磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法
【課題】準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現する。
【解決手段】記憶部14が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリスト14bを撮像の種類ごとに記憶する。また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、生成された撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる。
【解決手段】記憶部14が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリスト14bを撮像の種類ごとに記憶する。また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、生成された撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法に関し、特に、撮像に用いるパルスシーケンスの撮像パラメータや装置の設定状態を最適化させるための準備撮像によって、より高詳細な画像を提供できる磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ)における磁気共鳴イメージング法は、対象原子核スピンの集団が、磁場中に置かれた場合に、原子核ごとに固有の磁気モーメントと存在磁場強度とに応じた特定の周波数(共鳴周波数)で回転する高周波磁場に共鳴し、その緩和過程で信号(磁気共鳴信号)を発生する現象を利用して、物質の化学的および物理的な微視的情報を取得する方法である。
【0003】
かかる磁気共鳴イメージング法において、画像のコントラストや空間分解能、画像S/N比、撮像時間などは、例えばパルスシーケンスの種類や、その撮像パラメータである繰り返し時間(TR:Repetition Time)、エコー時間(TE:Echo Time)、反転回復時間(TI:Inversion Time)、励起用高周波磁場パルスのフリップ角(FA:Flip Angle)、心電図より得られたR波からデータ収集までの遅延時間、装置の高周波磁場の中心周波数f0などに依存する。そのため、MRI装置は、医用機器の中でも特に多くの撮像条件の設定が必要な装置となっている。
【0004】
ここで、上記の撮像パラメータの中には、撮像法によって、被験者の状態や装置の状態に依存して最適な値を設定する必要のあるものが存在する。このようなパラメータについては、画質を維持するために、本撮像の直前に被験者が装置に入った状態でテスト撮像を行って、最適な値を探索することが行われている。以下では、実際に診断に使用する画像を得るための撮像を「本撮像」、本撮像の特定撮像パラメータを最適化するために本撮像に先立って実行するテスト撮像を「準備撮像」と呼ぶこととする。
【0005】
例えば、非特許文献1には、心筋遅延造影法に関して、「心筋のT1緩和時間は造影剤投与量や投与後の時間によって変動するため、正常心筋の信号強度がほぼゼロになるインバージョン時間(TI)をテスト撮像して選んだ後、IR−MRIの検査を行う。」と記載されている。また、特許文献1には、非造影アンギオグラフィにおいて心電同期タイミングやフローボイド現象に関わる傾斜磁場パルス強度を最適化するための準備撮像を行う手法が開示されている。また、非特許文献2には、定常状態自由歳差運動(SSFP:Steady State Free Precession)法による冠状動脈撮像に先立って、装置の中心周波数f0を変更した短時間の撮像を行い、関心領域の画像アーティファクトが最も少なくなる周波数を目視で確認して設定する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−70766号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】佐久間 肇ほか著,「造影MRIによる虚血性心疾患の診断」,INNERVISION(インナービジョン),2000年,第15巻,第13号,p.59−66
【非特許文献2】Deshpande VS et al,“Artifact Reduction in True-FISP Imaging of the Coronary Arteries by Adjusting Imaging Frequency”,Magnetic Resonance in Medicine,2003年,第49巻,第5号,p.803−809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したMRI装置の撮像パラメータは、準備撮像および本撮像についてそれぞれ考えると、以下の3種類に分類することができる。
(1)準備撮像により最適な値を探索し、探索した値を本撮像で使用する撮像パラメータ
(2)上記(1)の可変パラメータの評価に影響を与える撮像パラメータ
(3)本撮像の目的に応じて準備撮像とは異なる値を使用する撮像パラメータ
【0009】
ここで、(2)の撮像パラメータは、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定するものであり、本撮像では、準備撮像で使用した値を複製して使用する必要がある。また、(3)のパラメータは、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能なものであり、本撮像の目的に応じて値を変更しなければならないものや、状況に応じて値を変更してよいもなどがある。しかし、準備撮像では、パラメータの値を変えながら複数の撮像が繰り返して行われるため、全体の撮像時間を短時間で終了させることが望ましく、そのため、(3)の撮像パラメータは、(1)のパラメータの値の決定に影響を与えないもの(例えば、空間分解能など)については、準備撮像用の値として本撮像よりも低い値が設定される場合が多い。
【0010】
操作者は、このような撮像パラメータの分類を理解したうえで、準備撮像および本撮像それぞれの撮像条件を独立にかつ相互の関係を維持して編集する必要がある。しかしながら、これには、十分な知識と経験が必要である。また、臨床の場において常に高い診断能を得るためには、常に正しい撮像条件を設定することが必要であり、検査の時間短縮、省力化、品質および再現性の向上を図るためには、このような煩雑な操作が大きな妨げとなっている。
【0011】
本発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得する定義情報取得部と、前記定義情報取得部により取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する準備撮像条件生成部と、前記準備撮像条件生成部により生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる準備撮像制御部と、前記準備撮像制御部による前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する本撮像条件設定部と、前記本撮像条件設定部により設定された撮像パラメータを含む本撮像用の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる本撮像制御部と、を備える。
【0013】
また、本発明の他の態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を使用する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類した情報を記憶する記憶部と、本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値を入力するための入力部と、前記入力部により入力された前記本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値、および、前記記憶部によって記憶された複数の撮像パラメータを分類した情報に基づいて、準備撮像および本撮像を実行させる制御部と、を備える。
【0014】
また、本発明の他の態様に係る撮像条件生成方法は、磁気共鳴イメージング装置の撮像条件を生成する撮像条件生成方法であって、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶部に格納し、前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得し、取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させ、前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する、ことを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、心筋遅延造影用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図4】図4は、撮像条件編集表示部によって表示される情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、従来の撮像の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施例に係るMRI装置による撮像の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程を説明するための図である。
【図8】図8は、ECG−Prep用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図9】図9は、Flow−Prep用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図10】図10は、中心周波数設定用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図11】図11は、撮像位置を設定する場合のパラメータリスト14bの一例を示す図である。
【図12】撮像パラメータ限界計算部による撮像位置の設定を説明するための図(1)である。
【図13】撮像パラメータ限界計算部による撮像位置の設定を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の一例として、心筋遅延造影法による撮像(以下、「心筋遅延造影」と呼ぶ)を例にあげて説明を行う。
【0018】
ここで、心筋遅延造影とは、非特許文献1などに示されているように、T1緩和時間を短縮する効果がある造影剤を被検体に注入して、15〜20分後に心臓のT1強調画像を撮像することによって、心筋梗塞部位などを高信号に描出する撮像法である。かかる心筋遅延造影において、正常心筋と梗塞巣とのコントラストを明瞭にするためには、正常心筋の信号値ができるだけゼロに近くなるような反転回復時間(TI)を撮像条件として設定する必要がある。このTIの至適な時間は、造影剤の投与量や投与後の時間によって変わるため、心筋遅延造影では、本撮像に先立って、TIの時間を変化させた準備撮像が行われる。
【実施例】
【0019】
最初に、図1を用いて、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示す図である。同図に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、計算機システム10を備える。
【0020】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0021】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0022】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0023】
傾斜磁場電源3は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0024】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備えた装置であり、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0025】
寝台制御部5は、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0026】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0027】
送信部7は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する装置であり、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として、送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0028】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、上記の高周波磁場の影響によって被検体から放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0029】
受信部9は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴信号データを生成する装置である。この受信部9は、磁気共鳴信号データを生成すると、その磁気共鳴信号データを計算機システム10に送信する。
【0030】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部11、データ収集部12、データ処理部13、記憶部14、表示部15、入力部16および制御部17を有している。
【0031】
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7および受信部9に接続されており、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する処理部である。
【0032】
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信される磁気共鳴信号データを収集する処理部である。データ収集部12は、磁気共鳴信号データを収集すると、収集した磁気共鳴信号データを記憶部14に記憶させる。
【0033】
データ処理部13は、記憶部14に記憶されている磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する処理部である。
【0034】
記憶部14は、データ収集部12によって収集された磁気共鳴信号データと、データ処理部13によって生成された画像データなどを、被検体Pごとに記憶する記憶部である。
【0035】
表示部15は、制御部17による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する装置である。この表示部15としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0036】
入力部16は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける装置である。この入力部16としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0037】
制御部17は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100を総括的に制御する処理部である。
【0038】
以上、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例に係るMRI装置100では、計算機システム10によって、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができるようにしている。
【0039】
具体的には、本実施例に係るMRI装置100では、計算機システム10が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリストを撮像の種類ごとに記憶し、準備撮像の種類を選択する操作を操作者から受け付けた場合に、選択された準備撮像の種類に対応するパラメータリストに基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、そのうえで準備撮像を行うようにしている。以下では、かかる計算機システム10が有する機能について具体的に説明してゆく。
【0040】
まず、図2を用いて、計算機システム10の詳細な構成について詳細に説明する。図2は、計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。同図は、表示部15、制御部17および記憶部14が有する構成のうち本発明に特に関連する構成、および、インタフェース部11、記憶部14、表示部15、入力部16、制御部17の相互関係を示している。
【0041】
記憶部14は、同図に示すように、本発明に特に関連する情報として、検査情報14aと、パラメータリスト14bとを記憶している。
【0042】
検査情報14aは、各種撮像の種類に応じた撮像条件を示す情報であり、撮像の種類やスライス(断面)の位置、スライス厚、スライス数など、撮像条件を構成する各種撮像パラメータに設定された値を含んでいる。
【0043】
パラメータリスト14bは、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した情報である。具体的には、パラメータリスト14bは、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像により最適な値を探索して設定する第一の撮像パラメータと、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータと、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な第三の撮像パラメータの三種類に分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報である。
【0044】
ここで、本実施例では、第三の撮像パラメータについては、準備撮像用にあらかじめ決められた固定値を設定することとする。そのため、本実施例では、パラメータリスト14bが、第三の撮像パラメータについては、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ決められた固定値を撮像パラメータごとにさらに定義している。なお、以下では、パラメータリスト14bに含まれる第一のパラメータを「可変パラメータ」と呼び、第二のパラメータを「複製パラメータ」と呼び、第三のパラメータを「固定パラメータ」と呼ぶ。
【0045】
なお、かかるパラメータリスト14bは、撮像の種類ごとにあらかじめ記憶部14に記憶されており、各パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、TRやTE、フリップ角、遅延時間など、パルスシーケンスの組み立てに関するものや、中心周波数や送信ゲインなど、装置の設定状態に関するものが含まれている。
【0046】
以下、パラメータリスト14bによって定義される値の設定方法について、撮像パラメータの分類ごとに具体的に説明する。なお、ここでは、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bを例にあげて説明する。図3は、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bを示す図である。同図に示すように、パラメータリスト14bには、「撮像シーケンス種」、「次元」、「TR」、「TE」、「TI」など、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータに関する情報が含まれている。
【0047】
そして、パラメータリスト14bに含まれる各撮像パラメータは、可変パラメータ、複製パラメータ、固定パラメータに分類されている。前述したように心筋遅延造影では、TIの時間を変化させて準備撮像を行う必要がある。そのため、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bでは、同図に示すように、「TI」が可変パラメータに分類される。また、「撮像シーケンス種」や「TR」、「TE」、「Flip角」などが複製パラメータに分類され、「次元」や「NAQ」、「位相エンコード数」、「リードアウト点数」などが固定パラメータに分類される。
【0048】
このうち、複製パラメータに分類された撮像パラメータについては、準備撮像が行われる際に本撮像用の撮像条件の撮像パラメータから値が複製される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、「撮像シーケンス種」や「TR」、「TE」、「Flip角」などについては、本撮像用の撮像条件の撮像パラメータから値が複製されることになる。
【0049】
また、可変パラメータに分類された撮像パラメータについては、パラメータリスト14bによって、準備撮像において当該可変パラメータに最初に設定される値を示す「初期値」、準備撮像において当該パラメータの値を変化させる際の変化量を示す「増分」、準備撮像を行う回数を示す「繰り返し回数」がさらに定義される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、初期値として「220」が、増分として「30」が、繰り返し回数として「4」が定義されている。これにより、心筋遅延造影の準備撮像が行われる際には、4回繰り返して撮像が実行されることになり、「TI」の値は1回目が「220」となり、2回目が「250」となり、3回目が「280」となり、4回目が「310」となる。
【0050】
なお、ここでは、可変パラメータの値を変化させる際の変化量を示す情報がパラメータリスト14bに設定されている場合について説明するが、同様の情報が、操作者によって入力部16を介して入力されることとしてもよい。
【0051】
また、固定パラメータに分類された撮像パラメータについては、パラメータリスト14bに準備撮像用に設定される固定値がさらに定義される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、「次元」については「2」が、「NAQ」については「1」が、「位相エンコード数」については「80」が、「リードアウト点数」については「128」が、それぞれ固定値として定義されている。これにより、心筋遅延造影の準備撮像が行われる際には、「次元」に「2」が、「NAQ」に「1」が、「位相エンコード数」に「80」が、「リードアウト点数」に「128」が、それぞれ設定されることになる。
【0052】
図2に戻って、表示部15は、同図に示すように、本発明に特に関連する機能部として、撮像条件編集表示部15aと、位置決め表示部15bとを有している。
【0053】
撮像条件編集表示部15aは、本撮像用の撮像条件に関する情報を表示する表示部である。具体的には、この撮像条件編集表示部15aは、後述する撮像条件編集/撮像位置決め部17aによる制御のもと、本撮像用の撮像条件に関する情報を撮像パラメータごとに表示する領域や、準備撮像の種類の選択、準備撮像の開始指示などを操作者から受け付けるためのユーザインタフェースを有する撮像条件編集画面を表示部15に表示する。
【0054】
図4は、撮像条件編集表示部15aによって表示される撮像条件編集画面20の一例を示す図である。同図に示すように、例えば、撮像条件編集表示部15aによって表示される撮像条件編集画面20は、「TR」や「スライス枚数」、「スライス厚」、「積算回数」などの撮像パラメータごとに、設定されている値を表示する領域や、準備撮像の種類(例えば、遅延造影や中心周波数、脂肪抑制など)の選択を受け付けるための準備撮像選択プルダウンメニュー21や、準備撮像の開始指示を受け付けるための準備撮像開始ボタン22などを有する。
【0055】
操作者は、入力部16を介して、撮像条件編集画面20に表示される撮像パラメータにそれぞれ値を設定することによって、本撮像用の撮像条件を設定することができる。また、操作者は、撮像条件編集画面20に表示される準備撮像選択プルダウンメニュー21を操作することによって、準備撮像の種類を選択することができ、準備撮像開始ボタン22を押下することによって、準備撮像の開始指示を行うことができる。
【0056】
図2に戻って、位置決め表示部15bは、撮像されるスライスの位置を決める際の基準となる位置決め画像を表示するとともに、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、位置決め画像上にスライスを表す図形を表示する表示部である。なお、この位置決め表示部15bは、操作者によって撮像条件が変更された場合には、撮像条件編集表示部15aによる撮像条件の表示と連動して、スライスを表す図形の位置や形状を変化させる。
【0057】
制御部17は、同図に示すように、特に本発明に関連する機能部として、撮像条件編集/撮像位置決め部17aと、撮像パラメータ限界計算部17bと、パルスシーケンス実行データ生成部17cとを有している。
【0058】
撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、撮像条件の編集やスライスの位置決めに関する情報を受け付ける処理部である。具体的には、この撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、まず、入力部16を介して、撮像条件編集画面20の表示要求を受け付けると、撮像条件編集表示部15aを制御して撮像条件編集画面20を表示させる。
【0059】
そして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、本撮像用の撮像条件を設定する操作を受け付けた場合には、撮像条件編集画面20において撮像パラメータに設定された値を撮像パラメータごとに撮像パラメータ限界計算部17bに引き渡し、それに応じて、撮像パラメータ限界計算部17bから撮像パラメータの限界値が応答されると、撮像条件編集表示部15aを制御して、応答された限界値を撮像パラメータごとに撮像条件編集画面20に表示させる。
【0060】
また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、準備撮像の種類を選択する操作を受け付けた場合には、撮像パラメータ限界計算部17bに対して、その時点で撮像条件編集表示部15aに表示されている各撮像パラメータの値を引き渡すとともに、選択された種類の準備撮像の撮像条件を生成するよう指示する。
【0061】
また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、準備撮像が行われた後に、準備撮像によって得られた複数の画像を表示部15に表示するとともに、入力部16を介して、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付ける。そして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、画像を選択する操作を受け付けた場合には、選択された画像の付帯情報に含まれる撮像条件から可変パラメータの値を取得し、取得した可変パラメータの値を、後述する撮像パラメータ限界計算部17bに対して引き渡すとともに、その値を本撮像用の撮像条件に設定するよう指示する。
【0062】
撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像パラメータの限界値の計算や、準備撮像用の撮像条件の生成を行う処理部である。具体的には、この撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから撮像パラメータの値が引き渡されると、その撮像パラメータの値に依存する他の撮像パラメータの限界値を計算する。そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、計算した撮像パラメータの限界値を撮像条件編集/撮像位置決め部17aに返却するとともに、その都度、引き渡された撮像パラメータの値および計算した撮像パラメータの値を、本撮像用の撮像条件を示す検査情報14aとして記憶部14に記憶させる。
【0063】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから準備撮像の撮像条件を生成するよう指示された場合には、その撮像条件の種類に対応するパラメータリスト14bを記憶部14から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、生成した準備撮像用の撮像条件を検査情報14aとして記憶部14に記憶させる。
【0064】
ここで、準備撮像用の撮像条件の生成について具体的に説明すると、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータに値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成する。
【0065】
すなわち、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについては、パラメータリスト14bによって定義されている固定値を撮像パラメータごとに設定する。また、複製パラメータについては、撮像パラメータ限界計算部17bは、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件から撮像パラメータごとに値を複製する。さらに、可変パラメータについては、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bの「初期値」に設定されている値から、「増分」に設定されている変化量だけ変化させながら、「繰り返し回数」に設定されている回数だけ準備撮像が繰り返されるように値を設定する。
【0066】
このように、操作者によって準備撮像の種類が選択された場合に、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bに基づいて各撮像パラメータに値を設定することによって、所望の準備撮像用の撮像条件が自動的に生成される。
【0067】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから本撮像用の撮像条件に設定するよう指示された場合には、その指示とともに引き渡された可変パラメータの値を、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件に設定する。
【0068】
ここで、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像によって得られた画像に基づいて決められた可変パラメータの値を本撮像用の撮像条件に設定することによって、準備撮像に続いて行われる本撮像用の最終的な撮像条件が設定される。
【0069】
パルスシーケンス実行データ生成部17cは、記憶部14に記憶されている検査情報14aを用いて撮像を実行させる処理部である。具体的には、このパルスシーケンス実行データ生成部17cは、入力部16を介して、準備撮像の開始指示を受け付けた場合には、記憶部14に検査情報14aとして記憶されている準備撮像の撮像条件に基づいて、パルスシーケンスを組み立ててパルスシーケンス実行データ17dを生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cは、インタフェース部11を介して、生成したパルスシーケンス実行データ17dを送ることによって、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9に準備撮像を実行させる。
【0070】
同様に、このパルスシーケンス実行データ生成部17cは、入力部16を介して、本撮像の開始指示を受け付けた場合には、記憶部14に検査情報14aとして記憶されている本撮像の撮像条件に基づいてパルスシーケンス実行データ17dを生成し、生成したパルスシーケンス実行データ17dを送ることによって、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9に本撮像を実行させる。
【0071】
次に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。なお、ここでは、従来の撮像と本発明による撮像とを対比するため、従来の撮像の処理手順について説明した後に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。また、ここでは、準備撮像を行うことによって心筋遅延造影の最適な反転回復時間TIを求めたうえで本撮像を行う場合を例に挙げて説明する。
【0072】
まず、従来の撮像の処理手順について説明する。図5は、従来の撮像の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、従来の撮像では、まず、操作者が、準備撮像の選択を行う(ステップS101)。ここでは、操作者は、本撮像に使用する予定のものと同じパルスシーケンス種を選択する。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、反転パルスを併用したセグメント分割型のグラディエントフィールドエコー法を選択する。
【0073】
続いて、操作者は、準備撮像の撮像条件編集を行う(ステップS102)。例えば、心筋遅延の準備撮像では、TIを変えながら複数回繰り返して撮像が行われるので、検査全体の時間が短くなるように撮像条件を設定するのが望ましい。そのため、操作者は、コントラストの変化がわかる範囲で空間分解能やS/N比を犠牲にして撮像時間を短縮するように、本撮像が3次元撮像の場合でも2次元撮像を選択し、位相エンコード数、スライス枚数や加算回数も本撮像より少なく設定する。
【0074】
この時、操作者は、上記の設定によるS/N比の低下を補うために、多くの場合、スライス厚を診断に供する本撮像のものよりも厚く設定する。さらに、操作者は、準備撮像において変化させるTIのT1コントラストに対する影響が準備撮像と本撮像とで同じになるように、繰り返し時間TRやエコー時間TE、フリップ角、脂肪抑制パルスやプリサチュレーションパルスの数およびフリップ角などは、本撮像で使用するものと同じとなるように注意しながら設定する必要がある。
【0075】
また、セグメント分割型のグラディエントフィールドエコー法では、反転パルスからk空間中心のデータを収集するまでの時間によりコントラストが変化する。そのため、操作者は、1セグメントあたりのエンコード数とセグメント内のエコー収集順序(セグメントタイプ)も本撮像と同じにしなければならない。このように、撮像パラメータの中には、パルスシーケンスの種類に固有な値を複製する必要があるものも存在する。
【0076】
こうして、操作者によって準備撮像の撮像条件が設定された後に、MRI装置が、設定された撮像条件に基づいて準備撮像を行う(ステップS103)。
【0077】
そして、準備撮像によって複数の画像が撮像されると、操作者が、それらの画像に基づいて最適な可変パラメータの値を決定する(ステップS104)。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、TIの異なる複数の画像の中から正常心筋が最も低信号になっている画像を選択し、選択した画像におけるTIの値を、最適なTIの値として決定する。
【0078】
続いて、操作者は、本撮像の撮像条件編集を行う(ステップS105)。ここでは、操作者は、検査目的や診断に要求される画質に応じて、撮像の次元(2Dまたは3D)、空間分解能、加算回数、スライス枚数などを設定する。
【0079】
また、操作者は、準備撮像と本撮像とで同じ値を設定する撮像パラメータについて、準備撮像と同じ値となっているか否かを確認し、異なっていた場合は、準備撮像の撮像条件から値を複製する(ステップS106)。
【0080】
さらに、操作者は、準備撮像によって得られた画像に基づいて決定した可変パラメータの値を本撮像の撮像条件に設定する(ステップS107)。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、準備撮像によって得られた画像に基づいて決定したTIの値を本撮像の撮像条件に設定する。
【0081】
こうして、操作者によって本撮像の撮像条件が設定された後に、MRI装置が、設定された撮像条件に基づいて本撮像を行う(ステップS108)。
【0082】
以上、従来の撮像の処理手順について説明したが、上記の処理手順において、ステップS101、S102、S104、S105、S106およびS107の手順は、操作者によって手動で行われる。特に、ステップS105およびS106における撮像パラメータの設定は、撮像に使用するパルスシーケンスに依存するため、各パラメータの可変パラメータに対する影響を熟知したうえで間違えのないように操作を行う必要があり、非常に手間と時間を要する作業であった。
【0083】
次に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。図6は、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、本実施例に係るMRI装置100による撮像では、まず、操作者が、準備撮像を必要としない通常の撮像と同様に、本撮像の撮像条件編集を行う(ステップS201)。
【0084】
続いて、操作者は、準備撮像の種類を選択する(ステップS202)。具体的には、操作者は、撮像条件編集表示部15aによって表示されるユーザインタフェース(例えば、図4に示した準備撮像選択プルダウンメニュー21など)を操作することによって、準備撮像を選択する。ここで、準備撮像の種類の選択を可能にしたのは、ひとつのパルスシーケンスにおいても複数の用途があり、例えばこの例でセグメント分割型の3Dグラディエントフィールドエコー法においても遅延造影撮像や冠動脈撮像などが可能であり、それぞれにおいて準備撮像で最適化するパラメータが異なるためである。
【0085】
こうして、操作者によって準備撮像が選択されると、MRI装置100では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、入力部16を介して、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された撮像条件の種類に対応するパラメータリスト14bを記憶部14から取得する(ステップS203)。
【0086】
そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータに値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成する(ステップS204)。具体的には、まず、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについて、パラメータリスト14bによって定義された固定値を、準備撮像用の撮像条件に撮像パラメータごとに設定する。
【0087】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、複製パラメータについて、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件から準備撮像用の撮像条件に、撮像パラメータごとに値を複製する(ステップS205)。
【0088】
さらに、撮像パラメータ限界計算部17bは、可変パラメータについて、パラメータリスト14bの「初期値」、「増分」および「繰り返し回数」に基づいて、繰り返し回数に設定されている回数だけ準備撮像が繰り返されるように値を設定する(ステップS206)。こうして、本実施例に係るMRI装置100では、自動的に準備撮像用の撮像条件が生成される。
【0089】
その後、操作者によって準備撮像の開始指示が行われると、MRI装置100では、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、設定された準備撮像の撮像条件に基づいて、所定の回数繰り返して準備撮像を実行させる(ステップS207)。
【0090】
そして、準備撮像によって撮像された複数の画像が表示部15に表示されると、操作者が、その中から撮像の目的に最も適した画像を選択する(ステップS208)。
【0091】
操作者によって画像が選択されると、MRI装置100では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、入力部16を介して、当該画像を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された画像に対応する可変パラメータの値を本撮像用の撮像条件に設定する(ステップS209)。
【0092】
ここで、撮像条件編集/撮像位置決め部17aおよび撮像パラメータ限界計算部17bによって本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程について具体的に説明する。図7は、本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程を説明するための図である。同図は、準備撮像として心筋遅延造影が実行された場合を示しており、TIの値を220ミリ秒から30ミリ秒ずつ変化させながら4回繰り返して撮像が実行された場合を示している。
【0093】
この場合、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、例えば、同図(a)に示すように、TIの値を220ミリ秒として撮像された左室心筋の画像31と、TIの値を250ミリ秒として撮像された左室心筋の画像32と、TIの値を280ミリ秒として撮像された左室心筋の画像33と、TIの値を310ミリ秒として撮像された左室心筋の画像34とを、それぞれ表示部15に表示する。
【0094】
ここで、操作者が、心筋の画素値が最も低い画像、この場合は、画像33を選択したとする。その場合、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、画像33を選択する操作を受け付けると、画像33の付帯情報に含まれる撮像条件からTIの値として280ミリ秒を取得する。
【0095】
そして、撮像パラメータ限界計算部17bが、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件に含まれる撮像パラメータのうちTIの値を、280ミリ秒に設定する。これにより、同図(b)に示すように、撮像条件編集表示部15aによって撮像条件編集画面20において、TIの値を示す領域23に「280」が表示される。
【0096】
こうして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aおよび撮像パラメータ限界計算部17bによって可変パラメータが設定されて、本撮像用の撮像条件が最終的に設定される。
【0097】
図6に戻って、その後、操作者によって本撮像の開始指示が行われると、MRI装置100では、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、設定された準備撮像の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる(ステップS210)。
【0098】
このように、本実施例に係るMRI装置100によれば、本撮像に先立って準備撮像を行うことが必要な検査において、操作者は本撮像の条件編集だけを行った後に準備撮像開始を指示するだけでよいため、準備撮像と本撮像間で複製しなければならないパラメータを間違えることがなくなる。その結果、撮像に関する操作が簡便になり、撮像の成功率が向上する。また、操作を自動化することによって全検査に要する時間が短縮され、装置の稼働率が向上し、患者の負担の軽減することができる。さらに、操作者の教育に要する時間を省略することも可能である。
【0099】
なお、ここでは、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の一例として、心筋遅延造影を例にあげて説明したが、本実施例に係るMRI装置100では、他の撮像法についても、その撮像法に対応するパラメータリスト14bをあらかじめ記憶部14に記憶させておくことによって、準備撮像のパルスシーケンスを自動的に生成することが可能である。
【0100】
例えば、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の他の一例として、非造影MR血管撮像法の一手法である「FBI(Fresh Blood Imaging)法」がある。このFBI法とは、ECG(electrocardiogram;心電図)同期あるいは脳波同期によって、所定の心時相ごとに心臓から拍出されるフレッシュで安定した速い流速の血流をスキャンすることによって、造影剤を投与せずに血管を確実に描出することを可能にした手法である。具体的には、FBI法は、血液のT2成分を強調した水(血液)強調画像を得るために、心電計や脳波計により収集された被検体の心時相を表す信号に同期して、所定スライスエンコード量分のエコー信号を収集する動作を、複数心拍ごとに繰り返す三次元スキャンを実行するイメージング法である。
【0101】
かかるFBI法において、血管の描出能に優れた画像を得るためには、被検体から発せられるエコー信号(磁気共鳴信号)が最も強くなるように撮像条件を設定する必要がある。そして、このエコー信号の強さは、R波からの遅延時間(Td)に依存することが知られている。そのため、FBI法では、準備撮像を行うことによって最適な遅延時間(動静脈両方のエコー信号の強さが大きい遅延時間(第一の遅延時間とする)、静脈のエコー信号の強さが大きく動脈のエコー信号が小さい遅延時間(第二の遅延時間とする)、あるいは、第一および第二の遅延時間の両方)が決定される。この最適な遅延時間を決定するために遅延時間(Td)を変化させながら行われる準備撮像を「ECG−Prep」と呼ぶ。
【0102】
また、FBI法を発展させた手法として、リードアウト用傾斜磁場パルスの印加方向を血流の方向に合わせたうえで、血流信号を抑制する程度を制御するためのディフェージングパルスをリードアウト用傾斜磁場パルスの前後に付加することによって、下肢の血管のように血流の流速が遅い血管を高画質で撮像する手法もある。この手法では、血流信号を抑制する程度を制御するためのディフェージングパルスの最適な強度が準備撮像によって決定される。この最適な制御パルスの強度を決定するために制御パルスの強度を変化させながら行われる準備撮像を「Flow−Prep」と呼ぶ。
【0103】
なお、上述したFBI法による撮像では、通常、本撮像は、3次元高速スピンエコー法を用いて行われるが、目的の血管の描出のされ方は、k空間を埋めるデータ収集の順序やタイミングに依存するため、撮像条件として設定される撮像パラメータの中には、準備撮像と本撮像とで同じ値を使用することが望ましいものが存在する。それらの撮像パラメータは、必ずしも、心筋遅延造影において用いられるセグメント分割型のグラディエントエコー法と同じであるとは限らない。
【0104】
以上をふまえ、FBI法の撮像において用いられるECG−Prep用のパラメータリスト14bおよびFlow−Prep用のパラメータリスト14bについて説明する。図8は、ECG−Prep用のパラメータリスト14bの一例を示す図であり、図9は、Flow−Prep用のパラメータリスト14bの一例を示す図である。
【0105】
まず、ECG−Prepでは、遅延時間を変化させて準備撮像を行うため、図8に示すように、ECG−Prep用のパラメータリスト14bでは、「遅延時間」が可変パラメータに分類される。また、心筋遅延造影の場合と異なり、「TI」や「ETS」、「エコー数」などが複製パラメータに分類される。
【0106】
一方、Flow−Prepでは、ディフェージングパルスの強度を変化させて準備撮像を行うため、図9に示すように、Flow−Prep用のパラメータリスト14bでは、「Dephase強度」が可変パラメータとして分類される。また、心筋遅延造影の場合と異なり、「TI」や「ETS」、「エコー数」などが複製パラメータに分類される。
【0107】
以上、FBI法による非造影MR血管撮像について説明したが、この他にも、例えば、冠動脈撮像において、最適な中心周波数(f0)を決定するために準備撮像が行われる場合がある。図10は、中心周波数設定用のパラメータリスト14bの一例を示す図である。この場合、中心周波数を変化させて準備撮像を行うため、同図に示すように、中心周波数設定用のパラメータリスト14bでは「中心周波数」が可変パラメータに分類される。
【0108】
このように、本実施例に係るMRI装置100では、撮像法に対応するパラメータリスト14bをあらかじめ記憶部14に記憶させておくことによって、準備撮像のパルスシーケンスが自動的に生成される。そのため、本実施例に係るMRI装置100によれば、各種の撮像法について、準備撮像を必要としない通常の撮像とほぼ同じ操作を行うことによって全検査を終えることが可能である。
【0109】
上述してきたように、本実施例では、記憶部14が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリスト14bを撮像の種類ごとに記憶する。また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、生成された撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる。したがって、本実施例では、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができる。
【0110】
また、本実施例では、パラメータリスト14bは、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像により最適な値を探索して設定する可変パラメータと、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する複製パラメータと、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な固定パラメータとに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータの値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成するので、多種多様な数多くの撮像パラメータを撮像条件として設定する必要がある撮像において、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0111】
また、本実施例では、パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれるので、TRやTE、フリップ角、遅延時間など、パルスシーケンスに関する撮像パラメータについて最適な値を決定するための準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0112】
また、本実施例では、パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれるので、中心周波数や送信ゲインなど、装置の設定状態に関する撮像パラメータについて最適な値を決定するための準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0113】
また、本実施例では、パラメータリスト14bは、固定パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ決められた固定値を撮像パラメータごとにさらに定義した情報であり、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについては、パラメータリスト14bによって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定するので、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な撮像パラメータについては固定値を設定する必要がある準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0114】
また、本実施例では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、準備撮像によって得られた複数の画像を表示部15に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aによって画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた可変パラメータの値を、本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる可変パラメータに設定するので、操作者が準備撮像によって撮像された画像の中から所望の画像を選ぶだけで、本撮像用の可変パラメータの値が自動的に設定される。これにより、従来は手動で値を入力することによって行われていた可変パラメータの設定に関する作業を容易な操作で行うことが可能になる。
【0115】
なお、本実施例では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bに基づいて、準備撮像用の撮像条件を生成するよう構成した。
【0116】
しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、あらかじめ検査部位および撮像(検査)の種類ごとに撮像条件を分類しておき、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、本撮像用の撮像条件を操作者から受け付ける際に、まずは検査部位および撮像の種類を選択させたうえで撮像条件を編集させるようにしてもよい。このように、あらかじめ操作者に本撮像の種類を選択させることによって、その本撮像の種類から、必要な準備撮像の種類が自動的に決まるので、準備撮像の種類を選択する操作を撮像条件編集/撮像位置決め部17aが受け付ける工程を省略することができる。
【0117】
この場合には、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aによって受け付けられた準備撮像の種類ではなく、本撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。
【0118】
これにより、本撮像の撮像条件を設定した後に、撮像の開始指示を行うだけで自動的に準備撮像が行われることになるので、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作をより容易な操作とすることが可能になる。例えば、本撮像としてFBI法による撮像を行う場合には、準備撮像で決定する必要がある可変パラメータとして、R波からの遅延時間(Td)と、ディフェージングパルスの強度とをそれぞれ設定しておけば、ECG−Prep、Flow−Prep、本撮像の順に、一連の撮像を自動的に連続して実行することが可能になる。
【0119】
また、本実施例では、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定するようにしてもよい。
【0120】
その場合、具体的には、パラメータリスト14bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義する。図11は、撮像位置を設定する場合のパラメータリスト14bの一例を示す図である。同図に示すように、例えば、パラメータリスト14bは、図3に示したものと同様の撮像パラメータに関する情報を含み、さらに「撮像位置」を表す情報を含んでいる。この撮像位置を表す情報は、パラメータリスト14bにおいて、複製パラメータに分類される。
【0121】
さらに、この場合には、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像用の撮像条件を生成する際に、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する。ここで、撮像パラメータ限界計算部17bによる撮像位置の設定について具体的に説明する。図12および13は、撮像パラメータ限界計算部17bによる撮像位置の設定を説明するための図である。なお、ここでは、撮像位置を表す情報として、磁場中心を始点とするとともに撮像領域を表すスライス面に対して垂直に交わる法線ベクトル、および、撮像領域の中心を用いた場合について説明する。
【0122】
例えば、図12に示すように、本撮像用の撮像領域R1として、スライス厚が40mmの撮像領域が被検体の左胸付近に設定されていたとする。そして、この撮像領域R1の位置は、磁場中心MCを始点とするとともに撮像領域R1となるスライス面に対して垂直に交わる法線ベクトルV、および、撮像領域の中心Cによって表されていたとする。
【0123】
この場合、撮像パラメータ限界計算部17bは、準備撮像用の撮像位置R2を設定するときには、まず、磁場中心MCの座標、および、本撮像用の撮像位置を表す法線ベクトルVに基づいて、装置座標に対する撮像領域R2の傾きを算出する。また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像領域R2の中心の座標を撮像領域R1の中心Cと同じ座標に設定する。続いて、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bを参照して、撮像領域のスライス厚を決定する。例えば、図11に示したパラメータリスト14bが用いられていた場合には、スライス厚が固定パラメータであり、その固定値が10mmであるので、撮像パラメータ限界計算部17bは、図13に示すように撮像領域のスライス厚を10mmに設定する。これにより、準備撮像用の撮像領域R2の位置が自動的に設定される。
【0124】
このように、パラメータリスト14bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、撮像パラメータ限界計算部17bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定することによって、準備撮像における撮像位置を自動的に設定することができる。したがって、磁気共鳴イメージング装置100の操作性をさらに向上させることができる。
【0125】
なお、本実施例において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法は、撮像条件を構成する複数の撮像パラメータのうち一部の撮像パラメータに設定される値を準備撮像により最適化したうえで本撮像を行う場合に有用であり、特に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することが求められる場合に適している。
【符号の説明】
【0127】
100 MRI装置
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信RFコイル
7 送信部
8 受信RFコイル
9 受信部
10 計算機システム
11 インタフェース部
12 データ収集部
13 データ処理部
14 記憶部
14b パラメータリスト
14a 検査情報
15 表示部
15a 撮像条件編集表示部
15b 位置決め表示部
16 入力部
17 制御部
17a 撮像条件編集/撮像位置決め部
17b 撮像パラメータ限界計算部
17c パルスシーケンス実行データ生成部
17d パルスシーケンス実行データ
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法に関し、特に、撮像に用いるパルスシーケンスの撮像パラメータや装置の設定状態を最適化させるための準備撮像によって、より高詳細な画像を提供できる磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ)における磁気共鳴イメージング法は、対象原子核スピンの集団が、磁場中に置かれた場合に、原子核ごとに固有の磁気モーメントと存在磁場強度とに応じた特定の周波数(共鳴周波数)で回転する高周波磁場に共鳴し、その緩和過程で信号(磁気共鳴信号)を発生する現象を利用して、物質の化学的および物理的な微視的情報を取得する方法である。
【0003】
かかる磁気共鳴イメージング法において、画像のコントラストや空間分解能、画像S/N比、撮像時間などは、例えばパルスシーケンスの種類や、その撮像パラメータである繰り返し時間(TR:Repetition Time)、エコー時間(TE:Echo Time)、反転回復時間(TI:Inversion Time)、励起用高周波磁場パルスのフリップ角(FA:Flip Angle)、心電図より得られたR波からデータ収集までの遅延時間、装置の高周波磁場の中心周波数f0などに依存する。そのため、MRI装置は、医用機器の中でも特に多くの撮像条件の設定が必要な装置となっている。
【0004】
ここで、上記の撮像パラメータの中には、撮像法によって、被験者の状態や装置の状態に依存して最適な値を設定する必要のあるものが存在する。このようなパラメータについては、画質を維持するために、本撮像の直前に被験者が装置に入った状態でテスト撮像を行って、最適な値を探索することが行われている。以下では、実際に診断に使用する画像を得るための撮像を「本撮像」、本撮像の特定撮像パラメータを最適化するために本撮像に先立って実行するテスト撮像を「準備撮像」と呼ぶこととする。
【0005】
例えば、非特許文献1には、心筋遅延造影法に関して、「心筋のT1緩和時間は造影剤投与量や投与後の時間によって変動するため、正常心筋の信号強度がほぼゼロになるインバージョン時間(TI)をテスト撮像して選んだ後、IR−MRIの検査を行う。」と記載されている。また、特許文献1には、非造影アンギオグラフィにおいて心電同期タイミングやフローボイド現象に関わる傾斜磁場パルス強度を最適化するための準備撮像を行う手法が開示されている。また、非特許文献2には、定常状態自由歳差運動(SSFP:Steady State Free Precession)法による冠状動脈撮像に先立って、装置の中心周波数f0を変更した短時間の撮像を行い、関心領域の画像アーティファクトが最も少なくなる周波数を目視で確認して設定する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−70766号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】佐久間 肇ほか著,「造影MRIによる虚血性心疾患の診断」,INNERVISION(インナービジョン),2000年,第15巻,第13号,p.59−66
【非特許文献2】Deshpande VS et al,“Artifact Reduction in True-FISP Imaging of the Coronary Arteries by Adjusting Imaging Frequency”,Magnetic Resonance in Medicine,2003年,第49巻,第5号,p.803−809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したMRI装置の撮像パラメータは、準備撮像および本撮像についてそれぞれ考えると、以下の3種類に分類することができる。
(1)準備撮像により最適な値を探索し、探索した値を本撮像で使用する撮像パラメータ
(2)上記(1)の可変パラメータの評価に影響を与える撮像パラメータ
(3)本撮像の目的に応じて準備撮像とは異なる値を使用する撮像パラメータ
【0009】
ここで、(2)の撮像パラメータは、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定するものであり、本撮像では、準備撮像で使用した値を複製して使用する必要がある。また、(3)のパラメータは、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能なものであり、本撮像の目的に応じて値を変更しなければならないものや、状況に応じて値を変更してよいもなどがある。しかし、準備撮像では、パラメータの値を変えながら複数の撮像が繰り返して行われるため、全体の撮像時間を短時間で終了させることが望ましく、そのため、(3)の撮像パラメータは、(1)のパラメータの値の決定に影響を与えないもの(例えば、空間分解能など)については、準備撮像用の値として本撮像よりも低い値が設定される場合が多い。
【0010】
操作者は、このような撮像パラメータの分類を理解したうえで、準備撮像および本撮像それぞれの撮像条件を独立にかつ相互の関係を維持して編集する必要がある。しかしながら、これには、十分な知識と経験が必要である。また、臨床の場において常に高い診断能を得るためには、常に正しい撮像条件を設定することが必要であり、検査の時間短縮、省力化、品質および再現性の向上を図るためには、このような煩雑な操作が大きな妨げとなっている。
【0011】
本発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得する定義情報取得部と、前記定義情報取得部により取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する準備撮像条件生成部と、前記準備撮像条件生成部により生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる準備撮像制御部と、前記準備撮像制御部による前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する本撮像条件設定部と、前記本撮像条件設定部により設定された撮像パラメータを含む本撮像用の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる本撮像制御部と、を備える。
【0013】
また、本発明の他の態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を使用する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類した情報を記憶する記憶部と、本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値を入力するための入力部と、前記入力部により入力された前記本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値、および、前記記憶部によって記憶された複数の撮像パラメータを分類した情報に基づいて、準備撮像および本撮像を実行させる制御部と、を備える。
【0014】
また、本発明の他の態様に係る撮像条件生成方法は、磁気共鳴イメージング装置の撮像条件を生成する撮像条件生成方法であって、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶部に格納し、前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得し、取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させ、前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する、ことを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、心筋遅延造影用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図4】図4は、撮像条件編集表示部によって表示される情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、従来の撮像の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施例に係るMRI装置による撮像の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程を説明するための図である。
【図8】図8は、ECG−Prep用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図9】図9は、Flow−Prep用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図10】図10は、中心周波数設定用のパラメータリストの一例を示す図である。
【図11】図11は、撮像位置を設定する場合のパラメータリスト14bの一例を示す図である。
【図12】撮像パラメータ限界計算部による撮像位置の設定を説明するための図(1)である。
【図13】撮像パラメータ限界計算部による撮像位置の設定を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の一例として、心筋遅延造影法による撮像(以下、「心筋遅延造影」と呼ぶ)を例にあげて説明を行う。
【0018】
ここで、心筋遅延造影とは、非特許文献1などに示されているように、T1緩和時間を短縮する効果がある造影剤を被検体に注入して、15〜20分後に心臓のT1強調画像を撮像することによって、心筋梗塞部位などを高信号に描出する撮像法である。かかる心筋遅延造影において、正常心筋と梗塞巣とのコントラストを明瞭にするためには、正常心筋の信号値ができるだけゼロに近くなるような反転回復時間(TI)を撮像条件として設定する必要がある。このTIの至適な時間は、造影剤の投与量や投与後の時間によって変わるため、心筋遅延造影では、本撮像に先立って、TIの時間を変化させた準備撮像が行われる。
【実施例】
【0019】
最初に、図1を用いて、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示す図である。同図に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、計算機システム10を備える。
【0020】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0021】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0022】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0023】
傾斜磁場電源3は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0024】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備えた装置であり、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0025】
寝台制御部5は、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0026】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0027】
送信部7は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する装置であり、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として、送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0028】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、上記の高周波磁場の影響によって被検体から放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0029】
受信部9は、計算機システム10から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴信号データを生成する装置である。この受信部9は、磁気共鳴信号データを生成すると、その磁気共鳴信号データを計算機システム10に送信する。
【0030】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部11、データ収集部12、データ処理部13、記憶部14、表示部15、入力部16および制御部17を有している。
【0031】
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7および受信部9に接続されており、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する処理部である。
【0032】
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信される磁気共鳴信号データを収集する処理部である。データ収集部12は、磁気共鳴信号データを収集すると、収集した磁気共鳴信号データを記憶部14に記憶させる。
【0033】
データ処理部13は、記憶部14に記憶されている磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する処理部である。
【0034】
記憶部14は、データ収集部12によって収集された磁気共鳴信号データと、データ処理部13によって生成された画像データなどを、被検体Pごとに記憶する記憶部である。
【0035】
表示部15は、制御部17による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する装置である。この表示部15としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0036】
入力部16は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける装置である。この入力部16としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0037】
制御部17は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100を総括的に制御する処理部である。
【0038】
以上、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例に係るMRI装置100では、計算機システム10によって、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができるようにしている。
【0039】
具体的には、本実施例に係るMRI装置100では、計算機システム10が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリストを撮像の種類ごとに記憶し、準備撮像の種類を選択する操作を操作者から受け付けた場合に、選択された準備撮像の種類に対応するパラメータリストに基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、そのうえで準備撮像を行うようにしている。以下では、かかる計算機システム10が有する機能について具体的に説明してゆく。
【0040】
まず、図2を用いて、計算機システム10の詳細な構成について詳細に説明する。図2は、計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。同図は、表示部15、制御部17および記憶部14が有する構成のうち本発明に特に関連する構成、および、インタフェース部11、記憶部14、表示部15、入力部16、制御部17の相互関係を示している。
【0041】
記憶部14は、同図に示すように、本発明に特に関連する情報として、検査情報14aと、パラメータリスト14bとを記憶している。
【0042】
検査情報14aは、各種撮像の種類に応じた撮像条件を示す情報であり、撮像の種類やスライス(断面)の位置、スライス厚、スライス数など、撮像条件を構成する各種撮像パラメータに設定された値を含んでいる。
【0043】
パラメータリスト14bは、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した情報である。具体的には、パラメータリスト14bは、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像により最適な値を探索して設定する第一の撮像パラメータと、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータと、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な第三の撮像パラメータの三種類に分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報である。
【0044】
ここで、本実施例では、第三の撮像パラメータについては、準備撮像用にあらかじめ決められた固定値を設定することとする。そのため、本実施例では、パラメータリスト14bが、第三の撮像パラメータについては、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ決められた固定値を撮像パラメータごとにさらに定義している。なお、以下では、パラメータリスト14bに含まれる第一のパラメータを「可変パラメータ」と呼び、第二のパラメータを「複製パラメータ」と呼び、第三のパラメータを「固定パラメータ」と呼ぶ。
【0045】
なお、かかるパラメータリスト14bは、撮像の種類ごとにあらかじめ記憶部14に記憶されており、各パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、TRやTE、フリップ角、遅延時間など、パルスシーケンスの組み立てに関するものや、中心周波数や送信ゲインなど、装置の設定状態に関するものが含まれている。
【0046】
以下、パラメータリスト14bによって定義される値の設定方法について、撮像パラメータの分類ごとに具体的に説明する。なお、ここでは、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bを例にあげて説明する。図3は、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bを示す図である。同図に示すように、パラメータリスト14bには、「撮像シーケンス種」、「次元」、「TR」、「TE」、「TI」など、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータに関する情報が含まれている。
【0047】
そして、パラメータリスト14bに含まれる各撮像パラメータは、可変パラメータ、複製パラメータ、固定パラメータに分類されている。前述したように心筋遅延造影では、TIの時間を変化させて準備撮像を行う必要がある。そのため、心筋遅延造影用のパラメータリスト14bでは、同図に示すように、「TI」が可変パラメータに分類される。また、「撮像シーケンス種」や「TR」、「TE」、「Flip角」などが複製パラメータに分類され、「次元」や「NAQ」、「位相エンコード数」、「リードアウト点数」などが固定パラメータに分類される。
【0048】
このうち、複製パラメータに分類された撮像パラメータについては、準備撮像が行われる際に本撮像用の撮像条件の撮像パラメータから値が複製される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、「撮像シーケンス種」や「TR」、「TE」、「Flip角」などについては、本撮像用の撮像条件の撮像パラメータから値が複製されることになる。
【0049】
また、可変パラメータに分類された撮像パラメータについては、パラメータリスト14bによって、準備撮像において当該可変パラメータに最初に設定される値を示す「初期値」、準備撮像において当該パラメータの値を変化させる際の変化量を示す「増分」、準備撮像を行う回数を示す「繰り返し回数」がさらに定義される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、初期値として「220」が、増分として「30」が、繰り返し回数として「4」が定義されている。これにより、心筋遅延造影の準備撮像が行われる際には、4回繰り返して撮像が実行されることになり、「TI」の値は1回目が「220」となり、2回目が「250」となり、3回目が「280」となり、4回目が「310」となる。
【0050】
なお、ここでは、可変パラメータの値を変化させる際の変化量を示す情報がパラメータリスト14bに設定されている場合について説明するが、同様の情報が、操作者によって入力部16を介して入力されることとしてもよい。
【0051】
また、固定パラメータに分類された撮像パラメータについては、パラメータリスト14bに準備撮像用に設定される固定値がさらに定義される。例えば、同図に示す心筋遅延造影の例では、「次元」については「2」が、「NAQ」については「1」が、「位相エンコード数」については「80」が、「リードアウト点数」については「128」が、それぞれ固定値として定義されている。これにより、心筋遅延造影の準備撮像が行われる際には、「次元」に「2」が、「NAQ」に「1」が、「位相エンコード数」に「80」が、「リードアウト点数」に「128」が、それぞれ設定されることになる。
【0052】
図2に戻って、表示部15は、同図に示すように、本発明に特に関連する機能部として、撮像条件編集表示部15aと、位置決め表示部15bとを有している。
【0053】
撮像条件編集表示部15aは、本撮像用の撮像条件に関する情報を表示する表示部である。具体的には、この撮像条件編集表示部15aは、後述する撮像条件編集/撮像位置決め部17aによる制御のもと、本撮像用の撮像条件に関する情報を撮像パラメータごとに表示する領域や、準備撮像の種類の選択、準備撮像の開始指示などを操作者から受け付けるためのユーザインタフェースを有する撮像条件編集画面を表示部15に表示する。
【0054】
図4は、撮像条件編集表示部15aによって表示される撮像条件編集画面20の一例を示す図である。同図に示すように、例えば、撮像条件編集表示部15aによって表示される撮像条件編集画面20は、「TR」や「スライス枚数」、「スライス厚」、「積算回数」などの撮像パラメータごとに、設定されている値を表示する領域や、準備撮像の種類(例えば、遅延造影や中心周波数、脂肪抑制など)の選択を受け付けるための準備撮像選択プルダウンメニュー21や、準備撮像の開始指示を受け付けるための準備撮像開始ボタン22などを有する。
【0055】
操作者は、入力部16を介して、撮像条件編集画面20に表示される撮像パラメータにそれぞれ値を設定することによって、本撮像用の撮像条件を設定することができる。また、操作者は、撮像条件編集画面20に表示される準備撮像選択プルダウンメニュー21を操作することによって、準備撮像の種類を選択することができ、準備撮像開始ボタン22を押下することによって、準備撮像の開始指示を行うことができる。
【0056】
図2に戻って、位置決め表示部15bは、撮像されるスライスの位置を決める際の基準となる位置決め画像を表示するとともに、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、位置決め画像上にスライスを表す図形を表示する表示部である。なお、この位置決め表示部15bは、操作者によって撮像条件が変更された場合には、撮像条件編集表示部15aによる撮像条件の表示と連動して、スライスを表す図形の位置や形状を変化させる。
【0057】
制御部17は、同図に示すように、特に本発明に関連する機能部として、撮像条件編集/撮像位置決め部17aと、撮像パラメータ限界計算部17bと、パルスシーケンス実行データ生成部17cとを有している。
【0058】
撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、撮像条件の編集やスライスの位置決めに関する情報を受け付ける処理部である。具体的には、この撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、まず、入力部16を介して、撮像条件編集画面20の表示要求を受け付けると、撮像条件編集表示部15aを制御して撮像条件編集画面20を表示させる。
【0059】
そして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、本撮像用の撮像条件を設定する操作を受け付けた場合には、撮像条件編集画面20において撮像パラメータに設定された値を撮像パラメータごとに撮像パラメータ限界計算部17bに引き渡し、それに応じて、撮像パラメータ限界計算部17bから撮像パラメータの限界値が応答されると、撮像条件編集表示部15aを制御して、応答された限界値を撮像パラメータごとに撮像条件編集画面20に表示させる。
【0060】
また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、準備撮像の種類を選択する操作を受け付けた場合には、撮像パラメータ限界計算部17bに対して、その時点で撮像条件編集表示部15aに表示されている各撮像パラメータの値を引き渡すとともに、選択された種類の準備撮像の撮像条件を生成するよう指示する。
【0061】
また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、準備撮像が行われた後に、準備撮像によって得られた複数の画像を表示部15に表示するとともに、入力部16を介して、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付ける。そして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、画像を選択する操作を受け付けた場合には、選択された画像の付帯情報に含まれる撮像条件から可変パラメータの値を取得し、取得した可変パラメータの値を、後述する撮像パラメータ限界計算部17bに対して引き渡すとともに、その値を本撮像用の撮像条件に設定するよう指示する。
【0062】
撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像パラメータの限界値の計算や、準備撮像用の撮像条件の生成を行う処理部である。具体的には、この撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから撮像パラメータの値が引き渡されると、その撮像パラメータの値に依存する他の撮像パラメータの限界値を計算する。そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、計算した撮像パラメータの限界値を撮像条件編集/撮像位置決め部17aに返却するとともに、その都度、引き渡された撮像パラメータの値および計算した撮像パラメータの値を、本撮像用の撮像条件を示す検査情報14aとして記憶部14に記憶させる。
【0063】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから準備撮像の撮像条件を生成するよう指示された場合には、その撮像条件の種類に対応するパラメータリスト14bを記憶部14から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、生成した準備撮像用の撮像条件を検査情報14aとして記憶部14に記憶させる。
【0064】
ここで、準備撮像用の撮像条件の生成について具体的に説明すると、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータに値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成する。
【0065】
すなわち、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについては、パラメータリスト14bによって定義されている固定値を撮像パラメータごとに設定する。また、複製パラメータについては、撮像パラメータ限界計算部17bは、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件から撮像パラメータごとに値を複製する。さらに、可変パラメータについては、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bの「初期値」に設定されている値から、「増分」に設定されている変化量だけ変化させながら、「繰り返し回数」に設定されている回数だけ準備撮像が繰り返されるように値を設定する。
【0066】
このように、操作者によって準備撮像の種類が選択された場合に、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bに基づいて各撮像パラメータに値を設定することによって、所望の準備撮像用の撮像条件が自動的に生成される。
【0067】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aから本撮像用の撮像条件に設定するよう指示された場合には、その指示とともに引き渡された可変パラメータの値を、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件に設定する。
【0068】
ここで、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像によって得られた画像に基づいて決められた可変パラメータの値を本撮像用の撮像条件に設定することによって、準備撮像に続いて行われる本撮像用の最終的な撮像条件が設定される。
【0069】
パルスシーケンス実行データ生成部17cは、記憶部14に記憶されている検査情報14aを用いて撮像を実行させる処理部である。具体的には、このパルスシーケンス実行データ生成部17cは、入力部16を介して、準備撮像の開始指示を受け付けた場合には、記憶部14に検査情報14aとして記憶されている準備撮像の撮像条件に基づいて、パルスシーケンスを組み立ててパルスシーケンス実行データ17dを生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cは、インタフェース部11を介して、生成したパルスシーケンス実行データ17dを送ることによって、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9に準備撮像を実行させる。
【0070】
同様に、このパルスシーケンス実行データ生成部17cは、入力部16を介して、本撮像の開始指示を受け付けた場合には、記憶部14に検査情報14aとして記憶されている本撮像の撮像条件に基づいてパルスシーケンス実行データ17dを生成し、生成したパルスシーケンス実行データ17dを送ることによって、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9に本撮像を実行させる。
【0071】
次に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。なお、ここでは、従来の撮像と本発明による撮像とを対比するため、従来の撮像の処理手順について説明した後に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。また、ここでは、準備撮像を行うことによって心筋遅延造影の最適な反転回復時間TIを求めたうえで本撮像を行う場合を例に挙げて説明する。
【0072】
まず、従来の撮像の処理手順について説明する。図5は、従来の撮像の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、従来の撮像では、まず、操作者が、準備撮像の選択を行う(ステップS101)。ここでは、操作者は、本撮像に使用する予定のものと同じパルスシーケンス種を選択する。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、反転パルスを併用したセグメント分割型のグラディエントフィールドエコー法を選択する。
【0073】
続いて、操作者は、準備撮像の撮像条件編集を行う(ステップS102)。例えば、心筋遅延の準備撮像では、TIを変えながら複数回繰り返して撮像が行われるので、検査全体の時間が短くなるように撮像条件を設定するのが望ましい。そのため、操作者は、コントラストの変化がわかる範囲で空間分解能やS/N比を犠牲にして撮像時間を短縮するように、本撮像が3次元撮像の場合でも2次元撮像を選択し、位相エンコード数、スライス枚数や加算回数も本撮像より少なく設定する。
【0074】
この時、操作者は、上記の設定によるS/N比の低下を補うために、多くの場合、スライス厚を診断に供する本撮像のものよりも厚く設定する。さらに、操作者は、準備撮像において変化させるTIのT1コントラストに対する影響が準備撮像と本撮像とで同じになるように、繰り返し時間TRやエコー時間TE、フリップ角、脂肪抑制パルスやプリサチュレーションパルスの数およびフリップ角などは、本撮像で使用するものと同じとなるように注意しながら設定する必要がある。
【0075】
また、セグメント分割型のグラディエントフィールドエコー法では、反転パルスからk空間中心のデータを収集するまでの時間によりコントラストが変化する。そのため、操作者は、1セグメントあたりのエンコード数とセグメント内のエコー収集順序(セグメントタイプ)も本撮像と同じにしなければならない。このように、撮像パラメータの中には、パルスシーケンスの種類に固有な値を複製する必要があるものも存在する。
【0076】
こうして、操作者によって準備撮像の撮像条件が設定された後に、MRI装置が、設定された撮像条件に基づいて準備撮像を行う(ステップS103)。
【0077】
そして、準備撮像によって複数の画像が撮像されると、操作者が、それらの画像に基づいて最適な可変パラメータの値を決定する(ステップS104)。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、TIの異なる複数の画像の中から正常心筋が最も低信号になっている画像を選択し、選択した画像におけるTIの値を、最適なTIの値として決定する。
【0078】
続いて、操作者は、本撮像の撮像条件編集を行う(ステップS105)。ここでは、操作者は、検査目的や診断に要求される画質に応じて、撮像の次元(2Dまたは3D)、空間分解能、加算回数、スライス枚数などを設定する。
【0079】
また、操作者は、準備撮像と本撮像とで同じ値を設定する撮像パラメータについて、準備撮像と同じ値となっているか否かを確認し、異なっていた場合は、準備撮像の撮像条件から値を複製する(ステップS106)。
【0080】
さらに、操作者は、準備撮像によって得られた画像に基づいて決定した可変パラメータの値を本撮像の撮像条件に設定する(ステップS107)。例えば、心筋遅延造影では、操作者は、準備撮像によって得られた画像に基づいて決定したTIの値を本撮像の撮像条件に設定する。
【0081】
こうして、操作者によって本撮像の撮像条件が設定された後に、MRI装置が、設定された撮像条件に基づいて本撮像を行う(ステップS108)。
【0082】
以上、従来の撮像の処理手順について説明したが、上記の処理手順において、ステップS101、S102、S104、S105、S106およびS107の手順は、操作者によって手動で行われる。特に、ステップS105およびS106における撮像パラメータの設定は、撮像に使用するパルスシーケンスに依存するため、各パラメータの可変パラメータに対する影響を熟知したうえで間違えのないように操作を行う必要があり、非常に手間と時間を要する作業であった。
【0083】
次に、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順について説明する。図6は、本実施例に係るMRI装置100による撮像の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、本実施例に係るMRI装置100による撮像では、まず、操作者が、準備撮像を必要としない通常の撮像と同様に、本撮像の撮像条件編集を行う(ステップS201)。
【0084】
続いて、操作者は、準備撮像の種類を選択する(ステップS202)。具体的には、操作者は、撮像条件編集表示部15aによって表示されるユーザインタフェース(例えば、図4に示した準備撮像選択プルダウンメニュー21など)を操作することによって、準備撮像を選択する。ここで、準備撮像の種類の選択を可能にしたのは、ひとつのパルスシーケンスにおいても複数の用途があり、例えばこの例でセグメント分割型の3Dグラディエントフィールドエコー法においても遅延造影撮像や冠動脈撮像などが可能であり、それぞれにおいて準備撮像で最適化するパラメータが異なるためである。
【0085】
こうして、操作者によって準備撮像が選択されると、MRI装置100では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、入力部16を介して、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された撮像条件の種類に対応するパラメータリスト14bを記憶部14から取得する(ステップS203)。
【0086】
そして、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータに値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成する(ステップS204)。具体的には、まず、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについて、パラメータリスト14bによって定義された固定値を、準備撮像用の撮像条件に撮像パラメータごとに設定する。
【0087】
また、撮像パラメータ限界計算部17bは、複製パラメータについて、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件から準備撮像用の撮像条件に、撮像パラメータごとに値を複製する(ステップS205)。
【0088】
さらに、撮像パラメータ限界計算部17bは、可変パラメータについて、パラメータリスト14bの「初期値」、「増分」および「繰り返し回数」に基づいて、繰り返し回数に設定されている回数だけ準備撮像が繰り返されるように値を設定する(ステップS206)。こうして、本実施例に係るMRI装置100では、自動的に準備撮像用の撮像条件が生成される。
【0089】
その後、操作者によって準備撮像の開始指示が行われると、MRI装置100では、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、設定された準備撮像の撮像条件に基づいて、所定の回数繰り返して準備撮像を実行させる(ステップS207)。
【0090】
そして、準備撮像によって撮像された複数の画像が表示部15に表示されると、操作者が、その中から撮像の目的に最も適した画像を選択する(ステップS208)。
【0091】
操作者によって画像が選択されると、MRI装置100では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、入力部16を介して、当該画像を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、選択された画像に対応する可変パラメータの値を本撮像用の撮像条件に設定する(ステップS209)。
【0092】
ここで、撮像条件編集/撮像位置決め部17aおよび撮像パラメータ限界計算部17bによって本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程について具体的に説明する。図7は、本撮像の撮像条件に可変パラメータが設定される過程を説明するための図である。同図は、準備撮像として心筋遅延造影が実行された場合を示しており、TIの値を220ミリ秒から30ミリ秒ずつ変化させながら4回繰り返して撮像が実行された場合を示している。
【0093】
この場合、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、例えば、同図(a)に示すように、TIの値を220ミリ秒として撮像された左室心筋の画像31と、TIの値を250ミリ秒として撮像された左室心筋の画像32と、TIの値を280ミリ秒として撮像された左室心筋の画像33と、TIの値を310ミリ秒として撮像された左室心筋の画像34とを、それぞれ表示部15に表示する。
【0094】
ここで、操作者が、心筋の画素値が最も低い画像、この場合は、画像33を選択したとする。その場合、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、入力部16を介して、画像33を選択する操作を受け付けると、画像33の付帯情報に含まれる撮像条件からTIの値として280ミリ秒を取得する。
【0095】
そして、撮像パラメータ限界計算部17bが、記憶部14によって検査情報14aとして記憶されている本撮像用の撮像条件に含まれる撮像パラメータのうちTIの値を、280ミリ秒に設定する。これにより、同図(b)に示すように、撮像条件編集表示部15aによって撮像条件編集画面20において、TIの値を示す領域23に「280」が表示される。
【0096】
こうして、撮像条件編集/撮像位置決め部17aおよび撮像パラメータ限界計算部17bによって可変パラメータが設定されて、本撮像用の撮像条件が最終的に設定される。
【0097】
図6に戻って、その後、操作者によって本撮像の開始指示が行われると、MRI装置100では、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、設定された準備撮像の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる(ステップS210)。
【0098】
このように、本実施例に係るMRI装置100によれば、本撮像に先立って準備撮像を行うことが必要な検査において、操作者は本撮像の条件編集だけを行った後に準備撮像開始を指示するだけでよいため、準備撮像と本撮像間で複製しなければならないパラメータを間違えることがなくなる。その結果、撮像に関する操作が簡便になり、撮像の成功率が向上する。また、操作を自動化することによって全検査に要する時間が短縮され、装置の稼働率が向上し、患者の負担の軽減することができる。さらに、操作者の教育に要する時間を省略することも可能である。
【0099】
なお、ここでは、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の一例として、心筋遅延造影を例にあげて説明したが、本実施例に係るMRI装置100では、他の撮像法についても、その撮像法に対応するパラメータリスト14bをあらかじめ記憶部14に記憶させておくことによって、準備撮像のパルスシーケンスを自動的に生成することが可能である。
【0100】
例えば、本撮像の前に準備撮像を行って特定の撮像パラメータの値を決定する撮像法の他の一例として、非造影MR血管撮像法の一手法である「FBI(Fresh Blood Imaging)法」がある。このFBI法とは、ECG(electrocardiogram;心電図)同期あるいは脳波同期によって、所定の心時相ごとに心臓から拍出されるフレッシュで安定した速い流速の血流をスキャンすることによって、造影剤を投与せずに血管を確実に描出することを可能にした手法である。具体的には、FBI法は、血液のT2成分を強調した水(血液)強調画像を得るために、心電計や脳波計により収集された被検体の心時相を表す信号に同期して、所定スライスエンコード量分のエコー信号を収集する動作を、複数心拍ごとに繰り返す三次元スキャンを実行するイメージング法である。
【0101】
かかるFBI法において、血管の描出能に優れた画像を得るためには、被検体から発せられるエコー信号(磁気共鳴信号)が最も強くなるように撮像条件を設定する必要がある。そして、このエコー信号の強さは、R波からの遅延時間(Td)に依存することが知られている。そのため、FBI法では、準備撮像を行うことによって最適な遅延時間(動静脈両方のエコー信号の強さが大きい遅延時間(第一の遅延時間とする)、静脈のエコー信号の強さが大きく動脈のエコー信号が小さい遅延時間(第二の遅延時間とする)、あるいは、第一および第二の遅延時間の両方)が決定される。この最適な遅延時間を決定するために遅延時間(Td)を変化させながら行われる準備撮像を「ECG−Prep」と呼ぶ。
【0102】
また、FBI法を発展させた手法として、リードアウト用傾斜磁場パルスの印加方向を血流の方向に合わせたうえで、血流信号を抑制する程度を制御するためのディフェージングパルスをリードアウト用傾斜磁場パルスの前後に付加することによって、下肢の血管のように血流の流速が遅い血管を高画質で撮像する手法もある。この手法では、血流信号を抑制する程度を制御するためのディフェージングパルスの最適な強度が準備撮像によって決定される。この最適な制御パルスの強度を決定するために制御パルスの強度を変化させながら行われる準備撮像を「Flow−Prep」と呼ぶ。
【0103】
なお、上述したFBI法による撮像では、通常、本撮像は、3次元高速スピンエコー法を用いて行われるが、目的の血管の描出のされ方は、k空間を埋めるデータ収集の順序やタイミングに依存するため、撮像条件として設定される撮像パラメータの中には、準備撮像と本撮像とで同じ値を使用することが望ましいものが存在する。それらの撮像パラメータは、必ずしも、心筋遅延造影において用いられるセグメント分割型のグラディエントエコー法と同じであるとは限らない。
【0104】
以上をふまえ、FBI法の撮像において用いられるECG−Prep用のパラメータリスト14bおよびFlow−Prep用のパラメータリスト14bについて説明する。図8は、ECG−Prep用のパラメータリスト14bの一例を示す図であり、図9は、Flow−Prep用のパラメータリスト14bの一例を示す図である。
【0105】
まず、ECG−Prepでは、遅延時間を変化させて準備撮像を行うため、図8に示すように、ECG−Prep用のパラメータリスト14bでは、「遅延時間」が可変パラメータに分類される。また、心筋遅延造影の場合と異なり、「TI」や「ETS」、「エコー数」などが複製パラメータに分類される。
【0106】
一方、Flow−Prepでは、ディフェージングパルスの強度を変化させて準備撮像を行うため、図9に示すように、Flow−Prep用のパラメータリスト14bでは、「Dephase強度」が可変パラメータとして分類される。また、心筋遅延造影の場合と異なり、「TI」や「ETS」、「エコー数」などが複製パラメータに分類される。
【0107】
以上、FBI法による非造影MR血管撮像について説明したが、この他にも、例えば、冠動脈撮像において、最適な中心周波数(f0)を決定するために準備撮像が行われる場合がある。図10は、中心周波数設定用のパラメータリスト14bの一例を示す図である。この場合、中心周波数を変化させて準備撮像を行うため、同図に示すように、中心周波数設定用のパラメータリスト14bでは「中心周波数」が可変パラメータに分類される。
【0108】
このように、本実施例に係るMRI装置100では、撮像法に対応するパラメータリスト14bをあらかじめ記憶部14に記憶させておくことによって、準備撮像のパルスシーケンスが自動的に生成される。そのため、本実施例に係るMRI装置100によれば、各種の撮像法について、準備撮像を必要としない通常の撮像とほぼ同じ操作を行うことによって全検査を終えることが可能である。
【0109】
上述してきたように、本実施例では、記憶部14が、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義したパラメータリスト14bを撮像の種類ごとに記憶する。また、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。そして、パルスシーケンス実行データ生成部17cが、生成された撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる。したがって、本実施例では、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することができる。
【0110】
また、本実施例では、パラメータリスト14bは、準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像により最適な値を探索して設定する可変パラメータと、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する複製パラメータと、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な固定パラメータとに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bによって定義された設定方法に基づいて、各撮像パラメータの値を設定することによって、準備撮像用の撮像条件を生成するので、多種多様な数多くの撮像パラメータを撮像条件として設定する必要がある撮像において、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0111】
また、本実施例では、パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれるので、TRやTE、フリップ角、遅延時間など、パルスシーケンスに関する撮像パラメータについて最適な値を決定するための準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0112】
また、本実施例では、パラメータリスト14bによって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれるので、中心周波数や送信ゲインなど、装置の設定状態に関する撮像パラメータについて最適な値を決定するための準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0113】
また、本実施例では、パラメータリスト14bは、固定パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ決められた固定値を撮像パラメータごとにさらに定義した情報であり、撮像パラメータ限界計算部17bは、固定パラメータについては、パラメータリスト14bによって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定するので、本撮像と準備撮像とで異なる値を設定可能な撮像パラメータについては固定値を設定する必要がある準備撮像を行う場合に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化することが可能である。
【0114】
また、本実施例では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aは、準備撮像によって得られた複数の画像を表示部15に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aによって画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた可変パラメータの値を、本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる可変パラメータに設定するので、操作者が準備撮像によって撮像された画像の中から所望の画像を選ぶだけで、本撮像用の可変パラメータの値が自動的に設定される。これにより、従来は手動で値を入力することによって行われていた可変パラメータの設定に関する作業を容易な操作で行うことが可能になる。
【0115】
なお、本実施例では、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、準備撮像の種類を選択する操作を受け付け、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像の種類を選択する操作が受け付けられた場合に、その準備撮像の種類に対応するパラメータリスト14bに基づいて、準備撮像用の撮像条件を生成するよう構成した。
【0116】
しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、あらかじめ検査部位および撮像(検査)の種類ごとに撮像条件を分類しておき、撮像条件編集/撮像位置決め部17aが、本撮像用の撮像条件を操作者から受け付ける際に、まずは検査部位および撮像の種類を選択させたうえで撮像条件を編集させるようにしてもよい。このように、あらかじめ操作者に本撮像の種類を選択させることによって、その本撮像の種類から、必要な準備撮像の種類が自動的に決まるので、準備撮像の種類を選択する操作を撮像条件編集/撮像位置決め部17aが受け付ける工程を省略することができる。
【0117】
この場合には、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像条件編集/撮像位置決め部17aによって受け付けられた準備撮像の種類ではなく、本撮像の種類に対応するパラメータリスト14bを、記憶部14によって記憶されているパラメータリスト14bの中から取得し、取得したパラメータリスト14bに基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する。
【0118】
これにより、本撮像の撮像条件を設定した後に、撮像の開始指示を行うだけで自動的に準備撮像が行われることになるので、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作をより容易な操作とすることが可能になる。例えば、本撮像としてFBI法による撮像を行う場合には、準備撮像で決定する必要がある可変パラメータとして、R波からの遅延時間(Td)と、ディフェージングパルスの強度とをそれぞれ設定しておけば、ECG−Prep、Flow−Prep、本撮像の順に、一連の撮像を自動的に連続して実行することが可能になる。
【0119】
また、本実施例では、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定するようにしてもよい。
【0120】
その場合、具体的には、パラメータリスト14bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義する。図11は、撮像位置を設定する場合のパラメータリスト14bの一例を示す図である。同図に示すように、例えば、パラメータリスト14bは、図3に示したものと同様の撮像パラメータに関する情報を含み、さらに「撮像位置」を表す情報を含んでいる。この撮像位置を表す情報は、パラメータリスト14bにおいて、複製パラメータに分類される。
【0121】
さらに、この場合には、撮像パラメータ限界計算部17bが、準備撮像用の撮像条件を生成する際に、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する。ここで、撮像パラメータ限界計算部17bによる撮像位置の設定について具体的に説明する。図12および13は、撮像パラメータ限界計算部17bによる撮像位置の設定を説明するための図である。なお、ここでは、撮像位置を表す情報として、磁場中心を始点とするとともに撮像領域を表すスライス面に対して垂直に交わる法線ベクトル、および、撮像領域の中心を用いた場合について説明する。
【0122】
例えば、図12に示すように、本撮像用の撮像領域R1として、スライス厚が40mmの撮像領域が被検体の左胸付近に設定されていたとする。そして、この撮像領域R1の位置は、磁場中心MCを始点とするとともに撮像領域R1となるスライス面に対して垂直に交わる法線ベクトルV、および、撮像領域の中心Cによって表されていたとする。
【0123】
この場合、撮像パラメータ限界計算部17bは、準備撮像用の撮像位置R2を設定するときには、まず、磁場中心MCの座標、および、本撮像用の撮像位置を表す法線ベクトルVに基づいて、装置座標に対する撮像領域R2の傾きを算出する。また、撮像パラメータ限界計算部17bは、撮像領域R2の中心の座標を撮像領域R1の中心Cと同じ座標に設定する。続いて、撮像パラメータ限界計算部17bは、パラメータリスト14bを参照して、撮像領域のスライス厚を決定する。例えば、図11に示したパラメータリスト14bが用いられていた場合には、スライス厚が固定パラメータであり、その固定値が10mmであるので、撮像パラメータ限界計算部17bは、図13に示すように撮像領域のスライス厚を10mmに設定する。これにより、準備撮像用の撮像領域R2の位置が自動的に設定される。
【0124】
このように、パラメータリスト14bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、撮像パラメータ限界計算部17bが、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定することによって、準備撮像における撮像位置を自動的に設定することができる。したがって、磁気共鳴イメージング装置100の操作性をさらに向上させることができる。
【0125】
なお、本実施例において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および撮像条件生成方法は、撮像条件を構成する複数の撮像パラメータのうち一部の撮像パラメータに設定される値を準備撮像により最適化したうえで本撮像を行う場合に有用であり、特に、準備撮像用の撮像条件の設定に関する操作を自動化して操作性の向上を実現することが求められる場合に適している。
【符号の説明】
【0127】
100 MRI装置
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信RFコイル
7 送信部
8 受信RFコイル
9 受信部
10 計算機システム
11 インタフェース部
12 データ収集部
13 データ処理部
14 記憶部
14b パラメータリスト
14a 検査情報
15 表示部
15a 撮像条件編集表示部
15b 位置決め表示部
16 入力部
17 制御部
17a 撮像条件編集/撮像位置決め部
17b 撮像パラメータ限界計算部
17c パルスシーケンス実行データ生成部
17d パルスシーケンス実行データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得する定義情報取得部と、
前記定義情報取得部により取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する準備撮像条件生成部と、
前記準備撮像条件生成部により生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる準備撮像制御部と、
前記準備撮像制御部による前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する本撮像条件設定部と、
前記本撮像条件設定部により設定された撮像パラメータを含む本撮像用の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる本撮像制御部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮像の種類を選択する操作を受け付ける操作受付部をさらに備え、
前記準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって受け付けられた撮像の種類に対応する条件生成定義情報を前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から取得し、取得した条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記条件生成定義情報は、前記準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において値を変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、
前記準備撮像条件生成部は、前記条件生成定義情報によって定義された設定方法に基づいて各撮像パラメータの値を設定することによって、前記準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記条件生成定義情報は、前記準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において値を変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、
前記準備撮像条件生成部は、前記条件生成定義情報によって定義された設定方法に基づいて各撮像パラメータの値を設定することによって、前記準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれる、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれる、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれる、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれる、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記条件生成定義情報は、前記第三の撮像パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ撮像パラメータごとに決められた固定値をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、前記第三の撮像パラメータについては、前記条件生成定義情報によって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記条件生成定義情報は、前記第三の撮像パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ撮像パラメータごとに決められた固定値をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、前記第三の撮像パラメータについては、前記条件生成定義情報によって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記操作受付部は、前記準備撮像によって得られた複数の画像を表示部に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、
準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって前記画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた第一の撮像パラメータの値を、前記本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる第一の撮像パラメータに設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記操作受付部は、前記準備撮像によって得られた複数の画像を表示部に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、
準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって前記画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた第一の撮像パラメータの値を、前記本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる第一の撮像パラメータに設定する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を使用する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類した情報を記憶する記憶部と、
本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値を入力するための入力部と、
前記入力部により入力された前記本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値、および、前記記憶部によって記憶された複数の撮像パラメータを分類した情報に基づいて、準備撮像および本撮像を実行させる制御部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記入力部は、前記第一の撮像パラメータの値の変化させる範囲または間隔に関する情報を入力する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記記憶部は、前記第一の撮像パラメータの値の変化させる範囲または間隔に関する情報を記憶する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
前記記憶部は、前記第三の撮像パラメータの値を記憶する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
磁気共鳴イメージング装置の撮像条件を生成する撮像条件生成方法であって、
本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶部に格納し、
前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得し、
取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、
生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させ、
前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する、
ことを含む、撮像条件生成方法。
【請求項1】
本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得する定義情報取得部と、
前記定義情報取得部により取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する準備撮像条件生成部と、
前記準備撮像条件生成部により生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させる準備撮像制御部と、
前記準備撮像制御部による前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する本撮像条件設定部と、
前記本撮像条件設定部により設定された撮像パラメータを含む本撮像用の撮像条件に基づいて本撮像を実行させる本撮像制御部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮像の種類を選択する操作を受け付ける操作受付部をさらに備え、
前記準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって受け付けられた撮像の種類に対応する条件生成定義情報を前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から取得し、取得した条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定されている撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記条件生成定義情報は、前記準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において値を変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、
前記準備撮像条件生成部は、前記条件生成定義情報によって定義された設定方法に基づいて各撮像パラメータの値を設定することによって、前記準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記条件生成定義情報は、前記準備撮像用の撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において値を変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を設定する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類したうえで、撮像パラメータごとに値の設定方法を定義した情報であり、
前記準備撮像条件生成部は、前記条件生成定義情報によって定義された設定方法に基づいて各撮像パラメータの値を設定することによって、前記準備撮像用の撮像条件を生成する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれる、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、パルスシーケンスの組み立てに関するものが含まれる、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれる、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記条件生成定義情報によって分類される撮像パラメータには、装置の設定状態に関するものが含まれる、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記条件生成定義情報は、前記第三の撮像パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ撮像パラメータごとに決められた固定値をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、前記第三の撮像パラメータについては、前記条件生成定義情報によって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記条件生成定義情報は、前記第三の撮像パラメータについて、準備撮像用に設定される値としてあらかじめ撮像パラメータごとに決められた固定値をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、前記第三の撮像パラメータについては、前記条件生成定義情報によって定義された固定値を撮像パラメータごとに設定する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記操作受付部は、前記準備撮像によって得られた複数の画像を表示部に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、
準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって前記画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた第一の撮像パラメータの値を、前記本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる第一の撮像パラメータに設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記操作受付部は、前記準備撮像によって得られた複数の画像を表示部に表示するとともに、表示した画像の中からいずれか一つの画像を選択する操作をさらに受け付け、
準備撮像条件生成部は、前記操作受付部によって前記画像を選択する操作が受け付けられた場合に、当該画像が撮像された際に用いられていた第一の撮像パラメータの値を、前記本撮像用として設定されている撮像条件に含まれる第一の撮像パラメータに設定する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記条件生成定義情報は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する方法をさらに定義し、
前記準備撮像条件生成部は、本撮像用として設定された撮像位置から準備撮像用の撮像位置を設定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
撮像条件を構成する複数の撮像パラメータを、準備撮像において変化させる第一の撮像パラメータ、本撮像と準備撮像とで同じ値を使用する第二の撮像パラメータ、および、本撮像と準備撮像とで異なる値を使用可能な第三の撮像パラメータに分類した情報を記憶する記憶部と、
本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値を入力するための入力部と、
前記入力部により入力された前記本撮像用の撮像条件に関する複数の撮像パラメータの値、および、前記記憶部によって記憶された複数の撮像パラメータを分類した情報に基づいて、準備撮像および本撮像を実行させる制御部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記入力部は、前記第一の撮像パラメータの値の変化させる範囲または間隔に関する情報を入力する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記記憶部は、前記第一の撮像パラメータの値の変化させる範囲または間隔に関する情報を記憶する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
前記記憶部は、前記第三の撮像パラメータの値を記憶する、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
磁気共鳴イメージング装置の撮像条件を生成する撮像条件生成方法であって、
本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成する方法を定義した条件生成定義情報を撮像の種類ごとに記憶部に格納し、
前記記憶部により記憶されている条件生成定義情報の中から本撮像の種類に対応する条件生成定義情報を取得し、
取得された条件生成定義情報に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件から準備撮像用の撮像条件を生成し、
生成された準備撮像用の撮像条件に基づいて準備撮像を実行させ、
前記準備撮像の実行によって得られた撮像結果に基づいて、本撮像用として設定された撮像条件に含まれる複数の撮像パラメータのうち少なくとも一部の撮像パラメータの値を設定する、
ことを含む、撮像条件生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−233323(P2009−233323A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49679(P2009−49679)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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