説明

硬貨処理装置、硬貨処理方法および硬貨処理システム

【課題】第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨が同じ価値を持つものとして流通している場合でも、円滑な取引を行うことができる硬貨処理装置、硬貨処理方法および硬貨処理システムを提供する。
【解決手段】第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置には、硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する識別部48が設けられている。識別部48は、検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨の特徴量および第2の硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには識別された硬貨を第1の硬貨とみなすようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の国の硬貨を処理する硬貨処理装置、硬貨処理方法および硬貨処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬貨の入金処理や出金処理等の様々な処理を行う硬貨処理装置として、様々なタイプのものが知られている。具体的には、硬貨の処理を行う硬貨処理装置としては、例えば特許文献1および2等に開示されるものが知られている。特許文献1には、レジスタとともに設置され、買い物客から受け取った硬貨を入金するとともに、釣銭としての硬貨を出金するような硬貨入出金機が開示されており、入金された硬貨は機体内で金種別に分けられて収納されるようになっている。特許文献1に開示される硬貨入出金機では、当該硬貨入出金機が用いられるべき国の硬貨以外の硬貨、すなわち外国の硬貨が入金されると、受け付けられない硬貨としてリジェクトされるようになっている。一方、特許文献2に開示される自動取引装置では、外国の硬貨が入金されると、外国の硬貨として受け付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−75749号公報
【特許文献2】特開2011−59835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アメリカやカナダにおいては、他国の硬貨が自国の硬貨と同じ価値を持つものとして流通している場合がある。具体的には、アメリカドルの1セント硬貨とカナダドルの1セント硬貨は大きさや色が似ており、また、両者の価値も大きく異ならないため、アメリカ国内でカナダドルの1セント硬貨がアメリカドルの1セント硬貨と等価のものとして受け取られる場合がある。同様に、カナダ国内でアメリカドルの1セント硬貨がカナダドルの1セント硬貨と等価のものとして受け取られる場合がある。また、10セント硬貨や25セント硬貨についても、アメリカドルとカナダドルとで大きさや色が似ており、また、両者の価値も大きく異ならないため、他国の硬貨が自国の硬貨と同じ価値を持つものとして流通している場合がある。このような場合、硬貨処理装置において、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別することは、円滑な取引を妨げることがある。
【0005】
より詳細に説明すると、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混在し、両者が同じ価値を持つものとして流通しているときに、特許文献1に示すような、自国通貨のみに対応した硬貨入出金機を用いると、他国の硬貨を受け付けることができずにリジェクトしてしまうので、円滑な取引を妨げることになってしまう。一方、特許文献2に示すように、2つの国の通貨に対応した硬貨処理装置も存在するが、このような硬貨処理装置では、複数の国の通貨を区別してレート換算する等、2つの国の通貨を区別して金額を算出するため、2つの国の硬貨を同じ価値を持つ硬貨として扱うようにはなっていない。一般的に、特許文献2に開示されるような複数国の通貨に対応した装置では、通貨間の換算レートが設けられており、この換算レートの値は為替レートに応じて変更されるようになっている。このため、実際の取引において自国通貨と同じ価値を持つものとして他国通貨を支払った人に、硬貨処理装置によるレート換算の結果、不足額を請求することになると、円滑な取引を妨げることになってしまう。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨が同じ価値を持つものとして流通している場合でも、円滑な取引を行うことができる硬貨処理装置、硬貨処理方法および硬貨処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する識別部であって、検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨の特徴量および第2の硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには識別された硬貨を第1の硬貨とみなす識別部を備えたことを特徴とする硬貨処理装置である。
【0008】
第2の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部と、
前記識別部による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う制御部であって、前記識別部により識別された第1の硬貨および第2の硬貨を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の計数を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置である。
【0009】
第3の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部と、
第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値が等価値となるよう設定を行う設定部と、
前記識別部による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う制御部であって、前記設定部による設定内容に基づいて、前記識別部により識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出する制御部と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置である。
【0010】
第1〜第3の発明においては、第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値を等価値として扱う第1の処理モードと、第1の硬貨と第2の硬貨とを区別して扱う第2の処理モードとからなる2つの処理モードのうちいずれか一方の処理モードで硬貨の処理が行われるよう、2つの処理モードを切り換え可能なモード切換部を更に備えていてもよい。
【0011】
第2および第3の発明においては、硬貨処理装置は、硬貨を収納する収納部を更に備え、
前記制御部は、前記硬貨処理装置に硬貨を収納する際に、前記識別部により第1の硬貨と識別された硬貨、および前記識別部により第2の硬貨と識別された硬貨を混合状態で同一の収納部に収納するよう制御を行うようになっていてもよい。
【0012】
この場合、前記硬貨処理装置から第1の硬貨を投出する際に、前記収納部において混合状態で収納されている第1の硬貨および第2の硬貨を第1の硬貨として投出してもよい。
【0013】
第2および第3の発明においては、硬貨処理装置は、金種別に硬貨を収納する複数の収納部を更に備え、
前記制御部は、前記硬貨処理装置に硬貨を収納する際に、前記識別部により第1の硬貨と識別された硬貨と、前記識別部により第2の硬貨と識別された硬貨とを異なる収納部に収納するよう制御を行うようになっていてもよい。
【0014】
この場合、前記硬貨処理装置から第1の硬貨を投出する際に、前記収納部に収納されている第2の硬貨を投出してもよい。
【0015】
第4の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
硬貨を収納する収納部を備え、
前記硬貨処理装置に硬貨を収納する際に、第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値が等価値となるよう硬貨が受け入れられるようになっており、
前記硬貨処理装置から第1の硬貨を投出する際に、第2の硬貨を少なくとも部分的に収納している前記収納部内の硬貨を第1の硬貨として投出することを特徴とする硬貨処理装置である。
【0016】
第5の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
第1の硬貨および第2の硬貨を収納する少なくとも1つの収納部を備え、
前記硬貨処理装置から第1の硬貨を投出する際に、第2の硬貨を収納している前記収納部内の硬貨を第1の硬貨として投出することを特徴とする硬貨処理装置である。
【0017】
第6の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する工程と、
検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨の特徴量および第2の硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには識別された硬貨を第1の硬貨とみなす工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法である。
【0018】
第7の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う工程と、
識別された第1の硬貨および第2の硬貨を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の処理を行う工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法である。
【0019】
第8の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値が等価値となるよう設定を行う工程と、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う工程と、
設定された内容に基づいて、識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出する工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法である。
【0020】
第9の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
硬貨処理装置が第2の硬貨を第1の硬貨と等価値の硬貨として処理する工程を備えたことを特徴とする硬貨処理方法である。
【0021】
第10の発明は、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置と、
前記硬貨処理装置とは別に設けられ、当該硬貨処理装置に通信接続された上位装置と、
を備えた硬貨処理システムであって、
前記硬貨処理装置は、第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部を有し、前記識別部により得られる第1の硬貨および第2の硬貨の各識別結果を区別して前記上位装置に送るようになっており、
前記上位装置は、第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値を等価値として処理することを特徴とする硬貨処理システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の硬貨処理装置、硬貨処理方法および硬貨処理システムによれば、第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨が同じ価値を持つものとして流通している場合でも、円滑な取引を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による硬貨入出金機の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す硬貨入出金機の内部構成を示す平面図である。
【図3】図1および図2に示す硬貨入出金機の機能ブロック図である。
【図4】図1等に示す硬貨入出金機の識別部により検出される硬貨の特徴量を示す説明図であり、より詳細には、各種硬貨に対する磁気センサの出力信号波形を示すグラフである。
【図5】本発明の硬貨入出金機において硬貨の入金処理を行う際の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の硬貨入出金機において硬貨の出金処理を行う際の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態による硬貨入出金機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図4は、本実施の形態に係る硬貨入出金機(硬貨処理装置)を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による硬貨入出金機の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す硬貨入出金機の内部構成を示す平面図である。また、図3は、図1および図2に示す硬貨入出金機の機能ブロック図であり、図4は、図1等に示す硬貨入出金機の識別部により検出される硬貨の特徴量を示す説明図であり、より詳細には、各種硬貨に対する磁気センサの出力信号波形を示すグラフである。図1等に示すような硬貨入出金機10は、例えば、店舗のレジにおいてPOSレジスタと通信して硬貨の入金や出金を行うようになっている。
【0025】
図1に示すように、硬貨入出金機10は、前面を開口した筐体12と、この筐体12の前面から引出可能な本体ユニット14とを備えている。筐体12から突出する本体ユニット14の前部上面には、硬貨を投入するための硬貨投入口16が形成されている。また、筐体12から突出する本体ユニット14の前部上面には、操作用や設定用のボタンが設けられた操作部18、および操作や設定等に関する各種表示をする液晶表示器や金種別の硬貨収納量を表示するLED表示器等の表示部20がそれぞれ設けられている。また、本体ユニット14の前面の右側下部に出金トレイ22が設けられており、この出金トレイ22の上面に、機内から払い出される硬貨が硬貨放出口24を介して放出される硬貨出金口26が形成されている。
【0026】
図2に示すように、硬貨入出金機10の本体ユニット14には、硬貨投入口16に投入された硬貨を一枚ずつ繰り出すための繰出機構30が設けられている。この繰出機構30には、硬貨投入口16の下方に設けられ当該硬貨投入口16に投入された硬貨を受け入れる受入部32と、この受入部32の底面を構成する搬送ベルト34とが設けられている。搬送ベルト34は無端状の平ベルトからなり、図2における右側から左側に向けた硬貨繰出方向に硬貨を搬送するようになっている。搬送ベルト34上での通路幅は、処理されるべき硬貨のうちの最大径硬貨よりも大きく最小径硬貨の二枚分よりも小さい寸法に規制されている。また、搬送ベルト34の搬送方向における受入部32の下流側の箇所には逆転ローラ36が設けられている。この逆転ローラ36は搬送ベルト34とわずかな隙間を隔ててこの搬送ベルト34の上方に設けられており、逆転ローラ36と搬送ベルト34との間の隙間の大きさは、硬貨一枚分の通過を許容するような大きさとなっている。この逆転ローラ36は、搬送ベルト34の硬貨繰出方向に対して逆方向に回転し、硬貨繰出方向(図2における左方向)へ繰り出されようとする搬送ベルト34上の硬貨を1層1列状態に整列させるようになっている。
【0027】
また、硬貨入出金機10の本体ユニット14には、搬送ベルト34から受け渡された硬貨を一枚ずつ搬送する搬送機構40が設けられている。この搬送機構40は、複数のプーリ42に張架された無端状の搬送ベルト44からなり、この搬送ベルト44には、硬貨に係合してこの係合された硬貨を搬送する突起部(図示せず)が等間隔で複数設けられている。搬送ベルト34の硬貨繰出方向における逆転ローラ36の下流側にはガイド部材38が設けられており、搬送ベルト34により繰り出された硬貨はガイド部材38により搬送機構40に受け渡されるようになっている。搬送ベルト34から搬送機構40に受け渡された硬貨は、識別通路46、排除通路50、中間通路54、分類通路56を順に通るよう、搬送ベルト44により搬送される。識別通路46には識別部48が設けられており、この識別部48により硬貨の識別が行われるようになっている。識別部48の構成の詳細については後述する。また、排除通路50にはリジェクト部52が設けられており、識別部48での識別の結果、リジェクト硬貨と識別されたリジェクト硬貨がこのリジェクト部52により排除されるようになっている。リジェクト部52により排除された硬貨は、後述する搬送ベルト72により搬送され、硬貨放出口24を介して硬貨出金口26に返却されるようになっている。
【0028】
また、硬貨入出金機10の本体ユニット14には、硬貨を金種別に収納するとともに収納された硬貨を繰り出す収納機構60が複数設けられている。そして、分類通路56には、搬送ベルト44により搬送される硬貨を金種別に分類して各収納機構60に収納させる複数の分類部58が設けられている。図2に示すように、各分類部58は各収納機構60に対応して設けられている。各分類部58には、分類通路56から硬貨が落下する分類孔58aが形成されており、搬送方向最下流側の分類孔58aを除く各分類孔58aには分類ゲート58bが設けられている。各分類ゲート58bは対応する分類孔58aを選択的に開くようになっており、分類ゲート58bが分類孔58aを開いたときに、搬送ベルト44により搬送される硬貨がこの分類孔58aから落下して収納機構60に収納されるようになっている。分類通路56において各分類部58の搬送方向上流側には、分類ゲート58bの開閉タイミングを取ったり各収納機構60への硬貨の分類を確認したりするために、搬送ベルト44により搬送される硬貨を検出する硬貨検出センサ58cがそれぞれ設けられている。
【0029】
また、硬貨入出金機10の本体ユニット14には、各収納機構60から繰り出された硬貨を搬送する搬送機構70が設けられている。この搬送機構70は搬送ベルト72からなり、この搬送ベルト72により各収納機構60から繰り出された硬貨が一枚ずつ図2における下方向に搬送されて硬貨放出口24を介して硬貨出金口26に送られるようになっている。
【0030】
また、硬貨入出金機10の筐体12内には、当該硬貨入出金機10の各構成要素の制御を行う制御部80が設けられている。制御部80の構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、制御部80は、繰出機構30、搬送機構40、識別部48、リジェクト部52、各分類部58、各収納機構60、搬送機構70、操作部18、表示部20等にそれぞれ接続されている。そして、識別部48による硬貨の識別結果が制御部80に送られるようになっており、また、制御部80から繰出機構30、搬送機構40、リジェクト部52、各分類部58、各収納機構60、搬送機構70にそれぞれ指令を送ることによりこれらの構成要素の制御を行うようになっている。また、操作部18によって操作者により入力された情報は制御部80に送られるようになっており、また、制御部80から表示部20に情報を送ることによりこの表示部20で様々な表示を行わせるようになっている。
【0031】
また、図3に示すように、制御部80には記憶部82が接続されており、この記憶部82は硬貨入出金機10の様々な設定情報や、各収納機構60に収納された硬貨の金種毎の枚数等の収納情報が記憶されるようになっている。また、制御部80にはインターフェース84が接続されており、このインターフェース84を介して制御部80はPOS端末等の上位装置85と情報の送受信を行うことができるようになっている。なお、本実施の形態では、硬貨入出金機10および上位装置85により硬貨処理システムが構成されている。
【0032】
また、本実施の形態の硬貨入出金機10においては、制御部80は、第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)の価値および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)の価値を等価値として扱う第1の処理モードと、第1の硬貨と第2の硬貨とを区別して扱う第2の処理モードとからなる2つの処理モードのうちいずれか一方の処理モードを実行するようになっている。より具体的には、制御部80が第1の処理モードを実行する場合には、硬貨入出金機10で硬貨の処理が行われる際に、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値が等価値としてみなされるようになる。一方、制御部80が第2の処理モードを実行する場合には、硬貨入出金機10で硬貨の処理が行われる際に、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値は互いに異なるものとしてみなされるようになる。
【0033】
また、図3に示すように、制御部80にはモード切換部86が接続されている。モード切換部86は、制御部80において実行される処理モードを、第1の処理モードおよび第2の処理モードの間で切り換えるようになっている。より詳細には、操作者が操作部18により制御部80に対して第1の処理モードおよび第2の処理モードのうちどちらの処理モードで硬貨の処理を行うかという情報を入力すると、モード切換部86は、操作者によって操作部18により入力された情報に基づいて、制御部80において第1の処理モードおよび第2の処理モードのうちどちらの処理モードを実行するかについて処理モードの切り換えを行うようになる。
【0034】
次に、本実施の形態の硬貨入出金機10における識別部48の詳細について説明する。本実施の形態の識別部48は、例えば磁気センサや画像センサ、径センサ等から構成されており、硬貨の識別を行った際に識別された硬貨の特徴量を検知するようになっている。例えば、識別部48が磁気センサである場合には、所定周波数の正弦波を一次コイルに印加し、硬貨を通過させると、硬貨の種類の応じた出力を二次コイルから得ることができる。二次コイルの出力を整流して平滑化し直流信号に変換すると、図4に示すように時間ごとの出力波形を得ることができる。出力波形の高さ(出力)や長さ(幅)等がそれぞれの硬貨の特徴量となり、硬貨が識別される。識別部48が画像センサの場合は、各金種別に用意されたテンプレート画像と、硬貨の画像との類似路が特徴量となる。
【0035】
識別部48が磁気センサである場合には、図4に示すように、識別部48が例えば1セント硬貨を識別したときに、アメリカドルの1セント硬貨を識別部48が識別したときに検知される硬貨の特徴量(図4において(a)で示されるグラフ参照)と、カナダドルの1セント硬貨を識別部48が識別したときに検知される硬貨の特徴量(図4において(b)で示されるグラフ参照)とは互いに異なるものとなっている。
【0036】
そして、制御部80において第1の処理モードが実行される場合には、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの1セント硬貨の特徴量およびカナダドルの1セント硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには、識別された硬貨をアメリカドルの1セント硬貨とみなすようになっている。具体的には、図4において、所定の時間幅Mの範囲内で出力が(A)(B)のどちらかの範囲に含まれている場合には、識別部80により識別された硬貨をアメリカドルの1セント硬貨とみなす。このようにして、制御部80において第1の処理モードが実行される場合には、アメリカドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、当然のことながら識別された硬貨は当該識別部48においてアメリカドルの1セント硬貨とみなされるが、カナダドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際にも、識別された硬貨は当該識別部48においてアメリカドルの1セント硬貨とみなされるようになる。そして、識別部48から制御部80に送られる硬貨の識別結果は、どちらの場合でもアメリカドルの1セント硬貨とみなされるようになる。なお、アメリカドルおよびカナダドルにおける他の金種の硬貨についても同様である。
【0037】
一方、制御部80において第2の処理モードが実行される場合には、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの1セント硬貨の特徴量およびカナダドルの1セント硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときでも、識別された硬貨を全てアメリカドルの1セント硬貨とみなすようにはならない。具体的には、図4において、所定の時間幅Mの範囲内で出力が(A)の範囲に含まれている場合には、識別部80により識別された硬貨をアメリカドルの1セント硬貨とみなされ、一方、所定の時間幅Mの範囲内で出力が(B)の範囲に含まれている場合には、識別部80により識別された硬貨をカナダドルの1セント硬貨とみなされるようになる。このようにして、アメリカドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はアメリカドルの1セント硬貨とみなされるが、カナダドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はカナダドルの1セント硬貨とみなされるようになる。なお、アメリカドルおよびカナダドルにおける他の金種の硬貨についても同様である。
【0038】
次に、本実施の形態の硬貨入出金機10の動作について図5および図6に示すフローチャートを用いて説明する。図5は、硬貨入出金機10において硬貨の入金処理を行う際の動作を示すフローチャートであり、図6は、硬貨入出金機10において硬貨の出金処理を行う際の動作を示すフローチャートである。なお、以下に示す硬貨入出金機10の動作は、制御部80が硬貨入出金機10の各構成要素の制御を行うことにより行われるようになっている。
【0039】
まず、硬貨入出金機10における硬貨の入金処理を行う際の動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0040】
硬貨入出金機10において、第1の処理モードおよび第2の処理モードのうちどちらの処理モードで硬貨の処理が行われるかが制御部80において予め設定されている。そして、操作者が制御部80において行われる処理モードを切り換えたい場合には、操作部18により制御部80に対して処理モードを切り換える旨の情報を入力すると、モード切換部86は制御部80において行われる処理モードを切り換えるようになる。
【0041】
硬貨の入金処理を行うにあたり、操作者はまず硬貨投入口16により硬貨を本体ユニット14内に投入する。そして、操作者が操作部18により入金処理開始の指令を制御部80に与えると、投入された硬貨は繰出機構30により1枚ずつ繰り出され、搬送機構40により搬送される(STEP1)。そして、搬送機構40により搬送される硬貨は識別部48により識別され、当該硬貨の特徴量が検出される(STEP2)。
【0042】
ここで、制御部80が第1の処理モードを実行している場合には(STEP3の「YES」)、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値が等価値として扱われるようになる(STEP4)。より詳細には、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの1セント硬貨の特徴量およびカナダドルの1セント硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには、識別された硬貨をアメリカドルの1セント硬貨とみなすようになる。このことにより、アメリカドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、当然のことながら識別された硬貨は当該識別部48においてアメリカドルの1セント硬貨とみなされるが、カナダドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際にも、識別された硬貨は当該識別部48においてアメリカドルの1セント硬貨とみなされるようになる。そして、識別部48から制御部80に送られる硬貨の識別結果は、どちらの場合でもアメリカドルの1セント硬貨とみなされるようになる。なお、アメリカドルおよびカナダドルにおける他の金種の硬貨についても同様である。
【0043】
また、アメリカドルの1セント硬貨が識別部48により識別されたときおよびカナダドルの1セント硬貨が識別部48により識別されたときの両方の場合において、識別部48から制御部80に送られる硬貨の識別結果はアメリカドルの1セント硬貨のものとなっているため、アメリカドルの1セント硬貨およびカナダドルの1セント硬貨は同一の収納機構60に混合状態で収納されるようになる(STEP5)。このことは、アメリカドルおよびカナダドルにおける他の金種の硬貨についても同様である。
【0044】
一方、制御部80が第1の処理モードを実行していない場合には(STEP3の「NO」)、すなわち制御部80が第2の処理モードを実行している場合には、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが区別して扱われるようになる(STEP6)。すなわち、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの1セント硬貨の特徴量およびカナダドルの1セント硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときでも、識別された硬貨を全てアメリカドルの1セント硬貨とみなすようにはならない。このため、アメリカドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はアメリカドルの1セント硬貨とみなされるが、カナダドルの1セント硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はカナダドルの1セント硬貨とみなされるようになる。なお、アメリカドルおよびカナダドルにおける他の金種の硬貨についても同様である。また、制御部80において第2の処理モードが実行される場合には、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨は異なる収納機構60に収納されるようになる(STEP7)。
【0045】
このようにして、繰出機構30により硬貨が全て繰り出され、各収納機構60に硬貨が収納されるまで(STEP8の「NO」)、図5のSTEP1〜STEP7に示す動作が繰り返し行われる。そして、繰出機構30により硬貨が全て繰り出され、各収納機構60に硬貨が収納されると(STEP8の「YES」)、硬貨の入金処理が終了する。
【0046】
次に、硬貨入出金機10における硬貨の出金処理を行う際の動作について図6に示すフローチャートを用いて説明する。硬貨の出金処理を行うにあたり、制御部80が第1の処理モードを実行している場合には(STEP11の「YES」)、硬貨入出金機10からアメリカドルの硬貨を出金する際に、カナダドルの硬貨もアメリカドルの硬貨として出金するようになる。より詳細には、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が混合状態で同一の収納機構60に収納されている場合には(STEP12の「YES」)、制御部80は、混合状態で硬貨を収納している収納機構60内の硬貨をアメリカドルの硬貨として出金するようになる(STEP13)。より具体的に説明すると、硬貨入出金機10において硬貨の入金処理を行ったとき、制御部80が第1の処理モードを実行した場合には、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が混合状態で同一の収納機構60に収納されるようになり、硬貨の出金処理を行う際にも、混合状態で硬貨を収納している収納機構60内の硬貨(アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨の両方を含む)がアメリカドルの硬貨として出金されるようになる。
【0047】
これに対して、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が異なる収納機構60に収納されている場合には(STEP12の「NO」)、アメリカドルの硬貨を出金する際に、アメリカドルの硬貨を収納している収納機構60内の硬貨に加えて、カナダドルの硬貨を収納している収納機構60内の硬貨も出金される。このときに、カナダドルの硬貨を収納している収納機構60内の硬貨はアメリカドルの硬貨として出金されるようになる(STEP14)。より詳細には、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が異なる収納機構60に収納されている場合には、アメリカドルの硬貨を収納する収納機構60内の硬貨と、カナダドルの硬貨を収納する収納機構60内の硬貨とを、適当な比率で混合して出金するようになる。具体的には、予め設定された所定の比率や、各収納機構60における硬貨の収納量に比例した比率、あるいはランダムの比率で、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混合して出金される。この場合に、前述したように、カナダドルの硬貨はアメリカドルの硬貨として出金されるようになる。
【0048】
一方、制御部80が第1の処理モードを実行していない場合には(STEP11の「NO」)、すなわち制御部80が第2の処理モードを実行している場合には、制御部80は、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を区別して出金する(STEP15)。
【0049】
このようにして、所定の金額の硬貨が各収納機構60から繰り出されて硬貨出金口26に送られるまで(STEP16の「NO」)、図6のSTEP11〜STEP15に示す動作が繰り返し行われる。そして、所定の金額の硬貨が各収納機構60から繰り出されて硬貨出金口26に送られると(STEP16の「YES」)、硬貨の出金処理が終了する。
【0050】
以上のように本実施の形態の硬貨入出金機10によれば、硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する識別部48が設けられており、この識別部48は、検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)の特徴量および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには、識別された硬貨を第1の硬貨とみなすようになっている。このことにより、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混在し、両者が同じ価値を持つものとして流通しているときに、硬貨入出金機10においてアメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別することなく、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が全てアメリカドルの硬貨とみなされるようになるので、円滑な取引を行うことができるようになる。
【0051】
より詳細に説明すると、カナダドルの硬貨をアメリカドルの硬貨に置き換える際に、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨の価値がカナダドルの硬貨よりも高い場合には、価値が低い側の国の硬貨が、価値が高い側の国の硬貨に置き換えられることになる。この場合には、店舗側が差額分を損することになるが、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別することによる管理負担を考慮すると、過剰投資を抑制することができ、差額分の損を大きく上回る利益を店舗側は得ることができる。一方、同じ金種の硬貨についてカナダドルの硬貨の価値がアメリカドルの硬貨よりも高い場合には、価値が高い側の国の硬貨が、価値が低い側の国の硬貨に置き換えられることになる。この場合には、顧客側が差額分を損することになるが、カナダドルの硬貨を顧客が店舗に支払った際にその店舗で利用可能な商品券やポイントで還元する等のサービスと組み合わせることにより、顧客における差額分の損を相殺することができる。
【0052】
また、本実施の形態の硬貨入出金機10においては、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値を等価値として扱う第1の処理モードと、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを区別して扱う第2の処理モードとからなる2つの処理モードのうちいずれか一方の処理モードで硬貨の処理が行われるように、2つの処理モードを切り換え可能なモード切換部86が設けられている。このことにより、硬貨入出金機10において、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを同じ価値を持つものとして扱うか、あるいはアメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別するかを容易に設定することができるようになる。
【0053】
また、本実施の形態の硬貨入出金機10においては、硬貨入出金機10に硬貨を収納する際に、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値が等価値となるよう硬貨が受け入れられるようになっており、硬貨入出金機10からアメリカドルの硬貨を投出する際に、カナダドルの硬貨を少なくとも部分的に収納している収納機構60から硬貨が投出されるときに投出される硬貨が全てアメリカドルの硬貨とみなされるようになっている。
【0054】
なお、本実施の形態による硬貨入出金機10は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。例えば、硬貨の出金処理を行う際に、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が同じ収納機構60に収納されている場合には、POS端末等の上位装置85が硬貨入出金機10の制御部80にインターフェース84を介して指令を与えることにより、アメリカドルの硬貨を収納する収納機構60内の硬貨と、カナダドルの硬貨を収納する収納機構60内の硬貨とを、適当な比率で混合して出金させるようになっていてもよい。この場合にも、カナダドルの硬貨はアメリカドルの硬貨として出金されるようになる。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、識別部48が第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)をそれぞれ識別した際に識別された硬貨を全て第1の硬貨とみなすのではなく、代わりに、制御部80が、識別部48により識別された第1の硬貨および第2の硬貨を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の計数を行うようになっている。以下、本発明の第2の実施の形態について説明するが、上述した第1の実施の形態と同一の技術的事項については説明を省略する。
【0056】
第2の実施の形態の硬貨入出金機10では、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの硬貨の特徴量およびカナダドルの硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときでも、識別された硬貨を全てアメリカドルの硬貨とみなすようにはならない。すなわち、アメリカドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はアメリカドルの硬貨とみなされるが、カナダドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はカナダドルの硬貨とみなされるようになる。そして、識別部48による硬貨の識別結果が制御部80に送られるが、制御部80は、識別部48による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の計数を行うにあたり、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を、全てアメリカドルの硬貨とみなして硬貨の計数を行う。
【0057】
次に、第2の実施の形態の硬貨入出金機10における硬貨の入金処理を行う際の動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、第1の実施の形態の硬貨入出金機10における硬貨の入金処理を行う際の動作と同一の部分についてはその説明を省略する。また、第2の実施の形態の硬貨入出金機10における硬貨の出金処理を行う際の動作については第1の実施の形態と略同一であるため説明を省略する。
【0058】
硬貨の入金処理を行うにあたり、操作者はまず硬貨投入口16により硬貨を本体ユニット14内に投入する。そして、操作者が操作部18により入金処理開始の指令を制御部80に与えると、投入された硬貨は繰出機構30により1枚ずつ繰り出され、搬送機構40により搬送される(STEP1)。そして、搬送機構40により搬送される硬貨は識別部48により識別される(STEP2)。この際に、アメリカドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はアメリカドルの硬貨とみなされるが、カナダドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はカナダドルの硬貨とみなされる。
【0059】
そして、制御部80が第1の処理モードを実行している場合には(STEP3の「YES」)、制御部80は、識別部48による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の計数を行うにあたり、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を、全てアメリカドルの硬貨とみなして硬貨の計数を行う。このため、カナダドルの硬貨が識別部48により識別された際にも、制御部80においてこのカナダドルの硬貨はアメリカドルの硬貨とみなして硬貨の計数が行われるようになる。
【0060】
また、アメリカドルの硬貨が識別部48により識別されたときおよびカナダドルの硬貨が識別部48により識別されたときの両方の場合において、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨は同一の収納機構60に混合状態で収納されるようになる(STEP5)。なお、第2の実施の形態の硬貨入出金機10ではこのような態様に限定されることはなく、同じ金種の硬貨について、識別部48によりアメリカドルの硬貨と識別された硬貨と、識別部48によりカナダドルの硬貨と識別された硬貨とが異なる収納機構60に収納されるようになっていてもよい。
【0061】
一方、制御部80が第1の処理モードを実行していない場合には(STEP3の「NO」)、すなわち制御部80が第2の処理モードを実行している場合には、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが区別して扱われるようになる(STEP6)。すなわち、制御部80は、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を区別して硬貨の計数を行う。そして、制御部80において第2の処理モードが実行される場合には、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨は異なる収納機構60に収納されるようになる(STEP7)。
【0062】
このようにして、繰出機構30により硬貨が全て繰り出され、各収納機構60に硬貨が収納されるまで(STEP8の「NO」)、図5のSTEP1〜STEP7に示す動作が繰り返し行われる。そして、繰出機構30により硬貨が全て繰り出され、各収納機構60に硬貨が収納されると(STEP8の「YES」)、硬貨の入金処理が終了する。
【0063】
以上のように第2の実施の形態の硬貨入出金機10によれば、制御部80は、識別部48による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う際に、識別部48により識別された第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の計数を行うようになっている。このことにより、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混在し、両者が同じ価値を持つものとして流通しているときに、硬貨入出金機10においてアメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別することなく、制御部80において、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を、全てアメリカドルの硬貨とみなして硬貨の計数が行われるようになるので、円滑な取引を行うことができるようになる。
【0064】
なお、本実施の形態による硬貨入出金機10は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。例えば、硬貨入出金機10の制御部80ではなく、インターフェース84により制御部80と通信接続されたPOS端末等の上位装置85が、識別部48による識別結果に基づいて硬貨の計数を行うようになっていてもよい。また、この場合に、上位装置85は、識別部48により識別された第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の計数を行うようになっていてもよい。
【0065】
〔第3の実施の形態〕
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、第1の実施の形態や第2の実施の形態と異なり、第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)の価値および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)の価値が等価値となるよう設定を行う設定部88(後述)が設けられており、制御部80は、識別部48による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う際に、設定部88による設定内容に基づいて、識別部48により識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位(アメリカドル)で算出するようになっている。以下、本発明の第3の実施の形態について説明するが、上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態と同一の技術的事項については説明を省略する。
【0066】
図7に示すように、制御部80には設定部88が接続されており、設定部88は、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が等価値となるよう設定を行うようになっている。
【0067】
第3の実施の形態の硬貨入出金機10では、識別部48により硬貨の識別を行う際に、検知された硬貨の特徴量が、アメリカドルの硬貨の特徴量およびカナダドルの硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときでも、識別された硬貨を全てアメリカドルの硬貨とみなすようにはならない。すなわち、アメリカドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はアメリカドルの硬貨とみなされるが、カナダドルの硬貨が識別部48により識別された際には、識別された硬貨はカナダドルの硬貨とみなされるようになる。そして、識別部48による硬貨の識別結果が制御部80に送られるが、制御部80は、識別部48による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の計数を行うにあたり、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を区別して硬貨の計数を行う。
【0068】
そして、第3の実施の形態の硬貨入出金機10では、制御部80は、硬貨入出金機10に入金された硬貨の合計金額を算出する際には、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨の合計金額を、アメリカドルの通貨単位で算出する。この際に、アメリカドルの硬貨の価値およびカナダドルの硬貨の価値は等価のものとして扱われる。具体的に説明すると、硬貨入出金機10に、アメリカドルの1セント硬貨が100枚、カナダドルの1セント硬貨が50枚入金されたときに、制御部80において、入金された硬貨の計数を行う際には計数結果はアメリカドルの1セント硬貨が100枚、カナダドルの1セント硬貨が50枚となるが、合計金額はアメリカドルが150セントであると制御部80において判断されるようになる。
【0069】
第3の実施の形態の硬貨入出金機10における硬貨の入金処理や出金処理を行う際の動作については第2の実施の形態と略同一であるためその説明を省略する。
【0070】
以上のように第3の実施の形態の硬貨入出金機10によれば、第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)の価値および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)の価値が等価値となるよう設定を行う設定部88が設けられており、制御部80は、識別部48による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う際に、設定部88による設定内容に基づいて、識別部48により識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出するようになっている。このことにより、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混在し、両者が同じ価値を持つものとして流通しているときに、硬貨入出金機10においてアメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とを厳密に区別することなく、制御部80において、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を、全てアメリカドルの硬貨とみなして入金硬貨の合計金額の算出が行われるようになるので、円滑な取引を行うことができるようになる。
【0071】
なお、本実施の形態による硬貨入出金機10は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。例えば、硬貨入出金機10の制御部80ではなく、インターフェース84により制御部80と通信接続されたPOS端末等の上位装置85が、設定部88による設定内容に基づいて、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨の合計の価値を、アメリカドルの通貨単位で算出するようになっていてもよい。この場合には、上位装置85において、識別部48により識別されたアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨を、全てアメリカドルの硬貨とみなして入金硬貨の合計金額の算出が行われるようになるので、円滑な取引を行うことができるようになる。
【0072】
また、第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)の価値および第2の硬貨(例えば、カナダドルの硬貨)の価値が等価値となるよう設定を行う設定部が、硬貨入出金機10ではなく上位装置85に設けられていてもよい。この場合には、硬貨入出金機10は、識別部48により得られる第1の硬貨および第2の硬貨の各識別結果を区別して上位装置85に送るようになる。また、上位装置85は、当該上位装置に設けられた設定部による設定内容に基づいて、硬貨入出金機10の識別部48により識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出するようになる。すなわち、上位装置85は、第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値を等価値として処理する。
【0073】
〔変形例〕
本発明による硬貨処理装置は、上述した第1〜第3の実施の形態に示すような硬貨入出金機に限定されることはない。本発明による硬貨処理装置として、硬貨の入金処理のみを行う硬貨入金機や、硬貨の出金処理のみを行う硬貨出金機が用いられてもよい。
【0074】
本発明による硬貨処理装置として硬貨出金機が用いられる場合には、当該硬貨出金機から第1の硬貨(例えば、アメリカドルの硬貨)を投出する際に、第2の硬貨(カナダドルの硬貨)を第1の硬貨として投出するようになっている。より具体的には、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が同一の収納部に混合状態で収納されている場合には、アメリカドルの硬貨を出金する際に、この収納部内の硬貨(すなわち、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨の両方)を全てアメリカドルの硬貨として出金するようになる。
【0075】
また、同じ金種の硬貨についてアメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が異なる収納部に収納されている場合には、アメリカドルの硬貨を出金する際に、アメリカドルの硬貨を収納している収納部内の硬貨に加えて、同じ金種のカナダドルの硬貨を収納している収納部内の硬貨も出金される。このときに、カナダドルの硬貨はアメリカドルの硬貨として出金されるようになる。より詳細には、アメリカドルの硬貨およびカナダドルの硬貨が異なる収納部に収納されている場合には、アメリカドルの硬貨を収納する収納部内の硬貨と、カナダドルの硬貨を収納する収納部内の硬貨とを、適当な比率で混合して出金するようになる。具体的には、予め設定された所定の比率や、各収納部における硬貨の収納量に比例した比率、あるいはランダムの比率で、アメリカドルの硬貨とカナダドルの硬貨とが混合して出金される。
【符号の説明】
【0076】
10 硬貨入出金機
12 筐体
14 本体ユニット
16 硬貨投入口
18 操作部
20 表示部
22 出金トレイ
24 硬貨放出口
26 硬貨出金口
30 繰出機構
32 受入部
34 搬送ベルト
36 逆転ローラ
38 ガイド部材
40 搬送機構
42 プーリ
44 搬送ベルト
46 識別通路
48 識別部
50 排除通路
52 リジェクト部
54 中間通路
56 分類通路
58 分類部
58a 分類孔
58b 分類ゲート
58c 硬貨検出センサ
60 収納機構
70 搬送機構
72 搬送ベルト
80 制御部
82 記憶部
84 インターフェース
85 上位装置
86 モード切換部
88 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する識別部であって、検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨の特徴量および第2の硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには識別された硬貨を第1の硬貨とみなす識別部を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部と、
前記識別部による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う制御部であって、前記識別部により識別された第1の硬貨および第2の硬貨を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の計数を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項3】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部と、
第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値が等価値となるよう設定を行う設定部と、
前記識別部による識別結果に基づいて硬貨の計数を行う制御部であって、前記設定部による設定内容に基づいて、前記識別部により識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出する制御部と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項4】
第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値を等価値として扱う第1の処理モードと、第1の硬貨と第2の硬貨とを区別して扱う第2の処理モードとからなる2つの処理モードのうちいずれか一方の処理モードで硬貨の処理が行われるよう、2つの処理モードを切り換え可能なモード切換部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
硬貨を収納する収納部を更に備え、
前記制御部は、前記硬貨処理装置に硬貨を収納する際に、前記識別部により第1の硬貨と識別された硬貨、および前記識別部により第2の硬貨と識別された硬貨を混合状態で同一の収納部に収納するよう制御を行うことを特徴とする請求項2または3記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
金種別に硬貨を収納する複数の収納部を更に備え、
前記制御部は、前記硬貨処理装置に硬貨を収納する際に、前記識別部により第1の硬貨と識別された硬貨と、前記識別部により第2の硬貨と識別された硬貨とを異なる収納部に収納するよう制御を行うことを特徴とする請求項2または3記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置であって、
前記硬貨処理装置から第1の硬貨を投出する際に、第2の硬貨を第1の硬貨として投出することを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項8】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
硬貨の識別を行い識別された硬貨の特徴量を検知する工程と、
検知された硬貨の特徴量が、第1の硬貨の特徴量および第2の硬貨の特徴量を含む特徴量情報と一致するときには識別された硬貨を第1の硬貨とみなす工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法。
【請求項9】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う工程と、
識別された第1の硬貨および第2の硬貨を、全て第1の硬貨とみなして硬貨の処理を行う工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法。
【請求項10】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値が等価値となるよう設定を行う工程と、
第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う工程と、
設定された内容に基づいて、識別された第1の硬貨および第2の硬貨の合計の価値を、第1国の通貨単位で算出する工程と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理方法。
【請求項11】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理方法であって、
硬貨処理装置が第2の硬貨を第1の硬貨と等価値の硬貨として処理する工程を備えたことを特徴とする硬貨処理方法。
【請求項12】
第1国の硬貨である第1の硬貨および第2国の硬貨である第2の硬貨を処理する硬貨処理装置と、
前記硬貨処理装置とは別に設けられ、当該硬貨処理装置に通信接続された上位装置と、
を備えた硬貨処理システムであって、
前記硬貨処理装置は、第1の硬貨および第2の硬貨の識別を行う識別部を有し、前記識別部により得られる第1の硬貨および第2の硬貨の各識別結果を区別して前記上位装置に送るようになっており、
前記上位装置は、第1の硬貨の価値および第2の硬貨の価値を等価値として処理することを特徴とする硬貨処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3844(P2013−3844A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134297(P2011−134297)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】