説明

硬化性樹脂組成物、コンクリ−ト被覆組成物、ライニング材、管状ライニング材及び土木建築構造体

【課題】 注型板及び積層板の物性がスチレン型ビニルエステル樹脂と同水準であり、また、上記硬化性樹脂組成物はコンクリートに被覆し、温水に長期浸漬後でも付着強度が初期値を維持しており、温水浸漬後の重量変化率もスチレン型ビニルエステル樹脂硬化物と同等である非スチレン型ビニルエステル樹脂で、硬化性及び表面乾燥性が良好である硬化性樹脂を提供すること。
【解決手段】 (A)芳香族系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物からなるエポキシ(メタ)アクリレート30〜60質量%、(B)エチレンオキサイド付加モル数が2〜20のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート10〜30質量%及び(C)アルコール残基として環内に炭素間二重結合又は窒素原子を1個有する環状炭化水素基を含む基を有する単官能性(メタ)アクリレート系モノマー20〜40質量%を含む硬化性樹脂組成物;これを用いたコンクリ−ト被覆組成物、管状ライニング材及び土木建築構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道処理施設の管状成形体内面、角型管内面、人孔内面等の更生用ライニング材及び食品工場、医薬品工場、電子材料関連工場のコンクリート施設の防食ライニング材として使用するのに適した低臭気性、高反応の光重合性、耐薬品性、耐久性、接着性、耐熱水性に優れた硬化性樹脂組成物、この樹脂組成物を含むライニング材、管状ライニング材、さらに前記組成物を含むコンクリ−ト被覆組成物及びこの被覆組成物を有する土木建築構造体土木建築構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、特にアクリル酸あるいはメタクリル酸を反応させて得られる、いわゆるエポキシアクリレート(又はエポキシメタクリレート)及びこのエステルと共重合可能な単量体の混合物からなる組成物は、公知である。この組成物は、従来、例えば繊維強化プラスチックのマトリックスとして使用されてきた。
【0003】
しかしながら、公知の不飽和ポリエステル樹脂組成物及びビニルエステル樹脂組成物は、共重合可能な単量体として、一般にスチレンが用いられている。しかしながら、このエステルとスチレンとの混合物は特有の臭気があり、狭い地下構造物のコンクリート内面ライニングの環境では、厳しい換気管理が必要である。例えば、その処理対策として、発生するスチレンを活性炭吸着装置により吸着する方法が導入されている。また、スチレンにはシックハウス問題に関連して室内濃度指針値の設定及びPRTR制度(化学物質排出把握管理促進法)の第一種指定化学物質での指定による排出量、移動量公表制度が適用されており、その管理が必要である。その上、スチレン含有不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂中のスチレン濃度の規制が厳しくなってきており、その対策が迫られている。
【0004】
低臭性樹脂組成物の技術ついては、多数の提案、例えば、特許文献1(特開平6−211952号公報)、特許文献2(特開平8−283357号公報)、特許文献3(特開平9−15337号公報)、特許文献4(特開平11−12448号公報)、特許文献5(特開平10−231453号公報)、特許文献6(特開平11−255847号公報)、特許文献7(特開2001−240632号公報)、特許文献8(特開2002−60282号公報)がされており、低臭性に係る技術が開示されている。
【0005】
既設管路を補修するため、上記のような熱硬化性樹脂を用いる管状ライニング材が汎用化され、ガス管、水道管、下水道施設のマンホール及び下水道などの管路に対して管の強度補強や防食対策、漏水、浸水対策あるいは流量改善などの目的として、管内面に液状スチレン型不飽和ポリエステル樹脂、スチレン型ビニルエステル樹脂又はエポキシ樹脂を含浸させた繊維質筒状体からなる管状ライニング材が用いられている。このような管状ライニング材を流体圧などにより反転、進行させ、反転した管状ライニング材を流体圧力によって既設管内面に内張り、圧着し、その後ライニング材の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂については加熱又は光照射し、エポキシ樹脂については加熱して硬化させることにより強化プラスチック管を形成させる方法が実施されている。
【0006】
上記の光重合性樹脂組成物の従来の技術としては、特許文献9(特開昭50−59497号公報)、特許文献10(特公昭60−8047号公報)、特許文献11(特開平1−92214号公報)、特許文献12(特開平2−188227号公報)、特許文献13(特開平11−210981号公報)、特許文献14(特開2003−33970号公報)などに開示されている。
【0007】
上記のエポキシ樹脂を使用する管状ライニング材は温風、熱水、加熱水蒸気などの熱源を圧入して硬化させる方法が一般的であるが、硬化性がラジカル共重合型の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂を使用する管状ライニング材より劣り通水までの養生、開放に長時間かかるとの問題がある。また、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を用いたライニング材は、通常有機過酸化物による加温硬化、又は光硬化させる場合、樹脂に溶解した重合性ビニルモノマーのスチレンの蒸気圧が高いため、比較的大量に揮散すると共に臭気があることから、反転後の管内側フィルムを硬化樹脂から剥離し、引き出すときに管内揮散及びマンホールからの漏洩による大気汚染を招く。また、内外面チューブの材質は、例えばウレタンエラストマーフィルムであり、スチレン型不飽和ビニルエステル樹脂、スチレン型ビニルエステル樹脂の樹脂中に含まれるスチレンモノマーが、ウレタンエラストマーフィルムと接触して膨潤、変質、軟化することから、ライニング終了後の硬化した管状ライニング材の内面にしわが発生し、好ましくない。このため、チューブの要求性能として、スチレンモノマーによる膨潤、変質、軟化がないこと、硬化性樹脂の硬化の際に発生する反応熱による温度上昇、及び管状ライニング材を管路内に布設後、硬化熱源として使用する温風又は温水をチューブに長時間にわたって接した場合の融解、変質のない耐熱性が求められる。上記問題点を解消するため、チューブは少なくとも二層構造として、耐スチレン劣化性、耐熱劣化性、硬化中の熱履歴に対しての強度劣化しない機能を付与するため、特許文献15(特開2000−177010号公報)に示す通り、ポリウレタンフィルムの厚みを増加する方法でスチレンモノマーの劣化と熱劣化について予め侵食厚みを考慮しているが、抜本的な問題解決に至っていない。また、特許文献16(特公昭58−9317号公報)、特許文献17(特開平4−5020号公報)、特許文献18(特開2000−141484号公報)の各公報には、チューブ層は少なくとも2層構造以上でなければ目的を達成できないことを明記してある。
【0008】
管状ライニング材用樹脂として、ビニルエステル樹脂が汎用化されているが、上記スチレンを含有することによる環境汚染問題は未だ解決されていない。
【特許文献1】特開6−211952号公報
【特許文献2】特開平8−283357号公報
【特許文献3】特開平9−15337号公報
【特許文献4】特開平11−12448号公報
【特許文献5】特開平10−231453号公報
【特許文献6】特開平11−255847号公報
【特許文献7】特開2001−240632号公報
【特許文献8】特開2002−60282号公報
【特許文献9】特開昭50−59497号公報
【特許文献10】特開平1−92214号公報
【特許文献11】特公昭60−8047号公報
【特許文献12】特開平2−188227号公報
【特許文献13】特開平11−210981号公報
【特許文献14】特開2003−33970号公報
【特許文献15】特開2000−177010号公報
【特許文献16】特公昭58−9317号公報
【特許文献17】特開平4−5020号公報
【特許文献18】特開2000−141484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記本発明の目的は、前記の欠点を解消し、低臭気性、耐水性、耐薬品性、耐久性、付着性に優れた硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を用いた上記特性を有するコンクリート被覆組成物を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を用いた上記特性を有する土木建築構造体を提供するものである。
【0012】
また、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を用いた上記特性を有するライニング材を提供するものである。
【0013】
さらにまた、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を用いた上記特性を有する管状ライニング材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題について発明者等が鋭意検討した結果、(A)芳香族系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物からなるエポキシ(メタ)アクリレート30〜60質量%、(B)エチレンオキサイド付加モル数2〜20の2、2ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシフェニル)]プロパン(以下エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートと略記)10〜30質量%及び(C)アルコール残基として環内に炭素間二重結合又は窒素原子を1個有する環状炭化水素基を含む基を有する重合性単官能(メタ)アクリル系モノマー20〜40質量%からなる硬化性樹脂組成物により前記課題を解決することを見出だした。
【0015】
上記本発明の硬化性樹脂組成物の好適態様は以下の通りである。
【0016】
(1)(C)単官能性(メタ)アクリル系モノマーが、分子量240以上、25℃の粘度が100mPa・s以下、蒸気圧が0.5mmHg以下である。臭気を低く抑えることが容易である。
【0017】
(2)(C)単官能性(メタ)アクリル系モノマーが、(メタ)アクリル酸のアルコール残基が、前記環状炭化水素基とオキシアルキレン基が結合した基である。特に硬化性に優れている。
【0018】
(3)(C)単官能性(メタ)アクリル系モノマーが、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーである。特に硬化性、付着強度安定性、重量変化率安定性が優れている。
【0019】
さらに本発明者等は、上記硬化性樹脂組成物(好ましくは光重合開始剤又は有機過酸化物を含有)を繊維質筒状体に含浸してなる管状硬化性複合材料の内側表面及び/又は外側表面を、少なくとも一層のチューブで被覆してなる管状ライニング材とし、これにより管路内面に密着、硬化することで上記課題を解決することを見出だした。
【0020】
従って本発明は、上記硬化性樹脂組成物(好ましくは光重合開始剤又は有機過酸化物を含有)を含む上記の管状ライニング材にもある。
【0021】
また、上記の管状ライニング材に有利に使用することができる上記硬化性樹脂組成物を含むライニング材にもある。
【0022】
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物が、さらに不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材を含有するコンクリート被覆組成物、及び
上記硬化性樹脂組成物が、さらに鱗片状無機充填材を含むコンクリート被覆組成物;
さらにまた、コンクリート被覆組成物から形成された保護層を少なくとも1層を含む土木建築構造体にもある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、非スチレン型ビニルエステル樹脂で、エポキシ(メタ)アクリレートと、高反応性且つ低揮発性の特定の重合性単官能モノマーと、エチレンオキサイド付加モル数が特定のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートとを、特定の組成比で用いている。これにより、スチレン揮発は全くなく、硬化性及び表面乾燥性が良好で、注型板及び積層板の物性、光重合及び熱重合の反応性、コンクリートに被覆し温水長期浸漬後の付着強度安定性、温水浸漬後の重量変化率安定性のいずれも、既存スチレン型ビニルエステル樹脂硬化物より優れた特性を示している。
【0024】
さらに、特に管体用に適した本発明のライニング材は、硬化前後でスチレン臭を発生がなく、周辺環境汚染をもたらさない。また、樹脂組成物を含浸した繊維質筒状体は、これにより被覆される内外面のチューブが一層であっても、スチレンに起因するチューブの膨潤、変質、軟化によるしわが発生しないし、また熱重合及び光重合硬化性が効果的に機能することから、従来のように二層チューブを使用する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において、硬化性樹脂組成物の必須成分の一つである芳香族系エポキシ(メタ)アクリレート(A)とは、芳香族系エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸より得られるものである。
【0026】
本発明の樹脂組成物の(A)成分の芳香族系エポキシ(メタ)アクリレートの原料として用いられる芳香族系エポキシ樹脂としては、分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂であるものをいいフェノールノボラツク型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、N−グリシジルアミン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、コンクリート被覆硬化性樹脂組成物及び管状用等のライニング材硬化物に均衡のとれた特性をもたらすので、より好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂に反応させる不飽和一塩基酸はアクリル酸、メタクリル酸であるが、他の不飽和一塩基酸、例えばクロトン酸、ソルビタン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等を少量併用することができる。これら酸は単独もしくは、2種以上を併せて用いられる。なお、光重合樹脂組成物としては、エポキシ(メタ)アクリレートの反応物の一つとして用いられる不飽和一塩基酸は、重合速度よりアクリル酸を使用するのが一般的である。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる芳香族系エポキシ(メタ)アクリレート(A)は、上記芳香族系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の通常の反応から得られるものであり、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応比率は、モル比で通常、0.9〜1.1:1.1〜0.9の範囲である。この際の反応は通常、80〜130℃で行われ、反応触媒としてトリエチルアミン、ジメチルアニリン等の3級アミン類、トルメチルベンジルアンモニウムクロライド、ピリジニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩類、水酸化リチウム、塩化リチウムなどの無機塩類が用いられる。必要に応じて重合禁止剤が用いられ、重合禁止剤としてはハイドロキノン、メチルハイドロキノンなどのハイドロキノン類、ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン類、t−ブチルカテコールなどのカテコール類、2、6−ジーt−ブチルー4−メチルフェノール、4−メトキシフェノールなどのフェノール類、フェノチアジンなどが上げられる。
【0029】
本発明において、上記芳香族系エポキシ(メタ)アクリレート(A)の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する必須成分である(A)、(B)及び(C)の合計量に対して、30〜60質量%の範囲である。
【0030】
本発明に用いる硬化性樹脂組成物を構成する必須成分であるエチレンオキサイド付加モル数2〜20のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)としては、ビスフェノールAおよび/又はビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させた2価アルコールとメタクリル酸とのエステル化合物のものを挙げることができる。ビスフェノールについては、ビスフェノールAが好ましい。
【0031】
本発明において、(B)のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートのエチレンオキサイド付加モル数が20以上では、架橋密度が低下することにより、硬化性樹脂組成物の反応性の低下、硬化物の耐水性、特に常温水及び温水浸漬の重量変化率の増加、繊維質筒状体との親和性、接着力が低下し、液相環境での使用は不適となりやすい。また、エチレンオキサイド付加モル数が2以下では、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業を行いにくくなる欠点があり好ましくない。
【0032】
本発明において、エチキレンオキサイド付加のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する必須成分である(A)、(B)及び(C)の合計量に対し、10〜30質量%の範囲である。すなわち、10質量%未満では得られる硬化性樹脂組成物の硬化物の表面が常温水及び温水浸漬で白化現象が発生し易い。また、30質量%以上では、水中及び温水浸漬で硬化性樹脂組成物の硬化物にフクレが発生し易いため好ましくない。エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートは、特開平7−268079号公報に記載の公知の方法で、先ず、ビスフェノールAにエチレンオキサイドを付加した含核ポリオールとエピハロヒドリンとをエーテル反応させアルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルを得、次いでこれと、エステル化触媒を使用してメタアクリル酸とを反応させることによりを得る。
【0033】
本発明において使用される重合性モノマーは、(C)アルコール残基として環内に炭素間二重結合又は窒素原子を1個有する環状炭化水素基を含む基を含む基を有する単官能性(メタ)アクリレート系モノマーである。この単官能性(メタ)アクリル系モノマーは、一般に分子量が200以上、かつ25℃の粘度が100mPa・s以下、蒸気圧が0.5mmHg以下のものであり、揮発性が低く、環境汚染のほとんど無いものである。さらに上記単官能性(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸のアルコール残基が、前記環状炭化水素基とオキシアルキレン基が結合した基であることが特に好ましい。上記単官能性(メタ)アクリル系モノマーの例としては、
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
【0034】
【化1】

【0035】
ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
【0036】
【化2】

【0037】
ジシクロペンタニルアクリレート
【0038】
【化3】

【0039】
ジシクロペンタニルメタクリレート
【0040】
【化4】

【0041】
ジシクロペンテニルアクリレート
【0042】
【化5】

【0043】
ジシクロペンテニルメタクリレート
【0044】
【化6】

【0045】
ペンタメチルピペリジルメタクリレート
【0046】
【化7】

及び
【0047】
ペンタメチルピペリジルアクリレート
【0048】
【化8】

等を挙げることができ、これらは単独使用、又は2種類以上を併用してもよい。
【0049】
これらのうちでも、本発明では低臭気性、反応性、硬化物の特性を考慮して、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート及びペンタメチルピペリジルアクリレート、特にジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレートを用いることが好ましい。光照射により管状ライニング材を硬化させる場合は、末端アクリロイル基型ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートは、重合速度が末端メタクリレートより速いため好適であるが、2種類併用してもよい。
【0050】
上記単官能性(メタ)アクリル系モノマー(C)の使用量は、本発明の樹脂組成物を構成する必須成分である(A)、(B)および(C)の合計量に対し、20〜40質量%の範囲であり、20質量%未満では硬化性樹脂組成物の硬化物は、表面指触乾燥性が劣り、硬化性樹脂組成物は粘度が高く、作業性に劣る。また、40質量%以上では高温水浸漬では硬化物の表面にフクレが発生し耐久性に劣るものとなることより、上記した範囲で使用するこが好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、その組成物単独でも使用できるが、シックハウス問題及び化学物質排出把握管理移動登録法(PRTR法)などによるスチレン排出濃度規制を考慮して、以下の架橋用重合性ビニルモノマーを併用した架橋用重合性モノマーを大幅に軽減された樹脂組成物として使用してもよい。
【0052】
架橋用重合性ビニルモノマーの例としては、芳香族系であるスチレン、ビニルトルエンまたはα−メチルスチレンなどが上げられる。また、メタクリル系であるメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等を挙げることができる。これら架橋用重合性モノマーは、単独使用でも2種以上併用でもよいが、一般的にはスチレンが使用される。架橋性重合性モノマーの配合量は、(A)、(B)及び(C)の樹脂組成物に対して30質量%(架橋用重合性モノマー含有率23%以下)以下が好ましい。通常の不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の架橋性重合性モノマーの含有率は40〜50質量%である。このため、架橋性重合性モノマー含有率を大幅に低減し、作業時の揮発量を著しく低減できる低架橋性重合性モノマー含有樹脂組成物として適用できる。
【0053】
本発明の樹脂組成物の成分のみで乾燥性に優れたことが特徴であるが、より乾燥性を向上させる目的でパラフィン及び/又はワックス類を併用してもよい。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるパラフィン及び/又はワックス類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスス等のパラフィン類;ステアリン酸、1、2−ヒドロキシステアリン酸などの高級脂肪酸等を挙げることができるが、パラフィンワックスが好ましい。このパラフィン及び/又はワックス類は、塗膜表面における硬化反応中の空気遮断作用、耐汚染性の向上を目的として添加される。添加率としては成分(A)、(B)及び(C)の樹脂組成物に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
【0055】
本発明で用いられる不活性な微粒子状及び/又は粒状の無機骨材材料としては、砂、シリカ粉末、粉砕岩石、炭酸カルシウム、アルミナ粉、クレー、珪石粉、タルク、ガラス粉、シリカパウダー、水酸化アルミニウム、珪砂、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、セメントなどを使用することができる。
【0056】
さらに、上記不活性な微粒子状及び/又は粒状の無機質骨材材料の使用量は、所望の流動性などの作業性に応じ、また、コンクリート被覆組成物として使用する場合は、その硬化物の強度などにより決定されるが、添加率は一般に1〜1000質量%の範囲である。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物はさらに、上記樹脂組成物単独でも使用できるが、本発明の樹脂組成物に対して5〜50質量%の鱗片状充填材を加えたコンクリート被覆組成物として使用することもできる。
【0058】
上記鱗片状無機充填材としては、ガラスフレーク、マイカフレーク等を挙げることができるが、このうちでもガラスフレークを用いることが好ましい。鱗片状無機充填材の平均粒子径は一般に10〜4000μmの範囲であるが、コンクリート被覆組成物の作業性を良好に保持するには、平均粒子径の100〜1000μmの範囲がさらに好ましい。
【0059】
本発明のコンクリート被覆組成物を用いて、コンクリート、鋼材などの基材表面に塗布して硬化させるなどの方法により、例えば基材表面に上記組成物を塗布、加熱等により硬化させることによって、上記組成物で施工された保護層を少なくとも1層以上形成することが可能であり、これにより耐久性に優れた土木建築構造体が得られる。
【0060】
本発明の管状ライニング材で用いられる繊維質筒状体は、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機系補強材やアラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニルエステル繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系繊維、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、芳香族系などを利用し、公知のスパンボンド方式やメルトフロー方式の不織布、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの長尺ニードルパンチフェルトからなる補強材が上げられる。一般に、ガラス繊維織物、フェルトなどが筒状体として使用される。筒状体の製造は、公知の方法を用いることができる。
【0061】
本発明の硬化性組成物をライニング材として用い、この硬化組成物及び上記繊維質筒状体から得られる管状硬化性複合材料を被覆するチューブの材質は公知の、ポリウレタンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが知られており、使用することができる。しかしながら、スチレン型不飽和ポリエステル樹脂、スチレン型ビニルエステル樹脂に含まれるスチレンモノマーとウレタンエラストマーフィルムとが接触すると、フィルムは膨潤、変質、軟化し、硬化複合材表面にしわが発生し、硬化後通水時に流動性を阻害するため好ましくない。また、加熱水及び温風の圧入による熱硬化及び光重合による光硬化いずれでも、反応熱による温度上昇が複合材料に発生するため、耐熱性の低いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのフィルムは軟化、溶融が起こり硬化複合材料表面に付着するため、複合材料からのフィルムの剥離は困難となる。本発明に用いる硬化性樹脂組成物は、蒸気圧の高いスチレンモノマーを全く含まないため、引張強さ、引裂き強さがポリアミドと同じ水準で高伸び率のウレタンエラストマーフィルムと未硬化の複合材料が接触してもフィルムの膨潤、変質、軟化の現象は発生しない。このため、内外面の少なくとも一層のチューブでも、例えばウレタンエラストマーフィルム単独の構成でも、樹脂組成物からのスチレンの影響は全く受けないので使用することができる。また、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなど耐熱性が高い材質又はウレタンエラストマーフィルムでは、本発明に用いる硬化性複合材料の反応熱による温度上昇及び熱水又は温風(45〜80℃)加温してもフィルムの高い耐熱性によりフィルムの膨潤、変質、軟化による硬化複合材料表面のしわの発生はなく、引張強さはポリオレフィン系を凌駕している。
【0062】
なお、内外面一層からなるチューブのフィルム厚みは管状ライニング材の管径によるが、管径400mm以下では、最大300μmが熱硬化による熱伝導性、光硬化による透過性を考慮すると好ましい。管状ライニング材を管路に布設するに際して、管状ライニング材(硬化性複合材料)からフィルム(チューブ)の剥離に耐える強度と未硬化の管状ライニング材を管路に引張り布設するのに耐える強度を保持する必要がある。本発明に用いる硬化性樹脂組成物を必須成分として、繊維質筒状体に含浸してなる硬化性複合材料を保持する少なくとも一層のチューブは、スチレンを共重合性単量体として使用する従来の不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂含浸繊維を保持するチューブの必要機能から由来する少なくとも二層構造のチューブを用いる問題点は解消された。なお、本発明に用いられるチューブは前記理由より、例えばウレタンエラストマー、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーなどのフィルムによるチューブが好ましい。内外面のチューブの構成は一層で本発明の硬化性複合材料の保持及びチューブの機能は達成されるが、上記のチューブの組合せで、二層構造又は三層構造の複合チューブを使用してもよい。複合化方法は、ラミネート又は各フィルムを嵌挿したものいずれであってもよい。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物含浸繊維層筒状体の内側表面及び/又は外側表面に、少なくとも一層のチューブが被覆された管状ライニング材1が設けられた既設管5の一例を図1に示す。
【0064】
本発明の管状ライニング材1は、ガラス繊維、ポリエステル繊維等の補強繊維からなる繊維層筒状体に本発明の未硬化の硬化樹脂組成物を含浸した繊維層筒状体3と、その内・外周面にポリウレタン等の透過性プラスチックフィルム、繊維層筒状体3狭持した内側皮膜2及び外側皮膜4から構成されている。本発明の管状ライニング材1は、繊維層筒状体3と内側皮膜2及び外側皮膜4と、前述にようにしわの発生のない良好な外観で且つ高い引張強度で一体化されている。上記硬化樹脂組成物を含む本発明のライニング材は、上記の管状ライニング材の作製に有利に使用することができる。
【0065】
上記本発明の管状ライニング材は、例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物をライニング材として繊維質筒状体に含浸させ、外側・内側の2枚のフィルムで被覆、内包して筒状の管状ライニング材を製造される。上記フィルムの種類については、例えば、ポリウレタンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフルム、ポリエステルフィルム等を挙げることができる。内外フィルム同一種類又は異種類でもよく、硬化前の管状ライニング材の可撓性、屈曲性を維持できる柔軟性と光照射の透過性を阻害しなければよい。本発明の管状ライニング材の管体内壁へ被覆する装置としては、例えば筒状である管状ライニング材を既設管路に圧縮空気、又は水で既設管路内に、外側のフィルムが内側になるように反転させながら既設管体内壁に密着させ、加圧した状態で熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、熱水を通水し、光硬化性樹脂組成物では、複数の光放射源を連結して、管路内を一定の速度で紫外線を照射しながら移動させ、管状ライニング材を硬化させ、管体内部に構造物を形成させる。光放射源からの照射時間としては、光源の有効波長領域、出力、照射距離、管状ライニング材の厚さなどにより異なるが、0.05〜1時間、好ましくは0.05〜0.5時間である。0.01時間未満では内部樹脂が未硬化状態であり、1時間以上は経済的ではない。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤としては、例えばベンゾインエーテル系のイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルケタール系のヒドロシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ケトンベンゾフェノン系のベンジル、メチルーO−ベンゾインベンゾエート、2−クロロチオキサントン、メチルチオキサントン、ベンゾフェノン系のベンゾフェノン/第3級アミン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、アシロホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、カンファーキノン等を代表例として挙げることができる。本発明に用いられる光硬化性の管状ライニング材の場合は管内部に紫外線を挿入して、紫外線を照射して速硬化する被覆方法がとられる。紫外光波長領域の250nmから可視光波長領域の450nmの吸収をもつ光重合開始剤が好ましい。2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンジルメチルケタールが好ましく、単独使用又は併用してもよい。光重合開始剤の使用量は、本発明に用いられる樹脂組成物を構成する必須成分である(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対対して、0.01〜10質量部の範囲である。
【0067】
本発明における熱硬化性樹脂組成物に用いられる有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド類、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド等;ハイドロパーオキサイド類、例えばクメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等;パーオキシエステル類、例えばt−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等;ジアルキルパーオキサイド類、例えばジクミルパーオキサイド等;ジアシルパーオキサイド類、例えばラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等公知のものを挙げることができる。
【0068】
有機過酸化物の使用量は、本発明に用いられる硬化性樹脂組成物を構成する必須成分である(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対して一般に0.01〜10質量部の範囲である。
【0069】
本発明はさらに、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.01〜5質量部の芳香族アミン系促進剤及び/又は多価金属塩及び/又は錯体を加え、次いで有機過酸化物を、混合した熱硬化性樹脂組成物を形成し繊維質筒状体に含浸した管状ライニング材を加温し、硬化促進するに際して配合する。有機過酸化物の添加量は、0.01質量部未満では硬化が十分でなく、5質量部を越えても、それ以上の効果を示さない。
【0070】
芳香族アミン系促進剤としては、アニリン、N、N−ジメチルアニリン、N、N−ジエチルアニリン、トルイジン、N、N−ジメチル−P−トルイジンなどの一種以上の組合せで用いることができる。
【0071】
次に、多価金属塩及び/又は錯体としては、ナフテン酸、オクテン酸の多価金属塩であり、多価金属とは、カルシウム、銅、マンガン、コバルト、バナジウムなどを示す。特に好ましくは、オクテン酸コバルト、ナフテン酸コバルトがある。
【0072】
錯体としては、アセチルアセトン、コバルトアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネートなどを挙げることができる。
【0073】
本発明のコンクリート樹脂組成物を用いて、コンクリート、鋼材などの基材表面に塗布して硬化させるなどの方法により、基材表面に保護層を形成すると耐久性に優れた土木建築構造体が得られる。
【0074】
また、こられの硬化性樹脂組成物、コンクリート被覆組成物、管状ライニング材に特に有利使用することができるライニング材には、顔料、酸化防止剤、流動制御剤、チキソトロピー剤、可塑剤などを必要に応じて添加することも可能である。
【実施例】
【0075】
次に、本発明の実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中「部」は特に断らない限り「質量部」である。
【0076】
[実施例1]
芳香族系エポキシメタアクリレート(A)、エチレンオキサイド2.6モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)及びジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)を用いた硬化性樹脂組成物の配合
【0077】
芳香族系エポキシメタクリレート(A)の製造
攪拌機、コンデンサー、温度計、空気導入管を備えた2リツトルの四つ口フラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828)を510g仕込み、攪拌下に毎分10リットルの乾燥空気を吹き込みながら130℃まで昇温した。昇温後、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.3g、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gを添加し、メタクリル酸172gを2時間かけて滴下した。滴下終了後3時間経過したところから、1時間毎に酸価の測定を開始し、10mgKOH/g以下になったことを確認した後、100℃まで冷却した。これにエチレンオキサイド2.6モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業社;BPE−200)272g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート410gを加えて溶解後、室温まで冷却し、樹脂組成物を得た。
【0078】
これを表1に示した実施例1の配合の割合で良く混合した後、金型中へ流し込み、25℃で72時間硬化させ、厚さ3mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物のJISK6901に従い、試験速度1000mm/分の条件で曲げ試験(弾性率)を行った。引張試験(弾性率及び伸び)はJISK7113に従い測定した。
【0079】
離型処理したガラス板上でチョップストランドマットMC−450(単位質量450g/m2のガラス繊維含有チョップストランドマット;日東紡績株式会社製)3層に上記硬化性組成物を3150g/m2含浸させて積層し、ガラス繊維含有量30%のFRPを積層した。25℃で72時間硬化させ、積層板を得た。曲げ強さ(弾性率)はJISK6911、引張強さ(引張り弾性率、伸び率)はJISK7113に従って測定した。その結果を表1に示す。表面乾燥時間は、20℃室温のガラス板上にアプリケーターを用いて作成し、表面乾燥性について指触試験を実施することにより得た。指触試験評価方法は脱脂綿約2〜3cm2を塗膜表面に押し付けても脱脂綿が粘着によって塗膜表面に残らなくなるまでの時間を測定した。積層板の熱変形温度はJISK6911に従い測定した。
【0080】
コンクリート付着強度は、建研式引張り試験機でJISA6916に従って試験を行い接着強度を測定した。コンクリートピーリング試験は、JISA5304規格歩道板(サイズ;300mm×300mm)に、実施例1(実施例2〜4の場合も各実施例の硬化性樹脂組成物を用いた)の硬化性樹脂組成物を、プライマーとして、塗布量150g/m2を塗布、指触乾燥後、実施例1の樹脂組成物100質量部(実施例2〜5の場合も各実施例の樹脂組成物100質量部に対して)にガラスフレークRCF−160(日本板硝子株式会社製)30質量部、クリスタライトAA((株)龍森製珪石粉)20部、6%ナフテン酸コバルト、1.1質量部、ジメチルアニリン0.5質量部、過酸化ベンゾイル2.0質量部を加えた配合物を、素地調整材として700g/m2塗布して、指触乾燥後、実施例1の硬化性樹脂組成物100質量部にガラスフレークRCF−160を添加した配合物を表面保護層として、1kg/m2塗布(厚み0.6mm)し、歩道板21上にプライマー層22、素地調整材23及び表面保護層24からなる防食被覆層を完成させた(図2参照)。
【0081】
25℃、72時間硬化養生してから、得られた防食被覆層を有する歩道板に、幅×長さ×厚み=20mm×90mm×2mmのFRP板(「の内」を削除しました)を上記長さ方向片末端に未接着の20mmを残してエポキシ接着剤で接着させる。なお、未接着部の中心に2mmを開孔し、バネ秤先端のフックをこの開孔に挿入して、JISK6256の加硫ゴムの接着試験方法に準拠して、90度ピーリングを測定した。
【0082】
重量(質量)変化率は、実施例1の配合割合の樹脂組成物を十分混合してから10gを、φ40mm(高さ、15mm)のガラスシャーレに流し込み、25℃、72時間硬化させてから離型した注型物を温水(80℃)に96時間浸漬した後に重量変化率を測定した。スチレンの揮発量は、実施例1〜実施例4の配合割合の樹脂組成物を十分に混合してから、100gをφ145mmのガラスシャーレに入れ、60分後重量変化率を測定した。
【0083】
[実施例2]
実施例1の製造で得た芳香族系エポキシメタクリレート(A)50gに、エチレンオキサイド6モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)(新中村化学工業社 BPE−300)20g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)30gを加えて溶解後、室温まで冷却し、硬化性樹脂組成物を得た。この樹脂組成物100質量部に無機骨材材料(組成比;5号珪砂120質量部、6号珪砂180質量部、7号珪砂40質量部、60質量部)400質量部及び6%ナフテン酸コバルト1.5質量部、ジメチルアニリン0.5質量部、過酸化ベンゾイル2.5質量部を添加し配合物を得た。この配合物について、圧縮強度及び曲げ強度測定用供試体は40×40×160mmのモールドに上記配合物を流し込むことにより作成した。引張強度は2.5cmφの棒状モールドに流し込み作製した。
【0084】
[実施例3]
実施例1で得た硬化性樹脂組成物100質量部に鱗片状無機質充填材ガラスフレークRCF−160(日本板硝子株式会社製)30質量部を添加し、良く混合した後、さらに第1表の6%ナフテン酸コバルト1.5質量部、ジメチルアニリン0.5質量部、過酸化ベンゾイル2.5質量部を添加し配合物を得た。この配合物を、金型中に流し込み、25℃で72時間硬化させてから離型し、厚さ3mmの樹脂硬化物を得た。この硬化物について、曲げ強さ(弾性率)、引張強さ(弾性率、伸び率)を測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
[実施例4]
実施例1の製造で得た芳香族系エポキシメタクリレート(A)45gに、エチレンオキサイド10モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)(新中村化学工業社 BPE−500)25g、ペンタメチルピペリジルメタクリレート(C)30gを加えて溶解後、室温まで冷却し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0086】
この樹脂組成物100質量部を70℃に加温し、135度Fパラフィンワックス0.6質量部を溶解した後、表1に示した6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加し配合物を得た。この配合物について、実施例1と同様の項目並びに表面乾燥性を測定した。
【0087】
[実施例5]
下記に示す製造により得た芳香族系エポキシアクリレート(A)、エチレンオキサイド4.0モル付加エトキシビスフェノールAジメタクリレート(B)及びジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(C)を含む下記の配合の硬化性樹脂組成物を作製した。
【0088】
芳香族系エポキシアクリレートの製造
攪拌機、コンデンサー、温度計、空気導入管を備えた2リツトルの四つ口フラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828)を510g仕込み、攪拌下に毎分10リットルの乾燥空気を吹き込みながら130℃まで昇温した。昇温後、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.3g、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gを添加し、アクリル酸144gを2時間かけて滴下した。滴下終了後3時間経過したところから、1時間毎に酸価の測定を開始し、10mgKOH/g以下になったことを確認した後、100℃まで冷却しエポキシアクリレートを得た。このエポキシアクリレート55質量部に、エチレンオキサイド4.0モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業社;BPE−200)20質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート25質量部を加えて溶解後、室温まで冷却し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0089】
光硬化積層ライニング材及び光硬化積層体の作製積層供試体のサイズは、1m×1mである。上記樹脂組成物100質量部に、光重合開始剤2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin、BASF社)3質量部を良く攪拌、混合して混合物を得た。厚み0.2mmのポリウレタンエラストマーフィルム(790M60K、日本バルカー工業(株)製)の上に、単位重量600g/m2のロービングクロスERW580−554A(セントラル硝子(株)製)を上層と下層、中間層に単位重量600g/m2のチョップストランドマットECM600−501(セントラル硝子(株)製)1層からなる3層を、下層から順に上記混合物を含浸させた後、その上に、さらに厚み0.2mmのポリウレタンエラストマーフィルム・790M60K(日本バルカー工業製)を被覆して積層ライニング材を作成した。
【0090】
この積層ライニング材表面から15cm離して400Wの紫外線ランプを10分間照射してから、バーコール硬度計(型式:GYXJ934−1)で硬度を測定し、硬度50到達をもって硬化性が良好か否かを確認した。フィルムの剥離については、常温放置10分後、上下のポリウレタンエラストマーフィルムをJISZ1524・包装用布粘着テープ(幅50mm、長さ250mm)をフィルム表面に圧着させて一端より剥離させ、粘着力を測定し、剥離の難易を判定した。硬化積層体物性として、引張強さ、引張弾性率はJISK7113、曲げ強さ、曲げ弾性率はJISK7203に準拠してそれぞれ測定した。重量変化率は、光重合開始剤又は有機過酸化物混合した樹脂組成物10gを、φ40mm(高さ、15mm)のガラスシャーレに流し込み、夫々光重合または熱重合で硬化させてから、脱型した注型物を温水(80℃)に96時間浸漬した後に重量変化率を測定した。その結果を表2に示す。
【0091】
[実施例6]
外径200mm(内径190mm)及び300mmの鋼製マンドレルの外側に実施例5に記載のウレタンエラストマーフィルムを巻き、突合せ部は熱シールし、チューブを形成後、実施例5と同一構成で樹脂含浸した後、ウレタンエラストマーフィルムのチューブを表層に被覆して光硬化性管状ライニング材を作製した。このライニング材を内面に離型剤塗布処理したヒューム管の管路に反転挿入し管路内面に密着させた後、管路内に400Wの紫外線ランプを10分間照射し、硬化積層管を得た。硬化積層管を管路から離型して表3の項目を測定した(管状ライニング材の管体特性を測定)。なお、内外面のチューブの剥離性については、実施例5と同様の方法で確認した。硬化積層管物性として、5%偏平時及び圧壊時の線荷重は日本下水道協会規格(JSWAS・K−1)、水密性能及び破壊水圧確認試験はJISK6741:VU管(硬質塩化ビニール管)に準拠してそれぞれ測定した。
【0092】
[実施例7]
実施例5の製造で得た(A)エポキシアクリレート40質量部に、(B)エチレンオキサイド10モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPE−500、新中村化学工業(株)製)25質量部、(C)ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート35質量部を加えて溶解後、室温まで冷却して得た樹脂組成物100質量部に、有機過酸化物・硬化剤328(化薬アクゾ社製)2質量部を良く攪拌、混合して、混合物を得た。その後実施例5記載と同様のウレタンエラストマーフィルムをチューブ状に内外面に巻き付け、且つ、ガラス繊維に得られた混合物を交互に含浸、被覆して熱硬化性管状ライニング材を作製した。このライニング材を内面に離型剤塗布処理したヒューム管の管路に反転挿入し管路内面に密着させた後、管路内に温水を環境及びライニング材初期温度20℃から2時間は0.5℃/分で昇温し、2時間後80℃に到達後、80℃に2時間維持してから降温し、硬化積層管を得た。硬化積層管を管路から離型し、実施例6と同様の5%扁平時及び圧壊時の線荷重、水密性及び破壊水圧試験を実施した。表4に試験結果を示す。
【0093】
[実施例8]
実施例5に記載の内外面フィルム・ポリウレタンエラストマーの代わりに0.188μm厚のポリエステルフィルム(ルミラーS10#188、東レ(株)製)を使用して、光硬化積層ライニング材を作製した。紫外線ランプの照射位置、照射容量、照射時間は実施例5と同様として、硬化積層ライニング材の硬度、フィルム剥離性、硬化積層体物性の結果を表5に示す。
【0094】
[比較例1]
実施例1の製造で得たエポキシメタアクリレート(A)20質量部に実施例1のエチレンオキサイド2.6モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)50質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)30質量部を加えて溶解後、室温まで冷却し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に表1の6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加した配合物は25℃、24時間経過後も未硬化であった。
【0095】
[比較例2]
実施例1の製造で得たエポキシメタアクリレート(A)70質量部に実施例1のエチレンオキサイド2.6モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)20質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)10質量部を加えて溶解後、室温まで冷却し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に表1の6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加した配合物は25℃、24時間経過後も未硬化であった。
【0096】
[比較例3]
実施例1の製造で得たエポキシメタアクリレート(A)50質量部に実施例1のジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)50質量部を加えて溶解後、室温まで冷却し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に表1の6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加した配合物は、コンクリート付着強度及びコンクリートとのピーリング強度試験用に、コンクリートにプライマー、素地調整材、表面保護材を積層した供試体を80℃の温水に全面浸漬後25日でプライマー層、素地調整材層、表面保護層の各層間で微小のフクレ、剥離が無数に発生した。また、温水浸漬重量変化率は、本発明の樹脂組成物の2倍前後と高い。
【0097】
[比較例4]
実施例1の製造で得たエポキシメタアクリレート(A)50質量部にエチレンオキサイド30モル付加エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(B)20質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(C)30質量部を加えて溶解後、室温まで冷却し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に表1の6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加した配合物は、表面乾燥時間が長く、コンクリート付着強度及びコンクリートとのピーリング強度試験用に、コンクリートにプライマー、素地調整材、表面保護材を積層した供試体を80℃の温水に全面浸漬後7日でプライマー層、素地調整材層、表面保護層の各層間で微小のフクレ、剥離が無数に発生した。また、付着強度及びピーリング強度は常温水及び温水浸漬後極端に低下した。また、温水浸漬重量変化率は、本発明の樹脂組成物の2倍前後と高い。
【0098】
[比較例5]
スチレン型ビニルエステル樹脂に、表1の6%ナフテン酸コバルト及び過酸化ベンゾイルを添加した配合物のコンクリート付着強度、コンクリートとのピーリング強度及びスチレン揮発量などの測定結果を表1に示す。スチレン揮発量は80g/m2と極めて高い。
【0099】
[比較例6]
スチレン型ビニルエステル樹脂100質量部に、実施例7の有機過酸化物・硬化剤328(化薬アクゾ社製)2質量部を良く攪拌、混合してから実施例2と同様の方法で硬化積層管を得た。硬化積層管を管路から脱型し、内外面のチューブの剥離性については、実施例5と同様の方法で確認した。また、硬化積層管物性として、5%偏平時及び圧壊時の線荷重と水密性及び破壊水圧確認試験は実施例6に記載の日本下水道協会規格(JSWAS・K−1)及び硬質塩化ビニル管:VU管(JISK6741)に準拠して夫々測定した。なお、スチレン揮発量は、樹脂組成物を良く攪拌、混合してから、100gをφ145mmのガラスシャーレに入れ、温度25℃、湿度45%の環境下で60分放置後混合してから重量変化率を測定した。表6に示す通り、スチレン揮発量は80g/m2と極めて高く、また、ポリウレタンエラストマーフィルムは膨潤による浮き、軟化などがみられた。
【0100】
[比較例7]
実施例5に記載の内外面フィルム・ポリウレタンエラストマーの代わりに0.2mm厚のポリエチレンフィルムを使用して、光硬化積層体を作成した。ポリエチレンフィルムは硬化性複合材料表面に部分的に融着してフィルムの剥離は困難であった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
【表6】

【0107】
表1〜表6に示された結果から明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物の配合割合が異なる比較例1、2では、硬化不良を示し、(C)の特定のモノマー成分を使用しない比較例3及び(B)のエチレンオキサイド付加モル数の多い比較例4では、例えば、フクレの発生があり、満足する性能が得られなかった。また注型、成形特性でも十分な性能は得られなかった。またスチレン型ビニルエステル樹脂を用いた比較例5、6では、表面乾燥性、スチレンの発生に問題がある。
【0108】
一方、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた実施例の成形体、塗布層は、良好な硬化性、物性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の管状ライニング材の構成の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1で作製された歩道板上に設けられた防食被覆層の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 管状ライニング材
2 内側皮膜
3 繊維層筒状体
4 外側皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物からなるエポキシ(メタ)アクリレート30〜60質量%、(B)エチレンオキサイド付加モル数が2〜20のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート10〜30質量%及び(C)アルコール残基として環内に炭素間二重結合又は窒素原子を1個有する環状炭化水素基を含む基を有する単官能性(メタ)アクリレート系モノマー20〜40質量%を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物が、さらに不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材を含有していることを特徴とするコンクリート被覆組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物が、さらに鱗片状無機充填材を含有していることを特徴とするコンクリート被覆組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のコンクリート被覆組成物から形成された保護層を少なくとも1層を含む土木建築構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を含むライニング材。
【請求項6】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を繊維層筒状体に含浸してなる管状硬化性複合材料の内面及び/又は外面を、少なくとも一層のチューブで被覆してなる管状ライニング材。
【請求項7】
硬化性樹脂組成物がさらに光重合開始剤を含有している請求項6に記載の管状ライニング材。
【請求項8】
硬化性樹脂組成物がさらに有機過酸化物を含有している請求項6に記載の管状ライニング材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169311(P2006−169311A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361194(P2004−361194)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(595053777)吉佳株式会社 (49)
【Fターム(参考)】