説明

硬化性樹脂組成物、積層体、およびそれらの製造方法

【課題】 導電性が高く、着色が抑えられ、高い透明性を有し、かつ基材への密着性のよい硬化膜を形成できる硬化性樹脂組成物、高い導電性を長期間維持でき、かつ硬化膜に由来する着色が抑えられた積層体、およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 硬化性樹脂組成物として、カーボンナノチューブ(a)と、特定の極性基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する単位を含む(メタ)アクリル系重合体(b)と、重合性単量体(c)と、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)とを含有するものを用い、基材の表面に本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を形成して積層体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、積層体、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明で、かつ導電性を有する成形体(以下、「透明導電性成形体」と記す。)は、導電性隔壁、導電性部材、帯電防止材、電磁波シールド材、電極、コネクター、センサー、発熱体等に利用されている。透明導電性成形体としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂からなる基材に、導電性フィラーを分散、混合して導電性を付与したものが知られている。導電性フィラーとしては、金属、カーボン等が用いられる。
【0003】
しかし、基材に導電性フィラーを分散、混合して導電性を付与する場合、高濃度に導電性フィラーを添加する必要があり、結果、透明導電性成形体の透明性および機械的強度が低下し、合成樹脂本来の特性を損ねる問題がある。そのため、導電性フィラーの添加量は制限され、得られる成形体の導電性にも限界がある。
他の透明導電性成形体としては、基材表面にITOを蒸着させて透明導電膜を形成したものが知られている。しかし、蒸着が120℃程度の高温で行われるため、使用できる基材に制限がある。そのため、基材に用いることができる合成樹脂は、ごく一部に限られている。
【0004】
最近、導電性に優れている材料として、カーボンナノチューブが注目されている。しかし、カーボンナノチューブは、絡まった状態で製造されるため、取り扱いが非常に煩雑であり、樹脂または溶液に混合した場合は、さらに凝集し、成形加工してもカーボンナノチューブ本来の特性が発揮できないという問題がある。そのため、カーボンナノチューブを物理的に処理したり、化学的に修飾したりして、溶媒または樹脂に均一に分散または溶解させる試みがなされている。
例えば、単層カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理することにより短く切断して分散させる方法が提案されている(非特許文献1)。しかし、単層カーボンナノチューブを強酸中で処理するため、操作が煩雑となり、工業的に適した方法ではなく、その分散化の効果も十分とはいえない。
【0005】
このように切断された単層カーボンナノチューブは、その両末端が開いており、カルボン酸基等の含酸素官能基で終端されている。その点に着目し、単層カーボンナノチューブの末端のカルボン酸基を塩にした後、カルボン酸塩とアミン化合物と反応させて末端に長鎖アルキル基を導入し、溶媒に可溶化する方法が提案されている(非特許文献2)。しかし、この方法では、単層カーボンナノチューブに共有結合によって長鎖アルキル基を導入しているため、カーボンナノチューブのグラフェンシート構造の損傷、カーボンナノチューブ自体の特性に影響を与える等の問題点が残されている。
【0006】
カーボンナノチューブが溶媒または樹脂に均一に分散または溶解した組成物としては、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、および溶媒からなる組成物が提案されている(特許文献1)。該組成物は、導電性ポリマーを共存させることでカーボンナノチューブ自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを水、有機溶剤、含水有機溶媒等の溶媒に分散または溶解させている。該組成物は、導電性、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材へ塗布できる。しかし、導電性ポリマーに由来する着色のため、無色透明性が求められる用途への応用は難しい。また、該組成物を基材表面に塗布して形成された塗膜は、外部からの刺激によって容易に脱離してしまい、その性能を長期間維持することができないという問題がある。
【非特許文献1】R.E.Smalley等,Science,vol.280,1998年,p.1253−1256
【非特許文献2】J.Chen等,Science,vol.282,1998年,p.95−98
【特許文献1】国際公開第2004/039893号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、導電性が高く、着色が抑えられ、高い透明性を有し、かつ基材への密着性のよい硬化膜を形成できる硬化性樹脂組成物、高い導電性を長期間維持でき、かつ硬化膜に由来する着色が抑えられた積層体、およびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(a)と、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル系単量体に由来する単位を含む(メタ)アクリル系重合体(b)(以下、「(メタ)アクリル系重合体(b)」と記す。)と、重合性単量体(c)と、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)とを含有することを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(I)中、R1 は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、−O−、−NH−、または−N(CH3 )−を表し、R2 は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、A1 は、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、アルキルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホン酸エステル基、メルカプト基、スルフィド基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、およびホスホン酸エステル基からなる群から選ばれる1種の極性基を表す。)
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、アミン化合物(e)をさらに含有することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は、カーボンナノチューブ(a)と、前記(メタ)アクリル系重合体(b)と、重合性単量体(c)と、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)とを混合し、混合物に超音波を照射することを特徴とする。
本発明の積層体は、基材の表面に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の積層体は、全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法は、基材の表面に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を有する積層体の製造方法であって、型の内面に、前記硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成した後、型内に重合性原料または溶融樹脂を流し込み、固化させて基材を形成し、該基材とともに前記硬化膜を型から剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、導電性が高く、着色が抑えられ、高い透明性を有し、かつ基材への密着性のよい硬化膜を形成できる。
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法によれば、導電性が高く、着色が抑えられ、高い透明性を有し、かつ基材への密着性のよい硬化膜を形成できる硬化性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の積層体は、高い導電性を長期間維持でき、かつ硬化膜に由来する着色が抑えられ、高い透明性を有するものとなる。
本発明の積層体の製造方法によれば、高い導電性を長期間維持でき、かつ硬化膜に由来する着色が抑えられ、高い透明性を有するた積層体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
<カーボンナノチューブ(a)>
カーボンナノチューブ(a)は、例えば、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒、または該円筒が複数個入れ子構造になったものであり、外径がnmオーダーの極めて微小な物質である。
カーボンナノチューブ(a)としては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったもの、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、その頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質、カーボンナノチューブ(a)の類縁体であるフラーレン、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0015】
カーボンナノチューブ(a)の製造方法としては、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD法)、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。各種機能を十分に発現させるために、これら製造方法によって得られたカーボンナノチューブ(a)を、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化することが好ましい。
カーボンナノチューブ(a)は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕されていてもよく、化学的、物理的処理によって短く切断されていてもよい。
【0016】
<(メタ)アクリル系重合体(b)>
(メタ)アクリル系重合体(b)は、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル系単量体(以下、「(メタ)アクリル系単量体(I)」と記す。)に由来する単位を含む重合体であり、(メタ)アクリル系単量体(I)とこれと重合可能な他のビニル系単量体(以下、「他のビニル系単量体」と記す。)とからなる共重合体が好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
(式(I)中、R1 は、HまたはCH3 を表し、Xは、−O−、−NH−、または−N(CH3 )−を表し、R2 は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、A1 は、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、アルキルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホン酸エステル基、メルカプト基、スルフィド基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、およびホスホン酸エステル基からなる群から選ばれる1種の極性基を表す。)
【0019】
(メタ)アクリル系単量体(I)としては、極性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、極性基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
(メタ)アクリル系単量体(I)としては、下記式(1)で表される単量体が好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
(式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基を表し、R12、R13は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、X1 は、−O−、−NH−、または−N(CH3 )−を表し、Y1 は、−C(O)OH、−C(O)O-+、−S(O)2 OH、−S(O)2-+ 、−P(O)(OH)2 、または−P(O)(OH)O-+を表し、nは0〜3の整数を表し、M+ はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、または下記式(2)を表す。)
【0022】
【化4】

【0023】
(式(2)中、R21〜R24は、それぞれ単独に水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R25OH、−C(O)NH2 、または−NH2 を表し、R25は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、炭素数1〜24のアラルキレン基を表す。)
上記式(1)で表される(メタ)アクリル系単量体のうち、Y1 が、−S(O)2 OHまたは−S(O)2-+ の単量体が特に好ましい。
【0024】
他のビニル系単量体は、ラジカル重合可能なビニル化合物であれば特に制限されない。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合、これら他のビニル系単量体が重合可能であればよい。
他のビニル系単量体としては、下記式(3)で表される(メタ)アクリル酸またはその塩;下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等が挙げられる。
【0025】
【化5】

【0026】
(式(3)中、R31は、水素原子またはメチル基を表し、Y3 は、−C(O)OH、−C(O)O-+を表し、M+ はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはアンモニウムイオンを表す。)
【0027】
【化6】

【0028】
(式(4)中、R41は、水素原子またはメチル基を表し、R42は、炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0029】
式(3)で表される(メタ)アクリル酸またはその塩としては、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウムが好ましい。
式(4)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
以上の他のビニル系単量体のうち、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系重合体(b)は、(メタ)アクリル系単量体(I)、および必要に応じて他のビニル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得られる。
(メタ)アクリル系単量体(I)と、他のビニル系単量体との割合は、(メタ)アクリル系単量体(I)99〜1質量%、他のビニル系単量体1〜99質量%が好ましい。(メタ)アクリル系単量体(I)を1質量%以上とすることにより、カーボンナノチューブ(a)を重合性単量体(c)中に充分に分散または溶解させることができる。他のビニル系単量体を1質量%以上とすることにより、(メタ)アクリル系重合体(b)の重合性単量体(c)への溶解性が良好となる。
【0031】
単量体混合物の重合は、均一重合で行うことが好ましい。均一重合で得られた(メタ)アクリル系重合体(b)は透明性に優れ、結果、これを用いた硬化性樹脂組成物およびその硬化膜は高い透明性を有する。
重合用溶媒は、(メタ)アクリル系単量体(I)、他のビニル系単量体、および(メタ)アクリル系重合体(b)が溶解する溶媒であればよい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
単量体混合物と溶媒との質量比(単量体混合物/溶媒)は、1/1〜1/25が好ましい。単量体混合物1に対して溶剤が1以上であれば、重合溶液の粘度が高くなり過ぎず、重合温度を均一に保つことが容易になるとともに、溶解度の小さい単量体を用いた場合でも単量体濃度の制限が小さく、かつ単量体の拡散速度および重合速度への影響も小さい。単量体混合物1に対して溶媒が25以下であれば、生産性、経済性の点から有利である。単量体混合物/溶媒は、1/2〜1/20がより好ましく、1/3〜1/15が特に好ましい。
【0033】
単量体混合物の重合の際、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、公知のものが挙げられる。これらのうち、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸、チオフェノール、それらの混合物等のメルカプタン系連鎖移動剤が好ましく、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキル鎖の短いメルカプタンが特に好ましい。
【0034】
単量体混合物の重合の際、アゾ化合物、有機過酸化物、水溶性無機化合物、レドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
【0035】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
水溶性無機化合物としては、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩等が挙げられる。
レドックス系重合開始剤としては、前記水溶性無機化合物と水溶性還元剤との組み合わせ、過酸化水素またはヒドロペルオキシドと還元剤との組み合わせ等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の量は、単量体混合物100質量部に対して0.005〜5質量部が好ましい。
【0036】
<重合性単量体(c)>
重合性単量体(c)は、(メタ)アクリル系重合体(b)を溶解し、該(メタ)アクリル系重合体(b)の作用によってカーボンナノチューブ(a)を分散または溶解するものであればよい。
重合性単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、硬化性樹脂組成物の硬化膜の透明性、耐衝撃性、耐擦傷性、易成形性の観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物が好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0038】
重合性基を二つ以上有する(メタ)アクリル系化合物としては、(i)多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応させて得られるエステル化物;(ii)多価アルコールと、多価カルボン酸またはその無水物と、(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物;(iii)ウレタン(メタ)アクリレート;(iv)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート;(v)エポキシポリアクリレート;(vi)ウレタンポリアクリレート等が挙げられる。
【0039】
(i)のエステル化物としては、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
(ii)のエステル化物において、多価カルボン酸またはその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸の好ましい組み合わせとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0041】
(iii)ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート1モルに対し3モル以上の活性水素を有するアクリル系単量体を反応させて得られる。
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の3量化により得られるものが挙げられる。
活性水素を有するアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(iv)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジまたはトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合性単量体(c)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
<光重合開始剤(d−1)>
光重合開始剤(d−1)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<熱重合開始剤(d−2)>
熱重合開始剤(d−2)としては、アゾ化合物、有機過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
<アミン化合物(e)>
アミン化合物(e)としては、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物、第四級アンモニウム化合物、重合性のアミン化合物に由来する単位を有する重合体等が挙げられる。これらのうち、第三級アミン化合物、第四級アンモニウム化合物、重合性のアミン化合物に由来する単位を有する重合体が、カーボンナノチューブ(a)の分散性、および硬化性樹脂組成物の長期保存安定性をさらに向上させる効果が高く、好ましい。
第一級〜第三級アミン化合物としては、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
【0046】
【化7】

【0047】
(式(5)中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R54OH、−C(O)NH2 、または−NH2 を表し、R54は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表す。)
第四級アンモニウム化合物としては、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【0048】
【化8】

【0049】
(式(6)中、R61〜R64は、それぞれ独立に水素原子、−R65OH、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−C(O)NH2 、または−NH2 を表し、R65は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、Zki- は、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アミド硫酸イオン、亜硫酸イオン、ホスフィン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、吉草酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酪酸イオン、蟻酸イオン、トリメチル酢酸イオン、ブロモ酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、アスコルビン酸イオン、アニス酸イオン、アントラニル酸イオン、安息香酸イオン、ケイ皮酸イオン、フェニル酢酸イオン、フタル酸イオン、アニリンスルホン酸イオン、チオカルボン酸イオン、メチルスルフィン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンを表し、iはZk のイオン価数であって1〜3の整数を表し、jは1〜3の整数を表す。)
【0050】
第一級〜第三級アミン化合物としては、ベンジルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジ−n−プロピルアニリン、ジ−iso−プロピルアニリン等が好ましい。
第四級アンモニウム化合物としては、塩化ベンザルコニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム;塩化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジエチルベンジルアンモニウム;塩化トリオクチルメチルアンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム;水酸化トリメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
【0051】
重合性のアミン化合物としては、重合性の第一級〜第三級アミン化合物、重合性の第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
重合性の第一級〜第三級アミン化合物としては、下記式(7)で表される重合性単量体が挙げられる。
【0052】
【化9】

【0053】
(式(7)中、R71は、水素原子またはメチル基を表し、R72、R73は、それぞれ単独に水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R74OH、−C(O)NH2 または−NH2 を表し、R74は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、X7 は−OR75−、−N(H)R76−を表し、R75、R76は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表す。)
重合性の第四級アンモニウム化合物としては、下記式(8)で表される重合性単量体が挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
(式(8)中、R81は、水素原子またはメチル基を表し、R82、R83は、それぞれ単独に水素原子、ハロゲン原子を含んでよい炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R85OH、−C(O)NH2 、または−NH2 を表し、R85は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、X8 は、−OR86−、−N(H)R87−を表し、R86、R87は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、R84は、ハロゲン原子を含んでよい炭素数1〜24のアルキレン基を表し、Y8 は、水素原子、ハロゲン原子を含んでよい炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R88OH、−C(O)NH2 または−NH2 を表し、R88は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、Z- は、四級化剤の残査からなるアニオンを表す。)
【0056】
重合性のアミン化合物に由来する単位を有する重合体は、他のビニル系単量体に由来する単位を有していてもよい。
他のビニル系単量体としては、上記式(7)および上記式(8)の重合性単量体と重合できるものであればよく、重合性単量体(c)への溶解性、および硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜の透明性の観点から、(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0057】
重合性のアミン化合物に由来する単位を有する重合体としては、例えば、下記式(9)で表される重合性の第四級アンモニウム化合物と、下記式(10)で表される(メタ)アクリル系単量体との共重合体が挙げられる。
【0058】
【化11】

【0059】
(式(9)中、R91は、水素原子またはメチル基を表し、R92〜R94は、それぞれ独立に水素原子、または、置換基としてハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜9のアルキル基を表し、mは1〜10の整数を表し、Z- は、四級化剤の残査からなるアニオンを表し、X9 は、−O−または−NH−を表す。)
【0060】
【化12】

【0061】
(式(10)中、R101 は、水素原子またはメチル基を表し、R102 は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基、または炭素数1〜18のアラルキル基を表し、R103 は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、lは0〜500の整数を表す。)
【0062】
四級化剤としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸等のアルキル硫酸類;p−トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル類;トリメチルホスファイト等のアルキルリン酸;アルキルベンジルクロライド、ベンジルクロライド、アルキルクロライド、アルキルブロマイド等の各種ハライド等が挙げられる。これらのうち、耐熱分解性の点から、アルキル硫酸類、スルホン酸エステル類が特に好ましい。
【0063】
<高分子化合物(f)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、高分子化合物(f)を含有していてもよい。高分子化合物(f)を用いることにより、硬化膜の基材への密着性、強度がさらに向上する。高分子化合物(f)は、重合性単量体(c)に溶解または分散(エマルション形成)可能であり、(メタ)アクリル系重合体(b)以外のものであればよい。
【0064】
高分子化合物(f)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール類;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等のポリ(メタ)アクリル酸類;ポリアクリルアミド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)等のポリアクリルアミド類;ポリビニルピロリドン類;ポリスチレンスルホン酸、その塩類;セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、ポリエステル、スチレン−マレイン酸共重合体、フッ素樹脂、これらの共重合体等が挙げられる。高分子化合物(f)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
<界面活性剤(g)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、界面活性剤(g)を含有していてもよい。界面活性剤(g)を用いることにより、カーボンナノチューブ(a)の重合性単量体(c)への分散または溶解がさらに促進するとともに、硬化膜の平坦性、塗布性、導電性等が向上する。
界面活性剤(g)としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、これらの塩等が挙げられる。
【0067】
カチオン系界面活性剤としては、第一級〜第三級の脂肪族アミン、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルホリニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、その塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、その塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類;N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等が挙げられる。
【0069】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0070】
フッ素系界面活性剤としては、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等が挙げられる。フッ素系界面活性剤のアルキル基の炭素数は、1〜24が好ましく、3〜18がより好ましい。
界面活性剤(g)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
<シランカップリング剤(h)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤(h)を含有していてもよい。シランカップリング剤(h)を用いることにより、硬化膜を有する積層体の耐水性が著しく向上する。シランカップリング剤(h)は、重合性単量体(c)に溶解するものであればよい。
シランカップリング剤(h)としては、例えば、下記式(11)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0072】
【化13】

【0073】
(式(11)中、R111 〜R113 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基、アミノ基、アセチル基、フェニル基、ハロゲン原子を表し、X11は、下記式(12)を表し、Y11は、水酸基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、またはエポキシシクロヘキシル基を表す。)
【0074】
【化14】

【0075】
(式(12)中、p、q、rは、それぞれ1〜6の整数を表す。)
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロポキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チオール基を有するシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を有するシランカップリング剤としては、β−ヒドロキシエトキシエチルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシクロヘキシル基を有するシランカップリング剤としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
<コロイダルシリカ(i)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、コロイダルシリカ(i)を含有していてもよい。コロイダルシリカ(i)を用いることにより、硬化性樹脂組成物の硬化膜を有する積層体は、表面硬度および耐候性が著しく向上する。
コロイダルシリカ(i)としては、水、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒に分散されているものが好ましい。
【0077】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類等が挙げられる。
【0078】
コロイダルシリカ(i)としては、粒子径が1nm〜300nmのものが好ましく、1nm〜150nmのものがより好ましく、1nm〜50nmのもの特に好ましい。コロイダルシリカ(i)の粒子径がこの範囲にあれば、硬化膜が透明性を維持したまま、その表面硬度、耐候性が著しく向上する。
【0079】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(a)、(メタ)アクリル系重合体(b)、重合性単量体(c)、および光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)を必須成分とし、必要に応じてアミン化合物(e)、高分子化合物(f)、界面活性剤(g)、シランカップリング剤(h)、コロイダルシリカ(i)を含有するものである。
【0080】
カーボンナノチューブ(a)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.0001〜20質量部が好ましく、0.001〜10質量部がより好ましい。カーボンナノチューブ(a)の量をこの範囲とすることにより、導電性、溶解性または分散性が良好となり、また、該組成物の硬化膜を有する積層体は透明性が高く、導電性が良好である。
【0081】
(メタ)アクリル系重合体(b)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.001〜50質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(b)の量をこの範囲とすることにより、カーボンナノチューブ(a)の分散性が良好となり、また、該組成物の硬化膜を有する積層体の耐水性、耐候性、表面硬度が向上する。
【0082】
光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましい。光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)の量をこの範囲とすることにより、硬化性樹脂組成物は充分に硬化し、硬化膜の着色もなく、透明性の高い積層体が得られる。
【0083】
アミン化合物(e)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.01〜40質量部が好ましく、0.01〜20質量部がより好ましい。アミン化合物(e)の量を重合性単量体(c)100質量部に対して0.01質量部以上とすることにより、カーボンナノチューブ(a)の分散性、および本発明の硬化性樹脂組成物の長期保存安定性が向上する。アミン化合物(e)の量を重合性単量体(c)100質量部に対して40質量部以下とすることにより、得られる積層体の耐候性、導電性、強度の低下が少なく、これらの特性が良好に維持される。
【0084】
高分子化合物(f)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.01〜400質量部が好ましく、0.1〜300質量部がより好ましい。高分子化合物(f)の量を重合性単量体(c)100質量部に対して0.01質量部以上とすることにより、成膜性、成形性、強度がより向上し、該組成物の硬化膜を有する積層体の耐水性、耐候性、表面硬度が向上する。高分子化合物(f)の量を重合性単量体(c)100質量部に対して400質量部以下とすることによって、(メタ)アクリル系重合体(b)およびカーボンナノチューブ(a)の溶解性の低下が少なく、これらの特性が良好に維持される。
【0085】
界面活性剤(g)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.0001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。界面活性剤(g)の量をこの範囲とすることによって、カーボンナノチューブ(a)の溶解性または分散性、および本発明の硬化性樹脂組成物の長期保存安定性が良好となり、また、該組成物の硬化膜を有する積層体の外観、透明性が向上する。
【0086】
シランカップリング剤(h)の量は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜15質量部がより好ましい。シランカップリング剤(h)の量をこの範囲とすることによって、該組成物の硬化膜を有する積層体の耐水性が良好となる。
【0087】
コロイダルシリカ(i)の量(固形分)は、重合性単量体(c)100質量部に対して0.001〜100質量部が好ましく、0.01〜50質量部がより好ましい。コロイダルシリカ(i)の量を重合性単量体(c)100質量部に対して0.01質量部以上とすることにより、該組成物の硬化膜の耐水性、耐侯性および硬度が大幅に向上する。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、各種溶剤、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物には、導電性をさらに向上させるために、導電性物質を含有させてもよい。導電性物質としては、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質;酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物;銀、ニッケル、銅等の金属;フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等の繰り返し単位を有するπ共役系高分子;対称型または非対称型のインドール誘導体三量体等が挙げられる。これらの導電性物質のうち、π共役系高分子、インドール誘導体三量体、またはこれらのドーピング物が好ましく、スルホン酸基および/またはカルボン酸基を有する水溶性のπ共役系高分子、インドール誘導体三量体、またはこれらのドーピング物が特に好ましい。
【0090】
<硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(a)、(メタ)アクリル系重合体(b)、重合性単量体(c)、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)、および必要に応じて他の成分を混合することによって製造される。
混合には、超音波発振器、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等の撹拌または混練装置が用いられることが好ましい。
【0091】
本発明においては、カーボンナノチューブ(a)、(メタ)アクリル系重合体(b)、重合性単量体(c)、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)、および必要に応じて他の成分を混合し、混合物に超音波を照射することがより好ましい。また、超音波ホモジナイザーを用いて、超音波照射とホモジナイザーによる混合とを併せて行うことが特に好ましい。
【0092】
超音波照射処理は、カーボンナノチューブ(a)を重合性単量体(c)に均一に分散または溶解させるのに充分な超音波の強度および処理時間で行う。超音波発振器における定格出力は、超音波発振器の単位底面積当たり0.1〜2.0ワット/cm2 が好ましく、0.3〜1.5ワット/cm2 がより好ましい。発振周波数は、10〜200KHzが好ましく、20〜100KHzがより好ましい。超音波照射処理の時間は、1分〜48時間が好ましく、5分〜48時間がより好ましい。
【0093】
超音波照射処理を行う際の硬化性樹脂組成物の温度は、硬化性樹脂組成物の熱重合防止および分散性向上の点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
超音波照射処理後、さらに、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置を用いて分散または溶解を徹底化することが好ましい。
【0094】
<積層体>
本発明の積層体は、基材の表面に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を有するものである。
基材としては、合成樹脂のフィルム、シート、発泡体、多孔質膜、エラストマー、各種成形体;木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、ガラス板、ステンレス板等が挙げられる。
【0095】
合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン等が挙げられる。合成樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0096】
硬化膜の厚さは、充分な導電性を実現するために、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、硬化膜の厚さは、充分な透明性を実現し、かつ硬化膜にクラックが発生したり、積層体の切断時に硬化膜が欠けたりする等の不具合を抑制するため、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
本発明の積層体においては、必要に応じて硬化膜の上に反射防止膜を設けてもよい。また、基材の一方の面に本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を設け、他方の面に反射防止膜、拡散層、接着層等の他の機能性薄膜を設けてもよい。
【0097】
本発明の積層体は、硬化膜中にカーボンナノチューブ(a)が高度に分散または溶解しているため、透明性に優れる。このため、本発明の積層体の全光線透過率は、50%以上、好ましくは70%以上となり、透明導電性成形体として各種用途に利用できる。
【0098】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法としては、(i)基材に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させる方法;(ii)型の内面に、硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成した後、型内に重合性原料または溶融樹脂を流し込み、固化させて基材を形成し、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法;(iii)型と基材との間に硬化性樹脂組成物を流し込んで硬化させて硬化膜を形成した後、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法等が挙げられる。
【0099】
これらの方法のうち、(ii)の方法が、埃等の影響で外観が低下することもなく、表面状態の良好な硬化膜を得ることができるため、好ましい。
(ii)の方法で用いられる型としては、注型重合用の鋳型、成形用型等が挙げられる。鋳型が2枚の表面平滑な板状物からなる場合、表面平滑な板状積層体を得ることができる。この際、硬化膜を一方の鋳型に形成してもよく、両方の鋳型に形成してもよい。
【0100】
基材の形成方法としては、重合性原料を注型重合用の鋳型に注入して重合させる、いわゆるキャスト重合法が好ましい。
キャスト重合法としては、例えば、硬化性樹脂組成物が光硬化性の場合、硬化性樹脂組成物をガラス板からなる注型重合用のガラス型の内面に塗布し、光硬化させた後、ガラス型内に重合性原料を流し込んで重合させる方法が挙げられる。ガラス型は、例えば、2枚のガラス板の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等からなるガスケットを挟み込み、これらをクランプ等で固定することにより、組み立てられる。
【0101】
連続的キャスト重合法としては、例えば、特公昭46−41602号公報に記載されている装置を用い、2枚のスチールベルトの間でメタクリル酸メチル等を重合する方法が挙げられる。この連続的キャスト重合法においては、例えば、スチールベルト表面に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成する。また、スチールベルト表面にあらかじめ凹凸等の意匠を付与しておけば、表面に意匠性を有する積層体を製造できる。また、表面に凹凸を有し、かつ硬化性樹脂組成物に溶解または膨潤しないフィルム等をスチールベルトに貼り付け、その凹凸面に硬化性樹脂組成物を塗布してもよい。
【0102】
重合性原料としては、硬化性樹脂組成物の硬化膜を有する積層体の透明性の観点から、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物、この単量体混合物の一部が重合した重合体と単量体混合物との混合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0103】
単量体混合物は、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等の他の重合性単量体を含有していてもよい。他の重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
単量体混合物の一部が重合した重合体と単量体混合物との混合物における、単量体の重合率は35質量%以下が好ましい。
【0104】
重合性原料に連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸、チオフェノール、それらの混合物等のメルカプタン系連鎖移動剤が好ましく、n−オクチルメルカプタンやn−ドデシルメルカプタン等のアルキル鎖の短いメルカプタンが特に好ましい。
【0105】
重合性原料を加熱により重合させる場合、アゾ化合物、有機過酸化物、レドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤を添加してもよい。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類との組み合わせ等が挙げられる。
【0106】
重合性原料を紫外線照射により重合させる場合、フェニルケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の光重合開始剤を添加してもよい。市販の光重合開始剤としては、「イルガキュア184」(日本チバガイギー(株)製)、「イルガキュア907」(日本チバガイギー(株)製)、「ダロキュア1173」(メルク・ジャパン(株)製)、「エザキュアKIP100F」(日本シーベルヘグナー(株)製)等が挙げられる。
【0107】
また、重合性原料を紫外線照射により重合させる場合、光増感剤を添加してもよい。光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。また、400nm以下の波長域において増感作用を有する光増感剤を添加してもよい。
【0108】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材または型に塗布する方法としては、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等を用いた方法;エアスプレー、エアレススプレー等の噴霧方法;ディップ等の浸漬方法等が挙げられる。
【0109】
以上説明した本発明の硬化性樹脂組成物にあっては、カーボンナノチューブ(a)を極性基を有する(メタ)アクリル系共重合体(b)とともに重合性単量体(c)に加えているため、カーボンナノチューブ(a)自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブ(a)を重合性単量体(c)に分散または溶解させることができ、長期保存においてもカーボンナノチューブ(a)が分離凝集しない。この理由は明確に解明されていないが、極性基を有する(メタ)アクリル系重合体(b)がカーボンナノチューブ(a)に吸着またはらせん状にラッピングすることにより、カーボンナノチューブ(a)が(メタ)アクリル系重合体(b)とともに重合性単量体(c)に分散または溶解しているものと推測される。
【0110】
また、本発明の積層体にあっては、カーボンナノチューブ(a)が高度に分散または溶解した状態を保持したまま硬化膜が形成されているため、外部刺激によるカーボンナノチューブ(a)の脱離等がなく、長期的に優れた導電性、透明性を維持できる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
カーボンナノチューブ(a)としては、ILJIN社製、CVD法により製造された多層カーボンナノチューブ(以下、カーボンナノチューブ(a1)と記す。)を使用した。
【0112】
<評価方法>
実施例および比較例で得られた硬化性樹脂組成物の状態、積層体の表面抵抗値、全光線透過率、表面外観については、下記の方法により測定、評価した。
(硬化性樹脂組成物の状態)
目視により硬化性樹脂組成物の状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:溶液状態で目視上均一な組成物。
×:溶液状態で目視上不均一な組成物。
【0113】
(表面抵抗値)
25℃、15%RHの条件下で硬化性樹脂組成物の硬化膜の表面抵抗値の測定を行った。表面抵抗値が108 Ω以上の場合は二探針法(電極間距離:20mm)を用い、表面抵抗値が107 Ω以下の場合は四探針法(各電極間距離:5mm)を用いた。
(全光線透過率)
全光線透過率(%)は、日本電色工業(株)製、HAZEMETER NDH2000により測定した。
(表面外観)
目視により積層体の硬化膜の色調および状態を観察し、状態については以下の基準で評価した。
○:表面が均一な硬化膜が形成された。
×:カーボンナノチューブが不均一に存在する硬化膜が形成された。
【0114】
<(メタ)アクリル系重合体(b)の製造>
(製造例1)
メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム/メタクリル酸カリウム/メタクリル酸メチル共重合体:
メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム2質量部、メタクリル酸カリウム1質量部、メタクリル酸メチル17質量部、テトラフヒドロフラン35質量部、メタノール35質量部、脱イオン水10質量部を、コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ中で窒素雰囲気下に攪拌した。重合開始剤として2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル0.15質量部を添加して60℃に昇温した。6時間攪拌を続けたところ、透明な重合体溶液が得られた。重合中、重合溶液は均一に保たれており、ポリマーの析出、沈降、重合溶液の白濁は観測されなかった。室温で冷却後、イソプロパノール500質量部で再沈処理を行い、白色粉体を回収し、真空乾燥機中40℃で乾燥し、(メタ)アクリル系重合体(b1)を得た。
【0115】
<アミン化合物(e)の製造>
(製造例2)
ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレートモノメチルエーテル共重合体:
撹拌羽根付きガラス製フラスコに、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド188質量部、メタノール228質量部を投入し、撹拌しながらジメチル硫酸136質量部、メタノール41.3質量部の混合物を、内温が15℃以下となる様に滴下し、滴下終了後30分間撹拌を続けジメチル硫酸で4級化されたジメチルアミノプロピルメタクリルアミド318質量部を含む溶液593.3質量部を得た。
【0116】
この溶液に、2,2秩|アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.48質量部、n−オクチルメルカプタン2.48質量部、メタノール406質量部、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレートモノメチルエーテル(カッコ内はポリエチレングリコールユニットの数)485質量部、4−メタクリロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン16.5質量部を加え、60℃で窒素雰囲気下にて6時間重合させた後、50℃で3日真空乾燥し、アミン化合物(e1)を得た。
【0117】
<重合性単量体(c)>
(重合性単量体(c1)の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)50質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)40質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(商品名:HEA、大阪有機化学工業(株)製)10質量部を混合し、重合性単量体(c1)を調製した。
【0118】
(重合性単量体(c2)の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)40質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)50質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(商品名:HEA、大阪有機化学工業(株)製)10質量部を混合し、重合性単量体(c2)を調製した。
【0119】
(実施例1)
硬化性樹脂組成物1:
(メタ)アクリル系重合体(b1)5質量部、カーボンナノチューブ(a1)0.05質量部を、重合性単量体(c1)100質量部に加え、室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施した後、光重合開始剤としてベンゾインイソプロピルエーテル(商品名:セイクオールBIP、精工化学(株)製、以下BIPとも記載する。)1.5質量部を添加し、硬化性樹脂組成物1を得た。硬化性樹脂組成物1の評価結果を表1に示す。
【0120】
積層体1:
硬化性樹脂組成物1を、鏡面を有するステンレス板の鏡面側に滴下し、その上に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(以下PETとも記載する)製の2軸延伸フィルム(帝人(株)製)を配置し、JIS硬度30°のゴムロームにてしごき、硬化性樹脂組成物1の厚さを30μmに設定した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ((株)東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.8m/分のスピードで通過させ、硬化性樹脂組成物1を前硬化させた後、PETフィルムを剥離した。ついで、出力30W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を、塗膜を上にして、0.8m/cmのスピードで通過させ、硬化性樹脂組成物1を硬化させ、硬化膜を形成した。硬化膜が形成された2枚のステンレス板を、硬化膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質塩化ビニル樹脂製のガスケットで封じ、注型重合用の型を作製した。この注型重合用の型に、重合率20質量%のメタクリル酸メチル部分重合体100質量部および2,2秩|アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量部からなる重合性原料を注入し、対向するステンレス板の間隔を2mmに調整し、80℃水浴中で1時間、ついで130℃の空気炉で1時間重合した。冷却後ステンレス板から樹脂板を剥離することにより、表面に硬化膜を有する積層体1を得た。積層体1の評価結果を表1に示す。
【0121】
(実施例2)
硬化性樹脂組成物2:
(メタ)アクリル系重合体(b1)5質量部、カーボンナノチューブ(a1)0.05質量部、アミン化合物(e1)16質量部を、重合性単量体(c2)100質量部に加え、室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施した後、BIP 1.5質量部を添加し、硬化性樹脂組成物2を得た。硬化性樹脂組成物2の評価結果を表1に示す。
【0122】
積層体2:
硬化性樹脂組成物2を、アクリル樹脂板(厚さ3mm)上に滴下し、その上に厚さ12μmのPETフィルム(帝人(株)製)を配置し、JIS硬度30°のゴムロームにてしごき、硬化性樹脂組成物2の厚さを30μmに設定した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ((株)東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.8m/分のスピードで通過させ、硬化性樹脂組成物2を前硬化させた後、PETフィルムを剥離した。ついで、出力30W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を、塗膜を上にして0.8m/cmのスピードで通過させ、硬化性樹脂組成物2を硬化させることにより、表面に硬化膜を有する積層体2を得た。積層体2の評価結果を表1に示す。
【0123】
(比較例1)
硬化性樹脂組成物3:
カーボンナノチューブ(a1)0.05質量部を、重合性単量体(c2)100質量部に加え、室温に混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施した後、BIP 1.5質量部を添加し、硬化性樹脂組成物3を得た。硬化性樹脂組成物3の評価結果を表1に示す。
【0124】
積層体3:
硬化性樹脂組成物3を用いること以外は実施例1と同様にして、表面に硬化被膜を有する積層体3を得た。積層体3の評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
(*):部分的にカーボンナノチューブが凝集し、ムラのある塗膜であったため、全光線透過率測定を行わなかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の硬化性樹脂組成物および積層体は、各種帯電防止材;コンデンサー、電池、燃料電池等を構成する高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーター等の部材;EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、導電性塗料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装用導電性プライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上;半導体、電気・電子部品等の工業用包装材料;オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルム等の電子写真記録材料等の帯電防止フィルム;オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フロッピィディスク等の磁気記録用テープ・ディスクの帯電防止;電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)および電極、水素貯蔵剤、透明タッチパネル;エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等の入力または表示デバイス表面の帯電防止または透明電極;フラットパネルディスプレイの前面板、携帯電話またはデジタルカメラの表示ディスプレイ保護板;有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料および蛍光材料;熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シート等の用途に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(a)と、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル系単量体に由来する単位を含む(メタ)アクリル系重合体(b)と、重合性単量体(c)と、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)とを含有する硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R1 は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、−O−、−NH−、または−N(CH3 )−を表し、R2 は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、A1 は、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、アルキルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホン酸エステル基、メルカプト基、スルフィド基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、およびホスホン酸エステル基からなる群から選ばれる1種の極性基を表す。)
【請求項2】
アミン化合物(e)をさらに含有する、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
カーボンナノチューブ(a)と、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル系単量体に由来する単位を含む(メタ)アクリル系重合体(b)と、重合性単量体(c)と、光重合開始剤(d−1)または熱重合開始剤(d−2)とを混合し、混合物に超音波を照射する硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化2】

(式(I)中、R1 は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、−O−、−NH−、または−N(CH3 )−を表し、R2 は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を表し、A1 は、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、アルキルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホン酸エステル基、メルカプト基、スルフィド基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基、およびホスホン酸エステル基からなる群から選ばれる1種の極性基を表す。)
【請求項4】
基材の表面に、請求項1または請求項2記載の硬化性樹脂組成物の硬化膜を有する積層体。
【請求項5】
全光線透過率が50%以上である、請求項4記載の積層体。
【請求項6】
基材の表面に、請求項1または請求項2記載の硬化性樹脂組成物の硬化膜を有する積層体の製造方法であって、
型の内面に、前記硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成した後、
型内に重合性原料または溶融樹脂を流し込み、固化させて基材を形成し、該基材とともに前記硬化膜を型から剥離する積層体の製造方法。

【公開番号】特開2006−328311(P2006−328311A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157472(P2005−157472)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】