説明

破断試験装置

【課題】帯状試料の破断強度について曲げと引っ張りを組み合わせた破断強度の評価を簡便かつ自動的に行う。
【解決手段】曲率半径を設けた加圧ヘッドと、前記加圧ヘッドに沿うように保持された帯状試料の両側で帯状試料を保持するチャックと、加圧ヘッド先端部とチャック間で帯状試料に張力を加える引っ張り装置と、前記加圧ヘッド先端を観察する顕微鏡ヘッドを有し、前記チャックのどちらか一方に連接されたロードセルで張力測定を行うとともに、加圧ヘッド先端を観察する顕微鏡ヘッドで帯状試料の曲げ外周部に発生する微小クラックの発生時期の特定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状試料の破断試験装置に関し、さらに詳しくは、プラスチック材料、プラスチックを含む複合材料、又は導電性の基材の表面に塗膜層を形成した複合材料からなる試料の曲げと張力が合わさって作用して破断する破断試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の帯状のプラスチック材料やプラスチックを含む複合材料からなる試料の試験装置として3点曲げ試験装置があった(例えば、特許文献1参照)。図5は、前記特許文献1に記載された従来の3点曲げ試験装置を示すものである。
【0003】
図5において、両端が自由な帯状試料101を2個の円筒支え102の上に載せ、その中央部に先端部が半円形状に形成された押し金具103を当て、この押し金具103を帯状試料101の面に対し徐々に垂直に押し込み、このとき押し込み金具103に生じる帯状試料101の垂直方向の曲げ反力をロードセル104で測定し、押し込み金具103の押し込み量から算出した曲げ角度で帯状試料101の曲げ耐久性を評価していた。さらに試験後に帯状試料101を取り外し、外観検査を行い、帯状試料101が破断しているかを判定していた。
【特許文献1】特開2003−307477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、帯状試料の両端は自由であり、張力の測定ができない。また、帯状試料自体にも押し込み金具による曲げ応力しかかかっておらず、例えば、導電性の基材の表面に塗膜層を形成したような複合材料からなる帯状試料を、曲率半径の小さい巻き芯材に巻き付けて電子部品などの電極に仕上げる場合に、帯状試料に生じる引っ張りと曲げが合わさった応力で導電性の基材の表面の塗膜層に微小クラックが発生するかどうかという耐久性の評価に使用することができないという課題を有していた。
【0005】
したがって、本発明は、上記のような従来の2個の円筒支えの上に両端が自由な帯状試料を載せ、その中央部を先端部形状が巻芯の外周形状と同じ曲率半径の押し金具で垂直に押し込む3点曲げ試験における問題点を解決し、プラスチック材料、プラスチックを含む複合材料、又は導電性の基材の表面に塗膜層を形成した複合材料などからなる帯状試料に対して、引っ張りと曲げが合わさって作用する場合の耐久性を評価できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の破断試験装置は、曲率半径を設けた加圧ヘッドと、前記加圧ヘッドに沿うように保持された帯状試料の両側で帯状試料を保持するチャックと、加圧ヘッド先端部とチャック間で帯状試料に張力を加える張力付加機構と、前記加圧ヘッド先端を観察する認識手段を有し、前記チャックのどちらか一方が張力測定器に連接されていることを特徴とする。チャックのどちらか一方に連接された張力測定器で張力測定を行い、加圧ヘッド先端を観測する認識手段で帯状試料の外周表面における微小クラックの発生を特定する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の破断試験装置によれば、帯状試料に引っ張りと曲げが合わさって作用して破断する場合の破断強度の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における破断試験装置を模式的に示す概略図である。図1において、1は所定の曲率半径rを有し、曲率の中心軸2で自転できる自転機構3により保持された加圧ヘッドで、本発明の実施の形態1では自転機構3としてミニチュアベアリングで保持された段付ピンを用いている。自転機構3は背面基台4に固定されたガイド5で位置決め固定された自転機構ホルダー6で保持されている。本発明の実施の形態1において加圧ヘッド1の曲率半径rを変更する際は、自転機構ホルダー6ごと交換している。7は加圧ヘッド1の両側に配置された保持チャック8の上部爪9と下部爪10で加圧ヘッド1の先端部に沿うよう保持された帯状試料で、本発明の実施の形態1では保持チャック8に上部爪9の上下動作機構(図示せず)を設け、加圧ヘッド曲率中心軸2に平行に凹凸な溝を設けた上部爪9と平板状の下部爪10との間で帯状試料7を挟み、帯状試料7の幅方向に均一に張力が掛かるように保持している。
【0010】
本発明の実施の形態1において帯状試料7の幅は20mmのものを用いた。保持チャック8は保持チャックベース11を介して保持チャック基台12に取り付けられたリニアガイド13に取り付けられており、リニアガイド13に沿って負荷なく移動が可能となっている。本発明の実施の形態1では、図1で加圧ヘッド1の右側に配置された保持チャック8には引っ張り装置連結棒14を介して引っ張り装置15が取り付けられており、保持チャック8をリニアガイド13に沿って変速可能な所定の速度で移動されるようになっている。
【0011】
本発明の実施の形態1では図1で加圧ヘッド1の左側に配置された保持チャック8には張力測定器として、ロードセル連結棒16を介してロードセル17が取り付けられており、保持チャック8にリニアガイド13に沿った方向に掛かる力を測定する。
【0012】
図1のA−A‘断面を表す図2に示すように、加圧ヘッド1の先端部に沿った帯状試料7の端面を拡大観察する認識手段として顕微鏡ヘッド18が加圧ヘッド1の先端に設置されている。帯状試料7の破断の有無を顕微鏡ヘッド18に接続された画像認識装置(図示せず)で行う。
【0013】
かかる構成によれば、帯状試料7に引っ張りと曲げが合わさって、曲げ外周表面にかかる微小クラックを発生させる際の破断強度の測定ができる。
【0014】
本発明の実施の形態1では、最初に加圧ヘッド1の曲率半径rが、0.5mmの自転機構ホルダー6をガイド5に取り付け、帯状試料7を加圧ヘッド1の先端部に沿わせた状態で加圧ヘッド1の両側に設置された保持チャック8の上部爪9と下部爪10に挟んで固定し、引っ張り装置連結棒14を介して引っ張り装置15に連結された側の保持チャック8をリニアガイド13に沿って動作速度0.5mm/分で引き上げる。帯状試料7が加圧ヘッド1の先端部に接触し、ロードセル連結棒16を介してロードセル17に連結された側の保持チャック8をリニアガイド13に沿って引っ張り、ロードセル17で張力を測定する。ロードセル17で張力を検出した時点で引っ張り装置15の動作速度を2mm/分とし、帯状試料7が破断するまで継続して引っ張る。この際、帯状試料7が引っ張りによる伸びで加圧ヘッド1の先端部上を移動するが、加圧ヘッド1の先端部が自転機構3によりその曲率中心軸2を中心に回転するため、帯状試料7には加圧ヘッド1の先端部をすべることにより付加される応力は発生しない。
【0015】
次に、帯状試料7の破断は加圧ヘッド1の正面に設置された顕微鏡ヘッド18で帯状試料7の端面を拡大観察して帯状試料7の破断の有無を画像認識装置で行う。帯状試料7の破断が検出された時点で、引っ張り装置連結棒14を介して引っ張り装置15に連結された側の保持チャックの上部爪9のチャックを開放し、保持チャック8を原点に復帰させる。幅20mmの帯状試料について加圧ヘッド1の曲率半径rが0.8mm、1.0mm、2.0mm、5.0mmの自転機構ホルダー6をガイド5に取り付けて、それぞれ同様な破断試験を行った。結果を図3に示す。図3においてy軸に破断検出時のロードセルの張力値(但し、張力ゼロのときに表示している値をオフセットしている)、x軸に加圧ヘッド1の曲率半径rの逆数(1/r)を曲率κとして取っている。
【0016】
各曲率半径rについて破断試験を行った結果、各曲率半径rにおける破断強度の最低値は表1に示すように、加圧ヘッド1の曲率半径rが0.5mmの場合は25Nで破断し、曲率半径rが0.8mmの場合は38N、曲率半径rが1.0mmの場合は40N、曲率半径rが2.0mmの場合は49N、曲率半径rが5.0mmの場合は51Nとなり、各曲率半径rでどの程度の破断強度に耐えうるかがわかる。
【0017】
【表1】

【0018】
図3の破断試験結果には、帯状試料7に曲げを加えずに別試験機にて引っ張り試験をした結果を曲率κ=0の破断強度として加えてあり、それぞれの曲率κにおける破断強度を線で結び、これを境界線とし、境界線より上側を破断領域、下側を安全領域として帯状試料7に生じる引っ張りと曲げが合わさって作用する場合の帯状試料7が破断しない領域を明確にしている。
【0019】
このことにより帯状試料に引っ張りと曲げが合わさって作用する場合、例えば、プラスチック材料やプラスチックを含む複合材料や導電性の基材の表面に塗膜層を形成した複合材料からなる試料を、曲率半径rの小さい巻き芯に張力をかけて巻きつけて電子部品などの電極に仕上げる場合、図3を使って、複合材料が破断しない安全領域での巻き芯の径や張力が決定でき、巻き付けの加工条件出しに活用できる。
【0020】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2の試験装置を模式的に示す概略図である。図4において、図1および図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態2について、図4を用いて具体例を説明する。図4において19は所定の異なる曲率半径rを持つ複数の加圧ヘッド21を自転機構としての自転機構20を介して保持する支持基台で、本発明の実施の形態2では曲率半径rが0.5mm、0.8mm、1.0mm、2.0mm、4種類の加圧ヘッド21を中心から加圧ヘッド21の先端部の帯状試料7の接触部までを等距離とし、円周4等配に自転機構20を介して背面基台4に取り付けられ回転割り出し装置(図示せず)に接続され、曲率半径rを変えるために所定の角度、本発明の実施の形態2では90°回転させている。
【0022】
30は帯状試料7をロール状に巻いた供給コイル部であり、1回の破断試験に使用する長さの帯状試料7を上部爪9で、ロードセル17に連接された保持チャック8を経て加圧ヘッド21へ供給する。31は帯状試料7を巻き取るための巻き取りコイル部であり、加圧ヘッド21側から引っ張り装置15に連接された保持チャック8を経て帯状試料7を巻き取る。
【0023】
帯状試料7を保持する保持チャック8のどちらか一方に連接されたロードセル17で張力測定を行うとともに、加圧ヘッド先端を観察する顕微鏡ヘッド18で、帯状試料7の曲げ外周部に発生する微小クラックの発生時期の特定を実施の形態1と同じ構成で同様に行う。
【0024】
本発明の実施の形態2では、供給コイル部30は、1回の破断試験に使用する長さの帯状試料7を上部爪9で搬送し、破断試験を実施の形態1と同様に行った後、加圧ヘッド21の支持部材22を回転させ、曲率半径rの異なる次の加圧ヘッド21で同様な破断試験を繰り返し、1回の破断試験に使用する長さの帯状試料7を上部爪9で巻き取りコイル部31へ巻き取る。
【0025】
かかる構成によれば、所定の異なる曲率半径rを持つ複数の加圧ヘッド21を自転機構としての自転機構20を介して支持基台19で保持し、破断試験ごとに加圧ヘッド21を交換し、供給コイル部30から上部爪9を使い帯状試料7を搬出し、又、保持チャック8で巻き取りコイル部31への連続した帯状試料7を搬出する各動作は連動されることにより実施の形態1と同様な試験結果が連続して得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の破断試験装置は、帯状試料に引っ張りと曲げが合わさって作用する場合の破断強度の測定が可能となり、プラスチック材料、プラスチックを含む複合材料、又は導電性の基材の表面に塗膜層を形成した複合材料からなる試料の引っ張りと曲げが合わさって作用する場合の破断試験評価の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1の試験装置を模式的に示す概略図
【図2】本発明の実施の形態1の図1のA−A’断面に示す断面外略図
【図3】本発明の実施の形態1における破断試験結果を示す図
【図4】本発明の実施の形態2の試験装置を模式的に示す概略図
【図5】従来の試験装置を模式的に示す概略図
【符号の説明】
【0028】
1、21 加圧ヘッド
2 曲率中心軸
3、20 自転機構
7 帯状試料
8 保持チャック
15 引っ張り装置
17 ロードセル
18 顕微鏡ヘッド
30 供給コイル部
31 巻き取りコイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率半径を設けた加圧ヘッドと、前記加圧ヘッドに沿うように保持された帯状試料の両側で帯状試料を保持するチャックと、加圧ヘッド先端部とチャック間で帯状試料に張力を加える張力付加機構と、前記加圧ヘッド先端を観察する認識手段を有し、前記チャックのどちらか一方が張力測定器に連接されていることを特徴とする破断試験装置。
【請求項2】
交換可能な複数の異なる所定の曲率半径を持つ加圧ヘッドからなることを特徴とする請求項1に記載の破断試験装置。
【請求項3】
帯状試料を供給する供給コイル部と、試験後の帯状試料を巻き取る巻き取りコイル部からなることを特徴とする請求項1または2に記載の破断試験装置。
【請求項4】
加圧ヘッド先端部は、曲率中心軸で自転できる機構を有する請求項1に記載の破断試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−78606(P2007−78606A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269608(P2005−269608)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】