説明

破砕方法とそれを用いた破砕装置及び破砕処理装置

【課題】 被破砕物を収容した破砕容器を固定した状態であっても破砕容器内に投入した破砕媒体を回転及び上下運動させて被破砕物を破砕することを可能にした破砕方法とそれを用いた破砕装置及び破砕処理装置を提供する。
【解決手段】 リング状の回転磁界発生器11,12を上下に配したリング内に被破砕物と破砕媒体とを収容した破砕容器Aをその底部が下方の回転磁界発生器12のリング内に位置するように挿入し、回転磁界発生器11,12に交互に3相交流電流を印加し、強磁性体で形成された破砕媒体を回転及び上下運動させて被破砕物を破砕する。破砕容器Aを破砕装置1に挿入するだけで破砕処理できるので、破砕容器Aを昇降及び水平移動させる移動手段を設けることにより破砕処理を自動化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物組織や鉱物、樹脂などの試料を破砕処理する破砕方法に関し、特に、蛋白、DNA、RNA等の解析を行うための前処理として細胞や組織を破砕するのに適した破砕方法とそれを用いた破砕装置及び破砕処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体試料をDNA分析等に供する前処理として動物や植物などの組織や細胞を破砕する破砕方法として、超音波による破砕、圧力による破砕など様々な破砕方法が用いられているが、効率的且つ効果的に被破砕物を破砕する破砕方法として、被破砕物と破砕媒体とを収容した破砕容器に往復振動を加えて被破砕物を破砕する破砕方法が知られている(特許文献1参照)。この破砕方法は、図19に示すように、破砕容器100を保持した環状保持体103を円周方向に高速に往復移動させると共に上下方向に高速に往復移動させることにより、破砕容器100中に収容した破砕媒体101が破砕容器100の内部で回転し容器壁に激しく衝突するので、破砕容器100が乳鉢、破砕媒体101が乳棒のように作用して破砕容器100に収容した被破砕物が圧砕あるいは摩砕される。
【0003】
しかし、破砕容器100を高速に往復移動させるために、モータにより高速回転駆動される回転軸102に対して軸心を傾斜させた傾斜軸部104に相対回転自在に環状体105を外嵌させ、環状体105に前記環状保持体103を取り付け、環状体105の回転を磁石106と対極磁石107との磁気吸引により拘束しているので、装置に機械的な無理が加わる要素が多くなり、機械的振動により騒音が発生しやすく、装置の耐久性にも問題を有する構造となっている。破砕容器100の中で破砕媒体101を激しく運動させるには破砕容器100を激しく振り回す必要があり、いわば乳棒を入れた状態の乳鉢を振り回しているようなものである。
【0004】
また、摩擦や装置の温度上昇等により被破砕物が温度上昇し、被破砕物の種類によっては熱による変質が生じ、細胞分析等の作業に支障を来たす問題があり、温度上昇を抑えるために破砕容器100を冷却することが要求されるが、激しく往復移動する破砕容器100を冷却することは容易でない。また、破砕容器100を激しく往復移動させるために、破砕容器100を装置に強固に固定する必要があり、破砕容器100を装置に装着し、破砕処理後に取り出す作業が容易でないため、被破砕物を破砕処理する作業に大きな手間を要する。
【0005】
上記従来構成になる破砕装置では少量の被破砕物であっても破砕容器を装置に装着する手間を要するので、少量の被破砕物を凍結処理して手動によって振動を加え、簡易に被破砕物を破砕処理する凍結試料破砕用容器が知られている(特許文献2参照)。この破砕用容器は、図20に示すように、凍結処理した試料(被破砕物)と破砕錘122とを投入した破砕容器121をマガジン124に収納し、このマガジン124を外ケース125に入れて手動で振り、凍結させた試料を破砕錘122で破砕することができるように構成されている。手動で破砕処理できるため簡単であり、破砕容器121、マガジン124、外ケース125を透明材料で形成することにより破砕状態を外部から観察することができるとしている。
【0006】
上記各従来技術では、いずれも破砕容器を振動させて被破砕物を破砕処理するので、破砕容器の蓋を閉じたり固定するなどの手間が伴う。望ましくは、乳鉢の役割をなす破砕容器は固定し、乳棒の役割をなす破砕媒体だけを回転及び往復振動させる仕組みの開発が期待されている。その一端として、被破砕物に微細な磁気球や金属球を混合して破砕容器中に収容し、破砕容器の外部から規則的もしくは不規則に磁界を加え、磁気球や金属球に振動や回転、移動の動きを生じさせることにより被破砕物を破砕する破砕方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
この破砕方法は、図21に示すように、微細な磁気球や金属球を混合した被破砕物110を収容した円筒形容器111の直径方向に対向して2方向あるいは4方向に電磁石112,113を配し、複数の電磁石112,113にランダムなタイミングで通電し、必要に応じて通電方向を切り換えて磁極を反転させることにより、磁気球に不規則な移動や回転を生じさせ、被破砕物110を破砕するとしている。
【0008】
上記技術のように円筒容器の外部から加える磁界により円筒容器内に収容した磁性体を回転させる技術は、円筒容器内に収容した液体を攪拌する装置として知られている(特許文献4参照)。この攪拌装置は、図22に示すように、樹脂溶液が供給される注入用容器131内に磁性体攪拌子132を収容し、注入用容器131の外周から回転磁界発生器133により回転磁界を印加することにより、磁性体攪拌子132を回転させて注入用容器131内の樹脂溶液を攪拌する。
【0009】
また、被破砕物を収容した破砕容器を所定位置に固定した状態で外部から印加される磁界により破砕容器内に投入した磁性体を破砕容器の円筒軸方向に往復直動させ、被破砕物を破砕するソレノイドを用いた加振機構が知られている(特許文献5参照)。
【0010】
このソレノイドを用いた破砕方法は、図23に示すように、上下に配設された第1及び第2の各ソレノイド141,142の内側に取り付けた容器148に投入した磁性体143を第1及び第2の各ソレノイド141,142をオン/オフ制御することにより容器148内で往復直動させて被破砕物である検体144を破砕する。容器148の底部には予め質量体145が収容され、その上に検体144を置き、容器148内に磁性体143を投入して第1及び第2の各ソレノイド141,142を交互に励磁すると、磁性体143は往復直動して質量体145に衝突するので、検体144は質量体145と磁性体143との間で圧砕される。
【特許文献1】特開2001−178444号公報
【特許文献2】実用新案登録3086539号公報
【特許文献3】特開2003−000226号公報
【特許文献4】特開2004−121963号公報
【特許文献5】特開2005−111358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献5として示した従来技術は、いわば金槌で被破砕物を叩き潰す動作をソレノイドによる電磁駆動によって行っているようなもので、特許文献2として示した手動で破砕用容器を振り、破砕錘によって凍結させた被破砕物を破砕する方法と機械的な動きは似通っている。いずれの破砕方法も被破砕物は圧縮により破砕される圧砕の効果は得られるものの、乳鉢に入れた被破砕物を乳棒で磨り潰すような摩砕の効果は得られず、多様な被破砕物の種類に対応させることはできず、被破砕物の種類によっては充分な破砕性能が得られないものである。
【0012】
また、特許文献2として示した手動で被破砕物を破砕する方法では、被破砕物に加わる圧縮力が小さいため、被破砕物が破砕されやすくなる凍結状態にすることが要件となるため、液体窒素などの凍結手段を必ず用意する必要がある。
【0013】
また、上記特許文献4として示した従来技術は攪拌装置であるため、磁性体攪拌子を注入用容器の一定位置で回転させるだけなので、本発明が主目的とする被破砕物の破砕に用いることはできない。
【0014】
また、上記特許文献3として示した従来技術では、破砕媒体とする微細な磁気球や金属球を磁界方向の切り換えにより円筒形容器内で移動させるだけなので、破砕媒体の質量が小さいがために植物繊維や鉱物材料などの硬い被破砕物は破砕し難く、微細な破砕媒体を混合することができる軟質の被破砕物に限定される。また、破砕媒体は円筒形容器の中で通電された電磁石の側に移動する往復移動や周回移動を行うだけなので、破砕容器を乳鉢として乳棒となる破砕媒体が破砕容器に衝突し回転する摩砕の効果は得られ難い。即ち、破砕容器の容積に対応する形状寸法と質量とを有する破砕媒体自体が破砕容器の中で回転し、破砕容器の底に衝突するような運動を生じさせる必要がある。このような乳鉢−乳棒の効果を得るには、上記特許文献1として示した破砕容器自体を往復振動させる破砕方法が適している。
【0015】
しかし、前述したように破砕容器自体を激しく往復振動させるので、破砕媒体と被破砕物とを収容した破砕容器を装置に強固に固定する必要があり、その着脱に大きな手間を要することになる。この着脱は手間が大きくなるばかりでなく、液体窒素により凍結乾燥させた被破砕物を破砕する際に、凍結状態が破砕までに変化し、破砕後に凍結状態が失われる恐れもあり、多数の被破砕物を処理するのに大きな障害となる。また、破砕容器自体を激しく往復振動させるので、一定の温度環境下で破砕して被破砕物の温度上昇に伴う変質を防ぐために破砕容器を冷却することが容易でなく、冷却のための装置構成が複雑且つコスト高になる。
【0016】
また、従来の破砕容器内で破砕を行う方法は、乳鉢−乳棒による手作業に比して格段に効率的であり、被破砕物に異物を混入させてしまうコンタミネーションの発生も抑制されるが、破砕容器の蓋を開け閉めし、破砕後に破砕媒体を取り出す作業を伴い、その際にコンタミネーションを発生させる恐れがあり、作業手間が大きくなる課題があった。
【0017】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、破砕容器を静止させた状態で被破砕物に摩砕と圧砕の破砕作用を与えて破砕し、破砕容器の開閉及び破砕媒体の取り出しを簡易に行い得るようにした破砕方法とそれを用いた破砕装置及び破砕処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本願第1発明に係る破砕方法は、被破砕物と強磁性体を主体として形成された破砕媒体とを収容した有底円筒形の破砕容器を所定位置に静置し、破砕容器の外部から印加する磁界により破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕媒体により被破砕物を摩砕及び圧砕することを特徴とする。
【0019】
上記破砕方法によれば、所定位置に破砕容器を静置した状態で磁界により破砕媒体のみを回転運動及び上下運動させて被破砕物を破砕することができる。容器破砕容器の外周回りに回転磁界を印加すると、強磁性体を主体として形成された破砕媒体は回転磁界により回転運動が生じ、破砕媒体により被破砕物を摩砕することができる。更に、回転磁界を印加する位置の変化あるいは吸引磁界の印加により破砕媒体は上下運動し、破砕容器の底に衝突する破砕媒体により被破砕物は圧砕される。この破砕媒体の回転運動と上下運動とを組み合わせることにより、摩砕と圧砕とにより被破砕物を効率よく破砕することができる。
【0020】
また、本願第2発明に係る破砕方法は、強磁性体によって形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の少なくとも上方側と底部側の外周から回転磁界を印加し、各回転磁界を制御することにより破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体により破砕することを特徴とする。
【0021】
上記破砕方法によれば、強磁性体で形成された破砕媒体を収容した破砕容器の外周から回転磁界を加えて破砕媒体を回転させ、印加する回転磁界の位置を破砕容器の上方側と底部側とで切り換えると破砕媒体は上下振動するので、破砕媒体の回転運動と上下運動とにより破砕容器に収容された被破砕物は破砕媒体によって摩砕及び圧砕される。
【0022】
また、本願第3発明に係る破砕方法は、強磁性体によって形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の外周から回転磁界を印加すると共に、破砕容器の底部に吸引磁界を印加し、前記回転磁界及び吸引磁界を制御することにより、破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体により破砕することを特徴とする。
【0023】
上記破砕方法によれば、強磁性体によって形成された破砕媒体は回転磁界によって回転し、破砕容器の底部に加わる吸引磁界により破砕容器の底に吸引されるので、破砕媒体と破砕容器との間に入り込んだ被破砕物は摩砕される。回転磁界の印加位置を破砕容器の上部側にして吸引磁界を間欠的に印加すると、破砕媒体は回転しつつ上下振動して破砕容器の底に衝突するので、被破砕物は破砕媒体によって摩砕及び圧砕される。
【0024】
また、本願第4発明に係る破砕方法は、強磁性体によって形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の高さ方向の外周から前記破砕媒体に複数の回転磁界を印加すると共に、破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加し、複数の回転磁界及び吸引磁界を制御することにより、破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体により破砕することを特徴とする。
【0025】
上記破砕方法によれば、破砕容器の上下位置に印加される回転磁界を切り換えたり磁界強度を変化させたりすることにより破砕媒体の回転及び上下振動は複雑な動きとなり、更に吸引磁界を間欠的に作用させることにより破砕媒体の上下振動は激しくなるので、破砕容器に収容された被破砕物は多様な破砕媒体の動きにより効果的に破砕される。
【0026】
上記各破砕方法において、回転磁界を破砕容器の円筒軸方向から傾斜した方向から印加すると、破砕媒体は上下に移動しながら回転するので、回転運動する位置は変化して被破砕物を満遍なく摩砕する効果が得られる。
【0027】
また、回転磁界の破砕容器に対する印加位置を変化させながら破砕すると、破砕媒体の回転する位置に変化が生じるので、被破砕物を満遍なく摩砕する効果が得られる。回転磁界の印加位置の変化は、破砕容器又は回転磁界発生手段の位置を変化させることによって得られる。
【0028】
また、破砕容器及び/又は破砕媒体を冷却しながら破砕することにより、摩擦による温度上昇や破砕媒体に誘導電流が流れることによる温度上昇により被破砕物に変質が生じることを防止することができる。
【0029】
また、破砕媒体の回転速度及び/又は回転方向及び/又は上下移動頻度を制御して破砕することにより、被破砕物の種類に応じた破砕状態が得られ、破砕度合いを調整することも可能となる。
【0030】
また、本願第5発明に係る破砕装置は、強磁性体によって形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも上方側と底部側とに対応する位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段を設け、前記回転磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段を設けてなることを特徴とする。
【0031】
上記破砕装置によれば、破砕容器の外周から回転磁界が印加されることにより破砕媒体は回転し、磁界制御手段により回転磁界印加手段によって破砕容器の上下に印加する回転磁界を切り換えることにより破砕媒体は上下振動するので、破砕容器に収容された被破砕物は破砕媒体と破砕容器の内壁面との間で摩砕及び圧砕される。また、磁界制御手段により回転磁界の強度を調整することにより、被破砕物の種類に対応する破砕状態を得ることができる。
【0032】
また、本願第6発明に係る破砕装置は、強磁性体によって形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側に対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段を設けると共に、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段を設け、前記回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段を設けてなることを特徴とする。
【0033】
上記破砕装置によれば、破砕容器の外周から回転磁界が印加されることにより破砕媒体は回転し、磁界制御手段により吸引磁界を間欠的に印加するように制御すると、回転する破砕媒体は上下振動して破砕容器の底に衝突するので、大きな衝突圧力により被破砕物を圧砕する。これに破砕媒体が回転することによる摩砕が加わるので被破砕物の破砕が効果的になされる。
【0034】
また、本願第7発明に係る破砕装置は、強磁性体によって形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の破砕容器の高さ方向に前記破砕媒体に回転磁界を印加する複数の回転磁界印加手段を設けると共に、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段を設け、前記回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段を設けてなることを特徴とする。
【0035】
上記破砕装置によれば、複数の回転磁界発生手段から破砕容器に印加される複数の回転磁界をON−OFF制御あるいは回転速度制御することにより、破砕媒体の回転運動及び上下運動を多彩に制御でき、その間に吸引磁界を間欠的に印加することにより破砕媒体が破砕容器の底面に衝突する状態も得られ、破砕媒体により被破砕物を摩砕及び圧砕する作用を多様に選択することができる。
【0036】
また、破砕容器又は破砕容器を収容する空間に、破砕容器を冷却する冷却手段を設けて構成することにより、破砕に伴って発生する発熱を抑制して被破砕物が温度上昇により変質することを防止することができる。
【0037】
また、磁界制御手段は、回転磁界印加手段及び/又は吸引磁界印加手段をON/OFF制御することにより、破砕媒体を上下振動させることができる。また、回転磁界印加手段に供給する交流電力の周波数及び/又は電圧を制御することにより、破砕媒体の回転速度を調整することができる。また、回転磁界印加手段に供給する交流電力の相回転切換を制御することにより、破砕媒体の回転方向を切り換えることができる。このON/OFF制御及び回転制御を組み合わせることにより、被破砕物の種類に応じた破砕状態を得ることができる。
【0038】
また、回転磁界印加手段は、破砕容器の直径に対応する収容空間の内径が形成されるように複数の磁極が放射方向に進退可能に構成することにより、直径が異なる破砕容器を通して破砕媒体に対して至近位置から回転磁界を印加することができ、回転駆動効率を向上させることができる。更に、複数の磁極を中心方向に向けて付勢する付勢手段を設けて構成すると、複数の磁極の中心位置に破砕容器を挿入することにより破砕容器の直径に応じて各磁極は付勢に抗して後退移動するので、各磁極の先端は破砕容器の外周に当接した状態となり、至近位置から破砕媒体に対して回転磁界を印加することができる。
【0039】
また、破砕媒体は、破砕容器の内径より小さい直径の円柱形又は球形で、破砕容器の内底形状に対応する形状対応面を備えた形状に構成することにより、破砕媒体と破砕容器の底面との間で被破砕物を摩砕及び圧砕する効果が充分になされ、破砕媒体を複数に設けると、破砕媒体どうしの接触、衝突により被破砕物を破砕する効果が得られる。破砕容器の内径より小さい直径の円柱形又は球形の強磁性体とするのが好適で、回転磁界によって破砕容器中で公転しながら自転するような回転が生じるので、破砕容器の内壁面との間で被破砕物を効果的に摩砕することができる。
【0040】
また、破砕媒体は、強磁性体によって形成することにより、回転磁界によって破砕媒体の表面に生じる渦電流により回転駆動力が発生するので、単一材料により容易に破砕媒体を形成することができる。
【0041】
また、破砕媒体は、強磁性体の表面に良導体により誘導電流流路となる導体線路を設けて構成することにより、回転磁界により導体線路に誘導電流が流れるので、誘導電流により破砕媒体に回転駆動力を生じさせることができる。
【0042】
また、破砕媒体は、強磁性体の表面に複数の突状部を設けて構成することにより、印加された回転磁界の磁束が突状部に集まりやすくなるので、破砕媒体が受ける負荷状態によって回転速度に変化が生じることがなく、突状部により被破砕物の繊維組織などを切断するのに有効となる。
【0043】
また、破砕媒体は、非磁性体で形成された芯材の表面に半硬磁性材料による強磁性体層を設けて構成することにより、回転磁界が印加されることにより破砕媒体の表面に設けられた弱い永久磁石に生じる磁気ヒステリシス現象により安定した回転駆動力が得られる。
【0044】
また、破砕媒体は、強磁性体の表面に複数の永久磁石を配して構成することにより、永久磁石が配された破砕媒体は回転磁界に引きずられて回転する。回転磁界を生成するための励磁電流をインバータから3相断続電流として供給することにより円滑な回転駆動力が得られ、回転速度制御も容易である。
【0045】
また、破砕媒体は、中空構造に形成し、中空内に蓄冷材を封入して構成することにより、冷却して蓄冷材に蓄冷させた破砕媒体を被破砕物を収容した破砕容器に投入して破砕処理すると、被破砕物に直接接触する破砕媒体により被破砕物の温度上昇が抑制され、破砕処理に伴う温度上昇による被破砕物の変質を効果的に防止することができる。
【0046】
また、破砕媒体は、複数の攪拌用突出部を設けて形成することにより、被破砕物を攪拌し乳化することを主体とする場合に好適である。密閉した破砕容器内で被破砕物を攪拌することができるので、被破砕物が外部に飛散することを防止できる。
【0047】
また、破砕媒体は、攪拌用突出部を設けて形成された樹脂製部材の中に強磁性体を主体として形成された回転駆動体を収容して構成することにより、樹脂により可撓性を有する攪拌用突出部を任意形状に形成することができ、破砕媒体を上下運動させても破砕容器の底部形状に応じて攪拌用突出部が変形して満遍なく被破砕物を攪拌することができる。
【0048】
また、破砕媒体は、複数のスリットを形成した外筒内に、強磁性体を主体として形成された回転駆動体を回転自在に収容して構成することにより、回転駆動体が回転磁界により回転駆動されることにより吸引された被破砕物を外筒に形成されたスリットから外方に噴出させる作用がなされ、攪拌と同時に破砕する効果を向上させることができる。
【0049】
また、本願第8発明に係る破砕処理装置は、破砕容器を保持する容器保持手段と、破砕容器の開口部を閉じる容器蓋を着脱可能に保持する蓋保持手段とを備えた容器ホルダ及びこの容器ホルダを所定位置に移動させる移動手段を具備し、破砕容器保持位置において破砕媒体と被破砕物とを収容した破砕容器を前記容器保持手段によって保持させると共に前記蓋保持手段により破砕容器の開口部に容器蓋を装着させた容器ホルダを移動手段により、破砕装置によって破砕する破砕処理位置、破砕された被破砕物を収容した破砕容器を容器ホルダから離脱させて容器保持台に載置する破砕容器載置位置に移動させることを特徴とする。
【0050】
上記破砕処理装置によれば、破砕容器に被破砕物と破砕媒体とを投入し、破砕容器を容器ホルダに保持させると、破砕容器の開口部には容器蓋が装着され、移動手段により破砕装置に運ばれて破砕処理がなされ、破砕処理後には容器保持台上に載置される。従って、作業者は破砕容器に被破砕物を投入する作業に専念することができ、破砕された被破砕物を収容した破砕容器を容器保持台上に得ることができる。
【0051】
また、本願第9発明に係る破砕処理装置は、破砕容器を保持する容器保持手段と、破砕容器の開口部を閉じる容器蓋を着脱可能に保持する蓋保持手段と、破砕媒体を着脱可能に吸着保持する媒体保持手段とを備えた容器ホルダ及びこの容器ホルダを所定位置に移動させる移動手段を具備し、破砕容器保持位置において破砕媒体と被破砕物とを収容した破砕容器を前記容器保持手段によって保持させると共に前記蓋保持手段により破砕容器の開口部に容器蓋を装着させた容器ホルダを移動手段により、破砕装置によって破砕する破砕処理位置、媒体引上げ手段によって被破砕物が破砕処理された破砕容器中から破砕媒体を取り出す破砕媒体取出し位置、破砕された被破砕物を収容した破砕容器を容器ホルダから離脱させて容器保持台に載置する破砕容器載置位置、前記媒体保持手段によって吸着保持した破砕媒体の磁気吸着を解除して破砕媒体を所定場所に排出する破砕媒体排出位置、破砕容器から外した容器蓋を所定場所に排出する容器蓋排出位置に移動させることを特徴とする。
【0052】
上記破砕処理装置によれば、被破砕物と破砕媒体を投入した破砕容器を容器ホルダに保持させるだけで速やかに破砕装置による破砕処理に移行させることができ、破砕処理後は破砕媒体や容器蓋の取り出しも自動的になされる。従って、作業者は被破砕物を破砕容器に投入する作業を行うだけで、コンタミネーションの発生などに留意した作業を確実に実施することができる。また、被破砕物が破砕処理された破砕容器は、遠心分離などの後処理ができる状態にして容器保持台上に載置されるので、後処理への移行もスムーズに行うことができる。
【0053】
上記各構成になる破砕処理装置において、破砕装置は、強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側と底部側とに対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる構成、あるいは、強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側に対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる構成、あるいは、強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の破砕容器の高さ方向に前記破砕媒体に回転磁界を印加する複数の回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、複数の回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる構成を適用することができる。
【0054】
また、各構成になる破砕処理装置において、容器ホルダ及び破砕装置を複数に設け、移動手段は破砕容器保持位置において被破砕物及び破砕媒体を収容した破砕容器を保持した容器ホルダを順次破砕処理位置に移動させ、一連の処理工程を終了した容器ホルダを破砕容器保持位置に戻す循環構造に構成することにより、限られた数の破砕装置であっても容器ホルダの循環により準備ができた破砕容器について順次破砕処理することができ、被破砕物を時間経過により変質させることなく破砕処理し、後処理に移行させることができる。
【0055】
また、媒体引上げ手段は、リング状に配置した磁石中に破砕容器を挿入することにより強磁性体によって形成された破砕媒体を破砕容器中から開口部側に引上げ、媒体保持手段により磁気吸着するように構成することにより、容器ホルダを昇降移動させつつ磁気吸着を制御すると、破砕媒体の破砕容器からの取出しを自動化することができる。
【0056】
また、容器保持台は、破砕容器を冷却する冷却手段を設けて構成することにより、破砕された被破砕物を低温状態にして保持することができ、仮に後処理に移行するまでに時間経過が生じた場合にも温度上昇によって被破砕物に変質が生じることを防止することができる。
【0057】
また、被破砕物を収容した破砕容器に破砕媒体を投入する破砕媒体投入手段を設けて構成することにより、破砕容器に破砕媒体を投入する作業を自動化することができ、破砕媒体を手や器具で取り扱うことによる汚染を防止することができる。
【0058】
破砕媒体は中空構造内に蓄冷材を封入した蓄冷破砕媒体に構成され、冷却装置により冷却した蓄冷破砕媒体を破砕媒体投入手段により破砕容器内に投入するように構成することにより、破砕に伴う被破砕物の温度上昇を抑制するのに効果的であり、蓄冷破砕媒体の取扱いも容易となる。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係る破砕方法によれば、回転磁界の制御により破砕容器の中で破砕媒体に回転運動及び上下運動を与えることができ、更に吸引磁界を加えることにより上下運動が強くなる。従って、破砕容器を固定して破砕媒体だけを運動させることができ、あたかも破砕容器が乳鉢、破砕媒体が乳棒のように作用し、摩砕と圧砕との作用により被破砕物の破砕を高速に行うことができる。
【0060】
また、本発明に係る破砕装置によれば、回転磁界発生手段及び/又は吸引磁界発生手段の中に被破砕物と破砕媒体とを収容した破砕容器を挿入するだけで破砕処理を実施することができ、機械的に破砕容器や破砕媒体を運動させないので、破砕処理を実施するまでの準備作業が簡単容易であり、小型の装置で破砕処理を行うことができる。従って、安全キャビネットやクリーンベンチなどの限られた空間内に設置することもでき、安全キャビネット内などで検査や分析などの作業を行うときに、検体や試料の破砕処理のために破砕装置のある場所に移動する手間が省いて効率的な作業を実施することができる。
【0061】
また、本発明に係る破砕処理装置によれば、被破砕物と破砕媒体を投入した破砕容器を容器ホルダに保持させるだけで速やかに破砕装置による破砕処理に移行させることができ、破砕処理後は破砕媒体や容器蓋の取り出しも自動的になされる。従って、作業者は被破砕物を破砕容器に投入する作業を行うだけで、コンタミネーションの発生などに留意した作業を確実に実施することができる。また、被破砕物が破砕処理された破砕容器は、遠心分離などの後処理ができる状態にして所定位置に載置されるので、後処理への移行もスムーズに行うことができる。更に、少量の破砕処理への対応も容易であり、大量の破砕処理には容器ホルダを循環させることにより順次処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、添付図面を参照して本発明を具体化した実施形態について説明する。尚、本実施形態は本発明を具体化した一例であって本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0063】
図1は、第1の実施形態に係る破砕装置1の要部構成を示すもので、リング状に形成された上部回転磁界発生器11と下部回転磁界発生器12とが配設され、この上部回転磁界発生器11及び下部回転磁界発生器12の中に破砕媒体B及び被破砕物C(図2参照)を収容した破砕容器Aを挿入することにより、上部回転磁界発生器11及び下部回転磁界発生器12から破砕容器Aに印加される回転磁界により被破砕物Cが破砕されるように構成されている。
【0064】
図2に示すように、上部及び下部の各回転磁界発生器11,12にはそれぞれ交流電源21,22から交流電力が供給される。上部及び下部の各回転磁界発生器11,12は、図3に示すように、珪素鋼板を積層した鉄心8に複数のスロットを形成して得られる複数の磁極8aに交流電力により回転磁界が生成されるようにスロット間に巻線7を巻回したもので、基本的に誘導電動機の一種であるトルクモータのステータと同様に構成されている。強磁性体(例えば、軟鉄)を円柱状に形成した破砕媒体Bを収容した樹脂製(例えば、ポリプロピレン)の破砕容器Aを上部回転磁界発生器11又は下部回転磁界発生器12中に挿入すると、上部回転磁界発生器11又は下部回転磁界発生器12の回転磁界を受けた破砕媒体Bは、トルクモータの塊状鉄心ロータと同様に破砕媒体Bに流れる渦電流により回転駆動力が発生して回転する。
【0065】
図2に示すように、破砕容器Aに被破砕物Cと破砕媒体Bとを収容し、破砕容器Aの底部が下部回転磁界発生器12のリング中に入るように挿入し、制御装置10により交流電源21,22を制御して上部回転磁界発生器11と下部回転磁界発生器12とに交互に交流電力を印加する。上部回転磁界発生器11に交流電力が印加されたときには、強磁性体で形成された破砕媒体Bは磁気吸引されて上昇し、上部回転磁界発生器11のリング中に入って回転磁界により回転する。破砕媒体Bはその直径が破砕容器Aの内径より小さく形成されているので、破砕容器Aの内周面に沿って公転しながら自転するような回転運動が生じる。この破砕媒体Bの回転運動により破砕媒体Bと破砕容器Aとに挟まれた被破砕物Cは摩砕される。制御装置10により上部回転磁界発生器11に対する交流電力の印加を停止し、下部回転磁界発生器12に交流電力が印加されると、破砕媒体Bはその自重と下部回転磁界発生器12の磁気吸引によって落下し、回転しながら破砕容器Aの底部に衝突し、被破砕物Cは摩砕及び圧砕される。破砕容器Aの内底部形状が図示するように半球状である場合には、破砕媒体Bの下端を破砕容器Aの半球状内底部形状に対応する半球状に形成しておくと、より広い範囲で破砕媒体Bが破砕容器Aの底部に接触するので摩砕及び圧砕の効果が向上する。このように破砕媒体Bの下端形状は破砕容器Aの内底部形状に対応する形状とするのが好適である。
【0066】
上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に交流電力を印加する交流電源21,22は、被破砕物Cの種類や状態に応じて破砕媒体Bの回転速度を調整可能とするために、交流電圧あるいは交流周波数を調整可能に構成することが望ましく、交流電力の印加を容易にON−OFF制御できるように構成することが望ましい。ここでは破砕媒体Bの回転速度制御を容易に実施できるように、交流電源21,22はPWM制御によるインバータとして構成しているが、トライアック等のスイッチング素子を用いた位相制御による交流電圧の調整によっても破砕媒体Bの回転速度制御が可能である。また、制御装置10により上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に印加する交流電力の相回転方向を切り換える制御を行うことによって破砕媒体Bの回転方向を随時変更することができ、破砕効率の向上を図ることができる。交流電力の相回転切換は、例えば、インバータスイッチング素子の点弧シーケンスを切り換える制御により実施することができる。
【0067】
制御装置10により交流電源21,22から上部回転磁界発生器11及び下部回転磁界発生器12に印加する交流電力を任意のタイミングで切り換えることにより、破砕媒体Bは破砕容器Aの中で回転しながら上下移動するので、あたかも破砕容器Aが乳鉢、破砕媒体Bが乳棒のように作用して被破砕物Cが破砕される。破砕媒体Bの回転速度及び上下移動の頻度は制御装置10により自在に調節することができるので、手動で乳鉢、乳棒を操作するより格段に早く被破砕物Cの破砕がなされる。しかも閉じられた破砕容器A内で破砕がなされるので、異物混入などのコンタミネーションの発生が防止できる。また、破砕容器Aは所定位置に静置した状態で破砕媒体Bだけが回転運動及び上下運動するので、破砕処理するために装置に固定させるなどの手間がなく、作業性に優れた破砕処理を実施することができる。
【0068】
上記構成において、上部回転磁界発生器11又は下部回転磁界発生器12の位置を上下方向に移動可能に構成することにより、前記破砕容器Aのサイズ変化に対応させることができる。破砕媒体Bは単一で用いる場合に、その直径は破砕容器Aの内径より1〜2mm以下とするのが望ましく、破砕容器Aのサイズによって適用する破砕媒体Bのサイズも異なるが、サイズが大きくなるほどに上部及び下部の各回転磁界発生器11,12との離隔間隔が小さくなるので、回転磁界による回転駆動力が増し、破砕媒体Bの質量が増加しても変わらぬ回転駆動力が得られる。
【0069】
また、上部及び下部の各回転磁界発生器11,12は、図4に示すように、複数の磁極8aそれぞれの先端位置が変化できるように可動磁極8bを設け、可動磁極8bを中心から放射方向に進退移動可能に構成することにより、破砕容器Aの直径変化にかかわらず容器外周の至近位置に可動磁極8bの先端が位置して効率よく破砕媒体Bに回転磁界を加えることができる。図示するように各可動磁極8bの後端部分からコイルスプリング等による付勢手段25により中心方向に向けて付勢を与えておくことにより、破砕容器Aを各可動磁極8bが互いに対向する中心部に挿入すると、各可動磁極8bは破砕容器Aの直径に対応する位置まで後退するので、破砕容器Aの直径変化にかかわらず容器外周の至近位置に可動磁極8bの先端を自動的に破砕容器Aの外周面に当接させることができる。
【0070】
図5は、第2の実施形態に係る破砕装置2の構成を示すもので、破砕容器Aの底部に対応する位置に吸引磁界を発生させる吸引磁界発生器15を設け、上昇位置にある破砕媒体Bを吸引磁界発生器13により吸引することにより、破砕媒体Bの落下速度を増加させ、破砕媒体Bにより被破砕物Cを圧砕する効果を向上させることができる。前記吸引磁界発生器13には直流電源20から直流電流が印加され、強磁性体で形成された破砕媒体Bを磁気吸引する。この吸引磁界発生器13による磁気吸引力の発生は制御装置10によりON−OFF制御され、上部回転磁界発生器11をOFFに制御すると同時にONに制御すると、破砕媒体Bの自重に加えて磁気吸引力が作用して破砕媒体Bにより被破砕物Cを圧砕する効果が得られる。
【0071】
図5に示す構成においては、下部磁界発生器12を設けているが、上述のように上部回転磁界発生器11と吸引磁界発生器15とを基本構成とし、更に下部回転磁界発生器12を設けて吸引磁界発生器15によって破砕容器Aの底部に吸引された破砕媒体Bに回転駆動力を加えると、被破砕物Cを圧砕すると同時に摩砕する効果が得られる。
【0072】
また、図6に示す第3の実施形態に係る破砕装置3のように、回転磁界発生器11〜13の数を増加させ、それぞれの動作を制御装置10により任意に切り換えることにより、破砕媒体Bを破砕容器A内の任意の高さ位置で回転駆動して被破砕物Cの破砕を満遍なく行うことができる。この複数の回転磁界発生器11〜14による破砕媒体Bの回転の間に、吸引磁界発生器15による破砕媒体Bの破砕容器Aの底部への吸引を任意のタイミングで行うことにより、破砕媒体Bに複雑な動きが生じて被破砕物Cに対する破砕効果を向上させることができる。
【0073】
更に、図7(a)に示す第4の実施形態に係る破砕装置4aのように、破砕容器Aの円筒軸方向に対して傾斜した方向に傾斜回転磁界発生器14配置することにより、破砕媒体Bを上下振動させながら回転させることができる。傾斜回転磁界発生器14は図示するように単一であっても、複数に設けることもできる。また、図7(b)に示すように、傾斜回転磁界発生器14に加えて吸引磁界発生器15を設けることにより、破砕媒体Bを破砕容器Aの底部に衝突させる加速度を増加させることができ、破砕効率の向上を図ることができる。
【0074】
以上説明した各実施形態の構成において、上部、下部、中間、傾斜の各回転磁界発生器11〜14の1つ又は複数の中心位置を破砕容器Aの円筒軸に対して偏心した位置に変化可能とすることにより、破砕媒体Bの回転に変化を与えることができる。この偏心位置あるいは傾斜角度を変化できるように構成すると、破砕媒体Bの運動はより複雑となり、被破砕物Cの破砕処理を効果的に行うことができる。
【0075】
また、回転磁界発生器11の高さ位置を破砕容器Aの上下方向に移動可能に構成し、回転磁界発生器11の高さ位置を変化させながら破砕媒体Bに回転磁界を印加するようにしても破砕媒体Bに回転運動と上下移動とを与えることができ、破砕媒体Bが被破砕物Cに接する位置が変化して被破砕物Cを満遍なく摩砕する効果が得られる。逆に回転磁界発生器11の位置は固定して、破砕容器Aを上下方向に移動させながら破砕処理するように構成しても同様の効果が得られる。
【0076】
上記のように回転磁界によって破砕媒体Bを回転駆動するとき、破砕媒体Bに発生する渦電流により発熱が生じ、摩擦による熱が発生する。渦電流による発熱は回転磁界を発生させる交流電流の周波数を小さくし、固有抵抗が小さい材質で破砕媒体Bを形成することにより抑制することができるが、摩擦による発熱は避けられない。被破砕物Cが温度上昇によって変質が生じやすいものであるとき、破砕媒体Bの発熱は好ましくないので、破砕容器Aを冷却して被破砕物Cの温度上昇を抑制する必要がある。
【0077】
図8は、第5の実施形態に係る破砕装置5の構成を示すもので、破砕容器Aを冷却する構造を備えている。上部回転磁界発生器11及び下部回転磁界発生器12のリング中に嵌挿させて周囲に冷却液が循環する樹脂製の冷却容器16が配設され、破砕容器Aを収容する冷却容器16の二重構造に形成された内部には熱伝導性樹脂38を介して破砕容器Aが収容される。冷却容器16には給液口16aから所要温度に冷却された冷却液が注入され、排液口16bから排出される間に熱伝導性樹脂38を介して破砕容器Aは冷却される。熱伝導性樹脂38は軟質の樹脂であり、挿入された破砕容器Aの外周面に密着し、破砕容器Aの熱を冷却液に伝導させるので、破砕容器A内を一定の温度に維持して破砕処理を実施ずることができる。前記熱伝導性樹脂38に代えて冷却容器16の中空部内に熱伝導を仲介する液体を収容することにより、熱伝導性をより向上させることもできるが、破砕容器Aに液体が付着するので、破砕処理を終えて取り出した破砕容器Aから液体を拭う作業が伴い、液体が減少する課題がある。
【0078】
また、図9(a)に示すように、二重構造の有底円筒形に形成されて中空内に蓄冷材40を封入してなる樹脂製の冷却容器42を冷却手段により所定温度に冷却して蓄冷材40を凍結もしくは冷却し、この冷却容器42内に破砕容器Aを収容すると、簡易に冷却破砕を実施することができる。破砕容器Aを収容する中空内には、図8に示した冷却構造と同様に熱伝導性樹脂38を設けておくことが望ましく、蓄冷材40の冷熱を破砕容器Aに効果的に伝導させることができる。また、図9(b)に示すように、破砕容器Aを二重構造にして、中空内に蓄冷材40を封入した蓄冷破砕容器Fとし、予め冷却しておいた蓄冷破砕容器Fに被破砕物Cを投入して破砕処理すると、破砕処理中もその後も低温状態が維持される。更に、図9(c)に示すように、中空構造に形成した中空内に蓄冷材40を封入した蓄冷破砕媒体Eを用いて、この蓄冷破砕媒体Eを予め冷却装置で冷却し、蓄冷材40を凍結させたものを破砕容器Aに投入して破砕処理すると、被破砕物Cはそれに直接的に接する蓄冷破砕媒体Eによって冷却され、蓄冷破砕媒体Eの温度上昇も抑制されるので、温度上昇による被破砕物Cの変質が効果的に防止できる。この蓄冷破砕媒体Eと前記冷却容器42又は蓄冷破砕容器Dとを併用すると冷却効果をより向上させることができる。
【0079】
以上説明した破砕装置1〜5を用いて被破砕物Cを破砕するのに適用する破砕容器Aは、遠心分離に用いる遠心チューブなどの汎用チューブを採用することができ、遠心チューブであれば破砕処理後に破砕された被破砕物Cを遠心分離機にそのまま装着することができる。破砕処理には上述したような底部が半球状のものが好適であるが、汎用チューブの多くは、図10(a)(b)に示すように、底部が円錐状に形成されている。このような形状の破砕容器A、Aに適用する破砕媒体B、Bは、図示するようにそれぞれ破砕容器A、Aの底部側に向く先端部を底部形状に対応する円錐状に形成したものが望ましく、被破砕物Cを破砕容器A、Aの底部との間で効果的に摩砕及び圧砕することができる。また、破砕処理に特化するならば、図10(c)に示すように、底面が平らな破砕容器Aを用いることもでき、これに適用する破砕媒体Bは円筒形に形成されたものを用いるのが望ましい。また、汎用チューブは開口部を蓋で密閉できるように形成されているが、本構成になる破砕装置1〜5では後述する破砕処理方法において蓋を着脱する面倒な作業を廃止して破砕処理作業の省力化、迅速化を図っているので、蓋は被破砕物Cに対する破砕処理が終了して遠心分離処理などを行う際に必要に応じて装着すればよい。
【0080】
また、破砕媒体Bは、必ずしも単一でなくてもよく、図11(a)に示すように、小さい直径の円柱状の破砕媒体Bを破砕容器Aに複数個収容してもよく、回転及び上下運動により複数の破砕媒体Bが互いに衝突することにより被破砕物Cを破砕する効果を得ることができる。また、図11(b)に示すように、球状で大きい直径の破砕媒体Bを単一で用いることも、図11(c)に示すように、球状で小さい直径の破砕媒体Bを複数個用いることもできる。更に、従来構造の破砕装置の多くに採用されているビーズ状の小球を破砕媒体Bとして多数個用いることもできる。但し、小球は強磁性体によって形成されていることを要する。
【0081】
上述したように破砕媒体Bは、図12(a)に示すように、全体を強磁性体で形成することにより、単一材料により容易に製作することができ、起動時の回転トルクが大きいので破砕される以前の被破砕物Cから受ける回転に対する抵抗に打ち勝つことができるが、回転速度の増加と共に回転トルクが低下する回転特性となる。回転速度をある程度まで増加させても回転トルクが低下しない回転特性を得るためには、図12(b)に示す破砕媒体Bのように、強磁性体の表面にアルミニウム、銅などの良導体により誘導電流流路となる導体線路26を設けたものが好適で、複数の導体線路26はそれぞれ両端が円周上で短絡接続されているので、回転磁界により導体線路26に誘導電流が流れ、誘導電流により破砕媒体に回転駆動力を生じさせることができる。この構造は、かご型誘導電動機のロータを模したもので、負荷の変動の影響を受け難い回転特性を得ることができる。
【0082】
また、図12(c)に示す破砕媒体Bのように、強磁性体の表面に複数の突状部を設けて構成することにより、印加された回転磁界の磁束が突状部に集まりやすくなるので、破砕媒体が受ける負荷状態によって回転速度に変化が生じることがなく、突状部により被破砕物の繊維組織などを切断するのに有効となる。また、図12(d)に示す破砕媒体Bのように、非磁性体で形成された芯材28の表面に半硬磁性材料による強磁性体層29を設けて構成することにより、回転磁界が印加されることにより破砕媒体の表面に設けられた弱い永久磁石に生じる磁気ヒステリシス現象により安定した回転駆動力が得られる。また、図12(e)に示す破砕媒体B10のように、強磁性体の表面に複数の永久磁石30を配して構成することにより、永久磁石30が配された破砕媒体Bは回転磁界に引きずられて回転する。回転磁界を生成するための励磁電流をインバータから3相断続電流として供給することにより円滑な回転駆動力が得られ、回転速度制御も容易である。
【0083】
破砕媒体B〜Bは、いずれも強磁性体を主体とした金属によって形成しているので、破砕に伴って剥れた金属粉が破砕した被破砕物Cの中に混入する憂いがある。金属物の混入が好ましくない場合には、破砕媒体B〜Bの表面をセラミックやフッ素樹脂などによって被覆することが好適であり、腐食性の緩衝液などを用いる場合の耐性を向上させることができる利点も得られる。
【0084】
上述したように破砕媒体B〜Bの構造を変更した場合、その構造に対応させて上部、下部、中間の各回転磁界発生器11,12,13の構造を変更することが望ましい。例えば、永久磁石30を配した破砕媒体Bの場合では、破砕容器Aに対峙する円周上に誘導子となる複数の鉄板製磁極を配し、その外側の円周方向に巻線を施したクローポール型モータの形式に構成すると、上部、下部、中間の各回転磁界発生器11,12,13の構造を簡易に構成することができる。
【0085】
以上説明した破砕媒体B〜Bは、被破砕物Cを破砕することを主目的としているが、被破砕物Cを攪拌して乳化し均質化するホモジナイズを主目的とする場合には、図13に示すように、攪拌に適した構造の攪拌破砕媒体Gに構成することができる。
【0086】
図13(a)に示す攪拌破砕媒体Gは、強磁性体によって形成された本体部61の下方に複数の攪拌部(攪拌用突出部)62を形成している。また、図13(b)に示す攪拌破砕媒体Gは、樹脂成形により下方に複数の攪拌羽根(攪拌用突出部)64を突出させた上部に強磁性体によって形成した本体芯材(回転駆動体)63をインサートしている。回転磁界により本体芯材63に回転駆動力が作用して回転し、攪拌羽根64は破砕容器Aの底部形状に応じて内側に折れ曲げる可撓性を与えることにより、破砕容器A内を上下移動して被破砕物Cを満遍なく攪拌することができる。
【0087】
また、図13(c)に示す攪拌破砕媒体G3は、下方に複数のスリット66を形成した樹脂製品の外筒65の中に、強磁性体によって形成された回転本体67を回転自在に配している。回転本体(回転駆動体)67の下方にはスリット66に対応する位置に複数の攪拌突起(攪拌用突出部)68が設けられているので、回転本体67が回転磁界により回転駆動されると、軟質の被破砕物C又は溶液中の被破砕物Cは攪拌突起68により攪拌分散されると同時にスリット66から外方に噴出して攪拌され乳化あるいは破砕される。
【0088】
これらの攪拌破砕媒体Gは、従来から広く用いられている棒状のペッスルを被破砕物を収容した破砕容器内に挿入し、モータでペッスルを回転駆動して被破砕物をホモジナイズするものに比して、破砕容器Aを密閉した状態でも攪拌破砕媒体Gを回転させることができるので、被破砕物Cが外部に飛散することがなく、被破砕物Cが有害物質である場合などに好適な攪拌、破砕手段となる。
【0089】
上述した破砕装置1〜5は、1つの破砕装置に1つの破砕容器Aを挿入するように構成しているが、図14に示すように、リング状に形成した回転磁界発生器18の中に、破砕容器Aを収容する複数の容器収容穴19を円周上に設けた破砕容器ホルダ17を配して構成することもできる。この場合、複数の破砕容器Aにそれぞれ収容された破砕媒体Bに完全なかたちでの回転磁界が印加されないが、破砕媒体Bが回転惰性や揺動及び上下振動する運動によって被破砕物Cを破砕することができる。
【0090】
破砕媒体B及び被破砕物を収容した複数の破砕容器Aについて同時に破砕処理する場合には、破砕装置1〜5を複数台並列配置すればよく、1台の破砕装置1〜5は小型に構成できるので、多数配置しても設置場所の占有面積は小さく抑えることができる。複数台の破砕容器1〜5を並列配置して複数の破砕容器Aに対して同時に破砕処理を行うとき、複数の破砕装置1〜5それぞれに交流電源21〜23、直流電源20や制御装置10を設けるのは無駄が多いので、図15に示すように、複数の破砕装置2(破砕装置1、3、4、5の場合も同様)それぞれに共通の交流電源21、22、直流電源20を設け、共通の制御装置10により一斉制御するように構成することができる。また、各破砕装置2に破砕容器Aの挿入を検知する挿入検知手段を設け、破砕容器Aが挿入された破砕装置2のみに電源供給して制御するように構成すると、任意数の破砕容器Aに対して同時に破砕処理を実行することができる。
【0091】
以上説明した破砕装置1〜5による破砕方法は、従来の破砕容器に往復振動を加える破砕方法に比して処理作業に要する手間が極めて少なく、装置構成も小型化できるので、安全キャビネット、クリーンベンチなどの限られた空間内に設置することもでき、検査や分析などを行う安全キャビネットなどの中で検体や試料を破砕したり攪拌乳化するなどの前処理作業を簡単に実施することができる。従って、前処理作業のために破砕装置の設置場所に移動する無駄な動作を削減することができ、作業手間が少ないことも相まって作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0092】
次に、上記構成になる破砕装置1〜5を用いて被破砕物Cを破砕処理するときの一連の作業を自動化する破砕処理装置について、図16、図17、図18を参照して以下に説明する。尚、以下に示す破砕処理装置では、破砕装置1を用いたものとして説明するが、上記各実施形態に示した破砕装置2,3,4,5であっても同様に構成することができる。
【0093】
破砕処理には、破砕容器A内に被破砕物Cと破砕媒体Bとを投入して破砕装置1によって破砕するとき、被破砕物Cが外部に飛散しないように破砕容器Aの開口部を閉じる作業や、破砕装置1による破砕が終了した後に破砕容器Aから破砕媒体Bを取り出す作業、破砕された被破砕物Cが付着している破砕媒体Bや破砕容器A及びその蓋を洗浄、滅菌して再使用可能にする作業などが伴う。これら一連の作業は一般的には手作業で行われるものであるが、自動化することにより破砕処理の作業が簡略化されると同時に作業が迅速化され、コンタミネーションの発生を抑え、破砕処理後に行われるDNA検出等の作業が実施されるまでに被破砕物Cが変質することを防止することができる。
【0094】
破砕処理装置50は、図16に全体構成を示すように、破砕容器Aを保持すると共に破砕容器Aの開口部に容器蓋32を装着する容器ホルダ51と、破砕装置1と、破砕容器Aから破砕媒体Bを取り出す媒体取出し装置53と、被破砕物Cの破砕処理が終了した破砕容器Aを載置する容器載置台54と、破砕媒体Bを洗浄する破砕媒体洗浄槽55と、容器蓋32を洗浄する容器蓋洗浄槽56と、交換する容器蓋32を載置した容器蓋準備台56とを備え、容器ホルダ51はホルダ移動レール52上を水平移動して、破砕容器保持位置(1)から破砕処理位置(2)、破砕媒体取出し位置(3)、破砕済容器載置位置(4)、破砕媒体排出位置(5)、容器蓋排出位置(6)、容器蓋装着位置(7)に移動し、再び破砕容器保持位置(1)に戻るように各工程位置を循環移動するように構成され、各装置の動作は図示しない制御装置によって制御される。尚、この構成は必要に応じて簡略化することができる。例えば、容器蓋32や破砕媒体Bを回収しなくてもよいとするならば、破砕容器保持位置(1)から破砕済容器載置位置(4)までで構成することができる。また、被破砕物Cが破砕された破砕容器Aから破砕媒体Bを取り出す必要がない場合は、破砕媒体Bの取り出し工程を省略することもできる。
【0095】
上記構成において、前記容器ホルダ51及び破砕装置1は複数に設け、被破砕物Cと破砕媒体Bとを投入した破砕容器Aを容器ホルダ51に保持させ、その容器ホルダ51をホルダ移動レール52上で破砕装置1に移動させて破砕処理がなされるようにすると、複数の破砕容器Aを用いた破砕処理を行う場合に、全ての破砕容器Aに被破砕物C及び破砕媒体Bが投入されるのを待つことなく順次破砕処理に移行させることができる。また、容器ホルダ52は循環ルートに形成されたホルダ移動レール52上を循環移動することができるので、容器ホルダ51及び破砕装置1が限られた数であっても循環繰り返しにより多数の破砕容器Aに対して破砕処理を実施することができる。
【0096】
図17は、上記破砕処理装置50による各工程位置での動作を説明するもので、各工程位置(1)〜(7)における動作内容について以下に説明する。
【0097】
(1)被破砕物Cと破砕媒体Bとを投入した破砕容器Aを容器ホルダ51の保持環(容器保持手段)31に保持させる。保持環31は破砕容器Aの開口部側をその周面から把持するもので、図18(b)に示すように、開放状態にある保持環31に破砕容器Aを差し込むときに起動突起31aを押すように操作すると、保持環31が閉じるように構成されている。図18(a)に示すように、保持環31が破砕容器Aを保持した後、容器蓋32を保持した押圧軸36が下降して破砕容器Aの開口部に容器蓋32が装着される。容器蓋32は破砕容器Aの開口端に接する部位にゴム等の弾性部材32aが取り付けられ、押圧軸36により破砕容器Aに押し付けられることにより破砕容器Aの開口部を密閉する。破砕蓋32はその上面に設けられた保持板(蓋保持手段)37を前記押圧軸36の先端に設けられた保持電磁石(蓋保持手段)35で吸着されることにより押圧軸36に着脱可能に保持されている。尚、押圧軸36に容器蓋32を着脱自在に保持させる構成は、上記のように電磁石による吸着のON−OFFを行うのが簡易なものとなるが、チャック構造など機械的に容器蓋32を保持する構造を適用することもできる。
【0098】
(2)容器ホルダ51は、図示しない昇降駆動手段及びホルダ移動レール52上を水平移動する走行駆動手段を備えた駆動装置上に装着されており、破砕容器Aを保持した容器ホルダ51は、ホルダ移動レール52を走行して破砕装置1上に水平移動し、下降して破砕容器Aを破砕装置1の所定位置に挿入する。破砕容器Aの挿入を感知した破砕装置1は設定された所定時間の破砕動作を実行する。
【0099】
(3)被破砕物Cに対する破砕が終了すると、容器ホルダ51は上昇移動して保持した破砕容器Aを破砕装置1から引き出し、ホルダ移動レール52上を水平移動して媒体取出し装置53上に停止した後、容器ホルダ51の下降動作により破砕容器Aを媒体取出し装置53内に挿入する。媒体取出し装置53は、リング状に引上げ電磁石(媒体引上げ手段)34を配設したもので、引上げ電磁石34をONにしてリング内に破砕容器Aが挿入されると、破砕媒体Bは引上げ電磁石34に吸引されて上昇するので、容器蓋32に設けられた取出し電磁石(媒体保持手段)35をONに制御すると上昇した破砕媒体Bは取出し電磁石35に吸引されて容器蓋32の下面に吸着保持される。取出し電磁石33に破砕媒体Bが吸着保持された後、引上げ電磁石34はOFFに切り換えられる。
【0100】
上記破砕媒体Bを破砕容器Aからの取出す前に破砕容器A内に緩衝液を注入する必要があるときは、破砕装置1による破砕処理が終了した後に押圧軸36を上昇させて容器蓋32を破砕容器Aから引き離し、注入ノズルから所定量の緩衝液を破砕容器A中に注入する。更に、必要に応じて容器ホルダ51を昇降動作させて破砕容器Aを上下振動させることにより破砕容器Aの内周面や破砕媒体Bに付着した破砕された被破砕物Cを洗い流して緩衝液中に取り込み、破砕媒体Bを洗うと同時に破砕された被破砕物Cの無駄な分散を防止する動作を行うことが望ましい。尚、緩衝液の注入は被破砕物Cの種類や破砕処理後の分析処理などによって必要性が判断されるものであり、破砕容器Aへの被破砕物Cの投入と同時になされる場合もあり、この場合には緩衝液中で被破砕物Cの破砕処理がなされる。
【0101】
(4)容器ホルダ51はホルダ移動レール52上を水平移動して容器載置台54上に移動し、下降移動して破砕容器Aを容器載置台54上に載置した後、容器ホルダ51は押圧軸36を後退させて容器蓋32を破砕容器Aから離し、保持環31による破砕容器Aの把持を解放する。容器載置台54上に載置された破砕容器Aに収容された被破砕物Cは破砕済みなので、容器載置台54上に載置された破砕容器Aは被破砕物CをDNA検出する等の後処理に移行させることができる。
【0102】
(5)容器ホルダ51は上昇移動して吸着保持している破砕媒体Bを破砕容器Aから引き出し、水平移動して破砕媒体洗浄槽55上に移動し、取出し電磁石33をOFFにして容器蓋32から破砕媒体Bを切り離して破砕媒体Bを洗浄槽38内に投入する。
【0103】
(6)次いで、容器蓋洗浄槽56上に移動し、保持電磁石35をOFFにして押圧軸36から容器蓋32を切り離し、容器蓋32を容器蓋洗浄槽56内に投入する。破砕媒体洗浄槽55及び容器蓋洗浄槽56は、破砕媒体B及び容器蓋32に付着した被破砕物Cを除去すると共に、滅菌、除菌等の処理を行って再使用できるようにするものである。再使用しない場合は破砕媒体洗浄槽55及び容器蓋洗浄槽56は廃棄槽とすることができる。
【0104】
(7)容器ホルダ51は容器蓋準備台57上に移動し、下降移動して保持電磁石35をONにして容器蓋準備台57上にある容器蓋32を押圧軸36の先端に吸着保持し、破砕容器保持位置(1)に戻って待機する。前記容器蓋準備台57には予め必要数の容器蓋32を準備しておけば容器ホルダ51は新しい容器蓋32に交換して次の破砕容器Aの保持に備えることができる。
【0105】
また、破砕された被破砕物Cを収容した破砕容器Aについても、遠心分離等の処理を終えて被破砕物Cが取り出された後は、破砕容器Aの洗浄槽に投入されて洗浄、滅菌等の処理を行うことにより再使用が可能である。
【0106】
上記破砕処理装置50を用いることにより、作業者は被破砕物C及び破砕媒体Bを破砕容器Aに投入する作業に専念することができ、順次破砕処理された被破砕物Cが入った破砕容器Aは別の作業者が遠心分離などの後作業を担当するようにすると、破砕処理する被破砕物Cの数が多いときでも効率よく作業を遂行することができる。
【0107】
また、被破砕物Cを収容した破砕容器Aに破砕媒体Bを投入するとき、破砕媒体Bは洗浄及び滅菌処理して、それを人の手や器具を介することなく破砕容器Aに投入できるようにすることが望ましく、手や器具から被破砕物Cに異物が混入することによるコンタミネーションの発生を防止することができる。そこで、洗浄、滅菌された破砕媒体Bを収容した破砕媒体投入手段から自動投入するのが好ましい構成となる。また、破砕媒体投入手段は、前述した蓄冷破砕媒体Eを冷却する機能を備えたものとして構成することにより、蓄冷破砕媒体Eを破砕容器Aに投入することができ、被破砕物Cの温度上昇による変質を効果的に防止することができる。
【0108】
また、破砕された被破砕物Cを収容した破砕容器Aを載置する容器載置台54は、蓄冷材を封入した構造、あるいは冷却手段から供給される冷媒が循環する構造とすることにより、所要温度に保冷された状態に維持することができ、被破砕物Cの変質防止に効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上の説明の通り本発明に係る破砕方法によれば、回転磁界の制御により破砕容器の中で破砕媒体に回転運動及び上下運動を与えることができ、更に、吸引磁界を加えることにより上下運動が強くなり、破砕容器を固定して破砕媒体だけを運動させて被破砕物を破砕することができる。従って、DNA分析等を行うために不可欠な細胞破砕などの破砕処理を破砕容器を乳鉢、破砕媒体を乳棒のように作用させて高速に破砕処理を行うことができるので、破砕を伴う作業の効率化が図られる。
【0110】
また、本発明に係る破砕装置によれば、回転磁界発生手段及び/又は吸引磁界発生手段の中に被破砕物と破砕媒体とを収容した破砕容器を挿入するだけで破砕処理を実施することができ、機械的に破砕容器や破砕媒体を運動させないので、破砕処理を実施するまでの準備作業が簡単容易であり、小型の装置で破砕処理を行うことができる。
【0111】
また、本発明に係る破砕処理装置によれば、被破砕物と破砕媒体を投入した破砕容器を容器ホルダに保持させるだけで速やかに破砕装置による破砕処理に移行させることができ、破砕処理後は破砕媒体や容器蓋の取り出しも自動的になされる。従って、作業者は被破砕物を破砕容器に投入する作業を行うだけで、コンタミネーションの発生などに留意した作業を確実に実施することができる。また、被破砕物が破砕処理された破砕容器は、遠心分離などの後処理ができる状態にして所定位置に載置されるので、後処理への移行もスムーズに行うことができる。更に、少量の破砕処理への対応も容易であり、大量の破砕処理には容器ホルダを循環させることにより順次処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1の実施形態に係る破砕装置の構成を示す斜視図。
【図2】同上破砕装置の全体構成を示す断面図。
【図3】回転磁界発生器の構成を示す平面図。
【図4】回転磁界発生器の変形例構成を示す平面図。
【図5】第2の実施形態に係る破砕装置の構成を示す断面図。
【図6】第3の実施形態に係る破砕装置の構成を示す断面図。
【図7】第4の実施形態に係る破砕装置の構成を示す断面図。
【図8】第5の実施形態に係る破砕装置の構成を示す断面図。
【図9】蓄冷破砕媒体の構成を示す断面図。
【図10】(a)は破砕容器の変形例を示す1/2断面図、(b)は対応する破砕媒体を示す正面図。
【図11】破砕媒体の変形例を示す正面図。
【図12】破砕媒体の各種構造例を示す斜視図。
【図13】攪拌破砕媒体の実施例を示す1/2断面図。
【図14】複数の破砕容器を装着可能とした破砕装置の斜視図。
【図15】複数の破砕装置を一体化した構成例を示す斜視図。
【図16】破砕処理装置の全体構成を示す構成図。
【図17】破砕処理装置の各工程における動作を説明する模式図。
【図18】容器ホルダの構成を示す(a)は断面図、(b)は保持環の構成を示す平面図。
【図19】従来技術に係る破砕装置の構成を示す断面図。
【図20】従来技術に係る凍結破砕用容器の構成を示す分解斜視図。
【図21】従来技術に係る破砕装置の概略構成を示す模式図。
【図22】従来技術に係る回転磁界による攪拌装置の構成を示す模式図。
【図23】従来技術に係るソレノイドによる加振機構の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0113】
1,2,3,4a,4b,5 破砕装置
10 制御装置
11 上部回転磁界発生器
12 下部回転磁界発生器
13 中間回転磁界発生器
14 傾斜回転磁界発生器
15 吸引磁界発生器
16 冷却容器
17 破砕容器ホルダ
18 回転磁界発生器
20 直流電源
21,22,23 交流電源
31 保持環(容器保持手段)
32 容器蓋
33 取出し電磁石(媒体保持手段)
34 引上げ電磁石(媒体引上げ手段)
35 保持電磁石(蓋保持手段)
36 押圧軸
37 保持板(蓋保持手段)
50 破砕処理装置
51 容器ホルダ
52 ホルダ移動レール
53 媒体取出し装置
54 容器載置台
55 破砕媒体洗浄槽
56 容器蓋洗浄槽
57 容器準備台
62 攪拌部(攪拌用突出部)
63 本体芯材(回転駆動体)
64 攪拌羽根(攪拌用突出部)
65 外筒
66 スリット
67 回転本体(回転駆動体)
68 攪拌突起(攪拌用突出部)
A,A 破砕容器
B,B,B,B,B,B,B,B,B 破砕媒体
C 被破砕物
E 蓄冷破砕媒体
G,G,G,G 攪拌破砕媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物と強磁性体を主体として形成された破砕媒体とを収容した有底円筒形の破砕容器を所定位置に配置し、破砕容器の外部から印加する磁界により破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕媒体により被破砕物を摩砕及び圧砕することを特徴とする破砕方法。
【請求項2】
強磁性体を主体として形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の少なくとも上方側と底部側の外周から回転磁界を印加し、各回転磁界を制御することにより破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体によって破砕することを特徴とする破砕方法。
【請求項3】
強磁性体を主体として形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の外周から回転磁界を印加すると共に、破砕容器の底部に吸引磁界を印加し、前記回転磁界及び吸引磁界を制御することにより、破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体によって破砕することを特徴とする破砕方法。
【請求項4】
強磁性体を主体として形成された1又は複数の破砕媒体を収容した有底円筒形の破砕容器の高さ方向の外周から前記破砕媒体に複数の回転磁界を印加すると共に、破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加し、複数の回転磁界及び吸引磁界を制御することにより、破砕容器内で破砕媒体を回転運動及び上下運動させ、破砕容器中に投入した被破砕物を破砕媒体によって破砕することを特徴とする破砕方法。
【請求項5】
回転磁界を破砕容器の円筒軸方向から傾斜した方向から印加する請求項2〜4いずれか一項に記載の破砕方法。
【請求項6】
回転磁界の破砕容器に対する印加位置を変化させながら破砕する請求項2〜4いずれか一項に記載の破砕方法。
【請求項7】
破砕容器及び/又は破砕媒体を冷却しながら破砕する請求項1〜6いずれか一項に記載の破砕方法。
【請求項8】
破砕媒体の回転速度及び/又は回転方向及び/又は上下移動頻度を制御して破砕する請求項1〜7いずれか一項に記載の破砕方法。
【請求項9】
強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側と底部側とに対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなることを特徴とする破砕装置。
【請求項10】
強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側に対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなることを特徴とする破砕装置。
【請求項11】
強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の破砕容器の高さ方向に前記破砕媒体に回転磁界を印加する複数の回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、複数の回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなることを特徴とする破砕装置。
【請求項12】
破砕容器又は破砕容器を収容する空間に、破砕容器を冷却する冷却手段が設けられてなる請求項9〜11いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項13】
磁界制御手段は、回転磁界印加手段及び/又は吸引磁界印加手段をON/OFF制御する請求項9〜12いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項14】
磁界制御手段は、回転磁界印加手段に供給する交流電力の周波数及び/又は電圧及び/又は相回転切換を制御する請求項9〜13いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項15】
回転磁界印加手段は、破砕容器の直径に対応する収容空間の内径が形成されるように複数の磁極が放射方向に進退移動可能に構成されてなる請求項9〜14いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項16】
複数の磁極を中心方向に向けて付勢する付勢手段が設けられてなる請求項15に記載の破砕装置。
【請求項17】
破砕媒体は、その外形が破砕容器の内径より小さい直径の円柱形又は球形で、破砕容器の内底形状に対応する形状対応面を備えてなる請求項9〜16いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項18】
破砕媒体は、強磁性体によって形成されてなる請求項9〜17いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項19】
破砕媒体は、強磁性体の表面に良導体により誘導電流流路となる導体線路が設けられてなる請求項9〜17いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項20】
破砕媒体は、強磁性体の表面に複数の突状部が形成されてなる請求項9〜17いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項21】
破砕媒体は、非磁性体で形成された芯材の表面に半硬磁性材料による強磁性体層が設けられてなる請求項9〜17いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項22】
破砕媒体は、強磁性体の表面に複数の永久磁石を配してなる請求項9〜17いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項23】
破砕媒体は、中空構造に形成され、中空内に蓄冷材が封入されてなる請求項9〜22いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項24】
破砕媒体は、複数の攪拌用突出部を設けて形成されてなる請求項9〜23いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項25】
破砕媒体は、攪拌用突出部を設けて形成された樹脂製部材の中に強磁性体を主体として形成された回転駆動体を収容してなる請求項9〜23いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項26】
破砕媒体は、複数のスリットを形成した外筒内に、強磁性体を主体として形成された回転駆動体を回転自在に収容してなる請求項9〜23いずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項27】
破砕容器を保持する容器保持手段と、破砕容器の開口部を閉じる容器蓋を着脱可能に保持する蓋保持手段とを備えた容器ホルダ及びこの容器ホルダを所定位置に移動させる移動手段を具備し、破砕容器保持位置において破砕媒体と被破砕物とを収容した破砕容器を前記容器保持手段によって保持させると共に前記蓋保持手段により破砕容器の開口部に容器蓋を装着させた容器ホルダを移動手段により、破砕装置によって破砕する破砕処理位置に移動させ、破砕処理後に破砕された被破砕物を収容した破砕容器を容器ホルダから離脱させて容器保持台に載置する破砕容器載置位置に移動させることを特徴とする破砕処理装置。
【請求項28】
破砕容器を保持する容器保持手段と、破砕容器の開口部を閉じる容器蓋を着脱可能に保持する蓋保持手段と、破砕媒体を着脱可能に吸着保持する媒体保持手段とを備えた容器ホルダ及びこの容器ホルダを所定位置に移動させる移動手段を具備し、破砕容器保持位置において破砕媒体と被破砕物とを収容した破砕容器を前記容器保持手段によって保持させると共に前記蓋保持手段により破砕容器の開口部に容器蓋を装着させた容器ホルダを移動手段により、破砕装置によって破砕する破砕処理位置、媒体引上げ手段によって被破砕物が破砕処理された破砕容器中から破砕媒体を取り出す破砕媒体取出し位置、破砕された被破砕物を収容した破砕容器を容器ホルダから離脱させて容器保持台に載置する破砕容器載置位置、前記媒体保持手段によって吸着保持した破砕媒体の磁気吸着を解除して破砕媒体を所定場所に排出する破砕媒体排出位置、破砕容器から外した容器蓋を所定場所に排出する容器蓋排出位置に移動させることを特徴とする破砕処理装置。
【請求項29】
破砕装置は、強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側と底部側とに対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる請求項27又は28に記載の破砕処理装置。
【請求項30】
破砕装置は、強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の少なくとも破砕容器の上方側に対応する高さ位置から前記破砕媒体に回転磁界を印加する回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、前記回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる請求項27又は28に記載の破砕処理装置。
【請求項31】
強磁性体を主体として形成された破砕媒体を被破砕物と共に収容した有底円筒形の破砕容器を収容する空間の破砕容器の高さ方向に前記破砕媒体に回転磁界を印加する複数の回転磁界印加手段と、前記破砕容器の底部に破砕媒体を吸引する吸引磁界を印加する吸引磁界印加手段と、複数の回転磁界印加手段及び吸引磁界印加手段の動作を制御する磁界制御手段とを備えてなる請求項27又は28に記載の破砕処理装置。
【請求項32】
容器ホルダ及び破砕装置を複数に設け、移動手段は破砕容器保持位置において被破砕物及び破砕媒体を収容した破砕容器を保持した容器ホルダを順次破砕処理位置に移動させ、一連の処理工程を終了した容器ホルダを破砕容器保持位置に戻す循環構造に構成されてなる請求項27〜31いずれか一項に記載の破砕処理装置。
【請求項33】
媒体引上げ手段は、リング状磁石のリング中に破砕容器を挿入することにより強磁性体によって形成された破砕媒体を破砕容器中から開口部側に引上げ、媒体保持手段により磁気吸着するように構成されてなる請求項27〜32いずれか一項に記載の破砕処理装置。
【請求項34】
容器保持台に破砕容器を冷却する冷却手段が設けられてなる請求項27〜33いずれか一項に記載の破砕処理装置。
【請求項35】
被破砕物を収容した破砕容器に破砕媒体を投入する破砕媒体投入手段が設けられてなる請求項27〜31いずれか一項に記載の破砕処理装置。
【請求項36】
破砕媒体は中空構造内に蓄冷材を封入した蓄冷破砕媒体に構成され、冷却手段により冷却した蓄冷破砕媒体を破砕媒体投入手段により破砕容器に投入するように構成されてなる請求項27〜31いずれか一項に記載の破砕処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−320888(P2006−320888A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337203(P2005−337203)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(504073919)
【Fターム(参考)】