説明

磁気共鳴映像法用の造影剤としてのナノスケール粒子

本発明は、不活性マトリックスを有するコア、不対電子を有する1または2以上の金属イオンが結合した、1または2以上の共有結合した有機錯化剤、および任意に、コアの表面に共有結合した、1または2以上の生体分子からなる、磁気共鳴映像法用の造影剤としてのナノスケール粒子、ならびにこれらのナノ粒子の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性マトリックスを有するコア、不対電子を有する1または2以上の金属イオンが結合した1または2以上の共有結合した有機錯化剤、および任意に、コアの表面に共有結合した1または2以上の生体分子からなるナノスケール粒子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
その最適なシグナル伝達(7個の不対電子によるT1短縮、強い常磁性)のために、ガドリニウム(Gd)はMRI(磁気共鳴映像法)に用いられる。7個の不対電子対のため、ガドリニウムは、強い交番電磁界を誘発し、これは隣接水プロトンの緩和時間を短縮する形で、そのスピンに影響する。
【0003】
静脈内投与したガドリニウム塩の溶液は、急性毒性作用を有する。毒性は、とりわけ、平滑筋および横紋筋、ミトコンドリアの機能および血液凝固に影響する。したがって、その常磁性(すなわち、磁場へ移動する傾向)を損なわずに、この金属の毒性を減少させる方法の探索が試みられてきた。Gd含有造影剤の商業生産ももたらす、この目的のための最良の方法は、キレート化である。
【0004】
この目的のために、非常に高い錯生成定数を有する錯化剤が用いられる。これらの錯化剤の例は、DOTAおよびDTPAである。
【化1】

【0005】
今までの最も安定した市販ガドリニウムキレート錯体は、大環状ガドテル酸(Gd−DOTA;例えば、DOTAREM(R)、Guerbetとして市販されている)である。MRI造影剤としてのガドテル酸の使用における、毒性のガドリニウムイオン(LD50約0.1mmolkg−1)の解離、そして遊離のリスクは非常に低い。酸性の胃液における放出半減期安定性(標準化モデルとしての0.1モルHCl溶液中で測定)は、数秒から数時間の範囲である、他の錯体と比較して、このガドテル酸は、1ヶ月よりも長い半減期を有する。ガドリニウムの内因性の金属イオン、例えば銅または亜鉛との交換も1%未満と顕著に少ないが、一方他の錯体においては、35%までとなり得る。
【0006】
X線結晶学的研究によって示されるように、Gdは完全に有機酸DOTAで囲まれ、洞窟の中のように、キレート化合物の中心に存在する。ガドリニウムの毒性は、したがって実質的に完全にマスクされる一方、これをMRI造影剤として興味深いものとするその常磁性は保たれる。
【0007】
MRIにおける造影剤の使用は、臓器の表示の情報価値を増大させる。通常のケースでは、10〜15ml(0.2ml/体重kg)の造影剤を静脈注射する。用いられるGd含有造影剤は、緩和時間を短縮し、そして生成される画像におけるシグナルを増強する。
遷移元素マンガン、鉄または銅をベースとした造影剤は、もっぱら特定の事情、特に肝臓に関するケースで用いられる。
【0008】
ガドテル酸などの常磁性錯体は親水性であり、血液/脳関門を通過しない。静脈注射の後、急速な血管への分布、次いで間質への分布が起こる。特定の臓器への選好性は見られない。錯体は、糸球体ろ過により、数時間のうちに腎臓を介して未変化形態で排出される。ガドテル酸は、3時間後に75%程度まで除去される。説明した薬物動態は、Gdを腫瘍、浮腫、ネクローシスおよび虚血の場合に生じる、細胞外液の動きの判断に関して特に適した造影剤にする。
【0009】
Gd−DOTAは、非常によく耐容される。したがって、5000人より多くの患者における2つの研究が、副作用率が0.84%〜0.97%であることを示した。2つの研究のうちより大きい、4169人の患者の研究(Caille 1991)は、わずか8人が悪心、5人が嘔吐を呈し、これらの副作用の合計の比率は0.31%であった。発熱、頭痛、体調不良、皮膚発疹、および口内の不快味は、全患者の0.15%未満で生じた。全身性浸透圧効果も、ガドテル酸の場合は、ごくわずかである。
【0010】
Gd−DOTAの濃度の上昇が明らかである唯一の臓器は腎臓であり、これはおそらく薬物動力学的な理由による。しかしながら、クレアチニンクリアランスが60ml/分未満の腎不全患者における耐容性研究は、重要なパラメータまたは腎機能におけるGd−DOTAの悪影響を全く示さなかった。Gd−DTPA−BMAと対照的に、Gd−DOTAは偽低カルシウム血症(pseudohypocalcaemia)を引き起こさなかった。腎不全の場合に推奨されるのは、モニタリング+腎不全を予防するための全ての対策(水分補給、投与量制限、リスク/便益評価)を行うことである。これらの全ての理由から、ガドテル酸は、成人だけでなく、小児や幼児用のMRI造影剤として承認されている。
【0011】
ガドリニウム(III)を含有するナノスケール粒子はここ数年来知られており、錯ガドリニウム(III)イオン単体に比べて、診断における造影剤としての用途に関して顕著な利点を有する:
−球表面における、非常に多数の錯ガドリニウム(III)イオンの集積が、ガドリニウム錯体単体と比較して、磁気共鳴映像における著しく強いシグナルをもたらす。これは、造影剤の投与量を減らすか、または向上したシグナル/ノイズ比率のために、同一の投与量でより強いシグナルを得ることを可能にする。
【0012】
C. Platas-Iglesias et al., Chem. Eur. J. 2002, 8, No. 22, 5121-5131 " zeolite GdNaY nanoparticles with very high relaxivity for application as contrast agents in magnetic resonance imaging"は、ガドリニウムがクーロン力のみで結合した、すなわち共有結合していない、Gd3+負荷ゼオライトNaYナノ粒子を開示している。このYゼオライトの細孔の大きさは、わずか1.3nmであるため、周辺組織との自由プロトン交換(free proton exchange)が強く妨げられる。
【0013】
WO 00/30688(Bracco)は、MRI用の造影剤として置換ポリカルボン酸塩配位子分子および対応する金属錯体、例えば、Gd−DTPAおよびGd−DOTA誘導体を記載している。
WO 2004/009134(Bracco)は、細胞に囲まれたMRI造影剤として、Gdキレート錯体を記載している。
【0014】
WO 96/09840(Nycomed)は、粒子材料を含む診断剤を記載しており、この粒子は、金属酸化物(酸化鉄)の診断上活性な本質的に不水溶性の結晶物質およびポリイオンコーティング剤(例えば、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン)を含む。
WO 04/083902(Georgia Tech Research Corp.)は、生体適合性コーティング(例えば、リン脂質−ポリエチレングリコール)を有する、磁気ナノ粒子(例えば、Gdキレート)を記載し、これは生体分子、例えば核酸、抗体などを有してもよい。
【0015】
WO 03/082105(Barnes Jewish Hospital)は、脂質/界面活性剤コーティングに囲まれた、Gd−DTPA−PEおよびGd−DTPA−BOAキレート錯体を記載している。
【発明の開示】
【0016】
本願発明の目的は、上記の化合物の不利点を避ける、新規の造影剤を製造することであった。
これは、驚くべきことに、高純度二酸化ケイ素を、共有結合したランタニド錯体(好ましくはガドリニウム錯体)の支持体として用いることにより達成された。二酸化ケイ素は、患者体内における耐容性が非常に良く、したがって、先行技術における多くの他の材料よりもはるかに優れている。この点に関する例は、とりわけ、Jain, T.K.; Roy, I.; Dee, T.K.; Maitra, A.N., J. Am. Chem. Soc.1998, 120,11092-11095、Shimada, M.; Shoji, N.; Takahashi, A., Anticancer Res.1995, 15, 109-115およびLal, M.; Levy, L.; Kim, K.S.; He, G.S. Wang, X.; Min, Y.H.; Pakatchi, S.; Prasad, P.N., Chem. Mater. 2000, 12, 2632-2639に記載されている。
【0017】
本発明はしたがって、不活性マトリックスを有するコア、不対電子を有する金属イオンが結合した1または2以上の共有結合した有機錯化剤、および任意に、コアの表面に共有結合した1または2以上の生体分子、からなるナノスケール粒子に関する。
【0018】
本発明はさらに、不活性マトリックスを有するコア、任意に、コアの表面に共有結合した1または2以上の生体分子、およびリンカーを介してコアの表面に共有結合し、不対電子を有する金属イオンが結合した、1または2以上の有機錯化剤、からなるナノスケール粒子に関する。
【0019】
不活性マトリックスを有するコアまたは支持体は、好ましくは、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび/または二酸化ジルコニウムからなる。二酸化ケイ素が特に好ましい。単分散二酸化ケイ素粒子は、テトラアルコキシシラン類の加水分解による既知の方法(EP 0216278参照)によって製造される。この単分散粒子の平均粒子径は、10〜500nm、好ましくは30〜300nmである。しかしながら、原則としてポリマー類、例えばポリエチレン格子も用いることができる。
【0020】
さらに、第1工程で、他のナノ粒子を二酸化ケイ素の薄膜でコーティングすることも可能である。このコーティングは、当業者に知られたゾルゲル法による単純な方法で可能である。この目的のために、ナノ粒子をエタノール/水溶液に懸濁し、ケイ素を含むエステル、例えばオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加える。ケイ素を含むエステルの加水分解は、必要であれば高温における、アンモニア水溶液の添加により開始される。沈殿した二酸化ケイ素は、好ましくは懸濁液内のナノ粒子に堆積する。層厚さは、コーティングされるナノ粒子の既知量および既知平均直径について、用いられるケイ素を含むエステルの量を介して非常に精密に設定できる。
【0021】
コーティングされたナノ粒子は、>約50nmの粒子径で、限外ろ過または遠心分離によって、分離し精製することができる。
用いられる金属イオンは、好ましくは、ランタニド族からの常磁性イオンである。ガドリニウム(III)イオンの使用が特に好ましい。
【0022】
用いられる有機錯化剤は、好ましくは、オリゴ−またはポリカルボン酸塩族(oligo- or polycarboxylate group)からの化合物である。ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)の使用が特に好ましい。
【0023】
金属キレート錯体は、リンカーを介して、好ましくはシランを介して、支持体の表面に共有結合している。好ましいリンカーは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)である。
【0024】
アジドのアルキン類への銅触媒双極性1,3−付加環化、いわゆるHuisgen反応を介して金属キレート錯体を製造することが特に有利である。当業者に既知のこの反応は、非常に穏和な条件下において、優れた収率で安定な1,2,3−トリアゾール類を提供し、単純な方法で、非常に複雑な分子の合成でさえも促進する。この反応はしたがって、近年、数多くの文献において反映される、用語「クリックケミストリー」のもとに、再び大きな関心を呼んだ(Braese et al, Angew. Chem. 2005, 117, 5336; Kolb, Finn and Sharpless, Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2004-2021参照)。
【0025】
驚くべきことに、上記のHuisgen反応が、ナノ粒子の表面官能化にも有利に用いることができることが見出された。このことは、「クリック化学」がナノスケール粒子上の不均一(heterogeneous)固相反応にも用いることができることを意味する。
【0026】
したがって、本発明はさらに、以下の処理工程を含む、ナノスケール粒子の製造方法に関する:
a)好ましくは二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび/または二酸化ジルコニウムからの、湿式化学法によるナノ粒子の製造、
b)ハロシランの単分子層でのナノ粒子のコーティング、
c)アジド基で官能化されたナノ粒子を得るための、ナノ粒子のアジド含有剤との反応、
d)1または2以上のアミン類ならびに1または2以上のポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリ塩化カルボニル(polycarbonyl chlorides)またはポリカルボン酸エステル類を含む、1または2以上の有機錯化剤の調製、
e)1または2以上の錯化剤に、ランタニド族からの金属イオンを負荷すること、
f)工程c)で得たアジド基で官能化したナノ粒子の、工程e)で得た金属イオンを負荷した1または2以上の有機錯化剤との反応。
【0027】
用いられるハロシランは好ましくは、例えば、3−(クロロプロピル)トリエトキシシランである。
用いられるアルキルアミンは、既知の全てのアルキルアミンであり得、プロパルギルアミンまたは6−アミノ−1−ヘキシンの使用が好ましい。これを、錯体形成に適したポリカルボン酸、優れた脱離基を含むポリカルボン酸無水物、塩化ポリカルボニルまたはポリカルボン酸エステルと反応させる。カルボキサミドは既知の方法によって合成される。
【0028】
ポリカルボン酸として、DOTAおよびDTPAまたはこれらの誘導体(例えばLi塩)を好ましくは対応するアミンと反応させる。反応の間に、ポリカルボン酸の1つのカルボン酸基のみがアミンと反応するようにする(1:1バッチ)。例えばDTPA二無水物のプロパルギルアミンとの反応は、既知のショッテン・バウマン法により行われる。
【0029】
生体分子、たとえば、酵素、ペプチド/タンパク質、レセプターリガンドまたは抗体などを、ナノ粒子にさらに共有結合させてもよい。ナノ粒子の患者身体における標的組織への特異的結合は、画像化およびその結果生じる診断を容易にする。
生体適合性を増大させるために、ナノ粒子をデキストランまたはポリエチレングリコールでさらにコーティングしてもよい。
【0030】
本発明はさらに、ナノスケール粒子の、磁気共鳴映像法用の造影剤としての使用に関する。本発明の粒子は、表面に配置される金属イオンが周囲のプロトン、例えば組織液からのプロトンと相互作用できるので、磁気共鳴映像法における造影剤として用いることができる。
【0031】
以下の例は、本発明を限定することなく、より詳細に説明することを意図する。
【0032】
例1:
表面結合Gd(III)を含む250nmの平均粒子径を有する単分散二酸化ケイ素粒子の製造
【0033】
1.1 単分散二酸化ケイ素粒子の製造
単分散二酸化ケイ素粒子は、EP 0216278 B1に記載のように、水/アルコール/アンモニア媒体におけるテトラアルコキシシラン類の加水分解によって製造し、ここで、まず一次粒子のゾルを製造し、次いで、得られたSiO粒子を反応の程度で制御されたテトラアルコキシシランの連続的に計量された添加により、所望の粒子サイズにする。
【0034】
1.2 3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)による官能化
第1工程で製造した二酸化ケイ素粒子10gを20mlの2−プロパノールに懸濁した。5mlの2−プロパノールで希釈した0.25mlのAPTESを続けて滴加し、混合物を2時間、80℃で還流冷却器下で撹拌した。
APTESが(ニンヒドリンによるドロップテストを用いて)洗浄液中に検出されなくなるまで、懸濁液を4000min−1で遠心分離器を用いて、2−プロパノールで8回洗浄した。
【0035】
1.3 ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)によるアミド形成
第2工程においてAPTESで官能化した二酸化ケイ素粒子に25mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加し、2−プロパノールをロータリーエバポレータ中、真空で蒸発させた。次いで、0.58gのジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA−ca)を懸濁液に添加し、混合物を150℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、反応生成物を200mlの0.1N TRIS緩衝液(pH7.0)に注ぎ入れ、遠心分離にて、脱イオン水で何度も洗浄した。
【0036】
1.4 ガドリニウム(III)イオンの負荷
第3工程で得た懸濁液に、0.486gの無水塩化ガドリニウム(III)を添加し、混合物を室温で8時間撹拌した。次いで、洗浄水中に塩化物が硝酸銀溶液によって検出されなくなるまで、遠心分離器を用いて、懸濁液を脱イオン水で洗浄した。そして反応生成物を凍結乾燥により乾燥した。
【0037】
特性解析:
乾燥したガドリニウム負荷二酸化ケイ素粒子を希釈フッ化水素酸に溶解し、ガドリニウム含有量をICP−MSによって測定した。0.13%のガドリニウムが試料中に検出された。
【0038】
二酸化ケイ素粒子の試料を再び脱イオン水で集中的に(3回)洗浄し、乾燥の後、ICP−MSで再分析した。ガドリニウム含有量は0.14%として測定された。この少し高いガドリニウム含有量は、乾燥の度合いの違いまたは測定方法における限界により説明される。しかしながら、重大な要素は、二酸化ケイ素粒子の繰り返しの洗浄がガドリニウム含有量を減少させなかったこと、すなわち、ガドリニウムは無孔二酸化ケイ素粒子の表面に明らかに強く共有結合していることである。同じ結果が1N塩酸による処理の場合にも得られた。
【0039】
例2
表面結合Gd(III)を含む90nmの平均粒子径を有する単分散二酸化ケイ素粒子の製造
【0040】
2.1 粒子の製造
EP 0216278 B1の例4に記載のとおり。
【0041】
2.2 粒子の官能化
第1工程で製造した二酸化ケイ素粒子10gを20mlの2−プロパノールに懸濁した。次いで、5mlの2−プロパノールで希釈した0.50mlのAPTESを滴加し、混合物を2時間、80℃で還流冷却器下で撹拌した。
APTESが(ニンヒドリンによるドロップテストを用いて)洗浄液中に検出されなくなるまで、懸濁液を4000min−1で遠心分離器を用いて、2−プロパノールで8回洗浄した。
【0042】
2.3 ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)によるアミド形成
第2工程においてAPTESで官能化した二酸化ケイ素粒子に25mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加し、2−プロパノールをロータリーエバポレータ中、真空で蒸発させた。次いで、1.0gのジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA−ca)を懸濁液に添加し、混合物を150℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、反応生成物を200mlの0.1N TRIS緩衝液(pH7.0)に注ぎ入れ、遠心分離器にて、脱イオン水で何度も洗浄した。
【0043】
2.4 ガドリニウム(III)イオンの負荷
第3工程で得た懸濁液に、1.0gの無水塩化ガドリニウム(III)を添加し、混合物を室温で8時間撹拌した。次いで、洗浄水中に塩化物が硝酸銀溶液によって検出されなくなるまで、遠心分離器を用いて、懸濁液を脱イオン水で洗浄した。そして反応生成物を凍結乾燥により乾燥した。
【0044】
特性解析
乾燥した、ガドリニウム負荷二酸化ケイ素粒子を希釈フッ化水素酸に溶解し、ガドリニウム含有量をICP−MSによって測定した。
【0045】
0.2%のガドリニウムが試料中に検出された。例1で製造された粒子と比べて高いGd含有量は、より小さい粒子の高い表面積対体積率によって説明することができる。約1200のガドリニウムイオンが1つの90nm粒子の表面に位置していると計算される。
【0046】
例3
表面結合Gd(III)を含む250nmの平均粒子径を有する単分散二酸化ケイ素粒子の製造
【0047】
3.1 二酸化ケイ素ナノ粒子の製造
16.7mlのオルトケイ酸テトラエチルを室温にて41.5mlの脱ミネラル水および111mlのエタノールの混合物に添加し、撹拌により均一な溶液を製造する。次いで、26mlの25重量%アンモニア溶液を添加し、混合物をさらに15秒間強く撹拌し、そして、1時間放置した。二酸化ケイ素ナノ粒子を得るための継続凝縮(continuing condensation)は、アンモニア溶液添加の約1分後の溶液の混濁から観察することができる。反応混合物はさらに処理することなく(not worked up)、代わりに次の反応工程に直接送られる。
【0048】
3.2 ハロシランによる反応
第1工程で製造したナノ粒子をハロシランの単分子層でコーティングする。そのために、第1工程からの反応混合物に、80μlの3−(クロロプロピル)−トリエトキシシランを加え、混合物を80℃で5時間撹拌する。次いで、粒子を遠心分離し、中性になるまで脱ミネラル水で洗浄する。
【0049】
3.3 表面結合アジドの生成
製造され、第2工程で洗浄されたナノ粒子を50mlの脱ミネラル水に懸濁し、66mgのアジ化ナトリウムを添加し、混合物を50℃で24時間撹拌する。ハロゲンである塩素を求核置換反応によって擬ハロゲンであるアジドで置換する。遠心分離器にてアジド含有ナノ粒子を出発材料から分離し、脱ミネラル水で洗浄し、水性懸濁液として保存する。
【0050】
3.4 DTPA二無水物のプロパルギルアミンとの反応によるアルキン(ポリカルボン酸モノアルキンアミド)の生成(ショッテン・バウマン法)
0.19g(1mmol)のAldrichからの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および0.15g(1.5mmol)のMerckからのトリエチルアミンおよび2mlのジメチルホルムアミド(Merck)を0.62g(1mmol)のMacrocyclicsからのジエチレントリアミン−1,7−テトラキス(t−酢酸ブチル)−4−酢酸、Article B-365に添加する。10分間の室温における強力な撹拌の後、0.06g(1mmol)のプロパルギルアミンを添加する。
【0051】
反応混合物をさらに8時間室温で撹拌する。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターする。反応混合物を10mlのジクロロメタンに取り込み、20mlの0.1モル塩酸で3回、20mlの飽和NaHCO水溶液で3回振盪することにより洗浄する。混合物を最終的に飽和塩化ナトリウム水溶液で振盪することにより洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。ジクロロメタンをロータリーエバポレータにて取り除き、油性残留物を4mlのテトラヒドロフラン/エタノール(容積で1:1)に取り込む。エステル保護基を切断するために、1mlの水および0.1g(4.4mmol)の水酸化リチウムを混合物に添加する。加水分解混合物を一晩撹拌し、ロータリーエバポレータにて乾燥するまで蒸発させる。反応生成物を10mlの水に取り込み、1モル塩酸を用いてpH7に調整する。
【0052】
3.5 錯化剤へのガドリニウム(III)イオンの負荷
第4工程で生成した、ジエチレントリアミン五酢酸4−プロパルギルアミドのリチウム塩の溶液に10mlの0.1モル塩化ガドリニウム(III)溶液(=1mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌する。
【0053】
3.6 錯化剤分子により修飾されたナノ粒子の製造(Huisgen反応)
第3工程で生成し、アジド基で官能化されたナノ粒子をTRIS緩衝液を用いて中性pHに調節する。前もって計算したポリカルボン酸モノアルキンアミド(第5工程より)を50mgの塩化銅(I)の存在下でナノ粒子懸濁液に滴加する。16時間室温で撹拌した後、反応を終了した。粒子を遠心分離し、0.1モル塩酸で強力に3回、そして最終的に脱ミネラル水で洗浄した。
【0054】
粒子のガドリニウム含有量は、ICP−MSを用いて0.3%と決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−不活性マトリックスを有するコア
−不対電子を有する1または2以上の金属イオンが結合した、1または2以上の共有結合した有機錯化剤、および
−任意に、コアの表面に共有結合した、1または2以上の生体分子
からなる、ナノスケール粒子。
【請求項2】
−不活性マトリックスを有するコア
−任意に、コアの表面に共有結合した、1または2以上の生体分子、および
−リンカーを介してコアの表面に共有結合し、不対電子を有する金属イオンが結合した、1または2以上の有機錯化剤
からなる、ナノスケール粒子。
【請求項3】
コアが、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび/または二酸化ジルコニウムからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノスケール粒子。
【請求項4】
コアが二酸化ケイ素からなることを特徴とする、請求項3に記載のナノスケール粒子。
【請求項5】
10〜500nm、好ましくは30〜200nmの平均粒子径を有し、単分散であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のナノスケール粒子。
【請求項6】
金属イオンがランタニド族から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のナノスケール粒子。
【請求項7】
金属イオンが、ガドリニウム(III)イオンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のナノスケール粒子。
【請求項8】
有機錯化剤が、オリゴ−またはポリカルボン酸塩族から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のナノスケール粒子。
【請求項9】
有機錯化剤が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)であることを特徴とする、請求項8に記載のナノスケール粒子。
【請求項10】
用いられる共有結合した生体分子が、酵素、ペプチド/タンパク質、レセプターリガンドまたは抗体であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のナノスケール粒子。
【請求項11】
用いられるリンカーが、シランであることを特徴とする、請求項2に記載のナノスケール粒子。
【請求項12】
用いられるリンカーが、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)であることを特徴とする、請求項11に記載のナノスケール粒子。
【請求項13】
以下の処理工程を含む、ナノスケール粒子の製造方法:
a)好ましくは二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび/または二酸化ジルコニウムからの、湿式化学法によるナノ粒子の製造、
b)ハロシランの単分子層でのナノ粒子のコーティング、
c)アジド基で官能化されたナノ粒子を得るための、ナノ粒子のアジド含有剤との反応、
d)1または2以上のアミン類、および1または2以上のポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、塩化ポリカルボニルまたはポリカルボン酸エステルを含む、1または2以上の有機錯化剤の調製、
e)1または2以上の錯化剤への、ランタニド族からの金属イオンの負荷、
f)工程c)で得たアジド基で官能化したナノ粒子と、工程e)で得た金属イオンを負荷した1または2以上の有機錯化剤との反応。
【請求項14】
工程d)において、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)もしくはこれらの誘導体などの有機錯化剤、および対応するアルキンアミンから、ポリカルボン酸モノアルキンアミドを製造することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程d)において用いられるアルキンアミンが、プロパルギルアミンまたは6−アミノ−1−ヘキシンであることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
工程e)において用いられる金属イオンが、ガドリニウム(III)イオンであることを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
磁気共鳴映像法用の造影剤としての、請求項1〜12のいずれかに記載のナノスケール粒子の使用。

【公表番号】特表2009−514905(P2009−514905A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539280(P2008−539280)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009982
【国際公開番号】WO2007/054182
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】