説明

破砕装置

【課題】破砕媒体及び被破砕物を収容した破砕容器を冷却して破砕動作を行っても、動作完了後に破砕容器を容器ケースから容易に取り出すことができる破砕装置を提供すること。
【解決手段】回転軸2と、回転軸2の軸芯に対して傾斜した軸芯を有する傾斜軸体4と、傾斜軸体4に相対回転自在に連結された環状保持体14と、環状体10の回転を弾性的に拘束する拘束部と、環状保持体14の外周部に保持された容器ケース15と、容器ケース15内に収容された破砕容器30を備える。環状保持体14の保持部14bに設けられた回動軸22に第1アーム23の一端を枢着し、第1アーム23の他端に設けられた揺動軸24に第2アーム25の一端を枢着する。第1アーム23に螺着したボルト27で第2アーム25を揺動させ、先端部25aを蓋体16のフランジ16aに係合させて、破砕容器30を蓋体16と容器ケース15の間に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の組織や種子類、動物の組織、プラスチック材料又は鉱物材料等を化学的に分析・分画分離するために破砕するのに好適な破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記各種材料を化学的に分析・分画分離するためには、まず材料を均一に粉砕しなければならない。このような目的に使用される粉砕装置としては、細長い破砕容器内に、その軸芯に沿った姿勢を保持して軸芯方向に相対移動する破砕媒体と被破砕物とを収容し、この破砕容器を8の字状に往復振動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の粉砕装置としては、従来、図5に示すようなものがある。この粉砕装置1は、図示しないモータにより回転駆動される回転軸2と、この回転軸2に連結されて回転軸2の軸芯に対して傾斜した軸芯を有する傾斜軸体4と、傾斜軸体4に軸受6及び環状体10を介して相対回転自在に取り付けられた環状保持体14と、環状体10の回転を弾性的に拘束する拘束部11と、環状保持体14の外周部に保持された容器ケース115と、この容器ケース115内に収容された破砕容器30を備える。この粉砕装置1は、モータで回転軸2及び傾斜軸体4を回転駆動すると共に、拘束部11で環状体10の回転を拘束することにより、環状保持体14の振れ運動を行う。これにより、容器ケース115内の破砕容器30を8の字状に往復振動させるように構成されている。
【0004】
破砕容器30は、下端部が半球状に形成された筒状の本体部31と、この本体部31の上端に取り付けられて内側面が半球状の蓋部32とで構成され、この破砕容器30内に、軸芯方向の両端部の外側面が半球状に形成された破砕媒体と被破砕物とが収容されている。この破砕容器30を収容する容器ケース115は上端が開口した円筒形状を有し、上端部の外周面に雄螺旋が設けられている。この容器ケース115の上端部に、内周面に雌螺旋が設けられた蓋体116が螺合して、容器ケース115の開口を閉鎖するように形成されている。破砕容器30が容器ケース115の上端の開口から内部に挿入された後、容器ケース115の上端部に蓋体116が螺着されて、この蓋体116の内側面から蓋部32の上端に押圧力が付与される。これにより、破砕容器30の両端部が容器ケース115の底面と蓋体116の内側面に密着して、破砕容器30がケース115と蓋体116の間に固定されるようになっている。
【0005】
上記粉砕装置1の動作において、破砕容器30が8の字状に往復振動すると、破砕媒体が破砕容器30の軸芯にほぼ沿った姿勢を保持したまま相対回転しながら破砕容器30の底面に衝突を繰り返し、破砕容器30が乳鉢、破砕媒体が乳棒のように作用する。こうして、被破砕物が大型の植物細胞や動物組織やプラスチック材料や鉱物材料などであっても効率的に破砕されるようになっている。
【0006】
上記破砕容器30は、被破砕物の破砕効率を高めるため、被破砕物と破砕媒体を収容した状態で液体窒素等により−200℃程度の極低温に冷却された後、容器ケース115内に収容される。
【特許文献1】特開2001−178444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の破砕装置は、破砕容器30が8の字状に往復振動するに伴い、破砕媒体の外側面と破砕容器30の内側面とが摺動摩擦を繰り返すと共に、破砕媒体の下端部が破砕容器30の底面に衝突を繰り返す。この摺動摩擦や衝突のエネルギーにより熱が生じ、破砕装置が通常の温度環境で動作する場合、動作完了時の破砕容器30の温度が動作開始時と比較して100℃程度上昇する。この温度上昇によって破砕容器30が膨張し、破砕容器30の蓋部32の上端から蓋体116の内側面に上向きの大きな押圧力が作用する。その結果、蓋体116の螺旋溝と容器ケース115の螺旋溝とが密着して蓋体116が容器ケース115に強固に固着し、蓋体116を回動させて容器ケース115から取り外すことが困難になり、容器ケース115から破砕容器30を取り出すことが困難になるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、破砕媒体及び被破砕物を収容した破砕容器を冷却して破砕動作を行っても、動作完了後に破砕容器を容器ケースから容易かつ迅速に取り出すことができる破砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の破砕装置は、破砕容器内に破砕媒体と被破砕物を収容し、破砕容器を往復振動させて被破砕物を破砕する破砕装置であって、回転軸と、軸芯が回転軸の軸芯に対して傾斜した姿勢で回転軸の外周側に回動自在に連結された環状保持体と、環状保持体の回転を弾性的に拘束する拘束手段と、環状保持体の外周部に環状保持体の軸芯と平行な姿勢で保持されていると共に上端に開口を有し、破砕媒体と被破砕物を収容して極低温に冷却された破砕容器が開口から挿入される容器ケースと、内側面が破砕容器の上端に接した状態で容器ケースの開口を閉鎖する蓋体と、環状保持体による容器ケースの保持位置よりも下方に設けられた回動軸と、この回動軸回りに回動自在に形成され、先端部が蓋体に係合して蓋体を容器ケースに向かって押圧する係合アームとを有するクランプ手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、破砕媒体と被破砕物を収容した破砕容器が、被破砕物の破砕効率を向上するために冷却された状態で容器ケース内に収容され、容器ケースの開口が蓋体で閉鎖される。引き続いて、クランプ手段の係合アームが回動軸回りに回動されて先端部が蓋体に係合し、係合アームの先端部が蓋体を容器ケースに向かって押圧することにより、破砕容器が蓋体と容器ケースの間に固定される。この後、回転軸及び傾斜軸体が環状保持体に回転力を与えると共に拘束手段が環状保持体の回転を弾性的に拘束することにより、環状保持体が振れ運動をして、環状保持体に保持された容器ケース内の破砕容器が8の字状に往復振動する。これにより、破砕容器内の破砕媒体が破砕容器に対して相対回転しながら破砕容器の底面に衝突を繰り返し、破砕媒体と破砕容器の底面との間の被破砕物が破砕される。
【0011】
このような破砕装置の破砕動作において、破砕容器と破砕媒体との間の摺動摩擦や衝突のエネルギーにより、冷却されていた破砕容器が温度上昇して膨張する。これにより、破砕容器の上端から蓋体に作用する押圧力が増大すると共に、蓋体からクランプ手段の係合アームの先端部に作用する押圧力が増大する。ここで、係合アームは、環状保持体による容器ケースの保持位置よりも下方に設けられた回動軸回りに回動自在に形成されて、回動軸と係合アームの先端部との間が比較的長いアーム長になっている。したがって、蓋体と係合アームの先端部との間に大きな押圧力が作用しているにもかかわらず、係合アームを容易に回動させて先端部と蓋体との係合を容易に解除させることができる。その結果、容器ケースから蓋体を容易に取り外して、容器ケース内から破砕容器を容易に取り出すことができる。
【0012】
一実施形態の破砕装置は、クランプ手段が、係合アームの先端部と蓋体との間の押圧力を解除する押圧力解除部を有する。
【0013】
上記実施形態によれば、押圧力解除部により係合アームの先端部と蓋体との間の押圧力が解除されるので、係合アームを各段に容易に回動させて先端部と蓋体との係合を解除させることができる。
【0014】
一実施形態の破砕装置は、クランプ手段の係合アームが、回動軸に一端が枢着された第1アームと、この第1アームの他端に設けられた揺動軸と、この揺同軸に一端が枢着されていると共に先端部が蓋体に係合する第2アームを有し、クランプ手段の押圧力解除部が、第1アームに軸部が螺着されていると共に第2アームに頭部が係合するボルトと、先端部を蓋体から遠ざける方向に第2アームに付勢力を作用させる付勢手段とを有する。
【0015】
上記実施形態によれば、破砕容器を容器ケースに取り付ける際、冷却された破砕容器が容器ケース内に収容されて容器ケースの開口が蓋体で閉鎖された後、クランプ手段の第1アーム及び第2アームが回動軸回りに回動し、第2アームの先端部が蓋体の上方に配置される。この後、ボルトが締結方向に回動されて軸部が第1アーム内を進入方向に累進すると共に頭部が第1アームに近づき、これにより、頭部に係合された第2アームが付勢手段の付勢力に抗して蓋体側に揺動して第2アームの先端部が蓋体に当接する。ボルトが更に回動されることにより、第2アームの先端部が蓋体を容器ケースに向かって押圧し、破砕容器が蓋体と容器ケースの間に固定される。この後、破砕装置の破砕動作に伴って破砕容器が温度上昇して膨張し、破砕容器の上端と蓋体との間の押圧力が増大すると共に、蓋体とクランプ手段の第2アームの先端部との間の押圧力が増大する。破砕装置の破砕動作が完了し、破砕容器を容器ケースから取り出す際、ボルトが締結解除方向に回動されて軸部が第1アーム内を退去方向に累進すると共に頭部が第1アームから遠ざかり、第2アームが付勢手段の付勢力によって揺動して蓋体から遠ざけられる。これにより、第2アームと蓋体との間の押圧力が容易に解除される。その結果、第1アーム及び第2アームを回動軸回りに容易に回動させて第2アームの先端部を蓋体の上方から退去させることができ、容器ケースから蓋体を容易に取り外して、容器ケース内から破砕容器を容易に取り出すことができる。
【0016】
一実施形態の破砕装置は、蓋体と係合アームの先端部との係合面が、互いに係合した状態で、蓋体の径方向内側に向かって下方に傾斜するように夫々形成されている。
【0017】
上記実施形態によれば、破砕容器の膨張により、蓋体から係合アームの先端部への押圧力が増大するに伴い、傾斜した互いの係合面を介して係合アームの先端部に蓋体の径方向内側へ向かう押圧力が作用する。したがって、破砕容器が膨張するほど係合アームが蓋体に強固に係合するので、破砕容器が膨張して蓋体を脱落側に押圧するにもかかわらず、蓋体の容器ケースからの脱落を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、破砕容器を収容した容器ケースの上端の蓋体を、環状保持体による容器ケースの保持位置よりも下方の回動軸回りに回動する係合アームの先端部で押圧して破砕容器を容器ケースと蓋体の間に固定するので、冷却された破砕容器が破砕動作に伴う温度上昇により膨張して蓋体と係合アームの間に大きな押圧力が作用しても、係合アームを容易に回動させて蓋体への係合を解除でき、蓋体を容器ケースから容易に取り外して、容器ケース内から破砕容器を容易に取り出すことができる。したがって、冷却により被破砕物を効率的に破砕できる上に、扱いの容易な破砕装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の破砕装置を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は破砕装置の平面図である。図2(a)乃至(c)は容器ケース及び蓋部の周辺を示す3面図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は環状保持体の径方向と直交する方向から見た側面図、図2(c)は環状保持体の径方向から見た部分断面図である。図3はクランプ手段の動作の様子を示す部分断面図であり、図4はクランプ手段の第2アームの先端部と蓋体との係合部の周辺を示す断面図である。本実施形態の破砕装置は、蓋部の容器ケースへの取り付け構造以外は図5の従来の破砕装置と同一であるので、図5を援用して破砕装置の全体構成を説明する。
【0021】
本実施形態の破砕装置1は、図示しないモータにより回転駆動される回転軸2と、この回転軸2に連結されて回転軸2の軸芯に対して傾斜した軸芯を有する傾斜軸体4と、傾斜軸体4に軸受6及び環状体10を介して相対回転自在に取り付けられた環状保持体14と、環状体10の回転を弾性的に拘束する拘束部と、環状保持体14の外周部に保持された容器ケース15と、この容器ケース15内に収容された破砕容器30を備える。
【0022】
回転軸2は、軸受部3に内蔵された軸受にて回転自在に支持されるとともにその上部が軸受部3の上方に延出されている。回転軸2の上部には、その軸芯に対して軸芯が傾斜状態で交叉する傾斜軸体4がキーを介して回転不可に嵌合されている。傾斜軸体4は、下部傾斜リング5と上部傾斜リング7との間に挟持され、回転軸2上端部に螺合したナット8で回転軸2に固定されている。
【0023】
傾斜軸体4の外周面には軸受6を介して環状体10が相対回転自在に装着されている。この環状体10の外周下部の適所には磁石が内蔵されている。また、軸受部3の上部に取付けられたブラケット12にて支持された対極磁石11が環状体10内の磁石に対向するように固定配置されている。環状体10に内蔵された磁石と対極磁石11とで拘束手段を構成している。すなわち、これら磁石と対極磁石11との間の磁力によって、回転軸2及び傾斜軸体4が回転した場合に環状体10の回転を弾性的に拘束し、斜軸体4の回転に伴って環状体10が8の字状の振れ運動を行うように構成されている。
【0024】
環状体10の上部には取付鍔部10aが設けられ、その上に環状保持体14が載置されて固定されている。環状保持体14は中央に貫通孔40を有し、平面視において六角形状の本体14aと、この本体14aの6つの辺から一つおきに径方向に延びる概ね矩形の3つの保持部14bとで構成されている。この環状保持体14の保持部14bには嵌合孔が形成されており、各保持部14bの嵌合孔に容器ケース15が嵌合してボルトで固定されている。3つの容器ケース15は環状体10の軸芯と平行姿勢に保持され、各容器ケース15内に破砕容器30を収容して支持するように構成されている。
【0025】
容器ケース15は略円筒形状をなして上端に開口15aを有し、開口15aから底側に多少離れた位置に鍔部15bが形成されている。この鍔部15bが、環状保持体14の保持部14bの嵌合孔の縁部に係止した状態で保持部14bにボルトで固定されている。容器ケース15の上端部には、容器ケース15の開口15aを閉鎖する蓋体16が装着されている。蓋体16は概ね円筒形状を有し、径方向外側に突出するフランジ16aが下端に形成されている。フランジ16aの上側面は、径方向断面において径方向内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。第2アーム25は、平面視において概ね正方形の板状体で形成されており、蓋体16のフランジ16aに係合する先端部25aの下側面が、蓋体16の径方向断面において、先端側すなわち蓋体16の径方向内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。内部に破砕容器30を収容した状態の容器ケース15に蓋体16を装着すると、蓋体16の頂部の内側面が破砕容器30の上端に接するようになっている。
【0026】
環状保持体14の保持部14bには、蓋体16を容器ケース15に固定するクランプ手段20が設けられている。このクランプ手段20は、図2及び図3に示すように、保持部14bの下側面にボルトで固定された箱状の軸支部21と、軸支部21に支持された回動軸22と、回動軸22に一端が枢着された第1アーム23と、第1アーム23の他端に設けられた揺動軸24と、揺動軸24に一端が枢着された第2アーム25を備える。回動軸22は、環状保持体14による容器ケース15の保持位置である保持部14bと鍔部15bとの係合面よりも下方に設けられている。第1アーム23は、回動軸22の軸芯方向視において、概ね直角三角形の本体部23aと、この本体部23aの2つの鋭角の端部から互いに直角をなして遠ざかるように延出した2つの軸支アーム部23bを有する。本体部23aの揺動軸24を支持する軸支アーム部23bが延出する側の端面23cに、他方の端面と平行に延びるボルト穴26が設けられている。第2アーム25は、平面視において概ね正方形の板状体で形成されており、蓋体16のフランジ16aに係合する先端部25aの下側面が、蓋体16の径方向断面において、先端側すなわち蓋体16の径方向内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。これにより、図4に示すように、第2アーム25の先端部25aの下側面25dと蓋体16のフランジ16aの上側面16bとが係合したときに互いに形成される係合面が、蓋体16の径方向内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。また、第2アーム25の先端部25aの端面25bが、蓋体16と同心の曲面に形成されている。第2アーム25の平面視において略中央には貫通孔25cが形成されており、この貫通孔25cに挿通されたボルト27の頭部27aが、第2アーム25に係合するようになっている。ボルト27の軸部27bは第1アーム23のボルト孔26に螺合している。第1アーム23の端面23cと、第2アーム25の下側面との間には、ボルト27の軸部27の外周側を取り巻くように、付勢手段としてのコイルバネ28が配置されている。上記ボルト27とコイルバネ28により、押圧力解除部を構成している。このような構成のクランプ手段20が、環状保持体14の3つの保持部14bに、周方向に対向して2つずつ設けられている。
【0027】
破砕容器30は、図3に示すように、上端に開口を有すると共に下端部31aが半球状に形成された円筒形状の容器本体31と、容器本体31の上端の開口に嵌合する蓋部32とで構成されている。蓋部32の容器本体31と嵌合する側面には周方向溝が形成されており、この周方向溝内に、容器本体31の内周面と蓋部32の側面との間をシールするOリング34が収容されている。蓋部32の内側面32aは、容器本体31の下端部31aの内側面と同様の半球状をなしている。
【0028】
破砕容器30の材質としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、テフロンなどの合成樹脂や、ステンレス鋼などの金属やその内側面にテフロンコーティングを施したものを用いることができる。
【0029】
破砕容器30内に被破砕物とともに収容される破砕媒体33は、破砕容器30の内径より大きい長さの単一部材で構成されており、下端部33aと上端部33bが、容器本体31の底部形状と蓋部32の内側面32a形状とに対応する半球形状に夫々形成されている。この破砕媒体32の材質としては、SUS430などの磁性ステンレス、SUS304硬質ステンレスなどのステンレス鋼、炭素鋼、チタン、タングステン、ジルコニア、タングステンカーバイト、セラミック、ガラス、テフロン(登録商標)の単体又は複合して構成したものを適宜用いることができる。
【0030】
上記構成を有する破砕装置により被破砕物の破砕を行う場合、破砕容器30の容器本体31内に破砕媒体33と被破砕物を収容して蓋部32を装着し、この破砕媒体33と被破砕物を収容した状態の破砕容器30を液体窒素で−200℃程度の極低温に冷却する。この冷却した破砕容器30を容器ケース15に収容し、蓋体16を装着する。この後、クランプ手段20の第1アーム23及び第2アーム25を回動軸22回りに回動させて、第2アーム25の先端部25bを蓋体16のフランジ部16aの上方に配置する。この後、ボルト27を締結方向に回動して軸部27bをボルト孔26内を下方に累進させると共に、頭部27aが第1アーム23に近づける。これにより、頭部27aに係合された第2アーム25をコイルバネ28の付勢力に抗して蓋体16側に揺動させて、第2アーム25の先端部25aの下側面を蓋体16のフランジ16aの上側面に当接させる。更にボルト27を回動させることにより、第2アーム25の先端部25aで蓋体16のフランジ16aを容器ケース15に向かって押圧し、蓋体16の内側面から破砕容器30の蓋部32の上端に押圧力を作用させて、破砕容器30を蓋体16と容器ケース15の間に固定する。この後、破砕装置1の破砕動作を開始して、破砕容器30を8の字状に往復振動させ、破砕媒体33を破砕容器30に対して相対回転させながら容器本体31の底面に繰り返し衝突させて被破砕物を破砕する。
【0031】
破砕装置1による破砕動作に伴い、容器本体31と破砕媒体33との間の摺動摩擦や衝突のエネルギーにより、極低温に冷却されていた破砕容器30が温度上昇して膨張する。これにより、破砕容器30の上端の蓋部32から蓋体16に作用する押圧力が増大すると共に、蓋体16からクランプ手段20の第2アーム25の先端部25bに作用する押圧力が増大する。ここで、互いに係合する蓋体16のフランジ16aの上側面と、第2アーム25の先端部25aの下側面とが、蓋体16の径方向内側に向かって下方に傾斜するように夫々形成されているので、互いの係合面を介して第2アーム25の先端部25aに蓋体16の径方向内側へ向かう押圧力が作用する。これにより、破砕容器30が膨張するほど第2アーム25が蓋体16に強固に係合するので、破砕容器30が膨張して蓋体16を脱落側に押圧するにもかかわらず、蓋体16の容器ケース15からの脱落を確実に防止できる。
【0032】
破砕装置1の破砕動作が完了すると、ボルト27を締結解除方向に回動して軸部27bをボルト孔26内を上方に累進させると共に、頭部27aを第1アーム23から遠ざける。これに伴い、第2アーム25がコイルバネ28の付勢力によって揺動して蓋体16から遠ざけられて、第2アーム25と蓋体16との間の押圧力が容易に解除される。その結果、第1アーム23及び第2アーム25を回動軸22回りに容易に回動させて、第2アーム25の先端部25aを蓋体16のフランジ16aの上方から退去させ、容器ケース15から蓋体16を容易に取り外すことができる。引き続いて、容器ケース15内から破砕容器30を容易に取り出すことができる。
【0033】
このように、本実施形態の破砕装置1によれば、破砕装置1が常温環境で動作する場合、極低温に冷却された破砕容器30が約100℃程度上昇して膨張し、破砕容器30から蓋体16へ大きな押圧力が作用すると共に、蓋体16から第2アーム25へ大きな押圧力が作用する。このような状況にもかかわらず、従来のように容器ケース115への蓋体116の固着を生じることなく、ボルト27を緩める操作と第1アーム23及び第2アーム25を回動する操作により、容易に第2アーム25と蓋体16との係合を解除させることができ、容易に破砕容器30を容器ケース15から取り出すことができる。その結果、極低温で被破砕物を効率的に破砕できるうえに、取り扱いの容易な破砕装置1を実現することができる。
【0034】
上記実施形態において、クランプ手段20の押圧力解除部の付勢手段をコイルバネ28で構成したが、付勢手段は捻りバネや板バネで構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態において、クランプ手段20の係合アームを第1アーム23と揺動軸24と第2アーム25で構成したが、係合アームは単一のアーム状部材で構成してもよい。この場合、押圧力解除部は、係合アームの回動軸を環状保持体と分離して支持する支持手段と、この支持手段を上下方向に移動させると共に所定の上下方向位置に保持する移動保持手段とで構成することができる。この押圧力解除部により、移動保持手段で回動軸を上方に移動させて、破砕容器の膨張に伴う蓋部から係合アームの先端部への押圧力を容易に解消し、係合アームの先端部と蓋体との係合を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】破砕装置の平面図である。
【図2】図2(a)は容器ケース及び蓋部の周辺の平面図であり、図2(b)は環状保持体の径方向と直交する方向から見た側面図であり、図2(c)は環状保持体の径方向から見た部分断面図である。
【図3】クランプ手段の動作の様子を示す部分断面図である。
【図4】クランプ手段の第2アームの先端部と蓋体との係合部の周辺を示す断面図である。
【図5】従来の破砕装置を正面から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 破砕装置
2 回転軸
11 対極磁石
14 環状保持体
15 容器ケース
16 蓋体
20 クランプ手段
22 回動軸
23 第1アーム
24 揺動軸
25 第2アーム
30 破砕容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕容器内に破砕媒体と被破砕物を収容し、破砕容器を往復振動させて被破砕物を破砕する破砕装置であって、
回転軸と、
軸芯が回転軸の軸芯に対して傾斜した姿勢で回転軸の外周側に回動自在に連結された環状保持体と、
環状保持体の回転を弾性的に拘束する拘束手段と、
環状保持体の外周部に環状保持体の軸芯と平行な姿勢で保持されていると共に上端に開口を有し、破砕媒体と被破砕物を収容して極低温に冷却された破砕容器が開口から挿入される容器ケースと、
内側面が破砕容器の上端に接した状態で容器ケースの開口を閉鎖する蓋体と、
環状保持体による容器ケースの保持位置よりも下方に設けられた回動軸と、この回動軸回りに回動自在に形成され、先端部が蓋体に係合して蓋体を容器ケースに向かって押圧する係合アームとを有するクランプ手段と
を備えることを特徴とする破砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕装置において、
クランプ手段が、係合アームの先端部と蓋体との間の押圧力を解除する押圧力解除部を有することを特徴とする破砕装置。
【請求項3】
請求項2に記載の破砕装置において、
クランプ手段の係合アームが、回動軸に一端が枢着された第1アームと、この第1アームの他端に設けられた揺動軸と、この揺同軸に一端が枢着されていると共に先端部が蓋体に係合する第2アームを有し、
クランプ手段の押圧力解除部が、第1アームに軸部が螺着されていると共に第2アームに頭部が係合するボルトと、先端部を蓋体から遠ざける方向に第2アームに付勢力を作用させる付勢手段とを有することを特徴とする破砕装置。
【請求項4】
請求項1に記載の破砕装置において、
蓋体と係合アームの先端部との係合面が、互いに係合した状態で、蓋体の径方向内側に向かって下方に傾斜するように夫々形成されていることを特徴とする破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226278(P2009−226278A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72721(P2008−72721)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(592054661)安井器械株式会社 (7)
【Fターム(参考)】