説明

磁気ディスク、磁気ディスク装置、およびデータ記録方法

【課題】パターンドメディアにおいてデータの記録対象となるトラックにおけるリードおよびライト素子のディスク径方向の位置ずれ量のみならずディスク周方向の位置ずれ量をも把握する。
【解決手段】パターンドメディアとして構成された磁気ディスクであって、ディスク周方向に沿う第1基準線124上に配列された複数の第1サーボマーク121と、第1サーボマーク121のそれぞれに対応するディスク周方向位置において、第1基準線124に対し所定の間隔を隔てた第2基準線125を跨ぐようにディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマーク122と、各第2サーボマーク122に対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域123と、を備えて構成された磁気パターン領域12がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクなどの記憶装置を構成するための磁気ディスク、この磁気ディスクを備えた磁気ディスク装置、およびこの磁気ディスク装置を用いて行うデータ記録方法に関する。
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクを備えた磁気ディスク装置には、磁気ヘッドが組み込まれている。磁気ヘッドは、スイングアームやボイスコイルモータなどを介して磁気ディスクの略径方向に沿って移動させられるようになっており、磁気ヘッドには、リード素子(再生ヘッド)とライト素子(記録ヘッド)とがディスク周方向(スイングアームの長手方向)に僅かにずらして間隔を隔てて独立して設けられている。連続媒体である磁気ディスクへのデータ記録に際しては、例えばスピンドルモータによって回転させられる磁気ディスクに対し、リード素子をトラック中心に追従させながらライト素子によって記録磁界が印加されることにより、記録マークがディスク周方向に連なって形成される。
【0004】
磁気ヘッドのリード素子とライト素子とは、製造上の誤差等によりディスク径方向(上記長手方向の直交方向)においてずれ量が存在しうる。磁気ディスクの高記録密度化にともない、磁気ヘッドについても高い精度の位置決めが要求されるが、ディスク径方向のずれ量を磁気ディスク装置内で測定し、記録再生時に磁気ヘッドをオフセットさせて位置決め制御する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、一般に、ボイスコイルモータで駆動されるスイングアーム式の磁気ヘッドの移動において、磁気ヘッドは磁気ディスクの側方に位置する回転軸回りに回転させられる。このため、磁気ヘッドのディスク径方向における位置が変化すると、これに応じて磁気ヘッドのディスク周方向に対する傾き角(いわゆるスキュー角)が変化する。そして、スキュー角が変化すると、記録対象となるトラックにおけるリード素子およびライト素子のディスク径方向のずれ量が変化することになる。これに対し、スキュー角の変化を考慮して径方向のずれ量を測定ないし補正する方法についても知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
一方、磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、いわゆるパターンドメディアが知られている(例えば、特許文献3を参照)。パターンドメディアにおいては、例えば磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って規則的に配列された構成とされている。すなわち、パターンドメディアでは、データが記録される記録ビットは、同一トラック内(ディスク周方向)においても分離されており、その位置が絶対的に決まっている。このため、パターンドメディアにおけるデータ記録の際には、磁気ヘッド(ライト素子)からの記録磁界の印加のタイミングを記録ビットの位置に正確に同期させる必要がある。
【0007】
特許文献1,2に開示された従来技術においては、磁気ディスクとして連続媒体を対象としているので、リードおよびライト素子の間にディスク周方向の位置ずれがあってもデータ記録には支障がなく、再生時に同期をとれば問題にならない。一方、パターンドメディアに対する記録に際しては、記録対象となるトラックにおけるリードおよびライト素子のディスク周方向の位置ずれ量をも把握しておかないと、記録ビットに適切にデータを記録することができない。しかしながら、この周方向の位置ずれ量については、製造上の誤差等に起因するばらつきが生じ得ることに加え、スキュー角の変化に応じて変化し得るものとなるので、磁気ヘッドが磁気ディスク装置内に組み込まれる前に把握するのは困難である。
【0008】
【特許文献1】特開平10−334428号公報
【特許文献2】特許第3473267号公報
【特許文献3】特許2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、いわゆるパターンドメディアに関して、データの記録対象となるトラックにおけるリードおよびライト素子のディスク径方向の位置ずれ量のみならずディスク周方向の位置ずれ量をも把握することを可能とする磁気ディスク、当該位置ずれ量に基づいて適切にデータを記録することが可能に構成された磁気ディスク装置、および当該位置ずれ量に基づいて適切にデータを記録するためのデータ記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクは、磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する磁気ディスクであって、ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される磁気ディスク装置は、磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有し、ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられている磁気ディスクと、この磁気ディスクに対してデータの読み書きを行うためのリード素子とライト素子とを備える磁気ヘッドと、上記磁気ディスクを回転させる回転駆動手段と、上記磁気ヘッドを所定の回転軸回りに回転させることにより上記磁気ディスクの略径方向に移動させるヘッド移動手段とを備えた磁気ディスク装置であって、上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第1サーボマークの中心位置に追従させつつ、上記ライト素子を介して上記各磁性領域に順次磁気記録マークを付与する磁気記録マーキング手段と、上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第2サーボマークの中心位置に追従させながら当該第2サーボマークに後続する磁気記録マークを読み取り、これら読み取られた磁気記録マークに関する情報から上記リードおよびライト素子の径方向の位置ずれ量を測定する径方向位置ずれ量測定手段と、上記磁気パターン領域のそれぞれにおける、上記径方向の位置ずれ量と上記磁気ヘッドのディスク周方向に対する傾き角との関係から、任意の上記傾き角での上記リードおよびライト素子間の径方向および周方向の補正ずれ量を算出する補正ずれ量算出手段と、上記径方向および周方向の補正ずれ量に基づき、上記ライト素子が周方向に沿う上記記録ビットの中心を追従するように上記磁気ヘッドの径方向の位置を補正し、かつ、上記ライト素子による上記記録ビットへの書込みタイミングを補正しながら上記磁気ディスクにデータを記録するデータ記録手段と、を備えていることを特徴としている。
【0013】
好ましくは、上記径方向位置ずれ量測定手段における上記径方向の位置ずれ量は、上記読み取られた磁気記録マークのうち出力信号レベルの最も高いものを特定し、この磁気記録マークが書き込まれた磁性領域に対応する第2サーボマークの中心位置と、上記基準線との間隔によって規定されたものである。
【0014】
本発明の第3の側面によって提供されるデータ記録方法は、磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有し、ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられている磁気ディスクと、この磁気ディスクに対してデータの読み書きを行うためのリード素子とライト素子とを備える磁気ヘッドと、上記磁気ディスクを回転させる回転駆動手段と、上記磁気ヘッドを所定の回転軸回りに回転させることにより上記磁気ディスクの略径方向に移動させるヘッド移動手段とを用いて行うデータ記録方法であって、上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第1サーボマークの中心位置に追従させつつ、上記ライト素子を介して上記各磁性領域に順次磁気記録マークを付与し、上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第2サーボマークの中心位置に追従させながら当該第2サーボマークに後続する磁気記録マークを読み取り、これら読み取られた磁気記録マークに関する情報から上記リードおよびライト素子の径方向の位置ずれ量を測定し、上記磁気パターン領域のそれぞれにおける、上記径方向の位置ずれ量と上記磁気ヘッドのディスク周方向に対する傾き角との関係から、任意の上記傾き角での上記リードおよびライト素子間の径方向および周方向の補正ずれ量を算出し、上記径方向および周方向の補正ずれ量に基づき、上記ライト素子が周方向に沿う上記記録ビットの中心を追従するように上記磁気ヘッドの径方向の位置を補正し、かつ、上記ライト素子による上記記録ビットへの書込みタイミングを補正しながら上記磁気ディスクにデータを記録することを特徴としている。
【0015】
好ましくは、上記径方向の位置ずれ量は、上記読み取られた磁気記録マークのうち出力信号レベルの最も高いものを特定し、この磁気記録マークが書き込まれた磁性領域に対応する第2サーボマークの中心位置と、上記基準線との間隔によって規定されたものである。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態を示している。本実施形態には、本発明に係る磁気ディスク1が含まれる。磁気ディスク装置Aは、磁気ディスク1、磁気ヘッド2、スピンドルモータ3、スイングアーム4、アクチュエータ5、およびディスクコントローラ6を備えて構成されている。磁気ディスク1は、その複数枚が所定の間隔を空けて上下に重ねられており、各磁気ディスク1は、表裏両面を記録面とされている。磁気ヘッド2は、磁気ディスク1に対してデータを読み書きするものであり、磁気ディスク1の記録面と対向するように各スイングアーム4の先端に設けられている。磁気ヘッド2には、データの読み書きをそれぞれ独立して行うリード素子21とライト素子22とが磁気ディスク1の略周方向に並ぶように設けられている(図3参照)。スピンドルモータ3は、磁気ディスク1を高速回転させる回転駆動手段30である(図5参照)。スイングアーム4は、磁気ヘッド2を回転軸41回りに回転させることにより磁気ディスク1の略径方向に往復移動させるものであり、アクチュエータ5によって敏速に動作させられる。アクチュエータ5は、ボイスコイルモータなどからなり、このアクチュエータ5とスイングアーム4によってヘッド移動手段40が構成される(図5参照)。ディスクコントローラ6は、磁気ヘッド2、スピンドルモータ3、およびアクチュエータ5を駆動制御するものであり、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータ、あるいはマイクロコンピュータと同等の機能を備えたワイヤードロジック回路で構成される。
【0019】
磁気ディスク1は、図1に模式的に示すように、複数の記録ビット11がディスク周方向およびディスク径方向に沿ってマトリックス状に配列された構成を有し、パターンドメディアとして構成されたものである。より具体的には、磁気ディスク1は、剛性のあるディスク基板上に形成された非磁性体からなる記録層を備え、記録ビット11は、当該非磁性体によってディスク径方向およびディスク周方向のいずれにおいても物理的に分離した状態で設けられている。そして、ディスク周方向に沿って略同心円状に規則的に配列された記録ビット11列によってトラックTRが構成されている。なお、各トラックTRには、磁気ヘッド2の位置決め(トラッキング制御)に用いられる図示しないサーボ領域が設けられている。
【0020】
本発明に係る磁気ディスク1の記録層には、ディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所(本実施形態では2箇所)において、磁気パターン領域12が設けられている。本実施形態では、磁気パターン領域12は、磁気ディスク1の最内周近傍および最外周近傍に配置されている。
【0021】
図2に表れているように、磁気パターン領域12は、複数の第1サーボマーク121、複数の第2サーボマーク122、および複数の磁性領域123を有し、磁性部と非磁性部とからなる所定の磁気パターンとして構成されたものである。第1サーボマーク121は、ディスク周方向(矢印X方向)に沿う第1基準線124上に規則的に配列されており、リード素子21を第1サーボマーク121の中心位置に追従させるためのものである。第2サーボマーク122は、ディスク周方向に沿う第2基準線125に対し、この第2基準線125を跨ぐように順次オフセットするように配列されており、リード素子21を各第2サーボマーク122の中心位置に追従させるためのものである。第1基準線124と第2基準線125とは、ディスク径方向(矢印Y方向)においてあらかじめ設定された所定の間隔を隔てている。磁性領域123は、たとえばディスク周方向に沿って磁性部および非磁性部が交互に配列されたパターンとされており、各第2サーボマーク122に対してディスク周方向において後続する位置に設けられている。図8に示すように、この磁性領域123には、磁気記録マークMを書き込むことができる。
【0022】
図3に表れているように、磁気ヘッド2において、リード素子21およびライト素子22は、ディスク周方向(スイングアーム4の長手方向)において分離して設けられている。たとえばリード素子21およびライト素子22のディスク周方向におけるずれ(中心間距離)は、所定寸法(たとえば5μm)となるように設計されるが、実際には製造誤差などを含んだ磁気ヘッド2ごとの固有の値(ずれ量L)となり得る。また、リード素子21とライト素子22との間には、ディスク径方向においても製造誤差などによってずれ量Dが生じ得る。
【0023】
さらに、図4に表れているように、リード素子21とライト素子22とのディスク径方向におけるずれは、所定のトラックTRを基準にして測定した場合、たとえば内周側のトラックTRに位置合わせした状態と外周側のトラックTRに位置合わせした状態とでは異なる。これは、磁気ディスク1と平行な面内において磁気ヘッド2がスイングアーム4によって回転軸41回りに揺動させられると、ディスク周方向に対する磁気ヘッド2の傾き角(スキュー角)θが変化するためである。
【0024】
図5に示すように、ディスクコントローラ6には、磁気記録マーキング部61、径方向位置ずれ量測定部62、補正ずれ量算出部63、およびデータ記録部64といった機能モジュールが含まれる。径方向位置ずれ量測定部62および補正ずれ量算出部63のそれぞれは、磁気ヘッド2、回転駆動手段30、およびヘッド移動手段40を制御するとともに、所定の演算処理を実行することにより、後述する径方向の位置ずれ量W、ならびに径方向および周方向の補正ずれ量Wn,Tnを取得する。これらの情報は、たとえば製造工程の最終段階でローレベルフォーマットを行うことにより取得され、メモリに記憶される。磁気記録マーキング部61は、磁気ヘッド2、回転駆動手段30、およびヘッド移動手段40を制御することにより、磁性領域123に磁気記録マークMを書き込む。データ記録部64は、磁気ディスク1に対してデータの記録を行う際、径方向および周方向の補正ずれ量Wn,Tnに基づき、ライト素子22がディスク周方向に沿う記録ビット11の中心を追従するように磁気ヘッド2の径方向の位置を補正するとともに、ライト素子22による記録ビット11への書込みタイミングを補正しながら磁気ディスク1にデータを記録する。
【0025】
次に、磁気ディスク装置Aにおけるリードおよびライト素子21,22間の補正ずれ量Wn,Tnの取得ないしデータ記録に関する動作につき、図6〜図9を参照して説明する。図6は、磁気ディスク装置Aの制御処理を示すフローチャートであり、図7〜図9は、制御処理の各ステップを模式的に説明するための説明図である。
【0026】
磁気ディスク装置Aにおいては、図6のフローチャートに示すように、まず、磁気記録マーキング部61によって磁気パターン領域12の磁性領域123に順次磁気記録マークMを記録する(S11)。このとき、図7に示すように、リード素子21は、第1サーボマーク121の中心位置である第1基準線124に沿って追従している。ここで、第1基準線124と第2基準線125との間隔Cは、磁気ヘッド2のリードおよびライト素子21,22間のディスク周方向の設計値によるずれ量とスキュー角θとの関係から求められる所定の寸法とされている。しかし、実際のリードおよびライト素子21,22間の径方向のずれ量は、製造誤差などを含むことにより上記間隔Cとは一致しないことがある。これに対し、磁性領域123は、第2基準線125を跨ぐように順次オフセットされて設けられており、オフセット量は、製造誤差があってもライト素子22の中心が磁性領域123の中心または略中心を通過するように設定されている。そして、各磁性領域123に書き込まれる磁気記録マークMは、磁気信号強度が少しずつ変化した状態で形成される。
【0027】
次に、径方向位置ずれ量測定部62は、図8に示すようにリード素子21を各第2サーボマーク122の中心に追従させながら当該第2サーボマーク122に後続する磁気記録マークMを読み取る(S12)。これら読み取られた磁気記録マークMについて磁気信号の出力レベルを比較し、出力信号レベルの最も高いものを特定する(S13)。この特定された磁気記録マークMが書き込まれた磁性領域123の中心位置は、S11の磁気記録マーキングの際に通過したライト素子22の中心に一致ないし略一致していると判断することができる。当該磁性領域123の中心位置(すなわち、当該磁性領域123に対応する第2サーボマーク122の中心位置)と第1基準線124との間隔が、実際に測定された径方向の位置ずれ量Wとして確定される(S14)。上記S11〜S14のステップを各磁気パターン領域12について実行する。これにより、スキュー角θの異なる2つの磁気パターン領域における径方向の位置ずれ量W(以下、位置ずれ量W1,W2とする)が取得される。
【0028】
次に、補正ずれ量算出部63は、位置ずれ量W1,W2と、この位置ずれ量W1,W2測定時のスキュー角θ1,θ2との関係から、所定の演算処理を実行することにより、任意のスキュー角θnにおける周方向および径方向の補正ずれ量Tn,Wnを算出する(S15)。この補正ずれ量算出ステップは、具体的には、たとえば以下の手順によって行うことができる。
【0029】
まず、図9に示すように、リードおよびライト素子21,22間の固有の周方向のずれ量をL、径方向のずれ量をDとし、スキュー角θを考慮した周方向の位置ずれ量をT、径方向の位置ずれ量をWとすると、TおよびWに関して、式(1)および(2)の関係が成り立つ。
【0030】
【数1】

【数2】

【0031】
次いで、上記2つの位置ずれ量W1,W2の場合のスキュー角をθ1,θ2とすると、これらの値を式(2)に代入することにより式(3)および(4)が導かれる。
【0032】
【数3】

【数4】

【0033】
次いで、式(3)および(4)を整理すると、L,Dに関する式(5)および(6)が導かれる。
【0034】
【数5】

【数6】

【0035】
このようにしてL,Dの値を求めることができる。次いで、L,Dの値を式(1)および(2)に代入すると、T,Wを算出するための補正式となる。この補正式により、任意のスキュー角θnにおける周方向および径方向の補正ずれ量Tn,Wnを算出することができる。
【0036】
その後、データ記録部64は、磁気ヘッド2の径方向位置を補正するとともに記録ビット11への書込みタイミングを補正しながら、磁気ディスク1に対してデータを記録する(S16)。磁気ヘッド2の位置補正は、記録対象となるトラックTRにおけるサーボ信号に基づいてリード素子21を記録ビット11列の中心に追従させ、当該トラックTRでの磁気ヘッド2のスキュー角θnに対応する径方向の補正ずれ量Wnだけ磁気ヘッド2を径方向にオフセットさせることにより行う。この補正により、ライト素子21の中心位置は、記録ビット11列の中心軸に位置合わせされる。そして、記録ビット11への書込みは、周方向の補正ずれ量Tnに基づいて書込みのタイミングを補正して行う。これにより磁気ヘッド2による記録磁界の印加を記録ビット11の位置に正確に同期させることができる。
【0037】
したがって、本実施形態の磁気ディスク装置Aによれば、磁気ディスク1としてパターンドメディアを採用する場合であっても、リード素子21およびライト素子22の間の製造誤差等による固有のずれ(径方向のずれ量Lおよび周方向のずれ量D)を正確に把握することができる。そして、データ記録の際には、スキュー角θをも考慮して、ライト素子22を記録ビット11列に正確に追従させつつ、当該記録ビット11に対してクロック信号を正確に合わせることにより適切にデータを記録することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る磁気ディスクおよび磁気ディスク装置の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0039】
たとえば、磁気ディスクに設けられる磁気パターン領域については、同一のディスク径方向位置において周方向に分散するように複数配置させてもよい。この場合、これら複数の磁気パターン領域のそれぞれについて径方向の位置ずれ量を求め、その平均をとれば、磁気ディスクの中心が回転駆動手段の中心に対して偏心していても、当該偏心による影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの磁気パターン領域の構造を示す部分拡大平面図である。
【図3】磁気ヘッドのリード素子およびライト素子の位置関係の説明図である。
【図4】磁気ヘッドのリード素子およびライト素子の位置関係の説明図である。
【図5】図1に示す磁気ディスク装置のブロック図である。
【図6】図1に示す磁気ディスク装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の磁気記録マーキングステップを模式的に説明するための説明図である。
【図8】図6の磁気記録マーク読み取りステップを模式的に説明するための説明図である。
【図9】補正ずれ量算出ステップの説明図である。
【符号の説明】
【0041】
A 磁気ディスク装置
M 磁気記録マーク
TR トラック
Tn (周方向の)補正ずれ量
W,W1,W2 (径方向の)位置ずれ量
Wn (径方向の)補正ずれ量
1 磁気ディスク
2 磁気ヘッド
3 スピンドルモータ
4 スイングアーム
5 アクチュエータ
6 ディスクコントローラ
30 回転駆動手段
40 ヘッド移動手段
11 記録ビット
12 磁気パターン領域
21 リード素子
22 ライト素子
121 第1サーボマーク
122 第2サーボマーク
123 磁性領域
124 第1基準線(基準線)
125 第2基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する磁気ディスクであって、
ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられていることを特徴とする、磁気ディスク。
【請求項2】
磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有し、ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられている磁気ディスクと、この磁気ディスクに対してデータの読み書きを行うためのリード素子とライト素子とを備える磁気ヘッドと、上記磁気ディスクを回転させる回転駆動手段と、上記磁気ヘッドを所定の回転軸回りに回転させることにより上記磁気ディスクの略径方向に移動させるヘッド移動手段とを備えた磁気ディスク装置であって、
上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第1サーボマークの中心位置に追従させつつ、上記ライト素子を介して上記各磁性領域に順次磁気記録マークを付与する磁気記録マーキング手段と、
上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第2サーボマークの中心位置に追従させながら当該第2サーボマークに後続する磁気記録マークを読み取り、これら読み取られた磁気記録マークに関する情報から上記リードおよびライト素子の径方向の位置ずれ量を測定する径方向位置ずれ量測定手段と、
上記磁気パターン領域のそれぞれにおける、上記径方向の位置ずれ量と上記磁気ヘッドのディスク周方向に対する傾き角との関係から、任意の上記傾き角での上記リードおよびライト素子間の径方向および周方向の補正ずれ量を算出する補正ずれ量算出手段と、
上記径方向および周方向の補正ずれ量に基づき、上記ライト素子が周方向に沿う上記記録ビットの中心を追従するように上記磁気ヘッドの径方向の位置を補正し、かつ、上記ライト素子による上記記録ビットへの書込みタイミングを補正しながら上記磁気ディスクにデータを記録するデータ記録手段と、
を備えていることを特徴とする、磁気ディスク装置。
【請求項3】
上記径方向位置ずれ量測定手段における上記径方向の位置ずれ量は、上記読み取られた磁気記録マークのうち出力信号レベルの最も高いものを特定し、この磁気記録マークが書き込まれた磁性領域に対応する第2サーボマークの中心位置と、上記基準線との間隔によって規定されたものである、請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
磁性体からなる複数の記録ビットが非磁性体によって分離してディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有し、ディスク周方向に沿う基準線上に配列された複数の第1サーボマークと、上記複数の第1サーボマークのそれぞれに対応するディスク周方向位置において、上記基準線から所定の間隔を隔てディスク径方向に順次オフセットするようにして設けられた複数の第2サーボマークと、上記各第2サーボマークに対しディスク周方向に後続して設けられた複数の磁性領域と、を備えて構成された磁気パターン領域がディスク径方向位置の異なる少なくとも2箇所に設けられている磁気ディスクと、この磁気ディスクに対してデータの読み書きを行うためのリード素子とライト素子とを備える磁気ヘッドと、上記磁気ディスクを回転させる回転駆動手段と、上記磁気ヘッドを所定の回転軸回りに回転させることにより上記磁気ディスクの略径方向に移動させるヘッド移動手段とを用いて行うデータ記録方法であって、
上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第1サーボマークの中心位置に追従させつつ、上記ライト素子を介して上記各磁性領域に順次磁気記録マークを付与し、
上記各磁気パターン領域について、上記リード素子を上記各第2サーボマークの中心位置に追従させながら当該第2サーボマークに後続する磁気記録マークを読み取り、これら読み取られた磁気記録マークに関する情報から上記リードおよびライト素子の径方向の位置ずれ量を測定し、
上記磁気パターン領域のそれぞれにおける、上記径方向の位置ずれ量と上記磁気ヘッドのディスク周方向に対する傾き角との関係から、任意の上記傾き角での上記リードおよびライト素子間の径方向および周方向の補正ずれ量を算出し、
上記径方向および周方向の補正ずれ量に基づき、上記ライト素子が周方向に沿う上記記録ビットの中心を追従するように上記磁気ヘッドの径方向の位置を補正し、かつ、上記ライト素子による上記記録ビットへの書込みタイミングを補正しながら上記磁気ディスクにデータを記録することを特徴とする、データ記録方法。
【請求項5】
上記径方向の位置ずれ量は、上記読み取られた磁気記録マークのうち出力信号レベルの最も高いものを特定し、この磁気記録マークが書き込まれた磁性領域に対応する第2サーボマークの中心位置と、上記基準線との間隔によって規定されたものである、請求項4に記載のデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−26399(P2009−26399A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189389(P2007−189389)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】