説明

硬化可能なシリコーン組成物

【課題】従来技術の欠点を示さず、かつ改善された可使時間とならんで、改善された架橋速度も可能にする付加架橋性材料を提供する。
【解決手段】一般式(I)R12Pt[P(OR2332の白金触媒(D)を、ヒドロシリル化反応のための触媒として、不飽和有機化合物またはポリマーの水素化のため、およびアルキンのオリゴマー化のために、また、付加架橋性シリコーン組成物において使用する。
【効果】本発明によるシリコーン組成物は、簡単な方法で、容易に入手可能な出発物質を使用して、ひいては経済的に製造することができ、25℃および周囲圧力で良好な貯蔵安定性を有し、かつ高めた温度で迅速に架橋する一成分成形材料であるか、または2成分の成形材料の場合に、両方の成分を混合した後で生じる架橋可能なシリコーン組成物の加工性は、25℃および周囲圧力で長期間にわたって維持され、かつ高めた温度で初めて迅速に架橋可能であるという利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的にヒドロシリル化によって架橋可能なシリコーン組成物、その製造方法、このために使用される白金触媒、ならびに架橋可能な組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
付加架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により架橋するためには一般に、典型的には白金または白金族からの金属を含有する触媒が使用される。触媒作用によって進行する反応の場合、脂肪族不飽和基はSi結合水素と反応して、架橋構造が形成される。
【0003】
2成分系の場合、反応性の成分は加工の直前に初めて混合される。該混合物は、活性な白金触媒を含有しており、その結果、架橋反応はすでに室温で進行し、かつ加工までの時間(可使時間)は、狭い範囲に限定される。このことから、付加的な混合工程、技術的な支障が生じた場合の高いクリーニングコスト、および容器中での白金汚染の危険という欠点が生じる。
【0004】
理想的には室温で全く硬化しないが、高めた温度でできる限り迅速に硬化する1成分の付加架橋性シリコーンゴム系に対する需要は長らく存在していた。
【0005】
室温における早すぎる架橋の問題を解決するための種々の取り組みは存在する。1つの可能性は、防止剤の使用であり、防止剤は混合物に添加剤として添加されて、可使時間の延長をもたらす。防止剤は常に触媒成分に対してモル過剰で使用され、かつその触媒活性を抑制する。しかし防止剤の量が増大すると共に、可使時間の延長とならんで、高温での系の反応性の低下も生じ、始動温度が上昇する。文献には種々の物質群からの防止剤のための多数の例が記載されている。US3,723,567Aには、アミノ官能性のシランが防止剤として請求されている。US5,270,422Aではアルキルジアミンがアセチレン系不飽和アルコールとの関連で、防止のために使用されている。EP0761759A2は、防止剤の組み合わせを請求しており、ホスフィットが別の防止剤、たとえばマレエートおよびエチオノールと一緒に使用されている。DE19757221A1は、同様に、防止剤の使用におけるホスフィットの物質群を記載している。ホスフィンはUS4,329,275Aに防止のための添加剤として請求されている。有機過酸化物との関連におけるホスフィットの組み合わせは、EP1437382A1に記載されている。架橋反応速度論に対する否定的な影響以外に、部分的に揮発性の防止剤、または揮発性成分を放出する防止剤の使用は、同様に不利であることが判明した。室温で完全に防止し、かつ硬化条件での反応速度に対して、相応する添加剤によって全く影響を与えることのない混合物は、これまで知られていない。
【0006】
これらとは基本的に異なった、別の可能性は、たとえばEP0459464A2に記載されているような、高温で溶融し、かつこのことによって活性な触媒が放出される熱可塑性材料中に触媒をカプセル化することである。しかしこの触媒の製造は比較的高価である。
【0007】
室温での1成分系の早すぎる架橋を防止すべき第三の可能性としては、特殊な白金錯体の使用である。白金アルキニル錯体は、US6,252,028BおよびUS6,359,098Bに記載されている。US4,256,616Aでは、Pt(0)ホスフィンおよびPt(0)ホスフィット錯体が、スズ塩と組み合わされて使用されており、かつWO03/098890A1は、構造特徴としてホスフィットリガンドもジビニルジシロキサンリガンドも含有しているPt(0)ホスフィット錯体を記載している。
【0008】
前記の材料は1成分で調製された、付加架橋性材料において、部分的に十分に高い架橋速度で明らかに改善された可使時間をもたらすが、さらに、高温での材料の迅速な架橋を保証する一方で、上記の欠点を有していない、より性能の優れた白金触媒に対する需要が存在する。
【特許文献1】US3,723,567A
【特許文献2】US5,270,422A
【特許文献3】EP0761759A2
【特許文献4】DE19757221A1
【特許文献5】US4,329,275A
【特許文献6】EP1437382A1
【特許文献7】EP0459464A2
【特許文献8】US6,252,028B
【特許文献9】US6,359,098B
【特許文献10】US4,256,616A
【特許文献11】WO03/098890A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記の欠点をもはや示さず、かつ改善された可使時間とならんで、改善された架橋速度も可能にする付加架橋性材料を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下ではオルガノポリシロキサンという概念には、ポリマー、オリゴマーならびに二量体のシロキサンが含まれる。
【0011】
本発明の対象は、
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)および(D)、
そのつど少なくとも1の化合物(C)および(D)、および
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)、(C)および(D)
を含む群から選択される付加架橋性シリコーン組成物であって、
(A)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を少なくとも2つ有する有機化合物または有機ケイ素化合物であり、
(B)は、Si結合水素原子を少なくとも2つ有する有機ケイ素化合物であり、
(C)は、脂肪族炭素−炭素多重結合およびSi結合水素原子を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物であり、かつ
(D)は、白金触媒である
付加架橋性シリコーン組成物において、白金触媒(D)が、一般式(I)
12Pt[P(OR2332 (I)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に
ハロゲン
1の負電荷を有する無機の基、
CR33、その際、R3は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、Hを表すか、1〜18個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状の脂肪族基を表すか、6〜31個の炭素原子を有するアリールアルキル基を表し、
OR3、その際、R3は、上記のものを表し、
SiR33、その際、R3は、上記のものを表し、
2は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、
式Cn2n+1(n=5〜18)または式Cm2m-1(m=5〜31)のアルキル、
式−(C65-p)−(Co2o+1p(o=1〜31およびp=1〜5)のアリールアルキル
を表し、その際、上記化合物のR1およびR2に関して水素原子は、基−NH2、−COOH、−F、−Br、−Cl、−アリールまたは−アルキルにより置換されているか、または置換されていない]に相応することを特徴とする。
【0012】
白金触媒(D)、特に酸化状態+IIの白金を中心金属として有し、かつ酸化状態+IIIのリンを有するPt(II)ホスフィット錯体は、本発明によるシリコーン組成物の改善された特性につながることが判明した。
【0013】
本発明による組成物は、1成分シリコーン組成物であっても、2成分シリコーン組成物であってもよい。後者の場合には、本発明による組成物の両方の成分は、任意の組み合わせで全ての成分を含有してもよく、ただし一般に1つの成分が同時に、脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合水素を有するシロキサンおよび触媒を含有していることはない、つまり実質的に成分(A)、(B)および(D)もしくは(C)および(D)を同時に含有していることはない。しかし有利には本発明による組成物は1成分組成物である。
【0014】
本発明による組成物中で使用される化合物(A)および(B)もしくは(C)は、公知のとおり、架橋が可能であるように選択される。従ってたとえば化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有しており、かつ(B)は、少なくとも3つのSi結合水素原子を有しているか、または化合物(A)は、少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有しており、かつシロキサン(B)は、少なくとも2つのSi結合水素原子を有しているか、あるいはまた化合物(A)および(B)の代わりに、脂肪族不飽和基およびSi結合水素原子を上記の比率で含有しているシロキサン(C)を使用する。(A)および(B)および(C)からなり、脂肪族不飽和基およびSi結合水素原子を上記の比率で含有する混合物も同様である。
【0015】
本発明により使用される化合物(A)は、有利に少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素不含の有機化合物であっても、有利には少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物であっても、またはこれらの混合物であってもよい。
【0016】
ケイ素不含の有機化合物(A)のための例は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチル−ヘプタジエン−(1,5)、3−フェニル−ヘキサジエン−(1,5)、3−ビニル−ヘキサジエン−(1,5および4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、N,N′−メチレン−ビス−アクリル酸アミド、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコール−ジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N′−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0017】
有利には本発明によるシリコーン組成物は、成分(A)として少なくとも1の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有しており、その際、従来、付加架橋性組成物中で使用されていた全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、たとえば尿素部分を有するシリコーンブロックコポリマー、アミド部分および/またはイミド部分および/またはエステル−アミド部分および/またはポリスチレン部分および/またはシラリーレン部分および/またはカルボラン部分を有するシリコーンブロックコポリマー、およびエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することができる。
【0018】
脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物(A)として、有利には線状もしくは分枝鎖状の、一般式(II)
a4bSiO(4-a-b)/2 (II)
[式中、
Rは、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に脂肪族炭素−炭素多重結合を有していない有機または無機の基を表し、
4は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に少なくとも1の脂肪族炭素−炭素多重結合を有する一価の、置換されているか、または置換されていない、SiC結合炭化水素基を表し、
aは、0、1、2または3であり、かつ
bは、0、1または2であり、
ただしその際、a+bの合計は3以下であり、かつ1分子あたり少なくとも2つの基R4が存在している]の単位からなるオルガノポリシロキサンを使用する。
【0019】
基Rは、一価または多価の基であってよく、その際、多価の基、たとえば二価の、三価の、および四価の基は、複数の、たとえば約2、3または4の式(II)のシロキシ単位と相互に結合している。
【0020】
Rのための更なる例は、一価の基である−F、−Cl、−Br、OR5、−CN、−SCN、−NCOおよびSiC結合した、置換されているか、または置換されていない炭化水素基であり、これらは酸素原子により、または基−C(O)−により中断されていてもよく、ならびに二価の、両側で式(II)のとおりにSi結合している基である。基RがSiC結合した、置換された炭化水素基である場合、有利な置換基はハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、−OR5、−NR5、−NR52、−NR5−C(O)−NR52、−C(O)−NR52、−C(O)R5、−C(O)OR5、−SO2−Phおよび−C65である。その際、R5は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、水素原子を表すか、または1〜20個の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、かつPhはフェニル基である。
【0021】
基Rのための例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基、ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基、オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、たとえばn−ノニル基、デシル基、たとえばn−デシル基、ドデシル基、たとえばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基、アルカリール基、たとえばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、たとえばベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基である。
【0022】
置換された基Rのための例は、ハロゲンアルキル基、たとえば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、たとえばo−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびp−クロロフェニル基、−(CH2)−N(R5)C(O)NR52、−(CH2n−C(O)NR52、−(CH2n−C(O)R5、−(CH2n−C(O)OR5、−(CH2n−C(O)NR52、−(CH2)−C(O)−(CH2mC(O)CH3、−(CH2)−O−CO−R5、−(CH2)−NR5−(CH2m−NR52、−(CH2n−O−(CH2mCH(OH)CH2OH、−(CH2n(OCH2CH2mOR5、−(CH2n−SO2−Phおよび−(CH2n−O−C65であり、その際、R5およびPhは、上記の意味に相応し、かつnおよびmは、0〜10の間の同じか、または異なった整数を表す。
【0023】
Rが二価の、両側で式(II)のとおりにSi結合した基である例は、前記で基Rに関して記載した一価の例から、水素原子の置換によってさらに結合することにより誘導される基であり、このような基の例は、−(CH2)−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−CH2−、C64−、−CH(Ph)−CH2−、−C(CF32−、−(CH2n−C64−(CH2n−、−(CH2n64−C64−(CH2n−、−(CH2O)m、(CH2CH2O)m、−(CH2n−Ox−C64−SO2−C64−Ox−(CH2n−であり、その際、xは、0または1であり、かつPh、mおよびnは、前記の意味を有する。
【0024】
有利には基Rは、1〜18個の炭素原子を有する、脂肪族炭素−炭素多重結合を有していない、一価のSiC結合した、場合により置換された炭化水素基であり、特に有利には1〜6個の炭素原子を有する、脂肪族炭素−炭素多重結合を有していない、一価のSiC結合した炭化水素基、特にメチル基またはフェニル基である。
【0025】
基R4は、SiH官能性の化合物との付加反応(ヒドロシリル化)が可能な任意の基であってよい。基R4がSiC結合した、置換された炭化水素基である場合、置換基としてハロゲン原子、シアノ基および−OR5が有利であり、その際、R5は、前記の意味を有する。
【0026】
有利には基R4は、2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基およびアルキニル基であり、たとえばビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基およびスチリル基であり、その際、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基が特に有利に使用される。
【0027】
成分(A)の分子量は、広い範囲で変化してよく、たとえば102〜106g/モルである。従って成分(A)はたとえば比較的低分子のアルケニル官能性のオリゴシロキサン、たとえば1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンであってもよいが、しかし鎖中の、もしくは末端のSi結合ビニル基を有している高分子ポリジメチルシロキサンであってもよく、たとえば105g/モル(NMRにより測定される数平均)の分子量を有するポリジメチルシロキサンであってもよい。成分(A)を形成する分子の構造も確定されておらず、特に高分子量の、つまりオリゴマーもしくはポリマーのシロキサンの構造は、線状、環式、分枝鎖状もしくは樹脂状、網状であってもよい。線状および環式のポリシロキサンは有利には、式R3SiO1/2、R42SiO1/2、R4RSiO1/2およびR2SiO2/2の単位からなり、その際、RおよびR4は、前記の意味を有している。分枝鎖状および網状のポリシロキサンはさらに、三官能性の、および/または四官能性の単位を有しており、その際、式RSiO3/2、R4SiO3/2およびSiO4/2の単位が有利である。当然のことながら、成分(A)の基準を満足する種々のシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0028】
成分(A)として特に有利であるのは、そのつど25℃で、0.01〜500000Pa・s、特に有利には0.1〜100000Pa・sの粘度を有するビニル官能性の、実質的に線状のポリジオルガノシロキサンである。
【0029】
有機ケイ素化合物(B)として、従来付加架橋性組成物中でも使用されていた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0030】
Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)として、有利には一般式(III)
cdSiO(4-c-d)/2 (III)
[式中、
Rは、上記の意味を有し、
cは、0、1、2または3であり、かつ
dは、0、1または2であり、ただしその際、c+dの合計は、3以下であり、かつ1分子あたり少なくとも2のSi結合水素原子が存在する]の単位からなる、線状、環式または分枝鎖状のオルガノポリシロキサンを使用する。
【0031】
有利には本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、オルガノポリシロキサン(B)の全質量に対して、0.04〜1.7質量%の範囲のSi結合水素を有している。
【0032】
成分(B)の分子量は同様に、広い範囲で、たとえば102〜106g/モルの間であってよい。たとえば成分(B)は比較的分子量の低いSiH官能性オリゴシロキサン、たとえばテトラメチルジシロキサンであってもよいが、しかし、鎖中の、もしくは末端のSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサンまたはSiH基を有するシリコーン樹脂であってもよい。
【0033】
成分(B)を形成する分子の構造もまた確定していない。特に高分子の、つまりオリゴマーもしくはポリマーのSiH含有シロキサンの構造は、線状、環式、分枝鎖状もしくは樹枝状であっても、網状であってもよい。線状もしくは環式のポリシロキサン(B)は、有利には式R3SiO1/2、HR2SiO1/2、HRSiO2/2およびR2SiO2/2の単位からなっており、その際、Rは、上記の意味を有する。分枝鎖状および網状のポリシロキサンはさらに、三官能性および/または四官能性の単位を有しており、その際、式RSiO3/2、HSiO3/2およびSiO4/2の単位が有利であり、その際、Rは前記の意味を有する。
【0034】
当然のことながら、成分(B)の基準を満足する異なったシロキサンの混合物を使用することもできる。特に成分(B)を形成する分子は、上記のSiH基に加えて場合により同時に脂肪族不飽和基を有していてもよい。特に有利であるのは、低分子量のSiH官能性化合物、たとえばテトラキス(ジメチルシロキシ)シランおよびテトラメチルシクロテトラシロキサン、ならびに高分子量のSiH含有シロキサン、たとえば25℃で10〜10000mPa・sの粘度を有するポリ(ハイドロジェンメチル)シロキサンおよびポリ(ジメチルハイドロジェンメチル)シロキサン、またはメチル基の一部が3,3,3−トリフルオロプロピル基またはフェニル基により置換されている同様のSiH含有化合物の使用である。
【0035】
成分(B)は、有利には(A)からの脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が、0.1〜20、特に有利には1.0〜5.0であるような量で、本発明による架橋可能なシリコーン組成物中に含有されている。本発明により使用される成分(A)および(B)は、市販の製品であるか、もしくは化学において慣用の方法により製造することができる。
【0036】
成分(A)および(B)の代わりに、本発明によるシリコーン組成物は、脂肪族炭素−炭素多重結合とSi結合水素原子とを同時に有するオルガノポリシロキサン(C)を含有していてもよい。本発明によるシリコーン組成物は、全ての3つの成分(A)、(B)および(C)を含有していてもよい。
【0037】
シロキサン(C)を使用する場合、これは有利には一般式(IV)、(V)および(VI)
fSiO4/2 (IV)
g4SiO3-g/2 (V)
hHSiO3-h/2 (VI)
[式中、RおよびR4は、上記でこれらのために記載した意味を有し、
fは、0、1、2または3であり、
gは、0、1または2であり、かつ
hは、0、1または2であるが、ただしその際、1分子あたり少なくとも2の基R4が存在し、かつ少なくとも2のSi結合水素原子が存在する]の単位からなるシロキサンである。
【0038】
オルガノポリシロキサン(C)のための例は、SiO4/2単位、R3SiO1/2単位、R24SiO1/2単位およびR2HSiO1/2単位からなるオルガノポリシロキサン、いわゆるMP樹脂であり、その際、これらの樹脂は、さらにRSiO3/2単位およびR2SiO単位を有していてもよく、ならびに実質的にR24SiO1/2単位、R2SiO単位およびRHSiO単位(式中、RおよびR11は、上記の意味と同じである)からなる線状のオルガノポリシロキサンである。
【0039】
オルガノポリシロキサン(C)は、そのつど25℃で有利には0.01〜500000Pa・s、特に有利には0.1〜100000Pa・sの平均粘度を有する。オルガノポリシロキサン(C)は、化学において慣用の方法により製造することができる。
【0040】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物は、
− そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)および(D)、
− そのつど少なくとも1の化合物(C)および(D)、および
− そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)、(C)および(D)、
を含む群から選択され、その際、
(A)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を少なくとも2つ有する有機化合物または有機ケイ素化合物を意味し、
(B)は、Si結合水素原子を少なくとも2つ有する有機ケイ素化合物を意味し、
(C)は、脂肪族炭素−炭素多重結合およびSi結合水素原子を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物を意味し、かつ
(D)は、白金触媒を意味し、
その際、白金触媒(D)は、以下の定義に相応する。
【0041】
本発明のもう1つの対象は、成分(D)である。というのも、該成分は本発明によるシリコーン組成物の特性にとって決定的であるからである。
【0042】
本発明による白金触媒(D)は、一般式(I)
12Pt[P(OR2332 (I)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に
ハロゲン
1の負電荷を有する無機の基、
CR33、その際、R3は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、Hを表すか、1〜18個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状の脂肪族基を表すか、6〜31個の炭素原子を有するアリールアルキル基を表し、
OR3、その際、R3は、上記のものを表し、
SiR33、その際、R3は、上記のものを表し、
2は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、
式Cn2n+1(n=5〜18)または式Cm2m-1(m=5〜31)のアルキル、
式−(C65-p)−(Co2o+1p(o=1〜31およびp=1〜5)のアリールアルキル
を表し、その際、上記化合物のR1およびR2に関して水素原子は、基−NH2、−COOH、−F、−Br、−Cl、−アリールまたは−アルキルにより置換されているか、または置換されていない]に相応する。
【0043】
(D)は、特別に製造された白金錯体化合物である。その製造方法は、反応のために適切な溶剤中、0〜110℃までの温度での、白金塩、たとえばK2PtCl4、Na2PtCl4、PtCl2、PtBr2またはPtI2と、式[−P(OR233](式中、R2は、上記の意味を有する)のそのつどのホスフィットとの反応により行われる。この反応のために使用されるホスフィットの製造は、従来技術からの慣用の方法に相応するか、またはこれらは商業的に入手可能である。
【0044】
本発明によるシリコーン組成物へ混合導入する前に、化合物(D)を単離し、かつその純度を慣用の方法により試験する。使用される式[−P(OR233]のホスフィットは、中心金属に配位し、その際、R2は、上記の意味を有する。
【0045】
以下に本発明による白金−ホスフィット錯体[D]を例示的に列挙するが、以下の式中でR1はClであり、R2は、可変的であり、かつこれらは上記の方法で合成される。
【0046】
PtCl2[P(−O−2−メチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−エチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−プロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−イソプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−s−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−t−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−ペンチルフェニル)32
PtCl2{P[−O−2−(1−メチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−2−ヘキシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−ヘプチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−オクチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−ノニルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−デシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−オクタデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2−オクタデセニルフェニル)32
PtCl2{P[−O−2−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2−(1,1−ジメチルブチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2−(1,1−ジメチルペンチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2−(1,1−ジメチルヘキシル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−4−メチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−エチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−プロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−イソプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−s−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−t−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−ペンチルフェニル)32
PtCl2{P[−O−4−(1−メチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−4−ヘキシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−ヘプチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−オクチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−ノニルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−デシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−オクタデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−4−オクタデセニルフェニル)32
PtCl2{P[−O−4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−4−(1,1−ジメチルブチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−4−(1,1−ジメチルペンチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−4−(1,1−ジメチルヘキシル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−4−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,4−ジメチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジエチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジイソプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジ−s−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジ−ペンチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ビス(1−メチルブチル)フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジヘキシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジヘプチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジオクチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジノニルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジオクタデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,4−ジオクタデセニルフェニル)32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1−ジメチルブチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1−ジメチルペンチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1−ジメチルヘキシル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,4−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,5−ジメチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジエチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジイソプロピルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−s−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−t−ブチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−ペンチルフェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1−メチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘキシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘプチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクチルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジノニルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデシルフェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデセニルフェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルペンチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘキシル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,5−ジメチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジエチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジプロピル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジイソプロピル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジブチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−s−ブチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−ペンチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1−メチルブチル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘキシル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘプチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクチル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジノニル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジデシル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデシル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデセニル−4−メトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルペンチル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘキシル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘプチル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4−メトキシ−フェニル]32
PtCl2[P(−O−2,5−ジメチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジエチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジプロピル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジイソプロピル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジブチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−s−ブチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−t−ブチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジ−ペンチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ビス(1−メトキシブチル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘキシル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジヘプチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクチル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジノニル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジデシル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデシル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2[P(−O−2,5−ジオクタデセニル−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルペンチル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘキシル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルヘプチル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4−エトキシ−フェニル)32
PtCl2{P[(−O−2−t−ブチル−5−メチルフェニル)(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2]}2
PtCl2{P[(−O−2,4−ジ−t−ペンチルフェニル)(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2]}2
PtCl2{P[(−O−2−t−ブチルフェニル)(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2]}2
【0047】
以下に本発明による白金−ホスフィット錯体[D]を例示的に列挙するが、これらの式中で、R1は、可変的であり、R2は、一般に、ホスフィット化合物(=ホスフィット)を表し、かつこれらは同様に上記の方法で合成される。
【0048】
PtF2(ホスフィット)2
PtBr2(ホスフィット)2
PtI2(ホスフィット)2
Pt(CH32(ホスフィット)2
Pt(CH2CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH22CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH23CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH24CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH25CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH26CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH27CH32(ホスフィット)2
Pt[(CH217CH32(ホスフィット)2
Pt[C(CH32CH32(ホスフィット)2
Pt[C(CH32CH2CH32(ホスフィット)2
Pt[C(CH32(CH22CH32(ホスフィット)2
Pt[C(CH32(CH23CH32(ホスフィット)2
Pt[C(CH32(CH24CH32(ホスフィット)2
Pt(OCH32(ホスフィット)2
Pt(OCH2CH32(ホスフィット)2
Pt[O(CH22CH32(ホスフィット)2
Pt[O(CH23CH32(ホスフィット)2
Pt[Si(CH332(ホスフィット)2
【0049】
本発明による白金触媒(D)は、前記の例に限定されない。というのも、R1に関して、多数の置換基が使用可能であるからである。基R1は、相互に無関係に、2つのホスフィンリガンドを有する酸化状態+IIの中心金属である白金から全体で電荷を有していない錯体を1つ形成することができる一価の基であってよい。
【0050】
負電荷を1つ有する無機の基としてのR1のための例は、N3-、CN-、OCN-、CNO-、SCN-、NCS-、SeCN-を含む群から選択される擬ハロゲン化物である。
【0051】
基R1として有利であるのは、ハロゲン、偽ハロゲンおよびアルキル基である。
【0052】
1のための例は、−Cl以外に、−F、−Br、−I、−CN、−N3、−OCN、−NCO、−CNO、−SCN、−NCS、−SeCN、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH32、−C(CH33、−C65、−CH2(Ph)−CH3、Cv2v+1、Cv2v-1、−(C65-w)−(Cv2v+1w、ここでv=1〜18であり、かつw=1〜5であり、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アリール−アルキル、−Si(アルキル)3、−Si(アリール)3、−Si(アリール−アルキル)3である。R1に関して特に有利であるのは、1〜18個の炭素原子を有するハロゲンおよび線状または分枝鎖状の脂肪族基であり、場合によりこれらの中に含まれているH原子は、−NH2、−COOH、F、Br、Cl、−アルキル、−アリールまたは−アリールアルキルにより置換されていてもよい。
【0053】
基R2として有利であるのはアルキル基である。
【0054】
2のための例は、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基、ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基、オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、たとえばn−ノニル基、デシル基、たとえばn−デシル基、ドデシル基、たとえばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基である。
【0055】
さらにR2に関して有利であるのは、アリールアルキル基−(C65-p)−(Co2o+1pであり、その際、oは、1〜18であり、かつpは、1〜5であり、特に有利にはoは、1〜18であり、かつpは、2〜3である。R2に関してさらに特に有利な実施態様では、少なくとも1のアルキル置換基がアリールアルキル基中のフェニル環の2位に結合している。置換されていないアリールアルキルホスフィットに対して、置換されたホスフィットを有する白金錯体化合物は、実質的により低い始動温度の利点を有している。
【0056】
本発明による白金触媒(D)は、有機ケイ素化学における周知のヒドロシリル化反応のための触媒として、不飽和有機化合物またはポリマーの水素化のための触媒として、およびアセチルおよびその他のアルキンのオリゴマー化のための触媒として有用である。
【0057】
本発明による白金触媒(D)はさらに、末端の二重結合がヒドロシリル化の際に内側へと転位し、このことによって反応性の弱い異性化された出発生成物が残留するという利点を有する。
【0058】
本発明による白金触媒はさらに、白金コロイドを形成せず、かつその使用によって変色が生じないという利点を有する。
【0059】
上記の成分(A)、(B)、(C)および(D)以外に、さらに別の成分(E)、(F)または(G)が本発明によるシリコーン組成物中に含有されていてもよい。
【0060】
成分(E)、たとえば防止剤および安定性は、本発明によるシリコーン組成物の加工時間、始動温度及び架橋速度を適切に調整するために役立つ。これらの防止剤および安定剤は、付加架橋性組成物の分野では周知である。慣用の防止剤の例は、アセチレン系アルコール、たとえば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オールおよび3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、ポリメチルビニルシクロシロキサン、たとえば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、メチルビニル−SiO1/2−基および/またはR2ビニルSiO1/2末端基を有する低分子のシリコーン油、たとえばジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、たとえばジアリルマレエート、ジメチルマレエートおよびジエチルマレエート、アルキルフマレート、たとえばジアリルフマレートおよびジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、たとえばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミンである。ジアミンおよびアミド、ホスファンおよびホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジンおよびオキシム。これらの防止剤添加剤(E)の作用は、その化学構造に依存するので、その濃度は個別的に決定しなくてはならない。防止剤および防止剤混合物は、混合物の全質量に対して有利には0.00001%〜5%の量割合で、好ましくは0.00005〜2%および特に有利には0.0001〜1%の量割合である。
【0061】
成分(F)は、従来、付加架橋性組成物を製造するために使用されていた全てのその他の添加剤である。成分(F)として本発明によるシリコーン組成物中で使用することができる強化用充填剤の例は、少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法シリカもしくは沈降シリカ、ならびにカーボンブラックおよび活性炭、たとえばファーネスブラックおよびアセチレンブラックであり、その際、少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法シリカおよび沈降シリカが有利である。前記のシリカ充填剤は親水性の特性を有しているか、または公知の方法により疎水化されていてもよい。親水性充填剤を混合導入する場合、疎水化剤の添加が必要である。本発明により架橋可能な組成物における活性な強化用充填剤(F)の含有率は、0〜70質量%、有利には0〜50質量%の範囲である。
【0062】
本発明によるシリコーン組成物は、選択的に成分(F)を別の添加剤として、70質量%までの割合で、有利には0.0001〜40質量%の割合で含有していてよい。これらの添加剤はたとえば不活性充填剤、シロキサン(A)、(B)および(C)とは異なる樹脂状のポリオルガノシロキサン、強化用および非強化用充填剤、殺菌剤、香料、レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、および電気的特性に影響を与えるための添加剤、分散助剤、溶剤、付着助剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤等であってよい。これには、石英粉、ケイソウ土、アルミナ、白亜、リトポン、カーボンブラック、グラファイト、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、カルボン酸の金属塩、金属粉、繊維、たとえばガラス繊維、プラスチック繊維、プラスチック粉末、金属棒、着色剤、顔料などが挙げられる。
【0063】
本発明によるシリコーン組成物は選択的に別の成分(G)として、従来技術に相応する少なくとも1の別の付加架橋性触媒、たとえばヒドロシリル化触媒または過酸化物を含有していてもよい。
【0064】
このような触媒(G)のための例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは活性炭のような担体上に存在していてもよい金属および微粒子状の白金、白金の化合物または錯体、たとえは白金ハロゲン化物、たとえばPtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl4・4H2O、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、これにはH2PtCl6・6H2Oとシクロヘキサノンとからなる反応生成物も含まれ、白金−ビニルシロキサン錯体、たとえば検出可能な無機結合したハロゲンを含有するか、または含有していない白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラ−メチル−ジシロキサン錯体、ビス−(ガンマ−ピコリン)−白金ジクロリド、トリメチレンジピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)ジクロリド、シクロオクタジエン−白金ジクロリド、ノルボルナジエン−白金ジクロリド、ガンマ−ピコリン−白金ジクロリド、シクロペンタジエン−白金ジクロリド、ならびに四塩化白金とオレフィンおよび第一級アミンもしくは第二級アミンもしくは第一級および第二級アミンとの反応生成物、たとえば1−オクテン中に溶解した四塩化白金とs−ブチルアミンまたはアンモニウム−白金錯体との反応生成物である。
【0065】
そのような触媒(G)のための別の例は、有機過酸化物、たとえばアシルペルオキシド、たとえばジベンゾイルペルオキシド、ビス−(4−クロロベンゾイル)−ペルオキシド、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシドおよびビス−(4−メチルベンゾイル)−ペルオキシド、アルキルペルオキシドおよびアリールペルオキシド、たとえばジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジクミルペルオキシドおよび1,3−ビス−(t−ブチルペルオキシ−イソプロピル)−ベンゼン、ペルケタール、たとえば1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ペルエステル、たとえばジアセチルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−イソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−イソノナノエート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートおよび2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジペルベンゾエートである。
【0066】
本発明によるシリコーン組成物は、必要であれば、液体中に溶解、分散、懸濁または乳化されてもよい。本発明による組成物は、特に成分の粘度ならびに充填剤含有率に応じて、低粘性であり、かつ注型可能であってもよいか、ペースト状の粘稠度を有するか、粉末状であるか、または弾性のある、高粘度の組成物であってもよく、たとえば公知のとおり、当業界でしばしばRTV−1、RTV−2、LSRおよびHTVと呼ばれる組成物の場合に該当するようなものであってよい。特に本発明による組成物は、高粘性である場合、顆粒の形で調製されてもよい。この場合、個々の顆粒粒子は全ての成分を含有していてもよいし、または本発明により使用される成分は、異なった顆粒粒子中で別々に混合導入されていてもよい。架橋した本発明によるシリコーン組成物のエラストマー特性に関して同様に、極端に柔らかいシリコーンゲルから始まって、ゴム状の材料からガラス状の挙動を有する高度に架橋したシリコーンまでの全ての範囲が含まれる。
【0067】
本発明によるシリコーン組成物の製造は、公知の方法によって、たとえば個々の成分を均一に混合することによって行うことができる。その際の順序は任意であるが、しかし有利には白金触媒(D)および場合により(G)を、(A)、(B)、場合により(E)および(F)からなる混合物と混合する。本発明により使用される白金触媒(D)および場合により(G)は、この場合、固体の物質としても、または適切な溶剤中に溶解された溶液としても、またはいわゆるバッチとして、少量の(A)、または(A)および(E)と均一に混合して、混合することができる。
【0068】
本発明により使用される成分(A)〜(G)は、そのつどこのような成分の単独の種類であってもよいし、このような成分の少なくとも2種類の異なった成分からなる混合物であってもよい。本発明によるSi結合水素の、脂肪族多重結合への付加により架橋可能なシリコーン組成物は、従来公知の、ヒドロシリル化反応によって架橋可能な組成物と同一の条件下で架橋することができる。
【0069】
この場合、100〜220℃の温度は有利であり、130〜190℃の温度は特に有利であり、かつ900〜1100hPaの圧力が有利である。あるいはまたこれより高いか、または低い温度および圧力を適用することもできる。
【0070】
本発明のもう1つの対象は、本発明による組成物を架橋することにより製造される成形体である。
【0071】
本発明によるシリコーン組成物ならびに本発明により該組成物から製造される架橋生成物は、従来エラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサン組成物もしくはエラストマーのためにも使用されていた全ての目的のために使用することができる。これはたとえば任意の支持体のシリコーン被覆もしくは含浸、成形部材の、たとえば射出成形法、真空押出成形法、押出成形法、注型およびプレス成形、および印象における成形体の製造、封止材料、埋め込み材料および注型材料としての使用等を含む。
【0072】
本発明により架橋可能なシリコーン組成物は、簡単な方法で、容易に入手可能な出発物質を使用して、ひいては経済的に製造することができるという利点を有している。本発明により架橋可能な組成物はさらに、25℃および周囲圧力で良好な貯蔵安定性を有し、かつ高めた温度で迅速に架橋する一成分成形材料であるという利点を有する。本発明によるシリコーン組成物は、これらが2成分の成形材料の場合に、両方の成分を混合した後で、架橋可能なシリコーン組成物を生じ、その加工性は25℃および周囲圧力で長期間にわたって維持される、つまり極めて長い可使時間を有し、かつ高めた温度で初めて迅速に架橋可能であるという利点を有する。
【0073】
本発明により架橋可能な組成物を製造する際に、白金触媒(D)が良好に計量供給可能であり、かつ容易に混合可能であることが大きな利点である。
【0074】
本発明による組成物はさらに、ここから得られる架橋したシリコーンゴムが、優れた透明性を有しているという利点を有する。
【0075】
本発明による組成物はさらに、ヒドロシリル化反応の速度が、反応時間と共に低下しないという利点を有する。
【実施例】
【0076】
以下に記載する例は、その他の記載がない限り、全て質量部および質量パーセントである。その他の記載がない限り、以下の例は周囲雰囲気の圧力で、つまり約1000hPa、および室温、つまり約20℃で、もしくは反応物質を室温で添加混合した場合に付加的な加熱または冷却を行うことなく生じる温度で実施される。以下では全ての粘度の記載は温度25℃に対するものである。
【0077】
触媒1の製造
無水エタノール40ml中のK2PtCl4 2.08gの懸濁液および無水エタノール20ml中のトリス−(2−t−ブチルフェニル)ホスフィット4.79gの溶液を、窒素下に合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。溶剤を留去し、かつ残留物をジエチルエーテル40ml中に取り込んだ。そのつど水20mlで3回振とうした。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、折りたたみ式濾紙により濾過し、かつ留去した。以下の式の白金錯体5.50gが単離された:
PtCl2[P(−O−2−t−ブチルフェニル)32
【0078】
触媒2の製造
水40ml中のK2PtCl4 2.08gの懸濁液、トリス−(4−ノニルフェニル)ホスフィット6.89gを窒素下で合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。その際、生成物は白色の固体として生じた。濾過の後で、EtOHを用いて洗浄した。以下の式の白金錯体6.95gが単離された:
PtCl2[P(−O−4−ノニルフェニル)32
【0079】
触媒3の製造
ジクロロメタン40ml中のPtCl2 1.33gの懸濁液およびジクロロメタン20ml中のトリス−(1,1−ジメチルブチル−4−メトキシ−フェニル)ホスフィット9.05gの溶液を窒素下に合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。溶剤を留去した後で残留物をジエチルエーテル中に溶解し、かつ硫酸マグネシウム上で乾燥させた。ガラスフリットにより濾過した後で、濾液を濃縮した。以下の式の白金錯体7.54gが単離された:
PtCl2{P[−O−2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル−4−メトキシ−フェニル)]32
【0080】
触媒4の製造
アセトニトリル40ml中のPtCl2 1.33gの懸濁液およびアセトニトリル20ml中のビス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)−(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスフィット6.05gの溶液を窒素下で合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。その際に生成物が油状物として生じた。溶剤を留去し、油状の残留物をジエチルエーテル30ml中に取り込み、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過後に溶剤を留去した。以下の式の白金錯体5.95gが単離された:
PtCl2[P(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2)−(−O−2−t−ブチル−5−メチル−フェニル)]2
【0081】
触媒5の製造
アセトニトリル40ml中のPtCl2 1.33gの懸濁液およびアセトニトリル20ml中のトリス−(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスフィット6.47gの溶液を窒素下に合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。その際、生成物が生じた。該懸濁液を−20℃に冷却した。ガラスフィルターにより濾過した後に、生成物を乾燥させた。以下の式の白金錯体5.83gが単離された:
PtCl2[P(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)32
【0082】
触媒6の製造
無水エタノール40ml中のK2PtCl4 2.08gの懸濁液および無水エタノール20ml中のトリス−(イソデシル)ホスフィット7.31gの溶液を窒素下で合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。溶剤を留去し、かつ残留物をジエチルエーテル40ml中に取り込んだ。そのつど水20mlで3回振とうした。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、折りたたみ式濾紙により濾別し、かつ留去した。以下の式の白金錯体7.15gが単離された:
PtCl2[P(−O−イソデシル)32
【0083】
触媒7の製造
アセトニトリル40ml中のPtCl2 1.33gの懸濁液およびアセトニトリル20ml中のトリス−(2−t−ブチル−4−エチル)ホスフィット5.63gの溶液を窒素下に合し、かつ1時間加熱して沸騰させた。その際、生成物が生じる。該懸濁液を−20℃に冷却する。ガラスフィルターにより濾過した後に生成物を乾燥させた。以下の式の白金錯体5.83gが単離された:
PtCl2[P(−O−2−t−ブチル−4−エチル−フェニル)32
【0084】
触媒8の製造
無水ジエチルエーテル30ml中の触媒2の懸濁液2.0gに、−20℃でジエチルエーテル中のトリメチルアルミニウムの1.0モル溶液を添加する。反応混合物を加熱後に室温で1時間攪拌した。水20mlを慎重に添加した後で、エーテル相をデカンテーションにより分離する。水相をそのつど20mlのジエチルエーテルで3回振とうする。合した有機抽出物を無水の硫酸ナトリウムにより乾燥させる。溶剤を留去した後に、式:
Me2PtPt[P(−O−4−ノニルフェニル)32
の化合物1.5gが得られる。
【0085】
触媒9の製造
無水ジエチルエーテル30ml中の触媒5の懸濁液2.0gに、−20℃でメチルリチウムジエチルエーテルの2.0モル溶液7.2mlを添加した。反応混合物を加熱した後に1時間室温で攪拌する。水20mlを慎重に添加した後で、エーテル相をデカンテーションにより分離する。水相をそのつど20mlのジエチルエーテルで3回振とうする。合した有機抽出物を無水の硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶剤を留去した後に、式:
Me2PtP(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)32
の化合物1.7gが得られる。
【0086】
触媒10の製造
無水ジエチルエーテル30ml中の触媒5の懸濁液2.0gに、−20℃でブチルリチウムジエチルエーテルの2.0モル溶液7.2mlを添加する。反応混合物を加熱後に1時間室温で攪拌する。水20mlを慎重に添加した後で、エーテル相をデカンテーションにより分離する。水相をそのつど20mlのジエチルエーテルで3回振とうする。合した有機抽出物を無水の硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶剤を留去した後に式:
ブチル2PtP(−O−2,4−ジ−t−ブチルフェニル)32
の化合物2.1gが得られる。
【0087】
例1
一般的な方法:粘度20Pa・sを有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン50.0g、防止剤およびSiH架橋剤1.0gを、Janke&Kunkel IKA−Labortechnik社の攪拌機、RE162型を用いて均質に混合し、その際、SiH架橋剤は、ジメチルシロキシ単位およびメチルハイドロジェンシロキシ単位およびトリメチルシロキシ単位からなり、粘度330mPa・sおよびSi結合水素の含有率0.46質量%を有するコポリマーであった。引き続き、ジクロロメタン0.5ml中に溶解した白金錯体10ppm(Ptに対して)を添加し、かつ室温で攪拌した。
【0088】
例1において、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECH)3mgを防止剤成分として、および触媒1 3.2mg(Pt10ppmに相応)を使用した。
【0089】
例2
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、2−フェニル−3−ブチン−2−オール20.0mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒1を3.2mg攪拌導入する。
【0090】
例3
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、ジエチルマレエート3mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒1を3.2mg攪拌導入した。
【0091】
例4
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット2.0mgと、ジエチルマレエート2.0mgとの組み合わせを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒1を3.2mg攪拌導入した。
【0092】
例5
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット1.0mgおよびジエチルマレエート1.0mgを使用した。ここへ、触媒2を4.3mg攪拌導入した。
【0093】
例6
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、ECH3mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒3を5.0mg攪拌導入した。
【0094】
例7
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット1.0mgおよびジエチルマレエート1.0mgからなる組み合わせを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒4を3.9mg攪拌導入した。
【0095】
例8
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット1.0mgと、ジエチルマレエート1.0mgとからなる組み合わせを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒5を4.1mg攪拌導入した。
【0096】
例9
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、ECH3mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒6を3.3mg攪拌導入した。
【0097】
例10
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、ECH3mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒7を3.6mg攪拌導入した。
【0098】
例11
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、ECH3mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒8を3.8mg攪拌導入した。
【0099】
例12
例1に記載した方法を繰り返したが、ただしその際、防止剤成分として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット1.0mgおよびジエチルマレエート1.0mgを使用した点が異なっていた。ここへ、触媒9を3.8mg攪拌導入した。
【0100】
比較例1:
比較例として、白金ジビニルテトラメチルシロキサン錯体(1)を用いて架橋を開始したが、これは、ECHのような防止剤物質の添加にもかかわらず50℃で1日よりも短い可使時間を有している。
【0101】
可使時間は低粘性の模範処方を目視により評価することによって確認し、始動温度は選択された方法パラメーターに依存し、かつDIN53529T3に準拠した方法を用いて測定した。
【0102】
以下の略号を使用する:
Bsp 例
Kat 触媒
Inh 防止剤
ECH 1−エチニル−1−シクロヘキサノール
Temp 始動温度
Δt 50℃での可使時間
Kat0 白金ジビニルテトラメチルシロキサン錯体、「カールステッド触媒」
Vgl1 比較例1
第1表には、例1〜10ならびに比較例の始動温度および可使時間が記載されている。少なくとも2日間の可使時間を達成できたことが明らかである。
【0103】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
12Pt[P(OR2332 (I)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に
ハロゲン
1の負電荷を有する無機の基、
CR33、その際、R3は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、Hを表すか、1〜18個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状の脂肪族基を表すか、6〜31個の炭素原子を有するアリールアルキル基を表し、
OR3、その際、R3は、上記のものを表し、
SiR33、その際、R3は、上記のものを表し、
2は、同じであるか、または異なっており、相互に無関係に、
式Cn2n+1(n=5〜18)または式Cm2m-1(m=5〜31)のアルキル、
式−(C65-p)−(Co2o+1p(o=1〜31およびp=1〜5)のアリールアルキル
を表し、その際、上記化合物のR1およびR2に関して水素原子は、基−NH2、−COOH、−F、−Br、−Cl、−アリールまたは−アルキルにより置換されているか、または置換されていない]の白金触媒(D)。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応のため、不飽和有機化合物またはポリマーの水素化のため、およびアルキンのオリゴマー化のための触媒としての請求項1記載の白金触媒の使用。
【請求項3】
以下の
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)および(D)、
そのつど少なくとも1の化合物(C)および(D)、および
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)、(C)および(D)、
を含む群から選択される付加架橋性シリコーン組成物であって、
(A)は、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を少なくとも2つ有する有機化合物または有機ケイ素化合物であり、
(B)は、Si結合水素原子を少なくとも2つ有する有機ケイ素化合物であり、
(C)は、脂肪族炭素−炭素多重結合およびSi結合水素原子を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物であり、かつ
(D)は白金触媒である
付加架橋性シリコーン組成物において、白金触媒(D)が、請求項1に記載の白金触媒であることを特徴とする、付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項4】
更なる成分(E)として、防止剤または安定剤または少なくとも2種類の成分(E)の混合物を、組成物の全質量に対して0.00001%〜5%の量割合で含有していることを特徴とする、請求項3記載の付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項5】
強化用充填剤および非強化用充填剤、分散助剤、溶剤、付着促進剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、殺菌剤、香料、レオロジー助剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤および電気的特性に影響を与えるための添加剤を含む群から選択される更なる成分(F)を含有していることを特徴とする、請求項3または4記載の付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項6】
別の成分として、少なくとも1の付加架橋性触媒(G)を含有していることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の付加架橋性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項3から6までのいずれか1項記載の付加架橋性シリコーン組成物の製造方法において、
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)および(D)、
そのつど少なくとも1の化合物(C)および(D)、または
そのつど少なくとも1の化合物(A)、(B)、(C)および(D)
を相互に混合することを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項記載の付加架橋性シリコーン組成物の製造方法。
【請求項8】
そのつどさらに、(E)、(F)、(G)を含む化合物の群からのなお更なる化合物を混合導入することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
成形体を製造するため、シリコーン被覆のため、含浸のため、印象を製造するため、封止、埋め込みおよび注型への適用のための、請求項3から6までのいずれか1項記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2009−82914(P2009−82914A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244381(P2008−244381)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】