説明

石炭ガス化複合発電設備及び石炭ガス化複合発電方法

【課題】 製造コスト及び運転コストが安価で、かつ発電効率を向上できる石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【解決手段】 微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉5と、気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備9と、ガスタービン設備9の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラ13で生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備11と、ガスタービン設備9及び/又は蒸気タービン設備11と連結された発電機Gと、排熱回収ボイラ13から排出される燃焼排ガスを脱硫する排煙脱硫設備15と、石炭ガス化炉5へ微粉炭をスラリーとして供給する給炭装置3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料である石炭を石炭ガス化炉によって石炭ガス化ガスに変換し、ガスタービン複合発電に用いる石炭ガス化複合発電設備(IGCC;Integrated Coal Gasification Combined Cycle)及び石炭ガス化複合発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化複合発電設備は、埋蔵量が豊富な石炭資源を利用している点、従来の微粉炭火力発電よりも熱効率が高く、二酸化炭素などの大気汚染物質の排出量が少ない点、石炭の灰がガラス質の溶融スラグとして排出され、体積が小さくなる点、などの利点を有している。そのため、石炭ガス化複合発電設備は、今後の石炭火力発電の主力となる技術として開発が進められている。
【0003】
石炭ガス化複合発電設備における石炭ガス化炉への微粉炭供給には、特許文献1あるいは特許文献4に示されるような、微粉炭と水とを混合しスラリーとして供給する湿式給炭方式と、特許文献2あるいは特許文献3に示されるような、微粉炭を乾燥状態のまま空気、窒素等の加圧気体によって加圧し供給する乾式給炭方式とがある。
湿式給炭方式では、石炭ガス化炉内においてスラリー中に含まれる水分が蒸発するための熱(蒸発潜熱)が必要となるので、この蒸発潜熱分が熱損失となり効率が低下するという問題がある。
このため、乾式給炭方式が多用されていたのが実情である。しかし、乾式給炭方式では、乾燥状態の微粉炭を加圧するために、例えばロックホッパシステム等が必要となるなど、設備が複雑となり、製造コストが高くなるという問題がある。
このため、製造コストの面から湿式給炭方式が見直される状況になっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−280373号公報(段落[0005]〜[0011],及び図3)
【特許文献2】特開2002−250206号公報(段落[0010]〜[0012],及び図1)
【特許文献3】特許2733188号公報(段落[0014]〜[0026],及び図1)
【特許文献4】特開平10−266871号公報(段落[0005]〜[0011],及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石炭ガス化複合発電設備では、石炭ガス化炉で生成された気体燃料がガスタービンに供給される前にガス精製が行われるのが通常である。ガス精製には、特許文献1あるいは特許文献2に示されるような湿式ガス精製と、特許文献4に示されるような乾式ガス精製とがある。
しかし、湿式ガス精製を用いる場合、湿式給炭と組み合わせると(特許文献1)、ガス化炉に投入されたスラリー中の水分から生じた蒸気がガス精製設備で凝縮し除去されるので、熱損失が大きくなり、発電効率が大幅に低下するという問題がある。
一方、乾式ガス精製を用いる場合、湿式給炭と組み合わせると、気体燃料に含まれる蒸気は途中で凝縮することなくガスタービンに導入され、膨張するので、熱損失はそれほどでもない。しかし、膨張した水分は煙突から排出され回収できないので、スラリー製造のために外部から多量の水を補給する必要があり、運転コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、製造コスト及び運転コストが安価で、かつ発電効率を向上できる石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる石炭ガス化複合発電設備は、微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機と、前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫する排煙脱硫設備と、を備える石炭ガス化複合発電設備であって、前記石炭ガス化炉へ前記微粉炭をスラリーとして供給する給炭装置を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、給炭装置から石炭ガス化炉へ微粉炭をスラリーとして供給するようにしたので、微粉炭を乾燥状態で供給するものと比べて機器構成を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できる。
また、石炭ガス化炉で生成された気体燃料は、そのままガスタービン設備に供給されるので、気体燃料中に含まれる蒸気(水分)の熱エネルギーはガスタービン設備で有効に回収できる。さらに、この蒸気の凝縮潜熱は排熱回収ボイラの給水加熱を行うことで回収できる。これらによって、微粉炭が有する熱量を有効に活用することができるので、石炭ガス化複合発電設備の発電効率を向上することができる。
【0009】
また、請求項2にかかる石炭ガス化複合発電設備では、前記排煙脱硫設備から回収した水分を、前記スラリーの材料として前記給炭装置に供給することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、排煙脱硫設備から回収した水分を、スラリーの材料として給炭装置に供給しているので、給炭装置に供給される用水量を大幅に低減でき、運転コストを低減できる。
【0011】
また、請求項3にかかる石炭ガス化複合発電設備では、前記石炭ガス化炉と前記ガスタービン設備との間に設けられたチャー回収装置によって前記気体燃料から分離回収されたチャー分を、前記スラリーの材料の一部として前記給炭装置に供給することを特徴とする。
【0012】
このように、チャー回収装置によって気体燃料から分離回収されたチャー分を、スラリーの材料として給炭装置に供給するようにしているので、チャー分は給炭装置から石炭ガス化炉へ供給されることになる。このため、チャー分を石炭ガス化炉へ供給するための高価なチャーバーナ等が不要となるので、石炭ガス化複合発電設備の製造コストをさらに低減することができる。
【0013】
本発明にかかる石炭ガス化複合発電方法は、微粉炭をスラリーとして石炭ガス化炉に供給して気体燃料に変換し、ガスタービン設備で前記気体燃料を燃焼し、排熱回収ボイラで前記ガスタービン設備からの燃焼排ガスを熱源として蒸気を生成して蒸気ガスタービン設備を駆動し、前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備の動力を用いて発電し、前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを排煙脱硫設備によって脱硫し、排出することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、石炭ガス化炉へ微粉炭をスラリーとして供給するようにしたので、微粉炭を乾燥状態で供給するものと比べて機器構成を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できる。
また、石炭ガス化炉で生成された気体燃料は、そのままガスタービン設備に供給されるので、気体燃料中に含まれる蒸気(水分)の熱エネルギーはガスタービン設備で有効に回収できる。さらに、この蒸気の凝縮潜熱は排熱回収ボイラの給水加熱を行うことで回収できる。これらによって、微粉炭が有する熱量を有効に活用することができるので、石炭ガス化複合発電設備の発電効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、給炭装置から石炭ガス化炉へ微粉炭をスラリーとして供給するようにしたので、乾式給炭方式に比べて製造コストを大幅に低減できる。
また、石炭ガス化炉で生成された気体燃料は、そのままガスタービン設備に供給されるので、気体燃料中に含まれる蒸気(水分)は熱エネルギーとしてガスタービン設備で有効に活用できる。そして、この蒸気は排煙脱硫設備で凝縮潜熱として回収されることもあいまって微粉炭が有する熱量を有効に活用することができ、石炭ガス化複合発電設備の発電効率を向上することができる。
さらに、排煙脱硫設備から回収した水分を、スラリーの材料として給炭装置に供給しているので、運転コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1について図1を参照して説明する。
図1に示されているように、石炭ガス化複合発電設備(IGCC;Integrated Coal
Gasification Combined Cycle)1には、給炭装置3と、石炭ガス化炉5と、チャー回収装置7と、ガスタービン設備9と、蒸気タービン設備11と、排熱回収ボイラ(HRSG)13と、脱硫設備15と、が備えられている。
【0017】
給炭装置3には、石炭を貯留する原炭バンカ17と、石炭を粉砕して微粉炭とする微粉炭機19と、スラリー製造装置21と、一次通風機(PAF)23と、スラリーポンプ25とが備えられている。
微粉炭機19は、原炭バンカ17から供給される石炭を粉砕して数μm〜数百μmの微粉炭とする。微粉炭機19によって粉砕された微粉炭は、一次通風機23から供給される空気によってスラリー製造装置21へと搬送される。
スラリー製造装置21では、微粉炭(65〜70%)と水(30〜35%)とを掻き混ぜてスラリーが製造される。このスラリーは、スラリーポンプ25によって加圧されて石炭ガス化炉5へと搬送される。
【0018】
石炭ガス化炉5には、下方から上方へとガスが流されるように形成された石炭ガス化部27と、石炭ガス化部27の下流側に接続されて、上方から下方へとガスが流されるように形成された熱交換部29とが備えられている。
石炭ガス化部27には、下方から、コンバスタ31及びリダクタ33が設けられている。コンバスタ31は、微粉炭及びチャーの一部分を燃焼させ、残りは熱分解により揮発分(CO,H ,低級炭化水素)として放出させる部分である。コンバスタ33には噴流床が採用されている。しかし、流動床式であっても構わない。
【0019】
コンバスタ31及びリダクタ33には、それぞれ、コンバスタバーナ31a及びリダクタバーナ33aが設けられており、これらバーナ31a,33aに対して給炭装置3から微粉炭がスラリーとして供給される。
コンバスタバーナ31aには、空気分離装置(ASU)35からの酸素が供給されるようになっている。
なお、コンバスタバーナ31aには、酸素に代わり、空気を供給してもよい。また、空気に酸素を加えて酸素量を調整して供給してもよい。
リダクタ33では、コンバスタ31からの高温燃焼ガスによって微粉炭がガス化される。これにより、石炭からCOやH 等の可燃性ガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が高温ガス中のCO 及びHO と反応してCOやH を生成する吸熱反応である。
【0020】
石炭ガス化炉5の熱交換部29には、複数の熱交換器が設置されており、リダクタ33から導かれる生成ガスから顕熱を得て蒸気を発生させるようになっている。熱交換器において発生した蒸気は、蒸気タービン51の駆動用蒸気の一部として用いられる。
熱交換部29を通過した生成ガスは、チャー回収装置7へと導かれる。このチャー回収装置7には、ポーラスフィルタ37と、チャーロックホッパ39と、チャー供給ホッパ41とが備えられている。
ポーラスフィルタ37は、例えばセラミック製のろ材を備えており、生成ガスがろ材を通過する際に、生成ガス中のチャーを濾し取るように構成されている。
捕捉されたチャーはポーラスフィルタ37の濾過面に堆積してチャー層を形成している。チャー層には、生成ガスに含まれるNa分及びK分が凝縮し、結果的にチャー回収装置7においてNa分及びK分も除去され、ガスタービン9における著しい腐食を防止できる。
【0021】
濾し取られたチャーは、所定タイミングでガス燃料の流れと逆方向に窒素等の逆洗ガスを流すことにより下方に落下させ、チャーロックホッパ39に堆積させられる。
チャーロックホッパ39には、圧力調節機構が備えられており、チャーが所定量貯留されると、チャーは石炭ガス化炉5内圧力まで昇圧され、チャー供給ホッパ41へ供給される。
チャー供給ホッパへ貯留されたチャーは、空気分離装置35において分離された窒素によって気流搬送され、石炭ガス化炉5のコンバスタバーナ31aへと返送されてリサイクルされる。
なお、チャーとともにコンバスタバーナ31aへと返送されたNa分及びK分は、最終的に溶融した微粉炭の灰とともに石炭ガス化部27の下方から排出される。溶融排出された灰は水で急冷、破砕されガラス状のスラグとなる。
【0022】
チャー回収装置7を通過した生成ガスは、燃料ガスとしてガスタービン設備9の燃焼器43へと送られる。
ガスタービン設備9には、生成ガスが燃焼させられる燃焼器43と、燃焼ガスによって駆動されるガスタービン45と、燃焼器43へと高圧空気を送り出すターボ圧縮機47とが備えられている。
ガスタービン45とターボ圧縮機47とは同一の回転軸49によって接続されている。
ガスタービン45を通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ13へと導かれる。
【0023】
蒸気タービン設備11の蒸気タービン51は、ガスタービン45と同じ回転軸49に接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。
蒸気タービン51には、石炭ガス化炉5及び排熱回収ボイラ13から高圧蒸気が供給される。
なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
ガスタービン45及び蒸気タービン51によって駆動される回転軸49から電気を出力する発電機Gが、蒸気タービン設備11を挟んでガスタービン設備9の反対側に設けられている。
なお、発電機Gの配置位置については、この位置に限られず、回転軸49から電気出力が得られるようであればどの位置であっても構わない。
【0024】
排熱回収ボイラ13は、ガスタービン45からの燃焼排ガスによってボイラ給水を加熱して蒸気を生成するものである。蒸気タービン51と排熱回収ボイラ13との間を循環し、その中で水が、給水、蒸気及び復水の順に状態変化を繰り返すボイラ給水配管系(図示省略)が備えられている。排熱回収ボイラ13の燃焼排ガス通路には、ボイラ給水配管系の内、燃焼排ガスから熱量を与えられ、給水から蒸気へと変化する部分が設けられている。これらの内、燃焼排ガス流れ下流側に位置する部分では、給水が予熱される部分となっており、温度が低いので、燃焼排ガス中の蒸気の一部が熱を奪われて凝縮して水となっている。
【0025】
廃熱回収ボイラ13の燃焼排ガス流の下流には脱硫設備15が設けられている。
脱硫設備15には、排煙脱硫設備(FGD;Flue Gas Desulfurization)53と湿式電気集塵設備(Wet-EP)59とが設けられている。
排煙脱硫設備53としては、例えば石灰石―石膏法を用いた排煙脱硫設備や水酸化マグネシウムスラリー法を用いた排煙脱硫設備など、公知の排煙脱硫設備を用いることができる。
排煙脱硫設備53では、下部に貯留された吸収液が上部から噴霧され、これが循環して行われることによって排ガス中の硫黄分(主として、SO)が吸収液に取り除かれるようになっている。
排煙脱硫設備53の下部に貯留される吸収液の一部は、排水処理装置55に搬送される。排水処理装置55では、吸収液を処理して副生品を生成するとともに水を排出する。この排出される水は、給水ポンプ57によってスラリー製造装置21へと搬送・供給される。
【0026】
排煙脱硫設備53の燃焼排ガス流の下流には湿式電気集塵設備59が設けられている。湿式電気集塵設備は、主に排ガス中にミストとして残存するSO及び主に硫安からなる煤塵を取り除くものである。湿式電気集電設備59の代わりに他の形式の集塵設備を用いるようにしてもよい。
湿式電気集塵設備59の燃焼排ガス流の下流には、誘引ファン(BUF)61が設けられている。この誘引ファン61は、ガスタービン燃焼排ガスを誘引することにより、燃焼排ガスを煙突63から大気へと放出している。
【0027】
なお、脱硫設備15として排煙脱硫設備53と湿式電気集塵設備59との組み合わせに替えて、硫黄分を酸化させる触媒の作用を有する活性炭素繊維(ACF;Activated Carbon Fiber)が備えられた活性炭素脱硫設備を用いてもよい。
【0028】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる石炭ガス化複合発電設備1の動作について説明する。
原炭バンカ17から供給された石炭は微粉炭機19によって粉砕され微粉炭とされた後、一次通風機23からの空気によってスラリー製造装置21に供給される。スラリー製造装置21では、微粉炭は排水処理装置55から給水ポンプ57によって供給された水及び図示しないその他の補給水と混合されてスラリーが形成される。
このように、脱硫設備53の排水処理装置55から回収した水を、スラリーの材料としてスラリー製造装置21に供給しているので、別途スラリー製造装置21に供給される用水量を大幅に低減でき、運転コストを低減することができる。
【0029】
スラリー製造装置21によって製造されたスラリーは、スラリーポンプ25によってリダクタバーナ33a及びコンバスタバーナ31aへと供給される。さらに、別途設けられたチャーバーナ32aには、チャー回収装置7において回収されたチャーが供給される。
コンバスタバーナ31aの燃焼用気体としては、空気分離装置35において分離された酸素が使用される。コンバスタ31では、微粉炭及びチャーが燃焼用酸素によって部分燃焼させられる。
【0030】
リダクタ33では、リダクタバーナ33aから供給されたスラリー中の微粉炭及びコンバスタ31内で揮発分を放出したチャーが、コンバスタ31から上昇してきた高温ガスによりガス化され、COやH等の可燃性ガス(生成ガス)が生成される。
リダクタ33を通過した生成ガスは、石炭ガス化炉5の熱交換部29を通過しつつ各熱交換器にその顕熱を与え、蒸気を発生させる。熱交換部29で発生させた蒸気は、蒸気タービン51の駆動のために用いられる。
熱交換部29を通過した生成ガスは、チャー回収装置7のポーラスフィルタ37へと導かれ、チャーはろ材に濾し取られ回収される。この時、ガス中のNa分及びK分は、ここで凝縮してチャーに取り込まれる。
【0031】
ポーラスフィルタ37によって濾し取られたチャーは、所定タイミングでガス燃料の流れと逆方向に窒素等の逆洗ガスを流すことにより下方に落下させ、チャーロックホッパ39に堆積させられる。
そして、チャーはチャーロックホッパ39に所定量貯留されると、チャーロックホッパ39内の圧力が石炭ガス化炉5内圧力まで昇圧され、その状態でチャー供給ホッパ41と連通され、チャー供給ホッパ41へ供給される。
貯留されたチャーがチャー供給ホッパ41へ供給された後、チャーロックホッパ39内の圧力は元に戻され、再びポーラスフィルタ37からのチャーを受け入れる。
一方、チャー供給ホッパ41へ貯留されたチャーは、空気分離装置35において分離された窒素によって加圧状態で気送搬送され、石炭ガス化炉5のチャーバーナ32aへと供給される。
【0032】
チャー回収装置7を通過した生成ガスは、ガスタービン設備9の燃焼器43へと導かれ、ターボ圧縮機47から供給される圧縮空気とともに燃焼させられる。この燃焼ガスによってガスタービン45が回転させられ、回転軸49が駆動させられる。
ガスタービン45を通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ13へと導かれ、この燃焼排ガスの顕熱を利用することによって蒸気が発生させられる。排熱回収ボイラ13において発生した蒸気は、蒸気タービン51の駆動のために用いられる。
このような燃焼排ガスの排熱回収時において、排熱回収ボイラ13に導入された燃焼排ガスの上流側では、ボイラ給水配管系を流れるボイラ給水が高温の燃焼排ガスにより加熱されて蒸気になる。この熱交換により温度低下した燃焼排ガスは、下流側に設置されたボイラ給水配管系を通過して低温のボイラ給水を加熱して予熱する。この時、燃焼排ガスに含まれる蒸気の一部は、凝縮して水になり、ボイラ給水に凝縮潜熱を熱量として供給する。
【0033】
蒸気タービン51は、石炭ガス化炉5からの蒸気及び排熱回収ボイラ13からの蒸気によって回転させられ、ガスタービン設備9と同一の回転軸49を駆動させる。回転軸49の回転力は、発電機Gによって電気出力へと変換される。
排熱回収ボイラ13を通過した燃焼排ガスは、排煙脱硫設備53へと導かれ、ここで硫黄分(SO)が除去される。例えば、石灰石―石膏法により除去する場合には、排煙脱硫設備53内の水と混ぜた石灰石(CaCO)スラリーと硫黄分(SO)とを反応させ、硫黄分を石膏(CaSO)として除去している。
【0034】
排煙脱硫設備53により硫黄分(SO)が除去された燃焼排ガスには、なおミスト状の硫黄分(SO)及び主に硫安からなる煤塵が含まれているが、これらは湿式電気集塵設備59で除去される。煤塵は湿式電気集塵設備59の集塵作用で除去され、SOもミスト状になっているため湿式電気集塵設備59の本来の集塵作用で除去される。
硫黄分(SO,SO)及び煤塵が取り除かれた燃焼排ガスは、誘引ファン61を経由して煙突63から大気へと放出される。誘引ファン61は、湿式電気集塵設備59から排出された燃焼排ガスを誘引し、煙突63に向けて圧送している。
【0035】
以下、本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態によれば、給炭装置3から石炭ガス化炉5へ微粉炭をスラリーとして供給するようにしたので、微粉炭を乾燥状態で供給するものと比べて機器構成を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できる。
また、石炭ガス化炉5で生成された生成ガスは、そのままガスタービン設備9に供給されるので、スラリーの水分から生じた生成ガス中に含まれる蒸気は熱エネルギーとしてガスタービン設備9で有効に活用できる。そして、この蒸気は排熱回収ボイラ13の給水加熱にも活用され、その際凝縮して水分として回収されるので、この時の凝縮潜熱が石炭ガス化炉5にて蒸発潜熱として失われた熱量を回収することができる。これらによって、微粉炭が有する熱量を有効に活用することができるので、石炭ガス化複合発電設備1の発電効率を向上することができる。
さらに、排煙脱硫設備53から回収した水を、スラリーの材料として給炭装置3に供給しているので、給炭装置3に供給される用水量を大幅に低減でき、運転コストを低減できる。
【0036】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図2を用いて説明する。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1の基本構成は、第一実施形態と同様であるが、第一実施形態とは、チャー回収装置7の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図2を用いてチャー回収装置7について説明し、その他の部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1には、図2に示されるように給炭装置3と、石炭ガス化炉5と、チャー回収装置7と、ガスタービン設備9と、蒸気タービン設備11と、排熱回収ボイラ13と、脱硫設備15と、が備えられている。
【0037】
本実施形態では、チャー回収装置7には、ポーラスフィルタ37と、減圧ホッパ65と、ロータリフィーダ67とが備えられている。
減圧ホッパ65は、ポーラスフィルタ37から落下するチャーを貯留する機能を有している。
ロータリフィーダ67は、減圧ホッパ65から排出されるチャーを大気圧状態でスラリー製造装置21に供給するように構成されている。
【0038】
このように構成された本実施形態では、チャー回収装置7のポーラスフィルタ37によって回収されたチャーは、所定タイミングでガス燃料の流れと逆方向に窒素等の逆洗ガスを流すことにより下方に落下させられ、減圧ホッパ65へ貯留される。
減圧ホッパ65に貯留されたチャーは、減圧された後に、ロータリフィーダ67によってスラリー製造装置21へ供給される。
スラリー製造装置21において、チャーは微粉炭と併せてスラリーとされ、スラリーポンプ25によって再び石炭ガス化炉5内へ供給される。
【0039】
本実施形態では、第一実施形態の作用・効果に加えて次の作用・効果を奏する。
すなわち、チャー回収装置7によって生成ガスから分離回収されたチャー分を、スラリーの材料としてスラリー製造装置21に供給するようにしているので、チャー分は給炭装置3から石炭ガス化炉5内へ供給されることになる。このため、チャー分を高圧の石炭ガス化炉5へ供給するため圧力を調整する高価な気送搬送用システムが不要となる。また、チャーを供給する専用のチャーバーナ32aが不要となる。このため、石炭ガス化複合発電設備1の製造コストをさらに低減することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる石炭ガス化複合発電設備の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第二実施形態にかかる石炭ガス化複合発電設備の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1 石炭ガス化複合発電設備
3 給炭装置
5 石炭ガス化炉
7 チャー回収装置
9 ガスタービン設備
11 蒸気タービン設備
13 排熱回収ボイラ
15 排煙脱硫設備
G 発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、
前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、
前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、
前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機と、
前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫する排煙脱硫設備と、
前記石炭ガス化炉へ前記微粉炭をスラリーとして供給する給炭装置と、を備えることを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項2】
前記排煙脱硫設備から回収した水分を、前記スラリーの材料として前記給炭装置に供給することを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項3】
前記石炭ガス化炉と前記ガスタービン設備との間に設けられたチャー回収装置によって前記気体燃料から分離回収されたチャー分を、前記スラリーの材料の一部として前記給炭装置に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項4】
微粉炭をスラリーとして石炭ガス化炉に供給して気体燃料に変換し、
ガスタービン設備で前記気体燃料を燃焼し、
排熱回収ボイラで前記ガスタービン設備からの燃焼排ガスを熱源として蒸気を生成して蒸気ガスタービン設備を駆動し、
前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備の動力を用いて発電し、
前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを排煙脱硫設備によって脱硫し、排出することを特徴とする石炭ガス化複合発電方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−107472(P2007−107472A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300100(P2005−300100)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】