説明

研磨方法および研磨装置

【課題】研磨対象物が大口径であっても、研磨部材表面に付着した異物を原因として研磨対象物の研磨後の表面にスクラッチが生じることを抑制することにより研磨対象物の歩留まりが低下することを抑制できるようにする。
【解決手段】研磨部材200と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、機械部品、セラミックスおよび金属等を研磨する研磨方法および研磨装置、ならびに該研磨方法を実現するためのプログラム、該プログラムを記録した記憶媒体に関し、特に半導体ウェーハ等の研磨対象物の表面を平坦且つ鏡面状に研磨するのに好適な研磨方法および研磨装置、ならびに該研磨方法を実現するためのプログラム、該プログラムを記録した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて、回路の配線が微細化し、集積されるデバイスの寸法もより微細化されつつある。そこで、半導体ウェーハの表面に形成された皮膜を研磨により除去して、表面を平坦化する工程が必要となっている。この平坦化法の一つとして、化学機械研磨(CMP)装置による研磨がある。化学機械研磨装置は、研磨部材(研磨布、研磨パッド等)と、半導体ウェーハ等の研磨対象物を保持する保持部(トップリング、研磨ヘッド、チャック等)とを有している。そして、研磨対象物の表面(被研磨面)を研磨部材の表面に押当て、両者の間に研磨助剤(砥液、薬液、スラリー、純水等)を供給しつつ、両者を相対運動させることにより、研磨対象物の表面を平坦かつ鏡面状に研磨するようにしている。化学機械研磨装置による研磨では、化学的研磨作用と機械的研磨作用により、良好な研磨が行われることが知られている。
【0003】
この様な化学機械研磨装置に用いられる研磨部材の材料(素材)としては、一般に発泡樹脂や不織布が用いられている。研磨部材の表面には微細な凹凸が形成されており、この微細な凹凸は、目詰まり防止や研磨抵抗の低減に効果的なチップポケットとして作用する。しかし、研磨部材で研磨対象物の研磨を続けると、研磨部材表面の微細な凹凸が潰れてしまい、研磨レートの低下を引き起こす。このため、多数のダイヤモンド粒子を電着させたダイヤモンドドレッサ等で研磨部材表面のドレッシング(目立て)を行い、研磨部材表面に微細な凹凸を再形成する必要がある。
【0004】
このドレッシングの際に、ダイヤモンド粒子がドレッサから脱落したり、ドレッシング屑が発生したりすることがある。ドレッサから脱落したダイヤモンド粒子やドレッシング屑は、通常ドレッシングの際に供給される洗浄液と共に研磨部材表面から排出される。しかし、排出されずに研磨部材表面に付着したまま残った場合には、異物となって、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)にスクラッチ(傷)を発生させる原因となる。
【0005】
ドレッシング中に発生したダイヤモンド粒子やドレッシング屑の他にも、酸化膜や金属膜などの皮膜を研磨する際に発生する皮膜屑や研磨部材の屑、研磨助剤に含まれる砥粒などが凝集物となって研磨部材表面に付着し、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)にスクラッチを引き起こす異物となる。研磨対象物が半導体ウェーハであれば、この様なスクラッチは致命的な欠陥となる恐れが高く、大きな問題となる。また、研磨部材表面に異物が付着したまま研磨を継続すると、研磨部材表面から異物が除去されるまで研磨対象物の表面にスクラッチを発生し続け、このため、一つの研磨対象物だけでなく、複数の研磨対象物に欠陥が発生し歩留り低下の原因となる。
【0006】
上述のように、研磨対象物の表面に発生したスクラッチは致命的な欠陥となる恐れが高く、その防止のために、研磨部材表面に付着した異物を除去する方法や装置が種々提案されている。例えば、研磨部材に純水や薬液などの洗浄液を吹き付けて研磨部材上の異物を洗い流す方法や、その装置を備えた研磨装置が提案されている(特許文献1および特許文献3〜10参照)。また、研磨部材に洗浄液を吹き付けるとともに、ブラシ、砥石またはPVAスポンジスクラブなどで研磨部材の表面を擦って研磨部材表面から異物を除去する方法や、その装置を備えた研磨装置が提案されている(特許文献3,4、特許文献6〜8参照)。他にも、スラリーを吸引する装置を設け、異物の一因となっているスラリーを吸引して研磨部材表面から除去する研磨装置が提案されている(特許文献1参照)。また、研磨部材を研磨中に洗浄するための流体浴を具備した研磨装置が提案されている(特許文献4参照)。更に、異物をペルオキソ硫酸やフッ酸などの溶解液で溶解させる方法や、その装置を備えた研磨装置が提案されている(特許文献2,8参照)。
【0007】
また、スクラッチが生じる研磨工程の条件や研磨装置自体を改善するために、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)に生じたスクラッチを解析し、スクラッチ形成に関わった研磨装置とその条件、研磨部材に付着した異物の位置を特定するようにしたスクラッチ解析方法およびスクラッチ解析装置が提案されている(特許文献11参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−94964号公報
【特許文献2】特開平10−217104号公報
【特許文献3】特開平10−244458号公報
【特許文献4】特開平10−296625号公報
【特許文献5】特開平11−243072号公報
【特許文献6】特開平11−333695号公報
【特許文献7】特開2000−218517号公報
【特許文献8】特開2000−280163号公報
【特許文献9】特開2000−340531号公報
【特許文献10】特開2001−144055号公報
【特許文献11】特開2004−259871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、研磨部材に付着した異物を除去して、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)にスクラッチが発生することを完全に防止することは困難である。この原因として、研磨対象物の大口径化により、研磨対象物の表面(被研磨面)と接触する研磨部材の面積が大きくなって、洗浄液の吹き付けやブラシの擦り付けなどにムラが生じ、研磨部材に付着した異物を効果的に除去できないことが挙げられる。また、逆に研磨部材表面を均一に洗浄しようとするあまりに、研磨部材の異物の付着箇所を重点的に洗浄できず、研磨部材表面の異物が除去されないことも原因として挙げられる。
【0010】
なお、特許文献11に開示されているスクラッチ解析方法およびスクラッチ解析装置は、研磨装置と連携されておらず、したがって、大量生産のラインで稼動している研磨装置で研磨対象物の表面にスクラッチが発生した場合に即座に対応できず、歩留りの低下を抑制できないと考えられる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、たとえ研磨対象物が大口径であっても、研磨部材表面に付着した異物を原因として研磨対象物の研磨後の表面にスクラッチが生じ、これが歩留りを低下させてしまうことを抑制できるようにした研磨方法および研磨装置、ならびに異物の付着領域を特定する付着領域特定方法および付着領域特定装置、研磨方法および付着領域特定方法を実現するためのプログラム、該プログラムを記録した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法である。
【0013】
これにより、例えば、研磨を中止した後に、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することで、異物の研磨部材表面からの除去作業を効果的に行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体からコンピュータに読込み、前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法である。
【0015】
これにより、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲として、異物の付着頻度が高い位置または範囲や、研磨の歩留りにとって特に重要な位置または範囲を記憶媒体に記憶させておくことで、スクラッチの原因となる異物の研磨部材表面への付着を予防することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体からコンピュータに読込み、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法である。
【0017】
これにより、例えば研磨中に研磨部材表面に異物が検知されない結果、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲が特定されない場合は、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄し、研磨部材表面に異物が検知された場合は、その付着位置または付着範囲を重点的に洗浄して、研磨部材表面への異物の付着防止と、異物付着後の異物の除去を効率的に行うことができる。なお前記異物の付着位置または付着範囲を含んでそれよりも広い範囲を重点的に洗浄しても良い。
【0018】
請求項4に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積し、前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出し、前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法である。
【0019】
これにより、蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から、異物の付着頻度が高い研磨部材表面の位置または範囲を算出し、重点洗浄位置または重点洗浄範囲として記憶媒体に記憶することができる。また、研磨時間が長ければ長いほど、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の情報の蓄積量が増えるので、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲の精度が高まる。したがって、付着した異物の効果的な除去作業が出来ると共に、より効率的に異物の研磨部材表面への付着を防止するための洗浄を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項1,3または4記載の研磨方法である。
【0021】
このように、研磨部材表面への異物の付着を検知部で検知することで、異物の検知により直ちに研磨を中止することができる。また、研磨を中止した後に研磨部材の表面を洗浄して異物を除去したり、研磨部材を交換したりすることにより、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)にスクラッチが発生すること防止することができる。特に、接触方式により研磨部材表面の異物を検知することで、研磨部材表面に液膜などがあったとしても、研磨部材表面の異物を精度良く検知することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記研磨部材表面を画像解析して、該表面に異物が付着したことを検知することを特徴とする請求項5記載の研磨方法である。
これにより、検知部による研磨部材などの汚染を防止することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項1,3または4記載の研磨方法である。
研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)に生じたスクラッチと、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲との間には相関関係がある。このため、研磨対象物の研磨後の表面を診断して、該表面に生じたスクラッチを検知することで、このスクラッチの発生位置から研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄でき、異物を効果的に除去できる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断することを特徴とする請求項7記載の研磨方法である。
これにより、例えば、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)に生じた、異物によるスクラッチが致命的な欠陥であるか否かを調べ、致命的な欠陥となったスクラッチのみを抽出し、この抽出したスクラッチから、致命的なスクラッチを発生させる研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、異物によるスクラッチが致命的な場合に、直ちに研磨を中止し、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することで、歩留りの低下を抑制することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、研磨部材表面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄されるべき位置または範囲として特定すると共に、前記特定した重点的に洗浄されるべき位置または範囲を記憶して蓄積することを特徴とする研磨部材表面の洗浄領域特定方法である。
【0026】
請求項10に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨し、前記研磨対象物の研磨面を診断して、重点的に洗浄されるべき前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする研磨部材表面の洗浄領域特定方法である。
【0027】
請求項11に記載の発明は、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として特定された情報を記憶して蓄積することを特徴とする請求項10記載の研磨部材表面の洗浄領域特定方法である。
【0028】
請求項12に記載の発明は、前記研磨対象物の研磨面を画像解析して該研磨面を診断することを特徴とする請求項10記載の研磨部材表面の洗浄領域特定方法である。
このように、特定された情報を記憶して蓄積することで、蓄積した情報を重点洗浄位置または重点洗浄範囲の算出に利用することができる。
【0029】
請求項13に記載の発明は、研磨対象物の研磨面を撮影した画像を画像解析して研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする付着領域特定方法である。
これにより、例えば、研磨対象物の研磨面にスクラッチが発生した場合、研磨面を撮影した画像を画像解析することにより、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができるので、異物の研磨部材表面からの除去作業を効率よく行うことができる。
【0030】
請求項14に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄する洗浄部を有することを特徴とする研磨装置である。
これにより、例えば、研磨を中止した後に、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することで、効果的な異物の除去作業を実施することができる。
【0031】
請求項15に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を蓄積した記憶媒体から情報を読込み、前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置である。
これにより、スクラッチの原因となる異物の研磨部材表面への付着を予防することができる。
【0032】
請求項16に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を蓄積した記憶媒体から情報を読込み、かつ前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置である。
【0033】
これにより、例えば研磨中に研磨部材表面に異物が検知されない結果、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲が特定されない場合は、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄し、研磨部材表面に異物が検知された場合は、その付着位置または付着範囲を重点的に洗浄することで、異物の研磨部材表面への付着防止と、異物付着後の異物の除去を効率的に実施することができる。
【0034】
請求項17に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積し、前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出し、かつ前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置である。
【0035】
これにより、蓄積された研磨部材表面への異物の付着位置または付着範囲から、異物の付着頻度が高い研磨部材表面の位置または範囲を算出し、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲として記憶媒体に記憶することができる。また、研磨時間が長ければ長い程、研磨部材表面への異物の付着位置または付着範囲の情報の蓄積量が増えるので、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲の精度が高まる。したがって、付着した異物の効果的な除去作業が出来ると共に、より効率的に異物の付着を防止するための洗浄を実施できる。また、本研磨装置により蓄積した研磨部材表面の異物の付着位置または付着範囲、あるいはこれらから算出した研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関するデータを他の研磨装置で使用することもできる。例えば、既存の研磨装置に加えて新しい研磨装置を増設する場合、既存の研磨装置に蓄積されたデータを新しい研磨装置で使用することができるので、増設した装置であっても効率的に異物の付着を防止することができる。
【0036】
請求項18に記載の発明は、前記付着領域特定部は、前記研磨部材表面に付着した異物を検知する検知部を有し、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項14,16または17記載の研磨装置である。
これにより、研磨中において、研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知して、研磨を中止する等の対応を採ることができる。特に、検知部を研磨部に設けることで、研磨部材表面に付着した異物を直ちに検知することができる。また、接触方式により研磨部材表面の異物を検知することで、研磨部材表面に液膜などがあったとしても、研磨部材表面の異物を精度良く検知することができる。
【0037】
請求項19に記載の発明は、前記付着領域特定部は、前記研磨部材表面を画像解析して該表面に付着した異物を検知する画像解析装置を有することを特徴とする請求項18記載の研磨装置である。
これにより、検知部によって、研磨部材などが汚染されることを防止することができる。
【0038】
請求項20に記載の発明は、前記付着領域特定部は、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する診断装置を有することを特徴とする請求項14,16または17記載の研磨装置である。
研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)に生じたスクラッチと、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲との間には相関関係がある。このため、研磨対象物の研磨後の表面を診断して、該表面に生じたスクラッチを検知することで、このスクラッチの発生位置から研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄でき、異物を効果的に除去できる。
【0039】
請求項21に記載の発明は、前記診断装置は、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する画像解析装置であることを特徴とする請求項20記載の研磨装置である。
これにより、例えば、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)に生じた、異物によるスクラッチが致命的な欠陥であるか否かを調べ、致命的な欠陥となったスクラッチのみを抽出し、この抽出したスクラッチから、致命的なスクラッチを発生させる研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、異物によるスクラッチが致命的な場合に、直ちに研磨を中止し、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することで、歩留りの低下を抑制することができる。
【0040】
請求項22に記載の発明は、前記制御部は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として前記付着領域特定部によって特定された情報を記憶して蓄積することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置である。
これにより、蓄積した情報を研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲の算出に利用することができる。
【0041】
請求項23に記載の発明は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、標準パターンを記憶媒体から読込む読込み装置と、研磨対象物の研磨面を撮影した画像を読込む読込み装置と、前記読込んだ標準パターンおよび画像を使って画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する演算装置と、前記演算装置で特定した異物付着位置または異物付着範囲を出力する出力装置とを有することを特徴とする付着領域特定装置である。
【0042】
これにより、例えば、研磨対象物の研磨面にスクラッチが発生した場合、予め作成して用意しておいた標準パターンと研磨対象物の研磨面を撮影した画像を使って画像解析することにより、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、異物の研磨部材表面からの除去作業を効果的に行うことができる。なお標準パターンを読込む上記読込み装置と撮影した画像を読込む上記読込み装置とは、それらの機能を兼ね備える装置としても良いのは言うまでもない。
【0043】
請求項24に記載の発明は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、研磨装置の幾何学的パラメータと研磨対象物の研磨条件を読込む読込み装置と、前記読込んだ幾何学的パラメータと研磨条件を使って標準パターンを作成する標準パターン作成装置と、研磨対象物の研磨面を撮影した画像を読込む読込み装置と、前記作成した標準パターンおよび前記読込んだ画像を使って画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する演算装置と、前記演算装置で特定した異物付着位置または異物付着範囲を出力する出力装置と、を有することを特徴とする付着領域特定装置である。
【0044】
これにより、上記で読込んだ研磨装置の幾何学的パラメータと研磨対象物の研磨条件を使って標準パターンを作成することができるから、予め標準パターンを作成して用意しておく必要がない。また例えば、研磨対象物の研磨面にスクラッチが発生した場合、上記のようにして作成した標準パターンと上記した、画像を読込む読込み装置から読込んだ研磨対象物の研磨面を撮影した画像を使って、上記演算装置で画像解析することにより、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。したがって、異物の研磨部材表面からの除去作業を効果的に行うことができる。また、上記した研磨装置の幾何学的パラメータと研磨対象物の研磨条件を読込む読込み装置と、研磨対象物の研磨面を撮影した画像を読込む読み込み装置とは、それらの機能を兼ね備えた装置としても良いことは言うまでもない。
【0045】
請求項25に記載の発明は、研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、を実行させるためのプログラムである。
これにより、研磨部材表面に付着した異物を洗浄するための付着領域特定手順、重点洗浄条件読込み手順、及び重点洗浄手順をコンピュータに実行させることができる。
【0046】
請求項26に記載の発明は、研磨部材表面への異物の付着を予防するためにコンピュータに、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体から読込む重点洗浄領域読込み手順、研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、を実行させるためのプログラムである。
これにより、研磨部材表面への異物の付着を予防するため、重点洗浄領域読込み手順、重点洗浄条件読込み手順、及ぶ重点洗浄手順をコンピュータに実行させることができる。
【0047】
請求項27に記載の発明は、研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体から読込む重点洗浄領域読込み手順、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、を実行させるためのプログラムである。
【0048】
これにより、研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するため、研磨部材表面に付着した異物を洗浄するための重点洗浄領域読込み手順、付着領域特定手順、重点洗浄条件読込み手順、及び重点洗浄手順をコンピュータに実行させることができる。
【0049】
請求項28に記載の発明は、研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積する付着領域記憶手順、前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出する重点洗浄領域算出手順、研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、を実行させるためのプログラムである。
【0050】
これにより、研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するため、研磨部材表面に付着した異物を洗浄するための付着領域特定手順、付着領域記憶手順、重点洗浄領域算出手順、重点洗浄条件読込み手順、及び重点洗浄手順をコンピュータに実行させることができる。
【0051】
請求項29に記載の発明は、前記付着領域特定手順が、前記研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順であることを特徴とする請求項25,27または28記載のプログラムである。
これにより、研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知する付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0052】
請求項30に記載の発明は、前記付着領域特定手順が、前記研磨部材表面を画像解析して該表面に異物が付着したことを検知する手順を含むことを特徴とする請求項29記載のプログラムである。
これにより、前記研磨部材表面を画像解析して該表面に異物が付着したことを検知する手順を含む付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0053】
請求項31に記載の発明は、前記付着領域特定手順が、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順であることを特徴とする請求項25,27または28記載のプログラムである。
これにより、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0054】
請求項32に記載の発明は、前記付着領域特定手順が、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含むことを特徴とする請求項31記載のプログラムである。
これにより、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含む付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0055】
請求項33に記載の発明は、異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するためにコンピュータに、研磨部材表面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄されるべき位置または範囲として特定する手順、及び前記特定した重点的に洗浄されるべき位置または範囲を記憶して蓄積する手順、を実行させるためのプログラムである。
これにより、異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するための手順をコンピュータに実行させることができる。
【0056】
請求項34に記載の発明は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するためにコンピュータに、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する手順、及び前記研磨対象物の研磨面を診断して重点的に洗浄されるべき前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、を実行させるためのプログラムである。
これにより、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するための手順をコンピュータに実行させることができる。
【0057】
請求項35に記載の発明は、特定した異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するためにコンピュータに、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として特定された情報を記憶して蓄積する手順を更に実行させることを特徴とする請求項34記載のプログラムである。
これにより、特定した異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するための手順をコンピュータに実行させることができる。
【0058】
請求項36に記載の発明は、前記付着領域特定手順が、前記研磨対象物の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含むことを特徴とする請求項34記載のプログラムである。
これにより、研磨対象物の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含む付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0059】
請求項37に記載の発明は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するためにコンピュータに、研磨対象物の研磨面を撮影した画像を画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、を実行させるためのプログラムである。
これにより、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するための付着領域特定手順をコンピュータに実行させることができる。
【0060】
請求項38に記載の発明は、請求項25乃至36のいずれかに記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記憶媒体である。
請求項39に記載の発明は、研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、請求項38に記載の記憶媒体からプログラムを読み出して該プログラムを実行することができるコンピュータを有することを特徴とする研磨装置である。
このように、コンピュータ読取り可能な記憶媒体にプログラムを記録しておき、記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、スクラッチの発生による歩留りの低下を抑制した研磨装置を提供することができる。
【0061】
請求項40に記載の発明は、請求項37に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記憶媒体である。
請求項41に記載の発明は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、請求項40に記載の記憶媒体からプログラムを読み出して該プログラムを実行することができるコンピュータを有することを特徴とする付着領域特定装置である。
このように、コンピュータ読取り可能な記憶媒体にプログラムを記録しておき、記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、スクラッチ発生の原因となる研磨部材表面の異物の付着位置または付着領域を特定する付着領域特定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、研磨対象物が大口径であっても、研磨部材に付着した異物を原因としたスクラッチによる歩留りの低下を抑制することができる。つまり、研磨部材表面に付着した異物を検知した時に、研磨を中止して、研磨部材表面を洗浄したり、研磨部材を交換したりすることで、スクラッチによる歩留りの低下を抑制することができる。また、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、研磨を中止した後や研磨中に、この研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することにより、効果的な異物の除去作業を実施して、スクラッチによる歩留りの低下を抑制することができる。更に、研磨部材表面への異物の付着を効率よく予防して、スクラッチによる歩留りの低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、研磨パッド等の研磨部材の表面に異物が付着した時の「異物付着位置および異物付着範囲」について、図1を参照して説明する。一般に、研磨中の研磨パッド等の研磨部材は静止しておらず、図1(a)に示すように、回転式の研磨部材200の場合は回転運動を、図1(b)に示すように、無限軌道ベルト式の研磨部材202の場合は直線運動をしている。
【0064】
異物付着位置とは、研磨部材表面の異物が付着している位置そのものを示す。例えば、図1(a)に示す、回転式の研磨部材200において、研磨部材200の表面に固定された基準座標(図では極座標)をとった場合、異物Fが付着している研磨部材200の表面上の座標(R1,θ)が異物付着位置となる。図1(b)に示す、ベルト式の研磨部材202においては、研磨部材202の表面に固定された基準座標をとった場合、研磨部材202の表面上の異物Fが付着している座標(L1,H)が異物付着位置となる。なお、基準座標は、研磨部材表面と一緒に回転または直線運動する。
【0065】
異物付着範囲とは、研磨部材が静止した時に、研磨部材表面の異物が付着している可能性のある範囲を示す。したがって、図1(a)に示す、回転式の研磨部材200の場合、異物付着範囲は、例えば研磨部材200の回転中心から半径R1の位置(円周方向の位置θは特定していない)、または半径R2から半径R3の範囲(R2≠R3)などと表現することができる。また、図1(b)に示す、ベルト式の研磨部材202の場合、異物付着範囲は、ベルトの端から距離L1の位置(ベルトの移動方向の位置Hは特定していない)、または距離L2から距離L3の範囲(L2≠L3)などと表現することができる。
【0066】
次に、研磨部材表面の異物を検知部で検知して、研磨部材表面の洗浄に付する異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部について説明する。接触方式による異物の検知部を備えた付着領域特定部は、研磨部材表面に接触させた圧力センサや変位センサなど、研磨部材に検知部を接触させることで、研磨部材表面の異物の付着を検知して、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する。変位センサは、例えば一般的に市販されている接触式変位センサや、研磨部材に接触させた検知片とその変位を読取る読取り機構を備えた変位センサである。読取り機構としては、一般的に市販されている接触式変位センサや非接触式変位センサを用いることができる。
【0067】
例えば、図2に示すように、検知部として、回転式の研磨部材200の表面に接触するように設置した複数の圧力センサ204を用いた付着領域特定部206について説明する。図2(a)に示すように、研磨部材200の表面に付着した異物を検知するための複数の圧力センサ(検知部)204が、研磨部材200の回転中心を中心とする半径に沿って、圧力検出面を研磨部材200の表面に接するように配設されている。研磨部材200は、その回転中心の周りを回転する。圧力センサ204は、その位置を変えること無く、一定位置に固定されている。これにより、圧力センサ204と研磨部材200は相対運動することとなる。そしてひとつ一つの圧力センサ204の研磨部材200に接する圧力検出面は、研磨部材200の表面に対して、それぞれ一定の幅を持った円環状の軌跡を描くこととなる。
【0068】
研磨部材200の表面であって、異物の付着を避けるべき範囲について、異物の有無を隈なく調べるためには、これらの円環状の軌跡が部分的に重なるように圧力センサ204を配設することが好ましく、少なくとも研磨部材200の表面であって、例えば研磨ヘッド208で保持された、半導体ウェーハ等の研磨対象物210と接する可能性のある範囲にある表面は、研磨部材200の回転に伴って、余す所無く必ず圧力センサ204の圧力検出面に接するように圧力センサ204を配設する。
【0069】
したがって、圧力センサ204の配設位置は上記要件を満たせば良いから、図2(a)に示すように、一つの半径に沿っての配設に限られることは無く、例えば研磨部材200の回転中心に対して120°ずつ均等に3箇所でそれぞれ半径に沿って配設しても良い。この場合は、異物の速やかな検知が可能(即ち、研磨部材200が120°回転するうちに検知可能)である一方、比較的多数の圧力センサを必要とする。また圧力センサの他の配設方法として、研磨部材の回転中心を中心とする半径に沿うこと無く、例えば個々の圧力センサが前記回転中心から見て互いに異なった周方向位置に配設されていても、即ち、互いに同一半径直線上には無くても所期の目的は達成できる。
【0070】
なお、図2(b)に示すように、各圧力センサ204は、それぞれの読取り圧力信号を、例えばコンピュータ212を備えて構成されるデータ処理装置に伝送できるように、配線214が施されている。なお、圧力信号の伝送は、配線を用いた伝送に限らず、無線伝送装置を用いて伝送しても良い。
【0071】
上記では、研磨部材として、例えば図1(a)に示す、回転式の研磨部材200を用いた場合について説明しているが、研磨部材として、図1(b)に示す、ベルト式の研磨部材202を用いた場合も全く同等である。例えば、ベルト式の研磨部材202を用いた場合における複数個の圧力センサの配設位置に関して言えば、ベルトの運動方向に直交する方向であって、ベルト表面に並行に1列をなすように配設しても、複数の列として配設しても良い。またベルトの運動方向に直交する方向に列をなすことなく、ばらばらに配設するようにしても良い。必要なことは、ベルト式の研磨部材202の異物検知対象となる面が余す所無く圧力センサの圧力検出面と接すること、換言すれば、前記圧力検出面により形成される軌跡に必ず接するように圧力センサを配設することである。
【0072】
次に、圧力センサ204で研磨部材200の表面に付着した異物Fを検知する方法について説明する。図2(a)に示すように圧力センサ204を設置しておけば、研磨部材200の表面に付着した異物Fは、図2(b)に示すように、研磨部材200の表面よりも突出しているので、研磨部材200の表面に付着した異物Fが研磨部材200の表面と圧力センサ204との間を通過する際に、図2(c)に示すように、圧力センサ204の読取り圧力信号が変動してピークPとなって現れる。したがって、研磨装置を制御するためのコンピュータなどで圧力センサ204の読取り圧力信号をモニタリングすることで、異物Fの研磨部材200の表面への付着を検知できる。
【0073】
また、複数の圧力センサ204のうち、異物Fを検知した圧力センサ204の位置、またはその圧力センサ204が分担している研磨部材200の表面の測定範囲から、研磨部材200の異物付着範囲を特定することができる。さらに、研磨部材200の表面に基準座標を設定し、例えばコンピュータ212などで、回転運動または直線運動による基準座標の移動の時間履歴と検知時間とを同期させれば、研磨部材200の異物付着位置を特定することができる。なお、圧力センサ204として、空間分解能が高い圧力分布測定装置(タクタイルセンサ)を用いることで、研磨部材200の表面の異物付着位置または異物付着範囲を高精度に特定することができる。
なお、図2(a)にあっては、研磨部材200の表面に、ノズル216から研磨助剤218を供給して、研磨対象物210を研磨している状態を示している。
【0074】
次に、検知部として、図3に示すように、研磨部材200に接触させた検知片220とその変位を読取る変位読取り機構222を備えた複数の変位センサ224を用いた付着領域特定部226について説明する。
【0075】
図3に示す付着領域特定部226に用いられている変位センサ(検知部)224は、例えば検知片220と、該検知片220の変位を読取るように配置された変位読取り機構222と、変位読取り機構222を一定の空間に位置が変動しないように保持する保持部228を備えている。検知片220は、研磨部材200の表面に異物Fが該表面よりも突出して存在する場合に、研磨部材200の運動により当該異物Fが検知片220に接触するとその位置が変動するように構成されている。したがって、研磨部材200の表面に異物Fが存在すると、変位読取り機構222と検知片220との相対位置が変化する。このため、図3(c)に示すように、変位読取り機構222は、ピークPを有する変位信号を発信することが出来る。
【0076】
変位読取り機構222として、一般的な接触式変位センサや非接触式変位センサを使用することが出来る。研磨部材200上の異物Fの存在を、先ず検知片220の位置変化に置き換え、それを例えば一般的な非接触式変位センサを用いた変位読取り機構222で検知し変位信号を発生させて、それを、例えばコンピュータ212で認識する。
【0077】
ここで、研磨対象物210が研磨されるように、検知片220も少しずつではあるが研磨されて磨耗する。このため、変位読取り機構222で読取る検知片220の変位は、異物Fが無くとも時間と共に変化する。したがって、検知片220の磨耗による変位読取り機構222と検知片220との相対位置の変化を相殺するような手段が必要である。このような手段として、変位読取り機構の変位信号にハイパスフィルタや微分フィルタなどを施す信号フィルタや、予め求めておいた検知片の磨耗速度を用いて相対位置の変化を相殺する手段などがある。
【0078】
検知片220には研磨されにくい材料を使用することが好ましい。このような材料として、例えばジルコニアやアルミナ等のセラミック材料や、エポキシ(EP)樹脂やフェノール(PF)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチック材料がある。
ここでは、変位センサ224として、検知片220と変位読取り機構222を備えた変位センサについて説明したが、一般的な接触式変位センサを用いてもよい。
【0079】
図3に示す例は、図2における圧力センサ204を変位センサ224に置き換えられただけであり、異物Fの検知に関して基本となる考え方は、圧力センサ204の場合と同等である。即ち、図3(a)においては、回転式の研磨部材200を用いた例であって、図2(a)に対応する例が開示されている。ここでは、研磨部材200の表面に付着した異物Fを検知するための複数の変位センサ224が、研磨部材200の回転中心を中心とする半径に沿って、検知片220が研磨部材200の表面に接するように配置されている。研磨部材200はその回転中心の周りを回転する。変位センサ224の変位読取り機構222が、例えば保持部228によって、その位置を変えることがないように一定位置に固定されている。
【0080】
変位センサ224の検知片220は、例えば保持部228により可動であるように保持されている。即ち、変位センサ224のうち、保持部228および変位読取り機構222の位置は一定位置に固定され、検知片220のみが可動であり、このような変位センサ224に対して、研磨部材200が相対運動する。そして、ひとつ一つの変位センサ224の検知片220が研磨部材200の表面に接する部分の研磨部材200の表面における軌跡は、それぞれ一定の幅を持った円環状となる。研磨部材200の表面であって、異物の付着を避けるべき範囲について異物の有無を隈なく調べるためには、これらの円環状の軌跡が部分的に重なる程度に変位センサ224を配設することが好ましく、少なくとも研磨部材200の表面であって、例えば研磨ヘッド208で保持された研磨対象物210と接する可能性のある範囲にある表面は、研磨部材200の回転に伴って、余す所なく必ず変位センサ224の検知片220に接するように変位センサ224を配設する。
【0081】
したがって、変位センサ224の配設位置は、上記要件を満たせば良いから、図3(a)に示すように、一つの半径に沿っての配設に限られることは無く、例えば研磨部材200の回転中心に対して180°ずつ均等に2箇所でそれぞれ半径に沿って配設しても良い。この場合は、異物の速やかな検知が可能(即ち、研磨部材が180°回転するうちに検知可能)である一方、比較的多数の変位センサを必要とする。また、変位センサの他の配設方法として、研磨部材の回転中心を中心とする半径に沿うこと無く、例えば個々の変位センサが前記回転中心から見て互いに異なった周方向位置に配設されていても、即ち互いに同一の半径直線上には無くても所期の目的は達成できる。
【0082】
図3(b)で示すように、各変位センサ224は、それぞれ読取り変位信号を、例えばコンピュータ212を備えて構成されるデータ処理装置に伝送できるように配線214が施されている。
【0083】
上記の例は、研磨部材として、例えば図1(a)に示す、回転式の研磨部材200を用いた場合について説明しているが、研磨部材として、図1(b)に示す、ベルト式の研磨部材202を用いた場合も同様である。即ち、ベルト式の研磨部材202を用いた場合、必要なことは、ベルト式の研磨部材202の異物検知対象となる面が余す所無く変位センサの検知片により形成される軌跡に必ず接するように変位センサを配設することである。
【0084】
次に、変位センサ224で研磨部材200の表面に付着した異物Fを検知する方法について説明する。図3(a)のように変位センサ224を設置しておけば、研磨部材200の表面に付着した異物Fは、図3(b)に示すように、研磨部材200の表面よりも突出しているので、図3(c)に示すように、研磨部材200の表面に付着した異物Fが研磨部材200の表面と検知片220の間を通過する際に、変位センサ224の読取り変位信号が変動してピークPを有するようになる。したがって、研磨装置を制御するためのコンピュータなどで変位センサ224の読取り変位信号をモニタリングすることで、研磨部材200の表面における異物Fの付着を検知できる。また、複数の変位センサ224のうち、異物を検知した変位センサ224の位置または検知片220の検知範囲から、研磨部材200の異物付着範囲を特定することができる。さらに、研磨部材200の表面に基準座標を設定し、例えばコンピュータ212などで回転運動または直線運動による基準座標の移動の時間履歴と検知時間を同期させれば、研磨部材200の異物付着位置を特定することができる。
【0085】
上述の接触方式による異物の検知部を備えた付着領域特定部による研磨部材の異物付着位置または異物付着範囲の特定は、研磨対象物の研磨前、研磨中、研磨後や研磨部材のドレッシング中など、研磨部材が運動している時に行うことができる。研磨中であっても異物の付着を検知できるので、異物の付着を直ちに検知することができる。
【0086】
次に、研磨部材表面の異物を非接触方式の検知部で検知して、研磨部材表面の洗浄に付する異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部について説明する。非接触方式による異物の検知部を備えた付着領域特定部は、例えば、研磨部材の表面を撮影して画像解析するなど、研磨部材に接触することなく研磨部材表面上の異物の付着を検知して、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する。
【0087】
例えば、研磨部材の表面を撮影する検知部としての撮影装置と、撮影した画像を画像解析する演算装置を備えた付着領域特定部に関して、先ず、構成について説明し、次に、付着領域特定部を利用した画像解析について説明する。
【0088】
例えば、図4のように、研磨部材200の上方の該研磨部材200の表面を撮影可能な位置に撮影装置(検知部)230が設置される。撮影装置230は、動画撮影装置であっても静止画撮影装置であっても良く、アナログ式撮影装置であってもディジタル式撮影装置であっても良い。撮影した画像は、下記のように、演算装置232で画像解析されるので、画像解析を容易にするために、撮影装置230はCCDカメラなどを用いたディジタル方式の静止画撮影装置が好ましい。
【0089】
付着領域特定部234は、撮影された画像に画像解析を施すための演算装置232を備えている。撮影装置230によって撮影された画像は、例えば画像データとして、配線233を通して演算装置232に伝送され、画像解析が施される。演算装置232には、画像解析ソフトや補助的な画像解析回路によって画像解析を実行できる一般的なコンピュータや、画像解析専用コンピュータ、ディジタル式画像解析回路、アナログ式画像解析回路などを用いることができる。また、演算装置232は、撮影装置230の制御機能を備えていても良い。
この例において、画像とは、アナログ画像、ディジタル画像データ、アナログ画像またはディジタル画像データから変換されたアナログ電気信号である。
【0090】
次に、付着領域特定部234による画像解析について説明する。研磨部材200の研磨対象物を研磨する表面を適切な数の区画236に分け、ある区画236を含み、好ましくは当該区画236の周辺部分も撮影範囲238に含めるようにして、撮影装置230で研磨部材200の表面の区画236ごとに逐次撮影する。撮影した画像に演算装置232で補正のための画像変換を施し、画像変換した画像から特徴抽出を行う。ここで、補正のための画像変換には、ノイズ除去、ひずみ補正、ぼけ修正、鮮鋭化(尖鋭化)、画像強調などの空間フィルタや、スペクトル変換、ウォルシュ変換、ウェーブレット変換、正規化などが含まれる。また、特徴抽出には、エッジ抽出、線抽出、輪郭抽出、色彩抽出、濃度抽出、テクスチャ抽出などが含まれる。
【0091】
その後、演算装置232により画像認識を行うことで、研磨部材200の表面に異物が付着しているかどうかを判定する。ここで、画像認識には、最近傍法(Nearest Neighbor Method)、ベイズの識別規則、ダイナミックプログラミングマッチング(DPマッチング)、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)などのパターン認識が含まれる。なお、この例では、画像変換、特徴抽出、画像認識のうちの少なくともいずれか一つを行うことを画像解析と呼ぶ。これによって、研磨部材200の表面に異物が付着しているかどうかを検知できる。
【0092】
この例では、研磨部材200の表面を複数の区画236に分けて、撮影範囲238を逐次撮影する例を説明したが、研磨部材200の全体を一度に撮影しても良く、また区画236の数は、特に限定されるものではない。また、研磨部材200の表面の異物Fの付着位置または付着範囲は、画像認識で異物があると判定した位置または範囲として特定できる。研磨部材200の表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するために、上述の接触方式の場合と同様に、研磨部材表面に基準座標を設定し、研磨装置を制御するためのコンピュータなどで回転運動または直線運動による基準座標の移動の時間履歴と検知時間とを同期させてもよい。
【0093】
ここで、撮影装置230には、CCDカメラを用いるのが好都合である。CCDカメラを用いると、ディジタル方式の演算装置232で画像解析を実施することができる。もちろん、アナログ方式のカメラを撮影装置230として用い、撮影信号をA/D変換してディジタル方式の演算装置232で画像解析を実施することもできる。これは、他の撮影装置についても同様である。
また、演算装置232は、付着領域特定部234に専用の演算装置を用いても良いし、研磨装置を制御するためのコンピュータを流用しても良い。
【0094】
不透明な研磨助剤を用いて研磨を行う場合、上述の非接触方式を採用した付着領域特定部234による研磨部材200の表面の異物の検出は、研磨部材のドレッシング中や、ドレッシング後など、研磨部材の表面に研磨助剤がほとんど残っていない時に行うことが望ましい。図4に示す例では、ノズル240から研磨部材200の表面に純水242を流しながら、研磨部材200をドレッサ244でドレッシングしている間に、研磨部材200の表面の異物Fを検出している。研磨助剤の供給中や、研磨部材200の表面に研磨助剤が大量に残っている時は、研磨部材200の表面が不透明な研磨助剤により覆われるので、異物の検知が困難となる。
【0095】
また、上述の非接触方式を採用した付着領域特定部234による研磨部材200の表面の異物の検出は、研磨部材200が運動しているか否かに拘わらず行うことができる。研磨部材200が運動中の場合は、研磨部材200の運動に合わせて区画236が移動するので、撮影のタイミングを研磨部材200の運動に同期させる。また、研磨部材200が運動していない場合は、撮影装置230を移動させるなどして、研磨部材200の研磨対象物を研磨する表面を隈なく撮影するようにする。上述のように、研磨部材200全体を一度に撮影しても良い。
【0096】
上記においては、検知部を有する付着領域特定部について説明した。しかし、付着領域特定部は、必ずしも検知部を備える必要は無く、例えばコンピュータを用いたシミュレーションにより、異物が付着する蓋然性が高い位置や範囲の情報を得て、この情報を、検知部を備えない付着領域特定部に入力するようにしてもよいし、付着領域特定部自身がシミュレーション機能を備えるようにしてもよい。また、付着領域特定部により特定した位置または範囲の情報を蓄積しておき、それら過去の蓄積データに基づいて、位置または範囲を特定する付着領域特定部であっても良い。これらの付着領域特定部を用いた時には、現在用いている研磨部材について、異物の検知を行うことを要件としない。
【0097】
次に、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)を診断する際の、画像解析による付着領域特定部について説明する。画像解析による付着領域特定部は、研磨対象物の研磨後の表面を撮影して画像解析し、該表面のスクラッチを検出して、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を間接的に特定する。例えば、検知部として、研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)を撮影する撮影装置を使用し、撮影した画像を画像解析する演算装置(診断装置または画像解析装置)を備えた付着領域特定部に関して、先ずその構成について説明し、次に、この付着領域特定部による画像解析について説明する。
【0098】
例えば、図5に示すように、保持台246上に保持された半導体ウェーハ等の研磨対象物210の研磨後の表面(研磨面)210aを撮影可能な位置に撮影装置(検知部)250が設置されている。ここで、撮影装置250は、動画撮影装置であっても静止画撮影装置であっても良く、アナログ式撮影装置であってもディジタル式撮影装置であっても良い。撮影した画像は、下記のように、演算装置(診断装置または画像解析装置)252で画像解析されるので、画像解析を容易にするために、撮影装置250は、CCDカメラなどを用いたディジタル方式の静止画撮影装置が好ましい。
【0099】
付着領域特定部254は、撮影された画像に画像解析を施すための演算装置252を備えている。撮影装置250によって撮影された画像は、例えば画像データとして、配線253を通して演算装置252に伝送され、画像解析が施される。演算装置252には、画像解析ソフトや補助的な画像解析回路によって画像解析を実行できる一般的なコンピュータや、画像解析専用コンピュータ、ディジタル式画像解析回路、アナログ式画像解析回路などを用いることができる。また、演算装置252は、撮影装置250の制御機能を備えていても良い。
なお、この例において、画像とは、アナログ画像、ディジタル画像データ、アナログ画像またはディジタル画像データから変換されたアナログ電気信号である。
【0100】
次に、付着領域特定部254による画像解析について説明する。研磨対象物210の研磨後の表面(研磨面)210aを適切な数の区画256に分け、ある区画256を含み、好ましくは当該区画256の周辺部分も撮影範囲258に含めるようにして、撮影装置250で、研磨対象物210の研磨後の表面210aを各区画256ごとに逐次撮影する。撮影した画像に演算装置252で補正のための画像変換を施し、画像変換した画像から特徴抽出を行う。ここで、補正のための画像変換には、ノイズ除去、ひずみ補正、ぼけ修正、鮮鋭化(尖鋭化)、画像強調などの空間フィルタや、スペクトル変換、ウォルシュ変換、ウェーブレット変換、正規化などが含まれる。また、特徴抽出には、エッジ抽出、線抽出、輪郭抽出、色彩抽出、濃度抽出、テクスチャ抽出などが含まれる。
【0101】
その後、演算装置(診断装置または画像解析装置)252により画像認識を行うことで、研磨対象物210の研磨後の表面210aに生じたスクラッチ210bを検出(抽出)する。研磨対象物210の研磨後の表面210aにスクラッチがある場合には、研磨部材表面に異物が付着していることになる。ここで、画像認識には、最近傍法(Nearest Neighbor Method)、ベイズの識別規則、ダイナミックプログラミングマッチング(DPマッチング)、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)などのパターン認識が含まれる。なお、この例では、画像変換、特徴抽出、画像認識のうちの少なくともいずれか一つを行うことを画像解析と呼ぶ。
【0102】
この付着領域特定部254を用いることで、研磨部材表面への異物の付着を間接的に検知できる。その際、演算装置252により、スクラッチの幅や長さ、深さなどを割り出せば、致命的な欠陥であるか否かを調べることができる。スクラッチが致命的な欠陥である場合には、直ちに研磨を中止し、研磨部材の表面を洗浄するなどの対応をとることができる。また、スクラッチが致命的な欠陥でない場合には、そのまま研磨を続けることができる。したがって、研磨のスループットを極力下げることなく、歩留まり低下を抑制することができる。
ここで、演算装置252は、付着領域特定部254に専用の演算装置を用いても良いし、研磨装置を制御するためのコンピュータを流用しても良い。
【0103】
研磨対象物が半導体ウェーハの場合、半導体デバイス検査装置メーカーが販売している各種ウェーハ欠陥検査装置、ウェーハ異物検査装置などがスクラッチの検出やスクラッチが致命的な欠陥であるか否かの判定に利用できる。したがって、この付着領域特定部254を用いて、研磨対象物210の表面(研磨面)210aのスクラッチ210bを検出すると共に、前述の市販の欠陥検査装置を併用すれば、スループットを好適な値に維持できる。
【0104】
次に、研磨対象物210の研磨後の表面(研磨面)210aを診断する際の、画像解析による異物付着位置または異物付着範囲の特定方法について説明する。画像解析による異物付着位置または異物付着範囲の特定方法とは、研磨後の研磨対象物210の表面(研磨面)210aを撮影して画像解析し、該表面210aのスクラッチ210bから、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する方法である。
【0105】
ここで、研磨対象物210の表面(研磨面)210aのスクラッチ検出は、例えば、前述の付着領域特定部254で行う。この付着領域特定部254は、撮影装置(検知部)250により検出したスクラッチを画像解析する演算装置252を備えている。
【0106】
研磨部材の異物付着位置または異物付着範囲を特定する方法の一つは、特許文献11に開示されているように、スクラッチ上の一点における曲率円中心や曲率半径と研磨装置の幾何学的パラメータを用いて、定式化されたスクラッチ軌道から特定する方法である。ここで、研磨装置の幾何学的パラメータとは、研磨部材回転中心と研磨対象物回転中心との距離など、装置の各要素の位置関係により決まるパラメータのことである。付着領域特定部に備えられた演算装置は、画像解析により、スクラッチから前記曲率円中心や曲率半径を算出し、定式化されたスクラッチ軌道から演算して異物の付着位置または付着範囲を特定する。
【0107】
この方法によれば、研磨部材の異物付着位置または異物付着範囲が高精度に求まる。しかし、研磨対象物が研磨部材上を揺動する場合などは、スクラッチ軌道の定式化や、定式化されたスクラッチ軌道から異物付着位置または異物付着範囲を特定する演算方法が複雑となる。
【0108】
そこで、この例による付着領域特定部254を用いた、異物付着位置または異物付着範囲を特定する方法を以下に示す。この方法によれば、複雑な研磨レシピを設定したとしても、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を高精度で容易に特定することが出来るので、極めて有用である。
【0109】
まず、異物が付着した研磨部材で研磨対象物を研磨した時に、研磨後の研磨対象物表面(研磨面)に生じるスクラッチのパターンを、例えば幾つかの異物付着位置または異物付着範囲に対して演算装置により演算し、研磨対象物の研磨面に現れる標準パターンとして、プログラムおよび/またはデータ読込み可能な記憶装置に記憶しておく。次に、付着領域特定部254で実際に検出した研磨対象物の研磨後の表面(研磨面)のスクラッチパターン(検出パターン)と標準パターンとを演算装置252によって比較し、その近似度合いから、研磨部材の異物付着位置または異物付着範囲を特定する。演算装置252による比較には、画像認識が含まれる。
【0110】
ここで、標準パターンには、実験的に作成する標準パターンと、シミュレーションで作成する標準パターンとがある。実験的に標準パターンを作成する方法は、例えば次の通りである。まず、異物や異物に代わるものを人為的に付着させた研磨部材で実際に研磨対象物を研磨する。次に、研磨してできたスクラッチを付着領域特定部254により画像解析して検出する。検出したスクラッチから、所望のパターンをコンピュータ読取り可能な画像データとして作成する。標準パターンとして画像データを採用する場合、検出したスクラッチの画像データが標準パターンである。
【0111】
また、シミュレーションで標準パターンを作成する方法は、次の通りである。まず、研磨装置の幾何学的パラメータや研磨条件、異物付着位置または異物付着範囲を用いて、研磨部材表面に固着した異物の研磨対象物の表面(被研磨面)での軌跡を計算する。計算した軌跡から、所望のパターンをコンピュータ読取り可能なデータとして作成する。標準パターンとして画像データを採用する場合、作成したパターンのデータを画像データに変換した画像データが標準パターンである。
【0112】
したがって、撮影装置250により検出したスクラッチの画像データを検出パターンとし、演算装置252を用いた画像認識により、検出パターンと標準パターンとを比較して、その近似度合いから、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。
【0113】
ここで、幾何学的パラメータとは、研磨部材回転中心と研磨対象物回転中心との距離など、装置の各要素の位置関係により決まるパラメータのことであり、研磨条件とは、研磨部材回転速度(研磨部材移動速度)、研磨対象物回転速度、研磨対象物揺動速度、研磨対象物揺動範囲などのことである。研磨条件は、通常研磨前に研磨レシピとして研磨装置に入力されるので、既知の値である。研磨条件が複雑であっても、この既知の研磨レシピから付着位置に応じた標準パターンを作成することは容易である。したがって、研磨装置に研磨レシピを入力した後に、研磨装置に備えられる演算装置やコンピュータでシミュレーションを行い、標準パターンを作成することもできる。
【0114】
したがって、複雑な研磨レシピを設定したとしても、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を高精度で特定することができる。検出パターンを標準パターンと比較して、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する手法であるので、必要に応じ標準パターンの数を増加して精度を高める事が出来る。なお、画像認識には、最近傍法(Nearest Neighbor Method)、ベイズの識別規則、ダイナミックプログラミングマッチング(DPマッチング)、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)などのパターン認識が含まれる。
【0115】
ここで、上記説明では、標準パターンとして、画像データの例を挙げたが、スクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨対象面の特定位置でのスクラッチの有無など、スクラッチから得られる種々のデータを標準パターンとして用いることができる。この様な標準パターンを用いる場合、画像認識を行わなくても、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。
【0116】
例えば、円形形状の研磨対象面について述べると、標準パターンとして、スクラッチの研磨面半径方向密度分布や円周方向密度分布を用いる場合の特定方法は、次の通りである。まず、演算装置252を用いて、撮影装置250により検知したスクラッチから、スクラッチの研磨面半径方向密度分布や円周方向密度分布を演算して検出パターンとする。次に、演算装置252により、検出パターンと予め演算してデータとして蓄積しておいた標準パターンの分布の特性、例えばスクラッチの分布の周期性やピーク位置(スクラッチの集中する位置)、ピーク高さ(スクラッチの集中度即ち密度)などを比較することで、付着位置または付着範囲を特定する。
【0117】
ここで、検出パターンと標準パターンの分布の特性が完全に一致しない場合には、演算装置252により、最も近い標準パターンを選択してその付着位置または付着範囲を採用したり、幾つかの近い標準パターンの付着位置または付着範囲の平均や分布関数の極大値を求めその結果を採用したりして、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する。したがって、異物付着位置または異物付着範囲は、一つとは限らない。これは、他のどの特定方法による場合も同様である。
【0118】
ここで、演算装置252は、付着領域特定部254に専用の演算装置を用いても良いし、研磨装置を制御するためのコンピュータを流用しても良い。
【0119】
図6は、本発明の実施の形態に係る主として半導体ウェーハを研磨するための化学機械研磨装置の各部の配置構成を示す平面図である。図6に示す化学機械研磨装置は、多数の半導体ウェーハ(研磨対象物)をストックするウェーハカセット21を載置するロード・アンロードステージ22を4つ備えている。ロード・アンロードステージ22は、昇降可能な機構を有していても良い。ロード・アンロードステージ22上の各ウェーハカセット21に到達可能となるように、走行機構23の上に2つのハンドを有した搬送ロボット24が配置されている。
【0120】
搬送ロボット24が到達可能な位置に、研磨パッド(研磨部材)に付着した異物を検知するとともに、研磨パッドの異物付着範囲を特定する図5に示す付着領域特定部120が備えられている。この付着領域特定部120は、この例では、図5に示す、撮影装置250と演算装置(診断装置または画像解析装置)252を備えた付着領域特定部254で構成され、半導体ウェーハの研磨後の表面(研磨面)を診断することで、研磨パッド上の異物の検知と異物付着範囲の特定を行う。ここで、付着領域特定部120は、複数の半導体ウェーハを並列して診断できるように構成されるのが好ましい。これにより、研磨装置の処理能力(スループット)を落とさずに研磨することができる。
【0121】
搬送ロボット24における2つのハンドのうち、下側のハンドは、ウェーハカセット21より半導体ウェーハを受け取る時のみに使用される。また、上側のハンドは、付着領域特定部120から半導体ウェーハを出し入れする時と、ウェーハカセット21に半導体ウェーハを戻す時に使用される。これは、洗浄した後のクリーンな半導体ウェーハを上側にして、それ以上半導体ウェーハを汚さないための配置である。下側のハンドは、半導体ウェーハを真空吸着する吸着型ハンドであり、上側のハンドは、半導体ウェーハの周縁部を保持する落し込み型ハンドである。吸着型ハンドは、ウェーハカセット21内の半導体ウェーハのずれに関係なく正確に搬送し、落し込み型ハンドは、真空吸着のようにごみを集めてこないので、半導体ウェーハの裏面のクリーン度を保って半導体ウェーハを搬送できる。
【0122】
搬送ロボット24の走行機構23を対称軸に、ウェーハカセット21とは反対側に2台の洗浄機25,26が配置されている。各洗浄機25,26は、搬送ロボット24のハンドが到達可能な位置に配置されている。また、2台の洗浄機25,26の間で、ロボット24が到達可能な位置に、4つの半導体ウェーハの載置台27,28,29,30を備えたウェーハステーション70が配置されている。洗浄機25,26は、半導体ウェーハを高速回転させて乾燥させるスピンドライ機能を有しており、これにより半導体ウェーハの2段洗浄及び3段洗浄にモジュール交換することなく対応することができる。
【0123】
洗浄機25,26と載置台27,28,29,30が配置されている領域Bと、ウェーハカセット21、付着領域特定部120及び搬送ロボット24が配置されている領域Aのクリーン度を分けるために隔壁84が配置され、互いの領域A,Bの間で半導体ウェーハを搬送するため、隔壁84の開口部にシャッター31が設けられている。洗浄機25と3つの載置台27,29,30に到達可能な位置に2つのハンドを有した搬送ロボット80が配置されており、洗浄機26と3つの載置台28,29,30に到達可能な位置に2つのハンドを有した搬送ロボット81が配置されている。
【0124】
載置台27は、搬送ロボット24と搬送ロボット80との間で半導体ウェーハを互いに受渡すために使用され、半導体ウェーハの有無検知用センサ91を具備している。載置台28は、搬送ロボット24と搬送ロボット81との間で半導体ウェーハを受渡すために使用され、半導体ウェーハの有無検知用センサ92を具備する。載置台29は、搬送ロボット81から搬送ロボット80へ半導体ウェーハを搬送するために使用され、半導体ウェーハの有無検知用センサ93と半導体ウェーハの乾燥防止、もしくは洗浄用のリンスノズル95を具備している。
【0125】
載置台30は、搬送ロボット80から搬送ロボット81へ半導体ウェーハを搬送するために使用され、半導体ウェーハの有無検知用センサ94と半導体ウェーハの乾燥防止、もしくは洗浄用のリンスノズル96を具備している。載置台29,30は、共通の防水カバーの中に配置されていて、搬送用のカバー開口部にはシャッター97を設けている。載置台29は載置台30の上にあり、洗浄後の半導体ウェーハを載置台29に、洗浄前の半導体ウェーハを載置台30に置くことにより、リンス水の落下による汚染を防止している。なお、図6においては、センサ91,92,93,94、リンスノズル95,96及びシャッター97は模式的に示したものであって、位置および形状は正確に図示されていない。
【0126】
搬送ロボット80,81の上側のハンドは、一度洗浄された半導体ウェーハを洗浄機25,26もしくはウェーハステーション70の載置台へ搬送するのに使用され、下側のハンドは、1度も洗浄されていない半導体ウェーハ、及び研磨される前の半導体ウェーハを反転機へ搬送するのに使用される。下側のハンドで反転機への半導体ウェーハの出し入れを行うことにより、反転機上部の壁からのリンス水の滴により上側のハンドを汚染することがない。洗浄機25と隣接するように、搬送ロボット80のハンドが到達可能な位置に洗浄機82が配置されている。また、洗浄機26と隣接するように、搬送ロボット81のハンドが到達可能な位置に洗浄機83が配置されている。洗浄機25,26,82,83、ウェーハステーション70の載置台27,28,29,30及び搬送ロボット80,81は、全て領域Bの中に配置されていて、領域A内の気圧よりも低い気圧に調整されている。洗浄機82,83は、例えば両面洗浄可能な洗浄機である。
【0127】
この化学機械研磨装置は、各機器を囲むようにハウジング66を有しており、ハウジング66内は、隔壁84、隔壁85、隔壁86、隔壁87及び隔壁67により複数の部屋(領域A、領域Bを含む)に区画されている。隔壁87によって領域Bと区分されたポリッシング室が形成され、ポリッシング室は、更に隔壁67によって、第一の研磨部である領域Cと第二の研磨部である領域Dに区分されている。そして、2つの領域C,Dにはそれぞれ2つの研磨テーブルと、1枚の半導体ウェーハを保持しかつ半導体ウェーハを前記研磨テーブルに対して押し付けながら研磨するための1つのトップリングが配置されている。即ち、領域Cには研磨テーブル54,56、領域Dには研磨テーブル55,57がそれぞれ配置されており、また、領域Cにはトップリング52、領域Dにはトップリング53がそれぞれ配置されている。
【0128】
ここで、研磨テーブル54,55,56,57の最上面には、研磨部材として研磨パッド10(図7参照)が貼り付けられている。研磨の目的に応じてそれぞれ種類の異なる研磨パッドが使用されることもある。また、領域C内の研磨テーブル54に研磨砥液を供給するための砥液ノズル60と、研磨テーブル54のドレッシングを行うためのドレッサ58とが配置されている。また、領域C内の研磨テーブル54に付着した異物を検知し、異物付着範囲を特定するための付着領域特定部110が配置され、研磨テーブル54を洗浄するための洗浄部112が配置されている。領域D内の研磨テーブル55に研磨砥液を供給するための砥液ノズル61と、研磨テーブル55のドレッシングを行うためのドレッサ59とが配置されている。また、領域D内の研磨テーブル55に付着した異物を検知し、異物付着範囲を特定するための付着領域特定部111が配置され、研磨テーブル55を洗浄するための洗浄部113が配置されている。さらに、領域C内の研磨テーブル56のドレッシングを行うためのドレッサ68と、領域D内の研磨テーブル57のドレッシングを行うためのドレッサ69とが配置されている。
【0129】
この付着領域特定部110,111は、この例では、図3に示す、複数の変位センサ224を有する付着領域特定部226で構成されている。この付着領域特定部110,111を、図2に示す、複数の圧力センサ204を有する付着領域特定部206で構成したり、図4に示す、撮影装置230と演算装置232を有する付着領域特定部234で構成したりしても良い。
【0130】
これにより、付着領域特定部110,111は、研磨中も研磨パッド上の異物の付着を検知し、研磨パッド上の異物付着範囲を特定することができる。また、洗浄部112,113は、回転するブラシを研磨パッドに擦り付けることにより研磨パッドの洗浄を行う洗浄部である。洗浄部112,113は、ブラシを研磨パッドの任意の半径に移動させる機構を有している。したがって、研磨テーブル54,55の回転中に洗浄部112,113のブラシをある位置に固定すれば、研磨パッドのその位置に相当する範囲を重点的に洗浄することができる。また、洗浄部112,113のブラシを研磨パッドの中心と端の間で揺動させるように移動させれば、研磨パッドを満遍なく洗浄することができる。
【0131】
ここで、「重点的に洗浄する」とは、(1)他の位置または範囲に比べて長時間洗浄すること、(2)ブラシや砥石、PVAスポンジスクラブなどで擦る場合は、他の位置または範囲に比べて大きい圧力で擦ること、(3)ブラシや砥石、PVAスポンジスクラブなどを回転させて擦る場合は、他の位置または範囲に比べて高回転速度で擦ること、(4)純水や薬液などの洗浄液を吹き付けて異物を洗い流す場合は、他の位置または範囲に比べて大流量、高速(高圧力)、高濃度、高温の中から選択した条件で洗浄液を吹き付けて洗い流すこと、(5)スラリーを吸引する場合は、他の位置または範囲に比べて高吸引力でスラリーを吸引すること、(6)ペルオキソ硫酸やフッ酸などの溶解液で溶解させる場合は、他の位置または範囲に比べて高濃度または高温で溶解させること、(7)超音波で洗浄をアシストする場合は、他の位置または範囲に比べて高出力の超音波で洗浄すること、などを意味する。このことは、以下同様である。
【0132】
なお、研磨テーブル56,57の替わりに、湿式タイプのウェーハ膜厚測定機を設置してもよい。その場合は、研磨直後に、ウェーハ膜厚測定機で半導体ウェーハ表面の皮膜の膜厚を測定することができ、半導体ウェーハ表面の皮膜の削り増しや、測定値を利用して次の半導体ウェーハへの研磨プロセスの制御を行うこともできる。
【0133】
ポリッシング室と領域Bの間で半導体ウェーハの受け渡しを行うために、搬送ロボット80,81とトップリング52,53が到達可能な位置に、半導体ウェーハを表裏反転する反転機99,100,101,102を備えた回転式ウェーハステーション98が配置されている。反転機99,100,101,102は、回転式ウェーハステーション98の回転に伴って回転する。
【0134】
ポリッシング室と領域Bの間での半導体ウェーハの受け渡し方法を説明する。今、回転式ウェーハステーション98に備えられている反転機99,100,101,102は、図のように、領域B側に反転機99,100が、領域C側に反転機101が、領域D側に反転機102がそれぞれ配置されているとする。研磨に供される半導体ウェーハは、ウェーハステーション70から搬送ロボット80により回転式ウェーハステーション98の領域B側に配置される反転機99に渡される。また、別の半導体ウェーハは、ウェーハステーション70から搬送ロボット81により回転式ウェーハステーション98の領域B側に配置される反転機100に渡される。
【0135】
なお、搬送ロボット80が半導体ウェーハを回転式ウェーハステーション98に搬送する時には、隔壁87に設けられたシャッター45が開き、領域Bとポリッシング室との間の半導体ウェーハの受け渡しが可能となる。また、搬送ロボット81が半導体ウェーハを回転式ウェーハステーション98に搬送する時には、隔壁87に設けられたシャッター46が開き、領域Bとポリッシング室との間の半導体ウェーハの受け渡しが可能となる。
【0136】
反転機99に半導体ウェーハを渡し、反転機100に別の半導体ウェーハを渡した後、回転式ウェーハステーション98がその軸を中心に180度回転し、反転機99を領域D側に、反転機100を領域C側に移動させる。回転式ウェーハステーション98により領域C側へ移動した半導体ウェーハは、上向きになっている被研磨面(表面)が反転機100により下向きに反転させられてからトップリング52へ移送される。また、回転式ウェーハステーション98により領域D側へ移動した半導体ウェーハは、上向きになっている被研磨面(表面)が反転機99により下向きに反転させられてからトップリング53へ移送される。
【0137】
トップリング52,53に移送された半導体ウェーハは、トップリング52,53の真空吸着機構により吸着され、半導体ウェーハは、研磨テーブル54,55まで吸着されたまま搬送される。そして、半導体ウェーハは、研磨テーブル54,55上に取り付けられた研磨パッドで研磨される。
【0138】
図7は、研磨中における、トップリング52と研磨テーブル54の一部の概略断面の一例を模式的に示す図である。トップリング53および研磨テーブル55も同様の構造である。図7に示す様に、研磨対象物である半導体ウェーハ2の保持部であるトップリング52は、半導体ウェーハ2を研磨部材(研磨パッド)10に所定の圧力で押付けるためのエアバッグ5と、研磨対象物2を取り囲むように設置された支持部(リテーナリング)14と、リテーナリング14により所定の支持面圧で半導体ウェーハ2の周囲の研磨パッド10を押付けるためのエアバッグ6を備えている。
【0139】
この実施の形態では、リテーナリング14は、図7に示すように、トップリング52に保持された半導体ウェーハ2の外周に若干の隙間をあけて沿った平面視円環状をなすとともに、断面長方形状の単一の部材で構成されている。リテーナリング14の下面は、半導体ウェーハ2の表面(被研磨面)からの研磨パッド10のはみ出し部分を支持する支持面をなし、全体に渡って略同一の高さを持つ平面となっている。リテーナリング14の材質は、例えば、ジルコニアやアルミナ等のセラミック材料や、エポキシ(EP)樹脂やフェノール(PF)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチック材料で構成される。
【0140】
リテーナリング14を研磨パッド10に押付ける圧力は、圧力調整機構108によりエアバッグ6の圧力を制御して調整する。なお、エアバッグ6を備えることなく、軸からの荷重を圧力調整機構108で制御することで、支持面圧を調整するようにしても良い。エアバッグ5は、図の様に一つの区画であっても良いし、同心円状に複数の区画に分かれていても良い。
【0141】
研磨テーブル54は、研磨定盤9と研磨パッド10を備えている。研磨パッド10は、図7に示すように、一層の単層パッドであっても良いし、二層以上の多層パッドであっても良い。研磨の際に、トップリング52は、半導体ウェーハ2を研磨パッド10に押付けながら、その軸を中心に矢印Aの向きに回転する。また、研磨の際に、研磨テーブル54もその軸を中心に矢印Bの方向に回転する。なお、研磨の際には、付着領域特定部110が研磨パッド10上の異物の付着を検知している。
【0142】
図6に戻って、図6では、更にトップリング52,53がそれぞれに到達可能な位置に、前述した第2の研磨テーブル56,57が配置されている。これにより、半導体ウェーハは、第1の研磨テーブル54,55で研磨が終了した後、第2の研磨テーブル56,57に貼着された仕上げ用研磨パッドで仕上げ研磨できるようになっている。仕上げ用テーブルでは、SUBA400やPolytex(共に研磨パッドの商品名であってロデール・ニッタ製)等の研磨パッドに純水、もしくは砥粒を含まない薬液を供給しながら純水仕上げを行うか、もしくはスラリーを供給して研磨を行う。研磨の間に、次の研磨に供される半導体ウェーハが、領域B側に移動した反転機101,102に、搬送ロボット80,81により渡されていても良い。
【0143】
研磨が終了した半導体ウェーハは、トップリング52,53により、それぞれ反転機99,100に移送される。反転機99,100に移送された半導体ウェーハは、反転機99,100により、研磨後の表面(研磨面)が上向きなるように反転させられ、その後、回転式ウェーハステーション98が180度回転して、領域B側へ移動する。領域B側へ移動した半導体ウェーハは、反転機99から搬送ロボット80により洗浄機82もしくはウェーハステーション70に搬送される。また、領域B側へ移動した別の半導体ウェーハは、反転機100から搬送ロボット81により洗浄機83もしくはウェーハステーション70に搬送される。その後、適切な洗浄工程を経て、付着領域特定部120により半導体ウェーハの研磨後の表面(研磨面)のスクラッチの有無が診断され、ウェーハカセット21へ収納される。
【0144】
研磨テーブル54,55での研磨が終了した後に、研磨テーブル54,55の最上面に貼り付けられた研磨パッドをドレッサ58,59によりドレッシングする。ドレッシングの際に、砥液ノズル60,61は、純水などの洗浄液を研磨パッドに供給する。このドレッシングにより、研磨パッド表面の洗浄、目立て、形状修正などが行われる。また、付着領域特定部110,111及び付着領域特定部120で研磨パッドに異物の付着が検知されなければ、ドレッシングと並行して、研磨パッドの重点洗浄範囲を洗浄部112,113のブラシ等により重点的に洗浄する。重点洗浄範囲は、後述のように、予め異物が付着しやすい範囲として設定されているので、このように、研磨パッドの重点洗浄範囲を洗浄部112,113で重点的に洗浄することで、研磨パッドへの異物の付着を予防することができる。ドレッシングの際にも、付着領域特定部110,111が研磨パッド上の異物の付着を検知しているので、研磨中も研磨パッド上の異物の付着を検知し、付着範囲を特定することができる。
【0145】
研磨中やドレッシング中に付着領域特定部110,111が研磨パッドに付着した異物を検知した場合、研磨パッド上の異物付着範囲を研磨パッドの半径の範囲として特定することができる。これは、この例では、付着領域特定部110,111として、図3に示す、複数の変位センサ224を有する付着領域特定部226が使用され、変位センサ224が研磨パッドの半径方向に沿って複数配置されているので、異物を検知した変位センサ224の検知範囲に相当する範囲として特定できるからである。異物の付着範囲が特定されると、洗浄部112,113によって、異物の付着範囲を重点的に洗浄する。これにより、研磨パッドに付着した異物を効率よく除去することができる。なお、付着領域特定部110,111を常に研磨パッドに接触させておくと、付着領域特定部110,111が異物の発生源になる恐れがある。したがって、半導体ウェーハの研磨中は、付着領域特定部110,111を図示しない退避領域に退避させておくようにしても良い。また、退避領域に退避中に、図示しない付着領域特定部洗浄装置で付着領域特定部110,111を洗浄しても良い。このようにすれば、付着領域特定部110,111からの異物の発生を防ぐことができる。
【0146】
なお、付着領域特定部110,111では、研磨パッドに付着した異物の他に、スラリーや洗浄液に流されて研磨パッド上を移動する異物が検知されることがある。このため、図6に示す化学機械研磨装置では、より正確に研磨パッド上の異物の付着を検知するために、半導体ウェーハの研磨後の表面(研磨面)のスクラッチの有無を診断して異物の付着を検知する付着領域特定部120を備えている。この付着領域特定部120として、この例では、図5で示す、撮影装置250を用いた付着領域特定部254が使用されている。つまり、この付着領域特定部120は、撮影装置250(図5参照)によって撮影した半導体ウェーハの研磨後の表面(研磨面)の画像を演算装置(診断装置または画像解析装置)252で画像解析することによって、該表面上のスクラッチの有無を診断する。画像解析の結果、半導体ウェーハの研磨後の表面にスクラッチが有ると判断された場合、研磨パッドへの異物の付着を検知したことになる。また、撮影したスクラッチの画像をパターン認識することによって、研磨パッド上の異物付着範囲を特定することができる。
【0147】
画像認識に用いる標準パターンとして、研磨パッドの半径R1に異物が付着したとしてスクラッチをシミュレーションした例を図8に示す。この例は、半導体ウェーハ回転速度が80rpm、研磨パッド回転速度が90rpmの場合であり、研磨中の半導体ウェーハの揺動は無い。なお、この例では、半径R1の間隔を60mmとして、標準パターンを5つ例示している。つまり、図8(a)は、研磨パッド上の半径:R1=315mm上に異物が付着した時のスクラッチパターンを、図8(b)は、研磨パッド上の半径:R1=255mm上に異物が付着した時のスクラッチパターンを、図8(c)は、研磨パッド上の半径:R1=195mm上に異物が付着した時のスクラッチパターンを、図8(d)は、研磨パッド上の半径:R1=135mm上に異物が付着した時のスクラッチパターンを、図8(e)は、研磨パッド上の半径:R1=75mm上に異物が付着した時のスクラッチパターンをそれぞれ示している。実際には、間隔を小さくして、より多くの標準パターンを用意することが好ましい。
【0148】
パターン認識によって、これらの標準パターンの中から撮影したスクラッチパターンに近いパターンを幾つか選び出し、パターンの近似度合いから研磨パッド上の異物付着範囲(パッドの半径の範囲)を特定する。付着領域特定部120によって、半導体ウェーハの表面にスクラッチが無いと判断された場合は、パターン認識をする必要が無い。付着領域特定部120が研磨パッド上の異物の付着を検知して、異物付着範囲を特定した場合に、洗浄部112,113によって、研磨パッドの異物付着範囲を重点的に洗浄する。これにより、研磨パッドに付着した異物を効率よく除去することができる。
【0149】
ここで、付着領域特定部110,111で特定した研磨パッドの異物付着範囲と、付着領域特定部120で特定した研磨パッドの異物付着範囲が重なる場合、研磨パッド上に異物が付着している確率が高く、かつ特定した異物付着範囲に異物が付着している確率が高い。また、研磨パッドの異物付着範囲を重点的に洗浄したにもかかわらず、1枚の半導体ウェーハを研磨する間に異物を除去できずに、複数枚にわたって異物が検知された時は、異物が付着した研磨テーブルでの研磨を一旦中止して、洗浄部112,113によって付着範囲を重点的に洗浄して異物を除去することができる。研磨パッド上から異物が除去されたことは、付着領域特定部110,111によって知ることができる。
【0150】
この化学機械研磨装置は、付着領域特定部110,111及び付着領域特定部120で特定した異物付着範囲を、制御コンピュータ130に設置した記憶装置に記憶して蓄積することができる。また、蓄積した特定範囲のデータを元に、制御コンピュータ130が付着確率を計算することによって、異物が付着しやすい範囲を割り出すことができる。この異物が付着しやすい範囲を重点洗浄範囲として、異物が付着していない時に洗浄部112,113によって重点的に洗浄することで、研磨パッドへの異物の付着を効率よく予防することができる。なお、この化学機械研磨装置においては、半導体ウェーハの搬送、研磨、洗浄、研磨パッドへの異物の付着の検知、付着位置の特定など、全ての工程が制御コンピュータ130によって制御されている。
【0151】
ここで、研磨テーブル54の研磨パッド10について、付着領域特定部110が特定した特定範囲の蓄積データから、異物が付着した確率を算出する方法について説明する。まず、図9(a)に示すように、研磨テーブル54の研磨パッド10を半径方向に5分割する区画1から区画5を定義する。それぞれの区画は、付着領域特定部110の5つの変位センサ224の検知範囲に対応している。なお、検知範囲が重なっている部分は、内側の区画に対応させている。いま、特定範囲のデータが、図9(b)に示すように、区画1から区画5における付着頻度として蓄積されているものとする。それぞれの区画における付着確率は、区画の付着頻度÷全付着頻度×100%であるので、図9(c)に示す付着確率となる。
【0152】
ここで、重点洗浄範囲を付着確率が30%以上の区画とする場合には、区画3と区画4が重点洗浄範囲となる。この研磨パッド10の重点洗浄範囲を洗浄部112によって重点的に洗浄する場合には、洗浄部112のブラシを研磨パッド10の区画3と区画4の間で揺動させて研磨パッド10を洗浄する。また、重点洗浄範囲を付着確率が最大の区画とする場合には、研磨パッド10の区画3が重点洗浄範囲となる。この場合、付着確率を算出する必要は無く、付着頻度が最大の区画を重点洗浄範囲とすれば良い。この研磨パッド10の重点洗浄範囲(区画3)を洗浄部112によって重点的に洗浄する場合、洗浄部112のブラシを研磨パッド10の区画3の間で揺動させて洗浄する。ブラシが大きく、揺動しなくても研磨パッド10の区画3の範囲を洗浄できる場合には、ブラシを揺動させる必要は無く、ブラシの位置を固定しておけば良い。
【0153】
以上、研磨テーブル54の研磨パッド10について、付着領域特定部110が特定した特定範囲の蓄積データから付着確率を算出する方法について説明したが、研磨テーブル55の研磨パッドについて、付着領域特定部111が特定した特定範囲の蓄積データから付着確率を算出する方法ついても同様である。また、付着領域特定部120が特定した特定範囲の蓄積データから付着確率を算出する方法についても同様に、研磨パッドを半径方向に分割する区画を定義し、各区画の付着頻度を記憶装置に蓄積し、蓄積したデータから付着確率を算出するようにすれば良い。
【0154】
次に、図6に示す化学機械研磨装置を用いて、研磨対象物としての半導体ウェーハを、研磨部材としての研磨パッドで研磨する際の制御フローを説明する。ここでは説明を簡単にするために、一枚の半導体ウェーハがウェーハカセット21を出て研磨テーブル54の研磨パッド10で研磨され、洗浄されて再びウェーハカセット21に戻るまで、他の半導体ウェーハの処理が開始されない場合を例に説明する。実際には、スループットを考慮して、複数の半導体ウェーハが並列して処理される。
制御コンピュータ130の記憶装置には、例えば下記のような情報が記憶されている。
【0155】
A.研磨装置制御プログラム
A−1.研磨メインルーチン
A−2.研磨準備終了判定ルーチン
A−3.ドレッシングルーチン
A−4.研磨パッド洗浄ルーチン
A−5.半導体ウェーハ洗浄ルーチン
A−6.研磨パッド診断による異物付着監視ルーチン
A−7.研磨面診断による異物付着判定ルーチン
A−8.重点洗浄範囲算出ルーチン
A−9.半導体ウェーハ搬送ルーチン
など
【0156】
B.各種条件
B−1.半導体ウェーハ搬送条件
B−2.研磨条件(研磨レシピ)
B−2−1.研磨パッド回転速度
B−2−2.半導体ウェーハ(トップリング)回転速度
B−2−3.半導体ウェーハ(トップリング)揺動速度
B−2−4.半導体ウェーハ(トップリング)揺動範囲
B−2−5.研磨時間
B−2−6.研磨圧力
B−2−7.スラリー供給流量
【0157】
B−3.ドレッシング条件
B−3−1.研磨パッド回転速度
B−3−2.ドレッサ回転速度
B−3−3.ドレッサ揺動速度
B−3−4.ドレッサ揺動範囲
B−3−5.ドレッシング時間
B−3−6.ドレッシング圧力
B−3−7.洗浄液供給量
B−4.半導体ウェーハ洗浄条件
【0158】
B−5.研磨パッド洗浄条件
B−5−1.通常洗浄条件
B−5−1−1.ブラシ回転速度
B−5−1−2.ブラシ揺動速度
B−5−1−3.ブラシ揺動範囲
B−5−1−4.ブラシ押付け圧力
B−5−1−5.洗浄時間
B−5−2.重点洗浄条件
B−5−2−1.ブラシ回転速度
B−5−2−2.ブラシ押付け圧力
B−5−2−3.洗浄時間
【0159】
B−6.幾何学的パラメータ
B−6−1.半導体ウェーハ直径
B−6−2.研磨パッド回転中心座標
B−6−3.トップリング回転中心座標
B−6−4.トップリング揺動中心座標
B−6−5.トップリング揺動半径
B−7.重点洗浄領域
など
【0160】
C.付着関連情報
C−1.研磨パッド区画
C−2.画像認識標準パターン
C−3.異物付着領域
C−4.重点洗浄領域
など
制御コンピュータ130が、研磨装置制御プログラムを記憶装置から読出すと、例えば図10に示す研磨メインルーチンの手順に従って研磨装置による研磨が開始される。つまり、先ず、制御コンピュータ130は、その一部として設置された記憶装置から各種条件を読込む。この記憶装置には、半導体ウェーハ(研磨対象物)搬送条件、研磨条件(研磨レシピ)、ドレッシング条件、半導体ウェーハ洗浄条件、研磨パッド(研磨部材)洗浄条件、幾何学的パラメータ、及び重点洗浄領域などが各種条件として記憶されている。また、この記憶装置には、各種条件の他に、研磨装置制御プログラムや付着関連情報も記憶されている。この記憶装置は、例えば制御コンピュータ130とは別個の外部記憶装置であっても良い。その場合、制御コンピュータ130は、研磨に先立って、各種条件を制御コンピュータ130に設置された入力装置などにより外部記憶装置から読込み、制御コンピュータ130の一部として設置された記憶装置に記憶する。
【0161】
各種条件を記憶装置から読込んだら、制御コンピュータ130は、研磨対象物の研磨面診断による付着領域特定部120での異物付着範囲の特定に使用するために、読込んだ各種条件を元に、複数の画像認識用標準パターンを作成する。作成する標準パターンは、例えば、図8に示すような、異物の軌跡データから解析したスクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨面の特定位置でのスクラッチの有無などのデータである。制御コンピュータ130は、作成した標準パターンを記憶装置に記憶する。なお、異物の軌跡データの作成方法は、前述した通りである。
【0162】
次に、制御コンピュータ130は、1枚の半導体ウェーハを搬送ロボット24でウェーハカセット21から取り出し、載置台28に搬送するように研磨装置を制御する。そして、載置台28に半導体ウェーハが搬送された後、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハを回転式ウェーハステーション98に備えられた反転機100に搬送するように搬送ロボット81等を制御する。
【0163】
半導体ウェーハが反転機100に搬送されると、制御コンピュータ130は、図11に示す研磨準備終了判定ルーチンを実行する。この研磨準備終了判定ルーチンでは、ドレッシング中にONとなるドレッシングフラグ、研磨パッドに異物が付着しているとONになる異物付着フラグ、及び研磨パッドの洗浄中にONになる洗浄フラグを参照する。いずれかのフラグがONの間は次の処理を待ち、全てのフラグがOFFになったら研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグをONにして研磨準備終了判定ルーチンを終了する。この状態は、研磨テーブル54の研磨パッド10で半導体ウェーハを研磨する準備が整っていることを意味する。また、研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグをONにすると、付着領域特定部110によって研磨パッド10の表面の異物を監視していた場合、制御コンピュータ130は、異物の監視を終了して付着領域特定部110を退避領域に退避させる。
【0164】
次に、制御コンピュータ130は、回転式ウェーハステーション98を回転させ、半導体ウェーハを反転機100で反転させた後、トップリング52に移送し、研磨テーブル54に搬送するように研磨装置を制御する。研磨テーブル54に半導体ウェーハが搬送されたら、制御コンピュータ130は、記憶装置から読込んだ研磨条件で半導体ウェーハを研磨するように研磨装置を制御する。半導体ウェーハの研磨条件は、研磨パッド回転速度、半導体ウェーハ(トップリング)回転速度、半導体ウェーハ(トップリング)揺動速度、半導体ウェーハ(トップリング)揺動範囲、研磨時間、研磨圧力、及びスラリー供給流量などである。
【0165】
半導体ウェーハの研磨が終了すると、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハを洗浄及び乾燥させてウェーハカセット21に戻す系列と、研磨パッド10をドレッシング及び洗浄して次の研磨に備える系列の、2つの系列の処理を並列に実行する。
【0166】
まず、研磨パッドをドレッシング及び洗浄して次の研磨に備える系列から説明する。この系列には、研磨パッドをドレッシングする作業、研磨パッドを洗浄する作業、及び研磨パッド表面の異物の付着を監視する作業の、3つの作業が含まれる。半導体ウェーハの研磨が終了すると、制御コンピュータ130は、図12に示すドレッシングルーチン、図13に示す研磨パッド洗浄ルーチン、及び図14に示す研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンを並列して実行する。
【0167】
まず、図12に示すドレッシングルーチンについて説明する。ドレッシングルーチンにおいて、制御コンピュータ130は、研磨パッド10のドレッシング中を示すドレッシングフラグをONにし、研磨パッド10をドレッサ58でドレッシングするように研磨装置を制御する。その際のドレッシング条件は、研磨スタート時に記憶装置から読込んだ条件である。ドレッシング条件は、研磨パッド回転速度、ドレッサ回転速度、ドレッサ揺動速度、ドレッサ揺動範囲、ドレッシング時間、ドレッシング圧力、及び洗浄液供給流量などである。研磨パッド10のドレッシングが終了すると、制御コンピュータ130は、ドレッシングフラグをOFFにする。以上でドレッシングルーチンが終了する。
【0168】
次に、図13に示す研磨パッド洗浄ルーチンについて説明する。研磨パッド洗浄ルーチンにおいて、制御コンピュータ130は、まず、研磨パッド10の洗浄中を示す洗浄フラグをONにする。次に、この例では、制御コンピュータ130は、研磨が終わった半導体ウェーハが3n枚目(n=1,2,3,・・・)であるかどうかを判定する。
【0169】
研磨が終わった半導体ウェーハが3n枚目でなかった場合、制御コンピュータ130は、研磨パッド10の全体を洗浄部112のブラシで満遍なく洗浄するように研磨装置を制御する。その際の洗浄条件は、研磨スタート時に記憶装置から読込んだ通常洗浄条件である。通常洗浄条件は、ブラシ回転速度、ブラシ揺動速度、ブラシ揺動範囲、ブラシ押付け圧力、及び洗浄時間などである。研磨パッド回転速度は、並列して実行されるドレッシングルーチンの研磨パッド回転速度になっている。
【0170】
研磨が終わった半導体ウェーハが3n枚目だった場合、制御コンピュータ130は、記憶装置から研磨パッド10の重点洗浄範囲を読込んで、重点洗浄範囲を洗浄部112のブラシで重点的に洗浄するように研磨装置を制御する。その際の重点洗浄範囲は、研磨に先立って記憶装置に記憶した重点洗浄範囲および/または後述する重点洗浄範囲算出ルーチンで記憶装置に記憶した重点洗浄範囲である。この例の場合、重点洗浄範囲は、研磨パッド10を、図9(a)に示すように、リング状の5つの区画に分けたいずれかの区画番号として記憶されている。また、洗浄条件は、研磨スタート時に記憶装置から読込んだ重点洗浄条件である。重点洗浄条件は、ブラシ回転速度、ブラシ押付け圧力、及び洗浄時間などである。研磨パッド回転速度は、並列して実行されるドレッシングルーチンの研磨パッド回転速度になっている。
【0171】
この例の研磨装置の場合、洗浄部112のブラシとして、その直径が重点洗浄範囲の幅よりも大きいものを使用している。したがって、制御コンピュータ130が記憶装置から読込んだ重点洗浄範囲に基づいて洗浄部112のブラシの位置を適切に設定すれば、ブラシを揺動させなくても研磨パッド10の重点洗浄範囲を重点的に洗浄できる。洗浄部112のブラシの位置は、ブラシ中心の座標として、研磨テーブル54の回転中心からの距離が重点洗浄範囲になっている区画の内側半径と外側半径の中間値となるように、制御コンピュータ130によって設定される。また、洗浄部112のブラシの位置は、例えば、図9(a)に示す5つの区画をそれぞれ重点的に洗浄できる位置として、予め記憶装置に記憶させておいてもよい。研磨パッド10の洗浄が終了すると、制御コンピュータ130は洗浄フラグをOFFにする。以上で研磨パッド洗浄ルーチンが終了する。
【0172】
次に、図14に示す研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンについて説明する。研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンにおいて、制御コンピュータ130は、先ず、研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグをOFFにする。次に、制御コンピュータ130は、付着領域特定部110を研磨パッド10の監視領域に移動させる。付着領域特定部110は、研磨パッド10上の異物の付着を監視する。
【0173】
研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグがOFFの間は、制御コンピュータ130は付着領域特定部110からの信号をモニタリングする。研磨パッド10の表面に異物が付着していると、付着領域特定部110からの信号に、図3(c)に示すようなピークPが現れる。制御コンピュータ130は、付着領域特定部110からの信号を解析し、このピークPを検知することによって、研磨パッド10上の異物の付着を判定する。ただし、制御コンピュータ130は、ピークPを1度検知しただけでは異物が付着したとは判定しない。なぜならば、研磨パッド10の表面を洗浄液と共に移動する異物が検知された可能性があるからである。したがって、この例では、ピークPを検知した変位センサ224が、研磨パッド10が1回転した後にも再度ピークPを検知した場合に研磨パッド10に異物が付着したと判定する。
【0174】
研磨パッド10に異物が付着したと判定した場合、制御コンピュータ130は異物付着フラグをONにする。異物付着フラグは、研磨パッド10に異物が付着している間、即ち、ピークPを検知した変位センサ224の信号が、研磨パッドの回転周期にあわせてピークPを発信し続けている間は、ONになっている。
【0175】
異物付着フラグをONにした後、制御コンピュータ130は異物付着範囲を特定する。この例では、ピークPを検知した変位センサ224の受け持つ区画(図9(a)参照)が異物付着範囲である。制御コンピュータ130は、その後、特定した異物付着範囲を洗浄部112で重点的に洗浄するように研磨装置を制御する。その際、並列して実行されている研磨パッド洗浄ルーチンは中断される。この場合の洗浄条件は、研磨スタート時に記憶装置から読込んだ重点洗浄条件である。重点洗浄条件は、ブラシ回転速度、ブラシ押付け圧力、及び洗浄時間などである。研磨パッド回転速度は、並列して実行されるドレッシングルーチンの研磨パッド回転速度になっている。
【0176】
この例の研磨装置の場合、洗浄部112のブラシの直径は、異物付着範囲の幅よりも大きい。したがって、特定した異物付着範囲に基づいてブラシの位置を適切に設定すれば、ブラシを揺動させなくても異物付着範囲を重点的に洗浄できる。ブラシの位置は、ブラシ中心の座標として、研磨テーブル54の回転中心からの距離が異物付着範囲になっているリング状の区画の内側半径と外側半径の中間値となるように、制御コンピュータ130によって設定される。また、ブラシの位置は、例えば図9(a)に示す、5つの区画をそれぞれ重点的に洗浄できる位置として、予め記憶装置に記憶させておいてもよい。ここで、この例の研磨装置の場合、先述の重点洗浄範囲の区画と異物付着範囲の区画の分割方法が同一なので、予め記憶装置に記憶させておくブラシの位置が共通であってもよい。
【0177】
特定した異物付着範囲を重点洗浄条件で設定した洗浄時間にわたって洗浄部112のブラシで洗浄した後、制御コンピュータ130は、異物の付着の有無を再度判定し、研磨パッド10上に異物が付着している場合は上述の処理を繰返す。研磨パッド10上に異物が付着していない場合は、異物付着フラグをOFFにし、研磨パッド洗浄ルーチンを再開する。その際、研磨パッド洗浄ルーチンで予定していた洗浄終了時間が過ぎていたら、研磨パッド洗浄ルーチンの終了処理を直ちに実行する。
【0178】
研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグがONになった場合、制御コンピュータ130は、付着領域特定部110を退避領域に移動させて、研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンを終了する。
【0179】
なお、異物付着フラグがONの間は、図11に示すように、研磨パッド診断による異物付着監視終了フラグがONにはならないので、研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンは終了しない。また、次の半導体ウェーハの研磨は開始されない。したがって、異物付着範囲を何度も重点的に洗浄しても研磨パッド10上の異物が除去できない場合は、アラームを発信して研磨装置を停止するようにしても良い。これにより、研磨装置のメンテナンス担当者が研磨パッドを交換するなどの対応をとることができる。
【0180】
特定した異物付着範囲の洗浄と並列して、制御コンピュータ130は重点洗浄範囲の算出を行う。重点洗浄範囲算出ルーチンでは、図16に示すように、制御コンピュータ130は特定した付着範囲を記憶装置に記憶し、蓄積した付着範囲を記憶装置から読込む。次に、重点洗浄範囲を算出する。この例では、蓄積した付着範囲をカウントし、最も付着回数の多い区画を重点洗浄範囲とする。最後に、算出した重点洗浄範囲を記憶装置に記憶する。ここで、蓄積した付着範囲から重点洗浄範囲を算出する代わりに、予め区画ごとに付着した回数をカウントして記憶領域に記録しておき、異物付着範囲を特定したら該当の区画のカウントに1を足すようにすると、最もカウントが多い区画が重点洗浄範囲となる。このようにすると、処理時間を短縮できる。
【0181】
なお、重点的に洗浄を行っても研磨パッド10から取り除かれなかった異物が再び検知された場合は、ダブルカウントを防ぐため、重点洗浄範囲算出ルーチンを実行しない。検知した異物が同じ異物かどうかは、変位センサ224からの信号のピークPが、研磨パッドの回転に同期して周期的に現れているかどうかで判定する。
【0182】
次に、図10に示す研磨メインルーチンに戻って、半導体ウェーハを洗浄及び乾燥させてウェーハカセット21に戻す系列について説明する。半導体ウェーハの研磨が終了すると、制御コンピュータ130は、搬送ロボット81などを制御して、半導体ウェーハを研磨テーブル54から洗浄機83に搬送する。次に、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハを洗浄機83で洗浄した後、搬送ロボット81で洗浄機26に搬送するように研磨装置を制御する。洗浄機26では、半導体ウェーハの洗浄と乾燥を実施する。
【0183】
洗浄機26での半導体ウェーハの洗浄と乾燥が終了すると、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハを搬送ロボット81で洗浄機26から載置台28に搬送した後、搬送ロボット24で研磨面診断による付着領域特定部120に半導体ウェーハを搬送するように研磨装置を制御する。
【0184】
付着領域特定部120に半導体ウェーハが搬送されると、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハ(研磨対象物)の研磨面診断による異物付着判定ルーチンを実行し、研磨パッド(研磨部材)表面の異物の付着判定と異物付着範囲の特定を実施する。研磨面診断による異物付着判定ルーチンでは、制御コンピュータ130が図15に示す手順を実行する。
【0185】
制御コンピュータ130は、まず、付着領域特定部120で半導体ウェーハの研磨面を撮影して、その画像データを取込む。次に、取込んだ画像データにノイズ除去、鮮鋭化、二値化などの補正を施し、補正した画像データから線抽出を行う。次に、制御コンピュータ130は、抽出した線がスクラッチかどうかを判定するために、パターン認識を実行する。パターン認識では、抽出した線の長さや形状などからスクラッチかどうか判定する。研磨面にスクラッチが無いと判定した場合、制御コンピュータ130は、研磨面診断による異物付着判定ルーチンを終了する。
【0186】
研磨面にスクラッチが有ると判定した場合、制御コンピュータ130は、スクラッチと判定した線だけを抽出した画像データを解析し、スクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨面の特定位置でのスクラッチの有無などを検出パターンとする。次に、制御コンピュータ130は、検出パターンに最も近い標準パターンを最近傍法(Nearest Neighbor Method)により決定する。そして、制御コンピュータ130は、この標準パターンの異物付着範囲(異物の研磨パッド中心からの距離)を研磨パッド(研磨部材)表面の異物付着範囲として特定する。
【0187】
次に、制御コンピュータ130は、特定した異物付着範囲が、図9(a)に示す、5つの区画のどれに該当するか判定する。判定した区画が研磨パッド診断によって特定した異物付着範囲と同じである場合、制御コンピュータ130は、研磨面診断による異物付着判定ルーチンを終了する。判定した区画が研磨パッド診断によって特定した異物付着位置で無い場合、または研磨パッド診断によって異物の付着が検出されていない場合、制御コンピュータ130は、異物付着フラグをONにし、特定した異物付着範囲を洗浄部112で重点的に洗浄するように研磨装置を制御する。この際の洗浄条件は、研磨スタート時に記憶装置から読込んだ重点洗浄条件である。重点洗浄条件は、ブラシ回転速度、ブラシ押付け圧力、及び洗浄時間などである。研磨パッド回転速度は、ドレッシングルーチンの研磨パッド回転速度になっている。
【0188】
なお、この時点で研磨パッド洗浄ルーチンが実行されている場合は、研磨パッド洗浄ルーチンを中断する。また、研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンで異物付着範囲の重点洗浄が実行されている場合は、研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンでの重点洗浄が終了するまで待機する。
【0189】
この例の場合、洗浄部112のブラシの直径は、標準パターンの異物付着範囲の間隔よりも十分大きい。したがって、特定した異物付着範囲に基づいてブラシの位置を適切に設定すれば、ブラシを揺動させなくても異物付着範囲を重点的に洗浄できる。ブラシの位置は、ブラシ中心の座標として、研磨テーブル54の回転中心からの距離が標準パターンの異物付着範囲になるように、制御コンピュータ130によって設定される。
【0190】
特定した異物付着範囲を重点洗浄条件で読込んだ洗浄時間だけ洗浄部112による洗浄を行った後、制御コンピュータ130は、異物付着フラグをOFFにして研磨面診断による異物付着判定ルーチンを終了する。また、研磨パッド洗浄ルーチンが中断されていたら、研磨パッド洗浄ルーチンを再開する。その際、研磨パッド洗浄ルーチンで予定していた洗浄終了時間が過ぎていたら、研磨パッド洗浄ルーチンの終了処理を直ちに実行する。
【0191】
異物付着範囲を洗浄部112で重点的に洗浄するのと並列して、制御コンピュータ130は、重点洗浄範囲算出ルーチンを実行する。重点洗浄範囲算出ルーチンの内容は、前述の説明の通りである。重点洗浄範囲算出の際には、先ほど異物付着範囲から判定した区画が異物付着範囲となる。これとは別に、パターン認識により特定した異物付着範囲を記憶して蓄積しても良い。
【0192】
図10の研磨メインルーチンに戻って、研磨面診断による異物付着判定が終了したら、制御コンピュータ130は、半導体ウェーハを異物付着範囲特定部120から取り出し、ウェーハカセット21に搬送するように搬送ロボット24等を制御する。なお、研磨診断による異物付着判定ルーチンにおいて、スクラッチが有りで、かつ研磨パッド診断と付着範囲が異なり、異物付着範囲を重点的に洗浄する場合であっても、異物付着フラグをONにすれば、制御コンピュータ130は半導体ウェーハを異物付着範囲特定部120から取り出し、ウェーハカセット21に搬送するように搬送ロボット24等を制御することができる。そして、制御コンピュータ130は、所定枚数の処理が終了したかどうかを判定して、終了していたら全ての処理を終了し、終了していなければ次の半導体ウェーハの処理を開始するように研磨装置を制御する。
【0193】
以上は、主として、図6、図10乃至図16を参照しながら説明したが、上記説明はあくまで本発明の実施例であって、本発明の範囲が上記説明した内容のみに限られないことは言うまでもない。
【0194】
これまで、付着領域特定部110,111として、図3に示す、変位センサ224を用いて研磨パッド(研磨部材)を接触方式で診断する付着領域特定部226を備えた化学機械研磨装置の例を示したが、付着領域特定部110,111として、図2に示す、圧力センサ204を用いて研磨部材を接触方式で診断する付着領域特定部206や、図4に示す、撮影装置230を用いて研磨部材を非接触方式で診断する付着領域特定部234を備えるようにしてもよい。
【0195】
また、研磨部材(研磨パッド)上の異物を直接的に検知する付着領域特定部110,111と、研磨対象物(半導体ウェーハ)の研磨後の表面(研磨面)を診断して、研磨部材(研磨パッド)上の異物を間接的に検知する付着領域特定部120の両方を備えた化学機械研磨装置の例を示したが、いずれか一方の付着領域特定部を備えた化学機械研磨装置であっても良い。また、付着領域特定部を備えた化学機械研磨装置の例を示したが、付着領域特定部を備えず、重点洗浄位置または重点洗浄領域に関する情報を蓄積した記憶媒体から情報を読込み、前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を備えた化学機械研磨装置であっても良い。この場合、重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄することにより、異物の付着を予防することができる。
【0196】
また、全ての工程を一つの制御コンピュータ130で制御している化学機械研磨装置の例を示したが、付着領域特定部が独立した制御部を備えていても良い。この場合、化学機械研磨装置全体を制御する制御部と、付着領域特定部を制御する制御部が互いに通信できるように構成されており、それぞれの制御部が連携して研磨工程を遂行できるようになっている。また、この場合、特定した異物付着範囲を付着領域特定部に備えられた記憶装置に記憶するようにしても良い。
【0197】
図17は、前述の例における付着領域特定部120を研磨装置から独立した付着領域特定装置とした場合における該付着領域特定装置のシステム構成図である。この付着領域特定装置は、中央処理装置(演算装置)140、メインメモリ142、記憶装置144、入力装置(読込み装置)146及び出力装置148を有し、それぞれが連携して機能するように構成されている。
記憶装置144には、例えば以下のような情報が記憶されている。
【0198】
A.付着領域特定装置制御プログラム
A−1.各種条件読込みルーチン
A−2.標準パターン作成ルーチン
A−3.画像読込みルーチン
A−4.画像解析ルーチン
A−5異物付着範囲表示ルーチン
など
【0199】
B.各種条件
B−1.研磨条件(研磨レシピ)
B−1−1.研磨パッド回転速度
B−1−2.半導体ウェーハ(トップリング)回転速度
B−1−3.半導体ウェーハ(トップリング)揺動速度
B−1−4.半導体ウェーハ(トップリング)揺動範囲
B−1−5.研磨時間
B−2.幾何学的パラメータ
B−2−1.半導体ウェーハ直径
B−2−2.研磨パッド回転中心座標
B−2−3.トップリング回転中心座標
B−2−4.トップリング揺動中心座標
B−2−5.トップリング揺動半径
など
【0200】
C.付着関連情報
C−1.画像認識標準パターン
C−2.研磨面撮影画像
など
【0201】
この付着領域特定装置を使って、スクラッチのある半導体ウェーハ等の研磨対象物の研磨面から、スクラッチの原因となった、研磨パッド等の研磨部材表面の異物付着範囲を特定する方法を、図18に示す異物付着範囲特定処理フローを参照して、以下に説明する。
【0202】
先ず、キーボードやマウスやタッチパネルなどの入力装置から処理スタートの指令が入力されると、中央処理装置(演算装置)140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受けて記憶装置144から各種条件を読込む。この記憶装置144には、上記のように、研磨条件(研磨レシピ)や幾何学的パラメータなどが各種条件として記憶されている。
【0203】
ここで、研磨対象物が半導体ウェーハであり、研磨装置が、図7に示すような、研磨パッドを備えた研磨テーブルとトップリングを有する研磨装置である場合、研磨条件(研磨レシピ)は、研磨パッド回転速度、半導体ウェーハ(トップリング)回転速度、半導体ウェーハ(トップリング)揺動速度、半導体ウェーハ(トップリング)揺動範囲、及び研磨時間などである。また、同様に、幾何学的パラメータは、半導体ウェーハ直径、研磨パッド回転中心座標、トップリング回転中心座標、トップリング揺動中心座標、及びトップリング揺動半径などである。
【0204】
これらの各種条件は、異物付着範囲特定処理に先立って、付着領域特定装置に設置された入力装置(読込み装置)146を使って、研磨装置や外部記憶装置などから読込まれるか、またはキーボードやマウスやタッチパネルなどの入力装置から手入力される。また、この記憶装置144には、各種条件の他に、付着位置特定装置制御プログラムや付着関連情報も記憶されている。
【0205】
各種条件を記憶装置144から読込んだら、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、異物付着範囲の特定に使用するために、読込んだ各種条件を元に複数の画像認識用標準パターンを作成し、付着関連情報として記憶装置144に記憶する。作成する標準パターンは、例えば、図8に示すような、異物の軌跡データである。なお、異物の軌跡データの作成方法は、前述した通りである。
【0206】
次に、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、スクラッチのある研磨面を撮影した画像を読込む。その際、中央処理装置140は、研磨面を撮影した画像を、入力装置(読込み装置)146を使って撮影装置から読込んでも良いし、入力装置(読込み装置)146を使って、フレキシブルディスクやCD−ROMなどの外部記憶媒体から読込んでも良い。また、中央処理装置140は、予め付着領域特定装置の記憶装置に記憶してある研磨面を撮影した画像を読込んでも良い。
【0207】
次に、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、読込んだ画像データにノイズ除去、鮮鋭化、二値化などの補正(画像変換)を施し、補正した画像データから線抽出(特徴抽出)を行う。次に、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、パターン認識(画像認識)を実行して抽出した線から更にスクラッチを抽出する。
【0208】
次に、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、スクラッチを抽出した画像データを検出パターンとして、検出パターンに最も近い標準パターンを画像認識により決定し、この標準パターンの異物付着範囲(異物の研磨パッド中心からの距離)を研磨部材表面の異物付着範囲として特定する。
【0209】
ここで、画像認識には、最近傍法(Nearest Neighbor Method)、ベイズの識別規則、ダイナミックプログラミングマッチング(DPマッチング)、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)などのパターン認識が含まれる。なお、この例では、画像変換、特徴抽出、画像認識のうちの少なくともいずれか一つを行うことを画像解析と呼ぶ。次に、中央処理装置140は、メインメモリ142中の制御プログラムの指令を受け、プリンタやディスプレイなどの出力装置148に異物付着範囲を出力する。
【0210】
このように、この例の付着領域特定装置を使用すれば、付着領域特定部を有しない研磨装置により半導体ウェーハ等の研磨を行って研磨面にスクラッチが発生した場合に、研磨パッド等の研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することができる。
【0211】
なお、上記の説明では異物付着範囲特定処理フローの中で標準パターンを作成する例を示したが、予め作成された標準パターンを付着領域特定装置の記憶装置144や外部記憶媒体に記憶しておき、異物付着範囲特定処理フローの中で読込むことで、標準パターンを作成しないようにすることも勿論可能である。また、異物付着範囲特定処理フローの中で作成した標準パターンを付着領域特定装置の記憶装置144ではなく、外部記憶装置に記憶して、異物付着範囲特定処理フローの中で外部記憶から読込んで使用しても良い。
【0212】
また、異物の軌跡データを使用した異物付着範囲特定処理について説明したが、軌跡データの代わりに軌跡データから解析したスクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨面の特定位置でのスクラッチの有無などのデータを使用して異物付着範囲特定処理を行っても良い。この場合、スクラッチを抽出した画像データを解析して、スクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨面の特定位置でのスクラッチの有無などを検出パターンとする。標準パターンもこれに対応して、スクラッチの半径方向密度分布や円周方向密度分布、研磨面の特定位置でのスクラッチの有無とすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】研磨部材表面の異物付着位置および異物付着範囲の説明に付する図である。
【図2】圧力センサを用いて研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部を示す図である。
【図3】変位センサを用いて研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部を示す図である。
【図4】非接触方式で研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部を示す図である。
【図5】非接触方式で研磨対象物の研磨後の表面を診断して研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の化学機械研磨装置の各部の配置構成を示す平面図である。
【図7】トップリングと研磨テーブルの一部を示す概略断面図である。
【図8】標準パターンとして用いるスクラッチパターンの例を示す図である。
【図9】付着領域特定部が特定した特定範囲の蓄積データから異物が付着した確率を算出する方法の説明に付する図である。
【図10】研磨メインルーチンの制御フロー図である。
【図11】研磨準備終了判定ルーチンの制御フロー図である。
【図12】ドレッシングルーチンの制御フロー図である。
【図13】研磨パッド洗浄ルーチンの制御フロー図である。
【図14】研磨パッド診断による異物付着監視ルーチンの制御フロー図である。
【図15】研磨面診断による異物付着判定ルーチンの制御フロー図である。
【図16】重点洗浄範囲算出ルーチンの制御フロー図である。
【図17】付着領域特定装置のシステム構成図である。
【図18】図17に示す付着領域特定装置における異物付着範囲特定の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0214】
2 半導体ウェーハ(研磨対象物)
5,6 エアバッグ
10 研磨パッド(研磨部材)
14 リテーナリング
52,53 トップリング
54,55,56,57 研磨テーブル
58,59,68,69 ドレッサ
60,61 砥液ノズル
70 ウェーハステーション
893,94 センサ
95,96 リンスノズル
98 回転式ウェーハステーション
108 圧力調整機構
110,111 付着領域特定部
112,113 洗浄部
120 付着領域特定部
130 制御コンピュータ
140 中央処理装置
142 メインメモリ
144 記憶装置
146 入力装置(読込み装置)
148 出力装置
200,202 研磨部材
204 圧力センサ
206 付着領域特定部
208 研磨ヘッド
210 研磨対象物
212 コンピュータ
224 変位センサ
226 付着領域特定部
230 撮影装置
232 演算装置
234 付着領域特定部
250 撮影装置
252 演算装置
254 付着領域特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、
前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体からコンピュータに読込み、
前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法。
【請求項3】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体からコンピュータに読込み、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、
前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法。
【請求項4】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨方法であって、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定し、
前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積し、
前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出し、
前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄することを特徴とする研磨方法。
【請求項5】
前記研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項1,3または4記載の研磨方法。
【請求項6】
前記研磨部材表面を画像解析して、該表面に異物が付着したことを検知することを特徴とする請求項5記載の研磨方法。
【請求項7】
研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項1,3または4記載の研磨方法。
【請求項8】
研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断することを特徴とする請求項7記載の研磨方法。
【請求項9】
研磨部材表面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄されるべき位置または範囲として特定すると共に、前記特定した重点的に洗浄されるべき位置または範囲を記憶して蓄積することを特徴とする研磨部材表面の洗浄領域特定方法。
【請求項10】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨し、
前記研磨対象物の研磨面を診断して、重点的に洗浄されるべき前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする研磨部材表面の洗浄領域特定方法。
【請求項11】
前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として特定された情報を記憶して蓄積することを特徴とする請求項10記載の研磨部材表面の洗浄領域特定方法。
【請求項12】
前記研磨対象物の研磨面を画像解析して該研磨面を診断することを特徴とする請求項10記載の研磨部材表面の洗浄領域特定方法。
【請求項13】
研磨対象物の研磨面を撮影した画像を画像解析して研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする付着領域特定方法。
【請求項14】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、
前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄する洗浄部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項15】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、
研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を蓄積した記憶媒体から情報を読込み、前記研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項16】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、
研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を蓄積した記憶媒体から情報を読込み、かつ前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項17】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、
研磨部材表面を洗浄する洗浄部と、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定部と、
前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積し、前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出し、かつ前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記付着領域特定部によって特定された前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を重点的に洗浄するように前記洗浄部を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項18】
前記付着領域特定部は、前記研磨部材表面に付着した異物を検知する検知部を有し、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定することを特徴とする請求項14,16または17記載の研磨装置。
【請求項19】
前記付着領域特定部は、前記研磨部材表面を画像解析して該表面に付着した異物を検知する画像解析装置を有することを特徴とする請求項18記載の研磨装置。
【請求項20】
前記付着領域特定部は、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する診断装置を有することを特徴とする請求項14,16または17記載の研磨装置。
【請求項21】
前記診断装置は、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する画像解析装置であることを特徴とする請求項20記載の研磨装置。
【請求項22】
前記制御部は、研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として前記付着領域特定部によって特定された情報を記憶して蓄積することを特徴とする請求項16記載の研磨装置。
【請求項23】
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、
標準パターンを記憶媒体から読込む読込み装置と、
研磨対象物の研磨面を撮影した画像を読込む読込み装置と、
前記読込んだ標準パターンおよび画像を使って画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する演算装置と、
前記演算装置で特定した異物付着位置または異物付着範囲を出力する出力装置と、
を有することを特徴とする付着領域特定装置。
【請求項24】
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、
研磨装置の幾何学的パラメータと研磨対象物の研磨条件を読込む読込み装置と、
前記読込んだ幾何学的パラメータと研磨条件を使って標準パターンを作成する標準パターン作成装置と、
研磨対象物の研磨面を撮影した画像を読込む読込み装置と、
前記作成した標準パターンおよび前記読込んだ画像を使って画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する演算装置と、
前記演算装置で特定した異物付着位置または異物付着範囲を出力する出力装置と、
を有することを特徴とする付着領域特定装置。
【請求項25】
研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、
研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び
前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項26】
研磨部材表面への異物の付着を予防するためにコンピュータに、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体から読込む重点洗浄領域読込み手順、
研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び
前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項27】
研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、
研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲に関する情報を記憶媒体から読込む重点洗浄領域読込み手順、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、
研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び
前記読込まれた研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項28】
研磨部材表面への異物の付着を予防するか、または研磨部材表面に付着した異物を洗浄により除去するためにコンピュータに、
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、
前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積する付着領域記憶手順、
前記蓄積された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲から重点洗浄位置または重点洗浄範囲を算出する重点洗浄領域算出手順、
研磨部材表面を重点的に洗浄する際の洗浄条件を記憶媒体から読込む重点洗浄条件読込み手順、及び
前記算出された研磨部材表面の重点洗浄位置または重点洗浄範囲、及び前記特定された研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲の少なくとも一方を前記読込まれた重点洗浄条件で洗浄する重点洗浄手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項29】
前記付着領域特定手順が、前記研磨部材表面に異物が付着したことを検知部で検知して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順であることを特徴とする請求項25,27または28記載のプログラム。
【請求項30】
前記付着領域特定手順が、前記研磨部材表面を画像解析して該表面に異物が付着したことを検知する手順を含むことを特徴とする請求項29記載のプログラム。
【請求項31】
前記付着領域特定手順が、研磨対象物の研磨後の研磨面を診断して、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順であることを特徴とする請求項25,27または28記載のプログラム。
【請求項32】
前記付着領域特定手順が、研磨対象物の研磨後の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含むことを特徴とする請求項31記載のプログラム。
【請求項33】
異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するためにコンピュータに、
研磨部材表面を診断して前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を重点的に洗浄されるべき位置または範囲として特定する手順、及び
前記特定した重点的に洗浄されるべき位置または範囲を記憶して蓄積する手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項34】
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するためにコンピュータに、
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する手順、及び
前記研磨対象物の研磨面を診断して重点的に洗浄されるべき前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項35】
特定した異物付着位置または異物付着範囲を記憶して蓄積するためにコンピュータに、前記研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲として特定された情報を記憶して蓄積する手順を更に実行させることを特徴とする請求項34記載のプログラム。
【請求項36】
前記付着領域特定手順が、前記研磨対象物の研磨面を画像解析して該研磨面を診断する手順を含むことを特徴とする請求項34記載のプログラム。
【請求項37】
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定するためにコンピュータに、
研磨対象物の研磨面を撮影した画像を画像解析することにより研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する付着領域特定手順、
を実行させるためのプログラム。
【請求項38】
請求項25乃至36のいずれかに記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記憶媒体。
【請求項39】
研磨部材と研磨対象物との間に圧力を加えつつ、前記研磨部材と前記研磨対象物とを相対運動させて前記研磨対象物を研磨する研磨装置であって、
請求項38に記載の記憶媒体からプログラムを読出して該プログラムを実行することができるコンピュータを有することを特徴とする研磨装置。
【請求項40】
請求項37に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記憶媒体。
【請求項41】
研磨部材表面の異物付着位置または異物付着範囲を特定する装置であって、
請求項40に記載の記録媒体からプログラムを読出して該プログラムを実行することができるコンピュータを有することを特徴とする付着領域特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−290111(P2007−290111A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11962(P2007−11962)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】