説明

硬化性樹脂組成物および該硬化性樹脂組成物を用いたフレキソ印刷版材

【課題】硬化部分の強度、伸びが良好で、微細な画像部分を形成させる際にもシャープな画像版面が得られるフレキソ印刷版材を提供し得る硬化性樹脂組成物、および該硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材を提供すること。
【解決手段】重合性単量体100部に対して、アクリル系ブロック共重合体1〜1000部及び、重合開始剤0.1〜30部を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記アクリル系ブロック共重合体が、メタクリル酸アルキルエステル由来の構造単位からなる重合体ブロックAを1個以上及びアクリル酸アルキルエステル由来の構造単位からなる重合体ブロックBを1個以上有し、重量平均分子量(Mw)が30,000〜300,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下で且つ重合体ブロックAの含有割合が3〜60質量%である、硬化性樹脂組成物並びにそれからなるフレキソ印刷版材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物および該硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、一般に弾性のあるゴムや感光性樹脂製の凸版を貼り付け、液状インキを用いて印刷する凸版印刷版の一種で、粗面あるいは曲面に印刷できることを特徴とし、包装印刷、雑誌、段ボール、ラベル、ビンなど広範囲の印刷に用いられている。このようなフレキソ印刷版の作製方法として、以前は、ゴムを流し込んで固化させる方法や、ゴム版を手彫刻する方法があったが、この方法では精度のよいフレキソ印刷版をつくることが困難であった。近年、硬化性樹脂を用いてフレキソ印刷版材を製造する方法が開発されたことにより、フレキソ印刷版の製版工程がかなり合理化されてきた。
【0003】
近年開発されているフレキソ印刷版材は、表面に保護フィルムを有し、その下に各種のウレタンゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの弾性体、重合性単量体および重合開始剤、必要に応じて軟化剤などを混合した、活性エネルギー線によって硬化可能な硬化性樹脂組成物層、次いで接着層、さらにその下に支持体が設けられた構成体からなっているのが一般的である(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
このようなフレキソ印刷版材からフレキソ印刷版を製造する方法としては、例えば、まず支持体と反対側の保護フィルム面上に、印刷したい文字・図・絵・模様などの画像が描かれたネガフィルムを密着させ、次いで該ネガフィルムを密着させた側から活性エネルギー線を照射することにより、ネガフィルムの画像が描かれた部分を透過した活性エネルギー線の作用で硬化性樹脂組成物層の特定部分を選択的に硬化させて溶剤に不溶化させた後、ネガフィルムおよび保護フィルムを取り除いて、硬化性樹脂組成物層のうち、活性エネルギー線が照射されず硬化していない部分を溶剤を用いて除去すること(現像工程)によって画像となる部分(画像版面)を形成し、フレキソ印刷版を得る(例えば非特許文献1、および特許文献1〜特許文献4参照)。さらに、フレキソ印刷版において細密な小点や線を確実に形成し、現像時の画像版面の欠けを防止する目的で、硬化性樹脂組成物に配合する樹脂の種類、割合についての改良が検討されており、例えば共役ジエン単位部分のビニル結合量が多いスチレン系ブロック共重合体を配合した例(特許文献5参照)、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる特定の熱可塑性エラストマーと、ビニル結合単位の平均比率の高いジエン系液状ゴムを併用した例(特許文献6参照)が提案されている。
【0005】
特許文献1では樹脂成分として結晶性1,2−ポリブタジエンおよびポリイソプレンゴムなどのエチレン、ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一つを構成成分とする高分子化合物を併用しているが、この場合、ハードセグメントを有さないゴムを樹脂成分として使用しているため、未硬化版の貯蔵、輸送段階で版の変形(コールドフロー)が起こりやすいという問題点がある。特許文献2および特許文献3では、ハードセグメントが25℃以上のガラス転移温度を有する、熱可塑性エラストマーである特定のブロック共重合体(好適には特定組成のポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体またはポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体)を使用しており、ポリスチレン部分の凝集力により未硬化版の変形は低減されている。しかしながら、該エラストマーと重合性単量体として汎用である(メタ)アクリレート系モノマーの極性が異なるため、これらの相溶性が十分とは言えず、硬化時のフレキソ印刷版の伸びや弾性率など物性が不十分であったりムラが生じたりする。また、相溶性が不十分であるため、UV光などの活性エネルギー線が散乱されるなどして、硬化ムラが生じ、シャープな画像版面、画像再現性に優れるフレキソ印刷版材を得られない場合があった。
【0006】
また、未硬化部分の樹脂の除去は一般的には、有機溶剤を用い必要に応じてブラシを併用して洗い流す手法や、加熱溶融させて不織布で拭き取る手法がとられる。しかし、未硬化部分の樹脂は有機溶剤への溶解性が低く溶融粘度も高いため、その除去に時間がかかり煩雑であるほか、画像版面のエッジ部分の欠けが生じたりするため、シャープな画像版面が得られない場合があった。
【0007】
特許文献4では、樹脂成分として熱可塑性及びエラストマー領域を有する結合剤(好適にはポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体)を用い、さらに特定の付加重合性エチレン系不飽和単量体を併用することによってフレキソ印刷版の柔軟性を改良している。しかしながら、柔軟性は改良されるものの、上記と同様に重合性単量体との相溶性、および未硬化部の除去性が十分ではない。また、特許文献5および特許文献6では、いずれもスチレン系熱可塑性エラストマーの共役ジエン単位部分の硬化性が改良され、得られるフレキソ印刷版の靭性が向上するが、上記と同様に重合性単量体との相溶性、および未硬化部の除去性については何ら改良されておらず、また細密な画像部分を形成させる際には必ずしも充分な性能は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭55− 34415号公報
【特許文献2】米国特許第4323636号明細書
【特許文献3】特公昭51− 43374号公報
【特許文献4】特開平 2−108632号公報
【特許文献5】特開平 5−134410号公報
【特許文献6】特開2000−155418号公報
【特許文献7】特開平 6−93060号公報
【特許文献8】特公平 7−25859号公報
【特許文献9】特開平11−335432号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「感光性樹脂の基礎と実用」、赤松 清監修、株式会社シーエムシー、2001年発行、152〜160頁
【非特許文献2】G.Moineau et al.「Macromol.Chem.Phys.」,201,2000,p.1108−1114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、微細な画像部分を形成させる際にもシャープな画像版面が再現性よく得られ、かつ熱や溶剤現像性に優れ、また硬化部分の強度、伸びが良好なフレキソ印刷版材を提供し得る硬化性樹脂組成物、および該硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、メタクリル酸アルキルエステル重合体ブロックとアクリル酸アルキルエステル重合体ブロックとを特定の割合で有し、かつ特定の重量平均分子量および特定の分子量分布(Mw/Mn)を有するアクリル系ブロック共重合体を、重合性単量体および重合開始剤と特定の割合で配合した本発明の硬化性樹脂組成物は、該アクリル系ブロック共重合体が重合性単量体との相溶性に優れ、しかも該アクリル系ブロック共重合体が透明性に優れることから、得られる硬化性樹脂組成物が透明性に優れ、硬化に使用される活性エネルギー線の組成物表面あるいは内部での吸収、散乱が少ないため、ムラなく硬化できるだけでなく、微細な画像部分を形成させる際にもシャープな画像版面が再現性よく得られることを見出した。
【0012】
また、本発明者らは、上記アクリル系ブロック共重合体を含む本発明の硬化性樹脂組成物が高温流動性、溶剤溶解性に優れることから、未硬化部を短時間で簡便に容易に除去することができ、作業性に優れ、現像作業時に生じる画像版面のエッジ部分の欠けが生じにくく、シャープな画像版面が得られることを見出した。
【0013】
さらに、本発明者らは、本発明の硬化性樹脂組成物から得られた硬化樹脂は、冬場や寒冷地など低温雰囲気下においても、安定した機械的特性、再現性が得られることを見出した。
加えて、本発明の硬化性樹脂組成物はフレキソ印刷版の簡便な製造に適した粘性を有しており、適切な硬度、引張強さ、伸び率、および弾性を有するフレキソ印刷版を与えることを見出し、これら種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)(i)アクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)および重合開始剤(c)を含有し、
(ii)上記アクリル系ブロック共重合体(a)が、下記要件(α)〜(δ);
(α)メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックAおよびアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックBを有する;
(β)重量平均分子量(Mw)が30,000〜300,000である;
(γ)分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1.5以下である;および、
(δ)重合体ブロックAの含有割合が3〜60質量%である;
を満足し、
(iii)上記重合性単量体(b)100質量部に対して、アクリル系ブロック共重合体(a)を1〜1000質量部および重合開始剤(c)を0.1〜30質量部の割合で含有する硬化性樹脂組成物。
【0015】
そして、本発明は、
(2)さらに軟化剤(d)を、重合性単量体(b)100質量部に対して、1〜1000質量部含有する(1)の硬化性樹脂組成物;
(3)さらにスチレン系ブロック共重合体を、重合性単量体(b)100質量部に対して、1〜1000質量部含有する前記(1)または(2)の硬化性樹脂組成物;
(4)アクリル系ブロック共重合体(a)が、重合体ブロックA−重合体ブロックB−重合体ブロックAからなるトリブロック共重合体および重合体ブロックA−重合体ブロックBからなるジブロック共重合体から選ばれる少なくとも1つを含む前記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
(5)アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAが、ポリメタクリル酸メチルよりなる重合体ブロックである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
(6)アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックBが、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種のアクリル酸アルキルエステルの重合体からなる重合体ブロックである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
(7)アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有割合が5〜55質量%である前記(1)〜(6)のいずれかの硬化性樹脂組成物;
である。
【0016】
さらに、本発明は、
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材;
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、フレキソ印刷版の簡便な製造に適した粘性を有し、適切な硬度、引張強さ、伸び率、および弾性を有し、シャープな画像版面、画像再現性に優れるフレキソ印刷版を与え、しかも、未硬化部の高温流動性、溶剤溶解性に優れることから、熱や溶剤現像性に優れるフレキソ印刷版材を与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物には必須成分として、下記要件(α)〜(δ)を満足するアクリル系ブロック共重合体(a)が含まれている。
(α)メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックAおよびアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックBを有する;
(β)重量平均分子量(Mw)が30,000〜300,000である;
(γ)分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1.5以下である;および、
(δ)重合体ブロックAの含有割合が3〜60質量%である;
という要件(α)〜(δ)を満足するアクリル系ブロック共重合体を用いることが必要である。
【0020】
上記要件(α)において、「メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする重合体ブロックA」とは、「メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を重合体ブロックAの質量に基づいて80質量%以上の割合で有する重合体ブロック」をいう。また、「アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする重合体ブロックB」とは、「アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を重合体ブロックBの質量に基づいて80質量%以上の割合で有する重合体ブロック」をいう。
【0021】
上記重合体ブロックAでは、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の割合が、90質量%以上であることが好ましく、95〜100質量%であることが特に好ましい。上記重合体ブロックBでは、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の割合が、90質量%以上であることが好ましく、95〜100質量%であることが特に好ましい。
【0022】
上記重合体ブロックAのメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位は、メタクリル酸アルキルエステルを重合することによって得られる。このようなメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、およびメタクリル酸ステアリル等の好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂の強度、耐久性、および耐候性が良好になる点、容易かつ安価に入手できる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0023】
上記重合体ブロックAは、上記したメタクリル酸アルキルエステル1種単独からなる重合体ブロックであってもよいし、2種以上からなる重合体ブロックであってもよい。
【0024】
また、耐熱性の観点からは、上記重合体ブロックAのシンジオタクティシティが60%以上であることが好ましく、60〜90%であることがより好ましく、70〜80%であることがさらに好ましい。
【0025】
さらに、得られる硬化樹脂の耐久性、耐熱性の点から、重合体ブロックAのガラス転移温度は、100〜200℃であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。
【0026】
上記重合体ブロックBのアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位は、アクリル酸アルキルエステルを重合することによって得られる。このようなアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、およびアクリル酸ステアリル等の好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化樹脂が優れた柔軟性を発現するため、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸オクチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0027】
また、重合体ブロックBと重合体ブロックAとが明確に相分離して、フレキソ印刷版の簡便な製造に適した粘性を有し、適切な硬度、引張強さ、伸び率、および弾性を有するフレキソ印刷版を与える硬化性樹脂組成物が得られる点、汎用化合物として容易かつ安価に入手できる点から、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。
【0028】
上記重合体ブロックBは、上記したアクリル酸アルキルエステル1種単独からなる重合体ブロックであってもよいし、2種以上からなる重合体ブロックであってもよい。
【0029】
上記重合体ブロックBのガラス転移温度は、−20℃以下であることが好ましく、−30℃〜−60℃であることがより好ましい。
【0030】
上記重合体ブロックAは、本発明の効果を損なわない範囲(一般的には重合体ブロックAの質量に基づいて20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)で、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステル以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。また、上記重合体ブロックBは、本発明の効果を損なわない範囲(一般的には重合体ブロックBの質量に基づいて20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)で、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。例えば、上記単量体としては、重合体ブロックAの場合には、アクリル酸アルキルエステル、重合体ブロックBの場合にはメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0031】
また、重合体ブロックAおよび重合体ブロックBにおいて、必要に応じて有することのできる構造単位となる単量体としては、その分子鎖に、−OH基、−COOH基、−CN基、−NH基、−SOH基、−SOH基、−PO(OH)基、−PO(OH)−基などの親水基を有する不飽和単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどの共役ジエン系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体;ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトン単量体などが挙げられる。
【0032】
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBに上記親水基を有する不飽和単量体に由来する構造単位が比較的多く含まれていると、本発明の硬化性樹脂組成物にネガフィルムを密着させて活性エネルギー線を照射した際の、未露光部分(未硬化の硬化性樹脂組成物部分)を水により洗浄しやすくなる傾向にある。
【0033】
上記親水基を有する不飽和単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体あるいははそれらのアミド類;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;燐酸エチレンアクリレート、燐酸トリメチレンアクリレート、燐酸プロピレンアクリレート、燐酸テトラメチレンアクリレート、燐酸(ビス)エチレンアクリレート、燐酸(ビス)トリメチレンアクリレート、燐酸(ビス)テトラメチレンアクリレート、燐酸ジエチレングリコールアクリレート、燐酸トリエチレングリコールアクリレート、燐酸ポリエチレングリコールアクリレート、燐酸(ビス)ジエチレングリコールアクリレート、燐酸(ビス)トリエチレングリコールアクリレート、燐酸(ビス)ポリエチレングリコールアクリレート及びこれらに対応するメタクリレート等の燐酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホナート脂肪酸アリルナトリウム;2−アミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート及びこれらに対応するメタクリレート等のエチレン性不飽和アミノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0034】
また、重合体ブロックAおよび重合体ブロックBに上記共役ジエン系単量体に由来する構造単位など側鎖にビニル基など不飽和基を有する構造が比較的多く含まれていると、本発明の硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射した際に、共役ジエン単量体に由来する構造単位に含まれるビニル結合と重合性単量体(b)とが架橋反応し、得られる硬化樹脂の強度、耐久性などが優れる傾向になる。
【0035】
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBに、上記必要に応じて含まれる構造単位は1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0036】
アクリル系ブロック共重合体(a)は、1個以上の重合体ブロックAおよび1個以上の重合体ブロックBを有していれば、どのようなブロック共重合体でもよく、例えば、重合体ブロックAおよび重合体ブロックBと異なるその他の重合体ブロックCを有していてもよい。重合体ブロックCとしては、芳香族ビニル重合体ブロック、共役ジエン重合体ブロック、水添共役ジエン重合体ブロックなどが挙げられる。
【0037】
重合体ブロックAをA、重合体ブロックBをB、その他の重合体ブロックをCで表すと、本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(a)の例としては、A−B型のジブロック共重合体;A−B−A型、B−A−B型、A−B−C型、B−A−C型、B−C−A型のトリブロック共重合体;(A−B)n型、(A−B−)nA型および(B−A−)nB型などの直鎖状ポリブロック共重合体;(A−B−)nX型(Xはカップリング残基を表す)、(B−A−)nX型、(A−B−A)nX型、(A−C−B)nX型、(B−C−A)nX型、(A−B−C)nX型、(C−B−A−)nX型、(C−A−B−)nX型などの星型ブロック共重合体(前記式中、nは2以上の整数を表す);櫛型ブロック共重合体などが挙げられる。
【0038】
アクリル系ブロック共重合体(a)は、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
上記したアクリル系ブロック共重合体(a)の中でも、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂の柔軟性に優れ、製造が容易であることから、A−B−A型のトリブロック共重合体およびA−B型のジブロック共重合体が好ましく、A−B−A型のトリブロック共重合体が特に好ましい。
【0039】
アクリル系ブロック共重合体(a)が、2個以上の重合体ブロックAを有する場合は、これら重合体ブロックAでは、分子量(重量平均分子量および数平均分子量)が同一であっても異なっていてもよく、また、単量体単位の組成割合、配列状態、立体配置、結晶構造などの分子構造が同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
また、アクリル系ブロック共重合体(a)が、2個以上の重合体ブロックBを有する場合は、これら重合体ブロックBでは、分子量(重量平均分子量および数平均分子量)が同一であっても異なっていてもよく、また、単量体単位の組成割合、配列状態、立体配置、結晶構造などの分子構造が同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
これらアクリル系ブロック共重合体(a)の中でも、ポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)−ポリ(メタクリル酸メチル)トリブロック共重合体、およびポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)ジブロック共重合体が好ましく、ポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)−ポリ(メタクリル酸メチル)トリブロック共重合体がより好ましい。
【0042】
なお、上記トリブロック共重合体およびジブロック共重合体のポリメタクリル酸メチルブロックでは、当該重合体ブロックの質量に基づいて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合が好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95〜100質量%であり、また、そのポリ(アクリル酸n−ブチル)ブロックでは、当該重合体ブロックの質量に基づいて、アクリル酸n−ブチルに由来する構造単位の割合が好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95〜100質量%である。
【0043】
本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、30,000〜300,000である。重量平均分子量がこの範囲にあると、重合性単量体(b)との相溶性に優れ、フレキソ印刷版の簡便な製造に適した粘度となる。
【0044】
上記重量平均分子量(Mw)は、50,000〜200,000であることが好ましく、60,000〜180,000であることがより好ましく、70,000〜170,000であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記下限値未満の場合には、硬化性樹脂組成物の粘度が低く、フレキソ印刷版の製造に適さなくなる。また、硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂の引張強さ、伸び率、および弾性や柔軟性が劣る傾向にある。重量平均分子量が上記上限値を超えた場合には、重合性単量体(b)との相溶性の低下、硬化性樹脂組成物の粘度上昇による取り扱い性および工程性の低下、硬化後の樹脂組成物の相分離による物性の低下などが生じ易くなる。
【0045】
なお、本明細書におけるアクリル系ブロック共重合体(a)、アクリル系ブロック共重合体(a)を構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)である。
【0046】
本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(a)の分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)]は1.5以下である。分子量分布がこの範囲にあることにより、硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂の引張強さ、伸び率、弾性、および柔軟性が優れたものになる。
【0047】
上記分子量分布(Mw/Mn)としては、1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が上記値を超えた場合には、低分子量成分および高分子量成分がより多く含まれるので、硬化時に高分子量成分が相分離したり、低分子量成分がブリードアウトしたりすることがある。前記相分離は力学強度を低下させ、前記ブリードアウトは硬化樹脂表面で表面粘着性を増大させ工程通過性を悪化させる。一方、分子量分布(Mw/Mn)が上記値以下の場合には、低分子量成分および高分子量成分がより少なく、硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化樹脂では、アクリル系ブロック共重合体(a)の高分子量成分が相分離したり、低分子量成分がブリードアウトしたりする問題が発生しにくい。
【0048】
アクリル系ブロック共重合体(a)の重合体ブロックAの含有割合は、アクリル系ブロック共重合体(a)の質量に基づいて3〜60質量%である。重合体ブロックAの含有割合がこの範囲にあると、本発明の硬化性樹脂組成物から適切な硬度、引張強さ、伸び率、および弾性を有するフレキソ印刷版が製造でき、さらにアクリル系ブロック共重合体(a)のペレットを容易に製造できるので、硬化性樹脂組成物にアクリル系ブロック共重合体(a)を配合する際のハンドリング性に優れる。
【0049】
上記重合体ブロックAの含有割合は、5〜55質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。重合体ブロックAの含有割合が上記範囲を超えると、硬化性樹脂組成物のゴム弾性が発現しにくくなり、得られる硬化樹脂の引張強さ、伸び率、および柔軟性が乏しくなる。また、フレキソ印刷版を作製した後、印刷ロールへの装着時に割れたり、フレキソ印刷版が欠けたりする場合がある。また、硬化性樹脂組成物の硬度が高くなり、段ボールや再生紙などの紙質の粗い被印刷体へ印刷する場合に、充分なインキの転写性を確保しにくい。重合体ブロックAの含有割合が上記範囲未満である場合には、重合体ブロックの物理的凝集力効果が充分に発揮されず、本発明の硬化性樹脂組成物から作製される未硬化版(活性エネルギー線を照射する前のフレキソ印刷版材)がコールドフローしやすくなり、貯蔵・輸送時の変形が大きくなって印刷版として使用しにくい。
【0050】
本発明で使用する、上記した要件(α)〜(δ)を満足するアクリル系ブロック共重合体(a)の製造方法は特に制限されず、公知の製法に準じた方法で製造することができる。
分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、重合体の構造単位を形成する単量体をリビング重合する方法が一般的に採用される。当該リビング重合方法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特許文献7参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特許文献8参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特許文献9参照)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(非特許文献2参照)などを挙げることができる。
【0051】
上記した製造方法のうち、有機アルミニウム化合物を助触媒とするアニオン重合方法による場合は、重合途中の失活が少ないことによって失活成分であるホモポリマーの混入が少ない。そのため、その方法によって当該方法で得られたアクリル系ブロック共重合体(a)を重合性単量体(b)および重合開始剤(c)と混合して得られた硬化性樹脂組成物から製造されるフレキソ印刷版は、再現性よく、機械物性やシャープな画像版面が得られる。当該方法で得られるアクリル系ブロック共重合体(a)は、重合体ブロックAの分子構造が高シンジオタクチックとなって、重合体ブロックAのガラス転移温度がアイソタクチックのものよりも高いため、耐熱性に優れる。また、当該方法による場合は、比較的緩和な温度条件下でのリビング重合が可能であることから、アクリル系ブロック共重合体(a)を工業的に生産する場合に、環境への負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が少なくて済むという利点がある。そのため、これらの点から、本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(a)は、有機アルミニウム化合物を助触媒とするアニオン重合方法によって製造されることが好ましい。
【0052】
本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(a)を製造するための重合方法として好ましく採用される、有機アルミニウム化合物の存在下での前記したアニオン重合は、例えば、有機リチウム化合物と、下記の一般式:
AlR
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、またはRが前記したいずれかの基を表し、RおよびRは一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を表す。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4などのエーテル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジルなどの含窒素化合物を更に存在させて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルを重合させる方法等を採用することができる。
【0053】
上記した有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウムなどのアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、リチウムナフタレンなどのアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、トリチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウムなどのアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、イソプロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、sec−ブトキシリチウム、tert−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、ヘプチルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウムなどのリチウムアルコキシド等が挙げられる。これら有機リチウム化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
また、上記の一般式で表される有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウムなどのジアルキルフェノキシアルミニウム;メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルキルジフェノキシアルミニウム;メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルコキシジフェノキシアルミニウム;トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリフェノキシアルミニウム等が挙げられる。これら有機アルミニウム化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
これら有機アルミニウム化合物の中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどが、取り扱いが容易であり、しかも比較的緩和な温度条件下で失活なくメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルの重合を進行させることができる点から好ましい。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として、重合性単量体(b)を含有する。重合性単量体(b)としては重合開始剤(c)によって重合可能であれば特に制限なく用いることができるが、ラジカル重合性単量体が好ましい。
【0057】
ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸およびイタコン酸ならびにアクリル酸エステル(アクリレート)、メタクリル酸エステル(メタクリレート)、クロトン酸エステルおよびマレイン酸エステルなどのそれらのエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;N−メチロールメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;ビニルエステル、ビニルエーテル、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。
【0058】
また、上記重合性単量体(b)は、重合性基を1個有する単官能性単量体であってもよいし、重合性基を複数有する多官能性単量体であってもよい。
【0059】
上記ラジカル重合性単量体の中でも、アクリル系ブロック共重合体(a)との相溶性が特に優れる観点からアクリレートおよびメタクリレートが好ましい。なお、以下、アクリレートおよびメタクリレートを総称して(メタ)アクリレートを示す場合がある。
【0060】
単官能性の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキルモノ(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式モノ(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート;
プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート等のリン酸基含有モノ(メタ)アクリレート、およびこれらリン酸基含有モノ(メタ)アクリレートの酸塩化物、アルカリ金属塩、またはアンモニウム塩;
2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン基含有モノ(メタ)アクリレート;
3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート変性シラン化合物などが挙げられる。
【0061】
2官能性の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等の官能基を含有しない芳香族系ジメタクリレート;
2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)等の水酸基含有芳香族系ジメタクリレート;
1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート等のカルボキシル基含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレンジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール型ジ(メタ)アクリレート;
グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン等の水酸基含有非芳香族系ジ(メタ)アクリレート;
ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、
ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート等のリン酸基含有ジ(メタ)アクリレート、およびこれらリン酸基含有ジ(メタ)アクリレートの酸塩化物、アルカリ金属塩、またはアンモニウム塩;
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート等のウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0062】
これら2官能性の(メタ)アクリレートの中でも、アクリル系ブロック共重合体(a)との相溶性、得られる硬化性樹脂組成物の取り扱い性が優れる点で、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびグリセロールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
3官能性以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の3官能以上のトリメチロール型(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上のペンタエリスルトール型(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート;N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
【0064】
現像時に水現像をする場合には、上記重合性単量体(b)としては、親水性基を含有するものが好ましい。このような親水性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸性基;ならびにこれら酸の塩化物基、アルカリ金属塩基、およびアンモニウム塩基等のこれら酸から誘導される基;水酸基;アミノ基およびアミノ基から誘導される基;ポリエチレングリコール骨格などのグリコールの繰り返し構造単位を含む基などが挙げられる。
【0065】
親水基を含む重合性単量体(b)としては、例えば、上述した、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート;水酸基含有ジ(メタ)アクリレート;3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート;リン酸基含有モノ(メタ)アクリレートおよびこれらリン酸基含有モノ(メタ)アクリレートの酸塩化物、アルカリ金属塩、またはアンモニウム塩;リン酸基含有ジ(メタ)アクリレートおよびこれらリン酸基含有ジ(メタ)アクリレートの酸塩化物、アルカリ金属塩、またはアンモニウム塩;アクリル酸、メタクリル酸などのその他の酸基と重合性基とを有する化合物などが挙げられる。
これら重合性単量体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物には必須成分として、重合開始剤(c)が含まれている。重合開始剤(c)としては、活性エネルギー線の照射によって重合が開始し、重合性単量体(b)の重合開始能を有するものであれば特に制限なく用いることができる。
【0067】
重合開始剤(c)としては、例えばベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。具体例としては、ベンゾインやベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン-1−オン(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、α−メチロールベンゾイン、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、α−t−ブチルベンゾインなどが挙げられる。重合開始剤(c)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物中のアクリル系ブロック共重合体(a)の含有量は、重合性単量体(b)100質量部に対し、1〜1000質量部の範囲であり、10〜900質量部の範囲であることが好ましい。アクリル系ブロック共重合体(a)の含有量が上記下限値よりも少ない場合には、硬化性樹脂組成物から得られた樹脂硬化樹脂の硬度が高くなり、段ボールや再生紙などの紙質の粗い被印刷体への印刷において、充分なインキの転写性を確保しにくい。また、アクリル系ブロック共重合体(a)の含有量が上記上限値よりも多い場合には、硬化性樹脂組成物から作製される未硬化版(活性エネルギー線を照射する前のフレキソ印刷版材)の活性エネルギー線による硬化性が低下し、シャープな画像版面が得られにくい。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物中の重合開始剤(c)の含有量は、重合性単量体(b)を100質量部とした場合、0.1〜30質量部の範囲であるが、0.2〜8質量部の範囲であることが好ましい。重合開始剤(c)の含有量が上記下限値よりも少ない場合には、硬化性樹脂組成物が充分に架橋できず、充分な硬化性が得られにくい。重合開始剤(c)の含有量が上記上限値よりも多い場合には、活性エネルギー線の透過率を低下させ、露光感度を低下させることになるため、却って充分な架橋が形成されにくい傾向となる。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物に必要に応じてさらに含有させることができる軟化剤(d)としては、例えば、液状ポリイソプレン、液状1,2−ポリブタジエン、液状1,4−ポリブタジエン、液状ポリ1,2−ペンタジエン、液状エチレン−ブタジエンコポリマー、液状アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、およびこれらの変性物、水素添加物などのジエン系液状ゴム; パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイルなどの石油系軟化剤; 流動パラフィン; 落花生油、ロジンなどの植物油系軟化剤などが挙げられる。これらの中でもジエン系液状ゴムが好ましい。軟化剤(d)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。軟化剤(d)を含有させる場合、その量は、重合性単量体(b)を100質量部とした場合、1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、10〜900質量部の範囲であることがより好ましい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物に必要に応じてさらに含有させることができるスチレン系ブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体、前記ブロック共重合体のジエン部分がイソプレンとブタジエンの混合物からなるスチレン系ブロック共重合体、および、これらブロック共重合体の水添物等などが挙げられる。上記スチレン系ブロック共重合体の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、重合性単量体(b)を100質量部とした場合、1〜1000質量部の範囲内であることが好ましい。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、下記の他の重合体をさらに配合することができる。ここで配合してもよい他の重合体としては、例えば天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどのゴム;などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、通常の感光性樹脂組成物に慣用されている種々の添加剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキシトルエン(2,6−ジt−ブチル−p−クレゾール)、p−メトキシフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−( 3’,5’−ジt−ブチル−4’−ヒドロキシ)フェニルプロピオネート〕、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキシアニソール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチル)フェノールなどの熱重合防止剤;紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤などが添加されていてもよい。これら添加剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物は、アクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)、および重合開始剤(c)の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、オゾン劣化防止剤、シリカ、相溶化剤、消泡剤、レオロジー調整剤、硬化促進剤、充填材、顔料、染料、カップリング剤、およびイオン捕捉剤などが挙げられる。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、上記したアクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)、重合開始剤(c)、必要に応じて添加されるその他の成分を、均一に混合できる調製法のいずれもが採用でき、何ら限定されない。例えば、(1)重合性単量体(b)を反応器に導入し、重合性単量体(b)が固体の場合は適当な温度で加熱して液体にし、液体の重合性単量体(b)にアクリル系ブロック共重合体(a)を加えて完全に溶解させ、そこに重合開始剤(c)および必要に応じてその他添加剤を加えて、必要に応じて加熱し液体状で均一に混合し、更に必要に応じて脱泡処理して硬化性樹脂組成物を調製する方法、(2)熱ロール、二軸押出機、ニーダーなどを使用して、アクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)、重合開始剤(c)および必要に応じて添加されるその他の成分を均一に溶融混練して、硬化性樹脂組成物を調製する方法、(3)アクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)、重合開始剤(c)および必要に応じて添加されるその他の成分を、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン、クロロホルム、テトラクロルエチレンなどの溶剤に溶解して混合し、型枠の中に流し入れる、もしくは、支持体の上に塗工した後に溶剤を蒸発させ硬化性樹脂組成物を調製する方法などが挙げられる。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させるのに用いる活性エネルギー線としては、粒子線、電磁波およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては電子線(EB)、α線が挙げられ、電磁波としては紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)および紫外線(UV)が好ましい。これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。電子線(EB)の場合の加速電圧としては0.1〜10MeV、照射線量としては1〜500kGyの範囲が適当である。紫外線(UV)の場合、その線源として放射波長が200nm〜450nmのランプを好適に用いることができる。線源としては、電子線(EB)の場合は、例えばタングステンフィラメントが挙げられ、紫外線(UV)の場合は、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、紫外線用水銀灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプなどが挙げられる。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特にフレキソ印刷版材の構成成分として有効に用いることができる。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物から作製される、未硬化版(活性エネルギー線を照射する前のフレキソ印刷版材)は透明性に優れ、硬化に使用される活性エネルギー線を、組成物表面あるいは内部で吸収、散乱させることが少ないため、ムラなく硬化できるだけでなく、微細な画像部分を形成させる際にもシャープな画像版面が再現性よく得られる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材を作製する方法としては、例えば本発明の硬化性樹脂組成物を溶融状態で適当な形に、例えばプレス成形、押出成形またはカレンダー成形により支持体上に厚さ200μm〜20mm程度に成形する方法が好適に用いられる。支持体としては、プラスチックシート、ゴムシート、発泡オレフィンシート、発泡ゴムシート、発泡ウレタンシート、金属シートなどが挙げられる。溶媒を含む場合は、型枠などに流しこむ、もしくは支持体に塗工した後、溶媒を蒸発させたものをそのまま印刷版として用いることもできる。また、必要に応じて、これらの支持体と本発明の硬化性樹脂組成物とを接着させるために、接着剤を用いることも可能である。また、必要に応じて、本発明の硬化性樹脂組成物が空気中の酸素の影響を受けるのを防止するために、該硬化性樹脂組成物層の表面にポリエチレンテレフタレートフィルムなどの保護フィルムをさらに適宜設けることもできる。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材からフレキソ印刷版を得る方法としては、例えば次のような手順が挙げられる。すなわち、適宜設けられている表面の保護フィルムがある場合にはそれを取り除いた後、本発明の硬化性樹脂組成物からなる層に印刷したい文字・図・絵・模様などの画像が描かれたネガフィルムを密着させ、次いで該ネガフィルムを密着させた側から活性エネルギー線を照射することにより、ネガフィルムの画像が描かれた部分を透過した活性エネルギー線の作用で硬化性樹脂組成物層の特定部分を選択的に硬化させて溶剤に不溶化させる。その後、ネガフィルムを取り除いて、硬化性樹脂組成物層のうち、活性エネルギー線が照射されず硬化していない部分を溶剤で除去、もしくは、加熱溶融させて拭き取るなどによって画像となる部分を形成し、フレキソ印刷版を得ることができる。
【0080】
硬化していない部分を除去するために用いることのできる溶剤としては、例えばテトラクロロエチレン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エステル、リモネン、デカヒドロナフタレンなどや、これらに必要に応じてアルコール、例えばn−ブタノール、1−ペンタノール、ベンジルアルコールなどを混合させたものなどが挙げられる。
【0081】
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBに親水基を有する不飽和単量体を用いたアクリル系ブロック共重合体(a)を用いた場合、水系の溶剤で未硬化部分を除去することができる。水系溶剤としては、水、アルコール、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などを含むアルカリ性水溶液、界面活性剤などを溶解した水溶液などが挙げられる。また、未露光部分(未硬化の硬化性樹脂組成物部分)を溶出させる方法としては、例えばノズルから溶剤を噴霧させて洗い流す方法、溶剤とブラシを併用して洗い流して除去する方法などが挙げられる。
【0082】
加熱溶融させて拭き取る手法としては、未硬化部の流動温度を上回る温度に加熱し、その温度領域で良好な引裂強さを有する吸収性物質で拭き取る手法などがあげられる。吸収性物質は、不織布材料、紙原料、繊維織物、連続気泡発泡体、および多孔質材料などが挙げられる。より具体的には、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる不織布材料、およびこれらの不織布材料の組み合わせなどが挙げられる。特に好ましい吸収性物質としては、ナイロンまたはポリエステルの不織布連続ウェブが挙げられる。後処理として、表面に光を照射する方法が一般的である。
【0083】
本発明の硬化性樹脂組成物を構成成分とする未硬化のフレキソ印刷版材(活性エネルギー線を照射する前のフレキソ印刷版材)は透明性に優れる。また、活性エネルギー線の照射により、シャープな画像版面が得られ、良好な印刷品質を有する。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例では、次の方法により、得られた硬化性樹脂組成物の物性評価を行った。
【0085】
(1)硬化後の硬度測定
実施例および比較例で得られた硬化性樹脂組成物から作成した厚さ1mmのシートの全面に30mW/cmの紫外線(放射波長200〜450nm)を10分間照射した後、ISO48に準じて、デュロメータ硬さ試験を行いショアA硬度を測定した。測定には高分子計器株式会社製A型硬度計を用いた。硬化後の硬度については、比較例1のショア硬度Aの測定値を100%として実施例、比較例の結果を示す。
【0086】
(2)硬化後の引張強さ、切断時伸び
実施例および比較例で得られた硬化性樹脂組成物から作成した厚さ1mmのシートの全面に30mW/cmの紫外線(放射波長200〜450nm)を10分間照射した後、JIS K 6251に準拠したダンベル状の試験片を作製し、インストロン万能試験機を使用して、23℃で、引張速度100mm/minで引張試験を行い、引張強さ(MPa)、切断時伸び(%)を測定した。引張強さ、切断時伸びについては、比較例1の引張強さ(MPa)、切断時伸び(%)の値を100%とし、実施例、比較例の結果を示す。
【0087】
(3)未硬化部の除去性評価
実施例および比較例で得られた硬化性樹脂組成物から作成した厚さ1mmのプレスシートより長さ15cm×幅15cmの試験片を切り出し、この試験片に画像を有するネガフィルムを密着させ、このフィルムの上から30mW/cmの紫外線(放射波長200〜450nm)を10分間照射し、次いでネガフィルムを取り除き、硬化しなかった部分(未露光部分)を、トルエンによる溶解およびブラッシングにより、洗い流して除去した。未硬化部の除去性は、速やかに除去できた場合を○、除去に時間を要した場合を×として評価した。
【0088】
(4)感光性樹脂組成物の透明性
感光性樹脂組成物を100μmのポリエステル製フィルムで挟み、スペーサーを用いてプレス機により120℃の条件で8MPaの圧力を3分間かけて、厚み3mmの構成体を作成し、濁度(ヘイズ)を、直読ヘイズメーター(日本電色製)により、JIS K 7136に準拠してヘイズ値を測定した。
(I)ブロック共重合体の合成
以下の合成例1〜4では、下記の実施例で用いたアクリル系ブロック共重合体(a−1)、(a−2)、(a−3)およびポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)を常法により乾燥精製した薬品を使用して合成した。
【0089】
その際に、合成したアクリル系ブロック共重合体(a−1)、(a−2)、および(a−3)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、重合体ブロックA(ポリ(メタクリル酸メチル)ブロック)および重合体ブロックB(ポリ(アクリル酸n−ブチル)ブロック)の含有割合、重合体ブロックAのシンジオタクティシティ(立体規則性(rr))、重合体ブロックAと重合体ブロックB(ポリ(アクリル酸n−ブチル)ブロック)のガラス転移温度、各単量体の重合転化率、およびポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、スチレン含有量は以下の方法で求めた。
【0090】
(I−1)アクリル系ブロック共重合体およびポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(分子量分布(Mw/Mn)の測定
以下に記載する装置を使用して、以下の方法および条件を採用して、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりアクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定すると共に、それにより得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0091】
[装置および測定条件]
・装置:東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
・カラム:東ソー(株)製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0092】
(I−2)アクリル系ブロック共重合体における重合体ブロックAの含有割合、およびポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体のスチレン含有量およびビニル化度
以下の装置および方法を採用して、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)分光法によってアクリル系ブロック共重合体における各共重合成分の含有量および、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体のスチレン含有量およびビニル化度を測定した。
【0093】
[装置および方法]
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−LA400)
・溶媒:重クロロホルム
・アクリル系ブロック共重合体ではH−NMRスペクトルにおいて、3.6ppmおよび4.0ppm付近のシグナルは、それぞれメタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−CH)およびアクリル酸n−ブチル単位のエステル基−O−CH−CH−CH−CH)に帰属され、その積分値の比によって共重合成分の含有量を求めた。
【0094】
(I−3)アクリル系ブロック共重合体における重合体ブロックAのシンジオタクティシティ(立体規則性(rr))
下記の装置および方法を採用して、カーボン核磁気共鳴(13C−NMR)分光法によって、アクリル系ブロック共重合体における重合体ブロックA(ポリメタクリル酸メチルブロック)の立体規則性(rr)を分析した。
【0095】
[装置および方法]
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−LA400)
・溶媒:重クロロホルム
13C−NMRスペクトルにおいて、44.5ppm、44.8ppmおよび45.5ppm付近のシグナルは、メタクリル酸メチル重合体ブロックの四級炭素に帰属され、それぞれ立体規則性rr、mr、およびmmに対応し、その積分値の比によってシンジオタクティシティrrを求めた。
【0096】
(I−4)アクリル系ブロック共重合体の各重合体ブロックおよび、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)
以下の装置および条件を採用して、DSC測定で得られた曲線において、外挿開始温度(Tgi)をガラス転移温度(Tg)とした。
【0097】
[装置および条件]
・DSC測定装置:メトラー社製「DSC−822」
・条件:昇温速度10℃/分
(I−5)仕込んだ単量体の重合転化率
以下の装置および条件を採用して、ガスクロマトグラフィー(GC)によって仕込んだ単量体の重合転化率を測定した。
【0098】
[装置および条件]
・GC装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ「GC−14A」
・カラム:GL Sciences Inc.製「INERT CAP 1」(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)
・分析条件:injection 300℃、detecter 300℃、60℃(0分保持)→5℃/分→100℃(0分保持)→15℃/分→300℃(2分保持)
【0099】
《合成例1》[アクリル系ブロック共重合体(a−1)の合成]
(1) 2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム6.37mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液3.68gを加えた。続いて、これにメタクリル酸メチル49.9gを加えた。反応液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル212gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときのアクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。さらに、これにメタクリル酸メチル49.9gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノ−ル3.50gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。その後、濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、トリブロック共重合体[アクリル系ブロック共重合体(a−1)]310gを得た。
(2) 上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体(a−1)について、H−NMR測定とGPC測定を行った結果、当該アクリル系ブロック共重合体(a−1)は、ポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)−ポリ(メタクリル酸メチル)からなるトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は63,000、数平均分子量(Mn)50,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.26であった。また、アクリル系ブロック共重合体(a−1)における各重合体ブロックの含有割合は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックA)が32.0質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB)が68.0質量%であった。
(3) また、上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体(a−1)の各重合体ブロックのガラス転移温度およびポリ(メタクリル酸メチル)ブロック(重合体ブロックA)のシンジオタクティシティ(rr)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0100】
《合成例2》[アクリル系ブロック共重合体(a−2)の合成]
(1) 2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム5.00mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液2.89gを加えた。続いて、これにメタクリル酸メチル35.9gを加えた。反応液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル240gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときのアクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。さらに、これにメタクリル酸メチル35.9gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノ−ル3.50gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。その後、濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、トリブロック共重合体[アクリル系ブロック共重合体(a−2)]308gを得た。
(2) 上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体(a−2)について、H−NMR測定とGPC測定を行った結果、当該アクリル系ブロック共重合体(a−2)は、ポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)−ポリ(メタクリル酸メチル)からなるトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は73,000、数平均分子量(Mn)65,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。また、アクリル系ブロック共重合体(a−2)における各重合体ブロックの含有割合は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックA)が23.0質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB)が77.0質量%であった。
(3) また、上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体(a−2)の各重合体ブロックのガラス転移温度およびポリメタクリル酸メチルブロック(重合体ブロックA)のシンジオタクティシティ(rr)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0101】
《合成例3》[アクリル系トリブロック共重合体(a−3)の合成]
(1) 2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム5.17mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液3.03gを加えた。続いて、これにメタクリル酸メチル79.9gを加えた。反応液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル155.3gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときのアクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。さらに、これにメタクリル酸メチル79.9gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノ−ル3.50gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。その後、濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、ブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(a−3)」と称する]310gを得た。
(2) 上記(1)で得られたアクリル系トリブロック共重合体(a−3)について、H−NMR測定とGPC測定を行った結果、ポリ(メタクリル酸メチル)−ポリ(アクリル酸n−ブチル)−ポリ(メタクリル酸メチル)からなるトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は67,000、数平均分子量(Mn)は61,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。また、アクリル系トリブロック共重合体(a−3)における各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(2つの重合体ブロックAの合計)が50.7質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB)が49.3質量%であった。また、上記で得られたアクリル系トリブロック共重合体(a−3)の各重合体ブロックのガラス転移温度およびポリメタクリル酸メチルブロック(重合体ブロックA)のシンジオタクティシティ(rr)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
上記の合成例1〜3で得られたアクリル系ブロック共重合体(a−1)、(a−2)、および(a−3)の物性を、以下の表1に記載する。
【0102】
《合成例4》[ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)の合成]
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン6L、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10%、シクロヘキサン溶液)15mL、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン40mLを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン140mLを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン1530mLを加えて4時間重合を行い、さらにスチレンを140mL加えて3時間重合させ、合計で10時間重合させた。得られた重合反応液をメタノール8L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)を得た。
(2)上記(1)で得られたポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)について、H−NMR測定とGPC測定、DSC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)は125,000であった。また、SISおけるスチレン含有量は、スチレン重合体ブロック(2つの重合体ブロックの合計)が20質量%で、イソプレン重合体ブロックが80質量%であった。1,2−結合および3,4−結合の含有量は60%であった。得られたSISのガラス転移温度は−15℃であった。
【0103】
[実施例1〜5]
(1)アクリル系ブロック共重合体(a)として、ブロック共重合体(a−1)〜(a−3)、重合性単量体(b)として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、重合開始剤(c)として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン-1−オン(Irgacure 651; BASF社製)、および熱重合防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキシトルエン(BHT)を表2に示した配合割合(すべて質量部)でトルエン中に固形分濃度45%で溶解して混合し、型枠の中に流し入れ溶剤を蒸発させ硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を120℃ に加熱したプレス機によりプレス圧力8MPaで3分間プレスすることにより厚さ1mmのシートとした。
(2)上記(1)で得られたシートの一部に30mW/cmの紫外線を10分間照射した後、上記した方法でショアA硬度を測定した。結果を表2に示す。
(3)上記(1)で得られたシートの一部に30mW/cmの紫外線を10分間照射した後、上記した方法で引張強さおよび切断時伸びを測定した。結果を表2に示す。
(4)上記(1)で得られたシートから長さ15cm×幅15cmの試験片を作製し、その片方の面に画像を有するネガフィルムを密着させ、次いで該ネガフィルムを密着させた側からこのフィルムを通して30mW/cmの紫外線を試験片全体に10分間照射した。次いで上記した方法で未硬化部の除去性を評価した。結果を表2に示す。
(5)上記(1)で得られた硬化性樹脂組成物を、上記した方法で濁度(ヘイズ)を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
[実施例6〜8]
実施例1において、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)の代わりに、重合性単量体(b)として、それぞれ、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート (M309;東亜合成社製)、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート(SR−399E; SARTOMER社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、ショアA硬度、引張強さ、切断時伸び、未硬化部の除去性、濁度(ヘイズ)を評価した。各成分の配合割合(質量部)および結果を表2に示す。
【0105】
[比較例1]
実施例1において、アクリル系ブロック共重合体(a−1)の代わりに、合成例4で得たポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)を使用した以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、ショアA硬度、引張強さ、切断時伸び、未硬化部の除去性、濁度(ヘイズ)を評価した。各成分の配合割合(質量部)および結果を表2に示す。
【0106】
実施例1〜8と比較例1の比較から、本発明の硬化性樹脂組成物からなるシートに紫外線を照射して得られるシートは、引張強さ、切断時伸びに優れ、フレキソ印刷版材として使用した際にも、硬化部分の引張強さ、切断時伸びに優れることが示唆される。また、実施例1〜8の硬化性樹脂組成物からなるシートは、比較例1に比べて透明性に優れるだけでなく、未硬化部の除去性に優れることがわかる。実際にネガフィルムを密着させネガフィルムの上から紫外線を照射した後、未硬化部を除去して印刷版を作製した場合、透明性に優れ、未硬化部の除去性に優れる。
【0107】
[実施例9、10]
実施例1において、軟化剤(d)として、液状ポリイソプレン(LIR−30; クラレ社製)、液状ポリブタジエン(LBR−305; クラレ社製)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、ショアA硬度、引張強さ、切断時伸び、未硬化部の除去性、濁度(ヘイズ)を評価した。各成分の配合割合(質量部)および結果を表3に示す。
【0108】
[実施例11]
実施例1において、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)をさらに添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、ショアA硬度、引張強さ、切断時伸び、未硬化部の除去性、濁度(ヘイズ)を評価した。各成分の配合割合(質量部)および結果を表3に示す
【0109】
[比較例2]
実施例9において、アクリル系ブロック共重合体(a−1)の代わりに、合成例4で得られたポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)を使用した以外は、実施例9と同様にしてシートを作製し、ショアA硬度、引張強さ、切断時伸び、未硬化部の除去性、濁度(ヘイズ)を評価した。各成分の配合割合(質量部)および結果を表3に示す。
【0110】
実施例9、10、11と比較例2の比較から、本発明の硬化性樹脂組成物からなるシートに紫外線を照射して得られるシートは、引張強さ、切断時伸びに優れ、フレキソ印刷版材として使用した際にも、硬化部分の引張強さ、切断時伸びに優れることが示唆される。また実施例9、10、11の硬化性樹脂組成物からなるシートは、比較例2に比べて透明性に優れるだけでなく、未硬化部の除去性に優れることがわかる。実際にネガフィルムを密着させネガフィルムの上から紫外線を照射した後、未硬化部を除去して印刷版を作製した場合、透明性に優れ、未硬化部の除去性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明で得られる硬化性樹脂組成物は、高温流動性、溶剤溶解性に優れることから、未硬化部を容易に除去することができる。また該組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材は、硬化部分の強度、伸びが良好であり、例えば、ダンボールや再生紙などの表面の粗い被印刷体に対する印刷においても、有効に使用することができ、特に微細な画像版面を形成させる場合でもシャープな画像版面が得られるフレキソ印刷版を形成させることができる。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アクリル系ブロック共重合体(a)、重合性単量体(b)および重合開始剤(c)を含有し、
(ii)上記アクリル系ブロック共重合体(a)が、下記要件(α)〜(δ);
(α)メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックAおよびアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする1個以上の重合体ブロックBを有する;
(β)重量平均分子量(Mw)が30,000〜300,000である;
(γ)分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1.5以下である;および、
(δ)重合体ブロックAの含有割合が3〜60質量%である;
を満足し、
(iii)上記重合性単量体(b)100質量部に対して、アクリル系ブロック共重合体(a)を1〜1000質量部および重合開始剤(c)を0.1〜30質量部の割合で含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに軟化剤(d)を、重合性単量体(b)100質量部に対して、1〜1000質量部含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらにスチレン系ブロック共重合体を、重合性単量体(b)100質量部に対して、1〜1000質量部含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系ブロック共重合体(a)が、重合体ブロックA−重合体ブロックB−重合体ブロックAからなるトリブロック共重合体および重合体ブロックA−重合体ブロックBからなるジブロック共重合体から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAが、ポリメタクリル酸メチルよりなる重合体ブロックである請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックBが、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1つのアクリル酸アルキルエステルの重合体からなる重合体ブロックである請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有割合が5〜55質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を構成成分とするフレキソ印刷版材。

【公開番号】特開2010−222591(P2010−222591A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−156846(P2010−156846)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】