説明

硬質コーティング層と硬質コーティング製品及びその製造方法

【課題】特定の糖類または糖アルコール類を主成分とした硬質コーティング層と硬質コーティング製品及びその製造方法について、硬質コーティング層の強度、硬質コーティング層表面の平滑性、硬質コーティング製品の崩壊性、硬質コーティング製品を噛んだ時のクランチ性、硬質コーティング製品の乾燥条件下でのひび割れの生じ難さ、などについて改善され、満足できるものを提供すること。
【解決手段】砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、そして1,6−GPS(6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール)と1,1−GPM(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を硬質コーティング層の主成分とし、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを使用することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類および糖アルコール類を主成分とする硬質コーティング層と、該硬質コーティング層により芯材が被覆された硬質コーティング製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング製品とは、主に食品や医薬品を含有する芯材の表面に被膜を形成させることで、芯材の吸湿や酸化、光分解などによる品質低下を軽減させ、芯材の苦味、臭い、刺激などを緩和する役割を果たすもので、代表的なものとして糖質の被膜を形成させるコーティング技術が良く知られている。そして、単に芯材をコーティングできるか否かという視点に留まらず、現代の多様な嗜好性に合わせて、数多くの材質について、コーティング分野への利用可能性が研究されている。
【0003】
それらの中でも砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、そして1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、といった糖類および糖アルコール類を用いたコーティング製品について、その利用可能性が検討されている。
【0004】
砂糖を用いたコーティング技術として特許文献1には、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースから選ばれた少なくとも1種を含有するシロップを用いて糖衣を施すことを特徴とする糖衣錠の製造法が紹介されている。さらに明細書中には、従来技術の説明として、糖衣層の強度を高めたり、裸錠と糖衣層間の結合力を強めるためにゼラチン、アラビアゴム等の結合剤を添加、使用することが記載されている。
【0005】
砂糖を用いたコーティング技術として特許文献2には、ショ糖水溶液中にプルラン及び/又は水溶性プルラン誘導体を含有する糖衣被覆液を用いて固型製剤に糖衣を施すことを特徴とする固型製剤の糖衣被覆方法が紹介されている。さらに明細書中には、従来技術の説明として、糖衣層の強度を高めたり、裸錠と糖衣層間の結合力を強めるためにゼラチン、アラビアゴム等の結合剤を添加、使用することが記載されている。
【0006】
トレハロースを用いたコーティング技術として特許文献3には、 糖衣部分が純度95重量%以上のトレハロースを含有し、表面が滑らかな結晶質であることを特徴とする糖衣固形物や、 固形物中のトレハロース純度が98重量%以上、濃度が45〜60重量%で、温度が30〜60℃であるトレハロースシロップを、温度20〜50℃の範囲に調節した芯材と接触させることを特徴とする、糖衣部分が純度95重量%以上のトレハロースを含有し、表面が滑らかな結晶質である糖衣固形物の製造方法が紹介されている。
【0007】
ラクチトールを用いたコーティング技術として特許文献4には、芯材がラクチトール及び結晶セルロースを含む糖衣層で被覆された糖衣生成物や、ラクチトールを乾燥物質重量で40〜65重量%、及び結晶セルロースを0.5〜3重量%含有する糖衣シロップを糖衣パン内に載置した芯材に供給することを特徴とする糖衣生成物の製造方法が紹介され、さらに明細書中には、澱粉、ゼラチン、アラビアガム、プルラン、カラヤガム、キサンタンガム等の結合剤が、該糖衣シロップ中に添加してもよい物質として例示されている。
【0008】
1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物であるパラチニット(登録商標)を用いたコーティング技術として特許文献5には、コアおよびコーティングを含んでなる被覆製品であって、前記コーティングが、57重量%:43重量%〜99重量%:1重量%の割合の1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)とからなる1,6−GPS濃厚混合物の少なくとも1つの層を含む被覆製品が開示され、さらに明細書中には、膜形成剤として、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその混合物について開示されている。
【0009】
マルチトールを用いたコーティング技術として特許文献6には、糖衣固形製剤の製造に際し、純度90w/w%以上の高純度マルチトールとともに糖衣補強剤を含有した水溶液によって芯材をコーティングし、次いで、これを乾燥してマルチトールを晶出させることを特徴とする糖衣固形製剤の製造方法が開示され、該糖衣補強剤としてプルランを用いることが開示されている。
【0010】
さらに、種々の糖類や糖アルコール類を用いたコーティング技術として特許文献7には、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、スクロースからなる群から選ばれる何れか一つの糖・糖アルコールと、酸化澱粉及び/又は酸処理澱粉とを含有する硬質糖衣層を有する硬質糖衣製剤が開示されている。
【0011】
上述の特許文献1〜7で紹介されているように、各種の糖類または糖アルコール類による硬質コーティング層を得る方法としては、コーティング層を形成する糖類または糖アルコール類を高純度で用いることや、糖類または糖アルコール類以外に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、プルラン、水溶性プルラン誘導体、ゼラチン、アラビアゴム、澱粉、カラヤガム、キサンタンガム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酸化澱粉、酸処理澱粉など、種々の成分を補強剤として添加する方法が提案されている。
【0012】
しかしながら、従来の補強剤の多くは、水への溶解性が必ずしも良好とは言えず、また、水に溶解したときに粘度が高くなりやすいなどの理由で、コーティング溶液の調製に時間を要してしまうことがあった。また、硬質コーティング層を形成させるための原料溶液(以下、コーティング溶液と称する)とした時にも、粘度の高い水溶液となることが多く、さらに補強剤として天然物をそのまま使用する形態のものの中には、ゴミや不純物が含まれている場合もあることから、硬質コーティング層の形成時に芯材表面に対してコーティング溶液を塗布しても、芯材表面での伸びが十分でなくコーティング層にムラができ易いこと、コーティング溶液の粘度が高く粘着質なので芯材同士が固まり易くなること等、コーティング層形成時の操作性の問題点が指摘されている。また、従来の補強剤を用いたコーティング製品の品質について、補強剤そのものの物性や、上述の製造工程上の問題点が原因の一つとして考えられるが、硬質コーティング層の強度が低いこと、芯材に対して均一で平滑な硬質コーティング層となりにくいこと、補強剤を添加して調製されたコーティング製品は崩壊性が低下すること、時間の経過と共に硬質コーティング製品の表面にひび割れが生じること、補強剤によっては形成された硬質コーティング層が経時的に褐変し易いこと等、硬質コーティング製品の物性そのものについても、改善されるべき点を多数有している。加えて、従来技術で紹介されている補強剤は、高価であること、生産量が不安定であり原料の安定確保が難しいことも工業的規模での製造における懸念材料といえる。
【0013】
【特許文献1】特開昭49−108225号公報
【特許文献2】特開昭59−219220号公報
【特許文献3】特開平9−154493号公報
【特許文献4】特開平6−70688号公報
【特許文献5】特開2000−342185号公報
【特許文献6】特開昭61−263915号公報
【特許文献7】特開2003−292436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、特定の糖類または糖アルコール類を主成分とした硬質コーティング層と硬質コーティング製品及びその製造方法について、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを用いることで、硬質コーティング層の強度、硬質コーティング層表面の平滑性、硬質コーティング製品の崩壊性、硬質コーティング製品を噛んだ時のクランチ性、硬質コーティング製品の乾燥条件下でのひび割れの生じ難さ、などについて改善され、満足できるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を主成分とする硬質コーティング層、あるいは硬質コーティング製品とした時の品質や物性などについて鋭意検討を行った結果、上述の糖類および糖アルコール類の何れか一種を主成分とし、コーティング層の補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを用いることで、係る課題を改善もしくは解決し、本発明を完成するに至った。なお、1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物は、以降、1,6−GPSと1,1−GPMの混合物、もしくは当該製品の登録商標名であるパラチニットと称することがある。
【0016】
すなわち、本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0017】
第一に、主成分として、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を含有し、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを硬質コーティング層の固形物換算で0.1〜10.0重量%含有する、硬質コーティング層である。
【0018】
第二に、ヒドロキシアルキル化デキストリンが、ヒドロキシプロピル化デキストリンである、第一に記載の硬質コーティング層である。
【0019】
第三に、ヒドロキシアルキル化デキストリンのデキストロース当量(DE)が0.1以上5.0未満である、第一又は第二に記載の硬質コーティング層である。
【0020】
第四に、ヒドロキシアルキル化デキストリンが、架橋剤により架橋されたものである、第一から第三の何れか一つに記載の硬質コーティング層である。
【0021】
第五に、ヒドロキシアルキル化デキストリンが、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時に、50〜350cpの粘度を示す、第一から第四の何れか一つに記載の硬質コーティング層である。
【0022】
第六に、第一から第五の何れか一つに記載された硬質コーティング層により芯材が被覆された、硬質コーティング製品である。
【0023】
第七に、コーティング溶液の固形成分中の主成分として、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を含有し、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを含有するコーティング溶液を芯材に塗布し、これを乾燥させてコーティング溶液から固形物を晶出させ、コーティング溶液の塗布と乾燥を繰り返し実施する、硬質コーティング製品の製造方法である。
【0024】
硬質コーティング層とは、コーティング層を形成する成分を含有したコーティング溶液を芯材周囲に塗布した後、乾燥処理によりコーティング溶液から固形物を晶出させ、さらに固化させ、これらコーティング溶液の塗布と乾燥の工程を、所望の厚さもしくは重量の晶出物が芯材周囲に形成されるまで繰り返し行うことで得られる晶出固化物を指す。硬質コーティング製品とは、硬質コーティング層で芯材の表面や周囲が被覆された物を指し、この硬質コーティング層によって、衝撃や水分などに対する芯材への保護効果の付与や、優れた外観を持たせることが可能となる。また、硬質コーティング製品は、食べた時にカリカリまたはパリパリといったクランチ性のある好ましい食感を伴って、噛み砕くことが可能である。
【0025】
本発明に係る硬質コーティング層では、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンが採用される。このヒドロキシアルキル化デキストリンを補強剤として使用することにより、硬質コーティング層の強度について高い強度を有し、硬質コーティング層の表面が優れた平滑性を有し、硬質コーティング製品の崩壊性が良好であり、硬質コーティング製品を噛んだ時に良好なクランチ性を有し、硬質コーティング製品を乾燥条件下で保存してもコーティング層の表面にひび割れが生じ難いなど、本発明が課題とする点を満足する、好ましい効果をもたらすことが可能となる。
【0026】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製に当たっては、澱粉をヒドロキシアルキル化し、その後、公知の方法で所望のデキストロース当量(DE;dextrose equivallent)を有するまで加水分解処理する方法と、予め澱粉を加水分解して所望のDEを有するデキストリンを調製し、その後、得られたデキストリンに対してヒドロキシアルキル化処理して調製する方法の、何れの方法を採用しても良い。しかしながら、調製の容易さや、調製後の品質の安定性を考慮すると、先に澱粉のヒドロキシアルキル化を行う前者の調製方法が好ましいと言える。
【0027】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製で行われる澱粉の加水分解処理は、酸、アルカリ、加熱、酵素処理など、所望のDE値まで澱粉が加水分解される方法であれば特に制限は無いが、所望のDEを有したデキストリンの調製が容易であることから、α−アミラーゼに代表される、酵素処理による加水分解処理が好ましい。また、補強剤として採用することのできるヒドロキシアルキル化デキストリンのDEは、ヒドロキシアルキル化の置換度や架橋の有無によって異なるが、凡そのDEは0.1以上5.0未満であり、好ましくは0.5以上3.5以下であり、その中でも特に好ましくは1.2以上2.5以下である。
【0028】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製では、上述の通り、酸により所望のDEを有するまで澱粉を加水分解して、デキストリンを調製することも可能である。一方で、日本国内の当業者で酸処理澱粉と称される物質が存在する。これはThinboiling Starch, Modified Starchと訳される事もある物質で、分類としては化工澱粉の一種として挙げられるが、名前の通り、澱粉を鉱酸溶液で処理して得られる物質の一つであるため、酸加水分解によって調製が可能なデキストリンと混同が生じる恐れがある。しかしながら、酸処理澱粉とデキストリンは、分類上の違いだけでなく、物質や物性の面でも相違点を有しており、例えば、前者の酸処理澱粉は、澱粉粒子の非晶質部の一部が分解されるが、澱粉の粒子構造そのものは残されており、ヨウ素澱粉反応に対して紫色に変化する呈色反応が認められる。また、酸処理澱粉は実質的に澱粉の構造が残存しているため、分解度をDEで定義することは極めて困難である。一方、後者のデキストリンは、澱粉の粒子構造は残存しておらず、DEで定義できるような分解度を有する。よって本発明では、本発明に係る補強剤であるヒドロキシアルキル化デキストリンと、酸処理ヒドロキシアルキル化澱粉もしくはヒドロキシアルキル化酸処理澱粉とは、全く相違する物質として扱われる。また、硬質コーティング層の補強剤として使用した場合に、両者の相違は明白に示される。
【0029】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製に用いられる原料としては、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、モロコシ澱粉等の各種地上澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等の各種地下澱粉、もしくはこれらの各種澱粉類を原料として調製されたデキストリン類、及びこれら各種澱粉や各種デキストリンの混合物などが採用可能であり、その種類や由来に特段の制限は無い。これらの中でも、加工調製後の補強剤の老化し難さや、コーティング溶液の調製の容易さ、コーティング層の形成時の操作性が優れるなどの点で、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、もしくはこれらを由来として調製されたデキストリンが好ましい。また、アミロペクチン含量が高く、加工後の老化の生じ難さや、品質の安定性の点が特に優れていることから、ワキシコーンスターチやワキシコーンスターチを由来として調製されたデキストリンが特に好ましい。
【0030】
ヒドロキシアルキル化デキストリンは、原料となる澱粉もしくはデキストリンに対して、各種アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を作用させてヒドロキシアルキル化を行うことによって得られる。これらの中でも、硬質コーティング層とした時の品質の好ましさから、ヒドロキシプロピル化デキストリンが好ましい。ヒドロキシアルキル化の程度を表す置換度については、澱粉の種類、架橋処理の有無、ヒドロキシアルキル化デキストリンのDE値などにより若干変動させても良いが、本発明の実施を妨げない限り特に制限は無い。なお、置換度とは、澱粉のグルコース残基1個当りの置換基の平均値で求められる値であり、置換度をDS(degree of substitution)と表すことがある。本発明で好ましい置換度を例示すると、DS0.01〜0.36程度、更に好ましい範囲はDS0.03〜0.20であり、その中でも特に好ましいのは、DS0.06〜0.18程度である。なお、本発明では必要以上に置換度を高める必要性は無いが、前述で示した数値以上に置換度を高めても特に差し支えは無い。
【0031】
本発明に係る硬質コーティング層では、補強剤として採用されるヒドロキシアルキル化デキストリンに、架橋剤を反応させて架橋構造を付与させた、ヒドロキシアルキル化架橋デキストリンとすることで、デキストリンの老化を抑制し、コーティング溶液とした時の品質を安定化させ、コーティング溶液の経時的な粘度上昇を抑制し、補強剤として好ましい性質を付与するなど、好ましい効果をもたらすことができる。架橋剤としては、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、アジピン酸トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、アクロレイン、シアヌリッククロライド、アジピン酸/酢酸混合無水物、オキシ塩化燐、ホルマリン、ジエポキシド化合物、ジアルデヒド化合物など、澱粉の水酸基と反応して架橋構造を形成し得る試薬であれば何れも採用可能である。なお、上記架橋剤によって得られる架橋構造物の中でも、リン酸架橋された、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋デキストリンが、本発明に係る硬質コーティング層の補強剤として特に好ましい形態と言える。
【0032】
本発明に係る硬質コーティング層の補強剤としてヒドロキシアルキル化架橋デキストリンを調製する場合、架橋反応を行う時期は特に問われない。例えば、ヒドロキシアルキル化反応を行う前の澱粉やデキストリンに対して架橋反応を行い、一旦、架橋澱粉もしくは架橋デキストリンを形成させてからヒドロキシアルキル化を行い、最後に必要に応じて、所望のDEを有するまで加水分解処理を行う調製方法を採用しても良い。また別の方法として、澱粉やデキストリンに対しヒドロキシアルキル化反応させ、ヒドロキシアルキル化澱粉もしくはヒドロキシアルキル化デキストリンとした後、架橋反応を行う調製方法を採用することも可能である。そして、最後に必要に応じて、所望のDEを有するまで加水分解処理を行う調製方法を採用しても良い。また、これらの反応を行う際、架橋反応の程度については、本発明の実施を妨げない範囲であれば特に制限は無い。なお、本発明では、澱粉を出発原料とし、次いでヒドロキシアルキル化処理によりヒドロキシアルキル化澱粉を調製し、次いで架橋剤により架橋構造を有したヒドロキシアルキル化架橋澱粉を調製し、最後に所望のDEを有するまで加水分解反応を行い、ヒドロキシアルキル化架橋デキストリンとする調製方法が、補強剤の調製反応の制御し易さや、得られた補強剤の品質や安定性などの面で好ましい。
【0033】
本発明に係る硬質コーティング層の補強剤であるヒドロキシアルキル化デキストリンのDEは、澱粉の種類、ヒドロキシアルキル化の種類及び置換度、架橋構造の有無、補強剤とした時の品質や安定性などを勘案し総合的に判断すべきである。例えば、架橋構造を有するヒドロキシアルキル化架橋デキストリンの凡その分解度をDEで表すと、DEは0.1以上5.0未満、更に好ましくはDE0.5以上3.5以下、その中で特に好ましくはDE1.0以上2.5以下、最も好ましくはDE1.2以上2.0以下である。また、架橋構造を有さないヒドロキシアルキル化デキストリンについて凡その分解度をDEで表すと、DEは0.1以上5.0未満、更に好ましくはDE0.5以上3.5以下、その中で特に好ましくはDE1.5以上3.0以下、最も好ましくはDE2.0以上2.5以下である。また、DEが0.1未満では、コーティング溶液としたときの粘度が高いこと、加水分解反応の制御が難しく調製が困難であること、本発明に係る好ましい効果が十分に発現しないこと、などの恐れがある。また、DEが5.0以上となると、コーティング層の形成が遅れたり、コーティング層表面の平滑性が低下したり、コーティング製品のクランチ性が劣るなど、補強剤としての作用が十分に発現しない恐れがある。
【0034】
本発明に係る硬質コーティング層の補強剤の好ましい形態としては、例えば、ワキシコーンスターチ及び/又はタピオカ澱粉を出発原料とし、ヒドロキシプロピル化によって置換度0.06乃至0.18程度のヒドロキシプロピル化澱粉とし、次いでリン酸架橋し、最後に酵素加水分解処理によってDEが1.2程度乃至DEが2.0程度に調製された、ワキシコーンスターチ及び/又はタピオカ澱粉由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンが例示できる。また別の形態として、ワキシコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉の群から選ばれる何れか一種又は二種以上を組合せた澱粉を出発原料とし、ヒドロキシプロピル化によって置換度0.06乃至0.12程度のヒドロキシプロピル化澱粉とし、次いで酵素加水分解処理によってDEが2.0乃至DEが2.5程度に調製された、ワキシコーンスターチ及び/又はタピオカ澱粉及び/又は馬鈴薯澱粉由来のヒドロキシプロピル化デキストリンが例示できる。
【0035】
本発明に係る硬質コーティング層の補強剤であるヒドロキシアルキル化デキストリンは、澱粉の種類、ヒドロキシアルキル基の種類及びその置換度、架橋剤の有無、DE値、等の各種要素によって様々な物性に調製することが可能であるが、本発明に係る効果が好適に発現する一つの目安として、ヒドロキシアルキル化デキストリンの水溶液を調製し、その時の水溶液の粘度で評価することができる。具体的には、固形分濃度30重量%、温度30℃のヒドロキシアルキル化デキストリン水溶液を調製し、そのときの粘度をB型粘度計で測定した時の下限値の目安は、好ましくは50cp以上、更に好ましくは100cp以上、その中でも特に好ましくは140cp以上、最も好ましくは150cp以上である。また、粘度範囲の上限値の目安は、好ましくは350cp以下、更に好ましくは320cp以下、その中でも特に好ましくは300cp以下、最も好ましくは270cp以下である。水溶液とした時に上述の粘度を有するようなヒドロキシアルキル化デキストリンを補強剤として採用することで、コーティング溶液の調製が比較的容易で、芯材に対してコーティング溶液の伸びが良く、作業時の良好な操作性が得られ、調製された硬質コーティング層や硬質コーティング製品についても、硬質コーティング層の強度について高い強度を有し、硬質コーティング層の表面が優れた平滑性を有し、硬質コーティング製品の崩壊性が良好であり、硬質コーティング製品を噛んだ時に良好なクランチ性を有し、硬質コーティング製品を乾燥条件下で保存しても硬質コーティング層の表面にひび割れが生じ難いなど、好ましい効果をもたらすことができる。
【0036】
本発明で、硬質コーティング層の主成分として使用される糖類および糖アルコール類とは、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPSと1,1−GPMの混合物、以上の群に記載された物質を指す。
【0037】
1,6−GPSと1,1−GPMの混合物としては、三井製糖株式会社からパラチニット(登録商標)の商品名で販売されている糖アルコール商品が例示できる。
【0038】
上記の糖類および糖アルコール類は、食品、食品添加物、医薬品などの各種用途で市販されている程度の品質であれば良く、それらの原料や製造方法、もしくは液状や固体といった形状などによって特に影響を受けることは無い。また、本発明の実施を妨げない限り、上記の糖類および糖アルコール類は結晶品、含蜜結晶品、非晶質粉末の何れであっても良く、含水結晶もしくは無水結晶の何れであっても良い。
【0039】
上記の糖類および糖アルコール類を原料として本発明に係る硬質コーティング製品を調製する場合、硬質コーティング層の強度が高められる点で、マルチトール、キシリトール、砂糖、パラチニットが特に好ましい糖類および糖アルコール類として例示することができ、その中で最も高い強度を有する硬質コーティング層に仕上げられるのはマルチトールである。また、平滑性の優れた硬質コーティング層が得られる点で、マルチトール、キシリトールが特に好ましい糖アルコール類として例示することができ、その中で最も好ましいのはマルチトールである。また、優れたクランチ性を有した硬質コーティング製品が得られる点で、マルチトールが最も好ましい糖アルコールとして例示することができる。
【0040】
本発明に係る硬質コーティング層および硬質コーティング製品について、硬質コーティング層の強度、硬質コーティング層表面の平滑性、硬質コーティング製品の崩壊性、硬質コーティング製品を噛んだ時のクランチ性、硬質コーティング製品の乾燥条件下でのひび割れの生じ難さ、以上の各品質を総合的に判断すると、硬質コーティング層の主成分として本発明が例示する糖類および糖アルコール類の中で好ましいのは、砂糖、マルチトール、キシリトール、及び1,6−GPSと1,1−GPMの混合物であり、更に好ましくは砂糖、マルチトール、キシリトールであり、その中でも特に好ましくはマルチトール、キシリトールであり、最も好ましいのはマルチトールである。
【0041】
本発明では、硬質コーティング層を構成する主成分として糖類および糖アルコール類が採用されるが、ここで主成分とは、本発明が採用し得る糖類および糖アルコール類の群から選ばれる一種の成分の含有量が、硬質コーティング層を形成する固形成分で換算して50.0重量%以上であることを指す。なお、硬質コーティング層中の糖類および糖アルコール類の好ましい含有量は、形成された硬質コーティング層の固形成分換算で80.0重量%以上、更に好ましくは90.0重量%以上、特に好ましくは94.0重量%以上、最も好ましくは95.0重量%以上である。また、硬質コーティング層中の糖類および糖アルコール類の上限値は、補強剤の添加量を考慮すると99.9重量%以下、好ましくは99.0重量%以下であることが例示できるが、更に好ましくは、本発明に係る硬質コーティング層中に含まれる補強剤を除いた残余全てに相当する分量が上限値となる。また、本発明の実施を妨げない限り、硬質コーティング層の主成分として採用される糖類および糖アルコール類中に含まれる不純物や蜜成分、また該主成分以外の各種糖類および糖アルコール類の共存は許容し得る。
【0042】
本発明で、硬質コーティング層の補強剤として採用されるヒドロキシアルキル化デキストリンの含有量は、硬質コーティング層を形成する部分の固形成分で換算して、0.1〜10.0重量%、好ましくは1.0〜9.0重量%、更に好ましくは3.0〜6.0重量%、最も好ましくは4.0〜5.0重量%である。
【0043】
硬質コーティング層中の補強剤の含有量が上述の範囲を外れて少ないと、補強剤によってもたらされる各種効果の発現が十分に得られない。また、上述の範囲を超える量を添加しても、添加量に応じた程の高い効果が得られず、経済的に好ましくない。また、更に補強剤の添加量を増加させると、硬質コーティング層の主成分である糖類または糖アルコール類の結晶析出が遅れたり結晶の晶出そのものが抑制され、コーティング層の形成が遅れたり、形成が困難となる恐れがある。
【0044】
本発明に係る硬質コーティング製品の芯材として適用可能な物質は、コーティング層の形成を著しく妨げるような物質でない限り制限は無く、コーティング層の芯材としての使用が公知である素材であれば、本発明においても適用することが可能である。具体的な芯材として、例えば、ガム、キャンデー、トローチ、タブレット、グミ、チョコレート、ゼリー、パン、ケーキ、プレッツェル、クラッカー、タフィー、団子、揚げ菓子、スナック菓子、ポテトチップ、甘納豆、ポップコーンなどの各種菓子類、各種果実類や各種野菜類や各種豆類とそれらの乾物類、その他にも、医薬品類などを芯材として利用することが可能であり、その形状も特に問われない。
【0045】
本発明の実施に当たり、硬質コーティング層の素材として、硬質コーティング層の主成分となる糖類および糖アルコール類、硬質コーティング層の補強剤であるヒドロキシアルキル化デキストリンの他に、本発明の実施を妨げない範囲で、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、プルラン、水溶性プルラン誘導体、ゼラチン、アラビアガム、澱粉、カラヤガム、キサンタンガム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酸化澱粉、酸処理澱粉など公知のコーティング層の補強剤、また、コーティング層の増量剤として実質的にコーティング層を形成可能で、水に難・不溶性の性質を示す、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、卵殻カルシウム、貝殻カルシウムなどの各種基剤、これらを1種又は2種以上組合せて使用しても良い。
【0046】
また、本発明の実施を妨げない範囲であれば、硬質コーティング層の味質や外観改善の目的で、グリシン、アラニン、ロイシン、チロシン、グルタミン酸などの各種アミノ酸やその塩、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸などの各種有機酸やその塩、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどの高甘味度甘味料、艶出し剤、着色料、着香料、界面活性剤などを添加しても良い。
【0047】
本発明でいうコーティング溶液とは、硬質コーティング層を形成するために必要な原料が含まれた水溶液状物を指し、当業者には糖衣液と称されることもある。
【0048】
本発明における芯材へのコーティング溶液の塗布とは、コーティング溶液が芯材表面に掛けられる、もしくは接触するよう行われる方法であれば、本発明の実施を妨げない限りその方法に特に制限はなく、塗布、噴霧、散布、液掛、などの技術用語で表される何れの方法も包含する。
【0049】
本発明に係る硬質コーティング層を有した硬質コーティング製品の製造方法としては、公知のコーティング層の形成に用いられる装置をそのまま使用することが可能であり、その手段や装置の種類に特段の制限は無い。一例として、断続的若しくは連続的に回転可能なコーティングパン内にコーティングされる芯材を入れ、必要に応じて回転を加えるかそのままの状態で芯材に対してコーティング溶液を塗布し、次いでコーティングパンを回転させて芯材表面にコーティング溶液を満遍なく行き渡らせると同時に、必要に応じて送風するなどして塗布したコーティング溶液の乾燥を促し、塗布されたコーティング溶液の乾燥により固化物が晶出する。以後、芯材に所望の厚さのコーティング層が形成されるまで、コーティング溶液の塗布と乾燥を繰返し実施すれば良い。
【0050】
硬質コーティング製品を調製する際、コーティング溶液の固形分濃度は、芯材へのコーティング溶液の塗布と乾燥の繰り返しにより、所望する品質の硬質コーティング層が得られる条件であれば、特に制限は無く、例えば、固形分濃度50〜80重量%程度が好適に実施できる範囲として例示できる。
【0051】
芯材に硬質コーティング層を形成させる過程の任意の時期に、コーティング溶液中の主成分である糖類あるいは糖アルコール類と同種の粉末物を芯材に噴霧もしくは散布することで、コーティング溶液の固形成分の晶出固化をさらに促すことが可能であり、添加する量によっては、コーティング層の食感に変化や特徴を与えることも可能である。
【0052】
本発明に係る硬質コーティング層および硬質コーティング製品では、硬質コーティング層の強度、硬質コーティング層表面の平滑性、硬質コーティング製品の崩壊性、硬質コーティング製品を噛んだ時のクランチ性、硬質コーティング製品の乾燥条件下でのひび割れの生じ難さなどの各種効果を好適に発現させる上で、芯材に対して一定量以上の硬質コーティング層が形成された硬質コーティング製品とすることが望ましい。本発明では、硬質コーティング層の形成割合の目安として、芯材重量を100%とした時の、硬質コーティング層の重量比率を求める方法(以下、この重量比率をコーティング被覆率と称す)が採用される。具体的には、形成された硬質コーティング層の重量を、芯材の重量で除して求めればよい。コーティング被覆率という用語は、当業者間では糖衣率と呼ばれることもあり、コーティング層の厚さや被覆の程度を示す指標として使用されている。本発明に係る硬質コーティング製品をこのコーティング被覆率で示すと、30%以上、好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上であれば、コーティング層による各種の保護機能が非常に好ましい水準で発現するが、30%未満であってもコーティング層の形成は可能であり、コーティング製品とすることができる。硬質コーティング層の重量の測定方法としては、形成された硬質コーティング層を芯材から分離して、当該部分の重量を直接測定してもよいが、硬質コーティング製品の重量からコーティング前の芯材重量を引いた値を硬質コーティング層の重量とし、その値を基にコーティング被覆率を求めても良い。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る硬質コーティング層および硬質コーティング製品は、硬質コーティング層の強度について高い強度を有し、硬質コーティング層の表面が優れた平滑性を有し、硬質コーティング製品の崩壊性が良好であり、硬質コーティング製品を噛んだ時に良好なクランチ性を有し、硬質コーティング製品を乾燥条件下で保存しても硬質コーティング層の表面にひび割れが生じ難くいなど、硬質コーティング製品としての好ましい性質が付与される。これら本発明によってもたらされる好ましい効果は、以下の測定方法に基づいて評価される。
【0054】
本発明に係る硬質コーティング製品に関連する諸物性の評価では、芯材として、乳糖模擬錠(錠剤直径:10mm、R:8.5mm、H:1.63mm、平均重量:360mg/錠、サンケーヘルス株式会社製)を用い、硬質コーティング製品の平均重量が540mg/錠となるまでコーティング作業を行い、コーティング被覆率の平均値が50%である硬質コーティング製品を調製し、その後、ジッパー付のアルミ製保存袋(商品名:ラミジップAL16、株式会社生産日本社製)に入れて封をし、室温で2週間静置させたものを硬質コーティング製品のモデル製品とし、これを各種実験の検体として使用した。
【0055】
本発明に係る硬質コーティング製品は、硬質コーティング層の強度が改善され、衝撃を受けても割れが生じ難いという特徴を有している。本発明では、この硬質コーティング層の強度を評価する手法として、硬質コーティング製品を30cmの高さから平滑な大理石板上に自由落下させ、硬質コーティング層表面に割れが生じるまでに要する落下回数を測定する落下試験を、各調製例で調製されたコーティング製品について20検体づつ実施し、その平均値を求めることで、硬質コーティング層の強度を評価する方法が採用される。
【0056】
生産現場では、硬質コーティング製品としたものを所定の容器に充填したり輸送する際に生じる硬質コーティング製品同士の接触、容器や充填装置の壁面への接触など、各種の衝撃による硬質コーティング層のひび割れ、破損、剥離などは最も避けなければならない。そのような観点から、この落下試験において20検体の平均値が1.0回以上2.0回未満のコーティング製品は、1回の衝撃でコーティング層のひび割れ、破損、剥離などが生じる危険性を有し、実際の生産現場での製造に耐え得る品質とはいえず好ましくない。また、20検体の平均値が2.0回以上3.0回未満のコーティング製品では、1回の衝撃には耐え得るが、その後、流通過程で発生する衝撃の影響を考慮すると、必ずしも満足できる水準とはいえない。生産現場での製造、充填、流通、などの各過程を考慮した場合、落下試験において20検体の平均値が少なくとも3.0回以上であり、より安全を見るのであれば4.0回以上であることが、実用に耐え得る硬質コーティング製品として望まれる水準といえる。この試験法によると、本発明に係る硬質コーティング製品は、硬質コーティング層を形成する糖類および糖アルコール類の種類にもよるが、落下試験において4.0回以上、好ましくは5.0回以上、更に好ましくは6.0回以上、特に好ましくは7.0回以上、最も好ましくは10.0回以上の結果となり、高い強度を有するものである。
【0057】
本発明に係る硬質コーティング製品は、硬質コーティング層表面の仕上がりが非常に滑らかで、優れた平滑性を有している。これは、コーティング溶液の芯材周囲への広がり易さや粘着性の少なさ、コーティング溶液からの固形成分の晶出性などが理由の一つとして考えられる。本発明では、硬質コーティング層表面の平滑性を評価する手法として、調製された製品から任意に20検体取出して、訓練されたパネリスト10名の目視により、コーティング層表面の凹凸を以下の基準で採点し、その点数からコーティング層の平滑性を評価した。平滑性の評価は、3点:「凹凸が全く無し」、2点:「凹凸がほとんど無し」、1点:「若干凹凸あり」、0点:「凹凸が多い」として集計し、結果は30点〜26点を「平滑」として◎、25点〜16点を「やや平滑」として○、15点〜6点を「少し凹凸あり」として△、5点以下を「凹凸あり」として×、として評価する方法が採用される。測定結果から、本発明に係る硬質コーティング層は、何れの糖類および糖アルコール類を主成分とするものについても、◎もしくは○で評価することができ、優れた平滑性を有していることが確認された。
【0058】
通常、コーティング層に使用される従来の補強剤は、水に対する溶解性が優れていないものが多く、このような補強剤を使用したコーティング製品は、補強剤の種類や添加量にもよるが、概ね、崩壊度は低下してしまう傾向がある。これらの傾向は、コーティング製品を食べた時に、口腔内での食べ残し感やジャリジャリ感といった、好ましくない感覚を持続させてしまうことがあった。一方、本発明に係る硬質コーティング製品は、補強剤が使用されているにも関わらず、従来の知見に反し、水に対して比較的速やかに溶解し、優れた崩壊度を示す。具体的には、本発明に係る硬質コーティング製品の場合、補強剤を添加しても崩壊度の低下は殆ど見られず、補強剤を添加せずに調製したコーティング製品と同程度の崩壊度を有しており、従来の補強剤を使用して得られる硬質コーティング製品にはない特徴を有する。本発明に係る硬質コーティング製品の優れた崩壊度は、以下に示す崩壊試験によって、明らかにされる。
【0059】
本発明に係る硬質コーティング製品の崩壊度を評価する指標として、崩壊度試験器(装置名:NT−2H、富山産業株式会社製)を用いた崩壊試験を行い、硬質コーティング製品の崩壊に要する時間から、各コーティング製品の崩壊度を評価する方法が採用される。崩壊度の測定は、第14改正日本薬局方解説書(2001,廣川書店刊行)のB−619頁〜B−628頁に記載の「58.崩壊試験法」に記載された方法に準じて実施される。詳細には、崩壊度試験器に備え付けられている専用のバスケットを受け軸に取り付け、崩壊度試験器内に設置されたビーカー中で、1分間29〜32往復、振幅53〜57mmで滑らかにバスケットが上下運動を行うように調節される。バスケットが最も下がったとき、バスケット底部の網面がビーカーの底から25mmになるようにし、ビーカーに入れる試験液の量は、バスケットが最も下がった時に、バスケットの上面が液の表面に一致するようにし、試験液の温度は37±2℃に保たれる。試験液には純水を用い、測定対象となる硬質コーティング製品は、バスケット内にある6本のガラス管内にそれぞれ1検体ずつ入れられる。バスケットはあらかじめ温度及び液量を調節したビーカー中の試験液に浸し、一定時間上下運動を行い続け、ガラス管内に残留物が認められなくなるまでに要する時間を崩壊時間として測定する。本発明では、1製品に付き6検体の試験を行い、その崩壊時間の平均値を採用し、崩壊度の指標とした。
【0060】
本発明に係る硬質コーティング製品は、補強剤を添加せずに調製した糖類および糖アルコール類を主成分とするコーティング製品と遜色の無い、ほぼ同程度の崩壊度を維持しており、従来の補強剤を含有したコーティング製品と比べると、崩壊度が大幅に改善される。崩壊度の指標は、コーティング層の主成分として同一の糖類や糖アルコール類を用いて、本発明に係る硬質コーティング製品と、対照品として補強剤を添加せずに調製したコーティング製品のそれぞれについて平均崩壊時間を対比することで求められる。本発明に係る硬質コーティング製品の崩壊時間は、、最大でも対照品の崩壊時間の10%以下の増加時間であり、好ましくは対照品の崩壊時間の6%以下の増加時間であり、更に好ましくは対照品の崩壊時間の3%以下の増加時間であり、特に好ましくは対照品の崩壊時間の1%以下の増加時間である。また、場合によっては、対照品の崩壊時間よりも崩壊時間が短縮されることもある。
【0061】
本発明に係る硬質コーティング製品は、噛んだ時に、カリカリやパリパリといった好ましい食感と歯脆さを伴って噛み砕くことができ、良好なクランチ性を有する。本発明に係る硬質コーティング製品のクランチ性については、訓練されたパネリスト10名が調製した硬質コーティング製品を経口摂取し、口の中で噛み砕き、その時に感じることが出来るパリパリとした食感について以下の基準で採点し、その点数から硬質コーティング製品のクランチ性を評価した。クランチ性の評価は、3点:「パリパリとした食感が強い」、2点:「パリパリとした食感を感じる」、1点:「パリパリとした食感が弱い」、0点:「パリパリとした食感がない」として集計し、結果は30点〜26点を「良好なクランチ性を有する」として◎、25点〜16点を「やや良好なクランチ性を有する」として○、15点〜6点を「クランチ性がやや不良である」として△、5点以下を「クランチ性が不良である」として×、として評価する方法が採用される。測定結果から、本発明に係る硬質コーティング製品は、何れの糖類および糖アルコール類を主成分とするものについても、◎もしくは○で評価することができ、良好なクランチ性を有していることが確認された。
【0062】
本発明に係る硬質コーティング製品は、長期保存しても硬質コーティング層表面にひび割れが生じ難いという特徴を有している。本発明では、コーティング層表面のひび割れの生じ難さを評価する手法として、シリカゲルの入ったデシケータ内(相対湿度9%)に20℃で3ヶ月保管し、保存期間内にコーティング層表面にひび割れが生じたものをカウントする保存試験が採用される。保存試験では、各調製例で調製された10検体の硬質コーティング製品を用意し、保存期間内にコーティング層表面にひび割れが生じたものをカウントし、測定に用いた検体総数を100とした百分率でひび割れ率が求めらられる。この試験法によると、本発明に係る硬質コーティング製品は、何れの糖類および糖アルコール類を主成分とするものについても、保存試験において30%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは0%という結果を有するものであり、従来の補強剤によるコーティング製品と比較して、その割合が大幅に改善されることが確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下に、本発明に係る硬質コーティング層と硬質コーティング製品及びその製造方法の詳細について、実施例を交えて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0064】
各実施例で使用される硬質コーティング層の主成分である糖類および糖アルコール類は、以下に記載のものを使用した。砂糖は、市販品(商品名:グラニュー糖、大日本明治製糖株式会社製)を使用した。マルチトールは、市販の結晶マルチトール製品(商品名:レシス(登録商標)、東和化成工業株式会社製)を使用した。キシリトールは、市販の結晶キシリトール製品(商品名:キシリット、東和化成工業株式会社製)を使用した。ラクチトールは、市販のラクチトール一水和物結晶製品(商品名:ミルヘン(登録商標)、東和化成工業株式会社製、含水率5重量%)を使用した。1,6−GPSと1,1−GPMの混合物としては、両者の等モル混合物製品(商品名:パラチニットPN、三井製糖株式会社製、含水率5重量%)と、1,6−GPSの含有量の高い製品(商品名:パラチニットGS、三井製糖株式会社製、含水率2重量%)の2種類を使用した。トレハロースは、市販のトレハロース二水和物結晶製品(商品名:トレハ(登録商標)、株式会社林原商事製、含水率9.5重量%)を使用した。エリスリトールは、市販のエリスリトール結晶製品(商品名:エリスリトール、三菱化学フーズ株式会社製)を使用した。マンニトールは、市販のマンニトール結晶製品(商品名:マンニットS、東和化成工業株式会社製)を使用した。
【0065】
本発明に係る各実施例において使用される硬質コーティング層の補強剤は、以下の表1に示す6種類の補強剤を使用した。
【0066】
【表1】

【0067】
補強剤Aとして、日澱化學株式会社より市販されている製品(商品名:PENON PKW)を使用した。この補強剤Aは、ワキシコーンスターチにプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.06のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、リン酸架橋し、酵素分解により加水分解処理された、DEが1.2のワキシコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンである。このヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は270cpであった。
【0068】
補強剤Bとして、日澱化學株式会社より市販されている製品(商品名:PENON PKW)を使用した。この補強剤Bは、ワキシコーンスターチにプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.06のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、リン酸架橋し、酵素分解により加水分解処理された、DEが2.0のワキシコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンである。このヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は150cpであった。
【0069】
補強剤Cとして、日澱化學株式会社より市販されている製品(商品名:アミコールSQ)を使用した。この補強剤Cは、タピオカ澱粉にプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.18のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、リン酸架橋し、酵素分解により加水分解処理された、DEが1.9のタピオカ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンである。このヒドロキシプロピル化リン酸架橋デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は110cpであった。
【0070】
補強剤Dとして、以下の方法で調製された、ワキシコーン由来のヒドロキシプロピル化デキストリンを使用した。この補強剤Dは、ワキシコーンスターチにプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.06のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、酵素分解により加水分解処理された、DEが2.5のヒドロキシプロピル化デキストリンである。このヒドロキシプロピル化デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は240cpであった。
【0071】
補強剤Eは、以下の方法で調製された、タピオカ由来のヒドロキシプロピル化デキストリンを使用した。この補強剤Eは、タピオカ澱粉にプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.12のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、酵素分解により加水分解処理された、DEが2.0のヒドロキシプロピル化デキストリンである。このヒドロキシプロピル化デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は280cpであった。
【0072】
補強剤Fは、以下の方法で調製された、馬鈴薯由来のヒドロキシプロピル化デキストリンを使用した。この補強剤Fは、馬鈴薯澱粉にプロピレンオキサイドを反応させてヒドロキシプロピル化し、置換度0.06のヒドロキシプロピル化澱粉としたものを、酵素分解により加水分解処理された、DEが2.5のヒドロキシプロピル化デキストリンである。このヒドロキシプロピル化デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は230cpであった。
【0073】
従来の補強剤成分として、以下に記載のものを使用した。アラビアガムは、関東化学株式会社製の試薬(試薬名:アラビアゴム末、鹿1級)を使用した。このアラビアガムについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は180cpであった。ゼラチンは、ニッピゼラチン工業株式会社製の製品(商品名:ゼラチンE1)を使用した。このセラチンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃条件では固化してしまい、粘度を測定することはできなかった。マルトデキストリンは、DEが4.0相当である、日澱化學株式会社製の製品(商品名:アミコール10)を使用した。このマルトデキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は98cpであった。水素化デキストリンは、DEが8.0相当のデキストリンを水素化処理した、東和化成工業株式会社製の製品(商品名:PO−10)を使用した。この水素化デキストリンについて、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は28cpであった。ヒドロキシプロピル化澱粉は、日澱化學株式会社製の製品(商品名:パイオスターチH)を使用した。このヒドロキシプロピル化澱粉については、固形分濃度10重量%、温度30℃の水溶液の条件で、10000cpを超える粘度となり、測定できなかった。酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉は、セレスター株式会社製の製品(商品名:C☆AraSet)を使用した。この酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉について、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時の粘度は388cpであった。
【実施例】
【0074】
【表2】

【0075】
(マルチトールコーティングによる発明品1の調製)
マルチトールとして市販の結晶マルチトール(商品名:レシス(登録商標)、東和化成工業株式会社製)を使用し、表2の調製例1に示す配合割合に従い、マルチトール:65重量部、補強剤A:3重量部、水:32重量部の組成からなる、液温50℃のコーティング溶液を調製した。次に、乳糖模擬錠(錠剤直径:10mm、R:8.5mm、H:1.63mm、平均重量:360mg/錠、サンケーヘルス株式会社製)を芯材として用い、用意した乳糖模擬錠300g分を小型糖衣機(装置名:16DS、菊水製作所製)に入れ、連続的に25rpmで回転している小型糖衣機内の芯材に対し、調製したコーティング溶液を一度に4.0g塗布し、次いで小型糖衣機内の芯材に対し送風機(装置名:TSK熱風発生機、型式:TSK−1、風量調整ダイアル:8、株式会社竹綱製作所製)にて、室温の空気流を断続的に送って芯材表面を乾燥させ、コーティング溶液の塗布と乾燥を繰返し実施して、平均重量540mg/錠となるまでコーティング操作を行い、硬質コーティング製品を調製した。次いで、ジッパー付のアルミ製保存袋(商品名:ラミジップAL16、株式会社生産日本社製)に入れ、室温で2週間静置させたものを発明品1とした。
【0076】
(マルチトールコーティングによる発明品2〜9の調製)
表2の調製例2〜9に示す配合割合に従い、調製例1と同じマルチトールを使用してそれぞれコーティング溶液を調製した。なお、調製例2および3で使用する炭酸カルシウムは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:炭酸カルシウム、鹿1級)を使用し、タルクは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:タルク)を使用した。その後は、各調製例毎に、調製例1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例2に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品2と、調製例3に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品3と、調製例4に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品4と、調製例5に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品5と、調製例6に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品6と、調製例7に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品7と、調製例8に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品8と、調製例9に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品9と、それぞれ称する。
【0077】
【表3】

【0078】
(マルチトールコーティングによる対照品1〜8の調製)
表3中の比較例1〜8に示す配合割合に従い、調製例1と同じマルチトールを使用してそれぞれコーティング溶液を調製した。なお、比較例3で使用する炭酸カルシウムは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:炭酸カルシウム、鹿1級)を使用し、タルクは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:タルク)を使用した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法でコーティング製品を調製した。比較例1に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品1と、比較例2に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品2と、比較例3に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品3と、比較例4に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品4と、比較例5に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品5と、比較例6に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品6と、比較例7に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品7と、比較例8に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品8と、それぞれ称する。
【0079】
【表4】

【0080】
(キシリトールコーティングによる発明品10〜11、対照品9の調製)
キシリトールとして市販のキシリトール結晶(商品名:キシリット、東和化成工業株式会社製)を使用し、表4中の調製例10〜11及び比較例9に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例10に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品10と、調製例11に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品11と、比較例9に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品9と、それぞれ称する。
【0081】
【表5】

【0082】
(ラクチトールコーティングによる発明品12〜13、対照品10の調製)
ラクチトールとして市販のラクチトール結晶一水和物(商品名:ミルヘン(登録商標)、東和化成工業株式会社製)を使用し、表5中の調製例12〜13及び比較例10に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例12に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品12と、調製例13に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品13と、比較例10に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品10と、それぞれ称する。
【0083】
【表6】

【0084】
(パラチニットコーティングによる発明品14〜16、対照品11〜12の調製)
パラチニットとして、市販のパラチニット製品(商品名:パラチニットGSタイプ、三井製糖株式会社製)と、パラチニット製品(商品名:パラチニットPNタイプ、三井製糖株式会社製)を使用し。表6中の調製例14〜16及び比較例11〜12に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例14に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品14と、調製例15に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品15と、調製例16に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品16と、比較例11に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品11と、比較例12に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品12と、それぞれ称する。
【0085】
【表7】

【0086】
(エリスリトールコーティングによる発明品17〜18、対照品13の調製)
エリスリトールとして市販のエリスリトール結晶(商品名:エリスリトール、三菱化学フーズ株式会社製)を使用し、表7中の調製例17〜18及び比較例13に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例17に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品17と、調製例18に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品18と、比較例13に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品13と、それぞれ称する。
【0087】
【表8】

【0088】
(トレハロースコーティングによる発明品19〜20、対照品14の調製)
トレハロースとして市販のトレハロース結晶(商品名:トレハ(登録商標)、株式会社林原商事製)を使用し、表8中の調製例19〜20及び比較例14に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例19に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品19と、調製例20に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品20と、比較例14に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品14と、それぞれ称する。
【0089】
【表9】

【0090】
(砂糖コーティングによる発明品21〜22、対照品15の調製)
砂糖として市販の砂糖結晶(商品名:グラニュー糖、大日本明治製糖株式会社製)を使用し、表9中の調製例21〜22及び比較例15に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例21に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品21と、調製例22に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品22と、比較例15に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品15と、それぞれ称する。
【0091】
【表10】

【0092】
(マンニトールコーティングによる発明品23〜24、対照品16〜17の調製)
マンニトールとして市販のマンニトール結晶(商品名:マンニットS、東和化成工業株式会社製)を使用し、表10中の調製例23〜24及び比較例16〜17に示す配合割合に従い、それぞれコーティング溶液を調製した。なお、調製例23、調製例24、比較例3で使用する炭酸カルシウムは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:炭酸カルシウム、鹿1級)を使用し、タルクは関東化学株式会社製の試薬(試薬名:タルク)を使用した。その後は、各調製例毎に、発明品1と同様の調製方法で硬質コーティング製品を調製した。調製例23に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品23と、調製例24に示す配合割合に従って調製された硬質コーティング製品は発明品24と、比較例16に示す配合割合に従って調製されたコーティング製品は対照品16とそれぞれ称する。なお、比較例17に示す配合割合に従ってコーティング操作を行ったが、コーティング層は形成されず、対照品17を得ることはできなかった。
【0093】
上記調製例および比較例に記載した方法によって調製された発明品1〜24及び対照品1〜17について、評価試験1:硬質コーティング層の強度、評価試験2:硬質コーティング層表面の平滑性、評価試験3:硬質コーティング製品の崩壊性、評価試験4:乾燥条件下での保存による硬質コーティング製品のひび割れ率、評価試験5:硬質コーティング製品のクランチ性、以上の5項目を評価した。評価試験の実施方法及び評価基準は以下の通りである。
【0094】
(評価試験1)硬質コーティング層の強度
各調製例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品について、それぞれの製品を任意に20検体取出して、30cmの高さから大理石上に自由落下させ、硬質コーティング層の表面にひび割れが生じるまでに要する落下回数を測定する落下試験を行い、20検体の平均値を硬質コーティング層の強度として、その結果を評価した。
【0095】
(評価試験2)硬質コーティング層の平滑性
各調製例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品について、それぞれの製品を任意に20検体取出して、訓練されたパネリスト10名の目視により、コーティング層表面の凹凸を以下の基準で採点し、その点数からコーティング層の平滑性を評価した。平滑性の評価は、3点:「凹凸が全く無し」、2点:「凹凸がほとんど無し」、1点:「若干凹凸あり」、0点:「凹凸が多い」として集計し、結果は30点〜26点を「平滑」として◎、25点〜16点を「やや平滑」として○、15点〜6点を「少し凹凸あり」として△、5点以下を「凹凸あり」として×でそれぞれ表した。
【0096】
(評価試験3)硬質コーティング製品の崩壊性
各実施例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品について、それぞれの製品を任意に6検体取出して、崩壊度試験器による崩壊性試験を行い、6検体の崩壊時間の平均値を求め、崩壊性を評価した。
【0097】
(評価試験4)乾燥条件下での保存による硬質コーティング製品のひび割れ率
各実施例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品について、それぞれの製品を任意に10検体取出して、シリカゲルを入れたデシケータ内(相対湿度9%)に、20℃で3ヶ月間、暗所で保管し、硬質コーティング製品の状態を観察した。実験に使用した検体中、硬質コーティング製品の表面にひび割れが生じたものをカウントし、以下の計算式Aによりひび割れ率を求めた。
計算式A:ひび割れ率(%)=(ひび割れが生じた検体数)÷(測定検体総数)×100
【0098】
(評価試験5)硬質コーティング製品のクランチ性
各実施例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品について、それぞれの製品を任意に取出して、訓練されたパネリスト10名が各硬質コーティング製品を服用し、口の中で噛み砕き、その時に感じることが出来る食感について以下の基準で採点し、その点数から硬質コーティング製品のクランチ性を評価した。クランチ性の評価は、3点:「パリパリとした食感を強く感じる」、2点:「パリパリとした食感を感じる」、1点:「パリパリとした食感が弱い」、0点:「パリパリとした食感がない」として集計し、結果は30点〜26点を「良好なクランチ性を有する」として◎、25点〜16点を「やや良好なクランチ性を有する」として○、15点〜6点を「クランチ性がやや不良である」として△、5点以下を「クランチ性が不良である」として×で表した。
【0099】
各実施例で得られた発明品及び各比較例で得られた対照品のそれぞれについて実施した上記評価試験1〜5の結果は、以下の通り表に示す。マルチトールを主成分とする発明品1〜9の結果は表11に示した。マルチトールを主成分とする対照品1〜8の結果は表12に示した。キシリトールを主成分とする発明品10〜11および対照品9の結果は表13に示した。ラクチトールを主成分とする発明品12〜13および対照品10の結果は表14に示した。パラチニットを主成分とする発明品14〜16および対照品11〜12の結果は表15に示した。エリスリトールを主成分とする発明品17〜18および対照品13の結果は表16に示した。トレハロースを主成分とする発明品19〜20および対照品14の結果は表17に示した。砂糖を主成分とする発明品21〜22および対照品15の結果は表18に示した。マンニトールを主成分とする発明品23〜24および対照品16〜17の結果は表19に示した。
【0100】
【表11】

【0101】
【表12】

【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】
【表15】

【0105】
【表16】

【0106】
【表17】

【0107】
【表18】

【0108】
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を含有し、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを硬質コーティング層の固形物換算で0.1〜10.0重量%含有する、硬質コーティング層。
【請求項2】
ヒドロキシアルキル化デキストリンが、ヒドロキシプロピル化デキストリンである、請求項1に記載の硬質コーティング層。
【請求項3】
ヒドロキシアルキル化デキストリンのデキストロース当量(DE)が0.1以上5.0未満である、請求項1又は2に記載の硬質コーティング層。
【請求項4】
ヒドロキシアルキル化デキストリンが、架橋剤により架橋されたものである、請求項1から3の何れか一つに記載の硬質コーティング層。
【請求項5】
ヒドロキシアルキル化デキストリンが、固形分濃度30重量%、温度30℃の水溶液とした時に、50〜350cpの粘度を示す、請求項1から4の何れか一つに記載の硬質コーティング層。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載された硬質コーティング層により芯材が被覆された、硬質コーティング製品。
【請求項7】
コーティング溶液の固形成分中の主成分として、砂糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、または1,6−GPS(α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール)と1,1−GPM(α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール)の混合物、以上の糖類および糖アルコール類の群から選ばれる何れか一種を含有し、補強剤としてヒドロキシアルキル化デキストリンを含有するコーティング溶液を芯材に塗布し、これを乾燥させてコーティング溶液から固形物を晶出させ、コーティング溶液の塗布と乾燥を繰り返し実施する、硬質コーティング製品の製造方法。


【公開番号】特開2007−176908(P2007−176908A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380327(P2005−380327)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000223090)東和化成工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】