説明

硫黄に対する耐性を有するアルミナ触媒支持体

本発明は改善された触媒支持体に関し、またそれから得られる内燃機関、特にディーゼルエンジンからの排出生成物を処理するのに適した触媒に関する。本発明の支持体は、高度の多孔度および表面積をもったアルミナの芯の粒子を含んで成る構造物であって、該構造物は該アルミナの芯の表面上にクラッディングされた形で約1〜約8重量%のシリカを含んでいる。得られる支持体は硫黄に対する許容効率(η)が少なくとも1000μg/mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改善された触媒支持体に関し、またまたそれから得られる内燃機関、特にディーゼルエンジンからの排出生成物を処理するのに適した触媒に関する。本発明の支持体は、内燃機関の排出生成物中に見出される硫黄および硫黄化合物に伴う排ガス変換触媒に対する劣化効果を抑制する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出生成物は人間、動物並びに植物の生活に対し健康上危険であることが知られている。汚染物質は一般に燃焼しなかった炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素、並びに残留している硫黄および硫黄化合物である。
【0003】
排出生成物用の触媒が自動車に対する用途に適しているためには、ライト・オフ(light−off)性能、有効性、長期間に亙る活性、機械的安定性、並びにコスト効果に関して厳しい要求に応えなければならない。例えば排ガス用触媒は、始動時の条件において最初に遭遇するような低い操作温度で活性をもち、同時に通常の操作時に遭遇するような種々の温度および空間速度において汚染物質に対し高い変換率をもつことができなければならない。
【0004】
従来未燃焼の炭化水素、一酸化炭素、並びに窒素酸化物から成る汚染物質は、高い割合の汚染物質を二酸化炭素、水(水蒸気)および窒素から成る危険性の少ない生成物に変換する多機能の貴金属触媒と接触させることによりうまく処理されてきた。しかし燃料、従って排出生成物中に存在する硫黄および硫黄化合物は貴金属を被毒させ、その触媒としての効果および寿命を減少させることが知られている。最近、内燃機関に使用される燃料は硫黄および硫黄含有化合物の含有量に関し厳密な規制の下に置かれるようになった。しかしこれらの材料を、特に中沸点成分の石油原料(C10以上の炭化水素)から完全に除去することは、このような化合物の性質および範囲が複雑なため達成することが困難である。このように、硫黄材料は内燃機関の燃料、特にディーゼルエンジンの燃料の中に存在している。
【0005】
有害な汚染物質を無害なガスに変換するのに使用される「触媒コンバーター」は通常三つの成分、即ち触媒活性をもった金属、活性金属を分散させる支持体、および支持体を被覆する、即ちウオッシュコートを行う基質から成っている。
【0006】
一酸化炭素、窒素酸化物、および未燃焼の炭化水素のような汚染物質を遭遇する種々の条件下において効果的に変換するのに有用な触媒金属は貴金属、通常は白金族の金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物である。これらの貴金属触媒は特許文献1に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。
【0007】
貴金属は通常表面積の大きな酸化物、例えば酸化アルミニウム(即ちアルミナ)の上に支持される。表面積の大きなアルミナはセラミックスまたは金属の基質、例えば蜂の巣状の一体成形体(monolith)または針金の網、あるいは同様な構造物の形の基質の上に被覆、即ち「ウォッシュコート」される。また支持材料を一体成形体の上にウォッシュコートした後、貴金属を支持体の上に被覆することもできる。
【0008】
放出物抑制(emission control)用の触媒に対しては、入手が容易で製造が容易であり、熱的特性および貴金属の触媒活性を促進するための能力をもっているために、通常種々の形のアルミナが高表面積の支持体材料として使用される。しかしアル
ミナ支持体の欠点はエンジンの放出物流の中に見出だされるような硫黄および/または硫黄化合物を吸着することである。このように吸着された場合、硫黄化合物は貴金属触媒、特に白金金属を用いてつくられた触媒を被毒させ、触媒系の活性および有効寿命を低下させる。
【0009】
アルミナとは対照的に、シリカ支持体は硫黄および硫黄化合物と相互作用をしないことが知られている。従って、高表面積支持材料としてシリカを用いてつくられた貴金属触媒は硫黄および硫黄化合物による被毒を示さない。しかしシリカは効果的な放出物抑制触媒の支持体をつくるのに必要な水熱安定性をもたず、従ってこのような用途には望ましくない触媒支持体材料である。
【0010】
シリカに付随する劣った水熱特性を克服する試みでは、標準的な含浸または共沈法によりシリカがアルミナ支持体に加えられた(特許文献2参照)。両方の場合、得られた支持体は露出したアルミナをかなりの量で保持していたから、これらの支持体は依然とし硫黄による高度な被毒を受け易い。さらに被覆されたシリカはアルミナの細孔の中に沈澱する傾向があり、そのため多孔度が減少して貴金属が付着し得る表面積が減少する。
【0011】
特許文献3には、シリカの水溶液またはゾルをアルミナ支持体材料に被覆することにより得られるシリカで含浸したアルミナ支持体が記載されている。この材料は良好な摩耗耐性を示すが、アルミナは露出したままであり、放出物生成物の中の硫黄によって被毒し易い。通常の含浸法ではシリカは沈澱または凝集し(分離したシリカの粒子の均一な造核作用が有利となる傾向をもっているために)、アルミナの表面には不連続でパッチに似た膜厚が不均一な皮膜が生じることが知られている。
【0012】
特許文献4にはビーズ、球、または押出し物の形をしたアルミナ支持体が記載されており、これを先ず粒子の表面でアルミナを可溶化し得る試薬と接触させる。このようにして処理されたアルミナ構造物を次にシリカの溶液で含浸して混合したシリカ−アルミナ表面をつくる。得られた支持体は水素化脱硫(hydrodesulphurization)触媒として増強された活性をもっていると記載されている。
【0013】
同様に特許文献5には、材料の強度を増強するためのシリカの皮膜を有するアルミナ支持体から成る硫黄吸着体が記載されている。この文献には、アルミナを露出させて二酸化硫黄を吸着させるためには5%より多くのシリカを使用すべきではないことが記載されている。即ちこの記述は露出されたアルミナの表面が大量に保持されていることを示している。
【0014】
別法として、シリカおよびアルミナ前駆体を共沈させ混合支持体生成物をつくることにより支持体材料がつくられる。
【0015】
特許文献6には、シリカ−アルミナを共沈させた生成物であって、さらに石油の水素化分解用のY型ゼオライトを含んでいる生成物が記載されている。このシリカ−アルミナ生成物はアルミナで支持されたゼオライト触媒に比べ増強された摩耗耐性をもっている。このような生成物は、硫黄含有材料と相互作用し得る露出したアルミナを大量に含んでいる。
【0016】
特許文献7には、シリカが支持体の75〜90重量%をなす共沈させたシリカ−アルミナ支持体を用いた貴金属触媒が記載されている。これは、生じた支持体全体のシリカ含量が多いため、硫黄の存在に対し大きな許容性をもっていると述べられている。しかしこのような材料は水熱特性が劣っているであろう。
【0017】
特許文献8には、シリカ−アルミナ共沈ゲルが分散しているアルミナゲルからつくられたシリカ−アルミナ支持体が記載されている。次いでイオン交換法により貴金属を加える。
【0018】
特許文献7および8は両方とも硫黄に対する耐性が大きい支持体を提供しているが、これらの材料は劣った水熱特性を示している。
【0019】
特許文献9には、含浸あるいは気相堆積法のいずれかによりシリカで処理した表面をもつアルミナ支持体が記載されている。含浸は先ず珪素化合物の溶液をつくり、この溶液をアルミナ支持体と接触させ、次いで高温においてこの支持体を空気または水で処理してこれを酸化物に変えることにより行われる。
【0020】
一酸化炭素および炭化水素材料を二酸化炭素および水に変える際の貴金属の活性を増強し、同時に硫黄および硫黄化合物の存在に対する高い耐性を示すことができるアルミナの触媒支持体をつくることが望ましい。
【0021】
さらに、支持体の表面上に少量のシリカがクラッディングされ、同時に硫黄および硫黄化合物の存在に対する耐性について高い効率を示すアルミナ触媒の支持体をつくることが望まれている。本発明によるシリカでクラッディングされたアルミナの支持体を用いてつくられた触媒は、内燃機関、特にディーゼルエンジンの有害な排出生成物を環境に優しい生成物に変えることができる。このような触媒は、硫黄化合物の存在を許容する効率が増強されているために、延長された寿命期間に亙って高い活性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】ドイツ特許DE05 38 30 318号明細書。
【特許文献2】米国特許第2,804,433号明細書。
【特許文献3】米国特許第3,925,253号明細書。
【特許文献4】米国特許第3,923,692号明細書。
【特許文献5】RE 29,771号。
【特許文献6】米国特許第6,399,530号明細書。
【特許文献7】米国特許第3,269,939号明細書。
【特許文献8】米国特許第3,703,461号明細書。
【特許文献9】米国特許第6,288,007号明細書。
【発明の概要】
【0023】
本発明は貴金属触媒をつくるための支持体として適したシリカでクラッディングされた高表面積のアルミナに関する。得られた触媒は硫黄による被毒に対して抵抗性を示し、従って内燃機関の放出物の変換についての用途に有用である。特定的に述べれば本発明は、得られる支持体に関し1〜8重量%の少量の、アルミナの表面上の極めて薄いシリカクラッディングの形のシリカを有する高表面積のアルミナ粒子に関する。この場合得られるシリカでクラッディングされた高表面積のアルミナ粒子は、シリカの質量分率当たり少なくとも1000μg/mの増強された硫黄耐性に関する効率を示す。従って本発明の生成物は、通常の含浸法または共沈法によってつくられた同じ重量%のシリカを含むアルミナ支持体に比べ、優れた性能と有効寿命を有する触媒を得る上で助けとなる。
【0024】
本発明によれば、貴金属触媒の用途に対し極めて望ましい支持体が提供される。得られる触媒生成物は内燃機関、特にディーゼルエンジンの有害な排出生成物を処理する活性が増強されており、同時に硫黄および硫黄化合物に対する耐性が増強されているために、活性をもった期間が延びている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は貴金属触媒をつくるための改良されたアルミナ支持体に関する。下記に詳細に説明する支持体生成物は、内燃機関等の放出生成物流の中に通常見出だされる硫黄が存在することに対する耐性が増加した排ガス触媒をつくるのに有用であり、従って従来法でつくられた支持体を使用した触媒に比べ得られた触媒の貴金属の被毒が少ない。
【0026】
本発明の支持体は一般にシリカのクラッディングを有するアルミナを含んで成る粒子(particulate)の形をしている。
【0027】
下記の説明および添付特許請求の範囲に使用されている下記の言葉は下記の定義を有している:
【0028】
「支持体」という言葉は活性をもった触媒材料が適用されている材料を意味する。本発明においては支持体は、表面上に触媒作用を及ぼす量の貴金属を沈澱させ得る高表面積のアルミナ材料を含んで成っている。
【0029】
「粒子」という言葉は、粉末、ビーズ、押出し物等の形の成形された粒状物を意味する。本明細書においてはこれは芯、支持物、並びに得られる支持された貴金属生成物を意味するのに使用される。
【0030】
「アルミナ」という言葉は任意の形の単独の、または少量の他の金属および/または金属酸化物との混合物としての酸化アルミニウムを意味する。
【0031】
「皮膜(coating)」と言う言葉は芯の粒状物の上の比較的厚い、不連続的で不規則な厚さのカバレッジ(coverage)の形をした表面被覆(covering)を意味する。皮膜は当業界に公知の通常の含浸法または共沈法によってつくられ、比較的厚く、不規則な形をしている。
【0032】
「クラッディング(cladding)」という言葉はアルミナの芯の粒子の上にある実質的に均一な厚さをもった実質的に連続的なまたは不連続的なカバレッジの形をした表面被覆を意味する。クラッディングがアルミナの芯の表面上で部分的なまたは不連続的な形をしている場合、部分的なクラッディングは極めて薄い(例えば分子的な厚さの)シリカ(この場合)の沈澱層を構成し、シリカの単位量当たり比較的高い表面カバレッジをつくっている。従ってクラッディングされた支持体は通常の方法で被覆した生成物に比べ、沈澱した材料の単位量当たり明らかに効率の高いカバレッジを与える。
【0033】
「芯」という言葉は本発明によってクラッディングする前のアルミナ粒子を意味する。従来法においてはこのようなクラッディングされていないアルミナ粒子材料が支持体材料として使われてきた。アルミナはさらに他の金属、および金属酸化物および非金属酸化物等を含んでいることができる。
【0034】
「吸着された」または「吸着」という言葉は、イオン性、共有結合性または混合性であることができる化学反応かまたは物理的な力のいずれかにより、吸着(ガス、液体または溶解した物質を吸着剤(例えばアルミナ)の表面上に保持または濃縮する能力)、吸収(ガス、液体または溶解した物質を吸収剤(例えばアルミナ)の全体に亙って保持または濃縮する能力)を行う現象を意味する。
【0035】
「硫黄性材料」という言葉は硫黄、硫黄酸化物、および硫黄原子を含む化合物を意味する。
【0036】
本発明の改善された支持物は、下記に詳細に説明するように、表面にシリカのクラッディシングが硫黄性材料の吸着に関する優れて有効な耐性を示すのに十分な量と形態で装着された高表面積のアルミナ粒子を含んで成っている。
【0037】
アルミナは意図する特定の用途に望ましい任意の形の酸化アルミニウムから選ぶことができる。公知のようにアルミナまたは酸化アルミニウムには種々の変態があり、通常のものは次のとおりである。
・ γ−アルミナ:約900℃まで安定な形であり、この温度でδ−アルミナ(好適な材料)に変化する。
・ δ−アルミナ:約1000℃まで安定な形であり、この温度でθ−アルミナに変化する。
・ θ−アルミナ:約1100℃まで安定な形であり、この温度でα−アルミナに変化する。
・ アルミニウム一水和物またはベーマイト:水酸化アンモニウムを塩化アルミニウムの水溶液に加えるような種々の経路で製造される。この材料は最初無定形フロックとして沈澱し、これは迅速に結晶性のベーマイトに変化する。別法として硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとの反応によってつくられる。
・ アルミニウム三水和物またはギッブサイト。
・ 他の形の水和した酸化アルミニウム、例えばバイヤライト等。
・ 他の形のアルミナ、例えばη−アルミナ。
【0038】
本発明の支持体をつくるのに芯として使用される好適なアルミナはδ−アルミナ、γ−アルミナまたはこれらの混合物から選ばれる。
【0039】
アルミナは通常のドーピング剤、例えば遷移金属および金属酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、希土類の酸化物、シリカおよびそれらの混合物でドーピングすることができる。このようなドーピング剤の例には希土類金属およびそれらの酸化物(特にランタナ)、マグネシア、カルシア、酸化ニッケル、酸化亜鉛、シリカ等が含まれ、ランタナが好適なドーピング剤である。ドーピング剤は、使用される場合、通常少量で、例えば高表面積のアルミナ粒子の芯材料の0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で(本発明によりクラッディングを装着する前において)存在している。
【0040】
ドーピング剤は当業界の専門家には公知のように特定の性質、例えば水熱安定性、摩耗強度、触媒活性促進性等を賦与するために通常アルミナ粒子の中に存在している。
【0041】
高表面積のアルミナ粒子は平均粒径が約1〜200μm、好ましくは10〜100μmの粉末の形(好適)か、平均粒径が1〜10mmのビーズの形であることができる。別法として、アルミナの粒子はペレットまたは押出し物(例えば円筒形)の形をしていることができる。大きさおよび粒子の形は意図する特定の用途によって決定される。
【0042】
すべての場合、アルミナ粒子から成る支持体の基部(芯)は少なくとも約20m/g、例えば約20〜400m/g、好ましくは約75〜350m/g、さらに好ましくは約100〜250m/gの高(BET)表面積をもっていなければならない。支持体の芯のアルミナ粒子は少なくとも約0.2cc/g、例えば0.2〜2cc/g、好ましくは0.5〜1.2cc/gの細孔容積と、50〜1000Å、好ましくは100〜300Åの範囲の平均の細孔直径をもっている。このような高表面積の粒子は、貴金属触媒が沈澱し容易に放出物流と接触して有害な生成物を無害な生成物に変えるのに十分な表面積を与える。
【0043】
粒子状のアルミニウム水和物は通常カ焼して残留した水を除去し、アルミニウムのヒドロキシル基をそれに対応した酸化物に変える(但し残留したヒドロキシル基はアルミナの
構造の一部として、特に粒子の表面上に残る)。
【0044】
本発明のクラッディングされた支持体生成物に対する芯として適したアルミナ粒子は市販されている。しかし特定の用途に対する粒子の設計の基準(例えば特定のドーピング剤の使用、粒子の細孔容積、等)については公知方法でアルミナ粒子をつくる必要がある。
【0045】
本発明においては、シリカをクラッディングしたアルミナ粒子の材料は、通常の含浸法または共沈法でつくられたシリカ含量を有する同じ支持体に比べ、硫黄に対する耐性が増強された貴金属触媒に対する支持体を提供することが見出だされた。軽い(ガソリン)および中程度の重さ(ディーゼル油)の燃料は供給材料の一部として硫黄および硫黄化合物(例えばチオフェン等)を含んでいることが知られている。硫黄性の材料を除去する努力がなされているが、分子量の大きい燃料生成物流(例えばディーゼル燃料)については除去が次第に困難になる。従って硫黄性の材料は炭化水素燃料、特にディーゼル燃料の中に存在することが知られている。炭化水素燃料を燃焼させるエンジンの放出物流の中に存在する硫黄性材料は、アルミナおよび或る種のドーピング剤によって吸着され、次にはそれが支持体表面上に存在する貴金属を被毒させることが知られている。本発明の低含量のシリカがクラッディングされたアルミナ支持体によって得られる予想外に高い硫黄に対する耐性(吸着の欠如)のために、内燃機関、特にディーゼル燃料エンジンの放出物生成物流を効率的に処理する所望の触媒を経済的につくることができる。本発明のシリカのクラッディングは極めて薄いという特性をもっているため、物質移動が改善されると同時に、細孔表面においてアルミナの芯の多孔度を減少させる架橋が生じることはない。
【0046】
以前から、共沈または含浸の技術のいずれかによりアルミナをシリカと組み合わせ支持体生成物をつくることが示唆されていた。上記に説明したように、これらの方法で得られる一定量のシリカを含んだアルミナ支持体は、本発明のシリカがクラッディングされたアルミナにくらべ遥かに多いレベルで硫黄性材料を吸着できる著しい量の露出したアルミナ表面をなお含んでいる。
【0047】
アルミナおよびシリカの共沈によりシリカが支持物の一部としてつくられている場合、得られる芯の支持体は支持体の本体の中に埋め込まれその一部をなすシリカの部分を有している。このように使用されたシリカの部分だけが支持体の表面の部分をつくっている。
【0048】
通常の含浸法によりシリカが支持体の一部としてつくられている場合、シリカはアルミナの芯の粒子の表面に沈澱する。この場合シリカは比較的厚い、パッチに似たパターンをもつ不連続なカバレッジを与え、その結果得られた生成物に関してシリカ対アルミナ表面の比は小さくなる。
【0049】
本発明においては、アルミナの芯の粒子は少量のシリカでクラッディングすることができ、シリカ皮膜が施されたアルミナに比べ、存在するシリカの単位量当たりの硫黄性材料に対する耐性が高い支持体を与えることが見出された。得られた本発明の支持体は放出物抑制に対する使用寿命が延びた触媒を与える。本発明のシリカがクラッディングされたアルミナの製造は、下記に詳細に説明するように工程パラメータの或る特定の組み合わせを適用することによって達成された。
【0050】
先ずアルミナの粒子を固体分濃度が5〜50重量%の範囲の水性スラリにする。このスラリは、下記に説明するような溶液と容易に混合できるほど十分な流動性をもっていなければならない。この範囲内において使用される特定の濃度はスラリをつくるアルミナの物理的性質(例えば表面積、空隙容積等、並びに粒子の大きさおよび形)に依存している。使用される特定のアルミナの濃度はスラリを容易に混合できるような濃度でなければならない。
【0051】
スラリを50〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90〜95℃の範囲の温度に加熱する。これよりも高い温度を使用することもできるが、加圧容器が必要である。上記に示した以上の高い温度を得るための装置および取り扱いのコストの増加は不必要である。
【0052】
水溶性のシリカ前駆体化合物の水溶液を使用する。シリカ前駆体化合物はアルカリ金属の珪酸塩、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなど、およびこれらの混合物から選ぶことが好ましく、珪酸ナトリウムが好適である。シリカ前駆体化合物の濃度は前駆体溶液中でSiOとして1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%でなければならない。この溶液を、加熱したアルミナのスラリの中に導入する前のアルミナスラリの温度と実質的に同じ温度に加熱することが好適ではあるが、必ずしもこの予備加熱の必要はない。
【0053】
水溶性のシリカ前駆体化合物の水溶液の量は溶液中の前駆体の中の濃度、および得られるクラッディングされたアルミナ生成物の部分としてのシリカの所望の重量の割合に依存するであろう。当業界の専門家はこの量を容易に計算することができるであろう。
【0054】
シリカ前駆体化合物の水溶液をアルミナスラリと混合して均一な材料の混合物をつくる。温度はシリカ前駆体化合物が溶液中に保たれるのに十分な温度でなければならない。このような温度は通常50〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90〜95℃の範囲である。混合物をこの高められた温度に約1〜120分の間、好ましくは30〜60分の間、最も好ましくは約45〜60分の間維持し、この間十分に撹拌して均一な混合物の状態に保つ。
【0055】
次に水溶性の酸を用いpHを低下させて5〜8の範囲、好ましくは7〜8の範囲にする。この酸は任意の無機鉱酸、例えば硝酸、硫酸、または塩化水素酸(好適)またはこれらの混合物から選ぶことができる。別法として、水溶性のC〜C(好ましくはC〜C)の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸等、およびこれらの混合物を使用することができ、酢酸が好適である。これらの酸の中で好適なものは無機酸であり、塩化水素酸および硝酸が最も好適である。
【0056】
酸の水溶液は前以てつくったシリカ前駆体化合物とアルミナの混合物に対し、該混合物のpHが7〜8(好ましくはpH7.5)の範囲内の初期pHへ均一に低下するように実質的に一定の速度で、1〜240分、好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜20分に亙って導入しなければならない。酸の添加は混合物全体に亙って酸が均一に分布するように実質的に一定の遅い速度で連続的に撹拌しながら行なわなければならない。添加速度が速いことは避けなければならない。このような遅い速度で混合しながら行う添加は、混合物のpH値が8に達するまで続けなければならない。混合物の所望のpH値の最終点(上記に説明)を得るためにさらに酸を加えることができる。また添加溶液中の酸は、上記の時間に亙って遅い均一な方法で添加し得るような任意の酸濃度(好ましくは0.5〜3モル)をもっていることができる。混合物のpHの調節は任意の温度、例えば周囲温度ないし100℃の任意の温度で行うことができ、50〜95℃が好適である。
【0057】
処理されたアルミナ粒子の水性懸濁液を次に洗滌して処理された懸濁液からアルカリ金属材料を除去する。洗滌は温水(hot water)または水溶性のアンモニウム塩、例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム等、或いはそれらの混合物の水溶液を用いて行うことができる。硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好適な洗滌剤である。
【0058】
洗滌用の水がアルカリ金属を含まないと決定されたら、該水性懸濁液を濾過し、得られ
た固体を噴霧乾燥して粉末生成物を得る。次にこの生成物を400〜1000℃、好ましくは600〜800℃でカ焼する。
【0059】
得られた生成物は、実質的に全表面に亙ってシリカがクラッディングされた高表面積のアルミナ粒子である。通常の含浸法でつくられた従来のシリカで処理したアルミナ生成物とは異なり、本発明で得られる生成物は高表面積および細孔容積特性を保持している(従って本発明のクラッディング生成物は細孔の壁に架橋して細孔を塞ぐような沈澱を生じないことが示されている)。さらにシリカでクラッディングされたアルミナ粒子の赤外スペクトルによる分析の結果、Al−OH結合による吸収ピークは未処理のアルミナ粒子を用いた場合に比べ減衰を示している。同時にシラノール基(Si−OH)が現れる。このことは、シリカはアルミナ粒子材料の表面を完全にクラッディングしていることを示している。
【0060】
アルミナ粒子と接触させるのに用いる珪酸塩水溶液は、得られるシリカでクラッディングされたアルミナ生成物が、得られる生成物の全重量に関し1〜8重量%、好ましくは2〜5重量%のシリカ(SiO)を含む結果となるのに十分な珪酸塩濃度をもっていなければならない。得られる本発明によりつくられた生成物は、単位量のアルミナに対し同じ量のシリカを用い通常の含浸法または共沈法によりつくられたシリカ皮膜が施されたアルミナ粒子に比べ、内燃機関の排出生成物流に通常伴われる硫黄および硫黄化合物(例えばSO)に対し予想外の高い耐性をもっていることが見出された。
【0061】
また予想外にも上記の方法は、硫黄の吸着に対する抵抗性に高い効率をもつと同時に水熱安定性を保有したシリカがクラッディングされた支持体生成物を得るできることが見出された。シリカのカバレッジの均一性および幅は硫黄の取込みに抵抗する支持体生成物の効果および効率によって示すことができる。試料の硫黄取込み量(sulfur uptake:SU)は下記の「硫酸塩試験(Sulfation Test)」によって測定することができる。この試験は50mgの試料を熱重量分析器(TGA)に装入することによって行われる。先ず試料を107.5cc/分のHeガスで300℃において1時間処理する。この処理後、He中にSOを5cc/分の速度で流して導入し(1.14%のSO)、同時にOを12.5cc/分の速度で導入する。全流量は125cc/分であり、SOの濃度は456ppmである。硫黄の取込み量は時間の関数として測定する。約120分で硫黄の取込みは平衡に達し、この時点においてこれ以上の取込みは不可能になる。硫黄の取込み量(SU)は試料を120分間流した後において増加した重量の%として定義される。正規化された硫黄の取込み量(NSU)は下記式により計算される。
【0062】
【数1】

ここでSUは試料を流した時間120分後に測定した重量%(wt%)単位の硫黄の取込み量であり、SAは試料のBET表面積である。
【0063】
或る試料の正規化された硫黄の取込み量(NSU)および既知の試料をつくるクラッディングされていないアルミナの正規化された硫黄の取込み量(NSU)を、アルミナ粒子に対するシリカの割合(fs)で割り、下記式によって正規化された硫黄の耐性における増強度または効率(η)が得られる。
【0064】
【数2】

【0065】
本発明で得られる生成物の正規化された効率(η)はシリカの質量分率(mass fraction silica)当りシリカによる単位量の硫黄の取込みの減少(unit of silica reduction of sulfer uptake)に関し少なくとも1000μg/m、即ち減少単位(reduced unit)(本明細書において)で1000μg/mである。大部分の場合、本発明のクラッディングされた支持体生成物は1200μg/mより大きい効率(η)を示し、1500μg/mよりさえも大きい値を示すこともある。これと比較してシリカ皮膜を施したアルミナ生成物は約800μg/m以下の低い正規化された効率をもっている。
【0066】
本発明のシリカでクラッディングされた生成物をクラッディングされていないアルミナの生成物または従来の含浸法または共沈法でつくられた同じ重量%のシリカを含むシリカ−アルミナ生成物と直接比較すると、本発明のシリカでクラッディングされたアルミナの粒子はこれらの従来の含浸法または共沈法によってつくられた生成物に比べ硫黄の耐性が優れていることが示される。一般に、本発明でつくられたシリカでクラッディングされたアルミナ支持体は、共沈法または含浸法によりつくられた同等なシリカ皮膜を施されたアルミナ支持体に比べ、本明細書において定義された効率が少なくとも10%、たいていの場合には約20%高い。
【0067】
得られるシリカでクラッディングされたアルミナの粒子は、特に1〜200μm、好ましくは10〜100μmの粉末の形である場合、表面積の小さい基質の上の触媒皮膜としてさらに使用することができる。基質構造物は特定の用途に応じて種々の形から選ぶことができる。このような構造物の形には一体成形体、蜂の巣形、針金の網等が含まれる。基質構造物は通常難熔性(refractory)材料、例えばアルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア−アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージエライト、並びに針金の網等からつくられる。金属の蜂の巣形の基質も使用することができる。粉末を水中においてスラリ化し、少量の酸(好ましくは鉱酸)を加えて解膠し、ミリングしてウォッシュコートとして適用するのに適した細かい粒径にする。例えば基質をスラリの中に浸漬することにより基質構造物をミリングしたスラリと接触させる。例えば空気を吹き付けて過剰の材料を除去した後、皮膜で被覆した基質構造物をカ焼して、本発明のシリカがクラッディングされた高表面積のアルミナ粒子を、基質構造物への付着(ウォッシュコート)に至らせる。
【0068】
貴金属、通常は白金族の金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物は、シリカでクラッディングされたアルミナ粒子をウォッシュコートする前に適当な通常の貴金属前駆体(酸性または塩基性)を用いて、あるいはウォッシュコートした後にウォッシュコートされた基質を適当な貴金属前駆体溶液(酸性または塩基性)の中に浸漬して、当業界の専門家に公知の方法で本発明の基質に適用することができる。
【0069】
別法として、クラッディングをしない高表面積のアルミナを選ばれた基質の上にウォッシュコートした後、上記の方法でシリカをクラッディングすることができる。基質の上に含まれた、シリカでクラッディングされた得られたアルミナを次に貴金属前駆体溶液(酸性または塩基性)に浸漬して貴金属を適用することができる。
【0070】
好適な方法は先ずシリカでクラッディングされたアルミナをつくり、次に貴金属を適用し、最後に材料を基質の上にウォッシュコートする方法である。
【0071】
シリカでクラッディングされた生成物をアルミナ、マグネシア、セリア、セリア−ジルコニア、希土類酸化物−ジルコニア混合物等の他の酸化物基質と混合した後、これらの生成物をハニカム基質の上にウォッシュコートすることにより付加的な機能を賦与することができる。
【0072】
得られた触媒を直接キャニスタまたは類似物の中に単独で或いは他の材料と組み合わせ内燃機関の排ガス放出系の一部として装填する。このようにして、通常酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄、硫黄化合物および酸化硫黄を含んで成る排出生成物を排ガス系を通し貴金属が支持された触媒と接触させる。その結果有害で危険な排出生成物を環境に許容される材料に変えることができる。本発明の支持体を用いてつくられた触媒を使用する場合、通常の共沈法または含浸法でつくられたシリカを含まないかまたはシリカ−アルミナを用いた支持体を有する触媒によって達成されるよりも活性期間が長く全体としての活性が高い触媒系を得ることができる。
【0073】
下記の実施例は本発明の特定の例として与えられたものである。しかし本発明はこれらの実施例に記載された特定の詳細点に限定されるものではない。これらの実施例および本明細書の他の部分において特記しない限りすべての割合は重量によるものとする。
【0074】
さらに、本明細書および特許請求の範囲に記載された数値の範囲、例えば特定の組の性質、測定単位、条件、物理的状態または百分率は文献その他によって文字通り明示的に本明細書に組み入れることを意図したものであり、任意の数値はこのように引用された範囲内の数値のサブセットを含めこのような範囲に入るものとする。
【実施例】
【0075】
アルミナ1支持体
市販のγ−アルミナ(ドーピングせず)(Grace Davison Grade MI−307)を下記実施例1記載の方法で硫黄の取込みを試験した。試料のBET表面積は172m/g,細孔容積は0.77cc/g、硫黄の取込み量(SU)は1.1重量%、NSUは試料1m当たり64.0μgであった。この結果は下記表1に示す。
【0076】
アルミナ2支持体
市販のランタナ(4重量%)をドーピングしたγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−386)を下記実施例1記載の方法で硫黄の取込みを試験した。試料のBET表面積は178m/g,細孔容積は0.77cc/g、硫黄の取込み量(SU)は1.42重量%、NSUは試料1m当たり79.8μgであった。この結果は下記表1に示す。
【実施例1】
【0077】
1.3重量%のシリカがクラッディングされたアルミナを下記のようにしてつくった。52gの市販のγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307)を450gの脱イオン水を用いてスラリにした。このスラリを95℃に加熱し、この温度に1時間保った。別に、150ccの脱イオン水を150ccの珪酸ナトリウム(26重量%のSiO)と混合して50容積%の珪酸ナトリウムの溶液をつくった。約3.55gの50容積%の珪酸ナトリウム溶液を5分間に亙ってアルミナのスラリに加えた。30分間撹拌しながらスラリの温度を95℃に保った。次に1.2MのHNOをpHが7.5に達するまで徐々に加えた。95℃において1時間スラリを熟成した。1Lの硝酸アンモニウム1%溶液でスラリを洗滌し、残留したNaを除去した。次いで1Lの高温脱イオン水で洗滌した。得られたフィルターケーキをオーブン中で120℃において一晩乾燥し、乾燥した粉末を2時間700℃でカ焼した。
【0078】
カ焼した粉末はBET表面積が168m/gであった。50mgの試料を熱重量分析器(TGA)に装入して硫酸塩化試験を行った。最初に試料を107.5cc/分のHeガスに300℃において1時間接触させた。この処理後、SO(SO1.14%)を含むHeを5cc/分で導入し、同時にOを12.5cc/分で導入した。全体の流量は125cc/分であり、SOの濃度は456ppmであった。硫黄の取込みの測定は全時間に亙って行った。120分後硫黄の取込みは、それがなくなることによって示されるように平衡に達した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.40%であり、NSUは試料1m当たり23.8μgであった。正規化された効率ηは3092μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【実施例2】
【0079】
2.3重量%のシリカがクラッディングされたアルミナを下記のようにしてつくった。51.5gの市販のγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307)を450gの脱イオン水を用いてスラリにした。このスラリを95℃に加熱し、この温度に1時間保った。別に、150ccの脱イオン水を150ccの珪酸ナトリウム(26重量%のSiO)と混合して50容積%の珪酸ナトリウムの溶液をつくった。約7.2gの珪酸ナトリウム50容積%溶液を10分間に亙ってアルミナのスラリに加えた。酸性化、洗滌、乾燥およびカ焼は実施例1に記載された方法と同様である。
【0080】
カ焼した粉末はBET表面積が168m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.37%であり、NSUは試料1m当たり22.0μgであった。正規化された効率ηは1825μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【実施例3】
【0081】
3.5重量%のシリカがクラッディングされたアルミナを下記のようにしてつくった。51.0gの市販のγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307)を450gの脱イオン水を用いてスラリにした。このスラリを95℃に加熱し、この温度に1時間保った。別に、150ccの脱イオン水を150ccの珪酸ナトリウム(26重量%のSiO)と混合して珪酸ナトリウムの50容積%溶液をつくった。約10.7gの珪酸ナトリウム50容積%溶液を10分間に亙ってアルミナのスラリに加えた。酸性化、洗滌、乾燥およびカ焼は実施例1に記載された方法と同様である。
【0082】
カ焼した粉末はBET表面積が166m/gであった。この生成物に対し上記実施例1期差の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.31%であり、NSUは試料1m当たり18.9μgであった。正規化された効率ηは1307μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【実施例4】
【0083】
1.7重量%のシリカがクラッディングされたアルミナを下記のようにしてつくった。34.3ポンドの市販のランタナをドーピングして安定化させたγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−386SP)を34ガロンの脱イオン水を用いてスラリにした。このスラリを95℃に加熱し、この温度に1時間保った。約1.17ポンドの28.3%珪酸ナトリウムの溶液を10分間に亙ってアルミナのスラリに加えた。酸性化、洗滌、乾燥およびカ焼は実施例1に記載されたのと同様である。
【0084】
カ焼した粉末はBET表面積が192m/gであった。この生成物に対し上記実施例
1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.94%であり、NSUは試料1m当たり49.0μgであった。正規化された効率ηは1814μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【実施例5】
【0085】
22ポンドのアルミナ(Grace Davison Grade MI−386(4%のランタナをドーピングしたアルミナ))を190ポンドの脱イオン水の中でスラリ化して公称2.1%のシリカがクラッディングされたアルミナ(50gのバッチ)をつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例4記載の方法で行ったが、1.6ポンドの珪酸ナトリウム溶液を用いた。
【0086】
カ焼した粉末はBET表面積が179m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.71%であり、NSUは試料1m当たり39.7μgであった。正規化された効率ηは1911μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【実施例6】
【0087】
50部のアルミナ(Grace Davison Grade MI−386 (4%のランタナをドーピングしたアルミナ))を572.3部の脱イオン水の中でスラリ化して6.0%のシリカがクラッディングされたアルミナ(50gのバッチ)をつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例1記載の方法で行ったが、17.86部の珪酸ナトリウム50容積%溶液を用いた。
【0088】
カ焼した粉末はBET表面積が180m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.34%であり、NSUは試料1m当たり18.9μgであった。正規化された効率ηは1015μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【0089】
下記の実施例は対照の目的だけのために示すものであり、本発明を例示するものではない。
【対照実施例1】
【0090】
通常の共沈法によりつくられた市販の5.5%のシリカを含むアルミナ(Grace Davison Grade MI−120)を硫黄の取込みについて試験した。試料のBET表面積は265m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.65%であり、NSUは試料1m当たり24.50μgであった。正規化された効率ηは718μg/mであった。結果を下記表1に示す。
【対照実施例2】
【0091】
通常の含浸法によりつくられた市販の5.6重量%のシリカを含む5gのアルミナ(Grace Davison Grade MI−307)を約20gの脱イオン水の中でスラリ化し、1時間撹拌した。別に、0.625gのコロイド状シリカ(Ludox Grade AS−40 with 40% silica)を秤量した。次に0.63gのコロイド状シリカをアルミナスラリに加え、1時間撹拌した。次に加熱板の上でこのスラリを蒸発乾凅させた。得られた粉末を乾燥オーブンの中で100℃において一晩乾燥させ、700℃で2時間カ焼した。
【0092】
試料のBET表面積は169m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU
)は0.70重量%であり、NSUは試料1m当たり41.4μgであった。正規化された効率ηは402μg/mであった。
【対照実施例3】
【0093】
1.1重量%のシリカを含むアルミナを含浸法により次のようにしてつくった。約5.2gの市販のアルミナ(Grace Davison Grade MI−386 (4%のランタナをドーピングしたアルミナ))を約20gの脱イオン水中でスラリ化し、1時間撹拌した。別に、0.125gのコロイド状シリカ(Ludox Grade AS−40、シリカ含量40%)を秤量した。次に0.63gのコロイド状シリカをアルミナスラリに加え、1時間撹拌した。次に加熱板の上でこのスラリを蒸発乾凅させた。得られた粉末を乾燥オーブンの中で100℃において一晩乾燥させ、700℃で2時間カ焼した。
【0094】
試料のBET表面積は185m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は1.39重量%であり、NSUは試料1m当たり75.1μgであった。正規化された効率ηは409μg/mであった。
【対照実施例4】
【0095】
2.2重量%のシリカを含むアルミナを実施例3と同様な方法で含浸法によりつくったが、アルミナスラリに加えたコロイド状シリカの量は0.25gであった。
【0096】
試料のBET表面積は185m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は1.32重量%であり、NSUは試料1m当たり71.4μgであった。正規化された効率ηは384μg/mであった。
【対照実施例5】
【0097】
5.4重量%のシリカを含むアルミナを実施例3と同様な方法で含浸法によりつくったが、使用したアルミナの量は5.0gであり、アルミナスラリに加えたコロイド状シリカの量は0.625gであった。
【0098】
試料のBET表面積は184m/gであった。この生成物に対し上記実施例1記載の標準的な硫黄取込み試験を用いて硫黄の取込みを試験した。試料の硫黄の取込み量(SU)は1.2重量%であり、NSUは試料1m当たり65.2μgであった。正規化された効率ηは268μg/mであった。
【0099】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約0.2cc/gの高い多孔度、20m/gより大きい表面積を有するアルミナの芯の粒子を含んで成り、該アルミナの粒子の表面にはシリカがクラッディングされている構造物であって、該構造物は約1〜約8重量%のシリカを含み、硫黄に対する耐性効率(η)が少なくとも1000μg/mであることを特徴とする構造物。
【請求項2】
アルミナの芯は平均粒径が1〜200μmであり、BET表面積が約20〜400m/gであるアルミナの粒子を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項3】
アルミナの芯の粒子はBET表面積が約100〜300m/gであり、窒素による細孔容積が0.2〜2cc/gであるアルミナの芯を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の構造物。
【請求項4】
アルミナの芯は平均粒径が1〜10mmであり、BET表面積が約20〜400m/gである粒子から構成されていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項5】
シリカのクラッディングは構造物の2〜5重量%をなしていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の構造物。
【請求項6】
アルミナの芯はバヤライト、ベーマイト、ギッブサイト、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナまたはこれらの混合物から選ばれるアルミナを含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項7】
アルミナの芯はγ−アルミナ、δ−アルミナまたは其れらの混合物を含んで成っていることを特徴とする請求項5記載の構造物。
【請求項8】
アルミナの芯はさらに該アルミナに関し最高約10重量%のドーピング剤を含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項9】
アルミナの芯はさらに該アルミナに関し最高約10重量%のドーピング剤を含んで成っていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項10】
アルミナの芯はさらに該アルミナに関し最高約10重量%のドーピング剤を含んで成っていることを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項11】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1200μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項12】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1200μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項13】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1200μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項14】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1500μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項15】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1500μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項16】
該粒子はシリカの単位1m当たり少なくとも1500μgの硫黄に対する耐性効率(η)をもっていることを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項17】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項1、2、3または4記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項18】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項5記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項19】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項6記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項20】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項7記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項21】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項8記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項22】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項10記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項23】
実質的に均一に分布した触媒量の貴金属を構造物の上に有する請求項11記載の構造物を含んで成ることを特徴とする触媒組成物。
【請求項24】
貴金属は白金、パラジウム、またはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項14記載の触媒。
【請求項25】
貴金属は白金、パラジウム、またはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項15記載の触媒。
【請求項26】
貴金属は白金、パラジウム、またはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項17記載の触媒。
【請求項27】
貴金属は白金、パラジウム、またはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項18記載の触媒。
【請求項28】
貴金属は白金、パラジウム、またはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項19記載の触媒。

【公表番号】特表2010−505724(P2010−505724A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531377(P2009−531377)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/019798
【国際公開番号】WO2008/042084
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】