磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、ガラス基板ホルダ
【課題】 ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止し、低粗さおよび平坦度に優れた、新規かつ改良されたガラス基板ホルダを提供する。
【解決手段】 化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板10を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ100は、ガラス基板を保持する複数の保持部110と、ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分116を非接触に加熱するための基板加熱部150と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】 化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板10を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ100は、ガラス基板を保持する複数の保持部110と、ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分116を非接触に加熱するための基板加熱部150と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化処理工程またはその後の冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。このような磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気記録媒体用基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし、磁気ディスクの小型化、薄板化、および高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦性及び基板強度に優れたガラス基板の需要が高まっている。
【0003】
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドも薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきており、磁気ヘッドの基板からの浮上量が狭くなってきている。このような磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドには固有の障害としてサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。サーマルアスペリティ障害は、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱され、読み出しエラーを生じる障害である。
【0004】
従って、磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドに対しては、磁気ディスク表面は極めて高度な平滑度および平坦度が求められる。また塵埃や異物が付着したまま磁性層を形成すると凸部が形成されてしまうため、ガラス基板には、塵埃や異物を完全に除去する高度な洗浄も求められている。
【0005】
このような磁気ディスク用のガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。まず、1枚のウェハを円盤状に切削し、さらに内孔を開けてガラス基板の形を形成する。その後、切削したガラス基板の外周端面および内周端面の面取りを行い、両端面を研磨する。続いて、ガラス基板の主表面も研磨され、最後に研磨が完了したガラス基板に化学強化処理を施す。
【0006】
この化学強化処理を施す化学強化処理工程は、例えば、アルカリ塩の溶融塩を加熱溶融し、処理対象のガラス基板をガラス基板ホルダに収納した状態で上記溶融塩(化学強化処理液)中に浸漬し、イオン交換させることによって行われる。ここでガラス基板ホルダを利用しているのは、ガラス基板の表面全体を化学強化処理液に浸すためである。
【0007】
そしてガラス基板の化学強化処理工程が完了すると、ガラス基板は、ガラス基板ホルダに保持された状態のままで冷却される。しかし、上記化学強化処理液の温度は400°C程度の高温であるためガラス基板ホルダに保持したまま単に冷却工程を行うとガラス基板に歪みや反りが生じていた。かかる問題を解決するため、化学強化処理液の凝固点を下げ、ガラス基板に生じる反りを低減する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−192239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、最近では、記録密度をより一層向上させるために、垂直磁気記録方式が採用されつつある。この垂直磁気記録媒体の場合には、面内磁気記録方式の場合と比べて、ガラス基板の加工精度の影響がより顕著に現れやすい。このため、ガラス基板としては、より一層の低粗さと平坦度、形状の精度が求められている。
【0009】
上述したように、ガラス基板ホルダにガラス基板が収納されたまま冷却された場合、ガラス基板の局部に、他の部分と冷却速度が異なる領域が現れ、局所的に歪みや反りが生じてしまう。確かに、ガラス基板とガラス基板ホルダとの接触面積を低減するだけでも平坦度は向上するものの、垂直磁気記録方式が採用されつつある今日において要求される低粗さと平坦度、形状の精度に値するものではない。
【0010】
このような冷却速度が異なる領域ができるのは、ガラス基板における、、ガラス基板ホルダと接している部分とそれ以外の部分との間の温度変化の違いに起因している。従って、表面積の割合が相対的に高い、即ち、板厚が薄いガラス基板ほど、歪みや反りが顕著に現れることとなる。
【0011】
本発明は、従来のガラス基板ホルダが有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止し、低粗さおよび平坦度に優れた、新規かつ改良された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、ガラス基板ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分ガラス基板を加熱してガラス基板の温度変化を面内において均一にするための基板加熱部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0013】
かかる構成により、ガラス基板全体の冷却速度を均一化することが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0014】
また、化学強化処理工程後の冷却工程においては、ガラス基板の方がガラス基板ホルダと比較して周囲温度に追従しやすい、即ち、冷却され易い。これは自体の体積(熱容量)と表面積とがガラス基板とガラス基板ホルダとで相異することに起因する。ガラス基板の非接触部分を加熱する、即ち、非接触部分の温度の下降を鈍化する上記の構成により、ガラス基板面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0015】
基板加熱部は、ガラス基板に対面配置され、輻射熱によってガラス基板を加熱する放熱板で形成されるとしてもよい。また、放熱板は、耐薬品性が強化されたステンレス鋼材で形成されてもよい。
【0016】
放熱板は、化学強化処理工程で熱エネルギーを蓄積し、当該冷却工程で蓄積した熱エネルギーを放出して非接触部分を加熱する。かかる構成により、冷却工程で新たに発熱装置を設けることなく非接触部分を加熱することが可能となり、また、化学強化処理工程で生じた熱を有効利用しているので、コスト削減を図ることもできる。
【0017】
接触部分の温度を検知する保持部温度検知部と、非接触部分の温度を検知する基板温度検知部と、接触部分の温度と非接触部分の温度との差分に基づき、ガラス基板の温度変化を面内において均一にするために必要な加熱量を算出する算出部と、をさらに備え、基板加熱部は、算出部によって算出された加熱量で非接触部分を加熱するとしてもよい。
【0018】
このように接触部分および非接触部分の温度を検知することにより、ガラス基板内の温度差をより正確に把握することができ、接触部分の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板の面内の温度変化を確実に均一化させることが可能となる。また、加熱量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板面内の温度変化をより精度良く均一に保つことができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部をさらに冷却してガラス基板の温度変化を面内において均一にするための保持冷却部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0020】
上述したガラス基板の温度を制御する構成に加えてまたは独立して、本発明では、保持部の温度を制御して、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とを合わせている。こうして、ガラス基板全体の冷却速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0021】
上述した、ガラス基板の温度を制御する構成によるガラス基板ホルダにおける従属項に対応する構成要素やその説明は、当該保持部の温度を制御する構成によるガラス基板ホルダにも適用可能である。
【0022】
保持部は、ガラス基板と温度変化が等しくなるような材料および/または形状で形成されるとしてもよい。
【0023】
かかる構成により、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とが等しくなり、ガラス基板全体の冷却速度または加熱速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0024】
ガラス基板は、保持部に、外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させるとしてもよい。
【0025】
ガラス基板に生じる歪みや反りは、外周端面の表面側と裏面側とが相異して温度変化することにも起因している。かかる外周端面の表面側と裏面側とを保持部に均一に当接させることにより、表面側と裏面側との冷却温度または加熱速度を合わせることが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0026】
保持部は、V字形溝が形成され、ガラス基板の外周端面に2点で当接されるとしてもよい。
【0027】
ガラス基板を保持する保持部の溝をV字に形成することにより、ガラス基板が基板平面に直交する方向に傾いたとしても、底面との接触箇所は、2カ所の点となる。このように接触面積を最小限に留めることによって、ガラス基板と保持部との熱移動をより一層削減することが可能となり、より平坦度の良好なガラス基板を生成することができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、化学強化処理液に浸漬しイオン交換を行う化学強化処理によって熱を帯びた円盤状のガラス基板を冷却する冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板を収納するガラス基板ホルダの保持部にガラス基板を保持させた状態で、ガラス基板の保持部を冷却することで、ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように冷却することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提供される。
【0029】
本発明では、ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように保持部を冷却しつつ、ガラス基板を冷却している。かかる構成により、ガラス基板全体の温度変化を均一化することが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0030】
保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分の温度を検知し、保持部の温度を検知し、非接触部分の温度と保持部の温度との差分に応じて冷却量を計算し、計算された冷却量で保持部を冷却するとしてもよい。
【0031】
かかる構成により、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とが等しくなり、ガラス基板全体の冷却速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0032】
ガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で化学強化処理を行った後、当該ガラス基板ホルダに熱を帯びたガラス基板を保持した状態で冷却工程を行ってもよい。
【0033】
かかる構成により、ガラス基板を保持した状態のまま冷却工程に移行することが可能となるので、熱を帯びたガラス基板を不要に移動させることなくスムーズに冷却工程を遂行することができる。
【0034】
また、上述した磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明によれば、ガラス基板全体の加熱速度もしくは冷却速度を均一に保ち、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止でき、優れた平坦度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0037】
(第1の実施形態:ガラス基板の冷却工程)
磁気ディスク用ガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。その最終段階では、ガラス基板を、アルカリ塩等の化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に浸漬してイオン交換させる化学強化処理が施される。また、化学強化処理が施された後は、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程が遂行される。ガラス基板は、化学強化処理工程および冷却工程の間、ガラス基板ホルダに保持されている。
【0038】
化学強化処理液を用いた化学強化処理工程が終了した後、化学強化処理液から引き上げられたガラス基板ホルダには複数枚のガラス基板が保持されている。かかるガラス基板には、溶融液の薄い膜が斑点状に形成されるが、特に、ガラス基板とガラス基板を保持する保持部との接触点には表面張力により多くの溶融液が残存している。このため、冷却工程において溶解液が凝固すると、ガラス基板の保持部との接触点とそうでない部分(非接触部分)とで熱膨張差が起き、保持部との接触点のみで膨張した状態が維持され他の部分より遅れて凝縮されるので、歪みや反りを生じてしまう。
【0039】
図1は、このような歪みや反りの原因を説明するための説明図である。ここでは、ガラス基板ホルダ100の複数の保持部110で形成されるスロットに、ガラス基板10が保持されている。歪みや反りは、ガラス基板の面内における温度分布が原因であり、その温度分布は、ガラス基板10と保持部110との温度変化の差から生じる。この温度変化の差は、筐体の体積(熱容量)と表面積とによる周囲媒体への熱の放出量(移動量)の違いがら生じ、従って、体積に対して表面積が大きいガラス基板の方が、所定の筐体強度を要し必然的に体積が大きくなるガラス基板ホルダと比較して冷却され易いこととなる。このようにしてガラス基板と保持部との間に温度変化の差が生じる。
【0040】
上記のような温度変化の差が生じると、今度は、ガラス基板ホルダ100からガラス基板10に保持部110を介して熱エネルギーの移動が生じる。従って、ガラス基板10の保持部110との接触点112においては、冷却を妨げる方向に熱エネルギーが働き、ガラス基板10の接触点周辺の接触部分114では他の部分である非接触部分116より遅れて温度が低くなる。従って、ガラス基板10面内の温度分布や温度変化推移は不均一となる。
【0041】
図2は、ガラス基板10の底面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。ガラス基板10は、保持部110に載置されているに過ぎず、何ら固定されていないので、保持部110内で、ガラス基板主表面に直交する方向に遊びを有している。しかし、本実施形態によるV字溝が形成された保持部110には重力の働きによりガラス基板10の底面と2点112で当接し、かつ、周囲には化学強化処理液118が充填される。従って、ガラス基板10の底面に配置された保持部110では、ガラス基板10との接触面積が非常に大きくなり、それに伴って冷却工程における熱エネルギーの移動が増大する。このような保持部110との温度変化の差が、ガラス基板10の面内における熱膨張差を生み、歪みや反りを起こす原因となる。
【0042】
図3は、ガラス基板10の側面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。この場合も、ガラス基板10は、保持部110に固定されていないので、保持部110の片側にのみ傾いて当接する。従って、接触点112も片側一点となる。このような側面に配置された保持部110では、化学強化処理液118が重力により残留することもなく、図3に示すように表面張力による微少の化学強化処理液118のみが残存する。
【0043】
この場合、保持部110との接触面積が小さく、残存する化学強化処理液118の量も少ないので、一見歪みや反りも低減されるように思われる。しかし、歪みや反りは、温度変化がガラス基板10の表裏で相異する場合にも生じ得る。これは、保持部110との接触部分とその他の部分との熱膨張差による歪みのメカニズムと等しく、その対象が、ガラス基板10の外周端面の表側と裏側とに置き換わっただけである。
【0044】
図4は、表裏の温度変化差でガラス基板10が歪むことを説明するための横断面図である。ガラス基板10は面120と面122とを有し、図4では、ガラス基板10の外周端面の面122側が保持部110に接触している。従って、面122側は、面120側に比べて冷却速度が遅れ、熱膨張された状態が維持されるので、図4のように面122側のみが基板半径方向に延伸し、面120方向に凹形状となる反りが発生する。干渉縞を測定するオプティカルフラットを通じてこの反りによる起伏を測定したところ、その値は、8nmにも及んでいる。従って、歪みや反りを防止するためには、ガラス基板10と保持部110との温度変化差と同様に、ガラス基板10の表裏面での温度変化差も考慮しなければならないことが理解できる。
【0045】
本願発明者は、歪みや反りの原因がガラス基板面内における温度変化(冷却速度)の差であることに着目し、温度変化の差を低減することで歪みを解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0046】
ガラス基板面内における温度変化の差を低減するため、本実施形態では、次の4つの解決手段を利用する。即ち、(1)ガラス基板10の非接触部分116および保持部110のどちらか一方の温度変化に他方を合わせることによって、そもそもガラス基板面内における温度変化に差を生じさせない。(2)ガラス基板10と保持部110との熱容量を等しくして、両者の温度変化を等しくする。(3)保持部110にガラス基板10の外周端面の表面側と裏面側とを均一に接触させて、表裏に温度変化の差が生じるのを防止する。(4)保持部110との接触面積を極力小さくし、保持部110からの熱エネルギーの流入を低減する。以下、かかる解決手段について詳述する。
【0047】
(ガラス基板ホルダ100)
図5は、ガラス基板ホルダ100の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ100は、保持部110と、基板加熱部150と、保持冷却部160と、固定部170と、を含んで構成され、冷却工程の間、ガラス基板10を保持する。
【0048】
本実施形態では、化学強化処理工程後のガラス基板10の冷却工程を説明する。ここで、ガラス基板ホルダ100は、化学強化処理工程にも併用されるとしてもよいし、冷却工程のみ用いられるとしてもよい。換言すると、当該ガラス基板ホルダ100にガラス基板10を収納した状態で化学強化し、その後、そのガラス基板10が収納された状態を維持したまま冷却工程を行うとしてもよいし、化学強化処理工程後に、加熱されたガラス基板10を当該ガラス基板ホルダ100に移し替えて冷却工程を行うとしてもよい。
【0049】
このように、ガラス基板10をガラス基板ホルダ100に保持した状態で化学強化処理を行った後、ガラス基板ホルダ100に熱を帯びたガラス基板10を保持した状態で冷却工程に移行することで、熱を帯びたガラス基板10を不要に移動させることなくスムーズに冷却工程を遂行することができる。また、ガラス基板10に、ガラス基板ホルダ100の出し入れによるストレスがかからないので、ガラス基板10に歪みや反りが生じ難くなる。
【0050】
上記保持部110は、板状の薄板を湾曲させて形成され、膨出側の表面には突部が長手方向に波状に複数形成され、膨出側の突部間に形成されたV字溝部でガラス基板10を保持する。かかる膨出側に湾曲させる構成は、角度を有するように突出形成させる構成に置き換えることができる。また、V字溝部のV折り返し点は、丸みを付けて形成してもよい。
【0051】
ガラス基板を保持する保持部110の溝をV字に形成することにより、ガラス基板が溝に直交する方向に傾いたとしても、底面の接触箇所は、2カ所の点となる。このように接触面積を最小限に留めることによって、ガラス基板10と保持部110との熱移動を削減することができる。
【0052】
上記基板加熱部150は、ヒータ等の熱源で構成され、ガラス基板ホルダ100およびガラス基板10が周囲媒体を介して冷却されている間、ガラス基板10の非接触部分116を接触式にまたは非接触式に加熱する。かかる基板加熱部150は、外部信号に応じて発熱量を調整可能な電熱器で構成してもよい。このようにガラス基板10の非接触部分116を加熱して、非接触部分116の温度の下降を鈍化する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0053】
図5を参照すると、基板加熱部150は、ガラス基板10と同様、円盤状に形成され、ガラス基板10に対面配置される。本実施形態における基板加熱部150の目的は、ガラス基板10が保持部110より早く冷却されるのを防止すること、即ち、ガラス基板10の非接触部分116のみを加熱することにある。例えば、基板加熱部150がガラス基板10の非接触部分116と同時に、保持部110との接触部分114や保持部110まで加熱してしまうと効果が低くなることが予測される。従って、本実施形態では、基板加熱部150を、ガラス基板10同様円盤状に形成し、ガラス基板10の非接触部分116のみを確実に加熱している。
【0054】
図6は、基板加熱部150によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図6は、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。図6を参照すると、化学強化処理工程の間は、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114とは等しい温度で安定しているが、冷却工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移する。そこで、基板加熱部150は、非接触部分116の冷却速度を鈍化させ、矢印に示すように、非接触部分116の温度推移210が接触部分114の温度推移212を辿るように制御する。
【0055】
上記保持冷却部160は、コンプレッサやフロンガス等を用いた冷却装置、または、冷却ファン、冷却フィン、ペルチェ素子等の熱放出装置で構成され、ガラス基板ホルダ100およびガラス基板10が周囲媒体を介して冷却されている間、保持部110またはガラス基板ホルダ100をさらに冷却する。かかる保持冷却部160は、外部信号に応じて冷却量を調整可能な装置で構成してもよい。このように保持部110を冷却して、保持部110の温度の下降を促進する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0056】
図7は、保持冷却部160によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図7も、図6同様、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分11410の温度推移212とが表される。ここで冷却工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移するが、保持冷却部160を用いることによって、接触部分114の冷却速度が促進され、矢印に示すように、接触部分114の温度推移212が非接触部分116の温度推移210を辿るように制御される。
【0057】
上述した基板加熱部150と保持冷却部160とは、どちらか一方が設けられていればよいが、両方設けられるとしてもよい。
【0058】
上記固定部170は、保持部110を固定する2枚の保持固定部172と、その保持固定部172の強度を高めるため、保持固定部172に連結される4枚の補強板174とから構成される。
【0059】
以上説明したガラス基板ホルダ100を用いて、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では、ガラス基板ホルダ100の保持部110にガラス基板10を保持させた状態で、ガラス基板ホルダ100の周囲媒体を冷却し、ガラス基板10の温度変化が面内において均一になるように温度制御する。
【0060】
かかる構成により、ガラス基板10全体の冷却速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。従って、優れた平坦度を有する磁気ディスク用ガラス基板を生成することができ、歩留まりを上げ、安定して高い生産性を得ることが可能となる。
【0061】
(放熱板152)
また、上述した基板加熱部150を、ガラス基板10に対面配置される放熱板152で構成することもできる。この放熱板152は、耐薬品性が強化された、鉄材やSUS(Steel Use Stainless)に基づくステンレス鋼材等で、ガラス基板10同様の円盤状に形成される。
【0062】
図8は、放熱板152の配置を説明するための横断面図である。図8を参照すると、ガラス基板ホルダ100には複数のガラス基板10が収納され、隣接するガラス基板10の間にはそれぞれ放熱板152が設けられている。放熱板152は、ガラス基板10より小さい円盤状に形成され、冷却工程の前工程である化学強化処理工程において熱エネルギーを蓄積し、当該冷却工程において蓄積した熱エネルギーを放出する。この放出した熱エネルギーが、対面するガラス基板10の非接触部分116を加熱する。
【0063】
かかる構成により、冷却工程で新たに発熱装置を設けることなく、ガラス基板10の非接触部分116を加熱することが可能となり、また、化学強化処理工程で生じた熱を有効利用しているので、コスト削減を図ることもできる。また、放熱板152を剰余の空間に配置しているので、化学強化処理工程がなされるガラス基板の枚数を減らすこともない。
【0064】
図9は、放熱板152の他の配置を説明するための横断面図である。図8では、ガラス基板10が載置されるスロット間に予め放熱板152を設置したが、図9では、ガラス基板10を載置するスロットに着脱可能な形式で放熱板152をガラス基板10と交互に設置している。従って、ガラス基板ホルダ100に収納できるガラス基板10の枚数は減るものの、既存のガラス基板ホルダにも放熱板152を設置することが可能となり、安価かつ容易な構成で本実施形態の効果を得ることができる。
【0065】
ここで、ガラス基板ホルダ100の全てのスロットにガラス基板10を挿入した場合と、放熱板152と交互に挿入した場合とを比較実験すると、前者は歪みおよび反りが確認されたのに対して、後者は確認されなかった。また、生成されたガラス基板に磁性膜を付着して磁気ディスクを製造し、グライドハイト試験を行うと、前者の磁気ディスクは浮上高さ8nmでクラッシュしたが、後者である本実施形態による磁気ディスクでは、何ら問題が起こらなかった。
【0066】
(保持部温度検知部310、基板温度検知部320)
このような放熱板152等の基板加熱部150は、保持部110の温度推移を予測し、ガラス基板10の非接触部分116の温度をその予測した保持部110の温度推移と等しい推移で変化させる、開ループ制御を行っている。以下では、温度の追従制御に閉ループ制御を適用し、さらに優れた平坦度を可能にする。
【0067】
図10は、ガラス基板ホルダ300の他の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ300は、保持部110と、基板加熱部150と、保持冷却部160と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320と、算出部330とを含んで構成される。
【0068】
構成要素として既に述べた保持部110と、固定部170とは、実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する、基板加熱部150と、保持冷却部160と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320と、算出部330とを主に説明する。
【0069】
上記保持部温度検知部310は、接触面の温度を測定可能な温度計で構成され、保持部110に接触された状態で保持部110の温度を検知する。保持部温度検知部310は、保持部110の温度を測定することで、等価的にガラス基板10の接触部分114の温度を測定している。
【0070】
上記基板温度検知部320は、表面温度を非接触に検知可能な赤外線検知式温度計等の非接触温度計で構成され、ガラス基板10の非接触部分116の温度を検知する。また、保持部温度検知部310同様、接触面の温度を測定可能な温度計で構成してもよい。
【0071】
上記算出部330は、このような保持部温度検知部310や基板温度検知部320を利用してガラス基板10の接触部分114および非接触部分116の温度を検知させ、いずれか一方の温度を目標値、他方をフィードバック値として閉ループ制御を行う。
【0072】
図11は、基板加熱部150を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図11を参照すると、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の接触部分114から非接触部分116の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその加熱量を算出し、その加熱量を基板加熱部150に伝達する。基板加熱部150は、算出された加熱量に応じてガラス基板10の非接触部分116を加熱する。
【0073】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の接触部分114と非接触部分116との温度差を正確に把握することができ、接触部分114の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10の非接触部分116の温度を接触部分114の温度に確実に追従させることができ、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0074】
図12は、保持冷却部160を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図12を参照すると、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の非接触部分116の温度から接触部分114の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその冷却量を算出して、その冷却量を保持冷却部160に伝達する。保持冷却部160は、算出された冷却量に応じて保持部110を冷却する。
【0075】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114との温度差を正確に把握することができ、ガラス基板10の非接触部分116の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10の接触部分114の温度を非接触部分116の温度に確実に追従させることができ、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0076】
また、上述した加熱量や冷却量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板10面内の温度変化をより精度良く均一に保つことができる。
【0077】
(他の改善方法)
このようなガラス基板10の非接触部分116や保持部110の温度変化を制御する方法以外にも温度変化の差を低減することは可能である。上記温度変化を制御する方法に加えて以下の構成をとることによりさらに平坦度に優れた磁気ディスク用ガラス基板を生成することが可能となる。
【0078】
まず、保持部110を、ガラス基板10と熱容量の等しい材料で構成し、さらに体積と表面積の比率をガラス基板10と等しくなるように形成する。
【0079】
かかる構成により、ガラス基板ホルダ300の保持部110の温度変化とガラス基板10の温度変化とが等しくなり、ガラス基板10全体の冷却速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0080】
さらに、保持部110にガラス基板10の外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させる。
【0081】
上述したようにガラス基板10に生じる歪みや反りは、外周端面の表面側と裏面側とが相異して温度変化することにも起因している。かかる外周端面の表面側と裏面側とを保持部110に均一に当接させることにより、表面側と裏面側との冷却温度を合わせることが可能となり、ガラス基板10に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0082】
また、ガラス基板ホルダ300を恒温漕等に挿入し、通常より冷却速度を下げることによって、温度差が開くのを防止し、熱の移動を所定の範囲内に納めることもできる。同様に、ガラス基板ホルダ300に、温度調整された液体を循環させ、冷却時間を鈍化させることも可能である。
【0083】
(第2の実施形態:ガラス基板10の化学強化処理工程)
また、上述した冷却工程のみならず、その前工程の化学強化処理工程においても、ガラス基板ホルダと接触している部分と、他の接触していない部分とで加熱速度の差が生じ、やはり、局所的な歪みや反りが発生する。このような歪みや反りは、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状となり、上述したサーマルアスペリティ障害を引き起こす原因となる。
【0084】
第1の実施形態で述べたような、ガラス基板10面内の温度変化を合わせることによってガラス基板10の平坦度を高める構成は、化学強化処理工程後の冷却工程のみならず、その化学強化処理工程にも適用することができる。以下、第2の実施形態として化学強化処理工程における特徴を詳述する。
【0085】
図13は、ガラス基板ホルダ400の他の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ400は、保持部110と、基板冷却部410と、保持加熱部420と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320とを含んで構成される。
【0086】
構成要素として既に述べた保持部110と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320とは実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する、基板冷却部410と、保持加熱部420とを主に説明する。
【0087】
上記基板冷却部410は、冷却ファン等の熱放出装置で構成され、ガラス基板ホルダ400およびガラス基板10が、周囲媒体(ここでは化学強化処理液)を介して加熱されている間、ガラス基板10の非接触部分116を冷却する。かかる基板冷却部410は、外部信号に応じて冷却量を調整可能な装置で構成してもよい。このように非接触部分116を冷却して、非接触部分116の温度の上昇を鈍化する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0088】
図13を参照すると、基板冷却部410は、ガラス基板10と同様、円盤状に形成され、ガラス基板10に対面配置される。本実施形態における基板冷却部410の目的は、冷却工程同様ガラス基板10の非接触部分116が保持部110より早く加熱されるのを防止すること、即ち、ガラス基板10の非接触部分116のみを冷却することにある。従って、本実施形態では、基板冷却部410を、ガラス基板10同様の円盤状に形成し、ガラス基板10の非接触部分116のみを確実に冷却している。
【0089】
図14は、基板冷却部410によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図14は、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。図14を参照すると、化学強化処理工程の開始前は、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114とは等しい温度で安定しているが、化学強化処理工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移する。そこで、基板冷却部410は、ガラス基板10の非接触部分116の加熱速度を鈍化させ、矢印に示すように、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210が接触部分114の温度推移212を辿るように制御する。
【0090】
上記保持加熱部420は、ヒータ等の熱源で構成され、ガラス基板ホルダ400およびガラス基板10が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部110またはガラス基板ホルダ400をさらに加熱する。かかる保持加熱部420は、外部信号に応じて加熱量を調整可能な装置で構成してもよい。このように保持部110を加熱して、保持部110の温度の上昇を促進する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0091】
図15は、保持加熱部420によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図15も、図14同様、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。ここで、化学強化処理工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移するが、保持加熱部420を用いることによって、接触部分114の加熱速度が促進され、矢印に示すように、接触部分114の温度推移212が非接触部分116の温度推移210を辿るように制御される。
【0092】
上述した基板冷却部410と保持加熱部420とは、どちらか一方が設けられていればよいが、両方設けられるとしてもよい。
【0093】
(保持部温度検知部310、基板温度検知部320)
また、冷却工程同様に、温度の追従制御に保持部温度検知部310や基板温度検知部320を適用してガラス基板10の接触部114および非接触部分116の温度を検知し、いずれか一方の温度を目標値、他方をフィードバック値として閉ループ制御を行うこともできる。
【0094】
図16は、基板冷却部410を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図16を参照すると、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の接触部分114の温度から非接触部分116の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその冷却量を算出して、その冷却量を基板冷却部410に伝達する。基板冷却部410は、算出された冷却量に応じてガラス基板10の非接触部分116を冷却する。
【0095】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の接触部分114と非接触部分116との温度差を正確に把握することができ、接触部分114の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10面内の温度変化を確実に均一化させることが可能となる。
【0096】
図17は、保持加熱部420を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図17を参照すると、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の非接触部分116の温度から保持部110の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその加熱量を算出して、その加熱量を保持加熱部420に伝達する。保持加熱部420は、算出された加熱量に応じて保持部110を加熱する。
【0097】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114との温度差を正確に把握することができ、ガラス基板10の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0098】
また、上述した加熱量や冷却量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板10の温度と保持部110の温度との同一性をより精度よく保つことが可能となる。
【0099】
以上説明したように、第2の実施形態では、円盤状のガラス基板を化学強化処理液に浸漬してイオン交換を行う化学強化処理工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、複数の保持部を固定する固定部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分を冷却してガラス基板の温度変化を面内において均一にする基板冷却部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0100】
また、保持部の温度を検知する保持部温度検知部と、ガラス基板の温度を検知する基板温度検知部と、をさらに備え、基板冷却部は、保持部の温度とガラス基板の温度との差分に応じて計算された冷却量でガラス基板を冷却するとしてもよい。
【0101】
さらに、円盤状のガラス基板を化学強化処理液に浸漬してイオン交換を行う化学強化処理工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、複数の保持部を固定する固定部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部をさらに加熱してガラス基板の温度変化を面内において均一にする保持加熱部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0102】
ここでも、ガラス基板の温度を検知する基板温度検知部と、保持部の温度を検知する保持部温度検知部と、をさらに備え、保持加熱部は、ガラス基板の温度と保持部の温度との差分に応じて計算された加熱量で保持部を加熱するとしてもよい。
【0103】
かかる構成により、冷却工程のみならず、化学強化処理工程においても、ガラス基板ホルダ400の保持部110の温度変化とガラス基板10の非接触部分116の温度変化とを合わせ、ガラス基板10全体の加熱速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0104】
以下、上述した化学強化処理工程や冷却工程の実施例を説明する。
【0105】
[実施例1]
本実施例においては、以下の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクを製造した。特に、(6)化学強化処理工程および冷却工程に、本実施形態によるガラス基板ホルダが適用されている。
【0106】
(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、化学強化用のガラスを使用した。ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状の磁気ディスク用ガラス基板を得てもよい。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。
【0107】
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行った。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。
【0108】
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、円盤状のガラス基板を切り出した。次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング)。
【0109】
(3)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0110】
(4)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。
【0111】
(5)主表面研磨工程
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨液としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
【0112】
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0113】
次に、主表面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨液としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
【0114】
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
【0115】
(6)化学強化処理工程および冷却工程
次に、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化処理工程を行うことにより、磁気ディスク基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができ、耐衝撃性を向上させることができる。
【0116】
化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を準備し、この化学強化溶液を400°Cに加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300°Cに予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、本実施形態におけるガラス基板ホルダを適用した。かかるガラス基板ホルダは複数のガラス基板を端面で保持している。従って、ガラス基板の表面全体を化学強化させることができる。
【0117】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm〜200μmであった。
【0118】
かかる化学強化処理工程に本実施形態によるガラス基板ホルダを利用した場合、化学強化溶液中に浸漬されたガラス基板とガラス基板ホルダとの間に加熱速度の差が生じないので、平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0119】
続いて、化学強化処理工程を終えたガラス基板を、本実施形態のガラス基板ホルダに収納したまま、20°Cの水槽に浸漬して冷却し、約10分間維持した。そして、冷却を終えたガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0120】
本実施形態によるガラス基板ホルダは、このような冷却工程においても、ガラス基板とガラス基板ホルダとの間に加熱速度の差を生じさせないので、さらに平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0121】
上記の如く、第1ラッピング工程、切り出し工程、第2ラッピング工程、端面研磨工程、主表面研磨工程、化学強化処理工程、冷却工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
【0122】
[評価]
上記ガラス基板ホルダを用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(実施例1)と、従来のガラス基板ホルダ(ホルダと接触している部分以外のガラス基板表面を加熱する機能をもたないもの)を用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(比較例)とを、それぞれ表面形状測定装置(Optiflat(フェイズシフトテクノロジー社製))を用いて測定した。その結果、実施例1の基板の主表面に直交する方向の高さにおける最大値と最小値との差は4μmであったのに対して比較例の場合は10μmであった。
【0123】
(7)精密洗浄工程
次に、テクスチャーを形成した磁気ディスク用ガラス基板の精密洗浄を行った。これはヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ障害の原因となる研磨剤残渣や外来の鉄系コンタミなどを除去し、表面が平滑で清浄なガラス基板を得るためのものである。精密洗浄工程としては、アルカリ性水溶液による洗浄の後に、水リンス洗浄、IPA洗浄工程を行った。
【0124】
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られたガラス基板の両面に、ガラス基板の表面にCr合金からなる付着層、CoTaZr基合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt基合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造した。なお、本構成は垂直磁気ディスクの構成の一例であるが、面内磁気ディスクとして磁性層等を構成してもよい。
【0125】
得られた磁気ディスクについて異物により磁性層等の膜に欠陥が発生していないことを確認した。また、グライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。さらに、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったところ、サーマルアスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
【0126】
〔実施例2〕
上記化学強化処理工程を従来のガラス基板ホルダで保持した状態で行い。化学強化処理工程を終えたガラス基板の冷却方法を変更した以外は、実施例1と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0127】
すなわち、上記化学強化処理工程を終えたガラス基板を当該化学強化処理で使用したガラス基板ホルダに保持した状態で引き上げ、ガラス基板ホルダのガラス基板と接触している保持部が冷却されるように基板ホルダを風冷した。そして、基板が所定温度(100℃以下)まで冷却された後に、20°Cの水槽に浸漬して冷却し、約10分間維持した。
【0128】
〔評価〕
上記実施例2により製造されたガラス基板と、従来のガラス基板ホルダ(ホルダと接触している部分(保持部)を冷却しなかったもの)を用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(比較例)とを、実施例1同様、それぞれ表面形状測定装置(Optiflat(フェイズシフトテクノロジー社製))を用いて測定した。その結果、実施例1の基板の主表面に直交する方向の高さにおける最大値と最小値との差は6μmであったのに対して比較例の場合は10μmであった。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0130】
例えば、上述した実施形態においては、ガラス基板の非接触部分のみを加熱もしくは冷却するとしているが、接触部分と非接触部分とを含むガラス基板全体を加熱もしくは冷却してガラス基板と保持部との温度変化を等しくすることによっても同様の効果を得ることができる。例えば、非接触部分の加熱においては、保持部および非接触部分から接触部分に熱が流入し、ガラス基板面内の温度分布の均一化が図れているが、ここで述べたようにガラス基板全体を加熱することで保持部とガラス基板の温度を等しくして保持部からガラス基板への熱の流入を止め、ガラス基板の温度分布の偏りを回避することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、化学強化処理工程またはその後の冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】歪みや反りの原因を説明するための説明図である。
【図2】ガラス基板の底面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。
【図3】ガラス基板の側面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。
【図4】表裏の温度変化差でガラス基板が歪むことを説明するための横断面図である。
【図5】ガラス基板ホルダの構成を示した斜視図である。
【図6】基板加熱部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図7】保持冷却部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図8】放熱板の配置を説明するための横断面図である。
【図9】放熱板の他の配置を説明するための横断面図である。
【図10】ガラス基板ホルダの他の構成を示した斜視図である。
【図11】基板加熱部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図12】保持冷却部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図13】ガラス基板ホルダの他の構成を示した斜視図である。
【図14】基板冷却部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図15】保持加熱部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図16】基板冷却部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図17】保持加熱部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0133】
10 ガラス基板
100,300,400 ガラス基板ホルダ
110 保持部
114 接触部分
116 非接触部分
150 基板加熱部
152 放熱板
160 保持冷却部
170 固定部
310 保持部温度検知部
320 基板温度検知部
330 算出部
410 基板冷却部
420 保持加熱部
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化処理工程またはその後の冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。このような磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気記録媒体用基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし、磁気ディスクの小型化、薄板化、および高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦性及び基板強度に優れたガラス基板の需要が高まっている。
【0003】
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドも薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきており、磁気ヘッドの基板からの浮上量が狭くなってきている。このような磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドには固有の障害としてサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。サーマルアスペリティ障害は、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱され、読み出しエラーを生じる障害である。
【0004】
従って、磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドに対しては、磁気ディスク表面は極めて高度な平滑度および平坦度が求められる。また塵埃や異物が付着したまま磁性層を形成すると凸部が形成されてしまうため、ガラス基板には、塵埃や異物を完全に除去する高度な洗浄も求められている。
【0005】
このような磁気ディスク用のガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。まず、1枚のウェハを円盤状に切削し、さらに内孔を開けてガラス基板の形を形成する。その後、切削したガラス基板の外周端面および内周端面の面取りを行い、両端面を研磨する。続いて、ガラス基板の主表面も研磨され、最後に研磨が完了したガラス基板に化学強化処理を施す。
【0006】
この化学強化処理を施す化学強化処理工程は、例えば、アルカリ塩の溶融塩を加熱溶融し、処理対象のガラス基板をガラス基板ホルダに収納した状態で上記溶融塩(化学強化処理液)中に浸漬し、イオン交換させることによって行われる。ここでガラス基板ホルダを利用しているのは、ガラス基板の表面全体を化学強化処理液に浸すためである。
【0007】
そしてガラス基板の化学強化処理工程が完了すると、ガラス基板は、ガラス基板ホルダに保持された状態のままで冷却される。しかし、上記化学強化処理液の温度は400°C程度の高温であるためガラス基板ホルダに保持したまま単に冷却工程を行うとガラス基板に歪みや反りが生じていた。かかる問題を解決するため、化学強化処理液の凝固点を下げ、ガラス基板に生じる反りを低減する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−192239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、最近では、記録密度をより一層向上させるために、垂直磁気記録方式が採用されつつある。この垂直磁気記録媒体の場合には、面内磁気記録方式の場合と比べて、ガラス基板の加工精度の影響がより顕著に現れやすい。このため、ガラス基板としては、より一層の低粗さと平坦度、形状の精度が求められている。
【0009】
上述したように、ガラス基板ホルダにガラス基板が収納されたまま冷却された場合、ガラス基板の局部に、他の部分と冷却速度が異なる領域が現れ、局所的に歪みや反りが生じてしまう。確かに、ガラス基板とガラス基板ホルダとの接触面積を低減するだけでも平坦度は向上するものの、垂直磁気記録方式が採用されつつある今日において要求される低粗さと平坦度、形状の精度に値するものではない。
【0010】
このような冷却速度が異なる領域ができるのは、ガラス基板における、、ガラス基板ホルダと接している部分とそれ以外の部分との間の温度変化の違いに起因している。従って、表面積の割合が相対的に高い、即ち、板厚が薄いガラス基板ほど、歪みや反りが顕著に現れることとなる。
【0011】
本発明は、従来のガラス基板ホルダが有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止し、低粗さおよび平坦度に優れた、新規かつ改良された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、ガラス基板ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分ガラス基板を加熱してガラス基板の温度変化を面内において均一にするための基板加熱部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0013】
かかる構成により、ガラス基板全体の冷却速度を均一化することが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0014】
また、化学強化処理工程後の冷却工程においては、ガラス基板の方がガラス基板ホルダと比較して周囲温度に追従しやすい、即ち、冷却され易い。これは自体の体積(熱容量)と表面積とがガラス基板とガラス基板ホルダとで相異することに起因する。ガラス基板の非接触部分を加熱する、即ち、非接触部分の温度の下降を鈍化する上記の構成により、ガラス基板面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0015】
基板加熱部は、ガラス基板に対面配置され、輻射熱によってガラス基板を加熱する放熱板で形成されるとしてもよい。また、放熱板は、耐薬品性が強化されたステンレス鋼材で形成されてもよい。
【0016】
放熱板は、化学強化処理工程で熱エネルギーを蓄積し、当該冷却工程で蓄積した熱エネルギーを放出して非接触部分を加熱する。かかる構成により、冷却工程で新たに発熱装置を設けることなく非接触部分を加熱することが可能となり、また、化学強化処理工程で生じた熱を有効利用しているので、コスト削減を図ることもできる。
【0017】
接触部分の温度を検知する保持部温度検知部と、非接触部分の温度を検知する基板温度検知部と、接触部分の温度と非接触部分の温度との差分に基づき、ガラス基板の温度変化を面内において均一にするために必要な加熱量を算出する算出部と、をさらに備え、基板加熱部は、算出部によって算出された加熱量で非接触部分を加熱するとしてもよい。
【0018】
このように接触部分および非接触部分の温度を検知することにより、ガラス基板内の温度差をより正確に把握することができ、接触部分の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板の面内の温度変化を確実に均一化させることが可能となる。また、加熱量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板面内の温度変化をより精度良く均一に保つことができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が冷却されている間、保持部をさらに冷却してガラス基板の温度変化を面内において均一にするための保持冷却部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0020】
上述したガラス基板の温度を制御する構成に加えてまたは独立して、本発明では、保持部の温度を制御して、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とを合わせている。こうして、ガラス基板全体の冷却速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0021】
上述した、ガラス基板の温度を制御する構成によるガラス基板ホルダにおける従属項に対応する構成要素やその説明は、当該保持部の温度を制御する構成によるガラス基板ホルダにも適用可能である。
【0022】
保持部は、ガラス基板と温度変化が等しくなるような材料および/または形状で形成されるとしてもよい。
【0023】
かかる構成により、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とが等しくなり、ガラス基板全体の冷却速度または加熱速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0024】
ガラス基板は、保持部に、外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させるとしてもよい。
【0025】
ガラス基板に生じる歪みや反りは、外周端面の表面側と裏面側とが相異して温度変化することにも起因している。かかる外周端面の表面側と裏面側とを保持部に均一に当接させることにより、表面側と裏面側との冷却温度または加熱速度を合わせることが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0026】
保持部は、V字形溝が形成され、ガラス基板の外周端面に2点で当接されるとしてもよい。
【0027】
ガラス基板を保持する保持部の溝をV字に形成することにより、ガラス基板が基板平面に直交する方向に傾いたとしても、底面との接触箇所は、2カ所の点となる。このように接触面積を最小限に留めることによって、ガラス基板と保持部との熱移動をより一層削減することが可能となり、より平坦度の良好なガラス基板を生成することができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、化学強化処理液に浸漬しイオン交換を行う化学強化処理によって熱を帯びた円盤状のガラス基板を冷却する冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板を収納するガラス基板ホルダの保持部にガラス基板を保持させた状態で、ガラス基板の保持部を冷却することで、ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように冷却することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提供される。
【0029】
本発明では、ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように保持部を冷却しつつ、ガラス基板を冷却している。かかる構成により、ガラス基板全体の温度変化を均一化することが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0030】
保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分の温度を検知し、保持部の温度を検知し、非接触部分の温度と保持部の温度との差分に応じて冷却量を計算し、計算された冷却量で保持部を冷却するとしてもよい。
【0031】
かかる構成により、ガラス基板ホルダの保持部の温度変化とガラス基板の温度変化とが等しくなり、ガラス基板全体の冷却速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0032】
ガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で化学強化処理を行った後、当該ガラス基板ホルダに熱を帯びたガラス基板を保持した状態で冷却工程を行ってもよい。
【0033】
かかる構成により、ガラス基板を保持した状態のまま冷却工程に移行することが可能となるので、熱を帯びたガラス基板を不要に移動させることなくスムーズに冷却工程を遂行することができる。
【0034】
また、上述した磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明によれば、ガラス基板全体の加熱速度もしくは冷却速度を均一に保ち、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止でき、優れた平坦度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0037】
(第1の実施形態:ガラス基板の冷却工程)
磁気ディスク用ガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。その最終段階では、ガラス基板を、アルカリ塩等の化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に浸漬してイオン交換させる化学強化処理が施される。また、化学強化処理が施された後は、化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程が遂行される。ガラス基板は、化学強化処理工程および冷却工程の間、ガラス基板ホルダに保持されている。
【0038】
化学強化処理液を用いた化学強化処理工程が終了した後、化学強化処理液から引き上げられたガラス基板ホルダには複数枚のガラス基板が保持されている。かかるガラス基板には、溶融液の薄い膜が斑点状に形成されるが、特に、ガラス基板とガラス基板を保持する保持部との接触点には表面張力により多くの溶融液が残存している。このため、冷却工程において溶解液が凝固すると、ガラス基板の保持部との接触点とそうでない部分(非接触部分)とで熱膨張差が起き、保持部との接触点のみで膨張した状態が維持され他の部分より遅れて凝縮されるので、歪みや反りを生じてしまう。
【0039】
図1は、このような歪みや反りの原因を説明するための説明図である。ここでは、ガラス基板ホルダ100の複数の保持部110で形成されるスロットに、ガラス基板10が保持されている。歪みや反りは、ガラス基板の面内における温度分布が原因であり、その温度分布は、ガラス基板10と保持部110との温度変化の差から生じる。この温度変化の差は、筐体の体積(熱容量)と表面積とによる周囲媒体への熱の放出量(移動量)の違いがら生じ、従って、体積に対して表面積が大きいガラス基板の方が、所定の筐体強度を要し必然的に体積が大きくなるガラス基板ホルダと比較して冷却され易いこととなる。このようにしてガラス基板と保持部との間に温度変化の差が生じる。
【0040】
上記のような温度変化の差が生じると、今度は、ガラス基板ホルダ100からガラス基板10に保持部110を介して熱エネルギーの移動が生じる。従って、ガラス基板10の保持部110との接触点112においては、冷却を妨げる方向に熱エネルギーが働き、ガラス基板10の接触点周辺の接触部分114では他の部分である非接触部分116より遅れて温度が低くなる。従って、ガラス基板10面内の温度分布や温度変化推移は不均一となる。
【0041】
図2は、ガラス基板10の底面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。ガラス基板10は、保持部110に載置されているに過ぎず、何ら固定されていないので、保持部110内で、ガラス基板主表面に直交する方向に遊びを有している。しかし、本実施形態によるV字溝が形成された保持部110には重力の働きによりガラス基板10の底面と2点112で当接し、かつ、周囲には化学強化処理液118が充填される。従って、ガラス基板10の底面に配置された保持部110では、ガラス基板10との接触面積が非常に大きくなり、それに伴って冷却工程における熱エネルギーの移動が増大する。このような保持部110との温度変化の差が、ガラス基板10の面内における熱膨張差を生み、歪みや反りを起こす原因となる。
【0042】
図3は、ガラス基板10の側面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。この場合も、ガラス基板10は、保持部110に固定されていないので、保持部110の片側にのみ傾いて当接する。従って、接触点112も片側一点となる。このような側面に配置された保持部110では、化学強化処理液118が重力により残留することもなく、図3に示すように表面張力による微少の化学強化処理液118のみが残存する。
【0043】
この場合、保持部110との接触面積が小さく、残存する化学強化処理液118の量も少ないので、一見歪みや反りも低減されるように思われる。しかし、歪みや反りは、温度変化がガラス基板10の表裏で相異する場合にも生じ得る。これは、保持部110との接触部分とその他の部分との熱膨張差による歪みのメカニズムと等しく、その対象が、ガラス基板10の外周端面の表側と裏側とに置き換わっただけである。
【0044】
図4は、表裏の温度変化差でガラス基板10が歪むことを説明するための横断面図である。ガラス基板10は面120と面122とを有し、図4では、ガラス基板10の外周端面の面122側が保持部110に接触している。従って、面122側は、面120側に比べて冷却速度が遅れ、熱膨張された状態が維持されるので、図4のように面122側のみが基板半径方向に延伸し、面120方向に凹形状となる反りが発生する。干渉縞を測定するオプティカルフラットを通じてこの反りによる起伏を測定したところ、その値は、8nmにも及んでいる。従って、歪みや反りを防止するためには、ガラス基板10と保持部110との温度変化差と同様に、ガラス基板10の表裏面での温度変化差も考慮しなければならないことが理解できる。
【0045】
本願発明者は、歪みや反りの原因がガラス基板面内における温度変化(冷却速度)の差であることに着目し、温度変化の差を低減することで歪みを解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0046】
ガラス基板面内における温度変化の差を低減するため、本実施形態では、次の4つの解決手段を利用する。即ち、(1)ガラス基板10の非接触部分116および保持部110のどちらか一方の温度変化に他方を合わせることによって、そもそもガラス基板面内における温度変化に差を生じさせない。(2)ガラス基板10と保持部110との熱容量を等しくして、両者の温度変化を等しくする。(3)保持部110にガラス基板10の外周端面の表面側と裏面側とを均一に接触させて、表裏に温度変化の差が生じるのを防止する。(4)保持部110との接触面積を極力小さくし、保持部110からの熱エネルギーの流入を低減する。以下、かかる解決手段について詳述する。
【0047】
(ガラス基板ホルダ100)
図5は、ガラス基板ホルダ100の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ100は、保持部110と、基板加熱部150と、保持冷却部160と、固定部170と、を含んで構成され、冷却工程の間、ガラス基板10を保持する。
【0048】
本実施形態では、化学強化処理工程後のガラス基板10の冷却工程を説明する。ここで、ガラス基板ホルダ100は、化学強化処理工程にも併用されるとしてもよいし、冷却工程のみ用いられるとしてもよい。換言すると、当該ガラス基板ホルダ100にガラス基板10を収納した状態で化学強化し、その後、そのガラス基板10が収納された状態を維持したまま冷却工程を行うとしてもよいし、化学強化処理工程後に、加熱されたガラス基板10を当該ガラス基板ホルダ100に移し替えて冷却工程を行うとしてもよい。
【0049】
このように、ガラス基板10をガラス基板ホルダ100に保持した状態で化学強化処理を行った後、ガラス基板ホルダ100に熱を帯びたガラス基板10を保持した状態で冷却工程に移行することで、熱を帯びたガラス基板10を不要に移動させることなくスムーズに冷却工程を遂行することができる。また、ガラス基板10に、ガラス基板ホルダ100の出し入れによるストレスがかからないので、ガラス基板10に歪みや反りが生じ難くなる。
【0050】
上記保持部110は、板状の薄板を湾曲させて形成され、膨出側の表面には突部が長手方向に波状に複数形成され、膨出側の突部間に形成されたV字溝部でガラス基板10を保持する。かかる膨出側に湾曲させる構成は、角度を有するように突出形成させる構成に置き換えることができる。また、V字溝部のV折り返し点は、丸みを付けて形成してもよい。
【0051】
ガラス基板を保持する保持部110の溝をV字に形成することにより、ガラス基板が溝に直交する方向に傾いたとしても、底面の接触箇所は、2カ所の点となる。このように接触面積を最小限に留めることによって、ガラス基板10と保持部110との熱移動を削減することができる。
【0052】
上記基板加熱部150は、ヒータ等の熱源で構成され、ガラス基板ホルダ100およびガラス基板10が周囲媒体を介して冷却されている間、ガラス基板10の非接触部分116を接触式にまたは非接触式に加熱する。かかる基板加熱部150は、外部信号に応じて発熱量を調整可能な電熱器で構成してもよい。このようにガラス基板10の非接触部分116を加熱して、非接触部分116の温度の下降を鈍化する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0053】
図5を参照すると、基板加熱部150は、ガラス基板10と同様、円盤状に形成され、ガラス基板10に対面配置される。本実施形態における基板加熱部150の目的は、ガラス基板10が保持部110より早く冷却されるのを防止すること、即ち、ガラス基板10の非接触部分116のみを加熱することにある。例えば、基板加熱部150がガラス基板10の非接触部分116と同時に、保持部110との接触部分114や保持部110まで加熱してしまうと効果が低くなることが予測される。従って、本実施形態では、基板加熱部150を、ガラス基板10同様円盤状に形成し、ガラス基板10の非接触部分116のみを確実に加熱している。
【0054】
図6は、基板加熱部150によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図6は、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。図6を参照すると、化学強化処理工程の間は、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114とは等しい温度で安定しているが、冷却工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移する。そこで、基板加熱部150は、非接触部分116の冷却速度を鈍化させ、矢印に示すように、非接触部分116の温度推移210が接触部分114の温度推移212を辿るように制御する。
【0055】
上記保持冷却部160は、コンプレッサやフロンガス等を用いた冷却装置、または、冷却ファン、冷却フィン、ペルチェ素子等の熱放出装置で構成され、ガラス基板ホルダ100およびガラス基板10が周囲媒体を介して冷却されている間、保持部110またはガラス基板ホルダ100をさらに冷却する。かかる保持冷却部160は、外部信号に応じて冷却量を調整可能な装置で構成してもよい。このように保持部110を冷却して、保持部110の温度の下降を促進する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0056】
図7は、保持冷却部160によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図7も、図6同様、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分11410の温度推移212とが表される。ここで冷却工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移するが、保持冷却部160を用いることによって、接触部分114の冷却速度が促進され、矢印に示すように、接触部分114の温度推移212が非接触部分116の温度推移210を辿るように制御される。
【0057】
上述した基板加熱部150と保持冷却部160とは、どちらか一方が設けられていればよいが、両方設けられるとしてもよい。
【0058】
上記固定部170は、保持部110を固定する2枚の保持固定部172と、その保持固定部172の強度を高めるため、保持固定部172に連結される4枚の補強板174とから構成される。
【0059】
以上説明したガラス基板ホルダ100を用いて、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では、ガラス基板ホルダ100の保持部110にガラス基板10を保持させた状態で、ガラス基板ホルダ100の周囲媒体を冷却し、ガラス基板10の温度変化が面内において均一になるように温度制御する。
【0060】
かかる構成により、ガラス基板10全体の冷却速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。従って、優れた平坦度を有する磁気ディスク用ガラス基板を生成することができ、歩留まりを上げ、安定して高い生産性を得ることが可能となる。
【0061】
(放熱板152)
また、上述した基板加熱部150を、ガラス基板10に対面配置される放熱板152で構成することもできる。この放熱板152は、耐薬品性が強化された、鉄材やSUS(Steel Use Stainless)に基づくステンレス鋼材等で、ガラス基板10同様の円盤状に形成される。
【0062】
図8は、放熱板152の配置を説明するための横断面図である。図8を参照すると、ガラス基板ホルダ100には複数のガラス基板10が収納され、隣接するガラス基板10の間にはそれぞれ放熱板152が設けられている。放熱板152は、ガラス基板10より小さい円盤状に形成され、冷却工程の前工程である化学強化処理工程において熱エネルギーを蓄積し、当該冷却工程において蓄積した熱エネルギーを放出する。この放出した熱エネルギーが、対面するガラス基板10の非接触部分116を加熱する。
【0063】
かかる構成により、冷却工程で新たに発熱装置を設けることなく、ガラス基板10の非接触部分116を加熱することが可能となり、また、化学強化処理工程で生じた熱を有効利用しているので、コスト削減を図ることもできる。また、放熱板152を剰余の空間に配置しているので、化学強化処理工程がなされるガラス基板の枚数を減らすこともない。
【0064】
図9は、放熱板152の他の配置を説明するための横断面図である。図8では、ガラス基板10が載置されるスロット間に予め放熱板152を設置したが、図9では、ガラス基板10を載置するスロットに着脱可能な形式で放熱板152をガラス基板10と交互に設置している。従って、ガラス基板ホルダ100に収納できるガラス基板10の枚数は減るものの、既存のガラス基板ホルダにも放熱板152を設置することが可能となり、安価かつ容易な構成で本実施形態の効果を得ることができる。
【0065】
ここで、ガラス基板ホルダ100の全てのスロットにガラス基板10を挿入した場合と、放熱板152と交互に挿入した場合とを比較実験すると、前者は歪みおよび反りが確認されたのに対して、後者は確認されなかった。また、生成されたガラス基板に磁性膜を付着して磁気ディスクを製造し、グライドハイト試験を行うと、前者の磁気ディスクは浮上高さ8nmでクラッシュしたが、後者である本実施形態による磁気ディスクでは、何ら問題が起こらなかった。
【0066】
(保持部温度検知部310、基板温度検知部320)
このような放熱板152等の基板加熱部150は、保持部110の温度推移を予測し、ガラス基板10の非接触部分116の温度をその予測した保持部110の温度推移と等しい推移で変化させる、開ループ制御を行っている。以下では、温度の追従制御に閉ループ制御を適用し、さらに優れた平坦度を可能にする。
【0067】
図10は、ガラス基板ホルダ300の他の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ300は、保持部110と、基板加熱部150と、保持冷却部160と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320と、算出部330とを含んで構成される。
【0068】
構成要素として既に述べた保持部110と、固定部170とは、実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する、基板加熱部150と、保持冷却部160と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320と、算出部330とを主に説明する。
【0069】
上記保持部温度検知部310は、接触面の温度を測定可能な温度計で構成され、保持部110に接触された状態で保持部110の温度を検知する。保持部温度検知部310は、保持部110の温度を測定することで、等価的にガラス基板10の接触部分114の温度を測定している。
【0070】
上記基板温度検知部320は、表面温度を非接触に検知可能な赤外線検知式温度計等の非接触温度計で構成され、ガラス基板10の非接触部分116の温度を検知する。また、保持部温度検知部310同様、接触面の温度を測定可能な温度計で構成してもよい。
【0071】
上記算出部330は、このような保持部温度検知部310や基板温度検知部320を利用してガラス基板10の接触部分114および非接触部分116の温度を検知させ、いずれか一方の温度を目標値、他方をフィードバック値として閉ループ制御を行う。
【0072】
図11は、基板加熱部150を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図11を参照すると、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の接触部分114から非接触部分116の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその加熱量を算出し、その加熱量を基板加熱部150に伝達する。基板加熱部150は、算出された加熱量に応じてガラス基板10の非接触部分116を加熱する。
【0073】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の接触部分114と非接触部分116との温度差を正確に把握することができ、接触部分114の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10の非接触部分116の温度を接触部分114の温度に確実に追従させることができ、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0074】
図12は、保持冷却部160を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図12を参照すると、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の非接触部分116の温度から接触部分114の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその冷却量を算出して、その冷却量を保持冷却部160に伝達する。保持冷却部160は、算出された冷却量に応じて保持部110を冷却する。
【0075】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114との温度差を正確に把握することができ、ガラス基板10の非接触部分116の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10の接触部分114の温度を非接触部分116の温度に確実に追従させることができ、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0076】
また、上述した加熱量や冷却量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板10面内の温度変化をより精度良く均一に保つことができる。
【0077】
(他の改善方法)
このようなガラス基板10の非接触部分116や保持部110の温度変化を制御する方法以外にも温度変化の差を低減することは可能である。上記温度変化を制御する方法に加えて以下の構成をとることによりさらに平坦度に優れた磁気ディスク用ガラス基板を生成することが可能となる。
【0078】
まず、保持部110を、ガラス基板10と熱容量の等しい材料で構成し、さらに体積と表面積の比率をガラス基板10と等しくなるように形成する。
【0079】
かかる構成により、ガラス基板ホルダ300の保持部110の温度変化とガラス基板10の温度変化とが等しくなり、ガラス基板10全体の冷却速度が均一となるので、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0080】
さらに、保持部110にガラス基板10の外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させる。
【0081】
上述したようにガラス基板10に生じる歪みや反りは、外周端面の表面側と裏面側とが相異して温度変化することにも起因している。かかる外周端面の表面側と裏面側とを保持部110に均一に当接させることにより、表面側と裏面側との冷却温度を合わせることが可能となり、ガラス基板10に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0082】
また、ガラス基板ホルダ300を恒温漕等に挿入し、通常より冷却速度を下げることによって、温度差が開くのを防止し、熱の移動を所定の範囲内に納めることもできる。同様に、ガラス基板ホルダ300に、温度調整された液体を循環させ、冷却時間を鈍化させることも可能である。
【0083】
(第2の実施形態:ガラス基板10の化学強化処理工程)
また、上述した冷却工程のみならず、その前工程の化学強化処理工程においても、ガラス基板ホルダと接触している部分と、他の接触していない部分とで加熱速度の差が生じ、やはり、局所的な歪みや反りが発生する。このような歪みや反りは、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状となり、上述したサーマルアスペリティ障害を引き起こす原因となる。
【0084】
第1の実施形態で述べたような、ガラス基板10面内の温度変化を合わせることによってガラス基板10の平坦度を高める構成は、化学強化処理工程後の冷却工程のみならず、その化学強化処理工程にも適用することができる。以下、第2の実施形態として化学強化処理工程における特徴を詳述する。
【0085】
図13は、ガラス基板ホルダ400の他の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ400は、保持部110と、基板冷却部410と、保持加熱部420と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320とを含んで構成される。
【0086】
構成要素として既に述べた保持部110と、固定部170と、保持部温度検知部310と、基板温度検知部320とは実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する、基板冷却部410と、保持加熱部420とを主に説明する。
【0087】
上記基板冷却部410は、冷却ファン等の熱放出装置で構成され、ガラス基板ホルダ400およびガラス基板10が、周囲媒体(ここでは化学強化処理液)を介して加熱されている間、ガラス基板10の非接触部分116を冷却する。かかる基板冷却部410は、外部信号に応じて冷却量を調整可能な装置で構成してもよい。このように非接触部分116を冷却して、非接触部分116の温度の上昇を鈍化する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0088】
図13を参照すると、基板冷却部410は、ガラス基板10と同様、円盤状に形成され、ガラス基板10に対面配置される。本実施形態における基板冷却部410の目的は、冷却工程同様ガラス基板10の非接触部分116が保持部110より早く加熱されるのを防止すること、即ち、ガラス基板10の非接触部分116のみを冷却することにある。従って、本実施形態では、基板冷却部410を、ガラス基板10同様の円盤状に形成し、ガラス基板10の非接触部分116のみを確実に冷却している。
【0089】
図14は、基板冷却部410によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図14は、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。図14を参照すると、化学強化処理工程の開始前は、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114とは等しい温度で安定しているが、化学強化処理工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移する。そこで、基板冷却部410は、ガラス基板10の非接触部分116の加熱速度を鈍化させ、矢印に示すように、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210が接触部分114の温度推移212を辿るように制御する。
【0090】
上記保持加熱部420は、ヒータ等の熱源で構成され、ガラス基板ホルダ400およびガラス基板10が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部110またはガラス基板ホルダ400をさらに加熱する。かかる保持加熱部420は、外部信号に応じて加熱量を調整可能な装置で構成してもよい。このように保持部110を加熱して、保持部110の温度の上昇を促進する構成により、ガラス基板10面内の温度変化を略均一に保つことが可能となる。
【0091】
図15は、保持加熱部420によるガラス基板10の温度推移の変化を説明するための説明図である。図15も、図14同様、横軸に時間、縦軸に温度が示され、ガラス基板10の非接触部分116の温度推移210と、接触部分114の温度推移212とが表される。ここで、化学強化処理工程が開始されると、それぞれ相異する温度変化量で推移するが、保持加熱部420を用いることによって、接触部分114の加熱速度が促進され、矢印に示すように、接触部分114の温度推移212が非接触部分116の温度推移210を辿るように制御される。
【0092】
上述した基板冷却部410と保持加熱部420とは、どちらか一方が設けられていればよいが、両方設けられるとしてもよい。
【0093】
(保持部温度検知部310、基板温度検知部320)
また、冷却工程同様に、温度の追従制御に保持部温度検知部310や基板温度検知部320を適用してガラス基板10の接触部114および非接触部分116の温度を検知し、いずれか一方の温度を目標値、他方をフィードバック値として閉ループ制御を行うこともできる。
【0094】
図16は、基板冷却部410を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図16を参照すると、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の接触部分114の温度から非接触部分116の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその冷却量を算出して、その冷却量を基板冷却部410に伝達する。基板冷却部410は、算出された冷却量に応じてガラス基板10の非接触部分116を冷却する。
【0095】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の接触部分114と非接触部分116との温度差を正確に把握することができ、接触部分114の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10面内の温度変化を確実に均一化させることが可能となる。
【0096】
図17は、保持加熱部420を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。かかる図17を参照すると、基板温度検知部320はガラス基板10の非接触部分116の温度を検知し、保持部温度検知部310はガラス基板10の接触部分114の温度を検知し、算出部330はガラス基板10の非接触部分116の温度から保持部110の温度を減算した値に比例定数、またはその他の制御パラメータを乗算してその加熱量を算出して、その加熱量を保持加熱部420に伝達する。保持加熱部420は、算出された加熱量に応じて保持部110を加熱する。
【0097】
かかる閉ループ制御により、ガラス基板10の非接触部分116と接触部分114との温度差を正確に把握することができ、ガラス基板10の温度が複雑に変化したとしても、ガラス基板10面内の温度変化を均一化することが可能となる。
【0098】
また、上述した加熱量や冷却量の計算において要求精度に応じた様々な制御理論を用いることで、ガラス基板10の温度と保持部110の温度との同一性をより精度よく保つことが可能となる。
【0099】
以上説明したように、第2の実施形態では、円盤状のガラス基板を化学強化処理液に浸漬してイオン交換を行う化学強化処理工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、複数の保持部を固定する固定部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分を冷却してガラス基板の温度変化を面内において均一にする基板冷却部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0100】
また、保持部の温度を検知する保持部温度検知部と、ガラス基板の温度を検知する基板温度検知部と、をさらに備え、基板冷却部は、保持部の温度とガラス基板の温度との差分に応じて計算された冷却量でガラス基板を冷却するとしてもよい。
【0101】
さらに、円盤状のガラス基板を化学強化処理液に浸漬してイオン交換を行う化学強化処理工程に用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板を保持する複数の保持部と、複数の保持部を固定する固定部と、当該ガラス基板ホルダおよびガラス基板が化学強化処理液を介して加熱されている間、保持部をさらに加熱してガラス基板の温度変化を面内において均一にする保持加熱部と、を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0102】
ここでも、ガラス基板の温度を検知する基板温度検知部と、保持部の温度を検知する保持部温度検知部と、をさらに備え、保持加熱部は、ガラス基板の温度と保持部の温度との差分に応じて計算された加熱量で保持部を加熱するとしてもよい。
【0103】
かかる構成により、冷却工程のみならず、化学強化処理工程においても、ガラス基板ホルダ400の保持部110の温度変化とガラス基板10の非接触部分116の温度変化とを合わせ、ガラス基板10全体の加熱速度を均一化することが可能となり、接触面積の大きさに拘わらず、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0104】
以下、上述した化学強化処理工程や冷却工程の実施例を説明する。
【0105】
[実施例1]
本実施例においては、以下の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクを製造した。特に、(6)化学強化処理工程および冷却工程に、本実施形態によるガラス基板ホルダが適用されている。
【0106】
(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、化学強化用のガラスを使用した。ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状の磁気ディスク用ガラス基板を得てもよい。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。
【0107】
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行った。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。
【0108】
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、円盤状のガラス基板を切り出した。次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング)。
【0109】
(3)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0110】
(4)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。
【0111】
(5)主表面研磨工程
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨液としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
【0112】
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0113】
次に、主表面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨液としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
【0114】
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
【0115】
(6)化学強化処理工程および冷却工程
次に、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化処理工程を行うことにより、磁気ディスク基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができ、耐衝撃性を向上させることができる。
【0116】
化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を準備し、この化学強化溶液を400°Cに加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300°Cに予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、本実施形態におけるガラス基板ホルダを適用した。かかるガラス基板ホルダは複数のガラス基板を端面で保持している。従って、ガラス基板の表面全体を化学強化させることができる。
【0117】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm〜200μmであった。
【0118】
かかる化学強化処理工程に本実施形態によるガラス基板ホルダを利用した場合、化学強化溶液中に浸漬されたガラス基板とガラス基板ホルダとの間に加熱速度の差が生じないので、平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0119】
続いて、化学強化処理工程を終えたガラス基板を、本実施形態のガラス基板ホルダに収納したまま、20°Cの水槽に浸漬して冷却し、約10分間維持した。そして、冷却を終えたガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0120】
本実施形態によるガラス基板ホルダは、このような冷却工程においても、ガラス基板とガラス基板ホルダとの間に加熱速度の差を生じさせないので、さらに平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0121】
上記の如く、第1ラッピング工程、切り出し工程、第2ラッピング工程、端面研磨工程、主表面研磨工程、化学強化処理工程、冷却工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
【0122】
[評価]
上記ガラス基板ホルダを用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(実施例1)と、従来のガラス基板ホルダ(ホルダと接触している部分以外のガラス基板表面を加熱する機能をもたないもの)を用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(比較例)とを、それぞれ表面形状測定装置(Optiflat(フェイズシフトテクノロジー社製))を用いて測定した。その結果、実施例1の基板の主表面に直交する方向の高さにおける最大値と最小値との差は4μmであったのに対して比較例の場合は10μmであった。
【0123】
(7)精密洗浄工程
次に、テクスチャーを形成した磁気ディスク用ガラス基板の精密洗浄を行った。これはヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ障害の原因となる研磨剤残渣や外来の鉄系コンタミなどを除去し、表面が平滑で清浄なガラス基板を得るためのものである。精密洗浄工程としては、アルカリ性水溶液による洗浄の後に、水リンス洗浄、IPA洗浄工程を行った。
【0124】
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られたガラス基板の両面に、ガラス基板の表面にCr合金からなる付着層、CoTaZr基合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt基合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造した。なお、本構成は垂直磁気ディスクの構成の一例であるが、面内磁気ディスクとして磁性層等を構成してもよい。
【0125】
得られた磁気ディスクについて異物により磁性層等の膜に欠陥が発生していないことを確認した。また、グライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。さらに、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったところ、サーマルアスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
【0126】
〔実施例2〕
上記化学強化処理工程を従来のガラス基板ホルダで保持した状態で行い。化学強化処理工程を終えたガラス基板の冷却方法を変更した以外は、実施例1と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0127】
すなわち、上記化学強化処理工程を終えたガラス基板を当該化学強化処理で使用したガラス基板ホルダに保持した状態で引き上げ、ガラス基板ホルダのガラス基板と接触している保持部が冷却されるように基板ホルダを風冷した。そして、基板が所定温度(100℃以下)まで冷却された後に、20°Cの水槽に浸漬して冷却し、約10分間維持した。
【0128】
〔評価〕
上記実施例2により製造されたガラス基板と、従来のガラス基板ホルダ(ホルダと接触している部分(保持部)を冷却しなかったもの)を用いて化学強化工程および冷却工程を行ったガラス基板(比較例)とを、実施例1同様、それぞれ表面形状測定装置(Optiflat(フェイズシフトテクノロジー社製))を用いて測定した。その結果、実施例1の基板の主表面に直交する方向の高さにおける最大値と最小値との差は6μmであったのに対して比較例の場合は10μmであった。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0130】
例えば、上述した実施形態においては、ガラス基板の非接触部分のみを加熱もしくは冷却するとしているが、接触部分と非接触部分とを含むガラス基板全体を加熱もしくは冷却してガラス基板と保持部との温度変化を等しくすることによっても同様の効果を得ることができる。例えば、非接触部分の加熱においては、保持部および非接触部分から接触部分に熱が流入し、ガラス基板面内の温度分布の均一化が図れているが、ここで述べたようにガラス基板全体を加熱することで保持部とガラス基板の温度を等しくして保持部からガラス基板への熱の流入を止め、ガラス基板の温度分布の偏りを回避することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、化学強化処理工程またはその後の冷却工程に用いられるガラス基板ホルダ、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】歪みや反りの原因を説明するための説明図である。
【図2】ガラス基板の底面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。
【図3】ガラス基板の側面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。
【図4】表裏の温度変化差でガラス基板が歪むことを説明するための横断面図である。
【図5】ガラス基板ホルダの構成を示した斜視図である。
【図6】基板加熱部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図7】保持冷却部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図8】放熱板の配置を説明するための横断面図である。
【図9】放熱板の他の配置を説明するための横断面図である。
【図10】ガラス基板ホルダの他の構成を示した斜視図である。
【図11】基板加熱部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図12】保持冷却部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図13】ガラス基板ホルダの他の構成を示した斜視図である。
【図14】基板冷却部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図15】保持加熱部によるガラス基板の温度推移の変化を説明するための説明図である。
【図16】基板冷却部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【図17】保持加熱部を用いた閉ループ制御を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0133】
10 ガラス基板
100,300,400 ガラス基板ホルダ
110 保持部
114 接触部分
116 非接触部分
150 基板加熱部
152 放熱板
160 保持冷却部
170 固定部
310 保持部温度検知部
320 基板温度検知部
330 算出部
410 基板冷却部
420 保持加熱部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、該化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、
前記ガラス基板を保持する複数の保持部と、
当該ガラス基板ホルダおよび前記ガラス基板が冷却されている間、前記保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分を加熱して該ガラス基板の温度変化を面内において均一にするための基板加熱部と、
を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダ。
【請求項2】
前記基板加熱部は、前記ガラス基板に対面配置され、輻射熱によって前記ガラス基板を加熱する放熱板で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項3】
前記放熱板は、耐薬品性が強化されたステンレス鋼材で形成されることを特徴とする、請求項2に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項4】
前記接触部分の温度を検知する保持部温度検知部と、
前記非接触部分の温度を検知する基板温度検知部と、
前記接触部分の温度と非接触部分の温度との差分に基づき、ガラス基板の温度変化を面内において均一にするために必要な加熱量を算出する算出部と、
をさらに備え、
前記基板加熱部は、前記算出部によって算出された加熱量で該非接触部分を加熱することを特徴とする、請求項1に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項5】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、該化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、
前記ガラス基板を保持する複数の保持部と、
当該ガラス基板ホルダおよび前記ガラス基板が冷却されている間、前記保持部をさらに冷却して該ガラス基板の温度変化を面内において均一にするための保持冷却部と、
を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダ。
【請求項6】
前記保持部は、前記ガラス基板と温度変化が等しくなるような材料および/または形状で形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項7】
前記ガラス基板は、前記保持部に、外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項8】
前記保持部は、V字形溝が形成され、前記ガラス基板の外周端面に2点で当接されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項9】
化学強化処理液に浸漬しイオン交換を行う化学強化処理によって熱を帯びた円盤状のガラス基板を冷却する冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板を収納するガラス基板ホルダの保持部に前記ガラス基板を保持させた状態で、前記ガラス基板の保持部を冷却することで、前記ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように冷却することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分の温度を検知し、
前記保持部の温度を検知し、
前記非接触部分の温度と保持部の温度との差分に応じて冷却量を計算し、
前記計算された冷却量で前記保持部を冷却することを特徴とする、請求項9に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
ガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で化学強化処理を行った後、当該ガラス基板ホルダに前記熱を帯びたガラス基板を保持した状態で前記冷却工程を行うことを特徴とする、請求項9記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法。
【請求項1】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、該化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、
前記ガラス基板を保持する複数の保持部と、
当該ガラス基板ホルダおよび前記ガラス基板が冷却されている間、前記保持部に接触している接触部分以外のガラス基板の部分である非接触部分を加熱して該ガラス基板の温度変化を面内において均一にするための基板加熱部と、
を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダ。
【請求項2】
前記基板加熱部は、前記ガラス基板に対面配置され、輻射熱によって前記ガラス基板を加熱する放熱板で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項3】
前記放熱板は、耐薬品性が強化されたステンレス鋼材で形成されることを特徴とする、請求項2に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項4】
前記接触部分の温度を検知する保持部温度検知部と、
前記非接触部分の温度を検知する基板温度検知部と、
前記接触部分の温度と非接触部分の温度との差分に基づき、ガラス基板の温度変化を面内において均一にするために必要な加熱量を算出する算出部と、
をさらに備え、
前記基板加熱部は、前記算出部によって算出された加熱量で該非接触部分を加熱することを特徴とする、請求項1に記載のガラス基板ホルダ。
【請求項5】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬しイオン交換を行う化学強化処理工程、および、該化学強化処理工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程に用いられるガラス基板ホルダであって、
前記ガラス基板を保持する複数の保持部と、
当該ガラス基板ホルダおよび前記ガラス基板が冷却されている間、前記保持部をさらに冷却して該ガラス基板の温度変化を面内において均一にするための保持冷却部と、
を備えることを特徴とする、ガラス基板ホルダ。
【請求項6】
前記保持部は、前記ガラス基板と温度変化が等しくなるような材料および/または形状で形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項7】
前記ガラス基板は、前記保持部に、外周端面の表面側と裏面側とを均一に当接させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項8】
前記保持部は、V字形溝が形成され、前記ガラス基板の外周端面に2点で当接されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のガラス基板ホルダ。
【請求項9】
化学強化処理液に浸漬しイオン交換を行う化学強化処理によって熱を帯びた円盤状のガラス基板を冷却する冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板を収納するガラス基板ホルダの保持部に前記ガラス基板を保持させた状態で、前記ガラス基板の保持部を冷却することで、前記ガラス基板の温度変化が面内において均一になるように冷却することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記保持部に接触している部分以外のガラス基板の部分である非接触部分の温度を検知し、
前記保持部の温度を検知し、
前記非接触部分の温度と保持部の温度との差分に応じて冷却量を計算し、
前記計算された冷却量で前記保持部を冷却することを特徴とする、請求項9に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
ガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で化学強化処理を行った後、当該ガラス基板ホルダに前記熱を帯びたガラス基板を保持した状態で前記冷却工程を行うことを特徴とする、請求項9記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−105932(P2008−105932A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247316(P2007−247316)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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