説明

硬化性組成物およびそれからなる成形品

(A)フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基含有単量体(a3)との共重合体であるフッ化ビニリデン系エラストマー(ただし、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える)、および(B)硬化剤として40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物のみを含む硬化性組成物。本発明によれば、安価な硬化剤を使用でき、かつ架橋速度が改善されたフッ化ビニリデン系エラストマー硬化性組成物、さらにはその硬化性組成物から得られる成形品を提供することができる。アンモニア発生化合物に親和性を有する溶媒を共存させることで常態物性も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下に、参照により全内容が本明細書に組み込まれている、2008年6月30日出願の米国仮出願61/077,058号および2008年9月25日出願の米国仮出願61/100,199号の利益を請求する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、特定のフッ化ビニリデン系エラストマーの硬化性組成物に関する。また、この硬化性組成物を硬化させて得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
含フッ素エラストマーは、その卓越した耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、耐燃料油性などから、自動車工業、半導体工業、化学工業などの分野において、O−リング、ホース、ステムシール、シャフトシール、ダイヤフラム等の形状に成形されて広く使用されている。
【0004】
しかし、技術の進歩に伴い要求される特性はさらに厳しくなり、航空宇宙分野や半導体製造装置分野、化学プラント分野、自動車工業においても、200℃を越える、より高温環境下におけるシール性が求められている。
【0005】
このような性能を備える含フッ素エラストマーとして、パーフルオロ系エラストマーが知られているが(特表2004−500459号公報、特表2003−531222号公報、国際公開第00/09603号パンフレット、特開平11−111081号公報、国際公開第98/23675号パンフレット)、フッ化ビニリデンの共重合割合が20モル%を超えるフッ化ビニリデン系エラストマーでの実現を目指して検討が試みられている(特許文献国際公開第05/105917号パンフレット、国際公開2007/049469号パンフレット)。
【発明の概要】
【0006】
フッ化ビニリデン系エラストマーで200℃を越える高温環境下におけるシール性を達成するには、従来は国際公開第05/105917号パンフレット、国際公開2007/049469号パンフレットにて提案されているように特定の硬化剤を用いた架橋が必須と考えられていたが、本発明者らが更なる検討を進めたところ、国際公開第05/105917号パンフレット、国際公開2007/049469号パンフレットで提案されている技術では実用的には架橋速度の点で改善の余地が残されていることがわかった。そして本発明者らは驚くべきことに、それら特定の硬化剤を全く用いることなく、フッ化ビニリデン系エラストマーにおいてそれらの特性を達成するどころか、安価に架橋速度も改善できることを見出した。
【0007】
本発明は、フッ化ビニリデン系エラストマーにおいて、アンモニアだけで硬化が可能であることを見出し、架橋速度が改善されたフッ化ビニリデン系エラストマー硬化性組成物、さらにはその硬化性組成物から得られる成形品を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基含有単量体(a3)との共重合体であるフッ化ビニリデン系エラストマー(ただし、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える)、および
(B)硬化剤として40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物のみ
を含む硬化性組成物に関する。
【0009】
アンモニア発生化合物(B)としては、尿素またはアンモニウム塩が、架橋速度が良好な点から好ましい。
【0010】
本発明はまた、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形品にも関する。成形品としては、架橋速度の速さと耐熱性が要求される酸素センサー用シール材、空燃比センサー用シール材、ターボチャージャホースまたは排気ガス再循環装置制御用(EGR)ホースなどが好適である。
【0011】
さらに本発明は、前記特定のフッ化ビニリデン系エラストマー(A)および硬化剤としてアンモニア発生化合物(B)のみを含む硬化性組成物を製造するに当り、アンモニア発生化合物(B)をアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する溶媒(D)、たとえば水またはアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する有機溶媒の存在下で他の成分と混合することを特徴とする硬化性組成物の製造方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の硬化性組成物では、特定のフッ化ビニリデン系エラストマー(A)に対し、硬化剤としてアンモニア発生化合物(B)のみが配合されている。
【0013】
以下、各成分について説明する。
【0014】
(A)特定のフッ化ビニリデン(VdF)系エラストマー
特定のVdF系エラストマー(A)は、フッ化ビニリデン(VdF)(a1)と、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基含有単量体(a3)との共重合体であるVdF系エラストマーである。
【0015】
ただし、VdFの共重合割合は20モル%を超えていることが、低温での脆弱性を改善するために重要である。
【0016】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)としては、一般式(24):
CF2=CFO(CF2CFY2O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf3 (24)
(式中Y2は、フッ素原子または−CF3を表し;Rf3は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表し;pは、0〜5の整数を表し;qは、0〜5の整数を表す)
または、一般式(25)
CFX=CXOCF2OR (25)
(式中、XはFまたはH;RはC1〜C6の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル基、C5〜C6の環状のフルオロアルキル基、またはフルオロオキシアルキル基。ただし、H、Cl、Br、Iから選択される1〜2個の原子を含んでもよい)
で表されるものを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
一般式(24)、一般式(25)で示されるものの中でも、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が好ましく、特にパーフルオロ(メチルビニルエーテル)が好ましい。
【0018】
これらはそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0019】
VdF(a1)と特定のパーフルオロオレフィン(a2)との共重合割合は、VdFが20モル%を超えていればよいが、なかでもVdF45〜85モル%と、特定のパーフルオロオレフィン55〜15モル%とからなる含フッ素エラストマーが好ましく、さらにはVdF50〜80モル%と特定のパーフルオロオレフィン50〜20モル%とからなる含フッ素エラストマーが好ましい。
【0020】
VdF(a1)と特定のパーフルオロオレフィン(a2)との組み合せとしては
具体的には、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体が好ましい。
【0021】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、45〜85/55〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/50〜20モル%であり、さらに好ましくは、60〜80/40〜20モル%である。
【0022】
VdF/HFP/TFE共重合体は、VdF/HFP/TFEの組成が、40〜80/10〜35/10〜35モル%のものが好ましい。
【0023】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が、65〜90/35〜10モル%のものが好ましい。
【0024】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が、40〜80/3〜40/15〜35モル%のものが好ましい。
【0025】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が、65〜90/3〜25/3〜25モル%のものが好ましい。
【0026】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が、40〜90/0〜25/0〜40/3〜35モル%のものが好ましく、40〜80/3〜25/3〜40/3〜25モル%のものがより好ましい。
【0027】
シアノ基含有単量体(a3)は、良好な架橋特性および耐熱性の観点から、VdF(a1)と特定のパーフルオロオレフィン(a2)の合計量に対して、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.3〜3モル%であることがより好ましい。
【0028】
シアノ基含有単量体(a3)としては、たとえば式(5)〜(21):
CY12=CY1(CF2n−CN (5)
(式中、Y1は水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数である)、
CF2=CFCF2f2−CN (6)
(式中、
【化1】

であり、nは0〜5の整数である)、
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2m
(OCH2CF2CF2nOCH2CF2−CN (7)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)、
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2m
(OCF(CF3)CF2nOCF(CF3)−CN (8)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2n−CN (9)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数である)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−CN (10)
(式中、mは1〜5の整数)、
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2nCF(−CN)CF3 (11)
(式中、nは1〜4の整数)、
CF2=CFO(CF2nOCF(CF3)−CN (12)
(式中、nは2〜5の整数)、
CF2=CFO(CF2n−(C64)−CN (13)
(式中、nは1〜6の整数)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)−CN (14)
(式中、nは1〜2の整数)、
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−CN (15)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−CN (16)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数である)、
CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)−CN (17)
CH2=CFCF2OCH2CF2−CN (18)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)−CN (19)
(式中、mは0以上の整数である)、
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2n−CN (20)
(式中、nは1以上の整数)、
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2−CN (21)
などの単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0029】
なかでも、共重合性と加硫性が良好な点から式(9)または(16)が好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFO(CF25CNがより好ましい。
【0030】
式(5)〜(21)で表されるシアノ基含有単量体は、そのシアノ基が環化三量化反応してトリアジン架橋が進行する。
【0031】
これらのVdF系エラストマーは、公知の方法により製造することができる。
【0032】
また、シアノ基の導入方法としては、国際公開第00/05959号パンフレットに記載の方法も用いることができる。
【0033】
本発明で用いるVdF系エラストマーは、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(121℃))が5〜140、さらには10〜120、特に20〜100であるものが好ましい。
【0034】
(B)40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(アンモニア発生化合物)
アンモニア発生化合物は、VdF系エラストマーでは耐アミン性に問題があるということから、積極的な検討がされていなかったが、国際公開第05/105917号パンフレット、国際公開2007/049469号パンフレットにて提案されている硬化剤を用いなくても、200℃を越える高温環境下におけるシール性を達成するとともに架橋速度も改善できることを見出した。
【0035】
このアンモニア発生化合物(B)は、架橋反応温度(40〜330℃)で発生したアンモニアがVdF系エラストマーの架橋を引き起こすことにより硬化を生じさせる。したがって、アンモニア発生化合物は単独で硬化剤として機能する。本発明では、他の硬化剤は使用せず、アンモニア発生化合物は単独で硬化を生じさせる。また微量の水と反応して、アンモニアを発生させるものもある。
【0036】
アンモニア発生化合物(B)としては、尿素、アンモニウム塩が好ましくあげられ、アンモニウム塩としては有機アンモニウム塩でも無機アンモニウム塩でもよい。
【0037】
尿素としては、尿素のほか、ビウレア、チオウレア、尿素塩酸塩、ビウレットなどの尿素誘導体も含まれる。
【0038】
有機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報、国際公開第00/09603号パンフレット、国際公開第98/23675号パンフレットに記載された化合物、たとえばパーフルオロヘキサン酸アンモニウム塩、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩、パーフルオロブチル酸アンモニウム塩、パーフルオロアセチル酸アンモニウム塩、パーフルオロドデカン酸アンモニウム塩、パーフルオロヘキサデカン酸アンモニウム塩などのポリフルオロカルボン酸アンモニウム塩;パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロドデカンスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロヘキサデカンスルホン酸アンモニウム塩などのポリフルオロスルホン酸アンモニウム塩;パーフルオロヘキサンリン酸アンモニウム塩、パーフルオロオクタンリン酸アンモニウム塩、パーフルオロヘキサンホスホン酸アンモニウム塩、パーフルオロオクタンホスホン酸アンモニウム塩などのポリフルオロアルキル基含有リン酸、ホスホン酸のアンモニウム塩;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウムなどの非フッ素系のカルボン酸またはスルホン酸のアンモニウム塩が例示できる。なかでも、VdF系エラストマーへの分散性を考慮するとフッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、一方、安価な点からは、非フッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましい。
【0039】
無機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報に記載された化合物、たとえば硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが例示でき、なかでも加硫特性を考慮すると、リン酸アンモニウムが好ましい。
【0040】
そのほか、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン塩酸塩、ホルムアミジン酢酸塩、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、HCF2CF2CH(CH3)OCONH2、フタルアミドなども使用できる。
【0041】
これらのアンモニア発生化合物(B)は、単独でも2種以上併用してもよい。
【0042】
アンモニア発生化合物(B)の添加量は発生するアンモニアの量により適宜選択すればよいが、通常、VdF系エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。アンモニア発生化合物が少なすぎると架橋密度が低くなるため、実用上、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しない傾向があり、多くなりすぎると、スコーチの懸念があり保存安定性が悪くなるという問題があり、かつ成形品の色目に透明感がなくなる傾向がある。
【0043】
本発明では、アンモニア発生化合物のみで硬化反応を進め、他の硬化剤は使用しない。使用しない他の硬化剤としては、たとえば、フッ素系エラストマーの硬化剤として知られているつぎの硬化剤が例示できる。
【0044】
式(1):
【化2】

(式中、R1は同じかまたは異なり、−NH2、−NHR2、−OHまたは−SHであり、R2はフッ素原子または1価の有機基である)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含む化合物、式(2):
【化3】

で示される化合物、式(3):
【化4】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)で示される化合物、および式(4):
【化5】

(式中、nは1〜10の整数)で示される化合物。
【0045】
具体的な使用しない他の硬化剤としては、式(1)で示される架橋性反応基を2個有する一般式(22):
【化6】

(式中、R1は前記と同じ、R5は、−SO2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基、単結合手、または
【化7】

で示される基である)で示される化合物や、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのほか、
式(23):
【化8】

(式中、R6は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;ベンジル基;フッ素原子および/または−CF3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基である)で示される化合物があげられる。
【0046】
式(23)の硬化剤の具体例としては、限定的ではないが、たとえば2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあげられる。
【0047】
(C)他の成分
本発明の硬化性組成物において、とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じて硬化性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤などを配合することができる。
【0048】
前記硬化性組成物の各成分を混合する方法や順序は特に限定されない。たとえば、つぎの方法が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
(1−1)VdF系エラストマー(A)とアンモニア発生化合物(B)を同時に混合する方法。
【0050】
(1−2)(A)成分の一部と(B)成分を予め混合してマスターバッチとした後、残りの(A)成分と混合する方法。
【0051】
さらに他の添加剤(C)を配合する場合は、上記の各方法においていずれかの段階で他の添加剤(C)を配合すればよい。
【0052】
また、他の添加剤(C)、特に充填剤(C1)を用いる場合、
(1−3)(B)成分と充填剤(C1)、さらに要すれば(A)成分の一部を予め混合してマスターバッチとし、残りの成分を混合する(この場合、残りの成分は予め混合されていてもよい)方法
も採用できる。
【0053】
なお、マスターバッチを調製するために使用するVdF系エラストマー(A)は、アンモニア発生化合物(B)の分散性を良好にする点から、全VdF系エラストマー(A)の1〜50質量%が好ましい。また、マスターバッチ用に使用するエラストマーの量が少ない場合は、マスターバッチの調製に使用するエラストマーは必ずしもVdF系エラストマー(A)でなくてもよく、別のエラストマー、たとえば、混合中にスコーチしないようなエラストマー、たとえばシアノ基を有していないエラストマーを単独または併用してもよい。別のエラストマーとしては、VdF系エラストマー(A)と相溶性が良好な点から、VdF系エラストマー、さらにはVdF系エラストマー(A)においてシアノ基含有単量体(a3)を含まないVdF系エラストマーがより好ましい。
【0054】
また、マスターバッチの組成としては、たとえばマスターバッチ用のエラストマー100質量部に対して、アンモニア発生化合物(B)を5〜120質量部配合することが好ましい。
【0055】
前記硬化性組成物の各成分を混合する手段としては、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
【0056】
ところで、VdF系エラストマー(A)に固形物であるアンモニア発生化合物(B)の粉末をニーダーやオープンロールなどで直接混練して、アンモニア発生化合物(B)をVdF系エラストマー(A)中に分散させる場合、VdF系エラストマー(A)の表面滑り性が高く、アンモニア発生化合物(B)を取り込むことは可能ではあるが、均一に練り込んで分散させることは容易ではない。
【0057】
本発明者らは、アンモニア発生化合物(B)に親和性を有する溶媒を混合の場に存在させることにより、アンモニア発生化合物(B)のVdF系エラストマー(A)中への分散を均一にすることができることを見出した。
【0058】
すなわち本発明は、アンモニア発生化合物(B)を均一に分散させる本発明の硬化性組成物の製造方法にも関する。
【0059】
本発明の製造方法は、前記特定のフッ化ビニリデン系エラストマー(A)と硬化剤としてアンモニア発生化合物(B)のみを含む硬化性組成物を製造するに当り、アンモニア発生化合物(B)をアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する溶媒(D)の存在下で他の成分と混合することを特徴とする。
【0060】
(D)成分において、アンモニア発生化合物(B)に親和性を有するとは、たとえばアンモニア発生化合物(B)を溶解、分散、または膨潤する性質を有することであり、たとえば、水(D1)、またはアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する有機溶媒(D2)が好ましい。
【0061】
具体的な有機溶媒(D2)としては、たとえばメタノール、エタノール、グリセリンなどのアルコール溶剤などがあげられる。
【0062】
特には、水(D1)が、安価な点や取扱いや除去が容易である点、環境に優しい点などから好ましい。
【0063】
溶媒(D)の使用量は、アンモニア発生化合物(B)の種類や量のほか、VdF系エラストマー(A)の使用量などによって大きく変動するが、アンモニア発生化合物(B)の分散性をより一層向上させる点から、VdF系エラストマー(A)100質量部に対して0.1質量部以上、さらには1.0質量部以上が好ましい。上限は特に限定されないが、VdF系エラストマー(A)100質量部に対して500質量部、さらには100質量部、特に50質量部が採用できる。
【0064】
溶媒(D)を使用して本発明の組成物の各成分を混合する方法としては、たとえばつぎの方法が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
(2−1)VdF系エラストマー(A)とアンモニア発生化合物(B)と溶媒(D)を同時に混合する方法。
【0066】
(2−2)(B)成分を(D)成分と混合した後、(A)成分と混合する方法。
【0067】
(2−3)(A)成分の一部と(B)成分と(D)成分を予め混合してマスターバッチとした後、残りの(A)成分と混合する方法。
【0068】
(2−4)(B)成分と(D)成分を予め混合し、これと(A)成分の一部とを混合してマスターバッチとした後、残りの(A)成分と混合する方法。
【0069】
さらに他の添加剤(C)を配合する場合は、上記の各方法においていずれかの段階で他の添加剤(C)を配合すればよい。
【0070】
また、他の添加剤、特に充填剤(C1)を用いる場合、
(2−5)(B)成分と(D)成分を予め混合し、これと充填剤(C1)、さらに要すれば(A)成分の一部を予め混合してマスターバッチとし、残りの成分を混合する(この場合、残りの成分は予め混合されていてもよい)方法、
も採用できる。
【0071】
なお、マスターバッチを調製するために使用するVdF系エラストマー(A)は、アンモニア発生化合物(B)の分散性を良好にする点から、全VdF系エラストマー(A)の1〜50質量%が好ましい。また、マスターバッチ用に使用するエラストマーの量が少ない場合は、マスターバッチの調製に使用するエラストマーは必ずしもVdF系エラストマー(A)でなくてもよく、別のエラストマー、たとえば、混合中にスコーチしないようなエラストマー、たとえばシアノ基を有していないエラストマーを単独または併用してもよい。別のエラストマーとしては、VdF系エラストマー(A)と相溶性が良好な点から、VdF系エラストマー、さらにはVdF系エラストマー(A)においてシアノ基含有単量体(a3)を含まないVdF系エラストマーがより好ましい。
【0072】
また、マスターバッチの組成としては、たとえばマスターバッチ用のエラストマー100質量部に対して、アンモニア発生化合物(B)を5〜120質量部配合することが好ましい。
【0073】
各成分を混合する方法としては、VdF系エラストマー(A)との混合以外は、通常の撹拌混合法で充分である。
【0074】
マスターバッチの調製、さらにはVdF系エラストマー(A)と混合する場合は、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
【0075】
混合において使用した溶媒(D)は、硬化(架橋成形)が完了するまでに除去される。溶媒(D)の除去は、乾燥工程を独立工程として設けてもよいし、混合の後半部分または延長として行ってもよいし、硬化(架橋成形)工程の前半部分または最中に行ってもよい。
【0076】
乾燥工程を独立して行う場合は、混合により得られた混合物を乾燥すればよい。
【0077】
乾燥温度は、有機溶剤が除去できかつ架橋反応が進行しにくい点から、40℃以下が好ましい。また、乾燥時間は、溶媒の除去をできるだけ進める点から、6〜72時間が好ましい。なお、乾燥工程は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。
【0078】
本発明の硬化性組成物の架橋は、たとえば、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出した後架橋する方法などの通常の方法で行うことができる。架橋も一次架橋、最後に二次架橋の順で行い、成形品を得ることができる。
【0079】
一次架橋条件としては、150〜230℃で5〜120分間行うことが好ましく、160〜200℃で5〜60分間行うことがより好ましく、170〜190℃で5〜60分間行うことが特に好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、たとえばプレス架橋などをあげることができる。
【0080】
二次架橋条件としては、160〜320℃で2〜24時間行うことが好ましく、180〜310℃で4〜20時間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、たとえばオーブン架橋などをあげることができる。
【0081】
本発明の硬化性組成物を架橋成形して、本発明の成形品を得ることができる。本発明の成形品は、耐熱性、圧縮永久歪みに優れるものである。
【0082】
本発明の成形品は、自動車分野、航空機分野、ロケット分野、船舶分野、油田掘削分野、化学プラント分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析・理化学機分野、食品プラント機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、現場施工型の成形などの分野で広く用いることができる。
【0083】
具体的には、たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、滑剤・冷却系、燃料系、吸気・排気系;駆動系のトランスミッション系;シャーシのステアリング系;ブレーキ系;電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・燃料油耐性・エンジン冷却用不凍液耐性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール材などがあげられる。
【0084】
自動車用エンジンのエンジン本体に用いられるシール材としては、特に限定されないが、たとえば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、Oリング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール材などがあげられる。
【0085】
自動車用エンジンの主運動系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどがあげられる。
【0086】
自動車用エンジンの動弁系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、エンジンバルブのバルブステムオイルシールなどがあげられる。
【0087】
自動車用エンジンの滑剤・冷却系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、エンジンオイルクーラーのシールガスケットなどがあげられる。
【0088】
自動車用エンジン燃料系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、燃料ポンプのオイルシール、燃料タンクのフィラーシール、タンクパッキンなど、燃料チューブのコネクターOリンクなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターOリングなど、キャブレターのフランジガスケットなどがあげられる。
【0089】
自動車用エンジンの吸気・排気系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキン、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージのタービンシャフトシールなどがあげられる。
【0090】
自動車用トランスミッション系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、Oリング、パッキンなど、オートマチックトランスミッションのOリング、パッキン類などがあげられる。
【0091】
自動車用ブレーキ系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、オイルシール、Oリング、パッキンなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類などがあげられる。
【0092】
自動車用装備電装品に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、カーエアコンのOリング、パッキンなどがあげられる。
【0093】
本発明の成形品は、これらの中でも、特に酸素センサーに適し、さらには自動車用酸素センサーに適したシール材であり、これらのなかでも、架橋速度の速さと耐熱性が要求される酸素センサー用シール材、空燃比センサー用シール材などに好適であり、またターボチャージャホースまたはEGRホースなどにも好適である。
【0094】
自動車用以外の用途としては、特に限定されず、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチームまたは耐候用のパッキン、Oリング、その他のシール材;油田掘削における耐油、耐熱、耐スチームまたは耐候用のパッキン、Oリング、その他のシール材;化学プラントにおける同様のパッキン、Oリング、シール材;食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、Oリング、シール材;原子力プラント機器における同様のパッキン、Oリング、シール材;一般工業部品における同様のパッキン、Oリング、シール材などがあげられる。
【実施例】
【0095】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
本発明で採用している架橋条件は以下の条件である。
(標準架橋条件)
混練方法 :ロール練り
プレス架橋 :180℃で10分間(異なる場合は特記する)
オーブン架橋:200℃で2時間、260℃で2時間、290℃で18時間
【0097】
また、本発明における各種特性は以下の方法で測定した。
【0098】
<ガラス転移温度Tg>
DSC(示差走査熱量計)を用いて、1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点をTgとする。使用する示差走査熱量計は、セイコー電子(株)製の示差走査熱量計である。
【0099】
<ムーニー粘度(ML1+10(121℃))>
ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
【0100】
<架橋特性>
1次プレス架橋時にJSR型キュラストメータII型(日合商事(株)製)を用いて、JIS K6300に準拠して測定を行う。180℃における架橋曲線を求め、最低粘度(ML)、架橋度(MH)、誘導時間(T10)および最適架橋時間(T90)を求める。
【0101】
<100%モジュラス(M100)>
表1に示す硬化性組成物を標準架橋条件で1次プレス架橋および2次オーブン架橋して厚さ2mmのシートとし、JIS−K6251に準じて測定する。
【0102】
<引張破断強度(Tb)および引張破断伸び(Eb)>
表1に示す硬化性組成物を標準架橋条件で1次プレス架橋および2次オーブン架橋して厚さ2mmのシートとし、JIS−K6251に準じて測定する。
【0103】
<ショアA硬度(Hs)>
ASTM D2240に準拠して、具体的には、高分子計器株式会社製アナログ硬さ計のA型を用いて測定を行う。
【0104】
<圧縮永久歪み(CS)>
JIS K6301に準じてO−リング(AS−568A−214)の260℃における、70時間後、168時間後および336時間後の圧縮永久歪み(CS)を測定する。
【0105】
製造例1(CN基含有共重合体(A1)の合成)
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C511COONH4 6.0gおよびCH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4 0.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=19/11/70モル%比)を、内圧が1.52MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)を1.8g窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0106】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル0.2gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.52MPa・Gになるように、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=50/20/30モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、TFE、HFPの混合ガスを圧入し、1.48〜1.52MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVEを30g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0107】
重合反応の開始から10時間後、VdF、TFE、HFPの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度25.5質量%の水性分散体3984gを得た。
【0108】
この水性分散体のうち2000gを、硫酸マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間、乾燥させ、499gのポリマーを得た。
【0109】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/HFP/CNVE=49.6/18.3/31.2/0.9モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm-1付近に認められた。また、この共重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は71であり、ガラス転移温度Tgは−8℃であった。
【0110】
製造例2(CN基含有共重合体(A2)の合成)
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C511COONH4 6.0gおよびCH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4 0.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、TFE、PMVEの混合ガス(VdF/TFE/PMVE=64/8/28モル%比)を、内圧が1.53MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)を1.8g窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0111】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル0.2gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.53MPa・Gになるように、VdF、TFE、PMVEの混合ガス(VdF/TFE/PMVE=70/12/18モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、TFE、PMVEの混合ガスを圧入し、1.48〜1.53MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVEを30g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0112】
重合反応の開始から10時間後、VdF、TFE、PMVEの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度25.1質量%の水性分散体4061gを得た。
【0113】
この水性分散体のうち2000gを、硫酸マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、メタノールで洗浄したのち、70℃で48時間真空乾燥させ、498gのポリマーを得た。
【0114】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE/CNVE=66.2/13.5/19.3/1.0モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm-1付近に認められた。また、この重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は80であり、ガラス転移温度Tgは−30℃であった。
【0115】
実施例1
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1)100質量部に対して尿素(キシダ化学(株)製)を0.1質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0116】
実施例2
尿素の配合量を0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋し、サンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0117】
実施例3
尿素の配合量を2.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0118】
実施例4
尿素に代えてパーフルオロヘキサン酸アンモニウムを0.5質量部配合した以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を180℃で20分架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0119】
実施例5
パーフルオロヘキサン酸アンモニウムの配合量を1.0質量部とした以外は、実施例4と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0120】
実施例6
パーフルオロヘキサン酸アンモニウムの配合量を2.8質量部とした以外は、実施例4と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0121】
実施例7
尿素に代えてリン酸3アンモニウムを0.5質量部配合した以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0122】
実施例8
CN基含有共重合体(A1)に代えて、製造例2で得られたCN基含有共重合体(A2)を使用し、尿素の配合量を0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。
【0123】
また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0124】
実施例9
尿素(キシダ化学(株)製の粉末)0.5質量部を同量の水に溶解して、尿素溶液を調製した。ついで、製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1)100質量部に対して、上記で調製した尿素溶液を尿素量として0.5質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0125】
製造例3(CN基含有共重合体(A3)の合成)
内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C511COONH46.0gおよびCH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH40.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、HFPの混合ガス(VdF/HFP=50/50モル%比)を、内圧が1.52MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)を1.8g窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0126】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル0.2gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.52MPa・Gになるように、VdF、HFPの混合ガス(VdF/HFP=78/22モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、HFPの混合ガスを圧入し、1.48〜1.52MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVEを50g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0127】
重合反応の開始から10時間後、VdF、HFPの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度24.6質量%の水性分散体4052gを得た。
【0128】
この水性分散体のうち2000gを、硫酸マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間、乾燥させ、490gのポリマーを得た。
【0129】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/HFP/CNVE=77.4/21.6/1.0モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm-1付近に認められた。また、この共重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は80であり、ガラス転移温度Tgは−18℃であった。
【0130】
製造例4(CN基含有共重合体(A4)の合成)
内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C511COONH46.0gおよびCH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH40.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=70/11/19モル%比)を、内圧が1.52MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF2=CFO(CF25CN(CNVE−2)を1.8g窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0131】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル0.2gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.52MPa・Gになるように、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=50/20/30モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、TFE、HFPの混合ガスを圧入し、1.48〜1.52MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVE−2を48g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0132】
重合反応の開始から10時間後、VdF、TFE、HFPの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度24.5質量%の水性分散体4160gを得た。
【0133】
この水性分散体のうち2000gを、硫酸マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間、乾燥させ、490gのポリマーを得た。
【0134】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/HFP/CNVE=50.1/18.6/30.3/1.0モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm-1付近に認められた。また、この共重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は85であり、ガラス転移温度Tgは−8℃であった。
【0135】
実施例10
製造例3で得られたCN基含有共重合体(A3)100質量部に対して尿素(キシダ化学(株)製)を0.5質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0136】
実施例11
製造例4で得られたCN基含有共重合体(A4)100質量部に対して尿素(キシダ化学(株)製)を0.5質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0137】
実施例12
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1)100質量部に対してアジピン酸アンモニウムを0.4質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0138】
実施例13
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1)100質量部に対してフタル酸アンモニウムを1.0質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0139】
実施例14
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1)100質量部に対して、あらかじめメタノール 10質量部と尿素(キシダ化学(株))0.5質量部とカーボンブラック(CB)(Cancarb製のThermax N990)20質量部を配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。また、組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0140】
比較例1
CN基含有共重合体(A1)100質量部に対して、カーボンブラック(N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して比較用の硬化性組成物を調製した。
【0141】
組成物について、架橋特性を調べた。結果を表1に示す。
【0142】
比較例2
CN基含有共重合体(A1)100質量部に対して、硬化剤として2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(OH−AF)を1.8質量部、さらにカーボンブラック(N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して比較用の硬化性組成物を調製した。この比較用の硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。
【0143】
また、この硬化性組成物を180℃で30分架橋し、サンプルシートを作製して、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0144】
比較例3
硬化剤としてOH−AFに代えて2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(Nph−AF)を用いた以外は、比較例1と同様にして硬化性組成物を調製し、この比較用の硬化性組成物の一部を採取し、180℃の条件下でキュラストメーターを用いて、架橋特性を調べた。
【0145】
また、この硬化性組成物を上記標準架橋条件で架橋してサンプルシートを作製し、100%モジュラス、引張破断強度および引張破断伸び、ショアA硬度および圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
【0146】
比較例4
CN基含有共重合体(A2)100質量部に対して、硬化剤として2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(OH−AF)を1.8質量部、さらにカーボンブラック(N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して比較用の硬化性組成物を調製した。
【0147】
この比較用の硬化性組成物を180℃で50分架橋してサンプルシートを作製した。また組成物について、架橋特性を調べた。結果を表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1の結果から、架橋速度が大幅に向上していることが分かる。さらに、尿素と親和性を有する溶媒(水)の存在により、常態物性が向上していることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、安価な硬化剤を使用でき、かつ架橋速度が改善されたフッ化ビニリデン系エラストマー硬化性組成物、さらにはその硬化性組成物から得られる成形品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基含有単量体(a3)との共重合体であるフッ化ビニリデン系エラストマー(ただし、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える)、および
(B)硬化剤として40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物のみ
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
アンモニア発生化合物(B)が、尿素またはアンモニウム塩である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載された硬化性組成物を硬化させて得られる成形品。
【請求項4】
酸素センサー用シール材、空燃比センサー用シール材、ターボチャージャホース、または排気ガス再循環装置制御用ホースである請求項3記載の成形品。
【請求項5】
(A)フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基含有単量体(a3)との共重合体であるフッ化ビニリデン系エラストマー(ただし、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える)、および
(B)硬化剤として40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物のみ
を含む硬化性組成物を製造するに当り、
アンモニア発生化合物(B)をアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する溶媒(D)の存在下で他の成分と混合することを特徴とする硬化性組成物の製造方法。
【請求項6】
アンモニア発生化合物(B)が、尿素またはアンモニウム塩である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
溶媒(D)が、水、またはアンモニア発生化合物(B)に親和性を有する有機溶媒である請求項5または6記載の製造方法。

【公表番号】特表2011−521047(P2011−521047A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509170(P2011−509170)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/JP2009/062241
【国際公開番号】WO2010/002013
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】