説明

磁気デバイス

【課題】微弱な外部磁界を高感度に検出可能であるとともに、小型化を図ることが可能な磁気デバイスを提供する。
【解決手段】導磁路13は、磁場発生手段12の磁場発生中心を貫通し、磁場発生手段12と磁場検出手段11との間で磁束を伝える磁路を形成する。こうした構成によって、磁場発生手段12に生じたバイアス磁界は、導磁路13に誘導される。そして、この導磁路13を介して、磁場発生手段12から離れた位置に配された磁場検出手段11にバイアス磁界が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場発生手段と磁場検出手段とを有し、外部磁場を検出する磁気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
空間に存在する微弱な外部磁界、例えば地磁気などを検出する磁気センサには、例えば磁気インピーダンス素子、磁気抵抗効果素子、フラックスゲート等が用いられている。例えば、磁気インピーダンス素子は、外部磁界の正、負双方の出力特性がほぼ対称形をなし、かつ磁場0付近でそのインピーダンスが極小となる。このような出力特性を利用して、磁場の検出感度を上げる方法として、磁気インピーダンス素子にバイアス磁界を印加する方法が知られている。
【0003】
バイアス磁界を印加した磁気インピーダンス素子として、例えば、特許文献1には、磁気検出素子に近接してバイアスコイルを設置し、このバイアスコイルに励磁電流を流すことによって、磁気検出素子にバイアス磁界を印加する磁界強度検出装置が記載されている。また、特許文献2には、磁気インピーダンス素子に近接してマグネットを設け、磁気インピーダンス素子にバイアス磁界を印加するバイアス磁界印加方法が記載されている。さらに、特許文献3には、平面コイルによって磁気インピーダンス素子や磁気抵抗効果素子にバイアス磁界を印加する磁気センサが記載されている。
【特許文献1】特開2003−329745号公報
【特許文献2】特開平11−174137号公報
【特許文献3】特開2002−286822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のバイアス磁界を印加する磁気センサでは、磁場の検出感度を上げるには、充分なバイアス磁界を磁気センサに印加しなければならない。そのため、磁場検出手段よりも比較的サイズの大きいコイルや磁石などのバイアス磁界発生手段を磁場検出手段の近傍に設ける必要があり、磁気センサの小型化が難しく、磁気センサ内部のレイアウトに制約が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、微弱な外部磁界を高感度に検出可能であるとともに、小型化を図ることが可能な磁気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る磁気デバイスは、磁場発生手段と、磁場検出手段と、前記磁場発生手段と前記磁場検出手段との間を連結し磁束を誘導する導磁路とを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る磁気デバイスは、請求項1において、前記磁場検出手段およびこれと連結される前記導磁路からなるユニットを複数備えていることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る磁気デバイスは、請求項2において、前記ユニットを3つ備え、各ユニットを構成する前記磁場検出手段は互いに直交して配置されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る磁気デバイスは、請求項1において、前記磁場発生手段はソレノイドコイルであることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る磁気デバイスは、請求項1において、前記磁場発生手段は永久磁石であることを特徴とする。
本発明の請求項6に係る磁気デバイスは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記導磁路はテープ状をなすことを特徴とする。
本発明の請求項7に係る磁気デバイスは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記導磁路は高透磁率材料またはフェライトから形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁気デバイスによれば、磁場発生手段と磁場検出手段との間を連結し磁束を誘導する導磁路を設けたので、磁場検出手段から離れた位置に磁場発生手段を配しても、磁場検出手段に充分な強度のバイアス磁界を印加でき、かつ磁気デバイスの設計上の自由度が増し、磁場発生手段と磁場検出手段とを組込機器に応じて最適なレイアウトで配置することができるので、高感度で小型化が可能な磁気デバイスを実現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る磁気デバイスの実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明の磁気デバイスの一例を示す斜視図である。磁気デバイス10は、磁場検出手段11およびこれと連結された導磁路13とからなるユニット15と、磁場発生手段12とを有する。ここでは、磁場検出手段11がメアンダ型の磁気センサ、磁場発生手段12がソレノイドコイルの場合を例示している。
【0010】
磁場検出手段11には、バイアス磁界が印加された際に、磁界の大きさに応じて、出力が変化する機能素子が配されている。この機能素子の出力変化が得られやすい任意の一軸方向に、導磁路13を通して、磁場発生手段12は磁束を誘導する。そのために、磁場発生手段12は、通電によりバイアス磁界を発生させる。導磁路13は、磁場発生手段12をソレノイドコイルとした場合は内径中心を貫通し、両端13a,13bがそれぞれ磁場検出手段11に連結され、磁場発生手段12と磁場検出手段11との間で磁束を伝える磁路を形成する。こうした導磁路13と磁場検出手段11との連結は、例えば、導磁路13が磁場検出手段11に物理的に接続されたり、あるいは導磁路13が磁場検出手段11の近傍を通るなど、導磁路13と磁場検出手段11との間で磁束が誘導される構成であればいかなる形態であってもよい。
【0011】
こうした磁気デバイス10の構成によって、磁場発生手段12の通電によって発生したバイアス磁界は、磁場発生手段12の内径中心を貫通する高透磁率材料の導磁路13に誘導される。そして、この導磁路13を介して、磁場発生手段12から離れた位置に配された磁場検出手段11にバイアス磁界が印加される。その際、図3に示すように機能素子の出力特性を高感度に利用するために、例えば、磁場0付近より正方向に寄った領域Pを磁場検出に用いるとよい。
【0012】
磁場発生手段12で発生させたバイアス磁界を高透磁率材料の導磁路13を介して磁場検出手段11に印加する構成によって、磁場検出手段11に近接して磁場発生手段12を設けず、磁場検出手段11と磁場発生手段12とを離れた位置に配置しても、磁場検出手段11に充分な強度のバイアス磁界を印加することが可能になる。磁場検出手段11の配置部分にスペース上の制約があっても、磁場発生手段12を磁場検出手段11から離れた位置に配置することが可能になり、磁気デバイス10を組み込む機器のレイアウト上の自由度を向上させることができる。
【0013】
機能素子22としては、例えば、磁気インピーダンス素子、磁気抵抗効果素子、フラックスゲートなどが用いられる。機能素子22を磁気抵抗効果素子とした場合は、例えばSi基板などの半導体基板21の一面に、厚みが1umのCoZrNb非晶質(アモルファス)磁性材料などの強磁性体からなり、一方向に延びる複数の配線を連結し、つづら折り状に構成したものを形成すればよい。これ以外にも、パーマロイ(Ni−80wt%Fe)などの強磁性体、NiFe、FeCoSiBなどの非晶質(アモルファス)磁性材料や結晶性磁性材料を用いることもできる。特に、搬送波信号の周波数帯において軟磁性であり、高透磁率を示す材料が好ましい。
【0014】
機能素子22の形成にあたっては、例えばスパッタリング法とフォトリソグラフィ法との組合せ(エッチングもしくはリフトオフ)が採用できる。また、上記材料からなる合金ターゲットを用いたRFスパッタ法を採用してもよい。このほか、イオンビームエッチング法、ドライエッチッグ加工法(反応性イオンエッチング法など)、ウェットエッチング加工法、メタルマスク法を採用してもよい。
【0015】
機能素子22の端部には、例えば、配線パッド23が形成されていればよい。この配線パッド23を介して、磁場検出手段11は磁気検出回路(図示せず)などに接続される。なお、こうした機能素子22は、上層を絶縁膜などで覆われていてもよい。磁場発生手段12としてソレノイドコイルを用いた場合には、例えば、巻き数が100回、巻き径が100um、コイル長さが1mmに形成されていればよく、例えば電源25によって通電することにより、磁場を発生させる。磁場発生手段12にソレノイドコイルを採用すれば、ソレノイドコイルに印加する電圧を変えることで、磁場検出手段11に印加されるバイアス磁界の強度を任意に設定することが可能になり、磁場検出手段11の特性に応じて適切なバイアス磁界を印加することができる。
【0016】
導磁路13は、例えば高透磁率材料をテープ状に形成したものが用いられる。導磁路13を構成する高透磁率材料としては、例えば、アモルファス磁性薄帯、特にコバルト系アモルファス磁性薄帯、フェライト、特に焼結フェライトを用いればよい。このような高透磁率材料は、高周波特性が低いため、高透磁率材料で導磁路13を形成することによって、高周波帯のノイズを抑制することが可能である。また、高透磁率材料で導磁路13を形成することによって、単位面積あたりの磁束密度が高められ、より効率的に磁場を磁場発生手段12から磁場検出手段11に印加することができる。さらに、導磁路13をテープ状に形成することによって、組み込み機器の構成に合わせて導磁路13を自在な形に屈曲させることができ、導磁路13の配置を任意の形態にすることができる。
【0017】
特に、導磁路13として柔軟性のあるコバルト系アモルファス磁性薄帯を用いれば、導磁路13のレイアウト上の自由度を大きく向上させることができる。また、導磁路13として剛性に富んだ焼結フェライトを用いれば、剛性の高いパッケージを形成することもできる。一方、導磁路13を磁場発生手段12の磁場発生中心を貫通させることによって、低電流でも効率的にバイアス磁界を導磁路13に誘導することが可能となる。
【0018】
なお、上述した第1の実施形態では、磁場検出手段11および導磁路13とからなるユニット15を1つ設けているが、複数の軸方向(成分)の磁場を検出するために、磁場検出手段および導磁路とからなるユニットを2つ以上複数個形成してもよい。また、導磁路13をテープ状に形成しているが、導磁路13の形状はもちろんこれに限定されるものではなく、各種薄体形状、円柱線状、角柱状など、各種形状が採用可能であり、限定されるものではない。
【0019】
上述した第1の実施形態では、磁場発生手段としてソレノイドコイルを用いた場合にこれを環状に巻いているが、もちろんこれに限定されるものではなく、角形状、平板状など各種形状に形成すればよい。さらに、上述した第1の実施形態では、磁場発生手段としてソレノイドコイルを例示したが、これ以外にも、永久磁石などを用いてもよく、バイアス磁界を発生できるものであれば、どのような形態のものであってもよい。特に、磁場発生手段として永久磁石を用いれば、バイアス磁界を発生させるにあたって電源が不要となり、携帯用小型機器など、バッテリーの使用に制約があるものにも好ましく適用できる。
【0020】
上述した第1の実施形態では、導磁路13全体を磁場検出手段11を介して矩形(ロ字型)に形成しているが、導磁路13全体の形態は、組み込む機器のレイアウトに応じて最適に屈曲されればよい。
【0021】
図2aは、本発明の磁気デバイスの第2実施形態を示す斜視図である。この実施形態では、外部磁界のX軸方向の磁場成分、Y軸方向の磁場成分およびZ軸方向の磁場成分をそれぞれ独立して検出可能な磁気デバイスを例示する。第2実施形態における磁気デバイス40は、第1磁場検出手段41と第1導磁路45からなる第1ユニット51、第2磁場検出手段42と第2導磁路46からなる第2ユニット52、第3磁場検出手段43と第3導磁路47からなる第3ユニット53と、1つの磁場発生手段44とを有する。
【0022】
第1磁場検出手段41は空間のX軸方向に沿って、第2磁場検出手段42は空間のY軸方向に沿って、第3磁場検出手段43は空間のZ軸方向に沿って、それぞれ形成されている。これにより、第1ユニット51は外部磁場のX軸成分を、第2ユニット52は外部磁場のY軸成分を、第3ユニット53は外部磁場のZ軸成分をそれぞれ検出する。磁場発生手段44は、第1実施系態と同様にバイアス磁界を発生させる。
【0023】
このような第1〜第3導磁路45〜47は、互いに交わることなくそれぞれ独立して磁路を形成する。第1〜第3導磁路45〜47が磁場発生手段44としてソレノイドコイルを用いた場合にその内径側を貫通する部分においても、図2bに示すように、第1〜第3導磁路45〜47は、それぞれ離間して配置され、互いに接しないようにされる。
【0024】
こうした第1〜第3のユニット51〜53で外部磁場のX軸成分、Y軸成分、Z軸成分をそれぞれ独立して検出できる磁気デバイス40は、空間の方位を検出する機器、たとえば電子コンパスに好適に利用することができる。従来のように磁場検出手段の数だけ磁場発生手段を設けなくても、1つの磁場発生手段で複数の磁場検出手段に充分な磁場強度でバイアス磁界を印加することが可能になる。
【0025】
磁場検出手段を複数備えた磁気デバイスであっても、磁場発生手段として比較的電力を多く消費するソレノイドコイルを用いても、1つでよいため、消費電力を抑制することが可能になる。消費電力の抑制は、特にバッテリーの容量に制約のある携帯用機器などにこうした磁気デバイスを組み込む際に効果的である。
【0026】
また、磁場発生手段として永久磁石を採用した場合でも、複数の磁場検出手段に対して、1つの磁石でそれぞれの磁場検出手段にバイアス磁界を印加できるので、磁場検出手段の数だけ磁石を設けた場合に生ずる漏れ磁界による相互干渉や、磁界が不均一になるといった問題を防ぐことができる。そして、複数の磁場検出手段に対して磁場発生手段は1つだけ設ければよいので、製造コストを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の磁気デバイスの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の磁気デバイスの第2実施形態を示す斜視図である。
【図3】磁気インピーダンス素子の出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
10,40…磁気デバイス、11…磁場検出手段、12,44…磁場発生手段、13…導磁路、15…ユニット、41…第1磁場検出手段、42…第2磁場検出手段、43…第3磁場検出手段、45…第1導磁路、46…第2導磁路、47…第3導磁路。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場発生手段と、磁場検出手段と、前記磁場発生手段と前記磁場検出手段との間を磁気的に連結し磁束を誘導する導磁路とを備えたことを特徴とする磁気デバイス。
【請求項2】
前記磁場検出手段およびこれと連結される前記導磁路からなるユニットを複数備えていること
を特徴とする請求項1に記載の磁気デバイス。
【請求項3】
前記ユニットを3つ備え、各ユニットを構成する前記磁場検出手段は互いに直交して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気デバイス。
【請求項4】
前記磁場発生手段はソレノイドコイルであることを特徴とする請求項1に記載の磁気デバイス。
【請求項5】
前記磁場発生手段は永久磁石であることを特徴とする請求項1に記載の磁気デバイス。
【請求項6】
前記導磁路はテープ状をなすことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気デバイス。
【請求項7】
前記導磁路は高透磁率材料またはフェライトから形成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気デバイス。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−240362(P2007−240362A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64143(P2006−64143)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】