磁気共鳴診断装置
【課題】MRSスペクトルを得るためにMRI画像上で関心領域の位置決めをする際に、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにして、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捕捉できる手段を提供する。
【解決手段】操作者が位置決め画像上で関心領域(通常は、水の励起される領域)を設定すると、この設定した関心領域とは別に、脂肪の励起される領域が表示され、脂肪の励起される領域が、脂肪組織を多く含んでいる部分を含んでいるか否かを認識することができる。関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを合わせて、位置決め画像上に表示させる。
【解決手段】操作者が位置決め画像上で関心領域(通常は、水の励起される領域)を設定すると、この設定した関心領域とは別に、脂肪の励起される領域が表示され、脂肪の励起される領域が、脂肪組織を多く含んでいる部分を含んでいるか否かを認識することができる。関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを合わせて、位置決め画像上に表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(magnetic resonance)現象を利用して、生体の機能情報としてMRスペクトルを得る磁気共鳴診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及している磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、被検体中(主に水分子に含まれる)の水素原子核の濃度分布に反映した画像を取得するものである。従って、このMRI装置では、腫瘍や出血等によって、コリン、クレアチン、NAA、脂肪等の代謝物質の濃度分布における強度比が変化しても、この腫瘍や出血等の情報は得られない。
【0003】
一方、MRIの画像では得られない代謝物質(コリン、クレアチン、NAA、脂肪等)の濃度分布を複素スペクトルにより視覚的に捉えることができる磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)装置が開発されている。MRSとは、様々な分子の化学結合の違いによる磁気共鳴周波数の差異(ケミカルシフト)を手掛かりに、分子ごとの信号を分離する方法である。このケミカルシフトが生じるのは、同一の核種でも周囲の電子の状態など環境の異なる物質は、それぞれ少しずつ異なる静磁場を感ずるため、これにより異なる共振周波数を持つためである。
【0004】
図11(a)は、一般的なMRI画像を示しており、図11(b)は、このMRI画像中の関心領域(ROI)におけるMRスペクトルを示している。これらMRI画像及びMRスペクトルにより、多数の画素のスペクトルを同時に取得して、分子ごとに画像化を行うことで、代謝物質ごとの濃度分布を視覚的に捉えることが可能となる。
【0005】
通常は、まず関心領域の位置決め用画像としてMRI画像を表示させ、その後に操作者がこのMRI画像上で関心領域100を設定すると、この関心領域におけるMRスペクトルが表示されるようになっている。
【0006】
ここで、1Hスペクトロスコピーでは、関心のある代謝物質(NAA、クレアチン、コリン、乳酸等)は、おおよそ水と脂肪のケミカルシフトの間に存在し、水及び脂肪は、これら乳酸等の代謝物質に比べて極めて大きな信号値(信号強度)を持つ。従って、水及び脂肪の信号が混入すると、乳酸等のピークそのものが隠れて見えなくなるか、或いはこれらの大きなスペクトルのベースラインにより歪みを受けて、定量的な評価ができなくなるなどの問題が生じてしまう。そのため、この問題を解消すべく、ほとんどの組織に存在する水信号については、通常、周波数選択的励起パルスによりプリサチュレーションさせて抑制する方法が取られている。
【0007】
ところが、観測の対象である乳酸などのスペクトルピークは、脂肪のケミカルシフトとほぼ同じ周波数領域に存在する。そのため、脂肪信号については、上記水信号と同様にプリサチュレーションさせて抑制すると、観測の対象である乳酸信号なども一緒に抑制されてしまう。このように、脂肪信号についてはプリサチュレーションできないため、関心領域を設定する際に、脂肪の組織を極力含まないように設定しなければならない。
【0008】
しかしながら、位置決め画像(MRI画像)上に表示される関心領域は、ほとんどの組織に存在する水信号を基準としているため、脂肪組織を含まないように関心領域を設定しても、実際には関心領域内に脂肪組織を多く含む領域を含むおそれがある。これに関しては、以下詳細に説明する。
【0009】
一般に、MRSには、一つの特定領域を対象にする場合と、多数の画素(ボクセル)のスペクトルを同時に取得し、分子ごとに画像化を行う場合がある。前者は、領域選択スペクトロスコピー又はシングルボクセルスペクトロスコピー(single−voxel Spectroscopy)と呼ばれている。また、後者は、マルチボクセルスペクトロスコピー(multi−voxel Spectroscopy)又は磁気共鳴スペクトロスコピックイメージング(MRSI:Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)若しくはケミカルシフトイメージング(CSI:Chemical Shift Imaging)と呼ばれている。
【0010】
ここで、シングルボクセルスペクトロスコピーでは、MR信号の発生する領域を関心領域に限定するため、パルス状の線形な傾斜磁場と、特定の中心周波数及び帯域を持つ高周波磁場とを組み合わせて、この周波数に対応する領域を選択的に励起する方法(「選択励起法」という。)が使用される場合が多い。そこで、領域選択スペクトロスコピーのパルスシーケンスを図12に示す。この図12に示すごとく、領域選択スペクトロスコピーでは、90°、180°、180°の高周波パルス(RFパルス)のそれぞれにX,Y,Zの直交する3方向の傾斜磁場(Gx,Gy,Gz)を付加して、直方体の領域より2ndスピンエコーを得ている。この選択励起法は、一般のMRIでスライス面選択に使用される方法と同じである。
【0011】
一方、MRSIでは、基本的に空間的な識別は位相エンコードとフーリエ変換によって行うが、1Hスペクトロスコピーでは、周囲の脂肪組織の信号の折り返しなどを防ぐために、上記領域選択スペクトロスコピーの場合と同様の選択励起法を組み合わせる場合がある。そこで、MRSIのパルスシーケンスを図13に示す。これは、選択励起法と位相エンコードを組み合わせた空間2Dのパルスシーケンスである。
【0012】
ところが、上記シングルボクセルスペクトロスコピーやMRSIのように選択励起法を用いると、位置決め画像上で関心領域を設定する場合に不具合を生じることがある。即ち、ケミカルシフトにより異なる代謝物質は少しずつずれた周波数で共振するため、このケミカルシフトに相当する分だけ、各代謝物質のMR信号は異なる領域から発生することになる。これについて、以下、具体的に説明する。
【0013】
今、主磁場B0に加えて空間のX方向に線形の傾斜磁場GXを印加し、その時のケミカルシフトσの代謝物質の共鳴周波数Fは、磁気回転比をγとすると、(1)式のようになる。
[数1]
F=(γ/2π)(1−σ)(B0+GX・X)
=(γ/2π)B0+(γ/2π)GX・X
−(γ/2π)σB0−(γ/2π)σGX・X ……(1)
【0014】
ここで、第4項は、他の項に比べて充分小さいため無視することができる。そのため、中心周波数を(γ/2π)B0と設定して、検波した後に観測される周波数fは、(2)式で表される。
[数2]
f=(γ/2π)(GX・X−σB0) ……(2)
【0015】
そこで、この(2)式を用いて、ケミカルシフトがそれぞれσA,σBの2つの代謝物質A、Bの共鳴周波数と励起される領域の様子を表すと、図14に示す関係が成り立つ。即ち、代謝物質AとBから励起されるMR信号は、ケミカルシフトに相当する分だけずれて、異なる領域から発生する。
【0016】
更に、この領域のずれが、実際のMRI画面上でどの程度になるかについて例示する。
【0017】
選択励起のRFパルスの帯域をΔf、傾斜磁場強度をG、関心領域の一辺の大きさをL、水と脂肪のケミカルシフトをσ、対象核種の共鳴周波数をf0、水と脂肪の位置ずれをDとすると、(3)、(4)式のように表される。
[数3]
G=Δf/L ……(3)
[数4]
D=(σ・f0)/G ……(4)
【0018】
ここで、Δfの値を大きくする必要がある場合を考えると、同じフリップ角を得るには、RFの波高値を上げる必要があるため、RFパルスを出力するハードウェアの性能、人体に照射されるRFパワーの上限、RFコイルの耐圧などから制限を受ける。従って、上記Δfの値をむやみに大きくすることはできない。
【0019】
そこで、RFパルスの帯域が2000〔Hz〕である領域選択スペクトロスコピーの場合を考えてみる。ボクセルサイズを1辺2〔cm〕とすると、付加する傾斜磁場強度は、上記(3)式より、2000/2=1000〔Hz/cm〕となる。水と脂肪のケミカルシフトは約3.5〔ppm〕であり、静磁場強度1.5〔T〕におけるラーモア周波数は63.9×106〔Hz〕であるから、静磁場強度1.5〔T〕での共鳴周波数は、3.5×10−6×63.9×106=224〔Hz〕である。従って、水と脂肪の位置のずれは、(4)式より、224/1000=0.22〔cm〕になる。
【0020】
次に、MRSIの場合を考える。この方法では、シングルボクセルスペクトロスコピーの場合に比べて、複数のボクセルを含む広い領域を選択励起する必要がある。しかし、上記の理由により、高周波パルスの帯域をこれに合わせて広げることは現実的に困難であるため、実際には傾斜磁場パルスの強度を下げる方法が取られている。ここで、MRSIの選択領域を1辺8〔cm〕とすると、傾斜磁場の強度は上記の場合の1/4となるため、水信号と脂肪信号の位置ずれは4倍の0.9〔cm〕にもなる。即ち、RFパルスの最大出力振幅が一定の場合、スライス厚が厚いほど、ケミカルシフトの位置ずれは大きくなることになる。
【0021】
しかしながら、位置決め画像上に表示される関心領域は、上記の如く、ほとんどの組織に存在する水信号を基準とするものである。そのため、上記のように水信号と脂肪信号の励起される領域の位置ずれが生じると、操作者は脂肪組織を多く含んだ領域を避けて関心領域を設定したつもりでも、実際には脂肪組織を多く含んだ領域を関心領域に含めてしまうことになる。その結果、周囲の脂肪組織が励起されてMRスペクトルデータに混入してしまう。特に、上記の如く、MRSIの場合には、水と脂肪の位置のずれは0.9〔cm〕にもなるため、MRI画像上で関心領域の位置決めをする際に、このずれを無視することはできない。ここで、位置のずれが実際にどの程度になるかを、ヒトの頭部を例にとって説明する。
【0022】
図15は、ヒトの頭部のMRI画像(位置決め画像)を示す。頭部の脂肪組織103は、主に頭皮下に存在する。そのため、操作者は脂肪組織103を避けて、関心領域の位置決めをする必要がある。しかし、実線101で示す如く、操作者が脂肪組織103を避けて関心領域の位置決めをしたつもりでも、上記のように水信号と脂肪信号の励起される領域の位置がずれているため、実際には、点線102で示した領域を位置決めしたことになる。これでは、脂肪組織が励起されてスペクトルデータに混入するため、脂肪組織を避けて位置決めをしても意味がない。
【0023】
ところで、水信号に対する脂肪信号の励起される領域の位置ずれがどの方向に発生するかということに関しては、選択励起の際の傾斜磁場の極性により決まる。即ち、図16(a)に示すように、システムの座標軸に対して正方向の傾斜磁場を加えた場合には、脂肪の励起される領域は常にシステムの座標軸の正方向にシフトする。一方、図16(b)に示すように、傾斜磁場の極性を反転させると、システムの座標軸の負方向にシフトする。ところが、実際のMRI画像を用いた位置決め操作の際には、操作者は、傾斜磁場の印加される極性を知ることができないため、脂肪の励起される領域も知ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
以上より、従来のMRS装置では、操作者は水信号に対して脂肪信号の励起される領域の位置がずれるという事実を分かっていても、それがどのように(どの方向へ及びどの程度)ずれているかを認識することはできないため、関心領域の周囲の脂肪組織が励起されて多量にMRスペクトルデータに混入し、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができない場合があるという問題が生じていた。
【0025】
本発明は上述した事情を鑑みてなされたものであり、MRスペクトルを得るために位置決め画像(MRI画像)上で関心領域の設定をする場合に、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにして、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるようにしたことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【0027】
ここで、脂肪の励起される領域は、設定された関心領域とは別個に表示されていればよく、脂肪の励起される領域と設定された関心領域の表示態様(例えば、線、図形、記号、模様、色彩等)が同じであってもよい。また、脂肪の励起される領域を点滅させて表示してもよい。更に、脂肪の励起される領域と設定された関心領域を、別の表示画面にそれぞれ別個に表示してもよい。
【0028】
また、請求項2に係る発明は、前記表示手段は、前記関心領域における水に対する脂肪が励起される領域のずれ量に基づいて、前記脂肪の励起される領域を示す情報を前記位置決め画像上に表示させることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【0029】
さらに、請求項3に係る発明は、前記位置決め画像は、MRI画像であることを特徴とするものである。
【0030】
さらにまた、請求項4に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、前記関心領域を設定するための設定手段と、前記関心領域において水が励起されるときの脂肪が励起される領域を求める演算手段と、前記設定手段により設定された関心領域及び前記演算手段により求められた脂肪が励起される領域を示す情報をMRI画像上に表示させる表示手段とを具備したことを特徴とするものである。
【0031】
またさらに、請求項5に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、前記関心領域におけるスペクトルデータは、スライス傾斜磁場と励起パルスとを組み合わせて前記関心領域を選択的に励起する選択励起パルス法により取得され、位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、前記励起パルスと共に印加されるスライス傾斜磁場の極性を制御することを特徴とするものである。
【0032】
一方、上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項6に係る発明は、入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質毎の濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、位置決め画像を前記表示手段に表示し、前記入力手段から入力された情報に基づき、位置決め画面上に前記関心領域の極性に関する情報を設定して表示手段に表示し、前記関心領域を示す情報と、設定された前記傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0033】
また、請求項7に係る発明は、入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、位置決め画像を前記表示手段に表示し、前記入力手段から入力された情報に基づき前記関心領域を表示手段上に表示し、前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第1の脂肪励起領域を演算し、前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0034】
さらに、請求項8に係る発明は、前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する工程に続き、傾斜磁場の極性を反転させるための情報を受けた場合に前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第2の脂肪励起領域を演算し、前記第2の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0035】
さらにまた、請求項9に係る発明は、前記第2の脂肪励起領域に励起するための極性の傾斜磁場を用いて前記スペクトルデータを収集し、収集された前記スペクトルデータを前記表示手段に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0036】
他方、上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項10に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づくケミカルシフトを示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の磁気共鳴診断装置によれば、MRS画像を得るための関心領域の位置決めをし、傾斜磁場の極性に関する情報を変更した場合に、脂肪領域が追従し、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにすることができるため、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るMRS装置の構成の一例を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るMRS装置の位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態の特徴部分である、既定義の傾斜磁場極性を示した図。
【図5】本発明の第2の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図6】本発明の第3の実施形態を説明する前提として用いた、位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明する前提として用いた、位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図9】本発明の第4の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図10】本発明の第5の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図11】一般的なMRI画像とMRスペクトルを示す図。
【図12】従来から使用されている、シングルボクセルスペクトロスコピーのパルスシーケンスを示す図。
【図13】従来から使用されている、選択励起法と位相エンコードを組み合わせた空間2D(2次元)のMRSI法のパルスシーケンスを示す図。
【図14】ケミカルシフトによるスライス位置のずれを示す図。
【図15】従来の位置決め画像を示す図(点線の四角形102は実際には表示されていない)。
【図16】選択励起の際の傾斜磁場の極性の相違によるスライス位置のずれを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1の実施形態〕
以下に本発明の第1の実施形態について、主に図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された一実施形態のMRS装置の概略図である。このMRS装置は、被検体としての患者Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、RF信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、患者Pの心時相を表す信号としてのECG(心電図)信号を計測する心電計測部とを機能的に備えている。
【0040】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の長手軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するホスト計算機6の制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0041】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はさらに、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサの制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0042】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、3軸X,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、Z軸に沿ったスライス用傾斜磁場、X軸に沿った第1位相エンコード用傾斜磁場、Y軸方向に沿った第2位相エンコード用傾斜磁場の各方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、第1及び第2の位相エンコード方向の各傾斜磁場は、静磁場H0に重畳される。
【0043】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて患者Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このRFコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。後述するシーケンサの制御のもと、この送信器8Tは、磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する一方、受信器8Rは、RFコイル7が受信したMR信号(高周波信号)を受信し、この受信信号に各種の信号処理を施して、対応するデジタルデータを形成するようになっている。
【0044】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(「シーケンスコントローラ」とも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、および入力器13を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順により、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、シーケンサ5を含む装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0045】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの一連の動作を制御する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。また、シーケンサ5は、受信器8Rが出力するデジタルデータ(MR信号)を入力して、このデータを演算ユニット10に転送する。
【0046】
演算ユニット10は、受信器8Rからシーケンサ5を介して送られてくるMR信号のデジタルデータを入力してフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)への原データ(「生データ」とも呼ばれる)の配置、および、原データを実空間画像に再構成するための2次元または3次元のフーリエ変換処理を行う一方で、画像データの合成処理を行うようになっている。この画像データは表示器12に送信され、MRI画像又はMRS画像として表示される。尚、フーリエ変換処理はホスト計算機6に担当させてもよい。
【0047】
また、演算ユニット10は、上述の機能に加え、本発明の特徴部分を担う機能として、以下のものを有する。即ち、演算ユニット10は、入力器13により設定した関心領域(水信号の励起される領域)のMRI画像上における位置を認識することができる。また、上記(3)式及び(4)式に基づいて、水信号に対して脂肪信号が励起される領域のずれ量を計算し、上記関心領域とは別に、MRI画像上に脂肪の励起された領域(例えば、当該領域の外枠を点線で表す)を表示させることができる。更に、操作者が入力器13により関心領域の大きさ又は位置の設定を変更した場合には、脂肪の励起された領域も変更して表示させることができる。
【0048】
また、入力器13により、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成法などの情報をホスト計算機6に入力できるようになっている。
【0049】
記憶ユニット11は、原データおよび再構成画像データのみならず、上述の合成処理が施された画像データを保管することができる。また、記憶ユニット11には、後述するアルゴリズムを実行するためのプログラムが記録されており、演算ユニット10によって読み取られて実行されるようになっている。
【0050】
尚、MRI画像を得る場合には、上記x,y,zコイル3x〜3zは、それぞれスライス方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場の発生に用いられる。
【0051】
続いて、本実施形態におけるMRS装置の動作について、主に図1乃至図3を用いて説明する。
【0052】
まず、MRスペクトルを表示させる前に、関心領域の位置決め画像(MRI画像)を表示器12に表示する必要がある。このMRI画像を表示させるためのパルスシーケンスは、特開平4−227232号公報等に示されているように、従来から一般に使用されているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0053】
このパルスシーケンスにより、x,y,zコイル3x〜3zは、それぞれスライス方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場を静磁場H0に重畳する。この間、送信器8Tから供給されたRF電流パルスにより、RFコイル7からRFパルスが患者Pに印加されて、磁気共鳴を励起させる。一方、受信器8Rは、励起されたMR信号を受信し、この受信信号に各種の信号処理を施して、対応するデジタルデータを形成する。このデジタルデータはシーケンサ5を介して演算ユニット10に送られる。
【0054】
演算ユニット10では、フーリエ空間への原データの配置、及び、原データを実空間画像に再構成するための2次元又は3次元のフーリエ変換処理を行う一方で、画像データの合成処理を行う。演算ユニット10で合成処理が行われた画像データは、表示器12にMRI画像として表示される。
【0055】
次に、本発明の特徴部分である関心領域の位置決め動作に入る。この位置決め動作に関しては、図3に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。尚、本実施形態では、位置決め画像の一例として、ヒトの頭部のMRI画像を用いる。
【0056】
まず、図2に示す如く、操作者が、入力器13を使用して、位置決め画像上で関心領域(実線の四角形21)を設定すると(ステップS1)、関心領域を表す実線の四角形21とは別に、脂肪の励起される領域が点線の四角形22で表される(ステップS2)。これにより、操作者は、脂肪の励起される領域が頭皮部分23を含んでいるか否かを認識することができる。
【0057】
ここで、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップS3)、操作者は、点線の四角形22が頭皮部分23を含まないように、再度、関心領域を設定し直し(ステップS4)、関心領域の設定が完了する。一方、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS3)、この時点で関心領域の設定が完了する。
【0058】
関心領域の設定が完了すると、操作者は、入力器13によりMRスペクトルを表示させるための操作を行う。この操作は、例えば、入力器13に設けられた図示しないスイッチを押すことにより行う。これにより、従来と同様、図12及び図13に示すパルスシーケンスに基づいて、MRスペクトルが表示器13に表示される。
【0059】
以上のように、本実施形態では、操作者がMRI画像上で関心領域(水が励起される領域)を設定すると、脂肪が励起される領域も同時に表示することが可能である。そのため、たとえ脂肪の励起される領域が人体の脂肪を多く含む部分を含んでいても、操作者は脂肪の励起される領域が脂肪組織を多く含んでいる部分を含まないように関心領域を容易に設定し直すことができる。これによって、脂肪組織が励起されてMRスペクトルデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0060】
尚、上記例では、X,Yの2方向のみが表示されているが、これに限るものではなく、MRI画像として矢状断面、冠状断面を表示する場合には、脂肪信号が励起される領域の3方向のずれ量を計算して、Z方向についても同様に脂肪の励起される領域が同時に表示される。
【0061】
〔第2の実施形態〕
以下に本発明の第2の実施形態について、主に図1、図4及び図5に基づいて説明する。ここで、本実施形態は、第1の実施形態の特徴部分である脂肪の励起される領域を表示させる機能以外は、第1の実施形態と同じであるため、同一の構成要素には同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0062】
上記「従来の技術」の欄で説明したように、水に対する脂肪の位置ずれがどの方向に発生するか否かは、選択励起の際の傾斜磁場の極性により決まるが、実際のMRI画像を用いた位置決め操作の際には、操作者は傾斜磁場の印加される極性を知ることはできない。そのため、操作者は、脂肪の励起される領域が関心領域に対してどの方向にあるかを知ることができない。
【0063】
しかし、1Hスペクトロスコピーの主なターゲットは脳であり、混入を避けるべき頭部の脂肪は主に頭皮部分、即ち、関心領域の周辺部(静磁場中心から外側に向かう方向)に存在していることは分かっている。
【0064】
そこで、本実施形態では、この分かっている事実に基づき、傾斜磁場の極性について以下に示すような一定の規則に従った既定義の設定を持たせて、自動的に傾斜磁場の極性(磁場勾配の正・負)を変える機能を演算ユニット10に追加したものである。尚、以下、説明の便宜上、X方向1次元のみについて説明する。
【0065】
位置Xの磁場強度をBX、静磁場強度をB0、関心領域の中心のX座標をXRとすると、一定の規則に従った既定義は、(5)式及び(6)式で表される。
[数5]
BX=B0−GX・X (XR≧0) ……(5)
BX=B0+GX・X (XR<0) ……(6)
【0066】
この(5)、(6)式により、例えば、図4(a)に示すように、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対して、システムのX座標軸の正側にある場合は、シーケンサ5から負の磁場勾配を与えるようなパルスを出力する。即ち、空間的にX座標の正方向の増加に対して、静磁場強度が減少する極性のパルスを出力する。一方、図4(b)に示すように、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対して、システムのX座標軸の負側にある場合は、シーケンサ5から正の磁場勾配を与えるようなパルスを出力する。即ち、空間的にX座標の正方向の増加に対して、静磁場強度が増加する極性のパルスを出力する。
【0067】
尚、Y方向及びZ方向についても、X方向と同様な既定義の設定を持たせることはいうまでもない。
【0068】
次に、本実施形態の動作について図5を用いて説明する。尚、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略し、関心領域の位置決め動作から説明する。この位置決め動作に関しては、図5に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。
【0069】
まず、操作者が、入力器13を使用して位置決め画像上で関心領域を設定する(ステップS11)。すると、演算ユニット10により、この設定された関心領域の中心XRが磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあるか或いは負側にあるかが判断される(ステップS12)。演算ユニット10により、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、負の磁場極性となるように変化する(ステップS13)。一方、演算ユニット10により、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の負側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、正の磁場勾配となるように変化する(ステップS14)。これにより、関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
このように、本実施の形態では、位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、磁場勾配の正・負を変えて与えるようにしたため、脂肪の励起される領域は、水の励起される領域に対して常に静磁場中心側にシフトすることになる。これにより、上記第1の実施形態と同様の効果を得ると共に、更に、操作者が関心領域を設定し直す手間が省けるため、より円滑な診断を行うことが可能となる。
【0071】
〔第3の実施形態〕
以下に本発明の第3の実施形態について、主に図6〜図8に基づいて説明する。本実施形態は、要約すると、第1の実施形態の特徴部分である脂肪の励起される領域を表示する機能、及び、第2の実施形態の特徴部分である関心領域の設定位置に応じて傾斜磁場の極性を制御する機能を合わせたものである。このように、本実施形態は第1及び第2の実施の形態を合わせた構成であるため、同一の構成要素には同一の符号を用いて、その説明を省略する。また、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0072】
まず、本実施の形態の必要性(意義)から説明する。
【0073】
上記第3の実施形態は、1Hスペクトロスコピーの主なターゲットが脳であり、混入を避けるべき頭部の脂肪は主に頭皮部分、即ち、関心領域の周辺部分(静磁場中心から外側に向かう方向)に存在すると仮定した場合の好適な設定である。そのため、例えば、頭部の中心が静磁場中心から大きくずれている場合に、上記と同様の方法でMRS画像を得ようとすると、関心領域内に脂肪組織を含む事態が生じる。これに関しては、更に以下詳細に説明する。
【0074】
頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合の一例を図6に示す。この図6は、関心領域の中心XRは頭部の中心を基準にすると負方向(左側)にあるが、静磁場(システム)の中心を基準にすると正方向(右側)にある場合を示している。この様な場合に、第2の実施形態と同様に傾斜磁場の極性を制御すると、脂肪の励起される領域は更に負方向(左側)になり、更に多くの脂肪組織が励起されてスペクトルデータに混入してしまう。
【0075】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、第2の実施形態に加えて、第1の実施形態の特徴である「関心領域の表示とは別に、脂肪の励起される領域を点線の四角形22で表示する機能」を用いたものである。
【0076】
尚、本実施形態でも、第2の実施形態と同様に、Y方向及びZ方向についても、X方向と同様な既定義の設定を持たせることはいうまでもない。
【0077】
次に、本実施形態の動作について図8を用いて説明する。尚、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略し、関心領域の位置決め動作から説明する。この位置決め動作に関しては、図8に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。
【0078】
まず、操作者が、入力器13を使用して位置決め画像上で関心領域を設定する(ステップS21)。すると、上記第2の実施形態と同様に、演算ユニット10により、この設定された関心領域の中心が磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあるか或いは負側にあるかが判断される(ステップS22)。演算ユニット10により、関心領域の中心が、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、負の磁場極性となるように変化する(ステップS23)。一方、演算ユニット10により、関心領域の中心が、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の負側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、正の磁場勾配となるように変化する(ステップS24)。
【0079】
続いて、上記第1の実施形態と同様に、図2に示すように、関心領域を表す実線の四角形21とは別に、脂肪の励起される領域が点線の四角形22で表される(ステップS25)。これにより、操作者は、脂肪の励起される領域が頭皮部分23を含んでいるか否かを認識することができる。
【0080】
ここで、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップS26)、操作者は、点線の四角形22が頭皮部分23を含まないように、再度、関心領域を設定し直し(ステップS27a)、関心領域の設定が完了する。一方、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
このように、本実施の形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れていない場合には、第1の実施形態のように操作者が関心領域を設定し直すという手間が省け、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合に限り、操作者が関心領域を設定し直せば良いことになる。これにより、あらゆる場合に即応して、脂肪組織が励起されてデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0082】
〔第4の実施形態〕
以下に本発明の第4の実施形態について、主に図9に基づいて説明する。上記第3の実施形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合には、位置決め画像上の関心領域を設定し直すこととしたが、本実施形態では、関心領域を設定し直さず、上記第2の実施形態で自動的に行っていた傾斜磁場の極性の反転を操作者が手動で行うことを可能としたものである。そのため、本実施の形態では、入力器13に、関心領域の直交3方向の傾斜磁場の極性を反転させるための図示しないスイッチ機構を設けている。このように、本実施形態は、上記第3の実施形態の変形例の1つであり、傾斜磁場の極性を反転させるスイッチ機構以外は、上記第3の実施形態と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0083】
次に、本実施形態の動作について図9を用いて説明する。尚、位置決め動作に関しては、図9に示すアルゴリズムに基づいて処理されるが、ステップS26までは上記第3の実施形態と同じであるため、それ以降の処理から説明する。
【0084】
上記の如く、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップ26)、操作者は、入力器13のスイッチ機構により、手動で傾斜磁場の極性(磁場勾配の正・負)を反転させる(ステップS27b)。一方、点線の四角形23が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
このように、本実施形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れていない場合には、第1の実施形態のように操作者が関心領域を設定し直すという手間が省け、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合に限り、操作者が傾斜磁場の極性を反転させれば良いことになる。これにより、第3の実施形態と同様に、あらゆる場合に対応して、脂肪組織が励起されてデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0086】
〔第5の実施形態〕
以下に本発明の第5の実施形態について、主に図10に基づいて説明する。上記第4の実施形態では、入力器13のスイッチ機構により傾斜磁場の極性を反転させることとしたが、本実施形態では、脂肪の励起される領域を示す点線の四角形22を位置決め画面上で移動させると、これに対応して自動的に傾斜磁場の極性が反転するような機能にしたものである。
【0087】
即ち、本実施の形態では、図2に示す脂肪の励起される領域を示す点線の四角形22を、関心領域を表す実線の四角形21に独立して移動させることができるようにし、操作者が点線の四角形22を移動させると、これに合わせて傾斜磁場の極性が変化する機能としたものである。
【0088】
具体的には、入力器13により移動させた点線の四角形22の位置は、ホスト計算機6により認識され、これに基づいて、シーケンサ5に送るパルスシーケンス情報が変更されることになる。この変更されたパルスシーケンス情報は、送信器8Tが加える傾斜磁場の極性を反転させるものである。
【0089】
尚、点線の四角形22を移動させる機構は、入力器13に新たに設けてもよいし、関心領域(実線の四角形23)を設定する際に使用する機構を使用してもよい。
【0090】
このように、本実施形態は、上記第3の実施形態の変形例の1つであり、点線の四角形22を移動させると、これに合わせて傾斜磁場の極性が変化すること以外は、上記第3の実施形態と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0091】
次に、本実施形態の動作について図10を用いて説明する。尚、位置決め動作に関しては、図10に示すアルゴリズムに基づいて処理されるが、ステップS26までは上記第3の実施形態と同じであるため、それ以降の処理から説明する。
【0092】
上記の如く、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合に(ステップ26)、操作者は、入力器13により、手動で図2に示す点線の四角形22を頭皮部分23から遠ざけるように移動させると、傾斜磁場の磁場勾配が自動的に反転する(ステップS27c)。一方、点線の四角形23が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
このように、本実施形態によれば、脂肪の励起される領域である点線の四角形22を位置決め画面上で直接移動させるため、上記第3及び第4の実施形態に比べて、より直観的かつ視覚的な動作を行うことができる。
【0094】
尚、上記各実施形態では、設定した関心領域(水信号の励起される領域)を実線で表し、脂肪信号の励起される領域を点線で表したが、これに限るものではなく、関心領域と脂肪の励起される領域が区別して表示さえすれば、共に実線で表してもよい。また、これらの違いは、表示態様が異なるのであればどのような表示をしてもよい。ここで、表示態様が異なる例として、例えば、これらの違いをカラー表示の色の違いにより表したり、太い線と細い線とで区別して表しり、実線と波線で区別して表すことが挙げられる。更に、入力器13の操作により、関心領域と脂肪の励起される領域を1つの位置決め画像(MRI画像)上で切り替えて表示したり、2つの位置決め画像上でそれぞれを独立に表示させてもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、中心周波数を水信号に合わせて、水の励起される領域を関心領域としているが、これに限るものではなく、水と脂肪の共鳴周波数の中間に存在する測定対象の特定の代謝物質に合わせてもよい。また、中間周波数を水と脂肪の中間の位置に合わせてもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明によれば、MRS画像を得るための関心領域の位置決めをする場合に、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにすることができるため、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0097】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 コントローラ
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
16 音声発生器
17 ECGセンサ
18 ECGユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(magnetic resonance)現象を利用して、生体の機能情報としてMRスペクトルを得る磁気共鳴診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及している磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、被検体中(主に水分子に含まれる)の水素原子核の濃度分布に反映した画像を取得するものである。従って、このMRI装置では、腫瘍や出血等によって、コリン、クレアチン、NAA、脂肪等の代謝物質の濃度分布における強度比が変化しても、この腫瘍や出血等の情報は得られない。
【0003】
一方、MRIの画像では得られない代謝物質(コリン、クレアチン、NAA、脂肪等)の濃度分布を複素スペクトルにより視覚的に捉えることができる磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)装置が開発されている。MRSとは、様々な分子の化学結合の違いによる磁気共鳴周波数の差異(ケミカルシフト)を手掛かりに、分子ごとの信号を分離する方法である。このケミカルシフトが生じるのは、同一の核種でも周囲の電子の状態など環境の異なる物質は、それぞれ少しずつ異なる静磁場を感ずるため、これにより異なる共振周波数を持つためである。
【0004】
図11(a)は、一般的なMRI画像を示しており、図11(b)は、このMRI画像中の関心領域(ROI)におけるMRスペクトルを示している。これらMRI画像及びMRスペクトルにより、多数の画素のスペクトルを同時に取得して、分子ごとに画像化を行うことで、代謝物質ごとの濃度分布を視覚的に捉えることが可能となる。
【0005】
通常は、まず関心領域の位置決め用画像としてMRI画像を表示させ、その後に操作者がこのMRI画像上で関心領域100を設定すると、この関心領域におけるMRスペクトルが表示されるようになっている。
【0006】
ここで、1Hスペクトロスコピーでは、関心のある代謝物質(NAA、クレアチン、コリン、乳酸等)は、おおよそ水と脂肪のケミカルシフトの間に存在し、水及び脂肪は、これら乳酸等の代謝物質に比べて極めて大きな信号値(信号強度)を持つ。従って、水及び脂肪の信号が混入すると、乳酸等のピークそのものが隠れて見えなくなるか、或いはこれらの大きなスペクトルのベースラインにより歪みを受けて、定量的な評価ができなくなるなどの問題が生じてしまう。そのため、この問題を解消すべく、ほとんどの組織に存在する水信号については、通常、周波数選択的励起パルスによりプリサチュレーションさせて抑制する方法が取られている。
【0007】
ところが、観測の対象である乳酸などのスペクトルピークは、脂肪のケミカルシフトとほぼ同じ周波数領域に存在する。そのため、脂肪信号については、上記水信号と同様にプリサチュレーションさせて抑制すると、観測の対象である乳酸信号なども一緒に抑制されてしまう。このように、脂肪信号についてはプリサチュレーションできないため、関心領域を設定する際に、脂肪の組織を極力含まないように設定しなければならない。
【0008】
しかしながら、位置決め画像(MRI画像)上に表示される関心領域は、ほとんどの組織に存在する水信号を基準としているため、脂肪組織を含まないように関心領域を設定しても、実際には関心領域内に脂肪組織を多く含む領域を含むおそれがある。これに関しては、以下詳細に説明する。
【0009】
一般に、MRSには、一つの特定領域を対象にする場合と、多数の画素(ボクセル)のスペクトルを同時に取得し、分子ごとに画像化を行う場合がある。前者は、領域選択スペクトロスコピー又はシングルボクセルスペクトロスコピー(single−voxel Spectroscopy)と呼ばれている。また、後者は、マルチボクセルスペクトロスコピー(multi−voxel Spectroscopy)又は磁気共鳴スペクトロスコピックイメージング(MRSI:Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)若しくはケミカルシフトイメージング(CSI:Chemical Shift Imaging)と呼ばれている。
【0010】
ここで、シングルボクセルスペクトロスコピーでは、MR信号の発生する領域を関心領域に限定するため、パルス状の線形な傾斜磁場と、特定の中心周波数及び帯域を持つ高周波磁場とを組み合わせて、この周波数に対応する領域を選択的に励起する方法(「選択励起法」という。)が使用される場合が多い。そこで、領域選択スペクトロスコピーのパルスシーケンスを図12に示す。この図12に示すごとく、領域選択スペクトロスコピーでは、90°、180°、180°の高周波パルス(RFパルス)のそれぞれにX,Y,Zの直交する3方向の傾斜磁場(Gx,Gy,Gz)を付加して、直方体の領域より2ndスピンエコーを得ている。この選択励起法は、一般のMRIでスライス面選択に使用される方法と同じである。
【0011】
一方、MRSIでは、基本的に空間的な識別は位相エンコードとフーリエ変換によって行うが、1Hスペクトロスコピーでは、周囲の脂肪組織の信号の折り返しなどを防ぐために、上記領域選択スペクトロスコピーの場合と同様の選択励起法を組み合わせる場合がある。そこで、MRSIのパルスシーケンスを図13に示す。これは、選択励起法と位相エンコードを組み合わせた空間2Dのパルスシーケンスである。
【0012】
ところが、上記シングルボクセルスペクトロスコピーやMRSIのように選択励起法を用いると、位置決め画像上で関心領域を設定する場合に不具合を生じることがある。即ち、ケミカルシフトにより異なる代謝物質は少しずつずれた周波数で共振するため、このケミカルシフトに相当する分だけ、各代謝物質のMR信号は異なる領域から発生することになる。これについて、以下、具体的に説明する。
【0013】
今、主磁場B0に加えて空間のX方向に線形の傾斜磁場GXを印加し、その時のケミカルシフトσの代謝物質の共鳴周波数Fは、磁気回転比をγとすると、(1)式のようになる。
[数1]
F=(γ/2π)(1−σ)(B0+GX・X)
=(γ/2π)B0+(γ/2π)GX・X
−(γ/2π)σB0−(γ/2π)σGX・X ……(1)
【0014】
ここで、第4項は、他の項に比べて充分小さいため無視することができる。そのため、中心周波数を(γ/2π)B0と設定して、検波した後に観測される周波数fは、(2)式で表される。
[数2]
f=(γ/2π)(GX・X−σB0) ……(2)
【0015】
そこで、この(2)式を用いて、ケミカルシフトがそれぞれσA,σBの2つの代謝物質A、Bの共鳴周波数と励起される領域の様子を表すと、図14に示す関係が成り立つ。即ち、代謝物質AとBから励起されるMR信号は、ケミカルシフトに相当する分だけずれて、異なる領域から発生する。
【0016】
更に、この領域のずれが、実際のMRI画面上でどの程度になるかについて例示する。
【0017】
選択励起のRFパルスの帯域をΔf、傾斜磁場強度をG、関心領域の一辺の大きさをL、水と脂肪のケミカルシフトをσ、対象核種の共鳴周波数をf0、水と脂肪の位置ずれをDとすると、(3)、(4)式のように表される。
[数3]
G=Δf/L ……(3)
[数4]
D=(σ・f0)/G ……(4)
【0018】
ここで、Δfの値を大きくする必要がある場合を考えると、同じフリップ角を得るには、RFの波高値を上げる必要があるため、RFパルスを出力するハードウェアの性能、人体に照射されるRFパワーの上限、RFコイルの耐圧などから制限を受ける。従って、上記Δfの値をむやみに大きくすることはできない。
【0019】
そこで、RFパルスの帯域が2000〔Hz〕である領域選択スペクトロスコピーの場合を考えてみる。ボクセルサイズを1辺2〔cm〕とすると、付加する傾斜磁場強度は、上記(3)式より、2000/2=1000〔Hz/cm〕となる。水と脂肪のケミカルシフトは約3.5〔ppm〕であり、静磁場強度1.5〔T〕におけるラーモア周波数は63.9×106〔Hz〕であるから、静磁場強度1.5〔T〕での共鳴周波数は、3.5×10−6×63.9×106=224〔Hz〕である。従って、水と脂肪の位置のずれは、(4)式より、224/1000=0.22〔cm〕になる。
【0020】
次に、MRSIの場合を考える。この方法では、シングルボクセルスペクトロスコピーの場合に比べて、複数のボクセルを含む広い領域を選択励起する必要がある。しかし、上記の理由により、高周波パルスの帯域をこれに合わせて広げることは現実的に困難であるため、実際には傾斜磁場パルスの強度を下げる方法が取られている。ここで、MRSIの選択領域を1辺8〔cm〕とすると、傾斜磁場の強度は上記の場合の1/4となるため、水信号と脂肪信号の位置ずれは4倍の0.9〔cm〕にもなる。即ち、RFパルスの最大出力振幅が一定の場合、スライス厚が厚いほど、ケミカルシフトの位置ずれは大きくなることになる。
【0021】
しかしながら、位置決め画像上に表示される関心領域は、上記の如く、ほとんどの組織に存在する水信号を基準とするものである。そのため、上記のように水信号と脂肪信号の励起される領域の位置ずれが生じると、操作者は脂肪組織を多く含んだ領域を避けて関心領域を設定したつもりでも、実際には脂肪組織を多く含んだ領域を関心領域に含めてしまうことになる。その結果、周囲の脂肪組織が励起されてMRスペクトルデータに混入してしまう。特に、上記の如く、MRSIの場合には、水と脂肪の位置のずれは0.9〔cm〕にもなるため、MRI画像上で関心領域の位置決めをする際に、このずれを無視することはできない。ここで、位置のずれが実際にどの程度になるかを、ヒトの頭部を例にとって説明する。
【0022】
図15は、ヒトの頭部のMRI画像(位置決め画像)を示す。頭部の脂肪組織103は、主に頭皮下に存在する。そのため、操作者は脂肪組織103を避けて、関心領域の位置決めをする必要がある。しかし、実線101で示す如く、操作者が脂肪組織103を避けて関心領域の位置決めをしたつもりでも、上記のように水信号と脂肪信号の励起される領域の位置がずれているため、実際には、点線102で示した領域を位置決めしたことになる。これでは、脂肪組織が励起されてスペクトルデータに混入するため、脂肪組織を避けて位置決めをしても意味がない。
【0023】
ところで、水信号に対する脂肪信号の励起される領域の位置ずれがどの方向に発生するかということに関しては、選択励起の際の傾斜磁場の極性により決まる。即ち、図16(a)に示すように、システムの座標軸に対して正方向の傾斜磁場を加えた場合には、脂肪の励起される領域は常にシステムの座標軸の正方向にシフトする。一方、図16(b)に示すように、傾斜磁場の極性を反転させると、システムの座標軸の負方向にシフトする。ところが、実際のMRI画像を用いた位置決め操作の際には、操作者は、傾斜磁場の印加される極性を知ることができないため、脂肪の励起される領域も知ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
以上より、従来のMRS装置では、操作者は水信号に対して脂肪信号の励起される領域の位置がずれるという事実を分かっていても、それがどのように(どの方向へ及びどの程度)ずれているかを認識することはできないため、関心領域の周囲の脂肪組織が励起されて多量にMRスペクトルデータに混入し、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができない場合があるという問題が生じていた。
【0025】
本発明は上述した事情を鑑みてなされたものであり、MRスペクトルを得るために位置決め画像(MRI画像)上で関心領域の設定をする場合に、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにして、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるようにしたことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【0027】
ここで、脂肪の励起される領域は、設定された関心領域とは別個に表示されていればよく、脂肪の励起される領域と設定された関心領域の表示態様(例えば、線、図形、記号、模様、色彩等)が同じであってもよい。また、脂肪の励起される領域を点滅させて表示してもよい。更に、脂肪の励起される領域と設定された関心領域を、別の表示画面にそれぞれ別個に表示してもよい。
【0028】
また、請求項2に係る発明は、前記表示手段は、前記関心領域における水に対する脂肪が励起される領域のずれ量に基づいて、前記脂肪の励起される領域を示す情報を前記位置決め画像上に表示させることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【0029】
さらに、請求項3に係る発明は、前記位置決め画像は、MRI画像であることを特徴とするものである。
【0030】
さらにまた、請求項4に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、前記関心領域を設定するための設定手段と、前記関心領域において水が励起されるときの脂肪が励起される領域を求める演算手段と、前記設定手段により設定された関心領域及び前記演算手段により求められた脂肪が励起される領域を示す情報をMRI画像上に表示させる表示手段とを具備したことを特徴とするものである。
【0031】
またさらに、請求項5に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、前記関心領域におけるスペクトルデータは、スライス傾斜磁場と励起パルスとを組み合わせて前記関心領域を選択的に励起する選択励起パルス法により取得され、位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、前記励起パルスと共に印加されるスライス傾斜磁場の極性を制御することを特徴とするものである。
【0032】
一方、上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項6に係る発明は、入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質毎の濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、位置決め画像を前記表示手段に表示し、前記入力手段から入力された情報に基づき、位置決め画面上に前記関心領域の極性に関する情報を設定して表示手段に表示し、前記関心領域を示す情報と、設定された前記傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0033】
また、請求項7に係る発明は、入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、位置決め画像を前記表示手段に表示し、前記入力手段から入力された情報に基づき前記関心領域を表示手段上に表示し、前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第1の脂肪励起領域を演算し、前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0034】
さらに、請求項8に係る発明は、前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する工程に続き、傾斜磁場の極性を反転させるための情報を受けた場合に前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第2の脂肪励起領域を演算し、前記第2の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0035】
さらにまた、請求項9に係る発明は、前記第2の脂肪励起領域に励起するための極性の傾斜磁場を用いて前記スペクトルデータを収集し、収集された前記スペクトルデータを前記表示手段に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法である。
【0036】
他方、上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項10に係る発明は、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づくケミカルシフトを示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の磁気共鳴診断装置によれば、MRS画像を得るための関心領域の位置決めをし、傾斜磁場の極性に関する情報を変更した場合に、脂肪領域が追従し、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにすることができるため、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るMRS装置の構成の一例を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るMRS装置の位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態の特徴部分である、既定義の傾斜磁場極性を示した図。
【図5】本発明の第2の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図6】本発明の第3の実施形態を説明する前提として用いた、位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明する前提として用いた、位置決め画像(MRI画像)を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図9】本発明の第4の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図10】本発明の第5の実施形態の特徴部分である、関心領域の設定が完了するまでのフローチャート。
【図11】一般的なMRI画像とMRスペクトルを示す図。
【図12】従来から使用されている、シングルボクセルスペクトロスコピーのパルスシーケンスを示す図。
【図13】従来から使用されている、選択励起法と位相エンコードを組み合わせた空間2D(2次元)のMRSI法のパルスシーケンスを示す図。
【図14】ケミカルシフトによるスライス位置のずれを示す図。
【図15】従来の位置決め画像を示す図(点線の四角形102は実際には表示されていない)。
【図16】選択励起の際の傾斜磁場の極性の相違によるスライス位置のずれを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1の実施形態〕
以下に本発明の第1の実施形態について、主に図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された一実施形態のMRS装置の概略図である。このMRS装置は、被検体としての患者Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、RF信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、患者Pの心時相を表す信号としてのECG(心電図)信号を計測する心電計測部とを機能的に備えている。
【0040】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の長手軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するホスト計算機6の制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0041】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はさらに、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサの制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0042】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、3軸X,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、Z軸に沿ったスライス用傾斜磁場、X軸に沿った第1位相エンコード用傾斜磁場、Y軸方向に沿った第2位相エンコード用傾斜磁場の各方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、第1及び第2の位相エンコード方向の各傾斜磁場は、静磁場H0に重畳される。
【0043】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて患者Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このRFコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。後述するシーケンサの制御のもと、この送信器8Tは、磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する一方、受信器8Rは、RFコイル7が受信したMR信号(高周波信号)を受信し、この受信信号に各種の信号処理を施して、対応するデジタルデータを形成するようになっている。
【0044】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(「シーケンスコントローラ」とも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、および入力器13を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順により、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、シーケンサ5を含む装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0045】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの一連の動作を制御する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。また、シーケンサ5は、受信器8Rが出力するデジタルデータ(MR信号)を入力して、このデータを演算ユニット10に転送する。
【0046】
演算ユニット10は、受信器8Rからシーケンサ5を介して送られてくるMR信号のデジタルデータを入力してフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)への原データ(「生データ」とも呼ばれる)の配置、および、原データを実空間画像に再構成するための2次元または3次元のフーリエ変換処理を行う一方で、画像データの合成処理を行うようになっている。この画像データは表示器12に送信され、MRI画像又はMRS画像として表示される。尚、フーリエ変換処理はホスト計算機6に担当させてもよい。
【0047】
また、演算ユニット10は、上述の機能に加え、本発明の特徴部分を担う機能として、以下のものを有する。即ち、演算ユニット10は、入力器13により設定した関心領域(水信号の励起される領域)のMRI画像上における位置を認識することができる。また、上記(3)式及び(4)式に基づいて、水信号に対して脂肪信号が励起される領域のずれ量を計算し、上記関心領域とは別に、MRI画像上に脂肪の励起された領域(例えば、当該領域の外枠を点線で表す)を表示させることができる。更に、操作者が入力器13により関心領域の大きさ又は位置の設定を変更した場合には、脂肪の励起された領域も変更して表示させることができる。
【0048】
また、入力器13により、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成法などの情報をホスト計算機6に入力できるようになっている。
【0049】
記憶ユニット11は、原データおよび再構成画像データのみならず、上述の合成処理が施された画像データを保管することができる。また、記憶ユニット11には、後述するアルゴリズムを実行するためのプログラムが記録されており、演算ユニット10によって読み取られて実行されるようになっている。
【0050】
尚、MRI画像を得る場合には、上記x,y,zコイル3x〜3zは、それぞれスライス方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場の発生に用いられる。
【0051】
続いて、本実施形態におけるMRS装置の動作について、主に図1乃至図3を用いて説明する。
【0052】
まず、MRスペクトルを表示させる前に、関心領域の位置決め画像(MRI画像)を表示器12に表示する必要がある。このMRI画像を表示させるためのパルスシーケンスは、特開平4−227232号公報等に示されているように、従来から一般に使用されているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0053】
このパルスシーケンスにより、x,y,zコイル3x〜3zは、それぞれスライス方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場を静磁場H0に重畳する。この間、送信器8Tから供給されたRF電流パルスにより、RFコイル7からRFパルスが患者Pに印加されて、磁気共鳴を励起させる。一方、受信器8Rは、励起されたMR信号を受信し、この受信信号に各種の信号処理を施して、対応するデジタルデータを形成する。このデジタルデータはシーケンサ5を介して演算ユニット10に送られる。
【0054】
演算ユニット10では、フーリエ空間への原データの配置、及び、原データを実空間画像に再構成するための2次元又は3次元のフーリエ変換処理を行う一方で、画像データの合成処理を行う。演算ユニット10で合成処理が行われた画像データは、表示器12にMRI画像として表示される。
【0055】
次に、本発明の特徴部分である関心領域の位置決め動作に入る。この位置決め動作に関しては、図3に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。尚、本実施形態では、位置決め画像の一例として、ヒトの頭部のMRI画像を用いる。
【0056】
まず、図2に示す如く、操作者が、入力器13を使用して、位置決め画像上で関心領域(実線の四角形21)を設定すると(ステップS1)、関心領域を表す実線の四角形21とは別に、脂肪の励起される領域が点線の四角形22で表される(ステップS2)。これにより、操作者は、脂肪の励起される領域が頭皮部分23を含んでいるか否かを認識することができる。
【0057】
ここで、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップS3)、操作者は、点線の四角形22が頭皮部分23を含まないように、再度、関心領域を設定し直し(ステップS4)、関心領域の設定が完了する。一方、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS3)、この時点で関心領域の設定が完了する。
【0058】
関心領域の設定が完了すると、操作者は、入力器13によりMRスペクトルを表示させるための操作を行う。この操作は、例えば、入力器13に設けられた図示しないスイッチを押すことにより行う。これにより、従来と同様、図12及び図13に示すパルスシーケンスに基づいて、MRスペクトルが表示器13に表示される。
【0059】
以上のように、本実施形態では、操作者がMRI画像上で関心領域(水が励起される領域)を設定すると、脂肪が励起される領域も同時に表示することが可能である。そのため、たとえ脂肪の励起される領域が人体の脂肪を多く含む部分を含んでいても、操作者は脂肪の励起される領域が脂肪組織を多く含んでいる部分を含まないように関心領域を容易に設定し直すことができる。これによって、脂肪組織が励起されてMRスペクトルデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0060】
尚、上記例では、X,Yの2方向のみが表示されているが、これに限るものではなく、MRI画像として矢状断面、冠状断面を表示する場合には、脂肪信号が励起される領域の3方向のずれ量を計算して、Z方向についても同様に脂肪の励起される領域が同時に表示される。
【0061】
〔第2の実施形態〕
以下に本発明の第2の実施形態について、主に図1、図4及び図5に基づいて説明する。ここで、本実施形態は、第1の実施形態の特徴部分である脂肪の励起される領域を表示させる機能以外は、第1の実施形態と同じであるため、同一の構成要素には同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0062】
上記「従来の技術」の欄で説明したように、水に対する脂肪の位置ずれがどの方向に発生するか否かは、選択励起の際の傾斜磁場の極性により決まるが、実際のMRI画像を用いた位置決め操作の際には、操作者は傾斜磁場の印加される極性を知ることはできない。そのため、操作者は、脂肪の励起される領域が関心領域に対してどの方向にあるかを知ることができない。
【0063】
しかし、1Hスペクトロスコピーの主なターゲットは脳であり、混入を避けるべき頭部の脂肪は主に頭皮部分、即ち、関心領域の周辺部(静磁場中心から外側に向かう方向)に存在していることは分かっている。
【0064】
そこで、本実施形態では、この分かっている事実に基づき、傾斜磁場の極性について以下に示すような一定の規則に従った既定義の設定を持たせて、自動的に傾斜磁場の極性(磁場勾配の正・負)を変える機能を演算ユニット10に追加したものである。尚、以下、説明の便宜上、X方向1次元のみについて説明する。
【0065】
位置Xの磁場強度をBX、静磁場強度をB0、関心領域の中心のX座標をXRとすると、一定の規則に従った既定義は、(5)式及び(6)式で表される。
[数5]
BX=B0−GX・X (XR≧0) ……(5)
BX=B0+GX・X (XR<0) ……(6)
【0066】
この(5)、(6)式により、例えば、図4(a)に示すように、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対して、システムのX座標軸の正側にある場合は、シーケンサ5から負の磁場勾配を与えるようなパルスを出力する。即ち、空間的にX座標の正方向の増加に対して、静磁場強度が減少する極性のパルスを出力する。一方、図4(b)に示すように、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対して、システムのX座標軸の負側にある場合は、シーケンサ5から正の磁場勾配を与えるようなパルスを出力する。即ち、空間的にX座標の正方向の増加に対して、静磁場強度が増加する極性のパルスを出力する。
【0067】
尚、Y方向及びZ方向についても、X方向と同様な既定義の設定を持たせることはいうまでもない。
【0068】
次に、本実施形態の動作について図5を用いて説明する。尚、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略し、関心領域の位置決め動作から説明する。この位置決め動作に関しては、図5に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。
【0069】
まず、操作者が、入力器13を使用して位置決め画像上で関心領域を設定する(ステップS11)。すると、演算ユニット10により、この設定された関心領域の中心XRが磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあるか或いは負側にあるかが判断される(ステップS12)。演算ユニット10により、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、負の磁場極性となるように変化する(ステップS13)。一方、演算ユニット10により、関心領域の中心XRが、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の負側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、正の磁場勾配となるように変化する(ステップS14)。これにより、関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
このように、本実施の形態では、位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、磁場勾配の正・負を変えて与えるようにしたため、脂肪の励起される領域は、水の励起される領域に対して常に静磁場中心側にシフトすることになる。これにより、上記第1の実施形態と同様の効果を得ると共に、更に、操作者が関心領域を設定し直す手間が省けるため、より円滑な診断を行うことが可能となる。
【0071】
〔第3の実施形態〕
以下に本発明の第3の実施形態について、主に図6〜図8に基づいて説明する。本実施形態は、要約すると、第1の実施形態の特徴部分である脂肪の励起される領域を表示する機能、及び、第2の実施形態の特徴部分である関心領域の設定位置に応じて傾斜磁場の極性を制御する機能を合わせたものである。このように、本実施形態は第1及び第2の実施の形態を合わせた構成であるため、同一の構成要素には同一の符号を用いて、その説明を省略する。また、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0072】
まず、本実施の形態の必要性(意義)から説明する。
【0073】
上記第3の実施形態は、1Hスペクトロスコピーの主なターゲットが脳であり、混入を避けるべき頭部の脂肪は主に頭皮部分、即ち、関心領域の周辺部分(静磁場中心から外側に向かう方向)に存在すると仮定した場合の好適な設定である。そのため、例えば、頭部の中心が静磁場中心から大きくずれている場合に、上記と同様の方法でMRS画像を得ようとすると、関心領域内に脂肪組織を含む事態が生じる。これに関しては、更に以下詳細に説明する。
【0074】
頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合の一例を図6に示す。この図6は、関心領域の中心XRは頭部の中心を基準にすると負方向(左側)にあるが、静磁場(システム)の中心を基準にすると正方向(右側)にある場合を示している。この様な場合に、第2の実施形態と同様に傾斜磁場の極性を制御すると、脂肪の励起される領域は更に負方向(左側)になり、更に多くの脂肪組織が励起されてスペクトルデータに混入してしまう。
【0075】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、第2の実施形態に加えて、第1の実施形態の特徴である「関心領域の表示とは別に、脂肪の励起される領域を点線の四角形22で表示する機能」を用いたものである。
【0076】
尚、本実施形態でも、第2の実施形態と同様に、Y方向及びZ方向についても、X方向と同様な既定義の設定を持たせることはいうまでもない。
【0077】
次に、本実施形態の動作について図8を用いて説明する。尚、関心領域の位置決めに至るまでの動作については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略し、関心領域の位置決め動作から説明する。この位置決め動作に関しては、図8に示すアルゴリズムに基づき、以下のような処理によって行われる。
【0078】
まず、操作者が、入力器13を使用して位置決め画像上で関心領域を設定する(ステップS21)。すると、上記第2の実施形態と同様に、演算ユニット10により、この設定された関心領域の中心が磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあるか或いは負側にあるかが判断される(ステップS22)。演算ユニット10により、関心領域の中心が、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の正側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、負の磁場極性となるように変化する(ステップS23)。一方、演算ユニット10により、関心領域の中心が、磁石1の中心に対してシステムのX座標軸の負側にあると判断された場合には、送信器8Tにより与えられる傾斜磁場が、正の磁場勾配となるように変化する(ステップS24)。
【0079】
続いて、上記第1の実施形態と同様に、図2に示すように、関心領域を表す実線の四角形21とは別に、脂肪の励起される領域が点線の四角形22で表される(ステップS25)。これにより、操作者は、脂肪の励起される領域が頭皮部分23を含んでいるか否かを認識することができる。
【0080】
ここで、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップS26)、操作者は、点線の四角形22が頭皮部分23を含まないように、再度、関心領域を設定し直し(ステップS27a)、関心領域の設定が完了する。一方、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
このように、本実施の形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れていない場合には、第1の実施形態のように操作者が関心領域を設定し直すという手間が省け、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合に限り、操作者が関心領域を設定し直せば良いことになる。これにより、あらゆる場合に即応して、脂肪組織が励起されてデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0082】
〔第4の実施形態〕
以下に本発明の第4の実施形態について、主に図9に基づいて説明する。上記第3の実施形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合には、位置決め画像上の関心領域を設定し直すこととしたが、本実施形態では、関心領域を設定し直さず、上記第2の実施形態で自動的に行っていた傾斜磁場の極性の反転を操作者が手動で行うことを可能としたものである。そのため、本実施の形態では、入力器13に、関心領域の直交3方向の傾斜磁場の極性を反転させるための図示しないスイッチ機構を設けている。このように、本実施形態は、上記第3の実施形態の変形例の1つであり、傾斜磁場の極性を反転させるスイッチ機構以外は、上記第3の実施形態と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0083】
次に、本実施形態の動作について図9を用いて説明する。尚、位置決め動作に関しては、図9に示すアルゴリズムに基づいて処理されるが、ステップS26までは上記第3の実施形態と同じであるため、それ以降の処理から説明する。
【0084】
上記の如く、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合には(ステップ26)、操作者は、入力器13のスイッチ機構により、手動で傾斜磁場の極性(磁場勾配の正・負)を反転させる(ステップS27b)。一方、点線の四角形23が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
このように、本実施形態では、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れていない場合には、第1の実施形態のように操作者が関心領域を設定し直すという手間が省け、頭部の中心が静磁場中心から大きく外れている場合に限り、操作者が傾斜磁場の極性を反転させれば良いことになる。これにより、第3の実施形態と同様に、あらゆる場合に対応して、脂肪組織が励起されてデータに混入することを防止でき、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができる。
【0086】
〔第5の実施形態〕
以下に本発明の第5の実施形態について、主に図10に基づいて説明する。上記第4の実施形態では、入力器13のスイッチ機構により傾斜磁場の極性を反転させることとしたが、本実施形態では、脂肪の励起される領域を示す点線の四角形22を位置決め画面上で移動させると、これに対応して自動的に傾斜磁場の極性が反転するような機能にしたものである。
【0087】
即ち、本実施の形態では、図2に示す脂肪の励起される領域を示す点線の四角形22を、関心領域を表す実線の四角形21に独立して移動させることができるようにし、操作者が点線の四角形22を移動させると、これに合わせて傾斜磁場の極性が変化する機能としたものである。
【0088】
具体的には、入力器13により移動させた点線の四角形22の位置は、ホスト計算機6により認識され、これに基づいて、シーケンサ5に送るパルスシーケンス情報が変更されることになる。この変更されたパルスシーケンス情報は、送信器8Tが加える傾斜磁場の極性を反転させるものである。
【0089】
尚、点線の四角形22を移動させる機構は、入力器13に新たに設けてもよいし、関心領域(実線の四角形23)を設定する際に使用する機構を使用してもよい。
【0090】
このように、本実施形態は、上記第3の実施形態の変形例の1つであり、点線の四角形22を移動させると、これに合わせて傾斜磁場の極性が変化すること以外は、上記第3の実施形態と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0091】
次に、本実施形態の動作について図10を用いて説明する。尚、位置決め動作に関しては、図10に示すアルゴリズムに基づいて処理されるが、ステップS26までは上記第3の実施形態と同じであるため、それ以降の処理から説明する。
【0092】
上記の如く、点線の四角形22が頭皮部分23を含んでいるように表示された場合に(ステップ26)、操作者は、入力器13により、手動で図2に示す点線の四角形22を頭皮部分23から遠ざけるように移動させると、傾斜磁場の磁場勾配が自動的に反転する(ステップS27c)。一方、点線の四角形23が頭皮部分23を含んでいない場合は(ステップS26)、この時点で関心領域の設定が完了する。これ以降は、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
このように、本実施形態によれば、脂肪の励起される領域である点線の四角形22を位置決め画面上で直接移動させるため、上記第3及び第4の実施形態に比べて、より直観的かつ視覚的な動作を行うことができる。
【0094】
尚、上記各実施形態では、設定した関心領域(水信号の励起される領域)を実線で表し、脂肪信号の励起される領域を点線で表したが、これに限るものではなく、関心領域と脂肪の励起される領域が区別して表示さえすれば、共に実線で表してもよい。また、これらの違いは、表示態様が異なるのであればどのような表示をしてもよい。ここで、表示態様が異なる例として、例えば、これらの違いをカラー表示の色の違いにより表したり、太い線と細い線とで区別して表しり、実線と波線で区別して表すことが挙げられる。更に、入力器13の操作により、関心領域と脂肪の励起される領域を1つの位置決め画像(MRI画像)上で切り替えて表示したり、2つの位置決め画像上でそれぞれを独立に表示させてもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、中心周波数を水信号に合わせて、水の励起される領域を関心領域としているが、これに限るものではなく、水と脂肪の共鳴周波数の中間に存在する測定対象の特定の代謝物質に合わせてもよい。また、中間周波数を水と脂肪の中間の位置に合わせてもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明によれば、MRS画像を得るための関心領域の位置決めをする場合に、設定した関心領域が脂肪組織を多く含む部分をできるだけ含まないようにすることができるため、水及び脂肪以外の代謝物質の濃度分布を視覚的に明確に捉えることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0097】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 コントローラ
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
16 音声発生器
17 ECGセンサ
18 ECGユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、
前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、
を具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記関心領域における水に対する脂肪が励起される領域のずれ量に基づいて、前記脂肪の励起される領域を示す情報を前記位置決め画像上に表示させることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項3】
前記位置決め画像は、MRI画像であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項4】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
前記関心領域を設定するための設定手段と、
前記関心領域において水が励起されるときの脂肪が励起される領域を求める演算手段と、
前記設定手段により設定された関心領域及び前記演算手段により求められた脂肪が励起される領域を示す情報をMRI画像上に表示させる表示手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項5】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
前記関心領域におけるスペクトルデータは、スライス傾斜磁場と励起パルスとを組み合わせて前記関心領域を選択的に励起する選択励起パルス法により取得され、
位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、前記励起パルスと共に印加されるスライス傾斜磁場の極性を制御することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項6】
入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質毎の濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、
位置決め画像を前記表示手段に表示し、
前記入力手段から入力された情報に基づき、位置決め画像上に前記関心領域の極性に関する情報を設定して表示手段に表示し、
前記関心領域を示す情報と、設定された前記傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項7】
入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、
位置決め画像を前記表示手段に表示し、
前記入力手段から入力された情報に基づき前記関心領域を表示手段上に表示し、
前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第1の脂肪励起領域を演算し、
前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する
ことを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項8】
前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する工程に続き、
傾斜磁場の極性を反転させるための情報を受けた場合に前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第2の脂肪励起領域を演算し、
前記第2の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項9】
前記第2の脂肪励起領域に励起するための極性の傾斜磁場を用いて前記スペクトルデータを収集し、
収集された前記スペクトルデータを前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項10】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、
前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づくケミカルシフトを示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、
を具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項1】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、
前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、
を具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記関心領域における水に対する脂肪が励起される領域のずれ量に基づいて、前記脂肪の励起される領域を示す情報を前記位置決め画像上に表示させることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項3】
前記位置決め画像は、MRI画像であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項4】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
前記関心領域を設定するための設定手段と、
前記関心領域において水が励起されるときの脂肪が励起される領域を求める演算手段と、
前記設定手段により設定された関心領域及び前記演算手段により求められた脂肪が励起される領域を示す情報をMRI画像上に表示させる表示手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項5】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
前記関心領域におけるスペクトルデータは、スライス傾斜磁場と励起パルスとを組み合わせて前記関心領域を選択的に励起する選択励起パルス法により取得され、
位置決め画像上における関心領域の設定位置に応じて、前記励起パルスと共に印加されるスライス傾斜磁場の極性を制御することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項6】
入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質毎の濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、
位置決め画像を前記表示手段に表示し、
前記入力手段から入力された情報に基づき、位置決め画像上に前記関心領域の極性に関する情報を設定して表示手段に表示し、
前記関心領域を示す情報と、設定された前記傾斜磁場の極性に関する情報に基づく脂肪の励起される領域を示す情報とを、位置決め画像上に表示することを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項7】
入力手段から入力された情報に基づいて磁気共鳴診断装置の各部を制御手段が制御することにより、関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示手段に表示する磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、
位置決め画像を前記表示手段に表示し、
前記入力手段から入力された情報に基づき前記関心領域を表示手段上に表示し、
前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第1の脂肪励起領域を演算し、
前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する
ことを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項8】
前記第1の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する工程に続き、
傾斜磁場の極性を反転させるための情報を受けた場合に前記関心領域において水が励起されるときに脂肪が励起される第2の脂肪励起領域を演算し、
前記第2の脂肪励起領域を前記位置決め画像上に表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項9】
前記第2の脂肪励起領域に励起するための極性の傾斜磁場を用いて前記スペクトルデータを収集し、
収集された前記スペクトルデータを前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項10】
関心領域における代謝物質ごとの濃度分布を示すスペクトルデータを表示することができる磁気共鳴診断装置において、
傾斜磁場の極性に関する情報を操作者が設定するための設定手段と、
前記関心領域を示す情報と、前記設定された傾斜磁場の極性に関する情報に基づくケミカルシフトを示す情報とを、位置決め画像上に表示させる表示手段と、
を具備したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−279432(P2009−279432A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177903(P2009−177903)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【分割の表示】特願平11−375236の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【分割の表示】特願平11−375236の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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