説明

硬化性組成物

【課題】 深部硬化性および耐候性の優れた、湿気により硬化可能な組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 アクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を構成単量体単位として有し、ガラス転移温度が10℃以下であり、重量平均分子量が500〜20000であるビニル重合体(A)1〜200質量部、および上記ビニル重合体(A)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(B)100質量部を含有する硬化性組成物。特に好適なビニル重合体(A)は、全構成単量体単位を基準としてアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を5〜90質量%有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化可能な硬化性組成物に関し、さらには深部硬化性、耐候性の向上したシーリング材や接着剤、塗料に有用な組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有する重合体は、単独またはエポキシ化合物と組み合わせて、シーリング材や弾性接着剤として使用されている。しかし、このシーリング材や弾性接着剤は耐候性が不足していた。加水分解性シリル基を有する重合体およびアクリル系重合体からなる可塑剤を含有するシーリング材組成物は耐候性に優れているが、かかるアクリル系重合体からなる可塑剤が添加された1成分型シーリング材や接着剤は、深部硬化性が不充分となる場合があり、厚膜の場合には硬化に時間が掛かるという問題点があった。特に空気が乾燥した冬場には硬化が遅く、硬化速度の向上が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−129247号公報
【特許文献2】特開2001−40328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、深部硬化性および耐候性の優れた、湿気により硬化可能な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明の硬化性組成物は、アクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を構成単量体単位として有し、ガラス転移温度が10℃以下であり、重量平均分子量が500〜20000であるビニル重合体(A)1〜200質量部、および上記ビニル重合体(A)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(B)100質量部を含有するものである。
請求項2に記載の発明の硬化性組成物は、請求項1に記載の発明において、ビニル重合体(A)は、全構成単量体単位を基準としてアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を5〜90質量%有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明の硬化性組成物は、請求項1または2に記載の発明において、ビニル重合体(A)は、撹拌槽型反応器を使用し、ビニル単量体を150〜350℃の温度において連続重合させて得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性組成物は、深部硬化性が良く、耐候性も良好であり、1成分型の建築用シーリング材やタイル用弾性接着剤として好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
アクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を構成単量体単位として有し、ガラス転移温度が10℃以下であり、重量平均分子量が500〜20000であるビニル重合体(A)は、硬化性組成物の取扱作業性を良好にするとともに、得られる硬化物の耐候性や接着性を優れたものにするための成分である。

ビニル重合体(A)は、構成単量体単位としてアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を有するものである。ビニル重合体(A)は、全構成単量体単位を基準としてアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を5〜90質量%有するものであることが好ましい。アクリル酸メチル単位およびアクリル酸エチル単位の両方を有する場合は、その合計割合が5〜90質量%であるものが好ましく、10〜85質量%であるものがより好ましい。
アクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位の割合が5質量%未満であると、硬化性組成物が深部硬化性の悪いものとなる場合がある。90質量%を超えると硬化性組成物が高粘度の取扱作業性の悪いものとなる場合がある。
【0008】
ビニル重合体(A)は、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル以外のその他の単量体に由来するその他の単量体単位を構成単位として有するものでもよい。その他の単量体としては特に制限はなく、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル以外の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。得られる硬化性組成物が耐候性、耐水性などの優れるものとなりやすいため、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでもエステルのアルコール残基の炭素数が4〜20のものが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよび(メタ)アクリル酸トリシクロデシニル等の(メタ)アクリル酸脂環式アルキル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルおよび(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のヘテロ原子含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。得られる硬化性組成物の粘度が低く、耐候性が優れるため、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシルが好ましい。
【0009】
ビニル重合体(A)は水酸基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、エポキシ基を有する架橋性官能基を有する単量体単位を含んでも良い。水酸基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、エポキシ基を含有する単量体は必須ではないが、存在する場合でも30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えてこれら官能基を有する単量体を含有する場合、得られる組成物の保存安定性が不十分となる場合がある。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン付加反応物、トリアクリル酸ペンタエリスリトール等のアクリル酸ヒドロキシアルキル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびヒドロキシプロピルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテルおよびヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシル基含有アリルエーテル、クロトン酸ヒドロキシエチルおよびクロトン酸ヒドロキシプロピル等のクロトン酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。
イソシアネート基を有する単量体としては、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート、メタクリルイソシアネート、ジメチルメタイソプロペニルベンジルイソシアネートが例示される。
【0010】
アルコキシシリル基を有する単量体は、下記式(1)で表されるシリル基を含有する化合物である。
−Si(R1)aX1(3-a) (1)
(式中、R1は水素原子またはアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示し、X1はハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を示し、aは1または2である。)
アルコキシシリル基を有する単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジメチルシランおよびビニルトリクロロシランなどのビニルシラン類、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピルおよび(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピルなどのシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのシリル基含有ビニルエーテル類、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルなどのシリル基含有ビニルエステル類などが例示される。これらの中でも(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性や共重合体の耐熱性の点からメトキシ基またはエトキシ基を有するシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これら加水分解性シリル基を有する単量体についても、1種類または2種類以上用いることが可能である。
エポキシ基を有する単量体としては(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキサンエポキシ、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどが例示される。
【0011】
ビニル重合体(A)は、目的に応じて選択されたビニル単量体を公知の方法で重合させて得ることができる。溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などのいずれであってもよい。溶液重合を採用する場合、有機溶媒としては、通常溶媒として用いられるものでよく、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール類等があげられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
ラジカル重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびジターシャリーブチルパーオキサイド等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物が使用できる。また、アルコールやメルカプタン系化合物などの連鎖移動剤も用いて良いが、耐候性の低下につながるため、用いないことが好ましい。
【0013】
ビニル単量体を150〜350℃の温度で重合させて得られるビニル重合体(A)は、耐候性の優れたものとなりやすいために好ましい。重合温度は180〜320℃がより好ましく、200〜300℃がさらに好ましい。バッチ重合、セミ連続重合、連続重合などのいずれも採用できるが、撹拌槽型反応器を使用する連続重合は、生産性が優れるために特に好ましい。このような高温連続重合は公知である(特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特表昭60−511992号公報)。
【0014】
本発明に使用されるビニル系共重合体は、ガラス転移温度(Tgともいう。)が10℃以下である。ガラス転移温度が10℃を超えると硬化性組成物の粘度が高くなり作業性に劣る。
【0015】
上記ビニル重合体(A)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(B)は、硬化性組成物の基本的な性能を担う成分である。重合体(B)は、重合体1分子あたり1個以上のアルコキシシリル基を有する重合体であり、アルコキシシリル基を含有するポリオキシアルキレン重合体、および、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体とアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体の混合物、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体、アルコキシシリル基を有するポリイソブチレン重合体が例示される。
【0016】
アルコキシシリル基を含有するポリオキシアルキレン重合体としては、鐘淵化学工業製のMSポリマーS203、S303、S810、サイリルSAT010、SAT030、SAT200、ESX250、SAT350、SAX710、SAX770、旭硝子製のエクセスターES−S2410、ES−S2420、ES−S3430、ES−S3630等が例示される。
アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体とアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体の混合物としては、鐘淵化学工業製のMA903、MSX908、MSX911、MSX943、S943、MA430、MA440、MA447が例示される。
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、鐘淵化学工業製のSA100S、OR100S等のテレケリックポリアクリレートが例示される。
アルコキシシリル基を有するポリイソブチレン重合体としては、鐘淵化学工業製のエピオンEP103S、EP303S、EP505S等のテレケリックポリイソブチレンポリマーが例示される。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、ビニル重合体(A)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(B)100質量部あたりビニル重合体(A)を1〜200質量部を含有することを特徴とするものである。ビニル重合体(A)の割合が200質量部を超えると、硬化性が低下し、1質量部未満では深部硬化性が向上しない。耐候性や耐汚染性の向上の為には、ビニル重合体(A)の割合は20〜100質量部が好ましく、30〜60質量部がより好ましい。
【0018】
本発明の硬化性組成物を三次元架橋させゴム状弾性を有する固体へと硬化させるためには、従来公知の硬化促進剤を使用することができる。その具体例としては、テトラブチルチタネートおよびテトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトアセトナート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズおよびフェルザチック酸スズなどの錫カルボン酸塩類、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートおよびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートおよびチタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉄、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)、ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)およびオクチル酸ビスマスなどのビスマス化合物、ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)および1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物、あるいはこれらアミン系化合物のカルボン酸などとの塩、過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂、過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物などのシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒などの公知のシラノール縮合触媒等が例示される。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。好ましい硬化促進剤としては、硬化速度の調整が容易なことから、錫カルボン酸塩類が例示される。使用量は種類により適正な量が異なるが、本発明の全重合体量を基準として0.1ppm〜10%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01%〜3%である。
【0019】
本発明の硬化性組成物を弾性接着剤として使用する場合は、エポキシ樹脂を配合しても良い。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどのごとき多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのごとき不飽和重合体のエポキシ化物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用されうる。これらのエポキシ樹脂のうちではとくにエポキシ基を少なくとも分子中に2個含有するものが、硬化に際し反応性が高く、また硬化物が3次元的網目をつくりやすいなどの点から好ましい。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂類またはノボラック型エポキシ樹脂などがより好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂は、重合体(B)100質量部を基準として、10〜50質量部となるように配合して使用する。エポキシ樹脂が50質量部を超えると耐候性が低下する場合がある。また、エポキシ樹脂を使用する場合は、エポキシ樹脂の硬化剤を併用することが好ましい。
具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の1級アミン、(CH3)2N(CH2)nN(CH3)2(式中nは1〜10の整数)で示される直鎖状ジアミン、(CH3)2−N(CH2)n−CH3(式中nは0〜10の整数)で示される直鎖第3級アミン、テトラメチルグアニジン、N{(CH2)nCH3}3(式中nは1〜10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、ジアザビシクロウンデセン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、BASF社製ラミロンC−260、CIBA社製Araldit HY−964およびロームアンドハース社製メンセンジアミン等の第2級または第3級アミン、1,2−エチレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2−ヘキシレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2−プロピレンビス(イソペンチリデンイミン)、p,p′−ビフェニレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2−エチレンビス(イソプロピリデンイミン)、1,3−プロピレンビス(イソプロピリデンイミン)、p−フェニレンビス(イソペンチリデンイミン)等のケチミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、各種ポリアミド樹脂、ジシアンジアミドおよびその誘導体および各種イミダゾール類等が例示される。
【0021】
また本発明の組成物に、基材との密着性増強剤を添加することができる。その具体例としては、例えばN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0022】
本発明の硬化性組成物は、機械物性を調整するために充填剤を添加することが可能である。具体的には、シリカ、珪酸類、ケイソウ土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、ベントナイト、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、亜鉛華、シラスバルーン、石綿、ガラス繊維、フィラメントなどが例示される。強度を上げる場合には、シリカ、珪酸類、カーボンブラック、クレー、超微細炭酸カルシウム、亜鉛華などが好適であり、弾性を重視する場合には酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどが好適である。好ましい使用量は本発明の全重合体100質量部当たり1〜200質量部である。これらの充填剤は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合してもよい。
【0023】
組成物を硬化させた時の硬度を変えるなど物性を制御するために、物性調整剤を用いることができる。物性調整剤としては例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびn−プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジメトキシシランなどの各種シランカップリング剤、シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が必要に応じて添加される。本発明の全重合体100質量部に対し、0〜20質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0024】
さらには保存安定性を高めるために、脱水剤を添加することができる。脱水剤としては、オルトギ酸メチルおよびオルト酢酸メチル等のオルトエステル類;テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基を有する化合物などが挙げられる。本発明の全重合体100質量部に対し、0〜20質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0025】
本発明の硬化性組成物はその他に、トルエン、メチルエチルケトンなどの各種溶剤;紫外線硬化性樹脂、酸素硬化性樹脂などの表面特性改良剤;顔料、染料などの着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃化剤などのような添加剤も任意に使用してもよい。
【0026】
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿分を吸収することにより硬化する1成分型として調製することが好ましい。また、加水分解性シリル基含有重合体とビニル系重合体を主成分とする主剤と、硬化触媒を主成分とする硬化剤よりなる2成分型として調製することも可能である。
以下に本発明を実施例に基づき説明するが、下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
<合成例1>電熱式ヒーターを備えた容量1000mlの加圧式攪拌槽型反応器を、温度を240℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、表1に示す単量体混合物100部、MEK10部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイドを1部からなる混合物を、一定の供給速度(80g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、ヒータを制御することにより、反応温度240〜245℃を保持した。単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分反応を継続した結果、2kgの単量体混合液を供給し、1.8kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して濃縮液を得た。ガスクロマトグラフ分析より、濃縮液中には未反応モノマーは存在していなかった。溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCという。)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、Mwという。)は1,700であった。反応により得た共重合体を「重合体1」という。
【0028】
<合成例2〜4、比較合成例1〜2>条件を表1のように変更する以外は合成例1と同様に重合および処理を行い、共重合体を合成した。得られた重合体をそれぞれ重合体2〜4、比較重合体1〜2という。これらの分析結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
上記略語の意味は以下の通りである。
BA:アクリル酸ブチル
HA:アクリル酸2−エチルへキシル
MA:アクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
MMA:メタクリル酸メチル
【0031】
<実施例1〜6、比較例1〜3>重合体1〜4、比較重合体1〜2、アルコキシシリル基を含有するポリオキシアルキレン重合体としてエクセスターESS2410(旭硝子製)、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体とアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体の混合物としてMSX911(鐘淵化学工業製)、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体としてSA100S(鐘淵化学工業製)を使用し、アミノシラン(日本ユニカー製A1120)、脱水剤(日本ユニカー製A171)、硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート)、炭酸カルシウム(白石カルシウム製白艶華CCR)、酸化チタン(石原産業製タイペークR820)、老化防止剤(チバスペシャリティー製チヌビンB75)を表2に示す質量部で混合した。
【0032】
【表2】

【0033】
DOPはフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を意味する。
【0034】
表2の割合で混合させて得られた組成物を、深さ10mmのポリエチレン製カップに充填し、23℃、60%RHの環境下で24時間静置した。その後にカップを切断して、表面から硬化している(流動性がない)部分の厚みを測定した。結果を表3に示す。
また、常温で14日間の養生を行い、厚さ1mmのシートを作製した。硬化物のシートから1号ダンベル試験片を打ち抜き、破断時強度、伸度を測定した(引張物性)。引張物性測定は、温度23℃ 湿度50%の環境において引張速度5cm/分で行った。
モルタル片に厚さ1mm、40mm×40mmに塗布し、常温で14日間の養生をした後、メタリングウェザーメーター試験を行い、500時間後に目視でクラックとチョーキングを観察した(耐候性)。これらの結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の硬化性組成物は、深部硬化性が良く、耐候性も良好であり、1成分型の建築用シーリング材やタイル用弾性接着剤として好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を構成単量体単位として有し、ガラス転移温度が10℃以下であり、重量平均分子量が500〜20000であるビニル重合体(A)1〜200質量部、および上記ビニル重合体(A)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(B)100質量部を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
ビニル重合体(A)は、全構成単量体単位を基準としてアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位を5〜90質量%有するものである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ビニル重合体(A)は、撹拌槽型反応器を使用し、ビニル単量体を150〜350℃の温度において連続重合させて得られるものである請求項1または2に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−22169(P2006−22169A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199981(P2004−199981)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】