説明

硬化性システム

少なくとも2種の組成物(A)と(B)を含んでなる硬化性システム、硬化物の製造方法、および該製造方法によって得られる硬化物が開示されている。さらに、硬化物を電気絶縁体として使用すること、および硬化物を電気機器の構成要素や部品の製造に使用することが開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の組成物(A)と(B)を少なくとも含む硬化性システム、硬化物を製造するための方法、および、該方法によって得られる硬化物に関する。本発明はさらに、硬化物を電気絶縁体として使用すること、および、電気機器の構成要素や部品を製造するために硬化性システムを使用すること、に関する。
【背景技術】
【0002】
注型エポキシ樹脂絶縁体を製造するための一般的な方法は自動圧力ゲル化法(AFG法)である。AFG法では、反応混合物を高温金型中に注入する前に、エポキシ樹脂組成物(組成物A)とエポキシ樹脂用硬化剤を含む組成物(組成物B)とを含んでなる硬化性システムを、いつでも注入できるように調製しておくことが要求される。
【0003】
予備充填システム(すなわち、フィラーを含んだ組成物を有するシステム)の場合は、組成物中のフィラーが沈降するために、供給容器にて組成物をかき混ぜなければならない。一般に、均一な配合物を得るためには、フィラー含有組成物を加熱・撹拌しなければならない。硬化性システムの各組成物を均一にした後、組成物を合わせて混合器に移し、配合物から脱気するために高温・減圧にて混合する。脱気した混合物を、引き続き高温金型中に注入する。
【0004】
非予備充填システムの場合は、一般には、エポキシ樹脂組成物と硬化剤組成物を、高温・減圧にてフィラーと、そして必要に応じてさらに添加剤と個別に混合して、樹脂と硬化剤に対する予備混合物を調製する。さらなる工程において、2種の組成物を合わせて(一般には、高温・減圧にて混合することによって)最終反応混合物を作製する。引き続き、脱気した混合物を金型中に注入する。
【0005】
しかしながら、先行技術にて公知のAPG法は幾つかの工程 (すなわち、フィラーの沈降を防止するための撹拌工程、そしてさらに脱気工程)を必要とする。
シリコーンプロセス法の分野では、2種の組成物をスタティックミキサーで脱気もしくは予備撹拌することなく、個々の供給容器から周囲温度にて金型中にポンプ移送するという硬化性システムである。混合・投入装置は、金型中に注入することができる反応性混合物を調製すべく2種の組成物を処理するための要件を満たすに足る装置である。製造しようとする物品のサイズに応じて、それぞれの体積量を、スタティックミキサーを介して金型中に注入する。
【0006】
全てのシリコーン注入システムの基本設計は、異なる組成物を保持するためのベースフレーム(a base frame)で構成される。組成物は、市販のドラム缶中に貯蔵することができる。油圧制御により、投入ポンプの同期動作が確実になされる。
【0007】
従来の硬化システムは、「シリコーンプロセス」に適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、エポキシ樹脂をベースとする硬化性システムを「シリコーンプロセス」に適合させることである。しかしながらこれは、組成物のそれぞれが沈降安定性を有し(すなわち、フィラーが沈降しにくい)、いったん組成物を混ぜ合わせたら、良好な流動性を保持しなければならない、という硬化性システムを必要とする。特に、高温金型中への注入後に良好な流動性を保持しなければならない。
【0009】
本発明の目的は、先行技術に開示のプロセス技術に関連した問題点を克服することである。本発明の目的はさらに、より経済的で有利な仕方にて硬化エポキシ物品の製造方法に適用できる硬化性システムを提供することである。
【0010】
驚くべきことに、上記の問題点は、少なくとも2種の組成物の特定の組み合わせを含む硬化性システムによって解決することができる、ということが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の実施態様は、少なくとも2種の組成物(A)と(B)を含んでなる硬化性システムであって、ここで組成物(A)が、a−1)少なくとも1種のエポキシ樹脂;a−2)ヒュームド金属酸化物、ヒュームド半金属酸化物、および層状シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の無機チキソトロープ剤;a−3)少なくとも1種の有機ゲル化剤;およびa−4)組成物(A)の総重量を基準として少なくとも10重量%の1種以上のフィラー;を含み、組成物(B)が、b−1)エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤;b−2)ヒュームド金属酸化物、ヒュームド半金属酸化物、および層状シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の無機チキソトロープ剤;b−3)カルバメートから選択される少なくとも1種の有機チキソトロープ剤;およびb−4)組成物(B)の総重量を基準として少なくとも10重量%の1種以上のフィラー;を含む。
【0012】
本発明の硬化性システムの組成物(A)は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。成分a−1)として好適なエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂技術において一般的に使用されているものである。エポキシ樹脂の例としては以下のようなものがある:
I)分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物と、それぞれエピクロロヒドリンおよびβ−メチルエピクロロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエステルおよびポリ(β−メチルグリシジル)エステル。この反応は、塩基の存在下で行うのが有利である。
【0013】
脂肪族ポリカルボン酸を、分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物として使用することができる。このようなポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、二量化リノール酸、または三量化リノール酸などがある。
【0014】
しかしながら、脂環式ポリカルボン酸(例えば、ヘキソヒドロフタル酸や4−メチルヘキサヒドロフタル酸)も使用することができる。
芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、またはテレフタル酸)、ならびに部分水素化芳香族ポリカルボン酸(例えば、テトラヒドロフタル酸や4−メチルテトラヒドロフタル酸)も使用することができる。
【0015】
II)少なくとも2つの遊離のアルコール性ヒドロキシ基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物と、エピクロロヒドリンまたはβ−メチルエピクロロヒドリンとを、アルカリ性条件下あるいは酸触媒の存在下(引き続きアルカリ処理を施す)にて反応させることによって得られるポリグリシジルエーテルまたはポリ(β−メチルグリシジル)エーテル。
【0016】
この種のグリシジルエーテルは、例えば、非環式アルコールから〔例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、より高級のポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはソルビトールから〕、そしてさらにポリエピクロロヒドリンから誘導される。
【0017】
この種のさらなるグリシジルエーテルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の脂環式アルコールから、あるいはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンやp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタン等の、芳香族基及び/又はさらなる官能基を有するアルコールから誘導される。グリシジルエーテルはさらに、単核フェノール(例えば、レゾルシノールやヒドロキノン)をベースにしてもよいし、あるいは多核フェノール〔例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、または2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロハパン〕をベースにしてもよい。
【0018】
グリシジルエーテルの製造に好適なさらなるヒドロキシ化合物は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール、またはフルフラルデヒド)と、未置換であるか、あるいは塩素原子もしくはC−Cアルキル基で置換されたフェノール類やビスフェノール類(例えば、フェノール、4−クロロフェノール、2−メチルフェノール、または4−tert−ブチルフェノール)との縮合反応によって得られるノボラックである。
【0019】
III)少なくとも2つのアミン水素原子を含有するアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物の脱塩化水素によって得られるポリ(N−グリシジル)化合物。このようなアミンとしては、例えば、アニリン、n−ブチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、m−キシレンジアミン、またはビス(4−メチルアミノフェニル)メタンなどがある。
【0020】
しかしながら、ポリ(N−グリシジル)化合物としてはさらに、トリグリシジルイソシアヌレート、シクロアルキレンウレア(例えば、エチレンウレアや1,3−プロピレンウレア)のN,N’−ジグリシジル誘導体、およびヒダントイン(例えば5,5−ジメチルヒダントイン)のジグリシジル誘導体などがある。
【0021】
IV)ジチオール〔例えば、エタン−1,2−ジチオールやビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル〕から誘導されるポリ(S−グリシジル)化合物(例えばジ−S−グリシジル誘導体)。
【0022】
V)脂環式エポキシ樹脂〔例えば、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3−エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、または3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〕。
【0023】
しかしながら、1,2−エポキシ基が、異なるヘテロ原子もしくは官能基に結合しているエポキシ樹脂も使用することができる。このような化合物としては、例えば、4−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテルグリシジルエステル、N−グリシジル−N’−(2−グリシジルオキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、および2−グリシジルオキシ−1,3−ビス(5,5−ジメチル−1−グリシジルヒダントイン−3−イル)プロパンなどがある。
【0024】
本発明の文脈における「脂環式エポキシ樹脂」とは、脂環式構造単位を有する任意のエポキシ樹脂(すなわち、脂環式グリシジル化合物とβ−メチルグリシジル化合物を含む)、およびシクロアルキレンオキシドをベースとするエポキシ樹脂を表わす。「室温(RT)にて液体」とは、25℃にて液体である〔すなわち、低〜中粘度(115型Rheomat装置を使用して、MS DIN 125、D=11/s、25℃での測定にて約20000mPa・s未満の粘度)を有する〕注入可能な化合物を意味するものとする。
【0025】
好適な脂環式グリシジル化合物とβ−メチルグリシジル化合物は、脂環式ポリカルボン酸(例えば、テトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、および4−メチルヘキサヒドロフタル酸)のグリシジルエステルとβ−メチルグリシジルエステルである。
【0026】
さらなる好適な脂環式エポキシ樹脂は、脂環式アルコール〔例えば、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキス−3−エン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、およびビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)スルホン〕のジグリシジルエーテルとβ−メチルグリシジルエーテルである。
【0027】
シクロアルキレンオキシド構造を有するエポキシ樹脂の例としては、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3−エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エタン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
【0028】
好ましい脂環式エポキシ樹脂は、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、および特にヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルである。
【0029】
脂肪族エポキシ樹脂も使用することができる。「脂肪族エポキシ樹脂」としては、不飽和脂肪酸エステルのエポキシ化物を使用することができる。12〜22個の炭素原子と30〜400のヨウ素価を有するモノ脂肪酸およびポリ脂肪酸(例えば、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、リカン酸、アラキドン酸、およびクルパノドン酸)から誘導されるエポキシ含有化合物を使用するのが好ましい。
【0030】
好適なのは、例えば、大豆油、アマニ油、エゴマ油、キリ油、オイチシカ油、サフラワー油、ケシ油、大麻油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、ポリ不飽和トリグリセリド、ポリ不飽和トリグリセリド、トウダイグサ属植物からのトリグリセリド、落花生油、オリーブ油、オリーブ核油、扁桃油、カポック油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット核油、ブナ油(beechnut oil)、ルピナス油(lupin oil)、トウモロコシ油、ゴマ油、ブドウ種子油、lallemantia oil、ヒマシ油、ニシン油、イワシ油、メンヘーデン油、鯨油、トール油、およびこれらの誘導体のエポキシ化物である。
【0031】
これらの油に引き続き脱水素反応を施すことによって得られるより高級の不飽和誘導体も好適である。
上記化合物の不飽和脂肪酸基のオレフィン性二重結合を、公知の方法にしたがって〔例えば、過酸化水素(必要に応じて触媒の存在下で)、アルキルヒドロペルオキシド、または過酸(例えば、過ギ酸や過酢酸)との反応によって〕エポキシ化することができる。完全エポキシ化油も、そしてまだ遊離二重結合を含有する部分エポキシ化誘導体も、本発明の範囲内にて成分a−1)として使用することができる。
【0032】
上記エポキシ樹脂I)〜V)の混合物も使用することができる。組成物(A)は、25℃にて液体または固体の芳香族グリシジルエーテル、芳香族グリシジルエステル、脂環式グリシジルエーテル、もしくは脂環式グリシジルエステルを含むのが好ましく、特に好ましいのは、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルもしくはジグリシジルエステルである。好ましいエポキシ樹脂はさらに、ポリグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエステルとアルコール(例えばジオール)との反応によって得ることができる。ジオールとの反応により分子量が増大する。
【0033】
特に好ましいのは、等モル量未満のビスフェノールAと反応させて得られるビスフェノールAグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、比較例2の組成物R2の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.01〜10Hzの周波数範囲において貯蔵弾性率が損失弾性率より低く、このことは、組成物R2が貯蔵/沈降安定性ではないということを示している。
【図2】図2は、比較例3の組成物R3の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物R3が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。
【図3】図3は、本発明の硬化性システムの組成物A1の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物A1が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。さらに、10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率とがほぼ等しく、このことは、組成物A1がポンプ移送可能であるということを示している。
【図4】図4は、組成物H2の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.01〜10Hzの周波数範囲において貯蔵弾性率が損失弾性率より低く、このことは、組成物H2が貯蔵/沈降安定性ではないということを示している。
【図5】図5は、比較例3の組成物H3の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物R3が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。
【図6】図6は、本発明の硬化性システムの組成物B1の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物B1が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。さらに、10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率とがほぼ等しく、このことは、組成物B1がポンプ移送可能であるということを示している。
【図7】図7は、組成物A1と組成物B1との混合物(容量混合比は1:1)の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、貯蔵/沈降安定性が良好であることを示している。10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率がほぼ等しく、このことは、ポンプ移送挙動が良好であることを示している。
【図8】2つのマルテンス・モールド(martens mold)を組み込んだプレートを組み立てる。
【図9】2つのマルテンス・モールド(martens mold)を組み込んだプレートを組み立てる。
【図10】図10は、比較例3の硬化性システム(硬化性システムC3)の流動挙動と、硬化性システムC4の流動挙動を示す。同じ条件下では、本発明の硬化性システムC4のほうが、(本発明によらない)硬化性システムC3より良好な流動性を示す、ということがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好ましい実施態様によれば、組成物(A)は、ポリグリシジルエステル、ポリ(β−メチルグリシジル)エステル、ポリグリシジルエーテル、ポリ(β−メチルグリシジル)エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂を含む。
【0036】
組成物(A)は、好ましくはビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクヘキサンカルボキシレート、およびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される脂環式エポキシ樹脂を含むのが好ましい。
【0037】
好ましい実施態様によれば、組成物(A)は、1種以上のエポキシ樹脂を、組成物(A)の総重量を基準として20〜90重量%(好ましくは25〜85重量%、さらに好ましくは30〜75重量%)の範囲の量にて含む。
【0038】
組成物(A)と組成物(B)は、ヒュームド金属酸化物、ヒュームド半金属酸化物、および層状シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の無機チキソトロープ剤を、互いに独立して含む。無機チキソトロープ剤は、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、表面処理ヒュームドシリカ、ベントナイト、モンモリロナイト、表面処理ベントナイト、および表面処理モンモリロナイトからなる群から選択するのが好ましい。
【0039】
さらなる好ましい実施態様によれば、本発明の硬化性システムの組成物(A)及び/又は組成物(B)は、1μm未満の平均粒径d50(ISO 13320−1:1999に従って測定)を有する1種以上の無機チキソトロープ剤を含む。
【0040】
50は、粒径の中央値として知られている。これは、粉末が、d50値より大きい粒径を有する粒子を50%、およびd50値より小さい粒径を有する粒子を50%含む、ということを意味している。
【0041】
さらなる好ましい実施態様によれば、無機チキソトロープ剤は表面処理ヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、好ましくはアミノシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、メチルシラン、およびビニルシランからなる群から選択されるシランで表面処理するのが好ましい。
【0042】
組成物(A)は、1種以上の無機チキソトロープ剤を、組成物(A)の総重量を基準として0.1〜5重量%(好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜3重量%)の範囲の量にて含むのが好ましい。
【0043】
同様に、組成物(B)は、1種以上の無機チキソトロープ剤を、組成物(B)の総重量を基準として0.1〜5重量%(好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜3重量%)の範囲の量にて含むのが好ましい。
【0044】
本発明の硬化性システムの組成物(A)はさらに、少なくとも1種の有機ゲル化剤を含む。本発明の意義の範囲内での有機ゲル化剤は、増粘効果に対して強い逆温度依存性を示す成分である。組成物(A)は、(i)ステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、エルカ酸、ラウリン酸、エチレンビス(ステアリン酸)、およびエチレンビス(オレイン酸)からなる群から選択される脂肪酸と、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、およびポリエチレンポリアミンからなる群から選択されるポリアミンとの反応生成物;(ii)ヒマシ油ワックス;(iii)1〜12個の炭素原子を有するアルキル基と1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基からなる群から選択される置換基を、必要に応じてフェニル環上に有するジベンジリデン−ソルビトールとトリベンジリデン−ソルビトールからなる群から選択されるソルビトール誘導体;および(iv)N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,Y−ジ−n−ブチルアミド、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、12−ヒドロキシステアリン酸;からなる群から選択される1種以上の有機ゲル化剤を含むのが好ましい。好ましい実施態様によれば、組成物(A)は、ジベンジリデン−ソルビトール、トリベンジリデン−ソルビトール、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される有機ゲル化剤を含む。
【0045】
組成物(A)は、1種以上の有機ゲル化剤を、組成物(A)の総重量を基準として0.1〜10重量%(好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%)の範囲の量にて含むのが好ましい。
【0046】
本発明の硬化性システムの組成物(A)と組成物(B)は、1種以上のフィラーを少なくとも10重量%含む。
組成物(A)及び/又は組成物(B)は、互いに独立して、金属粉末、木粉、ガラス粉末、ガラスビーズ、半金属酸化物、金属酸化物、金属水酸化物、半金属窒化物、金属窒化物、半金属炭化物、金属炭化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、天然鉱物、および合成鉱物からなる群から選択される1種以上のフィラーを含む。
【0047】
好ましいフィラーは、ケイ砂、シラン処理石英粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、Mg(OH)、Al(OH)、シラン処理Al(OH)、AlO(OH)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ドロマイト、白亜、CaCO、バライト、石膏、ハイドロマグネサイト、ゼオライト、滑石、雲母、カオリン、および珪灰石からなる群から選択される。
【0048】
特に好ましいのは珪灰石または炭酸カルシウムである。
好ましい実施態様によれば、硬化性システムは、1〜300μm(さらに好ましくは5〜20μm)の範囲の平均粒径d50(ISO 13320−1:1999に従って測定)を有する1種以上のフィラーを含む組成物(A)及び/又は組成物(B)を含んでなる。
【0049】
本発明の好ましい実施態様によれば、硬化性樹脂システムは、フィラーを、組成物(A)と組成物(B)の合計重量を基準として40重量%以上(好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上)の量にて含む。
【0050】
組成物(B)は、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤を含む。エポキシ樹脂用の硬化剤は無水物硬化剤であるのが好ましく、ポリカルボン酸無水物であるのがさらに好ましい。
【0051】
無水物硬化剤は、直鎖状脂肪族ポリマー無水物(例えば、ポリセバシン酸ポリ無水物、ポリアゼライン酸ポリ無水物、または環状カルボン酸無水物)であってよい。
環状カルボン酸無水物が特に好ましい。
【0052】
環状カルボン酸無水物の例としては、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水アルケニル置換コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水トリカリバリル酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、メチルシクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、リノール酸−無水マレイン酸付加物、無水アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、および無水テトラヒドロフタル酸などがあり、最後の2つの化合物の異性体混合物が特に好適である。
【0053】
硬化剤は、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチル−4−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、および無水テトラヒドロフタル酸からなる群から選択される無水物硬化剤であるのが好ましい。
【0054】
無水物硬化剤は、二無水物と等モル量未満のジオールとの反応によって得られるポリエステル無水物であるのがさらに好ましい。
特に好ましいのは、スイスのHuntsman社からAraldite(登録商標)HY925の商品名で市販されている、無水メチルテトラヒドロフタル酸とグリコールとの反応生成物である。
【0055】
本発明の硬化性システムの組成物(B)は、1種以上のエポキシ樹脂用硬化剤を、組成物(B)の総重量を基準として20〜90重量%(好ましくは25〜85重量%、さらに好ましくは30〜75重量%)の範囲の量にて含むのが好ましい。
【0056】
硬化性システムの組成物(B)はさらに、カルバメートから選択される少なくとも1種の有機チキソトロープ剤を含む。
本発明の意義の範囲内にて、カルバメートは、少なくともウレタン基またはカルバミド基を有する化合物に対する総称である。
【0057】
有機チキソトロープ剤は、増粘効果に対して強いせん断依存性を示す成分である。好適なカルバメートは、ドイツのBYK Chemie社からBYK(登録商標)410、BYK(登録商標)E410、およびBYK(登録商標)411の商品名で市販されているカルバミドである。特に好ましいのは、ウレア−ウレタンであるカルバメートである。ウレア−ウレタンは、ドイツ特許DE 102 41 853 B3に従って製造することができる。さらに好ましいのは、ウレア−ウレタン重合体〔BYK(登録商標)410として市販されている〕であるカルバミドである。特に好ましいのは、ジイソシアネートとポリオールとの第1の反応(ここでNCO末端ウレタンプレポリマーと過剰のジイソシアネートとを含むイソシアネート混合物を形成するよう、過剰のジイソシアネートが使用される);および引き続いて行われる、少なくとも1種の第一モノアミンと少なくとも1種の第一ジアミンを含むアミン混合物と該イソシアネート混合物との第2の反応(ここでジアミンの量は、第1モノアミンと第一ジアミンの混合物の100当量を基準として0.1〜45当量である);によって製造されるウレア−ウレタンであるカルバメートである。但しこのとき、第2の反応後において存在するウレア−ウレタン重合体は、イソシアネート、モノアミン、およびジアミンを実質的に含有せず、ジイソシアネート、ポリオール、モノアミン、およびジアミンは、単一成分であっても、あるいは混合物であってもよい。
【0058】
DE 102 41 853 B3の実施例23に従って製造されるウレア−ウレタン重合体が特に好ましいカルバミドである。
好ましい実施態様によれば、本発明の硬化性システムの組成物(B)は、1種以上の有機チキソトロープ剤を、組成物(B)の総重量を基準として0.1〜10重量%(好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%)の範囲の量にて含む。
【0059】
組成物(A)及び/又は組成物(B)は、損失弾性率G”より高い貯蔵弾性率G’〔ISO6721−10に従って、TA Instrument AR−G2(応力制御レオメーター)を使用して25℃および0.1Hz未満の周波数にて測定〕を有するのが好ましい。
【0060】
さらに好ましいのは、組成物(A)と組成物(B)との1:1容量混合比の混合物が、損失弾性率に対する値とは20%未満(好ましくは10%未満)異なる貯蔵男性率〔ISO6721−10に従って、TA Instrument AR−G2(応力制御レオメーター)を使用して25℃および10Hzの周波数にて測定〕に対する値を有する、という硬化性システムである。
【0061】
好ましい実施態様によれば、本発明の硬化性システムは、組成物(A)と組成物(B)を1:10〜10:1(好ましくは9:1〜1:9、さらに好ましくは7:3〜3:7、最も好ましくは6:4〜4:6)の容量比にて含む。
【0062】
組成物(B)は、硬化促進剤をさらに含んでよい。
本発明の組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を追加成分として含む。好適な促進剤は当業者に公知である。例としては、アミン(特に第三アミン)と三塩化ホウ素もしくは三フッ化ホウ素との錯体;第三アミン(例えばベンジルジメチルアミン);ウレア誘導体(例えばN−4−クロロフェニル−N’,N”−ジメチルウレア(モニュロン));および未置換もしくは置換イミダゾール類(例えば、イミダソールや2−フェニルイミダゾール);などを挙げることができる。
【0063】
好ましい促進剤は、第三アミン(特にベンジルジメチルアミン)とイミダゾール類(例えば1−メチルイミダゾール)である。
硬化促進剤は通常、エポキシ樹脂100重量部当たり0.1〜20重量部の量にて使用する。
【0064】
組成物(A)及び/又は組成物(B)はさらに、さらなる添加剤(例えば、柔軟剤、沈降防止剤、着色剤、消泡剤、光安定剤、離型剤、強化剤、接着促進剤、および難燃剤)を含んでよい。
【0065】
本発明のさらなる実施態様は、a)本発明の硬化性システムの組成物(A)と組成物(B)とを含む混合物を調製する工程;およびb)工程a)において得られた混合物を少なくとも部分的に硬化させる工程;を含む、硬化物の製造方法である。
【0066】
工程a)において調製した混合物を、予熱形態物(a preheated form)に塗布するのが好ましく、予熱形態物中に注入するのがさらに好ましい。
好ましい実施態様によれば、本発明の製造方法は、a)000000本発明の硬化性システムの組成物(A)と組成物(B)とを含む混合物を調製する工程;b)120〜170℃の範囲の温度を有する予熱形態物中に該混合物を注入する工程;c)該混合物を少なくとも部分的に硬化させる工程;d)予熱形態物から取り出す工程;およびe)部分的に硬化した混合物を、必要に応じて後硬化させる工程;を含む。
【0067】
予熱形態物は、130〜160℃の範囲の温度を有するのが好ましい。工程a)において調製された混合物は、好ましくは130〜160℃の範囲の温度で熱硬化させるのがさらに好ましい。工程a)において調製された混合物は、一般には少なくとも10分硬化させ、好ましくは10〜60分硬化させる。
【0068】
本発明の方法のさらなる利点は、組成物(A)も組成物(B)も沈降を起こしにくく、このため該組成物を撹拌によって均質化する必要がない、ということである(撹拌を行うと、その後に脱気工程が必要となる)。
【0069】
したがって、本発明の方法は脱気工程を含まないのが好ましい。本発明の方法は、電気絶縁体を製造するのに使用するのが好ましい。したがって好ましい実施態様によれば、硬化物は電気絶縁体である。
【0070】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の方法によって得られる硬化物(好ましくは電気絶縁体)である。
本発明のさらなる実施態様は、本発明の方法によって得られる硬化物を電気絶縁体として使用することである。
【0071】
本発明の硬化性システムは、電気機器の構成要素や部品の製造分野に適用するのが好ましい。したがって本発明のさらなる実施態様は、本発明の硬化性システムを、電気機器の構成要素や部品の製造に使用すること(好ましくは、電気絶縁体の製造に使用すること)である。
【実施例】
【0072】
【表1】

【0073】
比較例1:組成物R1とH1を含む硬化性システム
組成物R1の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、419.5gのエポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕、2.0gのAerosil(登録商標)R202、2.0gのDynasylan(登録商標)GLYMO、1.0gのBYK(登録商標)A501、3.0gのBayferrox(登録商標)316F、および7.0gのBayferrox(登録商標)645Tを装入する。60℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら565.5gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて60℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0074】
組成物H1の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、354.6gの無水物硬化剤〔Aradur(登録商標)HY925〕、2.0gのAerosil(登録商標)R202、および1.0gのBYK(登録商標)A501を装入する。50℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら598.2gの珪灰石と44.2gのSocal(登録商標)U1S2を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて50℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0075】
比較例2:組成物R2とH2を含む硬化性システム
組成物R2の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、388.8gのエポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕、2.0gのAerosil(登録商標)R202、2.0gのDynasylan(登録商標)GLYMO、1.0gのBYK(登録商標)A501、3.0gのBayferrox(登録商標)316F、および7.0gのBayferrox(登録商標)645Tを装入する。
60℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら596.2gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて60℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0076】
組成物H2の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、180.0gの無水物硬化剤〔Aradur(登録商標)HY225〕、140.0gのAradur(登録商標)HY918、2.17gの促進剤DY070、3.0gのAerosil(登録商標)R202、1.0gのBYK(登録商標)A501、および1.0gのBYK(登録商標)A410を装入する。50℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら672.83gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて50℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0077】
比較例3:組成物R3とH3を含む硬化性システム
組成物R3の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、388.8gのエポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕、10.0gのAerosil(登録商標)R202、2.0gのDynasylan(登録商標)GLYMO、1.0gのBYK(登録商標)A501、5.0gのBYK(登録商標)410、3.0gのBayferrox(登録商標)316F、および7.0gのBayferrox(登録商標)645Tを装入する。60℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら583.2gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて60℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0078】
組成物H3の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、180.0gの無水物硬化剤〔Aradur(登録商標)HY225〕、140.0gのAradur(登録商標)HY918、2.17gの促進剤DY070、10.0gのAerosil(登録商標)R202、1.0gのBYK(登録商標)A501、および5.0gのBYK(登録商標)A410を装入する。50℃にまで加熱しながら、そして減圧(10ミリバール)にて100rpmで撹拌しながら、これらの成分を30分混合する。引き続き、100rpmで撹拌しながら661.83gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて50℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0079】
本発明の実施例:組成物A1と組成物B1を含む本発明の硬化性システム
組成物A1の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に260.0gのエポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕を装入し、100rpmにて撹拌しながら110℃まで加熱する。110℃にて2.7gのIrgaclear(登録商標)Dを樹脂に加え、この混合物を110℃で2時間撹拌する。透明溶液を得た後、128.8gのエポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕を加え、混合物を65℃に冷却し、2.0gのAerosil(登録商標)R202、2.0gのDynasylan(登録商標)GLYMO、1.0gのBYK(登録商標)A501、3.0gのBayferrox(登録商標)316F、および7.0gのBayferrox(登録商標)645Tを、さらに容器中に装入する。本混合物を、減圧(10ミリバール)にて60℃で、100rpmで15分撹拌する。引き続き、100rpmで撹拌しながら593.5gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて60℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0080】
組成物B1の作製
溶解機、アンカー攪拌機、および真空ポンプを備えた2.5リットルの加熱可能なESCO(登録商標)混合装置に、140.0gの無水物硬化剤〔Aradur(登録商標)HY225〕、180.0gのAradur(登録商標)HY918、2.17gの促進剤DY070、15.0gのAerosil(登録商標)R202、1.0gのBYK(登録商標)A501、および5.0gのBYK(登録商標)A410を装入する。本混合物を、減圧(10ミリバール)にて50℃で、100rpmで30分撹拌する。引き続き、100rpmで撹拌しながら656.83gの珪灰石を少量ずつ加え、次いで溶解機を3000rpmにて約5分使用する。最後に、混合物を、減圧(10ミリバール)にて50℃で、100rpmで30分撹拌する。
【0081】
下記の表に記載の量は重量部にて表示されている。
【0082】
【表2−1】

【0083】
【表2−2】

【0084】
比較例4
下記の成分を別々に含む硬化性システム: R4 エポキシ樹脂〔Araldite(登録商標)CY225〕;H4 Aradur(登録商標)HY925;およびF4 Millisil(登録商標)W12。
【0085】
硬化性システムを硬化させる前に、成分を以下の量にて混合する: 100重量部のR4;80重量部のH4;および270重量部のF4。
硬化物の作製
(I)下記の工程による、比較例4に基づいた硬化物(C2)の製造
1.シリカをオーブン中にて100℃で乾燥する
2.エポキシ樹脂R4を樹脂用の混合機中に、そして硬化剤H4を硬化剤用の別の混合機に入れる
3.樹脂R4と硬化剤H4を約40℃に加熱する
4.樹脂R4と硬化剤H4に乾燥シリカを加える
5.樹脂R4とシリカを、そして硬化剤H4とシリカを、50℃および5ミリバールの圧力にて2時間混合する
6.樹脂R4とフィラーを、そして硬化剤H4とフィラーを合わせる
7.合わせた混合物を50℃および5ミリバールにて混合する
8.混合物を圧力ポットに移す
9.圧力ポットから金型(T=140℃)に注入する
10.材料を金型中にて20分保持する
11.金型を開き、部品を取り出す
12.部品を140℃のオーブン中に10時間静置する。
【0086】
(II)下記の工程によって、比較例1と比較例3に基づいて硬化物C1とC3を製造するための一般的な手順:
1.エポキシ樹脂を含む組成物と硬化剤を含む組成物を、供給容器中にて40〜50℃で10時間予熱する
2.2つの組成物を合わせ、混合物を混合機中に移す
3.混合物を5ミリバールで1時間混合する
4.混合物を圧力ポットに移す
5.圧力ポットから金型(T=140℃)に注入する
6.材料を金型中にて20分保持する
7.金型を開き、部品を取り出す
8.部品を140℃のオーブン中に10時間静置する。
【0087】
(III)本発明の実施例による硬化性システムをベースとして、本発明に従って硬化物(C4)を製造するための方法
1.組成物A1と組成物B1の容器を、受け入れたままの状態で用意し、標準的な二成分投与・計量装置(DOPAG社、2KM社、Rheinhard Tech社、および他社等の装置メーカーから供給)を使用する
2.組成物A1と組成物B1を、25℃にて同じ流量で、スタティックミキサーを介して金型(T=140℃)中にポンプ移送する
3.混合物を金型中に20分保持する
4.金型を開き、完成部品を取り出す。
【0088】
【表3】

【0089】
沈降安定性
硬化性システムを作製するのに使用される組成物の沈降安定性を調べるために、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を、25℃で0.01Hz〜10Hzの周波数範囲にて測定した。測定は、ISO6721−10に従って、TA Instrument AR−G2(応力制御レオメーター)を使用して、25℃で0.01Hz〜10Hzの範囲にて行った。
【0090】
0.1Hzより低い周波数にて貯蔵弾性率(G’)が損失弾性率(G”)より高い場合に、良好な貯蔵安定性/沈降安定性が観察された。
10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率がほぼ等しいということは、組成物のポンプ移送挙動が良好であるということを示している。
【0091】
図1は、比較例2の組成物R2の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。
0.01〜10Hzの周波数範囲において貯蔵弾性率が損失弾性率より低く、このことは、組成物R2が貯蔵/沈降安定性ではないということを示している。
【0092】
図2は、比較例3の組成物R3の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物R3が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。
【0093】
図3は、本発明の硬化性システムの組成物A1の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物A1が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。さらに、10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率とがほぼ等しく、このことは、組成物A1がポンプ移送可能であるということを示している。
【0094】
図4は、組成物H2の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。
0.01〜10Hzの周波数範囲において貯蔵弾性率が損失弾性率より低く、このことは、組成物H2が貯蔵/沈降安定性ではないということを示している。
【0095】
図5は、比較例3の組成物H3の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。
0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物R3が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。
【0096】
図6は、本発明の硬化性システムの組成物B1の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。
0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、組成物B1が貯蔵/沈降安定性であるということを示している。さらに、10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率とがほぼ等しく、このことは、組成物B1がポンプ移送可能であるということを示している。
【0097】
図7は、組成物A1と組成物B1との混合物(容量混合比は1:1)の貯蔵弾性率と損失弾性率を示す。0.1Hzより低い周波数において貯蔵弾性率が損失弾性率より高く、このことは、貯蔵/沈降安定性が良好であることを示している。
【0098】
10Hzより高い周波数において貯蔵弾性率と損失弾性率がほぼ等しく、このことは、ポンプ移送挙動が良好であることを示している。
流動性
硬化性システムの流動性を調べるために、下記の試験を行った。
【0099】
2つのマルテンス・モールド(martens mold)を組み込んだプレートを組み立てる(図8と図9)。プレートを80℃に加熱し、40℃の温度を有する5gの試験片を、マルテンス・モールドの閉端に挿入する。引き続きモールドを、78°の角度で向きを変える(図8を参照)。1分後、該形態物をオーブン中にて水平に置き、140℃で30分キュアーする。
【0100】
図10は、比較例3の硬化性システム(硬化性システムC3)の流動挙動と、硬化性システムC4の流動挙動を示す。
同じ条件下では、本発明の硬化性システムC4のほうが、(本発明によらない)硬化性システムC3より良好な流動性を示す、ということがわかる。
【0101】
【表4】

【0102】
本発明のシステムC4の粘度は、比較例3(システムC3)と比較して、60℃ではほぼ同等の粘度を示すけれども、流動性に関して得られた結果はかなり異なる(図10を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の組成物(A)と(B)を含んでなる硬化性システムであって、
組成物(A)が、
a1)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
a2)ヒュームド金属酸化物、ヒュームド半金属酸化物、および層状シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の無機チキソトロープ剤;
a3)少なくとも1種の有機ゲル化剤;
a4)組成物(A)の総重量を基準として少なくとも10重量%の1種以上のフィラー;
を含み、組成物(B)が、
b1)エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤;
b2)ヒュームド金属酸化物、ヒュームド半金属酸化物、および層状シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の無機チキソトロープ剤;
b3)カルバメートから選択される少なくとも1種の有機チキソトロープ剤;
b4)組成物(B)の総重量を基準として少なくとも10重量%の1種以上のフィラー;
を含む上記硬化性システム。
【請求項2】
組成物(A)が、25℃および0.1Hzより低い周波数での測定にて、損失弾性率G”より高い貯蔵弾性率G’を有する、請求項1に記載の硬化性システム。
【請求項3】
組成物(B)が、25℃および0.1Hzより低い周波数での測定にて、損失弾性率G”より高い貯蔵弾性率G’を有する、請求項1または2に記載の硬化性システム。
【請求項4】
組成物(A)が、1種以上の無機チキソトロープ剤を、組成物(A)の総重量を基準として0.1〜5重量%の範囲の量にて含む、請求項1〜3の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項5】
組成物(B)が、1種以上の無機チキソトロープ剤を、組成物(B)の総重量を基準として0.1〜5重量%の範囲の量にて含む、請求項1〜4の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項6】
組成物(A)が、1種以上のゲル化剤を、組成物(A)の総重量を基準として0.1〜10重量%の範囲の量にて含む、請求項1〜5の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項7】
組成物(B)が、1種以上の有機チキソトロープ剤を、組成物(B)の総重量を基準として0.1〜10重量%の範囲の量にて含む、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項8】
組成物(A)及び/又は組成物(B)が、ケイ砂、シラン処理石英粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、Mg(OH)、Al(OH)、シラン処理Al(OH)、AlO(OH)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ドロマイト、白亜、CaCO、バライト、石膏、ハイドロマグネサイト、ゼオライト、滑石、雲母、カオリン、および珪灰石からなる群から選択される1種以上のフィラーを含む、請求項1〜7の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項9】
組成物(A)が、ジベンジリデン−ソルビトールおよびトリベンジリデン−ソルビトールからなる群から選択される有機ゲル化剤を含む、請求項19に記載の硬化性システム。
【請求項10】
有機チキソトロープ剤が、
ジイソシアネートとポリオールとの第1の反応、ここでNCO末端ウレタンプレポリマーと過剰のジイソシアネートとを含むイソシアネート混合物を形成するよう、過剰のジイソシアネートが使用される;および、
引き続いて行われる、少なくとも1種の第一モノアミンと少なくとも1種の第一ジアミンを含むアミン混合物と該イソシアネート混合物との第2の反応、ここでジアミンの量は、第1モノアミンと第一ジアミンの混合物の100当量を基準として0.1〜45当量である;
によって製造されるウレア−ウレタン重合体であるカルバメートであり、第2の反応後において存在するウレア−ウレタン重合体は、イソシアネート、モノアミン、およびジアミンを実質的に含有せず、ジイソシアネート、ポリオール、モノアミン、およびジアミンは、単一成分であっても混合物であってもよい、請求項1〜9の少なくとも一項に記載の硬化性システム。
【請求項11】
a)請求項1〜10の少なくとも一項に記載の硬化性システムの組成物(A)と組成物(B)とを含む混合物を作製する工程;および
b)工程a)において得られる混合物を少なくとも部分的に硬化させる工程;
を含む、硬化物の製造方法。
【請求項12】
脱気工程を含まない、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の製造方法によって得られる硬化物。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化物の電気絶縁体としての使用。
【請求項15】
請求項1〜10の少なくとも一項に記載の硬化性システムの、電気機器の構成要素や部品を製造するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−526163(P2012−526163A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508965(P2012−508965)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053874
【国際公開番号】WO2010/127907
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】