説明

硬化性導電性ペースト組成物およびプリント配線板

【課題】粘度の経時変化が抑制され、優れたバンプ適性を有する導電性ペーストの提供。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤からなり、前記エポキシ樹脂が、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂5〜35重量%と二官能エポキシ樹脂65〜95重量%とからなることを特徴とする硬化性導電性ペースト組成物、およびこの導電性ペースト組成物を用いたプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関し、特に基材との接着性、耐熱性や高度が要求される電子回路形成用に使用できる硬化性導電性ペースト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性ペースト組成物は、エレクトロニクス分野において、IC回路用、導電性接着剤、電磁波シールド等多くの用途に使用されている。特に最近では、少なくとも一方の面の所定位置に導電性ペーストで作った円錐状導電バンプが設けられた第一の基板と、少なくとも一方の面に配線パターンが設けられた第二の基板とを、前記導電バンプが設けられた面および前記配線パターンが設けられた面を内側にして対向させ、前記第一の基板と前記第二の基板との間に絶縁体層を配置して積層体を構成し、該積層体を積層プレスすることにより絶縁体層の厚さ方向に前記バンプを貫通させて導電配線部を形成するプリント配線板の製造方法が提案されている(特開平6−350258号公報)。
【0003】
上記の導電性バンプの形成には、例えばメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等のバーンダー成分と、例えば銀、金、銅、はんだ粉等の導電性粉末および硬化剤等を混合して調製された導電性ペーストが使用されている。
【0004】
導電性バンプに必要な特性としては、成型加工時に変形しないレベルのバンプの軟化点、硬度、および積層プレス後の接着力などがあり、特許文献2では、三官能以上の多官能エポキシ樹脂を一定量使用し、かつ特定の軟化点を有するエポキシ樹脂を使用することにより、その特性を付与している。
【特許文献1】特開平6−350258号公報
【特許文献2】特開2000−261116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術では、特定の多官能エポキシ樹脂を一定量以上使用することで、上記特性を達成させてはいるものの、導電性ペーストを使用してバンプを形成する印刷時においては、多官能であるために反応性が高く、時間の経過とともにペースト粘度が上昇し、安定した高さのバンプを得ることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経時での粘度上昇が少なく、かつ優れたバンプ適性を有する導電性ペーストを提供するものである。
【0007】
したがって、本発明による硬化性導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤からなり、前記エポキシ樹脂が、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂5〜35重量%と二官能エポキシ樹脂65〜95重量%とからなることを特徴とするもの、である。
【0008】
このような本発明によるプリント配線板層間接続バンプ形成用硬化性導電性ペースト組成物は、好ましい態様として、前記硬化剤が、水酸基を有するイミダゾール化合物を含有するもの、を包含する。
【0009】
そして、本発明によるプリント配線板は、前記のプリント配線板層間接続バンプ形成用硬化性導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による硬化性導電性ペースト組成物は、粘度の経時変化が抑制されたものであって、印刷条件に長期間曝されたとしても粘度上昇が少なくかつ必要なバンプ適性を有するものである。
【0011】
したがって、本発明によれば、導電性ペーストの塗工を高精度にかつ安定して行うことができる。そして、形状が良好な十分な高さの導電性バンプを形成させることができるので、効率的に導電性バンプを形成できるものである。
【0012】
このような本発明による硬化性導電性ペースト組成物は、プリント配線板層間接続バンプ形成用導電性ペースト組成物として特に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<硬化性導電性ペースト組成物>
本発明による硬化性導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤からなり、前記エポキシ樹脂が、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂5〜35重量%と二官能エポキシ樹脂65〜95重量%とからなること、を特徴とするものである。ここで、「エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤からなり」とは、上記の必須成分(即ち、エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤)以外の他の成分が共存する導電性ペースト組成物を排除しない。すなわち、本発明によるプリント配線板層間接続バンプ形成用硬化性導電性ペースト組成物は、上記必須成分のみからなる導電性ペースト組成物、および、上記必須成分とこれらの必須成分以外の他の成分を含んでなる導電性ペースト組成物の両者を包含する。また、上記おいて「導電性」とは、体積抵抗値が少なくとも1×10−3cm・Ω以下であることを意味する。
【0014】
本発明による導電性ペースト組成物は、粘度が80〜400Pa・s、特に100〜300Pa・s、であるものが好ましい。なお、この粘度は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、25℃で測定したときのものである。
【0015】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、チクソ指数が0.3〜1.0、特に0.4〜0.8、であるものが好ましい。なお、このチクソ指数は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、5rpm/min、25℃で測定した導電性ペーストの粘度より、チクソ指数計算式log(5rpm時の粘度値/10rpm時の粘度値)/log 〔10(rpm)/5(rpm)〕で算出したときのものである。チクソ指数は静置すると見掛け粘度が上がり、激しく混合すると見掛け粘度が低下して塗工しやすくなる性質をあらわす一指標である。
【0016】
(1)エポキシ樹脂
本発明においては、エポキシ樹脂成分として、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂5〜35重量%と二官能エポキシ樹脂65〜95重量%とからなるエポキシ樹脂組成物が用いられる。なお、軟化点は、メイテック社製環球式自動軟化点試験器ASP−MG型によって1℃/minの条件にて測定されたときのものである。
【0017】
軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂が5重量%未満である場合には接着力が低下し、一方、35重量%超過である場合には低粘度となりバンプ形状が悪くなることから好ましくない。
【0018】
本発明では、三官能以上のエポキシ樹脂は、軟化点が75℃以下であることが必要である。軟化点が75℃超過の場合には、十分な接着力が得られないことから好ましくない。特に、軟化点が10〜70℃、とりわけ30〜65℃、である三官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。そのような軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂の好ましい具体例としては、例えばフェノールノボラック型、ビスフェーノールAノボラック型、オルソクレゾールノボラック型等の多官能タイプエポキシ樹脂を挙げることができる。これらの三官能以上のエポキシ樹脂は、二種以上併用することができる。
【0019】
二官能エポキシ樹脂は、液状状態のものから軟化点が150℃程度までの固体状のものが好ましい。軟化点が150℃を超過するものの場合、粘度上昇していまい印刷性が低下することがある。本発明では、軟化点が30〜140℃、とりわけ40〜130℃である二官能のエポキシ樹脂が好ましい。二官能エポキシ樹脂の好ましい具体例としては、例えばビスフェーノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型等のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらの二官能エポキシ樹脂は、二種以上併用することができる。
【0020】
本発明では、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の全量100重量%に対して5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%、で用いられる。
【0021】
(2)硬化剤
硬化剤としては、エポキシ樹脂との配合状態において室温にて安定して貯蔵でき、熱、光あるいは圧力などによって硬化反応を生じさせる潜在性硬化剤を用いることが好ましい。そのような硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、三フッ化ホウ素‐アミン錯体、有機酸ヒドラジット等を挙げることができる。本発明において特に好ましい硬化剤の具体例としては、ジシアンジアミド、2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロキシメチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾールを挙げることができる。これらの硬化剤は、二種以上併用することができる。
【0022】
(3)導電性粉末
本発明で使用される導電性粉末としては、各種の導電性微粉末、例えば銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉、白金粉、パラジウム粉、はんだ粉、前記金属の合金粉末等の金属粉末等を使用することができる。これらの導電性粉末は二種以上併用することもできる。また、金属以外の導電性粉末、例えばカーボン粉末、を使用することもできる。導電性粉末は、表面処理されたものであってもよい。
【0023】
導電性粉末の形態および大きさは、本発明の目的に反しない限り任意である。本発明では、例えば樹枝状、りん片状、球状、フレーク状の形態のもの、特に好ましくはりん片状と球状の混合物、を使用することができる。平均粒径は、0.5〜10μm、特に1.0〜5.0μm、のものが好ましい。
【0024】
(4)溶剤
本発明で使用される溶剤としては、例えば前記のエポキシ樹脂ならびに導電性粉末とともにペースト組成物を形成可能な各種の有機溶剤を用いることができる。そのような有機溶剤の好ましい具体例としては、例えばブチルカルビトールアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールn‐ブチルエーテル、ベンジルグリコール、メチルポリグリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、チキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロンの単独またはこれらの混合溶剤を挙げることができる。
【0025】
(5)上記以外の成分(任意成分)
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の成分を含むことができる。そのような必要に応じて含むことが可能な成分の具体例としては、次のような顔料や、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤、および、前記エポキシ樹脂と混和可能な他の樹脂成分(例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂)等を挙げることができる。
【0026】
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の有機または無機の顔料を含有することができ、そのような顔料によって導電性ペースト組成物の塗膜補強、機能付加、作業性改良、着色および増量等を図ることが可能になる。
【0027】
本発明では特に体質顔料、例えばマイクロシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等を単独またはこれらに混合物を用いることができる。
【0028】
(6)配合割合
本発明による導電性ペースト組成物における各成分の配合比率は、下記の通りである。
エポキシ樹脂の配合量は、導電性ペースト組成物中に1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、である。配合量が1重量%未満では接着力が不足し、30重量%超過では導電性が低下する。
【0029】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、1〜60重量部、好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜40重量部、である。配合量が1重量部未満では十分な架橋密度が得られず、また60重量部超過では硬化後の制御が難しくなる。
【0030】
導電性粉末の配合量は、導電性ペースト組成物中に60〜90重量%、好ましくは70〜90重量%、である。配合量が90重量%超過では導電性ペーストの流動性が悪くなる。
【0031】
配合量が60重量%未満では必要な導電性が得られにくくなる。
【0032】
溶剤の配合量は、目標とする粘度等に応じて適宜調整することが可能である。通常は導電性ペースト組成物中に5〜15重量%程度を配合する。
【0033】
(7)導電性ペースト組成物の利用
本発明による導電性ペースト組成物は、良好な導電性を有するものであり、例えばスクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などの公知の印刷法によって基板上に印刷可能なものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来同様に広範な分野において利用可能なものである。
【0034】
そして 本発明による導電性ペースト組成物は、印刷条件下(例えば、温度25℃、湿度55%)で長時間印刷を続けたとしても粘度上昇が抑制されたものである。よって、良好な導電性バンプを安定的かつ効率的に形成できるものである。
【0035】
さらに、本発明による導電性ペースト組成物は、1回の印刷作業当たりの塗膜厚さが厚いものであることから、十分な厚さの導電性層を効率的に形成可能なものである。
【0036】
従って、本発明による導電性ペースト組成物は、長期間にわたり安定して用いることができ、形状が良好な十分な高さのバンプを形成させることができるので、生産性の著しい向上を図ることができる。
【0037】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、プリント配線板層間接続バンプ形成用導電性ペースト組成物として特に有用なものである。
【実施例】
【0038】
<実施例1〜9および比較例1〜8>
エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤を、表1記載の質量割合で混合し、3本ロールで充分に混錬して、本発明による導電性ペースト組成物を製造した。この導電性ペーストを温度25℃、湿度55%の雰囲気中で8時間印刷を行った。
【0039】
この導電性ペーストを用いてスクリーン(孔版)印刷を行った。具体的には、φ220μmの孔を空けたアルミニウム製のメタルマスク版を使用し、硬度80°のウレタン樹脂製のスキージを使用し、雰囲気条件を温度25℃、湿度55%に環境を制御しつつ、印刷を行って、バンプを形成させた。
【0040】
各導電性ペースト組成物および形成されたバンプの形状等を評価した。結果は、表1に記載される通りである。
【表1】

接着力:銅箔上に、導電性ペーストにより直径6mm×高さ100μmの円柱を作成し、その上部に更に銅箔を設置し、これを180℃のオーブン中に20分放置して、導電性ペーストを硬化させた。上記の両銅箔をストログラフで50分/秒で剥離し、その剥離強度を測定した。
フィッシャー硬度:ガラス板に導電性ペーストを塗布し、180℃のオーブン内で20分間放置して、導電性ペーストを硬化させた。50μmの厚みの部分の硬度をフィッシャー硬度計(ボール圧子)にて測定した。
抵抗値:ガラス板に導電性ペーストを塗布し、180℃のオーブン内で20分間放置して導電性ペーストを硬化させた。硬化した導電性ペーストの体積抵抗値を測定した。1×10−3Ω・cm未満を「○」と、1×10−3Ω・cm以上を「×」と評価した。
バンプ形状:スクリーン印刷機にてバンプを印刷した。バンプの形状をレーザー顕微鏡にて観察して、先端が細くなっていない円錐状のバンプを「良好」と、先端が細くなっていたり、曲がっているバンプを「不良」と判定した。
経時での粘度変化率:
(連続して8時間の印刷条件に曝されたときの粘度−初期粘度/初期粘度)×100
変化率が10%以下であるものを「A」、変化率が11〜20%であるものを「B」、変化率が21〜50%であるものを「C」、変化率51%以上であるものを「D」と評価した。
バンプ形状:連続して8時間の印刷条件に曝された導電性ペーストによってバンプを形成した。形成されたバンプの形状をレーザー顕微鏡にて観察し、先端が細くなっていない円錐状のバンプを「良好」と、先端が細くなっていたり、曲がっているバンプを「不良」と判定した。
粘度:スパイラル粘度10rpmにて測定した。
チクソ指数:スパイラル粘度10rpmと5rpmの測定値より算出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉末および溶剤からなり、
前記エポキシ樹脂が、軟化点が75℃以下である三官能以上のエポキシ樹脂5〜35重量%と二官能エポキシ樹脂65〜95重量%とからなることを特徴とする、硬化性導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が、水酸基を有するイミダゾール化合物を含有する、請求項1に記載の硬化性導電性ペースト組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とする、プリント配線板。

【公開番号】特開2008−218901(P2008−218901A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57464(P2007−57464)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】