説明

磁性トナー及び現像方法

【課題】磁性トナー粒子表面に磁性微粒子を外添する際、磁性微粒子を磁性トナーから遊離させず、遊離した磁性微粒子の蓄積によって生じる、画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト、更にはスジ・ムラ画像の発生を抑制することである。
【解決手段】結着樹脂、磁性酸化鉄と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と、磁性トナー粒子表面に少なくとも磁性微粒子とを有する磁性トナーであって、該磁性微粒子は、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、該磁性微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下で処理されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法に用いられる磁性トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法を用いた画像形成装置としての複写機やプリンタ等は、パーソナルユースからプロフェッショナルユースへのシフトにより、性能面では、より高精彩化、より高速化、そして、より高信頼性化が厳しく追及されるようになってきた。特にモノクロの画像形成装置分野では、軽印刷(多品種少量印刷が可能なプリント・オン・デマンド;POD)用途として本格的な使用が開始されており、高生産性と高耐久性、低ランニングコストが一層求められている。オフィスユース等のプリンティング環境においても、信頼性、プリント品質、耐久性等の面で、従来よりも高い能力が必要とされている。よって、モノクロの画像形成装置に関しては、更なる高速化に伴う生産性の向上と、メンテナンスフリーを可能とする耐久性を有し、低ランニングコストを達成することが、非常に重要となってきている。
【0003】
従来、モノクロの画像形成装置に用いられてきた現像剤は、磁性トナーを用いた磁性一成分現像剤と、トナーとキャリアを混合した二成分系現像剤がある。このうち、磁性一成分現像剤を用いた現像装置は、二成分系現像剤を用いた現像装置と比較して、キャリアを使用しないので、現像装置の小型化や軽量化に有利であり、広く用いられている。又、磁性一成分現像剤はキャリアを用いないので、長期に渡るプリントによるキャリア劣化等の諸問題が無いので、更なる高生産性及び耐久安定性には適しているといえる。
【0004】
磁性一成分の現像方法としては、以下のような方法が知られている。まず、磁性一成分の現像装置としては、磁性トナーを担持、搬送するための現像剤担持体(現像スリーブ)と、現像スリーブに近接、又は圧接して配置されている現像スリーブ上に磁性トナーの薄層を形成するための現像剤層厚規制部材(現像ブレード)を有する。その現像スリーブによって磁性トナーを静電潜像担持体と対向する現像領域へと担持、搬送し、静電潜像担持体(感光体)上に形成された潜像を磁性トナーにより現像して可視像化する方法が磁性一成分現像方法である。磁性トナーを用いた現像装置において、上記した高生産性・耐久安定性を向上させるためには、磁性トナーの長期に渡る帯電安定性の更なる向上が必要であり、近年、種々の工夫が為されている。
【0005】
例えば、磁性トナーの帯電安定性を向上させるため、磁性微粒子を磁性トナー粒子表面に付着(外添)した磁性トナーが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。これらは、磁性微粒子の外添による磁性トナーの適正な摩擦帯電と、感光体上の磁性トナー成分・外添剤成分に起因する付着(フィルミング)成分や帯電部材による放電生成物を研磨、除去するという効果が示されている。そのような効果を示す理由としては、次のように考察される。まず、磁性微粒子の磁性トナー粒子への付着力が不十分であると考えられる。そのため、磁性トナー粒子からある程度磁性微粒子が遊離した状態であり、感光体上のフィルミング成分や放電生成物の研磨、除去という点では優れる。しかし、磁性トナー粒子からある程度磁性微粒子が遊離した状態だと、短期的には良好な摩擦帯電性であっても、長期的には磁性微粒子が現像スリーブ表面に蓄積されてしまい、トナーの帯電安定性が低下してしまいやすい。この現像スリーブ上への磁性粉の蓄積により発生する画像不良としては、例えば、現像スリーブ表面の摩擦帯電付与能の低下に伴う、画像濃度低下が挙げられる。又、トナーの帯電性が不均一となることから、カブリの悪化、画像領域の現像剤担持体(スリーブ)2周目以降に濃淡差を発生するスリーブゴースト等も発生し易くなる。更には、磁性微粒子の蓄積が偏析状態であり、磁性微粒子を核として磁性トナーの付着、融着等が発生すると、現像スリーブ−現像ブレード間の磁性トナー層の規制が不均一となり、コートスジやブレード傷によるスジ画像やムラ画像を発生してしまう場合もある。このような画像不良は、磁性トナーの帯電性、流動性に関わる問題であるので、特に高温高湿下において顕著に発生し易くなる。よって、磁性微粒子を磁性トナー粒子に外添する際には、上記したような画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト、スジ/ムラ画像の発生といった課題に対する対策が未だ不十分であるといえる。
【0006】
以上のように、磁性微粒子を磁性トナー粒子表面に外添する際に、高生産性・耐久安定性を更に向上させるためには、磁性微粒子を磁性トナー粒子表面から遊離させない手段が求められる。そのため、磁性微粒子を遊離させない磁性微粒子表面の表面処理が重要であるといえる。
【0007】
磁性微粒子の表面処理としては、従来、カップリング剤等による処理方法が広く知られている。又、低温定着性を向上するために、予め低軟化点物質で処理した磁性微粒子を含有させる磁性トナーも提案されている(特許文献3)。この低軟化点物質で処理した磁性微粒子は、離型効果が高く、磁性トナー中に分散されることで定着時にその離型効果により定着性を向上させるものである。しかしながら、この磁性微粒子に関しては、何ら外添に関しては言及されていない。
【0008】
よって、磁性トナー粒子表面に磁性微粒子を外添する際、高生産性・耐久安定性を更に向上させるために、磁性微粒子を磁性トナー粒子から遊離させず、画像不良に関わる課題に対する対策は、未だ不十分といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4072474号公報
【特許文献2】特開2007−101745号公報
【特許文献3】特許第429814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高生産性・耐久安定性の優れた磁性トナーを提供することである。即ち、磁性トナー粒子表面に磁性微粒子を外添する際、磁性微粒子を磁性トナーから遊離させず、遊離した磁性微粒子の蓄積によって生じる、画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト、更にはスジ・ムラ画像の発生を抑制することである。そして、いかなる環境下においても、長期に渡って良好な画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の本発明の構成により達成される。
【0012】
即ち、本発明は、[1]結着樹脂、磁性酸化鉄と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と、トナー粒子表面に少なくとも磁性微粒子とを有する磁性トナーであって、
該磁性微粒子は、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、該磁性微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下で表面処理されていることを特徴とする磁性トナーに関する。
[2]該磁性微粒子は、該炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で処理されていること特徴とする磁性トナーに関する。
[3]現像剤を担持、搬送するための現像剤担持体と、該現像剤担持体に近接、又は圧接して配置されている現像剤担持体上に現像剤の薄層を形成するための現像剤層厚規制部材を有し、該現像剤担持体によって現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと担持、搬送し、該静電潜像担持体上に形成された潜像を現像剤により現像して可視像化する現像方法において、
該現像剤担持体は、少なくとも円筒状もしくは円柱状の基体表面に樹脂被覆層を有し、
該現像剤は、[1]又は[2]に記載の磁性トナーであることを特徴とする現像方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、結着樹脂、磁性酸化鉄と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子表面に、炭化水素化合物で処理された磁性微粒子を有することで、磁性微粒子の遊離を効果的に抑制することができる。これにより、特に高温高湿下での長期の使用によって顕著となり易い、画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト画像、スジ・ムラ画像の発生を抑制できる磁性トナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の磁性微粒子に炭化水素化合物を処理する際に用いられる表面処理装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の磁性トナーを用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の磁性トナーを用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の磁性トナー粒子の表面改質装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の磁性トナーは、結着樹脂、磁性酸化鉄と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と、トナー粒子表面に少なくとも特定の表面処理を施した磁性微粒子とを有する磁性トナーある。そして、磁性トナーに含有される離型剤と、外添される磁性微粒子の表面処理剤との相乗効果で、上記課題である磁性微粒子の遊離に関わる課題を解決するものである。
【0017】
本発明に用いられる磁性微粒子は、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、磁性微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下で処理されている。本発明者らの鋭意検討の結果、磁性微粒子を炭化水素化合物で表面処理することで、磁性トナー粒子表面に存在する離型剤成分に炭化水素化合物で表面処理された磁性微粒子が選択的に付着させられることがわかった。これにより、磁性トナー粒子表面に磁性微粒子が保持されやすくなり、磁性トナー粒子表面からの磁性微粒子の遊離が抑制され、磁性微粒子の遊離に関わる画像不良の発生を効果的に抑制できることがわかったので、本発明に至った。
【0018】
本発明に用いられる炭化水素化合物としては、流動パラフィンやトナーに使用される公知のワックス等;例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく使用される。より好ましくは、磁性トナー中に含有させるワックスと同一のワックスを少なくとも一種類以上使用することが好ましい。
【0019】
本発明に用いられる炭化水素化合物の重量平均分子量は、300以上3000以下である。この範囲にあることで、炭化水素化合物で処理された磁性微粒子自体の二次凝集性もなく、単分散な状態での磁性トナー表面への付着性が良好となる。炭化水素化合物の重量平均分子量が300未満の場合は、炭化水素化合物で処理された磁性微粒子自体が二次凝集を発生し、磁性トナー表面への付着が不均一となるとともに、現像スリーブ表面への付着性が大きくなり、磁性トナーの融着等が発生しやすくなってしまう。炭化水素化合物の重量平均分子量が3000を超える場合は、炭化水素化合物の粘性が大きくなることで、磁性微粒子への炭化水素化合物の均一処理が困難となり、これまた磁性微粒子自体が二次凝集を発生してしまい易くなる。いずれの場合も、磁性微粒子自体が二次凝集を発生した場合、磁性トナー粒子表面からの磁性微粒子の遊離が促進され、現像スリーブ表面への磁性微粒子の蓄積量が多くなってしまうことから、画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト画像、スジ・ムラ画像の発生を伴ってしまう。
【0020】
又、本発明に用いられる炭化水素化合物の処理量は、磁性微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下である。より好ましくは0.5質量部以上20.0質量部以下である。この範囲にあることで、炭化水素化合物で処理された磁性微粒子自体の二次凝集性もなく、単分散な状態での磁性トナー表面への付着性が良好となる。炭化水素化合物の処理量が0.1質量部未満の場合は、磁性トナー粒子表面の離型剤成分への選択的な付着力が小さくなり、磁性微粒子の遊離が促進されてしまう。炭化水素化合物の処理量が30.0質量部を超える場合は、磁性微粒子表面に処理されずに残った余剰の炭化水素化物により、磁性微粒子自体の二次凝集が発生し、これまた画像不良の原因となってしまう場合がある。
【0021】
又、上記炭化水素化合物で処理された磁性微粒子の磁性トナー粒子に対する添加量は、磁性トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましい。この範囲にあることで、磁性トナーの長期に渡る帯電性が安定するので、より高い耐久能力が発揮できる。磁性微粒子の磁性トナー粒子に対する添加量が0.1質量部未満である場合は、磁性トナーの長期に帯電安定化に対する効果は少ない。磁性微粒子の磁性トナー粒子に対する添加量が5.0質量部を超える場合は、磁性トナー粒子表面に保持しきれない磁性微粒子が遊離していまい、現像スリーブ表面への磁性微粒子の蓄積が発生してしまう。
【0022】
更に、本発明の磁性トナーで使用する磁性微粒子は、炭化水素化合物とアルコキシシラン化合物で表面処理してもよい。本発明ではアルコキシシラン化合物であれば特に限定は無い。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を使用することができる。これらアルコキシシラン化合物と炭化水素化合物を併用することにより、磁性トナー粒子表面への磁性微粒子の付着性を向上するとともに磁性トナーの流動性も向上することができ、現像スリーブ表面への磁性トナーの付着、融着を防止できる。
【0023】
次に、本発明に用いられる磁性微粒子の製造方法について説明する。
【0024】
本発明に用いることができる磁性微粒子としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。
【0025】
磁性酸化鉄粒子の製造方法としては、以下の方法で製造することができる。例えば、第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液をpH7以上(好ましくはpH8乃至14)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応をおこない、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
【0026】
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6乃至14に維持しつつ空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpHを選択することにより、磁性粉体の形状をコントロールすることが可能である。
【0027】
得られた磁性酸化鉄粒子の表面処理を行う場合は、続けて以下のようにして行うことができる。酸化反応終了後、乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性酸化鉄粒子に炭化水素化合物やアルコキシシラン化合物で表面処理を行う。また、湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたもの再分散させる、あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄を乾燥せずにそのまま十分に攪拌を行いながら、炭化水素化合物やアルコキシシラン化合物を添加し、加熱しながら表面処理を行う。表面処理後は、洗浄・ろ過・乾燥した後、公知の粉砕、解砕手段により表面処理された磁性酸化鉄粒子を得る。
【0028】
磁性酸化鉄粒子の表面処理を乾式で行う場合は、公知のミキサーやミル等の混合装置、表面処理装置が使用可能である。本発明では、図1に示した表面処理装置を使用すると効率よく表面処理が行えるので、好ましく用いることができる。
【0029】
図1に示した表面処理装置は、まず、図中の投入口5より、処理物として磁性酸化鉄粒子及び少なくとも炭化水素化合物を投入する。処理物の投入の仕方としては、磁性酸化鉄粒子と炭化水素化合物は別々に投入してもよく、投入前にミキサーやミルで混合した状態にしてもよい。図1に示した表面処理装置においては、処理物同士の衝突が十分であることから、処理物を別々に投入しても良好な処理が可能であることが利点である。
【0030】
次に、処理物は、回転体2表面に設けられた複数の撹拌羽根3により撹拌・混合されながら、ケーシング1と撹拌羽根3との微小間隙において被覆処理された後、排出口6から排出される。尚、図1においては、回転体2は、下方に位置する撹拌羽根が紙面の前面を通って上方へと移動する方向に回転する。この際、回転体2表面の撹拌羽根3aは、回転体2の軸方向の一方向(投入口5側→排出口6側)に処理物を送るための送り撹拌機構として働き、撹拌羽根3bは、回転体2の軸方向で逆方向(排出口6→投入口5)に処理物を送るための戻し撹拌機構として働く。これらの機構により、処理物は送りと戻しが繰り返され、ケーシング1内での処理物の移動経路が複雑で且つ長くなる。この送りと戻しにより、撹拌羽根3と処理物の衝突、また処理物同士の衝突をより十分に生じさせ、ケーシング1と撹拌羽根3の微小間隙における被覆処理をより効率よく行うことができる。また、ケーシング及び回転体は図1に示したとおり、水平であることが好ましい。水平であることで、処理物の偏在や滞留が発生しずらくなり、微小間隙における被覆処理を更に効率よく行うことができる。その結果、磁性酸化鉄粒子表面への炭化水素化合物の被覆を均一且つ迅速に行うことができる。
【0031】
又、表面処理剤として炭化水素化合物とアルコキシシラン化合物を併用する場合は、処理物と同時に投入してもよく、別々に投入しても良好な処理が可能である。
【0032】
次に、本発明に用いられる磁性トナー粒子について説明する。
【0033】
本発明に用いられる磁性トナー粒子は、結着樹脂及び磁性酸化鉄、離型剤を少なくとも含有し、粉砕法、重合法いずれの方法で製造されたものでもよい。好ましくは、本発明においては、磁性トナー粒子表面に離型剤が微分散した状態であるほうが、磁性微粒子の均一付着性が向上するので、粉砕法で製造された磁性トナーが好ましく使用される。
【0034】
結着樹脂としては、公知の樹脂が使用可能である。中でも、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂又はハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。例えば、結着樹脂としてポリエステルユニットを有する樹脂を生成する場合には、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステルが原料モノマーとして使用できる。
【0035】
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAが挙げられる。
【0036】
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0037】
2価の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0038】
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、及び、これらの無水物やエステル化合物が挙げられる。
【0039】
それらの中でも、特に、下記一般式(イ)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、トナーとして、良好な摩擦帯電特性を有するので好ましい。
【0040】
【化1】

【0041】
本発明において、「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)である。なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとはビニル基を有するモノマー成分である。
【0042】
ビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを有する樹脂を生成するためのビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如き不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;が挙げられる。
【0043】
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0044】
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0045】
本発明に使用できるトナーにおいて、結着樹脂のビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
【0046】
この場合に用いられる架橋剤には、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0047】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0048】
ハイブリッド樹脂を製造する際には、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのいずれか一方又は両方の中に、両樹脂ユニットの成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットの成分と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物が挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットの成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0049】
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行うことにより得る方法が好ましい。
【0050】
本発明に使用できるビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを有する樹脂を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0051】
本発明の磁性トナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製するための製造方法としては、例えば、以下の(1)乃至(5)に示す製造方法を挙げることができる。
【0052】
(1)ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行ってハイブリッド樹脂を合成する方法。
【0053】
(2)ビニル系重合体を製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)との反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0054】
(3)ポリエステル樹脂を製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマーとの反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0055】
(4)ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)のいずれか一方又は両方を添加し、添加したモノマーに応じた条件の重合反応を行うことにより、ハイブリッド樹脂成分を製造する方法。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0056】
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0057】
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットには、分子量や架橋度の異なる複数種の重合体ユニットを使用することができる。
【0058】
なお、本発明におけるビニル系重合体又はビニル系重合体ユニットとは、ビニル系単重合体若しくはビニル系共重合体又はビニル系単重合体ユニット若しくはビニル系共重合体ユニットを意味するものである。
【0059】
次に、本発明の磁性トナーに使用できる離型剤(ワックス)について説明する。本発明に用いることができるワックスとしては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、それらのブロック共重合物、カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。さらに、本発明に用いることができるワックスとして、脂肪酸エステルを主成分とするワックスが挙げられ、次の脂肪酸類とアルコール類の縮合物が挙げられる。脂肪酸類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き脂肪酸類が挙げられる。アルコール類としては、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、ソルビトールの如きアルコール類が挙げられる。また、本発明に用いることができるワックスとしては、次のアミドワックスが挙げられる。リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類が挙げられる。
【0060】
これらのワックスのうち、本発明により好ましく用いられるのは、炭化水素系のワックスである。本発明者らの鋭意検討の結果、特定の磁性微粒子と炭化水素系ワックスの組み合わせで磁性トナー粒子を作製すると、磁性トナー粒子表面に存在する炭化水素系ワックス成分に特定の磁性微粒子が選択的に付着することがわかった。又、この磁性微粒子と磁性トナー粒子表面の選択的な付着をより均一化するためには、磁性トナー粒子表面に存在する炭化水素系ワックス成分がより微分散していることが好ましい。よって、本発明の磁性トナーに使用できるワックスは、溶融混練等で樹脂中に予め分散されたマスターバッチとして使用すると、本発明をより効果的に達成できる。
【0061】
本発明の磁性トナーには、摩擦帯電性を安定化させるために公知の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、荷電制御剤の種類や他の磁性トナー粒子構成材料の物性によっても異なるが、一般に、磁性トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような荷電制御剤としては、磁性トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、磁性トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0062】
負帯電性荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが利用できる。正帯電性荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が利用できる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。特に、本発明に使用できる磁性トナーでは、磁性トナーの摩擦帯電スピードが速く且つ一定の摩擦帯電量を安定して維持できる芳香族カルボン酸金属化合物が好ましい。
【0063】
次に本発明の磁性トナーの製造方法について説明する。
【0064】
本発明のトナーとしては、粉砕法、重合法いずれの方法で製造されたものであってもよい。好ましくは、磁性トナー粒子表面のワックス成分の微分散の観点から、溶融混練工程を有する粉砕法による製造方法である。以下、粉砕法の製造方法を例示する。
【0065】
まず、原料混合工程では、少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、Q型ミキサー、ナウターミキサーがある。
【0066】
更に、上記の配合で混合したトナー原料を溶融混練して、結着樹脂を溶融し、その中に磁性酸化鉄及びワックスを分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。又、連続生産できる優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、池貝製作所製PCM型2軸押出機、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダーが一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロールで圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0067】
上記で得られた樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルで粗粉砕され、更に、公知の風力式粉砕機や機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0068】
更に、得られた微粉砕品を表面改質工程で表面改質、すなわち、球形化処理をおこない、表面改質粒子を得てもよい。本発明においては、表面改質工程として、熱風を用いた熱球形化処理が好ましく用いられる。熱風を用いたトナー粒子の表面改質処理は、例えば、サーフュージョンシステム(日本ニユーマチック工業社製)がある。また、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンコスモシステム(川崎重工業社製)、イノマイザーシステム(ホソカワミクロン社製)の如き高速気流中衝撃法を応用した表面改質装置、メカノフュージヨンシステム(ホソカワミクロン社製)、メカノミル(岡田精工社社製)の如き乾式メカノケミカル法を応用した表面改質装置において、加熱することで、表面改質を行ってもよい。
【0069】
また、図4に示すような表面改質装置を用いることもできる。オートフィーダー102を用い、磁性トナー粒子101は供給ノズル103を通り、表面改質装置内部104に供給される。ブロワー109により、表面改質装置内部104の空気は吸引されているので、供給ノズル103から導入された磁性トナー粒子101は機内に分散する。機内に分散された磁性トナー粒子101は、熱風導入口105から導入される熱風で、瞬間的に熱が加えられて表面改質される。導入される熱風の温度は100℃以上450℃以下に調整可能であり、磁性トナー処方に応じて随時、設定変更することが出来る。熱風の温度を100℃未満とすることは、装置的には可能であるが、熱処理の均一性や生産性の面で問題が発生する場合がある。また、熱風の温度を450℃超えとする場合には、熱風発生装置自体の大型化や、処理時の磁性トナー粒子またはトナーが受ける熱エネルギーを調整することが困難となる。また、同様に装置内の温度コントロールが十分に行えず、融着現象が発生する場合がある。
【0070】
本発明ではヒーターにより熱風を発生させているが、磁性トナー粒子の表面改質に十分な熱風を発生させられるものであれば装置は特に限定されない。表面改質された磁性トナー粒子107は、冷風導入口106から導入される冷風で瞬時に冷却される。この時、冷風は除湿された圧縮エアーまたはN2ガスを用いることが出来る。また、冷風は他に装置内に導入される気流との相互作用により、最適な装置内温度分布を構成する目的から、温度は−100℃以上60℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以上20℃以下である。温度自体が高すぎても、低すぎても、熱処理に過剰なエネルギーが必要な場合があり、更に、処理自体が不均一になる場合がある。
【0071】
本発明では冷風には液体窒素を用いているが、表面改質された磁性トナー粒子107を瞬時に冷却することができれば、手段は特に限定されない。表面改質された磁性トナー粒子107はブロワー109で吸引されて、サイクロン108で捕集される。
【0072】
その後、必要に応じて表面改質粒子を慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機或いは、風力式篩のハイボルター(東洋ハイテック社製)の如き篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径3乃至10μmの磁性トナー粒子を得る。
【0073】
磁性トナー粒子は、粉砕・分級後、又は表面改質後に、磁性微粒子と併用して流動性向上剤をヘンシェルミキサーの如き混合機で外添混合することにより、磁性トナーの流動性を調整して用いることが好ましい。
【0074】
流動性向上剤としては、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、それらをシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ等がある。
【0075】
シリカとしては、湿式製法シリカ及び乾式製法シリカいずれも使用できる。
【0076】
また、酸化チタン微粉体であれば、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド,チタンハライド,チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型,ルチル型,これらの混晶型,アモルファスのいずれのものも用いることができる。
【0077】
そしてアルミナ微粉体であれば、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、により得られるアルミナ微粉体のいずれのものも用いることができる。
【0078】
次に、本発明の磁性トナーを用いることができる一成分系現像装置について説明する。一成分系現像装置としては、例えば、図2及び図3に示すような一成分系現像装置が知られている。図2において、公知のプロセスにより形成された潜像を担持する静電潜像担持体、例えば感光体301は矢印A方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ308は、現像剤容器303に収容された一成分系磁性トナーとしての現像剤304を担持して、矢印B方向に回転することによって、現像スリーブ308と感光体301とが対向している現像領域Dに現像剤304を搬送する。図2に示すように、現像スリーブ308は、円筒状もしくは円柱状の基体としての金属円筒管306上に形成された樹脂被覆層307を有し、また現像スリーブ308内には現像剤304を現像スリーブ308上に磁気的に吸引且つ保持するために、マグネットローラ305が配置、固着されている。現像スリーブ308とマグネットローラ305とは非接触状態にある。なお、金属円筒管306上に形成された樹脂被覆層307は、公知の材料を用いた樹脂被覆層が適応可能である。
【0079】
また現像剤容器303中には、矢印C方向に回転することによって、現像剤304を撹拌する撹拌翼309、310、現像剤容器303中に現像剤304を供給するスクリュー311、現像剤容器303中の現像剤量を調整する撹拌壁312が設けられている。
【0080】
現像剤304は、磁性トナー相互間及び現像スリーブ308上の樹脂被覆層307との摩擦により、感光ドラム301上の潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図2の例では、現像領域Dに搬送される現像剤304の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の現像ブレード302が、現像スリーブ308の表面から約50乃至500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ308に臨む様に現像剤容器303から垂下されており、マグネットローラー305のN極からの磁力線が磁性規制ブレード302に集中することにより、現像スリーブ308上に現像剤304の薄層が形成される。本発明においては、この現像スリーブに近接して配置される磁性規制ブレードにかえて、図3に示すような現像スリーブに圧接して配置される非磁性ブレード(弾性ブレード)を使用することもできる。
【0081】
この様にして現像スリーブ308上に形成される現像剤304の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ308と感光ドラム301との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
【0082】
本発明に用いることのできる現像スリーブは、以上の様な現像剤の薄層により潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。また、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ308と感光体301との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。
【0083】
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0084】
上記現像スリーブ308に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤304を飛翔させるため、上記現像スリーブ308にはバイアス手段としての現像バイアス電源313により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、潜像の画像部(現像剤304が付着して可視像化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。
【0085】
現像された画像の濃度を高め、あるいは階調性を向上するためには、現像スリーブ308に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。高電位部と低電位部を有する潜像の高電位部に磁性トナーを付着させて可視像化する、所謂正規現像の場合には、潜像の極性と逆極性に帯電する磁性トナーを使用する。高電位部と低電位部を有する潜像の低電位部に磁性トナーを付着させて可視化する、所謂反転現像の場合には、潜像の極性と同極性に帯電する磁性トナーを使用する。高電位,低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤304は少なくとも現像スリーブ308との摩擦により帯電する。
【0086】
図2はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器303の形状、撹拌翼309、310の有無、磁極の配置に様々な形態があることは言うまでもない。
【0087】
以下に、本発明に関わる測定方法について詳細に述べる。
【0088】
<磁性微粒子の二次凝集性測定>
磁性微粒子の二次凝集性については、本発明の磁性微粒子を透過電子顕微鏡で10万倍にて観察し、100個の粒子(二次凝集した粒子は1個とする)の長軸径、短軸径を測定した平均値を個数平均粒子径とし、その粒度分布から得られる標準偏差値σを評価した。後述の表1に示した評価ランクは下記の通りである。
A:0nm以上50nm未満で二次凝集がほとんど無い。
B:50nm以上100nm未満で一部二次凝集が見受けられる
C:100nm以上200nm未満で二次凝集はあるが、実用下限レベル。
D:200nm以上400nm未満で二次凝集があり、実用不可レベル。
E:400nm以上で二次凝集が多数見受けられる。
【実施例】
【0089】
以下、具体的製造例及び実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0090】
〔磁性微粒子の表面処理方法1乃至13〕
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0乃至1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で1.5質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ、鉄元素に対して珪素元素換算で1.5質量%の珪酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。
【0091】
水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0092】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9乃至1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH12に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄粒子を含むスラリー液を得た。このスラリーを濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、十分撹拌しながら、パラフィンワックスを磁性酸化鉄100質量部に対して8.0質量部、n−オクチルメトキシシランを磁性酸化鉄100質量部に対し7.0質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加した。その後、十分攪拌しながら、120℃まで加熱し表面処理を行った。生成した疎水性磁性微粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、得られた粒子を解砕処理した。得られた磁性微粒子(M−1)は、個数平均粒子径が0.20μmであり、形状は八面体形状であった。
【0093】
又、磁性微粒子(M−2)に関しては、スラリー液の酸化反応時のpHを8として作製し、個数平均粒子径が0.20μmであり、形状は球状であった。その他、磁性微粒子(M−3)乃至(M−13)に関しては表1に示した構成で作製した。尚、乾式の表面処理方法としては、磁性酸化鉄粒子を含むスラリー液を、濾過、洗浄、乾燥した後、図1に示した表面処理装置で表面処理を行った。
【0094】
【表1】

【0095】
〔結着樹脂の製造例〕
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン45質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン27質量部、テレフタル酸10質量部、無水トリメリット酸9質量部、フマル酸9質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、温度230℃常圧下にて9時間反応させた後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させて結着樹脂(B−1)を得た。結着樹脂(B−1)の軟化点は116℃であった。
【0096】
〔磁性トナー製造例1乃至16〕
下記の材料を用いて、磁性トナー粒子(T−1)を作製した。
【0097】
結着樹脂(B−1) 100質量部
磁性酸化鉄(N−1) 70質量部
(N−1;個数平均粒子径0.20μm、形状:球状のマグネタイト)
ノルマルパラフィンワックス(最大吸熱ピーク:75℃) 10質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸式押出機(PCM−30型、池貝製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、機械式粉砕機(T−300型、ターボ工業製)を用いて微粉砕した。粉砕条件としては、回転子の回転数を120s-1として粉砕処理した。
【0098】
次に、得られた微粉砕物を、得られた微粉砕物を図4に示す表面改質装置により表面改質を行った。表面改質時の条件は、原料供給速度は2.0kg/hr、熱風流量4.5m3/min、熱風の吐出温度は220℃、冷風温度3℃、冷風流量3.0m3/minで表面改質を行った。次に、コアンダ効果を利用した風力分級機(エルボジェットラボEJ−L3、日鉄鉱業社製)で分級しで微粉及び粗粉を同時に分級除去し、磁性トナー粒子(T−1)を得た。又、磁性トナー粒子(T−2)乃至(T−4)に関しても、表2に示した離型剤に変更した以外は、磁性トナー粒子(T−1)と同様にして作製した。
【0099】
【表2】

【0100】
続いて、得られた磁性トナー粒子(T−1)乃至(T−4)100質量部に対して、表3に示した磁性微粒子及びシリカ粒子を表中の添加量にて、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、20分間外添混合して、磁性トナー(J−1)乃至(J−16)を得た。
【0101】
【表3】

【0102】
〔実施例1乃至11、及び比較例1乃至5〕
表4に示した磁性トナーを図2に示した現像装置に収容した。この現像装置を用いて、キヤノン製複写機iR5075nで画出し評価を行った。評価は、温度32.5℃−湿度85%RH環境下で、画像の印字比率は10%とし、初期の画像濃度が1.45となるように現像バイアスを調整し、その設定のまま20万枚まで耐久を行った。評価結果を表4に示す。尚、評価の基準を以下に示す。
【0103】
<画像濃度低下>
得られた画像に対して、濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、6点の平均値をとって画像濃度とし、下記の指標で判断した。
A:耐久後の画像濃度維持率が90%以上。
B:耐久後の画像濃度維持率が80%以上90%未満。
C:耐久後の画像濃度維持率が70%以上80%未満(本発明において実用下限レベル)

D:耐久後の画像濃度維持率が60%以上70%未満(本発明において実用不可レベル)

E:耐久後の画像濃度維持率が60%未満。
【0104】
<カブリ>
上記画像評価に続いて、耐久後のベタ白画像を印字し、以下の基準で判断した。
【0105】
印字しない紙の6点の平均反射率Dr(%)と、印字した紙の6点の平均反射率Ds(%)とを、リフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定し、カブリ率(%)を求めた。
【0106】
カブリ率(%)=Dr(%)−Ds(%)
A:カブリ率が0.5%未満(非常に良好)
B:カブリ率が0.5以上1.0%未満(良好)
C:カブリ率が1.0以上2.0%未満(本発明において実用下限レベル)
D:カブリ率が2.0以上3.0%未満(本発明において実用不可レベル)
E:カブリ率が3.0%以上(目視で解るレベル)。
【0107】
<スリーブゴースト>
上記画像評価に続いて、耐久後のゴースト画像を印字し、以下の基準で判断した。尚、ゴースト画像は現像スリーブの1周目に相当する画像領域に2cm×2cmのベタ画像を印字し、現像スリーブ2周目以降に相当する画像領域にハーフトーン画像を印字した。その際、現像スリーブ2周目以降に相当するハーフトーン領域に、現像スリーブ1周目の画像履歴が残り、濃度差が生じたどうか濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、以下の基準で判断した。
A:ハーフトーン領域に濃度差が、0.01未満。
B:ハーフトーン領域の濃度差が、0.01以上0.03未満。
C:ハーフトーン領域の濃度差が、0.03以上0.05未満(本発明において実用下限
レベル)。
D:ハーフトーン領域の濃度差が、0.05以上0.10未満(本発明において実用不可
レベル)。
E:ハーフトーン領域の濃度差が、0.10以上。
【0108】
<コートスジ・ブレード傷>
上記画像評価に続いて、耐久後のハーフトーン画像を印字するとともに、耐久後の現像装置を取り出し、現像スリーブ上のトナーコート層を目視で観察し、コートスジを以下の基準で判断した。
A:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジが全く無い。
B:トナーコート層に軽微にスジがあるが、ハーフトーン画像上には、スジが無い。
C:トナーコート層にスジがあるが、ハーフトーン画像上は軽微なスジである(本発明に
おいて実用下限レベル)。
D:トナーコート層にスジがり、ハーフトーン画像上にもスジが確認できる(本発明にお
いて実用不可レベル)。
E:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジがある。
【0109】
【表4】

【0110】
〔実施例12乃至15、及び比較例6〕
表5に示した磁性トナーを図3に示した現像装置に収容した。この現像装置を用いて、HP社製プリンタLaser Jet P4515nで画出し評価を行った。評価は、温度32.5℃−湿度85%RH環境下で、画像の印字比率は5%とし、初期の画像濃度が1.50となるように現像バイアスを調整し、その設定のまま5万枚まで耐久を行った。評価結果を表4に示す。尚、評価の基準は上記と同様で行った。
【0111】
【表5】

【符号の説明】
【0112】
1:ケーシング、2:回転体、3,3a,3b:撹拌羽根、d:攪拌羽根の周方向の重なり部分、4:ジャケット、5:投入口、6:排出口、7:支持体、8:駆動部、9:処理空間、101:磁性トナー粒子、102:オートフィーダー、103:供給ノズル、104:表面改質装置内部、105:熱風導入口、106:冷風導入口、107:表面改質された磁性トナー粒子、108:サイクロン、109:ブロワー、301:静電潜像担時体(感光体)、302:現像剤層厚規制部材(現像ブレード)、303:現像剤容器、304:現像剤、305:マグネットローラ、306:金属円筒管、307:樹脂被覆層、308:現像剤担持体(現像スリーブ)、309,310:攪拌翼、311:供給スクリュー、312:攪拌壁、313:高圧電源、A:現像スリーブ回転方向、B:感光体回転方向、C:攪拌翼回転方向、D:現像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、磁性酸化鉄と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と、トナー粒子表面に少なくとも磁性微粒子とを有する磁性トナーであって、
該磁性微粒子は、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、該磁性微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下で表面処理されていることを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
該磁性微粒子は、該炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で表面処理されていること特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項3】
現像剤を担持、搬送するための現像剤担持体と、該現像剤担持体に近接、又は圧接して配置されている現像剤担持体上に現像剤の薄層を形成するための現像剤層厚規制部材を有し、該現像剤担持体によって現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと担持、搬送し、該静電潜像担持体上に形成された潜像を現像剤により現像して可視像化する現像方法において、
該現像剤担持体は少なくとも円筒状もしくは円柱状の基体表面に樹脂被覆層を有し、
該現像剤は請求項1又は2に記載の磁性トナーであることを特徴とする現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173668(P2012−173668A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37887(P2011−37887)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】