磁気共鳴イメージング装置
【課題】 造影MRAにおいて、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を不要とし、かつ撮像タイミングに依存しない簡便で確実な造影MRAを実現する。
【解決手段】 少なくとも造影剤が撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、複数の単位計測で取得されたデータを合成して画像を再構成する。
【解決手段】 少なくとも造影剤が撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、複数の単位計測で取得されたデータを合成して画像を再構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に、造影剤を用いて血管系を描出することが可能なMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮像においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
このようなMRI装置を用いた血管描出法は、MRアンジオグラフィ(MRA)と呼ばれ、造影剤を用いる方法と造影剤を用いない方法がある。造影剤を用いるMRAでは、Gd-DTPAなどのT1短縮型の造影剤を用いるとともにグラジエントエコー系のTRが短いパルスシーケンスによる撮像が行われる。同一の領域に対して、高周波磁場による励起を短いTRで連続的に行うことにより、その領域の組織に含まれるスピンは飽和状態となり、得られるエコー信号は低いものとなるが、T1短縮型の造影剤を含む血流スピンは、同じTRで励起されても飽和が起こりにくく、他の組織よりも相対的に高い信号を発する。これを利用し、撮像対象である血管内に造影剤が滞留している間に、当該血管を含むボリュームデータの取得を行い、投影処理、差分処理等の必要な画像処理を行うことにより2次元投影像として血管を描出することができる。
【0004】
このような造影MRAでは、造影剤の注入後、造影剤が目的血管に滞留している短い期間内に撮像を完了する必要がある。特に、目的血管がより高輝度に描出された画像を取得するためには、当該血管内の造影剤濃度がピークに達するタイミングとK空間の原点近傍のデータを取得するタイミングとを一致させることが肝要である。つまり、造影MRAでは、撮像を行うタイミングが重要であり、目的血管における造影剤濃度の時間的変化に合わせて撮像を行うことが重要となる。
【0005】
撮像タイミングを決定する方法として、主として、本撮像前に少量の造影剤を注入し、予め目的血管への造影剤到達時間を計測しておくテストインジェクション法と、撮像時間の短い2次元撮像による透視下で目的血管への造影剤の到達をモニタリングし、造影剤が到達すると同時に3次元の本撮像を開始するフルオロスコピックトリガー法と、がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-41476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記いずれの方法においても、目的血管内の造影剤濃度がピークに達するタイミングを取得するための前処理が多く煩雑である。また、一般的に、撮像タイミング調整という過程を有する限り、自動操作や手動操作に関わらず、最適な撮像タイミングを逸する可能性を回避できない。最適タイミングを逃すと最適な血管画像が得られないので、再撮像を行う必要が生じ、スループットの低下や被検体への負担増加となってしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、造影MRAにおいて、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を不要とし、かつ撮像タイミングに依存しない簡便で確実な造影MRAを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のMRI装置は以下の様に構成される。即ち、静磁場を発生する静磁場発生手段と、静磁場中に配置され造影剤が注入された被検体の所望の撮像領域に傾斜磁場と高周波磁場を印加する磁場発生手段と、所望の撮像領域からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、磁場発生手段と検出手段とを制御して、K空間内の所定の軌跡に沿うデータを取得する様に核磁気共鳴信号を計測する計測制御手段と、前記K空間のデータを用いて撮像領域の画像を再構成する画像再構成手段と、を備え、計測制御手段は、少なくとも造影剤が撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、画像再構成手段は、複数の単位計測で取得されたデータを合成して画像を再構成する。
【0009】
好ましくは、画像再構成手段は、単位計測毎に、該単位計測で取得された単位データの内の少なくともK空間の原点近傍データを含んで画像を再構成する。
また、好ましくは、複数の前記単位データを該単位データが取得された時刻と共に記憶する第2の記憶手段と、記憶された複数の単位データの中から所望の単位データを複数選択する手段と、を有し、画像再構成手段は、選択された複数の単位データを用いて画像を再構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMRI装置によれば、造影MRAにおいて、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理をすることなく、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致させることが出来るようになる。したがって、単位計測を繰り返しつつ、その単位計測で取得された単位データを用いて画像再構成すれば、少なくとも一つの画像は造影剤濃度がピークの時の画像となる。或いは、撮像後に、造影剤濃度がピークとなる時に取得された単位データを含む複数の単位データを選択して画像再構成すれば、容易に造影剤濃度がピークの時の画像を取得することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
最初に、本発明が適用されるMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1はMRI装置の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、核磁気共鳴(NMR)現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図7に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0013】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。静磁場発生系2はガントリ51内に収容される。
【0014】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。傾斜磁場コイル9はガントリ51内に、傾斜磁場電源10は筐体53にそれぞれ収容される。
【0015】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。シーケンサ4は筐体53内に収容される。
【0016】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。一般的に高周波コイル14aがガントリ51内に収容され、他は筐体53内に収容される。
【0017】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるNMR信号(以下、エコー信号という)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。 一般的に受信系6を構成する前記装置群はガントリ51内に収容される。
【0018】
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。信号処理系7は処理装置54内に収容される。
【0019】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0020】
なお、図7において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0021】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0022】
上記の様なMRI装置において実施される本発明は、K空間の原点又は原点近傍(以下、両者をまとめて原点近傍と表記するが、「原点近傍」が「原点」の場合も含むものとする)の低空間周波数領域を短時間で繰り返し計測する。これにより、特に撮像タイミング調整をしなくとも、少なくとも一つの計測タイミングが撮像領域における造影剤濃度がピークに到達したタイミングと略一致することになる。K空間の原点近傍の低空間周波数領域が画像の信号強度及びコントラスト支配的に決定する情報を含む領域であるので、このタイミングが略一致した単位計測により取得されたデータを用いて画像を再構成すれば、その画像は撮像領域の血管を明瞭に描出したものとなる。これにより、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を不要とするものである。以下、本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
次に、本発明のMRI装置における第1の実施形態を説明する。本実施形態は、造影剤が注入された被検体の血管を撮像する造影MRAであって、少なくとも造影剤が被検体の撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする領域のデータを取得する単位計測を、K空間原点を中心に単位領域を回転させて繰り返し、単位計測毎に該単位計測によって取得されたデータの少なくとも一部を含んで画像再構成することによって、所望の領域を略リアルタイムに撮像する形態である。
【0024】
最初に、本実施形態の概要を図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャートである。以下、図2に示すフローチャートの各ステップの概要を説明する。
【0025】
ステップ201で、被検体の血管に造影剤を注入する。例えば肘静脈から造影剤を注入する。造影剤の注入は、術者が手動で行っても良いし、注入装置を用いてMRI装置と連動して行っても良い。
ステップ202で、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする領域(以下、単位領域という)の固定軸に対する回転角度θの初期値を設定する。
例えば、固定軸としてK空間横軸(kr軸)を用い、このkr軸に対する回転角度の初期値としてθ=0とする。
【0026】
ステップ203で、固定軸に対して回転角度θを成す単位領域上のデータ(以下、単位データという)を取得する単位計測を行う。
取得された単位データはその取得時刻又は取得順序と共に、例えば磁気ディスク18等の記憶手段に記憶される。この単位領域をカバーする軌跡は、少なくともその一部がK空間の原点近傍、好ましくは原点を通過する軌跡であればどのような軌跡でも良い。例えば、K空間原点を通る放射状直線、K空間原点を通る放射状直線とこの放射状直線に平行な1以上の平行直線群、或いはK空間原点を含むスパイラル状の曲線とすることができる。各々の軌跡例の詳細は、その軌跡に好適なパルスシーケンスの詳細と共に後述する。この単位計測によって、単位領域つまり軌跡によってカバーされるK空間の一部の領域のデータが単位データとして取得される。つまり、単位計測毎に画像再構成に必要な全K空間データの一部である単位データが取得される。
【0027】
ステップ204で、複数の単位データを用いて1枚の画像の再構成を行う。つまり、各単位計測で取得された単位データを複数用いて、画像再構成に必要な1セットの全K空間データを合成した後に画像再構成を行う。再構成された画像は、再構成された時刻又は順序と共に例えば磁気ディスク18に記憶される。
複数の単位データの合成に関しては、グリッティング処理を用いて各単位データを一つのK空間に合成する。複数の単位データの合成の詳細については後述する。
なお、上記ステップ21とステップ202〜204の順序を入れ替えて、ステップ102をステップ204の後に行って、撮像シーケンスが開始された後に造影剤を被検体に注入しても良い。
【0028】
ステップ205で、ステップ204で再構成された画像を表示する。また、撮像領域から得られる信号強度の時間的変化を表す曲線(PIC;Time intensity curve)も表示しても良い。
例えば、各単位データの内のK空間原点データ、つまり、各単位データの最大値をその単位データを取得した時相における撮像領域から得られる信号強度とする。この撮像領域から得られる信号強度は、撮像領域における造影剤濃度を反映しているので、信号強度の時間的変化は、造影剤が撮像領域を通過していく際の濃度変化を反映していることになる。従って、信号強度の変化曲線を視覚的に表示することによって、撮像領域における造影剤の濃度及び通過状況を視覚的に把握することが可能になる。TIC曲線の詳細は後述する。
【0029】
ステップ206で、造影剤が撮像領域を通過したと判定出来たときは、その撮像領域での撮像を中止する。
この判定は、ステップ205で表示されるTIC曲線の変化や画像における血管の輝度の変化を検出して自動的に停止することも可能である。或いは、操作者がTIC曲線や画像を監視し、充分と思われる適当なタイミングに手動で停止することも可能である。一方、造影剤が撮像領域をまだ通過していないと判定したときは、ステップ207に移行する。
【0030】
ステップ207で、単位領域をK空間原点の周りに所定の角度Δθだけ回転させる。
そして、ステップ203に戻り、この回転された単位領域上のデータを取得する単位計測を行う。以降、造影剤が撮像領域を通過するまでステップ203〜205を短い繰り返し時間TRの時間間隔で繰り返す。
【0031】
繰り返し時間TRを例えば数msec〜数10msec程度とすると、造影剤が撮像領域を通過する時間は数sec〜数10secであるので、約千倍の時間分解能で撮像領域における造影剤濃度変化情報を取得することが可能になる。従って、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致することになる。そこで、造影剤注入直後から単位計測を繰り返しつつ、その単位計測毎に該単位計測で取得された単位データの少なくとも一部を用いて画像再構成すれば、少なくとも一つの画像は造影剤濃度がピークの時相の画像となる。
【0032】
また、この繰り返しによって、撮像期間中にK空間原点を中心に単位領域を何周も回転させて、画像再構成に必要な全K空間データをカバーする単位データの最小セットを構成する単位データ数の何倍もの単位データを取得する。例えば、全K空間をN個の単位データでカバーするとすると、総単位データ数は5N〜100N程度となる。また、単位計測毎に該単位計測によって取得された単位データの少なくとも一部を含んで画像再構成することによって、撮像領域における造影剤の通過状況の異なる複数の画像を時系列に取得する。これによって、その撮像領域を略リアルタイムに観察することが可能になる。
【0033】
次に、上記各ステップ内で行われる処理に関して、更に詳細な説明が必要なステップを以下に説明する。
最初に、ステップ201の造影剤注入について詳細に説明する。血管に注入された造影剤は、一定時間後に撮像領域に到達して流入し、その後撮像領域から流出していく。撮像領域における造影剤濃度の変化を表すと図12の様になる。曲線1105は各時刻における撮像領域における造影剤の濃度変化を示している。時刻T1は造影剤注入直後なので撮像領域には造影剤が到達してなく、造影剤濃度は明らかに0である。その後、造影剤は徐々に撮像領域に到達し始め、時刻t2には造影剤の濃度増加が顕著となる。やがて、時刻t3には造影剤の濃度増加がピークとなる。しかし、その後は造影剤濃度は減少に転じ、時刻t4においては多くの造影剤が撮像領域から流出している。以降に説明する撮像領域を撮像するためのパルスシーケンスは造影剤注入直後の時刻T1以降に開始される。
【0034】
次に、ステップ203で行われる単位計測の詳細を説明する。前述した通り、各単位計測では、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域上のデータである単位データが取得される。この単位領域をカバーする軌跡は、複数の異なる形状が可能であり、その軌跡上のデータを取得するためのパルスシーケンスの傾斜磁場波形を規定する。単位領域をカバーする軌跡に必要な条件は、その軌跡の少なくとも一部がK空間の原点近傍を通過することのみである。以下、可能な軌跡形状の例を対応するパルスシーケンスと合わせて以下に説明する。これらは、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8を介してシーケンサ4にロードされて実行されることにより、シーケンサ4がそのプログラムに従って傾斜磁場発生系3、送信系5、受信系6、及び信号処理系7を制御することにより行われるものである。
【0035】
第1の軌跡例を図3(a)に示す。図3(a)は、ラディアルサンプリング法によりK空間300のデータが取得される軌跡を表す。ラディアルサンプリング法では、K空間の原点を通る一つの放射状の直線がカバーする領域を単位領域とし、この放射直線上のデータを単位データとして取得する。そして、この放射直線軌跡を原点の周りにΔθづつ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要な全K空間データを取得する。図3(a)の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上で一つの放射直線軌跡を原点の周りに反時計方向にΔθづつ回転させながら、放射直線軌跡300〜309のデータを取得する例を示している。この回転角度Δθとしては、放射直線軌跡の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、
Δθ=π/N (1)
とすると良い。図3(a)の例では、N=10なので、Δθ=π/10となる。
【0036】
次に、ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスについて説明する。ラディアルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(t)と読み出し傾斜磁場Gr(t)とを、放射直線軌跡(つまり単位領域)の回転に合わせて、軌跡上のデータ取得毎(つまり、単位計測毎)に回転させて印加する。そして、各回転角度で一つの放射直線軌跡上のデータが一つのエコー信号の計測により取得される。例えば、n番目の放射直線軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)は、固定軸(kr軸)に対する回転角=0である0番目の放射直線軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0,t)を基準とすると、
Gp(n,t)=Gp(0,t)・cos(nΔθ)−Gr(0,t)・sin(nΔθ) (2)
Gr(n,t)=Gp(0,t)・sin(nΔθ)+Gr(0,t)・cos(nΔθ)
と表すことができる。ここで、tは高周波磁場印加時からの経過時間を表す。固定軸に対する回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0,t)としては、例えば、z方向にのみ読み出し傾斜磁場が、y方向にのみ位相エンコード傾斜磁場が分離されて印加される場合の傾斜磁場波形を想定すれば良い。
【0037】
図4に上記ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。図4(a)は、従来の直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスであり、図4(b)は図4(a)のパルスシーケンスをラディアルサンプリング法に適用する場合のパルスシーケンス例を示す。
【0038】
最初に、図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスを説明する。図4(a)のRF、Gs、Gp、Gr、echoはそれぞれ、RFパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、エコー信号の軸を表し、401はRFパルス、402はスライス選択傾斜磁場パルス、403は位相エンコード傾斜磁場パルス、404は読み出し傾斜磁場パルス、406はエコー信号、407は繰り返し時間(TR,RFパルス401の時間間隔)である。RFパルス401とスライス方向(X軸方向)に印加されるスライス傾斜磁場402とで関心領域を選択励起し、位相エンコード方向(y方向)に位相エンコード傾斜磁場403と読み出し方向(z方向)に読み出し傾斜磁場404を印加して計測するエコー信号405に位置情報をエンコードする。エコー信号405はCPU8に内蔵されたメモリに計測された時刻と共に格納されると共に磁気ディスク18等の記憶手段に記憶される。なお、時刻はエコーの格納順序でも良い。繰り返し時間TRで図4(a)のパルスシーケンスを繰り返してエコー信号405を計測し、画像再構成に必要な数のK空間データを取得する。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり64,128,256,512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128,256,512,1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として得られる。これらのデータを2次元フーリエ変換して1枚のMR画像を再構成する。
【0039】
この図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスをラディアルサンプリング法に適用する場合には、位相エンコード傾斜磁場403を常に0(ゼロ)とし、読み出し傾斜磁場404を(2)式に示した様に回転させる。つまり、固定軸に対する回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)及び読み出し傾斜磁場 Gr(0,t)とをそれぞれ0(ゼロ)及び図4(a)に示した読み出し傾斜磁場404とし、任意の回転角θの場合の位相エンコード傾斜磁場407と読み出し傾斜磁場408とを以下の様に求める。
Gp(n,t)=−Gr(0,t)・sin(nΔθ) (3)
Gr(n,t)=Gr(0,t)・cos(nΔθ)
【0040】
図4(b)は、図4(a)の読み出し傾斜磁場404を回転させた結果、読み出し傾斜磁場404が位相エンコード方向と読み出し方向とにそれぞれ分散された傾斜磁場407と傾斜磁場408がそれぞれの方向に印加されることを示す。つまり、位相エンコード方向と読み出し方向共に読み出し傾斜磁場成分成分が印加されることになる。また、読み出し傾斜磁場404の分散の割合は固定軸に対する回転角θ=nΔθに応じて異なる。図4(b)の傾斜磁場407, 408波形を表す点線は、この回転によって傾斜磁場波形が変化する様子を示している。その他の高周波磁場401とスライス傾斜磁場402とエコー信号405は図4(a)と同じである。
【0041】
次に、第2の軌跡例を図5に示す。図5は、ハイブリッドラディアルサンプリング法によりK空間300のデータ取得される軌跡を表す。ハイブリッドラディアルサンプリング法では、前記K空間の原点を通る直線とこれに平行な少なくとも一つの直線を含む直線群から成る軌跡がカバーする長方形領域を単位領域とし、この直線群上のデータを単位データとして取得する。そして、この直線群を一体として原点の周りにΔθ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要なK空間データを取得する。図5の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上の平行直線群500-1〜501-5を、原点の周りに反時計方向にΔθだけ回転させながら、それぞれの平行直線群上のデータ502,503,及び504を取得する例を示している。なお、図5では各々が5つの平行直線から成る4つの単位領域で全K空間データを取得する例を示しているが、単位領域数は4つに限らす2,3,5以上のいずれでも良い。また平行直線数は5つに限らず4つ以下又は6つ以上でも良い。この回転角度Δθとしては、単位領域の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、(1)式に示した回転角となる。図5の例では、N=4なので、Δθ=π/4となる。
【0042】
次に、ハイブリッドラディアルサンプリング法に基づくパルスシーケンスについて説明する。ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)とを、平行直線群(つまり単位領域)の回転に合わせて平行直線群上のデータ取得毎(つまり、単位計測毎)に回転させて印加する。各傾斜磁場の回転は(2)式と同様なので詳細な説明は省略する。そして、各回転角度で一つの平行直線群上のデータが平行直線の数と同数のエコー信号の計測により取得される。また、各単位領域の計測においては、位相エンコードを変えて直線軌跡毎に一つのエコー信号を計測する。
【0043】
図6に上記ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。ラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスと同様に、ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスも、直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスにおける位相エンコード傾斜磁場と読み出し傾斜磁場とを回転させる。さらに、一つの単位領域の計測内では、位相エンコードを変えて、その位相エンコード毎に一つのエコー信号を計測する。
【0044】
図6では、図5の4つの平行直線群にそれぞれ対応するブロック501〜504毎に5個のエコー信号を計測する場合を示している。図6では、エコー信号の違いを添え字で表しており、沿え字の番号の小さいものは、エコー信号を取得した時刻が早く、番号の大きなものは、エコー信号を取得した時刻が遅いことを意味する。図4(b)のラディアルサンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスと同様に、ブロック501〜504毎に異なるK空間上の回転角となるように、傾斜磁場出力を回転させる。つまり、図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスにおける位相エンコード傾斜磁場403と読み出し傾斜磁場404を、それぞれ回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)及び読み出し傾斜磁場 Gr(0,t)として、任意の回転角θ=nΔθの場合の位相エンコード傾斜磁場(603,605)と読み出し傾斜磁場(604, 606)とを(2)式に基づいて求める。
【0045】
図4(b)のラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスとの違いは、それぞれのブロック501〜504内では、位相エンコードパルスを付加していることである。図6では、図4(a)に示す読み出し傾斜磁場404に対応し回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場ブロック603及び604と、603及び604の出力前に図4(a)に示す位相エンコード傾斜磁場403に対応し回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場ブロック605及び606とで構成される。この傾斜磁場ブロック605及び606が位相エンコード傾斜磁場に対応する。図6の場合では、第1のブロック501内で位相エンコード量605-1の異なる5つのエコー信号501-1〜501-5を取得した後、第2のブロック502に移行して、位相エンコード量605-2及び606-2の異なる5つのエコー信号502-1〜502-5を取得する。この操作を第3のブロック503、第4のブロック504についても同様に行い、それぞれエコー信号503-1〜503-5、504-1〜504-5を取得し、画像再構成に必要な全てのエコー信号を取得する。なお、図6の場合は、ブロック501とブロック503とは互いに直交しており、ブロック501はkr軸に、ブロック503はkp軸に並行となるようにパルスシーケンスを実行しているため、傾斜磁場606-1と605-3には位相エンコード成分が含まれず、出力が一定となっている。
【0046】
次に、第3の軌跡例を図7に示す。図7は、スパイラルサンプリング法によりK空間300のデータが取得される軌跡を表す。スパイラルサンプリング法では、K空間の原点を通る一つの螺旋状(徐々に径長が長くなる渦巻き状の円弧)の曲線がカバーする領域を単位領域とし、この螺旋曲線上のデータを単位データとして取得する。そして、この螺旋曲線を原点の周りにΔθ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要なK空間データを取得する。図7の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上の螺旋曲線を、原点の周りに反時計方向にΔθだけ回転させながら、それぞれの螺旋曲線上のデータを取得する例を示している。この回転角度Δθとしては、単位領域の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、(1)式に示した回転角となる。図7の例では、N=12なので、Δθ=2π/12となる。なお、図7は、各螺旋曲線軌跡がK空間の原点より始まる例を示しているが、任意の2つ以上の螺旋を結合した螺旋曲線であっても良い。好ましくは、原点対称の関係にある2つ以上の螺旋曲線を結合すると良い。この場合は、結合された螺旋曲線軌跡に沿ってK空間の高空間周波数域から原点へ、そしてまた高空間周波数域に向かって軌跡上のデータが取得されることになる。また、図7は、各螺旋曲線が略半円状(つまり、半回転)の曲線となる場合を示しているが、螺旋の回転量を更に増大又は減少させた螺旋曲線であっても良い。また、K空間の原点を含む螺旋曲線であれば、各螺旋曲線の形状及び回転量は異なっても良い。
【0047】
次に、スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスについて説明する。スパイラルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(t)と読み出し傾斜磁場Gr(t)の振幅及び位相とを、螺旋曲線の軌跡に合わせて、時間に応じて変化させる必要がある。角速度をω(ラジアン/秒)とすると、回転角θ=0である0番目の螺旋曲線701-1の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0, t) は、ω=π/ΔT として、
Gp(0,t)=r(t)・cos(ωt)
Gr(0,t)=r(t)・sin(ωt) (0≦t≦ΔT) (4)
表すことができる。ここで、ΔTは傾斜磁場パルスが印加される期間であり、tは傾斜磁場が印加され始めた時からの経過時間を表す。また、r(t)は傾斜磁場の振幅の時間変化を表し、最も簡単な例として、傾斜磁場パルスの最大振幅をGmaxとして、r(t)=Gmaxとすることができる。各螺旋曲線の原点の周りの回転量の制御は、ωを変えることにより行う。例えば、螺旋曲線の回転量を増加させる場合はωを大きくし、螺旋曲線の回転量を減少させる場合はωを小さくする。任意の回転角θ(=n・Δθ)における螺旋軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)は、この回転角θ=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t) とGr(0,t) を、(2)式に基づいて、回転角θだけ反時計方向に回転させることにより求めることができる。
【0048】
図6に上記スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。期間806-1におけるΔTで示された期間に、(4)式に示す回転角θ=0の位相エンコード傾斜磁場802-1と読み出し傾斜磁場803-1を印加する。次の期間806-2のΔTで示された期間では、この期間806-1の両波形が(4)式に基づいてΔθ=2π/12だけ回転されて、位相エンコード傾斜磁場802-2と読み出し傾斜磁場803-2とが印加される。以降の期間806-nも同様にして、位相エンコード傾斜磁場802-1と読み出し傾斜磁場803-1の波形を角度θ=n・Δθだけ回転した波形を有する位相エンコード傾斜磁場802-nと読み出し傾斜磁場803-nが印加されることになる。その他の高周波磁場401とスライス傾斜磁場402とエコー信号405は図4(a)と同じである。
【0049】
以上、ステップ203で行われる単位計測における可能な軌跡例を3つ挙げて説明したが、上記3つの軌跡例に限らず、K空間の原点近傍を通過する他の形状の軌跡でも良い。一部が互いに重なる軌跡で有っても良いし、単位領域毎の軌跡が異なる形状であっても良い。
【0050】
次に、ステップ204での、複数の単位データを用いて一つのK空間データを合成するグリッティング処理の詳細を説明する。複数の単位データの合成処理は、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。
【0051】
図3(b)は、ラディアルサンプリング法で取得したデータを、グリッディング処理してK空間に再配置した場合の模式図である。K空間300は黒丸で示すように規則正しい格子点の座標を有する。しかし、ラディアルサンプリングで取得されたデータは301〜304の様にK空間に対して格子点上を通過しない軌跡上に位置するので、白丸で示すサンプリングされたデータはK空間の格子点座標(黒丸)と一致しない。グリッディング処理では、これらサンプリングされたデータ(白丸)を用いて、補間処理により規則正しい格子点座標(黒丸)にデータを再配置することをいう。このグリッディング処理は、例えばSinc関数やKaiserK-Bessel関数等の補間用関数を用いて行う(非特許文献5)。なお、単位データの全てをグリッディング処理して再配置する必要はなく、少なくとも単位データの内のK空間の原点近傍データをグリッディング処理して再配置しても良い。この場合、K空間の原点近傍以外のデータは既に取得済のデータを再利用してもよい。
【非特許文献5】J.I Jackson et.al.,Selection of a Convolution Function for Fourier Inversion Using Gridding,IEEE Trans.Med.Imaging,vol.10,pp.473-478,1991
【0052】
また、単位計測毎にその単位計測で取得された単位データのみをグリッディング処理対象にし、この単位計測と同じ単位領域のデータであって以前に取得された単位データを全体K空間データの合成から排除する。つまり、全体K空間データを構成する単位データセットの中でFIFO(First-in, First-out)制御を行う。また、単位データセット中の他の単位データのグリッディング処理は前回のグリッディング処理結果をそのまま利用する。これによりグリッディング処理時間を短縮することができる。
【0053】
各単位データを上記グリッディング処理して一つのK空間に再配置した結果、再配置された単位データが互いに重ならない点のデータはそのままで良い。しかし、再配置された単位データが互いに重なる点に関しては、例えば重み付加算を行う必要がある。特に、K空間の低空間周波数領域に関しては、複数の再配置された単位データが互いに重なる可能性が高いので、重み付加算により合成する。具体的には、K空間の一つの格子点iに複数の単位データが重なる場合には、再配置された単位データiの格子点jにおけるデータをdij重み係数をwiとすると、重み付加算後のその格子点iの値Diを、
【数1】
とすることができる。 単位データnが取得された時相の造影剤の状況を強調した画像を取得するためには、重み係数wnを他の重み係数wmよりも大きくする。例えば、wn=1.0 、wn-1=0.5 、wn-2=0.2 、…のように、単位データnの計測時相から時間的に離れるに従って重み係数を小さくする。極端には、wn=1.0、他の重み係数を0(ゼロ)とすることも可能である。また、単位データnの取得直後に、その単位データnの取得時相における造影剤状況が強調された画像の再構成及び表示とを行うためには、その単位データnとその単位データnの取得以前に取得された単位データのみを用いてK空間データを合成することが好ましい。しかし、単位データnの計測時より以後の単位データを用いても良い。この場合は、必要な単位データの取得が終了するまで画像の再構成が行われず、単位データの取得と画像再構成との間に時間的遅れが生じることになる。
【0054】
次に、ステップ205の画像表示の詳細を説明する。前述した様に、単位データが取得される毎に、ステップ204でその単位データを含んで全体K空間データが合成され、その合成された全体K空間データを用いて画像が時系列に再構成される。そして、再構成された画像をその都度表示することにより、造影剤が被検体の撮像領域を追加していく様子を略リアルタイムで観察することができる。また、TIC曲線も表示しても良い。画像表示及びTIC曲線の描画の処理は、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。以下、最初に画像再構成について説明する。
【0055】
図9に、時系列に画像が再構成される例を示す。ただし、一つ一つの単位データの時間幅をTIC曲線の時間幅に対してかなり長く強調して記載しているが、実際の単位データの時間幅はTIC曲線の時間幅に対してかなり小さく多数の単位データが取得される。図9では、時間的に隣接する5つの単位データを一つのセットとして全体K空間データを合成し、この合成された全体K空間データを用いて一つの画像を再構成する処理を、単位データが取得される度に行われることを示している。具体的には、5つの単位データ(n-2)〜(n-6)を用いてwn-2を最も大きくしてK空間データを合成し、この合成されたK空間データを用いて、単位データ(n-2)が取得された時相の造影剤の状況を表す(n-2)画像を再構成する。同様にして、5つの単位データ(n-1)〜(n-5)を用いてwn-1を最も大きくしてK空間データを合成し、この合成されたK空間データを用いて、単位データ(n-1)が取得された時相の造影剤の状況を表す(n-1)画像を再構成する。以下、同様に最新の単位データが取得される毎に、その単位データを用いてその単位データの重み係数を最大にし最古の単位データを破棄して全体K空間データを合成し、この合成された全体K空間データを用いて最新の単位データが取得された時相の造影剤の状況を表す画像を再構成する。前述したように、取得された時刻と共に各単位データが記憶されるので、再構成された画像が表す造影剤の時相、つまり、造影剤が注入されてからの経過時間も容易に求めることができる。
【0056】
なお、図9は、最新の単位データが取得された直後に、その時相の造影剤の状況を表す画像を再構成する例を示しているが、前述したように、任意の時相kの造影剤の状況を表す画像の取得のために、時相k以降の時相の単位データを用いても良い。例えば、単位データ(k-2)〜(k+2)を用いて、単位データkを取得した時相の造影剤の状況を表すように重みwkを最も大きくして(k)画像を再構成しても良い。
【0057】
次に、TIC曲線について説明する。図9の曲線901はTIC曲線の例を示す。撮像領域から得られるエコー信号の信号強度は造影剤の通過によりTIC曲線の様に時々刻々と変化する。具体的には、撮像領域において造影剤の濃度が増大するにつれてエコー信号の信号強度が増大し、造影剤濃度がピークに到達したときに最も信号強度が高くなる。そして、造影剤濃度が減少して行くに従ってエコー信号の信号強度も減少していく。つまり、撮像領域から得られるエコー信号の信号強度は、その撮像領域における造影剤濃度に比例する。このように撮像領域における造影剤濃度を反映した信号強度を精度良く計測するためには、信号強度として、エコー信号がピークとなる時のその振幅値とすることができる。或いは数学的に等価である、エコー信号をフーリエ変化した後の総和とすることができる。エコー信号がピークとなる時は、そのエコー信号を計測する軌跡がK空間の原点近傍を通過する時である。前述の様に、各単位領域をカバーするK空間軌跡は、必ずK空間の原点近傍を通過するので、単位計測毎に撮像領域における造影剤濃度を表す信号強度を取得することが可能となる。このような信号強度をそれが取得された単位計測が行われた時相と共にプロットすれば、撮像領域の信号強度変化を表すTIC曲線となる。
【0058】
以上の様に、単位データが取得される毎に、上記信号強度をプロットしてTIC曲線を描画するとともに、その単位データを用いて再構成された画像を表示することにより、撮像領域における造影剤の濃度変化を視覚的に容易に把握することが可能になる。
【0059】
また、取得された時系列画像及びTIC曲線を、造影MRA撮像の後に再生表示することも可能である。図10はその例を示す。図10は、ディスプレイ20上に、画像とTIC曲線とシネゲージ1001とを表示した例を示す。シネゲージ1001とTIC曲線とは時間的関係が一致するように時間軸を合わせて表示される。そして、シネゲージ1001上で時相表示バー1002によって指定された時相に取得された画像が表示される。また、この時相表示バー1002をマウス又はトラックボール23等で左右に移動させることによって、その時相表示バー1002の移動に連動して、時相表示バー1002が表す時相に取得された画像が表示される。具体的には、時相表示バー1002を左側に移動させるとより過去の時相に取得された画像が表示され、右に移動させるとより最近の時相に取得された画像が表示される。また、シネゲージ1001には、再生ボタン1004とポーズボタン1003とが備えられ、再生ボタン1004を押下することにより、自動的に時相表示バー1002をシネゲージ1001上で左から右に向けて移動させると共に、その時々刻々の時相表示バー1002が表す時相の画像を時系列に表示する動画表示を行う。また、ポーズボタン1003を押下することにより、動画表示を途中で停止し、再度ポーズボタン1003を押下することにより、停止された時相から動画表示を再開する。なお、設定により、動画表示により最後の画像を表示した直後に最初の画像表示に戻って動画表示をループ再生しても良い。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、K空間原点近傍を通過する軌跡を含む単位領域からデータを取得する単位計測を、単位領域をK空間原点周りに回転させながら短い繰り返し時間で繰り返すことによって、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致させることが出来るようになる。そのため、煩雑な撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を行わなくとも、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達したときの画像を容易に取得することが出来るようになり、明瞭な血管像を取得することが可能になる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、造影MRA撮像が終了した後に、取得された複数の単位データの中から画像再構成に必要な単位データを選択して画像再構成する形態である。これ以外は、第1の実施形態で説明した撮像及び画像再構成方法と同じなので、同じ処理部分の説明は省略する。
【0062】
図11に本実施形態の処理フローを示す。図11は図2に示した第1の実施形態の処理フローに、本実施形態特有の処理を追加したフローチャートであるので、以下、追加処理についてのみ詳細に説明する。なお、点線で表示されたステップ205は実施しても実施しなくとも良いことを表す。この処理フローは、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。
【0063】
ステップ1108で、例えば磁気ディスク等に記憶された、複数の単位データの中から所望の単位データのセットを選択する。単位データのセットを選択する手順の詳細は後述する。
ステップ1109で、選択した単位データのセットがカバーする期間から、強調時相を選択する。つまり、画像化されるべき造影剤の時相を選択する。この強調時相の選択の詳細は後述する。
ステップ1110で、選択された単位データのセットと選択された強調時相とに基づいて、選択した強調時相における造影剤状況を強調した画像を再構成して表示する。画像再構成の詳細は後述する。
【0064】
ステップ1111で、操作者が表示された画像に満足すれば、処理はそこで終了する。満足しなければ、ステップ1108に戻って、別の単位データのセットを選択する。以降、選択した単位データセットに基づく画像に満足するまでステップ1108〜ステップ1111を繰り返す。
例えば、K空間原点を一回転する画像再構成のために必要な単位データの最小数をNとして、5N個の単位データが取得された場合に、5N通りの強調時相の選択が可能となるので、少なくとも5N通りの異なる画像を再構成することができる。さらに、同じ強調時相でも、単位データセットの選択を変えることによって、更に多くの異なる画像を取得することができる。これらの画像を比較することによって、事前に撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を行わなくとも造影剤濃度がよりピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。また、必要な単位データの取捨選択を行うことにより、より高画質の画像を得ることが可能になる。
【0065】
なお、上記ステップ1108〜ステップ1111の処理において、ステップ1108を省略しても良い。ステップ1108を省略した場合は、ステップ1109で選択した強調時相を含む所定期間内の単位データを自動的に選択する。例えば、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時以前に取得された単位データを所定数(例えば、K空間原点を1回転するだけの単位データ数)を選択する。或いは、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時を中心にその前後に取得された単位データを対称に所定数を選択する。或いは、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時以後に取得された単位データを所定数を選択する。
【0066】
以上は、操作者が単位データセット及び強調時相を選択することによって、その選択に基づいて画像を再構成する例を説明したが、操作者の選択によらず自動で強調時相を選択すると共に強調時相を一定速度で移動させることにより、動画として表示することも可能である。例えば、最初の時相から最後に時相まで一定速度で強調時相を移動させながら、各強調時相では、その時相に対応する単位データとそれに時間的に隣接する複数の単位データを画像再構成に必要な数だけ選択して画像再構成する。これにより、撮像領域に造影剤が流れる様子を動画として自動的に表示することが可能になる。
【0067】
次に、図13に示す、ディスプレイ20に表示される単位データセット選択のためのユーザーインターフェース(UI)の例に基づいて上記各ステップの詳細を説明する。
【0068】
最初にステップ1108における単位データセットの選択の手順を詳細に説明する。ディスプレイ20の上部にはTIC曲線901を表示する。そして、例えばTIC曲線の時間軸上に、単位データセットを選択するために期間バー1201を表示する。この期間バー1201は、バー長が表す期間内に取得された単位データが選択されることを示す。そして、トラックボール又はマウス23を介して、時間軸上でバーの長さが変えられ、バーの位置が左右に移動されることによって、単位データセットを選択するための期間が変えられる。なお、図13は期間バー1201が一つの場合を示しているが、複数の期間バーを表示して、複数の期間が単位データを選択しても良い。
【0069】
次に、ステップ1109における強調時相を選択する処理の詳細について説明する。期間バー1201上に強調時相を選択するための時相指示カーソル1202を表示する。時相指示カーソル1202を、トラックボール又はマウス23を介して、期間バー1201の範囲内で左右に移動することにより、期間バー1201が表す期間内で強調時相を指定する。
【0070】
次に、ステップ1110における画像再構成の詳細について説明する。期間バー1201と時相指示カーソル1202によって単位データセットと強調時相が指定された後に、再構成ボタン1204がトラックボール又はマウス23を介して押下されると、その指定された単位データセットが選択されて例えば磁気ディスク18からCPU8に読み込まれる。そして、CPU8は選択された強調時相の造影剤状況を表す画像の再構成を行い、結果画像1203を時相指示カーソル1202によって指定された時刻と共にディスプレイ20の下段に順次表示する。図13では、時相指示カーソル1202によって指定された強調時相の異なる6の画像1203-1〜1203-6が表示されている例を示している。以上の様に、TIC曲線上で強調時相を指定できるので、容易に造影剤濃度がピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。
【0071】
画像再構成の際には、(5)式に示した重み係数の内、選択された強調時相に対応する単位データへの重み係数を最大として、他の単位データに対応する重み係数を小さい値とする。例えば、強調時相に対応する単位データを(n)とし、その前後の単位データ重み係数を以下の様にすることができる。
単位データ … (n−2) (n−1) (n) (n+1) (n+2) …
重み係数 … 0.2 0.4 1.0 0.4 0.2 …
これにより、選択された強調時相に対応する造影剤状況が再構成される画像において強調されることになる。なお、選択された単位データセットが、K空間原点を1回転以上する量の単位データとなった場合には、重複する回転角の単位データに関しては、単純な加算平均、強調時相により近い時相に取得された単位データの重みを大きくした重み付加算平均、或いは、強調時相により近い時相に取得された単位データのみ選択する、等の処理を行うことができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、取得された複数の単位データの中から、最適な単位データの取捨選択と強調時相とを選択することができるので、造影剤濃度がよりピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。しかも、TIC曲線を参照しながら造影剤濃度がピークに到達するタイミングを容易に認識できるので、そのタイミングを捉えた最適な単位データ及び強調時相の選択が容易になる。
【0073】
以上迄が、本発明のMRI装置の各実施形態の説明である。しかし、本発明のMRI装置は、上記実施形態の説明で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で他の形態を取り得る。例えば、以上の説明では2次元画像による説明であったが、本発明はマルチスライス、さらには3次元画像への適用も同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の一例の全体概要を説明する図。
【図2】第1の実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャート。
【図3】(a) ラディアルサンプリング法によりK空間のデータが取得される軌跡を表す図、(b) ラディアルサンプリング法で取得したデータを、グリッデング処理してK空間に再配置した場合の模式図。
【図4】ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図5】ハイブリッドラディアルサンプリング法によりK空間のデータ取得される軌跡を表す図。
【図6】ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図7】スパイラルサンプリング法によりK空間のデータが取得される軌跡を表す図。
【図8】スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図9】時系列に画像が再構成される例を示す図。
【図10】撮像後に再生表示する際の、ディスプレイに表示される画像、TIC曲線、及びシネゲージの例を示す図。
【図11】第2の実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャート。
【図12】撮像領域における造影剤濃度の変化を表す図。
【図13】ディスプレイに表示される単位データセット選択のためのユーザーインターフェース(UI)の例を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に、造影剤を用いて血管系を描出することが可能なMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮像においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
このようなMRI装置を用いた血管描出法は、MRアンジオグラフィ(MRA)と呼ばれ、造影剤を用いる方法と造影剤を用いない方法がある。造影剤を用いるMRAでは、Gd-DTPAなどのT1短縮型の造影剤を用いるとともにグラジエントエコー系のTRが短いパルスシーケンスによる撮像が行われる。同一の領域に対して、高周波磁場による励起を短いTRで連続的に行うことにより、その領域の組織に含まれるスピンは飽和状態となり、得られるエコー信号は低いものとなるが、T1短縮型の造影剤を含む血流スピンは、同じTRで励起されても飽和が起こりにくく、他の組織よりも相対的に高い信号を発する。これを利用し、撮像対象である血管内に造影剤が滞留している間に、当該血管を含むボリュームデータの取得を行い、投影処理、差分処理等の必要な画像処理を行うことにより2次元投影像として血管を描出することができる。
【0004】
このような造影MRAでは、造影剤の注入後、造影剤が目的血管に滞留している短い期間内に撮像を完了する必要がある。特に、目的血管がより高輝度に描出された画像を取得するためには、当該血管内の造影剤濃度がピークに達するタイミングとK空間の原点近傍のデータを取得するタイミングとを一致させることが肝要である。つまり、造影MRAでは、撮像を行うタイミングが重要であり、目的血管における造影剤濃度の時間的変化に合わせて撮像を行うことが重要となる。
【0005】
撮像タイミングを決定する方法として、主として、本撮像前に少量の造影剤を注入し、予め目的血管への造影剤到達時間を計測しておくテストインジェクション法と、撮像時間の短い2次元撮像による透視下で目的血管への造影剤の到達をモニタリングし、造影剤が到達すると同時に3次元の本撮像を開始するフルオロスコピックトリガー法と、がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-41476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記いずれの方法においても、目的血管内の造影剤濃度がピークに達するタイミングを取得するための前処理が多く煩雑である。また、一般的に、撮像タイミング調整という過程を有する限り、自動操作や手動操作に関わらず、最適な撮像タイミングを逸する可能性を回避できない。最適タイミングを逃すと最適な血管画像が得られないので、再撮像を行う必要が生じ、スループットの低下や被検体への負担増加となってしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、造影MRAにおいて、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を不要とし、かつ撮像タイミングに依存しない簡便で確実な造影MRAを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のMRI装置は以下の様に構成される。即ち、静磁場を発生する静磁場発生手段と、静磁場中に配置され造影剤が注入された被検体の所望の撮像領域に傾斜磁場と高周波磁場を印加する磁場発生手段と、所望の撮像領域からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、磁場発生手段と検出手段とを制御して、K空間内の所定の軌跡に沿うデータを取得する様に核磁気共鳴信号を計測する計測制御手段と、前記K空間のデータを用いて撮像領域の画像を再構成する画像再構成手段と、を備え、計測制御手段は、少なくとも造影剤が撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、画像再構成手段は、複数の単位計測で取得されたデータを合成して画像を再構成する。
【0009】
好ましくは、画像再構成手段は、単位計測毎に、該単位計測で取得された単位データの内の少なくともK空間の原点近傍データを含んで画像を再構成する。
また、好ましくは、複数の前記単位データを該単位データが取得された時刻と共に記憶する第2の記憶手段と、記憶された複数の単位データの中から所望の単位データを複数選択する手段と、を有し、画像再構成手段は、選択された複数の単位データを用いて画像を再構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMRI装置によれば、造影MRAにおいて、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理をすることなく、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致させることが出来るようになる。したがって、単位計測を繰り返しつつ、その単位計測で取得された単位データを用いて画像再構成すれば、少なくとも一つの画像は造影剤濃度がピークの時の画像となる。或いは、撮像後に、造影剤濃度がピークとなる時に取得された単位データを含む複数の単位データを選択して画像再構成すれば、容易に造影剤濃度がピークの時の画像を取得することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
最初に、本発明が適用されるMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1はMRI装置の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、核磁気共鳴(NMR)現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図7に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0013】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。静磁場発生系2はガントリ51内に収容される。
【0014】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。傾斜磁場コイル9はガントリ51内に、傾斜磁場電源10は筐体53にそれぞれ収容される。
【0015】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。シーケンサ4は筐体53内に収容される。
【0016】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。一般的に高周波コイル14aがガントリ51内に収容され、他は筐体53内に収容される。
【0017】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるNMR信号(以下、エコー信号という)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。 一般的に受信系6を構成する前記装置群はガントリ51内に収容される。
【0018】
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。信号処理系7は処理装置54内に収容される。
【0019】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0020】
なお、図7において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0021】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0022】
上記の様なMRI装置において実施される本発明は、K空間の原点又は原点近傍(以下、両者をまとめて原点近傍と表記するが、「原点近傍」が「原点」の場合も含むものとする)の低空間周波数領域を短時間で繰り返し計測する。これにより、特に撮像タイミング調整をしなくとも、少なくとも一つの計測タイミングが撮像領域における造影剤濃度がピークに到達したタイミングと略一致することになる。K空間の原点近傍の低空間周波数領域が画像の信号強度及びコントラスト支配的に決定する情報を含む領域であるので、このタイミングが略一致した単位計測により取得されたデータを用いて画像を再構成すれば、その画像は撮像領域の血管を明瞭に描出したものとなる。これにより、撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を不要とするものである。以下、本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
次に、本発明のMRI装置における第1の実施形態を説明する。本実施形態は、造影剤が注入された被検体の血管を撮像する造影MRAであって、少なくとも造影剤が被検体の撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする領域のデータを取得する単位計測を、K空間原点を中心に単位領域を回転させて繰り返し、単位計測毎に該単位計測によって取得されたデータの少なくとも一部を含んで画像再構成することによって、所望の領域を略リアルタイムに撮像する形態である。
【0024】
最初に、本実施形態の概要を図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャートである。以下、図2に示すフローチャートの各ステップの概要を説明する。
【0025】
ステップ201で、被検体の血管に造影剤を注入する。例えば肘静脈から造影剤を注入する。造影剤の注入は、術者が手動で行っても良いし、注入装置を用いてMRI装置と連動して行っても良い。
ステップ202で、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする領域(以下、単位領域という)の固定軸に対する回転角度θの初期値を設定する。
例えば、固定軸としてK空間横軸(kr軸)を用い、このkr軸に対する回転角度の初期値としてθ=0とする。
【0026】
ステップ203で、固定軸に対して回転角度θを成す単位領域上のデータ(以下、単位データという)を取得する単位計測を行う。
取得された単位データはその取得時刻又は取得順序と共に、例えば磁気ディスク18等の記憶手段に記憶される。この単位領域をカバーする軌跡は、少なくともその一部がK空間の原点近傍、好ましくは原点を通過する軌跡であればどのような軌跡でも良い。例えば、K空間原点を通る放射状直線、K空間原点を通る放射状直線とこの放射状直線に平行な1以上の平行直線群、或いはK空間原点を含むスパイラル状の曲線とすることができる。各々の軌跡例の詳細は、その軌跡に好適なパルスシーケンスの詳細と共に後述する。この単位計測によって、単位領域つまり軌跡によってカバーされるK空間の一部の領域のデータが単位データとして取得される。つまり、単位計測毎に画像再構成に必要な全K空間データの一部である単位データが取得される。
【0027】
ステップ204で、複数の単位データを用いて1枚の画像の再構成を行う。つまり、各単位計測で取得された単位データを複数用いて、画像再構成に必要な1セットの全K空間データを合成した後に画像再構成を行う。再構成された画像は、再構成された時刻又は順序と共に例えば磁気ディスク18に記憶される。
複数の単位データの合成に関しては、グリッティング処理を用いて各単位データを一つのK空間に合成する。複数の単位データの合成の詳細については後述する。
なお、上記ステップ21とステップ202〜204の順序を入れ替えて、ステップ102をステップ204の後に行って、撮像シーケンスが開始された後に造影剤を被検体に注入しても良い。
【0028】
ステップ205で、ステップ204で再構成された画像を表示する。また、撮像領域から得られる信号強度の時間的変化を表す曲線(PIC;Time intensity curve)も表示しても良い。
例えば、各単位データの内のK空間原点データ、つまり、各単位データの最大値をその単位データを取得した時相における撮像領域から得られる信号強度とする。この撮像領域から得られる信号強度は、撮像領域における造影剤濃度を反映しているので、信号強度の時間的変化は、造影剤が撮像領域を通過していく際の濃度変化を反映していることになる。従って、信号強度の変化曲線を視覚的に表示することによって、撮像領域における造影剤の濃度及び通過状況を視覚的に把握することが可能になる。TIC曲線の詳細は後述する。
【0029】
ステップ206で、造影剤が撮像領域を通過したと判定出来たときは、その撮像領域での撮像を中止する。
この判定は、ステップ205で表示されるTIC曲線の変化や画像における血管の輝度の変化を検出して自動的に停止することも可能である。或いは、操作者がTIC曲線や画像を監視し、充分と思われる適当なタイミングに手動で停止することも可能である。一方、造影剤が撮像領域をまだ通過していないと判定したときは、ステップ207に移行する。
【0030】
ステップ207で、単位領域をK空間原点の周りに所定の角度Δθだけ回転させる。
そして、ステップ203に戻り、この回転された単位領域上のデータを取得する単位計測を行う。以降、造影剤が撮像領域を通過するまでステップ203〜205を短い繰り返し時間TRの時間間隔で繰り返す。
【0031】
繰り返し時間TRを例えば数msec〜数10msec程度とすると、造影剤が撮像領域を通過する時間は数sec〜数10secであるので、約千倍の時間分解能で撮像領域における造影剤濃度変化情報を取得することが可能になる。従って、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致することになる。そこで、造影剤注入直後から単位計測を繰り返しつつ、その単位計測毎に該単位計測で取得された単位データの少なくとも一部を用いて画像再構成すれば、少なくとも一つの画像は造影剤濃度がピークの時相の画像となる。
【0032】
また、この繰り返しによって、撮像期間中にK空間原点を中心に単位領域を何周も回転させて、画像再構成に必要な全K空間データをカバーする単位データの最小セットを構成する単位データ数の何倍もの単位データを取得する。例えば、全K空間をN個の単位データでカバーするとすると、総単位データ数は5N〜100N程度となる。また、単位計測毎に該単位計測によって取得された単位データの少なくとも一部を含んで画像再構成することによって、撮像領域における造影剤の通過状況の異なる複数の画像を時系列に取得する。これによって、その撮像領域を略リアルタイムに観察することが可能になる。
【0033】
次に、上記各ステップ内で行われる処理に関して、更に詳細な説明が必要なステップを以下に説明する。
最初に、ステップ201の造影剤注入について詳細に説明する。血管に注入された造影剤は、一定時間後に撮像領域に到達して流入し、その後撮像領域から流出していく。撮像領域における造影剤濃度の変化を表すと図12の様になる。曲線1105は各時刻における撮像領域における造影剤の濃度変化を示している。時刻T1は造影剤注入直後なので撮像領域には造影剤が到達してなく、造影剤濃度は明らかに0である。その後、造影剤は徐々に撮像領域に到達し始め、時刻t2には造影剤の濃度増加が顕著となる。やがて、時刻t3には造影剤の濃度増加がピークとなる。しかし、その後は造影剤濃度は減少に転じ、時刻t4においては多くの造影剤が撮像領域から流出している。以降に説明する撮像領域を撮像するためのパルスシーケンスは造影剤注入直後の時刻T1以降に開始される。
【0034】
次に、ステップ203で行われる単位計測の詳細を説明する。前述した通り、各単位計測では、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域上のデータである単位データが取得される。この単位領域をカバーする軌跡は、複数の異なる形状が可能であり、その軌跡上のデータを取得するためのパルスシーケンスの傾斜磁場波形を規定する。単位領域をカバーする軌跡に必要な条件は、その軌跡の少なくとも一部がK空間の原点近傍を通過することのみである。以下、可能な軌跡形状の例を対応するパルスシーケンスと合わせて以下に説明する。これらは、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8を介してシーケンサ4にロードされて実行されることにより、シーケンサ4がそのプログラムに従って傾斜磁場発生系3、送信系5、受信系6、及び信号処理系7を制御することにより行われるものである。
【0035】
第1の軌跡例を図3(a)に示す。図3(a)は、ラディアルサンプリング法によりK空間300のデータが取得される軌跡を表す。ラディアルサンプリング法では、K空間の原点を通る一つの放射状の直線がカバーする領域を単位領域とし、この放射直線上のデータを単位データとして取得する。そして、この放射直線軌跡を原点の周りにΔθづつ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要な全K空間データを取得する。図3(a)の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上で一つの放射直線軌跡を原点の周りに反時計方向にΔθづつ回転させながら、放射直線軌跡300〜309のデータを取得する例を示している。この回転角度Δθとしては、放射直線軌跡の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、
Δθ=π/N (1)
とすると良い。図3(a)の例では、N=10なので、Δθ=π/10となる。
【0036】
次に、ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスについて説明する。ラディアルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(t)と読み出し傾斜磁場Gr(t)とを、放射直線軌跡(つまり単位領域)の回転に合わせて、軌跡上のデータ取得毎(つまり、単位計測毎)に回転させて印加する。そして、各回転角度で一つの放射直線軌跡上のデータが一つのエコー信号の計測により取得される。例えば、n番目の放射直線軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)は、固定軸(kr軸)に対する回転角=0である0番目の放射直線軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0,t)を基準とすると、
Gp(n,t)=Gp(0,t)・cos(nΔθ)−Gr(0,t)・sin(nΔθ) (2)
Gr(n,t)=Gp(0,t)・sin(nΔθ)+Gr(0,t)・cos(nΔθ)
と表すことができる。ここで、tは高周波磁場印加時からの経過時間を表す。固定軸に対する回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0,t)としては、例えば、z方向にのみ読み出し傾斜磁場が、y方向にのみ位相エンコード傾斜磁場が分離されて印加される場合の傾斜磁場波形を想定すれば良い。
【0037】
図4に上記ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。図4(a)は、従来の直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスであり、図4(b)は図4(a)のパルスシーケンスをラディアルサンプリング法に適用する場合のパルスシーケンス例を示す。
【0038】
最初に、図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスを説明する。図4(a)のRF、Gs、Gp、Gr、echoはそれぞれ、RFパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、エコー信号の軸を表し、401はRFパルス、402はスライス選択傾斜磁場パルス、403は位相エンコード傾斜磁場パルス、404は読み出し傾斜磁場パルス、406はエコー信号、407は繰り返し時間(TR,RFパルス401の時間間隔)である。RFパルス401とスライス方向(X軸方向)に印加されるスライス傾斜磁場402とで関心領域を選択励起し、位相エンコード方向(y方向)に位相エンコード傾斜磁場403と読み出し方向(z方向)に読み出し傾斜磁場404を印加して計測するエコー信号405に位置情報をエンコードする。エコー信号405はCPU8に内蔵されたメモリに計測された時刻と共に格納されると共に磁気ディスク18等の記憶手段に記憶される。なお、時刻はエコーの格納順序でも良い。繰り返し時間TRで図4(a)のパルスシーケンスを繰り返してエコー信号405を計測し、画像再構成に必要な数のK空間データを取得する。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり64,128,256,512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128,256,512,1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として得られる。これらのデータを2次元フーリエ変換して1枚のMR画像を再構成する。
【0039】
この図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスをラディアルサンプリング法に適用する場合には、位相エンコード傾斜磁場403を常に0(ゼロ)とし、読み出し傾斜磁場404を(2)式に示した様に回転させる。つまり、固定軸に対する回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)及び読み出し傾斜磁場 Gr(0,t)とをそれぞれ0(ゼロ)及び図4(a)に示した読み出し傾斜磁場404とし、任意の回転角θの場合の位相エンコード傾斜磁場407と読み出し傾斜磁場408とを以下の様に求める。
Gp(n,t)=−Gr(0,t)・sin(nΔθ) (3)
Gr(n,t)=Gr(0,t)・cos(nΔθ)
【0040】
図4(b)は、図4(a)の読み出し傾斜磁場404を回転させた結果、読み出し傾斜磁場404が位相エンコード方向と読み出し方向とにそれぞれ分散された傾斜磁場407と傾斜磁場408がそれぞれの方向に印加されることを示す。つまり、位相エンコード方向と読み出し方向共に読み出し傾斜磁場成分成分が印加されることになる。また、読み出し傾斜磁場404の分散の割合は固定軸に対する回転角θ=nΔθに応じて異なる。図4(b)の傾斜磁場407, 408波形を表す点線は、この回転によって傾斜磁場波形が変化する様子を示している。その他の高周波磁場401とスライス傾斜磁場402とエコー信号405は図4(a)と同じである。
【0041】
次に、第2の軌跡例を図5に示す。図5は、ハイブリッドラディアルサンプリング法によりK空間300のデータ取得される軌跡を表す。ハイブリッドラディアルサンプリング法では、前記K空間の原点を通る直線とこれに平行な少なくとも一つの直線を含む直線群から成る軌跡がカバーする長方形領域を単位領域とし、この直線群上のデータを単位データとして取得する。そして、この直線群を一体として原点の周りにΔθ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要なK空間データを取得する。図5の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上の平行直線群500-1〜501-5を、原点の周りに反時計方向にΔθだけ回転させながら、それぞれの平行直線群上のデータ502,503,及び504を取得する例を示している。なお、図5では各々が5つの平行直線から成る4つの単位領域で全K空間データを取得する例を示しているが、単位領域数は4つに限らす2,3,5以上のいずれでも良い。また平行直線数は5つに限らず4つ以下又は6つ以上でも良い。この回転角度Δθとしては、単位領域の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、(1)式に示した回転角となる。図5の例では、N=4なので、Δθ=π/4となる。
【0042】
次に、ハイブリッドラディアルサンプリング法に基づくパルスシーケンスについて説明する。ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)とを、平行直線群(つまり単位領域)の回転に合わせて平行直線群上のデータ取得毎(つまり、単位計測毎)に回転させて印加する。各傾斜磁場の回転は(2)式と同様なので詳細な説明は省略する。そして、各回転角度で一つの平行直線群上のデータが平行直線の数と同数のエコー信号の計測により取得される。また、各単位領域の計測においては、位相エンコードを変えて直線軌跡毎に一つのエコー信号を計測する。
【0043】
図6に上記ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。ラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスと同様に、ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスも、直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスにおける位相エンコード傾斜磁場と読み出し傾斜磁場とを回転させる。さらに、一つの単位領域の計測内では、位相エンコードを変えて、その位相エンコード毎に一つのエコー信号を計測する。
【0044】
図6では、図5の4つの平行直線群にそれぞれ対応するブロック501〜504毎に5個のエコー信号を計測する場合を示している。図6では、エコー信号の違いを添え字で表しており、沿え字の番号の小さいものは、エコー信号を取得した時刻が早く、番号の大きなものは、エコー信号を取得した時刻が遅いことを意味する。図4(b)のラディアルサンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスと同様に、ブロック501〜504毎に異なるK空間上の回転角となるように、傾斜磁場出力を回転させる。つまり、図4(a)に示す直交系サンプリング法に基づくグラジエントエコー法パルスシーケンスにおける位相エンコード傾斜磁場403と読み出し傾斜磁場404を、それぞれ回転角=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)及び読み出し傾斜磁場 Gr(0,t)として、任意の回転角θ=nΔθの場合の位相エンコード傾斜磁場(603,605)と読み出し傾斜磁場(604, 606)とを(2)式に基づいて求める。
【0045】
図4(b)のラディアルサンプリング法を実現するグラジエントエコー法パルスシーケンスとの違いは、それぞれのブロック501〜504内では、位相エンコードパルスを付加していることである。図6では、図4(a)に示す読み出し傾斜磁場404に対応し回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場ブロック603及び604と、603及び604の出力前に図4(a)に示す位相エンコード傾斜磁場403に対応し回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場ブロック605及び606とで構成される。この傾斜磁場ブロック605及び606が位相エンコード傾斜磁場に対応する。図6の場合では、第1のブロック501内で位相エンコード量605-1の異なる5つのエコー信号501-1〜501-5を取得した後、第2のブロック502に移行して、位相エンコード量605-2及び606-2の異なる5つのエコー信号502-1〜502-5を取得する。この操作を第3のブロック503、第4のブロック504についても同様に行い、それぞれエコー信号503-1〜503-5、504-1〜504-5を取得し、画像再構成に必要な全てのエコー信号を取得する。なお、図6の場合は、ブロック501とブロック503とは互いに直交しており、ブロック501はkr軸に、ブロック503はkp軸に並行となるようにパルスシーケンスを実行しているため、傾斜磁場606-1と605-3には位相エンコード成分が含まれず、出力が一定となっている。
【0046】
次に、第3の軌跡例を図7に示す。図7は、スパイラルサンプリング法によりK空間300のデータが取得される軌跡を表す。スパイラルサンプリング法では、K空間の原点を通る一つの螺旋状(徐々に径長が長くなる渦巻き状の円弧)の曲線がカバーする領域を単位領域とし、この螺旋曲線上のデータを単位データとして取得する。そして、この螺旋曲線を原点の周りにΔθ回転させながら単位計測を繰り返すことにより、全K空間をカバーして画像再構成に必要なK空間データを取得する。図7の例では、横軸をkr、縦軸をkpとする2次元K空間上の螺旋曲線を、原点の周りに反時計方向にΔθだけ回転させながら、それぞれの螺旋曲線上のデータを取得する例を示している。この回転角度Δθとしては、単位領域の数をNとすると、全K空間を均等にカバーするためには、(1)式に示した回転角となる。図7の例では、N=12なので、Δθ=2π/12となる。なお、図7は、各螺旋曲線軌跡がK空間の原点より始まる例を示しているが、任意の2つ以上の螺旋を結合した螺旋曲線であっても良い。好ましくは、原点対称の関係にある2つ以上の螺旋曲線を結合すると良い。この場合は、結合された螺旋曲線軌跡に沿ってK空間の高空間周波数域から原点へ、そしてまた高空間周波数域に向かって軌跡上のデータが取得されることになる。また、図7は、各螺旋曲線が略半円状(つまり、半回転)の曲線となる場合を示しているが、螺旋の回転量を更に増大又は減少させた螺旋曲線であっても良い。また、K空間の原点を含む螺旋曲線であれば、各螺旋曲線の形状及び回転量は異なっても良い。
【0047】
次に、スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスについて説明する。スパイラルサンプリング法を実現するためには、パルスシーケンスにおいて印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(t)と読み出し傾斜磁場Gr(t)の振幅及び位相とを、螺旋曲線の軌跡に合わせて、時間に応じて変化させる必要がある。角速度をω(ラジアン/秒)とすると、回転角θ=0である0番目の螺旋曲線701-1の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t)と読み出し傾斜磁場Gr(0, t) は、ω=π/ΔT として、
Gp(0,t)=r(t)・cos(ωt)
Gr(0,t)=r(t)・sin(ωt) (0≦t≦ΔT) (4)
表すことができる。ここで、ΔTは傾斜磁場パルスが印加される期間であり、tは傾斜磁場が印加され始めた時からの経過時間を表す。また、r(t)は傾斜磁場の振幅の時間変化を表し、最も簡単な例として、傾斜磁場パルスの最大振幅をGmaxとして、r(t)=Gmaxとすることができる。各螺旋曲線の原点の周りの回転量の制御は、ωを変えることにより行う。例えば、螺旋曲線の回転量を増加させる場合はωを大きくし、螺旋曲線の回転量を減少させる場合はωを小さくする。任意の回転角θ(=n・Δθ)における螺旋軌跡上のデータ取得時に印加される位相エンコード傾斜磁場Gp(n,t)と読み出し傾斜磁場Gr(n,t)は、この回転角θ=0である0番目の位相エンコード傾斜磁場Gp(0,t) とGr(0,t) を、(2)式に基づいて、回転角θだけ反時計方向に回転させることにより求めることができる。
【0048】
図6に上記スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例として、グラジエントエコー法を用いたパルスシーケンスの例を説明する。なお、グラジエントエコー法に限らずスピンエコー法にも適用可能である。期間806-1におけるΔTで示された期間に、(4)式に示す回転角θ=0の位相エンコード傾斜磁場802-1と読み出し傾斜磁場803-1を印加する。次の期間806-2のΔTで示された期間では、この期間806-1の両波形が(4)式に基づいてΔθ=2π/12だけ回転されて、位相エンコード傾斜磁場802-2と読み出し傾斜磁場803-2とが印加される。以降の期間806-nも同様にして、位相エンコード傾斜磁場802-1と読み出し傾斜磁場803-1の波形を角度θ=n・Δθだけ回転した波形を有する位相エンコード傾斜磁場802-nと読み出し傾斜磁場803-nが印加されることになる。その他の高周波磁場401とスライス傾斜磁場402とエコー信号405は図4(a)と同じである。
【0049】
以上、ステップ203で行われる単位計測における可能な軌跡例を3つ挙げて説明したが、上記3つの軌跡例に限らず、K空間の原点近傍を通過する他の形状の軌跡でも良い。一部が互いに重なる軌跡で有っても良いし、単位領域毎の軌跡が異なる形状であっても良い。
【0050】
次に、ステップ204での、複数の単位データを用いて一つのK空間データを合成するグリッティング処理の詳細を説明する。複数の単位データの合成処理は、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。
【0051】
図3(b)は、ラディアルサンプリング法で取得したデータを、グリッディング処理してK空間に再配置した場合の模式図である。K空間300は黒丸で示すように規則正しい格子点の座標を有する。しかし、ラディアルサンプリングで取得されたデータは301〜304の様にK空間に対して格子点上を通過しない軌跡上に位置するので、白丸で示すサンプリングされたデータはK空間の格子点座標(黒丸)と一致しない。グリッディング処理では、これらサンプリングされたデータ(白丸)を用いて、補間処理により規則正しい格子点座標(黒丸)にデータを再配置することをいう。このグリッディング処理は、例えばSinc関数やKaiserK-Bessel関数等の補間用関数を用いて行う(非特許文献5)。なお、単位データの全てをグリッディング処理して再配置する必要はなく、少なくとも単位データの内のK空間の原点近傍データをグリッディング処理して再配置しても良い。この場合、K空間の原点近傍以外のデータは既に取得済のデータを再利用してもよい。
【非特許文献5】J.I Jackson et.al.,Selection of a Convolution Function for Fourier Inversion Using Gridding,IEEE Trans.Med.Imaging,vol.10,pp.473-478,1991
【0052】
また、単位計測毎にその単位計測で取得された単位データのみをグリッディング処理対象にし、この単位計測と同じ単位領域のデータであって以前に取得された単位データを全体K空間データの合成から排除する。つまり、全体K空間データを構成する単位データセットの中でFIFO(First-in, First-out)制御を行う。また、単位データセット中の他の単位データのグリッディング処理は前回のグリッディング処理結果をそのまま利用する。これによりグリッディング処理時間を短縮することができる。
【0053】
各単位データを上記グリッディング処理して一つのK空間に再配置した結果、再配置された単位データが互いに重ならない点のデータはそのままで良い。しかし、再配置された単位データが互いに重なる点に関しては、例えば重み付加算を行う必要がある。特に、K空間の低空間周波数領域に関しては、複数の再配置された単位データが互いに重なる可能性が高いので、重み付加算により合成する。具体的には、K空間の一つの格子点iに複数の単位データが重なる場合には、再配置された単位データiの格子点jにおけるデータをdij重み係数をwiとすると、重み付加算後のその格子点iの値Diを、
【数1】
とすることができる。 単位データnが取得された時相の造影剤の状況を強調した画像を取得するためには、重み係数wnを他の重み係数wmよりも大きくする。例えば、wn=1.0 、wn-1=0.5 、wn-2=0.2 、…のように、単位データnの計測時相から時間的に離れるに従って重み係数を小さくする。極端には、wn=1.0、他の重み係数を0(ゼロ)とすることも可能である。また、単位データnの取得直後に、その単位データnの取得時相における造影剤状況が強調された画像の再構成及び表示とを行うためには、その単位データnとその単位データnの取得以前に取得された単位データのみを用いてK空間データを合成することが好ましい。しかし、単位データnの計測時より以後の単位データを用いても良い。この場合は、必要な単位データの取得が終了するまで画像の再構成が行われず、単位データの取得と画像再構成との間に時間的遅れが生じることになる。
【0054】
次に、ステップ205の画像表示の詳細を説明する。前述した様に、単位データが取得される毎に、ステップ204でその単位データを含んで全体K空間データが合成され、その合成された全体K空間データを用いて画像が時系列に再構成される。そして、再構成された画像をその都度表示することにより、造影剤が被検体の撮像領域を追加していく様子を略リアルタイムで観察することができる。また、TIC曲線も表示しても良い。画像表示及びTIC曲線の描画の処理は、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。以下、最初に画像再構成について説明する。
【0055】
図9に、時系列に画像が再構成される例を示す。ただし、一つ一つの単位データの時間幅をTIC曲線の時間幅に対してかなり長く強調して記載しているが、実際の単位データの時間幅はTIC曲線の時間幅に対してかなり小さく多数の単位データが取得される。図9では、時間的に隣接する5つの単位データを一つのセットとして全体K空間データを合成し、この合成された全体K空間データを用いて一つの画像を再構成する処理を、単位データが取得される度に行われることを示している。具体的には、5つの単位データ(n-2)〜(n-6)を用いてwn-2を最も大きくしてK空間データを合成し、この合成されたK空間データを用いて、単位データ(n-2)が取得された時相の造影剤の状況を表す(n-2)画像を再構成する。同様にして、5つの単位データ(n-1)〜(n-5)を用いてwn-1を最も大きくしてK空間データを合成し、この合成されたK空間データを用いて、単位データ(n-1)が取得された時相の造影剤の状況を表す(n-1)画像を再構成する。以下、同様に最新の単位データが取得される毎に、その単位データを用いてその単位データの重み係数を最大にし最古の単位データを破棄して全体K空間データを合成し、この合成された全体K空間データを用いて最新の単位データが取得された時相の造影剤の状況を表す画像を再構成する。前述したように、取得された時刻と共に各単位データが記憶されるので、再構成された画像が表す造影剤の時相、つまり、造影剤が注入されてからの経過時間も容易に求めることができる。
【0056】
なお、図9は、最新の単位データが取得された直後に、その時相の造影剤の状況を表す画像を再構成する例を示しているが、前述したように、任意の時相kの造影剤の状況を表す画像の取得のために、時相k以降の時相の単位データを用いても良い。例えば、単位データ(k-2)〜(k+2)を用いて、単位データkを取得した時相の造影剤の状況を表すように重みwkを最も大きくして(k)画像を再構成しても良い。
【0057】
次に、TIC曲線について説明する。図9の曲線901はTIC曲線の例を示す。撮像領域から得られるエコー信号の信号強度は造影剤の通過によりTIC曲線の様に時々刻々と変化する。具体的には、撮像領域において造影剤の濃度が増大するにつれてエコー信号の信号強度が増大し、造影剤濃度がピークに到達したときに最も信号強度が高くなる。そして、造影剤濃度が減少して行くに従ってエコー信号の信号強度も減少していく。つまり、撮像領域から得られるエコー信号の信号強度は、その撮像領域における造影剤濃度に比例する。このように撮像領域における造影剤濃度を反映した信号強度を精度良く計測するためには、信号強度として、エコー信号がピークとなる時のその振幅値とすることができる。或いは数学的に等価である、エコー信号をフーリエ変化した後の総和とすることができる。エコー信号がピークとなる時は、そのエコー信号を計測する軌跡がK空間の原点近傍を通過する時である。前述の様に、各単位領域をカバーするK空間軌跡は、必ずK空間の原点近傍を通過するので、単位計測毎に撮像領域における造影剤濃度を表す信号強度を取得することが可能となる。このような信号強度をそれが取得された単位計測が行われた時相と共にプロットすれば、撮像領域の信号強度変化を表すTIC曲線となる。
【0058】
以上の様に、単位データが取得される毎に、上記信号強度をプロットしてTIC曲線を描画するとともに、その単位データを用いて再構成された画像を表示することにより、撮像領域における造影剤の濃度変化を視覚的に容易に把握することが可能になる。
【0059】
また、取得された時系列画像及びTIC曲線を、造影MRA撮像の後に再生表示することも可能である。図10はその例を示す。図10は、ディスプレイ20上に、画像とTIC曲線とシネゲージ1001とを表示した例を示す。シネゲージ1001とTIC曲線とは時間的関係が一致するように時間軸を合わせて表示される。そして、シネゲージ1001上で時相表示バー1002によって指定された時相に取得された画像が表示される。また、この時相表示バー1002をマウス又はトラックボール23等で左右に移動させることによって、その時相表示バー1002の移動に連動して、時相表示バー1002が表す時相に取得された画像が表示される。具体的には、時相表示バー1002を左側に移動させるとより過去の時相に取得された画像が表示され、右に移動させるとより最近の時相に取得された画像が表示される。また、シネゲージ1001には、再生ボタン1004とポーズボタン1003とが備えられ、再生ボタン1004を押下することにより、自動的に時相表示バー1002をシネゲージ1001上で左から右に向けて移動させると共に、その時々刻々の時相表示バー1002が表す時相の画像を時系列に表示する動画表示を行う。また、ポーズボタン1003を押下することにより、動画表示を途中で停止し、再度ポーズボタン1003を押下することにより、停止された時相から動画表示を再開する。なお、設定により、動画表示により最後の画像を表示した直後に最初の画像表示に戻って動画表示をループ再生しても良い。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、K空間原点近傍を通過する軌跡を含む単位領域からデータを取得する単位計測を、単位領域をK空間原点周りに回転させながら短い繰り返し時間で繰り返すことによって、少なくとも一つの単位計測のタイミングが、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達するタイミングと略一致させることが出来るようになる。そのため、煩雑な撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を行わなくとも、撮像領域における造影剤濃度がピークに到達したときの画像を容易に取得することが出来るようになり、明瞭な血管像を取得することが可能になる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、造影MRA撮像が終了した後に、取得された複数の単位データの中から画像再構成に必要な単位データを選択して画像再構成する形態である。これ以外は、第1の実施形態で説明した撮像及び画像再構成方法と同じなので、同じ処理部分の説明は省略する。
【0062】
図11に本実施形態の処理フローを示す。図11は図2に示した第1の実施形態の処理フローに、本実施形態特有の処理を追加したフローチャートであるので、以下、追加処理についてのみ詳細に説明する。なお、点線で表示されたステップ205は実施しても実施しなくとも良いことを表す。この処理フローは、例えばプログラムとして磁気ディスク18等に記憶されており、CPU8がそのプログラムをロードして実行することにより行われるものである。
【0063】
ステップ1108で、例えば磁気ディスク等に記憶された、複数の単位データの中から所望の単位データのセットを選択する。単位データのセットを選択する手順の詳細は後述する。
ステップ1109で、選択した単位データのセットがカバーする期間から、強調時相を選択する。つまり、画像化されるべき造影剤の時相を選択する。この強調時相の選択の詳細は後述する。
ステップ1110で、選択された単位データのセットと選択された強調時相とに基づいて、選択した強調時相における造影剤状況を強調した画像を再構成して表示する。画像再構成の詳細は後述する。
【0064】
ステップ1111で、操作者が表示された画像に満足すれば、処理はそこで終了する。満足しなければ、ステップ1108に戻って、別の単位データのセットを選択する。以降、選択した単位データセットに基づく画像に満足するまでステップ1108〜ステップ1111を繰り返す。
例えば、K空間原点を一回転する画像再構成のために必要な単位データの最小数をNとして、5N個の単位データが取得された場合に、5N通りの強調時相の選択が可能となるので、少なくとも5N通りの異なる画像を再構成することができる。さらに、同じ強調時相でも、単位データセットの選択を変えることによって、更に多くの異なる画像を取得することができる。これらの画像を比較することによって、事前に撮像タイミング調整のための予備測定等の前処理を行わなくとも造影剤濃度がよりピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。また、必要な単位データの取捨選択を行うことにより、より高画質の画像を得ることが可能になる。
【0065】
なお、上記ステップ1108〜ステップ1111の処理において、ステップ1108を省略しても良い。ステップ1108を省略した場合は、ステップ1109で選択した強調時相を含む所定期間内の単位データを自動的に選択する。例えば、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時以前に取得された単位データを所定数(例えば、K空間原点を1回転するだけの単位データ数)を選択する。或いは、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時を中心にその前後に取得された単位データを対称に所定数を選択する。或いは、強調時相に対応する単位データと、その単位データが取得された時以後に取得された単位データを所定数を選択する。
【0066】
以上は、操作者が単位データセット及び強調時相を選択することによって、その選択に基づいて画像を再構成する例を説明したが、操作者の選択によらず自動で強調時相を選択すると共に強調時相を一定速度で移動させることにより、動画として表示することも可能である。例えば、最初の時相から最後に時相まで一定速度で強調時相を移動させながら、各強調時相では、その時相に対応する単位データとそれに時間的に隣接する複数の単位データを画像再構成に必要な数だけ選択して画像再構成する。これにより、撮像領域に造影剤が流れる様子を動画として自動的に表示することが可能になる。
【0067】
次に、図13に示す、ディスプレイ20に表示される単位データセット選択のためのユーザーインターフェース(UI)の例に基づいて上記各ステップの詳細を説明する。
【0068】
最初にステップ1108における単位データセットの選択の手順を詳細に説明する。ディスプレイ20の上部にはTIC曲線901を表示する。そして、例えばTIC曲線の時間軸上に、単位データセットを選択するために期間バー1201を表示する。この期間バー1201は、バー長が表す期間内に取得された単位データが選択されることを示す。そして、トラックボール又はマウス23を介して、時間軸上でバーの長さが変えられ、バーの位置が左右に移動されることによって、単位データセットを選択するための期間が変えられる。なお、図13は期間バー1201が一つの場合を示しているが、複数の期間バーを表示して、複数の期間が単位データを選択しても良い。
【0069】
次に、ステップ1109における強調時相を選択する処理の詳細について説明する。期間バー1201上に強調時相を選択するための時相指示カーソル1202を表示する。時相指示カーソル1202を、トラックボール又はマウス23を介して、期間バー1201の範囲内で左右に移動することにより、期間バー1201が表す期間内で強調時相を指定する。
【0070】
次に、ステップ1110における画像再構成の詳細について説明する。期間バー1201と時相指示カーソル1202によって単位データセットと強調時相が指定された後に、再構成ボタン1204がトラックボール又はマウス23を介して押下されると、その指定された単位データセットが選択されて例えば磁気ディスク18からCPU8に読み込まれる。そして、CPU8は選択された強調時相の造影剤状況を表す画像の再構成を行い、結果画像1203を時相指示カーソル1202によって指定された時刻と共にディスプレイ20の下段に順次表示する。図13では、時相指示カーソル1202によって指定された強調時相の異なる6の画像1203-1〜1203-6が表示されている例を示している。以上の様に、TIC曲線上で強調時相を指定できるので、容易に造影剤濃度がピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。
【0071】
画像再構成の際には、(5)式に示した重み係数の内、選択された強調時相に対応する単位データへの重み係数を最大として、他の単位データに対応する重み係数を小さい値とする。例えば、強調時相に対応する単位データを(n)とし、その前後の単位データ重み係数を以下の様にすることができる。
単位データ … (n−2) (n−1) (n) (n+1) (n+2) …
重み係数 … 0.2 0.4 1.0 0.4 0.2 …
これにより、選択された強調時相に対応する造影剤状況が再構成される画像において強調されることになる。なお、選択された単位データセットが、K空間原点を1回転以上する量の単位データとなった場合には、重複する回転角の単位データに関しては、単純な加算平均、強調時相により近い時相に取得された単位データの重みを大きくした重み付加算平均、或いは、強調時相により近い時相に取得された単位データのみ選択する、等の処理を行うことができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、取得された複数の単位データの中から、最適な単位データの取捨選択と強調時相とを選択することができるので、造影剤濃度がよりピークに到達した時相の画像を取得することが可能になる。しかも、TIC曲線を参照しながら造影剤濃度がピークに到達するタイミングを容易に認識できるので、そのタイミングを捉えた最適な単位データ及び強調時相の選択が容易になる。
【0073】
以上迄が、本発明のMRI装置の各実施形態の説明である。しかし、本発明のMRI装置は、上記実施形態の説明で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で他の形態を取り得る。例えば、以上の説明では2次元画像による説明であったが、本発明はマルチスライス、さらには3次元画像への適用も同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の一例の全体概要を説明する図。
【図2】第1の実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャート。
【図3】(a) ラディアルサンプリング法によりK空間のデータが取得される軌跡を表す図、(b) ラディアルサンプリング法で取得したデータを、グリッデング処理してK空間に再配置した場合の模式図。
【図4】ラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図5】ハイブリッドラディアルサンプリング法によりK空間のデータ取得される軌跡を表す図。
【図6】ハイブリッドラディアルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図7】スパイラルサンプリング法によりK空間のデータが取得される軌跡を表す図。
【図8】スパイラルサンプリング法を実現するパルスシーケンスの一例を表す図。
【図9】時系列に画像が再構成される例を示す図。
【図10】撮像後に再生表示する際の、ディスプレイに表示される画像、TIC曲線、及びシネゲージの例を示す図。
【図11】第2の実施形態の造影MRAの処理フローの概要を示すフローチャート。
【図12】撮像領域における造影剤濃度の変化を表す図。
【図13】ディスプレイに表示される単位データセット選択のためのユーザーインターフェース(UI)の例を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する静磁場発生手段と、
前記静磁場中に配置され造影剤が注入された被検体の所望の撮像領域に傾斜磁場と高周波磁場を印加する磁場発生手段と、
前記所望の撮像領域からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、
前記磁場発生手段と前記検出手段とを制御して、K空間内の所定の軌跡に沿うデータを取得する様に前記核磁気共鳴信号を計測する計測制御手段と、
前記K空間のデータを用いて前記撮像領域の画像を再構成する画像再構成手段と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、少なくとも前記造影剤が前記撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、前記原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、
前記画像再構成手段は、複数の前記単位計測で取得されたデータを合成して前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、前記単位計測毎に、該単位計測で取得された単位データの内の少なくともK空間の原点近傍データを含んで、前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を通る放射直線状の軌跡上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を通る直線とこれに平行な少なくとも一つの直線を含んで成る平行直線群上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を含む螺旋状の軌跡上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、2以上の前記単位領域が互いに重なる領域のデータを重み付加算して前記合成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、最新の前記単位データへの重みを最大にすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記再構成された画像を再構成された時刻と共に記憶する第1の記憶手段と、前記記憶された画像を再構成された時刻順に順次読み出して再生する再生手段と、を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
複数の前記単位データを該単位データが取得された時刻と共に記憶する第2の記憶手段と、前記記憶された複数の単位データの中から所望の単位データを複数選択する手段と、を有し、
前記画像再構成手段は、前記選択された複数の単位データを用いて前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項9記載の磁気共鳴イメージング装置において、
所望の時相を指定するための情報が入力される入力手段を有し、
前記画像再構成手段は、指定された時相の近傍で取得された単位データを含んで前記画像を再構成し、該再構成された画像を前記指定された時相の画像とすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項10記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、前記指定された時相の近傍で取得された単位データへの重みを最大にして、2以上の前記単位領域が互いに重なる領域のデータを重み付加算して前記合成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記単位データが取得されたときの前記撮像領域の信号強度を表すデータを該単位データに基づいて取得すると共に、前記信号強度の時間的変化を表示する手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
静磁場を発生する静磁場発生手段と、
前記静磁場中に配置され造影剤が注入された被検体の所望の撮像領域に傾斜磁場と高周波磁場を印加する磁場発生手段と、
前記所望の撮像領域からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、
前記磁場発生手段と前記検出手段とを制御して、K空間内の所定の軌跡に沿うデータを取得する様に前記核磁気共鳴信号を計測する計測制御手段と、
前記K空間のデータを用いて前記撮像領域の画像を再構成する画像再構成手段と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、少なくとも前記造影剤が前記撮像領域を通過する期間に、K空間の原点近傍を通過する軌跡がカバーする単位領域のデータを単位データとして取得する単位計測を、前記原点を中心に前記単位領域を回転させて繰り返し、
前記画像再構成手段は、複数の前記単位計測で取得されたデータを合成して前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、前記単位計測毎に、該単位計測で取得された単位データの内の少なくともK空間の原点近傍データを含んで、前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を通る放射直線状の軌跡上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を通る直線とこれに平行な少なくとも一つの直線を含んで成る平行直線群上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記単位計測として、前記K空間の原点を含む螺旋状の軌跡上のデータを取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、2以上の前記単位領域が互いに重なる領域のデータを重み付加算して前記合成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、最新の前記単位データへの重みを最大にすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記再構成された画像を再構成された時刻と共に記憶する第1の記憶手段と、前記記憶された画像を再構成された時刻順に順次読み出して再生する再生手段と、を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
複数の前記単位データを該単位データが取得された時刻と共に記憶する第2の記憶手段と、前記記憶された複数の単位データの中から所望の単位データを複数選択する手段と、を有し、
前記画像再構成手段は、前記選択された複数の単位データを用いて前記画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項9記載の磁気共鳴イメージング装置において、
所望の時相を指定するための情報が入力される入力手段を有し、
前記画像再構成手段は、指定された時相の近傍で取得された単位データを含んで前記画像を再構成し、該再構成された画像を前記指定された時相の画像とすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項10記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成手段は、前記指定された時相の近傍で取得された単位データへの重みを最大にして、2以上の前記単位領域が互いに重なる領域のデータを重み付加算して前記合成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記単位データが取得されたときの前記撮像領域の信号強度を表すデータを該単位データに基づいて取得すると共に、前記信号強度の時間的変化を表示する手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−275481(P2007−275481A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109239(P2006−109239)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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