説明

硬化性組成物

【課題】透明性、作業性、接着性、貯蔵安定性、立ち上がり接着性及び速硬化性に優れ、特にPPSに対する接着性に優れた硬化性組成物及び接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)反応性ケイ素基を含有するビニル系重合体、(B)反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び(C)硬化触媒を含有する硬化性組成物であって、前記ビニル系重合体(A)が、環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を含有する環状構造含有ビニル系重合体、及び環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)とを含有する環状構造含有ビニル系重合体からなる群から選択される1種以上であり、前記ビニル系重合体(A)中の前記(a−1)の含有量が、前記(a−1)及び前記(a−2)の合計量に対して10質量%以上であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、速硬化性及び接着性に優れ、接着剤、シーリング材、コーティング剤、粘着剤、ポッティング材、パテ材、及びプライマーとして好適な硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有し、(メタ)アクリル酸系モノマーを共重合したビニル系重合体と反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体で構成された硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤などとして幅広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有し、分子鎖が実質的に(1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および(または)メタクリル酸アルキルエステル単量体単位と(2)炭素数10以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、(B)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体ならびに(C)硬化促進剤からなる硬化性組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、昨今のさらなる硬化性の向上に関する要求にはかならずしも充分ではなく、特に接着剤においては、貼り合わせ直後から優れたおさまり強度を発現する接着剤が求められ、更に意匠性の観点より高い透明性も求められている。また、特許文献1記載の硬化性組成物は、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用する為、コストが高い、自由度が低いといった問題があった。
【0005】
そのような問題に対し、特許文献2は、反応性シリル基を有するアクリル系共重合体が、数平均分子量600〜5000であり、該共重合体の分子鎖が少なくとも、(b1)(メタ)アクリル酸メチル単量体単位と、(b2)アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、を含む共重合体であって、(b1)/(b2)が質量比で90/10〜20/80であることを特徴とする組成物を提案している。
【0006】
ところで、耐熱性、機械的強度、生産性に優れた性質を有するポリフェニレンサルファイド(PPS)が、自動車や電気・電子分野において、金属や熱硬化性樹脂からの代替材料として近年注目されている。しかし、PPSは耐薬品性にも優れている反面、PPSは通常の接着剤では接合し難い問題があり、たとえば、特許文献2記載の組成物を用いた接着剤では、PPSに対する接着力が弱く、被着体が限定される課題があった。
【0007】
一方、特許文献3は、(a)エステル部分にシクロヘキシル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を全構成単位の合計量を基準にして5〜70質量%の割合で有し、且つ少なくとも重合体の片末端に架橋剤と反応する反応基又は自己架橋し得る反応基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び(b)充填剤を含むことを特徴とするシーリング材組成物を提案している。しかし、特許文献3記載の組成物はシーリング材用途であり、PPSに対する接着力が弱いという問題があった。
【0008】
また、特許文献4は、その主鎖構造がポリオキシアルキレンであり、その分子末端が式 −Si(OR12(R2)(R1は炭素数1〜8個のアルキル基、R2は炭素数1〜8個のアルキル基である。)で表されるアルコキシシリル基から構成されるシリコーン系樹脂(A)、その主鎖構造がポリオキシアルキレンであり、その分子末端が式−Si(OR13(R1は炭素数1〜8個のアルキル基である。)で表されるアルコキシシリル基から構成されるシリコーン系樹脂(B)並びにアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種又は2種以上の重合性ビニル基含有モノマーの重合体であり、ケイ素反応性基を有するアクリル系樹脂(C)を有効成分として含み、該シリコーン系樹脂(A)と該シリコーン系樹脂(B)の含有割合が該シリコーン系樹脂(A)が50〜99重量%、該シリコーン系樹脂(B)が50〜1重量%であり、該アクリル系樹脂(C)の含有量が該シリコーン系樹脂(A)及び該シリコーン系樹脂(B)の合計100重量部当り5〜200重量部であることを特徴とするシリコーン系コンタクト型接着剤を提案している。しかしながら、特許文献4記載の組成物もPPSに対する接着力が弱いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7−42376号公報
【特許文献2】特開2008−44975号公報
【特許文献3】特開2002−188080号公報
【特許文献4】特開2001−200230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、透明性、作業性、接着性、貯蔵安定性、立ち上がり接着性及び速硬化性に優れ、特にPPSに対する接着性に優れた硬化性組成物及び接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は、反応性ケイ素基を含有し且つ構成成分として環状構造含有ビニル系単量体を用いたビニル系重合体、反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び硬化触媒を組み合わせて用いることにより、透明性、作業性、接着性、貯蔵安定性、立ち上がり接着性及び速硬化性に優れ、特にPPSに対する接着性に優れた硬化性組成物を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明の硬化性組成物は、(A)反応性ケイ素基を含有するビニル系重合体、(B)反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び(C)硬化触媒を含有する硬化性組成物であって、前記ビニル系重合体(A)が、環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を含有する環状構造含有ビニル系重合体、及び環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)とを含有する環状構造含有ビニル系重合体からなる群から選択される1種以上であり、前記ビニル系重合体(A)中の前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)の含有量が、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)の合計量に対して10質量%以上であることを特徴とする。なお、本発明において、メタクリル酸とアクリル酸をあわせて(メタ)アクリル酸と称する。
【0013】
前記(A)ビニル系重合体は、下記式(1)によって算出される計算ガラス転移温度Tgが10℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0014】
【数1】

【0015】
前記式(1)において、Tgは前記(A)ビニル系重合体の計算ガラス転移温度、Wiは単量体i(但し、反応性ケイ素基含有化合物を除く)の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度を示す。
【0016】
前記(A)ビニル系重合体の重量平均分子量が、1,000以上50,000以下であることが好適である。
【0017】
前記(A)ビニル系重合体が、前記反応性ケイ素基を分子末端に有することが好ましい。
【0018】
前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)が、スチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレートおよびペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であることが好適である。なお、本発明において、メタクリレートとアクリレートをあわせて(メタ)アクリレートと称する。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)が、炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0020】
前記ビニル系重合体(A)が、メタロセン化合物及び反応性ケイ素基含有チオール化合物の存在下に、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を10質量%以上100質量%以下含有する1種以上の単量体を重合し、反応性ケイ素基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは反応性ケイ素基を有する基である)が末端に結合しているビニル系重合体を得る工程を含む方法により製造されることが好適である。
【0021】
本発明の接着剤組成物は、本発明の硬化性組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明性、作業性、接着性、貯蔵安定性、立ち上がり接着性及び速硬化性に優れ、特にPPSに対する接着性に優れた硬化性組成物及び接着剤組成物を提供することができる。本発明の硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、コーティング剤、粘着剤、ポッティング材、パテ材、及びプライマーとして好適に用いられる。また、本発明の硬化性組成物に用いられる(A)ビニル系共重合体は、炭素数の小さい単量体を用いて得られる為、自由度が高く、また低コストとすることができる。さらに、これまで接着性に乏しかったPPSに対し良好な接着性を発揮するためより広範な部材への適用が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0024】
本発明の硬化性組成物は、(A)反応性ケイ素基を含有するビニル系重合体、(B)反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び(C)硬化触媒を含有する硬化性組成物であって、前記ビニル系重合体(A)が、環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を含有する環状構造含有ビニル系重合体、及び環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)とを含有する環状構造含有ビニル系重合体からなる群から選択される1種以上であり、前記ビニル系重合体(A)中の前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)の含有量が、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)の合計量に対して10質量%以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体は、必須の構成成分として環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を含有する環状構造含有ビニル系重合体である。本発明において、(A)ビニル系重合体は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)としては、環状構造を有するビニル系単量体であればよく、特に制限はないが、例えば、スチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレートおよびペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレートおよびペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレートなどが好適である。また、得られる硬化性組成物の粘度やPPSに対する接着性、経済性を考慮すると、特に、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらの単量体単位は単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体は、PPS以外に対する接着力を調整するために、ビニル系重合体(A)を構成する単量体単位として、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)を含有することができる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)としては、公知の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を使用可能であり、特に制限はないが、炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。炭素数9以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、また、炭素数12と13との混合物のように、2種以上の混合したものなどが挙げられる。これらの単量体単位は単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
前記ビニル系重合体(A)中の前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)の含有量が、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)の合計量に対して10質量%以上とすることを必須とし、前記(a−1)の含有量が、前記(a−1)及び前記(a−2)の合計量に対して20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、30質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上100質量%以下が最も好ましい。前記(a−1)を10質量%以上用いることにより、PPSに対して良好な接着性を示すとともに、嵩高い単量体を用いることにより得られる硬化性組成物の粘度を抑えることができ、その後の塗布作業性に優れるためである。
【0029】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体は、前記(a−1)及び(a−2)以外の単量体単位が含まれていてもよい。(a−1)及び(a−2)以外の単量体単位(以下、他の単量体単位(a−3)とも称する)としては、特に制限はないが、ビニル基含有化合物に基因する単量体単位が好ましく、例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート及びアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を有する単量体単位;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド等のアミド基を有する単量体単位;アクリル酸及びメタクリル酸等のアクリル酸単量体単位;グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有する単量体単位;その他アクリロニトリル、イミノールメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に基因する単量体単位が挙げられ、特に、アミノ基を有する単量体単位、及びアミド基を有する単量体単位が硬化性の点から好ましい。これらの単量体単位は単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
前記ビニル系重合体(A)中のこれら他の単量体単位(a−3)の含有量は、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)の合計量を100重量部としたときに、50質量部以下とすることが好ましく、30質量部以下とすることがより好ましい。
【0031】
また、(A)ビニル系重合体中の(a−1)の含有量が、該ビニル系重合体を構成する単量体単位の総量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体において、反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基であり、下記式(I)で示されるケイ素含有官能基が好適である。前記加水分解性基は、特に限定されないが、例えば、アルコキシル基、ハロゲン原子、水素原子、アシルオキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基等が挙げられ、メトキシル基やエトキシル基等のアルコキシル基がより好適である。
【0033】
【化1】



【0034】
前記式(I)中、R1は同じであっても異なってよく、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基またはトリオルガノシロキシ基であり、Xは水酸基または異種もしくは同種の加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。aは0,1または2の整数、bは0,1,2または3の整数でa=2でかつb=3にならない、mは0〜18の整数である。
【0035】
前記反応性ケイ素基としては、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基及び水素化シリル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
前記反応性ケイ素基の個数に特に制限はないが、硬化性や硬化後の物性等の点から、(A)ビニル系重合体の1分子中に平均して1〜6個含まれるのが好適であり、1.6〜5個がより好適である。分子中の反応性ケイ素基の位置は特に限定されず、(A)ビニル系重合体の分子鎖の末端あるいは内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。
【0036】
前記(A)ビニル系重合体の製造法は、特に限定されず、公知の合成法(例えば、特開昭63−112642号、特開昭58−140084号、特開2000−154205号及び特開2003−313397号、特開2001−40037等の記載の合成法)を利用することができるが、重合開始剤を用いて所定の単量体単位を共重合させるラジカル重合法や、末端などの制御された位置に反応性ケイ素基を導入することが可能な制御ラジカル重合法が好ましい。
【0037】
重合に用いられる熱重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸塩およびレドックス開始剤等が挙げられる。
適切なアゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピオニトリル)、および2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)等が挙げられる。
適切な過酸化物開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、および過酸化ジクミル等が挙げられる。
適切な過硫酸塩開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。
適切なレドックス開始剤としては、上記過硫酸塩開始剤のメタ亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムのような還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;並びに有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系等が挙げられる。
【0038】
また、前記(A)ビニル系重合体の合成において反応性ケイ素基を導入する方法として、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物を(a−1)の単量体単位並びに必要であれば(a−2)及び(a−3)と反応させて共重合させる方法や、予め共重合させたビニル系重合体と反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0039】
前記重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−ビニル−モノクロロジメトキシシラン、γ−ビニル−トリクロロシラン、γ−ビニル−ジクロロ−モノメチルシラン等のビニル基に反応性ケイ素基が直接導入されたビニル化合物;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルモノメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性の高い(メタ)アクリロイル基に反応性ケイ素基が導入されているアクリル系化合物;更には、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン等のように重合性不飽和基を有す化合物に反応性ケイ素基が導入されている化合物等を挙げることができる。
【0040】
前記反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシシランおよびγ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
また、前記(A)ビニル系重合体の製造法として特開2001−40037号記載の合成法を適用し、メタロセン化合物及び反応性ケイ素基含有チオール化合物の存在下に、(a−1)を10質量%以上100質量%以下((a−1)と(a−2)との合計を100質量%としたとき)含有し、必要に応じて(a−2)及び(a−3)を含有する1種以上の単量体を重合し、反応性ケイ素基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは反応性ケイ素基を有する基である)が末端に結合しているビニル系重合体を得ることが好適である。なお、ビニル系重合体の合成の際に、他の単量体単位や前述したような重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物を共重合させてもよい。
【0042】
前記重合触媒として使用されるメタロセン化合物は、下記式(1)で表される化合物が好適である。
【0043】
【化2】

【0044】
前記式(1)において、Mは、周期表4族、5族、14族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選択される金属である。具体的にはMは、チタン、ジルコニウム、クロム、ルテニウム、バナジウム、パラジウム、錫などが挙げられる。また、前記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基及び置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選択される少なくとも一種の基、若しくは、水素原子又は単結合のいずれかである。さらに、R及びRが共同して前記式(1)で表わされる化合物中の2個の5員環を結合していてもよい。また、前記式(1)において、k及びlは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Yは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0又は金属Mの価数−2の整数である。
【0045】
前記メタロセン化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエン−Ti−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Ti−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,5,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イルのようなチタノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−Zr−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Zr−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,5,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル)のようなジルコノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスペンタメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Ru−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Cr−クロライドなどを挙げることができる。これらのメタロセン化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0046】
また、前記メタロセン化合物と共に使用されるチオール化合物は、反応性シリル基を有するチオール化合物であり、通常この反応性シリル基含有チオール化合物は次の式HS−Rで表される化合物である。
【0047】
ここでRは反応性シリル基を有する基であり、反応性シリル基としては、前述した反応性シリル基を同様に用いることができ、特に、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基及びブロモシリル基よりなる群から選択された少なくとも1種の反応性シリル基が好ましい。Rは、具体的には、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノフェニルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−ジメチルモノメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノメチルジエトキシシラン、4−メルカプトブチル−トリメトキシシランおよび3−メルカプトブチル−トリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0048】
本発明の(A)ビニル系重合体の合成において、重合は無溶剤または各種溶剤中で行うことができる。溶剤の種類としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等、ポリオキシアルキレン重合体が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、溶剤として反応性ケイ素基含有ポリマーを用いることにより、後の脱気工程等を不要とすることができる。
【0049】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体の重量平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。重量平均分子量が50,000を超えると徐々に相溶性が悪化し、白濁していく傾向が見られ好ましくない。なお、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により測定することにより求められる。
【0050】
本発明で用いられる(A)ビニル系重合体のガラス転移温度は特に制限はないが、本発明の硬化性組成物を接着剤として用いる場合は、下記式(1)によって算出される計算ガラス転移温度Tgが10℃以上180℃以下であることが好ましく、30℃以上160℃以下がより好ましい。計算ガラス転移温度Tgをこの範囲内にすることにより、得られる硬化性組成物の粘度とPPSに対する接着力とのバランスをとることができる。
【0051】
【数2】

【0052】
前記式(1)において、Tgは(A)ビニル系重合体の計算ガラス転移温度、Wiは単量体i(但し、反応性ケイ素基含有化合物を除く)の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度を示す。
【0053】
本発明で用いられる(B)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体は、公知の反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体を広く使用することができ、特に限定されるものではないが、具体的には、特開昭63−112642号、特公昭45−36319号、特公昭46−12154号、特公昭49−32673号、特開昭50−156599号の各公報等に記載の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体が挙げられる。これらオキシアルキレン系重合体は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0054】
前記(B)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体における反応性ケイ素基としては、(A)ビニル系重合体の説明において例示した反応性ケイ素基を同様に用いることができる。
前記反応性ケイ素基の個数に特に制限はないが、硬化性や硬化後の物性等の点から、1分子中に平均して1〜6個含まれるのが好適である。分子中の反応性ケイ素基の位置は特に限定されず、(B)オキシアルキレン系重合体の分子鎖の末端あるいは内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。
【0055】
本発明の硬化性組成物において、(A)ビニル系重合体と(B)オキシアルキレン系重合体との配合割合は、特に限定はないが、(A):(B)=3:97〜97:3の範囲内にすることが好ましく、10:90〜90:10の範囲内にすることがより好ましい。成分(A)の配合割合が多すぎると粘度が高くなり作業性が悪化し、成分(A)の配合割合が少なすぎるとPPSに対する接着性が発揮されないので好ましくない。
【0056】
本発明の硬化性組成物において、成分(A)と成分(B)が相溶することが好適である。相溶することにより、単独系では得られない特徴を発揮することが出来る。例えば、作業性、接着性、耐熱性、耐候性等が顕著に向上する。相溶性の程度は、所定の性能が確保できれば白濁程度でも使用可能であるが、成分(A)と成分(B)が透明性を有する程度に相溶することにより、最も優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0057】
本発明で用いられる(C)硬化触媒は、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体を速やかに硬化させるため用いられる。
(C)硬化触媒としては、(A)ビニル系重合体又は(B)オキシアルキレン系重合体に対し硬化触媒の作用を示すものであれば、特に制限されないが、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられ、シラノール縮合触媒を用いることが好ましい。
(C)硬化触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカネート(ジオクチル錫ジバーサテート)、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価錫化合物、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジネオデカン酸錫(バーサチック酸錫)等の2価錫化合物等の有機錫化合物類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)等のビスマス塩と有機カルボン酸または有機アミンとの反応物等;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛等の有機鉛化合物;ナフテン酸鉄等の有機鉄化合物;有機バナジウム化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物あるいはそれらのカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物等が例示される。
【0058】
これらの硬化触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。これらの硬化触媒のうち、有機金属化合物類、または有機金属化合物類とアミン系化合物の併用系が硬化性の点から好ましい。硬化速度が大きい点からジブチル錫マレエート、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチル錫ジアセチルアセトナート等のジブチル錫系化合物が好ましいが昨今の環境問題からジオクチル錫化合物、さらには有機重金属化合物以外の有機金属化合物やアミン系化合物等の有機化合物がより好ましい。
硬化触媒の配合割合は求める硬化速度に応じて適宜設定すればよいが、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。
【0059】
本発明の硬化性組成物には本発明の目的を逸脱しない限り、必要に応じて充填剤、水分吸収剤、可塑剤、希釈剤、接着付与剤、粘着付与剤等の各種添加剤を併用することができる。
【0060】
前記充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、炭素繊維、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、ガラスバルーン、シラスバルーン、有機バルーン、アクリル重合体等の有機高分子粉体、有機繊維および無機繊維等の如き充填剤等が使用できる。これらの充填剤は高級脂肪酸や樹脂酸、シランカップリング剤で表面処理されたものや無処理のもの等を含め特に限定されるものではない。
これら充填剤は(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対し5〜500質量部の範囲で使用することが好適であり、より好ましくは5〜100質量部である。これら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0061】
前記水分吸収剤としては組成物の水分を吸収したり、水分と反応するものであれば特に限定されない。例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートに代表されるシリケート化合物類およびそのオリゴマー類、ビニルシラン類、酸化カルシウムなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
前記可塑剤としては、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソウンデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等の如きフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の如き脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等の如きグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルの如き脂肪族エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ベンジル等の如きエポキシ可塑剤類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリイソブテン、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素、塩素化パラフィン類等の可塑剤が単独または2種類以上の混合物の形で任意に使用できる。とくに、耐候性の点から重合体主鎖内に不飽和結合を含有しないポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル系可塑剤、ポリイソブテン、パラフィン等が好ましい。
可塑剤は、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対して1〜300質量部添加することが好ましく、さらには5〜200質量部添加することが好ましい。
【0063】
作業性の改善、粘度の低下等のために溶剤や希釈剤を配合してもよい。希釈剤の例としてはノルマルパラフィン、イソパラフィン、溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール等の脂肪族、ベンジルアルコール等の芳香族系アルコール系溶剤等があげられる。
溶剤や希釈剤は、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対して0〜100質量部配合することが好ましく、1〜100質量部配合することがより好ましく、5〜50質量部配合することがさらに好ましい。また、本発明の硬化性組成物を接着剤として用いる場合、溶剤を含まない無溶剤とすることもできる。
【0064】
接着性付与剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1,3−ジアミノイソプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等の塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のハイドロシラン類等が具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
接着性付与剤は、あまりに多く添加すると、硬化物のモジュラスが高くなり、少なすぎると接着性が低下することから、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対して0.1〜15質量部添加することが好ましく、さらには0.5〜10質量部添加することが好ましい。
【0065】
粘着付与剤は被着体へのぬれ性の改善や、はく離強度を高める上で好ましい。石油樹脂系、ロジン・ロジンエステル系、アクリル樹脂系、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂やそのフェノール樹脂共重合体、フェノール・フェノールノボラック樹脂系等の粘着付与樹脂が例示されうるが、これらに限定されるものではない。
粘着付与剤は、(A)ビニル系重合体及び(B)オキシアルキレン系重合体の合計100質量部に対して1〜100質量部添加することが好ましく、5〜50質量部添加することがより好ましい。
【0066】
その他の添加剤としては、例えば、水添ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム等のタレ防止剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。さらに、必要に応じてエポキシ樹脂等の他の樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等の硬化剤、物性調整剤、保存安定性改良剤、滑剤、発泡剤等の添加剤も適宜添加することが可能である。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明の硬化性組成物は大気中の湿気により常温で硬化することが可能であり、常温湿気硬化型硬化性組成物として好適に用いられるが、必要に応じて、適宜、加熱により硬化を促進させてもよい。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、コーティング剤、粘着材、ポッティング材、塗料、パテ材及びプライマー等として好適に用いることができる。本発明の硬化性組成物は、透明性、作業性、接着性、貯蔵安定性、立ち上がり接着性及び速硬化性に優れ、特にPPSに対する接着性に優れている為、接着剤として特に好適に用いることができるが、その他各種建築物用、自動車用、土木用、電気・電子分野用等に使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0070】
(製造例1)
ポリオキシプロピレンジオールにナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、さらに生成した金属塩を水により抽出除去して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレンに対し、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液を添加し、トリメトキシシランを反応させ、PPG(ポリプロピレングリコール)換算の重量平均分子量が約25000、1分子当たり1.5個の末端トリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体B1を得た。
【0071】
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により次の条件により測定した。
<GPC測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
サンプル濃度:1.5mg/cmとなるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量: 0.85ml/分
カラム温度:40℃
【0072】
(製造例2)
合成例1で用いたポリオキシプロピレンジオールより分子量が小さいポリオキシプロピレンジオールにナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、さらに生成した金属塩を水により抽出除去して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレンに対し、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液を添加し、トリメトキシシランを反応させ、PPG換算の重量平均分子量が約15000、1分子当たり1.5個の末端トリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体B2を得た。
【0073】
(製造例3)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却器を備えたフラスコに、表1に示す組成にて、シクロヘキシルメタクリレート90質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン8.5質量部および金属触媒としてチタノセンジクロライド0.005質量部、更に有機溶媒として酢酸エチル50質量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内容物を85℃に加熱した。
次いで、充分に窒素ガス置換したγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン11質量部を攪拌中のフラスコ内に一気に添加した後、攪拌中のフラスコ内容物の温度が85℃に維持できるように、加熱および冷却を16時間行った。上記のようにして16時間反応後、反応物の温度を室温に戻し、重合を終了し、反応物A1(反応性ケイ素基含有ビニル系重合体A1)を得た。
【0074】
得られたビニル系重合体A1の酢酸エチル溶液のモノマー残存率についてガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が100%の反応物が得られた。得られたビニル系重合体A1の酢酸エチル溶液について105℃加熱により固形分を求めたところ75.3%であった。また、得られた重合体についてゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、重量平均分子量(Mw)=4,000、数平均分子量(Mn)=2,300、分散指数=1.7であり、25℃における粘度は13.3(Pa・s)、1分子中のシリル基数は平均1.8個であった。得られたビニル系重合体A1の物性を表2に示した。なお、計算ガラス転移温度は前記式(1)より算出した。また、ビニル系重合体A1中の(a−1)/[(a−1)+(a−2)]の質量比をそれぞれ表2に示した。
【0075】
また、側鎖および末端のシリル基数の測定・計算方法は次の通りである。
側鎖シリル基数={(重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物の質量部÷重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物の分子量)}÷{(前記(a−1)、(a−2)、(a−3)、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基とを有する化合物、および反応性ケイ素基含有チオール化合物の合計質量部)÷ビニル系重合体の数平均分子量)}
末端シリル基数=連鎖移動剤の数
【0076】
(製造例4〜製造例10)
表1に示す組成および配合比に変更した以外は製造例3と同様の方法で合成し、ビニル系重合体A2〜A8を得た。得られたビニル系重合体A2〜A8について、製造例3と同様の方法にて物性を測定し、測定結果を表2に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0079】
【表2】

【0080】
(製造例11〜製造例16)
表3に示す組成および配合比に変更した以外は製造例3と同様の方法で合成し、ビニル系重合体A9〜A14を得た。得られたビニル系重合体A9〜A14について、製造例3と同様の方法にて物性を測定し、測定結果を表4に示した。
【0081】
【表3】

【0082】
表3において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0083】
【表4】

【0084】
(製造例17〜製造例21)
表5に示す組成および配合比に変更した以外は製造例3と同様の方法で合成し、ビニル系重合体A15〜A19を得た。得られたビニル系重合体A15〜A19について、製造例3と同様の方法にて物性を測定し、測定結果を表6に示した。
【0085】
【表5】

【0086】
表5において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0087】
【表6】

【0088】
(比較製造例1〜8)
表7に示した如く、配合物質の配合量を変更した以外は製造例3と同様に合成し、ビニル系重合体X1〜X8を得た。得られたビニル系重合体X1〜X8について製造例3と同様の測定を行った。結果を表8に示した。
【0089】
【表7】

【0090】
表7において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0091】
【表8】

【0092】
(比較製造例9)
表9に示した如く、110℃に加熱したトルエン43g中に、ブチルアクリレート6.0g、メチルメタクリレート66g、ステアリルメタクリレート13g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン5.4g、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン7.0gおよびトルエン23g混合物、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行った。
上記のようにして2時間反応後、反応物の温度を室温に戻し、重合を終了し、ビニル系重合体X9を得た。得られたビニル系重合体X9は、1分子中に1.75個のシリル基数を有し、(メタ)アクリル酸メチル単量体単位と、アルキル基の炭素数が4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、アルキル基の炭素数が18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、を含む共重合体である。
得られたビニル系重合体X9について製造例3と同様の測定を行い結果を表10に示した。
【0093】
【表9】

【0094】
表9において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0095】
【表10】

【0096】
(合成例1)
フラスコ内に製造例1で製造した重合体B1、製造例2で製造した重合体B2、製造例3で製造したビニル系重合体A1を表11に示した如く配合した後、加熱減圧装置を用い120℃まで徐々に加熱しながら酢酸エチル及び残存モノマーを除去し、ビニル系重合体(A)とオキシアルキレン系重合体(B)との硬化性樹脂D1を得た。
【0097】
前記得られた硬化性樹脂D1に対し、下記方法で相溶性の測定を行った。結果を表11に示した。
硬化性樹脂をビンに入れ濁りの確認を目視にて行った。その評価基準は、○:透明、△:室温で白濁しているが、50℃では透明、×:常温及び50℃において白濁もしくは二層分離、とした。
【0098】
(合成例2〜10)
表11に示した如く、配合物質の配合量を変更した以外は合成例1と同様に合成し、硬化性樹脂D2〜D10を得た。得られた硬化性樹脂D2〜D10に対して合成例1と同様に相溶性の測定を行った。結果を表11に示した。
【0099】
【表11】

【0100】
表11において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0101】
(合成例11〜19)
表12に示した如く、配合物質の配合量を変更した以外は合成例1と同様に合成し、硬化性樹脂D11〜D19を得た。得られた硬化性樹脂D11〜D19に対して合成例1と同様に相溶性の測定を行った。結果を表12に示した。
【0102】
【表12】

【0103】
表12において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0104】
(比較合成例1〜9)
表13に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、合成例1と同様にして実験を行い、硬化性樹脂Y1〜Y9を得た。得られた硬化性樹脂Y1〜Y9に対して合成例1と同様に相溶性の測定を行った。結果を表13に示した。
【0105】
【表13】

【0106】
表13において、各配合物質の配合量はgで示される。
【0107】
表11〜12に示した如く、合成例1〜19で得た本発明の(A)成分及び(B)成分を含む硬化性樹脂は透明であり、本発明の(A)成分と本発明の(B)成分とは高い相溶性を示した。
一方、表13に示した如く、環状構造を有するビニル系単量体の含有量が本発明の規定未満であるビニル系重合体X1〜X3を用いた比較合成例1〜3、メチルメタクリレートのみからなるビニル系重合体X6を用いた比較合成例6、2−エチルヘキシルメタクリレートのみからなるビニル系重合体X7を用いた比較合成例7では、得られた硬化性樹脂は白濁ないし二相分離し、(A)オキシアルキレン系重合体との相溶性が悪かった。
【0108】
(実施例1)
表14に示した如く、合成例1で得た(A)反応性ケイ素基含有ビニル系重合体と(B)反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を含む硬化性樹脂D1を100質量部、テトラエトキシシランを1質量部、希釈剤としてノルマルパラフィンN−11を1質量部、各アミノシラン化合物を3質量部及び(C)硬化触媒としてジオクチル錫ジバーサテートを1質量部ずつ仕込んだ後、23℃で攪拌・脱泡し本発明の硬化性組成物を調製した。
【0109】
得られた硬化性組成物に対して下記測定を行った。結果を表15に示した。
1)硬化性試験
JIS A 1439 5.19に基づき、硬化性組成物をガラス板に3mm厚で塗布し、指触乾燥時間(TFT)を5分間隔で測定した。
【0110】
2)深部硬化性試験
23℃50%相対湿度にて50ccのPP製プリンカップに、上記得られた硬化性組成物をそれぞれ山盛りになるように配合した後、パテナイフで表面を掻き取り、試験体とした。この試験体を24時間後に表層の硬化部を皮を剥ぐようにめくり取り未硬化の付着部分をよくふき取ったものの厚みをノギスで5点測定し、その平均値を深部硬化性(mm)とした。
【0111】
3)硬度
ショアA硬度を測定した。
【0112】
4)接着性試験
JIS K 6850 剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法に準拠し、表15に示した各被着材について測定した。
【0113】
5)貯蔵安定性試験
硬化性組成物を、23℃50%RH環境下で24時間放置した後、B型粘度計(東機産業(株)製、BSローター7番 10rpm)を使用し測定した結果を初期とし、その後、50℃乾燥機中に3週間放置した後、23℃50%RH環境下で24時間放置し、液温が23℃になるように調整し、同様に粘度測定を行った結果を貯蔵後とした。貯蔵後/初期の値が1.3未満を○、1.3以上を×と評価した。
【0114】
【表14】

【0115】
表14において、各配合物質の配合量はgで示される。各配合物質の詳細は下記の通りである。
*1:コルコート(株)製、商品名:エチルシリケート28
*2:ジャパンエナジー製、商品名:N−11(ノルマルパラフィン)
*3:N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
*4:γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
*5:日東化成株式会社製、商品名:U−830(ジオクチル錫ジバーサテート)
【0116】
【表15】

【0117】
(実施例2〜10)
表14に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして実験を行い、本発明の硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物に対して実施例1と同様に測定を行った。結果を表15に示した。
【0118】
(比較例1〜4)
表16に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして実験を行い、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物に対して実施例1と同様に測定を行った。結果を表17に示した。
【0119】
【表16】

【0120】
表16において、各配合物質の配合量はgで示される。各配合物質の詳細は表14と同じである。
【0121】
【表17】

【0122】
(比較例5)
製造例3で製造されたビニル系重合体A1を、加熱減圧装置を用い120℃まで徐々に加熱しながら酢酸エチル及び残存モノマーを除去し、ビニル系重合体(A)単体のみを取り出そうとしたが、成分が樹脂化しており接着剤組成物として試験することが出来なかった。
【0123】
表15及び17に示した如く、実施例1〜10では良好な指触乾燥時間、接着性を示したのに対し、比較例4では指触乾燥時間に問題があった。また、比較例1〜4は実施例1〜10に比べて難接着部材であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)に対する密着性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性ケイ素基を含有するビニル系重合体、
(B)反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び
(C)硬化触媒
を含有する硬化性組成物であって、
前記ビニル系重合体(A)が、環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を含有する環状構造含有ビニル系重合体、及び環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)とを含有する環状構造含有ビニル系重合体からなる群から選択される1種以上であり、
前記ビニル系重合体(A)中の前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)の含有量が、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)の合計量に対して10質量%以上であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)ビニル系重合体は、下記式(1)によって算出される計算ガラス転移温度Tgが10℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【数1】


(前記式(1)において、Tgは前記(A)ビニル系重合体の計算ガラス転移温度、Wiは単量体i(但し、反応性ケイ素基含有化合物を除く)の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度を示す)。
【請求項3】
前記(A)ビニル系重合体の重量平均分子量が、1,000以上50,000以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)ビニル系重合体が、前記反応性ケイ素基を分子末端に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)が、スチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレートおよびペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)が、炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記ビニル系重合体(A)が、メタロセン化合物及び反応性ケイ素基含有チオール化合物の存在下に、前記環状構造含有ビニル系単量体単位(a−1)を10質量%以上100質量%以下含有する1種以上の単量体を重合し、反応性ケイ素基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは反応性ケイ素基を有する基である)が末端に結合しているビニル系重合体を得る工程を含む方法により製造されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の硬化性組成物を用いることを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−107103(P2012−107103A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256174(P2010−256174)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】