説明

砕石術の間の結石および断片の後方移動の防止方法

本発明の1つの態様は、身体解剖学的な管腔を閉塞させるか、あるいは管腔内に存在するであろう、結石(例えば、尿結石、胆管結石、および膵石などの生物学上の結石)を除去する際に、周囲の生体組織の損傷の危険性を軽減する、結石症の治療方法を提供する。1つの実施の形態では、本発明は、ポリマープラグを用い、結石に対して遠位の管腔を塞ぎ、それによって砕石術で生じた結石断片が管腔の上方に移動するのを防ぐための方法を提供する。特定の実施の形態では、ダブルルーメン・カテーテルを用いて2種類の溶液を結石の近くに注入し、前記溶液の混合によってポリマープラグを形成させる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、2006年9月29日出願の米国仮特許出願第60/848,244号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、結石症の治療に関し、さらに詳細には、結石除去の際に周囲の生体組織の損傷の危険性を低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
結石症は、人体の経路内に形成される結石すなわち「石」を特徴とする人間の病気である。石は、体内のほぼすべての経路について報告されているが、腎臓結石(腎結石症)および胆石(胆石症)が最も一般的である。しかしながら、その場所にかかわらず、石は、典型的には、非常に硬く、変形しない塊であり、それが存在する経路(例えば、管腔)を閉塞させる。
【0004】
尿管または腎臓の結石は、通常、体内の繊細なバランスの崩れによって生じる。特に、腎臓は、その機能を果たすためには水を保持しなければならない一方で、難溶性の物質を排泄しなければならない。これら相反する必要性について、食事、環境および行動への適応の間にバランスを取らなければならない。尿が、結石を形成するミネラルの結晶化を抑制する物質を含むため、問題はある程度軽減される。しかしながら、排せつ率過剰、および/または、極度の水分の保持により、尿が不溶性物質で過飽和状態になると、結晶が形成され、それが成長し、凝集して石を形成することがある。
小さい結晶は、腎臓から尿と共に容易に排出されるが、より大きい石は、多くの場合、腎臓から排出され、尿管に入るか、または腎盂尿管移行部を塞ぎ、閉塞および痛みを生じさせる。一部の石は、最終的に尿管を通り抜けるが、それらの通過は、一般に、痛みと出血を生じる。通常、痛みは、その抑制のために麻薬が必要とされるほど激しいものである。
【0005】
腎臓または尿管からの石の除去は、医学的、機械的、または外科的に実施することができる。周知の外科的手法には、軟性のバスケットを膀胱から尿管まで後退させる方式で通し、バスケットを用いて石を捕捉する過程が含まれる。しかしながら、捕捉後にそのバスケットを除去しなければならず、中程度の大きさの石にしかうまくいかない。外科手術は、腎臓結石、特に、尿管内に引っかかる、いわゆるサンゴ状結石の除去にも用いられている。
【0006】
別の外科技術である、経皮的超音波砕石術は、小型の超音波振動子によって石を砕き、小切開部を通じて、腎盂内に硬い膀胱鏡検査に似た器具を通し、直接除去しなければならない。別の外科技術は、尿管鏡を介したレーザー砕石術である。非常に痛みを伴うこれらの手法のすべてが、複雑かつ費用がかかり、さらには、結石および断片を常に、完全に除去できるわけではない。体外結石破砕術として知られる、1つの非侵襲性技術は、体内の石を砕くために、体外から高強度の衝撃波を伝達させることを必要とする。生じた石の断片は尿と共に排出される。
【0007】
ステントもまた、尿管閉塞の圧力を低減させるのに用いられ、腎臓から膀胱までの尿の排出を確実にする。尿管内にステントを配置することにより、小石および結石断片が尿管を通過するのを補助することが分かっている。ステントを含む典型的な処置では、尿管から腎盂までガイドワイヤが通される。次に、プッシャーで中空の軟性の円筒型ステントを、ガイドワイヤを通り越して進行させる。次いでガイドワイヤおよびプッシャーをステントおよび身体から引き出し、尿を通過させるための開放管腔を残す。しかしながら、円筒型のステントによって規定される管腔は尿管自体よりもかなり小さいことから、最も小さい石および泥以外はすべて、通り抜けることができない。さらには、ほとんどの場合、結石断片が開放ステントの通路を塞いでしまう。
【0008】
結石疾患のための尿管鏡検査を行なうすべての泌尿器科医は、遠位または近位の尿管結石が、手の届かない、あるいは見えない、頭部の方向に移動するのを、なすすべもなく観察した経験を持っている。結石の後方への移動は、結果的に、手術時間を長引かせ、内視鏡検査をより侵襲的にし、残る結石を増大させ、二次的方法の必要性を生じ、罹患率を高め、多大の費用がかかることになる。上部または下部尿管結石の好ましい治療法として現在推奨される尿管鏡を用いると、内部処置による(intraprocedural)結石移動の問題が増幅される。
【0009】
遠位の尿管結石(すなわち、腸骨血管またはその下)は、通常、一部の近位の尿管拡張を生じさせる。尿管鏡による、または注水、レーザーバースト、圧縮空気砕石装置(pneumatic lithotriptor)のパルス、または電気水力学的電極の火花による結石の除去は、頭部方向に結石を推進し、半剛体から軟性の尿管鏡への変更、ステント留置、または二次的手法が必要とされる。一見したところ簡単そうな遠位の尿管結石が、急激に複雑な問題へと悪化しうる。内視鏡の専門医が公表するデータは、二次的手法を必要とする近位の移動が、遠位の尿管結石の事例の4〜5%において生じることを示唆しているが、しかしながら、一般診療で移動する石の割合は、恐らくは著しく高い。さらには、公表データは、同一坐位での治療は成功したけれども、他の不必要なステントまたは軟性の尿管鏡の使用(約500米国ドル/回)など、さらに侵襲的な手技を必要とする、結石の移動については反映されていない。尿管上部(すなわち、腸骨血管の上)の結石は、尿管鏡の際には、なおさら頭部方向に移動しやすい。メイヨー・クリニックのグループでさえも、近位の尿管結石の治療の72%しか成功しなかったと報告している。標準的な泌尿器科医の腕では、結果は恐らく、さらに見劣りがするであろう。ベルリンのグループは、圧縮空気砕石装置を用いて、40%を超える近位の尿管結石での移動を報告し、圧縮空気の装置は中位または近位の尿管結石には使用すべきではないと結論付けている。これは、使用されている7,000を超える圧縮空気砕石装置に関しての深刻な問題を表している。この問題に対する注目すべき解決法について、本明細書で説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、結石症の治療手段を提供する。重要なことに、本発明は、身体解剖学的な管腔を閉塞するか、さもなければ管腔内に存在するであろう、結石(例えば、尿結石、胆管結石、および膵石などの生物学上の結石)を除去する際に、周囲の生体組織の損傷の危険性を軽減する。注目すべきことに、本発明は、結石の治療を大幅に向上させると同時に、組織損傷の危険性を軽減し、治療時間を低減させる。重要なことに、本発明は、砕石術の間の断片の後方移動を防止する。
【0011】
1つの実施の形態では、本発明は、結石に対して遠位の管腔を塞ぎ、それによって砕石術によって生じた結石断片が管腔の上方に移動するのを防ぐ、ポリマープラグの使用方法を提供する。1つの実施の形態では、本方法は、従来の砕石術の代替法として用いられる。特定の実施の形態では、ダブルルーメン・カテーテルを用いて2種類の溶液を結石の近くに注入し、該溶液の混合によってポリマープラグを形成させる。
【0012】
重要なことに、本発明の組成物および方法は、現在市場に出回っている物質(Boston Scientific社のStone ConeおよびCOOK社のN-Trapなど)よりも優れた明白な利点を有している。すべての製品は、ある程度の結石の前方移動を妨げるが、本発明の独特な設計は、摘出するには大きすぎる石の放出、および結石断片(直径1mm未満の石を含む)の散乱の防止にとって理想的である。さらには、他の手法とは異なり、本発明の手法では、結石の前に何も置く必要がなく、したがって、断片化処理に何の障害もない。最後に、特定の実施の形態では、用いられる組成物の、レーザーによっても切断されない頑健性が、さらなる利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】体内砕石術の間の凝固物(例えば、結石)の後方移動を防止する方法における種々の工程。要点:[i]結石の後方に注入することを目的としたカテーテルの配置、[ii]本発明の組成物の注入によるプラグの形成、[iii]カテーテルの抜去による作業域の解放。
【図2】体内砕石術の間の凝固物(例えば、結石)の後方移動を防止する方法における種々の工程。要点:[iv]砕石術の進行、[v]砕石術の間に生じる断片の移動を防止するプラグ、[vi]プラグを溶解させるための生理食塩水の注水。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
本発明は、結石の後方に一時的にプラグを注入することにより、砕石術の成功率を顕著に向上させ、組織の損傷を低減させる(体内砕石術)。本発明は、砕石術を行なって、身体解剖学的な管腔を閉塞させるか、さもなければ管腔内に存在するであろう、物質(例えば、尿結石、胆管結石、および膵石などの生物学上の結石)を除去する場合に、周囲の生体組織への損傷の危険性を軽減する。
【0015】
本発明の1つの態様は、 少なくとも1種類の組成物を管腔内に注入し(特定の実施の形態では、2種類の組成物)、それによってプラグを形成し、体外または体内砕石術の間の結石の移動を防ぐ方法に関する。1つの実施の形態では、本発明は、粉砕工程の間に生じた結石断片の上方移動を防ぐ。特定の実施の形態では、管腔は、プラグを溶解させる生理食塩水ですすぐことによってきれいになる。プラグの溶解、および溶解させたプラグの流出もまた、結石断片を管腔外に流出させる。特定の実施の形態では、用いる組成物は、組織付着性を有しない、すなわち、該組成物は、該組成物が分散される管腔に対して不可逆的に結合しない。また、その物質は、特定の条件下でのみ相変化するため、該物質はその場で(in situ)「硬化」しない。
【0016】
重要なことに、本発明はまた、結石、生じる断片、または他の生物学的および非生物学的物質/異物に対し、エネルギーの反復または連続した適用を可能にすると同時に、周囲組織に対する外傷を最小限に抑える。本発明は、砕石術の成功率を大幅に向上させ、組成既存症の危険性を軽減し、処置に要する時間を短縮させる。
【0017】
定義
便宜上、本明細書、例示、および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語をここに集める。
【0018】
「造影」という用語は、例えば放射線または蛍光透視法など、物質をモニターし、検出する方法によって、哺乳動物の被験体に注入する間にモニターすることが可能な物質のことをいう。造影剤の例としては、放射線不透過物質が挙げられる。放射線不透過物質を含む造影剤は、水溶性であっても、水に不溶性であってもよい。水溶性の放射線不透過物質の例として、メトリザミド、イオパミドール、ヨータラム酸ナトリウム、ヨーダミドナトリウム、およびメグルミンが挙げられる。水に不溶性の放射線不透過物質の例として、金、チタン、銀、ステンレス鋼、それらの酸化物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなど、金属および金属酸化物が挙げられる。
【0019】
本明細書では、「ポリマー」という用語は、2つ以上のオリゴマー単位の化学結合によって形成される分子のことを意味する。化学単位は、通常、共有結合によって互いに結合する。ポリマーがホモポリマーと称される場合には、ポリマー内の2つ以上の結合した単位は、同一でありうる。それらは異なっている場合もあり、この場合、ポリマーは異なる単位の結合であり、これらのポリマーはコポリマーと称される。
【0020】
本明細書では、「架橋」は、個々のポリマー鎖が共有結合(「化学的架橋」)またはイオン結合(「イオン的架橋」)によって互いに結合し、三次元網目構造を形成する場合のことをいう。特定のポリマーでは、この種の方法はゲルを生じる効果を有する。
【0021】
本明細書では、「生体適合性(の)」とは、生体組織に、有毒反応、有害反応、または免疫反応を生じないことによって生物学的に適合可能な特性を有することをいう。本明細書では「非組織付着性(の)」という用語は、生物組織に付着しない物質(例えば、ポリマープラグ)を意味する。
【0022】
本明細書では、「ゼラチン」という用語は、皮膚、骨、軟骨、靭帯などから抽出されたコラーゲンの部分的加水分解によって生じるタンパク質生成物のことをいう。ゼラチンでは、個別のコラーゲン鎖間の天然の分子結合は、さらに容易に再配置される形態に分解されている。ゼラチンは加熱によって融解し、冷却すると再び固化する。水と共に半固体状のコロイド状のゲルを形成する。
【0023】
本明細書で用いられる「アルギン酸」は、さまざまな種類のワカメ(Phaeophyceae)から得られる天然の親水性のコロイド状多糖類である。それは、白〜黄色味がかった茶色のフィラメント状の、粒状、顆粒状、または粉末状の形態で生じる。それは、主に、β−1−4結合したD−マンヌロン酸およびα−1,4−結合したL−グルクロン酸の残基からなる、線状コポリマーである。これらのモノマーは、しばしば、下記のように、2種類のモノマーがほぼ交互に配された領域によって分けられる、ホモポリマー・ブロックとして配置される:
【化1】

【0024】
構造単位の式量は176.13である(理論値;実際の平均値は200である)。巨大分子(macromolecule)の式量は約10,000〜約600,000の範囲である(典型的平均値)。
【0025】
「アルギン酸ナトリウム」および「アルギン酸カリウム」は、アルギン酸の塩である。例として「アルギン酸カリウム」を以下に示す:
【化2】

【0026】
「ジェランガム」は、グラム陰性細菌(Pseudomonas elodea)による炭水化物の純粋培養発酵によって生じ、イソプロピルアルコールで回収することによって精製し、乾燥し、粉砕して得られる、高分子量の多糖類樹脂である。高分子量の多糖類は、ラムノース1単位、グルクロン酸1単位、およびグルコース2単位の単位を繰り返す、主に、四糖類からなり、O−グリコシド結合したエステルとして、アシル(グリセリルおよびアセチル)基で置換されている。グルクロン酸は中和され、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウムの混合塩となる。それは、通常、発酵処理で生じた少量の窒素含有化合物を含んでいる。その式量は約500,000である。「ジェラン・ナトリウム」および「ジェラン・カリウム」は、ジェランガムの塩である。濃度に応じて、約50℃でゲル‐ゾル転移を生じる。
【0027】
カルボキシメチル・セルロース(CMC)は、天然のセルロースに由来するポリマーである。セルロースとは異なり、CMCは非常に水溶性である。CMCの構造は、セルロースのβ−(1,4)−D−グルコピラノース・ポリマーに基づいている。調製が異なれば置換度も異なるが、一般的には、下記に示すように、モノマー単位当たり0.6〜0.95誘導体の範囲である:
【化3】

【0028】
CMC分子は、置換率の高い領域と低い領域をもたらし、不規則に誘導体化されており、平均すると、天然のセルロースよりも幾分短い。この置換は、主に、2−O−および6−O−結合であり、続いて重要な順に、2,6−ジ−O−、次に3−O−、3,6−ジ−O−、2,3−ジ−O−、最後に、2,3,6−トリ−O−結合である。置換過程は、予想される非置換および3置換領域よりもわずかに高く与えられる、ランダム過程というよりはむしろ、わずかに協力過程(残基内で)であるように思われる。CMC分子は低濃度で最も広がる(棒状)が、濃度が高くなると分子は重なり合ってらせん状になり、高濃度では、絡まってゲルを形成する。イオン強度の増大およびpHの低下は、それらがポリマーをさらにらせん状にすることから、粘性を低減させる。平均鎖長および置換度は重要であり、疎水性で置換度の低いCMCは揺変性であるが、より広がった置換度の高いCMCは偽塑性である。低pHでは、CMCはカルボン酸および遊離ヒドロキシル基の間のラクトン化を介して架橋を形成しうる。
【0029】
「ポリビニル・アルコール(PVA)」は、アセテートなどのポリビニル・エステルの加水分解によって合成される水溶性ポリマーであり、繊維の調製に用いられる。PVAは、酢酸ビニルなどのビニルエステルを、完全に、またはある程度加水分解することによって生じる、結果としてアセチル基の一部または全部がヒドロキシル基で置換された、熱可塑性の樹脂である。例えば:
【化4】

【0030】
特定の実施の形態では、ポリビニル・アルコール(PVA)は、酢酸ビニル(VAM)の重合の後、ポリ酢酸ビニル(PVAc)ポリマーを加水分解することによって生じる合成樹脂である。重合度は、分子量および溶液の粘度を決定する。加水分解(鹸化)度は、ポリ酢酸ビニルのポリビニル・アルコールへの変換の程度を示す。例えばn(加水分解度)は約68.2〜約99.8mol%の範囲であって差し支えなく、分子量(重量平均分子量)は約10,000〜約190,000の範囲であって差し支えない。
【0031】
ヒアルロン酸(HA)は、グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンの2量体の繰り返しからなるポリマーである。それは、分子量が極めて大きく(最大数百万まで)、細胞外基質に見られるプロテオグリカン凝集体複合体の中核を形成する。HAは、β−1−3およびβ−1−4のグリコシド結合によって交互に結合した、グルクロン酸(GlcUA)およびN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)からなる、線形で非分岐鎖のポリアニオン系二糖類単位からなる(下記参照)。それは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびヘパラン硫酸を含む、グリコサミノグリカン類の一種である。この類の他の物質とは異なり、タンパク質への共有結合は見られない。
【化5】

【0032】
中性の水溶液に取り込まれる際に、水分子および、隣接するカルボキシル基およびN-アセチル基との間に水素結合の形成が起こる。これが、ポリマーに、その柔軟性を制限する立体配座的剛性を与える。水素結合の形成が、結果的に、ポリマーに独特の水結合(water-binding)能力および水保持能力を与える。したがって、水結合能力はまた、分子量と直接的に関係する。HA1gあたり、最大6リットルまでの水と結合するであろう。
【0033】
HA溶液は、粘弾性および偽塑性を特徴とする。この流動学は、ポリマーの非常に希釈した溶液でさえも見られ、非常に粘性のゲルが形成される。HA溶液の粘弾性の性質は、生体適合材料としての用途において重要であるが、これは、HA鎖の分子量および濃度によって調整される。種々の供給源に由来するHAの分子量は多分散系であり、104〜107の範囲にわたり、非常に多様である。生じる細胞膜を通じたHAの排出は、自発的なポリマーの延長を可能にし、ゆえに、非常に高分子量の分子となりうる。
【0034】
「結石(凝固物)」という用語は、凝固、凝結、凝縮、硬結などによって結合することにより形成される、固形物の1つ以上の塊または結節を意味する。一般的な同義語として、例えば、結石(calculus)、石、凝塊、緊張(tones)、または塊が挙げられる。多くの場合、生物における結石とは、中空の器官または管に見られる無機塩類の硬い塊である。1つの実施の形態では、結石は、生物の器官(例えば、腎臓)内に見られる石状の物体のことを指す。
【0035】
「管腔」という用語は、動脈、静脈、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸の内部など、管状構造または中空の臓器によって囲まれた空間(すなわち、生体系における開口部、空間、または空洞)を意味する。管腔は、管腔を通過する物質の流れの方向に基づいた「流入口」または「排出口」を有する。本明細書では、管腔内の所定の物体より「上流」とは、前記物体と管腔の流入口との間を意味し、管腔内の所定の物体より「下流」とは、前記物体と管腔の流出口との間を意味する。
【0036】
本明細書において「砕石術」とは、任意の処置、外科手術、または石を破砕する、または崩壊させる技術のことを指す。砕石術には、経皮的腎砕石術などの処置も含まれる。
【0037】
本明細書において「結石症」とは、人間の経路または管腔内に形成される結石または「石」によって特徴付けられる人間の一般的な病気のことをいう。
【0038】
凝固物(concretions)
結石は、腎臓、膵臓、尿管および胆嚢など、身体の特定の部分において発現する。結石または石と称される、生物の凝固物は、特にそれらが無機塩類からなる場合には、珍しくない。例えば、胆管系に形成される結石は、胆石と呼ばれる。膀胱に形成されるものは、膀胱結石(vesical calculi)または膀胱石(bladder stones)、および膀胱結石(cystoliths)としても知られる。腎臓内に生じる結石は、大抵、腎臓結石と呼ばれる。結石は、尿管内にも生じることがあり、それらは、通常、腎臓由来のものが通過することに起因する。膀胱の結石は、膀胱結石(vesical calculi)または膀胱石(bladder stones)、および膀胱結石(cystoliths)としても知られる。唾液管または分泌腺内の結石の存在も観察されうる。
【0039】
生物学的には、主に4種類の結石が見られる。結石の大多数、約75%が、リン酸カルシウムが混ざることのある、シュウ酸カルシウムからなるカルシウム含有型である。別の15%は、リン酸アンモニウムマグネシウムからなり、これらの結石は、多くの場合、「トリプルストーン(triple stones)」またはスツルバイト結石と称される。残りの石は、尿酸またはシスチンで構成される。これらの結石が大きすぎて自発的には通過できない場合は、しばしば医学的介入が必要とされる。
【0040】
砕石術
生物の比較的大きい結石は、その大きさが身体からの非外科的除去を妨げることから、多くの場合、粉砕を必要とする。この処置は、砕石術として知られる。結石の粉砕(例えば、光線、化学、または物理的エネルギーによる)は、生じる断片を、結石の元々の位置から分散させてしまうであろう。身体から除去されない断片が新たな結石の形成のための核を形成しうることから、すべての断片を除去することが重要である。多くの場合、粉砕処置が、身体の手の届かない、または未知の領域への断片の移動を生じさせ、それによって断片の捕捉または除去を妨げ、あるいは干渉するという事実によって、この処置を難しくする。
【0041】
体内の砕石術ではプローブを使用し、内視鏡を目的として進行させ、結石の近くに配置させる。断片化に要するエネルギーはプローブを通じて結石に伝達され、断片化の間、治療方法は視覚化される。エネルギーの伝達方法は異なっていて差し支えなく、したがって、体内砕石技術は次の群に分けられる:超音波、レーザー、電気水力学的、および機械的/弾道的衝撃。
【0042】
最後の群は、例えば、結石の近くの爆発物を爆発させて、爆発によって生じた衝撃波を結石上に直接作用させ、粉砕して断片にする工程を含む。このような技法の例は、細長い外管内に挿入された、爆発層または気体発生層を与える内管を備えた砕石装置に関して、米国特許第4,605,003号明細書に開示されている。爆発層または気体発生層の爆破によって、細長い外管または内管に石の衝突を生じさせ、石を砕く。
【0043】
機械的衝撃法の例は、結石を周期的に打つためのハンマー要素を備えた内視鏡的砕石装置について開示する、米国特許第5,448,363号明細書を参照されたい。このハンマー要素は、回転軸の周りの弧を通り抜ける空気の直線状の噴流による空気圧で作動し、金床に激突する。砕石装置について開示する既知の他の多くの特許文献も存在し、その動作は、機械的/弾道学的原理に基づいている。例えば、米国特許第5,722,980号、および同第6,261,298号の各明細書などを参照のこと。
【0044】
レーザー技術の例は、結石の破砕に要するエネルギーを伝導する、レーザー光伝導ファイバーを備えた多目的砕石装置について、米国特許第4,308,905号明細書に記載されている。
【0045】
超音波技術は比較的よく知られており、その安全性および実用性の理由から、幅広く受け入れられている。この原理によれば、超音波プローブは、結石への直接的曝露の際に崩壊効果を有する、高周波の超音波エネルギーを放つ。プローブの先端と結石との直接的な接触は、超音波砕石術にとって必要不可欠である。この技術は、多くの砕石装置で実施されている。例えば、米国特許第6,149,656号明細書などを参照のこと。
【0046】
さらには、電気水力学的技術も存在するが、これは放電を利用するものであり、プローブ内に配置された2つの電極間を発火させて衝撃波を生じさせ、液相を通じて結石の方向に拡大し、これが結石を取り囲む。この文献では、電気水力学的砕石術は、最古の「電気」砕石術として定義される。この電気水力学的砕石装置は、石に隣接して配置される軟性のプローブの先端の電極から、高エネルギーのインパルス放電を発する。これは、膀胱結石の粉砕手段として極めて有効であると考えられており、この用途にとっての慣例となっている。電気水力学的砕石術の処置の間に生じる衝撃波が十分な力であることから、プローブは、軟組織に対して5mm以下の距離で用いるべきではなく、そうしなければ深刻な損傷を与える結果となるであろう。放電は液相内で起こるので、結石は、放電によって生じる衝撃波のエネルギー、周囲の液圧、および液流内での断片の衝突の組合せによって破壊される。
【0047】
砕石術では、エネルギーが液体媒体を通じて結石に間接的に伝わることは、容易に認識されうる。したがって、断片化に要するエネルギー量は、作用する液体を通じてそのエネルギーが送達された後に、結石の強度に打ち勝ち、断片化を起こすのに十分な量でなければならない。ポリマー・マトリクス内に封じ込められた結石には、さらに追加のエネルギーが必要とされるであろう。残念なことに、衝撃波を生ずることによる、これらの高水準のエネルギー放出は、隣接する組織に対して有害である可能性があり、したがって、患者にとって危険性を秘めている。
【0048】
機械的エネルギーの衝突または衝撃波をもたらすことによって結石を破壊することを目的とする、砕石装置のほとんどすべてにおける別の問題は、石が、通常は、各パルスのエネルギーによって移動してしまい、以前の場所を離れ、別の場所が「犠牲(thrown)」になるという事実である。この移動が操作を複雑にし、周囲の組織に機械的損傷を生じさせうる。本発明は、これらの問題の解決に取り組むものである。
【0049】
本発明の選択ポリマーおよび方法
本発明は、砕石術の成功率を非常に向上させ、結石の断片化の前に、結石の後方にポリマープラグを形成することによって(例えば、体内砕石術)、組織の損傷の危険性を低減させる。重要なことに、本発明は、砕石術の間の断片の後退を防ぐ。
【0050】
本発明のポリマープラグは、粘性のポリマー組成物から形成することができる。特定の実施の形態では、粘性のポリマー組成物は、pH変化および/またはイオン相互作用など、一つ以上の物理的現象によってその場(in situ)生成される。他の実施の形態では、粘性のポリマー組成物は生体外で(ex vivo)生成された後、哺乳動物の管腔内に注入される。特定の実施の形態では、生じたポリマープラグは、非組織付着性である。
【0051】
特定の実施の形態では、本発明のポリマー組成物は、例えば、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノーゲン、ケラチン、リーリン(reelin)、カゼイン、またはそれらの混合物からなる群より選択されるタンパク質を含む。使用可能な他の類似体タンパク質は、当業者には周知である。
【0052】
特定の実施の形態では、本発明のポリマー組成物は、ヒアルロン酸またはキトサン、もしくはそれらの混合物を含む。
【0053】
特定の実施の形態では、本発明のポリマー組成物は、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチル・セルロース、またはそれらの混合物から選択される合成物質を含む。
【0054】
特定の実施の形態では、本発明の方法に用いられるポリマーは、架橋可能なポリマーである。1つの実施の形態では、2種類の溶液、すなわちポリマー溶液および架橋剤の溶液を生物の管腔に別々に注入し(例えば、ダブルルーメン・カテーテルを通じて)、ここでそれらはゲル化し、ポリマープラグを形成する。前記ポリマー溶液は、陰イオン性のポリマー、陽イオン性のポリマー、または非イオン性の架橋可能なポリマーを含みうる。これらのポリマーは、次のうちの1種類以上を含んでいて差し支えない:アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェラン・ナトリウム、ジェラン・カリウム、カルボキシメチル・セルロース、ヒアルロン酸、および、ポリビニル・アルコール。ポリマープラグを形成するためのポリマーの架橋は、陰イオン性の架橋イオン、陽イオン性の架橋イオン、または非イオン性の架橋剤によって達成して差し支えない。架橋剤としては、限定はしないが、下記のものが挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、およびストロンチウム。ポリマーと架橋剤の典型的な組合せとしては、例えばアルギン酸塩とカルシウム、バリウムまたはマグネシウム;ジェランとカルシウム、マグネシウムまたはバリウム;またはヒアルロン酸とカルシウムなど、陰イオン性ポリマーモノマーと陽イオンが挙げられる。非イオン性のポリマーと架橋剤との典型的な組合せの例は、ポリビニル・アルコールとホウ酸塩である(わずかにアルカリ性のpH)。
本発明の1つの態様は、砕石手術の方法に関し、ここで、該方法は、
第1の組成物を、哺乳動物の管腔内の結石に対して遠位に注入し、随意的に、第2の組成物を哺乳動物の前記管腔内の前記結石に対して遠位に注入し、ここで前記第2の組成物が前記第1の組成物と接触し、それによってポリマープラグが形成される工程と、
前記結石にエネルギーを伝導し、前記結石を複数の破片へと崩壊させる工程と、
を有してなる。
【0055】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物が注入されることを特徴とする、上記方法に関する。
【0056】
特定の実施の形態では、本発明は、前記結石から前記プラグまでの距離は約1cm〜約5cmであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0057】
特定の実施の形態では、本発明は、前記結石から前記プラグまでの距離は約2cm〜約4cmであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0058】
特定の実施の形態では、本発明は、前記結石から前記プラグまでの距離が約3cmであることを特徴とする上記方法に関する。
【0059】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が経皮的アクセス装置を通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする、上記方法に関する。
【0060】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物がカテーテルまたはシリンジを通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする、上記方法に関する。
【0061】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物が、経皮的アクセス装置を通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする、上記方法に関する。
【0062】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物がカテーテルまたはシリンジを通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする、上記方法に関する。
【0063】
特定の実施の形態では、本発明は、前記カテーテルがダブルルーメン・カテーテルまたはトリプルルーメン・カテーテルであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0064】
特定の実施の形態では、本発明は、前記カテーテルが1〜10フレンチの大きさであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0065】
特定の実施の形態では、本発明は、前記カテーテルが1.5〜3フレンチの大きさであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0066】
特定の実施の形態では、本発明は、前記カテーテルが、前記ポリマー溶液以外に、または前記ポリマー溶液に加えて、1種類以上の液体の分注に用いることができることを特徴とする、上記方法に関する。
【0067】
特定の実施の形態では、本発明は、前記シリンジが1〜100cc用シリンジであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0068】
特定の実施の形態では、本発明は、前記シリンジが1〜50cc用シリンジであることを特徴とする上記方法に関する。
【0069】
特定の実施の形態では、本発明は、前記シリンジが1〜5cc用シリンジであることを特徴とする上記方法に関する。
【0070】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物の注入が手動で、または自動のシリンジプッシャーによって行なわれることを特徴とする、上記方法に関する。
【0071】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物の注入が手動で、または自動のシリンジプッシャーによって行なわれることを特徴とする、上記方法に関する。
【0072】
特定の実施の形態では、本発明は、前記エネルギーが、音響衝撃波、圧縮空気パルス、電気油圧衝撃波、またはレーザー光線であることを特徴とする上記方法に関する。
【0073】
特定の実施の形態では、本発明は、前記管腔が、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸であるか、その一部であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0074】
特定の実施の形態では、本発明は、前記管腔が尿管または腎臓であるか、その一部であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0075】
特定の実施の形態では、本発明は、前記結石が腎臓結石、膵石、唾石、または胆管結石であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0076】
特定の実施の形態では、本発明は、前記結石が腎臓結石であることを特徴とする、上記方法に関する。
特定の実施の形態では、本発明は、前記哺乳動物はヒトであることを特徴とする、上記方法に関する。
【0077】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が造影剤をさらに含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0078】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物が造影剤をさらに含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0079】
特定の実施の形態では、本発明は、前記造影剤が、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有物質からなる群より選択されることを特徴とする上記方法に関する。
【0080】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、陰イオン、陽イオン、または非イオン性の架橋可能なポリマーを含むことを特徴とする上記方法に関する。
【0081】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノーゲン、ケラチン、リーリン、カゼイン、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0082】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、ヒアルロン酸またはキトサン、もしくはそれらの混合物を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0083】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチル・セルロース、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0084】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェラン・ナトリウム、ジェラン・カリウム、カルボキシメチル・セルロース、ヒアルロン酸、ポリビニル・アルコール、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0085】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第2の組成物が、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物からなる群より選択される架橋剤を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0086】
特定の実施の形態では、本発明は、前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が約1%〜約0.005%であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0087】
特定の実施の形態では、本発明は、前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が約0.5%〜約0.005%であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0088】
特定の実施の形態では、本発明は、前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が約0.1%〜約0.005%であることを特徴とする、上記方法に関する。
【0089】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェラン・ナトリウム、またはジェラン・カリウムを含み、前記第2の組成物はカルシウム、マグネシウム、またはバリウムを含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0090】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、またはアルギン酸カリウムを含み、前記第2の組成物がカルシウムを含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0091】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、ジェラン・ナトリウム、またはジェラン・カリウムを含み、前記第2の組成物がマグネシウムを含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0092】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、ヒアルロン酸を含み、前記第2の組成物がカルシウムを含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0093】
特定の実施の形態では、本発明は、前記第1の組成物が、ポリビニル・アルコールを含み、前記第2の組成物がホウ酸塩を含むことを特徴とする、上記方法に関する。
【0094】
本発明のキット
本発明はまた、本発明の方法を便利かつ効果的に実施するためのキットを提供する。これらのキットは、本発明の任意の組成物、および本発明の方法と一致する用途を円滑にする手段とを含む。これらのキットは、本方法が効果的な様式で実施されることを確実にするための便利かつ有効な手段を提供する。これらのキットの順守手段(compliance means)には、本発明の方法の実施を円滑にする任意の手段が含まれる。これらの順守手段としては、取扱説明書、包装、および分注手段、ならびにそれらの組合せが挙げられる。キットの構成要素は、手動もしくは一部または完全に自動化して前記方法を実施するために、パッケージ化されて差し支えない。特定の実施の形態では、本発明のこれらのキットの組成物は、一つ以上のシリンジ、圧縮性のプラスチックまたは金属チューブ(例えば、従来の歯磨きのチューブと同種のもの)、または破って開けてもよい小袋(packet)などに詰められる。
【実施例】
【0095】
本発明について、これまで一般的に述べてきたが、本発明の特定の態様および実施の形態を例示する目的で単に挙げられるのであって、本発明を限定することは意図されていない、以下の机上の実施例を参照することにより、さらに容易に理解されるであろう。
【0096】
実施例1
以下の実験を実施して、本発明のポリマープラグがインビトロモデルにおける砕石術の間の石の移動の防止に有効であることを確認する。
【0097】
尿管をシミュレートするため、0.9cmの内径を有するプラスチック・チューブを選択する。該チューブを部分的に生理食塩水で満たし、人の腎臓結石(シュウ酸カルシウム)を前記チューブの中間に配置する。尿管鏡を、チューブ内の視覚的に石の近くに配置し、前記組成物または本発明の組成物を、尿管鏡のワーキングチャネルを通じて配置する標準的な単管尿管カテーテルを介してチューブ内に注入する。石を、電気水力学的砕石術またはレーザー砕石術のいずれかを用いて断片化する。
実施例2
以下の実験を実施して、インビトロモデルにおける静止状態(最悪の場合)下、生理食塩水を用いて本発明のポリマープラグを溶解させるのに要する時間を見積もる。
【0098】
本発明の組成物を注入する前に、少量のメチレンブルーを加えて、目立たせるようにしてもよい。37℃の生理食塩水で覆われたペトリ皿に本発明の組成物の注入後の、プラグの溶解を視覚的に追うことができる。溶出試験には、最小量の表面積を有する球状と、最大表面積を有し、尿管内のポリマープラグの形状をより正確に表す糸状の2種類の形状のプラグを用いてもよい。20ゲージシリンジを用いてペトリ皿の底に糸状のポリマーを押し出して差し支えない。
【0099】
ペトリ皿を乱さずに、全過程を視覚的に観察する。ペトリ皿を回転させて完全に溶解したことを確認する。完全に溶解するのに要した合計時間を記録する。
【0100】
実施例3
以下の実験を実施して、インビトロモデルにおける静止状態(最悪の場合)下で、尿へのポリマープラグの溶解に要する時間を見積もる。
【0101】
新鮮な尿サンプルを、泌尿器科クリニックに通院する患者の無作為サンプルから入手し、メチレンブルーで視覚化した本発明のポリマープラグの溶解を、37℃の尿サンプル内にポリマープラグを注入することによって試験する。溶解までの時間を記録する。
【0102】
実施例4
以下の実験を実施して、本発明のポリマープラグが効果的に溶解し、生体外での尿管モデルにおいて、尿管から排出されることを確認する。
【0103】
切除したブタの尿管(長さ約25cm)を、トレーに固定し、トレーを37℃に加熱した水浴中に沈める。鞘(sheath)を尿管内に挿入し、石を進行させるためのストーンバスケットを用いて、小さい(約5mm)焼き石膏の模擬腎臓結石を各尿管に配置する。次いで、尿管鏡を尿管内に配置する。3Fカテーテルを、石から約3cm離して、尿管鏡のワーキングチャネルを通じて進行させる。カテーテルを通じて、本発明の組成物を尿管内に注入する。この実験には、メチレンブルーを用いて視覚化を促進してもよい。膀胱鏡を用いて、カテーテルおよびプラグを視覚化し、カテーテルの先端をプラグ内に進行させる。その部位を室温の生理食塩水または冷水のいずれかを用いて注水し、ポリマープラグを溶解し、流出させる。
【0104】
実施例5
以下の実験を実施して、本発明のポリマープラグを、インビボの尿管から効果的に溶解させ、除去(生理食塩水の注水を使用)可能であることを確認する。
【0105】
ヨークシャー・ピッグのメスの成体に麻酔する。各動物に、恥骨上部の切開を行い、右尿管を摘出し、末端の尿管切開術を行う。焼き石膏の模擬腎臓結石を、尿管切開術の約2〜3cm上の尿管に配置する。石の大きさは、尿管よりも小さいものを選択し、それを後退の危険性のある場所に置く。半剛性の尿管鏡を尿管に通して石を視覚化し、3Fカテーテルを、石を通り越した該カテーテルの遠位開口部を用いて、尿管鏡のワーキングチャネルを通過させる。カテーテルを通じて本発明の組成物を注入し、尿管のプラグを形成した後、カテーテルを抜管する。その後、電気水力学的砕石機を用いて石を断片化する。冷生理食塩水を用いてポリマープラグを溶解し、石の断片を除去する。砕石術およびプラグの除去の後、動物を安楽死させ、尿管を摘出する。
【0106】
摘出した尿管の病理学検査を、尿管をホルマリンで固定することによって行う。組織をパラフィン中に埋め込み、横方向に区分けし、H&E染色する。次に、資格を有する病理学者によって、組織を検査する。
【0107】
実施例6
以下の実験を実施して、本発明のポリマープラグが、その後の砕石術による石の移動を防止するのに有効であることを確認し、その物質が効果的に除去されることを確認し、亜慢性的なインビボモデルにおける尿管の粘膜の組織学的評価を提供する。
【0108】
ヨークシャー・ピッグのメスの成体に麻酔する。各動物に、恥骨上部の切開を行い、右尿管を摘出し、末端の尿管切開術を行う。焼き石膏の模擬腎臓結石を、尿管切開術の約2〜3cm上の尿管に配置する。石の大きさは、尿管よりも小さいものを選択し、それを後退の危険性のある場所に置く。半剛性の尿管鏡を尿管に通して石を視覚化し、3Fカテーテルを、石を約2cm通り越した該カテーテルの遠位開口部を用いて、尿管鏡のワーキングチャネルを通過させる。本発明の組成物を、カテーテルを通じて注入し、尿管のプラグを形成した後、カテーテルを抜管する。その後、電気水力学的砕石機を用いて石を断片化する。冷生理食塩水を用いて流出させる代わりに、ポリマープラグが自然に溶解し始めるまで待機することを試みる。
【0109】
砕石術およびプラグの除去の後、尿管切開術を、細い吸収性縫合糸で閉じ、動物を回復させる。1週間後、これらの動物を安楽死させ、同一の正中切開を通して左尿管(対照)および右尿管(実験)を横に切断し、カニューレを挿入する。尿サンプルを各尿管から回収する。指定時刻に尿を採取して、尿/血漿(UP)クレアチニン、UP尿素およびナトリウムの分画排せつ率を分析し、標準的な病院検査室の方法を使用して、血漿を分析する。処置したサンプルおよび対照サンプルから得られる値を、対応のないスチューデントt−検定を使用して比較する。
【0110】
尿および血漿のサンプルを採取した後、病理学的検査用に腎臓および尿管を採取し、動物を安楽死させる。摘出組織の病理学的検査は、サンプルをパラフィンに埋め込み、横方向に区分けし、H&E染色し、資格を有する病理学者によって検査した後、ホルマリン中で保管することによって行なう。
【0111】
参照による援用
本明細書で引用したすべての米国特許明細書および米国特許出願公開明細書は、参照することにより、本明細書に援用する。
【0112】
等価
当業者は、所定の実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施の形態に対する多くの等価物を認識し、確定することができるであろう。これらの等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石術の方法であって、
第1の組成物を、哺乳動物の管腔内の結石に対して遠位に注入し、それによってポリマープラグを形成し、
前記結石にエネルギーを伝導し、前記結石を複数の破片に断片化させる、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
第2の組成物を、哺乳動物の前記管腔内の前記結石に対して遠位に注入する工程をさらに有してなり、ここで前記第2の組成物が前記第1の組成物と接触することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記結石から前記プラグまでの距離が、約1cm〜約5cmであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記結石から前記プラグまでの距離が、約2cm〜約4cmであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記結石から前記プラグまでの距離が、約3cmであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記第1の組成物が、経皮的アクセス装置を通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記第1の組成物が、カテーテルまたはシリンジを通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記第2の組成物が、経皮的アクセス装置を通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記第2の組成物が、カテーテルまたはシリンジを通じて前記管腔内に注入されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項10】
カテーテルが用いられ、該カテーテルが、ダブルルーメン・カテーテルまたはトリプルルーメン・カテーテルであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項11】
カテーテルが用いられ、該カテーテルが、1〜10フレンチの大きさであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項12】
カテーテルが用いられ、該カテーテルが、1.5〜3フレンチの大きさであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項13】
カテーテルが用いられ、該カテーテルが、前記ポリマー溶液以外に、または前記ポリマー溶液に加えて、1種類以上の液体の分注に用いられることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項14】
シリンジが用いられ、該シリンジが1〜100cc用シリンジであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項15】
シリンジが用いられ、該シリンジが1〜50cc用シリンジであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項16】
シリンジが用いられ、該シリンジが1〜5cc用シリンジであることを特徴とする請求項7または9記載の方法。
【請求項17】
前記第1の組成物の注入が、手動で、または自動のシリンジプッシャーによって行なわれることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
前記第2の組成物の注入が、手動で、または自動のシリンジプッシャーによって行なわれることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記エネルギーが、音響衝撃波、圧縮空気パルス、電気油圧衝撃波、またはレーザー光線であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
前記管腔が、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸であるか、その一部であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
前記管腔が、尿管または腎臓であるか、その一部であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項22】
前記結石が腎臓結石、膵石、唾石、または胆管結石であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
前記結石が腎臓結石であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項25】
前記第1の組成物が造影剤をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項26】
前記第2の組成物が造影剤をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項27】
前記造影剤が、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有物質からなる群より選択されることを特徴とする請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
前記第1の組成物が、陰イオン性、陽イオン性、または非イオン性の架橋可能なポリマーを含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項29】
前記第1の組成物が、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、プロタミン、フィブリン、フィブリノーゲン、ケラチン、リーリン、カゼイン、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項30】
前記第1の組成物が、ヒアルロン酸またはキトサン、もしくはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項31】
前記第1の組成物が、アルギン酸塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチル・セルロース、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項32】
前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェラン・ナトリウム、ジェラン・カリウム、カルボキシメチル・セルロース、ヒアルロン酸、ポリビニル・アルコールまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項33】
前記第2の組成物が、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムおよびそれらの組合せからなる群より選択される架橋剤を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が、約1%〜約0.005%であることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が、約0.5%〜約0.005%であることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマープラグ中の前記架橋剤の濃度(w/w)が、約0.1%〜約0.005%であることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェラン・ナトリウム、またはジェラン・カリウムを含み、前記第2の組成物が、カルシウム、マグネシウム、またはバリウムを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項38】
前記第1の組成物が、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、またはアルギン酸カリウムを含み、前記第2の組成物がカルシウムを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項39】
前記第1の組成物が、ジェラン・ナトリウム、またはジェラン・カリウムを含み、前記第2の組成物がマグネシウムを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項40】
前記第1の組成物がヒアルロン酸を含み、前記第2の組成物がカルシウムを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項41】
前記第1の組成物がポリビニル・アルコールを含み、前記第2の組成物がホウ酸塩を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510814(P2010−510814A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530627(P2009−530627)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079854
【国際公開番号】WO2008/042756
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506128226)プルーロームド インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】PLUROMED, INC.
【Fターム(参考)】