説明

硬化性組成物

【課題】塗膜硬化後の塗膜表面のタックが改善され、長期にわたって塗膜表面の汚れが少ない硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、前記重合体(A)の可塑剤として用いられるポリプロピレングリコール(B)と、充填剤として用いられる炭酸カルシウム(C)と、パラフィン系プロセスオイル(D)とを含有し、前記パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性シリル基を含有するポリマー及び可塑剤を含有し、接着剤、シーリング材として有用な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を含有する重合体は、室温での優れた硬化性、配合設計の容易さ等から、架橋性シリル基を有する重合体を含有する硬化性組成物は、シーリング材、シール剤、ポッティング剤、弾性接着剤、コーティング材、ライニング材、接着剤等の用途の硬化性組成物として好適に用いられる。
【0003】
末端シリル基を持つポリマーに、フタル酸ジイソノニル(Diisononyl phthalate:DINP)などの可塑剤、脂肪酸処理されたコロイダル炭酸カルシウムを配合した硬化性組成物を硬化させ、硬化して得られるシーリング材の表面に塗装材で塗装すると、塗膜に可塑剤が移行し、塗膜表面にべたつき(以下、「表面タック」という。)が発生する。このため、大気中に露出した状態で用いられる用途においては、塗膜の表面に埃や塵等を保持しやすく、外観の低下が著しいため、改善が望まれていた。
【0004】
例えばシーリング材表面タックを改善する方法として、反応性ケイ素基の数を所定量以上有するポリエーテルオリゴマーと可塑剤とを各々所定量含有する硬化性組成物を一般建物用シーリング材組成物として用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−13430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法では、表面タックの軽減効果は不十分であり、塗膜表面のタックを更に減少し、塗膜表面への煤塵等の付着を更に軽減し改善する必要がある、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、塗膜硬化後の塗膜表面のタックが改善され、長期にわたって塗膜表面の汚れが少ない硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次に示す(1)〜(4)である。
(1) 加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、
前記重合体(A)の可塑剤として用いられるポリプロピレングリコール(B)と、
充填剤として用いられる炭酸カルシウム(C)と、
パラフィン系プロセスオイル(D)とを含有し、
前記パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする硬化性組成物。
(2) 更に、硬化触媒(E)を含有することを特徴とする上記(1)に記載の硬化性組成物。
(3) 前記ポリプロピレングリコール(B)の分子量が、5000以上20000以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の硬化性組成物。
(4)前記パラフィン系プロセスオイル(D)の引火点が、21℃以上200℃以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗膜硬化後の塗膜表面のタックが改善され、長期にわたって塗膜表面の汚れが少ない硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本発明の硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」という。)は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、前記重合体(A)の可塑剤として用いられるポリプロピレングリコール(B)と、充填剤として用いられる炭酸カルシウム(C)と、パラフィン系プロセスオイル(D)とを含有し、前記パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする硬化性組成物である。
【0012】
<加水分解性シリル基を含有する重合体(A)>
加水分解性シリル基を含有する重合体(A)(以下、「重合体(A)」という。)について以下に説明する。
本発明における、重合体(A)は、加水分解性シリル基を含有するポリマーである。
重合体(A)は、特に制限されず、例えば、変成シリコーン系ポリマーが挙げられる。変成シリコーン系ポリマーは、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基および/または加水分解性基により、シロキサン結合を形成し架橋して硬化物となる性質を有する。変成シリコーン系ポリマーは、その主鎖としては、例えば、ポリエーテル重合体、ポリエステル重合体、エーテル/エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物重合体、ジエン系化合物重合体が挙げられる。加水分解性シリル基はこのような主鎖の末端または側鎖に結合していればよい。
【0013】
ポリエーテル重合体としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリフェニレンオキシドの繰返し単位を有するものが例示される。
ポリエステル重合体としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸等のカルボン酸、カルボン酸無水物、それらの分子内および/または分子間エステルおよびそれらの置換体を繰返し単位として有するものが例示される。
エーテル/エステルブロック共重合体としては、例えば、上述したポリエーテル重合体に用いられる繰返し単位および上述したポリエステル重合体に用いられる繰返し単位の両方を繰返し単位として有するものが例示される。
【0014】
エチレン性不飽和化合物重合体およびジエン系化合物重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の単独重合体およびこれらの2種以上の共重合体等が挙げられる。より具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
加水分解性シリル基は、ケイ素原子と直接結合した加水分解性基を有するケイ素原子含有基またはシラノール基であれば特に制限されない。加水分解性シリル基は、湿気、架橋剤等の存在する条件下で縮合触媒を使用することにより脱水反応等の縮合反応を起こすことができる。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。中でも、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0016】
変成シリコーン系ポリマーは、その製造方法について特に制限されない。例えば、特公昭61−18569号公報に記載されているような従来公知の方法によって製造することができる。また、市販品としては、例えば、カネカ社製のMSポリマーS−203、MSポリマーS−303、MSポリマーS−903、MSポリマーS−911、サイリルポリマーSAT200、サイリルポリマーMA430、サイリルポリマーMAX447;旭硝子社製のエクセスターESS−3620、エクセスターESS−3430、エクセスターESS−2420、エクセスターESS−2410等が挙げられる。
【0017】
重合体(A)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
重合体(A)は、その分子量について特に限定されず、粘度、作業性の観点から、数平均分子量が、1,000〜30,000であるのが好ましく、3,000〜15,000であるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬化性組成物の粘度が適度となり、取り扱いが容易となる。尚、本発明においては、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(Gel permeation chromatography:GPC)によって測定されたものである。
【0019】
<ポリプロピレングリコール(B)>
ポリプロピレングリコール(Polypropyleneglycol:PPG)(B)について説明する。
本発明では、ポリプロピレングリコール(B)は、重合体(A)の可塑剤として用いられる。
【0020】
また、ポリプロピレングリコール(B)の分子量としては、5000以上20000以下であるのが好ましく、8000以上10000以下であるのが更に好ましい。これは、ポリプロピレングリコール(B)の分子量が5000を下回ると、シーリング材から塗装材への移行速度が大きいからである。また、ポリプロピレングリコール(B)の分子量が20000を越えると粘度が大きくなりシーリング材施工時の作業性が悪化するからである。
【0021】
<炭酸カルシウム(C)>
炭酸カルシウム(C)について説明する。
本発明の組成物では、炭酸カルシウム(C)は、重合体(A)の充填剤として用いられる。
本発明に用いられる炭酸カルシウム(C)は、特に限定されず、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム( 軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムが挙げられる。
また、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理された表面処理炭酸カルシウムも用いることができる。具体的には、脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)、ライトン26−A(重質炭酸カルシウム、備北粉化工業社製)、白艶華CCR(白石工業社製)等が好適に用いられる。変性脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、ライトンA−4(重質炭酸カルシウム、備北粉化工業社製)、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとして、シーレッツ200(丸尾カルシウム社製)、スノーライトSS(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)等が好適に用いられる。中でも、脂肪酸、変性脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等で表面処理されたものが、特に好ましい。表面処理された炭酸カルシウムは、粘度を高くするため形状保持性および作業性に寄与し、また、表面が疎水性であるため貯蔵安定性に寄与する。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
炭酸カルシウムの含有量は、上述した重合体(A)100質量部に対し、50質量部以上400質量部以下であるのが好ましい。
【0023】
<パラフィン系プロセスオイル(D)>
パラフィン系プロセスオイル(D)について説明する。
本発明の組成物では、パラフィン系プロセスオイル(D)は、シーリング材表面に塗布される塗料とのバリヤー層及び希釈剤として用いられる。
希釈剤としては、パラフィン系プロセスオイルに限定されるものではなく、炭化水素系可塑剤が用いられる。炭化水素系可塑剤は、特に制限されず、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
炭化水素系可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイルの他に、例えば、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル、ポリブテンのような鉱物油系可塑剤が挙げられる。
なかでも、ベースポリマーとの相溶性および耐熱性の点から、パラフィン系プロセスオイルが好ましいため、本発明の組成物では、パラフィン系プロセスオイル(D)を希釈剤として用いる。
【0024】
パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であるのが好ましく、10質量部以上50質量部以下であるのがより好ましい。これは、組成物が塗装材に対して可塑剤等を防ぐバリヤー層を形成するためである。パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して5質量部を下回ると、バリヤー層を形成しにくくなるからである。パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して100質量部を越えると、シーリング材粘度が低下し作業性が悪化するからである。
【0025】
また、パラフィン系プロセスオイル(D)は、危険物第四類第2石油類または第四類第3石油類が好適に用いられるという観点から、引火点が21℃以上200℃以下であるのが好ましく、70℃以上200℃以下であるのがより好ましい。
【0026】
<硬化触媒(E)>
硬化触媒(E)について説明する。
本発明の組成物は、さらに、硬化触媒(E)を含むことができる。本発明の組成物では、硬化触媒(E)を重合体(A)の硬化剤として用いてもよい。
本発明の組成物に使用できる硬化触媒(E)は、硬化性樹脂と反応可能なものであれば特に制限されない。また、硬化触媒(E)は、重合体(A)と反応してもよい。
硬化触媒(E)としては、例えば、金属触媒、アミン系触媒、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾール)、リン系触媒(例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート) 、スズ系触媒が挙げられる。硬化触媒(E)は、硬化性樹脂に応じて選択することができる。
【0027】
硬化触媒(E)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸のようなカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートのようなリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートのような有機金属類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル) フェノール(例えば、DMP−30)のような第三級アミン等が挙げられる。
【0028】
加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂に対して使用されうる硬化触媒(E)としては、例えば、オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、オクタン酸鉄、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、ナフテン酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズのようなカルボン酸金属塩; ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジブチルスズジメトキシド、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルビス(アセチルアセトナト)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロパンジオキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類; アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ステアリン酸トリブトキシジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;ジイソプロポキシビス(エチルアセチルアセタト)チタンのようなチタンキレート化合物;アミン化合物;第四級アンモニウム化合物が挙げられる。微量で大きな触媒能を有する有機スズ化合物およびアルコキシチタン類が好ましい。また、硬化性の観点から、スズ系触媒であるのが好ましい。
【0029】
硬化触媒(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明においては、硬化触媒(E)を用いることにより、硬化反応速度を速めるとともに、硬化反応の進行を促進して硬化に到る作業時間の短縮を図ることができる。また、これによりタックフリータイムも短縮され、優れた硬化性組成物を得ることができる。しかし、硬化触媒(E)の配合量が少なすぎると、硬化速度および硬化反応の促進効果が十分でなく、完全に硬化するまでに長時間を要してしまう。逆に、硬化触媒(E)の配合量が多すぎると、硬化時に局所的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られない。
このため、硬化触媒(E)は、重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下含有するのが好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下含有するのが更に好ましい。上記範囲であると、硬化速度および硬化反応の促進効果が十分であり、かつ、硬化時に局所的な発熱および発泡が抑制され均質なものとなる。
【0031】
また、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム(C)以外の充填剤、ポリプロピレングリコール(B)以外の可塑剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、安定剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
【0032】
炭酸カルシウム(C)以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機のものが挙げられる。炭酸カルシウム(C)以外に、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ケイ砂、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;珪藻土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0033】
可塑剤としては、ポリプロピレングリコール(B)の他に、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;アルキルスルホン酸フェニルエステル(例えば、Bayer社製のメザモール)が挙げられる。また、連鎖移動剤を用いず、150℃以上350℃以下の重合温度で重合され、数平均分子量が500以上5000以下のアクリル重合体を用いることができる。
【0034】
シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に挙げられる。
【0035】
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
【0036】
染料は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料が挙げられる。
【0037】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0038】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
【0039】
溶剤は、本発明の組成物中の他の成分の合成等の際に含まれる溶剤と相溶性がよいものが好ましい。例えば、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、アセトンが挙げられる。溶剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。溶剤は、十分に脱水し、乾燥させてから用いるのが好ましい。上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて十分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物は、湿気硬化型であり、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型の硬化性組成物として使用することができる。また、硬化剤として別途硬化触媒、充填剤、可塑剤、水などの成分を予め配合しておき、該配合剤(材)と重合体組成物とを使用前に混合する2成分型として使用することもできる。本発明の組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。
本発明の組成物は、湿気にさらすと、加水分解性シリル基の加水分解により硬化反応が進行する。そのため、得られた本発明の組成物は密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。また、適宜水分を供給して、硬化反応を進行させることもできる。
【0042】
このように、本発明の組成物は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、前記重合体(A)の可塑剤として用いられるポリプロピレングリコール(B)と、充填剤として用いられる炭酸カルシウム(C)と、パラフィン系プロセスオイル(D)とを含有し、重合体(A)/パラフィン系プロセスオイル(D)が、対ポリマー質量比として100/5以上100/100であることを特徴とする硬化性組成物である。
ここで、単に可塑剤としてポリプロピレングリコール(B)のみを用いた硬化性組成物を硬化させ、硬化した硬化性組成物の表面に塗装材で塗装すると塗膜に可塑剤が移行して塗膜表面にタックを生じさせ、このタックに起因して塗膜表面に塵埃が付着し、塗膜表面が汚染される。
これに対して、本発明の組成物では、パラフィン系プロセスオイル(D)を配合することで、ポリエーテルを繰返し単位で持つ極性のあるポリプロピレングリコール(B)と飽和炭化水素系であるパラフィン系プロセスオイル(D)とが反発し、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物の表面にパラフィンが多く存在する。このため、硬化物の表面に塗装材を塗布しても硬化物の表面に多く存在するパラフィンが極性のある塗装材とも反発するため、ポリプロピレングリコール(B)の塗装材への移行を防ぐことができる。従って、本発明の組成物を用いれば、塗膜硬化後の塗膜表面のタックが改善され、長期にわたって塗膜表面の汚れが少ない硬化性組成物を提供することができる。
【0043】
本発明の組成物の用途は特に限定されないが、本発明の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、土木建築用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等のシーリング材、シール剤、ポッティング剤、弾性接着剤、コーティング材、ライニング材、接着剤、コンクリートやモルタル中の構造用接着剤、ひび割れ注入材等の用途に好適に用いられる。
【0044】
本発明の組成物を難接着性部材に接着させる方法は特に限定されない。例えば、本発明の組成物を難接着性部材に塗布、浸漬して、本発明の組成物を厚さ1mm以上10mm以下で使用し、難接着性部材同士または難接着性部材と他の部材とを接着させることができる。
本発明の組成物は湿気等の水分によって硬化することができ、硬化は5℃以上40℃以下、30%RH以上70%RH以下の条件下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜5および比較例1、2]
「表1」に示す各成分を、同表に示す添加量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表1に示される各組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)は表1に示す通りである。
【0046】
[評価]
得られた各組成物について、以下に示す方法で、汚染性を以下の通り評価した。結果を「表1」に示す。
また、硬化触媒(E)として、オクチル酸錫(Sn(OCOC7152)とラウリルアミン(C1225NH2)とを混合したものを用いた。
(汚染性)
得られた各組成物を23℃、55%RHの条件下で7日間養生させ、硬化物であるシーリング材を得た。得られたシーリング材の表面に塗装材(商品名:水性ソフトサーブSG、エスケー化研(株)社製)を下塗りし、アンダーコートを形成した後、更に塗装材(商品名:プリーズコート、エスケー化研社製)を上塗りし、トップコートを形成し、その後、23℃、55%RHの条件下で7日間養生させた。次いで、アンダーコートおよびトップコートの可塑剤の硬化を促進するため、80℃で7日間養生させた。
このようにして得られた試験体に対し、その後、骨材として7号珪砂をトップコートの表面にふりかけて、目視でトップコートの表面への7号珪砂の付着の度合いを観察した。結果を表1に示す。尚、表1中、○、△、×は、各々以下の状態を示す。
○:汚れが付着しない状態を示す。
△:汚れが付着するが刷毛で落ちる状態を示す。
×:汚れが付着し、刷毛で落ちない状態を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
・重合体(A):MSP-S810、カネカ社製
・ポリプロピレングリコール(B)1:PREMINOL S4012、旭硝子社製
・ポリプロピレングリコール(B)2:PREMINOL S5030、旭硝子社製
・炭酸カルシウム(C)1:白艶華CCR、白石工業社製
・炭酸カルシウム(C)2:スーパーSS、丸尾カルシウム社製
・パラフィン系可塑剤(D)1:シェルゾールTM、シェルケミカルジャパン社製
・パラフィン系可塑剤(D)2:アイソパーG、エクソンモービル社製
・その他の可塑剤:DINP、新日本理化社製
【0049】
表1に示すように、実施例1〜5の硬化性組成物は、パラフィン系プロセスオイル(D)を添加することで、汚れが付着しないか付着しても刷毛で落とすことができたため、耐汚染性が良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明の硬化性組成物によれば、長期にわたって塗膜表面の汚れが少ない硬化物を提供できる。そのため、本発明の硬化性組成物は土木建築用、コンクリート用等のシーリング材、接着剤等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、
前記重合体(A)の可塑剤として用いられるポリプロピレングリコール(B)と、
充填剤として用いられる炭酸カルシウム(C)と、
パラフィン系プロセスオイル(D)とを含有し、
前記パラフィン系プロセスオイル(D)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
更に、硬化触媒(E)を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレングリコール(B)の分子量が、5000以上20000以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記パラフィン系プロセスオイル(D)の引火点が、21℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2011−122101(P2011−122101A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282046(P2009−282046)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】