説明

研削装置

【課題】省スペース化を図るとともに大型の板状物を研削・研磨可能な研削装置を提供する。
【解決手段】保持手段2を移動可能に支持するターンテーブル9の中心部に多角柱のコラム11を配設し、コラム11のそれぞれの側面において研削手段3a、3b、3cを支持し、コラム11の周囲を保持手段2が回転して研削手段の研削工具30と保持手段2に保持されたワークとを対向させて研削する構成とすることにより、コラムがターンテーブルの外周側に位置していた従来の研削装置よりも省スペース化を図り、大型の板状物を研削・研磨に対応可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを研削・研磨する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画されてその表面に複数形成された半導体ウエーハ、樹脂基板、電子部品に使用される各種セラミック基板、ガラス基板等の板状物は、裏面が研削・研磨されて所定の厚さに形成された後、ダイシング装置やレーザー加工装置によって個々のチップに分割され、分割された各チップは各種電子機器に利用されている。
【0003】
これら板状物の裏面を研削・研磨する装置としては、粗研削手段と仕上げ研削(研磨)手段とを備えたグラインダと称する研削・研磨装置が広く使用されている。かかる研削・研磨装置は、被加工物を保持する複数のチャックテーブルがターンテーブル上に周方向に等間隔離間して設けられており、被加工物がチャックテーブルに保持された状態でターンテーブルが回転していくことでチャックテーブルが移動し、ターンテーブルに対峙して配設された研削手段又は研磨手段によって、チャックテーブルに保持された板状物について順次粗研削から仕上げ研削又は研磨へと一連の加工が施される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−284303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、1枚の板状物当たりのチップの取り量を増やすために、板状物の大型化が進んでおり、特に半導体ウエーハにおいてはφ450mmとする規格化が進められている。したがって、半導体ウエーハが例えば現在広く使用されているφ200mmやφ300mmからφ450mmへ移行した場合、研削・研磨装置が非常に大型化するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より省スペースな装置で、大型の板状物を研削・研磨可能な研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを保持する保持手段と、保持手段に保持されたワークを研削加工する研削工具をワークに対して接近及び離反可能に支持する研削手段と、研削手段を支持する多角柱のコラムと、保持手段を順次該研削工具に対向する位置に位置付けるターンテーブルとを有する研削装置に関するもので、ターンテーブルは、保持手段を鉛直方向を回転軸として自転可能に支持し、中心に開口部を有するリング状の支持台と、鉛直方向を回転軸として支持台を開口部を中心に回転させる駆動部とを含み、コラムはターンテーブルの開口部に配設され、コラムの側面に研削手段が配設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、保持手段を移動可能に支持するターンテーブルの中心部に多角柱のコラムを配設し、コラムのそれぞれの側面に研削手段を配設したことにより、コラムの周囲を保持手段が回転して各研削手段の研削工具と保持手段に保持されたワークとを対向させて研削する構成としたため、コラムがターンテーブルの外周側に位置していた従来の研削装置よりも省スペース化を図ることができ、大型の板状物を研削・研磨可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】研削装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す研削装置1は、複数の保持手段2に保持されたワークを研削手段3a、3b、3cが研削加工または研磨加工する装置である。装置の前部側には、研削前の板状のワークを収容するカセット40aと研削後の板状のワークを収容するカセット40bとがそれぞれ載置台4a、4bに載置されている。
【0011】
カセット40a及びカセット40bの開口側に対面する位置には、カセット40aからのワークの搬出及びカセット40bへのワークの搬入を行う搬出入手段5が配設されている。搬出入手段5は、ワークを保持する保持部50と、保持部50を垂直方向に回動させる回動部51と、屈曲自在なアーム部52とを備えている。
【0012】
搬出入手段5を構成する保持部50の可動範囲には、ワークを所定の位置に位置合わせする位置合わせ手段6が配設されている。位置合わせ手段6は、ワークを吸着する保持部60と、放射状に形成された複数の長孔61と、長孔61を移動可能な突き当て部材62とから構成され、複数の突き当て部材62が互いが近づく方向に移動して保持部60に載置されたワークの周縁部を押すことによりワークを一定の位置に位置合わせすることができる。
【0013】
搬出入手段5を構成する保持部50の可動範囲には、研削後のワークを洗浄する洗浄手段7が配設されている。洗浄手段7は、ワークを保持して回転及び昇降可能な保持テーブル70と、回転するワークに対して洗浄液及びエアーを噴出する図示しないノズル等を備えている。
【0014】
装置の後部側は、研削域8となっている。研削域8においては、複数の保持手段2がターンテーブル9によってその周方向に公転可能に支持されているとともに、鉛直方向を回転軸として自転可能に支持されている。
【0015】
ターンテーブル9は、リング上に形成され中心部に開口部90が形成された支持台91と、鉛直方向を回転軸として支持台91を開口部90を中心に回転させるモータ等の駆動部92とを備えており、駆動部92によって駆動されて支持台91が回転することにより、保持手段2を研削工具30に対向する位置と、搬出入手段5によるワークの搬出入を行う位置とに位置付けることができる。
【0016】
開口部90には円形の基台10が配設され、その上にコラム11が立設されている。コラム11は多角柱に形成されており、その側面に研削手段3a、3b、3cが配設されている。コラム11はターンテーブル9の中心部に位置するため、コラム11の周囲をターンテーブル9が回動し、それにともない保持手段2もコラム11の周囲を移動する構成となっている。コラム11は、図示の例では四角柱となっているが、これには限定されず、配設する研削手段の数等に応じて任意に決定することができる。本例と同様に多角柱を構成する側面のうち1つの側面の前方においてワークの搬出入を行う構成とする場合は、多角柱の側面の数より1つ少ない研削手段を配設することができる。たとえば、研削手段の数が2つであれば、コラムは三角柱であればよい。また、多角柱のすべての側面において研削手段を支持することも可能である。
【0017】
研削手段3a、3b、3cは同様に構成されるため、共通の符号を付して説明すると、研削手段3a、3b、3cは、保持手段2の保持面20に保持されたワークに作用して研削加工を行う研削工具30と、研削工具30を支持する支持マウント31と、支持マウント31を先端部において支持し鉛直方向に延びる回転軸32と、回転軸32を回転させるモータ33とを備えている。なお、例えば、研削手段3aを構成する研削工具30は粗研削用のもの、研削手段3bを構成する研削工具は仕上げ研削用のもの、研削手段3cを構成する研削工具30はCMP等による研磨用のものといった使い分けがなされる。
【0018】
研削手段3a、3b、3cは、鉛直方向の軸心を有しコラム11の側面において鉛直方向に配設されたボールスクリュー34と、ボールスクリュー34と平行に配設された一対のガイドレール35と、ボールスクリュー34を回動させるパルスモータ36と、ボールスクリュー34に螺合するナット(図示せず)を内部に有するとともに側部がガイドレール35に摺接する昇降基台37と、昇降基台36から側方にのび回転軸32の周りを支持する支持部37とを備えており、パルスモータ35によって駆動されてボールスクリュー34が回動するのにともない昇降基台37がガイドレール35に案内されて昇降動し、これにより研削工具30も昇降動して保持手段2に保持されたワークに対して接近及び離反可能となっている。
【0019】
次に、研削装置1を用いてワークを研削加工する場合の動作について説明する。なお、ワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハやGaAs等の半導体ウェーハ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、さらには、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:total thickness variation:ワーク被研削面を基準面として厚み方向に測定した高さのワーク被研削面の全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0020】
研削対象のワークは、搬出入手段5の保持部50がカセット40aに進入することによって保持され、保持部50がカセット40aから退避することによって搬出される。そして、保持部50に保持されたワークは、位置合わせ手段6の保持部60の上に載置される。位置合わせ手段6では、突き当て部材62が互いに近づく方に移動することによりワークが一定の位置に位置合わせされる。
【0021】
次に、位置合わせされたワークは、搬出入手段5の保持部50によって保持され、搬出入手段5に最も近い位置にある保持手段2に搬送され、吸引保持される。そして、ターンテーブル8の時計回りの回転により保持手段2に保持されたワークが研削手段3aの下方に位置付けされる。そして、保持手段2が回転し、モータ33による駆動によって研削工具30が回転するとともにパルスモータ36の駆動によりボールスクリュー34が回動することにより研削工具30が下降し、保持手段2に保持され回転するワークに接触して粗研削加工が行われる。
【0022】
粗研削終了後は、ターンテーブル8がコラム11の周囲を回転することにより、保持手段2に保持されたワークが研削手段3bの下方に位置付けされ、保持手段2が回転しながら上記研削手段3aと同様の動作によって研削工具30がワークに作用してワークに仕上げ研削加工が施される。
【0023】
仕上げ研削終了後は、ターンテーブル8がコラム11の周囲を回転することにより、保持手段2に保持されたワークが研削手段3cの下方に位置付けされ、保持手段2が回転しながら上記研削手段3a、3bと同様の動作によって研削工具30がワークに作用してワークに鏡面仕上げ等の研磨加工が施される。
【0024】
研磨加工終了後は、ターンテーブル8がコラム11の周囲を回転することにより、保持手段2に保持されたワークが搬出入手段5の近傍に位置付けされる。そして、搬出入手段5の保持部50がワークを保持して洗浄手段7の保持テーブル70に搬送する。保持テーブル70に保持されたワークは、保持テーブル70の回転とともに回転し、洗浄液が噴出されて洗浄が行われ、その後乾燥が行われる。洗浄後のワークは、搬出入手段5の保持部50によって保持され、カセット40bに搬入される。
【0025】
以上説明したように、研削装置1における研削加工においては、コラム11の周囲をワークが移動しながら次々と加工が行われる構成となっており、従来(たとえば特許文献1に示した研削装置)のようにコラムがターンテーブルの外側に位置する構成ではないため、装置構成がコンパクトになり、生産性を阻害することなく省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1:研削装置
2:保持手段 20:保持面
3a、3b、3c:研削手段
30:研削工具 31:支持マウント 32:回転軸 33:モータ
34:ボールスクリュー 35:ガイドレール 36:パルスモータ
37:昇降基台 38:支持部
4a、4b:載置台 40a、40b:カセット
5:搬出入手段 50:保持部 51:回動部 52:アーム部
6:位置合わせ手段 60:保持部 61:長孔 62:突き当て部材
7:洗浄手段 70:保持テーブル
8:研削域
9:ターンテーブル 90:開口部 91:支持台 92:駆動部
10:基台 11:コラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを研削加工する研削工具をワークに対して接近及び離反可能に支持する研削手段と、該研削手段を支持する多角柱のコラムと、該保持手段を順次該研削工具に対向する位置に位置付けるターンテーブルと、を有する研削装置であって、
該ターンテーブルは、
該保持手段を鉛直方向を回転軸として自転可能に支持し、中心に開口部を有するリング状の支持台と、
鉛直方向を回転軸として該支持台を該開口部を中心に回転させる駆動部と、を含み、
該コラムは該ターンテーブルの該開口部に配設され、
該コラムの側面に該研削手段が配設された研削装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−125987(P2011−125987A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288935(P2009−288935)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】