説明

磁気化学センサ

本願は磁気化学センサに用いられるセンサ素子に関する。当該センサ素子は、第1のゲル状材料(10)及び磁性を有する第2材料(20)を有する。第1のゲル状材料(10)とは特にポリアクリルアミドのような膨張可能なヒドロゲルである。磁性を有する第2材料(20)とは、たとえばグルコースのような検体用の受容体と共に第1材料中に埋め込まれた粒子の形態をとる。粒子とは特にマグネタイト(Fe304)ナノ粒子である。検体との相互作用による磁場の変化はGMR素子(50)によって検出される。用途には、バイオセンサ、DNA検査素子、及び高スループットスクリーニングが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の1つ以上の検体を検出する素子の分野に関し、特に水溶液中での生体分子を検出する素子の分野に関する。
【0002】
本発明は、流体中での検体の検出に関し、特に水溶液中での生体分子の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気化学センサは特許文献1に開示されている。その素子の設計は、センサとセンサの読み取り部が空間的に分離していることで、遠隔センシングを可能にしている。しかし特許文献1に係るセンサは、人体内部の生理学パラメータを連続的に観察するのに用いる際には困難に直面する。たとえばセンサの読み取りは、積層されたセンサ構造に交流磁場をかけて、コイル構造を有する検出ユニットからの電圧を測定することによって行われる。この方法は素子の小型化の障害になる。さらにその素子は、2層が磁性を有し、かつ1層が特定の刺激に応答する少なくとも3層からなるセンサユニットを必要とする。本発明は、完全に素子を埋め込みたいが長期の埋め込みは望ましくないという場合の遠隔センシングを考慮している。
【特許文献1】米国特許第5821129号明細書
【特許文献2】欧州特許第1459084号明細書
【非特許文献1】アーリック(J.D.Ehrick)、ネイチャーマテリアルズ(Nature Materials)誌、第4巻、pp.298-302、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、迅速な検出を可能にし、かつ大抵の用途で小型化が可能な磁気化学センサを供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明の請求項1に記載のセンサによって解決される。
【0006】
従って、特に流体試料中の少なくとも1つの検体の検出、同定、及び/又は定量を行う磁気化学センサが供される。当該磁気化学センサは、
(a)前記少なくとも1つの検体との相互作用によって物理特性を変化させるように調製された弾性材料である第1材料、及び
(b)前記第1材料中に埋め込まれた磁性材料である第2材料、
を有する。
【0007】
本発明によるセンサは、ほとんどの用途で以下の利点のうちの少なくとも1つを示す。
-前記弾性材料中での水分が多くなることによる生物付着の抑制、
-前記弾性材料中での水分が多くなることによる高い生体親和性、
-前記弾性材料が薄いことによる高速応答、
-高精度、
-小さな形状因子、
-低コストのシステム設計
本発明においては、“弾性”の語は特に、少なくとも部分的に弾性変形可能な、つまり変形は少なくとも部分的に(又は完全に)可逆的(前の形状、サイズ、大きさに戻る)な、材料の特性を意味し、含み、及び/又は表す。本発明においては、“弾性”の語は特に、形状が十分可逆的に回復する過程を意味し、含み、及び/又は表す。
【0008】
本発明においては、“磁性”の語は特に、正味の永久磁気双極子モーメントを示す材料特性を意味し、含み、及び/又は表す。
【0009】
本発明の好適実施例によると、第2材料は超常磁性材料を有する。本発明においては、“超常磁性”の語は特に、磁場の存在下でのみ正味の永久磁気双極子モーメントを示す材料特性を意味し、含み、及び/又は表す。
【0010】
このことは、特に磁場が励起ワイヤ(図3参照)によって供給される場合には、本発明の範囲内である広範な用途で有利となることが明らかとなる。磁場がオフに切り換えられるとき、粒子の正味の磁気双極子モーメントは再びゼロとなり、センサは磁場を検出しない。この現象によって、信号の変調、及び特定周波数での読み取りが可能となる。それにより雑音を大きく抑制することができる。
【0011】
本発明の好適実施例によると、第2材料は永久磁化した材料を有する。
【0012】
本発明の範囲内である広範な用途において、そのようにすることによって、第2材料の磁気モーメントが大きくなるので、信号対雑音比を改善することができることが明らかとなる。さらに本発明の範囲内である広範な用途では、電力を小さくすることが可能となり、かつ読み取り電子機器を簡単にすることができる。
【0013】
本発明の好適実施例によると、第1材料が前記少なくとも1つの検体と相互作用するときに、前記第1材料のサイズ及び/又は厚さが変化する。
【0014】
本発明の実施例によると、前記第1材料内部で分散し、かつ前記第1材料の外へは拡散又はマイグレーションできない小さな粒子として第2材料は供される。
【0015】
本発明の実施例によると、第1材料はゲルの形態で供される。
【0016】
本発明の他の実施例によると、方向が変化する。その方向の変化では、具体的には前記少なくとも1つの検体に応答して第1材料の変化が起こる。その第1材料の変化には、収縮及び/又は膨張が含まれる。
【0017】
本発明の他の実施例によると、当該素子はセンサ方向を有するセンサを有し、かつ変化の方向は基本的にセンサ方向に垂直である。
【0018】
“センサ方向”という語は特に、センサがある程度平坦となるか、又は針を形成するように、そのセンサがある一以上の方向で他の方向よりも長く延びている場合における、そのセンサが最も長く延びている方向を意味し、及び/又は含む。
【0019】
本発明の実施例によると、第2材料の飽和磁化は、0.1×105A/m〜2×106A/mである。
【0020】
本発明の実施例によると、第2材料の飽和磁化は、1.5×105A/m〜8×105A/mである。
【0021】
本発明の実施例によると、第2材料の飽和磁化は、3×105A/m〜6×105A/mである。
【0022】
本発明の実施例によると、第2材料の飽和磁化は、4×105A/m〜5.5×105A/mである。
【0023】
本発明の実施例によると、第2材料のランジュバン磁化率(Langevin susceptibility)(印加磁場がゼロでの磁化率)は、10-5〜105である。
【0024】
本発明の実施例によると、第2材料のランジュバン磁化率(印加磁場がゼロでの磁化率)は、10-4〜104である。
【0025】
本発明の実施例によると、第2材料のランジュバン磁化率(印加磁場がゼロでの磁化率)は、10-3〜103である。
【0026】
本発明の実施例によると、前記第1材料中での第2材料の濃度(全体積の割合で表される)は、0.1%〜20%である。
【0027】
本発明の実施例によると、前記第1材料中での第2材料の濃度(全体積の割合で表される)は、1%〜15%である。
【0028】
本発明の実施例によると、前記第1材料中での第2材料の濃度(全体積の割合で表される)は、5%〜10%である。
【0029】
本発明の実施例によると、第2材料の磁化[A/m]と濃度[全体積の%]との積は、103〜4×107である。
【0030】
本発明の実施例によると、第2材料の磁化[A/m]と濃度[全体積の%]との積は、104〜8×106である。
【0031】
本発明の実施例によると、第2材料の磁化[A/m]と濃度[全体積の%]との積は、5×104〜7×105である。
【0032】
本発明の実施例によると、第2材料の平均粒径は、1nm〜40nmである。
【0033】
本発明の実施例によると、第2材料の平均粒径は、5nm〜30nmである。
【0034】
本発明の実施例によると、第2材料の多分散性は、1%〜40%である。
【0035】
本発明の実施例によると、第2材料の多分散性は、10%〜25%である。
【0036】
本発明の実施例によると、第2材料の磁気異方性は、1×103J/m3〜1×105J/m3である。
【0037】
本発明の実施例によると、第2材料の磁気異方性は、5×103J/m3〜5×104J/m3である。
【0038】
本発明の実施例によると、第2材料の磁気異方性は、8×103J/m3〜1.2×104J/m3である。
【0039】
本発明の実施例によると、第1材料は層の形態で供される。
【0040】
“層”という語は、特にある一方向での厚さが、他の方向の長さの0%〜50%であることを意味し、及び/又は含む。
【0041】
本発明の範囲内である一部の用途については、最適な素子の特性を得るため、層の厚さは、ある範囲に制限されている。薄すぎる層では、信号が弱くて感度は不十分となる。他方厚すぎる層では、拡散時間が長くなるために応答が遅くなってしまう。
【0042】
本発明の実施例によると、第1材料は、0.5μm〜40μmの厚さを有する層の形態で供される。
【0043】
本発明の実施例によると、第1材料は、5μm〜30μmの厚さを有する層の形態で供される。
【0044】
本発明の実施例によると、第1材料は、10μm〜20μmの厚さを有する層の形態で供される。
【0045】
本発明の実施例によると、第1材料はヒドロゲル材料を有する。
【0046】
本発明においては、“ヒドロゲル材料”とは、特に水中で水によって膨張するネットワークを形成するポリマーを有する材料を意味し、及び/又は含む。
【0047】
さらに本発明において“ヒドロゲル材料”とは、水によって膨張するネットワーク及び/又は水溶性のポリマー鎖のネットワークを水中に形成するポリマーを有するヒドロゲル材料の少なくとも一部を意味する。膨張状態のヒドロゲル材料は、50%以上の水及び/又は溶媒を有することが好ましく、70%以上の水及び/又は溶媒を有することがより好ましく、90%以上の水及び/又は溶媒を有することが最も好ましい。溶媒には有機溶媒が含まれることが好ましく、有機極性溶媒が含まれていることがより好ましく、たとえばエタノール、メタノール及び/又は(イソ)プロパノールのようなアルコールが含まれていることが最も好ましい。
【0048】
本発明においては、“ヒドロゲル材料”とは、特に応答性を有するヒドロゲルを意味し、及び/又は含む。応答性を有するヒドロゲルとは、特定パラメータが変化することで形状及び全体積が変化するヒドロゲルを意味する。そのようなパラメータは、物理パラメータ(温度、圧力)、化学パラメータ(イオン濃度、pH、検体濃度)、又は生物パラメータ(酵素活性)であって良い。
【0049】
本発明の実施例によると、ポリアクリル(メタクリル)酸材料、シリカゲル材料、置換ビニル材料、又はこれらの混合物を含む基から選ばれた材料を含む。
【0050】
本発明の実施例によると、ヒドロゲル材料は置換ビニル材料を有する。置換ビニル材料は、ビニルカプロラクタン及び/又は置換ビニルカプロラクタンである。
【0051】
本発明の実施例によると、ヒドロゲル材料はポリアクリル(メタクリル)酸材料を有する。ポリアクリル(メタクリル)酸材料は、少なくとも1つのアクリル(メタクリル)酸モノマー及び少なくとも1つの多官能性アクリル(メタクリル)酸モノマーで作られる。
【0052】
本発明の実施例によると、アクリル(メタクリル)酸モノマーは、アクリル(メタクリル)アミド、アクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリラート(メタクリラート)、エトキシエチルアクリラート(メタクリラート)、エトキシエトキシエチルアクリラート(メタクリラート)、又はこれらの混合物を有する基から選ばれる。
【0053】
本発明の実施例によると、多官能性アクリル(メタクリル)酸モノマーは、ビスアクリル(メタクリル)モノマー、及び/又はトリアクリル(メタクリル)モノマー、及び/又はテトラアクリル(メタクリル)モノマー、及び/又はペンタアクリル(メタクリル)モノマーである。
【0054】
本発明の実施例によると、多官能性アクリル(メタクリル)酸モノマーは、ビスアクリル(メタクリル)アミド、テトラエチレングリコールジアクリラート(メタクリラート)、トリエチレングリコールジアクリラート(メタクリラート)、ジエチレングリコールジアクリラート(メタクリラート)、トリプロピレングリコールジアクリラート(メタクリラート)、ペンタエリトリトールトリアクリラート(メタクリラート)、ポリエチレングリコールジアクリラート(メタクリラート)、エトキシラテドビスフェノール-A-ジアクリラート(メタクリラート)、ヘキサンジオールジアクリラート(メタクリラート)、又はこれらの混合物を含む基から選ばれる。
【0055】
本発明の実施例によると、ヒドロゲル材料は、アニオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料、及び/又はカチオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料を有する。アニオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料は、アクリル(メタクリル)酸、アリールスルホン酸、特にスチレンスルホン酸、イタコン酸、クロトン酸、スルホンアミド、又はこれらの混合物を含む基から選ばれることが好ましい。カチオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料は、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アミノエチルアクリラート(メタクリラート)、又はこれらの混合物を含む基から選ばれることが好ましい。アニオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料及びカチオン性ポリアクリル(メタクリル)酸材料は、中性モノマーを有する基から選ばれる少なくとも1つのモノマーと共重合化する。その少なくとも1つのモノマーは、ビニルアセタート、ヒドロキシエチルアクリラート(メタクリラート)、エトキシエトキシエチルアクリラート(メタクリラート)、又はこれらの混合物の基から選ばれることが好ましい。これらの共重合体は、その形状をpHの関数として変化させ、かつ印加電場及び/又は電流にも応答して良い。従ってこれらの材料は、本発明の範囲内で広範な用途に利用することができる。
【0056】
本発明の実施例によると、第1材料は、感熱性ポリマーを含むヒドロゲル材料を有する。
【0057】
本発明の実施例によると、第1材料は、ポリ-N-イソプロピルアミド(PNIPAAm)を含む基から選ばれるモノマー、及びそのモノマーと、ポリオキシエチレン、トリメチロール-プロパン ジステアラート、ポリ-ε-カプロラクトン又はこれらの混合物を含む基から選ばれるモノマーとの共重合体を有する。
【0058】
本発明の実施例によると、ヒドロゲル材料は感熱性モノマーに基づいている。その感熱性モノマーは、N-イソプロピルアミド、ジエチルアクリルアミド、カルボキシイソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシメチルプロピルメタクリルアミド、アクリロイルアルキルピペラジン、及び上記物質と疎水性モノマーの基から選ばれるモノマーとの共重合体を有する基から選ばれる。疎水性モノマーの基は、ヒドロキシエチルアクリラート(メタクリラート)、アクリル(メタクリル)酸、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリラート(メタクリラート)を有し、及び/又は、(イソ)ブチルアクリラート(メタクリラート)、メチルメタクリラート、イソボルニルアクリラート(メタクリラート)、又はこれらの混合物を含む基から選ばれるモノマーと共重合する。これらの共重合体は、感熱性として知られているので、本発明の範囲内で広範な用途に利用することができる。
【0059】
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が1%〜500%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0060】
本発明においては、膨張率とは、特に以下の手順に従った測定を含み、かつ意味する。
【0061】
第1材料及び第2材料は、50℃に設定されたオーブンの中で膜を生成するように乾燥される。余剰未反応化合物を除去するため、膜をさらに蒸留水に浸漬させた。膨張したポリマー膜は、直径8mmの円盤状に切断されて、質量が変化しなくなるまで50℃で乾燥させた。事前に質量(W0)を量った試料を、膨張平衡に達するまで恒温水槽内でさらに加えられた蒸留水に浸漬させた。濾紙で表面の水を吸い取ることで除去した後、湿った試料の質量(W1)が決定された。平衡膨張率は以下の式を用いて計算された。
【0062】
(膨張率)=(W1-W0)/W0
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が3%〜200%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0063】
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が5%〜100%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0064】
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が1%〜30%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0065】
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が1%〜25%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0066】
本発明の実施例によると、第1材料は、20℃での膨張率が1%〜20%のヒドロゲル材料を有する(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0067】
本発明の実施例によると、第1材料は検出される検体のための受容体を有する。
【0068】
本発明においては、“受容体”という語は特に、たとえば静水圧相互作用、水素結合、化学受容、分子認識等によって、選ばれた検体と相互作用することのできる、第1材料中に存在する化学種を意味し、及び/又は含む。
【0069】
そのような受容体系の例は、“カルモジュリン”(calmodulin)である。カルモジュリンは、カルシウムや、フェノチアジン(非特許文献1参照)と呼ばれるある範囲の抗精神病分子と結合する。
【0070】
本発明の実施例によると、第1材料は高分子材料である。
【0071】
本発明の実施例によると、第1材料は、変換率が50%〜100%の高分子材料である(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0072】
本発明においては、変換とは特に、以下の手順による測定を含み、又は意味する。
【0073】
第1材料を重合して、第2材料を埋め込んだ後、ある量の抑制剤が第1材料中に導入され、その試料は氷浴中で急冷された。残りのモノマーと抑制剤を除去した後、その試料は蒸留水で数回洗浄された。その後その試料は、質量が変化しなくなるまで、真空に保たれたオーブン中にて70℃で乾燥させた。変換は以下のようにして計算された。
【0074】
(変換)=(P-F)/M0*100%
ここでPは試料から得られた乾式コポリマー複合体ネットワークの質量、Fは第1材料中に埋め込まれた第2材料の理論上の質量で、M0は供給されたモノマーの質量である。
【0075】
本発明の実施例によると、第1材料は、変換率が70%〜95%の高分子材料である(ここで第2材料は第1材料中に埋め込まれている)。
【0076】
“基本的に”という語は特に、質量%にして90%以上の含有量を意味し、及び/又は含む。実施例によってはその含有量は95%以上であり、又は99%以上である。
【0077】
本発明の実施例によると、第1材料中での架橋密度は、0.002〜1で、好適には0.05〜1である。
【0078】
本発明においては、“架橋密度”という語は特に、次のような定義を意味し、又は含む。架橋密度δxはδx=X/(L+X)で定義される。ここでXは多官能性モノマーのモル分率で、Lは直鎖(=非多官能性)を形成するモノマーのモル分率である。直線ポリマーではδx=0であり、十分に架橋した系ではδx=1である。
【0079】
本発明の実施例によると、第2材料はコーティングを有する。
【0080】
本発明の実施例によると、第2材料はコーティングを有する。そのコーティングは、第2材料がヒドロゲルネットワークに付着する能力を向上させるように備えられている。それにより粒子はそのネットワークに固定され、そのネットワークの外へは拡散できない。
【0081】
本発明の実施例によると、第2材料は、厚さが0.1nm〜10nmのコーティングを有する。実施例によっては、コーティングの厚さは1〜5nmである。
【0082】
本発明の実施例によると、第2材料はコーティングを有する。そのコーティングは基本的に、無機酸化物、高分子有機材料、非高分子有機材料、及びこれらの混合物からなる基から選ばれた材料で構成される。
【0083】
本発明の実施例によると、第2材料及び/又は該第2材料の中心部は基本的に、磁性を示す、鉄合金、鉄酸化物、ニッケル合金、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、コバルト合金、希土類酸化物、希土類合金、及びこれらの混合物を含む基から選ばれた材料で作られる。
【0084】
本発明の実施例によると、第2材料及び/又は該第2材料の中心部は基本的に、Fe3O4で作られる。
【0085】
本発明の実施例によると、当該センサは少なくとも1つの電流供給手段を有する。その少なくとも1つの電流供給手段は、第2材料内での磁気双極子の配向の変化が起こるように電流を供するように備えられている。
【0086】
本発明の実施例によると、当該センサは少なくとも1つの測定手段を有する。その少なくとも1つの測定手段は、前記少なくとも1つの検体との相互作用に従って第1材料の物理特性を変化させる能力を有する。具体的には第1材料の中で第2材料の位置を変化させることで第1材料の物理特性を変化させる。
【0087】
測定手段は、電磁検出器、AMR、TMR、GMR、ホールセンサ、音響及び/又は光センサを含む基から選ばれる。
【0088】
本発明の実施例によると、測定手段と第1材料との間の距離は100nm〜1μmで、200nm〜500nmであることが好ましい。
【0089】
本発明の実施例によると、測定手段と第1材料との間の距離は100nm〜1μmで、200nm〜500nmであることが好ましく、かつ第1材料層の厚さは1μm〜5μmで、2μm〜3μmであることが好ましい。
【0090】
しかし異なる実施例によると、測定手段と第1材料との間の距離は1μm〜5μmで、2μm〜3μmであることが好ましい。
【0091】
本発明の実施例によると、測定手段と第1材料との間の距離は1μm〜5μmで、2μm〜3μmであることが好ましく、かつ第1材料層の厚さは10μm〜25μmで、15μm〜20μmであることが好ましい。
【0092】
驚くべきことに発明者らは、本発明の範囲内である広範な用途で-特にGMRが測定手段として用いられる場合-測定手段と第1材料の距離及び第1材料自体の厚さにとって2つの好適領域が存在しうることを発見した。
【0093】
如何なる理論によって立つというわけではないが、発明者らは、GMR素子からの距離に対する単一ビード信号(単位nV)に転換点が存在するために、これら2つの領域が生じうると考えている。このことについては、以降で例II及びIIIの2つの例によって説明する。
【0094】
しかし、たとえこの転換点が、本発明の範囲内である広範な用途で発見されたとしても、このような振る舞いは、すべての用途において見いだされている必要がないことに留意すべきである。
【0095】
本発明の実施例によると、当該センサは、少なくとも1つの測定手段及び少なくとも1つのGMR素子を有する。少なくとも1つの測定手段及び少なくとも1つのGMR素子は、第2材料内で配向した双極子の漂遊磁場の面内成分によって発生するGMR素子の抵抗変化を測定するように備えられている。
【0096】
本発明での使用に適したGMR素子は、たとえば特許文献2に開示されている。
【0097】
本発明の他の実施例によると、第1材料は、非粘着材料によってコーティングされた上部が開放された筐体(well)によって少なくとも部分的に取り囲まれている。第1材料の表面張力は30mN/m以下で、好適には25mN/m以下である。
【0098】
本発明の他の実施例によると、第1材料は、非粘着材料によって取り囲まれている。第1材料の表面張力は、変化する方向に垂直なほとんど全ての方向で、30mN/m以下で、好適には25mN/m以下である。
【0099】
本発明の他の実施例によると、非粘着材料はフッ素含有材料であって、好適にはフッ素化されたモノマー材料である。フッ素化されたモノマー材料は、たとえばCF4プラズマ処理のようなプラズマ処理を用いて、又は、たとえばペルフルオロアルキルクロロシランのようなフルオロシランを気相成長させることによって作られることが好ましい。
【0100】
本発明の他の実施例によると、当該素子は、第1材料付近に基板及び/又は母体材料を有する。当該素子は、第1材料と、基板及び/又は母体材料との間に少なくとも1層の接合促進層を有する。
【0101】
本発明の好適実施例によると、接合促進層はモノマーである。
【0102】
前記少なくとも1層の接合促進層は、シラン含有層、チオール含有層、アミン含有層、又はこれらの混合層からなる基から選ばれることが好ましい。
【0103】
“シラン含有層”という語は特に、次式で表されるような材料を有する層を意味し、及び/又は含む。
【化1】

ここでR1は、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキル、ビニル、アセチル、アミン、エポキシ、又はチオールを含む基から選ばれる。
【0104】
R2は、アルキレン、アリレン、モノ若しくはポリアルコキシ、モノ若しくはポリアルキルアミン、モノ若しくはポリアミド、チオエーテル、又はモノ若しくはポリジサルファイドを含む基から選ばれる。
【0105】
R3及びR4は、ハロゲン、R6-R7(ここでR6は、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、ビニル、アセチル、アミン、エポキシ、又はチオールから選ばれ、R7は、アルキル、アリール、モノ若しくはポリアルコキシ、モノ若しくはポリアルキルアミン、モノ若しくはポリアミド、チオエーテル、モノ若しくはポリジサルファイドから選ばれる)、O-R8(ここでR8は、水素、アルキル、長鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲンから選ばれる)の基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0106】
R5はO-R9の基を表す。ここでR9は、水素、アルキル、長鎖アルキル、アリール、ハロゲンから選ばれる。かつ/あるいは、R5は加水分解可能な部分である。
【0107】
属性基の定義:本明細書及び「特許請求の範囲」を通じて、属性基にはたとえば、アルキル、アルコキシ、アリールが用いられる。具体的な言及がなければ、如何に示すものは、本明細書に開示された化合物中に見いだされる基の定義に用いるのに好適な基である。
【0108】
アルキル:直線及び分岐C1-C8-アルキル
アルキレン:メチレン、1,1-エチレン、1,2-エチレン、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、2,2-プロピリジン、ブタン-2-オール-1,4-ジイル、プロパン-2-オール-1,3-ジイル、4-ブチレン、シクロヘキサン-1,1-ジイル、シクロヘキサン-1,2-ジイル、シクロヘキサン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、シクロペンタン-1,1-ジイル、シクロペンタン-1,2-ジイル、及びシクロペンタン-1,3-ジイル、からなる基から選ばれる
長鎖アルキル:直線及び分岐C5-C20-アルキル
アルケニル:C2-C6-アルケニル
シクロアルキル:C3-C8-シクロアルキル
アルコキシ:C1-C6-アルコキシ
長鎖アルコシキ:直線及び分岐C5-C20-アルコシキ
アリール:分子量が300未満のホモアロマティック化合物
アリレン:1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,2-ナフタレニレン、1,3-ナフタレニレン、1,4-ナフタレニレン、2,3-ナフタレニレン、1-ヒドロキシ-2,3-フェニレン、1-ヒドロキシ-2,4-フェニレン、1-ヒドロキシ-2,5-フェニレン、及び1-ヒドロキシ-2,6-フェニレンからなる基から選ばれる
ヘテロアリール:ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、ピリダジニル、1,3,5-トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリジニル、ピロリル、カルバゾリル、インドリル、及びイソインドリルからなる基から選ばれる。ここでヘテロアリールは、選ばれたヘテロアリールの環の中に位置する原子を介して化合物と接続して良い
アミン:-N(R)2の基である。ここで各Rは、水素、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルキル-C6H5、及びフェニルからそれぞれ独立して選ばれ、いずれのRもC1-C6-アルキルであるときには、2つのRは共に-NC3から-NC5までの複素環を形成して良く、残りのアルキル鎖は複素環へのアルキル置換基を形成する
ハロゲン:F、Cl、Br、及びIからなる基から選ばれる
ポリエーテル:-(O-CH2-CH(R))n-OH及び-(O-CH2-CH(R))n-Hを含む基から選ばれる、ここでRは、水素、アルキル、アリール、ハロゲンから選ばれ、かつnは1〜250である
具体的な言及がなければ、如何に示すものは、本明細書に開示された化合物中に見いだされる基の限定に用いるのにより好適な基である。
【0109】
アルキル:直線及び分岐C1-C6-アルキル
長鎖アルキル:直線及び分岐C5-C10-アルキルで、好適には直線C6-C8-アルキル
アルケニル:C3-C6-アルケニル
シクロアルキル:C6-C8-シクロアルキル
アルコキシ:C1-C4-アルコキシ
長鎖アルコシキ:直線及び分岐C5-C10-アルコシキで、好適にはC6-C8-アルコシキ
アリール:フェニル、ビフェニル、ナフタレニル、アントラセニル、及びフェナントレニル
ヘテロアリール:ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、ピラゾリル、トリアゾリル、イソキノリニル、イミダゾリル、及びオキサゾリジニルからなる基から選ばれる。ここでヘテロアリールは、選ばれたヘテロアリールの環の中に位置する原子を介して化合物と接続して良い
ヘテロアリレン:ピリジン-2,3-ジイル、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,6-ジイル、ピリジン-3,5-ジイル、キノリン-2,3-ジイル、キノリン-2,4-ジイル、イソキノリン-1,3-ジイル、イソキノリン-1,4-ジイル、ピラゾル-3,5-ジイル、及びイミダゾール-2,4-ジイルからなる基から選ばれる
アミン:-N(R)2の基である。ここで各Rは、水素、C1-C6-アルキル、及びベンジルからそれぞれ独立して選ばれる
ハロゲン:F及びClからなる基から選ばれる
ポリエーテル:-(O-CH2-CH(R))n-OH及び-(O-CH2-CH(R))n-Hを含む基から選ばれる、ここでRは、水素、メチル、ハロゲンから選ばれ、かつnは5〜50で、好適には10〜25である
“チオール含有層”という語は特に、R-SHの式で表される材料を含む層を意味し、及び/又は含む。ここでRは、アルキル、長鎖アルキル、アルケニル、シクロアルキルの基から選ばれる。
【0110】
広範な用途について、このチオール含有層は、基本的に当該センサ素子の性能に影響を及ぼすことなく、基板及び/又は母体材料への第1材料の接続を補助することが示された。チオール含有層が用いられる場合には、母体材料の表面はチオール結合材料から選ばれる。具体的には母体材料の表面はAu表面である。
【0111】
“アミン含有層”という語は特に、R1-NH-R2の式で表される材料を含む層を意味し、及び/又は含む。ここでR1は、アルキル、長鎖アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ポリエーテルの基から選ばれ、R2は、水素、アルキル、長鎖アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ポリエーテルの基から選ばれる。
【0112】
広範な用途について、このアミン含有層は、基本的に当該センサ素子の性能に影響を及ぼすことなく、基板及び/又は母体材料への第1材料の接続を補助することが示された。アミン含有層が用いられる場合には、母体材料の表面にはアミン結合基、ハロゲン化物、及び/又はアミンが備えられることが好ましい。備えられるアミン結合基は、エポキシ基及び/又は反応性エステルであることが好ましい。
【0113】
本発明はさらに、上述のセンサを用いて試料中に存在する少なくとも1つの検体の検出、同定、及び/又は定量を行う方法に関する。当該方法は、
a)前記少なくとも1つの検体と第1材料との相互作用を可能にすることで、前記第1材料の物理特性の変化を生じさせる手順、
b)第2材料中での磁気双極子の配向の変化を引き起こすように電流を印加する手順、
c)前記の第2材料中で配向した磁気双極子の漂遊磁場の面内成分によって生じるGMR素子の抵抗変化を測定する手順、
を有する。
【0114】
本発明による素子及び/又は方法は、広範なシステム及び/又は用途で利用可能である。とりわけ以下のうちの1以上での利用が可能である。
-分子診断に用いられるバイオセンサ
-たとえば血液、尿、又は唾液のような複合的生体混合物及び体液中でのタンパク質及び核酸の迅速かつ高感度な検出
-化学、薬学、又は分子生物学用の高速処理能力スクリーニング素子
-たとえば犯罪捜査でのDNA若しくはタンパク質検査、(病院内での)その場検査、又は中央研究所若しくは科学研究での診断に用いられる検査素子
-心臓病、感染症及び腫瘍、食物、並びに環境診断のためのDNA又はタンパク質診断ツール
-コンビナトリアル化学用ツール
-分析素子
請求項に記載された構成要素及び記載された実施例において本発明に従って用いられる構成要素のみならず上述の構成要素も、大きさ、形状、材料選択、及び技術的思想について如何なる例外に服することはない。そのため当該分野で知られた選択基準が制限なく適用されて良い。
【0115】
本発明の対象のさらなる詳細、特性、及び利点は従属請求項、図、並びにそれぞれの図及び実施例に対応する詳細な説明中に開示されている。図及びそれに対応する詳細な説明は、本発明によるセンサの好適実施例を-例として-示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0116】
図1は、本発明の第1形態によるセンサの断面を非常に概略的に図示している。当該センサは、中に第2材料からなる埋め込み粒子20を有する第1材料10を有する。埋め込み粒子20は、第1材料内部で移動できないように用いられている。その粒子は、この形態では無秩序に配置されている。しかし本発明の他の形態(図示されていない)では、粒子20は、構造化されたパターンをなすように供される。
【0117】
第1材料は母体材料30上に供される。母体材料30は、電流ワイヤ40及びGMRセンサ50を保護する役割を果たす。母体材料30自体は基板60上に設けられている。
【0118】
本発明の形態によると、GMR素子50と第1材料との距離は、100nm〜1μmで、好適には200nm〜500nmである。
【0119】
第1材料を良好に付着させるため、その第1材料へ向かって突出する突出部を有する母体又はその一部は、SiO2で作られることが好ましい。基板材料は如何なる材料でも良いが、好適にはシリコンである。
【0120】
図2は、本発明の第2形態によるセンサ1’の断面を非常に概略的に図示している。
【0121】
図2では、重複を避けるため、図1の形態と(基本的に)同一の部品については論じていない。
【0122】
図2の形態は図1の形態とは異なる。その異なる点とは、基板と第1材料との間にシラン含有層が供されている点である。図2では、見やすくするために、シラン含有層の大きさは極端に強調されている。しかし本発明の実際の用途のほとんどでは、シラン含有層は分子層である。
【0123】
さらに図2の形態は非粘着性材料70を有する。非粘着性材料70は変化方向(この実施例では垂直方向)ではない方向に供される。ここでは、非粘着性材料の大きさも、見やすくするために大幅に拡大されている。非粘着性材料は基本的に、第1材料の均一な膨張及び/又は収縮を保証する。
【0124】
(図1と共に)図2を見れば分かるように、センサ方向は、変化方向に対して基本的に垂直である(つまりこの形態では水平方向)。
【0125】
非粘着性材料自体には、側壁80が供される。側壁80は如何なる適当な材料で構成されても良い。用途によっては、たとえばSU-8のようなレジスト材料が有利であるため、本発明の好適実施例を形成することが分かる。
【0126】
図3は、本発明の第3形態によるセンサ1’’の断面を非常に概略的に図示している。図3では、重複を避けるため、図1及び/又は図2の形態と(基本的に)同一の部品については論じていない。
【0127】
図3の形態は図1の形態とは異なる。その異なる点とは、2つの電流ワイヤ40a,40bが存在し、その間に1つのGMR素子50が存在する点である。
【0128】
図3の大きさはかなり概略的であり、かつ本発明の範囲内の実際の用途では異なっていて良いことに留意して欲しい。
【0129】
実際、本発明の一の好適実施例によると、GMR素子及び/又は電流ワイヤの幅は2μm〜10μmであり、本発明の他の好適実施例によると、GMR素子と(複数の)電流ワイヤとの距離は0.5μm〜2μmである。
【0130】
さらにシラン含有層及び非粘着性材料(図2に図示された)は、この形態にも存在して(又は加えられて)良い。
【0131】
本発明はさらに以下の実施例を-例示によって-示すことでより理解される。
【実施例1】
【0132】
この例では、図1によるセンサが用いられている。
【0133】
第1材料は、グルコース用の受容体が供されたポリアクリルアミドヒドロゲルである。第2材料は、平均粒径が15μmのFe3O4粒子で構成される。第2材料の体積割合は10%である。第1材料の初期の厚さは15μmである。
【0134】
グルコース濃度は次のようにして測定される。電流が電流ワイヤを介して流れる(電流が流れる方向は紙面に垂直である)。これによって、第2材料の磁気双極子の配向が変化する。その変化はGMRセンサを介して検出することができる。その変化の結果生じるグルコース濃度が減少すれば第1材料が膨張して、GMR素子の電気抵抗が増大するため、GMR素子での電圧降下は第1材料とグルコースとの反応に依存する。一定電流が素子に流されるとき、素子での電圧降下は増大する。
【0135】
この例では、電圧上昇は、体積1%あたり数十μVの範囲である。
【実施例2】
【0136】
この例では、図3によるセンサが用いられている。
【0137】
GMRセンサ50と第1材料10の距離は0.5μmである。ワイヤ40a,40bの厚さは250nmである。センサ50の厚さは49nmである。
【0138】
GMRセンサの幅は6μmで、ワイヤ7の幅は7μmで、かつ間隔は1μmである。
【0139】
図4は、本発明の実施例2による実施例について、単一ビードの信号(単位nV)を、GMR素子からそのビードまでの距離(単位μm)に対して図示している。図4から、5μm周辺に転換点が存在し、曲線は3μm周辺で0Vの地点を通過することが分かる。
【0140】
従ってこの実施例では、層10の最大高さは約5-6μmであることが有利である。
【実施例3】
【0141】
この例でも、図3によるセンサが用いられている。
【0142】
GMRセンサ50と第1材料10の距離は3μmである。ワイヤ40a,40bの厚さは250nmである。センサ50の厚さは49nmである。
【0143】
GMRセンサの幅は3μmで、ワイヤ7の幅は3μmで、かつ間隔は1μmである。
【0144】
図5は、本発明の実施例3による実施例について、単一ビードの信号(単位nV)を、GMR素子からそのビードまでの距離(単位μm)に対して図示している。図5から、3μm周辺に転換点が存在し、曲線は2.5μm周辺で0Vの地点を通過することが分かる。
【0145】
しかしGMRセンサ50と第1材料10との距離は3μm(つまりすでに転換点を“超えている”)ので、この実施例では、層10の最大高さは約15-20μmであることが有利である。
【0146】
実施例2と実施例3との差異は、実施例2では“下降分岐(falling branch)”が測定されているのに対し、実施例3では“上昇分岐(rising branch)”が測定されている点である。しかし当業者は、両実験とも妥当なデータを出すことを容易に理解するだろう。センサの実際の設定は、実際の用途の所望のパラメータによって決定される。
【0147】
発明者らはさらに、本発明の範囲内である多くの用途で、特にGMR素子及び(複数の)ワイヤの幅が、“転換点”に影響を及ぼしうることを発見した。
【0148】
測定手段と第1材料との距離が1μm〜5μmであって、好適には2μm〜3μmである場合には、GMR素子及び(複数の)ワイヤの幅は特に、1μm〜5μmであって、好適には2μm〜3μmであることが好ましい。
【0149】
測定手段と第1材料との距離が100nm〜1μmであって、好適には200nm〜500nmである場合には、GMR素子及び(複数の)ワイヤの幅は特に、3μm〜10μmであって、好適には5μm〜8μmであることが好ましい。
【0150】
上述の実施例での素子と特徴の特定の組合せは例示に過ぎない。これらの教示と本願及び本願に含まれる参考文献での他の教示とを交換及び置換することも明らかに考えられる。当業者には分かるように、「特許請求の範囲」の記載の変化型、修正型、及び他の実施形態が、「特許請求の範囲」に記載された本発明の技術的思想の範囲から逸脱することなく可能である。従って前述の記載は単なる例示であり、本発明を限定することを意図してはいない。本発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲」に記載された請求項によってのみ定義される。さらに本明細書中の参照符号は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の第1形態によるセンサの断面を非常に概略的に図示している。
【図2】本発明の第2形態によるセンサの断面を概略的に図示している。
【図3】本発明の第3形態によるセンサの断面を概略的に図示している。
【図4】本発明の実施例2による実施例について、単一ビードの信号(単位nV)を、GMR素子からそのビードまでの距離(単位μm)に対して図示している。
【図5】本発明の実施例3による実施例について、単一ビードの信号(単位nV)を、GMR素子からそのビードまでの距離(単位μm)に対して図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に流体試料中の少なくとも1つの検体の検出、同定、及び/又は定量を行う磁気化学センサであって、
前記少なくとも1つの検体との相互作用によって物理特性を変化させるように調製された弾性材料である第1材料、及び
前記第1材料中に埋め込まれた磁性材料である第2材料、
を有するセンサ。
【請求項2】
前記第2材料内での磁気双極子の配向の変化が起こるように電流を供するように備えられた少なくとも1つの電流供給手段、並びに/又は
少なくとも1つの測定手段及び少なくとも1つの測定手段GMR素子
を有するセンサであって、
前記少なくとも1つの測定手段及び少なくとも1つの測定手段GMR素子は、前記の第2材料内で配向した双極子の漂遊磁場の面内成分によって発生する前記GMR素子の抵抗変化を測定するように備えられている、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第2材料の飽和磁化は、0.1×105A/m〜2×106A/mである、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1材料中での前記第2材料の濃度が1%〜20%である。請求項1から3までのいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記第2材料の磁化と濃度との積は、103〜4×107である、請求項1から4までのいずれかに記載のセンサ。
【請求項6】
前記第2材料の平均粒径が1nm〜40nmである、請求項1から5までのいずれかに記載のセンサ。
【請求項7】
前記第2材料の磁気異方性が1×103J/m3〜1×105J/m3である、請求項1から6までのいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載のセンサを用いて試料中に存在する少なくとも1つの検体の検出、同定、及び/又は定量を行う方法であって、
前記少なくとも1つの検体と前記第1材料との相互作用を可能にすることで、前記第1材料の物理特性の変化を生じさせる手順、
前記第2材料中での磁気双極子の配向の変化を引き起こすように電流を印加する手順、
前記の第2材料中で配向した磁気双極子の漂遊磁場の面内成分によって生じるGMR素子の抵抗変化を測定する手順、
を有する方法。
【請求項9】
前記第1材料が前記少なくとも1つの検体と相互作用するときに、前記第1材料の大きさ及び/又は厚さが変化する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7のうちのいずれかに記載のセンサを組み込んだシステムであって、請求項8及び9に記載の方法を実行するように備えられ、かつ
-分子診断に用いられるバイオセンサ
-たとえば血液又は唾液のような複合的生体混合物中でのタンパク質及び核酸の迅速かつ高感度な検出
-化学、薬学、又は分子生物学用の高速処理能力スクリーニング素子
-たとえば犯罪捜査でのDNA若しくはタンパク質検査、(病院内での)その場検査、又は中央研究所若しくは科学研究での診断に用いられる検査素子
-心臓病、感染症及び腫瘍、食物、並びに環境診断のためのDNA又はタンパク質診断ツール
-コンビナトリアル化学用ツール
-分析素子
-ナノ又はミクロン流体素子
に用いられる、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520976(P2009−520976A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546699(P2008−546699)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054415
【国際公開番号】WO2007/072243
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】