説明

砕土作業機の延長整地体

【課題】均平精度の良い砕土作業機の延長整地体を提供する。
【解決手段】延長整地体15の接地面15cは断面逆V字状の直線溝15bが平面視、進行方向に対し前方から後方へ且つ外側から内側に向け傾斜して設けてある。断面逆V字状の直線溝15bは平面に接地状態で延長整地体15の前方から後方に連通する空間29を有し、断面形状は外側の勾配が大きく内側の勾配が小さく形成され左右方向に複数設けられ、延長整地体15と整地体14を連結し回動させる連結軸26は、側面視で進行方向前方が高く、後方が低く傾斜して設けられていることを特徴とする砕土作業機の延長整地体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕土ロータの後方に砕土された泥土を整地する整地体を備えた砕土作業機に関するもので、特に整地体の両側部に設けた延長整地体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砕土作業機は、畑地で使用されるロータリー作業機や水田で使用される代掻き作業機等がある。これら砕土作業機の砕土部後方には、砕土された泥土を整地する整地体が設けられている。また該整地体本体には、耕耘幅より左右方向に延長して設けて整地する延長整地体が設けられているものがある。砕土作業機の延長整地体としては例えば、実開平02−111204号公報(特許文献1)の「対地用延長板の取付装置」による「延長板41を、前記整地板本体9、43の側部で折畳み姿勢と延長姿勢とに変更自在にしたものにおいて、前記整地板本体9、43のブラケット45、46に、前後方向の軸心廻りで回動自在として備えられ、該位置決め体50には、延長姿勢にある延長板41のブラケット47、48に対して前記連結体49を中心とする回動を阻止する係合部53と位置決め体50の回動で前記延長板41のブラケット47、48の回動を許容する回動許容部54とを有していることを特徴とする対地用延長板の取付装置」が開示されている。
【0003】
また、特開2006−217877号公報(特許文献2)の「農作業機」は、「機体と、この機体に上下方向に回動可能に設けられた整地体と、この整地体の左右後方端部に上下方向に回動可能に設けられた延長整地体とを備え、前記延長整地体は圃場面に線状に接した状態で整地作業をすることを特徴とする農作業機」、また、「圃場面側に向かって凹状をなす複数の凹状部を有する」技術が開示されている。
【特許文献1】実開平02−111204号公報
【特許文献2】特開2006−217877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砕土作業機における延長整地体は、砕土ロータの砕土爪によって耕耘された耕耘土又は泥土が、砕土作業機の進行にともない前方に押されて砕土ロータの前方の側方からはみ出した耕土又は泥土を均平にするための作用や隣接する耕耘終了部との段差を整地するためのものである。特に代掻き砕土装置においては精密な均平度が要求される。
【0005】
前記特許文献1における従来の技術では、延長板の圃場接地面は平面又は円弧状面で接している。このため、前方に盛り上げられた泥土又は耕耘土を整地しようとした場合、土量が多いと砕土作業部側方から逃げてはみ出したものと同様に延長板(延長整地体)の側方に逃げて盛り上がる問題があった。
【0006】
また、特許文献2における延長整地体は、圃場面側に向かって凹状をなす複数の凹状部によって泥土が側方に逃げにくくなっているが、後方側に圃場面に線状に接する左右方向に直線状の接地面を有していて、凹部後方が閉鎖された状態となっているため、凹状部に泥土が満杯状態となり許容しきれなくなると、従来と同様に側方からの逃げが発生する問題があった。さらに、前方の砕土作業部の側方から逃げて横にはみ出された泥土を横移動することがなくその場で押圧整地するため、その部分の土量密度が高くなり、精密な整地精度に問題があった。このため本発明の目的は、均平精度の良い砕土作業機の延長整地体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、トラクタに装着される装着部を有する機枠体と、機枠体に設けられる砕土ロータと、砕土ロータの上方を覆う砕土ロータカバーとを有する砕土作業部を設けた砕土作業機において、砕土作業部の後方に位置し、砕土ロータカバー後端部に一端を上下方向回動自在に設けられた整地体を有し、整地体の左右端部には、砕土ロータ幅より左右方向に延長して設けた延長整地体が設けてあり、該延長整地体は左側延長整地体と右側延長整地体により構成されていて、整地体端部と左右方向回動自在に連結されていて、整地体側上方へ回動され折畳まれた非作業姿勢と左右外側に回動展開された作業姿勢とに変更可能に設けてあり、該延長整地体の接地面は、凹状直線溝が平面視において進行方向に対し前方から後方へ且つ外側から内側に向け傾斜して設けてあることを特徴とする砕土作業機の延長整地体を提供する。
【0008】
また、凹状溝は断面逆V字状の直線溝で、平面に接地状態で延長整地体の前方から後方に連通する空間を有し、断面形状は外側の勾配が大きく内側の勾配が小さく形成されていて、左右方向に複数設けられていることを特徴とした0007欄記載の砕土作業機の延長整地体を提供する。
【0009】
さらに、延長整地体と整地体とを連結して回動させる連結軸は、側面視で進行方向前方が高く、後方が低く傾斜して設けられていることを特徴とした0007、0008欄のいずれかに記載の砕土作業機の延長整地体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明の延長整地体の接地面は凹状直線溝が、平面視において進行方向に対し前方から後方へ且つ外側から内側に向け傾斜して設けてあるので、砕土作業部から側方に逃げた泥土や段差部の耕土を延長作業体の側方に逃がさないとともに進行にともない内側に戻し後方端で拡散し整地する。その効果は特に水田での代掻き作業時において泥水とともに泥土が延長作業体の側方に逃げず砕土作業機の内側へ凹状直線溝の整流効果により容易に導くことができるので大いに整地効果を高められる。
【0011】
また、請求項2の発明による断面逆V字状の直線溝は、平面に接地状態で前方から後方に連通する空間を有しているため、泥土が溝部に停滞することがなく、後方に送られるとともに後端部で分散されて内方へ戻されるため整地作用が大きい。さらに直線溝の断面形状は外側の勾配が大きく内側の勾配が小さく形成されていて左右方向に複数設けられているので、外側の勾配の大きい部分で内側からの泥土の移動を阻止または角度を調整することで逃げ量を調整することができ、溝本数を調節することで戻し土量を調節可能であり、精度の高い整地作用を得ることができる。水田での代掻き作業時においても、泥水および泥土がその勾配によって延長作業体のより内側へと導かれ、さらに前方から後方へ連通した空間部の作用の相乗効果により砕土作業機の内側に戻す効果をより高め、精度の良い整地効果が得られる。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、整地土量が多い場合、延長整地体は整地体本体との連結部である連結軸を中心に上方へ回動されようとするが、この場合側面視で進行方向前方が高く後方が低く傾斜して連結軸が設けられているため、延長整地体の前方側が比較的大きく回動し後方側が小さく回動する動作となり、回動することで延長整地体は側面視で前方が高く後方が低く傾斜した状態となり、整地泥土が前方から後方へ行くに従い徐々に押圧され後方への土の逃げ量を規制することができ整地効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した砕土作業機の作業時の側面図、図2は本発明を実施した砕土作業機の平面図、図3は左側延長整地体の拡大平面図、図4は左側延長整地体単体の平面図、図5は延長整地体の側面図、図6は延長整地体の図4に示したA矢視図である。
【0014】
本発明の実施例を砕土作業機である代掻き作業機で実施した場合について説明する。図示していないトラクタ側の左右一対のロワ−リンクと、図示していない中央上方に設けたトップリンクとからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化する連結枠1(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を前記ロワーリンクに連結枠1の下方に左右対称に設けたロワプレート3の水平方向のロワーリンクピン4と前記トップリンクに連結枠1の上部に水平方向に設けたトップリンクピン11をそれぞれ挿入して取り付け、砕土作業機Mの前方に設けた左右一対のロワ−ピン19と同じく中央上方に設けたトップマスト2前端部に設けたアッパーピン18に前記連結枠1の上下それぞれの係合部である後方に向けたフック部を係合させ連結する。
【0015】
連結手順は、先ず連結枠1上方のトップフック21をトップマスト2前方に設けられたアッパーピン18に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させこれに取り付けた連結枠1を上昇させると、前記砕土作業機M側のロワ−ピン19が連結枠1側に引き寄せられ連結枠1の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠1に設けたフック8をロワ−ピン19に引掛け外れ防止をする。
【0016】
砕土作業機Mの機枠体は、中央上方の前方に突設したトップマスト2と、トップマスト2が取付けられているギヤボックス23と、ギヤボックス23から左右方向に延設されているパイプ材で構成されたパイプフレーム22と、パイプフレーム22の左右端部に固着され下方の砕土作業部10を保持するサイドプレート20と、左右のパイプフレーム22から前方に突設し前端部に前記ロワーピン19を設けたロワーピンプレート2aにより構成されている。
【0017】
砕土作業機Mの中央水平方向前方に突設させて設けた入力軸5は、図示していないトラクタのPTO軸と図示していないユニバーサルジョイントで連結され、トラクタの回転動力を砕土作業機M側に入力するためのものである。入力軸5に入力された回転動力は、左右中央部の入力軸5を突設して設けたギヤボックス23に入力され、該ギヤボックス23から左右水平方向に延設したパイプフレーム22内の図示していない伝動シャフトにより左右方向いずれか側方側に設けたチェーン伝動ケース6に伝達され、該チェーン伝動ケース6に内装されていて上下方向に巻架された図示していないチェーンにより下方の砕土ロータ12を駆動する。
【0018】
砕土ロータ12は、回転軸28に側面視放射状に左右方向に亘って砕土爪27が配置されていて、土中又は泥土中で回転させ砕土するものである。砕土ロータ12上方部は、土及び泥土の飛散防止や土及び泥土の持ち回り作用を行うための砕土ロータカバー9が設けてあり、砕土ロータ12後方には、砕土された土及び泥土を受けるとともに、泥土を均平にしていく整地体14が、砕土ロータカバー9後端に左右水平方向に設けた回動軸を回動支点として上下に回動しながら設けている。
【0019】
整地体14は、前記砕土ロータカバー9の後端に水平方向の第1整地体回動軸17により上下回動自在に設けた第1整地体14aと、該第1整地体14a後端に水平方向の第2整地体回動軸13により上下回動自在に設けた第2整地体14bにより構成されていて、砕土ロータ12で砕土された土及び泥土を鎮圧均平するものである。整地体14の姿勢切替は、整地体14に連動連結されトップマスト2部分に設けた整地体操作レバー7の操作により行い、整地体14は通常作業の整地姿勢と整地体14を下方に垂れ下げて固定した状態の土引き作業姿勢に切換できる。
【0020】
第2整地体14b左右端部には、延長整地体15が設けてあり、該延長整地体は左側延長整地体15Lと右側延長整地体15Rにより構成されていて、整地体側上方へ回動され折畳まれた非作業姿勢と左右外側に回動展開された作業姿勢とに変更可能に設けられている。
【0021】
延長整地体15と第2整地体14bの連結部は、U字状の金具が双方に設けられていて、延長整地体15側のU字状金具25aには側面視で進行方向前方が高く後方が低く前後方向に傾斜して設けられた前後に分割されて前方連結軸26aと後方連結軸26bにより構成されている連結軸26が設けられ、第2整地体14bのU字状金具25bに嵌合孔が設けてあり、連結軸26を挿入し抜け止めピン15aを連結軸26に差込み抜け止めが施され構成されている。
【0022】
また、延長整地体15の回動部には、第2整地体14bと延長整地体15とに掛け渡されたコイルスプリング24が設けてあり、延長整地体15が回動することにより連結軸26を支点として支点越えをして回動方向に付勢するように取付けられていて、整地体側上方へ回動され折畳まれた非作業姿勢と左右外側に回動展開された作業姿勢とに保持する方向に付勢作用する。
【0023】
延長整地体15の接地面15cには、凹状の直線溝15bが平面視において進行方向に対し前方から後方へ且つ外側から内側に向け傾斜して設けてある。傾斜角度は、延長整地体15の直線溝15b前方端空間と後方端空間が進行方向に対し重合しない程度の角度に設定すると泥土の整流効果や戻し効果が大きくなる。
【0024】
図6は延長整地体15の図4に示すA矢視を図示したもので、直線溝15bの形状の一例を図示したものである。直線溝15bは断面が逆V字状で、延長整地体15の外側の勾配が大きく内側の勾配が小さく形成された外側斜面15dと内側斜面15eとで構成され、勾配が大きい外側斜面15dにより泥土の外側への逃げを阻止するように作用させる。勾配の角度を変化させることや、溝の深さを調整することで整地作用を調整することができる。また、溝の本数を変化させることでも調整可能である。
【0025】
凹状の直線溝15bは、延長整地体15前方端から後方端に連通する空間29を有していて、前方端から後方端に至る間において同一の断面で構成されていてもよいが、滑らかに変化させても良い。延長整地体15前方端部は、進行方向に傾斜して立ち上げられていて前方に盛り上げられた泥土を延長整地体15下方に誘導する。誘導された泥土は延長整地体15の自重と前記回動部に設けたコイルスプリング24の付勢力により押圧されるとともに、直線溝15bにより誘導される。誘導された泥土が多い場合、延長整地体15の回動する連結軸26は側面視で進行方向前方が高く後方が低く前後方向に傾斜して設けられているため、連結軸26を中心に延長整地体15が回動すると、接地面が前方が高く後方が低い状態となり、泥土が後方に移動するに従い徐々に押圧され土の逃げ量を規制することができる。延長整地体15は、図2に示すように左右対称に設けてあるため他方の説明は省略する。
【0026】
本発明の延長整地体15は、畑地や水田の耕耘に使用するロータリー作業機や水田で使用される代掻き作業機に使用されることで整地性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施した砕土作業機の側面図、
【図2】本発明を実施した砕土作業機の平面図、
【図3】左側延長整地体の拡大平面図、
【図4】左側延長整地体単体の平面図、
【図5】延長整地体の側面図、
【図6】延長整地体の図4に示したA矢視図、
【符号の説明】
【0028】
1 連結枠
2 トップマスト
2a ロアピンプレート
3 ロワ−プレート
4 ロワーリンクピン
5 入力軸
6 チェーン伝動ケース
7 整地体操作レバー
8 フック
9 砕土ロータカバー
10 砕土作業部
11 トップリンクピン
12 砕土ロータ
13 第2整地体回動軸
14 整地体
14a 第1整地体
14b 第2整地体
15 延長整地体
15L 左側延長整地体
15R 右側延長整地体
15a 抜け止めピン
15b 直線溝
15c 接地面
15d 外側斜面
15e 内側斜面
17 第1整地体回動軸
18 アッパーピン
19 ロワ−ピン
20 サイドプレート
21 トップフック
22 パイプフレーム
23 ギヤボックス
24 コイルスプリング
25a,25b U字状金具
26 連結軸
26a 前方連結軸
26b 後方連結軸
27 砕土爪
28 回転軸
29 空間
M 砕土作業機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着される装着部を有する機枠体と、機枠体に設けられる砕土ロータと、砕土ロータの上方を覆う砕土ロータカバーとを有する砕土作業部を設けた砕土作業機において、砕土作業部の後方に位置し、砕土ロータカバー後端部に一端を上下方向回動自在に設けられた整地体を有し、整地体の左右端部には、砕土ロータ幅より左右方向に延長して設けた延長整地体が設けてあり、該延長整地体は、整地体端部と左右方向回動自在に連結されていて、整地体側上方へ回動され折畳まれた非作業姿勢と左右外側に回動展開された作業姿勢とに変更可能に設けてあり、該延長整地体の接地面は、凹状の直線溝が平面視において進行方向に対し前方から後方へ且つ外側から内側に向け傾斜して設けてあることを特徴とする砕土作業機の延長整地体。
【請求項2】
凹状の直線溝は断面逆V字状の直線溝で、平面に接地状態で延長整地体の前方から後方に連通する空間を有し、断面形状は外側の勾配が大きく内側の勾配が小さく形成されていて、左右方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の砕土作業機の延長整地体。
【請求項3】
延長整地体と整地体とを連結して回動させる連結軸は、側面視で進行方向前方が高く後方が低く傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の砕土作業機の延長整地体。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−5665(P2009−5665A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172563(P2007−172563)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】