説明

石灰化組織親和性化合物

本発明は、石灰化組織への集積性が良好で、尿中排泄および血液クリアランスも速やかな、診断剤、治療剤として有用な化合物を提供する。上記化合物は、式(AC)a−MC−(LI)bで表される石灰化組織親和性化合物である。上式中、MCは母核にして、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基、ホスホニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲンおよびシアノ基からなる群より選ばれる官能基を複数有してなる化合物の残基。ACは石灰化組織親和性基。LIは金属原子と結合し得るリガンド。aは1以上の整数。bは0又は1以上の整数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、石灰化組織への親和性が高く、速やかな尿中排泄を示す化合物、および、その診断薬、治療薬等としての用途に関する。
【背景技術】
近年、核医学的手法による骨格のシンチグラフィーは初期段階の骨疾患を診断する上で重要な道具となってきている。骨シンチグラフィーのイメージング剤は、薬剤投与後から撮像までの時間を短縮し、かつ高いシンチグラム画質を得るために、骨親和性の他に尿中排泄が高いこと、血液や組織からのクリアランスが速いことなどが要求されている。今日では、放射性同位元素で標識されたリン酸化合物が用いられている。最初に試みられたのは、99m−テクネチウムで標識された無機ポリリン酸類であった。しかし、99m−テクネチウムで標識された無機ポリリン酸類は、水溶液中で加水分解を起こしてモノリン酸塩になるため血液からのクリアランスが低いという問題があった。
この問題を解決するために、Yano等は99m−テクネチウムで標識された有機ジホスホン酸であるTc−99m−エタン−1−ヒドロキシ−1−ジホスホネート第一スズ(Tc−99m−HEDP)を報告している(J.Nucl.Med.14,73,(1973)および米国特許第3,735,001号明細書)。この化合物は血液からのクリアランスが比較的速いため、薬剤投与後のより速い時間に骨シンチグラフィー検査を行うことができ、現状においては、Tc−99m−HEDPの類似化合物である99m−テクネチウム標識リン酸化合物、即ち、メタンジホスホン酸(MDP)、およびヒドロキシメタンジホスホン酸(HMDP)等の有機ジホスホン酸を99m−テクネチウムで標識した化合物が広く用いられている。しかし、これらの化合物を用いた骨シンチグラフィー製剤は、骨の石灰化の行われている部位に集積すると共に、薬剤の投与後撮像までの時間がより短縮されてはいるものの、投与後約3時間が必要であり十分短いとは言えない。
一般に、骨シンチグラフィー製剤の血液および/または軟組織からのクリアランスが遅くまた尿中への排泄が遅いと、画像上のコントラストを向上させる必要があるため、薬剤の投与後から撮像までの時間が長くなる。テクネチウム標識リン酸化合物のクリアランスに影響を与える要因の一つは、テクネチウム−ビスホスホネート錯体のポリマー構造であると考えられている。ビスホスホネート化合物をポリマー構造から単分子構造に変えることによって、投与後の速い時点でのクリアランスを促進しようとする試みとしては、123−ヨウ素を標識したビスホスホネート化合物(国際公開第89/11877号パンフレット)が挙げられるが、必ずしも十分な効果が得られていない。
同様の観点から、ビスホスホン酸誘導体などの有機ホスホン酸についても様々な化合物が提案されているが(特開昭59−205331号公報、特開昭57−50928号公報、特開昭63−500849号公報、特開2001−114792号公報)、投与後撮像時間の短縮を可能とする尿中排泄性及び血液クリアランスの向上が望まれていた。
【発明の開示】
そこで、本発明の目的は、有機ホスホン酸が錯化合物を形成しにくいようにデザインし、しかも、分子サイズを制御することで、優れた石灰化組織への親和性を示し、石灰化組織に集積しなかった化合物が高い尿中排泄性を示す新規な有機ホスホン酸誘導体、及び、その診断剤、治療剤などとしての用途を提供することにある。
上記の課題を解決すべく、本発明者は有機ホスホン酸などの石灰化組織親和性化合物について様々な検討を重ねてきたところ、下記一般式(AC)−MC−(LI)(式中、MCは母核、ACは石灰化組織親和性基、LIは金属原子と結合し得るリガンド。aは1以上の整数。bは0または1以上の整数。)で表される化合物の場合、分子サイズを制御された母核MCを備えることにより、優れた石灰化組織への親和性を示し、石灰化組織に集積しなかった化合物が高い尿中排泄性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一局面によれば、
式(AC)−MC−(LI)
(なお、上式中、
MCは母核にして、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基、ホスホニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲンおよびシアノ基からなる群より選ばれる官能基を複数有してなる化合物の残基。
ACは石灰化組織親和性基。
LIは金属原子と結合し得るリガンド。
aおよびbは1以上の整数。)
で表される石灰化組織親和性化合物が提供される。ここにおいて、リガンドLIは金属原子と結合し得るものであり、すなわち、金属原子と錯体を形成していてもよいし、錯体を形成していなくてもよい。この化合物は、LI部分が錯体形成能の中心的役割を担うので、AC部分が錯化合物を形成しにくく、血液および/または軟組織からのクリアランスが速くまた尿中への排泄も速いため好都合である。
好ましい本発明の化合物は、式(AC)−MC−(LI)
(なお、上式中、
前記MCは、単糖、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる化合物の残基。aおよびbは1以上の整数。)
で表され、上式中、ACはポリアスパラギン酸基、ポリグルタミン酸基および有機ホスホン酸基からなる石灰化組織親和性基であることが好ましく、有機ホスホン酸基であることが更に好ましい。
さらに好ましい本発明の化合物は、式(AC)−MC−(LI)
(なお、上式中、
MCは、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる化合物の残基であり、母核MCの構成単糖のいずれか一つに石灰化組織親和性基ACが結合され、当該構成単糖とは別の構成単糖に金属原子と結合し得るリガンドLIが結合されている。aおよびbは1以上の整数。)
で表わされる。母核MCに対して、石灰化組織親和性基AC又は金属原子と結合し得るリガンドLIは、複数結合してもよい。
さらに、本発明の他の局面によれば、式(AC)−MC
(なお、上式中、
MCは母核にして、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基、ホスホニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲンおよびシアノ基からなる群より選ばれる官能基を複数有してなる化合物の残基。
ACは石灰化組織親和性基。
aは1以上の整数。)
で表される石灰化組織親和性化合物が提供される。この化合物は、分子サイズを制御された母核MCを備え、ACにより優れた石灰化組織への親和性を示し、石灰化組織に集積しなかった化合物がMCにより高い尿中排泄性を示すために好都合である。
式(AC)−MCで表わされる化合物において、MCは、単糖、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる化合物の残基であり、ACはポリアスパラギン酸基、ポリグルタミン酸基および有機ホスホン酸基からなる石灰化組織親和性基であることが好ましく、有機ホスホン酸基であることが更に好ましい。
本発明の化合物における好ましい態様は、母核MC、石灰化組織親和性基ACおよびリガンドLIの少なくとも一つに、金属原子を含むものであるか、またはハロゲン原子、炭素、酸素、窒素、硫黄もしくはリンの同位体を含むものである。この態様は、特に、診断薬としての用途において好ましい。
特表平10−501218号公報には、オートクレーブ加熱、マイクロ波加熱等の条件によって異なる組成を有する99m−テクネチウムモノ、ジまたはポリホスホネート錯体組成物が開示されている。これは放射性金属標識リン酸化合物がポリマー構造を形成することによるクリアランスの悪化を改善する試みである。しかし、この方法では依然としてポリマー構造を有するポリホスホネートの混在は避けられない。
これに対し、本発明の式(AC)−MC−(LI)で表される化合物は、リガンドLIに放射性核種による標識機能を分配し、ビスホスホン酸が錯体形成に関与する機会を低下させることにより、より有利な骨への集積性の向上を図った点に特徴を有する。同様の技術思想は、ビスホスホン酸以外の石灰化組織親和性基ACにおいても適用できることは明らかである。なお、リガンドLIと石灰化組織親和性基ACの錯体形成能の差は本発明の化合物の類縁体を利用することで証明できる。放射性金属核種、濃度、pH、還元剤などの標識条件を選択することにより石灰化組織親和性基ACが錯体を形成していないことが実証できる。たとえばDTPAまたはMAG3とHMDPとの共存標識法によって実証できる。
また、本発明の式(AC)−MCで表される化合物は、それ自体石灰化組織親和性を有するので治療薬として有用なだけでなく、母核MCおよび石灰化組織親和性基ACの少なくとも一つに、金属原子、または、ハロゲン原子、炭素、酸素、窒素、硫黄もしくはリンの同位体を含ませることによって標識できるので、診断薬としても有用である。
診断医学における診断剤の使用は急速に増加している。従来より、核医学診断においては放射性同位元素で標識された組成物または物質を生体内に投与し、当該組成物または物質の発する放射線をシンチカメラで検出してその組成物または物質の生体内での分布、挙動を非侵襲的に画像として表現することが行われており、さまざまな疾病の早期発見や病態の解明に利用されている。この放射性同位元素で標識された組成物または物質は、放射性イメージング剤と呼ばれ、それぞれの目的に適したものが開発されている。また、MRI診断において、周囲のプロトンの緩和性を増加する常磁性金属種を含有する組成物または物質を投与することにより、組織のコントラストが増大されうる。
一方、治療薬としては、ビスホスホン酸は石灰化組織親和性作用による、骨吸収および骨吸収の亢進に伴う血清カルシウム値の上昇を抑制する効果が以前より知られており、骨吸収の亢進が病態に重要な関与をしていると考えられている疾患、例えばページェット病、高カルシウム血症、癌の骨転移、骨粗鬆症を治療するための薬剤中の作用物質として、治療実務に導入されている。また、例えば癌転移後の増悪予防、骨疼痛の緩和、歯周病予防などの薬理的作用が公知となっている。
さらに、本発明の化合物は、石灰化組織親和性作用のため、骨疾患のほか、石灰化した血管部位などの動脈硬化や慢性炎症性疾患などの石灰化血管病変への診断・治療における使用も可能となる。
したがって、本発明の化合物は、生体内の石灰化組織全般に選択的に集積し、かつ尿中排泄が迅速なので、上記した各種疾病の診断薬または治療薬として有用である。
具体的には、本発明の化合物は、適切な放射性核種標識を行って、骨転移、骨粗鬆症、パジェット病、骨折、異所性骨化、骨形成あるいは骨溶解等の骨疾患診断及び動脈硬化などの石灰化した血管部位の診断のための有効成分として有用である。疾患部位を見つけ出すための骨格のシンチグラフィーの可視化に適用する場合は、本発明の化合物をヒトをはじめとする哺乳動物の身体に静脈内投与し、次いで、身体中における放射能分布を測定することにより行う。放射能分布は一般に知られた装置(ガンマカメラなど)を用いて測定される。
また、本発明の化合物は、慢性関節リウマチ、腰痛症などの炎症性骨疾患や疼痛緩和の治療剤として骨の癌およびその癌転移、癌の骨への転移防止等の制癌剤としての目的にも適用できる。さらに本発明の化合物は、治療薬の選択や効果判定などの薬効評価のための診断にも用いることができる。
本発明の化合物は、それに含まれる標識物質の種類に応じて、放射線、核磁気共鳴、X線、超音波などを用いた各種の画像診断におけるイメージング剤または治療薬として使用できる。また、本発明の化合物またはその塩は、少なくとも1つの医薬として許容される担体とともに医薬組成物として提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
(1)母核MC
本発明において、母核MCは、石灰化組織親和性基ACおよびリガンドLIと化学結合するために利用可能な官能基を複数備えているものであればよい。具体的には、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基、ホスホニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲンおよびシアノ基からなる群より選ばれる官能基を複数有してなる化合物の残基が挙げられる。
したがって、母核MCは、上記官能基を複数備えるかぎり、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク、タンパクフラグメントもしくはこれらの化学的誘導体又は合成高分子などであってよい。
本発明の化合物は、母核MCの大きさにより分子サイズを制御し得るため、用途によりその分子サイズを変更することで血管と組織間移行を制御でき、毛細血管細孔(5〜10μm)を効果的に通過させて組織選択的に作用させ得る。
好ましくは、母核MCは、単糖、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる糖類化合物の残基であり、さらに好ましくはオリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーの残基であり、特に好ましくはオリゴ糖およびアミノオリゴ糖の残基である。
単糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンなどが挙げられる。
オリゴ糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトースなどからなる群より選ばれた1種以上を構成単糖とするものが挙げられる。これらは、直鎖であっても分岐してもよく、また、本発明の化合物の血管−組織間の移行性の観点から、2から20糖の重合体であることが好ましい。また、オリゴ糖は、構成単糖が相互にαもしくはβ結合しているものであってよく、または、構成単糖が相互に1−3、1−4もしくは1−6結合しているものであってもよい。好ましいオリゴ糖の具体例としては、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、イソマルトヘプタオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオース、ラミナリトリオース、ラミナリテトラオース、ラミナリペンタオース、ラミナリヘキサオース、ラミナリヘプタオース、エルロース、パノース、ラフィノースなどが挙げられる。オリゴ糖はその最終末端などの一部分において還元されていても還元されていなくてもよいが、還元されているものが好ましい。また、オリゴ糖には、これらのジアルデヒド化糖も含まれる。
アミノオリゴ糖としては、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンなどからなる群より選ばれた1種以上のアミノ糖を構成単糖とするものが挙げられる。これらは、直鎖であっても分岐してもよく、また、本発明の化合物の血管−組織間の移行性の観点から、2から20糖の重合体であることが好ましく、2〜13糖の重合体がさらに好ましい。また、アミノオリゴ糖は、構成単糖が相互にαもしくはβ結合しているものであってよく、または、構成単糖が相互に1−3、1−4もしくは1−6結合しているものであってもよい。特に好ましいアミノオリゴ糖としては、構成単糖の繰り返し単位が2〜10であるキトサンオリゴ糖や構成単糖の繰り返し単位が2〜10であるガラクトサミンオリゴ糖など用いられ、具体的にはキトサン2糖、キトサン3糖、キトサン4糖、キトサン5糖、キトサン6糖等のキトサンオリゴ糖、ガラクトサミン2糖、ガラクトサミン3糖、ガラクトサミン4糖、ガラクトサミン5糖、ガラクトサミン6糖等のガラクトサミンオリゴ糖が例示される。アミノオリゴ糖はその最終末端などの一部分において還元されていても還元されていなくてもよいが、還元されているものが好ましい。また、アミノオリゴ糖には、そのアミノ基の一部がN−アセチル化されているもの、および、そのジアルデヒド化糖も含まれる。
シクロデキストリンとしては、α−、β−およびγ−シクロデキストリンが包含される。また、シクロデキストリンには、構成単糖の2位と3位が還元されたジアルデヒド化糖も含まれる。
糖デンドリマーとしては、例えば、ポリカルボン酸またはアルキルポリカルボン酸からなるコアに直鎖または分岐した糖が結合されているものが挙げられる。糖デンドリマーは、ジェネレーション(世代)で表現され、内核から外側へ円を描ける構造をとり、ポリカルボン酸の円の数が1から5世代が好ましく、1から3がより好ましい。
他の糖デンドリマーとしては、ポリアミンまたはアルキルポリアミンからなるコアに直鎖または分岐した糖が結合されたものが挙げられる。この糖デンドリマーは、構成する窒素原子を基準に内核から外側へ円を描ける構造をとり、その最外殻窒素に糖が結合して、糖デンドリマーを構成する。このとき、その窒素円の数が1から5世代が好ましく、1から3がより好ましい。
その他、ホスホニル基を有する母核MCとしては、イノシトール−3−リン酸などが挙げられ、スルホニル基を有する母核MCとしては、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸などが挙げられ、カルボキシル基またはカルボニル基を有する母核MCとしては、グルクロン酸などが挙げられ、ハロゲンを有する母核MCとしては、アセトブロモ−α−D−グルクロン酸メチルエステル(Acetobromo−α−D−glucuronic acid methyl ester)が挙げられ、シアノ基を有する母核MCとしては、シアノメチルマンノースなどが挙げられる。
(2)石灰化組織親和性基AC
石灰化組織親和性基ACは、骨や血管などに見られる石灰化組織に親和性を有する化合物であれば制限されないが、代表的には、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、有機ホスホン酸およびこれらの誘導体が挙げられる。
石灰化組織親和性基ACを構成する有機ホスホン酸としては、例えば、下記式Iに示すジホスホン酸およびその誘導体並びにこれらの塩の残基が挙げられる。

(式中、
およびRは同一でも異なっていてもよく、式−(CR−R−(CR−R10−(CR1112−R13−(CR141516(式中、R、R、R、R、R11、R12、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NR17およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、R17はそれぞれ独立にHまたは−(CHCHであり、R、R10およびR13は、それぞれ独立に、硫黄、酸素、アミド、イミド、3〜12個の原子から構成される二価の複素環および環式炭化水素(Ar−(R18−R19)からなる群より選ばれる基であり、R18は−CR17であり、R19は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NH、−NHMe、−NMeおよびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、k、l、m、n、o、pおよびqはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、rは0〜3、sは0〜12、k、l、m、n、o、pおよびqの合計は0〜12である)で表され、
はH、−OH、−NH、−NHMe、−NMe、−CNおよび低級アルキル基(1個または2個以上の極性基により置換されていてもよい)から選ばれる基であり、
はH、−OH、−NH、−NHMe、−NMe、−CN、−SOH、ハロゲンおよび低級アルキル基(1個または2個以上の極性基により置換されていてもよい)から選ばれる基であり、jは0または1である(ただしjが0である場合RはHでなく、jが1である場合RおよびRが双方ともHであることはできない。)。
上記式Iで示される有機ホスホン酸としては、例えば、エチレングリコール−1,2−ビスホスホン酸、ジホスホノメタンスルホン酸、2,2−ジホスホノエタンスルホン酸、2,2−ジホスホノ−2−ヒドロキシエタンスルホン酸、1,1−ジホスホノ−2−ヒドロキシエタンスルホン酸、N,N−ジメチル−1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸およびこれらの誘導体などが挙げられる。
また、上記式Iで示される有機ホスホン酸としては、アルファ−ジェミナル−ビスホスホン酸、即ちjが0であってP−C−P結合を有するビスホスホン酸またはその誘導体が好ましく使用でき、この場合、そのアルファ炭素の置換基RおよびRは水素、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、カルボン酸基、スルホン酸基、低級アルキル基、低級アルキルアルコール基、シアノ基などでよく、RおよびRの何れか一方は母核MCの官能基と結合する。
すなわち、上記式Iで示される化合物のうち、jは0であり(すなわち、RはHでなく)、Rは、式−(CR141516(式中、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NR17およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、R17はそれぞれ独立にHまたは−(CHCHであり、qは0または1〜9の整数であり、rは0〜3である)、または、式−R13−R16(式中、R16は、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NR17およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、R17はそれぞれ独立にHまたは−(CHCHであり、rは0〜3であり、R13はチオフェニレン、ピリミジニレン、ピロリジニレン、フェニレン、エーテルまたはチオエーテルで表される基である)で表され、かつ、RはHまたは−OHであるものが好ましい。
また、上記式Iで示される化合物のうち、jは0であり(すなわち、RはHでなく)、Rは、式−(CR141516(式中、R14およびR15はHであり、R16は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NR17およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、R17はそれぞれ独立にHまたは−(CHCHであり、rは0〜3であり、qは0または1〜9の整数、好ましくは0または1〜5の整数である)で表され、かつ、RはHまたは−OHであるものがさらに好ましい。
かかるビスホスホン酸としては、例えば、メタンジホスホン酸(MDP)、ヒドロキシメタンジホスホン酸(HMDP)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(EHDP)、ジメチルアミノメチレンジホスホン酸(DMAD)、3,3−ジホスホノ−1,2−プロパンジホスホン酸(DPD)、チルドロネート(Tildronate)などが挙げられ、そのエステルまたは塩も使用できる。なお、これらの化合物の構造式は、下記のとおりである。

メタンジホスホン酸(MDP)などは、公知の方法(例えば、J.Org.Chem.,66(11),3704−3708(2001)に記載の方法)に従い、下記に示すように誘導体化することにより本発明の有機ホスホン酸として使用することができる。

また、ヒドロキシビスホスホン酸であるアレンドロネート(Alendronate)などは、公知の方法(例えば、Heteroatom Chemistry,11(7),556−561(2000)に記載の方法)に従い、下記に示すように本発明の有機ホスホン酸として使用することができる。

上記有機ホスホン酸を母核MCに化学結合させる方法としては、例えば、アミド化、エステル化、イミド化などがある。
さらに、有機ホスホン酸としては、式IIで表される基がアミン窒素原子に結合した有機アミノホスホン酸誘導体、そのエステルまたは塩も使用できる。

(式中、tは1〜8の整数、XおよびYはそれぞれ独立に水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、ホスホン酸基および炭素数1〜8の炭化水素基から選ばれ、tが1よりも大きい場合、それぞれのXおよびYは同一でも異なっていてもよい。R20は、水素、シリル基、アルキル基、ベンジル基、ナトリウムおよびカリウムから選ばれる。)
有機ホスホン酸の他の具体例としては、式IIIで表されるホスホン酸誘導体、そのエステルまたは塩が挙げられる。

(式中、uおよびu’はそれぞれ独立に0から5の整数で、好ましくは0、1または2。R21、R22およびR23それぞれ独立に−(CH−(v=1〜5)。A、B、C、D、EおよびFはそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ピバロイル基、ベンジル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基および下記式IV−1〜3からなる群から選ばれ、A、B、C、D、EおよびFのいずれか1つが下記式IV−1の基である。)

(t、XおよびYは上記式IIと同じ。t’は2または3、X’およびY’はそれぞれ独立に水素、メチル基およびエチル基から選ばれ、それぞれのX’およびY’は同一でも異なっていてもよい。)
式IIIで表されるホスホン酸誘導体の具体例としては、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(ethylenediaminetetramethylenephosphonic acid(EDTMP))、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(diethylenetriaminepentamethylenephosphonic acid(DTPMP))、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリメチレンホスホン酸(hydroxyethylethylenediaminetrimethylenephosphonic acid(HEEDTMP))、ニトリロトリメチレンホスホン酸(nitrilotrimethylenephosphonic acid(NTMP))、トリス(2−アミノエチル)アミンヘキサメチレンホスホン酸(tris(2−aminoethyl)aminehexamethylenephosphonic acid(TTHMP))、1−カルボキシエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(1−carboxyethylenediaminetetramethylenephosphonic acid(CEDTMP))、(ビス(アミノエチルピペラジン)テトラメチレンホスホン酸(bis(aminoethylpiperazine)tetramethylenephosphonic acid(AEPTMP))、N−メチルエチレンジアミントリメチレンホスホン酸(N−methylethylenediaminetrimethylenephosphonic acid(MEDTMP))、N−イソプロピルエチレンジアミントリメチレンホスホン酸(N−isopropylethylenediaminetrimethylenephosphonic acid(IEDTMP))、N−ベンジルエチレンジアミントリメチレンホスホン酸(N−benzylethylenediaminetrimethylenephosphonic acid(BzEDTMP))などが挙げられる。
その他の使用可能な有機ホスホン酸としては、EDTMPやDTPMPなどに代表される多価リン酸誘導体が挙げられる。これらの化合物もビスホスホン酸と同様に骨などの石灰化組織への親和的作用を有し、治療剤として有望とされている。
ポリアスパラギン酸は、重合度4から12のものを好ましく用いることができる。また,ポリグルタミン酸としては,重合度4から12のものを好ましく用いることができる。
上記有機ホスホン酸,ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸を母核MCに化学結合させる方法としては、例えば、アミド化、エステル化、イミド化などがある。
(3)リガンド(LI)
本発明の化合物において、金属原子と結合し得るリガンド(LI)としては、例えば、金属原子または金属イオンと錯形成可能なものが挙げられる。ここでいうリガンド(LI)は、金属原子または金属イオンと安定な錯体を形成し得る化合物を意味する。
リガンド(LI)としては、代表的には、ポリデンテートあるいは多座配位子、すなわちリガンド1分子につき2つ以上の配位原子を含むものが挙げられる。ここで、配位原子とは、金属原子に結合できる遊離電子対を有する原子と定義づけられる。この分子は好適には2個以上の配位原子から構成される。配位原子は、窒素、酸素、硫黄、リン及び炭素から選ばれ、窒素および/または酸素および/または硫黄が好適配位原子である。
ポリデンテートまたは多座配位子としては、代表的には、鎖状もしくは環状のポリアミノポリカルボン酸または鎖状もしくは環状のポリアミノポリホスホン酸、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。ポリアミノポリカルボン酸の具体例としては、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(以下EDTAと略す)、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)またはそれらの誘導体が挙げられる。ポリアミノポリホスホン酸の具体例としてはEDTMPまたはその誘導体が挙げられる。
ポリアミノポリカルボン酸の誘導体としては、例えば、ポリアミノポリカルボン酸の1個または複数個のカルボキシル基をエステル化、ハロゲン化もしくは保護基付加またはカルボン酸以外の置換基を有する炭化水素基に置換した化合物、同じくポリアミノポリカルボン酸を構成する炭化水素部分にカルボン酸以外の置換基を有する炭化水素基または炭化水素を含まない置換基を導入した化合物、ポリアミノポリカルボン酸の炭素骨格部分にエーテル基などを導入した化合物が挙げられる。具体的にはヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸などが挙げられる。
これら以外にも、リガンド(LI)としては、シクラム(cyclam)、N{1−2,3−ジオレイロキシ)プロピル}−N,N,N,−トリエチルアンモニウム(DOTMA)、メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(MAG3)、エチレンシステインダイマー(ECD)、ヒドラジノニコチニル(HYNIC)、リジン−チロシン−システン(KYC)、システイン−グリシン−システイン(CYC)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)エチレンジアミン(DADS)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)−2,3ジアミンプロパン酸(CODADS)(欧州第0173424号公報及び米国特許第4673562号明細書)、N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミン(BATs)(欧州第0163119および0200211号公報)、チオセミカルバゾン、プロピレンアミンオキシム(PnAO)、その他のアミンオキシムリガンド(欧州特許第0123504および0194843号公報)、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれるものが例示される。
これら以外にも、リガンド(LI)としては、6−ヒドラジノニコチン酸またはジアミノジチオール、モノアミノモノアミドジチオール、ジアミドジチオール、トリアミドチオール等の硫黄と窒素を配位原子とする一群の多座配位子を錯体形成部位として用いることもできる。例えば、ジアミノジチオールとしてはN,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミンや2,2,9,9−テトラメチル−4,7−ジアザ−1,10−デカンチオール、モノアミドモノアミノジチオールとしてはN−2−メルカプトエチル−2−メルカプトエチルアミノアセタミドやN−(2−メルカプトエチル)アミノエチル−2−メルカプトアセタミド、ジアミドジチオールとしては1,2−エチレンビス(2−メルカプトアセタミド)、トリアミドチオールとしてはメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン等のキレート基が具体的に例示される。
さらに、多座配位子としては、その他の配位原子または不飽和結合をもつまたはもたない巨大環状及び開鎖四,五、六、七及び八配位窒素含有化合物がある。
これらのリガンド(LI)と母核MCとの結合は、金属を錯体化するためには重要でないリガンドの官能基と母核MCの官能基とを相互に化学結合させることによって行える。
また、リガンド(LI)は、二官能性配位子であってもよい。二官能性配位子は、分子内に、母核MCとの結合部位と金属との錯体形成部位とを併せ持つ化合物である。したがって、母核MCに存在する二官能性配位子との結合に利用可能な官能基を介して、その官能基数に応じた数の二官能性配位子を生理学的容認性物質に化学的に結合させることができる。
金属との錯体形成部位としては、個々の金属と安定な錯体を形成する多座配位子であれば種類は問わないが、通常、上述した環状もしくは鎖状のポリアミノポリカルボン酸または環状もしくは鎖状のポリアミノポリホスホン酸から選択することができ、例えば、EDTA、DTPA、DOTA、TETAもしくはそれらの誘導体またはEDTMPもしくはその誘導体、もしくはMAG3、シクラム、BAT、ECD、DADS及びPnAOもしくはそれらの誘導体などが用いられる。
母核MCとの結合部位を構成する二官能性配位子中の反応性結合基としては、通常のアミノ基、カルボキシル基、チオール基の他に活性ハロゲン、アルコキシエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、マレイミド、チオフタルイミド、イソチオシアネート、酸無水物などが具体的に例示される。
二官能性配位子の具体例としては、例えば、1−(p−イソチオシアネートベンジル)−DTPA[Martin WBら、Inorg.Chem.、25、2772〜2781頁(1986年)]、無水DTPA、2−(p−イソチオシアネートベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸[アメリカ特許第4678667号明細書]、スクシンイミジル−6−ヒドラジノニコチナート[Abrams,M.J.ら、J.Nucl.Med.、31、2022〜2028頁(1990年)]、DTPA−モノ(2−アミノエチルアミド)、DTPA−モノ(3−アミノプロピルアミド)、DTPA−モノ(6−アミノヘキシルアミド)[特許第2815615号]、1−(4−アミノベンジル)−EDTA、1−(4−イソチオシアノベンジル)−EDTA、1−[4−(3−マレイミドプロピル)アミドベンジル]−EDTA、1−[4−(5−マレイミドペンチル)アミドベンジル]−EDTAなどの、ポリアミノポリカルボン酸またはポリアミノポリホスホン酸を金属との錯体形成部位とする化合物が挙げられる。
母核MCと二官能性配位子との結合は、それ自体公知の方法によって行えばよい。たとえば、二官能性配位子の反応性結合基が酸無水物[Hnatowich DJら、Int.J.Appl.Rad.Isot.、33、327〜332頁(1982年)]、イソチオシアネート[Esteban JMら、J.Nucl.Med.、28、861〜870頁(1987年)]、アルコキシエステル[Washburn LCら、Nucl.Med.Biol.、18、313〜321頁(1991年)]あるいは活性ハロゲン[Fourie PJら、Eur.J.Nucl.Med.、4、445〜448頁(1979年)]である二官能性配位子と母核MCとの反応は引用した公知文献の記載に準じて行うことができる。
好ましいリガンド(LI)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、シクラム(cyclam)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、N{1−2,3−ジオレイロキシ)プロピル}−N,N,N,−トリエチルアンモニウム(DOTMA)、メルカプトアセチルグリシルグリシン(MAG3)、エチレンシステインダイマー(ECD)、ヒドラジノニコチニル(HYNIC)、リジン−チロシン−システン(KYC)、システイン−グリシン−システイン(CYC)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)エチレンジアミン(DADS)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)−2,3ジアミンプロパン酸(CO2DADS)、N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミン(BATs)、チオセミカルバゾン、プロピレンアミンオキシム(PnAO)、その他のアミンオキシムリガンドおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれる。
上記リガンド(LI)に対する金属原子の錯化は常法により行われる。錯化する金属原子は、その用途に応じて適宜選択でき、通常、標識物質として有用な金属原子が選択される。かかる金属原子としては、放射性、常磁性またはX線不透過性を備える金属原子またはそのイオンが挙げられる。
本発明の化合物は、リガンドLIの存在の有無にかかわらず、母核MCおよび石灰化組織親和性基ACの少なくとも一つに、金属原子、または、ハロゲン原子、炭素、酸素、窒素、硫黄もしくはリンの同位体を含むことができる。ハロゲン原子としては、フッ素、臭素、ヨウ素などが好ましく用いられる。これらのハロゲン原子の導入は、トシル基等の脱離基を導入した置換基を母核MCまたは石灰化組織親和性基ACに導入した後、ハロゲン原子とこの置換基とを置換することにより行える。また、式Sn(R)で示されるトリアルキルスズなどの金属アルキル基などの置換基を母核MCまたは石灰化組織親和性基ACに導入した後、ハロゲン原子とこの置換基とを置換することでも行える。当該金属アルキル基のアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが用いられる。好ましい金属アルキル基は、トリメチルスズまたはトリブチルスズである。
別法として、これらの同位体元素は、例えば、11−Cをヨウ化メチル(11CHI)として母核MCのグルコサミンのアミノ基と反応させる(−NH11CH)か、または、上記リガンド(LI)を構成するポリカルボン酸(DTPAなど)のカルボン酸とメチルアミン(11CHNH)とを反応させる(−CONH11CH)ことにより導入できる。また、ヨードグルコース誘導体を用いることによっても導入できる(特開平09−176179号公報、特開平09−176050号公報、特開平07−267980号公報参照)。
上述した錯体を構成する金属原子、または、母核MC、石灰化組織親和性基ACもしくはリガンドLIに含まれる金属原子もしくは同位体元素は、用途に応じて適宜選択される。
放射性診断剤の用途には、ガンマ線を放出し、投与後、基礎にある正常器官または組織を著しく損傷しないようなものが選択される。放射性核種は画像化可能のガンマ線をもつか、または、画像化可能のガンマ線を含む放射性核種を混ぜる(ドーピング)ことができるのが好適である。このドーピング放射性核種は、その化学的性質がベータ放出核種に十分近く、本発明の使用におけるその生体分布がベータエミッターのそれに近いか同じであるならば、同じ元素であっても、異なる元素であってもよい。
放射性治療剤の用途には、ベータ粒子を放出し、投与後、疾患部位を治療するが基礎にある正常器官または組織を著しく損傷しないようなものが選択される。これらの放射性核種は0.25−2.75Mevの平均βエネルギーをもち、画像化可能のガンマ線はもっていてもいなくてもよく、平均軟組織透過度は0.70ないし25.0mmで、0.05ないし700時間の半減期を有するとよい。
好ましい金属原子及び同位体元素としては、原子番号6〜9、15〜17、21〜29、31、35、37〜44、49、50、53、56〜70、72〜75、81、83および85の元素からなる群より選ばれる元素が挙げられる。また、同様に好ましい金属原子及び同位体元素としては、11−C、15−O、18−F、32−P、59−Fe、67−Cu、67−Ga、81−Rb、89−Sr、90−Y、99m−Tc、111−In、123−I、124−I、125−I、131−I、117m−Sn、153−Sm、186−Re、188−Re、201−Tl、211−At、212−Biおよび213−Biからなる群より選ばれる放射性核種が挙げられ、これらのうち、好ましくは、32−P、59−Fe、67−Cu、67−Ga、81−Rb、89−Sr、90−Y、99m−Tc、111−In、123−I、124−I、125−I、131−I、117m−Sn、153−Sm、186−Re、188−Re、201−Tlおよび212−Biからなる群より選ばれる放射性核種である。
また、核磁気共鳴(MRI)診断剤用に本発明の化合物を用いる場合、好ましい金属原子及び同位体元素としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)からなる群より選ばれる元素が挙げられる。
また、X線または超音波診断用に本発明の化合物を用いる場合、好ましい金属原子及び同位体元素としては、ビスマス、タングステン、タンタル、ハフニウム、ランタン、ランタニド、バリウム、モリブデン、ニオブ、ジルコニウムおよびストロンチウムからなる群より選ばれる元素が挙げられる。
(4)リンカー
上記石灰化組織親和性基ACおよびリガンドLIは、リンカーLを介して母核ACに連結させてもよい。かかるリンカーLとしては、ポリリシン、その他のペプチド、アルキル、ポリアクロレイン、式−(CH−R24−(CH−(式中、wは独立してそれぞれ0〜5、R24はO、S、NHCO、NHまたはCH=CH)で示されるアルキルエーテル、アルキルアミド、アルキルアミンおよびアルキルオレフィンの他、酵素免疫測定法などで用いられている二価性試薬が使用できる。
二価性試薬としては、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、エチレングリコール−O,O’−ビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スクシンイミド(GMBS)、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スルフォスクシンイミド ナトリウム塩(Sulfo−GMBS)、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スルフォスクシンイミド ナトリウム塩(Sulfo−EMCS)、N−(8−マレイミドカプリルオキシ)スルフォスクシンイミド ナトリウム塩(Sulfo−HMCS)、N−(11−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルフォスクシンイミド ナトリウム塩(Sulfo−KMUS)、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオナート)(DTSSP)、グルタールアルデヒドなどが挙げられる。
リンカーLと母核MCとの反応、及び、リンカーLと上記成分ACおよびリガンドLIとの反応は、それ自体公知の方法によって行うことができ、例えば、IgGまたはFabフラグメントのアミノ基にEGSまたはDTSSPを介してDTPA−モノ(2−アミノエチルアミド)またはDTPA−モノ(6−アミノヘキシルアミド)を結合させる反応は特許第2815615号の方法に従って行うことができ、ポリリシンを用いる場合には特許第2548711号、ポリアクロレインを用いる場合には特許第1729192号、母核MCとしてジアルデヒドデンプンやアミノオリゴ糖を用いる場合には特許第1721409号、特開平7−206895などに従って行うことができる。
(5)好ましい化合物
本発明の好ましい実施態様によれば、下記一般式V−1またはV−2で示される化合物が提供される。

(式中、RおよびR’はそれぞれ独立に石灰化組織親和性基ACまたは金属原子と結合し得るリガンドLIであり、少なくとも1つは石灰化組織親和性基ACである。x及びyはそれぞれ独立に0〜19。x+yは1〜19。)
上記一般式で示される化合物は、母核MCを構成するグルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群から選ばれた1種以上の単糖から構成されるアミノオリゴ糖のアミノ基に、石灰化組織親和性基ACとしてビスホスホネート化合物(BP)を反応させ、且つ、リガンドLIとしてポリアミノポリカルボン酸のカルボン酸基を反応させすることにより容易に得られる。この場合、アミノオリゴ糖の最終末端は還元されていても還元されていなくても良い。しかしながら、最終末端が還元されている場合は、アミノオリゴ糖の最終末端のアミノ基を選択的に保護基で修飾でき、その結果、還元オリゴ糖の最終末端のアミノ基に所望の化合物を化学結合できるので、好都合である。この反応を行う場合、還元アミノオリゴ糖は2〜50糖であることが好ましく、2〜20糖がさらに好ましく、2〜13糖が特に好ましい。
かくして、本発明の他の局面によれば、グルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群より選ばれた1種以上の単糖から構成される最終末端が還元された2〜50糖のアミノオリゴ糖を用い、カルバメイト化合物の生成反応を行うことにより、最終末端のアミノ基を選択的に修飾する方法が提供される。
また、本発明のさらに他の局面によれば、グルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群より選ばれた1種以上の単糖から構成される最終末端が還元された2〜13糖のアミノ糖と、二炭酸ジブチルとを反応させ、最終末端のアミノ基をブトキシカルボニル(Boc)基で選択的に修飾する方法が提供される。
なお、上記修飾方法において、式(AC)−MCで表される本発明の石灰化組織親和性化合物の中間体として用いると好都合である。
本発明の最も好ましい化合物は、下記の化学式で示される。


(6)剤型、キット、投与量
本発明の化合物は、塩、水和物、溶媒和物の形態であってもよい。塩としては医薬的に許容されるリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩などの無機塩基との塩、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、メグルミンなどの有機塩基との塩、リジン、オルニチン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩が例示される。好ましくはナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
また、本発明の化合物は、凝集体、水溶液剤、または、凍結乾燥された形態で用いることができる。例えば、凍結乾燥製剤に還元剤、安定化剤等を共存させることにより、放射性標識化合物調製用キット製剤の形態とすることもできる。本発明の化合物を含有する放射性標識化合物調製用キット製剤は、凍結乾燥製剤として提供されるのが好ましく、使用時には適当な希釈剤に溶解して、テクネチウムまたはレニウム金属塩などの放射性核種による標識を行って投与に用いられる。また、前記水溶液剤を用いて、製剤上の慣用手段あるいは非金属性の還元剤の存在下にテクネチウムまたはレニウム金属塩などの放射性遷移金属による標識を行って調製して投与に供することができる。
本発明の化合物の形態としては、母核MCまたは石灰化組織親和性基ACがハロゲン基、脱離基または金属アルキル基を含む置換基で置換された形態が好都合である。ハロゲン基にはフッ素、臭素、ヨウ素などが好ましく用いられ、金属アルキル基には式Sn(R)で示されるトリアルキルスズなどが挙げられ、アルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが用いられる。好ましくは、トリメチルスズまたはトリブチルスズが用いられる。置換基Xの放射性ハロゲン標識反応は、公知の方法により行われ、好ましくは置換反応または交換反応によって行われる。
放射性化合物調製用キットには酸化剤、安定化剤、緩衝剤、賦形剤、などの慣用的に用いられる添加剤が添加れていてもよい。例えば、酸化剤としてクロラミンTあるいは過酸化水素などを必要に応じて添加して標識反応に供される。この放射性ハロゲン標識は公知の方法によって行ってよく、温度、濃度、pHなどは特に限定されない。
放射性遷移金属標識を行うに際して、過99m−テクネチウム酸(99mTcO−)等の過酸イオンの化学的還元に使用される還元剤は、通常はスズ、亜鉛、鉄などの金属イオンまたは塩化クロム、酢酸クロムなどの金属化合物、例えば塩化スズ、フッ化スズ等が用いられるが、金属化合物に限らずジフェニルホスフィノベンゼン−3−スルホン酸ナトリウム、ホルムアミジンスルホン酸またはグルコヘプタン酸等の非金属性還元剤を用いることができる。ジチオン酸、亜硫酸水素ナトリウムも用いることが可能である。また、グルコン酸、アスコルビン酸、クエン酸などの有機酸、マンノースなどの糖など比較的不安定錯体を形成する化合物を用いることにより、本発明の化合物との錯体交換反応を行い放射性遷移金属を移行させて標識をすることができる。温度、濃度、pHなどの反応条件は、特に制限はなく、通常室温ないし加熱下に反応が行われ、還元剤はこれらの反応の反応条件に応じて適宜用いられる。
還元剤を含む本発明のキット製剤に、99mTcジェネレータから溶出した過テクネチウム酸塩を含む生理食塩水を加えると、還元剤によりテクネチウムは7価からより低い酸化数に還元され、DTPAと複合体を形成する。形成された複合体の正確な性質は判らないが、還元剤もこれらの複合体の一部を形成しうる。しかしながら、本発明の式(AC)−MC−(LI)で表される化合物はリガンドLIを備えているので、成分ACとの配位能の違いにより、成分ACが錯形成に関与しない複合体を与えることが可能となる。還元の完了および複合体の形成を確実にするため振とう、加熱あるいは静置した後、その液体は注射に用いることができる。
本発明の化合物は、生理的に許容しうる緩衝剤(例えば生理食塩水、酢酸、リン酸、炭酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のpH調整剤など)や他の生理的に許容しうる添加物(例えばアスコルビン酸、パラベン類などの安定化剤、メグルミン、ベタインなどの溶解剤、D−マンニトールなど賦形剤など)を含有していてもよい。
本発明の化合物は、従来の診断剤あるいは治療剤と同様にして使用でき、例えば液剤をヒトをはじめとする哺乳動物に対して注射により投与されて使用される。投与量は従来の診断剤あるいは治療剤と実質的に同様であり、診断剤は3〜25MBq/kg程度、好ましくは6〜12MBq/kg程度、あるいは治療剤は用いる放射性核種による。投与量は化合物の種類、使用する放射性核種の種類、患者の年齢、体重、症状、投与方法、他剤との併用等により適宜増減される。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、分析は当業者に周知の方法を使用して行った。実施例においてNMRスペクトルの測定はJNM−500(日本電子製)をMSスペクトルの測定にはQ−Tof型(マイクロマス製)を用いた。実施例において用いた略語は、以下のとおりである。WSCD:1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド、HOBt・HO:1−ヒドロキシトリアゾール一水和物、DTPA:ジエチレントリアミン五酢酸、HPLC:High Performance Liquid Chromatography、−OAc:アセチル基、Boc−:tert−ブトキシカルボニル基、Bn−:ベンジル基。また、記載中の「脱塩操作」は、下記条件で行った。
電気透析装置:MICROACILYZER G3(商品名、旭化成株式会社製)
透析膜:AC−110−400(商品名、旭化成株式会社製)
電極液:0.35mol/L硫酸ナトリウム水溶液
例1(キトビイトール及びキトトライトールでの選択的Boc化反応およびVI−1、VI−2、VII−1、VII−2の全合成)
(1)VI−1の合成
VI−1の合成スキームを下記に示す。


200mLナスコルにキトビイトール二塩酸塩4.16g(10.0mmol)を量り取り、水80mLに溶解して室温撹拌した。炭酸ナトリウム3.40g(32.0mmol)を懸濁させ、メタノール60mLを加えた。二炭酸ジブチル2.29g(10.5mmol)を加え、一晩撹拌(約16.5hrs)した。反応溶液に、Z−クロリド1.88g(11.0mmol)を添加し、一晩撹拌(約24hrs)を続けた。反応液の溶媒を留去して乾燥し無色残渣を得た。残渣をピリジン60mLに溶解し、室温撹拌下、無水酢酸22mLを加え、一晩室温撹拌(約23hrs)した。反応溶液にメタノール30mLを加え、減圧下溶媒を留去した。油状残渣を抽出(クロロホルム150mL×2/水200mL)して有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、残渣9.37gを得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Silicagel 60 250g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=6/4/1)に付し、「化合物4」6.06g(6.95mmol,収率69.5%)を得た。
100mLナスコルに化合物4 4.20g(4.82mmol)を量り取り、パラジウム−炭素(act.10%)421mg(10w/w%)、メタノール80mLを加えた。室温撹拌しながら水素ガス雰囲気下、接触還元を行った。反応終了後、グラスフィルターろ過し、メタノール洗浄後、ろ液の溶媒を留去して3.41gの残渣を得た。これに、公知の方法、例えばPage PCBらの方法(Page PCB,et al.,J.Org.Chem,66,3704−3708,2001)により得られた化合物3,3−ビス(ジベンジルオキシホスホリル)プロパン酸3.45g(5.80mmol)を加え、塩化メチレン50mLに溶解し、氷浴中撹拌下、WSCD929mg(5.80mmol)およびHOBt・HO789mg(5.84mmol)を加え、一晩撹拌(約19.5hrs)を続けた。反応液の溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Silicagel60 250g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=6/4/1)に付し、「化合物6」2.41g(1.83mmol,収率38.0%)を得た。
「化合物6」のH−nmrおよび13C−nmrによる解析は、炭素に以下の番号を付けた。

H−nmr(500MHz,CDCl,δ):1.4(9H,s,−C(CH),1.82(3H,s,−OAc),1.94(3H,s,−OAc),1.98(3H,s,−OAc),1.99(3H,s,−OAc),2.02(3H,s,−OAc),2.10(3H,s,−OAc),2.64〜2.84(1H,9’),3.30〜3.44(2H,8’),3.62〜3.70(1H,5’),3.88〜3.96(1H,1),3.88〜3.96(1H,4),5.22〜5.36(1H,5),3.88〜3.96(1H,2’),4.06〜4.20(1H,1),4.06〜4.20(1H,6),4.06〜4.20(2H,6’),4.26〜4.38(1H,2),4.46〜4.54(1H,6),4.88〜5.20(1H,3),4.88〜5.20(1H,4’),4.88〜5.20(8H,m,−OCH−φ),5.10〜5.16(1H,1’),5.22〜5.36(1H,3’),7.3(20H,m,−φ).
13C−nmr(500MHz,CDCl,δ):20.45(−COCH),20.54(−COCH),20.65(−COCH),20.70(−COCH),28.27(−COCH),31.68(br s,8’),32.13(t,J=Hz,9’),48.90,55.20,62.32,62.40,63.11,68.10,68.15,68.24,68.29,68.35,68.40,68.64,69.35,69.43,69.53,72.14,72.28,74.25,80.30,98.97(1’),127.97(−Aromatic),128.11(−Aromatic),128.26(−Aromatic),128.44(−Aromatic),135.95(d,J=Hz,−Aromatic),155.77,169.33,169.59,169.70,169.76,170.27,170.45,170.54,170.71,170.78.
50mLナスコルに化合物6 600mg(0.46mmol)を量り取り、メタノール20mLに溶解し、室温撹拌下、ナトリウムメトキシド126mg(2.33mmol)を加えた。反応終了後、反応液をAGTM−50W−X8(商品名、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社製)樹脂4.57gに通し、メタノールと水で洗い出しを行った後、溶媒を留去し、残渣460mg(化合物7として0.451mmol)を得た。残渣(化合物7)をメタノール7mLに溶解し、室温撹拌下、10%塩化水素−メタノールを4.0mL加えた。3時間後、溶媒を留去して残渣392mg(化合物8として0.427mmol)を得た。残渣392mg(化合物8として0.427mmol)を公知の方法、例えば高橋らの方法〔特開2002−187948公報〕によりDTPAを導入した。水7.6mLと8N水酸化ナトリウム2.41gに溶解し、80℃に加温した。その溶液に温度を一定に保ちながら無水DTPA1.61g(4.51mmol)を3分間で添加し、30分間撹拌加温を続けた。30℃に冷却してから8N水酸化ナトリウム0.71gを加えてpH9.0に調製し、再び80℃に加温し30分間撹拌加温した。その後、30℃に冷却して6N塩酸0.5mLを加えてpH8.0として反応を終了した。反応液の溶媒を留去し、水9.5mLを加えて溶解し、パラジウム−炭素(act.10%)831mg(200w/w%)を加え、室温撹拌しながら水素ガス雰囲気下、1.5時間接触還元を行った。反応終了後、グラスフィルターろ過し、ろ液の溶媒を留去して残渣を得た。この残渣をリサイクルHPLCにより分取精製し、脱塩処理後、溶媒を留去して「化合物10;VI−1」115mg(0.123mmol,収率27.0%)を得た。「化合物VI−1」のH−nmrおよび13C−nmrによる解析は、炭素に以下の番号を付けた。

H−nmr(500MHz,DO,TSP):2.30〜2.50(9’),2.60〜2.80(8’),3.1〜3.4(DTPA),3.39〜3.46(5’),3.46〜3.52(4’),3.52〜3.60(5),3.60〜3.69(1),3.61〜3.69(3’),3.70〜3.75(2’),3.70〜3.75(6),3.70〜3.83(1),3.75〜3.82(4),3.75〜3.82(6’),3.83〜3.87(6),3.87〜3.92(3),3.87〜3.93(6’),4.35〜4.40(2),4.62〜4.68(1’),8.4(7 or 7’),8.7(7’ or 7).
13C−nmr(500MHz,DO,TSP):33.49(8’),36.41(t,J=136Hz;9’),51.16,51.74,52.00,53.12,55.85,56.67,57.90,58.16,58.43,60.74,61.22,62.29,68.13,69.30,71.30,73.85,75.86,79.01,101.14(1’),172.02,173.92,174.31,175.93,175.98,176.02,176.07,176.85.
MS(ESI−):932.2427 C295225 requires 932.2477([M−H]).
(2)VI−2の合成
VI−2の合成スキームを下記に示す。

キトビイトール二塩酸塩15.0g(36.1mmol)を量り取り,水280mLに溶解して炭酸ナトリウム12.3g(116mmol)を懸濁させ,メタノール210mLを加え室温撹拌した。二炭酸ジブチル8.71mL(38.0mmol)を加え,室温にて一晩攪拌した。Z−クロリド5.7mL(40.0mmol)を加え、さらに室温で一晩攪拌した。反応液につき溶媒を留去したのち、残渣にピリジン217mLを加え、氷浴下で無水酢酸79.4mL(842mmol)と触媒量の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンを加えて一晩攪拌した。反応溶液に氷浴下でメタノール108mLを加えて攪拌したのち、溶媒を留去した。残渣を抽出(クロロホルム/飽和硫酸水素カリウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液)し、有機層を水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して溶媒を留去した。得られた粗精製物をカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製),酢酸エチル/ヘキサン/メタノール=4/6/1)に付し、溶媒を留去して「化合物4」18.3g(21.0mmol,収率58.3%)を得た。
化合物4 4.35g(5.0mmol)量り取り、メタノール50mLに溶解し、ナトリウムメトキシド1.35g(25.0mmol)を加え、2時間室温撹拌した。洗浄したAGTM50W−X8樹脂(商品名、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)50.0gを加えて引き続き30分間撹拌してろ過し、ろ液の溶媒を留去した。メタノール21mLに再溶解し、10%塩酸−メタノール溶液(東京化成工業株式会社製)12mLを加え、3時間室温撹拌した後、溶媒を留去して残渣を得た。この残渣に3,3−ビス(ジベンジルオキシホスホリル)プロパン酸3.57g(6.00mmol)を加え、ジメチルホルムアミド50mLを加えて撹拌した。アルゴン雰囲気の氷浴下、WSCD1.10mL(6.26mmol)、HOBt・HO811mg(6.00mmol)を順次加え、一晩撹拌した。溶媒を留去してピリジン30mLを加え、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンを触媒量添加し、無水酢酸12.0mL(127mmol)を加えた。一晩撹拌後メタノール15mLを加え、抽出(クロロホルム/飽和硫酸水素カリウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液)した。有機層を水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒留去して残渣(約7.7g)を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)約200g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=4/6/1)に付し、粗精製物フラクション1,2および3を得た。フラクション1および2はプレパラティブ−TLC(メルク社製Cat.No.105717,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=5/5/1)に付し、「化合物8」741.6mg(フラクション1から490.9mg,フラクション2から250.7mg)を得た。フラクション3は再びカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(関東化学株式会社製)約100g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=10/5/1)に付し、「化合物8」1.17g(0.498mmol,収率14.6%)を得た。本反応から「化合物8」を総収量1.91g(1.42mmol,収率28.4%)で得た。
化合物8 1.10g(0.816mmol)をメタノール10mLに溶解し、アルゴン雰囲気下ナトリウムメトキシド309mg(5.71mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。AGTM50W−X8(商品名、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)の樹脂9.0gを加え30分間撹拌を続けた。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を留去して551mgの残渣を得た。残渣をメタノール15mLと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5mLを加え、パラジウム−炭素(act.10%)400mgを加えて水素雰囲気下で攪拌し、2時間接触還元を行った。反応終了後、ろ過してろ液の溶媒を留去した。この残渣に水5mLと8mol/L水酸化ナトリウム水溶液4.17mLを加えて撹拌した。80℃に加熱し、無水DTPA2.97g(8.20mmol)を加え30分間撹拌を続けた。室温に戻し、8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調製し、再び80℃で30分間加温した。室温に戻してpH8に調整して濃縮した。この濃縮液をリサイクルHPLC(カラム:Shodex Asahipak GS320−21G(商品名、昭和電工株式会社製、21.5mmID×500mm)及びShodex Asahipak GS220−21G(商品名、昭和電工株式会社製、21.5mmID×500mm)を直列で連結、移動相:100mmol/L塩化ナトリウム水溶液、流速:5.0mL/min、検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:210nm))にて分取精製を行いた。分取液につき脱塩操作を行い、溶媒を留去して「化合物IV−2」239.9mg(0.257mmol,収率31.5%)を単離した。
「化合物VI−2」のH−nmrおよび13C−nmrによる解析は、炭素に以下の番号を付けた。

H−nmr(500Hz,DO,TSP):3.80(1H,m,1),3.65(1H,m,1),4.30(1H,m,2),3.89(1H,m,3),3.82(1H,m,4),3.83(1H,m,5),3.71(1H,m,6),3.53(1H,m,6),4.66(1H,d,J=8.2Hz,1’),3.79(1H,m,2’),3.71(1H,m,3’),3.51(1H,m,4’),3.48(1H,m,5’),3.92(1H,m,6’),3.81(1H,m,6’),2.72(dd,H−P=15.1Hz,J=6.9Hz,−COCCH−),2.39(dd,H−P=21.1Hz,J=6.9Hz,−COCH−),3.65(2H,m),3.62(2H,s),3.39(2H,s),3.62(2H,s),3.29(2H,s),3.22(2H,m),3.08(2H,m).
13C−nmr(500MHz,DO,TSP):61.30(1),53.67(2),68.57(3),78.47(4),71.42(5),62.33(6),101.28(1’),56.00(2’),73.56(3’),69.98(4’),75.86(5’),60.77(6’),176.01(t,C−P=8.6Hz),33.70,36.78(t,C−P=155.2Hz),173.66,177.86,174.12,174.66,58.65,58.73,56.00,58.10,52.35,51.51,51.12.
31P−nmr(500MHz,DO):19.43,19.38.
MS(ESI−):1066.1454 C294825Na requires 1466.1500[[M・Na+Na]
(3)VII−1の合成
VII−1の合成スキームを下記に示す。

200mLナスコルにキトトライトール三塩酸塩3.08g(5.02mmol)を量りとり、炭酸ナトリウム2.24g(21.10mmol)を加え、メタノール50mLと水36mLを加えて撹拌した。二炭酸ジブチル1.4mL(6.09mmol)を添加し、14時間撹拌後、反応混合液の溶媒を留去した。残渣にメタノール58mLを加えて撹拌し、p−メトキシベンズアルデヒド1.45mL(11.92mmol)を添加し、24時間撹拌した。反応混合液の溶媒を留去し、残渣にピリジン43mLを加えて水浴下撹拌し、無水酢酸11.3mL(11.98mmol)を添加し、17時間撹拌した。氷浴中、メタノール21mLを加えて、さらに15分間撹拌を続けた。反応混合液の溶媒を留去し、抽出(クロロホルム150mL/水100mL×2)を行って有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣にジメチルホルムアミド20mLを添加して溶解後、溶媒を留去して残渣(約7.2g)を得た。残渣に酢酸エチル25mLを加え室温撹拌下、1mol/L塩酸25mLを添加し、1時間撹拌を続けた。反応液を酢酸エチル(25mL×4)で洗浄し、塩基性水溶液(5%酢酸ナトリウム水溶液15mL+飽和炭酸ナトリウム水溶液35mL)を加えて液性をpH8とし、抽出(クロロホルム50mL×2)した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム100mLで洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して「化合物5」3.09g(3.14mmol,収率62.7%,微黄色結晶)を得た。
化合物5 3.09g(3.14mmol)に3,3−ビス(ジベンジルホスホリル)プロパン酸5.62g(9.45mmol)およびHOBt・HO853mg(6.31mmol)を加え、ジメチルホルムアミド70mLに溶解した。氷浴撹拌下、WSCD1.65mL(9.39mmol)を加え、17時間撹拌した。反応混合液の溶媒を留去し、抽出(クロロホルム150mL/飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mL,水100mL+飽和塩化ナトリウム水溶液20mL×3,飽和塩化ナトリウム水溶液100mL)して有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去して残渣(約7.4g,微黄色結晶)を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)250g,クロロホルム/メタノール=20/1)に付し、フラクション2−3(約600〜900mL;300mL)およびフラクション4−6(約900〜1200mL;300mL)から粗精製物(Fr2−3;1.30(黄色油状物),Fr4−6;842mg(微黄色結晶))を得た。フラクション2−3の粗精製物は、カラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)100g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=12/8/1)にて移動相1000mLで高極性不純物を溶出したあと、クロロホルム/メタノール=10/1にて目的物を溶出し、「化合物6」831mg(微黄色結晶)を得た。一方、フラクション4−6の粗精製物は、カラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)100g,酢酸エチル/クロロホルム/メタノール=10/5/1)にてフラクション11−13(ca.280〜340mL)から「化合物6」286mg(微黄色結晶)を得た。本反応から「化合物6」を総収量1.12g(0.523mmol,収率16.6%)で得た。
「化合物6」のH−nmrによる解析は、炭素に以下の番号を付けた。

H−nmr(500MHz,CDCl,δ):4.42(1H,m,1),3.92(1H,m,1),4.32(1H,m,2),5.05(1H,m,3),3.94(1H,m,4),5.29(1H,m,5),4.49(1H,dd,J=12,2Hz,6),4.12(1H,dd,J=12,6Hz,6),4.92(1H,d,J=10Hz,2−NH),4.81(1H,br.d,H=7Hz,1’),3.94(1H,m,2’),5.09(1H,t,J=10Hz,3’),3.63(1H,t,J=10Hz,4’),3.46(1H,m,5’),4.31(1H,m,6’),4.25(1H,m,6’),4.53(1H,d,J=8Hz,1”),3.88(1H,m,2”),5.16(1H,t,J=10Hz,3”),5.02(1H,m,4”),3.60(1H,m,5”),4.36(1H,dd,J=13,4Hz,6”),3.99(1H,dd,J=13,2Hz,6”),6.57(1H,d,J=9Hz,2”−NH),2.08(3H,s,6’−Ac),2.05(3H,s,6”−Ac),2.03(3H,s,1−Ac),1.982(3H,s,4”−Ac),1.977(3H,s,6−Ac),1.96(3H,s,3−Ac),1.95(3H,s,5’−Ac),1.85(3H,s,3’−Ac),1.81(3H,s,3”−Ac),1.41(9H,s,−C(CH),2.68〜2.89((2H,m,−COCHCH−),3.28〜3.46(1H,m,−COCHCH−),7.24〜7.32(20H,−CH−Ar),4.92〜5.05(8H,−CH−Ar)
13C−nmr(500MHz,CDCl,δ):63.18,49.02,69.44,74.01,69.29,62.30,99.14,54.86,72.52,75.95,72.80,62.10,100.95,54.86,72.25,67.89,71.79,61.51,171.31(6’−Ac),170.90(3”−Ac),170.66(3’−Ac),170.49(1−Ac,6”−Ac),170.46(3−Ac,5−Ac),169.53(6−Ac),169.24(4”−Ac),20.38〜20.68(−CH),155.51,80.01,28.23,169.44〜169.64,31.69(m),31.49(m),32.08(t,JCP=135Hz),31.98(t,JCP=134Hz),135.80〜136.05(−CH−Ar),127.80〜128.05(−CH−Ar),68.05〜68.35(−CH−Ar)
31P−nmr(500MHz,CDCl):24.54(d,JPP=3Hz),24.19(d,JPP=4Hz),24.15(d,JPP=3Hz),24.11(d,JPP=4Hz).
100mLナスコル中で化合物6 650mg(3.28mmol)をメタノール20mLに溶解し、アルゴン雰囲気下ナトリウムメトキシド138mg(2.65mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。AGTM50W−X8(商品名、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)樹脂4.0gと水20mLを加え15分間撹拌を続けた。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を留去して551mgの残渣を得た。残渣をメタノール10mLに溶解し、10%塩酸−メタノール溶液(東京化成工業株式会社製)5mLを加えて3時間室温撹拌した。反応液の溶媒を留去し、残渣481mgを得た。この残渣に水4.43mLと8mol/L水酸化ナトリウム水溶液1.63mLを加えて撹拌した。80℃に加熱し、無水DTPA1.11g(3.11mmol)を加え30分間撹拌を続けた。室温に戻し、8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調製し、再び80℃で30分間加温した。室温に戻してpH8に調整した。反応液をクロロホルムで洗浄して不溶成分を除去し、水相に触媒量のパラジウム−炭素(act.10%)を加えて水素雰囲気下で攪拌し、3時間接触還元を行った。反応終了後、ろ過してろ液を濃縮した。この濃縮液をリサイクルHPLC(カラム:Shodex Asahipak GS320−21G(商品名、昭和電工株式会社製、21.5mmID×500mm)及びShodex Asahipak GS220−21G(商品名、昭和電工株式会社製、21.5mmID×500mm)を直列で連結、移動相:100mmol/L塩化ナトリウム水溶液、流速:5.0mL/min、検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:210nm))にて分取精製を行い、分取液につき脱塩操作を行い、溶媒を留去して「化合物VII−1」119mg(0.09mmol,収率29.7%)を単離した。
「化合物VII−1」のH−nmrによる解析は、炭素に以下の番号を付けた。

H−nmr(500Hz,DO,TSP):3.81(1H,m,1),3.68(1H,m,1),4.38(1H,m,2),3.91(1H,m,3),3.70(1H,m.4),3.88(1H,m,5),3.79(1H,m,6),3.57(1H,m,6),4.64(1H,d,J=8Hz,1’),3.82(1H,m,2’),3.76(1H,m,3’),3.71(1H,m,4’),3.54(1H,m,5’),3.91(1H,m,6’),3.72(1H,m,6’),4.69(1H,d,J=8Hz,1”),3.73(1H,m,2”),3.67(1H,m,3”),3.47(1H,m,4”),3.51(1H,m,5”),3.92(1H,m,6”),3.75(1H,m,6”),4.00(2H,s,−NHCOCH−),3.75(2H,s,−NCHCOH),3.62(2H,s,−NCHCOH),3.89(4H,s,−NCHCOH×2),3.39(2H,m,−NCHCHN−),3.23(2H,m,−NCHCHN−),3.32(2H,m,−NCHCHN−),3.56(2H,m,−NCHCHN−),2.77(2H,m,−COCHCH−),2.57(1H,m,−CHCH−).
13C−nmr(500Hz,DO,TSP):61.09,53.38,68.22,78.82,71.30,62.29,101.07,56.04,72.53,78.33,74.66,60.29,100.95,56.65,73.91,69.58,76.20,60.84,168.60,172.80,174.30,170.65,57.49,55.26,57.63,52.53,51.06,50.00,52.25,175.19〜175.31(m),33.28,33.12,36.18(t,JCP=189Hz),35.67(t,JCP=120Hz).
31P−nmr(500Hz,DO):19.60,19.39,19.31,18.85.
(4)VII−2の合成
VII−2の合成スキームを下記に示す。

300mLナスコルにキトトライトール三塩酸塩10.0g(16.3mmol)を量り取り、水160mLに溶解して室温撹拌した。炭酸ナトリウム16.4g(155mmol)を懸濁させ,メタノール80mLを加えた。二炭酸ジブチル5.34g(24.5mmol)を加え、室温にて41時間攪拌した。Z−クロリド13.1g(81.6mmol)を加え、さらに室温で約24.5時間攪拌した。反応液につき溶媒を留去したのち、残渣をピリジン100mLに懸濁した。これに氷浴下で無水酢酸40.0g(392mmol)と触媒量の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン50mgを加え、反応液を室温に戻して21時間攪拌した。反応溶液に氷浴下でメタノール10mLを加えてさらに10分間攪拌したのち、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mL中に少量ずつ注ぎ入れ、抽出(クロロホルム200mL×3)した。有機層を飽和食塩水50mLで洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して溶媒を留去した。得られた粗精製物23.4gをカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)250g,酢酸エチル/ヘキサン/メタノール=8/12/1→8/12/2)に付し、「化合物4」15.2g(12.2mmol,収率74.5%)を得た。
100mLナスコルに化合物4 4.26g(3.41mmol)量り取り,メタノール50mLに溶解し,ナトリウムメトキシド56.6mg(1.05mmol)を加え、2時間室温撹拌した。洗浄したAGTM50W−X8樹脂(日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)5.0gを加えて引き続き20分間撹拌した後フィルターろ過し、ろ液の溶媒を留去した。メタノール80mLに再溶解し、アルゴン雰囲気下,10%塩酸−メタノール溶液(東京化成工業株式会社製)20.0mLを加え,1時間室温撹拌した後、溶媒を留去して3.09gの残渣を得た。100mLナスコルに3,3−ビス(ジベンジルオキシホスホリル)プロパン酸2.56g(4.31mmol)を量り取り,ジメチルホルムアミド30mLに溶解した先ほどの残渣3.09gを加え撹拌した。室温下,WSCD0.75mL(5.47mmol)、HOBt・HO555mg(4.10mmol)を順次加え,アルゴン雰囲気下で69時間室温撹拌した。溶媒を留去してピリジン30mLを加え、氷浴撹拌下、無水酢酸8.0mL(84.8mmol)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンを触媒量添加した。140時間後メタノール10mLを加え、15分後、クロロホルム抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒留去し残渣(約6.9g)を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィー(Silicagel N60(商品名、関東化学株式会社製)200g,ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=12/8/1→6/4/1→5/5/1)に付し、「化合物8」859mg(0.498mmol,収率14.6%)を得た。
化合物8 859mg(0.498mmol)をメタノール20mLに溶解し、アルゴン雰囲気下でパラジウム−炭素(act.10%)107mgを添加した水素雰囲気下で攪拌し、約4時間接触還元を行った。反応終了後、ろ過し、ろ液の溶媒を留去した。残渣に炭酸ナトリウム790mgを加え、水50mLを加えて溶解した。この溶液を室温で22.5時間攪拌し、1mol/L塩酸にてpH7に調整し、溶媒を留去し、残渣を得た。
残渣に、窒素雰囲気下、8mol/L水酸化ナトリウム5.66mLおよび水5.00mLを加えて撹拌し、80℃に加温した。ここに、無水DTPA3.75g(10.5mmol)を加え、30分間反応させた。その後、反応溶液を室温に戻し、8mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えてpH9とし、再び80℃に加温して30分間攪拌した。その後、反応溶液を室温に戻し、濃塩酸を滴下してpH1.8とし、一晩静置した。析出物をろ別し、得られたろ液に水酸化ナトリウムを添加してpH8.2に調整し、下記条件にてHPLCにより分取精製を行った。
カラム:POROS 50HQ(製品名、PEバイオメディカルシステムズ製、30mmID×240mm)
流速:70mL/min
検出:紫外可視吸光光度計(吸光度:210nm)
溶出条件:150→250mmol/L NaCl/60min(グラジエント溶出)
分取液につき脱塩操作を行い、溶媒を留去して「化合物VII−2」を161mg(0.11mmol,収率22.0%)で単離した。
H−nmr(500MHz,DO,TSP):2.62(1H,m,−CHCH−),2.83(2H,m,−COCHCH−),3.52−3.97(54H,m),4.33(1H,m),4.72(2H,m).
13C−nmr(500MHz,DO,TSP):33.39,36.28(t),50.59(m),50.83(m),52.03(m),25.16(m),52.59(m),52.79(m),53.40,55.67,56.05,56.68,57.72,57.97,58.08,58.38,60.33,60.92,61.30,62.21,68.58,70.15,71.39,72.34,73.57,74.69,76.16,78.55,79.15,100.90,170.90,171.06,171.32,171.48,174.78,174.95,175.09,175.15,175.22.
31P−nmr(500MHz,DO):19.13,19.21.
MS(ESI−):1467.4328 C498338 requires 1467.4314.
例2(VI−1の標識)
(1)111−インジウム標識
合成品VI−1を1.5μmol/0.5mLとなるように酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.4)を加えてキットを調製し、塩化インジウム(111InCl)を0.5mL加えて室温に放置して標識反応を行った。10%酢酸アンモニウム/メタノールを展開溶媒にしてシリカゲルTLCにより分析した。その結果、111InClは認められず、VI−1が111Inにより標識されたことを確認した。
(2)99m−テクネチウム標識
合成品VI−1を、塩化第一スズ水溶液と混合した。混液に17〜20mCiの過テクネチウム酸塩を含有する生理食塩水を加えて室温に放置して標識反応を行った。
例3(体内分布試験)
非絶食下のSDラット(雌性、8−9週齢、n≧3)を用いて、ラボナール麻酔下、試料を尾静脈投与した。投与後各時間点で腹部大動脈から採血して脱血死させ、臓器摘出を行い、放射能カウントおよび臓器重量を測定し、分布を算出した。測定結果は、%ID/g、尿については%IDで示した。


以上に示したごとく、尿中排泄は速やかに行われ、また、血液クリアランスも速やかであった。石灰化組織親和性に関しても、その集積性の高さを示した。また、比較のため記載した市販の組成物MDP注とは著しく対照的に、上記例において、本発明の組成物には何の精製も最適化も行っていない点を考慮すれば、最適化された本発明の組成物は、さらに劇的な優位性を示すことは明らかであろう。
例4(キトトライトールでの選択的Boc化反応)
下記反応式のようにして、キトトライトールの選択的Boc化反応を行い、誘導した。

キトトライトール三塩酸塩(3.06g,5.00mmol)をメタノール20mLと水40mLに溶解し、炭酸ナトリウム2.23g(21.1mmol)と二炭酸ジブチル1.31g(6.00mmol)を加えた。この反応混合物を室温にて22時間攪拌し、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をメタノール50mLに溶解し、p−アニスアルデヒド1.63g(12.0mmol)を加え、室温にて24時間攪拌した。次いで反応液を減圧下濃縮して、得たれた残渣をヘキサンで洗浄した後、室温にて一晩減圧下乾燥した。この残渣をピリジン30mLに懸濁し、氷浴下無水酢酸12.3g(120mmol)を滴下した。反応液を室温に戻して17.5時間攪拌後、氷浴下でメタノール10mLを加えてさらに40分間攪拌したのち、これを氷水(約800mL)中に攪拌しながら注いだ。析出した沈殿物を濾取して、室温にて一晩減圧下乾燥し、目的物5.34g(収率87.7%,白色粉末)を得た。
H−nmr(270MHz,CDCl,δ):1.40(s,9H),1.85(s,3H),1.91(s,3H),1.92(s,3H),1.99(s,3H),2.01(s,3H),2.03(s,3H),2.05(s,3H),2.10(s,3H),2.11(s,3H),3.28(q,J=8.6Hz,2H),3.51(br d,1H),3.84(s,3H),3.85(s,3H),3.88−3.78(m,1H),4.12−3.96(m,4H),4.60−4.21(m,6H),4.82−4.71(m,3H),4.98(d,J=9.2Hz,1H),5.06(t,J=9.6Hz,2H),5.20(t,J=9.6Hz,1H),5.30(t,J=9.6Hz,1H),6.91(d,J=8.6Hz,2H),6.93(d,J=8.6Hz,2H),7.64(d,J=8.6Hz,2H),7.67(d,J=8.6Hz,2H),8.07(s,1H),8.09(s,1H).
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、石灰化組織親和性基ACを、分子サイズの制御された母核MCに結合させた化合物が提供される。この化合物は、優れた石灰化組織への親和性を示し、石灰化組織に集積しなかった化合物が高い尿中排泄性を示す。更に、リガンドLIを母核MCに結合させ、錯体形成などによる標識機能をリガンドLIに分担させ、石灰化組織親和性基ACが錯化合物を形成しにくくすることにより、血液および/または軟組織からのクリアランス及び尿中への排泄を更に促進できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(AC)−MC−(LI)で表される石灰化組織親和性化合物。
なお、上式中、
MCは母核にして、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基、ホスホニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲンおよびシアノ基からなる群より選ばれる官能基を複数有してなる化合物の残基。ACは石灰化組織親和性基。
LIは金属原子と結合し得るリガンド。
aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数。
【請求項2】
前記母核MCは、単糖、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる化合物の残基である、請求項1に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項3】
前記ACが、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸および有機ホスホン酸よりなる群より選ばれる石灰化組織親和性基である請求項1または2に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項4】
前記母核MCは、オリゴ糖、アミノオリゴ糖、シクロデキストリンおよび糖デンドリマーからなる群より選ばれる化合物の残基であり、母核MCを構成する単糖のいずれか一つに石灰化組織親和性基ACが結合され、当該単糖とは別の単糖に金属原子と結合し得るリガンドLIが結合されている、請求項1に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項5】
母核MCに対して、石灰化組織親和性基AC又は金属原子と結合し得るリガンドLIが複数結合されている請求項4に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項6】
母核MC、石灰化組織親和性基ACおよびリガンドLIの少なくとも一つが、金属原子を含むものであるか、またはハロゲン原子、炭素、酸素、窒素、硫黄もしくはリンの同位体を含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項7】
金属原子と錯体を形成している請求項1〜6のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項8】
前記母核MCは、直鎖または分岐した2から20糖のオリゴ糖の残基であり、その構成単糖はグルコース、マンノースおよびガラクトースからなる群より選ばれたものからなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項9】
前記母核MCは、直鎖または分岐した2から20糖のアミノオリゴ糖の残基であり、その構成単糖はグルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群より選ばれたものからなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項10】
前記母核MCを構成するアミノオリゴ糖の一部が還元されている請求項9に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項11】
前記母核MCを構成するアミノオリゴ糖の一部がN−アセチル化されている請求項9に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項12】
前記オリゴ糖またはアミノオリゴ糖は、構成単糖がαまたはβ結合している請求項8〜11のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項13】
前記オリゴ糖またはアミノオリゴ糖は、構成単糖が1−3、1−4または1−6結合している請求項8〜11のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項14】
前記母核MCは、α−、β−およびγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれるシクロデキストリンの残基からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項15】
前記シクロデキストリンは、構成単糖の2位と3位が還元されたジアルデヒド化糖である請求項14に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項16】
前記母核MCは、糖デンドリマーの残基からなり、該糖デンドリマーが、ポリカルボン酸またはアルキルポリカルボン酸からなるコアに、直鎖または分岐した糖が結合されたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項17】
前記母核MCは、糖デンドリマーの残基からなり、該糖デンドリマーが、ポリアミンまたはアルキルポリアミンからなるコアに、直鎖または分岐した糖が結合されたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項18】
石灰化組織親和性基ACを構成する有機ホスホン酸が、下記式Iに示すジホスホン酸もしくはその誘導体またはこれらの塩の残基からなる請求項1〜17のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。

(式中、
およびRは同一でも異なっていてもよく、式−(CR−R−(CR−R−R10−(CR1112−R13−(CR141516(式中、R、R、R、R、R11、R12、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NR17およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、R17はそれぞれ独立にHまたは−(CHCHであり、R、R10およびR13は、それぞれ独立に、硫黄、酸素、アミド、イミド、3〜12個の原子から構成される二価の複素環および環式炭化水素(Ar−(R18−R19)からなる群より選ばれる基であり、R18は−CR17であり、R19は、それぞれ独立に、H、−OH、−COOH、−C(NH)=NH、−CN、−SOH、−NH、−NHMe、−NMeおよびハロゲン原子からなる群より選ばれる基であり、k、l、m、n、o、pおよびqはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、rは0〜3、sは0〜12、k、l、m、n、o、pおよびqの合計は0〜12である)で表され、
はH、−OH、−NH、−NHMe、−NMe、−CNおよび低級アルキル基(1個または2個以上の極性基により置換されていてもよい)から選ばれる基であり、
はH、−OH、−NH、−NHMe、−NMe、−CN、−SOH、ハロゲンおよび低級アルキル基(1個または2個以上の極性基により置換されていてもよい)から選ばれる基であり、jは0または1である(ただしjが0である場合RはHでなく、jが1である場合RおよびRが双方ともHであることはできない。)。
【請求項19】
石灰化組織親和性基ACを構成する有機ホスホン酸が、式IIで表される基がアミン窒素原子に結合した有機アミノホスホン酸誘導体、そのエステルまたは塩からなる請求項1〜17のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。

(式中、tは1〜8の整数、XおよびYはそれぞれ独立に水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、ホスホン酸基および炭素数1〜8の炭化水素基から選ばれ、tが1よりも大きい場合、それぞれのXおよびYは同一でも異なっていてもよい。R20は、水素、シリル基、アルキル基、ベンジル基、ナトリウムおよびカリウムから選ばれる。)
【請求項20】
石灰化組織親和性基ACを構成する有機ホスホン酸が、式IIIで表されるホスホン酸誘導体、そのエステルまたは塩からなる請求項1〜17のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。

(式中、uおよびu’はそれぞれ独立に0から5の整数で、好ましくは0、1または2。R21、R22およびR23それぞれ独立に−(CH−(v=1〜5)。A、B、C、D、EおよびFはそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ピバロイル基、ベンジル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基および下記式IV−1〜3からなる群から選ばれ、A、B、C、D、EおよびFのいずれか1つが下記式IV−1の基である。)

(t、XおよびYは上記式IIと同じ。t’は2または3、X’およびY’はそれぞれ独立に水素、メチル基およびエチル基から選ばれ、それぞれのX’およびY’は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項21】
金属原子と結合し得るリガンド(LI)が、酸素,硫黄、燐、窒素または炭素より選ばれる原子を配位原子として有したものである請求項1から20のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項22】
金属原子と結合し得るリガンド(LI)が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、シクラム(cyclam)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、N{1−2,3−ジオレイロキシ}プロピル}−N,N,N,−トリエチルアンモニウム(DOTMA)、メルカプトアセチルグリシルグリシン(MAG3)、エチレンシステインダイマー(ECD)、ヒドラジノニコチニル(HYNIC)、リジン−チロシン−システン(KYC)、システイン−グリシン−システイン(CYC)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)エチレンジアミン(DADS)、N,N’−ビス(メルカプトアセタミド)−2,3ジアミンプロパン酸(CO2DADS)、N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミン(BATs)、チオセミカルバゾン、プロピレンアミンオキシム(PnAO)、その他のアミンオキシムリガンドおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれる請求項1〜20のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項23】
ACまたはLIは、これらと母核MCとの間を連結するリンカーLを備えている請求項1〜21のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項24】
前記リンカーLは、ペプチド、アルキル、式−(CH−R24−(CH−(式中、wは独立してそれぞれ0〜5、R24はO、S、NHCO、NHまたはCH=CH)で示されるアルキルエーテル、アルキルアミド、アルキルアミンおよびアルキルオレフィンからなる群より選ばれる請求項22に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項25】
下記式V−1またはV−2で表わされる請求項1に記載の石灰化組織親和性化合物。

(式中、RおよびR’はそれぞれ独立に石灰化組織親和性基ACまたは金属原子と結合し得るリガンドLIであり、少なくとも1つは石灰化組織親和性基ACである。x及びyはそれぞれ独立に0〜19。x+yは1〜19。)
【請求項26】
下記式VI−1で示される、石灰化組織親和性化合物。

【請求項27】
下記式VI−2で示される、石灰化組織親和性化合物。

【請求項28】
下記式VII−1で示される、石灰化組織親和性化合物。

【請求項29】
下記式VII−2で示される、石灰化組織親和性化合物。

【請求項30】
金属原子と錯体を形成している、請求項25〜29のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項31】
錯体を構成する金属原子、または、母核MC、石灰化組織親和性基ACもしくはリガンドLIに含まれる金属原子もしくは同位体元素が、原子番号6〜9、15〜17、21〜29、31、35、37〜44、49、50、53、56〜70、72〜75、81、83および85の元素からなる群より選ばれる元素である請求項1〜30のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項32】
前記金属原子が放射性、常磁性またはX線不透過性である請求項31記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項33】
金属原子または同位体元素が、11−C、15−O、18−F、32−P、59−Fe、67−Cu、67−Ga、81−Rb、89−Sr、90−Y、99m−Tc、111−In、123−I、124−I、125−I、131−I、117m−Sn、153−Sm、186−Re、188−Re、201−Tl、211−At、212−Biおよび213−Biからなる群より選ばれる放射性核種である請求項1〜30のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項34】
金属原子または同位体元素が、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)からなる群より選ばれる元素である請求項1〜30のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項35】
金属原子または同位体元素が、ビスマス、タングステン、タンタル、ハフニウム、ランタン、ランタニド、バリウム、モリブデン、ニオブ、ジルコニウムおよびストロンチウムからなる群より選ばれる元素である請求項1〜30のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項36】
塩、水和物、溶媒和物、凝集体、水溶液、または、凍結乾燥された形態である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項37】
粒子の大きさが1nm〜50μmである、請求項1〜36のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物。
【請求項38】
請求項1〜6および8〜29のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物と、遷移金属の過酸化イオンと、還元剤とを含む、石灰化組織親和性錯化合物を生成するための組成物。
【請求項39】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物を含有する治療薬。
【請求項40】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物またはその塩と、少なくとも1つの医薬として許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項41】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物を含有する放射性標識化合物調製用キット。
【請求項42】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の石灰化組織親和性化合物を含有する診断薬、イメージング剤または治療薬。
【請求項43】
請求項33に記載の石灰化組織親和性化合物、その塩またはその凝集体を含有する放射性標識化合物診断薬、イメージング剤もしくは治療薬。
【請求項44】
請求項34に記載の石灰化組織親和性化合物、その塩またはその凝集体を含有する核磁気共鳴イメージング剤。
【請求項45】
請求項35に記載の石灰化組織親和性化合物、その塩またはその凝集体を含有するX線イメージング剤。
【請求項46】
グルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群より選ばれた1種以上の単糖から構成される最終末端が還元された2〜50糖のアミノオリゴ糖を用い、カルバメイト化合物の生成反応を行うことにより、最終末端のアミノ基を選択的に修飾する方法。
【請求項47】
グルコサミン、マンノサミンおよびガラクトサミンからなる群より選ばれた1種以上の単糖から構成される最終末端が還元された2〜13糖のアミノ糖と、二炭酸ジブチルとを反応させ、最終末端のアミノ基をブトキシカルボニル(Boc)基で選択的に修飾する方法。

【国際公開番号】WO2004/085452
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504075(P2005−504075)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004019
【国際出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】