説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】垂直方向を向く均一磁場を超電導コイルにより発生させる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)において、真空容器が振動したとしても、均一磁場の均一性に影響を与えないMRI装置を提供する。
【解決手段】MRI装置の静磁場発生部(30)が、超電導コイル(31)及び冷媒(L)を収容する冷媒容器(35)と、冷媒容器(35)を支持する支持部材(44)及び傾斜磁場発生部(13)を撮像領域(R)に対向するように固定する対向部材(41a,42)から形成される真空容器(40)と、を有し、少なくとも一部の対向部材(41a)は、支持部材(44)と材質が同じであって剛性が同じであると仮定される平板部材に対比して、周回方向の電気抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルを循環する永久電流によって、撮像領域に発生させる均一磁場の向きを垂直方向とする磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置;Magnetic Resonance Imagingという)は、撮像領域に配置される被検体に高周波パルスを照射し、このときに生じる核磁気共鳴現象(以下、NMR現象;Nuclear Magnetic Resonanceという)を利用してこの被検体の物理的、化学的性質を表す画像を撮像するものであり、特に、医療用として用いられている。
【0003】
いわゆる水平磁場型と呼ばれるMRI装置は、被検体が挿入される水平方向と、撮像領域における均一磁場の方向とが一致するように、複数の超電導コイルを水平方向に並べて収納する円筒形状の真空容器を含む構成となっている。
この水平磁場型のMRI装置は、一般に、被検体が入る空間が狭く、圧迫感や閉所感を受ける患者(被検体)が、長時間に渡って検査を受けられない問題がある。また、水平磁場型のMRI装置における被検体の挿入空間が狭いことは、各種オペレーションの自由度が制限される問題がある。
【0004】
そこで、係る問題を解消する目的で近年普及している垂直磁場型のMRI装置は、超電導コイルが収納される真空容器を2つに分割して垂直方向に対向させ、二つの真空容器に挟まれる空間に撮像領域を形成し、被検体が挿入される空間が広くなるよう構成されている。
しかし、垂直磁場型のMRI装置は、二つに分割された真空容器が垂直方向に対向する状態を維持するために、機械的剛性を高くすることが要求される。さらに、撮像領域に傾斜磁場を発生させるためにそれぞれの真空容器に固定される一対の傾斜磁場発生部は、後記するように振動の発生源となり、画像の画質を劣化させる原因になる。
【0005】
このため、画像の画質向上を図ることを目的とし、撮像領域に形成される均一磁場の安定化を目指し、垂直磁場型のMRI装置は、機械強度に優れるステンレス材質を多用して剛性を高めた構成をとるとともに、傾斜磁場発生部と真空容器との間に非磁性でかつ導電性の部材を配置して構成されるものがある(例えば、特許文献1)。
この非磁性でかつ導電性の部材は、超伝導コイルが振動することにより生じる均一磁場の乱れを、導電性部材に発生する渦電流によって乱れをキャンセルする磁場を発生させることで、撮像空間に安定な均一磁場を得るものである。
【特許文献1】特表2002−071942号公報 図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、MRI装置の市場における要請として、撮像領域の均一磁場を高磁場化する要請と、被検体の撮像を高速化する要請とがある。この二つの要請を両立させるとなると、傾斜磁場発生部の振動が激しくなることが避けられない。この振動を抑制するためには、ステンレス材質をさらに多用して、MRI装置の剛性をさらに向上させることが考えられる。
しかし、MRI装置に、比重の高いステンレス材質が多用されることは、MRI装置の重量が大きくなることを招来し、好ましくない。
また、傾斜磁場発生部と真空容器との間に前記したような部材を配置する構成も、所望とする効果を得ようとすると、係る部材が被検体が挿入される空間を広く占有することとなり、好ましくない。
【0007】
本発明は、係る問題を解決することを課題とし、真空容器が振動したとしても、その真空容器に誘導される渦電流を低減又は不発生とし、撮像領域における静磁場の均一性に影響を与えないMRI装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)において、真空容器が、超電導コイル及び冷媒を収容する冷媒容器を保持するとともに、傾斜磁場発生部を撮像領域に対向するように固定する対向部材により一部が形成され、前記対向部材又は少なくともその一部が、前記支持部材と材質が同じであって剛性が同じであると仮定される平板部材に対比して、周回方向の電気抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
このように発明が構成されることにより、MRI装置は、機械的剛性を犠牲にしたり被検体が挿入される空間を狭めたりすることなく、真空容器に渦電流が発生しない構成が達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超電導コイルを循環する永久電流によって、撮像領域に発生させる均一磁場の向きが垂直方向である磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)において、真空容器が振動したとしても、撮像領域における静磁場の均一性に影響を与えないMRI装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)を説明する。
図1に全体斜視図が示されているようにMRI装置10は、一対の静磁場発生部30,30が連結部材12により垂直方向を向く中心軸Zが回転対称軸となるように対向して連結され、その間の空間を撮像領域Rとして、この撮像領域Rを挟むようにして傾斜磁場発生部13,13が配置され、さらにこの撮像領域Rに被検体Pを位置させるためのベッド台Dが設けられている。
【0011】
さらに、MRI装置10は、図示されない構成要素として、被検体PにNMR現象を発現させる共鳴周波数の電磁波を撮像領域Rに向けて照射するRF発振部(RF;Radio Frequency)と、NMR現象が発現し水素原子核のスピンの状態が変化する際に放出される応答信号を受信する受信コイルと、これら構成要素を制御する制御装置、受信した信号を処理して解析を行う解析装置とを備えている。
【0012】
そして、静磁場発生部30,30は、撮像領域Rに均一な静磁場(均一磁場)を発生させるものであって、傾斜磁場発生部13,13は、撮像領域Rにおける磁場強度が傾斜するように前記均一磁場に対して傾斜磁場を重畳させるものである。
このように構成されることによりMRI装置10は、撮像領域Rの関心領域(通常1mm厚のスライス面)だけにNMR現象を発現させて、被検体Pの断層を画像化するものである。
【0013】
傾斜磁場発生部13,13は、一対の静磁場発生部30,30の対向面Fにそれぞれ設けられた一対の収容空間U(図2参照)に配置されている。
この傾斜磁場発生部13,13は、MRI装置10の動作時に撮像領域Rの直交する三方向に対し、任意に切り替えて、傾斜磁場を重畳させるものである(図2で示す矢印は、中心軸Z方向に直交する一方向に重畳された傾斜磁場の方向と強さの例を示している)。このように撮像領域Rにおける磁場の強度が、直交する三方向に任意に切り替わって傾斜することにより、NMR現象が発現する三次元位置が明らかになる。
【0014】
この傾斜磁場発生部13,13は、前記した直交する三方向の傾斜磁場を付与するためそれぞれ別個に設けられるメイン傾斜磁場コイル(図示せず)と、外部への漏洩磁場を抑えるためにそれぞれの前記メインコイルに対応して設けられるシールド傾斜磁場コイル(図示せず)とから構成されている(以下、メイン傾斜磁場コイル及びシールド傾斜磁場コイルを特に区別せずに傾斜磁場コイルと言う)。
【0015】
これら傾斜磁場コイル(図示せず)には、傾斜磁場が三方向に任意に切り替わるように、それぞれにパルス状の電流が通電される。このため、傾斜磁場コイルに通電される電流と、静磁場発生部30,30から発生する静磁場との間に電磁力が発生する。
この発生した電磁力は、傾斜磁場発生部13,13を水平方向及び垂直方向に、前記パルスに対応した周波数の振動力となる。
【0016】
このため、傾斜磁場発生部13,13は、MRI装置10にとって、前記したように振動源になる場合がある。よって、傾斜磁場発生部13,13を真空容器40に固定する固定脚34は、発生した振動力が、真空容器40に伝播するのを極力排除できる構成となるようにする。しかし、排除されずに真空容器40に伝播してしまった振動は、後記するように、撮像領域Rの磁場の均一性を乱し、画像の劣化の原因となる。
【0017】
静磁場発生部30は、図2に示されるように、真空容器40の内側の密閉空間Vに、冷媒容器35が固定部材33を介して保持されている。そして、この冷媒容器35には、冷媒Lとともにメインコイル31及びシールドコイル32が収容されている。
なお、図示しない輻射板が、真空容器40と冷媒容器35との間に設けられ、真空容器40から冷媒容器35に向かう熱輻射が遮蔽される。また、図示しない強磁性体(鉄など)を、中心軸Zと同軸に適宜配置して、撮像領域Rに磁力線をさらに誘導し、均一磁場の強度を増幅させる場合もある。
【0018】
メインコイル31は、永久電流が所定の方向(順方向)に循環して撮像領域Rに計測用の均一磁場を生成させる超電導コイルであって、中心軸Zを中心として配置されるコイルボビン(図示せず)に超電導線材を巻回して構成される。
ここで、超電導コイルとは、冷媒容器35に充填されている冷媒L(例えば、液体ヘリウム)により臨界温度より低温に冷却されると常電導状態から超電導状態に転移して電気抵抗がゼロとなるものであって、環状の電流が減衰することなく永久に循環するものである。
【0019】
シールドコイル32は、メインコイル31と中心軸Zを共有するようにコイルボビン(図示せず)に巻回されている。そして、シールドコイル32には、メインコイル31に流れる順方向とは逆方向に環状の永久電流が流れている。
一般に、シールドコイル32は、撮像領域Rからの距離がメインコイル31よりも遠い位置に配置され、MRI装置10の外部に漏洩する不要な静磁場を打ち消すように作用するものである。
【0020】
冷媒容器35は、メインコイル31及びシールドコイル32を超電導現象が発現する臨界温度以下の温度に保つ冷媒L(液体ヘリウム)とこれら超電導コイルとを少なくとも収容するものである。このメインコイル31及びシールドコイル32は、図示しない部材により冷媒容器35の内側に固定されている。
なお、前記した図示しない強磁性体は、冷媒容器35の内部に冷媒Lとともに収容される場合もあるし、冷媒容器35の外部でかつ真空容器40の内部となるように収容される場合もある。
【0021】
固定部材33は、真空容器40の外側からの熱伝導による冷媒容器35の温度上昇を防止するため、真空容器40と冷媒容器35とを断熱的に固定するものである。
ところで、固定部材33は、真空容器40から冷媒容器35に向かう熱抵抗を大きくするために、一般に細長い形状をとることが望ましい。しかし、このような細長い形状は、固定部材33にとって、機械的な剛性が低下することとなる。
このように、真空容器40に対して超電導コイル31,32を支持する固定部材33の剛性が低いことは、外力が作用すると超電導コイル31,32は撮像領域Rに対し容易に変位してしまうことになる。
従って、本発明に係るMRI装置10の特徴として、後記するように、そのような外力(具体的には傾斜磁場コイル13から発生する不要な漏れ磁場)が超電導コイル31,32に付与されることを防止する構成が求められる。
【0022】
真空容器40は、図3(a)にその部分拡大断面図が示されるように、支持部材44、第1対向部材41、第2対向部材42及び内側筒43により、真空状態に保たれる密閉空間Vが構成されている。このように構成される真空容器40は、固定部材33を介して冷媒容器35を保持するものであって、伝導および対流による冷媒容器35への熱侵入を防止するものである。
支持部材44は、ステンレス材質などの非磁性体でかつ弾性率の高い材質で構成されており、MRI装置の各種構成要素(冷媒容器35等)を支持する基盤となる。なお、図示しないが、連結部材12(図1参照)の両端は、この支持部材44に接続することにより、天地方向に配置される一対の静磁場発生部30,30を支持している。
【0023】
第1対向部材41は、真空容器40の撮像領域Rに対向する対向面の一部を構成するものであって、平面視がドーナツ形状であるその外周縁と支持部材44とが密閉状態で接合するものである。この第1対向部材41は、支持部材44の材質よりも電気抵抗率の高い材質、具体的には、支持部材44がステンレス材質であるとして、チタン、ニクロムなどの低導電性金属材料、又はガラス繊維強化樹脂、セラミックスなどの絶縁材料から構成される。
このように構成されることにより、第1対向部材41は、中心軸Z周りの周回方向の電気抵抗が大きくなる構成となる。
【0024】
第2対向部材42は、傾斜磁場発生部13が撮像領域Rに対向するように固定される真空容器40の対向面の一部である。この第2対向部材42は、その外周縁が、円筒形状の内側筒43の一方の縁端に接続し、内側筒43の他方の縁端が、第1対向部材41の平面視がドーナツ形状の内周縁に接続している。このように第2対向部材42は、第1対向部材41に段差するように接合し、傾斜磁場発生部13が収容される収容空間Uを形成している。
なお、第2対向部材42及び内側筒43においても、第1対向部材41と同様に周回方向の電気抵抗が大きくなる構成が施されていてもよい。しかし、第2対向部材42及び内側筒43を支持部材44と同じステンレス材質で構成したとしても、次に説明するような渦電流が発生しても撮像領域Rに与えられる変動磁場の影響は小さいと考えられる。
【0025】
次に、図3(b)に示す比較例を参照しつつ、図3(a)に示す実施例における作用を説明する。
図3(b)に示す比較例は、実施例(図3(a))の第1対向部材41に対応する部位(対向面F´)が、支持部材44と材質が同じ(比較例の場合、ステンレス材質)であって剛性が第1対向部材41と同じであると仮定される平板部材で構成されている場合を示している。
係る平板部材と対比して、第1対向部材41は、周回方向の電気抵抗が大きくなるように構成される点において、両者は相違している。
【0026】
傾斜磁場発生部13は、前記したように振動源であるため、図3(b)に誇張して示されるように、発生した振動が真空容器40´に伝播すると、その対向面F´を揺らす。この揺らされる対向面F´を構成する平板部材は、電気的に良導性であるステンレス材質であるために、その内部に渦電流が発生する。
このようにして、比較例で示される真空容器40´の対向面F´を構成する平板部材に発生した渦電流は、新たな変動磁場B(図中二点鎖線で表示)を誘導する。
この変動磁場Bは、超電導コイル31,32が形成する均一磁場に重畳して、撮像領域Rにおける磁場の均一性を乱し、撮像される画像が劣化する。
【0027】
一方、図3(a)に示される実施例では、傾斜磁場発生部13が揺れても第1対向部材41には、渦電流が発生しないので、撮像領域Rに形成されている均一磁場に変動磁場Bが重畳することもなく、撮像領域Rに形成される均一磁場が乱れることもない。
【0028】
(第2実施形態)
図4を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図4(a)は第2実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部30の中心軸Zを含む縦断面図であり、図4(b)は第2実施形態に係るMRI装置に適用される第1対向部材41aを分離して示す斜視図である。
なお、本実施形態における構成要素のうち第1実施形態と共通するものに関しては、図中同一の符号を付すとともに、すでにした説明を援用して記載を省略する。
【0029】
この第1対向部材41aは、撮像領域R側に対向する面板46の表面に、放射状に並んで配置される複数の補強板47が設けられている。
ここで、面板46は、前記したような支持部材44の材質よりも電気抵抗率の高い材質で構成されていてもよいが、板厚を薄くして支持部材44と同じ材質(ステンレス材質)で構成されてもよい。
このように第1対向部材41aが構成されることにより、支持部材44と材質が同じであって剛性が同じであると仮定される平板部材(図3(b)比較例参照)に対比して、中心軸Z周りの周回方向の電気抵抗が大きくなる。周回方向に流れる電流に直交する第1対向部材41a(面板46)の断面積を小さくすることができるからである。
これにより、MRI装置10(図1参照)の動作中に傾斜磁場発生部13が振動しても第1対向部材41aに発生する渦電流が抑制され、この渦電流により誘導される変動磁場が重畳して、撮像領域Rの均一磁場を乱すことがない。
【0030】
(第3実施形態)
図5を参照して本発明の第3実施形態について説明する。
図5(a)は第3実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部30の中心軸Zを含む縦断面図であり、図5(b)は第3実施形態に係るMRI装置に適用される第1対向部材41bを分離して示す斜視図である。
なお、本実施形態における構成要素のうち第1実施形態と共通するものに関しては、図中同一の符号を付すとともに、すでにした説明を援用して記載を省略する。
【0031】
この第1対向部材41bは、撮像領域R側に対向する面板48の表面に、放射状に並んで刻まれる複数の割溝49が設けられている。
ここで、面板48は、支持部材44と材質が同じ(ステンレス材質)で構成してもよいが特に限定はない。
このように第1対向部材41bが構成されることにより、支持部材44と材質が同じであって剛性が同じであると仮定される平板部材(図3(b)比較例参照)に対比して、中心軸Z周りの周回方向の電気抵抗が大きくなる。周回方向に流れる電流に直交する第1対向部材41a(面板48)の断面積のうち最小値を小さくとることができるからである。
これにより、MRI装置の動作中に傾斜磁場発生部13が振動しても第1対向部材41bに発生する渦電流が抑制され、この渦電流により誘導される変動磁場が重畳して、撮像領域Rの均一磁場を乱すことがない。
【0032】
(第4実施形態)
図6を参照して本発明の第4実施形態について説明する。
図6(a)は第4実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部30の中心軸Zを含む縦断面図であり、図6(b)は第4実施形態に係るMRI装置に適用される環状部材51を分離して示す斜視図である。
なお、本実施形態における構成要素のうち第1実施形態と共通するものに関しては、図中同一の符号を付すとともに、すでにした説明を援用して記載を省略する。
【0033】
この環状部材51は、第1対向部材41、第2対向部材42及び内側筒43のうちのいずれかによって支持されるものであって、傾斜磁場発生部13の外周を囲むように配置されている。また環状部材51は、支持部材44の材質よりも電気抵抗率の低い材質からなる。
これにより、MRI装置の動作中に傾斜磁場発生部13からの漏れ磁場が発生すると、環状部材51に渦電流が発生し、超伝導コイル31、32を切る変動磁場が遮蔽され、超伝導コイルに発生する振動電磁力が低減する。反対に、超伝導コイル31、32が振動することにより発生する静磁場均一度の乱れを環状部材51の渦電流磁場によってキャンセルし、撮像領域Rの均一磁場を乱すことがない。
【0034】
以上の説明において、真空容器40のうち、撮像領域Rに対向する対向面を構成する対向部材として、第1対向部材41,第2対向部材42のように分けて説明した。しかし、本発明の構成要素である対向部材はこのように分離した構成に限定されるものではなく、一枚板で構成されてもよいし、さらに多段で構成されていてもよい。
また周回方向の電気抵抗が大きくなる構成も、対向部材の一部(第1対向部材41)においてのみ採用されているわけではなく、対向部材の全般に亘って採用されていてもよく、装置にとって全体最適化が図れるその他の特定の部位に採用されてもよく、係る構成が採用される対向部材の部位は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)の実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るMRI装置の縦断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部を拡大し実施例として示す断面図であり、(b)は対比して説明するための比較例の断面図である。
【図4】(a)は第2実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部を拡大して示す断面図であり、(b)は第2実施形態に係るMRI装置に適用される対向部材を分離して示す斜視図である。
【図5】(a)は第3実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部を拡大して示す断面図であり、(b)は第3実施形態に係るMRI装置に適用される対向部材を分離して示す斜視図である。
【図6】(a)は第4実施形態に係るMRI装置の静磁場発生部を拡大して示す断面図であり、(b)は第4実施形態に係るMRI装置に適用される環状部材を分離して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
13 傾斜磁場発生部
30 静磁場発生部
31 メインコイル(超電導コイル)
32 シールドコイル(超電導コイル)
35 冷媒容器
40 真空容器
41,41a,41b 第1対向部材(対向部材)
42 第2対向部材(対向部材)
43 内側筒
44 支持部材
47 補強板
49 割溝
51 環状部材
F 対向面
L 冷媒
P 被検体
R 撮像領域
U 収容空間
V 密閉空間
Z 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久電流を超電導コイルに循環させて撮像領域に均一磁場を発生させる一対の静磁場発生部と、前記撮像領域に傾斜磁場を発生させる一対の傾斜磁場発生部と、を備える磁気共鳴イメージング装置において、
前記静磁場発生部は、
前記超電導コイル及びこの超電導コイルを冷却する冷媒を少なくとも収容する冷媒容器と、
前記傾斜磁場発生部を前記撮像領域に対向するように固定する対向部材及び支持部材により少なくとも形成されるとともに前記冷媒容器を真空状態で保持する真空容器と、を有し、
前記対向部材又は少なくともその一部が、前記支持部材と材質が同じであって剛性が同じであると仮定される平板部材に対比して、周回方向の電気抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記対向部材の一部であって前記支持部材に接続する第1対向部材と、前記傾斜磁場発生部が固定される第2対向部材と、が段差して形成される収容空間に前記傾斜磁場発生部が収容され、
前記第1対向部材において、前記周回方向の電気抵抗が大きくなる構成が施されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記周回方向の電気抵抗が大きくなる構成とは、
前記対向部材又は少なくともその一部が、前記支持部材の材質よりも電気抵抗率の高い材質からなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記周回方向の電気抵抗が大きくなる構成とは、
前記対向部材又は少なくともその一部の表面に、放射状に並んで配置される複数の補強板が設けられてなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記周回方向の電気抵抗が大きくなる構成とは、
前記対向部材又は少なくともその一部の表面に、放射状に並んで刻まれる複数の割溝が設けられてなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記対向部材には、前記傾斜磁場発生部の外周を囲むように、前記支持部材の材質よりも電気抵抗率の低い材質からなる環状部材が設けられていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−125895(P2008−125895A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315912(P2006−315912)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】