磁束インパルスモータ
モータ(1)は、ステータ(2)と、ステータ(2)内でロータ軸(50)の周りに回転可能に装着されたロータ(10)と、ステータ(2)の極(11)と、ステータ極(11)の上の巻線と、ロータ(10)の少なくとも1対の突極(10a〜10d)とを含む。ロータ(10)は、ロータ極(10a〜10d)が相互に逆向きに磁化されるように磁化される。モータ(1)は、ロータ(10)の各極(10a〜10d)が、ステータ極(11)に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極(11)から遠ざかるときに該ロータ極を反発するように、ステータ(2)の極(11)内の交番磁界を生成する制御手段が提供された電気回路を更に含み、磁界はロータ(10)の1回転当たりにロータ(10)の極と同じ数だけ変化する。ロータ(10)の各極(10a〜10d)は、極により担持された永久磁石(72)によって磁化され、該磁石(72)が、磁化軸(80)を有し、該磁化の軸(80)は、ロータ軸(50)の半径方向(82)に対して傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス型電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、国際特許公開WO02/101907に開示された発明の改良であり、その内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
Deodhar,R.P.他による論文「The Flux−Reversal Machine:A New Brushless Doubly−Salient Permanent Magnet Machine(磁束反転機械:新しいブラシレス二重突極永久磁石機械)」IEEE1996年(「Deodhar」)では、
ステータと、
ステータ内に回転可能に装着されたロータと、
ステータの第1及び第2の極と、
ステータ極の少なくとも1つ上の巻線と、
ロータの少なくとも1対の突極と、
ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
ロータの周りにステータ極の少なくとも1つから延びている内側バック鉄心部と、
を備え、ロータの隣接する極の間のロータ内の磁界がロータの回転の一部分に対して少なくとも内側バック鉄心部により部分的に短絡するようにされた機械を開示している。
【0004】
永久磁石は、互いに同一のステータ極上に設けられている。この機械は、多相配置で構成された場合、モータとしてのみ作動することができる。この機械は、このように作動するときには標準的リラクタンスモータとして機能する。
【0005】
国際特許公開WO02/101907の発明によれば、Deodharにおいて記載されたタイプのモータが提供されており、該モータは、
ロータを駆動回転させるように巻線に給電するための電気回路と、
補極であり且つロータを短絡しないステータの第1の極と、
界磁結合極(12)であり且つ内側バック鉄心部を有するステータの第2の極と、
ロータ極が逆方向に磁化されるようにロータを磁化し、電気回路には、ロータの各極が補極に近づくときに該ロータの各極を引き付け、補極から遠ざかるときに該ロータの各極を反発するように、交番磁界をステータの補極内に生成する制御手段を備えており、磁界は、ロータの1回転当たりにロータの極と同じ数だけ交番し、ロータは、該ロータ及び補極間の相互作用による電磁トルクと、ロータ及び界磁結合極間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動されるようになる、
ことによって特徴付けられる。
【0006】
内側バック鉄心部によるロータを通る磁界の短絡は、ロータに加えられるトルクに対してプラスとマイナスの両方の影響を有する低リラクタンスパスを提供する。この作用は、短絡が始まってトルクがロータに加えられるような、リラクタンスの減少が生じるときにはプラスであるが、短絡が終わり等価の負のトルクが加えられるときにはマイナスである。このことは、マイナスの作用をモータの主駆動「パルス」と同時に発生させるように構成することができるので、全体のトルク曲線に対して平滑作用を有する。これにより、駆動パルスの大きさが小さくなり、該駆動パルスは、その代わりに短絡磁界のプラスの作用に「変換」されるようである。
【0007】
ステータの極は好ましくは突極である。補極巻線は、ステータの補極の周りに存在することができる。界磁巻線は、界磁結合極の周りに設けることができる。更に、補極巻線及び界磁巻線は直列にすることができる。実際には、界磁巻線は、補極巻線よりも大きい磁界を発生させることができる。
【0008】
好ましくは、ロータの隣接する極の角度範囲は、内側バック鉄心部の角度範囲とほぼ同じであり、その角度範囲はほぼ(270/n)°(nはロータ極対の数)である。「角度範囲」とは、ロータの極の両方或いは内側バック鉄心部の場合には内側バック鉄心部を含む円のセグメントの角度を意味する。
【0009】
好ましくは、ロータの極の1つの角度範囲は、補極の角度範囲とほぼ同じであり、好ましくはほぼ(90/n)°(nはロータ極対の数)である。好ましくは、ロータの極は、ほぼ(45/n)°(nはロータ極対の数)に等しい角度αにわたって極が短絡されるような、極の角度範囲を横切る様々な半径を有する。極対の1つだけが存在するときには、角度αは約45°である。
【0010】
好ましくは、ステータの周りに交互に配置された、各々等しい複数の補極及び界磁結合極と、界磁結合極の2倍の極数のロータの極とが存在する。実際に、2つの界磁結合極と、2つの補極と、2つの極対を有する十字形ロータとが存在することができる。この場合、角度αは約22°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許公開WO02/101907
【特許文献2】欧州特許公開第455578A
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Deodhar,R.P.他による論文「The Flux−Reversal Machine:A New Brushless Doubly−Salient Permanent Magnet Machine(磁束反転機械:新しいブラシレス二重突極永久磁石機械)」IEEE1996年(「Deodhar」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ロータが2つの極対を有する十字形である場合には、これらの極は交互に磁化される。このような構成は、トルクの観点からは好ましいが、補極の磁化方向を変える(1回転当たりにロータの極数と同じ回数)ために少なくとも2つのスイッチを有する電気回路を必要とする。
【0014】
本発明は、特にこのようなモータの設計における改良に関するが、他のモータにおいても広く応用することができる。
【0015】
本発明の目的は、ロータが永久的に磁化され、磁石が好都合に配置されているモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明によれば、次のモータが提供される。すなわち、
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、該磁石が、各極内の横断スロット内に配置されていることを特徴とするモータ
が提供される。
【0017】
横断スロット内に磁石を配置することによって、他の配置形式が必要とされない。スロットは、取り付けられると他の固定形式が必要とされないように、密接な滑り嵌合(滑りばめ)で磁石を収容するように構築することができる。
【0018】
好ましくは、ロータは、共に接続された積層体のスタックを含む。当該場合において、好ましくは、ロータ軸に垂直なロータの断面においてスロットが閉鎖される。従って、磁石は、ロータ軸に対して軸方向で磁石をスロットに滑動させることによって、該スロットに導入される。スロットのいずれかの端部にあるリガメント部が、ロータの根元部を幅の大部分にわたりスロットの周りの遠位ロータ先端部に連結するので、ロータの構造は、半径方向において強度がある。しかしながら、リガメント部が極めて厚い場合、磁石の磁束の過度の短絡が起こり、磁石の効果的な磁化を減少させる可能性がある。この作用は、根元部と先端部との間の連結の強度要件に合致するリガメント部の厚さを最小にすることによって、並びにより長い(より広い)磁石を利用できるように、及び磁石を短絡させるリガメント部が存在しないときのモータ用途の十分に強い磁石で利用可能な磁束と残留磁束(リガメント部が短絡磁束で飽和された後に残されたもの)とが等価になるようにロータの根元部を広げることによって、その影響を弱めることができる。
【0019】
しかしながら、より好ましくは、ロータ軸に垂直な平面内の断面において、磁石は、ロータ軸上に中心がある円の接線に対して傾斜しており、該接線は、極の中心を通る半径に垂直な接線であり、傾斜角は5°から40°の間である。このような構成は2つの効果を有する。
【0020】
第1の効果は、より長い(より広い)磁石を使用することができ、ロータ極の根元部を拡張することを必要とせずに上述の利益(付随的に、4極ロータにおいて達成するのが困難となる可能性がある)を受けることができるようになることである。第2の効果は、このような構成は、ロータ内の磁束密度をバイアスする作用を有し、いずれかの所与のスタート位置におけるモータ始動時に、ロータの回転方向を所望の方向に確保するのがより容易になることである。
【0021】
実際に、別の態様において、本発明の目的はまた、モータの始動時にモータの回転方向を全体的により容易に確保することができるモータを提供することである。
【0022】
従って、本発明によれば、
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、そして、
ロータ軸に垂直な平面内の断面において、磁石は、ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、極の中心を通る半径に垂直な接線であり、傾斜角は10°から40°の間である、
ことを特徴とするモータが提供される。
【0023】
好ましくは、磁石はロータ軸に平行である。好ましくは、傾斜角は10°から30°の間であり、好ましくは15°から25°の間である。
【0024】
本発明の上述のいずれかの態様において定義されたモータであって、ロータ軸に垂直なロータの断面において、ロータ極は極の中心を通る半径にわたる幅を有することができ、磁石は、ロータの幅の大部分を横切って延びることができる。
【0025】
実際に、両方又は単に第1の態様によれば、各ロータ積層体のリガメント部は、スロットの各端部を定め、リガメント部は、各積層体の近位根元部に対して各積層体の遠位極先端部分を支持し、且つリガメント部によって引き起こされた磁石の磁束短絡を最小にしながらスロット内の磁石を保持するのに十分である。
【0026】
好ましくは、ロータは、その回転方向における該ロータの前方コーナ及び後方コーナを定める端面及び側面を有する。
【0027】
好ましくは、磁石は、後方コーナに隣接し、磁石の磁化が後方コーナの領域においてロータを磁気的に飽和させる一方の端部と、磁気的に飽和されない前方コーナから離間した他方の端部とを有する。
【0028】
好ましくは、モータは、国際特許公開WO02/101907に記載されたモータである。
【0029】
上記で定義した磁石を傾斜させることによって、ロータの磁気形状が変更され、これをバイアスして傾斜方向に優先的に回転させる。この点に関して、傾斜の方向は、ロータ軸に対して半径方向に磁石の最も離れた端部から、ロータ軸に対して半径方向において磁石のより近接した端部に向かう方向である。
【0030】
本発明の別の目的は、回転中の低減したトルクリップルを有する国際特許公開WO02/101907に記載されたタイプのモータを提供することである。
【0031】
本発明のこの態様によれば、
ステータと、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータと、
ステータの第1及び第2の極と、
ステータ極の少なくとも一方の上の巻線と、
ロータが磁化される結果として逆向きに磁化されるようになる、ロータの少なくとも1対の突極と、
ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
ロータの隣接する極間のロータ内の磁界が、ロータの回転の一部分において実質的に短絡するように、ロータの周りにステータ極の少なくとも一方から延びた内側バック鉄心部と、
ロータを回転駆動させるように巻線に給電する電気回路と、
を備えたモータであって、
ステータの前記第1の極が補極であってロータを短絡せず、
ステータの第2の極が界磁結合極(12)であって、内側バック鉄心部を有し、
電気回路には、ロータ各極が補極に近づくと該ロータ極を引き付け、補極から遠ざかるときに該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりにロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの補極内に生成する制御手段が設けられ、
ロータは、該ロータと補極との間の相互作用による電磁トルクと、該ロータと界磁結合極との間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動される、
ようにされたモータであって、
前記内側バック鉄心部は、ロータ軸に対して円周上にあり、その両端部の近傍にある端部セクタと端部セクタ間の中間セクタとを有し、その中間セクタは、端部セクタよりもロータ軸から更に離間している、
ことを特徴とするモータを提供する。
【0032】
好ましくは、中間セクタの大部分は、ロータの回転方向に対して内側バック鉄心部の前方部分内にある。
【0033】
好ましくは、端部セクタには、ロータの回転方向に対して前縁セクタ及び後縁セクタがあり、中間セクタは後方セクタとの後方連結部を有し、後方連結部は、界磁結合極を通る、好ましくは界磁結合極の中心を通るロータ軸の半径上にある。
【0034】
好ましくは、中間セクタは、その円周方向範囲が前縁セクタの円周方向範囲の70%から130%の間、好ましくは90%から110%の間にあるように位置付けられた、前縁セクタとの前方連結部を有する。
【0035】
ロータは、該ロータの回転方向に対してロータの前縁から延びている前方セクションと、該ロータの回転方向に対してロータの後縁から延びている後方セクションとを有する端面を含む。
【0036】
好ましくは、前縁セクタ及び中間セクタの範囲は、各ロータ極の端面の円周方向範囲と同じである。
【0037】
好ましくは、前方セクションは、後方セクションよりもロータ軸に近接して離間されている。好ましくは、端面は、ロータ軸に平行で且つ該ロータ軸から離間した軸上に中心を置く円弧である。好ましくは、後方セクションの半径は、前方セクションの半径よりも2%から10%の間、好ましくは3%から6%の間大きい。
【0038】
好ましくは、後縁は、ロータと内側バック鉄心部との間の最小エアギャップを定め、後縁がいずれかの端部セクタに近接するときのエアギャップは、後縁が中間セクタに近接するときのエアギャップの20%から70%の間であり、好ましくは40%から60%の間である。言い換えると、好ましくは、中間セクタの半径は、端部セクタの半径よりも好ましくは1%から3%の間大きい。
【0039】
中間セクタによって提供された増大されたエアギャップは、そのリラクタンスを増大させる効果を有し、ロータの前縁が前方連結部を通り過ぎるときにはロータを遅延させ、前縁が後方連結部を通り過ぎるときにはロータを加速するように構成され、該遅延は、補極とロータとの間の相互作用によって生成された最も高い電磁トルクの期間の間に構成され、加速は、補極とロータとの間の相互作用によって生成された最も低い電磁トルクの期間の間に構成され、これによりモータのトルクリップルが最小化されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一部を形成するものではない、公知のモータの概略図である。
【図2】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図3】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図4】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図5】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図6】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図2と同じ図である。
【図7】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図3と同じ図である。
【図8】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図4と同じ図である。
【図9】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図5と同じ図である。
【図10】極の永久磁化が交互にされた4極ロータを使用する、国際特許公開WO02/101907の発明の更なる実施形態の同様の図である。
【図11】ここでは、図2〜図5と同様に、ロータが磁化されておらず、永久磁化がステータに内蔵されていることを除いて図10(C)と同様の図である。
【図12】より単純なモータの図11に類似した図である。
【図13】(A)は図12のモータに関するトルク曲線であり、(B)は図10のモータに関するトルク曲線である。
【図14】図6〜9及び図10のモータに給電する回路構成である。
【図15】図2〜5、図11及び図12のモータに給電する回路構成である。
【図16】補極においてS極が形成されたときの図12のモータの磁束分布を示している。
【図17】補極においてN極が形成されたときの図12のモータの磁束分布を示している。
【図18】50°のロータ位置における本発明によるモータの断面図である。
【図19】90°のロータ位置における本発明によるモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
例証として添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0042】
図1(A)は、2極ロータbと、2つの補極c、d及び2つの界磁極e、fからなるステータとを含む、公知の2極磁束インパルスモータaの基本的な構成を示している。界磁極は、1つの実施可能な構成(図示のように)により永久に磁化することができ、或いは、(界磁極の周りに)界磁巻線が存在し、DC電流を流して図示の磁化を生成するようにする。コイル(図示せず)は、補極の周りに巻かれ、補極巻線と呼ばれる巻線を形成する。ロータの極gは、極の先端部に一定の半径円弧を有さない場合がある。その代わりに、極のテーパ付き曲線前縁hが設けられ、回転中にロータの極とステータ極のいずれかとの間に生成された半径方向エアギャップiが変化するようにされる。また、2つのロータ極の非対称性を強調するロータ極の他の特徴部も存在することができる。例えば、図1(A)〜(D)に示した(好ましい)無限に変化するギャップiの代わりに、階段部又は肩部を極先端部に形成することができる。
【0043】
補極巻線内に電流が存在しないときには、ロータは、図1(A)に示すように静止位置にある。DC電流が補極巻線に印加された場合、補極上に磁界が生成され、極c上にN極、極d上にS極となる(図1(B)参照)。この磁界の結果として、ロータbは、静止位置から図1(B)に示した別の平衡位置まで回転する。補極巻線の電流の振幅が増大すると、ロータは、例えば図1(C)に示すように、別の平衡の位置に更に回転する。ここで補極巻線の電流を切断すると(更に、時計回りの方向にロータのどのような回転慣性もないと)、ロータは、反時計回りに回転して、図1(A)に示す初期平衡位置に落ち着くことができる。
【0044】
このことは、このタイプのモータに関して起こり得る始動問題を示している。モータが静止から始動して加速することができることを保証するために、補極での発生磁界の大きさは、界磁極によって生成される永久磁界よりも遙かに大きくなければならない。連続回転を保証するために、補極は、ロータを図1(D)に示す位置まで引き寄せる必要がある。この位置において、補極巻線の電流を解除すると、界磁極は、ロータを図1(A)に示す位置まで時計回りに引き寄せることになる(180度の回転が完了する)。
【0045】
明白なことに、モータを始動するためには大きな電流パルスが必要とされ、又は、少なくとも過剰電流を避けるために、永久磁界の大きさは小さくする必要性がある。ロータがある速度で回転しようとするとすぐに、補極で生成された大きな磁束インパルスが界磁アライメント磁束からロータを引っ張る。ロータの慣性(及び界磁アライメント磁束によって生成された幾らかのトルク)は、ロータを次の整流位置まで搬送する。従って、補極巻線内の電流は、連続的ではなく、通常約50%のデューティを有する。
【0046】
始動及び運転の問題を緩和するために、ある時間帯に磁界を切断するのが有利な可能性がある。しかしながら、このことは、界磁磁束を生成するために永久磁石を使用できないこと、及び補極巻線電流に加えて界磁巻線電流の整流を適切にタイミング調整しなければならないことを意味している。これにより、モータ及びパワーエレクトロニクスの設計に余分な複雑さが付加される。
【0047】
図面の図2〜5を参照すると、モータ1は、ステータ2と、該ステータ2内で回転可能に装着されたロータ10とを含む。
【0048】
ステータ2は、補極11と界磁極12とを有する。補極11及び界磁極12のステム又は基部は、外側バック鉄心部13a、13bによって連結されている。補極11は、界磁極12上の界磁巻線8と直列(又は並列)の補極巻線7を有する。しかしながら、補極コイル7を界磁結合極コイル8と分離しておくことには幾つかの利点がある場合がある。
【0049】
補極11の角度範囲xは約90°である。ロータ10は、2つの突極10a、10bを有し、これらの角度範囲は同様に約90°である。各極には肩部が備えられ、ロータの前縁上に拡張エアギャップ9aと、ロータの後縁上に薄いエアギャップ9bとを形成するようにされる。この拡張エアギャップ9aは、矢印Aの方向のロータ10の回転を保証する。このことは、ロータの間の磁束結合がロータの角度範囲の約半分(すなわち約45°)でだけにわたって起こることを意味している。階段部として示したが、磁束結合と分離との間のより滑らかな移行を可能にする図1(A)〜(B)に示したものに類似した構成を利用することが好ましい。しかしながら、便宜上、本明細書では階段状肩部を示しており、以下図10から図12、並びに図16及び図17には示されていない。
【0050】
界磁極12は、内側バック鉄心部14を間に形成する2つのリム12a、12bを備える。この内側バック鉄心部の角度範囲は約270°である。上述のように、ロータの極10a、10b(すなわち、ステータ極との最小エアギャップ9bを提示する部分)は、各々約45°の角度を定める。従って、図4及び図5で分かるように、ロータ10の両方の極10a、10bがバック鉄心部14に近接して位置する(すなわち、バック鉄心部によって短絡されている)ロータの回転角度αは約45°である。
【0051】
作動中、ロータ10は、図2の矢印Aの方向に回転している。この図は、ゼロ角度位置のロータ10を示している。この位置で補極コイル7の励磁があり、N極は補極11にある。更に図13(A)のトルク曲線を参照すると、ゼロ位置において小さな正のトルクが存在することが分かる。これは、最小リラクタンス位置には未だ達しておらず、約15°で起こるためであり、この時点で巻線7、8への給電が停止される。次いで、ロータは、バック鉄心部14のリム12bの磁化によって印加される高トルクによって引き寄せられる。このトルクは、図4に示すように、バック鉄心部14の境界内のロータ10の最小リラクタンス位置が約100°で達成されるまで、印加される。
【0052】
しかしながら、約90°において、すなわち最小リラクタンス位置に達する前に、巻線7、8が再通電され、且つ極10bが補極コイル及び界磁コイル7、8により生成された強磁界によって引き付けられると、正のトルクが印加される。従って、トルクは、図2のゼロ位置と一致する180°の位置を超えるまでロータに印加され続ける。その後、サイクルは、180°の機械角度毎に繰り返される。
【0053】
一方、約135°から180°の間では、補極コイル及び界磁結合コイル7、8の励磁により引き起こされる磁界の生成磁束(図5の破線矢印を参照)が、内側バック鉄心部の磁化により引き起こされた閉回路磁束ループ(実線矢印)と相互作用する。バック鉄心部14のリム12c内の磁束線の反対方向を参照されたい。従って、この閉ループが存在する間、該閉ループにより整流磁束によって生成されたトルクが減少する。よって、図13(A)の約160°においてトルクの低下が見られる。それでもなお二重効果が起こっている。一方では、極10bは、閉ループ磁束が交差するエアギャップを次第に「ピンチオフ」し、閉ループのマイナスの効果が低減されるようにする。他方では、極10bは、補極11と次第に接続され、極10aを離れ且つリム12c内の閉ループ磁束に対向する整流磁束が増大するようになる。
【0054】
いずれの場合においても、内側バック鉄心部14を形成する拡張界磁極12の効果は、電力が最初に印加されたときにロータが始動する位置にロータが止まる(図4又は図5の位置のいずれかに)だけでなく、ロータが、各発生源によって発生磁界の結合を促進することである。この効果は、ロータをその低リラクタンス位置(すなわち図5)から偏位させる電流インパルスが、発生磁界が直交する図1(A)〜(D)に示され又は欧州特許EP455578Aにより例示される先行技術構成において必要とされるほど大きくなる必要はないことと考えられる。また、ロータへの電力供給が平滑化され、慣性又は他の平滑化の必要性が低減される。
【0055】
上述のモータは、本発明の態様の多くを示しているが、本発明の技術的範囲内にはないことを強調したい。
【0056】
図6〜9を参照すると、国際特許公開WO02/101907の発明による図2〜5のモータの変形形態が示されており、ここでロータ10'は磁化されているが、界磁極リム12a、12bは磁化されていない。この実施形態は、駆動要因は異なるが、他の点では図2〜5と同一である。
【0057】
例えば、図6に示したゼロ位置の後の約10°では、補極巻線7(及び界磁巻線8)が通電されて、補極11にN極を生成する。これは、ロータ10'を回転方向(矢印A)に反発する。約45°では、内側バック鉄心部14を通じた発生磁気短絡におけるリラクタンス効果は、更なる駆動トルク(図13(B)において2点鎖線で示したように、リラクタンス効果がないものを上回る)を生成する。しかしながら、この効果は、短絡が終了するときに約90°で減少する。他方、この点において、ロータ10'のS極10bはN補極によって引き寄せられ、その引力は、135°から190°の間で増大する。このような増大は通常、この位相において磁気短絡(図9の矢印)の低リラクタンス効果が途絶えたことを除いては、ロータによって感知されるトルク(図13(B)の破線)を増加させることになる。約190°では、界磁巻線7、8を通る電流は、反転して補極11にS極を提供する。その後、このサイクルは、反転を繰り返すが、同じ形状のトルク曲線をもたらす。
【0058】
図13(B)の曲線から分かるように、ロータに印加されるトルクのうち幾らかの平滑化がある。
【0059】
国際特許公開WO02/101907の発明は原理上2極ロータにより機能するが、トルク曲線において180°の力学的回転にわたって2倍の数のピークとトラフが生じることから、図10及び図11に示した構成が好ましい。ロータの慣性質量が同じである場合、このことは、必要な電気回路が同じであることにもかかわらず、より滑らかな回転をもたらすことになる。
【0060】
図10(A)において、4極ロータ10"は、十字形状であり、磁化されて十字の周りに交互にN極及びS極10a、10b、10c及び10dを提示する。各極は、図2〜5及び図6〜9の実施形態と同様に、階段状又は曲線状で(図示せず)、回転方向制御を可能にする可変エアギャップを提供する。
【0061】
コイルが、図10(A)の位置で通電されると、各補極11"は、ロータ10"のN極に対してN磁極を提供する。これは、ロータの2つのN極10a、10cを反発し、従ってロータは時計回りに動く。ここで内側バック鉄心部14は、ロータ10"のN極10a、10bとS極10c、10dの対の間の低リラクタンスパスを形成し始める。
【0062】
ロータは、図10(B)に示した位置を超えて時計周りに数度の最小リラクタンスの位置まで回転する。これは、ステータ巻線からの通電の有無にかかわらず自然に起こることになる。ロータが図10(B)に示す位置にあるときに、ステータコイルは、N極が補極11のエアギャップ表面に存在するように通電される(未だ通電されてない場合、すなわち、図10(A)の位置と図10(B)の位置との間の期間にオフにされている場合)。ここではロータのS極は補極に引き寄せられている。このステップにおけるトルク生成の方法は、電磁アライメントトルクとリラクタンストルクとの組合せによるものである。
【0063】
ロータが図10(C)に示すような位置にある場合、ステータ巻線内の電流は、可能な限り迅速に反転する。磁界内のこのインパルスは、反対方向の磁界を印加することによってロータのN極を「キック」し、従って、ロータを再度時計回りで押し進める。このプロセスは、90°の回転毎に繰り返されるが、電流の方向はその都度反転する。上記で検討した実施形態と同様に、1つの電気サイクルは、180°の機械的回転毎に起こることが理解できる。補極内の磁界の反転は、この機械を往復式磁束インパルスモータとして表すことができる。
【0064】
このモータの簡略形態(本発明によるものではない)を図11に示し、ここでは補極及びバック鉄心部内の磁界は、一方向(すなわち、磁界は反転しない)であり、内側アイアンリング14"は、図示のように磁化を有する。この構成は、本発明の図2〜図5の実施形態に相当する。ここでは内側アイアンは、静止時にロータの4極を引き付けるための4極磁化を有する。
【0065】
また4極ロータにおいて、図12に示すように2極磁化を適用してもよい。しかしながらこの構成では、内側アイアン14"'の永久磁界は、バック鉄心部13"'と共有されることになる。
【0066】
電流がコイル8、9に印加されると、補極がロータの極を引き付ける。この電流は、内部バックアイロンの永久磁界を強め、或いは該磁界に対向しようとして、整流時のトルク生成機構に影響を及ぼす可能性があるので、この電流の方向は重要である。しかしながら、十分なアンペアターンが印加される場合には、補極は、最も近くにあるロータ極を引き付け、(主に)リラクタンストルクが生成されることになる。補極11"'とロータ極10"'との間に可変のエアギャップが存在すると、この補極は、図10(A)に示したのと同様の位置にロータを引き寄せることになる。
【0067】
電流を解除すると、ロータは、内側アイアンの永久磁化によって引き続き時計周りに回転し続ける。ロータ10"'の永久磁化が存在しないと、整流電流は一方向とすることができる。これはまた図11の構成にも当てはまる。
【0068】
往復式磁束インパルスモータ(すなわち、図6〜9及び図10の実施形態)用の典型的な電気駆動回路が図14に示されている。図14(A)は、2つのトランジスタスイッチ16を使用した構成を示しており、整流コイル及び界磁コイル8、9それぞれのバイファイラ巻線15a、15bを使用して双方向磁界を生成できるようにする。或いは、双方向磁界は、図14(B)に示すHブリッジ構成を使用して生成することができる。
【0069】
往復式磁束インパルスモータが十分に機能するためには、磁束の迅速な反転が重要になる。これは、スイッチ16の両端のターンオフ電圧が最大電圧まで上昇することを制御的に可能にするスナバ回路17を利用した図14(A)の回路によって達成することができる。従って、この高電圧は、巻線内の誘導電流に対向し、よって、この誘導電流を迅速にゼロにする。同時に他のスイッチをオンにすることにより、磁界が他の方向に構築できるようになる。第1のスイッチのオフの間に吸収される貯蔵エネルギーを用いて、単に電流が標準供給電圧で安定的に構築できるのではなく、他の巻線の電流を強制的且つ迅速に増加(又は「キックスタート」)させることができる。この理由は、電源電圧よりも遙かに高い電圧になるように貯蔵エネルギーを構成できるためである。
【0070】
或いは、スナバ17内の貯蔵エネルギーは、抵抗で消費するのではなく、単に電源に戻すこともできる。いずれの場合においても、スナバ回路は再生式と考えられ、回収されたエネルギーは失われず、従って、従来のRCD(抵抗−コンデンサ−ダイオード)スナバよりも効率的である。
【0071】
単一巻線15、単一スイッチ16、及び再生式とすることができるスナバ回路のみを使用した、図2〜5、図11及び図12の単純な(一方向の)磁束インパルスモータ用の典型的な回路を図15に示している。
【0072】
両方のタイプのモータにおいて、駆動回路の点弧は、適切なエンコーダによりステータに対するロータ位置と同期させる。他方、この同じ目的を達成するためにセンサレス技術を使用できることは想定される。
【0073】
図16及び図17を参照すると、一方向磁束インパルスモータ(本発明によるものではない)は、図16(A)に示したように、ステータの内側アイアン内にパーキング磁石(N)を有する。整流が行われようとしているときには、補極11内の磁界の方向は、ロータのトルク生成機構に影響を及ぼす。パーキング磁石がモータのエアギャップ内に「N」極を示し、コイル内の電流の方向により補極がエアギャップで「S」極にすることができる場合、モータ内の磁束パスが図16(A)に示されている。磁石による磁界と補極による磁界とが同時に発生し、ロータ極の2つに対する正味引力が大きいことは理解することができる。ロータは、図16(B)に示す位置に動かされる。この点において、ロータの他の2つの隣接する極は、パーキング磁石の近傍に接近している。図16(B)に示した位置でロータが停止するのではなく、磁界は、隣接する極を介した新しい(より低リラクタンスな)パスを見つける(図16(C)参照)。モータ駆動トルクは、図16(C)の状態で維持され、ロータの隣接する極は、磁石を通過する結合磁界と並んで引き寄せられている。
【0074】
しかしながら、コイル内の電流が反対方向になり、補極がエアギャップに「N」磁極を示す(磁石のように)ようになると、磁石及びステータ励磁による磁界は一致しないようになる。その代わりに、これら磁界は、モータのアイアンを通る独立したパスを探すことになる(図17を参照)。この状態は、モータを効果的且つ効率的に整流せず、結果として機械を失速させる可能性がある。従って、この構成は回避すべきである。
【0075】
本発明の磁束インパルスモータは通常、1つ又は2つのパワートランジスタを利用して補極巻線内の電流を整流する可変速ドライブとして動作することができる。界磁巻線電流を整流する可能性を含めて、2つよりも多いトランジスタを使用する他の構成も可能であるが、これは駆動部分に複雑さとコストを付加することになる。機械の速度は、補極巻線(及び場合によっては界磁巻線)内の電流の大きさ又は継続時間のいずれか(又は両方)を変えることによって制御される。この効果は、補極において磁束のインパルスを生成するトルクの大きさを制御することである。電流の大きさは、電流をチョッピングする(通常はある高周波で)ことによって変化する。これにより始動問題が引き起こされる可能性があり、よって電流の位相角制御が代替の選択肢である(好ましくはないまでも)。位相角制御は、補極巻線の電流のターンオン時の可変遅延を導入することによって機能する。この遅延は、始動時には通常はゼロであり、所望の動作速度を達成するために大きくされる。これは、閉ループフィードバック制御システムのある形態を利用して達成することができる。
【0076】
ここで本発明に注目すると、本発明の実施形態が図18及び図19に示されており、モータは、基本的な構造及び動作の点では、図10を参照して上述されたモータとほぼ同一であり、従って、同等の構成部品について同じ参照符号が利用されている。
【0077】
すなわち、モータ1は、外側バック鉄心部13、補極11、及び界磁結合極12を定めるステータ2を有する。界磁結合極は、内側バック鉄心部14を有する。ロータ10は、極10a〜10dを有する十字形(本実施形態においては)である。ロータ10は、中心ロータ軸50の周りに時計回りに、すなわち図面においては矢印Aの方向に回転する。
【0078】
各ロータ極は、円形で且つロータ軸50に対して偏心した点50aに中心を置いた端面54を有し、従って、前方セクション54aは、後方セクション54bよりもロータ軸50により近接するようになる。ロータの前縁56の回転半径RLは、各ロータ極10a〜10dの後縁58の回転半径RTよりも約4%小さい。各ロータ極の端面54は、滑らかな円形の輪郭として図示しているが、図2〜図5、又は図10(B)に示したように階段状であってもよい。
【0079】
各極は、ほぼ平行な側面62、64の間に幅Wを有する。幅Wは、ロータ10の直径の約50%である。この幅の大部分にわたり、各ロータ極に形成されたスロット70内にその主要面にわたって平行に磁化された永久磁石72が配置される。
【0080】
ロータ10は、各々が十字形で且つスロット70が打ち抜かれた、積層体のスタックである。スロットの各端部におけるリガメント部71は、ロータ10の近位根元部73と遠位極先端部75とを連結する。円形の矢印で明確に見えるように、リガメント部71は、磁石72の端部からの磁束を短絡させ、その有効性を低減させる。従って、リガメント部は可能な限り狭く、その結果、リガメント部を飽和させるのに殆ど磁束を費やさず、残留磁束が大部分が端面54を通ってロータ10から出ていくようにする。
【0081】
スロット70は、ロータによって外接された円の接線に対して傾斜し、該接線は、各ロータ極の半径方向軸線82に垂直である。この傾斜の角度はβで、約20°である。
【0082】
スロット70は、ロータ極の後方側面62の後縁58付近から、前方側面64の根元84及び隣接ロータ極の後方側面62付近まで延びるように形成される。
【0083】
磁石72の傾斜の効果は、後縁に磁束の飽和をもたらし、より大きな磁束を受け入れることに関して後縁が高リラクタンスを有するようにすることである。逆に、各ロータの前縁56は飽和されておらず、このことは、各後縁58に集中して示した磁束線90によって例示されている。これは、ロータ10がそのいずれかの回転位置からの始動時に時計回りに優先的に回転するように、ロータ10をバイアスする。これにより、上述したような回転方向において減少していくロータ直径(2RTから2RLに)の効果が強化される。
【0084】
しかしながら、傾斜した磁石の別の効果は、その端部がリガメント部71によって短絡されることにより作動解除されるにもかかわらず、磁石の長さ(ロータ極の幅W方向における長さという意味)を増やすことができ、ロータの端面から出ていく磁束は、磁石がロータ軸に対して接線方向に配置されてロータ極の幅Wに広がり且つ磁束を短絡させるためのどのようなリガメント部も持たない場合とほぼ同じ量となることである。
【0085】
スロット70内に磁石を嵌合させることは、付加的な保持又は固定を必要としないので、磁石に関して極めて好都合な配置法である。実際に、磁石は、その磁気効果が磁石を所定位置に保持するので、嵌合すると軸方向にでさえ容易には位置を変えることはない。これらの磁石が、スロット70内に密接に滑り嵌合する場合、スロット内への単なる押圧は、薄いリガメント部71を有する場合であっても磁石の磁化によって強化される十分な保持力がある。磁石が接線方向にあるときでもこのような構成を利用することができ、例えば、
2つの始動方向が好ましいとすることができ且つバイアスが望まれない場合に相当する。この場合には、より広い磁石を挿入できるようにロータ極の根元部73を拡張するなどによって、リガメント部により引き起こされる磁気効果の損失を補う別の手段が必要となる可能性がある。
【0086】
図19を参照すると、各内側バック鉄心部14は、根元部14aと、前方ウィング14bと、後方ウィング14cとを有する。ロータ10に面している内側バック鉄心部14の内側表面は、ほぼ円形であり、軸50上に中心を置いている。内側バック鉄心部14の角度範囲(内側バック鉄心部14のセクション14bの前方先端部及び後方先端部をそれぞれ通る半径96と98との間)は、4極ロータを有するモータに関して上述したように、約135°(270/n)である。内側バック鉄心部の半径R1は、半径RTに可能な限り近く、通常は、製造公差により1mm又は2mmの範囲内となる。
【0087】
内側バック鉄心部14の内側表面は、3つのセクタ、すなわち、前方セクタ14Lと、後方セクタ14Tと、中間セクタ14Nとに分けられる。前方連結部LJは、前方セクタ14Lと中間セクタ14Nとの間にあり、後方連結部TJは、後方セクタ14Tと中間セクタ14Nとの間にある。後方連結部TJは、半径94上で根元部14aのほぼ中央にある。前方連結部LJは、半径94と96とを二分する半径100上にほぼ位置する。
【0088】
中間セクタ14Nの半径R2は、半径R1よりも2%から4%の間、好ましくは約3%大きい。
【0089】
最初に図18を参照すると、ロータは、上述のように時計回りに回転している。従って、ロータ極10a及び10cの前縁56が、界磁結合極12のそれぞれの内側バック鉄心部14の前方連結部LJを通り過ぎ始めると、ロータによって生じるエアギャップが次第に増加し、一方では極10c、dと、他方では極10a、bとそれぞれの内側バック鉄心部との間の磁気結合のリラクタンスが次第に増加する。これは、ロータを遅延させる効果がある。しかしながら、このような遅延は、補極11とロータ極10b、10dとの間の引力によって生成された電磁トルクが最大値になると同時に生じる。従って、この効果はロータの加速を緩和することである。
【0090】
逆に、前縁56が後方連結部TJを通過すると、リラクタンスは次第に減少し、図19に示した位置を通るロータを加速させる。この加速は、ステータコイル内の電流が切り替わったときに、この位置における整流モータの電磁駆動トルクの損失と同時に起こる。
【0091】
従って、中間セクタ14Nの全体的な効果は、モータ1によって生成されるトルクの平滑化である。
【符号の説明】
【0092】
1 モータ; 2 ステータ; 10 ロータ;
10a,10b,10c,10d ロータの突極; 11 ステータの補極;
12 界磁結合極; 13 外側バック鉄心部; 14 内側バック鉄心部;
14L 前方セクタ; 14N 中間セクタ; 14T 後方セクタ;
50 ロータ軸; 54 ロータの端面; 54a ロータの前方セクション;
54b ロータの後方セクション; 56 ロータの前縁(隅部);
58 ロータの後縁(隅部); 70 スロット; 71 リガメント部;
72 永久磁石; 73 ロータの近位根元部; 75 ロータの遠位極先端部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス型電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、国際特許公開WO02/101907に開示された発明の改良であり、その内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
Deodhar,R.P.他による論文「The Flux−Reversal Machine:A New Brushless Doubly−Salient Permanent Magnet Machine(磁束反転機械:新しいブラシレス二重突極永久磁石機械)」IEEE1996年(「Deodhar」)では、
ステータと、
ステータ内に回転可能に装着されたロータと、
ステータの第1及び第2の極と、
ステータ極の少なくとも1つ上の巻線と、
ロータの少なくとも1対の突極と、
ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
ロータの周りにステータ極の少なくとも1つから延びている内側バック鉄心部と、
を備え、ロータの隣接する極の間のロータ内の磁界がロータの回転の一部分に対して少なくとも内側バック鉄心部により部分的に短絡するようにされた機械を開示している。
【0004】
永久磁石は、互いに同一のステータ極上に設けられている。この機械は、多相配置で構成された場合、モータとしてのみ作動することができる。この機械は、このように作動するときには標準的リラクタンスモータとして機能する。
【0005】
国際特許公開WO02/101907の発明によれば、Deodharにおいて記載されたタイプのモータが提供されており、該モータは、
ロータを駆動回転させるように巻線に給電するための電気回路と、
補極であり且つロータを短絡しないステータの第1の極と、
界磁結合極(12)であり且つ内側バック鉄心部を有するステータの第2の極と、
ロータ極が逆方向に磁化されるようにロータを磁化し、電気回路には、ロータの各極が補極に近づくときに該ロータの各極を引き付け、補極から遠ざかるときに該ロータの各極を反発するように、交番磁界をステータの補極内に生成する制御手段を備えており、磁界は、ロータの1回転当たりにロータの極と同じ数だけ交番し、ロータは、該ロータ及び補極間の相互作用による電磁トルクと、ロータ及び界磁結合極間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動されるようになる、
ことによって特徴付けられる。
【0006】
内側バック鉄心部によるロータを通る磁界の短絡は、ロータに加えられるトルクに対してプラスとマイナスの両方の影響を有する低リラクタンスパスを提供する。この作用は、短絡が始まってトルクがロータに加えられるような、リラクタンスの減少が生じるときにはプラスであるが、短絡が終わり等価の負のトルクが加えられるときにはマイナスである。このことは、マイナスの作用をモータの主駆動「パルス」と同時に発生させるように構成することができるので、全体のトルク曲線に対して平滑作用を有する。これにより、駆動パルスの大きさが小さくなり、該駆動パルスは、その代わりに短絡磁界のプラスの作用に「変換」されるようである。
【0007】
ステータの極は好ましくは突極である。補極巻線は、ステータの補極の周りに存在することができる。界磁巻線は、界磁結合極の周りに設けることができる。更に、補極巻線及び界磁巻線は直列にすることができる。実際には、界磁巻線は、補極巻線よりも大きい磁界を発生させることができる。
【0008】
好ましくは、ロータの隣接する極の角度範囲は、内側バック鉄心部の角度範囲とほぼ同じであり、その角度範囲はほぼ(270/n)°(nはロータ極対の数)である。「角度範囲」とは、ロータの極の両方或いは内側バック鉄心部の場合には内側バック鉄心部を含む円のセグメントの角度を意味する。
【0009】
好ましくは、ロータの極の1つの角度範囲は、補極の角度範囲とほぼ同じであり、好ましくはほぼ(90/n)°(nはロータ極対の数)である。好ましくは、ロータの極は、ほぼ(45/n)°(nはロータ極対の数)に等しい角度αにわたって極が短絡されるような、極の角度範囲を横切る様々な半径を有する。極対の1つだけが存在するときには、角度αは約45°である。
【0010】
好ましくは、ステータの周りに交互に配置された、各々等しい複数の補極及び界磁結合極と、界磁結合極の2倍の極数のロータの極とが存在する。実際に、2つの界磁結合極と、2つの補極と、2つの極対を有する十字形ロータとが存在することができる。この場合、角度αは約22°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許公開WO02/101907
【特許文献2】欧州特許公開第455578A
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Deodhar,R.P.他による論文「The Flux−Reversal Machine:A New Brushless Doubly−Salient Permanent Magnet Machine(磁束反転機械:新しいブラシレス二重突極永久磁石機械)」IEEE1996年(「Deodhar」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ロータが2つの極対を有する十字形である場合には、これらの極は交互に磁化される。このような構成は、トルクの観点からは好ましいが、補極の磁化方向を変える(1回転当たりにロータの極数と同じ回数)ために少なくとも2つのスイッチを有する電気回路を必要とする。
【0014】
本発明は、特にこのようなモータの設計における改良に関するが、他のモータにおいても広く応用することができる。
【0015】
本発明の目的は、ロータが永久的に磁化され、磁石が好都合に配置されているモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明によれば、次のモータが提供される。すなわち、
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、該磁石が、各極内の横断スロット内に配置されていることを特徴とするモータ
が提供される。
【0017】
横断スロット内に磁石を配置することによって、他の配置形式が必要とされない。スロットは、取り付けられると他の固定形式が必要とされないように、密接な滑り嵌合(滑りばめ)で磁石を収容するように構築することができる。
【0018】
好ましくは、ロータは、共に接続された積層体のスタックを含む。当該場合において、好ましくは、ロータ軸に垂直なロータの断面においてスロットが閉鎖される。従って、磁石は、ロータ軸に対して軸方向で磁石をスロットに滑動させることによって、該スロットに導入される。スロットのいずれかの端部にあるリガメント部が、ロータの根元部を幅の大部分にわたりスロットの周りの遠位ロータ先端部に連結するので、ロータの構造は、半径方向において強度がある。しかしながら、リガメント部が極めて厚い場合、磁石の磁束の過度の短絡が起こり、磁石の効果的な磁化を減少させる可能性がある。この作用は、根元部と先端部との間の連結の強度要件に合致するリガメント部の厚さを最小にすることによって、並びにより長い(より広い)磁石を利用できるように、及び磁石を短絡させるリガメント部が存在しないときのモータ用途の十分に強い磁石で利用可能な磁束と残留磁束(リガメント部が短絡磁束で飽和された後に残されたもの)とが等価になるようにロータの根元部を広げることによって、その影響を弱めることができる。
【0019】
しかしながら、より好ましくは、ロータ軸に垂直な平面内の断面において、磁石は、ロータ軸上に中心がある円の接線に対して傾斜しており、該接線は、極の中心を通る半径に垂直な接線であり、傾斜角は5°から40°の間である。このような構成は2つの効果を有する。
【0020】
第1の効果は、より長い(より広い)磁石を使用することができ、ロータ極の根元部を拡張することを必要とせずに上述の利益(付随的に、4極ロータにおいて達成するのが困難となる可能性がある)を受けることができるようになることである。第2の効果は、このような構成は、ロータ内の磁束密度をバイアスする作用を有し、いずれかの所与のスタート位置におけるモータ始動時に、ロータの回転方向を所望の方向に確保するのがより容易になることである。
【0021】
実際に、別の態様において、本発明の目的はまた、モータの始動時にモータの回転方向を全体的により容易に確保することができるモータを提供することである。
【0022】
従って、本発明によれば、
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、そして、
ロータ軸に垂直な平面内の断面において、磁石は、ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、極の中心を通る半径に垂直な接線であり、傾斜角は10°から40°の間である、
ことを特徴とするモータが提供される。
【0023】
好ましくは、磁石はロータ軸に平行である。好ましくは、傾斜角は10°から30°の間であり、好ましくは15°から25°の間である。
【0024】
本発明の上述のいずれかの態様において定義されたモータであって、ロータ軸に垂直なロータの断面において、ロータ極は極の中心を通る半径にわたる幅を有することができ、磁石は、ロータの幅の大部分を横切って延びることができる。
【0025】
実際に、両方又は単に第1の態様によれば、各ロータ積層体のリガメント部は、スロットの各端部を定め、リガメント部は、各積層体の近位根元部に対して各積層体の遠位極先端部分を支持し、且つリガメント部によって引き起こされた磁石の磁束短絡を最小にしながらスロット内の磁石を保持するのに十分である。
【0026】
好ましくは、ロータは、その回転方向における該ロータの前方コーナ及び後方コーナを定める端面及び側面を有する。
【0027】
好ましくは、磁石は、後方コーナに隣接し、磁石の磁化が後方コーナの領域においてロータを磁気的に飽和させる一方の端部と、磁気的に飽和されない前方コーナから離間した他方の端部とを有する。
【0028】
好ましくは、モータは、国際特許公開WO02/101907に記載されたモータである。
【0029】
上記で定義した磁石を傾斜させることによって、ロータの磁気形状が変更され、これをバイアスして傾斜方向に優先的に回転させる。この点に関して、傾斜の方向は、ロータ軸に対して半径方向に磁石の最も離れた端部から、ロータ軸に対して半径方向において磁石のより近接した端部に向かう方向である。
【0030】
本発明の別の目的は、回転中の低減したトルクリップルを有する国際特許公開WO02/101907に記載されたタイプのモータを提供することである。
【0031】
本発明のこの態様によれば、
ステータと、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータと、
ステータの第1及び第2の極と、
ステータ極の少なくとも一方の上の巻線と、
ロータが磁化される結果として逆向きに磁化されるようになる、ロータの少なくとも1対の突極と、
ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
ロータの隣接する極間のロータ内の磁界が、ロータの回転の一部分において実質的に短絡するように、ロータの周りにステータ極の少なくとも一方から延びた内側バック鉄心部と、
ロータを回転駆動させるように巻線に給電する電気回路と、
を備えたモータであって、
ステータの前記第1の極が補極であってロータを短絡せず、
ステータの第2の極が界磁結合極(12)であって、内側バック鉄心部を有し、
電気回路には、ロータ各極が補極に近づくと該ロータ極を引き付け、補極から遠ざかるときに該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりにロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの補極内に生成する制御手段が設けられ、
ロータは、該ロータと補極との間の相互作用による電磁トルクと、該ロータと界磁結合極との間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動される、
ようにされたモータであって、
前記内側バック鉄心部は、ロータ軸に対して円周上にあり、その両端部の近傍にある端部セクタと端部セクタ間の中間セクタとを有し、その中間セクタは、端部セクタよりもロータ軸から更に離間している、
ことを特徴とするモータを提供する。
【0032】
好ましくは、中間セクタの大部分は、ロータの回転方向に対して内側バック鉄心部の前方部分内にある。
【0033】
好ましくは、端部セクタには、ロータの回転方向に対して前縁セクタ及び後縁セクタがあり、中間セクタは後方セクタとの後方連結部を有し、後方連結部は、界磁結合極を通る、好ましくは界磁結合極の中心を通るロータ軸の半径上にある。
【0034】
好ましくは、中間セクタは、その円周方向範囲が前縁セクタの円周方向範囲の70%から130%の間、好ましくは90%から110%の間にあるように位置付けられた、前縁セクタとの前方連結部を有する。
【0035】
ロータは、該ロータの回転方向に対してロータの前縁から延びている前方セクションと、該ロータの回転方向に対してロータの後縁から延びている後方セクションとを有する端面を含む。
【0036】
好ましくは、前縁セクタ及び中間セクタの範囲は、各ロータ極の端面の円周方向範囲と同じである。
【0037】
好ましくは、前方セクションは、後方セクションよりもロータ軸に近接して離間されている。好ましくは、端面は、ロータ軸に平行で且つ該ロータ軸から離間した軸上に中心を置く円弧である。好ましくは、後方セクションの半径は、前方セクションの半径よりも2%から10%の間、好ましくは3%から6%の間大きい。
【0038】
好ましくは、後縁は、ロータと内側バック鉄心部との間の最小エアギャップを定め、後縁がいずれかの端部セクタに近接するときのエアギャップは、後縁が中間セクタに近接するときのエアギャップの20%から70%の間であり、好ましくは40%から60%の間である。言い換えると、好ましくは、中間セクタの半径は、端部セクタの半径よりも好ましくは1%から3%の間大きい。
【0039】
中間セクタによって提供された増大されたエアギャップは、そのリラクタンスを増大させる効果を有し、ロータの前縁が前方連結部を通り過ぎるときにはロータを遅延させ、前縁が後方連結部を通り過ぎるときにはロータを加速するように構成され、該遅延は、補極とロータとの間の相互作用によって生成された最も高い電磁トルクの期間の間に構成され、加速は、補極とロータとの間の相互作用によって生成された最も低い電磁トルクの期間の間に構成され、これによりモータのトルクリップルが最小化されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一部を形成するものではない、公知のモータの概略図である。
【図2】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図3】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図4】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図5】ロータが様々な角度位置である場合の、2極ロータを有するモータの概略図である。
【図6】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図2と同じ図である。
【図7】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図3と同じ図である。
【図8】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図4と同じ図である。
【図9】モータが国際特許公開WO02/101907の発明によるものであり、ロータが永久に磁化されていることを除いては、図5と同じ図である。
【図10】極の永久磁化が交互にされた4極ロータを使用する、国際特許公開WO02/101907の発明の更なる実施形態の同様の図である。
【図11】ここでは、図2〜図5と同様に、ロータが磁化されておらず、永久磁化がステータに内蔵されていることを除いて図10(C)と同様の図である。
【図12】より単純なモータの図11に類似した図である。
【図13】(A)は図12のモータに関するトルク曲線であり、(B)は図10のモータに関するトルク曲線である。
【図14】図6〜9及び図10のモータに給電する回路構成である。
【図15】図2〜5、図11及び図12のモータに給電する回路構成である。
【図16】補極においてS極が形成されたときの図12のモータの磁束分布を示している。
【図17】補極においてN極が形成されたときの図12のモータの磁束分布を示している。
【図18】50°のロータ位置における本発明によるモータの断面図である。
【図19】90°のロータ位置における本発明によるモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
例証として添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0042】
図1(A)は、2極ロータbと、2つの補極c、d及び2つの界磁極e、fからなるステータとを含む、公知の2極磁束インパルスモータaの基本的な構成を示している。界磁極は、1つの実施可能な構成(図示のように)により永久に磁化することができ、或いは、(界磁極の周りに)界磁巻線が存在し、DC電流を流して図示の磁化を生成するようにする。コイル(図示せず)は、補極の周りに巻かれ、補極巻線と呼ばれる巻線を形成する。ロータの極gは、極の先端部に一定の半径円弧を有さない場合がある。その代わりに、極のテーパ付き曲線前縁hが設けられ、回転中にロータの極とステータ極のいずれかとの間に生成された半径方向エアギャップiが変化するようにされる。また、2つのロータ極の非対称性を強調するロータ極の他の特徴部も存在することができる。例えば、図1(A)〜(D)に示した(好ましい)無限に変化するギャップiの代わりに、階段部又は肩部を極先端部に形成することができる。
【0043】
補極巻線内に電流が存在しないときには、ロータは、図1(A)に示すように静止位置にある。DC電流が補極巻線に印加された場合、補極上に磁界が生成され、極c上にN極、極d上にS極となる(図1(B)参照)。この磁界の結果として、ロータbは、静止位置から図1(B)に示した別の平衡位置まで回転する。補極巻線の電流の振幅が増大すると、ロータは、例えば図1(C)に示すように、別の平衡の位置に更に回転する。ここで補極巻線の電流を切断すると(更に、時計回りの方向にロータのどのような回転慣性もないと)、ロータは、反時計回りに回転して、図1(A)に示す初期平衡位置に落ち着くことができる。
【0044】
このことは、このタイプのモータに関して起こり得る始動問題を示している。モータが静止から始動して加速することができることを保証するために、補極での発生磁界の大きさは、界磁極によって生成される永久磁界よりも遙かに大きくなければならない。連続回転を保証するために、補極は、ロータを図1(D)に示す位置まで引き寄せる必要がある。この位置において、補極巻線の電流を解除すると、界磁極は、ロータを図1(A)に示す位置まで時計回りに引き寄せることになる(180度の回転が完了する)。
【0045】
明白なことに、モータを始動するためには大きな電流パルスが必要とされ、又は、少なくとも過剰電流を避けるために、永久磁界の大きさは小さくする必要性がある。ロータがある速度で回転しようとするとすぐに、補極で生成された大きな磁束インパルスが界磁アライメント磁束からロータを引っ張る。ロータの慣性(及び界磁アライメント磁束によって生成された幾らかのトルク)は、ロータを次の整流位置まで搬送する。従って、補極巻線内の電流は、連続的ではなく、通常約50%のデューティを有する。
【0046】
始動及び運転の問題を緩和するために、ある時間帯に磁界を切断するのが有利な可能性がある。しかしながら、このことは、界磁磁束を生成するために永久磁石を使用できないこと、及び補極巻線電流に加えて界磁巻線電流の整流を適切にタイミング調整しなければならないことを意味している。これにより、モータ及びパワーエレクトロニクスの設計に余分な複雑さが付加される。
【0047】
図面の図2〜5を参照すると、モータ1は、ステータ2と、該ステータ2内で回転可能に装着されたロータ10とを含む。
【0048】
ステータ2は、補極11と界磁極12とを有する。補極11及び界磁極12のステム又は基部は、外側バック鉄心部13a、13bによって連結されている。補極11は、界磁極12上の界磁巻線8と直列(又は並列)の補極巻線7を有する。しかしながら、補極コイル7を界磁結合極コイル8と分離しておくことには幾つかの利点がある場合がある。
【0049】
補極11の角度範囲xは約90°である。ロータ10は、2つの突極10a、10bを有し、これらの角度範囲は同様に約90°である。各極には肩部が備えられ、ロータの前縁上に拡張エアギャップ9aと、ロータの後縁上に薄いエアギャップ9bとを形成するようにされる。この拡張エアギャップ9aは、矢印Aの方向のロータ10の回転を保証する。このことは、ロータの間の磁束結合がロータの角度範囲の約半分(すなわち約45°)でだけにわたって起こることを意味している。階段部として示したが、磁束結合と分離との間のより滑らかな移行を可能にする図1(A)〜(B)に示したものに類似した構成を利用することが好ましい。しかしながら、便宜上、本明細書では階段状肩部を示しており、以下図10から図12、並びに図16及び図17には示されていない。
【0050】
界磁極12は、内側バック鉄心部14を間に形成する2つのリム12a、12bを備える。この内側バック鉄心部の角度範囲は約270°である。上述のように、ロータの極10a、10b(すなわち、ステータ極との最小エアギャップ9bを提示する部分)は、各々約45°の角度を定める。従って、図4及び図5で分かるように、ロータ10の両方の極10a、10bがバック鉄心部14に近接して位置する(すなわち、バック鉄心部によって短絡されている)ロータの回転角度αは約45°である。
【0051】
作動中、ロータ10は、図2の矢印Aの方向に回転している。この図は、ゼロ角度位置のロータ10を示している。この位置で補極コイル7の励磁があり、N極は補極11にある。更に図13(A)のトルク曲線を参照すると、ゼロ位置において小さな正のトルクが存在することが分かる。これは、最小リラクタンス位置には未だ達しておらず、約15°で起こるためであり、この時点で巻線7、8への給電が停止される。次いで、ロータは、バック鉄心部14のリム12bの磁化によって印加される高トルクによって引き寄せられる。このトルクは、図4に示すように、バック鉄心部14の境界内のロータ10の最小リラクタンス位置が約100°で達成されるまで、印加される。
【0052】
しかしながら、約90°において、すなわち最小リラクタンス位置に達する前に、巻線7、8が再通電され、且つ極10bが補極コイル及び界磁コイル7、8により生成された強磁界によって引き付けられると、正のトルクが印加される。従って、トルクは、図2のゼロ位置と一致する180°の位置を超えるまでロータに印加され続ける。その後、サイクルは、180°の機械角度毎に繰り返される。
【0053】
一方、約135°から180°の間では、補極コイル及び界磁結合コイル7、8の励磁により引き起こされる磁界の生成磁束(図5の破線矢印を参照)が、内側バック鉄心部の磁化により引き起こされた閉回路磁束ループ(実線矢印)と相互作用する。バック鉄心部14のリム12c内の磁束線の反対方向を参照されたい。従って、この閉ループが存在する間、該閉ループにより整流磁束によって生成されたトルクが減少する。よって、図13(A)の約160°においてトルクの低下が見られる。それでもなお二重効果が起こっている。一方では、極10bは、閉ループ磁束が交差するエアギャップを次第に「ピンチオフ」し、閉ループのマイナスの効果が低減されるようにする。他方では、極10bは、補極11と次第に接続され、極10aを離れ且つリム12c内の閉ループ磁束に対向する整流磁束が増大するようになる。
【0054】
いずれの場合においても、内側バック鉄心部14を形成する拡張界磁極12の効果は、電力が最初に印加されたときにロータが始動する位置にロータが止まる(図4又は図5の位置のいずれかに)だけでなく、ロータが、各発生源によって発生磁界の結合を促進することである。この効果は、ロータをその低リラクタンス位置(すなわち図5)から偏位させる電流インパルスが、発生磁界が直交する図1(A)〜(D)に示され又は欧州特許EP455578Aにより例示される先行技術構成において必要とされるほど大きくなる必要はないことと考えられる。また、ロータへの電力供給が平滑化され、慣性又は他の平滑化の必要性が低減される。
【0055】
上述のモータは、本発明の態様の多くを示しているが、本発明の技術的範囲内にはないことを強調したい。
【0056】
図6〜9を参照すると、国際特許公開WO02/101907の発明による図2〜5のモータの変形形態が示されており、ここでロータ10'は磁化されているが、界磁極リム12a、12bは磁化されていない。この実施形態は、駆動要因は異なるが、他の点では図2〜5と同一である。
【0057】
例えば、図6に示したゼロ位置の後の約10°では、補極巻線7(及び界磁巻線8)が通電されて、補極11にN極を生成する。これは、ロータ10'を回転方向(矢印A)に反発する。約45°では、内側バック鉄心部14を通じた発生磁気短絡におけるリラクタンス効果は、更なる駆動トルク(図13(B)において2点鎖線で示したように、リラクタンス効果がないものを上回る)を生成する。しかしながら、この効果は、短絡が終了するときに約90°で減少する。他方、この点において、ロータ10'のS極10bはN補極によって引き寄せられ、その引力は、135°から190°の間で増大する。このような増大は通常、この位相において磁気短絡(図9の矢印)の低リラクタンス効果が途絶えたことを除いては、ロータによって感知されるトルク(図13(B)の破線)を増加させることになる。約190°では、界磁巻線7、8を通る電流は、反転して補極11にS極を提供する。その後、このサイクルは、反転を繰り返すが、同じ形状のトルク曲線をもたらす。
【0058】
図13(B)の曲線から分かるように、ロータに印加されるトルクのうち幾らかの平滑化がある。
【0059】
国際特許公開WO02/101907の発明は原理上2極ロータにより機能するが、トルク曲線において180°の力学的回転にわたって2倍の数のピークとトラフが生じることから、図10及び図11に示した構成が好ましい。ロータの慣性質量が同じである場合、このことは、必要な電気回路が同じであることにもかかわらず、より滑らかな回転をもたらすことになる。
【0060】
図10(A)において、4極ロータ10"は、十字形状であり、磁化されて十字の周りに交互にN極及びS極10a、10b、10c及び10dを提示する。各極は、図2〜5及び図6〜9の実施形態と同様に、階段状又は曲線状で(図示せず)、回転方向制御を可能にする可変エアギャップを提供する。
【0061】
コイルが、図10(A)の位置で通電されると、各補極11"は、ロータ10"のN極に対してN磁極を提供する。これは、ロータの2つのN極10a、10cを反発し、従ってロータは時計回りに動く。ここで内側バック鉄心部14は、ロータ10"のN極10a、10bとS極10c、10dの対の間の低リラクタンスパスを形成し始める。
【0062】
ロータは、図10(B)に示した位置を超えて時計周りに数度の最小リラクタンスの位置まで回転する。これは、ステータ巻線からの通電の有無にかかわらず自然に起こることになる。ロータが図10(B)に示す位置にあるときに、ステータコイルは、N極が補極11のエアギャップ表面に存在するように通電される(未だ通電されてない場合、すなわち、図10(A)の位置と図10(B)の位置との間の期間にオフにされている場合)。ここではロータのS極は補極に引き寄せられている。このステップにおけるトルク生成の方法は、電磁アライメントトルクとリラクタンストルクとの組合せによるものである。
【0063】
ロータが図10(C)に示すような位置にある場合、ステータ巻線内の電流は、可能な限り迅速に反転する。磁界内のこのインパルスは、反対方向の磁界を印加することによってロータのN極を「キック」し、従って、ロータを再度時計回りで押し進める。このプロセスは、90°の回転毎に繰り返されるが、電流の方向はその都度反転する。上記で検討した実施形態と同様に、1つの電気サイクルは、180°の機械的回転毎に起こることが理解できる。補極内の磁界の反転は、この機械を往復式磁束インパルスモータとして表すことができる。
【0064】
このモータの簡略形態(本発明によるものではない)を図11に示し、ここでは補極及びバック鉄心部内の磁界は、一方向(すなわち、磁界は反転しない)であり、内側アイアンリング14"は、図示のように磁化を有する。この構成は、本発明の図2〜図5の実施形態に相当する。ここでは内側アイアンは、静止時にロータの4極を引き付けるための4極磁化を有する。
【0065】
また4極ロータにおいて、図12に示すように2極磁化を適用してもよい。しかしながらこの構成では、内側アイアン14"'の永久磁界は、バック鉄心部13"'と共有されることになる。
【0066】
電流がコイル8、9に印加されると、補極がロータの極を引き付ける。この電流は、内部バックアイロンの永久磁界を強め、或いは該磁界に対向しようとして、整流時のトルク生成機構に影響を及ぼす可能性があるので、この電流の方向は重要である。しかしながら、十分なアンペアターンが印加される場合には、補極は、最も近くにあるロータ極を引き付け、(主に)リラクタンストルクが生成されることになる。補極11"'とロータ極10"'との間に可変のエアギャップが存在すると、この補極は、図10(A)に示したのと同様の位置にロータを引き寄せることになる。
【0067】
電流を解除すると、ロータは、内側アイアンの永久磁化によって引き続き時計周りに回転し続ける。ロータ10"'の永久磁化が存在しないと、整流電流は一方向とすることができる。これはまた図11の構成にも当てはまる。
【0068】
往復式磁束インパルスモータ(すなわち、図6〜9及び図10の実施形態)用の典型的な電気駆動回路が図14に示されている。図14(A)は、2つのトランジスタスイッチ16を使用した構成を示しており、整流コイル及び界磁コイル8、9それぞれのバイファイラ巻線15a、15bを使用して双方向磁界を生成できるようにする。或いは、双方向磁界は、図14(B)に示すHブリッジ構成を使用して生成することができる。
【0069】
往復式磁束インパルスモータが十分に機能するためには、磁束の迅速な反転が重要になる。これは、スイッチ16の両端のターンオフ電圧が最大電圧まで上昇することを制御的に可能にするスナバ回路17を利用した図14(A)の回路によって達成することができる。従って、この高電圧は、巻線内の誘導電流に対向し、よって、この誘導電流を迅速にゼロにする。同時に他のスイッチをオンにすることにより、磁界が他の方向に構築できるようになる。第1のスイッチのオフの間に吸収される貯蔵エネルギーを用いて、単に電流が標準供給電圧で安定的に構築できるのではなく、他の巻線の電流を強制的且つ迅速に増加(又は「キックスタート」)させることができる。この理由は、電源電圧よりも遙かに高い電圧になるように貯蔵エネルギーを構成できるためである。
【0070】
或いは、スナバ17内の貯蔵エネルギーは、抵抗で消費するのではなく、単に電源に戻すこともできる。いずれの場合においても、スナバ回路は再生式と考えられ、回収されたエネルギーは失われず、従って、従来のRCD(抵抗−コンデンサ−ダイオード)スナバよりも効率的である。
【0071】
単一巻線15、単一スイッチ16、及び再生式とすることができるスナバ回路のみを使用した、図2〜5、図11及び図12の単純な(一方向の)磁束インパルスモータ用の典型的な回路を図15に示している。
【0072】
両方のタイプのモータにおいて、駆動回路の点弧は、適切なエンコーダによりステータに対するロータ位置と同期させる。他方、この同じ目的を達成するためにセンサレス技術を使用できることは想定される。
【0073】
図16及び図17を参照すると、一方向磁束インパルスモータ(本発明によるものではない)は、図16(A)に示したように、ステータの内側アイアン内にパーキング磁石(N)を有する。整流が行われようとしているときには、補極11内の磁界の方向は、ロータのトルク生成機構に影響を及ぼす。パーキング磁石がモータのエアギャップ内に「N」極を示し、コイル内の電流の方向により補極がエアギャップで「S」極にすることができる場合、モータ内の磁束パスが図16(A)に示されている。磁石による磁界と補極による磁界とが同時に発生し、ロータ極の2つに対する正味引力が大きいことは理解することができる。ロータは、図16(B)に示す位置に動かされる。この点において、ロータの他の2つの隣接する極は、パーキング磁石の近傍に接近している。図16(B)に示した位置でロータが停止するのではなく、磁界は、隣接する極を介した新しい(より低リラクタンスな)パスを見つける(図16(C)参照)。モータ駆動トルクは、図16(C)の状態で維持され、ロータの隣接する極は、磁石を通過する結合磁界と並んで引き寄せられている。
【0074】
しかしながら、コイル内の電流が反対方向になり、補極がエアギャップに「N」磁極を示す(磁石のように)ようになると、磁石及びステータ励磁による磁界は一致しないようになる。その代わりに、これら磁界は、モータのアイアンを通る独立したパスを探すことになる(図17を参照)。この状態は、モータを効果的且つ効率的に整流せず、結果として機械を失速させる可能性がある。従って、この構成は回避すべきである。
【0075】
本発明の磁束インパルスモータは通常、1つ又は2つのパワートランジスタを利用して補極巻線内の電流を整流する可変速ドライブとして動作することができる。界磁巻線電流を整流する可能性を含めて、2つよりも多いトランジスタを使用する他の構成も可能であるが、これは駆動部分に複雑さとコストを付加することになる。機械の速度は、補極巻線(及び場合によっては界磁巻線)内の電流の大きさ又は継続時間のいずれか(又は両方)を変えることによって制御される。この効果は、補極において磁束のインパルスを生成するトルクの大きさを制御することである。電流の大きさは、電流をチョッピングする(通常はある高周波で)ことによって変化する。これにより始動問題が引き起こされる可能性があり、よって電流の位相角制御が代替の選択肢である(好ましくはないまでも)。位相角制御は、補極巻線の電流のターンオン時の可変遅延を導入することによって機能する。この遅延は、始動時には通常はゼロであり、所望の動作速度を達成するために大きくされる。これは、閉ループフィードバック制御システムのある形態を利用して達成することができる。
【0076】
ここで本発明に注目すると、本発明の実施形態が図18及び図19に示されており、モータは、基本的な構造及び動作の点では、図10を参照して上述されたモータとほぼ同一であり、従って、同等の構成部品について同じ参照符号が利用されている。
【0077】
すなわち、モータ1は、外側バック鉄心部13、補極11、及び界磁結合極12を定めるステータ2を有する。界磁結合極は、内側バック鉄心部14を有する。ロータ10は、極10a〜10dを有する十字形(本実施形態においては)である。ロータ10は、中心ロータ軸50の周りに時計回りに、すなわち図面においては矢印Aの方向に回転する。
【0078】
各ロータ極は、円形で且つロータ軸50に対して偏心した点50aに中心を置いた端面54を有し、従って、前方セクション54aは、後方セクション54bよりもロータ軸50により近接するようになる。ロータの前縁56の回転半径RLは、各ロータ極10a〜10dの後縁58の回転半径RTよりも約4%小さい。各ロータ極の端面54は、滑らかな円形の輪郭として図示しているが、図2〜図5、又は図10(B)に示したように階段状であってもよい。
【0079】
各極は、ほぼ平行な側面62、64の間に幅Wを有する。幅Wは、ロータ10の直径の約50%である。この幅の大部分にわたり、各ロータ極に形成されたスロット70内にその主要面にわたって平行に磁化された永久磁石72が配置される。
【0080】
ロータ10は、各々が十字形で且つスロット70が打ち抜かれた、積層体のスタックである。スロットの各端部におけるリガメント部71は、ロータ10の近位根元部73と遠位極先端部75とを連結する。円形の矢印で明確に見えるように、リガメント部71は、磁石72の端部からの磁束を短絡させ、その有効性を低減させる。従って、リガメント部は可能な限り狭く、その結果、リガメント部を飽和させるのに殆ど磁束を費やさず、残留磁束が大部分が端面54を通ってロータ10から出ていくようにする。
【0081】
スロット70は、ロータによって外接された円の接線に対して傾斜し、該接線は、各ロータ極の半径方向軸線82に垂直である。この傾斜の角度はβで、約20°である。
【0082】
スロット70は、ロータ極の後方側面62の後縁58付近から、前方側面64の根元84及び隣接ロータ極の後方側面62付近まで延びるように形成される。
【0083】
磁石72の傾斜の効果は、後縁に磁束の飽和をもたらし、より大きな磁束を受け入れることに関して後縁が高リラクタンスを有するようにすることである。逆に、各ロータの前縁56は飽和されておらず、このことは、各後縁58に集中して示した磁束線90によって例示されている。これは、ロータ10がそのいずれかの回転位置からの始動時に時計回りに優先的に回転するように、ロータ10をバイアスする。これにより、上述したような回転方向において減少していくロータ直径(2RTから2RLに)の効果が強化される。
【0084】
しかしながら、傾斜した磁石の別の効果は、その端部がリガメント部71によって短絡されることにより作動解除されるにもかかわらず、磁石の長さ(ロータ極の幅W方向における長さという意味)を増やすことができ、ロータの端面から出ていく磁束は、磁石がロータ軸に対して接線方向に配置されてロータ極の幅Wに広がり且つ磁束を短絡させるためのどのようなリガメント部も持たない場合とほぼ同じ量となることである。
【0085】
スロット70内に磁石を嵌合させることは、付加的な保持又は固定を必要としないので、磁石に関して極めて好都合な配置法である。実際に、磁石は、その磁気効果が磁石を所定位置に保持するので、嵌合すると軸方向にでさえ容易には位置を変えることはない。これらの磁石が、スロット70内に密接に滑り嵌合する場合、スロット内への単なる押圧は、薄いリガメント部71を有する場合であっても磁石の磁化によって強化される十分な保持力がある。磁石が接線方向にあるときでもこのような構成を利用することができ、例えば、
2つの始動方向が好ましいとすることができ且つバイアスが望まれない場合に相当する。この場合には、より広い磁石を挿入できるようにロータ極の根元部73を拡張するなどによって、リガメント部により引き起こされる磁気効果の損失を補う別の手段が必要となる可能性がある。
【0086】
図19を参照すると、各内側バック鉄心部14は、根元部14aと、前方ウィング14bと、後方ウィング14cとを有する。ロータ10に面している内側バック鉄心部14の内側表面は、ほぼ円形であり、軸50上に中心を置いている。内側バック鉄心部14の角度範囲(内側バック鉄心部14のセクション14bの前方先端部及び後方先端部をそれぞれ通る半径96と98との間)は、4極ロータを有するモータに関して上述したように、約135°(270/n)である。内側バック鉄心部の半径R1は、半径RTに可能な限り近く、通常は、製造公差により1mm又は2mmの範囲内となる。
【0087】
内側バック鉄心部14の内側表面は、3つのセクタ、すなわち、前方セクタ14Lと、後方セクタ14Tと、中間セクタ14Nとに分けられる。前方連結部LJは、前方セクタ14Lと中間セクタ14Nとの間にあり、後方連結部TJは、後方セクタ14Tと中間セクタ14Nとの間にある。後方連結部TJは、半径94上で根元部14aのほぼ中央にある。前方連結部LJは、半径94と96とを二分する半径100上にほぼ位置する。
【0088】
中間セクタ14Nの半径R2は、半径R1よりも2%から4%の間、好ましくは約3%大きい。
【0089】
最初に図18を参照すると、ロータは、上述のように時計回りに回転している。従って、ロータ極10a及び10cの前縁56が、界磁結合極12のそれぞれの内側バック鉄心部14の前方連結部LJを通り過ぎ始めると、ロータによって生じるエアギャップが次第に増加し、一方では極10c、dと、他方では極10a、bとそれぞれの内側バック鉄心部との間の磁気結合のリラクタンスが次第に増加する。これは、ロータを遅延させる効果がある。しかしながら、このような遅延は、補極11とロータ極10b、10dとの間の引力によって生成された電磁トルクが最大値になると同時に生じる。従って、この効果はロータの加速を緩和することである。
【0090】
逆に、前縁56が後方連結部TJを通過すると、リラクタンスは次第に減少し、図19に示した位置を通るロータを加速させる。この加速は、ステータコイル内の電流が切り替わったときに、この位置における整流モータの電磁駆動トルクの損失と同時に起こる。
【0091】
従って、中間セクタ14Nの全体的な効果は、モータ1によって生成されるトルクの平滑化である。
【符号の説明】
【0092】
1 モータ; 2 ステータ; 10 ロータ;
10a,10b,10c,10d ロータの突極; 11 ステータの補極;
12 界磁結合極; 13 外側バック鉄心部; 14 内側バック鉄心部;
14L 前方セクタ; 14N 中間セクタ; 14T 後方セクタ;
50 ロータ軸; 54 ロータの端面; 54a ロータの前方セクション;
54b ロータの後方セクション; 56 ロータの前縁(隅部);
58 ロータの後縁(隅部); 70 スロット; 71 リガメント部;
72 永久磁石; 73 ロータの近位根元部; 75 ロータの遠位極先端部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、該磁石が、各極内の横断スロット内に配置されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記ロータは、共に接続された積層体のスタックを含む、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータ軸に垂直な前記ロータの断面において前記スロットが閉鎖される、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ロータ軸を含む平面内の断面において、前記磁石が前記ロータ軸に平行である、
請求項1、2又は3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータ軸に垂直な平面内の断面内において、前記磁石は、前記ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、前記極の中心を通る半径に垂直な接線であり、前記傾斜の角度が5°から40°の間である、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項6】
ステータを備え、
前記ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
前記ステータの極を備え、
前記ステータ極の上の巻線を備え、
前記ロータが磁化される結果として逆向きに磁化されるようになる、前記ロータの少なくとも1対の突極を備え、
前記ロータ各極が前記ステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、前記ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、前記ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界を前記ステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
前記ロータの各極が前記極により担持された永久磁石によって磁化され、
前記ロータ軸に垂直な平面内の断面内において、前記磁石は、前記ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、前記極の中心を通る半径に垂直な接線であり、前記傾斜角が10°から40°の間である、
ことを特徴とするモータ。
【請求項7】
前記傾斜角が10°から30°の間である、
請求項5又は請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記傾斜角が15°から25°の間である、
請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ロータ軸に垂直な前記ロータの断面において、前記ロータ極は、前記極の中心を通る半径にわたる幅を有し、前記磁石は、前記ロータの幅の大部分を横切って延びている、前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項10】
各ロータ積層体のリガメント部が前記スロットの各端部を定め、該リガメント部は、前記各積層体の近位根元部に対して各前記積層体の遠位極先端部分を支持し、且つ前記リガメント部によって引き起こされた前記磁石の磁束短絡を最小にしながら前記スロット内の磁石を保持するのに十分である、
請求項3に従属する請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記ロータが、その回転方向における前記ロータの前方コーナ及び後方コーナを定める端面及び側面を有する、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項12】
前記磁石が、前記後方コーナに隣接し、前記磁石の磁化が前記後方コーナの領域において前記ロータを磁気的に飽和させる一方の端部と、前記前方コーナから離間し、磁気的に飽和されない他方の端部とを有する、
請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
ステータと、
前記ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータと、
前記ステータの第1及び第2の極と、
前記ステータ極の少なくとも一方の上の巻線と、
前記ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、前記ロータの少なくとも1対の突極と、
前記ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
前記ロータの隣接する極間の前記ロータ内の磁界が、前記ロータの回転の一部分において実質的に短絡されるように、前記ロータの周りに前記ステータ極の少なくとも一方から延びた内側バック鉄心部と、
前記ロータを回転駆動させるように前記巻線に給電するための電気回路と、
を備え、
前記ステータの第1の極が補極であってロータを短絡せず、
前記ステータの第2の極が界磁結合極(12)であって、前記内側バック鉄心部を有し、
前記電気回路には、前記ロータ各極が前記ステータ極に近づくとき該ロータ極を引き付け、前記ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、前記ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界を前記ステータの極内に生成する制御手段が設けられており、
前記ロータが、該ロータと前記補極との間の相互作用による電磁トルクと、前記ロータと前記界磁結合極との間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動される、
ようにされたモータであって、
前記内側バック鉄心部が、前記ロータ軸に対してほぼ円周上にあり、その両端部の近傍にある端部セクタと前記端部セクタ間の中間セクタとを有し、前記中間セクタが、前記端部セクタよりも前記ロータ軸から更に離間されている、
ことを特徴とするモータ。
【請求項14】
前記中間セクタの大部分が、前記ロータの回転方向に対して前記内側バック鉄心部の前方部分にある、
請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
前記端部セクタには、前記ロータの回転方向に対して前縁セクタと後縁セクタとがあり、前記中間セクタが、前記後方セクタとの後方連結部を有し、前記後方連結部が、前記界磁結合極を通る前記ロータ軸の半径上にある、
請求項13又は14に記載のモータ。
【請求項16】
前記後方連結部が、前記界磁結合極の中心を通る前記ロータ軸の半径上にある、
請求項15に記載のモータ。
【請求項17】
前記中間セクタは、該中間セクタの円周方向範囲が前記前縁セクタの円周方向範囲の70%から130%の間にあるように位置付けられた前記前縁セクタとの前方連結部を有する、
請求項15又は16に記載のモータ。
【請求項18】
前記中間セクタの円周方向範囲が、前記前縁セクタの円周方向範囲の90%から110%の間にある、
請求項17に記載のモータ。
【請求項19】
前記ロータが、前記ロータの回転方向に対して前記ロータの前縁から延びている前方セクションと、前記ロータの回転方向に対して前記ロータの後縁から延びている後方セクションとを有する端面を含む、
請求項13から請求項18のいずれかに記載のモータ。
【請求項20】
前記前方セクションが、前記後方セクションよりも前記ロータ軸に近接して離間されている、
請求項19に記載のモータ。
【請求項21】
前記端面が、前記ロータ軸に平行で且つ該ロータ軸から離間した軸上に中心を置く円弧である、
請求項19又は20に記載のモータ。
【請求項22】
前記後方セクションの半径が、前記前方セクションの半径よりも2%から10%の間、好ましくは3%から6%の間大きい、
請求項19、20又は21に記載のモータ。
【請求項23】
前記後方セクションの半径が、前記前方セクションの半径よりも3%から6%の間大きい、
請求項22に記載のモータ。
【請求項24】
前記後縁が、前記ロータと内側バック鉄心部との間の最小エアギャップを定め、前記後縁がいずれかの端部セクタに近接したときのエアギャップが、前記後縁が前記中間セクタに近接したときのエアギャップの20%から70%の間であり、好ましくは40%から60%の間である、
請求項19から請求項23のいずれかに記載のモータ。
【請求項25】
前記後縁がいずれかの端部セクタに近接したときの前記最小エアギャップは、前記後縁が前記中間セクタに近接したときのエアギャップの40%から60%の間である、
請求項24に記載のモータ。
【請求項26】
前記中間セクタの半径が、前記端部セクタの半径よりも1%から3%の間大きい、
請求項13から請求項25のいずれかに記載のモータ。
【請求項27】
請求項1から12のいずれかの特徴部も有する、請求項13から26のいずれかに記載のモータ。
【請求項28】
前記モータが、国際特許公開WO02/101907のいずれかの請求項に記載されたモータである、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項29】
添付図面の図18及び19を参照して本明細書で十分に説明された磁束インパルスモータ。
【請求項1】
ステータを備え、
ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
ステータの極を備え、
ステータ極の巻線を備え、
ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、該ロータの少なくとも1対の突極を備え、
ロータ各極がステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界をステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
ロータ各極が該ロータ極により担持された永久磁石によって磁化され、該磁石が、各極内の横断スロット内に配置されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記ロータは、共に接続された積層体のスタックを含む、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータ軸に垂直な前記ロータの断面において前記スロットが閉鎖される、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ロータ軸を含む平面内の断面において、前記磁石が前記ロータ軸に平行である、
請求項1、2又は3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータ軸に垂直な平面内の断面内において、前記磁石は、前記ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、前記極の中心を通る半径に垂直な接線であり、前記傾斜の角度が5°から40°の間である、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項6】
ステータを備え、
前記ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータを備え、
前記ステータの極を備え、
前記ステータ極の上の巻線を備え、
前記ロータが磁化される結果として逆向きに磁化されるようになる、前記ロータの少なくとも1対の突極を備え、
前記ロータ各極が前記ステータ極に近づくと該ロータ極を引き付け、前記ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、前記ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界を前記ステータの極内に生成する制御手段が設けられた電気回路を備え、
前記ロータの各極が前記極により担持された永久磁石によって磁化され、
前記ロータ軸に垂直な平面内の断面内において、前記磁石は、前記ロータ軸上に中心を置く円の接線に対して傾斜しており、該接線は、前記極の中心を通る半径に垂直な接線であり、前記傾斜角が10°から40°の間である、
ことを特徴とするモータ。
【請求項7】
前記傾斜角が10°から30°の間である、
請求項5又は請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記傾斜角が15°から25°の間である、
請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ロータ軸に垂直な前記ロータの断面において、前記ロータ極は、前記極の中心を通る半径にわたる幅を有し、前記磁石は、前記ロータの幅の大部分を横切って延びている、前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項10】
各ロータ積層体のリガメント部が前記スロットの各端部を定め、該リガメント部は、前記各積層体の近位根元部に対して各前記積層体の遠位極先端部分を支持し、且つ前記リガメント部によって引き起こされた前記磁石の磁束短絡を最小にしながら前記スロット内の磁石を保持するのに十分である、
請求項3に従属する請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記ロータが、その回転方向における前記ロータの前方コーナ及び後方コーナを定める端面及び側面を有する、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項12】
前記磁石が、前記後方コーナに隣接し、前記磁石の磁化が前記後方コーナの領域において前記ロータを磁気的に飽和させる一方の端部と、前記前方コーナから離間し、磁気的に飽和されない他方の端部とを有する、
請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
ステータと、
前記ステータ内でロータ軸の周りに回転可能に装着されたロータと、
前記ステータの第1及び第2の極と、
前記ステータ極の少なくとも一方の上の巻線と、
前記ロータが磁化されると相互に逆向きに磁化される、前記ロータの少なくとも1対の突極と、
前記ステータ極を磁気的に結合する外側バック鉄心部と、
前記ロータの隣接する極間の前記ロータ内の磁界が、前記ロータの回転の一部分において実質的に短絡されるように、前記ロータの周りに前記ステータ極の少なくとも一方から延びた内側バック鉄心部と、
前記ロータを回転駆動させるように前記巻線に給電するための電気回路と、
を備え、
前記ステータの第1の極が補極であってロータを短絡せず、
前記ステータの第2の極が界磁結合極(12)であって、前記内側バック鉄心部を有し、
前記電気回路には、前記ロータ各極が前記ステータ極に近づくとき該ロータ極を引き付け、前記ステータ極から遠ざかると該ロータ極を反発し、前記ロータの1回転当たりに該ロータの極と同じ数だけ交番するような交番磁界を前記ステータの極内に生成する制御手段が設けられており、
前記ロータが、該ロータと前記補極との間の相互作用による電磁トルクと、前記ロータと前記界磁結合極との間の相互作用によるリラクタンストルクとの組合せによって駆動される、
ようにされたモータであって、
前記内側バック鉄心部が、前記ロータ軸に対してほぼ円周上にあり、その両端部の近傍にある端部セクタと前記端部セクタ間の中間セクタとを有し、前記中間セクタが、前記端部セクタよりも前記ロータ軸から更に離間されている、
ことを特徴とするモータ。
【請求項14】
前記中間セクタの大部分が、前記ロータの回転方向に対して前記内側バック鉄心部の前方部分にある、
請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
前記端部セクタには、前記ロータの回転方向に対して前縁セクタと後縁セクタとがあり、前記中間セクタが、前記後方セクタとの後方連結部を有し、前記後方連結部が、前記界磁結合極を通る前記ロータ軸の半径上にある、
請求項13又は14に記載のモータ。
【請求項16】
前記後方連結部が、前記界磁結合極の中心を通る前記ロータ軸の半径上にある、
請求項15に記載のモータ。
【請求項17】
前記中間セクタは、該中間セクタの円周方向範囲が前記前縁セクタの円周方向範囲の70%から130%の間にあるように位置付けられた前記前縁セクタとの前方連結部を有する、
請求項15又は16に記載のモータ。
【請求項18】
前記中間セクタの円周方向範囲が、前記前縁セクタの円周方向範囲の90%から110%の間にある、
請求項17に記載のモータ。
【請求項19】
前記ロータが、前記ロータの回転方向に対して前記ロータの前縁から延びている前方セクションと、前記ロータの回転方向に対して前記ロータの後縁から延びている後方セクションとを有する端面を含む、
請求項13から請求項18のいずれかに記載のモータ。
【請求項20】
前記前方セクションが、前記後方セクションよりも前記ロータ軸に近接して離間されている、
請求項19に記載のモータ。
【請求項21】
前記端面が、前記ロータ軸に平行で且つ該ロータ軸から離間した軸上に中心を置く円弧である、
請求項19又は20に記載のモータ。
【請求項22】
前記後方セクションの半径が、前記前方セクションの半径よりも2%から10%の間、好ましくは3%から6%の間大きい、
請求項19、20又は21に記載のモータ。
【請求項23】
前記後方セクションの半径が、前記前方セクションの半径よりも3%から6%の間大きい、
請求項22に記載のモータ。
【請求項24】
前記後縁が、前記ロータと内側バック鉄心部との間の最小エアギャップを定め、前記後縁がいずれかの端部セクタに近接したときのエアギャップが、前記後縁が前記中間セクタに近接したときのエアギャップの20%から70%の間であり、好ましくは40%から60%の間である、
請求項19から請求項23のいずれかに記載のモータ。
【請求項25】
前記後縁がいずれかの端部セクタに近接したときの前記最小エアギャップは、前記後縁が前記中間セクタに近接したときのエアギャップの40%から60%の間である、
請求項24に記載のモータ。
【請求項26】
前記中間セクタの半径が、前記端部セクタの半径よりも1%から3%の間大きい、
請求項13から請求項25のいずれかに記載のモータ。
【請求項27】
請求項1から12のいずれかの特徴部も有する、請求項13から26のいずれかに記載のモータ。
【請求項28】
前記モータが、国際特許公開WO02/101907のいずれかの請求項に記載されたモータである、
前記いずれかの請求項に記載のモータ。
【請求項29】
添付図面の図18及び19を参照して本明細書で十分に説明された磁束インパルスモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−504726(P2010−504726A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528786(P2009−528786)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003611
【国際公開番号】WO2008/035105
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509081333)シンクロパルス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003611
【国際公開番号】WO2008/035105
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509081333)シンクロパルス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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