説明

研摩装置及び研摩方法

【課題】球状部品の多寡にかかわらず研磨精度を大きく犠牲にすることなく高い作業性で球状部品を研磨できる研摩装置及び研摩方法を提供すること。
【解決手段】互いに間隙をおいて並列状態に軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4を備え、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の少なくとも一方はその外周面11、14に螺旋状の突出部16を有する研磨装置1、並びに、並列状態に軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4の間隙路10に球状部品を供給し、球状部品を、第1管状砥石3及び前記第2管状砥石4の少なくとも一方の外周面11、14に突設された螺旋状の突出部16で間隙路10上を搬送しつつ第1管状砥石3及び前記第2管状砥石4の少なくとも一方で研摩することを含む研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研摩装置及び研摩方法に関し、さらに詳しくは、球状部品の多寡にかかわらず研摩精度を大きく犠牲にすることなく高い作業性で球状部品を研摩できる研摩装置及び研摩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品又は半製品として製造された球状部品を、真球度等の精度を高めるため、又は、表面の平坦性を高めるために、研摩又は研削することがある。球状部品を研摩又は研削する研摩装置及び研摩方法として種々の研摩装置及び研摩方法がある。例えば、バフ研摩、球状部品の一部を収納する凹部が形成された砥石を用いるラップ研摩、回転砥石と調整砥石とを用いるセンターレス研摩等が挙げられる。
【0003】
具体的には、特許文献1には、「多種少量のボールを簡便にして能率的に研摩加工できるボールの研摩方法」として「一つがポリシャまたは研摩砥石からなる少なくとも二つの円柱状のローラを近接配置し、前記ローラによってボールを研摩するボールの研摩方法において、前記円柱状のローラ間に接触させてボールを介在させる工程と、前記ローラとボールとの接触部分にスラリまたは加工液を供給する工程と、少なくとも一つのローラを軸中心に回転させるとともに少なくとも一つのローラを軸方向に移動させてボールを研摩する工程と、を有することを特徴とするボールの研摩方法」が提案されている。
【0004】
特許文献2には、「個別に回転駆動される3つの研磨ロール(44,46,48)における各研磨面を、研磨すべき球体(50)の直径より内側で所要の中心角をもって略垂直に対向させ、これら3つの研磨ロール(44,46,48)の上に前記球体(50)を共通的に載置した状態で、2つの研磨ロール(44,46)と1つの研磨ロール(48)とを相互に反対方向へ回転させると共に、これら3つの研磨ロール(44,46,48)の全体を、水平面において正転方向および反転方向へ間欠的に回転させるようにしたことを特徴とする球体の研磨方法」が記載されている。
【0005】
一般に、バフ研摩及びラップ研摩は、一度に1つ又は少数の球状部品しか研摩できないから、球状部品のセット及び取り出し作業を要し、球状部品の連続研摩に不向きで高い研摩効率すなわち高い作業性を達成できないことが多い。
【0006】
特許文献2に記載の「球体の研磨方法」においても、球体50は「3つの研磨ロール44、46、48の研磨面上に安定した状態で共通的に載置され」るから(0012欄、0015欄等)、多数の球体50を連続して研磨処理できず、やはり高い研摩効率で球体50を研磨できない。
【0007】
特許文献1の「ボールの研摩方法」は「多種少量のボールを研摩加工する研摩方法」であるから、やはり多量のボールを研摩加工するのには適しているとはいえず、研摩効率という観点において改善の余地がある。また、この「ボールの研摩方法」では、ボールはローラの軸線方向にしか転動しないからボールの表面を全体的かつ均等に研摩できない場合があり、研摩精度及びその再現性に劣ることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2725729号明細書
【特許文献2】特開2002−028851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、球状部品の多寡にかかわらず研摩精度を大きく犠牲にすることなく高い作業性で球状部品を研摩できる研摩装置及び研摩方法を提供することに、ある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、互いに間隙をおいて並列状態に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方はその外周面に螺旋状の突出部を有することを特徴とする研磨装置であり、
請求項2は、前記第1管状砥石は研磨砥石であり、前記第2管状砥石はその外周面に螺旋状の突出部を有する調整ロールであることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置であり、
請求項3は、前記突出部はその螺旋方向に連続して延在する突条体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置であり、
請求項4は、前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石で形成される間隙路の下方にその延在方向に沿って配置された支持部材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨装置であり、
請求項5は、球状部品を1球ずつ受け入れる凹部が外周面に列設されたスプロケットを有し、前記間隙路の上流側に配置された部品供給部を備えて成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨装置であり、
請求項6は、並列状態に軸支され、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の間隙路に球状部品を供給し、前記球状部品を前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石の少なくとも一方の外周面に突設された螺旋状の突出部で前記間隙路上を搬送しつつ前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石の少なくとも一方で研摩することを含む研磨方法であり、
請求項7は、前記第1管状砥石と前記第2管状砥石との周速比(第1管状砥石の周速:第2管状砥石の周速)が5〜1:1であることを特徴とする請求項6に記載の研磨方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る研摩装置は、互いに間隙をおいて並列状態に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方はその外周面に螺旋状の突出部を有しているから、多量であっても少量であっても球状部品を、順に、回転する管状砥石の突出部によって種々の回転軸を中心にして転動している状態で、搬送しつつ研摩することができる。
【0012】
また、この発明に係る研摩方法は、球状部品を、突出部で間隙路上を搬送しつつ第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方で研摩するから、間隙路に供給される球状部品が多量であっても少量であっても、間隙路に連続して供給された球状部品を、順に、種々の回転軸を中心にして転動する状態で搬送しつつ研摩することができる。
【0013】
したがって、この発明によれば、球状部品の多寡にかかわらず研摩精度を大きく犠牲にすることなく高い作業性で球状部品を研摩できる研摩装置及び研摩方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明に係る研摩装置の一実施例である研摩装置を示す要部概略上面図である。
【図2】図2は、この発明に係る研摩装置の一実施例である研摩装置を示す要部概略正面図である。
【図3】図3は、この発明に係る研摩装置の一実施例である研摩装置を管状砥石の軸線に垂直な平面で切断したときの断面を示す要部概略断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る研摩装置の一実施例である研摩装置における球状部品の搬送状態及び研摩状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る研摩装置は、互いに間隙をおいて並列状態に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方はその外周面に螺旋状の突出部を有することを特徴の1つとする。そして、この突出部は、並列配置された第1管状砥石と第2管状砥石との間隙、例えば第1管状砥石の外周面及び第2管状砥石の外周面で形成される間隙路に供給される球状部品をこの間隙路の延在方向すなわち第1管状砥石及び第2の管状砥石の軸線方向に沿って間隙路の供給側から下流側に向けて送り出し、搬送するように、前記軸線方向に向かって延在する螺旋状に配置されている。
【0016】
したがって、この発明に係る研摩装置は、球状部品が多量であっても少量であっても間隙路に供給された球状部品を順に送り出し搬送することができるから、球状部品を連続的に投入し研摩加工することが可能になって高い作業性を発揮すると共に自動化が容易になる。さらに、この発明に係る研摩装置は、球状部品を順に、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方に突設された螺旋状の突出部で種々の回転軸を中心にして転動させた状態で搬送すると共に、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方でこの転動状態を保持しつつ研摩することができるから、種々の球状部品、例えば、金属製であっても樹脂製又はゴム製であっても球状部品の表面を全面的かつほぼ均等にまんべんなく研摩でき、比較的高い研摩精度を達成できる。
【0017】
このように、この発明に係る研摩装置は、球状部品を研摩又は研削して研摩精度の高い部品を製造できるから、球状部品の製造装置と称することもできる。
【0018】
この発明に係る研摩装置は、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方の外周面に螺旋状の突出部を有していることを特徴の1つとするから、その他の構成等は公知の研摩装置、例えば、センターレス研摩装置と同様に構成されることができ、また、例えば、以下に示す具体的な態様等に基づいて適宜に変更又は改良することができる。
【0019】
この発明に係る研摩装置又は研摩方法によって研摩又は研削される球状部品は、幾何学的に正確な球状の部品である必要はなく、研摩又は研削が必要な球状の部品であればよく、規格値よりも直径の大きな球状部品、わずかに真円度の低い略球状部品又は楕円球状部品、バリ等を有する球状部品又は表面平坦性の低い球状部品等が挙げられる。すなわち球状部品は転動しやすい形状を有していればよい。このような球状部品として、例えば、ベアリングボール、乗物用シートベルトのプリテンションベルトに装着される機械装置用ボール、ゴルフボールの芯球体、球技用ボール(例えば、卓球用ボール、パチンコ球等)等が挙げられる。
【0020】
この発明に係る研摩装置又は研摩方法において、球状部品は間隙路の一端側又はその近傍に連続的又は間欠的に供給される。したがって、この発明に係る研摩装置又は研摩方法によって研摩される球状部品は、多数又は少数の球状部品の集合体であってもよく、単数の球状部品であってもよい。
【0021】
この発明に係る研摩装置における一実施例の研摩装置1は、図1〜図3に示されるように、第1管状砥石3と、第2管状砥石4と、軸支駆動部5と、支持部材6と、部品供給部7と、部品回収部8とを備えている。この研摩装置1において、球状部品9が供給される、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の間隙、すなわち、第1管状砥石3の外周面11及び第2管状砥石4の外周面14で形成される間隙路10の端部又はその近傍(図1及び図2において紙面の左側)を一端側Aと称し、その反対側の端部又はその近傍を他端側Bと称する。なお、前記一端側Aは、供給側、基端側、搬送方向の上流側とも称することができ、前記他端側Bは、排出側、先端側、搬送方向の下流側とも称することができる。
【0022】
第1管状砥石3は、図1及び図3に示されるように、その外周面11の全面が研摩面となっているローラ状の研摩砥石であり、研摩面11に後述するような螺旋状の突出部を有していない。この研摩面11は、球状部品の研摩量等に応じて適宜の粗さに調整されている。このような第1管状砥石3の研磨面11となる砥石は、一般的な砥石を用いることができ、具体的には、砥材が緑色炭化珪素、粒度が80番、結合材がビトリファイドである砥石が挙げられる。第1管状砥石3は、その両端部それぞれに後述する軸支駆動部5に軸支される第1軸体12を有している。第1管状砥石3の外径及び軸線長さは特に限定されず、例えば、研磨する球状部品9の研磨量等に応じて適宜に設定される。第1管状砥石3の外径を大きくすると、間隙路10に供給された球状部品9との接触面積が増大するから、間隙路10の延在長さが短くても、又は、球状部品9の搬送速度が速くても、効率よく研摩できる。
【0023】
第2管状砥石4は、図1〜図3に示されるように、その外周面14の全面が非研摩面となっているローラ状の調整ロールであり、非研摩面14に螺旋状の突出部16を有している。第2管状砥石4は、その両端部それぞれに後述する軸支駆動部5に軸支される第2軸体15を有している。すなわち、第2管状砥石4は、その外周面14に突設された突出部16以外は第1管状砥石3と基本的に同様である。したがって、第1管状砥石3及び第2管状砥石4は、図1〜図3に示されるように、同一の外径及び軸線長さを有している。第2管状砥石4の突出部16については後述する。
【0024】
第2管状砥石4は、図1〜図3に示されるように、その外周面14に螺旋状の突出部16を有している。すなわち、第2管状砥石4は、研摩面11と非研摩面14とで形成される間隙路10に供給された球状部品9をその一端側Aから他端側Bに向けて間隙路10上を搬送する、軸線C方向に向かって延在する螺旋状の突出部16を非研摩面14に有している。この突出部16は非研摩面14に円筒螺旋状に設けられているということもできる。
【0025】
この突出部16は、図1及び図2に示されるように、第2管状砥石4の一端側4aから他端側4bの全体にわたって一端側4aから他端側4bに向かって非研摩面14に螺旋方向に連続して延在する突条体とされている。換言すると、突出部16は、非研摩面14に螺旋状に巻き付いた状態に設けられた突条体とされている。この突出部16は、具体的には、図1に示されるように、軸支駆動部5に軸支された第2管状砥石4を上方から見たときに、第2管状砥石4における第1管状砥石3の反対側から第1管状砥石3側に向かって一端側4aから他端側4bの方向に延在する所謂「S巻き」の螺旋状をなしている。突出部16がこのような螺旋状なっていると、第2管状砥石4を例えば図3に示される矢印の方向に回転させたときに、間隙路10の一端側Aに供給された部品を間隙路10の一端側Aから他端側Bまで軸線C及びC(両者を併せて軸線Cと称することがある)に沿って搬送することができる。したがって、突出部16は球状部品を案内しつつ搬送する搬送案内手段とも称することができる。
【0026】
突出部16において、図1に示されるように、第2管状砥石4の軸線C方向に隣接する突出部16同士の螺旋ピッチp、換言すると、突出部16が第2管状砥石4の外周面14を一回転したときの軸線C方向の変位量は、球状部品9等の搬送時間すなわち研摩量、研摩精度等に応じて適宜に設定される。この研摩装置1において、螺旋ピッチpは、比較的短い搬送時間で高い研摩精度を達成できる点で、球状部品9の直径の0.5〜5倍に設定されるのが好ましく、1〜3倍に設定されるのが特に好ましい。突出部16は、螺旋ピッチpが第2管状砥石4の一端側4aから他端側4bにわたって一定となるように設定され、常螺旋状に設けられている。
【0027】
突出部16において、図1に示されるように、突出部16の延在方向と第2管状砥石4の軸線Cに垂直な平面(図1において破線で示す。)とが交差する螺旋角θは、螺旋ピッチp、球状部品9等の搬送時間、研摩精度等に応じて、0°を超え90°未満の角度から適宜に設定される。この研摩装置1において、螺旋角θは、比較的短い搬送時間で高い研摩精度を達成できる点で、0.5〜60°に設定されるのが好ましく、5〜30°に設定されるのが特に好ましい。
【0028】
突出部16において、図1に示されるように、外周面14からの突出量すなわち高さhは、球状部品9等の搬送時間、研摩精度等に応じて、適宜に設定される。この研摩装置1において、高さhは、高い研摩精度を達成できる点で、球状部品の直径の0.05〜0.5倍に設定されるのが好ましく、0.05〜0.3倍に設定されるのが特に好ましい。
【0029】
突出部16において、その延在方向に垂直な平面で切断したときの切断面における断面形状は、特に限定されず、例えば、半円形、半楕円径、多角形等に調整される。前記多角形は頂面を有していてもいなくてもよい。突出部16を形成しやすく、球状部品9を所望のように搬送して高い研摩精度を達成できる点で、外周面14から略垂直に立ち上がる側面を有する多角形であるのが好ましく、前記断面形状は前記側面を有する矩形であるのがより好ましく、長方形又は正方形であるのが特に好ましい。この例における突出部16は断面形状が長方形となっている。
【0030】
突出部16の幅wは研摩精度等に応じて適宜に設定される。この研摩装置1において、幅wは、高い研摩精度を達成できる点で、球状部品の直径の0.05〜0.5倍に設定されるのが好ましく、0.05〜0.3倍に設定されるのが特に好ましい。前記幅wは前記断面形状における根元部分の幅である。なお、前記断面形状における頂部分又は頂面の幅(頂辺の長さ)は、前記幅Wよりも小さくても大きくてもよく、また、前記幅Wと同じであってもよい。
【0031】
第1管状砥石3及び第2管状砥石4は、図1〜図3に示されるように、それらの間に研摩面11と非研摩面14とで形成される間隙路10が球状部品9の直径よりも小さな間隔となるように、互いに間隙をおいてすなわち互いに離間するように並列状態に、後述する軸支駆動部5に軸支されている。また、第1管状砥石3及び第2管状砥石4は、それらの軸線C及びCが平行となる並列状態で、かつ、図2に明確に示されるように、それらの軸線C及びC、換言すると、間隙路10が一端部Aから他端部Bに向かって水平になるように、軸支駆動部5に軸支されている。さらに、軸支駆動部5が基台(図1において図示しない。)27に設置されているから、第1管状砥石3及び第2管状砥石4はそれらの軸線C及びC方向に不動となるように、軸支駆動部5に軸支されている。
【0032】
したがって、研摩装置1は、図1〜図3に示されるように、互いに間隙をおいて並列状態に回転可能に軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4を備えおり、換言すると、回転可能に軸支された第1筒状砥石3と、第1筒状砥石3と間隙をおいて並列状態に回転可能に軸支された第2筒状砥石4とを備えている。そして、このように軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4の間には間隙が形成され、第1管状砥石3の軸線C及び第2管状砥石4の軸線Cを含む平面Lの上方であって第1管状砥石3の研摩面11と第2管状砥石4の非研摩面14との間には球状部品9が供給されて載置、搬送され、そして研摩される間隙路10が形成されている。このように、研摩装置1においては、間隙路10に供給される球状部品9の中心が平面Lよりも上方になるように第1筒状砥石3と第2筒状砥石4とが配置されている。
【0033】
軸支駆動部5は、図1及び図2に示されるように、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の両端部近傍にそれぞれ配置される一対の軸支駆動部5a及び5bを有し、第1管状砥石3及び第2管状砥石4を回転可能に軸支する。軸支駆動部5は、第1軸体12及び第2軸体15をそれぞれ軸支する軸支部(図示しない。)と、第1軸体12及び第2軸体15を介して第1管状砥石3及び第2管状砥石4を回転させるモータ等の動力源(図示しない。)及び動力伝達手段(図示しない。)とを備えている。間隙路10の上流側Aに配置される軸支駆動部5aは、図1に示されるように、第1管状砥石3を軸支する軸支部(図示しない。)と第2管状砥石4を軸支する軸支部(図示しない。)との間に凹陥部18を有しており、その内部に後述する部品供給部7が挟まれるように配置される。
【0034】
軸支駆動部5は、第1管状砥石3と第2管状砥石4とを独立に又は同期して回転するように構成されている。第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転方向は、回転する研摩面11と非研摩面14とで間隙路10上で球状部品9が転動可能となる回転方向であればよく、同方向であっても逆方向であってもよい。第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転方向は、平面Lよりも上方に形成される間隙路10を研摩面11及び非研摩面14が下方すなわち平面L側から上方に通過するように、互いに逆方向に設定されてもよい。球状部品9を効率よく研摩するには、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転方向は、研摩面11及び非研摩面14の一方が間隙路10を下方から上方に通過し、研摩面11及び非研摩面14の他方が間隙路10を上方から下方に通過するように、互いに同方向に設定されるのが好ましく、図3に示されるように、研摩面11が間隙路10を下方から上方に通過し、非研摩面14が間隙路10を上方から下方に通過するように、互いに同方向に設定されるのが特に好ましい。
【0035】
軸支駆動部5は、間隙路10に供給された球状部品9の搬送時間と研摩精度とを考慮して、第1管状砥石3及び第2管状砥石4を適宜の回転数で回転される。研摩装置1において、軸支駆動部5は、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の外径を考慮して、第1管状砥石3の研摩面11の周速と第2管状砥石4の非研摩面14の周速との周速比(第1管状砥石の研摩面11の周速:第2管状砥石の非研摩面14の周速)が5〜1:1となるように、第1管状砥石3及び第2管状砥石4を回転させるのが好ましい。第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転数は、この周速比を満たすように、例えば、好ましくは10〜600rpmの範囲、特に好ましくは30〜180rpmの範囲から選択される。
【0036】
支持部材6は、図1及び図2、特に明確には図3に示されるように、平面Lを挟んで間隙路10の反対側、すなわち、間隙路10の下方に、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の軸線C方向すなわち間隙路10の延在方向に沿って配置されている。この支持部材6は、間隙路10から球状部品9が落下することを防止すると共に、球状部品9の搬送及び部品回収部8への回収を案内する。したがって、この支持部材6は、研摩面11と突出部16との最短離間距離と同じ又はそれよりも小さな厚さを有し、長手方向が間隙路10の延在方向となる板体すなわち壁状体とされ、基台27に設置されている。この支持部材6は、研摩面11、非研摩面14及び突出部16に接触しないように配置されており、その高さは平面Lよりも低い高さであっても平面Lを超える高さであってもよい。支持部材6は、図1に示されるように、その下流側端部が後述する部品回収部8近傍まで延在しており、これによって間隙路10を搬送されてきた球状部品9を部品回収部8に案内する。
【0037】
部品供給部7は、図1及び図2に示されるように、間隙路10の上流側に、具体的には、軸支駆動部5aの2つの軸支部に挟まれるように凹陥部18内に配置されたスプロケット21と、スプロケット21のさらに上流側に配置され、球状部品9を収容してスプロケット21に供給する収容部22とを有している。この収容部22は、具体的には、球状部品を収容する筐体23と、筐体23の底部からスプロケット21に向かって延在して球状部品9をスプロケット21に供給する供給通路24とを有している。スプロケット21は、球状部品9を1球ずつ受け入れる複数の凹部25が周方向に列設された円盤体又は筒体であり、歯車状供給部材と称することもできる。このスプロケット21は、その軸線が第1管状砥石3及び第2管状砥石4の軸線Cに略垂直に交差するように、すなわち、スプロケット21の外周面が間隙路10の延在方向上になるように、支持駆動部5aに回転可能に軸支されている。スプロケット21は、収容部22から供給される球状部品9を凹部25に受け入れて、自身が回転することによって、受け入れた球状部品9を1球ずつ間隙路10に送り出して供給する。スプロケット21に列設する凹部25の数は、好ましくは、突出部16における1つの螺旋ピッチp内に1つの球状部品9が配置されるように、スプロケット21の回転数、第2管状砥石4の回転数、突出部16の螺旋ピッチp、突出部16の螺旋角θ等に応じて、適宜に設定され、この例においては4個である。
【0038】
部品回収部8は、図1及び図2に示されるように、間隙路10の下流側であって第1軸体12及び第2軸体15の下方すなわち基台27側に位置するように基台27に設置されている。部品回収部8は、上面が開放された収容ボックスであり、その上面近傍には支持部材6の下流側端部が位置している。
【0039】
このように構成される研摩装置1は適宜の材料で作製される。具体的には、第1管状砥石3は、その外周面11が砥石となっていれば、それ以外はいかなる材質で形成されていてもよく、第2管状砥石4は、球状部品等を搬送することができれば、いかなる材質で形成されていてもよく、前記材質として、例えば、各種金属、各種樹脂、各種ゴム等が挙げられる。突出部16を有する第2管状砥石4は、適宜の方法で作製することができ、例えば、第2管状砥石4と突出部16とを一体成形する方法、突出部16を第2管状砥石4に植設又は打設する方法、第2管状砥石4に突出部16となる線条体を巻きつける方法、線条体を貼設する方法又は線条体の一部を埋設若しくは挿設する方法等が挙げられる。また、軸支駆動部5、支持部材6、部品供給部7及び部品回収部8それぞれは、例えば、各種金属、各種樹脂等で形成できる。
【0040】
次に、この発明に係る研摩方法を説明する。この発明に係る研摩方法は、並列状態に軸支され、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の間隙路に球状部品を供給し、球状部品を、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方の外周面に突設された螺旋状の突出部で間隙路上を搬送しつつ、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方で研摩することを特徴の1つとする。そして、この突出部は、間隙路に供給される球状部品を間隙路の延在方向に沿って間隙路の供給側から間隙路の下流側に向けて送り出すように、突設されている。
【0041】
したがって、この発明に係る研摩方法は、球状部品が多量であっても少量であっても間隙路に供給された球状部品を順に送り出し搬送するから、球状部品を連続的に投入し研摩加工することが可能になって高い作業性を発揮すると共に容易に自動化できる。さらに、この発明に係る研摩方法は、球状部品を順に、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方に突設された螺旋状の突出部で種々の回転軸を中心にして転動させた状態で搬送しつつ、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方で研摩するから、種々の球状部品、例えば、金属製であっても樹脂製又はゴム製であっても球状部品の表面を全面的かつほぼ均等にまんべんなく研摩でき、比較的高い研摩精度を維持できる。
【0042】
このように、この発明に係る研摩方法は、球状部品を研摩又は研削して研摩精度の高い部品を製造できるから、球状部品の製造方法と称することもできる。
【0043】
研摩装置1を用いた、この発明に係る研摩方法における一実施例の研摩方法(以下、一研摩方法と称する。)を説明する。一研摩方法は、並列状態に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を回転させる工程と、第1管状砥石及び第2管状砥石で形成される間隙路に球状部品を供給する工程と、球状部品を、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方の外周面に突設された螺旋状の突出部で間隙路上を搬送しつつ、第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方で研摩する工程とを含んでいる。
【0044】
研摩装置1は前記した通りであり、図1〜3に示されるように、第1管状砥石3、第2管状砥石4、軸支駆動部5、支持部材6、部品供給部7及び部品回収部8が前記のように配置されている。具体的には、図1〜図3に示されるように、間隙路10の間隔は球状部品9の直径よりも小さくなるように第1管状砥石3及び第2管状砥石4が並列状態に軸支駆動部5に軸支されている。また、突出部16の螺旋ピッチp、突出部16の螺旋角θ、突出部16の高さhはいずれも前記範囲内に設定されている。
【0045】
一研摩方法においては、図4に示されるように、部品供給部7に球状部品9を収容して、第1管状砥石3及び第2管状砥石4を例えば図3の矢印で示される回転方向にそれぞれ回転させる。このとき、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転数は、第1管状砥石3の研摩面11の周速と第2管状砥石4の非研摩面14の周速との周速比(第1管状砥石の研摩面11の周速:第2管状砥石の非研摩面14の周速)が5〜1:1となるように、調整されると、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転によって飛び出すことなく球状部品9を間隙路10に供給でき、また、球状部品9を研磨効率よく研磨できる。なお、一研摩方法においては、回転する第1管状砥石3及び第2管状砥石4はいずれもその軸線C及びC方向に前後進移動されることなく軸線方向に固定されている。
【0046】
一研摩方法においては、次いで、図4に示されるように、部品供給部7を駆動させて間隙路10に球状部品9を供給する。具体的には、供給通路24から供給される球状部品9を凹部25に受け入れたスプロケット21を回転させて球状部品9を間隙路10に供給する。すなわち、供給通路24から供給される球状部品9を1球ずつ受け入れた凹部25がスプロケット21の回転と共に周上を移動して球状部品9を1球ずつ搬送し、凹部25が間隙路10の上流側近傍に到達すると球状部品9を排出して間隙路10に1球ずつ供給する。このように、部品供給部7のスプロケット21で球状部品9を排出すると、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転によって弾き飛ばされることなく球状部品9を間隙路10に供給できる。スプロケット21の複数の凹部25は周方向に列設されているから球状部品9を1球ずつ一定間隔で間隙路10に供給できる。一研摩方法においては、好ましくは、スプロケット21の回転数、第2管状砥石4の回転数、突出部16の螺旋ピッチp、突出部16の螺旋角θ等を考慮して、突出部16における1つの螺旋ピッチp内に1つの球状部品9が供給されるようにスプロケット21に列設する凹部25の数が設定されているから、間隙路10上で前後の球状部品9が接触も衝突もすることなく突出部16で搬送される。
【0047】
一研摩方法において、このように球状部品9を間隙路10に供給すると、供給された球状部品9は、図3及び図4に示されるように、間隙路10上に留まり、突出部16で搬送されながら第1管状砥石3で研摩される。このとき、間隙路10に供給された球状部品9は、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の回転、並びに、突出部16によって、前進する回転及び前進以外の不規則な回転が与えられて種々の回転軸を中心にして転動する。したがって、球状部品9は、自重によって一定の回転軸を中心にして間隙路10上を転動する可能性が極めて小さく、球状部品9は回転方向が強制的かつ任意に変化するように転動する。球状部品9がこのように種々の回転軸を中心にして転動しつつ搬送されると、球状部品9の表面が全面的かつほぼ均等にまんべんなく研摩される。特に、球状部品9の真円度の低い部分、球状部品9のバリ等の突起部等が第1管状砥石3に接触して研摩される。
【0048】
また、球状部品9の搬送は、突出部16及び第2管状砥石4の回転数等で任意に調整できるから、第1管状砥石3及び第2管状砥石4の軸線長さが一定であっても、球状部品9の研摩量又は研摩精度を容易かつ任意に調整できる。
【0049】
このようにして、球状部品9は転動状態が強制的に変化されて搬送及び研摩されるから、比較的高い研摩精度及び再現性を維持できる。さらに、球状部品9は、突出部16における1つの螺旋ピッチp内に1つが配置されるように間隙路10に供給されるから、間隙路10上で前後の球状部品9が接触も衝突もすることなく研摩され、球状部品9の傷付きが効果的に防止される。
【0050】
一研摩方法において、図4に示されるように、このようにして搬送され研摩された球状部品9は間隙路10の下流側に到達して、支持部材6で案内されて部品回収部8内に回収される。
【0051】
一研摩方法においては、このようにして、球状部品9を次々と搬送し研摩することができる。
【0052】
以上説明したように、研摩装置1及び一研摩方法によれば、球状部品9が多量であっても少量であっても間隙路10に供給された球状部品9を順に、種々の回転軸を中心にして転動させた状態で、かつ、間隙路10上で前後の球状部品9を接触も衝突もさせることなく、送り出し搬送しつつ研摩することができるから、高い作業性を発揮すると共に比較的高い研摩精度及び再現性を達成できる。
【0053】
この発明に係る研摩装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0054】
この発明に係る研摩装置は、螺旋状の突出部で球状部品を搬送するから、例えば特許文献1のように第1管状砥石及び第2管状砥石をその軸線方向に移動させなくてもよく、第1管状砥石及び第2管状砥石はその軸線方向に不動となるように設置されている。
【0055】
研摩装置1は、2本の管状砥石3及び4を備えているが、この発明において、研摩装置は3本以上の管状砥石を備えていてもよい。この場合には、1本の管状砥石の両側に間隙路が形成されてもよい。
【0056】
研摩装置1は、螺旋状の突出部を有しない第1管状砥石3と螺旋状の突出部を有する第2管状砥石4とを備えているが、この発明において、研摩装置は、螺旋状の突出部を有する第1管状砥石と螺旋状の突出部を有する第2管状砥石とを備えていてもよい。この場合に、第1管状砥石に突設される螺旋状の突出部は、第1管状砥石及び第2管状砥石が回転したときに、第1管状砥石に突設された突出部と逆方向に交差する方向に延在する螺旋状であるのが好ましい。このように第1管状砥石に螺旋状の突出部が突設されていると研摩精度が高くなる点で好ましい。
【0057】
研摩装置1は、ローラ状の第1管状砥石3及び第2管状砥石4を備えているが、この発明において、研摩装置は無端ベルト状の第1管状砥石又は第2管状砥石を備えていてもよい。この場合には、第2管状砥石が無端ベルト状の管状砥石とされるのが好ましい。
【0058】
研摩装置1において、第2管状砥石4は、突出部16を有していること、及び、その外周面14の全面が非研摩面となっていること以外は第1管状砥石3と基本的に同様であるが、この発明において、第1管状砥石と第2管状砥石とは互いに異なっていてもよい。例えば、第1管状砥石と第2管状砥石とは互いに異なる外径又は軸線長さを有していてもよい。また、第2管状砥石は、その外周面の少なくとも一部が研磨面であってもよく、第1管状砥石と同様にその外周面の全面が研磨面であってもよい。
【0059】
研摩装置1は、第1管状砥石3と第2管状砥石4とがそれらの軸線Cが水平になるように軸支されているが、この発明において、第1管状砥石と管状砥石とはそれらの軸線が一端部から他端部に向かって上昇勾配又は下降勾配となるように軸支されてもよい。第1管状砥石及び第2管状砥石を上昇勾配又は下降勾配に軸支する場合には、水平面に対する傾斜角は例えば0°を超え45°以下であるのが好ましい。
【0060】
研摩装置1は、第1管状砥石3と管状砥石4とがそれらの軸線Cが平行となるように、軸支されているが、この発明において、第1管状砥石と管状砥石とはそれらの軸線が正確に平行となるように軸支されていなくてもよく、また、軸線間距離が順次大きくなる所謂「末広がり状態」に又は順次小さくなる所謂「逆末広がり状態」に軸支されてもよい。特に、支持部材を設けずに、第1管状砥石及び第2管状砥石の軸線間距離を順次大きくなるように又は順次小さくなるように設定すると、所望の直径になるまで研摩された球状部品を間隙路から落下させることができ、必要以上に球状部品を研摩することを防止できる。
【0061】
研摩装置1において、突出部16は、図1に示されるように、第2管状砥石4の一端側4aから他端側4bの全体にわたって形成されているが、この発明において、突出部は第2管状砥石の一端部から途中までに形成されていてもよい。また、研摩装置1において、突出部16は、螺旋ピッチp、螺旋角θ、突出量h、断面形状及び幅wはいずれも第2管状砥石4の一端側4aから他端側4bの全体にわたって一定となるように設定されているが、この発明において、突出部は、螺旋ピッチp、螺旋角θ、突出量h、断面形状及び幅wそれぞれは第2管状砥石の一端側から他端側にかけて一定でなく適宜に変化してもよい。例えば、螺旋ピッチp及び/又は螺旋角θを下流方向に沿って次第に大きくすると、間隙路10の上流側では搬送速度が遅く真球度の比較的低い球状部品を十分に研摩され、次第に搬送速度が速くなって真球度が高くなった球状部品の研摩量が徐々に小さくなるから、球状部品の研摩効率をさらに向上させることができる。
【0062】
研摩装置1において、突出部16は、螺旋方向に連続して延在する突条体として設けられているが、この発明において、突出部は、螺旋方向に不連続な複数の突条体が螺旋方向に所定の間隔を取って配列されて構成されていてもよく、外周面から突出するピン状部材が螺旋方向に所定の間隔を取って配列されて構成されていてもよい。前記所定の間隔は間隙路に供給される球状部品の直径未満の距離であるのが好ましい。
【0063】
研摩装置1は、支持部材6を備えているが、この発明において、研摩装置は支持部材を備えていなくてもよい。研摩装置が支持部材を備えていないと、第1管状砥石と第2管状砥石との間隙と同じ直径になるまで研摩された球状部品は第1管状砥石と第2管状砥石との間隙から落下して、この間隙よりも大きな直径を有する球状部品から選別できる。このように、第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、支持部材を備えていない研摩装置は、球状部品を研摩すると共に直径の大小によって選別することができる。このような研摩装置は研摩選別装置ということもできる。特に、第1管状砥石及び第2管状砥石の軸線間距離を順次大きくなるように又は順次小さくなるように設定すると、球状部品を複数の直径を有する群に選別できる。
【0064】
この発明において、研摩装置は、間隙路すなわち第1管状砥石の研摩面にスラリ又は研摩液を供給する液供給部を備えていてもよい。
【0065】
この発明に係る研摩方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0066】
この発明に係る研摩方法は、このように螺旋状の突出部で球状部品を搬送するから、例えば特許文献1のように第1管状砥石及び第2管状砥石をその軸線方向に移動させなくてもよく、第1管状砥石及び第2管状砥石をその軸線方向に不動にできる。
【0067】
一研摩方法は、螺旋状の突出部を有しない第1管状砥石3と螺旋状の突出部16を有する第2管状砥石4とを用いているが、この発明に係る研摩方法は、螺旋状の突出部を有する第1管状砥石と螺旋状の突出部を有する第2管状砥石とを用いてもよい。この場合に、第1管状砥石に突設される螺旋状の突出部は前記した通りである。
【0068】
一研摩方法は、ローラ状の第1管状砥石3及び第2管状砥石4を備えているが、この発明に係る研摩方法は無端ベルト状の第1管状砥石又は第2管状砥石を備えていてもよい。
【0069】
一研摩方法において、突出部16を有していること、及び、その外周面14の全面が非研摩面となっていること以外は第1管状砥石3と基本的に同様の第2管状砥石4を用いているが、この発明に係る研摩方法は、前記したように、互いに異なる第1管状砥石及び第2管状砥石を用いてもよい。
【0070】
一研摩方法において、軸線Cが水平になるように軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4を用いているが、この発明に係る研摩方法は、前記したように、上昇勾配又は下降勾配となるように軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を用いてもよい。
【0071】
一研摩方法において、軸線Cが平行となるように軸支された第1管状砥石3及び第2管状砥石4を用いているが、この発明に係る研摩方法は、前記したように、軸線間距離が順次大きくなる所謂「末広がり状態」に又は順次小さくなる所謂「逆末広がり状態」に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を用いてもよい。
【0072】
一研摩方法において、第2管状砥石4の一端側4aから他端側4bの全体にわたって螺旋ピッチp、螺旋角θ、突出量h、断面形状及び幅wが一定となるように突出部16が形成された第2管状砥石4を用いているが、この発明に係る研摩方法は、前記したように、第2管状砥石の一端部から途中まで突出部が形成された第2管状砥石を用いてもよく、また、螺旋ピッチp、螺旋角θ、突出量h、断面形状及び幅wそれぞれが適宜に変化するように突設された突出部が形成された第2管状砥石を用いてもよい。例えば、螺旋ピッチp及び/又は螺旋角θを下流方向に沿って次第に大きくした突出部が形成された第2管状砥石を用いると、間隙路10の上流側では搬送速度が遅く真球度の比較的低い球状部品を十分に研摩し、次第に搬送速度が速くなって真球度が高くなった球状部品の研摩量を徐々に小さくできるから、球状部品の研摩効率をさらに向上させることができる。
【0073】
一研摩方法において、螺旋方向に連続して延在する突条体として突設された第2管状砥石4を用いているが、この発明に係る研摩方法は、螺旋方向に不連続な複数の突条体が螺旋方向に所定の間隔を取って配列されて成る突出部、又は、外周面から突出するピン状部材が螺旋方向に所定の間隔を取って配列されて成る突出部を有する第2管状砥石4を用いてもよい。
【0074】
この発明に係る研摩方法は、支持部材を備えていない研摩装置を用いることができる。この場合には、前記したように、第1管状砥石と管状砥石との間隙と同じ直径になるまで研摩された球状部品が第1管状砥石と管状砥石との間隙から落下して、この間隙よりも大きな直径を有する球状部品から選別できる。このように、第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、支持部材を備えていない研摩装置を用いると、球状部品を研摩すると共に直径の大小によって選別することができる。このような研摩方法は研摩選別方法ということもできる。特に、第1管状砥石及び第2管状砥石の軸線間距離を順次大きくなるように又は順次小さくなるように軸支した研摩装置を用いると、球状部品を複数の直径を有する群に選別できる。
【0075】
この発明に係る研摩方法においては、球状部品の間隙路への供給と同時又は前後に、間隙路すなわち研摩面にスラリ又は研摩液を供給することもできる。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
研摩装置1及び球状部品9を準備した。この研摩装置1において、第1管状砥石3は、研摩面11の軸線C方向長さ255mm、外径305mmで、研摩面11の砥石は砥材が緑色炭化珪素、粒度が80番、結合材がビトリファイドの砥石を用いた。第2管状砥石4は、軸線C方向長さ255mmで外径205mmの非研摩面14に、図1に示されるように、第1管状砥石3の反対側から第1管状砥石3側に向かって一端側4aから他端側4bの方向に延在する所謂「S巻き」の螺旋状となるように、断面形状が正方形のJIS A硬度70のシリコーンゴム製の線条体を、貼設して突出部16を突設した。この突出部16は、螺旋ピッチp20mm(球状部品9の直径の約2倍)、螺旋角θ15°、突出量h2.5mm(球状部品9の直径の0.23倍)、幅w2.5mm(球状部品9の直径の0.23倍)であった。第1管状砥石3と第2管状砥石4とは軸線Cが略平行で水平になるように軸支され、研摩面11と非研摩面14との最小間隔は10.8mmであった。スプロケット21の周面には6個の凹部25が凹設されている。また、球状部品9として直径約10.90mmのシリコーンゴム製ボールを準備して、収容部22に収容した。
【0077】
軸支駆動部5を起動して、第1管状砥石3及び第2管状砥石4を図3に示される矢印の方向に、第1管状砥石3と第2管状砥石4との周速比(第1管状砥石3の周速:第2管状砥石4の周速)を2:1に調整して、回転させた。
【0078】
次いで、回転駆動させたスプロケット21の凹部25に収容部22から供給通路24を経由して球状部品9を供給して、突出部16における1つの螺旋ピッチp内に1つの球状部品9が配置されるように、間隙路10に球状部品9を連続的に一定の間隔で供給した。
【0079】
このようにして、供給された球状部品9それぞれを、第2管状砥石4の外周面14に突設された螺旋状の突出部16で他の球状部品9に接触も衝突もすることなく間隙路10上を搬送すると共に、第1管状砥石3の研摩面11で研摩した。このようにして間隙路10の他端側まで研摩されながら搬送された球状部品9を部品回収部8に回収した。なお、この研摩方法において間隙路10から落下した球状部品9は皆無であった。
【0080】
(実施例2)
外径が305mmであること以外は実施例1の第2管状砥石4と同様の第2管状砥石4を用いて実施例1と基本的に同様にして球状部品9を研磨処理したところ、実施例1とほぼ同様に多数の球状部品9を研磨できた。
【符号の説明】
【0081】
1 研摩装置
3 第1管状砥石
4 第2管状砥石
4a 一端側
4b 他端側
5 軸支駆動部
5a、5b 軸支駆動部
6 支持部材
7 部品供給部
8 部品回収部
9 球状部品
10 間隙路
11 研摩面(外周面)
12 第1軸体
14 非研摩面(外周面)
15 第2軸体
16 突出部
A 一端側
B 他端側
C、C、C 軸線
L 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隙をおいて並列状態に軸支された第1管状砥石及び第2管状砥石を備え、
第1管状砥石及び第2管状砥石の少なくとも一方は、その外周面に螺旋状の突出部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記第1管状砥石は研磨砥石であり、
前記第2管状砥石はその外周面に螺旋状の突出部を有する調整ロールであることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記突出部は、その螺旋方向に連続して延在する突条体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石で形成される間隙路の下方にその延在方向に沿って配置された支持部材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項5】
球状部品を1球ずつ受け入れる凹部が外周面に列設されたスプロケットを有し、前記間隙路の上流側に配置された部品供給部を備えて成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項6】
並列状態に軸支され、回転する第1管状砥石及び第2管状砥石の間隙路に球状部品を供給し、
前記球状部品を、前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石の少なくとも一方の外周面に突設された螺旋状の突出部で前記間隙路上を搬送しつつ、前記第1管状砥石及び前記第2管状砥石の少なくとも一方で研摩することを含む研磨方法。
【請求項7】
前記第1管状砥石と前記第2管状砥石との周速比(第1管状砥石の周速:第2管状砥石の周速)が5〜1:1であることを特徴とする請求項6に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30295(P2012−30295A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169593(P2010−169593)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】