説明

磁気センサおよびそれを用いた電流センサ

【課題】 導電路を切断することなく電流を検出可能な状態にセッティングすることが可能であり且つ精度が高い電流センサを実現可能な磁気センサおよびそれを用いた電流センサを提供する。
【解決手段】 互いに対向する円弧状磁路11,12と、互いに対向する円弧状磁路13,14と、円弧状磁路11,12の両端同士を接続する接続磁路21,22と、円弧状磁路13,14の両端同士を接続する接続磁路23,24と、接続磁路21を囲むように巻かれたコイル31と、円弧状磁路11,12を纏めて囲むように巻かれたコイル32と、接続磁路23を囲むように巻かれたコイル33と、円弧状磁路13,14を纏めて囲むように巻かれたコイル34とを少なくとも有し、円弧状磁路11,13が第1の円周上に配置され、円弧状磁路12,14が第2の円周上に配置される磁気センサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサおよびそれを用いた電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの離隔した環状磁路およびそれらを接続する2つの接続磁路からなる磁気回路と、接続磁路に巻回された励磁コイルと、2つの環状磁路を一体的に取り巻くように巻き付けられた検出用コイルとを備えた電流センサが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、被測定電流が流れる導電路を切断することなく環状磁路の内側へ収容するために、分離可能な環状磁路を備えた電流センサが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4310373号公報
【特許文献2】特開2006−84176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて提案された電流センサは、高精度な電流測定ができるものの、被測定電流が流れる導電路を切断することなく環状磁路の内側へ収容することができないという問題があった。また、特許文献2にて提案された電流センサのように、環状磁路を分割可能にした場合には、分割部に生じる微少な隙間によって環状磁路の磁気抵抗が変化するため、電流の測定精度が低くなるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、導電路を切断することなく電流を検出可能な状態にセッティングすることが可能であり且つ精度が高い電流センサを実現可能な磁気センサおよびそれを用いた電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気センサは、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された第1および第2の円弧状磁路と、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された第3および第4の円弧状磁路と、前記第1および第2の円弧状磁路の一方端同士を接続する第1の接続磁路と、前記第1および第2の円弧状磁路の他方端同士を接続する第2の接続磁路と、前記第3および第4の円弧状磁路の一方端同士を接続する第3の接続磁路と、前記第3および第4の円弧状磁路の他方端同士を接続する第4の接続磁路と、前記第1の接続磁路を囲むように巻かれている第1のコイルと、前記第1および第2の円弧状磁路の少なくとも一部を纏めて囲むように巻かれている第2のコイルと、前記第3の接続磁路を囲むように巻かれている第3のコイルと、前記第3および第4の円弧状磁路の少なくとも一部を纏めて囲むように巻かれている第4のコイルとを少なくとも有しており、前記第1および第3の円弧状磁路が第1の円周上に配置されるとともに、前記第2および第4の円弧状磁路が第2の円周上に配置されることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の電流センサは、前記磁気センサを備え、前記第1および第2の円周の内側を通過するように、測定対象の電流を流すための導電路が配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気センサによれば、導電路を切断することなく電流を検出可能な状態にセッティングすることが可能であり且つ精度が高い電流センサを実現可能な磁気センサを得ることができる。
本発明の電流センサによれば、導電路を切断することなく電流を検出可能な状態にセッティングすることが可能であり且つ精度が高い電流センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態の例の電流センサを模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の例の電流センサを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の磁気センサおよびそれを用いた電流センサを添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1,図2は、本発明の実施の形態の例の電流センサを模式的に示す斜視図である。本例の電流センサは、図1、図2に示すように、円弧状磁路11〜14と、接続磁路21〜24と、コイル31〜34とを有している。なお、図1は、円弧状磁路11,13が同じ円周上に配置されるとともに互いに接合されて円環51が形成され、円弧状磁路12,14が同じ円周上に配置されるとともに互いに接合されて円環52が形成された状態を示している。そして、円環51,52の内側を通過するように、測定対象の電流を流すための導電路41が配置されている。なお、本例の電流センサは、導電路41が配置されない場合には、円環51および円環52の周回方向(図1のθ方向)の磁界を検出する磁気センサとして機能する。また、図2は、円弧状磁路11と円弧状磁路13とが分離され、円弧状磁路12と円弧状磁路14とが分離された状態を示しており、導電路41の図示を省略している。
【0012】
円弧状磁路11〜14は半円の円弧状の同一形状を有している。円弧状磁路11,12は、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置されている。円弧状磁路11,12の一方端同士は接続磁路21によって接続されており、円弧状磁路11,12の他方端同士は接続磁路22によって接続されている。よって、円弧状磁路11,12および接続磁路21,22によって、環状の磁路が形成されている。円弧状磁路13,14は、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置されている。円弧状磁路13,14の一方端同士は接続磁路23によって接続されており、円弧状磁路13,14の他方端同士は接続磁路24によって接続されている。よって、円弧状磁路13,14および接続磁路23,24によって、環状の磁路が形成されている。
【0013】
コイル31は、接続磁路21を囲むように巻かれており、コイル33は、接続磁路23を囲むように巻かれている。また、コイル32は、円弧状磁路11,12を纏めて囲むように巻かれており、コイル34は、円弧状磁路13,14を纏めて囲むように巻かれている。なお、図1,図2においては、円弧状磁路11,12の一部にコイル32が巻き付けられ、円弧状磁路13,14の一部にコイル34が巻き付けられた例を示したが、センサの感度を高めるためには、円弧状磁路11,12の全体に渡ってコイル32が巻き付けられ、円弧状磁路13,14の全体に渡ってコイル34が巻き付けられることが望ましい。同様に、コイル31は接続磁路21の全体に渡って巻き付けられるのが望ましく、コイル33は接続磁路23の全体に渡って巻き付けられるのが望ましい。また、コイル31の両端には端子31a,31bが設けられており、コイル32の両端には端子32a,32bが設けられており、コイル33の両端には端子33a,33bが設けられており、コイル34の両端には端子34a,34bが設けられている。
【0014】
また、本例の電流センサは、円弧状磁路11,12ならびに接続磁路21,22からなる環状の磁路の磁気抵抗と、円弧状磁路13,14ならびに接続磁路23,24からなる環状の磁路の磁気抵抗とが等しくされており、接続磁路21と接続磁路23とが隣接して配置されている。また、コイル31,33には交流が流されるが、コイル31に電流が流れることによって接続磁路21に発生する磁束の向きおよび大きさと、コイル33に電流が流れることによって接続磁路23に発生する磁束の向きおよび大きさとが、それぞれの時点において等しくされる。よって、コイル31に電流が流れることによって接続磁路21に発生する磁束は、円弧状磁路11,12ならびに接続磁路21,22からなる環状の磁路のみを通過し、コイル33に電流が流れることによって接続磁路23に発生する磁束は、円弧状磁路13,14ならびに接続磁路23,24からなる環状の磁路のみを通過する。
【0015】
例えば、ある瞬間に、コイル31に端子31aから入って端子31bから出る向きに電流が流されると、コイル31において、図1のz方向に向かう磁界が発生し、これによって、接続磁路21において、図1のz方向に向かう磁束が発生する。この磁束は、円弧状磁路11を図1の−θ方向に進み、接続磁路22を図1の−z方向に進み、円弧状磁路12を図1のθ方向に進んで接続磁路21に戻る。このようにして、円弧状磁路11,12および接続磁路21,22によって構成された環状の磁路を磁束が流れる。
【0016】
また、同じ瞬間には、コイル33に端子33aから入って端子33bから出る向きに電流が流される。すると、コイル33において、図1のz方向に向かう磁界が発生し、これによって、接続磁路23において、図1のz方向に向かう磁束が発生する。この磁束は、円弧状磁路13を図1のθ方向に進み、接続磁路24を図1の−z方向に進み、円弧状磁路14を図1の−θ方向に進んで接続磁路23に戻る。このようにして、円弧状磁路13,14および接続磁路23,24によって構成された環状の磁路を磁束が流れる。
【0017】
この瞬間において、導電路41に電流が流れていない場合には、コイル32の内側において、円弧状磁路11を図1の−θ方向に向かう磁束と、円弧状磁路12を図1のθ方向に向かう磁束とが存在する。この逆向きの2つの磁束は等しいため、互いに打ち消し合ってコイル32を貫く磁束は0となる。コイル31に流れる電流の向きが逆になると、各磁路中の磁束の向きも逆になるが、コイル32を貫く磁束は0のままである。よって、コイル31に交流を流しても、コイル32の両端の端子32a,32b間に誘導起電力は生じない。同様に、導電路41に電流が流れていない場合には、コイル33に交流を流しても、コイル34の両端の端子34a,34b間には誘導起電力は生じない。
【0018】
導電路41に図1のz方向に向かう電流iが流れると、導電路41の周囲に図1のθ方向の磁界が発生し、これによって、円弧状磁路11,12の両方において、図1のθ方向に向かう磁束が発生する。これに対して、前述したように、コイル31を流れる交流によって生じる磁束は、円弧状磁路11と円弧状磁路12とで逆向きになる。このため、円弧状磁路11,12の一方では、コイル31を流れる交流による磁束の向きと導電路41を流れる電流による磁束の向きとが一致して磁束が増加し、円弧状磁路11,12の他方では、コイル31を流れる交流による磁束の向きと導電路41を流れる電流による磁束の向きとが逆になって磁束が減少する。このとき、外部磁界の変化にともなう磁性体の透磁率の変化が線形でないことにより、コイル31に流れる交流によって発生する円弧状磁路11,12の磁束が、導電路41を流れる電流iによって生じる磁界によって増加する量と減少する量とが等しくならない。これにより、導電路41を流れる電流iの大きさに応じた誘導起電力がコイル32に発生する。同様に、導電路41に図1のz方向に向かう電流iが流れると、電流iの大きさに応じた誘導起電力がコイル34に発生する。
【0019】
よって、コイル32の両端に生じる電圧とコイル34の両端に生じる電圧とが打ち消し
合わずに加算されるように、コイル32とコイル34とを直列に接続して、その両端の電圧を測定することにより、導電路41を流れる電流iの大きさを求めることができる。このようにして、本例の電流センサは電流センサとして機能する。なお、コイル32の両端に設けられた端子32a,32b間の電圧と、コイル34の両端に設けられた端子34a,34b間の電圧との、少なくとも一方の電圧を測定すれば、導電路41を流れる電流の大きさを求めることができる。
【0020】
本例の電流センサは、円弧状磁路11と円弧状磁路13とを分離し、円弧状磁路12と円弧状磁路14とを分離することができる。すなわち、円弧状磁路11,12および接続磁路21,22の接合体と、円弧状磁路13,14および接続磁路23,24の接合体とを分離することができる。よって、本例の電流センサは、導電路41を切断することなく、導電路41を流れる被測定電流を検出可能な状態にセッティングすることができる。
【0021】
また、本例の電流センサは、円弧状磁路11,13が同じ円周上に配置されるとともに互いに接合されて円環51が形成され、円弧状磁路12,14が同じ円周上に配置されるとともに互いに接合されて円環52が形成されるとともに、円環51および円環52の内側に導電路41が配置される。よって、円環51および円環52の内側の領域における導電路41の位置にかかわらず、導電路41を流れる電流を高精度で測定することができる。
【0022】
さらに、本例の電流センサは、円弧状磁路11,12ならびに接続磁路21,22からなる第1の磁路の磁気抵抗と、円弧状磁路13,14ならびに接続磁路23,24からなる第2の磁路の磁気抵抗とが等しくされており、接続磁路21と接続磁路23とが隣接して配置されており、コイル31に電流が流れることによって接続磁路21に発生する磁束の向きおよび大きさと、コイル33に電流が流れることによって接続磁路23に発生する磁束の向きおよび大きさとが、それぞれの時点において等しくされる。これにより、円弧状磁路11,12が接合されて円環51が形成され、円弧状磁路13,14が接合されて円環52が形成された状態においても、円弧状磁路11,12ならびに接続磁路21,22からなる環状の磁路と、円弧状磁路13,14ならびに接続磁路23,24からなる環状の磁路とが分離されている。すなわち、コイル31,33に電流が流されることによって発生する磁束が、円環51における円弧状磁路11と円弧状磁路13との接合面および円環52における円弧状磁路12と円弧状磁路14との接合面を通過しない。これにより、円環51における円弧状磁路11と円弧状磁路13との接合面および円環52における円弧状磁路12と円弧状磁路14との接合面に隙間が存在しても電流の測定精度が低下しない。よって、本例の電流センサによれば、導電路を切断することなく電流を検出可能な状態にセッティングすることが可能であり且つ精度が高い電流センサを得ることができる。
【0023】
本例の電流センサにおいて、円弧状磁路11〜14および接続磁路21〜24は、例えば、鉄,ニッケル,コバルト等の強磁性体を使用して形成することができる。また、特許文献1に記載されたように、内部に磁性流体が封入された構造体を使用しても構わない。この場合には、磁性流体が存在する部分が円弧状磁路11〜14および接続磁路21〜24として機能する。さらに、固体状の超常磁性体を用いて円弧状磁路11〜14および接続磁路21〜24を構成しても構わない。
【0024】
(変形例)
本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0025】
例えば、上述した実施の形態の例においては、接続磁路21にコイル31が巻き付けら
れ、接続磁路23にコイル33が巻き付けられた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、接続磁路21,22の両方にコイル31を巻き付けるようにしても良く、接続磁路23,24の両方にコイル33を巻き付けるようにしても構わない。この場合には、接続磁路21に発生させる磁束の向きと接続磁路22に発生させる磁束の向きとが逆になり、接続磁路23に発生させる磁束の向きと接続磁路24に発生させる磁束の向きとが逆になるようにする必要がある。
【0026】
また、上述した実施の形態の例においては、円弧状磁路11,12によって円環51が形成され、円弧状磁路13,14によって円環52が形成された場合、すなわち、円弧状磁路11,12および接続磁路21,22からなる環状磁路と、円弧状磁路13,14および接続磁路23,24からなる環状磁路との、2つの環状磁路を有する場合を示したがが、これに限定されるものではない。円環51および円環52が、それぞれ4つ以上の偶数個の円弧状磁路から構成され、それぞれの円弧状磁路の両端が接続磁路によって接続されて、4つ以上の偶数個の環状磁路が形成されるようにしても構わない。なお、この場合には、隣り合う円弧状磁路の接合部の全てが分離可能である必要はない。また、分離可能でない接合部においては、1つの接続磁路が隣り合う環状磁路で共有されていても構わない。
【0027】
またさらに、上述した実施の形態の例においては、円環51,52の内側を通過するように、測定対象の電流を流すための導電路41が配置されて、電流センサとして用いられる例を示したが、これに限定されるものではない。円環51,52の周回方向(図1のθ方向)の磁界を検出する磁気センサとして用いても構わない。
【符号の説明】
【0028】
11,12,13,14:円弧状磁路
21,22,23,24:接続磁路
31,32,33,34:コイル
41:導電路
51,52:円環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された第1および第2の円弧状磁路と、所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された第3および第4の円弧状磁路と、
前記第1および第2の円弧状磁路の一方端同士を接続する第1の接続磁路と、
前記第1および第2の円弧状磁路の他方端同士を接続する第2の接続磁路と、
前記第3および第4の円弧状磁路の一方端同士を接続する第3の接続磁路と、
前記第3および第4の円弧状磁路の他方端同士を接続する第4の接続磁路と、
前記第1の接続磁路を囲むように巻かれている第1のコイルと、
前記第1および第2の円弧状磁路の少なくとも一部を纏めて囲むように巻かれている第2のコイルと、
前記第3の接続磁路を囲むように巻かれている第3のコイルと、
前記第3および第4の円弧状磁路の少なくとも一部を纏めて囲むように巻かれている第4のコイルとを少なくとも有しており、
前記第1および第3の円弧状磁路が第1の円周上に配置されるとともに、前記第2および第4の円弧状磁路が第2の円周上に配置されることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記第1および第3の円弧状磁路が接続されて第1の円環が形成されるとともに、前記第2および第4の円弧状磁路が接続されて第2の円環が形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1および第2の円弧状磁路ならびに前記第1および第2の接続磁路からなる第1の磁路の磁気抵抗と、前記第3および第4の円弧状磁路ならびに前記第3および第4の接続磁路からなる第2の磁路の磁気抵抗とが等しくされており、前記第1の接続磁路と前記第3の接続磁路とが隣接して配置されており、前記第1のコイルに電流が流れることによって前記第1の接続磁路に発生する磁束の向きおよび大きさと、前記第3のコイルに電流が流れることによって前記第3の接続磁路に発生する磁束の向きおよび大きさとが、それぞれの時点において等しくされることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気センサを備え、前記第1および第2の円周の内側を通過するように、測定対象の電流を流すための導電路が配置されることを特徴とする電流センサ。

【図1】
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【図2】
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