説明

磁性を有する高比強度アルミニウム機能性材料

【課題】純粋アルミニウム含む混合物を用いることにより軽量化を達成すると同時に強度があり、磁性を付与された新規なアルミニウム混合物構造材料及びその製造方法の提供。
【解決手段】粉状の純粋アルミニウムとフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50の混合物をメカニカルアロイングして硬度が向上した純粋アルミニウムとフェライト混合物を得た後、放電プラズマ焼結することにより得られることを特徴とするアルミニウム及びフェライト焼結固化成形体及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性を有する高比強度アルミニウム機能性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
純アルミニウムの特性は高延性・低強度の点に特徴がある。純アルミニウムは、その強度が他のアルミニウム合金と比べて非常に低い。このため軽量化などを意図して、輸送機器等に用いることはあっても、強度或いは硬度を高めることを意図して構造材料へ適用を意図して純アルミニウムを使用することは皆無である。純アルミニウムの強度を高めるためには、金属製多孔質プリフォームとその空隙中に充填されたマトリックス金属とからなる金属複合材料の製造方法などの開発が進められている。具体的には、マトリックス金属としてマグネシウム、アルミニウム、亜鉛又はそれらの合金を用いること、多孔質プリフォームは連続気孔を持ち、空隙率が80%以上であり、空隙サイズの平均直径が0.1mm以上であること、及び473K以上に予熱された多孔質プリフォームを金型内に収容し、マトリックス金属の溶湯をダイカスト鋳造法、低圧鋳造法又は重力金型鋳造法により多孔質プリフォームの空隙中に充填すること(特許文献1 特開2008−266023号公報)などが知られている。その他にも、他の添加成分を有する金属合金物品を該金属合金の溶融を伴わずに作製する発明(特許文献2 特開2005−330585号公報)などが知られている。このような努力によりアルミニウムの特性として強度を向上させることが可能となる。強度などの物性をある程度向上させることができものの、依然としてその特性は非磁性体である点に限られる。
【0003】
非磁性体のアルミニウムを磁性体とし、磁性を有する高比強度アルミニウム機能性材料を目指した材料開発は現状では皆無に等しく、その適用例も見あたらないのが現状である。
軽量なアルミニウムに磁性を有するようにして機能性を付与させたい場合には、一般的に他の技術分野で行われている溶解・鋳造法の適用を考えることが一般的であると考える。
磁性材料となるようにするには、アルミニウムに磁性材料となる成分を用いてアルミニウムに複合化しようとする場合には、アルミニウムと添加成分である磁性材料となる成分を用いて複合化しようとする場合には、アルミニウムと添加成分では融点差や密度差が存在し、この差を克服して、その複合化を達成することは一般的に難しいとされてきた。
複合化が可能であった場合でも磁性材料をアルミニウム中に磁性材料を均一に分散させることは、溶解・鋳造法による限り困難を伴う。
この理由から、アルミニウムと磁性材料を複合化することは極めて少ない現状にある。例えば、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末に8〜60重量%の繊維状強磁性体を混合させて250〜650℃で加熱圧縮(熱間圧縮)することが知られている(引用文献3 特開昭57−51231号公報、特許文献4 特開昭61−1040401号公報)。材料がネットワーク構造を呈する磁性アルミニウム複合材料が開示されている(特許文献5 特開平01−290734号公報)。いずれも磁性を有する材料を得ることは示されている。得られるアルミニウム複合材料について高比強度については格別触れるところはない。磁性を有するアルミニウム複合材料につては得ること可能であるにしても、磁性を有する高比強度アルミニウム機能性材料を見出すことはできない。
アルミニウムまたはアルミニウム合金と磁性材料から構成され、磁性アルミニウム又はアルミニウム合金に、ストロンチウムフェライト磁性材料とを含有する磁性アルミニウム複合体であって、前記磁性材料からなる粒子が前記アルミニウム又はアルミニウム合金中で分散しており、前記粒子の平均粒径が5μm以下である磁性アルミニウム複合体(特許文献6 特開2006−257513号公報)がある。
特許文献6記載の磁性アルミニウム複合材料は、磁性材料粉末を押し固めて、磁性材料のプリフォームを作製し、このプリフォームに、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を800℃以上で加圧鋳造により含浸させるため、磁性材料粉末を均一に分散させることが困難であり、十分な磁性を得ることは困難である。磁性材料粉末の粒子径については、なんらの規定もなされておらず、磁性材料粉末の粒子径が大きい場合には、プリフォーム作製中に磁性材料粉末が変形したり、割れたりすることにより、磁性材料粉末を均一に分散させることが困難となる場合がある。このように磁性アルミニウム複合体は、十分な磁性を示せなくなる傾向にある。一方、十分な磁性を得るために磁性アルミニウム複合体中の磁性材料の含有率を増加させる方法も考えられるが、この場合は磁性アルミニウム複合体の重量が大きくなり、上記軽量化の要請に応えることができない問題がある。この発明では、その特性を、「磁性アルミニウム複合体は、磁性を有し、軽量であるのみならず、電気伝導性、熱伝導性、加工性にも優れるものとなる。したがって、本発明の磁性アルミニウム複合体は、モーター用磁石、電磁弁、磁気シールド材等の電子・電気機器部材として幅広く用いることができる。」とし、もっぱら、磁性材料を意図しているものであり、構造体に用いるための材料強度などについては意図するところがない。
磁気記録の高記録密度化を実現する技術として垂直磁気記録方式が注目され、規則化した合金材料が、細孔中に充填されている構造体の発明(特許文献7 特開2007−107086号公報)がある。この場合も情報記録に用いるための磁性材料の特性に着目するものであり、構造材に要求される強度については触れられておらず、一般的に用いることができる構造材を目指すものではない。
鋳型のキャビティ内に無機粉体を充填し、次いで上記キャビティ内の無機粉体中に半溶融状態の半溶融軽金属を加圧浸透させる軽金属複合材料の製造方法(特許文献8 特開 2007−302952号公報)では、軽金属としてアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金など、無機粉体としてアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)、及びボロン(B)から選ばれた1種又は2種以上の元素の酸化物、炭化物、ホウ化物、又は窒化物を用いて、光触媒活性、超伝導性、磁性、発光性、耐摩耗性、及び耐熱性などの機能性を付与することを述べる。磁性材料として傑出している点を踏まえて構造材として用いることとして十分なものとなっていない。
【0004】
小片状または粒状のマトリックス金属材と強化材とを、ボールミル機により混合してマトリックス金属材に強化材を付着させた後、この混合物をふるいにかけて所定寸法以上のものを分別し、これを原料に用いて半溶融もしくは溶融状態にて射出成形することを特徴とする金属基複合材料の製造方法(特許文献9 特開平09−295122号公報)が知られている。この製造方法ではアルミニウムの処理に適用することを突如として用いることを定めることができるというものではない。
【0005】
以上述べたことから明らかなように、純アルミニウムを用いることにより軽量化を達成すると同時に高比強度を有している、磁性を付与されたアルミニウム構造材料に対する要望は潜在的に高く、この開発が求められている。
【特許文献1】特開2008−266023号公報
【特許文献2】特開2005−330585号公報
【特許文献3】特開昭57−51231号公報
【特許文献4】特開昭61−1040401号公報
【特許文献5】特開平01−290734号公報
【特許文献6】特開2006−257513号公報
【特許文献7】特開2007−107086号公報
【特許文献8】特開2007−302952号公報
【特許文献9】特開平09−295122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、純粋アルミニウム含む混合物を用いることにより軽量化を達成すると同時に強度があり、磁性を付与された新規なアルミニウム混合物構造材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題について研究し、以下のことを見出して本発明を完成させた。
(1)純粋アルミニウムとフェライトより純粋アルミニウムとフェライト混合物を得ようとする場合には、フェライトにアルミニウムが十分に被吸着されている状態とし、この状態で硬度が向上したフェライトにアルミニウム混合物を製造することが重要であり、フェライトとアルミニウム混合物を焼結する際には、フェライト粉末を分解させないことが必要であると考えた。
(2)純粋アルミニウムとフェライト混合物を得ようとする場合には、フェライトにアルミニウムが十分に被吸着されている状態とし、この状態で硬度が向上したフェライトにアルミニウム混合物を製造することにより、従来困難とされていた、融点は高温であり、密度が高い磁性材料と、磁性材料に比較して融点は低温であり、密度が低いアルミニウムとを均一な状態に保つことができる、硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を製造し、これを前駆体として特定の条件下で放電プラズマ焼結することにより、目的とするアルミニウムとフェライト混合物焼結体を得ることができる。
(3)具体的には本発明は以下の通りである。
(ア)粉状の純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングして得られことを特徴とする硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライトからなる混合物。
(イ)前記粉状の純粋アルミニウム及びフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50である前記(ア)記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物。
(ウ)粉状の純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングすることを特徴とする硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物の製造方法。
(エ)前記粉状の純粋アルミニウム及びフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50であることを特徴とする(ウ)記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物の製造方法。
(オ)前記(ア)又は(イ)記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を放電プラズマ焼結することにより得られることを特徴とするアルミニウム及びフェライト混合物焼結体。
(カ)前記(ウ)又は(エ)記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を製造した後、放電プラズマ焼結することを特徴とするアルミニウム及びフェライト混合物焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミニウム含有磁性により被吸着される新規な材料を得ることができる。この材料を用いて焼結することにより、新規なアルミニウム合金とし、磁石に付着することなどが可能となり、現在材料の分野で進められている、軽量構造が必要で、かつ、磁性を有する分野への新しい材料を提供することが可能となる。産業用を初め家庭電化製品や、事務機器用品産業に用いられる製品に画期的な特性を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、微粉末の純粋アルミニウムを用いる。純粋アルミニウムは通常の製法で製造されるアルミニウム及び不可避的不純物より構成されるアルミニウムを意味する。
微粉末の純粋アルミニウムは、通常の製法で得られるアルミニウム微粉末を用いる。例えば、オーストラリアのECKAグラニュレス社製を挙げることができる。このアルミニウム微粉末は噴霧法によって製造されたアルミニウム微粉末粒子を再粒子化することにより得ることができる。
純度はアルミニウム99.7重量%以上、シリコン0.10重量%以下、鉄0.20重量%以下、他の成分は0.02重量%以下である。
【0010】
アルミニウム微粉末の粒径分布は、クールターLS130レーザー回折によると、最大粒径100μm、90%以上が60μm以下であった。回折結果を図1に表示した。
【0011】
また、本発明では、不可避的不純物を含むフェライト微粉末を用いる。
フェライトの平均粒子径は1.8μmである。
【0012】
純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングする。メカニカルアロイングを行う際の、純粋アルミニウムとフェライトの前記粉状の純粋アルミニウムとフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50である。この重量割合を保つことにより、フェライトにアルミニウムが十分に被吸着されている状態とすることができる。
【0013】
メカニカルアロイングは、前記重量割合の純粋アルミニウム及びフェライト混合物を、遊星ボールミル、振動ボールミル、高速回転ボールミルなどを用いた機械的な手段による微粉末化すると同時にメカノケミカル反応させる処理をいう。
なお、本発明ではアメリカのSPEX社で8000型振動型のボールミルを採用した。操作ではカタログ記載の回転数である1425rpmを採用した。この条件は通常の操作条件である。他の機種を用いる場合にも各機種の通常の操作条件により行うことができる。
【0014】
フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物を2時間から8時間のメカニカルアロイングした結果について硬度を測定した結果を図2に示した。前記時間については8時間を超える時間をかけることができる。得られる内容を検討して進める事項である。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングでは重量割合が50対50のとき(52、54、58AlFRの場合、▲により示す)が、得られる混合物のビッカース硬度が最も高い。次いで、重量割合が70対30のとき(32,34、38AlFRの場合、●により示す)が、ビッカース硬度が次に高い。そして、重量割合が90対10のとき(12,14,18AlFRの場合、■により示す)は得られる混合物のビッカース硬度が最も低い結果となっている。
純粋アルミニウム(◆により示す)ではビッカース硬度は最も低い。
フエライト(▼により示す)は、ビッカース硬度はフェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物より低いことを示している。
純粋アルミニウムとフエライトの結果から見て、純粋アルミニウムとフエライトの混合物のメカニカルアロイングによりビッカース硬度が高い結果を得ることができることは予想外のことであった。
10mass%フェライト90mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
150HV
30mass%フェライト70mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
190HV
50mass%フェライト50mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
275HV
純粋フェライト ビッカース硬さ 8時間処理
80HV
純粋のフェライト単独でメカニカルアロイングでは時間をかけるにしたがって、硬度は低下する結果となっている。純粋アルミニウムにフェライトを添加することによる効果を確認することができる。
【0015】
以上の結果より、粉状の純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングすることにより当初の純粋アルミニウム及びフェライトの各ビッカース硬度に比較してビッカース硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を得ることができることがわかった。具体的な数値としては150HV〜275HVの間の数値を確認している(図2)。
【0016】
フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングによる飽和磁束密度の変化及び保持力の変化は図3に示すとおりである。
【0017】
フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングによる飽和磁束密度の変化は以下の通りである。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物をメカニカルアロイングする場合には、重量割合が50対50の場合(52、54、58AlFRの場合、▲により示す)が高く推移する。次いで、重量割合が70対30のとき(32,34、38AlFRの場合、●により示す)が、次に高く推移する。そして、重量割合が90対10のとき(12,14,18AlFRの場合、■により示す)は最も低く推移する。
純粋フェライトの場合(▼による示す)は前記の最も高い場合よりも高く推移する。
メカニカルアロイングによる時間の影響はあまり受けないことを示している。
純粋フエライト(▼により示す)の、飽和磁束密度は純粋アルミニウム及びフェライト混合物より高いことを示している。
純粋フェライト 8時間後 飽和磁束密度 0.3T

50mass%フェライト50mass%アルミニウム
8時間後 飽和磁束密度 0.1T
30mass%フェライト70mass%アルミニウム
8時間後 飽和磁束密度 0.05T
10mass%フェライト90mass%アルミニウム
8時間処理後 飽和磁束密度 0.02T
【0018】
純粋フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングによる保持力の変化は以下の通りである。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングでは重量割合が50対50のとき(52、54、58AlFRの場合、△により示す)が、2時間の処理の場合は比較的低い状態で推移し、8時間経過後に混合物の中では最も高い状態に推移している。
次いで、重量割合が70対30のとき(32,34、38AlFRの場合、〇により示す)が、混合物の中では2時間の処理の結果、最も低い状態から出発し、4時間では最も高い状態となり、8時間後には重量割合が50対50の場合の次に高い状態となる。
そして、重量割合が90対10のとき(12,14,18AlFRの場合、□により示す)の混合物の場合は、メカニカルアロイングが2時間の場合が、3種の混合物の中で最も高く、その後、最も低い状態で推移している。
純粋フェライトの場合が保持力は最も高い
50mass%フェライト50mass%アルミニウムの場合の保持力は次に高い。
10mass%フェライト90mass%アルミニウムの場合が保持力は一番低い。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングの重量割合が50対50の場合が最も高く、90対10の重量割合の場合が最も低い。
純粋フェライトのみをメカニカルアロイングした場合の保持力は純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングする場合の保持力より高い結果となっている。
純粋フェライト 8時間後 保持力 11kA/m
50mass%フェライト50mass%アルミニウム
8時間後 保持力 5kA/m
30mass%フェライト70mass%アルミニウム
8時間後 保持力 4kA/m
10mass%フェライト90mass%アルミニウム
8時間 保持力 3kA/m
【0019】
前記の純粋アルミニウム及びフェライト混合物をメカニカルアロイングして得られるビッカース硬度が向上させた状態で、放電プラズマ焼結法を用いて焼結処理を行なう。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物をメカニカルアロイングした混合物を、焼結するための装置を図4に示した。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物をメカニカルアロイングした混合物1を、成形用型21内に充填し放電プラズマ焼結装置にセットした後、放電プラズマ焼結法により焼結する。
【0020】
放電プラズマ焼結装置は、真空チャンバー20と、上下一対の加圧ラム24、25と、パルス電圧を発生させる焼結用電源32と、加圧ラム24、25を昇降駆動する油圧式の加圧駆動機構33と、これらを制御する制御部31とを有している。
【0021】
前記の純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングした混合物1を装入した成形用型21は、真空チャンバー20内の加圧ラム24、25間にセットされる。
真空チャンバー20内を真空ポンプ22により脱気し、真空状態(減圧状)あるいは真空チャンバー20内を不活性ガス雰囲気として焼結を行う。
これによって、真空チャンバー20内の酸素、窒素、水等と純粋アルミニウム及びフェライト混合物1の被焼結物に含まれる反応性の高い成分等とが反応し、焼結体に好ましくない影響を及ぼすことを回避できる。
【0022】
制御部31は、成形用型21に設置された図示しない温度センサー(熱電対)により検出される材料温度が予め設定された昇温曲線と一致するように焼結用電源32の出力を制御する。また、制御部31は、加圧駆動機構33及び真空ポンプ22の駆動を制御する。
【0023】
上下一対の第1の押圧子26、第2の押圧子27は、各々加圧ラム24および25に固定されており、加圧ラム24、25内に設けられた給電端子(図示せず)により焼結用電源32と電気的に接続されている。加圧駆動機構33の作動により、加圧ラム24、25を互いに接近する方向に移動し、これらに固定された第1の押圧子26、第2の押圧子27で微粉状の純粋アルミニウム及びフェライト混合物1を圧縮する。
【0024】
微粉純粋アルミニウム及びフェライト混合物1の圧粉体と第1の押圧子26及び第2の押圧子27との間には、各々断熱材28,29を介在させることが好ましい。これにより、電流が第1の押圧子26又は2の押圧子27に集中した場合、加熱した第1の押圧子26又は第2の押圧子27から微粉純粋アルミニウム及びフェライト混合物の圧粉体への熱の拡散が遮断され、局所的な加熱および高温化を防止する。したがって、微粉純粋アルミニウム及びフェライト混合物1の圧粉体の焼結時の温度が均一化され、均質で高品位な焼結体を得ることができる。
【0025】
さらに、断熱材28及び29と、微粉純粋アルミニウム及びフェライト混合物1の圧粉体と第1の押圧子26、第2の押圧子27との間には各々カーボンシートを介在させることが好ましい。
【0026】
放電プラズマ焼結は、第1の押圧子26、第2の押圧子27を通してパルス電圧を印加し、圧縮通電系を加熱する。焼結系の温度が所定温度に達したら、かかる温度で一定時間保持し、複合体を形成する。
【0027】
焼結温度は適宜採用できる。本発明では673〜1073Kの範囲で行った。通常、焼結温度は600〜1200K程度の範囲で行うことができる。600K以下であると十分に焼結による効果が得られないことがある。1200Kを超える場合には、焼結が進みすぎて適当でない場合がある。焼結温度はフェライト粉末を分解させないことが必要であるとの認識の下に焼結温度と処理時間を変化させた条件下に純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングした混合物を焼結して、焼結体を得たものである。
処理時間は20分より1時間程度必要とされる。
圧力は40〜60MPaの範囲であれば問題なく、49MPa程度で行った。
混合粉末を放電プラズマ焼結装置で固化成形したときの焼結体について、焼結時間を変化させてビッカース硬度の変化の状態は図5に示すとおりである。又、混合粉末を放電プラズマ焼結装置でバルク材に加工する際の焼結温度と飽和磁束密度及び保持力を測定した結果は図6に示すとおりである。
【0028】
ビッカース硬度の測定結果は以下の通りである。
10mass%フェライト90mass%アルミニウム混合物を焼結した場合の結果を示す混合物の焼結時間の変化に応じたビッカース硬度は以下の通りである。
【0029】
10mass%フェライト90mass%アルミニウムを4時間メカニカルアロイングした場合について焼結温度と飽和磁束密度の関係は以下の通りである。
焼結温度と飽和磁束密度の関係は焼結温度773Kの場合は0.028Tで最大、873から973Kの場合は0.005T程度に下がり、1073Kでは0となる。
【0030】
10mass%フェライト90mass%アルミニウムを4時間メカニカルアロイングした場合について保持力の結果は以下の通りである、673Kで8kA/m、973Kで6kA/m、1073Kで92kA/mで最大となる。
【0031】
以上の焼結温度と飽和磁束密度及び保持力を測定より、焼結温度を定めると、飽和磁束密度及び保持力についての数値がわかり、磁性を有する構造材を明確にすることができる。873〜973Kを採用した場合の飽和磁束密度及び保持力が図6より明らかになる。この場合の飽和磁束密度及び保持力であれば磁性を有する構造材であることが分かる。
【0032】
以下に本発明の具体例を実施例として示す。本発明はこの実施例により限定されるものではない。
本発明で得られる磁性を有する高比強度アルミニウム機能性材料であるビッカース硬度の測定法は以下の通りである。
ビッカース硬度の測定法は、固化成形した材料の表面を研磨後、ビッカース硬度計を用いて、試験荷重1kg、保持時間15秒、測定を7回行い、それらの平均値を求めた。
飽和磁束密度の測定及び保持力の測定法は以下の通りである。
試料の飽和磁化Msおよび保磁力Hcの測定には東京工業社製の振動試料型磁力計VSM515(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)を使用した。800kA/m及び40kA/mの磁界中でM−H曲線を測定することにより求めた。振動試料型磁力計は、電磁石のポールピース間隔で磁化した試料を上下に0.1〜0.2nm程度の振幅で80Hz程度の一定振動させることにより、その外側に置かれた検出コイル内に磁束が発生し、電磁誘導現象により試料の磁化値に比例し誘導起電力が発生する。この誘導起電力の大きさにより、試料の磁化値を測定することができる。測定時には粉末Ni標準試料に800kA/mの磁界を印加し磁化値の校正を行っている。また、測定時に各粉末試料の重量を5.0±5%mg程度とし、電磁石のポールピース間にある試料ホルダーに取り付けて計測を行った。
SPS材のVSM測定は試料を4×6mm、厚さ1mmに加工し透明の棒の先端部分に装着して、電磁石のポールピース間にある試料ホルダーに取り付けて計測を行った。
【実施例1】
【0033】
(1)原料物質の調整について
純粋アルミニウムの純度はアルミニウム99.7重量%以上、シリコン0.10重量%以下、鉄0.20重量%以下、他の成分は0.02重量%以下であった。
粒体の粒径分布は最大粒径100μm、90%以上が60μm以下であった。(図1)。
フェライトの平均粒子径は1.8μmであった。
【実施例2】
【0034】
(2)メカニカルアロイング
フェライト、純粋アルミニウム及びフェライト混合物を2時間から8時間のメカニカルアロイングした結果について硬度を測定した結果を図2に示した。
純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングでは重量割合が50対50のときが、得られる混合物のビッカース硬度が最も高く、90対10のときが得られる混合物のビッカース硬度が最も低い結果となっている。
10mass%フェライト90mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
150HV
30mass%フェライト70mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
190HV
50Mass%フェライト50mass%アルミニウム ビッカース硬さ 8時間処理
275HV
純粋フェライト ビッカース硬さ 8時間処理
80HV
【実施例3】
【0035】
メカニカルミリング及び焼結体の製造方法は以下の通りである。
(1)10mass%フェライト90mass%アルミニウム混合物を4時間メカニカルアロイングして混合物を得た。
(2)焼結体の製造
10mass%フェライト90mass%アルミニウム混合物を4時間メカニカルアロイングして混合物を673K、773K、873K、973K、1073Kの温度下焼結した。
ビッカース硬度の測定結果は図5の通りである。
10mass%フェライト90mass%アルミニウムを4時間メカニカルアロイングした場合について結果は以下の通りである。
焼結温度873K、973Kまでの焼結体は、アルミナが生成するために二番目に優れたビッカース硬度を有しており、構造材として使用することができることがわる。
SPSバルク材の上側と下側で硬さが異なる結果となりました。硬さが高い面をハードサイド、硬さが低い面をソフトサイドと命名しました。
10mass%フェライト90mass%アルミニウムを4時間メカニカルアロイングした場合について焼結温度と飽和磁束密度の結果(図6)の通りである。
焼結温度と飽和磁束密度の関係は焼結温度773Kの場合は0.028Tで最大、873Kから973Kの場合は0.005T程度に下がり、1073Kでは0となる。
【0036】
10mass%フェライト90mass%アルミニウムを4時間メカニカルアロイングした場合について保持力の結果は以下の通りである、673Kで8kA/m、973Kで6kA/m、1073Kで92kA/mで最大となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】粉状アルミニウムの粒径分布を示す図である。
【図2】フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物をメカニカルアロイングした結果について硬度を測定した図。
【図3】フェライト並びに純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイングによる飽和磁束密度の関係及び保持力の関係を示す図。
【図4】放電プラズマ焼結装置を示す図。
【図5】混合粉末を放電プラズマ焼結装置で固化成形した時の焼結体(バルク材)の硬さ測定結果。
【図6】混合粉末を放電プラズマ焼結装置で焼結体(バルク材)に加工する際の焼結温度と飽和磁束密度及び保持力の測定結果。
【符号の説明】
【0038】
1:微粉純粋アルミニウム及びフェライト混合物のメカニカルアロイング生成物、又はフェライト
20:真空チャンバー
21:成形用型
22:真空ポンプ
24:加圧ラム
25:加圧ラム
26:第1の押圧子
27:第2の押圧子
28:断熱材
29:断熱材
31:制御部
32:焼結用電源
33:加圧駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状の純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングして得られことを特徴とする硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物。
【請求項2】
前記粉状の純粋アルミニウム及びフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50であることを特徴とする請求項1記載の硬度が向上した純粋アルミニウムとフェライト混合物。
【請求項3】
粉状の純粋アルミニウム及びフェライトをメカニカルアロイングすることを特徴とする硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物の製造方法。
【請求項4】
前記粉状の純粋アルミニウム及びフェライトの重量割合は、90〜50対10〜50であることを特徴とする請求項3記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を放電プラズマ焼結することにより得られることを特徴とするアルミニウム及びフェライト焼結固化成形体。
【請求項6】
請求項3又は4記載の硬度が向上した純粋アルミニウム及びフェライト混合物を製造した後、放電プラズマ焼結することを特徴とするアルミニウム及びフェライト焼結固化成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265492(P2010−265492A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115660(P2009−115660)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】