含有量をもたらした(図5)。血清カルシウムレベルに対してカルシトリオールおよび化合物Aが有意な効果を示さないことを考慮すれば、驚いたことに、カルシトリオール誘発大動脈カルシウム上昇は、化合物A1.5mg/kgの同時処置により有意に(P=0.002)抑制された(図5)。
【0089】
さらなる分析は、擬似手術ラットのリン含有量が、ビヒクル処置5/6Nxラットのものと相違しないことを示した(図6)。カルシトリオールを用いた5/6Nxラットの処置は、大動脈組織におけるリン(2.1±1mg/g組織)含有量を、有意に(P=0.01)上昇させたが、一方、化合物A(1.5または3mg/kg)では、有意に上昇させなかった(図6)。カルシトリオール誘発大動脈リン上昇は、化合物A1.5mg/kgの同時処置により、有意に(P=0.013)抑制された(図6)。
【0090】
von Kossa染色法(図7)を用いてインサイチュ大動脈ミネラル化を検査した。擬似手術、ビヒクルまたは化合物A処置5/6Nx群のいずれにおいても大動脈におけるミネラル沈着物は観察されなかった。しかしながら、カルシトリオール単独で処置された5/6Nxラットの中膜において、著しいvon Kossa染色が検出された(図7A)。興味深いことに、カルシトリオール処置計画への化合物A1.5mg/kgの付加は、大動脈石灰化の発生を予防した(図7B)。
【0091】
血管石灰化退縮
ラットを既述のように5/6Nxとし、高リン食餌(0.6%Ca;1.2%P)で14日間飼育した。ラットを4群(A、B、CおよびD、n=4から5ラット/群)に分割し、1つの群(A)にビヒクル(生理食塩水0.2ml,腹腔内)を投与し、残りの3群(B、CおよびD)に試験期間(28日)中、カルシトリオール(80ng/kg,1日おき,腹腔内)を投与した。14日目に、2群(CおよびD)を普通の食餌(Ca0.9%;P0.6%)に変え、群Cに化合物A(3mg/kg/日,経口)を投与し、一方、群Dにビヒクル(10%captisol水溶液0.5ml/日)を投与した。残りの群(AおよびB)に、試験期間(28日)中、高リン食餌を継続し、カルシトリオールまたはビヒクルのどちらかを投与した。28日目に、ラットを屠殺(CO2)し、既述のように大動脈のPおよびCa含有量(mg/g組織)を測定するために大動脈を除去した。
【0092】
全28日間、高リン食餌で飼育しカルシトリオールを投与したラット(群B)を、高リン食餌で飼育しビヒクルを投与したラット(群A)と比較した場合、大動脈のカルシウムおよびリン含有量の有意な(p<0.05)上昇がみられた(図8参照)。これは、カルシトリオールが大動脈のカルシウムおよびリン含有量の上昇(血管石灰化)を仲介することを示している。
【0093】
高リン食餌(群B)から普通のリン食餌への変換は、大動脈のカルシウムおよびリン含有量のそれほど有意でない減少をもたらした(群D)。このことは、低リン食餌が血管石灰化プロセスの進行を妨げるおよび/または後退させうることを示唆している(CRIおよびESRD患者は、低リン食を摂食するよう推奨される。)。高リン食餌から普通のリン食餌へ変換し、および化合物A3mg/kgを受けさせつつ、試験の最終時点までカルシトリオールを受けさせたラット(群C)は、群Dと比較した場合、大動脈リン含有量の有意な(p<0.05)減少およびより低い大動脈カルシウム量を示した。このことは、形成された血管石灰化が、化合物Aのようなカルシウム擬似薬により後退され得ることを示唆している。
【実施例2】
【0094】
本実施例により、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が副甲状腺(PT)過形成を抑制し、血清PTHを低下させ、CKDラットモデルにおける大動脈血管石灰化を抑制することを示す。
【0095】
これらの試験において、体重300から350グラムの雄スプラーグ・ドーリー・ラット(Charles River Laboratories)を用いた。全てのラットに、試験の開始前、標準的実験用試料(Harlan Teklad,Madison,WI)を摂取させた。標準的実験用試料を、0.75%アデニンを含有する標準的げっ歯類実験用試料に変えた。ラットには飼料および水を自由に摂取させた。このラットプロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committee of Amgen Inc.(Thousand Oaks,CA)により承認された。
【0096】
アデニンを含む飼料でラットを21日間飼育し、およびアデニン食餌の開始前、イオン化カルシウム、PTH、BUNおよびクレアチニンならびにリンレベルのベースライン測定のためにラットを前採血した(図9)。
【0097】
PTHおよび血清化学プロフィールのための採血
ラットについて、アデニン食餌飼育または化合物Bもしくはビヒクルの投与の前に、血清のP、Ca、BUN、PTHおよびクレアチニンのベースライン測定を実施した。ラットが麻酔下(2%イソフルラン/O2)にある状態で眼窩静脈叢から血液を採取した。時間0での採血後、ラットをアデニン含有飼料で飼育し、および化合物B(3mg/kg 経口)またはビヒクル(12%captisol水溶液)を21日間連日投与した。試験終了日(21日目)にラットを屠殺し、組織病理学的分析のために大動脈および副甲状腺を除去した。血液化学およびPTH測定のために血液を採取した。屠殺の前、血液のイオン化カルシウムレベルの測定のために、麻酔下(2%イソフルラン/O2)、腹部大動脈からヘパリン化毛細管で血液を採取し、Ciba−Corning 634 ISE Ca++/pH Analyzer(Ciba−Corning Diagnostics Corp,Medfield,MA)を用いて分析した。別に、PTH、血液尿素窒素(BUN)、クレアチニンおよび血清リンレベルのために、SST(凝固活性剤)(商標)採血管(BD,Franklin Lakes,NJ)中に血液を採取し、凝固させた。血清を取り除き、アッセイに使用するまで−70℃で保存した。ラットPTH(1−34)免疫放射定量測定法アッセイキット(Immunotopics,San Clemente,CA)を用い、ベンダーの使用説明書に従ってPTHレベルを定量した。血液化学分析器(Olympus AU 400,Melville,NY)を用い、BUN、クレアチニンおよびリンレベルを測定した。
【0098】
PCNA免疫組織化学
副甲状腺重量および増殖細胞核抗原(PCNA)免疫化学を用い、過形成を測定した。屠殺時に喉頭気管コンプレックスを取り除き、Zn緩衝化ホルマリン中で2から3日保存し、ついで70%アルコールに移しトリミングした。トリミング時に、甲状腺から副甲状腺を切り離し、糸くずの出ないキムワイプ(Kimberly Clark Corp.,Roswell,GA)で拭き取って乾燥し、Sartorius BP21 ID天秤(Goettingen,Germany)で個別に重量を測定した。ついで副甲状腺をパラフィン包埋処理した。包埋後、5μmの切片を切り出し、荷電スライド(VWR Scientific,West Chester PA)上に置いた。この切片上で、PCNA染色キット(Zymed Laboratories,Inc.,S.San Francisco,CA)を用い、ベンダーの使用説明書に従って免疫染色を行った。
【0099】
副甲状腺切片の中央部を覆う一連の0.01mm2グリッド(目盛り付きグラチクルを用いて最初に面積を測定する)を有する面積測定用グラチクルの使用にて副甲状腺の面積を測定した。各副甲状腺のおおよそ同じレベルから切片を作成した。組織サンプルを、Leitz Laborlux顕微鏡で100xで視覚化し、副甲状腺組織を覆うグリッド数を数えた。このように、0.01mmにグリッド数をかけることにより副甲状腺の全面積を測定し、その後、グリッド化した断面積におけるPCNA陽性細胞数を数え、PCNA陽性細胞数/mm2として表した。スライドをコード化し、処置群の帰属を知らされていない観測者が、副甲状腺増殖の定量化を行った。
【0100】
大動脈血管石灰化に関する方法
試験の最終時点でラットを屠殺し(CO2)、大動脈を除去し、既述のようにP、Ca、BUNおよびクレアチニン測定のために血液を採取した。大動脈を回収し、10%中性緩衝化ホルマリン中で3から7日間固定し、ついで70%エタノールに移した。Lunar PIXImus 2デンシトメーター(Lunar PIXImus;Madison,WI)を用い、以下のパラメーターを用い骨密度(BMD;g/cm2)分析を行った:実行時間4分。Lunar社製 piximusソフトウェアバージョン2.0を用い、結果を分析した。
【0101】
化合物Bの3週間投与は、ビヒクル処置ラットと比較して、PCNA陽性細胞数を有意に(p<0.01)減少させた(図11)。同様に、ビヒクル処置ラットと比較した場合、化合物B処置ラットにおける副甲状腺重量もまた有意に減少した(図12)。
【0102】
図13は、化合物Bの投与が、ビヒクル処置ラットと比較した場合、血清PTHレベルを著しく低下させた(p<0.0001;ANOVA/Fisher制約付最小有意差検定、事後検定)ことを示している。
【0103】
図14は、アデニン食餌で飼育されたラットへの化合物Bの投与が、同じ食餌で飼育されたビヒクル処置ラットと比較して、大動脈骨ミネラル密度が75%減少させたことを示している。
【0104】
図15は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンに対する化合物Bの効果を示している。簡潔に言えば、BUNおよびクレアチニン両方のレベルは、処置前ビヒクル(n=4)と比較して、3週間のアデニン処置(後)、はいずれも有意に(p<0.05)上昇した;化合物B(n=7)図10。ビヒクル処置対照(n=4)と比較した場合、BUNに対する化合物B(n=7)の処置効果は有意でなかった(p>0.05)。しかしながら、化合物B(n=7)は、ビヒクル(n=4)処置ラットと比較して、クレアチニンレベルの低下を仲介した(p<0.05)。
【0105】
図16は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、イオン化Caに対する化合物Bの効果を示している。処置前(前)と比較して3週間アデニン処置(後)、血清イオン化カルシウム(iCa)は、有意に低下したp<0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4 前;n=3 後);化合物B(n=8 前;n=6 後)。化合物B(n=6)処置は、ビヒクル処置と比較して、血清iCaを著しく低下させた(p=0.004;n=3)。
【0106】
図17は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清リンに対する化合物Bの効果を示している。血清リン(P)は、処置前(前)と比較して3週間のアデニン処置(後)に有意に上昇したp>0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。ビヒクル処置ラットと比較した場合、血清Pレベルに対する化合物Bの処置効果は、有意でなかった(p>0.05)。
【0107】
図18は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清Caに対する化合物Bの効果を示している。血清カルシウム(Ca)は、処置前(前)と比較して、3週間のアデニン処置(後)、有意に低下したp<0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。化合物B処置は、ビヒクル処置と比較して、総血清カルシウムを有意に低下させた(p=0.0001)ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。
【実施例3】
【0108】
本実施例は、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が、尿毒症ラット由来の大動脈組織のCaおよびP含有量における、パリカルシトール仲介の上昇を有意に低下させることを示している。
【0109】
動物
0.6%Caおよび1.2%P食餌で飼育したWistarラット(200から250g)に5/6腎摘出(5/6Nx)または擬似手術(sham)を施した。ラットは、術後1日目から開始した以下の処置を受けた:Sham+ビヒクル、5/6Nx+ビヒクル、5/6Nx+パリカルシトール240ng/kg(48時間毎、腹腔内)、5/6Nx+パリカルシトール+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)または5/6Nx+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)。14日後、ラットを麻酔し、屠殺した。胸部大動脈を除去し、CaおよびP含有量の測定のために処理した。血清PTH、イオン化Ca、Pおよびクレアチニンを測定するために、屠殺時に血液を採取した。結果を以下の表1にまとめる。
【0110】
【表1】
【0111】
5/6Nx+ビヒクル
5/6Nxの手順は、慢性腎不全と一致する血清クレアチニン上昇(p<0.05)を仲介した。shamビヒクルラットと比較して5/6Nxビヒクルラットにおいて観察される血清イオン化Caの有意な低下(p<0.05)ならびに血清PおよびPTHの有意な上昇(p<0.05)は、全て二次性副甲状腺機能亢進症の顕著な特徴である。
【0112】
5/6Nx+パリカルシトール
5/6Nxラットへのパリカルシトールの投与は、5/6Nx+ビヒクルと比較して、血清PTHレベルを有意に(p<0.05)低下させた。5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベルの変化は無かった。パリカルシトールは、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較して、大動脈CaおよびP含有量を有意に(p<0.05)上昇させた(表1)。
【0113】
5/6Nx+化合物B
5/6Nxラットへの化合物Bを投与は、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較して、血清PTHレベルを有意に(p<0.05)低下させた。5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベル変化は無かった。同様に、ビヒクル処置shamまたは5/6Nxラットのどちらかと比較した場合でも、化合物Bの投与は、大動脈CaまたはP含有量を有意に変化させなかった(表1)。
【0114】
5/6Nx+パリカルシトール+化合物B
パリカルシトール処置5/6Nxラットへの化合物Bを投与は、パリカルシトールを用いて処置された5/6Nxラットと比較して、大動脈CaおよびP含有量を有意に(p<0.05)減少させた。化合物Bの投与による大動脈CaおよびP含有量の減少は、ビヒクル処置されたsham対照(正常レベル)と有意に相違しなかった。パリカルシトールまたは化合物B処置5/6Nxラット単独と比較した場合、パリカルシトールと化合物Bの組み合わせは、さらに有意に(p<0.05)血清PTHレベルを低下させた。化合物Bとパリカルシトールの組み合わせで処置したラットは、5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベルにおいて、変化を示さなかった(表1)。
【実施例4】
【0115】
本実施例は、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が、軟組織のパリカルシトールおよびカルシトリオール仲介ミネラル化を有意に抑制することを示している。
【0116】
動物
0.6%Caおよび1.2%P食餌で飼育したWistarラット(200から250g)に5/6腎摘出(5/6Nx)を行った。ラットは、術後1日目から開始した以下の処置を受けた:5/6Nx+ビヒクル、5/6Nx+パリカルシトール(240ng/kg、48時間毎)もしくはカルシトリオール(80ng/kg、48時間毎)(腹腔内)、5/6Nx+パリカルシトールまたはカルシトリオール+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)または5/6Nx+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)。14日後、ラットを麻酔し、屠殺して、組織を除去し、組織学的検査用に処理した(ミネラル化測定用Von Kossa染色およびH&E染色)。
【0117】
図19(上部パネル:A、B、C)は、5/6Nxラットへのカルシトリオールの投与が、組織の濃染により明らかなように、心臓(A)、腎臓(B)、および肺(C)(これらの組織だけ検査した)におけるミネラル化を増大させたことを示している。
【0118】
図19(下部パネル:D、E、F)は、組織の抑制された濃染により示されるように、カルシトリオール処置5/6Nxラットへの化合物Bの投与が、心臓(D)、腎臓(E)、および肺(F)ミネラル化を減少させたことを示している。
【0119】
図20(上部パネル:A)は、組織の濃染から明らかなように、5/6Nxラットへのパリカルシトールのを投与が、腎臓(A)におけるミネラル化を増大させたことを示している。
【0120】
図20(下部パネル:B)は、組織の濃染の減少から明らかなように、パリカルシトール処置5/6Nxラットへの化合物Bの投与が、腎臓(B)ミネラル化を減少させたことを示している。
【0121】
本明細書に記載の全ての公報、特許および特許出願は、各公報または特許出願が個別におよび具体的に本明細書に参照によって取り込まれると記載されているように、参照により取り込まれる。理解の明確性のために例示として少し詳しく前述の発明を説明してきたが、付帯の特許請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく変更および改変をなしうることが、本発明の教示を考慮に入れれば当業者には直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】ラット処置の実験スケジュールを示す図である。
【図2】CKDラットモデルにおける、イオン化カルシウムの血清レベルを示す図である。
【図3】CKDラットモデルにおける、リンの血清レベルを示す図である。
【図4】CKDラットモデルにおける、副甲状腺ホルモンの血清レベルの概略図である。
【図5】CKDラットモデルにおける、大動脈のカルシウム量を示す図である。
【図6】CKDラットモデルにおける、大動脈のリン含有量を示す図である。
【図7】CKDラットモデルにおける、大動脈のVon Kossa染色切片を示す図である。
【図8】CKDラットモデルにおける、大動脈のカルシウムおよびリン含有量を示す図である。
【図9】アデニン誘発血管石灰化モデルにおける、ラット処置の実験スケジュールの概略図である。
【図10】アデニン誘発血管石灰化のスキームを示す図である。
【図11】CKDラットモデルにおける、副甲状腺過形成抑制の概略図である。
【図12】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの副甲状腺重量変化の概略図である。
【図13】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの処置による、血清PTH変化を示す図である。
【図14】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの処置による、大動脈骨ミネラル密度変化を示す図である。
【図15】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンに対する処置の効果を示す図である。
【図16】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、イオン化カルシウムに対する処置の効果を示す図である。
【図17】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清リンに対する処置の効果を示す図である。
【図18】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清Caに対する処置の効果を示す図である。
【図19】カルシトリオール誘発石灰化を伴う組織に対する、化合物Bによる処置の効果を示す図である。
【図20】パリカルシトール誘発石灰化を伴う組織に対する、化合物Bによる処置の効果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に医療分野に関し、より具体的には石灰化を抑制、治療または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られおよび慢性腎疾患(CKD)の一般の合併症である血管石灰化は、心血管疾患の罹患率および死亡率のリスクを増大させる(Giachelli, C. J Am Soc Nephrol 15: 2959−64, 2004; Raggi, P. et al. J Am Coll Cardiol 39: 695−701, 2002)。CKDにおける血管石灰化の原因は未だ明らかにされていないが、関連する危険因子は、年齢、性別、高血圧、透析期間、糖尿病およびグルコース不耐症、肥満ならびにタバコの喫煙を含む(Zoccali C. Nephrol Dial Transplant 15: 454−7, 2000)。しかしながら、これらの通常の危険因子は、その患者集団における心血管系に起因する高い死亡率を、十分に説明していない。他の要因のうちで、最近の観察研究は、血清中のカルシウムリン生成物(CaxP)の増加をもたらす、カルシウムおよびリン代謝における特定の病変が、末期の腎疾患患者の動脈石灰化、およびおそらくは心血管疾患の発症に寄与することを、示唆している(Goodman, W. et al. N Engl J Med 342: 1478−83, 2000; Guerin, A. et al. Nephrol Dial Transplant 15:1014−21, 2000; Vattikuti, R. & Towler, D. Am J Physiol Endocrinol Metab, 286: E686−96, 2004)。
【0003】
進行CKDの他の顕著な特徴は、副甲状腺ホルモン(PTH)レベルの上昇およびミネラル代謝異常を特徴とする、二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)である。二次性HPT患者において観察される、カルシウム、リン、およびCaxPにおける上昇は、血管石灰化のリスク増加と関連付けられている(Chertow, G. et al Kidney Int 62: 245−52, 2002; Goodman, W. et al. N Engl J Med 342: 1478−83, 2000; Raggi, P. et al. J Am Coll Cardiol 39: 695−701, 2002)。カルシウム性リン酸塩結合剤および活性ビタミンDステロール投与などの、二次性HPTに対し一般的に用いられる治療介入は、高カルシウム血症および高リン血症をもたらす可能性があり(Chertow, G. et al. Kidney Int 62: 245−52, 2002; Tan, A. et al. Kidney Int 51: 317−23, 1997; Gallieni, M. et al. Kidney Int 42: 1191−8, 1992)、これらは、血管石灰化の発症または増悪と関連している。
【0004】
血管石灰化は、重要および重篤となる可能性のある慢性腎不全の合併症である。2つの異なる血管石灰化のパターンが特定されており(Proudfoot, D & Shanahan, C. Herz 26: 245−51, 2001)、尿毒症患者において両方の種類が存在することが一般的である(Chen, N. & Moe, S. Semin Nephrol 24: 61−8, 2004)。まず、中膜石灰化は、平滑筋細胞の骨芽細胞様細胞への形質転換に伴い血管の中膜で生じ、他方、アテローム発生は、泡沫化マクロファージおよび内膜過形成と関連している。
【0005】
中膜壁石灰化は、慢性腎不全のある比較的若年者において発症する可能性があり、および糖尿病患者においては、腎疾患が存在しない場合においても普通に見られる。動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在により、この種類の血管石灰化は、アテローム性動脈硬化症に関連する血管石灰化から区別される(Schinke T. & Karsenty G. Nephrol Dial Transplant 15: 1272−4, 2000)。アテローム硬化性血管石灰化は、動脈の内膜層に沿ったアテローム斑で生じる(Farzaneh−Far A. JAMA 284: 1515−6, 2000)。石灰化は通常、大きな、進行した病変において最も顕著であり、および年齢と共に増大する(Wexler L. et al. Circulation 94: 1175−92, 1996; Rumberger J. et al. Mayo Clin Proc 1999; 74: 243−52.)。アテローム性動脈硬化症のある患者における動脈石灰化の範囲は、一般に疾患の重篤度に対応する。中膜壁石灰化と異なり、アテローム性血管病変は、カルシウムを含有するか否かにかかわらず、動脈内腔を侵害し、血流に障害を生じさせる。アテローム斑へのカルシウムの局所沈着は、酸化脂質および他の酸化ストレスによる炎症ならびに単球およびマクロファージによる浸潤が原因で生じる可能性がある(Berliner J. et al. Circulation 91 : 2488−96, 1995)。
【0006】
末期の腎疾患患者の一部は、カルシフィラキシー形成または尿毒症性動脈石灰化と呼ばれる重篤な閉塞性動脈疾患を発症する。この症候群は、小動脈における多数のカルシウム沈着を特徴とする(Gipstein R. et al. Arch Intern Med 136: 1273−80, 1976; Richens G. et al. J Am Acad Dermatol. 6: 537−9, 1982)。この疾患のある患者において、動脈石灰化および血管閉塞は、組織の虚血および壊死をもたらす。末梢血管の関与は、下肢の皮膚の潰瘍または足もしくは手の指の壊疽をひきおこし得る。腹壁、大腿部および/または臀部の皮膚および皮下脂肪組織の虚血および壊死は、尿毒症性動脈石灰化の近位部の特徴である(Budisavljevic M. et al. J Am Soc Nephrol. 7: 978−82, 1996; Ruggian J. et al Am J Kidney Dis 28: 409−14, 1996)。この症候群は、肥満個体においてより頻繁に生じ、および明確でない理由によって、女性のほうが男性よりもより多く冒される(Goodman W. J. Nephrol. 15(6): S82−S85, 2002)。
【0007】
血清ミネラルレベルを正常化する最新治療、または血管組織もしくはインプラントの石灰化を抑制、阻害もしくは予防する最新治療は、限られた効力のものであり、許容しがたい副作用をひきおこす。従って、血管石灰化を阻害および予防する効果的な方法の必要性が、存在する。
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血管石灰化を阻害、抑制または予防する方法を提供する。一態様において、血管石灰化は、アテローム性硬化性石灰化であり得る。もう1つの態様において、血管石灰化は中膜石灰化であり得る。
【0009】
一態様において、対象は、慢性腎不全対象または末期の腎疾患に罹患していることがある。もう1つ態様において、対象は、透析前であり得る。更なる態様において、対象は尿毒症に罹患していることがある。もう1つの態様において、対象は、I型またはII型糖尿病に罹患していることがある。もう1つの対象において、対象は、心血管疾患に罹患していることがある。一態様において、対象はヒトであり得る。
【0010】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、式Iの化合物:
【0011】
【化3】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は、3−t−ブチル基でなく;
nは、0から5の範囲であり;
mは、1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジニル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0012】
一態様において、本発明の方法に使用されるカルシウム擬似化合物は、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミンまたはその薬学的に許容できる塩であることができる。
【0013】
もう1つの態様において、カルシウム擬似化合物は、式IIの化合物:
【0014】
【化4】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、そのそれぞれは非置換であるかまたは置換されていてよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、R6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0015】
一態様において、本発明の方法において使用されるカルシウム擬似化合物は、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン、またはこの薬学的に許容できる塩であることができる。
【0016】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、シナカルセットHClであることができる。
【0017】
一態様において、本発明は、対象にビタミンDステロールが前もって投与されている、血管石灰化の阻害、抑制、または予防方法を提供する。
【0018】
一態様において、ビタミンDステロールは、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールであることができる。一態様において、カルシウム擬似化合物は、ビタミンDステロールの投与の前または後に投与され得る。一態様において、カルシウム擬似化合物は、ビタミンDステロールと組み合わせて投与され得る。
【0019】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、RENAGEL(登録商標)と組み合わせて投与され得る。
【0020】
本発明はさらに、対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血清クレアチニンレベルを低下させる方法を提供する。一態様において、対象は、ビタミンDステロールの投与により上昇した血清クレアチニンレベルを被ることがある。
【0021】
(発明の詳細な説明)
I.概要
本発明は、血管石灰化を抑制、阻害、または予防する方法に関する。
【0022】
II.定義
本明細書において、「血管石灰化」は、血管における細胞外マトリックスハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)の結晶沈着の生成、成長または沈着を意味する。血管石灰化は、冠動脈、心臓弁膜、大動脈、および他の血管の石灰化を含む。この用語は、アテローム性硬化性石灰化および中膜壁石灰化を含む。
【0023】
「アテローム性硬化性石灰化」は、動脈の内膜層に沿ったアテローム斑に生じる血管石灰化を意味する。
【0024】
「中膜石灰化」、「中膜壁石灰化」、または「メンケベルグ硬化症」は、本明細書において、動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在を特徴とする石灰化を意味する。
【0025】
用語「治療」または「治療すること」は、必要とする患者に、病的血管石灰化状態の発生を阻害、抑制または後退させるカルシウム擬似化合物の量の投与を含む。血管石灰化を阻害することに関連する「阻害すること」は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の生成、成長または沈着を予防、遅延、または後退させることを意味する。本明細書において、疾病および疾患の治療は、本発明の化合物(またはその医薬塩、誘導体もしくはプロドラッグ)または前記化合物を含有する医薬組成物の、例えば、疼痛、炎症などの予防処置が必要と考えられる対象(すなわち、動物、例えばヒトなどの哺乳動物)への治療的投与もまた含むことを、意図する。治療はまた、必要であると診断されていない対象に、化合物または医薬組成物を投与すること、すなわち対象への予防的投与も含む。一般に、対象は、最初に医師免許を有する医師および/または認可された医師により診断を受け、本発明の化合物(単数または複数)または組成物の投与による予防処置および/または治療処置の計画が示唆、推奨または処方される。
【0026】
用語「治療的有効量」は、疾患の重症度および発生頻度における改善の目標を達成するカルシウム擬似化合物の量を意味する。疾患の重症度における改善は、血管石灰化を後退させること、並びに血管石灰化の進行を遅延させることを含む。一態様において、「治療的有効量」は、血清クレアチニンレベルを低下させるかまたは血清クレアチニンレベルにおける上昇を抑制するカルシウム擬似化合物の量を意味する。
【0027】
用語本明細書において、「対象」は、石灰化を発症もしくはこのリスクを有する、ヒトまたは他の哺乳動物を意味することを意図する。このような個体は、例えば、アテローム性動脈硬化症などの状態を伴う血管石灰化、狭窄、再狭窄、腎不全、糖尿病、補装具埋め込み、組織損傷または加齢に伴う血管疾患を発症しているか、またはそのリスクを有する。これらの予後および臨床適応は、当分野で公知である。本発明の方法により治療をうける個体は、例えば、糖尿病、慢性腎疾患、腎不全、腎臓移植または腎透析に付随する全身性のミネラル不均衡を有することがある。
【0028】
血管石灰化に関連するヒトアテローム性動脈硬化症、腎不全、高リン血症、糖尿病、加齢に伴う血管石灰化および他の状態の信頼できる指標となる動物モデルは、当分野で公知である。例えば、血管壁の石灰化の実験モデルは、Yamaguchi et al, Exp. Path. 25: 185−190, 1984に記載されている。
【0029】
III.カルシウム擬似化合物およびこれを含む医薬組成物、投与ならびに投与量
本明細書において、「カルシウム擬似化合物」という用語は、カルシウム感受性受容体に結合し、および内因性リガンドCa2+によるカルシウム感受性受容体活性化に対する閾値を低下させるコンフォメーション変化を引き起こし、それにより副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑える化合物を指す。これらのカルシウム擬似化合物は、カルシウム受容体のアロステリックモジュレーターとみなすこともできる。
【0030】
本発明に有用なカルシウム擬似化合物は、例えば、ヨーロッパ特許第933354号および第1235797号;国際公開番号WO01/34562号、WO93/04373号、WO94/18959号、WO95/11221号、WO96/12697号、WO97/41090号;米国特許第5,688,938号、第5,763,569号、第5,962,314号、第5,981,599号、第6,001,884号、第6,011,068号、第6,031,003号、第6,172,091号、第6,211,244号、第6,313,146号、第6,342,532号、第6,362,231号、第6,432,656号、第6,710,088号、第6,908,935号ならびに米国特許出願公開第2002/0107406号に開示されているものを含む。
【0031】
特定の実施形態において、カルシウム擬似化合物は、式Iの化合物およびこの薬学的に許容できる塩:
【0032】
【化5】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は3−t−ブチル基でなく;
nは0から5の範囲であり;
mは1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジ(ニ)ル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
から選択される。
【0033】
カルシウム擬似化合物はまた、式IIの化合物:
【0034】
【化6】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、そのそれぞれは、置換されているかまたは非置換であってよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、R6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
およびこの薬学的に許容できる塩から選択されることもできる。これらの化合物は、米国特許出願第20040082625号に詳細に記載されており、これは、本明細書に、参照として組み込まれる。
【0035】
本発明の一態様において、式IIの化合物は、式:
【0036】
【化7】
を有することができる。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、カルシウム擬似化合物は、式IIIの化合物:
【0038】
【化8】
[式中、
【0039】
【化9】
は、二重結合または単結合を表し;
R1は、Rbであり;
R2は、C1−8アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり;
R3は、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−8アルキルであり;
R4は、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−4アルキルであり;
R5は、独立して、それぞれの場合、H、C1−8アルキル、C1−4ハロアルキル、ハロゲン、−OC1−6アルキル、−NRaRdまたはNRdC(=O)Rdであり;
Xは、−CRd=N−、−N=CRd−、O、Sまたは−NRd−であり;
【0040】
【化10】
が二重結合の場合、Yは=CR6−または=N−であり、およびZは−CR7=または−N=であり;および
【0041】
【化11】
が単結合の場合、Yは−CRaR6−または−NRd−であり、およびZは−CRaR7−または−NRd−であり;および
R6は、Rd、C1−4ハロアルキル、−C(=O)Rc、−OC1−6アルキル、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、シアノ、ニトロ、−NRaS(=O)mRcまたは−S(=O)mNRaRaであり;
R7は、Rd、C1−4ハロアルキル、−C(=O)Rc、−OC1−6アルキル、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、シアノ、ニトロ、−NRaS(=O)mRcまたは−S(=O)mNRaRaであり;またはR6およびR7は一緒になって、0、1、2または3N原子ならびにSおよびOから選択される0、1または2原子を含有する3から6原子の飽和または不飽和の架橋を形成し、ここで該架橋は、R5から選択される0、1または2置換基により置換されており;ここでR6およびR7が、ベンゾ架橋を形成する場合、ベンゾ架橋は、NおよびOから選択される1または2原子を含有する3または4原子架橋によりさらに置換されていてよく、ここで該架橋は、C1−4アルキルから選択される0または1置換基により置換されており;
Raは、独立して、それぞれの場合、H、C1−4ハロアルキルまたはC1−6アルキルであり;
Rbは、独立して、それぞれの場合、フェニル、ベンジル、ナフチル、またはN、OおよびSから選択され、2以下の原子がOおよびSから選択される1、2または3原子を含有する飽和または不飽和の5または6員環複素環であり、ここでフェニル、ベンジルまたは複素環は、C1−6アルキル、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OC1−6アルキル、シアノおよびニトロから選択される0、1、2または3置換基により置換されており;
Rcは、独立して、それぞれの場合、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり;
Rdは、独立して、それぞれの場合、H、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルまたはN、OおよびSから選択され、2以下の原子が、OおよびSから選択される1、2または3原子を含有する飽和または不飽和の5から6員環複素環であり、ここでC1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルおよび複素環は、C1−6アルキル、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OC1−6アルキル、シアノおよびニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)mRcおよび−S(=O)mNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;ならびに
mは、1または2である。]
およびこの薬学的に許容できる塩から選択され得る。
【0042】
式IIIの化合物は、米国特許出願第20040077619号に詳しく記載されている(これは、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0043】
一態様において、カルシウム擬似化合物は、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミン・HCl(化合物A)である。もう1つの態様において、カルシウム擬似化合物は、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)である。
【0044】
本発明の方法において有用なカルシウム擬似化合物は、前述のカルシウム擬似化合物、並びにこの立体異性体、鏡像異性体、多型体、水和物および前述のいずれかの薬学的に許容できる塩を含む。
【0045】
本発明において有用なカルシウム擬似化合物は、無機酸または有機酸から誘導される薬学的に許容できる塩の形態において使用され得る。これらの塩は、限定するものではないが、以下:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、2−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、メシレートおよびウンデカン酸塩を含む。本発明の化合物がカルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、カルボキシ基の薬学的に許容できる適した塩は当業者に公知であり、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、第四級アンモニウムカチオンなどを含む。「薬理学的に許容できる塩」のさらなる例については、下記およびBerge et al. J. Pharm. Sci. 66: 1、1977 を参照されたい。本発明のある実施形態において、塩酸塩およびメタンスルホン酸の塩が、使用され得る。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、カルシウム受容体活性化合物は、シナカルセット(すなわち、N−(1−(R)−(1−ナフチル)エチル)−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−アミノプロパン)、シナカルセットHCl、およびメタンスルホン酸シナカルセットから選択され得る。シナカルセットHClおよびメタンスルホン酸シナカルセットなどのカルシウム擬似化合物は、非晶質粉末、結晶性粉末、およびこれらの混合物などの種々の形態であることができる。結晶性粉末は、多型体、擬多形体、晶癖、粉体組成物、および粒子形態を含む形態であることができる。
【0047】
投与のために、本発明の化合物は、指示された投与経路に適した1以上のアジュバントと通常組み合わされる。本化合物は、通常の投与のために、ラクトース、ショ糖、デンプン粉、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムならびにカルシウム塩、アカシアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、および/またはポリビニルアルコールと混合され、および錠剤化またはカプセル化され得る。或いは、本発明の化合物は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、落花生油、綿実油、ゴマ油、トラガントゴム、および/または種々の緩衝液に溶解され得る。他のアジュバントおよび投与方法は、医薬品業界において公知である。担体または希釈剤は、単独のまたはワックスと混合したモノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル、または当業界に公知の他の原料などの時間遅延物質を含むことができる。
【0048】
本医薬組成物は、固体形態(顆粒、粉末剤または座剤を含む)または液体形態(例えば、溶液、懸濁液またはエマルジョン)で製造することができる。本医薬組成物は、滅菌などの通常の製剤操作に供することができ、および/または防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などの通常のアジュバントを含有することができる。
【0049】
経口投与用固体剤形は、カプセル、錠剤、丸薬、粉末剤および顆粒を含むことができる。このような固体剤形において、活性化合物は、ショ糖、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合され得る。このような剤形はまた、通常の慣行に従って、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤などの不活性希釈剤以外の他の追加物質を含むことができる。カプセル、錠剤および丸薬の場合において、剤形は、緩衝化剤を含むこともできる。錠剤および丸薬は、腸溶性コーティングを用いてさらに調製され得る。
【0050】
経口投与用液体剤形は、水などの当分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含有する薬学的に許容できるエマルジョン、溶液、サスペンジョン、シロップおよびエリキシル剤を含むことができる。このような組成物は、湿潤剤、甘味剤、風味剤および香料などのアジュバントを含むこともできる。
【0051】
本明細書に開示されている組成物におけるカルシウム受容体活性化合物の治療的有効量は、対象あたりカルシウム擬似化合物の約1mgから約360mg、例えば約5mgから約240mg、または約20mgから約100mgの範囲である。いくつかの態様において、組成物におけるシナカルセットHClまたは他のカルシウム擬似化合物の治療的有効量は、約5mg、約15mg、約20mg、約30mg、約50mg、約60mg、約75mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約210mg、約240mg、約300mgまたは約360mgから選択することができる。
【0052】
カルシウム擬似化合物を単独で対象に投与することは可能であり得るが、本化合物は、通常、医薬組成物中の活性成分として存在している。従って、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのカルシウム擬似化合物の治療的有効量、または少なくとも1つのカルシウム擬似化合物の有効投与量を含むことができる。
【0053】
本明細書において、「有効投与量」は、単回投与、複数回投与または部分投与として提供される場合、カルシウム擬似化合物の治療的有効量を提供する量である。従って、例えば、化合物の有効量を投与するために錠剤、カプセルにおけるの2以上の単位投与量が必要とされる医薬組成物、または代替的に、カルシウム擬似化合物の有効量が組成物の一部を投与することにより投与される粉末剤、液体などの複数回投与医薬組成物などの本発明のカルシウム擬似化合物の有効投与量は、化合物の有効量よりも少ない、と等しい、またはよりも多い量を含む。
【0054】
或いは、カルシウム擬似化合物の有効量を投与するために錠剤、カプセルにおけるの2以上の単位投与量が必要とされる医薬組成物は、例えば個々の対象についての有効量を確実にするために、潜在的な副作用に対する個々の対象の感受性を減ずるために、または個々の対象に投与された-1以上の他の治療剤の再調整または減少する有効投与を可能にするなどのために、1以上の期間(例えば、1日1回投与、および1日2回投与)について有効量以下で投与することが可能である。
【0055】
本明細書に記載の医薬組成物の有効投与量は、単位剤形中の約1mgから約360mgの範囲であり、例えば単位剤形中の約5mg、約15mg、約30mg、約50mg、約60mg、約75mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約210mg、約240mg、約300mgまたは約360mgである。
【0056】
本発明のいくつかの態様において、本明細書に開示されている組成物は、血管石灰化の治療または予防のためのカルシウム擬似化合物の治療的有効量を含む。例えば、ある実施形態において、シナカルセットHClなどのカルシウム擬似化合物は、組成物の全重量に対し重量比で約1%から約70%(約5%から約40%、約10%から約30%または約15%から約20%など)の範囲の量で存在し得る。
【0057】
本発明の組成物は、カルシウム擬似化合物に加えて1以上の活性成分を含有することができる。追加の活性成分は、他のカルシウム擬似化合物であってよく、または異なる治療活性を有する活性成分であってよい。このような追加の活性成分の例は、例えば、ビタミンDおよびその類似体(この類似体は、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールおよびパリカルシトールなどのビタミンDステロールを含む。)などのビタミンおよびその類似体、抗生物質、炭酸ランタン、LIPITOR(登録商標)などの脂質低下薬、降圧薬、抗炎症薬(ステロイド系および非ステロイド系)、炎症性サイトカインの阻害剤(ENBREL(登録商標)、KINERET(登録商標))、および循環器薬を含む。組み合わせで投与する場合、治療剤を、同時もしくは異なる時間に投与される別々の組成物として製剤化でき、または治療剤を、単一の組成物として投与できる。
【0058】
組み合わせ療法の一態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)と共に使用され得る。一態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)の投与の前に投与され得る。もう1つの態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)と同時に投与され得る。更なる態様において、本発明の組成物は、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)の投与の後に投与され得る。本発明の組み合わせ療法を用いる病状の治療のための投与計画は、患者の種類、年齢、体重、性別および病状、疾患の重篤度、投与経路および用いられる特定の化合物を含む種々の因子に従い選択され、従って大きく変化し得る。
【0059】
IV.血管石灰化の評価
血管石灰化を検出し測定する方法は、当業界において公知である。一態様において、石灰化を測定する方法は、血管におけるカルシウム−リン沈着の範囲を直接検出および測定する方法を含む。
【0060】
一態様において、血管石灰化を直接測定する方法は、単純X線フィルム撮影、冠動脈造影法などのインビボ画像法;デジタル差分X線透視を含むX線透視;シネ蛍光写真法;通常の、ヘリカルおよび電子ビームコンピュータ断層撮影法;血管内超音波(IVUS);磁気共鳴画像法;ならびに経胸腔および経食道心エコー検査を含む。X線透視およびEBCTは、非侵襲的に石灰化を検出するために最も一般に用いられ、一方、シネ蛍光写真法およびIVUSは、血管形成術の前に、特定の病変における石灰化を評価するために冠動脈インターベンショナリストにより使用される。
【0061】
一態様において、血管石灰化は、単純X線フィルム撮影により検出され得る。この方法の利点は、フィルムの利用が可能であることおよびこの方法のコストの低さであるが、不利な点はその感度の低さである(Kelley M. & Newell J. Cardiol Clin. 1: 575−595, 1983)。
【0062】
もう1つの態様において、X線透視は冠動脈における石灰化を検出するために使用できる。X線透視により、中程度から大きい石灰化を検出できるが、小さな石灰化沈着物を検出する能力は低い(Loecker et al. J Am Coll Cardiol. 19: 1167−1172, 1992)。X線透視は、入院患者および外来患者環境の両方において広く利用可能であり、比較的安価であるが、いくつかの不都合な点を有する。低度から中程度までのみの感度に加えて、X線透視によるカルシウムの検出は、技師の技術および経験、並びに検査する撮影数に依存する。他の重要な要素は、透視装置のばらつき、患者の体型、椎骨および弁輪などの構造における、表面を覆う解剖構造および表面を覆う石灰化を含む。X線透視を用いてでは、カルシウムの透視の定量化が可能でなく、およびフィルムの文書化は、通常得られない。
【0063】
さらにもう1つの態様において、血管検出は、通常のX線コンピュータ断層撮影法(CT)により検出され得る。カルシウムは、X線ビームを減衰するので、X線コンピュータ断層撮影法(CT)は、血管石灰化を検出することにおいてきわめて感度がよい。通常のCTは、冠動脈石灰化の検出のために、X線透視よりも優れた性能があると考えられるが、その限界は、モーションアーチファクト、体積平均、呼吸によるミスレジストレーションおよびプラーク量の定量の不能をもたらす遅いスキャン時間である(Wexler et al. Circulation 94: 1175− 1192, 1996)。
【0064】
更なる態様において、石灰化は、ヘリカルまたはスパイラルコンピュータ断層撮影により検出され得、これは、通常のCTよりもかなり速いスキャン時間を有する。重複スライスも、カルシウムの検出を改善する。Shemeshらは、冠動脈造影上有意な冠動脈閉塞性疾患と比較する場合、91%の感度および52%の特異度を有するヘリカルCTによる冠動脈カルシウム画像を報告した(Shemesh et al. Radiology 197: 779−783、1995)。ただし、他の予備的データは、これらの加速されたスキャン時間でも、および特にシングルヘリカルCTを用いても、石灰化沈着物が心拍動のために不鮮明になり、小さな石灰化は見えなくなり得ることを示している(Baskin et al. Circulation 92(suppl I): I−651、1995)。従って、ヘリカルCTは、石灰化の検出においてX線透視および通常のCTよりも依然として優れている。ダブルへリックスCTスキャナーは、冠動脈石灰化の検出において、そのより高い解像度およびそのより薄いスライス機能により、シングルへリックススキャナーよりもより感度が高いと考えられる(Wexler et al、上記を参照)。
【0065】
もう1つの態様において、血管石灰化の検出のために電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)が、使用され得る。EBCTは、X線を発生させるために標準のX線管でなく電子銃および静止したタングステン「標的」を使用し、大変速いスキャン時間を可能にする。当初はシネまたは超高速CTと呼ばれたが、最新のスパイラルスキャナーもまたサブセカンドスキャン時間を達成しているので、現在は標準CTスキャンと区別するためにEBCTという用語が使用されている。冠動脈カルシウムを検出するために、EBCT画像は、3mmのスキャンスライス厚を用い、100msで測定される。テーブル増分により30から40の隣接するアキシャルスキャンが得られる。スキャンは、通常1回か2回の異なる息止めシーケンスの間に取得されるが、心拍動の影響を最小限にするために、拡張末期付近および心房収縮前に80%のRRインターバルの心電図信号により行う。速い画像収集時間は、心収縮に関連するモーションアーチファクトを実質的に除く。冠動脈において、動脈周囲脂肪より低いCT密度が、血液に対して著しい対照を成すため、混濁していない冠動脈はEBCTにより容易に特定され、一方、壁在性カルシウムは、血液に対して高いCT密度を有するため、明白である。さらに、スキャナーソフトウェアによりカルシウム面積および密度の定量化が可能になる。X線減弱係数、またはハウンズフィールド単位で測定したCT値、および石灰化沈着物の面積に基づく自由裁量による採点法が考案されている(Agatston et al. J Am Coll Cardiol. 15:827−832, 1990)。冠動脈カルシウムのスクリーニング検査は、10分か15分以内に終了され得、わずか数秒のスキャン時間を必要とするのみである。電子ビームCTスキャナーは、通常のCTスキャナーまたはスパイラルCTスキャナーよりも高価であり、比較的少数の施設において利用可能である。
【0066】
一態様において、血管内超音波(IVUS)は、血管石灰化、特に、冠動脈アテローム性動脈硬化症の検出に使用され得る(Waller et al. Circulation 85: 2305−2310、1992)。カテーテルの先端に回転型反射器を搭載したトランスデューサーを使用することにより、心臓カテーテル法の最中に冠動脈の断面画像診断画像を得ることが可能である。ソノグラムは、動脈内腔についてのみでなく、動脈壁の厚さおよび組織性状についても情報を提供する。石灰化は陰影を伴う高エコー域に見られ、繊維性非石灰化プラークは陰影を伴わない高エコー域に見られる(Honye et al. Trends Cardiovasc Med. 1: 305−311、1991)。IVUSの使用における不都合は、他の画像モダリティと対照的に、侵襲性であり、現在のところ、選択的冠動脈造影と共にのみ作動し、および冠動脈枝の限定された部位のみ視覚化することである。侵襲性ではあるが、冠動脈造影検査において正常所見を示す患者におけるアテローム性病変の関与を示すことができ、およびバルーン血管形成術およびアテローム切除装置の選択の前に狭窄病変の形態学的性状を明らかにするのに役立つ(Tuzcu et al. J Am Coll Cardiol. 27: 832−838, 1996)。
【0067】
もう1つの態様において、血管石灰化は、磁気共鳴画像法(MRI)により測定され得る。しかしながら、および冠動脈石灰化を検出するMRIの能力は、いくぶん限定されている。微小石灰化は、大量の軟組織を含有するボクセルの信号強度を実質的に変化させないので、このようなカルシウム蓄積における正味のコントラストは低い。従って、少量の石灰化のMRI検出は困難であり、冠動脈石灰化の検出におけるMRIの報告または期待される役割はない(Wexler et al.、上記を参照)。
【0068】
他の態様において、血管石灰化は、経胸壁(表面)心エコー検査により測定され得、これは、僧帽弁および大動脈心臓弁膜の石灰化の検出に対して特に感度が高い。しかしながら、利用制約された外部音響窓のため、冠動脈の透視の報告はほとんどない。近位冠動脈を可視化できることの多い経食道心エコー検査は、広く利用可能な方法である(Koh et al. Int J Cardiol. 43: 202−206, 1994. Fernandes et al. Circulation 88: 2532−2540, 1993)。
【0069】
もう1つの態様において、血管石灰化は、Van Kossaの方法によりエクスビボで評価され得る。この方法は、銀イオンが、電気化学列におけるその相対的位置により炭酸イオンまたはリン酸イオンにより溶液から置換されうるという原理に基づく。嗜銀性反応は、本来、光化学反応であり、その活性化エネルギーは、強い可視光または紫外光から供給される。組織の炭酸イオンまたはリン酸イオンの実証される形態は、常にカルシウムイオンに付随しているので、この方法は、組織のカルシウム沈着部位を明らかにすると考えることができる。
【0070】
石灰化を直接測定する他の方法は、限定するものではないが、蛍光抗体染色およびデンシトメトリーを含み得る。もう1つの態様において、血管石灰化を評価する方法は、血管石灰化の決定要因および/または危険因子を測定する方法を含む。このような因子は、限定するものではないが、リンの血清レベル、カルシウムおよびカルシウム×リン生成物、副甲状腺ホルモン(PTH)、低密度リポタンパクコレステロール(LDL)、高密度リポタンパクコレステロール(HDL)、トリグリセリド、ならびにクレアチニンを含む。これらの因子を測定する方法は、当業界において公知である。血管石灰化を評価する他の方法は、骨形成の因子を評価する方法を含む。このような因子は、骨特異性アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシン(OC)、I型コラーゲンのC末端プロペプチド(PICP)、およびI型コラーゲンのアミノ末端プロペプチド(PINP)などの骨形成マーカー;I型コラーゲンの架橋C−テロペプチド(ICTP)、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ、TRACPおよびTRAP5B、コラーゲン架橋のN−テロペプチド(NTx)およびコラーゲン架橋のC−テロペプチド(CTx)などの血清骨吸収マーカー;ならびにヒドロキシプロリン、遊離および全ピリジノリン(Pyd)、遊離および全デオキシピリジノリン(Dpd)、コラーゲン架橋のN−テロペプチド(NTx)、およびコラーゲン架橋のC−テロペプチド(CTx)などの尿骨吸収マーカーを含む。
【0071】
V.治療方法
一態様において、本発明は、個体における血管石灰化を阻害、抑制または予防する方法を提供する。本方法は、本発明のカルシウム擬似化合物の治療的有効量を個体に投与することを含む。一態様において、本発明の化合物の投与は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の形成、成長または沈着を、遅延または後退させる。本発明のもう1つの態様において、本発明の化合物の投与は、細胞外マトリックスハイドロキシアパタイトの結晶沈着の生成、成長または沈着を予防する。
【0072】
本発明の方法は、血管石灰化を特徴とするアテローム性硬化性石灰化および中膜石灰化ならびに他の状態を予防または治療するために使用され得る。一態様において、血管石灰化は、慢性腎不全または末期の腎疾患と関連付けられ得る。もう1つの態様において、血管石灰化は、透析前、透析後または尿毒症と関連付けられ得る。更なる態様において、血管石灰化は、I型またはII型糖尿病と関連付けられ得る。さらにもう1つの態様において、血管石灰化は、心血管疾患と関連付けられ得る。
【0073】
一態様において、カルシウム擬似薬の有効量の投与は、大動脈石灰化を引き起こすことなく血清PTHを低下させることができる。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬の投与は、血清クレアチニンを低下させることができ、または血清クレアチニンレベルの上昇を予防することができる。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬の投与は、副甲状腺(PT)過形成を抑制することができる。
【0074】
カルシウム擬似薬は、単独で、またはビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)などの血管石灰化を治療するための他の薬剤と組み合わせて投与され得る。ビタミンDステロールは、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールを含むことができる。一態様において、カルシウム擬似化合物はビタミンDステロールの投与の前後に投与され得る。もう1つの態様において、カルシウム擬似薬は、ビタミンDステロールと同時投与され得る。本発明の方法は、血管組織に対するカルシトリオールのミネラル沈着促進効果を抑制するために実施され得る。一態様において、本発明の方法は、カルシウム、リンおよびCa×P生成物の血清レベルを上昇させるカルシトリオールの作用を後退させるために使用され得、それにより血管石灰化を予防または阻害され得る。もう1つの態様において、本発明の方法は、血清クレアチニンレベルを安定化または低下させるために使用され得る。一態様において、疾患によるクレアチニンレベル上昇に加え、カルシトリオールなどのビタミンDステロールを用いる治療による、さらなるクレアチニンレベル上昇があり得る。
【0075】
さらに、外科治療および非外科治療と共にカルシウム擬似薬が、投与され得る。一態様において、本発明の方法は、透析とともに実施できる。
【0076】
以下の実施例は、本発明をさらに十分に説明するために提供するものであるが、その範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0077】
本実施例は、カルシウム擬似化合物N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミン・HCl(化合物A)が、大動脈石灰化を引き起こすことなく、二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)を伴う尿毒症ラットにおける血清PTHを低下させ、および血管組織に対するカルシトリオールのミネラル化促進効果を抑制したことを示す。
【0078】
動物
体重250gの雄Wistarラットを、Animal Breeding Facility of the University of Cordoba(スペイン)から購入した。ラットを12時間/12時間の明暗サイクル下におき、通常の食餌(カルシウム=0.9%、リン=0.6%)を自由摂取させた。実験プロトコルの見直しを行い、Ethics Committee for Animal Research of the Universidad de Cordoba(スペイン)の承認を得、および全てのラットは、米国医学研究学会(National Society for Medical Rsearch)により策定されたPrinciples of Laboratory Animal Care、および米国科学アカデミー(National Academy of Science)により作成された実験動物に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って人道的管理を受けた。
【0079】
5/6腎摘出
これらの実験に用いたCKDげっ歯類モデルを、元の機能しうる腎を6分の5(5/6)摘出する2段階手順である5/6腎摘出(5/6Nx)により作成した。第1段階において、キシラジン(5mg/kg、腹腔内)およびケタミン(80mg/kg、腹腔内)を用いてラットを麻酔し、腹部の左内外表面に5から8mmの切開を入れ、左腎を露出した。左腎動脈を見えるようにし、3つの分枝のうち2つをきつく縛り、その後、腎臓を梗塞について検査し、腹腔内の解剖学的中間位に戻した。腹壁および皮膚の切開を縫合糸を用いて縫合し、ラットを元のケージに戻した。1週間回復させた後、ラットを再度麻酔し、腹部の右内外表面に5から8mmの切開を入れた。右腎を露出して被包されていない状態にし、腎茎をクランプし縛って、腎臓を除去した。縛った腎茎を解剖学的中間位に戻し、腹部および皮膚の切開を縫合材料を用いて縫合した。ラットを元のケージで回復させた。擬似手術ラットに、腎手術以外、同じ手順を受けさせた。
【0080】
実験スケジュールを図1に示す。2番目の手術以後、食餌を、カルシウム含有量を減らし(0.6%)、リン含有量を増やした(0.9%)ものに変えた。ラットを無作為に6実験群に分けた(ベースライン体重の正規分布に基づいて):擬似手術群(n=13)(対照として使用)、5/6Nx+ビヒクル(生理食塩水)群(n=10)、5/6Nx+カルシトリオール80ng/kg(Calcijex,Abbot)(腹腔内、1日おき)群(n=10)、5/6Nx+化合物A1.5mg/kg/日(皮下)群(n=10)(Amgen,Thousand Oaks,CA USA)、5/6Nx+化合物A3mg/kg/日(皮下)(n=10)、または5/6Nx+カルシトリオール80ng/kgおよび化合物A1.5mg/kgの組み合わせ群(上述のように投与)(n=10)。処置を、14日間続けた。薬剤の最終投与の24時間後に、全身麻酔(腹腔内チオペンタールナトリウム)下で大動脈穿刺および放血によりラットを屠殺した。
【0081】
血液化学
処置期間の最後に、腹部大動脈から化学分析のための血液を採取した。イオン化カルシウムレベルの測定のための血液を、ヘパリン化シリンジで採取し、直ちにCiba−Corning 634 ISE Ca++/pH Analyzer(Ciba−Corning Essex,England)を用いて分析した。その後、遠心分離により血漿を分離し、アッセイに用いるまで−70℃で保存した。ラットPTH(1−34)免疫放射定量測定法アッセイキット(Immunotopics,San Clemente,CA)を用い、発売元の使用説明書に従ってPTHレベルを定量した。血清クレアチニン、リン、および総カルシウムを分光光度計(Sigma Diagnostics,St. Louis,MO,USA)により測定した。
【0082】
血管石灰化のエクスビボ評価
屠殺後に腹部大動脈を切開し、2つの部分に分割した。1つの部分を、10%緩衝化ホルマリンで固定し、ついでvon Kossa法によりミネラル化について染色した。もう1つの部分を、10%ギ酸でミネラルを除き、Price et al Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:317−27, 2000の方法に従って、上澄み中の動脈組織のカルシウムおよびリン含有量を測定した。
【0083】
統計学
数値を、平均値±標準誤差(SE)で表した。2つの異なる群の平均値間の差異を、t検定により測定し、3以上の群の平均値間の差異を、ANOVAで評価した。P<0.05を有意とみなした。
【0084】
クレアチニン
擬似手術ラットにおける平均血清クレアチニン濃度は、0.53±0.02mg/dlであった。予想されたように、全ての5/6Nxラットは、いずれの薬剤処置の前にも有意(P<0.05)に高いクレアチニンレベル(0.83±0.04から0.89±0.03mg/dl)を示し、群間の差異はなかった。カルシトリオールでの処置は、他の5/6Nx群に関してさらに有意な(P<0.05)血清クレアチニンレベル(1.05±0.07mg/dl)の上昇をもたらした。カルシトリオールと化合物Aの組み合わせは、化合物Aまたはビヒクル処置5/6Nxラットと比較する場合、クレアチニンレベル(0.93±0.05mg/dl)を有意に上昇させなかった。カルシトリオールと化合物Aの包含は、カルシトリオール誘発血清クレアチニンレベル上昇を抑制した。
【0085】
血清の生化学的パラメーター
イオン化カルシウム、リンおよびPTHの血清レベルを、図2から4に示す。5/6Nxおよび擬似手術群における血清イオン化カルシウムレベルは、類似していた(1.21±0.01mmol/lに対して1.23±0.01mmol/l)。1.5(1.20+0.02mmol/l)または3mg/kg(1.22±0.02mmol/l)の化合物Aで処置したラットにおける血清イオン化カルシウムレベルは、5/6Nxビヒクル処置群(1.21±0.01mmol/l)と相違しなかった。しかしながら、5/6Nxビヒクル処置群または化合物A単独処置群と比較する場合、カルシトリオール単独処置または化合物Aと組み合わせた処置は、有意に(P<0.05)高い血清イオン化カルシウムレベル(それぞれ1.28±0.02mmol/l、および1.26±0.01mmol/l)をもたらした(図2)。
【0086】
擬似手術群(6.9+0.7mg/dl)と、ビヒクル(6.5±0.4mg/dl)または1.5(6.6±0.3mg/dl)もしくは3mg/kg(6.9±0.4mg/dl)の化合物Aで処置した5/6Nxラット群との間の血清リンレベル(図3)は、相違しなかった。カルシトリオール単独の処置を受けたラットは、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較する場合、有意に(P<0.05)上昇した血清リンレベル(10.2±0.9mg/dl)を示した。化合物Aとカルシトリオールの組み合わせは、血清リンレベル(8.7±0,7mg/dl)を低下させる傾向を示したが、それでもなお有意に(P<0.05)、ビヒクル処置5/6Nxラットより高かった。
【0087】
擬似手術ラット(39.3±7.9pg/ml)と比較する場合、5/6Nxラット(118.7±27.7pg/ml)において、血清PTH濃度は有意に(P<0.05)上昇していた。使用した全ての処置は、擬似手術ラットと有意差がないレベルまで血清PTH濃度を下げた。しかしながら、カルシトリオールと化合物Aの組み合わせは、化合物A1.5mg/kg(73.5±12.8pg/ml)単独より、有意に(P<0.05)効果的なPTH抑制(13.8±2.6pg/ml)をもたらした(図4)。
【0088】
大動脈のミネラル含有量
カルシトリオール投与で観察される上昇した血清ミネラルレベルと一致して、カルシトリオールを用いた5/6Nxラット処置は、ビヒクル処置5/6Nxラット(2.3±0.2mg/g組織)と比較して有意に(P=0.009)上昇した大動脈カルシウム量(4.2±1.1mg/g組織)をもたらした(図5)。しかしながら、化合物Aを用いた処置は、ビヒクル処置5/6Nx(P=0.882)または擬似手術ラット(P=0.777)と同様の大動脈カルシウム含有量をもたらした(図5)。血清カルシウムレベルに対してカルシトリオールおよび化合物Aが有意な効果を示さないことを考慮すれば、驚いたことに、カルシトリオール誘発大動脈カルシウム上昇は、化合物A1.5mg/kgの同時処置により有意に(P=0.002)抑制された(図5)。
【0089】
さらなる分析は、擬似手術ラットのリン含有量が、ビヒクル処置5/6Nxラットのものと相違しないことを示した(図6)。カルシトリオールを用いた5/6Nxラットの処置は、大動脈組織におけるリン(2.1±1mg/g組織)含有量を、有意に(P=0.01)上昇させたが、一方、化合物A(1.5または3mg/kg)では、有意に上昇させなかった(図6)。カルシトリオール誘発大動脈リン上昇は、化合物A1.5mg/kgの同時処置により、有意に(P=0.013)抑制された(図6)。
【0090】
von Kossa染色法(図7)を用いてインサイチュ大動脈ミネラル化を検査した。擬似手術、ビヒクルまたは化合物A処置5/6Nx群のいずれにおいても大動脈におけるミネラル沈着物は観察されなかった。しかしながら、カルシトリオール単独で処置された5/6Nxラットの中膜において、著しいvon Kossa染色が検出された(図7A)。興味深いことに、カルシトリオール処置計画への化合物A1.5mg/kgの付加は、大動脈石灰化の発生を予防した(図7B)。
【0091】
血管石灰化退縮
ラットを既述のように5/6Nxとし、高リン食餌(0.6%Ca;1.2%P)で14日間飼育した。ラットを4群(A、B、CおよびD、n=4から5ラット/群)に分割し、1つの群(A)にビヒクル(生理食塩水0.2ml,腹腔内)を投与し、残りの3群(B、CおよびD)に試験期間(28日)中、カルシトリオール(80ng/kg,1日おき,腹腔内)を投与した。14日目に、2群(CおよびD)を普通の食餌(Ca0.9%;P0.6%)に変え、群Cに化合物A(3mg/kg/日,経口)を投与し、一方、群Dにビヒクル(10%captisol水溶液0.5ml/日)を投与した。残りの群(AおよびB)に、試験期間(28日)中、高リン食餌を継続し、カルシトリオールまたはビヒクルのどちらかを投与した。28日目に、ラットを屠殺(CO2)し、既述のように大動脈のPおよびCa含有量(mg/g組織)を測定するために大動脈を除去した。
【0092】
全28日間、高リン食餌で飼育しカルシトリオールを投与したラット(群B)を、高リン食餌で飼育しビヒクルを投与したラット(群A)と比較した場合、大動脈のカルシウムおよびリン含有量の有意な(p<0.05)上昇がみられた(図8参照)。これは、カルシトリオールが大動脈のカルシウムおよびリン含有量の上昇(血管石灰化)を仲介することを示している。
【0093】
高リン食餌(群B)から普通のリン食餌への変換は、大動脈のカルシウムおよびリン含有量のそれほど有意でない減少をもたらした(群D)。このことは、低リン食餌が血管石灰化プロセスの進行を妨げるおよび/または後退させうることを示唆している(CRIおよびESRD患者は、低リン食を摂食するよう推奨される。)。高リン食餌から普通のリン食餌へ変換し、および化合物A3mg/kgを受けさせつつ、試験の最終時点までカルシトリオールを受けさせたラット(群C)は、群Dと比較した場合、大動脈リン含有量の有意な(p<0.05)減少およびより低い大動脈カルシウム量を示した。このことは、形成された血管石灰化が、化合物Aのようなカルシウム擬似薬により後退され得ることを示唆している。
【実施例2】
【0094】
本実施例により、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が副甲状腺(PT)過形成を抑制し、血清PTHを低下させ、CKDラットモデルにおける大動脈血管石灰化を抑制することを示す。
【0095】
これらの試験において、体重300から350グラムの雄スプラーグ・ドーリー・ラット(Charles River Laboratories)を用いた。全てのラットに、試験の開始前、標準的実験用試料(Harlan Teklad,Madison,WI)を摂取させた。標準的実験用試料を、0.75%アデニンを含有する標準的げっ歯類実験用試料に変えた。ラットには飼料および水を自由に摂取させた。このラットプロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committee of Amgen Inc.(Thousand Oaks,CA)により承認された。
【0096】
アデニンを含む飼料でラットを21日間飼育し、およびアデニン食餌の開始前、イオン化カルシウム、PTH、BUNおよびクレアチニンならびにリンレベルのベースライン測定のためにラットを前採血した(図9)。
【0097】
PTHおよび血清化学プロフィールのための採血
ラットについて、アデニン食餌飼育または化合物Bもしくはビヒクルの投与の前に、血清のP、Ca、BUN、PTHおよびクレアチニンのベースライン測定を実施した。ラットが麻酔下(2%イソフルラン/O2)にある状態で眼窩静脈叢から血液を採取した。時間0での採血後、ラットをアデニン含有飼料で飼育し、および化合物B(3mg/kg 経口)またはビヒクル(12%captisol水溶液)を21日間連日投与した。試験終了日(21日目)にラットを屠殺し、組織病理学的分析のために大動脈および副甲状腺を除去した。血液化学およびPTH測定のために血液を採取した。屠殺の前、血液のイオン化カルシウムレベルの測定のために、麻酔下(2%イソフルラン/O2)、腹部大動脈からヘパリン化毛細管で血液を採取し、Ciba−Corning 634 ISE Ca++/pH Analyzer(Ciba−Corning Diagnostics Corp,Medfield,MA)を用いて分析した。別に、PTH、血液尿素窒素(BUN)、クレアチニンおよび血清リンレベルのために、SST(凝固活性剤)(商標)採血管(BD,Franklin Lakes,NJ)中に血液を採取し、凝固させた。血清を取り除き、アッセイに使用するまで−70℃で保存した。ラットPTH(1−34)免疫放射定量測定法アッセイキット(Immunotopics,San Clemente,CA)を用い、ベンダーの使用説明書に従ってPTHレベルを定量した。血液化学分析器(Olympus AU 400,Melville,NY)を用い、BUN、クレアチニンおよびリンレベルを測定した。
【0098】
PCNA免疫組織化学
副甲状腺重量および増殖細胞核抗原(PCNA)免疫化学を用い、過形成を測定した。屠殺時に喉頭気管コンプレックスを取り除き、Zn緩衝化ホルマリン中で2から3日保存し、ついで70%アルコールに移しトリミングした。トリミング時に、甲状腺から副甲状腺を切り離し、糸くずの出ないキムワイプ(Kimberly Clark Corp.,Roswell,GA)で拭き取って乾燥し、Sartorius BP21 ID天秤(Goettingen,Germany)で個別に重量を測定した。ついで副甲状腺をパラフィン包埋処理した。包埋後、5μmの切片を切り出し、荷電スライド(VWR Scientific,West Chester PA)上に置いた。この切片上で、PCNA染色キット(Zymed Laboratories,Inc.,S.San Francisco,CA)を用い、ベンダーの使用説明書に従って免疫染色を行った。
【0099】
副甲状腺切片の中央部を覆う一連の0.01mm2グリッド(目盛り付きグラチクルを用いて最初に面積を測定する)を有する面積測定用グラチクルの使用にて副甲状腺の面積を測定した。各副甲状腺のおおよそ同じレベルから切片を作成した。組織サンプルを、Leitz Laborlux顕微鏡で100xで視覚化し、副甲状腺組織を覆うグリッド数を数えた。このように、0.01mmにグリッド数をかけることにより副甲状腺の全面積を測定し、その後、グリッド化した断面積におけるPCNA陽性細胞数を数え、PCNA陽性細胞数/mm2として表した。スライドをコード化し、処置群の帰属を知らされていない観測者が、副甲状腺増殖の定量化を行った。
【0100】
大動脈血管石灰化に関する方法
試験の最終時点でラットを屠殺し(CO2)、大動脈を除去し、既述のようにP、Ca、BUNおよびクレアチニン測定のために血液を採取した。大動脈を回収し、10%中性緩衝化ホルマリン中で3から7日間固定し、ついで70%エタノールに移した。Lunar PIXImus 2デンシトメーター(Lunar PIXImus;Madison,WI)を用い、以下のパラメーターを用い骨密度(BMD;g/cm2)分析を行った:実行時間4分。Lunar社製 piximusソフトウェアバージョン2.0を用い、結果を分析した。
【0101】
化合物Bの3週間投与は、ビヒクル処置ラットと比較して、PCNA陽性細胞数を有意に(p<0.01)減少させた(図11)。同様に、ビヒクル処置ラットと比較した場合、化合物B処置ラットにおける副甲状腺重量もまた有意に減少した(図12)。
【0102】
図13は、化合物Bの投与が、ビヒクル処置ラットと比較した場合、血清PTHレベルを著しく低下させた(p<0.0001;ANOVA/Fisher制約付最小有意差検定、事後検定)ことを示している。
【0103】
図14は、アデニン食餌で飼育されたラットへの化合物Bの投与が、同じ食餌で飼育されたビヒクル処置ラットと比較して、大動脈骨ミネラル密度が75%減少させたことを示している。
【0104】
図15は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンに対する化合物Bの効果を示している。簡潔に言えば、BUNおよびクレアチニン両方のレベルは、処置前ビヒクル(n=4)と比較して、3週間のアデニン処置(後)、はいずれも有意に(p<0.05)上昇した;化合物B(n=7)図10。ビヒクル処置対照(n=4)と比較した場合、BUNに対する化合物B(n=7)の処置効果は有意でなかった(p>0.05)。しかしながら、化合物B(n=7)は、ビヒクル(n=4)処置ラットと比較して、クレアチニンレベルの低下を仲介した(p<0.05)。
【0105】
図16は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、イオン化Caに対する化合物Bの効果を示している。処置前(前)と比較して3週間アデニン処置(後)、血清イオン化カルシウム(iCa)は、有意に低下したp<0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4 前;n=3 後);化合物B(n=8 前;n=6 後)。化合物B(n=6)処置は、ビヒクル処置と比較して、血清iCaを著しく低下させた(p=0.004;n=3)。
【0106】
図17は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清リンに対する化合物Bの効果を示している。血清リン(P)は、処置前(前)と比較して3週間のアデニン処置(後)に有意に上昇したp>0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。ビヒクル処置ラットと比較した場合、血清Pレベルに対する化合物Bの処置効果は、有意でなかった(p>0.05)。
【0107】
図18は、血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清Caに対する化合物Bの効果を示している。血清カルシウム(Ca)は、処置前(前)と比較して、3週間のアデニン処置(後)、有意に低下したp<0.05;ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。化合物B処置は、ビヒクル処置と比較して、総血清カルシウムを有意に低下させた(p=0.0001)ANOVA;ビヒクル(n=4);化合物B(n=7)。
【実施例3】
【0108】
本実施例は、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が、尿毒症ラット由来の大動脈組織のCaおよびP含有量における、パリカルシトール仲介の上昇を有意に低下させることを示している。
【0109】
動物
0.6%Caおよび1.2%P食餌で飼育したWistarラット(200から250g)に5/6腎摘出(5/6Nx)または擬似手術(sham)を施した。ラットは、術後1日目から開始した以下の処置を受けた:Sham+ビヒクル、5/6Nx+ビヒクル、5/6Nx+パリカルシトール240ng/kg(48時間毎、腹腔内)、5/6Nx+パリカルシトール+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)または5/6Nx+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)。14日後、ラットを麻酔し、屠殺した。胸部大動脈を除去し、CaおよびP含有量の測定のために処理した。血清PTH、イオン化Ca、Pおよびクレアチニンを測定するために、屠殺時に血液を採取した。結果を以下の表1にまとめる。
【0110】
【表1】
【0111】
5/6Nx+ビヒクル
5/6Nxの手順は、慢性腎不全と一致する血清クレアチニン上昇(p<0.05)を仲介した。shamビヒクルラットと比較して5/6Nxビヒクルラットにおいて観察される血清イオン化Caの有意な低下(p<0.05)ならびに血清PおよびPTHの有意な上昇(p<0.05)は、全て二次性副甲状腺機能亢進症の顕著な特徴である。
【0112】
5/6Nx+パリカルシトール
5/6Nxラットへのパリカルシトールの投与は、5/6Nx+ビヒクルと比較して、血清PTHレベルを有意に(p<0.05)低下させた。5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベルの変化は無かった。パリカルシトールは、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較して、大動脈CaおよびP含有量を有意に(p<0.05)上昇させた(表1)。
【0113】
5/6Nx+化合物B
5/6Nxラットへの化合物Bを投与は、ビヒクル処置5/6Nxラットと比較して、血清PTHレベルを有意に(p<0.05)低下させた。5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベル変化は無かった。同様に、ビヒクル処置shamまたは5/6Nxラットのどちらかと比較した場合でも、化合物Bの投与は、大動脈CaまたはP含有量を有意に変化させなかった(表1)。
【0114】
5/6Nx+パリカルシトール+化合物B
パリカルシトール処置5/6Nxラットへの化合物Bを投与は、パリカルシトールを用いて処置された5/6Nxラットと比較して、大動脈CaおよびP含有量を有意に(p<0.05)減少させた。化合物Bの投与による大動脈CaおよびP含有量の減少は、ビヒクル処置されたsham対照(正常レベル)と有意に相違しなかった。パリカルシトールまたは化合物B処置5/6Nxラット単独と比較した場合、パリカルシトールと化合物Bの組み合わせは、さらに有意に(p<0.05)血清PTHレベルを低下させた。化合物Bとパリカルシトールの組み合わせで処置したラットは、5/6Nx+ビヒクルと比較して、血液イオン化カルシウム、クレアチニンまたは血清Pレベルにおいて、変化を示さなかった(表1)。
【実施例4】
【0115】
本実施例は、カルシウム擬似薬N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミン(化合物B)が、軟組織のパリカルシトールおよびカルシトリオール仲介ミネラル化を有意に抑制することを示している。
【0116】
動物
0.6%Caおよび1.2%P食餌で飼育したWistarラット(200から250g)に5/6腎摘出(5/6Nx)を行った。ラットは、術後1日目から開始した以下の処置を受けた:5/6Nx+ビヒクル、5/6Nx+パリカルシトール(240ng/kg、48時間毎)もしくはカルシトリオール(80ng/kg、48時間毎)(腹腔内)、5/6Nx+パリカルシトールまたはカルシトリオール+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)または5/6Nx+化合物B(1.5mg/kg、48時間毎、皮下)。14日後、ラットを麻酔し、屠殺して、組織を除去し、組織学的検査用に処理した(ミネラル化測定用Von Kossa染色およびH&E染色)。
【0117】
図19(上部パネル:A、B、C)は、5/6Nxラットへのカルシトリオールの投与が、組織の濃染により明らかなように、心臓(A)、腎臓(B)、および肺(C)(これらの組織だけ検査した)におけるミネラル化を増大させたことを示している。
【0118】
図19(下部パネル:D、E、F)は、組織の抑制された濃染により示されるように、カルシトリオール処置5/6Nxラットへの化合物Bの投与が、心臓(D)、腎臓(E)、および肺(F)ミネラル化を減少させたことを示している。
【0119】
図20(上部パネル:A)は、組織の濃染から明らかなように、5/6Nxラットへのパリカルシトールのを投与が、腎臓(A)におけるミネラル化を増大させたことを示している。
【0120】
図20(下部パネル:B)は、組織の濃染の減少から明らかなように、パリカルシトール処置5/6Nxラットへの化合物Bの投与が、腎臓(B)ミネラル化を減少させたことを示している。
【0121】
本明細書に記載の全ての公報、特許および特許出願は、各公報または特許出願が個別におよび具体的に本明細書に参照によって取り込まれると記載されているように、参照により取り込まれる。理解の明確性のために例示として少し詳しく前述の発明を説明してきたが、付帯の特許請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく変更および改変をなしうることが、本発明の教示を考慮に入れれば当業者には直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】ラット処置の実験スケジュールを示す図である。
【図2】CKDラットモデルにおける、イオン化カルシウムの血清レベルを示す図である。
【図3】CKDラットモデルにおける、リンの血清レベルを示す図である。
【図4】CKDラットモデルにおける、副甲状腺ホルモンの血清レベルの概略図である。
【図5】CKDラットモデルにおける、大動脈のカルシウム量を示す図である。
【図6】CKDラットモデルにおける、大動脈のリン含有量を示す図である。
【図7】CKDラットモデルにおける、大動脈のVon Kossa染色切片を示す図である。
【図8】CKDラットモデルにおける、大動脈のカルシウムおよびリン含有量を示す図である。
【図9】アデニン誘発血管石灰化モデルにおける、ラット処置の実験スケジュールの概略図である。
【図10】アデニン誘発血管石灰化のスキームを示す図である。
【図11】CKDラットモデルにおける、副甲状腺過形成抑制の概略図である。
【図12】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの副甲状腺重量変化の概略図である。
【図13】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの処置による、血清PTH変化を示す図である。
【図14】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルの処置による、大動脈骨ミネラル密度変化を示す図である。
【図15】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンに対する処置の効果を示す図である。
【図16】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDモデルにおける、イオン化カルシウムに対する処置の効果を示す図である。
【図17】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清リンに対する処置の効果を示す図である。
【図18】血管石灰化を伴うアデニン誘発CKDにおける、血清Caに対する処置の効果を示す図である。
【図19】カルシトリオール誘発石灰化を伴う組織に対する、化合物Bによる処置の効果を示す図である。
【図20】パリカルシトール誘発石灰化を伴う組織に対する、化合物Bによる処置の効果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血管石灰化を治療する方法。
【請求項2】
血管石灰化がアテローム硬化性石灰化である、請求項1の方法。
【請求項3】
血管石灰化が中膜石灰化である、請求項1の方法。
【請求項4】
対象が慢性腎不全に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
対象が末期の腎疾患に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項6】
対象が透析前である、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項7】
対象が尿毒症に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項8】
対象がI型またはII型糖尿病に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項9】
対象が心血管疾患に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項10】
対象がヒトである、請求項1から9のいずれかの方法。
【請求項11】
カルシウム擬似化合物が、式Iの化合物:
【化1】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は、3−t−ブチル基でなく;
nは、0から5の範囲であり;
mは、1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジニル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
またはこの薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項12】
カルシウム擬似化合物が、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項13】
カルシウム擬似化合物が、式IIの化合物:
【化2】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、このそれぞれは置換されているかまたは非置換であってよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、ならびにR6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
またはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項14】
カルシウム擬似化合物が、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項15】
カルシウム擬似化合物がシナカルセットHClである、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項16】
ビタミンDステロールが前もって対象に投与されている、請求項1の方法。
【請求項17】
ビタミンDステロールが、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールである、請求項16の方法。
【請求項18】
ビタミンDステロールが、カルシトリオールである、請求項16の方法。
【請求項19】
ビタミンDステロールが、パリカルシトールである、請求項16の方法。
【請求項20】
ビタミンDステロール投与の前または後にカルシウム擬似化合物が投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項21】
カルシウム擬似化合物がビタミンDステロールと組み合わせて投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項22】
カルシウム擬似化合物がRENAGEL(登録商標)と組み合わせて投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項23】
対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血清クレアチニンレベルを低下させる方法。
【請求項24】
対象に対するビタミンDステロールを投与により、対象が、上昇した血清クレアチニンレベルを被っている、請求項23の方法。
【請求項1】
対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血管石灰化を治療する方法。
【請求項2】
血管石灰化がアテローム硬化性石灰化である、請求項1の方法。
【請求項3】
血管石灰化が中膜石灰化である、請求項1の方法。
【請求項4】
対象が慢性腎不全に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
対象が末期の腎疾患に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項6】
対象が透析前である、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項7】
対象が尿毒症に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項8】
対象がI型またはII型糖尿病に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項9】
対象が心血管疾患に罹患している、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項10】
対象がヒトである、請求項1から9のいずれかの方法。
【請求項11】
カルシウム擬似化合物が、式Iの化合物:
【化1】
[式中、
X1およびX2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれは、CH3、CH3O、CH3CH2O、Br、Cl、F、CF3、CHF2、CH2F、CF3O、CH3S、OH、CH2OH、CONH2、CN、NO2、CH3CH2、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アセトキシおよびアセチル基から選択される基であり、または2つのX1が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、または2つのX2が、一緒になって、縮合脂環式環、縮合芳香環、およびメチレンジオキシ基から選択される構造を形成でき、ただしX2は、3−t−ブチル基でなく;
nは、0から5の範囲であり;
mは、1から5の範囲であり;ならびに
アルキル基は、飽和および不飽和の直鎖、分枝鎖および環状C1〜C9アルキル基、ジヒドロインドリルおよびチオジヒドロインドリル基、ならびに2−、3−、および4−ピペリジニル基から選択される少なくとも1つの基で場合により置換されていてよいC1〜C3アルキル基から選択される。]
またはこの薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項12】
カルシウム擬似化合物が、N−(3−[2−クロロフェニル]−プロピル)−R−α−メチル−3−メトキシベンジルアミンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項13】
カルシウム擬似化合物が、式IIの化合物:
【化2】
[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
R2は、アルキルまたはハロアルキルであり;
R3は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
R4は、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
記載されている各R5は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、−C(=O)OH、−CN、−NRdS(=O)mRd、−NRdC(=O)NRdRd、−NRdS(=O)mNRdRdまたは−NRdC(=O)Rdからなる群から独立して選択され;
R6は、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルであり;
各Raは、独立して、H、アルキルまたはハロアルキルであり;
各Rbは、独立して、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、このそれぞれは、非置換であるか、またはアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される3までの置換基により置換されていてよく;
各Rcは、独立して、アルキル、ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、このそれぞれは置換されているかまたは非置換であってよく;
各Rdは、独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキルは、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、Rb、−C(=O)Rc、−ORb、−NRaRa、−NRaRb、−C(=O)ORc、−C(=O)NRaRa、−OC(=O)Rc、−NRaC(=O)Rc、−NRaS(=O)nRcおよび−S(=O)nNRaRaから選択される0、1、2、3または4置換基により置換されており;
mは、1または2であり;
nは、0、1または2であり;ならびに
pは、0、1、2、3または4である;
ただし、R2がメチルであり、pが0であり、ならびにR6が非置換フェニルである場合、R1は、2,4−ジハロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジエチルフェニル、2,4,6−トリハロフェニルまたは2,3,4−トリハロフェニルでない。]
またはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項14】
カルシウム擬似化合物が、N−((6−(メチルオキシ)−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−3−イル)メチル)−1−フェニルエタンアミンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項15】
カルシウム擬似化合物がシナカルセットHClである、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項16】
ビタミンDステロールが前もって対象に投与されている、請求項1の方法。
【請求項17】
ビタミンDステロールが、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールである、請求項16の方法。
【請求項18】
ビタミンDステロールが、カルシトリオールである、請求項16の方法。
【請求項19】
ビタミンDステロールが、パリカルシトールである、請求項16の方法。
【請求項20】
ビタミンDステロール投与の前または後にカルシウム擬似化合物が投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項21】
カルシウム擬似化合物がビタミンDステロールと組み合わせて投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項22】
カルシウム擬似化合物がRENAGEL(登録商標)と組み合わせて投与される、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項23】
対象にカルシウム擬似化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象における血清クレアチニンレベルを低下させる方法。
【請求項24】
対象に対するビタミンDステロールを投与により、対象が、上昇した血清クレアチニンレベルを被っている、請求項23の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−533170(P2008−533170A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502088(P2008−502088)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/009683
【国際公開番号】WO2006/102061
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/009683
【国際公開番号】WO2006/102061
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
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