説明

破骨細胞生成および/または破骨細胞活性化の阻害における使用のためのN置換デオキシノジリマイシン化合物

セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤は、破骨細胞生成を阻害し、および/または破骨細胞活性化を減少させることができ、したがって、多発性骨髄腫などの状態を有する被験体における骨溶解活性および骨量低下にとって有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2009年12月7日に出願された米国仮特許出願第61/282,033号の優先権を主張する。上記出願の内容全体が参照により本明細書に組入れられるものとする。
【0002】
分野
本開示は、一般的には、医療目的でのイミノ糖(iminosugar)の使用に関し、特に、破骨細胞生成および/または破骨細胞活性化を阻害するためのイミノ糖の使用に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
一実施形態によれば、破骨細胞生成(osteoclastogenesis)を阻害し、および/または破骨細胞活性化を減少させる方法は、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤である薬剤(agent)の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。
【0004】
別の実施形態によれば、骨溶解活性(osteolytic activity)および/または骨量低下(bone loss)を減少または防止する方法は、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤である薬剤の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。
【0005】
本出願ファイルは、色付きで作製された少なくとも1つの図面を含む。色付き図面(複数可)を含む本特許出願刊行物のコピーは、要求および必要手数料の支払い時に事務局により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1A〜Bは、RANKL依存的破骨細胞生成の選択されたイミノ糖によるin vitroでの阻害に関するデータを提示する図である。
【図2】図2A〜Dは、選択されたイミノ糖に関する破骨細胞生成の間のMAPKシグナリングおよびNFATc活性化の阻害に関するデータを提示する図である。
【図3】図3は、SrcおよびTRAF6とラフトとの結合(association)のスフィンゴ糖脂質摂動(glycoshyngolipids perturbation)に関するデータを提示する図である。
【図4】図4A〜Bは、ガラクトシルセラミドおよびRANKLによる破骨細胞活性化の選択されたイミノ糖によるin vivoでの阻害に関するデータを提示する図である。
【図5】図5A〜Bは、多発性骨髄腫(MM)患者におけるGSLの質量スペクトルプロフィールを提示する図である。このプロフィールは、GM2およびGM3がMMにおいて最も一般的なGSLであることを明らかにしている。
【図6】図6A〜Eは、GM3が破骨細胞生成の促進においてRANKLおよびIGF−1と協働することを証明するデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
別途特定しない限り、「a」または「an」は、1つ以上を意味する。
【0008】
破骨細胞は、正常状態と病的状態との両方において主要な骨吸収細胞である。破骨細胞骨吸収の増加は、破骨細胞の形成(osteoclast formation)の増加と、骨を吸収する予め形成された破骨細胞の活性化との両方に起因し得る。骨転移を有する患者においては、骨溶解性骨破壊が重篤な骨痛、病的骨折、高カルシウム血症、および神経圧迫症候群をもたらすことがある。いくつかの腫瘍(腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性骨髄腫および乳癌が挙げられる)は骨への高い好発性を示す(例えば、Roodman, Journal of Clinical Oncology, vol. 19, 2001, p. 3562を参照されたい)。破骨細胞の形成および活性化はまた、閉経後の骨粗鬆症などの骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチならびに頭部および頸部の扁平上皮癌に罹患している個体における骨溶解性疾患および骨量低下にも寄与し得る(例えば、米国特許第7,462,646号を参照されたい)。
【0009】
グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤であるD−トレオ−1−フェニル−2−デカノイルアミン−3−モルホリノ−1−プロパノール(d−PDMP)によるスフィンゴ糖脂質(glycosphingolipid)の阻害は、マクロファージコロニー刺激因子および核性因子κBリガンドの受容体活性化因子(RANKL)により誘発される破骨細胞の形成を阻害することができる(例えば、Iwamotoら、Journal of Biological Chemistry, 276, 46031-46038, 2001を参照されたい)。
【0010】
本発明者らは、特定の薬剤によるスフィンゴ糖脂質自体の阻害が、破骨細胞生成の阻害および破骨細胞活性化の減少において有効であるためには、この薬剤だけでは十分ではない場合があることを見出した。かくして、破骨細胞生成の阻害および/または破骨細胞活性化の減少において有効であるためには、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ(CGT)阻害剤であることに加えて、薬剤はCGT以外のものである1つ以上のさらなる酵素の阻害剤でもあるべきである。
【0011】
多くの実施形態において、破骨細胞生成の阻害および/または破骨細胞活性化の減少において有効であり得る薬剤は、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方であってよい、すなわち、該薬剤はCGTおよびグルコシダーゼの両方に対して阻害効果を有してもよい。用語「グルコシダーゼ阻害剤」は、α−グルコシダーゼおよびβ−グルコシダーゼのうちの少なくとも一方に対する阻害活性を有し得る薬剤を意味する。多くの実施形態において、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤は、N置換デオキシノジリマイシンなどのイミノ糖であってよい。
【0012】
特定の実施形態においては、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤は、式I:
【化3】


の化合物、またはそのような化合物の医薬的に許容し得る塩もしくはプロドラッグであってよい。式(I)において、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アシル、アラルキル、アロイル、アルコキシ基、アラルコキシ基および複素環基から選択することができ、R、R、R、およびRは各々独立に、水素、アシル基、アルカノイル基、アロイル基、およびハロアルカノイル基から選択することができる。いくつかの実施形態においては、Rは、1〜24個の炭素原子または2〜12個の炭素原子または3〜5個の炭素原子または14〜22個の炭素原子または17〜20個の炭素原子を含む、置換または非置換の分枝状または非分枝状のアルキル基であってよい。
【0013】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキル」は、単独で、または組合せで、1〜24(24を含む)個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖アルキルラジカルを意味する。
【0014】
置換アルキルは、単独で、または組合せで、アリールおよび複素環の定義に関して本明細書で定義されるように必要に応じて置換されるアルキルラジカルを意味する。アルキレンは、メチレン(−−CH−−)などの、2個以上の位置で結合する飽和脂肪族炭化水素部分を意味する。アルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル(unadecyl)、オクタデシルなどが挙げられる。
【0015】
用語「シクロアルキル」は、単独で、または組合せで、飽和または部分飽和した単環式、二環式または三環式のアルキルラジカル(ここで、それぞれの環状部分は、好ましくは3〜10個の炭素原子の環員を含有し、必要に応じて、アリールの定義に関して本明細書で定義されるように必要に応じて置換されるベンゾ融合環系であってもよい)を意味する。そのようなシクロアルキルラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0016】
用語「アリール」は、単独で、もしくは組合せで、または「ara」もしくは「ar」は組合せで、アルキル、アルキルカルボニル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロアルキルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、アルキルカルボニルアミノ、アミノアルカノイル、アミド、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アリール、アリールオキシ、アルキルオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、置換アミノ、二置換アミノ、置換アミノカルボニル、二置換アミノカルボニル、置換アミド、二置換アミド、アラルコキシカルボニルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ハロアルキルチオ、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、ハロアルキルスルフィニルアミノ、ハロアルキルスルホニルアミノ、アリールスルフィニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロシクロ、スルホネート、スルホン酸、三置換シリルなどからなる群より選択される1個以上の置換基で必要に応じて置換されるフェニルまたはナフチルラジカルを意味する。ナフチルおよびβ−カルボリニル(carbolinyl)などの融合環系と、ビフェニル、フェニルピリジル、ナフチルおよびジフェニルピペラジニルなどの置換環系との両方を含むことが意図される。アリールラジカルの例は、フェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(tert−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、4−CF−フェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、4−CFO−フェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、ピペラジニルフェニルなどである。
【0017】
用語「アラルキル」および「アラルコキシ」は、単独で、または組合せで、少なくとも1個の水素原子が上記で定義されたアリールラジカルにより置換された、上記で定義されたアルキルまたはアルコキシラジカルを意味する。かくして、「アリール」は、ベンジル、2−フェニルエチル、ジベンジルメチル、ヒドロキシフェニルメチル、メチルフェニルメチル、およびジフェニルメチルなどの置換基を含み、「アリールオキシ」はベンジルオキシ、ジフェニルメトキシ、4−メトキシフェニルメトキシなどの置換基を含む。
【0018】
用語「アロイル」は、アリールカルボン酸から誘導されるアシルラジカルを意味し、「アリール」は上記で与えられた意味を有する。そのようなアロイルラジカルの例としては、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−カルボキシベンゾイル、4−(ベンジルオキシカルボニル)ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、6−カルボキシ−2−ナフトイル、6−(ベンジルオキシカルボニル)−2−ナフトイル、3−ベンジルオキシ−2−ナフトイル、3−ヒドロキシ−2−ナフトイル、3−(ベンジルオキシホルムアミド)−2−ナフトイルなどの置換および非置換ベンゾイルまたはナフトイルが挙げられる。
【0019】
式(I)の化合物を合成する方法は公知であり、例えば、米国特許第5,622,972号、第4,246,345号、第4,266,025号、第4,405,714号、および第4,806,650号に記載されている。
【0020】
いくつかの実施形態においては、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤は、無機酸または有機酸から誘導される塩の形態であってもよい。医薬的に許容し得る塩および塩形態を調製する方法は、例えば、Bergeら(J. Pharm. Sci. 66: 1-18, 1977)に開示されている。好適な塩の例としては、限定されるものではないが、以下の塩:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンフォレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミサルフェート(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態においては、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤を、プロドラッグの形態で使用することもできる。6−リン酸化DNJ誘導体などのDNJ誘導体のプロドラッグは、米国特許第5,043,273号および第5,103,008号に開示されている。
【0022】
いくつかの実施形態においては、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤を、医薬的に許容し得る担体および/または組成物を動物に送達するのに有用な構成成分をさらに含む組成物の一部として使用することができる。該組成物をヒトに送達するのに有用な多くの医薬的に許容し得る担体および該組成物をウシなどの他の動物に送達するのに有用な構成成分が当技術分野で公知である。そのような担体および構成成分の添加は、当業者のレベルの範囲内に十分にある。
【0023】
いくつかの実施形態においては、式(I)の化合物などのイミノ糖を、米国特許出願公開第2008/0138351号、2009年3月25日に出願された米国特許出願第12/410,750号および2009年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/202,699号に開示されたものなどのリポソーム組成物中で使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態においては、CGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤を細胞培養物に投与して、該細胞中での破骨細胞生成を阻害し、および/または破骨細胞活性を減少させることができる。いくつかの実施形態においては、該薬剤をヒトなどの動物に投与して、破骨細胞生成および/または破骨細胞活性化を介して進行している可能性のある状態を治療または予防することができる。そのような状態の例としては、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、乳癌、閉経後の骨粗鬆症などの骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチまたは頭部および頸部の扁平上皮癌を有する被験体における骨溶解性疾患および/または骨量低下もしくは骨破壊が挙げられる。
【0025】
細胞または動物に投与される該薬剤の量は、破骨細胞生成を阻害し、および/または破骨細胞活性化を減少させるのに有効な量であってよい。本明細書で用いられる用語「阻害する」とは、該薬剤の非存在下で示される生物活性の検出可能な減少および/または消失を指してよい。用語「有効量」とは、指示される効果を達成するのに必要な該薬剤のその量を指してよい。本明細書で用いられる用語「治療」とは、被験体における症候を減少させるか、もしくは軽減すること、症候が悪化もしくは進行するのを防止すること、またはその進行が破骨細胞生成および/もしくは破骨細胞活性化に依存する障害の防止を指してもよい。そのような障害の例としては、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、乳癌、閉経後の骨粗鬆症などの骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチまたは頭部および頸部の扁平上皮癌を有する被験体における骨溶解性疾患および/または骨量低下もしくは骨破壊が挙げられる。
【0026】
細胞培養物または動物に投与することができるCGT阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤の両方である薬剤の量は、好ましくは、その投与に伴う利点を上回るいかなる毒性効果も誘発しない量である。
【0027】
医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者について所望の治療応答を達成するのに有効である活性化合物(複数可)の量を投与するために変化してもよい。
【0028】
選択される用量レベルは、薬剤の活性、投与経路、治療される状態の重症度、ならびに治療される患者の状態および既往歴に依存し得る。しかしながら、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルでの化合物(複数可)の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当業者の技術の範囲内にある。所望される場合は、有効な1日用量を、投与のために複数回の用量、例えば、1日あたり2〜4回の用量に分割してもよい。しかしながら、任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、体重、一般的な健康状態、食事、投与の時間および経路ならびに他の治療剤との組合せならびに治療される状態または疾患の重症度などの様々な因子に依存し得ることが理解されよう。成人の1日投与量は、体重10kgあたり薬剤約1μg〜約1gの間の範囲、または約10mgから100mgの間の範囲であってよい。勿論、細胞または動物に投与すべき薬剤の量は、該薬剤の分子量および投与経路などの当業者によってよく理解される多くの因子に依存してもよい。
【0029】
本発明の方法において有用である医薬組成物は、経口固形製剤、眼科用製剤、坐剤、エアロゾル製剤、局所製剤または他の同様の製剤において全身投与することができる。例えば、それは粉末、錠剤、カプセル、ロゼンジ剤、ゲル、溶液、懸濁液、シロップなどの物理的形態にあってもよい。活性薬剤に加えて、そのような医薬組成物は、医薬的に許容し得る担体および薬物の投与を増強し、容易にすることが知られる他の成分を含有してもよい。ナノ粒子、リポソームに再封入された赤血球(liposomes resealed erythrocyte)、および免疫に基づく系などの他の可能な製剤を使用して、該薬剤を投与することもできる。そのような医薬組成物を、いくつかの経路により投与することができる。本明細書で用いられる用語「非経口」は、限定されるものではないが、皮下、静脈内、動脈内、くも膜下(intrathecal)、ならびに注射および輸液技術を含む。例えば、該医薬組成物を、経口的、局所的、非経口的、全身的に、または肺経路により投与することができる。
【0030】
これらの組成物は、単回用量で投与してもよいし、または複数回用量で異なる時間に投与してもよい。
【0031】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に例示するが、本発明はそれに限定されないことが理解されるべきである。
【0032】
実施例
多発性骨髄腫(MM)は、形質細胞(PC)のクローン性増殖および消耗性骨溶解性骨疾患を特徴とする不治の悪性障害である。いくつかの事例では、MMは、意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)と呼ばれる、無症候性の前悪性障害として始まる場合があり、MGUSは時間と共にMMに形質転換し得る。遺伝的欠陥および微小環境との悪性PCのクロストークが、おそらく同等に、MMの生物学的挙動の原因である。
【0033】
MMの遺伝的基礎および微小環境の役割
様々な癌遺伝子、特に、サイクリンD1、2または3の過剰発現は、しばしばIgHエンハンサーエレメントを含む染色体転座の結果として、MMにおける主要な遺伝的事象であり得る。これらのものはMGUSを有する患者においても認められる(Hideshimaら、Nature Reviews in Cancer 2, 927-937, 2002; Hideshimaら、Blood 104, 607-618, 2004)。疾患の進行は、C−MYC脱調節(deregulation)およびP53またはRB関連遺伝子などの腫瘍抑制遺伝子の不活化などのさらなる遺伝子変化の獲得に依存し得る(Hideshimaら、Nature Reviews in Cancer,上掲; Hideshimaら、Blood,上掲; Mitsiadesら、Proceedings of the National Academy of Science USA 101, 540-545 2004)。MM細胞と骨髄間質細胞(bone marrow stromal cell)および骨芽細胞(OB)との直接的相互作用は、自己分泌または傍分泌様式で、腫瘍自体の生存および増殖ならびに結果として生じる骨疾患に伴う破骨細胞(OC)活性の増加を促進し得るいくつかのサイトカインの産生の引き金であり得る。
【0034】
間質(stroma)およびOBにより分泌される最も重要なMM栄養因子の1つであるIL−6は、Ras/Maf/MAPKおよびJAK/STAT3経路の活性化により、それぞれ、MM細胞の増殖および生存を促進することができる(Hideshimaら、Nature Reviews in Cancer,上掲; Hideshimaら、Blood,上掲; Mitsiadesら、Proceedings of the National Academy of Science USA,上掲)。
【0035】
MM細胞中での転写因子NFκBの構成的活性化(Bhartiら、Blood, 103, 3175-3184 2004; Bhartiら、Journal of Biological Chemistry 279, 6065-6076 2004)は、他のサイトカインおよび増殖因子のうち、間質によるTNFaおよびインスリン増殖因子(IGF−1)の分泌の増加の結果としてのものであり、腫瘍細胞のアポトーシスおよび増殖に対する抵抗性にとって重要であり得る(Mitsiadesら、Oncogene 21, 5673-5683 2002)。プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブによるNFκB活性の撹乱およびその有意な臨床活性は、骨髄腫PCの生物学におけるNFκBの中枢的な役割を強調する(Hideshimaら、Journal of Biological Chemistry 277, 16639-16647, 2002)。かくして、MM−微小環境の分子的相互作用のより良い理解が、新規治療剤の開発にとって重要である。
【0036】
MMにおける骨疾患の病因
骨の恒常性は、2つの型の細胞、骨吸収破骨細胞(OC)および骨形成性骨芽細胞の連続的および協調的活性によって達成され得る。MMにおける骨溶解性骨破壊は、該疾患の最も消耗性の高い合併症の1つであり、OCの活性化の増強、および疾患の後期には、OB活性の抑制により引き起こされ得る。このプロセスはMM細胞とOCおよびOBとの親密な物理的な近接性に大きく依存し、骨髄腫または間質細胞に由来する可溶性因子により媒介されることの証拠が存在する。また、MM細胞と、間質、OCおよびOBとの密接な相互作用が、疾患の少なくとも初期段階での骨髄腫の生存および増殖にとって重要であり得ることを示唆する証拠も存在する。したがって、このクロストークの崩壊は、全身腫瘍組織量および骨疾患の重症度を低下させる可能性を提供することができる。
【0037】
MMにおけるOC活性化の機構
RANKLは、骨の恒常性において主要なOC活性化因子(OAF)として機能することができる表面結合性および/または不溶性のサイトカインである(Boyleら、Nature 423, 337-342, Wadaら、Trends in Molecular Medicine 12, 17-25, 2006)。間質細胞およびOBならびに骨髄腫細胞自体によるその分泌の増加は、MMにおけるOC活性化、骨吸収の増加ならびに最終的には骨溶解および骨疾患の主要な機構であり得る(De Leenheerら、Current Opinion in Pharmacology 4, 340-346, 2004; Terposら、International Journal of Hematology 78, 344-348)。RANKLの増加は、腫瘍微小環境中だけでなく、MMを有する患者の血清中でも検出される場合があり、以前に示されたように、RANKL/OPG(オステオプロテゲリン、RANKLの阻害的デコイ受容体)の増加は低い生存率を予測するものである(Terposら、Blood, 102, 1064-1069, 2003)。骨髄腫由来IL−7細胞により刺激されるT細胞も、多発性骨髄腫におけるRANKLの重要な供給源である(Colucciら、Blood 104, 3722-3730, 2004; Giulianiら、Blood 100, 4615-4621, 2002)。RANKLに加えて、骨髄腫微小環境中でのケモカインマクロファージ炎症タンパク質−1a(MIP−1a)(Abeら、Blood 100, 2195-2202, 2002; Choiら、Journal of Clinical Investigation 108, 1833-1841, 2001)、IL−3(Leeら、Blood 103, 2308-2315, 2004)およびVEGF(Dankbarら、Blood 95, 2630-2636, 2000; Nakagawaら、FEBS Letters 473, 161-164, 2000)などのサイトカインの分泌の増加は、破骨細胞活性の増加に寄与する。
【0038】
MMにおけるOB阻害の機構
OB機能の抑制および骨形成活性の減少は、後期MMにおける骨疾患に寄与する複合因子であり得る。MMを有する患者の末梢血および骨髄プラスマ中で増加することがわかった、Wnt経路可溶性阻害因子であるDickkopf(Dkk)のレベルの増加に注意が引かれている。OBの発生および機能には標準的な(canonical)Wnt経路が必要であり、Dkkによるその阻害はMMにおけるOBの機能障害において重要な因子であるようである。OBの機能障害はまた、IL−3およびHGFなどのMM微小環境中で過剰に分泌される他の可溶性因子によっても付与される。
【0039】
スフィンゴ糖脂質および悪性疾患
スフィンゴ糖脂質(GSL)は、セラミドのグリカン改変から生成される細胞形質膜を構成する複合脂質である(Degrooteら、Seminars in Cell and Developmental Biology 15, 375-387, 2004)。
【0040】
構造的には、GSLは、組織間で、およびまた分化の間には同じ組織内で異なっている場合がある。この可変性は、細胞膜でチロシンキナーゼにより開始される細胞シグナリングの改変、細胞周期の制御およびアポトーシス、接着ならびに移動を含む多くの細胞プロセスにおけるその異なる機能的役割を反映し得る(Degrooteら、上掲)。細胞のGSLプロフィールにおける定量的および/または定性的変化は、悪性形質転換の特徴である場合がある(Hakomori, Glycoconjugate Journal 17, 627-647, 2000)。
【0041】
多数のin vitroおよびin vivoでの前臨床試験において、腫瘍に関連したGSLは、腫瘍、生存および増殖、転移、血管形成を促進し、抗腫瘍免疫の抑制を誘発するいくつかの細胞機能を調節することが示されている(Birkleら、Biochimie 85, 455-463, 2003; Hakomori, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 99, 10231-10233 2002)。かくして、GSL組成の変化は、悪性形質転換と関連する中立的なプロセスであるだけでなく、その代わりに、所与の腫瘍の臨床挙動にとって決定的である細胞プロセスに参加し、それを増強する。
【0042】
破骨細胞発生機能およびGSL
ラクトシルセラミドGM2およびGM3は、成熟破骨細胞の主なGSL構成要素であることができ、GM1は脂質ラフト中でRANK(RANKL受容体)と共存する(co-localize)ことができる。グリコシルセラミドシンターゼ阻害剤d−PDMPによるGSL合成の阻害または脂質ラフトの化学的崩壊は、OCの発生を防止することができる。また、MMにおける骨疾患の病因に関して、Iwamotoらは、RANKL依存的破骨細胞生成における外因性ラクトシルセラミドのin vitroでの相乗効果を証明した(Iwamotoら、Journal of Biological Chemistry 276, 46031-46038, 2001)。
【0043】
要旨
セラミドグルコシルトランスフェラーゼ(CGT)阻害剤であるイミノ糖は、腫瘍由来の前破骨細胞生成性GSLの生成を防止することにより、ならびにde novoでのOCのGSL合成を阻害しかくして、OC活性化を阻害することにより、OC活性化を減少させるのに有益であり得る。しかしながら、既知のCGT阻害剤であるPDMPは同様に有効であったが、より選択的なイミノ糖阻害剤であるNB−DGJ(Anderssonら、Biochemical Pharmacology 59, 821-829, 2000)は有意により強力でなかったため、この機構は、NB−DNJを使用する活性化の減少を完全に説明していない。NB−DNJなどのデオキシノジリマイシン(DNJ)類似体は、CGTに対するその阻害効果に加えて、α−およびβ−グルコシダーゼ阻害活性の両方を有する(Plattら、Journal of Biological Chemistry 269, 27108-27114, 1994)。DNJイミノ糖による破骨細胞活性化の減少は、2つ以上の既知の機構が活性化経路において役割を果たし得ることを示唆し得る。
【0044】
いくつかのイミノ糖が既知のCGTおよびグルコシダーゼ阻害剤であり(Buttersら、Chemical Reviews 100, 4683-4696, 2000)、一方のN−ブチル−デオキシノジリマイシン(NB−DNJ)は、ゴーシェ病におけるGSLのリソソーム蓄積を制御するためのGSL生合成を低下させるのに臨床的に有用であることが見出された。そのようなイミノ糖は、破骨細胞活性化が疾患増殖(disease proliferation)における主要な効果である得る障害を治療するのに有用であり得る。これらの障害の一例は、有意な骨破壊が観察されるMMであってよい。
【0045】
図1は、RANKL依存的破骨細胞生成の選択されたイミノ糖によるin vitroでの阻害に関するデータを提示する。
【0046】
A.50ng/mlのRANKLを含み、d−PDMP(1.25、5もしくは20μM)、NB−DNJ(N−ブチル−デオキシノジリマイシン)、NB−DGJ(N−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシン)、またはN−OD−DNJ(N−オクタデシル−デオキシノジリマイシン)(5、50もしくは500μM)を含むか、または含まない25ng/mlのM−CSF(マクロファージコロニー刺激因子)の存在下、96ウエルプレート中でマウス骨髄細胞を4日間培養した。プラスチックプレート上の培養物を固定し、TRAP(酒石酸抵抗性酸リン酸(phosphate))について染色した。TRAP陽性多核(3個を超える核)破骨細胞を計数した。
【0047】
B.50ng/mlのRANKLを含む25ng/mlのM−CSFの存在下、48ウエルプレート中でマウス骨髄細胞を培養した。3日目に、d−PDMP(1.25、5もしくは20μM)、NB−DNJ、NB−DGJ、またはN−OD−DNJ(5、50、もしくは500μM)を添加した。細胞をさらに24時間培養した後、固定し、TRAPについて染色した。成熟したTRAP陽性破骨細胞を4日目に計数した(左側)。4日間の破骨細胞の形態。TRAPまたはファロイジンのいずれかで細胞を染色して、それぞれ、破骨細胞およびF−アクチンを証明した。
【0048】
図2は、選択されたイミノ糖に関する破骨細胞生成の間のMAPKシグナリングおよびNFATc活性化の阻害に関するデータを提示する。
【0049】
BMCを3日目まで培養した後、0.5%血清培地中で一晩飢餓状態にした。細胞を指示された時点でRANKL(A)またはM−CSF(B)で処理した後、α−pERK1/2、α−pP38、α−pJNK抗体で免疫ブロットした。メンブレンを剥がし、α−ERK、α−P38、α−JNK抗体で再染色した。p38およびより低い程度のERKa、d JnkのM−CSFおよびRANKL依存的リン酸化がNB−DNJで処理した際に観察される。
C.一晩血清飢餓状態にしたOCを指示されるように処理した後、抗NFATc1で染色し、免疫蛍光顕微鏡により観察した。NB−DNJは、核中でのNFAtc1のM−CSF+RANKL誘発性蓄積を無効化した。(D)BMCをM−CSF、RANKLおよびNB−DNJの様々な組合せと共に48時間培養した。細胞を回収し、核タンパク質を抽出し、ウェスタンブロットによりNFATc1の発現を調べた。ヒストン−1の染色がローディングコントロールとして役立った。NB−DNJの存在下では、かなり少ない核NFTc1が観察される。
【0050】
図3は、SrcおよびTRAF6とラフトとの結合(association)のスフィンゴ糖脂質摂動に関するデータを提示する。
【0051】
RAW 264.7中での脂質ラフト(画分3〜5)または非ラフト画分(画分7〜9)中のTRAF6、Srcand GM1ガングリオシドの局在化。マウスマクロファージ細胞を、50ng/mlのRANKLまたはRANKL+NB−DNJの存在下、48ウエルプレート中で4日間、培地のみ(コントロール)の中で培養した。細胞溶解物を調製し、不連続スクロース勾配超遠心分離を用いて分離した。合計9個の画分(それぞれ1ml)を勾配の上から下まで回収し、画分2〜5はGM1ガングリオシドについて陽性であった、すなわち、脂質ラフトを含有していた。非ラフト画分は7〜9であった。RANKLを用いない場合、TRAF6は非ラフト画分中に局在し、Srcはラフト画分と非ラフト画分との両方に提示される。RANKL処理の後、TRAF6はラフト画分中に検出され、Srcはほぼ全部ラフト画分中にシフトした。NB−DNJの存在下では、TRAF6およびSrcはラフトから排除され、かくして、RANKLと相互作用することができない。
【0052】
図4A〜Bは、ガラクトシルセラミドおよびRANKLによる破骨細胞活性化の選択されたイミノ糖によるin vivoでの阻害に関するデータを提示する。
【0053】
A.NB−DNJは、血清CTXレベルにより反映されるように、α−ガラクトシルセラミドにより誘発されるOC活性化を阻害する。NB−DNJ(500mg/kg)またはPBSを、8週齢のC57BL/6マウスに6日間連続で1日1回、腹腔内(i.p.)注射した。α−ガラクトシルセラミドまたはPBSを、3日目に2μgの単回i.p.注射により投与した。7日目に回収した血清を用いて、1型コラーゲン(CTX)レベルのカルボキシ末端架橋テロペプチドを決定した(n=4〜5匹の8週齢のメスC57BL/6マウス)。
【0054】
B.NB−DNJは、血清CTXレベルにより反映されるように、RANKLにより誘発されるOC活性化を阻害する。上記と同様のNB−DNJのスケジュールを用いたが、RANKLを3日目から4mg/日でi.p投与した(n=2)。
【0055】
図5A〜Bは、多発性骨髄腫(MM)患者におけるGSLの質量スペクトルプロフィールを提示する。このプロフィールは、GM2およびGM3がMMにおいて最も一般的なGSLであることを明らかにしている。
【0056】
(A)MM患者のCD138および(B)MM患者のCD138骨髄細胞に由来する上側の相のGSL。GSLのプロフィールは、C18Sep−Pakに由来する80%(左パネル)および100%のプロパノール(右パネル)画分に由来する。差込み図はGMクラスター領域のズームした走査に対応する。
【0057】
スフィンゴシン塩基としてd−エリスロ−スフィンゴシンを考慮して、GSLをグリカン部分に関する漫画構造(cartoon structure)およびリポフォーム部分に関する脂肪酸の組成として示す。漫画構造はConsortium for Functional Glycomics(http://www.functionalglycomics.org)の指針に従うものである。脂肪酸組成を漫画構造の下に示す。割り当てられていないピークは、化学的誘導体化人工物および/またはGSLに対応しない構造に対応する。全ての分子イオンは[M+Na]である。グリカン部分の構造割り当ては、単糖類組成、タンデム質量分析および生合成経路の知識に基づくものである。
【0058】
図6A〜Eは、GM3が破骨細胞生成の促進においてRANKLおよびIGF−1と協働することを証明するデータを示す。
【0059】
A.50ng/mlのRANKLおよびGM3(0.05、0.5または5μM)を含む25ng/mlのM−CSFの存在下、48ウエルプレート中で4日間、マウス骨髄細胞を培養した。プラスチックプレート上の培養物を固定し、TRAPについて染色した。TRAP陽性の成熟破骨細胞を計数した。
【0060】
B.IGF−1は破骨細胞生成を促進する。RANKL+M−CSFの他に、指示される濃度でIGF−1も添加した。
【0061】
C.IGF−1は破骨細胞生成の促進においてGM3と協働する。OCを、RANKL+M−CSF(コントロール)、またはこれらの2種のサイトカイン+IGF−1、GM3もしくはIGF−1+GM3の存在下で生じさせた(develop)。
【0062】
D.3日目までM−CSF+RANKLと共にOCを培養した後、0.5%血清培地中で一晩飢餓状態にした。指示された時点でGM3またはGM3+NB−DNJで細胞を処理した後、α−pERK1/2、α−pP38、α−pJNK抗体を用いて免疫ブロットした。メンブレンを剥がし、α−ERK、α−P38、α−JNK抗体で再染色した。GM3は、NB−DNJによって無効化される効果である、EER、P38およびJNKのリン酸化を促進する。
【0063】
E.一晩血清飢餓状態にしたOCを、M−CSF、RANKLまたはGM3のいずれかで処理し、指示された時点でNFATc1に対して免疫ブロッティングを実施した。GM3は、脱リン酸化された(下側のバンド)活性化形態でのNFATc1のその転写において、M−CSFおよびRANKLと同程度に有効である(GM3 is as effective as M-CSF and RANKL NFATc1 into its transcriptional in dephosphorylated (lower band) active form)。
【表1】

【0064】
考察
多発性骨髄種(MM)においては、形質細胞の悪性疾患、悪性細胞およびその微小環境、特に、破骨細胞(OC)を含む自己分泌および傍分泌ネットワークが、疾患の病因において決定的な役割を果たし得る。OC活性化および骨破壊は、この疾患における一般的かつ破壊的な事象である。腫瘍由来のスフィンゴ糖脂質(GSL)は、腫瘍増殖、血管形成、免疫回避および転移を促進することにより腫瘍微小環境を改変することが示されている。OCの発生および活性化におけるMM由来GSLの役割を調査し、OCの発生におけるde novoでのGSL合成の役割を定義した。MALDI−TOF MSおよびMS−MSを用いて(表1および図5を参照されたい)、原発性CD138+骨髄腫細胞(n=3)のGSLレパートリーを決定し、それを非骨髄腫の骨髄細胞(すなわち、CD138+細胞を含まない)(n=3)、および様々な骨髄腫細胞系(n=5)と比較した。GM3は、原発性骨髄腫細胞において優勢なGSLであり、GM2/GM3は、骨髄腫細胞系において優勢なGSLであることがわかった;対照的に、非骨髄腫の骨髄においては、非極性LacCerが優勢なGSLであった。GM3は骨髄腫細胞において優勢なGSLであったので、破骨細胞機能に対する効果を試験した(図6)。外因性GM3は、in vitroでマウス骨髄のOCの成熟を誘発するM−CSFおよびRANKLの能力を相乗的に増強することがわかった。これは、免疫ブロッティングにより示されるように、それぞれ、RANKLに応答するOCの分化および成熟に必要とされる、ERK1/2、p38、JNKリン酸化およびNFATc脱リン酸化、シグナル伝達および転写事象の増加と関連していた。さらに、GM3は、骨髄腫の増殖およびOC活性化を促進することが知られる増殖因子であるIGF−1と相乗的にOCの成熟をさらに増強した(図6を参照されたい)。次に、破骨細胞生成に対するde novoでのGSL生合成の阻害の効果を試験した。グルコースセラミドシンターゼ阻害剤(CGT)であるNB−DNJは、OC分化培養の開始時またはその間のいずれかに添加した場合、用量依存的様式でマウスならびにヒトの単球由来OCのRANKL−およびM−CSF依存的発生を阻害することがわかった(図1)。この効果は、ERK、JNKおよびp38のRANKL−およびM−CSF依存的リン酸化の有意な減少ならびに核中のNFATcの局在化の減少と関連していた(図2)。RANKL−RANK相互作用に応答するOCの発生には、RANKの脂質ラフトへの移動が必要であり、そこでそれは下流のシグナリングにとって決定的なアダプターであるTRAF6ならびにアクチン環形成およびOC吸収活性にとって必要とされるcSrcと相互作用する。スクロース勾配膜分画法およびラフトのマーカーとしてのGM1を用いて、GCS阻害剤が破骨細胞の発生において脂質ラフトの完全性を部分的に崩壊させ、脂質ラフト中でのTRAF6およびSrcのRANKL誘発性局在化を防止することがわかった(図3)。先天性免疫応答を迅速に活性化することが知られる不変的NKT細胞リガンドであるα−ガラクトシルセラミド(αGC)の単回注射により引き起こされるOC活性化を遮断するNB−DNJの能力の分析をin vivoで実施した(図4)。αGCを投与したマウスにおいては、血清C−テロペプチドI型コラーゲン(CTX)レベルは約50%(〜50%)増加するが(p<0.01)、αGCとNB−DNJとを同時に注射したマウス(3日間にわたって毎日、i.p)においては、CTXレベルは基準値まで戻り(p<0.01);NB−DNJのみを投与したマウスにおいては、CTXレベルはビヒクルコントロールと有意に異ならない(p>0.05)ことがわかった(図4を参照されたい)。総合すれば、これらのデータは、OCの分化および活性化の促進におけるGSLの新規役割を証明している。かくして、特定のイミノ糖阻害剤は、腫瘍由来前破骨細胞生成性GSLの生成を防止することにより、ならびにde novoでのOCのGSL合成を阻害しかくしてOC活性化を阻害することにより、MMにおけるOC活性化および骨破壊を減少させるのに有益であり得る。
【0065】
上述のことは特定の好ましい実施形態に関するものであるが、本発明がそれに限定されないことが理解されよう。当業者であれば、開示された実施形態に対して様々な変更を加えることができること、およびそのような変更が本発明の範囲内にあると意図されることに気付くであろう。本明細書に引用される刊行物、特許出願および特許は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破骨細胞生成を阻害し、および/または破骨細胞活性化を減少させる方法であって、
セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤である薬剤の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記薬剤がイミノ糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が、式I:
【化1】


(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アシル、アラルキル、アロイル、アルコキシ基、アラルコキシ基および複素環基から選択され、R、R、R、およびRは、各々独立に、水素、アシル基、アルカノイル基、アロイル基、およびハロアルカノイル基から選択される)
の化合物、その医薬的に許容し得る塩またはプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
、R、R、およびRが各々水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がC〜C24アルキル基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
がC〜C12アルキル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
がC〜Cアルキル基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
がブチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がC14〜C22アルキル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
がC17〜C20アルキル基である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がオクタデシルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が、多発性骨髄腫、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、乳癌、骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチならびに頭部および頸部の扁平上皮癌から選択される状態を有し、前記投与が、前記状態と関連する骨破壊を前記被験体において減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が多発性骨髄腫を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
骨溶解活性および/または骨量低下を減少または防止する方法であって、
セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤およびグルコシダーゼ阻害剤である薬剤の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項16】
前記薬剤がイミノ糖である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が、式I:
【化2】


(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アシル、アラルキル、アロイル、アルコキシ基、アラルコキシ基および複素環基から選択され、R、R、R、およびRは、各々独立に、水素、アシル基、アルカノイル基、アロイル基、およびハロアルカノイル基から選択される)
の化合物、その医薬的に許容し得る塩またはプロドラッグである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
、R、R、およびRが各々水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
がC〜C24アルキル基である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
がC〜C12アルキル基である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
がC〜Cアルキル基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
がブチルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
がC14〜C22アルキル基である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
がC17〜C20アルキル基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
がオクタデシルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体が、多発性骨髄腫、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、乳癌、骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチならびに頭部および頸部の扁平上皮癌から選択される状態を有し、前記骨溶解活性および骨量低下が、前記状態により引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体が多発性骨髄腫を有する、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512945(P2013−512945A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542627(P2012−542627)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002228
【国際公開番号】WO2011/070407
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(511301083)ザ チャンセラー,マスターズ アンド スカラーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ オックスフォード (6)
【Fターム(参考)】