説明

硬化性組成物、硬化物、光半導体装置およびポリシロキサン

【解決手段】アルケニル基および密着性基を有するポリシロキサン(A)と、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサン(B)(ただし、ポリシロキサン(A)を除く)と、ヒドロシリル化反応用触媒(C)とを含有する硬化性組成物であって、該硬化性組成物中に含まれる全成分の含有量の合計を100質量%とするとき、ポリシロキサン(A)の含有割合が40〜90質量%であることを特徴とする硬化性組成物。
【効果】本発明の硬化性組成物は、基板や金属配線などに対する高い接着性とLEDなどの高い初期輝度とが両立した硬化物を形成できるヒドロシリル系ポリシロキサン組成物である。したがって、この硬化性組成物から得られる硬化物で半導体発光素子を被覆して得られた光半導体装置においては、初期輝度が高く、さらにヒートサイクルを受けた場合でも硬化物がパッケージから剥がれないなど、硬化物の接着性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物、光半導体装置およびポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置(LED)の封止剤などに使用されているヒドロシリル化反応硬化型のポリシロキサン組成物(以下、ヒドロシリル系ポリシロキサン組成物ともいう。)は、LEDパッケージなどに対する接着性を高める技術が求められている。
【0003】
ヒドロシリル系ポリシロキサン組成物の接着性の向上を図る技術として、ヒドロシリル系ポリシロキサン組成物にエポキシ基含有ポリシロキサンなどの接着促進剤を添加する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、接着促進剤であるアルケニル基を有するエポキシ基含有ポリシロキサンを、主剤であるオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.01〜50重量部含有するヒドロシリル系ポリシロキサン組成物が記載されている。
【0005】
特許文献2には、接着促進剤であるエポキシ基含有ポリシロキサンを、主剤であるアルケニル基とフェニル基を含有するオルガノポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部含有するヒドロシリル系ポリシロキサン組成物が記載されている。
【0006】
特許文献3には、接着促進剤であるアルケニル基を有するエポキシ基含有ポリシロキサンを、主剤であるアルケニル基を含むオルガノポリシロキサン成分100質量部に対して0.01〜10質量部含有するヒドロシリル系ポリシロキサン組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−327019号公報
【特許文献2】特開2007−008996号公報
【特許文献3】特開2010−229402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板や金属配線と封止剤との接着性を高めるためには、接着促進剤であるエポキシ基含有ポリシロキサンのエポキシ基含有量を多くする必要がある。しかしながら、このような接着促進剤を多く用いた場合、輝度が低下するおそれがある。
【0009】
本発明の課題は、ヒドロシリル系ポリシロキサン組成物において、基板や金属配線などに対する接着性と輝度とを両立しうる硬化物を形成することができる硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルケニル基および密着性基を有するポリシロキサン(A)と、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサン(B)(ただし、ポリシロキサン(A)を除く)と、ヒドロシリル化反応用触媒(C)とを含有する硬化性組成物であって、該硬化性組成物中に含まれる全成分の含有量の合計を100質量%とするとき、ポリシロキサン(A)の含有割合が40〜90質量%であることを特徴とする硬化性組成物である。
【0011】
前記硬化性組成物においてポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A)は、アルケニル基の含有量が3〜50モル%であり、密着性基の含有量が0.01〜10モル%であることが好ましい。
【0012】
前記硬化性組成物においては、前記密着性基が、エポキシ基を有する基であることが好ましい。
前記硬化性組成物においては、前記ポリシロキサン(A)が、化学式:
【0013】
【化2】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。REpは、エポキシ基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは1以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。)で示されることが好ましい。
【0014】
前記硬化性組成物においては、ポリシロキサン(A)がアリール基を有し、ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A)に含まれるアリール基の含有量が30〜120モル%であることが好ましい。
【0015】
他の発明は、前記の硬化性組成物から得られることを特徴とする硬化物である。
また、他の発明は、半導体発光素子と、該半導体発光素子を被覆する、前記の硬化物とを有することを特徴とする光半導体装置である。
【0016】
また、他の発明は、化学式:
【0017】
【化2】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。REpは、エポキシ基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは1以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。)で示されるポリシロキサンである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性組成物は、基板や金属配線などに対する接着性と輝度とを両立しうる硬化物を形成できるヒドロシリル系ポリシロキサン組成物である。
したがって、この硬化性組成物から得られる硬化物で半導体発光素子を被覆して得られた光半導体装置は、信頼性に優れた光半導体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、光半導体装置の一具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、アルケニル基および密着性基を有するポリシロキサン(A)と、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサン(B)(ただし、ポリシロキサン(A)を除く)と、ヒドロシリル化反応用触媒(C)とを含有する硬化性組成物であって、該硬化性組成物中に含まれる全成分の含有量の合計を100質量%とするとき、ポリシロキサン(A)の含有割合が40〜90質量%であることを特徴とする。
【0021】
なお、本発明において「ポリシロキサン」とは、シロキサン単位 (Si−O)が2個以上結合した分子骨格を有するシロキサンを意味する。
ポリシロキサン(A)
ポリシロキサン(A)は、アルケニル基および密着性基を有するポリシロキサンである。ポリシロキサン(A)は本組成物の主成分であり、ポリシロキサン(B)とのヒドロシリル化反応により硬化し、硬化物の主体となる。また、ポリシロキサン(A)は、密着性基を有することから、硬化物とLEDパッケージ等との接着性を高める機能も有する。
【0022】
ポリシロキサン(A)が有するアルケニル基としては、たとえば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基およびシクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基が好ましい。
【0023】
ポリシロキサン(A)におけるアルケニル基の含有量は、ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、3〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜40モル%であり、さらに好ましくは10〜30モル%である。アルケニル基の含有量が前記範囲内であると、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とのヒドロシリル化反応が好適範囲で起こり、強度の高い硬化物が得られる。
【0024】
前記密着性基とは、半導体装置等の基材等の材料となる金属または有機樹脂等対して密着性を有する基を意味する。
ポリシロキサン(A)が有する密着性基としては、たとえば、エポキシ基、チオニル基、イソシアネート基、トリアリルイソシアネート基等を有する基を挙げることができる。
【0025】
これらの中でも、硬化性組成物を硬化する際に起こるヒドロシリル化反応を阻害しにくく、基板や金属配線などに対する接着性と輝度とを高度に両立しうる硬化物を形成することから、エポキシ基を有する基が好ましい。
【0026】
前記エポキシ基を有する基としては、たとえば、グリシドキシ基、3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基、並びに3,4−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2−(3,4−エポキシシクロペンチル)エチル基、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシシクロアルキル基等が挙げられる。前記エポキシ基を有する基としては、具体的には、下記構造式(1)〜(4)で表される基が挙げられる。前記エポキシ基を有する基がこのような基であると、硬化物のmmオーダーでの成形が可能になる。
【0027】
【化3】

〔構造式(1)中R2はメチレン基または2価の炭素数2〜10の直鎖状アルキレン基または炭素数3〜10の分岐鎖状アルキレン基を示す。〕
【0028】
【化4】

〔構造式(2)中R3はメチレン基または2価の炭素数2〜10の直鎖状アルキレン基または炭素数3〜10の分岐鎖状アルキレン基を示す。〕
【0029】
【化5】

〔構造式(3)中R4はメチレン基または2価の炭素数2〜10の直鎖状アルキレン基または炭素数3〜10の分岐鎖状アルキレン基を示す。〕
【0030】
【化6】

〔構造式(4)中R5はメチレン基または2価の炭素数2〜10の直鎖状アルキレン基または炭素数3〜10の分岐鎖状アルキレン基を示す。〕
構造式(1)で表される基としては、具体的には、2−(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。
【0031】
構造式(2)で表される基としては、具体的には、グリシジル基等が挙げられる。
構造式(3)で表される基としては、具体的には、3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0032】
構造式(4)で表される基としては、具体的には、2−(4−メチル−3、4−エポキシシクロへキシル)エチル基等が挙げられる。
ポリシロキサン(A)における密着性基の含有量は、ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、0.01〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5モル%であり、さらに好ましくは0.05〜3モル%である。密着性基の含有量が前記範囲内であると、本組成物から得られる硬化物とLEDパッケージ等との間の高い接着性と輝度の高い硬化膜が得られる。
【0033】
本発明の硬化性組成物中に含まれるポリシロキサン(A)の含有量は、本組成物中に含まれる全成分の含有量の合計を100質量%としたとき、40〜90質量%であり、好ましくは50〜85質量%であり、より好ましくは65〜85質量%である。
【0034】
従来のヒドロシリル系ポリシロキサン組成物においては、接着性を高めるために、主剤であるポリシロキサンとは別に、接着促進剤であるエポキシ基含有ポリシロキサンが組成物全体に対し0.01〜20質量%程度添加されていた。これに対し、本発明の硬化性組成物においては、エポキシ基含有ポリシロキサンであるポリシロキサン(A)を主剤として用い、その含有量が前記のとおり40〜90質量%である。ポリシロキサン(A)の含有量が前記範囲であると、本組成物から得られる硬化物は、基板や金属配線などに対する高い接着性を有し、かつLEDなど封止材として使用した場合にLEDなどの高い初期輝度を維持する。
【0035】
また、ポリシロキサン(A)はアリール基を有することが好ましい。ポリシロキサン(A)はアリール基を有すると、LED封止材として用いた時に高い輝度が得られるという特性が発現する。ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A)に含まれるアリール基の含有量は30〜120モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜110モル%、さらに好ましくは70〜100モル%である。アリール基の含有量が30〜120モル%の範囲内にあるとき、本組成物から輝度が高く、屈折率の高い硬化膜が得られる。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0036】
ポリシロキサン(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が100〜50000の範囲にあることが好ましく、500〜5000の範囲にあることがより好ましい。ポリシロキサン(A)の重量平均分子量が前記範囲内にあると、本組成物を用いて封止材を製造する際に取扱いやすく、また本組成物から得られる硬化物は光半導体封止材として十分な材料強度および特性を有する。
【0037】
ポリシロキサン(A)としては、化学式:
【0038】
【化1】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。RAdは、密着性基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、gは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。d+gは1以上の整数である。)で示されるポリシロキサンが挙げられる。
【0039】
a、b、c、d、e、f、g、hおよびiの合計に対するaの割合は、前記合計を100%とした場合、好ましくは0%以上60%以下であり、より好ましくは、5%以上40%以下である。bの割合は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは、0%以上20%以下である。cの割合は、好ましくは0%以上30%以下であり、より好ましくは、0%以上20%以下である。dの割合は、好ましくは0%以上10%以下であり、より好ましくは、0%以上5%以下である。eの割合は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは、0%以上30%以下である。fの割合は、好ましくは20%以上90%以下であり、より好ましくは、40%以上80%以下である。gの割合は、好ましくは0%以上10%以下であり、より好ましくは、0%以上5%以下である。hの割合は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは、0%以上30%以下である。iの割合は、好ましくは0%以上10%以下であり、より好ましくは、0%以上5%以下である。ただし、a+cの割合は0%より大きく、d+gの割合は0%より大きい。
【0040】
化学式(1)で示されるポリシロキサンの中でも、化学式(2)で示されるポリシロキサンが、基板や金属配線などに対する接着性と輝度とを高度に両立しうる硬化物を形成することから好ましい。
【0041】
【化2】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。REpは、エポキシ基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは1以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。)
アルケニル基を有する基としては、上述のアルケニル基を有する基と同じ基が例示される。密着性基を有する基としては、上述の密着性基と同じ基を有する基が例示される。エポキシ基を有する基としては、上述のエポキシ基を有する基と同じ基が例示される。1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基,ノナフルオロブチルエチル基等の置換アルキル基が例示される。
【0042】
ポリシロキサン(A)の製造方法としては、特開平6−9659号公報、特開2003−183582号公報、特開2007−008996号公報、特開2007−106798号公報、特開2007−169427号公報および特開2010−059359号公報等に記載された公知の方法、たとえば、各単位源となるクロロシランやアルコキシシランを共加水分解する方法や、共加水分解物をアルカリ金属触媒などにより平衡化反応する方法などが挙げられる。
【0043】
このようなポリシロキサンを用いることにより、本願の硬化性組成物から得られる硬化物は、必要とする強度が得られ、金属や有機樹脂膜との密着性が発現し、しかもLED封止材として用いた時に高い輝度が得られるという特性が発現する。
ポリシロキサン(B)
ポリシロキサン(B)は、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサンである(ただし、ポリシロキサン(A)を除く)。すなわちポリシロキサン(B)は、1分子当たり少なくとも2個のSi−H基(ヒドロシリル基)を有する。ポリシロキサン(B)はポリシロキサン(A)に対する架橋剤であり、ポリシロキサン(A)とのヒドロシリル化反応により硬化物を形成する。
【0044】
ポリシロキサン(B)としては、従来のヒドロシリル系ポリシロキサン組成物において架橋剤として使用されている、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサンであれば特に制限されることなく使用することができる。
【0045】
ポリシロキサン(B)の具体例としては、特許文献1〜3に記載されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンなどを挙げることができる。
ポリシロキサン(B)は、たとえば、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのアルコキシシランと、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのハイドロジェンシロキサンとを公知の方法により反応させることにより得ることができる。
【0046】
本発明の硬化性組成物におけるポリシロキサン(B)の含有量としては、ポリシロキサン(A)中のアルケニル基量に対するポリシロキサン(B)中のケイ素原子結合水素原子量のモル比が0.1〜5となる量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.4となる量である。ポリシロキサン(B)の含有量が前記範囲内であると、組成物の硬化が十分に進行し、また、得られる硬化物に十分な耐熱性が得られる。
ヒドロシリル化反応用触媒(C)
ヒドロシリル化反応用触媒(C)は、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とのヒドロシリル化反応の触媒である。
【0047】
ヒドロシリル化反応用触媒(C)としては、従来のヒドロシリル系ポリシロキサン組成物においてヒドロシリル化反応用触媒として使用されている触媒であれば特に制限されることなく使用することができる。
【0048】
ヒドロシリル化反応用触媒(C)の具体例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒を挙げることができる。これらの中で、本組成物の硬化促進の観点から白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、たとえば、白金−アルケニルシロキサン錯体等が挙げられる。アルケニルシロキサンとしては、たとえば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。特に、錯体の安定性の観点から、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンが好ましい。
【0049】
本発明の硬化性組成物におけるヒドロシリル化反応用触媒(C)は、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とのヒドロシリル化反応が現実的に進行する量を用いる。
本発明の硬化性組成物は、本発明の目的が達成されるかぎり、前記成分以外にも、必要に応じて、たとえば、フュームドシリカ、石英粉末等の微粒子状シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機充填剤、シクロ−テトラメチルテトラビニルテトラシロキサン等の遅延剤、ジフェニルビス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、フェニルトリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン等の希釈剤、顔料、難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0050】
本発明の硬化性組成物は、前記各成分をミキサー等公知の方法により均一に混合することによって調製することができる。
本発明の硬化性組成物の25℃における粘度としては、好ましくは1〜1000000mPa・sであり、より好ましくは10〜10000mPa・sである。粘度がこの範囲内であると、本組成物の操作性が向上する。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、1液として調製することもできるし、2液に分けて調製し、使用時に2液を混合して使用することもできる。必要に応じて、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加してもよい。
【0052】
<硬化物>
本発明の硬化性組成物を硬化させることにより硬化物が得られる。本発明の硬化性組成物により半導体素子を封止し、これを硬化させれば、封止材である硬化物が得られる。
【0053】
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、たとえば、硬化性組成物を基板上に塗布した後、100〜180℃で1〜13時間加熱する方法などが挙げられる。
前述のとおり、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、基板や金属配線などに対する接着性が高く、かつLEDなどの高い初期輝度を実現する。
【0054】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、半導体発光素子と、該半導体発光素子を被覆する前記硬化物とを有する。本発明の光半導体装置は、半導体発光素子に前記硬化性組成物を被覆し、その組成物を硬化させることによって得られる。硬化性組成物を硬化させる方法は上述のとおりである。
【0055】
光半導体装置としては、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)およびLD(Laser Diode)等が挙げられる。
図1は、本発明の光半導体装置の一具体例の模式図である。光半導体装置1は、電極6と、電極6上に設置され、ワイヤー7により電極6と電気的に接続された半導体発光素子2と、半導体発光素子2を収容するように配置されたリフレクター3と、リフレクター3内に充填され、半導体発光素子2を封止する封止材4を有する。封止材4は、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる。封止材4中には、シリカや蛍光体などの粒子5が分散されている。
【0056】
前述のとおり、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる封止材は、リフレクターの材料である有機樹脂膜や電極の材料である金属等に対する接着力が強いので、ヒートサイクルを受けた場合でも封止材がLEDパッケージから剥がれることがない。また、前記封止材は、LEDなどの高い初期輝度を維持する。すなわち、高い接着性と高い初期輝度との両立が実現される。
【実施例】
【0057】
(1)ポリシロキサンの合成
(1−1)ポリシロキサンの合成
[合成例1] ポリシロキサン(AR1)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン82g、フェニルトリメトキシシラン525g、水143g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に水酸化カリウム0.4gを加え、水分離管から水を除去しながら還流した。水の除去完了後、固形分濃度が75質量%となるまで濃縮し、さらに5時間還流した。冷却後、酢酸0.6gを投入して中和した後、ろ過して得られたトルエン溶液を水洗した。その後、減圧濃縮してポリシロキサン(AR1)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(AR1)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、2000であった。ポリシロキサン(AR1)の化学式は(ViMe2SiO1/225(PhSiO3/275(Viはビニル基、Meメチル基、Phはフェニル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。
[合成例2] ポリシロキサン(A1)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン82g、水143g、フェニルトリメトキシシラン521g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン4gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮してアルケニル基25モル%及びエポキシ基0.5モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A1)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A1)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、2000であった。ポリシロキサン(A1)の化学式は(ViMe2SiO1/225(PhSiO3/274.5(EpMeSiO2/20.5(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A1)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は25mol%、エポキシ基の含有割合は0.5mol%、アリール基の含有割合は74.5mol%であった。
【0058】
[合成例3] ポリシロキサン(A2)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン82g、フェニルトリメトキシシラン518g、水143g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン8gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮してアルケニル基25モル%及びエポキシ基1モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A2)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A2)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、2000であった。ポリシロキサン(A2)の化学式は(ViMe2SiO1/225(PhSiO3/274(EpMeSiO2/21(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A2)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は25mol%、エポキシ基の含有割合は1mol%、アリール基の含有割合は74mol%であった。
【0059】
[合成例4] ポリシロキサン(A3)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン82g、フェニルトリメトキシシラン511g、水143g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン16gと30gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮して、アルケニル基25モル%及びエポキシ基2モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A3)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A3)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、2000であった。ポリシロキサン(A3)の化学式は(ViMe2SiO1/225(PhSiO3/273(EpMeSiO2/22(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A3)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は25mol%、エポキシ基の含有割合は2mol%、アリール基の含有割合は73mol%であった。
【0060】
[合成例5] ポリシロキサン(A4)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン49g、フェニルトリメトキシシラン442g、ジメチルジメトキシシラン85g、水143g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン8gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮して、アルケニル基15モル%及びエポキシ基1モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A4)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A4)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、1800であった。ポリシロキサン(A4)の化学式は(ViMe2SiO1/215(PhSiO3/264(Me2SiO2/220(EpMeSiO2/21(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A4)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は15mol%、エポキシ基の含有割合は1mol%、アリール基の含有割合は64mol%であった。
【0061】
[合成例6] ポリシロキサン(A5)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン82g、フェニルトリメトキシシラン525g、水143g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン314gと水130gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮して、アルケニル基25モル%及びエポキシ基40モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A5)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A5)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、1600であった。ポリシロキサン(A5)の化学式は(ViMe2SiO1/225(PhSiO3/275(EpMeSiO2/240(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A5)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は25mol%、エポキシ基の含有割合は40mol%、アリール基の含有割合は75mol%であった。
【0062】
[合成例7] ポリシロキサン(A6)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコに1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン33g、フェニルトリメトキシシラン442g、ジメチルジメトキシシラン85g、ジフェニルジメトキシシラン43g、水155g、トリフルオロメタンスルホン酸0.4gおよびトルエン500gを投入して混合し、1時間加熱還流した。冷却後、下層を分離除去し、上層であるトルエン溶液層を水洗した。水洗したトルエン溶液層に3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン8gと水酸化カリウム0.5gとを加え1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。続いて4時間加熱還流した。反応後のトルエン溶液は冷却後、酢酸0.6gで中和し水洗した。水除去後、トルエンを減圧下に留去濃縮して、アルケニル基10モル%及びエポキシ基1モル%を有する(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)ポリシロキサン(A6)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで(A6)のポリスチレン換算重量平均分子量を測定したところ、1800であった。ポリシロキサン(A6)の化学式は(ViMe2SiO1/210(PhSiO3/264(Ph2SiO2/25(Me2SiO2/220(EpMeSiO2/21(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Epはグリシドキシプロピル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。ポリシロキサン(A6)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、アルケニル基の含有割合は10mol%、エポキシ基の含有割合は1mol%、アリール基の含有割合は74mol%であった。
【0063】
[合成例8] ポリシロキサン(B1)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコにフェニルトリメトキシシラン195gとトリフルオロメタンスルホン酸0.2gを投入して混合し、攪拌しつつ水13gを15分間で滴下し、滴下終了後、1時間加熱還流した。室温まで冷却した後、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン119gを加え、攪拌しつつ、酢酸88gを滴下した。滴下終了後、混合液を攪拌しつつ50℃に昇温し、3時間反応させた。室温まで冷却した後、トルエンと水を加え、良く混合して静置し、水層を分離除去した。上層であるトルエン溶液層を水洗した後、減圧濃縮して、メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(B1)を得た。ポリシロキサン(B1)の化学式は(HMe2SiO1/260(PhSiO3/240(Meメチル基、Phはフェニル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。
【0064】
[合成例9] ポリシロキサン(B2)の合成
攪拌機、還流冷却管、投入口、温度計付き四口フラスコにジフェニルジメトキシシラン220gとトリフルオロメタンスルホン酸0.6gを投入して混合し、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン147gを加え、攪拌しつつ酢酸108gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、混合液を攪拌しつつ50℃に昇温して3時間反応させた。室温まで冷却した後、トルエンと水を加え、良く混合して静置し、水層を分離除去した。上層であるトルエン溶液層を3回水洗した後、減圧濃縮して、ジフェニルハイドロジェンポリシロキサン(B2)を得た。ポリシロキサン(B2)の化学式は(HMe2SiO1/250(Ph2SiO2/250(Meメチル基、Phはフェニル基を示す。添え字はmol%を示す)であった。
(1−2)重量平均分子量
得られたポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
【0065】
装置:HLC−8120C(東ソー社製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
(1−3)アルケニル基、エポキシ基およびアリール基の含有割合、ならびにポリシロキサンの化学式。
【0066】
得られたポリシロキサン中に含まれるアルケニル基、エポキシ基およびアリール基の含有割合(ポリシロキサン中に含まれる全Si原子の数を100モル%とする)、ならびにポリシロキサンの化学式は、29Si NMRおよび13C NMRにて算出した。
(2)硬化性組成物の調製
[実施例1〜5ならびに比較例1および2]
常圧下95℃で、下記表1に示す成分を、表1に示す配合量で混合し、実施例1〜4および比較例1および2の硬化性組成物を得た。表1中の数値は質量部を示す。なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0067】
【表1】

C1:白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金金属量4質量%)
D1:シクロ−テトラメチルテトラビニルテトラシロキサン
D2:ジフェニルビス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
D3:フェニルトリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
(3)硬化性組成物の評価
実施例1〜4および比較例1および2の硬化性組成物について、下記、(3−1)〜(3−6)の手法にて、評価した。評価結果を表2に示す。
(3−1)粘度
硬化性組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃において測定した。
(3−2)硬度
硬化性組成物をテフロン(登録商標)の平板に2mm厚の枠をはめ枠の高さになるように塗布して、150℃の熱風循環式オーブンで5時間加熱することにより50mm×50mm×1mmの硬化物を作製した。この硬化物の硬さをJIS K6253に規定されたタイプDデュロメータにより測定した。
(3−3)屈折率
硬化性組成物を硬度測定用に作製した硬化物を使用して、25℃における屈折率をMetricon社製Model2010全反射式屈折率計で測定した。なお、測定波長は408nmである。
(3−4)光透過率変化
1mmの石英板上に円形(直径2cm、厚さ1mm)の枠をおき、この枠内に硬化性組成物を充填して、150℃の熱風循環式オーブンで5時間加熱することにより硬化して作製した硬化物(光路長1.0mm)の25℃における波長460nmの光透過率を測定した。次に、加速劣化試験後の着色の程度を調べるために、上記硬化物を150℃の熱循環式オーブンで1000時間加熱エージングした後の25℃における波長460nmの光透過率を同様に測定した。加熱エージング前の光透過率に対する加熱エージング後の光透過率の比から、下記の基準で光透過率変化を評価した。
【0068】
A:前記比が98%以上
B:前記比が90%以上98%未満
C:前記比が90%未満
(3−5)接着強度
直径5mm高さ5mmのアルミ円の底面に硬化性組成物を塗り各種テストパネルに張付け、150℃の熱風循環式オーブン中で1時間放置することで、直径5mm高さ5mmのアルミ円柱を硬化性組成物にてテストパネルに密着させた試験片を得た。各種テストパネル上に密着したアルミ円柱を、測定装置にDage社製series-4000PXYを用い50μm/秒の速度で剥離させ、そのときの荷重を測定して接着強度とし、下記の基準で評価した。
【0069】
A:接着強度が10kg重以上
B:接着強度が5kg重以上10kg重未満
C:接着強度が5kg重未満
(3−6)耐熱性
硬化性組成物を乾燥膜厚が1mmになるように石英ガラス上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させ、次いで150℃で5時間乾燥硬化させて硬化物を作製した。この硬化物を150℃で500時間保管し、保管後の硬化物の外観を目視で観察し、下記の基準で耐熱性を評価した。
(色変化)
A:色変化なし
B:わずかに黄色化した
C:明らかに黄色化した
(3−7)全放射束測定(輝度評価)
硬化性組成物を光学用半導体の表面実装型(トップビュータイプ、図1の光半導体2、電極6、ワイヤー7およびリフレクター3により構成される部分からなる)パッケージに塗布を行い、150℃で1時間加熱することで評価用サンプルの作成を行った。
【0070】
全放射束測定装置(瞬間マルチ測光検出器MCPD-3700、Φ300mm積分球(半球積分球))を使用して、上記評価用サンプルの放射束測定を実施した。封止材を塗布する前のパッケージに通電し発光させて測定された初期放射束に対する上記評価用サンプルの放射束の比率を%で算出し、下記の基準で評価した。
【0071】
A:前記比率が110%以上
B:前記比率が110%未満100%以上
C:前記比率が100%未満
【0072】
【表2】

表2に示した結果より、エポキシ基含有ポリシロキサンであるポリシロキサン(A)を接着促進剤的に使用した比較例1および2においては、エポキシ基が多いポリシロキサン(A5)を使用した比較例1では全放射束すなわち輝度が低く、エポキシ基が少ないポリシロキサン(A3)を使用した比較例2では接着強度が低くなり、高輝度と高接着性との両立は実現されていなかった。これに対し、エポキシ基含有ポリシロキサンであるポリシロキサン(A)を主成分とする実施例1〜5においては、全放射束および接着強度がともに高く、高輝度と高接着性との両立が実現されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の硬化性組成物は、その硬化物が透明でありながら、高温雰囲気下に置かれても光透過率の低下が小さく、高い接着性を有するので、光学用半導体素子および光半導体部材の封止剤、接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤等として有用である。本発明の硬化物は、高温に曝されても光透過率の低下が小さいので、高温条件下の製造工程においても光透過率の低下が小さく、長期信頼性に優れるという特徴がある。本発明の硬化物は、特に高輝度の発光素子などの光学用半導体装置に用いられたとき、全放射束が高くなるので、高輝度の光源の近傍に用いられる光学部材として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 光半導体装置
2 半導体発光素子
3 リフレクター
4 封止材
5 粒子
6 電極
7 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基および密着性基を有するポリシロキサン(A)と、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリシロキサン(B)(ただし、ポリシロキサン(A)を除く)と、ヒドロシリル化反応用触媒(C)とを含有する硬化性組成物であって、該硬化性組成物中に含まれる全成分の含有量の合計を100質量%とするとき、ポリシロキサン(A)の含有割合が40〜90質量%であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A)は、アルケニル基の含有量が3〜50モル%であり、密着性基の含有量が0.01〜10モル%である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記密着性基が、エポキシ基を有する基である請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサン(A)が、化学式:
【化2】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。REpは、エポキシ基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは1以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。)で示される請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ポリシロキサン(A)がアリール基を有し、ポリシロキサン(A)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A)に含まれるアリール基の含有量が30〜120モル%である請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物から得られることを特徴とする硬化物。
【請求項7】
半導体発光素子と、該半導体発光素子を被覆する、請求項6に記載の硬化物とを有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項8】
化学式:
【化2】

(式中、RViは、アルケニル基を有する基を示す。REpは、エポキシ基を有する基を示す。R1はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基(ただし、アルケニル基を有する基をのぞく。)を示す。Xは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示す。aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは1以上の整数、eは0以上の整数、fは0以上の整数、hは0以上の整数を示す。iは0以上の整数を示す。ただし、a+cは1以上の整数である。)で示されるポリシロキサン。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−233153(P2012−233153A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34100(P2012−34100)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】