説明

磁気ディスク装置およびモータ構造

【課題】動圧による浮力のアンバランスの発生を防止することが可能な磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明の磁気ディスク装置は、動圧軸受であって、固定されたスリーブの軸受部に挿通されたシャフトと、中心部を貫通するハブ貫通孔をシャフトに挿通させて当該シャフトに固定された、1または複数の記録媒体を保持するハブとからなる、シャフトおよびハブが一体となった軸回転構造の回転体を有する構造のモータと、中心部を貫通するトップクランプ貫通孔が形成され、ハブに保持された記録媒体をハブとともに挟持するトップクランプと、トップクランプ貫通孔およびハブ貫通孔を挿通させて、シャフトに形成されたねじ溝に螺合されるねじと、を備え、ハブのスラスト面は、回転中心軸から外周に向かうにつれて、回転中心軸に対して直交する面からねじ側へ離隔する傾斜が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置およびモータ構造に関し、より詳細には、動圧力を利用して回転体を保持・浮上させている軸受構造にてシャフトにねじを取り付ける構造を有するモータを備える磁気ディスク装置およびモータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2.5インチ以下の小型の磁気ディスク装置の設計において、記録媒体であるディスクを固定するトップクランプは、ねじを回転体であるシャフトに螺合させることによって固定されるのが主流である。本明細書においては、「ねじ」はこのような役割を有する部材であるものとする。このような構造では、ねじとシャフトとの螺合による接触点を支点とし、トップクランプがディスクに接触する部分が力点としてトップクランプがディスクを押す方向への軸力が加わる。この際、ディスクは上述の軸力によりハブ側に押し付けられることによりハブの浮上に関する動圧面(以下、「スラスト面」とも記載する。)が軸力と同方向へ撓むことが確認されている。
【0003】
動圧により浮力を生じさせる作用の一部をハブが担っているモータ構造では、スラスト面が軸力によって、トップクランプがディスクを押す方向と同じ方向に回転中心軸から外周に向かうにつれ大きく撓むような椀形状となる。これにより、内周部と外周部との動圧力のアンバランスが生じ、回転体の浮上開始の回転数が高くなるため、固定部との接触による信頼性悪化等の障害発生率が高くなる。(同一の動圧力であっても回転体の形状により浮上量は小さく見積もられてしまう。そのため、浮上開始にはより大きい動圧力を必要とするため、浮上開始回転数は高くなる。)
【0004】
このような問題を解決するため、ハブのスラスト面に表面処理を施し摩耗を防止する等の対策が行われている(例えば、特許文献1)。例えば、ハブのスラスト面にモリブデンコーティングをすることで、浮上力の不安定で浮上開始する回転数が高くなっても動圧溝の摩耗や回転体と固定部との焼き付きの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−263346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スラスト面に対して表面処理を施すには工数を必要とし、コストも上昇する。しかし、信頼性(特に高温でのスタート・ストップ試験)を維持するためには除外することが困難である。また、表面処理を施さずに固定部に銅系の焼結材を用いることで凝着、および摩耗性を改善することもなされているが、浮上回転数が高くなると信頼性の悪化を回避することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、動圧による浮力のアンバランスの発生を防止することが可能な、新規かつ改良された磁気ディスク装置およびこれに備えられるモータの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、動圧軸受であって、固定されたスリーブの軸受部に挿通されたシャフトと、中心部を貫通するハブ貫通孔をシャフトに挿通させて当該シャフトに固定された、1または複数の記録媒体を保持するハブとからなる、シャフトおよびハブが一体となった軸回転構造の回転体を有する構造のモータと、中心部を貫通するトップクランプ貫通孔が形成され、ハブに保持された記録媒体をハブとともに挟持するトップクランプと、トップクランプ貫通孔およびハブ貫通孔を挿通させて、シャフトに形成されたねじ溝に螺合されるねじと、を備え、ハブのスラスト面は、回転中心軸から外周に向かうにつれて、回転中心軸に対して直交する面からねじ側へ離隔する傾斜が設けられることを特徴とする、磁気ディスク装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、ハブをクランプしたときに生じるハブの撓みを予め考慮して、ハブのスラスト面に、回転中心軸から外周に向かうにつれてねじ側へ離隔する傾斜を設ける。これにより、クランプ時にハブが撓んだ際、スラスト面とこれに対向する固定部との間隔が回転中心側や外周側を問わず略均等に保つことができ(すなわち浮上量を十分に確保することができ)、浮上回転速度が低減されるため、接触による障害発生に対する信頼性を高めることができる。なお、本発明において、ハブとシャフトとは別個の部品を固定して一体とされたものであってもよく、ハブとシャフトとが一体形成されたものであってもよい。
【0010】
ここで、スラスト面の傾斜量は、ねじによりトップクランプおよびハブがシャフトにクランプされたときに予測されるハブの撓み量に基づいて決定してもよい。
【0011】
あるいは、スラスト面の傾斜量は、ねじによりトップクランプおよびハブがシャフトにクランプされたときに、スラスト面が回転中心軸に対して直交する固定部の面と平行となるように決定してもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、動圧軸受であって、固定されたスリーブの軸受部に挿通されたシャフトと、中心部を貫通するハブ貫通孔をシャフトに挿通させて当該シャフトに固定された、1または複数の記録媒体を保持するハブとからなる、シャフトおよびハブが一体となった軸回転構造の回転体を有するモータ構造が提供される。かかるモータ構造では、中心部を貫通するトップクランプ貫通孔が形成され、ハブに保持された記録媒体をハブとともに挟持するトップクランプを、ねじをシャフトに形成されたねじ溝に螺合したときに、ハブのスラスト面は、回転中心軸から外周に向かうにつれて、回転中心軸に対して直交する面からねじ側へ離隔する傾斜が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、動圧による浮力のアンバランスの発生を防止することが可能な磁気ディスク装置およびこれに備えられるモータの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気ディスク装置のモータ部分を示す部分断面図である。
【図2】ハブのスラスト面に撓みがある場合とない場合とで、同じ動圧力の際に浮上量が減少するメカニズムを示すモデル図である。
【図3】同実施形態に係る回転体の撓み量を背面側からみた斜視図で示すモデル図である。
【図4】同実施形態に係る回転体の撓み量を断面図で示すモデル図である。
【図5】同実施形態に係るハブを用いた場合の作用を説明するための説明図である。
【図6】従来のハブのクランプ前とクランプ後のスラスト面の撓みを示す説明図である。
【図7】図6に示す従来のハブのクランプ前とクランプ後のスラスト面の撓み量を示すグラフである。
【図8】同実施形態に係るハブのクランプ前とクランプ後のスラスト面の撓みを示す説明図である。
【図9】図8に示す同実施形態に係るハブのクランプ前とクランプ後のスラスト面の撓み量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.ディスク装置の概略>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る磁気ディスク装置のモータ構造の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る磁気ディスク装置のモータ部分を示す部分断面図である。
【0017】
本実施形態に係る磁気ディスク装置は、記録媒体であるディスクに対して磁気記憶方式でデータを読み書きする装置である。磁気ディスク装置は、1つまたは複数のディスクと、当該ディスクを回転させる回転駆動部であるモータと、モータを支持するベースと、ディスクに対してデータを記録および/または再生するヘッドを回転移動させるアクチュエータとを備える。
【0018】
本実施形態に係るモータ100は、図1に示すように、流体を使用した動圧軸受を用いており、1つまたは複数のディスクを搭載可能なハブ110と、当該ハブ110の中心に設けられたシャフト120とからなる軸回転の回転体の構造を有する。なお、本実施形態において、ハブ110とシャフト120とは別個の部品を固定して一体とされたものであってもよく、ハブ110とシャフト120とが一体形成されたものであってもよい。
【0019】
ハブ110は、ディスクを外周部で支持する部材であって、ハブ110の中心部に形成されたハブ貫通孔112にシャフト120を挿通させて、シャフト120の上端部側に設けられる。ハブ110はシャフト120に固定されており、一体となって回転する。
【0020】
シャフト120は、ディスクの回転中心となる回転軸である。シャフト120は図1に示すように管状に形成されており、その内部にはねじ溝が形成されている。シャフト120の上端側(ハブ110が設けられている側)のねじ溝にはトップクランプ(図示せず。)によりディスクを保持するためのねじ(図示せず。)が螺合される。そして、回転体の抜けを防止するためのストッパー(図示せず)が、例えばシャフト120の下端側(ベース側)のねじ溝に固定される。このシャフト120の内部をねじ取付部122とも称する。シャフト120およびハブ110の一部と、ベースに固定されたスリーブ130との間には、オイル等の流体が満たされているため、固定部には軸受内の流体を封止するキャップ(図示せず。)が取り付けられる。
【0021】
このようなモータ100を備える磁気ディスク装置は、ディスク中心に形成された貫通孔をハブ110に挿通させてハブ110の外周部にディスクを載置した後、ハブ110に載置されたディスクを上方からトップクランプにより押圧してディスクを固定している。なお、複数のディスクを搭載する場合には、ディスク間のスペースを確保するためのスペーサ(図示せず。)をディスク間に挟むようにして各ディスクがハブ110に取り付けられる。トップクランプは、その外周部でディスクの内周部をハブ110側へ押圧する。トップクランプの中心部には、ねじを挿通させるためのトップクランプ貫通孔が形成されている。
【0022】
ねじは、トップクランプ貫通孔を介して、シャフト120のねじ取付部122に螺合される。これにより、ねじのフランジ部でトップクランプのトップクランプ貫通孔周りの上面部分が押圧され、ディスクがハブ110およびトップクランプにより挟持される。
【0023】
<2.モータ構造>
[2−1.モータ構造の概要]
動圧により浮力を生じさせる作用の一部をハブ110が担っている構造のモータ100において、浮上力が不安定となる原因として、回転体・固定部の表面精度や動圧溝のアンバランスや、回転体・固定部の組み付け精度の他に、ハブ110がトップクランプから受ける押圧力によって撓むことも考えられる。トップクランプによってディスクを押圧する力がハブ110のフランジ面に掛かることにより、ハブ110のスラスト面114の外周側が固定部に向かって撓んでしまう。このため、回転体を撓みのない形状の回転体と同程度まで浮上させるためにはより大きな動圧力が必要となる。換言すると、回転体を浮上させるためには撓みのない形状の回転体と比べて浮上開始回転数が高くなってしまうということである。
【0024】
図2に、ハブ110のスラスト面114に撓みがある場合とない場合とのモデルを示す。図2左に示すように、一定の動圧力で回転体が固定部に対して浮上している場合、回転体と固定部との対向する面が略平行であるため、これらの間隔は略均一(例えば約10μm)となる。一方、図2右に示すように、図2左と同様に動圧力が掛かっている場合でも回転体を構成するハブ110が撓むと回転体と固定部との対向する面の平行性が失われ、対向する位置によってこれらの間隔が異なる。この場合、回転体の浮上量は回転体と固定部とが最も近接する部分、すなわち最もマージンの無い部分となるため、図2左に示したスラスト面に撓みがない場合と比較して浮上量が小さくなる。
【0025】
一例として、トップクランプによりディスクを押圧するために、ねじをシャフト120に螺合したときの回転体の撓み量を図3および図4に示す。図3は、本実施形態に係る回転体の撓み量を背面側からみた斜視図で示すモデル図である。図4は、本実施形態に係る回転体の撓み量を断面図で示すモデル図である。図3および図4ではハブ110およびシャフト120を回転体として一体に示している。これらのモデル図では、回転体の変形量が大きいほど濃い色で示している。
【0026】
図3および図4に示すように、回転軸の変形量は、シャフト120から外周側へ向かうにつれて大きくなり、図4に示すように、スラスト面114も下方(z軸負方向側)へ撓んで傾斜してしまい浮上量が小さくなってしまうことがわかる。
【0027】
ハブ110のスラスト面114が撓むと、回転体の浮上量は図2左に示したスラスト面に撓みがない場合と比較して浮上量が小さくなる。この際、シャフト120が外乱(ジャイロ衝撃)により傾くと、回転軸が傾くことにより回転体と固定部との間隔で最もマージンが少ない外周側にて接触し、凝着・摩耗による信頼性の悪化や接触時のスレ音による騒音を引き起こす要因となる。
【0028】
そこで、本実施形態では、回転体を構成するハブ110のスラスト面114を、シャフト120にクランプスクリューで固定したときの撓みを考慮してスラスト面114に傾斜を設ける。これにより、クランプ後のスラスト面114の平面度を小さくすることができるので、浮上回転速度を低下させることができ、かつ安定した浮上を得ることができる。
【0029】
[2−2.ハブの構成]
以下、図5〜図9に基づいて、本実施形態に係るハブ110の形状について説明する。なお、図5は、本実施形態に係るハブ110を用いた場合の作用を説明するための説明図である。図6は、従来のハブ10のクランプ前(初期状態)とクランプ後のスラスト面12の撓みを示す説明図である。図7は、従来のハブ10のクランプ前とクランプ後のスラスト面12の撓み量を示すグラフである。図8は、本実施形態に係るハブ110のクランプ前(初期状態)とクランプ後のスラスト面114の撓みを示す説明図である。図9は、本実施形態に係るハブ110のクランプ前とクランプ後のスラスト面114の撓み量を示すグラフである。
【0030】
スラスト面114の傾斜量は、スラスト部分におけるハブ110の厚さやハブ110の全体的形状、軸力等によって変化するため、適宜調整される。具体的には、事前にクランプによるハブ110の撓み量を測定する実験を行うことでスラスト面114の傾斜量が決定される。このスラスト面114の傾斜量の調整は、図5に示す考え方に基づき行われる。図5左にシャフト120に固定する前の回転体(ハブ110)と固定部(スリーブ130)との関係を示し、図5右にシャフト120に固定した後の回転体と固定部との関係を示す。本実施形態に係るハブ110では、図5右に示すように、ハブ110をクランプしたときに、回転体のスラスト面114とこれに対向する固定部の面とが略平行となるように構成される。このため、図5に示すように、予め回転体のスラスト面114に傾斜が設けられる。
【0031】
図3および図4を用いて説明したように、ハブ110はクランプされるとシャフト120から外周側へ向かうにつれてz軸負方向側に変形する。この特性を考慮して、本実施形態では、図5に示すように、クランプされていない初期状態において、ハブ110のスラスト面114を内周側よりも外周側が高くなるように形成する。このように予めスラスト面114の撓みを考慮することで、クランプした際に、ハブ110のスラスト面114はこれと対向する固定部の面と略平行となる。なお、動圧部におけるスラスト面114の傾きは、例えばスラスト面114に形成された溝の内周径と外周径とで表すものとする。
【0032】
図6〜図9に基づき、従来のハブ10と本実施形態に係るハブ110とについて、クランプ前後でのスラスト面の撓み量の違いをより詳細に説明する。まず、図6および図7に基づいて従来のハブ10のスラスト面12の撓み量を説明すると、図6上に示すように、従来のハブ10のスラスト面12は、シャフト120にクランプされる前の初期状態において回転中心軸Cに対して略直交するように形成されている。このハブ10をシャフト120にクランプすると、ハブ10が撓み、図6下に示すようにスラスト面12は外周側に向かうにつれて初期状態よりz軸負方向側に下がっている。
【0033】
図7に、図6に示したクランプ前後におけるスラスト面12の撓み量を示す。図7では、x軸方向が0の位置を回転中心軸Cとする。図7からもわかるように、回転中心軸Cから外周側に向かうにつれて、クランプ後はz軸方向の高さが低くなっている。このように、従来のハブ10では、シャフト120にクランプすると浮上量が小さくなってしまう。
【0034】
これに対して、本実施形態に係るハブ110のスラスト面114は、図8上に示すように、シャフト120にクランプされる前の初期状態において、外周側に向かうにつれて回転中心軸Cに対して略直交する位置より高くなるように(すなわち、z軸正方向側にあるように)形成されている。このハブ110をシャフト120にクランプすると、ハブ110が撓み、図8下に示すようにスラスト面114は回転中心軸Cに対して略直交するようになる。
【0035】
図9に、図8に示したクランプ前後におけるスラスト面114の撓み量を示す。図9でも図7と同様、x軸方向が0の位置を回転中心軸Cとする。図9より、回転中心軸Cから外周側に向かうにつれてクランプ前はz軸方向の高さが低くなっているが、クランプ後は略同一の高さとなっていることがわかる。すなわち、本実施形態に係るハブ110は、シャフト120にクランプしても所定の浮上量を維持することができるので、浮上開始回転数を下げることができ、且つ安定した浮上を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態に係るハブ110は、図8等に示したように初期状態においてスラスト面114が回転中心軸Cから外周側に向かうにつれてz軸方向の高さが直線的に高くなる傾斜面となるように形成されていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、スラスト面114の傾斜の形状は曲線的であってもよく、回転中心軸Cから外周側に向かうにつれてz軸方向の高さが高くなる形状であればよい。
【0037】
以上、本実施形態に係るモータ100の構造とこれを備える磁気ディスク装置について説明した。本実施形態に係るモータ100では、クランプ時のハブ110の撓み量を考慮して、動圧部であるハブ110のスラスト面114に対して回転中心軸Cから外周側に向かうにつれて高くなる(固定部のスリーブ130から離隔する)ように傾斜を形成している。これにより、ハブ110をクランプしたときにスラスト面114が撓んでも、スラスト面114はこれと対向する固定部の面と略平行となり、必要な浮上量を確保することができる。したがって、安定した浮上を維持でき、かつ浮上回転数を低下させることもできるので、摩耗も低減することができる。また、スラスト面114に適切な傾斜を設けることで、クランプによってハブ110が変形しても、回転体と固定部との異常接触も防止することができ、回転体と固定部とのスレ音を抑制することもできる。
【0038】
このようなハブ110を用いることで、ディスクを取り付けて磁気ディスク装置を構成したときに、動圧部とこれに対向するスラスト面114とが略平行となるため、ダンピング力が高まり、耐衝撃性が向上する。また、このとき動圧部とこれに対向するスラスト面114とが略平行となることで、浮上開始前や外部衝撃による接触時の接触が面接触となり、局部的な摩耗を防止することができる。これにより信頼性の向上が期待できる。さらに、動圧部とこれに対向するスラスト面114とが略平行となることで、回転体を周方向に略均一に浮上させることができるため、浮上量に対する動圧力を最小にすることができる。この際、浮上回転数が最小となり、低回転での軸受のスレ回りによる摩耗を抑制できる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0040】
100 モータ
110 ハブ
112 ハブ貫通孔
114 スラスト面
120 シャフト
122 ねじ取付部
130 スリーブ
140 固定部の構成部材
150 ベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動圧軸受であって、固定されたスリーブの軸受部に挿通されたシャフトと、中心部を貫通するハブ貫通孔を前記シャフトに挿通させて当該シャフトに固定された、1または複数の記録媒体を保持するハブとからなる、前記シャフトおよび前記ハブが一体となった軸回転構造の回転体を有する構造のモータと、
中心部を貫通するトップ貫通孔が形成され、前記ハブに保持された前記記録媒体を前記ハブとともに挟持するトップクランプと、
前記トップクランプ貫通孔および前記ハブ貫通孔を挿通させて、前記シャフトに形成されたねじ溝に螺合されるねじと、
を備え、
前記ハブのスラスト面は、回転中心軸から外周に向かうにつれて、前記回転中心軸に対して直交する面から前記ねじ側へ離隔する傾斜が設けられることを特徴とする、磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記スラスト面の傾斜量は、前記ねじにより前記トップクランプおよび前記ハブが前記シャフトにクランプされたときに予測される前記ハブの撓み量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記スラスト面の傾斜量は、前記ねじにより前記トップクランプおよび前記ハブが前記シャフトにクランプされたときに、前記スラスト面が前記回転中心軸に対して直交する固定部の面と平行となるように決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
動圧軸受であって、固定されたスリーブの軸受部に挿通されたシャフトと、中心部を貫通するハブ貫通孔を前記シャフトに挿通させて当該シャフトに固定された、1または複数の記録媒体を保持するハブとからなる、前記シャフトおよび前記ハブが一体となった軸回転構造の回転体を有するモータ構造であって、
中心部を貫通するトップクランプ貫通孔が形成され、前記ハブに保持された前記記録媒体を前記ハブとともに挟持するトップクランプを、ねじを前記シャフトに形成されたねじ溝に螺合したときに、
前記ハブのスラスト面は、回転中心軸から外周に向かうにつれて、前記回転中心軸に対して直交する面から前記ねじ側へ離隔する傾斜が設けられることを特徴とする、モータ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101732(P2013−101732A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244608(P2011−244608)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】