説明

硫酸の存在でニトリルをアミド化する方法

本発明は、反応をテイラー反応器中で実施する、硫酸の存在でニトリルのアミド化によるカルボン酸アミドの製造方法に関する。前記方法は、前記化合物の簡単でかつ低コストの製造を可能にする。更に、本発明は、本発明によるアミド化反応を有する、(メタ)アクリル酸アミド及びアルキル(メタ)アクリラートの製造方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸の存在でニトリルをアミド化する方法に関する。更に、本発明はシアノヒドリンのアミド化を行う、(メタ)アクリル酸アミド及びアルキル(メタ)アクリラートの製造方法を記載する。
【0002】
ニトリルのアミド化によるカルボン酸アミドの製造は、一般に適用された方法である。例えば、この種のアミド化は、ACH法によるメチルメタクリラートの製造の際の重要な中間工程として行われ、その際、大量の硫酸が使用される。
【0003】
先行技術
このようなプロセスの代表例は、例えば米国特許第4,529,816号明細書に記載された方法であり、この方法によりACH−アミド化が約100℃の温度で約1:1.3〜1:1.8のACH:H2SO4のモル比で実施される。このプロセスのための重要なプロセス工程は:a)アミド化;b)変換;及びc)エステル化である。
【0004】
このアミド化において、この反応の主成分としてSIBA=スルホキシ−アルファ−ヒドロキシイソ酪酸アミド−硫酸水素塩及びMASA・H2SO4=メタクリル酸アミド−硫酸水素塩が、過剰量の硫酸中の溶液として得られる。
【0005】
更に、一般的なアミド化溶液中で、HIBA・H2SO4=アルファ−ヒドロキシイソ酪酸アミド−硫酸水素塩もACHに対して<5%の収率で得られる。程度に差はあるが完全なACH転化の際に、約96%〜97%の収率(=記載された中間体の合計)を有するそれ自体選択的なアミド化プロセスが進行する。
【0006】
従って、この工程において副生成物として、既にかなりの量の一酸化炭素、アセトン、アセトンのスルホン化生成物及び多種の中間体とアセトンとの環式縮合生成物が形成される。
【0007】
この変換の目的は、SIBA及びHIBAのできる限り完全なMASAへの転化であり、この転化は硫酸(溶剤としての過剰量の硫酸中)のβ−脱離のもとで進行する。
【0008】
この変換の方法工程において、HIBA、SIBA及びMASA(それぞれ硫酸水素塩として存在する)からなる硫酸性(水不含)溶液がいわゆる変換において140℃〜160℃の高温でかつ約10分以下の短い滞留時間で転化される。
【0009】
この方法の変換混合物は、高い過剰量の硫酸及び溶液中で約30質量%〜35質量%(使用された硫酸過剰量に応じて)の濃度の主成分のMASA・H2SO4の存在により特徴付けられる。
【0010】
米国特許第4,529,816号明細書中に記載されたプロセスは、化学量論比をかなり上回る量の硫酸を使用しなければならないという欠点を有する。硫酸接触装置中で再生されるアンモニウム水素含有及び硫酸含有のプロセス酸から、更にタール状の固形の縮合生成物が分離し、この縮合生成物は前記プロセス酸の十分な供給を妨害し、かつ相当な手間をかけて取り除かなければならない。
【0011】
米国特許第4,529,816号明細書からの上記の方法の場合のこの劇的な収率低下に基づき、ACHを水の存在でアミド化しかつ加水分解し、その際、この反応の最初の工程において少なくとも分子結合中のヒドロキシ官能基を維持するといういくつかの提案が存在する。
【0012】
水の存在での代替のアミド化のためのこの提案は、メタノールの存在で又はメタノールなしで実施されるかどうかに応じて、ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(=HIBSM)が生じるか、又は2−ヒドロキシイソ酪酸(=HIBS)が生じる。
【0013】
ACHから出発して、アルファ−ヒドロキシイソ酪酸のエステル、特にアルファ−ヒドロキシイソ酪酸メチルエステルを製造するための他の代替法は、特開平4−193845号公報に記載されている。特開平4−193845号公報では、ACHを0.8〜1.25当量の硫酸で0.8当量未満の水の存在で60℃以下でまずアミド化し、引き続き(>)55℃より高い温度で1.2当量より多いアルコール、特にメタノールと反応させてHIBSM又は相応するエステルにしている。反応基材に対して安定性の粘度低下する媒体の存在について、ここでは取り上げられていない。
【0014】
この方法の欠点及び問題は、反応の完了時の異常な粘度上昇による工業的反応である。
【0015】
更に、アセトンシアノヒドリン(ACH)から出発するヒドロキシイソ酪酸の製造のために、ニトリル官能基のけん化が鉱酸の存在で実施できることは公知である(US 222,989;参照J. Brit. Chem. Soc. (1930);Chem. Ber. 72 (1939), 800)。
【0016】
このようなプロセスの代表例は例えば特開昭63−61932号公報であり、ここではACHが二段階プロセスでヒドロキシイソ酪酸にけん化される。この場合、ACHをまず水0.2〜1.0mol及び硫酸0.5〜2当量の存在で反応させ、その際に相応するアミド塩が形成される。
【0017】
この工程において既に、良好な収率、短い反応時間及びプロセス酸のわずかな廃棄量を達成するために必要である低い水濃度及び硫酸濃度の使用の際に、特に反応時間の完了時に反応バッチの高い粘度によるアミド化混合物の撹拌性を伴う大きな問題が生じる。
【0018】
低い粘度を保証するために水のモル量を高める場合、前記反応は劇的に遅くなり、副反応、特にACHから出発物質のアセトンと青酸とへのフラグメンテーションが生じ、これらはこの反応条件下で更に反応して副生成物になる。
【0019】
温度を高める場合でも、特開昭63−61932号公報の規定によると、反応混合物の粘度を制御でき、相応する反応バッチは低下した粘度により撹拌可能となるが、ここでは穏和な温度ですでに副反応が劇的に増加し、このことが最終的に平凡な収率に現れる(比較例参照)。
【0020】
選択的反応実施を保証する低い温度<50℃で作業する場合、この反応時間の完了時に、反応条件下で難溶性のアミド塩の濃度が上昇することにより、まず撹拌が困難な懸濁液が形成され、最終的に反応バッチの完全な固化が生じる。
【0021】
特開昭63−61932号公報の第2段階では、水をアミド化溶液に添加し、前記アミド化温度よりも高めた温度で加水分解させ、その際、アミド化の後に形成されたアミド塩から硫酸水素アンモニウムの遊離下にヒドロキシイソ酪酸を生じさせる。
【0022】
工業プロセスの経済性について重要なのは、反応中での目的生成物HIBSの選択的製造の他に、反応基材からの単離又は残留するプロセス酸からのHIBSの分離でもある。
【0023】
特開昭57−131736号公報の、アルファ−オキシイソ酪酸(=HIBS)を単離する方法では、アセトンシアノヒドリン、硫酸及び水の間の反応の後に加水分解による分解により得られたアルファ−ヒドロキシイソ酪酸及び酸性硫酸水素アンモニウムを含む反応溶液を抽出剤で処理し、その際、前記ヒドロキシイソ酪酸を前記抽出剤中に移行させ、前記酸性硫酸アンモニウムを水相中に残すことにより、前記問題を扱っている。
【0024】
この方法により、有機抽出相中へのHIBSの抽出度を高めるために、前記抽出の前に反応媒体中でなお遊離硫酸を、アルカリ性媒体で処理することにより中和する。
【0025】
この必要な中和は、アミン性又は鉱物性の塩基に関するかなりの超過出費を伴い、ひいては環境的及び経済的に処分することができないかなりの廃棄量の相応する塩が生じる。
【0026】
更に、文献DE 10 2004 006 826は、シアノヒドリンから出発するメタクリル酸及び相応するエステルの製造方法を記載する。
【0027】
前記文献によると、アセトンシアノヒドリンを80℃より低い温度で最大1.5当量の硫酸と、0.05〜1.0当量の水の存在で、反応条件下で不活性の極性溶剤の存在で反応させて、不活性極性溶剤中の相応するアミド硫酸の良好に撹拌可能な溶液を生じさせる。引き続き、こうして得られた混合物に水を添加し、不活性溶剤を分離する。
【0028】
引き続き、ヒドロキシイソ酪酸を、適当な抽出剤を用いた抽出により硫酸水素アンモニウム水溶液から分離する。
【0029】
このDE 10 2004 006 826に記載された方法は、良好な収率を生じさせる。
【0030】
もちろん多数の段階を必要とし、これは全体のプロセスの経済性に不利な影響を及ぼす。
【0031】
課題及び解決手段
先行技術を考慮して、本発明の課題は、生成物を極めて経済的に得ることができる、硫酸の存在でニトリルのアミド化によるカルボン酸アミドの製造方法を提供することであった。特に、この方法はできる限りわずかな過剰量の硫酸を用いて実施できることが好ましい。更に、従って本発明の課題は、多量の不活性溶剤又は水を添加せずに実施することができる前記種類の方法を提供することであった。水又は他の溶剤は利用しない。更に、得られたカルボン酸アミドは極めて少量の副生成物を含有するだけであるのが好ましい。
【0032】
本発明の他の課題は、カルボン酸アミドを極めて選択的に得ることができる方法を提供することであった。
【0033】
更に、本発明の課題は、簡単でかつ低コストで実施することができる、硫酸の存在でニトリルのアミド化によるカルボン酸アミドの製造方法を提供することであった。この場合、生成物を、できる限り高い収率でかつ、全体としてみて低いエネルギー消費量で得られることが好ましい。
【0034】
前記課題並びに他の明確に挙げられていなが、これまでに議論された関連から容易に導き出せるか又は推測できる課題は、請求項1記載の全ての特徴を有する方法により解決される。本発明による方法の有利な実施態様は、請求項1を引用する従属形式請求項において保護されている。
【0035】
本発明の主題は、従って、反応をテイラー反応器(Taylorreaktor)中で実施することを特徴とする、硫酸の存在でニトリルのアミド化によるカルボン酸アミドの製造方法である。
【0036】
それにより、予想外にも、生成物が極めて経済的に得られるカルボン酸アミドの製造方法を提供することに成功した。意外にも、得られた生成物は極めて少量の副生成物が含まれる。更に、本発明による方法は、特にカルボン酸アミドの選択的製造を可能にする。
【0037】
更に、本発明による方法は簡単にかつ低コストで実施することができ、生成物は高い収率で、かつ全体としてみて低いエネルギー消費量で得ることができる。
【0038】
更に、本発明による方法によって、特に生産装置の経済的運転方法を達成でき、生産条件、特に反応温度及び反応が行われるのに必要な圧力の手間のかかる調節なしに、それぞれ所望の目標量に生産量を簡単にかつ低コストで適合させることを達成でき、さらなる意外な利点を達成できる。
【0039】
本発明による手段により、意外にも、テイラー反応器中で所定の値への迅速な熱調整と同時に出発混合物の特に簡単でかつ迅速な均質化を達成することに成功した。
【0040】
本発明による方法は、カルボン酸アミドの効率的な製造を可能にする。この場合、特に、一般に式−CNの基を有するニトリルが使用される。カルボン酸アミドは、少なくとも1つの式−CONH2の基を有する。前記化合物は当該専門分野において公知であり、例えばRoempp Chemie Lexikon CD-ROM第2版に記載されている。
【0041】
出発材料として、特に脂肪族又は環式脂肪族のニトリル、飽和又は不飽和ノニトリル並びに芳香族及び複素環式ニトリルが使用できる。出発材料として使用されるニトリルは、1つ、2つ又はそれ以上のニトリル基を有することができる。更に、芳香族基又は脂肪族基中にヘテロ原子、特にハロゲン原子、例えば塩素、臭素、フッ素、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子を有するニトリルを使用することもできる。有利に、特に適したニトリルは、2〜100個、有利に3〜20個、特に有利に3〜5個の炭素原子を有する。
【0042】
それぞれ飽和又は不飽和の炭化水素基を有する脂肪族ニトリルには、特に、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、カプロニトリル及び他の飽和モノニトリル;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル及び他の飽和ジニトリル;α−アミノプロピオニトリル、α−アミノメチルチオブチロニトリル、α−アミノブチロニトリル、アミノアセトニトリル及び他のα−アミノニトリル;シアノ酢酸及びそれぞれ1つのカルボキシル基を有する他のニトリル;アミノ−3−プロピオニトリル及び他のs−アミノニトリル;アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アリルシアニド、クロトンニトリル又は他の不飽和ニトリル並びにシクロペンタンカルボニトリル及びシクロヘキサンカルボニトリル又は他の非環式ニトリルが属する。
【0043】
芳香族ニトリルには、特に、ベンゾニトリル、o−,m−及びp−クロロベンゾニトリル、o−,m−及びp−フルオロベンゾニトリル、o−,m−及びp−ニトロベンゾニトリル、p−アミノベンゾニトリル、4−シアノフェノール、o−,m−及びp−トルニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、アニソニトリル、a−ナフトニトリル、β−ナフトニトリル及び他の芳香族モノニトリル:フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル及び他の芳香族ジニトリル;ベンジルシアニド、シンナモイルニトリル、フェニルアセトニトリル、マンデロニトリル、p−ヒドロキシフェニルアセトニトリル、p−ヒドロキシフェニルプロピオニトリル、p−メトキシフェニルアセトニトリル及びそれぞれ1つのアラルキル基を有する他のニトリルが属する。
【0044】
複素環式ニトリルには、特に、5又は6員環を有しかつヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなるグループから選択される少なくとも1つの原子を有するそれぞれ少なくとも1つの複素環式基を有するニトリル化合物、例えば2−チオフェンカルボニトリル、2−フロニトリル及びヘテロ原子としてそれぞれ硫黄原子又は酸素原子を有する他のニトリル;2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、シアノピラジン及びヘテロ原子としてそれぞれ窒素原子を有する他のニトリル;5−シアノインドール及び他の縮合されたヘテロサイクレン;シアノピペリジン、シアノピペラジン及び他の水素化された複素環式ニトリル並びに縮合された複素環式ニトリルが属する。
【0045】
特に有利なニトリルには、特にα−ヒドロキシニトリル(シアノヒドリン)、例えば例えばヒドロキシアセトニトリル、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ−ブチロニトリル、α−ヒドロキシ−γ−メチルチオブチロニトリル(4−メチルチオ−2−ヒドロキシブチロニトリル)、2−ヒドロキシプロピオニトリル(ラクトニトリル)及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニトリル(アセトンシアノヒドリン)が属し、その際、アセトシアノヒドリンが特に有利である。
【0046】
特に重要なのは、殊にニトリル、特にアセトンシアノヒドリン(ACH)を硫酸の過剰量で反応させる方法である。硫酸対ニトリルのモル比は、有利に1.2:1〜3:1の範囲内、特に有利に1.2:1〜1.8:1の範囲内であり、その際、前記反応は複数の工程で実施することもできる。この場合、前記モル比は個々の工程で変えることができる。例えばループ型反応器中での通常の反応と比べて、前記反応は、硫酸の著しく低い含有量で実施することができる。それにより、廃棄物(分解酸)は低減されるので、前記反応はより経済的でかつより環境に優しく行うことができる。
【0047】
この記載は硫酸100質量%に関し、その際、二硫酸(H227)を含むこともできる。少量の水が同様に前記反応混合物中に存在していてもよく、その際、しかしながら、95質量%の、特に有利に98質量%の、更に特に有利に100%(発煙硫酸)の硫酸の最低含有量を有する濃縮された硫酸を使用する方法が有利である。
【0048】
更に、前記反応混合物は、通常の添加物、例えばフェノチアジン又は他の安定剤を含有することができる。
【0049】
テイラー渦流の条件下での材料の反応に用いられるテイラー反応器は公知である。前記テイラー反応器は、2つの同軸の同心に配置された円筒からなり、前記円筒は一般に外側が固定され、内側が回転する。反応室として、前記円筒の間隙によって形成される空間が用いられる。内側円筒の角速度ωが増大すると共に一連の多様な流動形が生じ、前記流動形は無次元数の、いわゆるテイラー数Taによって特徴付けられる。前記テイラー数は、撹拌機の角速度に対して更に、次の式に従って、前記間隙中での流体の動粘度ν及び幾何学的パラメータの内側円筒の外半径ri、外側円筒の内半径ra及び両方の半径の差である間隙幅dにも依存する:
【数1】

【0050】
式中、dは間隙幅(d=ra−ri
aは内側円筒の外半径
iは外側円筒の内半径
νは間隙中での流体の動粘度
ωは撹拌機(内側円筒)の角速度s(-1)
【0051】
更に、軸方向のレイノルズ数Reaxは、テイラー反応器中での流動関係を表すために用いることができ、前記レイノルズ数は同様に無次元数である。前記軸方向のレイノルズ数Reaxは、次式から算出される:
【数2】

【0052】
式中、dは間隙幅(d=ra−ri
aは内側円筒の外半径
iは外側円筒の内半径
νは間隙中での流体の動粘度
ax:軸方向の流動速度
【0053】
本発明による方法の特別な実施態様の場合には、前記アミド化は10〜3000の範囲内の、特に有利に20〜2500の範囲内の、更に特に有利に50〜2000の範囲内のテイラー数で実施することができる。軸方向のレイノルズ数は、アミド化反応の場合に例えば0.1〜100の範囲内、特に有利に1〜50の範囲内にあることができる。
【0054】
2つの同軸で同心に配置された円筒を有するテイラー反応器の他に、例えば外側の反応壁とその中に存在する同心に又は偏心に配置されたローターとを有する相応する反応器(これは例えばDE 199 60 389又はWO 2004/039491に記載されている)も使用することができる。
【0055】
この反応器の場合には、前述の値は相応するテイラー数及び軸方向のレイノルズ数と見積もられ、その際前記テイラー反応器は両方の方向に貫流することができる。
【0056】
この反応は、加圧又は減圧で行うことができる。本発明の特に有利な実施態様の場合に、前記アミド化は200mbar〜5barの範囲内、特に有利に500mbar〜2barの範囲内の圧力で実施することができる。
【0057】
この反応温度は、特に圧力に依存して、同様に広い範囲にあることができる。本発明の有利な実施態様の場合に、前記アミド化は、有利に50℃〜150℃の範囲内、特に有利に60℃〜140℃の範囲内、更に特に有利に80℃〜100℃の範囲内の温度で行われる。
【0058】
本発明による方法は、連続的に実施することができる。有利に、滞留時間は、一般に50秒〜5時間、有利に5分〜3時間、更に特に有利に15分〜2時間の範囲内であることができる。この場合、前記滞留時間は、反応器中の多様な箇所での供給及び排出により変えることができる。本発明のこの実施態様は、圧力及び温度を手間をかけて変化させる必要なく、生産量を所定の注文量に特に簡単でかつ有利に適合することを可能にする。
【0059】
意外にも、本発明の手段により、高い粘度を有する反応混合物を用いても実施することができる方法を提供することに成功した。反応混合物の粘度は、有利に5〜1000mPa・s、特に有利に10〜500mPa・s及び更に特に有利に20〜200mPa・sであることができる。
【0060】
特にシアノヒドリン、例えばアセトンシアノヒドリンをアミド化できることが特に有利であり、その際、有利にスルホキシ−アルファ−ヒドロキシイソ酪酸アミド−硫酸水素塩(SIBA)及び/又はアルファ−ヒドロキシイソ酪酸アミド(HIBA)が得られ、これは特に(メタ)アクリル酸アミドの製造のために使用することができる。従って、本発明は、本発明によるテイラー反応器中でのアミド化を含む、(メタ)アクリル酸アミドの製造方法も提供する。
【0061】
特別な利点は、意外にも、ヒドロキシカルボン酸アミドの(メタ)アクリル酸アミドへの反応をテイラー反応器中で実施することにより達成することができる。有利に、脱水は、例えば100〜10000の範囲内の、特に有利に500〜5000の範囲内でのテイラー数で実施することができる。ヒドロキシカルボン酸アミドの反応を実施する軸方向のレイノルズ数(axiale Reynoldszahl)は、有利に10〜500の範囲内、特に有利に15〜300の範囲内である。
【0062】
ヒドロキシカルボン酸アミドの脱水を実施する圧力は、それ自体重要ではない。従って、この反応は、加圧又は減圧で実施することができる。一般に、前記脱水は、200mbar〜5barの範囲内、特に有利に500mbar〜2barの範囲内の圧力で行うことができる。
【0063】
この反応温度は、特に圧力に依存して、同様に広い範囲にあることができる。本発明の有利な実施態様の場合に、前記脱水は、有利に50℃〜220℃の範囲内、特に有利に70℃〜200℃の範囲内、更に特に有利に120℃〜180℃の範囲内の温度で行われる。
【0064】
本発明による脱水法は、連続的に実施することができる。有利に、滞留時間は、一般に30秒〜3時間の範囲内、有利に1分〜2時間の範囲内、特に有利に10〜60分の範囲内にあることができる。
【0065】
テイラー反応器中での脱水法の実施は、意外な利点を可能にする。反応器中での多様な箇所での供給及び/又は排出により、圧力及び温度の手間のかかる最適化を必要とせずに、前記滞留時間を特に簡単に反応器容量によって変化させることができる。それにより、生成物量を、所定の目標量に簡単に適合することが可能である。更に、任意にスイッチオン又はスイッチオフされる多様な加熱帯域を選択することができる。このバリエーションにより収率を高める方法が生じる。
【0066】
前述の化合物は、アルキル(メタ)アクリラートの製造のための中間体として多方面で利用される。従って、アルキル(メタ)アクリラートを製造する前述の方法工程が利用できるため、本発明はシアノヒドリンの本発明によるアミド化を有するアルキル(メタ)アクリラートの製造方法を提供する。
【0067】
前記反応は、特にUS 4,529,816記載されており、その際、前記カルボン酸アミドは、有利に1〜10個の炭素原子、特に有利に1〜5個の炭素原子を有するアルコールと反応させる。有利なアルコールは、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、特にn−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ノナノール及びデカノールである。
【0068】
特に有利に、アルコールとして、メタノール及び/又はエタノールが使用され、その際、更にメタノールが特に有利である。カルボン酸エステルを得るためのカルボン酸アミドとアルコールとの反応は一般に公知である。有利にこの反応は硫酸の存在で行われる。
【0069】
α−ヒドロキシカルボン酸アミド及び/又はメタクリル酸アミド対アルコールのモル比、例えばα−ヒドロキシイソ酪酸アミド及び/又はメタクリル酸アミド対メタノールのモル比は重要ではなく、これは有利に3:1〜1:20の範囲内、特に有利に1:10〜1:1の範囲内にある。
【0070】
この反応温度は同様に広い範囲内にあることができ、その際、反応速度は温度の増加と共に一般に増大する。上限の温度は、一般に使用されたアルコールの沸点から生じる。
【0071】
有利に、反応温度は40℃〜200℃、特に有利に130℃〜180℃の範囲内にある。この反応は、反応温度に応じて、減圧又は加圧で実施することができる。有利にこの反応は、200mbar〜5barの圧力範囲で、特に有利に500mbar〜2barの範囲内で実施される。
【0072】
特別な実施態様の場合に、前記の反応、特に(メタ)アクリルアミドのアルキル(メタ)アクリラートへの反応は重合阻害剤の存在で実施することができる。この化合物、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル又はジ−tert−ブチルピロカテキン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、メチレンブルー又は立体障害フェノールは、この専門分野において十分に公知である。前記化合物は、単独で又は混合物の形で使用することができ、一般に市場で入手可能である。安定剤の作用は、大抵は、重合の際に生じるフリーラジカルのためのラジカル捕捉剤として作用することにある。
【0073】
さらなる詳細について、一般の専門文献、特にRoempp-Lexikon Chemie; 編者: J. Falbe, M. Regitz; Stuttgart, New York; 第10版(1996);見出語「Antioxidantien(酸化防止剤)」及びそこに引用された文献が参照される。全体の反応混合物の質量に関して、単独で又は混合物としての前記阻害剤の割合は、一般に0.01〜0.5%(wt/wt)であることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸の存在でニトリルをアミド化することによるカルボン酸アミドの製造方法において、前記反応をテイラー反応器中で実施することを特徴とする、カルボン酸アミドの製造方法。
【請求項2】
前記ニトリルはシアノヒドリンであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シアノヒドリンはアセトンシアノヒドリンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記方法を100〜10000の範囲内のテイラー数で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法を500〜5000の範囲内のテイラー数で実施することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法を0.1〜100の範囲内の軸方向のレイノルズ数で実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
硫酸対ニトリルのモル比が1.2:1〜3:1の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法を50℃〜150℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法を連続的に実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
滞留時間は5分〜3時間の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
反応混合物の粘度は、5mPa・s〜1000mPa・sの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
(メタ)アクリル酸アミドの製造方法において、前記方法は請求項1から11までのいずれか1項記載の方法によるシアノヒドリンのアミド化を有することを特徴とする、(メタ)アクリル酸アミドの製造方法。
【請求項13】
カルボン酸アミドの(メタ)アクリル酸アミドへの反応をテイラー反応器中で実施することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法を100〜10000の範囲内のテイラー数で実施することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法を10〜500の範囲内の軸方向のレイノルズ数で実施することを特徴とする、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
スルホキシ−アルファ−ヒドロキシイソ酪酸アミド−硫酸水素塩(SIBA)をメタクリル酸アミドに反応させることを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記方法を70℃〜180℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記方法を連続的に実施することを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
滞留時間は1分〜2時間の範囲内にあることを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
アルキル(メタ)アクリラートの製造方法において、前記方法は、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法によるシアノヒドリンのアミド化を有するか又は請求項12から19までのいずれか1項記載の(メタ)アクリル酸アミドの製造を有することを特徴とする、アルキル(メタ)アクリラートの製造方法。
【請求項21】
硫酸の存在でメタクリルアミドを1〜5個の炭素原子を有するアルコールと反応させることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
メチルメタクリラートを製造することを特徴とする、請求項20又は21記載の方法。

【公表番号】特表2011−500618(P2011−500618A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529311(P2010−529311)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060731
【国際公開番号】WO2009/053128
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】