説明

磁気圧力式酸素分析計

【課題】高い精度で酸素濃度を測定することができる磁気圧力式酸素分析計を提供する。
【解決手段】磁極対21を備えた測定室2と、前記磁極対21に交流電流を出力する交流電源部3と、コンデンサマイクロフォン41を備えた検出器4と、前記コンデンサマイクロフォン41から出力された電気信号のうち前記交流電源部3の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタ5と、を備えているものであって、前記測定室2に試料ガスを供給するポンプ6であって、それが発生する脈動の周波数が前記交流電源部3の出力する交流電流の周波数の整数倍ではないポンプ6を更に備えているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、界面圧力差方式の磁気圧力式酸素分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気圧力式酸素分析計は、酸素の高い磁化率を利用して、その濃度を測定するものである。すなわち、電磁石等の磁極に特定の周波数を有する交流電流を流し、磁極間に交流磁界を発生させ、発生した磁界中に試料ガスを導入すると、磁化率の高い酸素は磁極に引き寄せられ、磁極付近の界面圧力は引き寄せられた酸素の濃度に応じて上昇する。この界面圧力の変化をコンデンサマイクロフォンによって電気信号として検出することにより、酸素濃度を測定している。また、コンデンサマイクロフォンを備えた検出器側から磁極を備えた測定室側に向かって窒素ガス等の微量のキャリアガスが流れており、試料ガスが検出器側に流れ込まないようにしてある。
【0003】
コンデンサマイクロフォンが出力する電気信号のうち、前記交流磁界と同じ周波数を有する電気信号が、バンドパスフィルタにより選択的に取り出されるが、フィルタの性質上、その整数倍の周波数を有する電気信号もバンドパスフィルタを通過してしまう。そして、試料ガスを測定室に供給するために用いられるポンプが発生する脈動の周波数がこのような整数倍の周波数であると、ポンプが発生する脈動による界面圧力の変動に由来する電気信号もバンドパスフィルタを通過し、分析結果に影響を与えるという問題がある。
【0004】
従来、試料ガスを供給するために用いられるポンプが発生する脈動が分析結果に影響するのを防ぐため、ポンプと測定室との間に、バッファータンクやキャピラリ等を設けて、測定室に試料ガスが供給される前に脈動自体を除去する手段が用いられてきた。しかし、バッファータンクを用いた場合は応答速度の遅延等の問題が生じ、キャピラリを用いた場合は流量減少、それによる応答速度の遅延、及びポンプ負荷の増加等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−130066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、高い精度で酸素濃度を測定することができる磁気圧力式酸素分析計を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち第1の本発明に係る磁気圧力式酸素分析計は、磁極対を備えた測定室と、前記磁極対に交流電流を出力する交流電源部と、コンデンサマイクロフォンを備えた検出器と、前記コンデンサマイクロフォンから出力された電気信号のうち前記交流電源部の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタと、を備えているものであって、前記測定室に試料ガスを供給するポンプであって、それが発生する脈動の周波数が前記交流電源部の出力する交流電流の周波数の整数倍ではないポンプを更に備えていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ポンプが発生する脈動の周波数と交流電源部が出力する交流電流の周波数とが整数倍の関係にないので、ポンプが発生する脈動に由来する電気信号がバンドパスフィルタを通過することができず、酸素濃度を示す電気信号からポンプが発生する脈動の影響を排除することができる。
【0009】
前記ポンプは、モータの回転数を可逆的に変更することができるものであってもよい。
【0010】
また、交流電源部の出力する交流電流の周波数とバンドパスフィルタが通過する電気信号の周波数とが、ポンプが発生する脈動の周波数の整数倍ではないように、交流電源部及びバンドパスフィルタの周波数が設定されていても、同様に、ポンプが発生する脈動に由来する電気信号はバンドパスフィルタを通過することができず、酸素濃度を示す電気信号からポンプが発生する脈動の影響を排除することができる。このように構成された磁気圧力式酸素分析計もまた、本発明の1つである。
【0011】
すなわち第2の本発明に係る磁気圧力式酸素分析計は、磁極対を備えた測定室と、前記磁極対に交流電流を出力する交流電源部と、コンデンサマイクロフォンを備えた検出器と、前記コンデンサマイクロフォンから出力された電気信号のうち前記交流電源部の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタと、を備えているものであって、前記交流電源部が、出力する交流電流の周波数を可逆的に変更することが可能なものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、酸素濃度を示す電気信号からポンプが発生する脈動の影響を排除することができるので、高い精度で酸素濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気圧力式酸素分析計の模式的機器構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る磁気圧力式酸素分析計1は、例えば排気ガス等の試料ガスの酸素濃度を測定するためのものであって、図1に示すように、二組の磁極対21A、21Bを備えた測定室2と、磁極対21A、21Bに交流電流を出力する交流電源部3と、コンデンサマイクロフォン41を備えた検出器4と、コンデンサマイクロフォン41から出力された電気信号のうち交流電源部3の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタ5と、試料ガスを測定室2に供給するポンプ6と、を備えている。
【0016】
以下に各部を説明する。測定室2は、非磁性材料よりなる壁に囲まれ、その内部に二組の磁極対21A、21Bを備えたものである。磁極対21A、21Bは、所定の間隔をおいて対向して配置された磁極211からなり、対向する磁極211は、図示しない継鉄によって磁気的閉ループを構成しているとともに、前記継鉄にはそれぞれ図示しないコイルが巻きつけてあり、両コイルに交互に通電することにより、二組の磁極対21A、21Bを交互に励磁して磁極211間に交互に交流磁界が発生するように構成してある。
【0017】
二組の磁極対21A、21Bを交互に励磁している状態において、測定室2内に試料ガスと窒素ガス等のキャリアガスとが導入されると、磁極211間には試料ガス及び窒素ガスのそれぞれの磁化率の差に比例した界面圧力が交互に発生する。
【0018】
交流電源部3は、二組の磁極対21A、21Bに所定の周波数を有する交流電流を出力するためのものである。したがって、磁極対21A、21Bにおいて発生する交流磁界は交流電源部3の出力する交流電流と同じ周波数を有するものである。
【0019】
検出器4は、コンデンサ膜411と固定極412とからなるコンデンサマイクロフォン41を備えたものであって、コンデンサ膜411によって検出器4内が2つの検出室42A、42Bに仕切られている。測定室2内と検出器4内とは連通しており、測定室2で発生した界面圧力が検出器4の検出室42A、42Bに伝達され、コンデンサ膜411を押圧してこれを変位させる。この結果、前記界面圧力はコンデンサ膜411と固定極412との静電容量の変化として固定極412から出力される。
【0020】
バンドパスフィルタ5は、固定極412から出力された電気信号のうち、交流磁界と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるものである。バンドパスフィルタ5を通過した電気信号は所定の増幅及び変換処理を経た後、図示しない表示部において酸素濃度として表示される。
【0021】
ポンプ6は、試料ガス源Sから発生した試料ガスを測定室2に供給するためのものである。
【0022】
このように構成した磁気圧力式酸素分析計1の動作について以下に説明する。まず、交流電源部3から二組の磁極対21A、21Bに交流電流が通電されると、これら磁極対21A、21Bに交流磁界が発生する。交流磁界が発生している状態で、試料ガス源Sからポンプ6を介して測定室2内に試料ガスが供給されるとともに、微量の窒素ガスも測定室2内に供給されると、試料ガス中の酸素濃度に応じた界面圧力が磁極対21A、21Bに発生する。測定室2で発生した界面圧力は検出器4の検出室42A、42Bに伝達され、コンデンサ膜411を押圧して変位させ、この結果、界面圧力に応じてコンデンサ膜411と固定極412との静電容量が変化する。そして、静電容量の変化に応じた電気信号が固定極412から出力され、当該電気信号のうち交流磁界と同じ周波数を有する電気信号がバンドパスフィルタ5によって選択的に取り出される。バンドパスフィルタ5を通過した電気信号は所定の増幅及び変換処理を経た後、図示しない表示部において酸素濃度として表示される。
【0023】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態においては、ポンプ6として、それが発生する脈動の周波数(M)が、二組の磁極対21A、21Bで発生する交流磁界の周波数、すなわち、交流電源部3の出力する交流電流の周波数(m)の整数(a)倍ではない(M≠m×a)ものが使用されている。このようなポンプ6としては、上記のM≠m×aの関係がなりたつような脈動のポンプ6を選択して用いてもよいし、モータの回転数を可逆的に変更することができるポンプ6を使用してもよい。
【0024】
更に、図示しないポンプ制御部によってポンプ6の回転数を制御することも可能である。この場合、ポンプ制御部は回転数を入力手段より受け付けて制御することもできるし、交流電流の周波数を自動的に受け付けて、その整数倍でない回転数を自動で設定し制御することもできる。
【0025】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態においては、二組の磁極対21A、21Bで発生する交流磁界の周波数、すなわち、交流電源部3の出力する交流電流の周波数とバンドパスフィルタ5が通過する電気信号の周波数(m)が、ポンプ6が発生する脈動の周波数(M)の整数(a)倍ではない(M≠m×a)ように、交流電源部3及びバンドパスフィルタ5の周波数が設定されている。このような交流電源部3及びバンドパスフィルタ5としては、上記のM≠m×aの関係がなりたつような周波数の交流電源部3及びバンドパスフィルタ5を選択して用いてもよいし、ボリュームやスイッチ等で周波数を可逆的に変更することができる機構を備えた交流電源部3及びバンドパスフィルタ5を使用してもよい。
【0026】
交流電源部3は、図示しない入力手段より周波数を受け付け、この値に基づいて、交流電流の周波数を制御することも、ポンプ6又は図示しないポンプ制御部の回転数信号を自動的に受け付けて、この値に基づいて、交流電流の周波数を制御することもできる。
【0027】
また、第2の実施形態においては、ポンプ6は磁気圧力式酸素分析計1自体に備わっていなくともよく、適宜任意のポンプ6を磁気圧力式酸素分析計1に接続して用いればよい。
【0028】
したがって、このように構成した本実施形態に係る磁気圧力式酸素分析計1によれば、ポンプ6の発生する脈動の周波数と交流電源部3が出力する交流電流の周波数とが整数倍の関係にないので、ポンプ6の脈動に由来する電気信号がバンドパスフィルタ5を通過することができず、酸素濃度の分析結果に影響を及ぼさない。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0030】
例えば、試料ガスを測定室2に供給するための流路には、流量調整用のバルブやキャピラリ等が設けられていてもよい。
【0031】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてもよく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1・・・磁気圧力式酸素分析計
2・・・測定室
21・・・磁極対
3・・・交流電源部
4・・・検出器
41・・・コンデンサマイクロフォン
5・・・バンドパスフィルタ
6・・・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極対を備えた測定室と、前記磁極対に交流電流を出力する交流電源部と、コンデンサマイクロフォンを備えた検出器と、前記コンデンサマイクロフォンから出力された電気信号のうち前記交流電源部の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタと、を備えているものであって、
前記測定室に試料ガスを供給するポンプであって、それが発生する脈動の周波数が前記交流電源部の出力する交流電流の周波数の整数倍ではないポンプを更に備えていることを特徴とする磁気圧力式酸素分析計。
【請求項2】
前記ポンプは、モータの回転数を可逆的に変更することができるものである請求項1記載の磁気圧力式酸素分析計。
【請求項3】
磁極対を備えた測定室と、前記磁極対に交流電流を出力する交流電源部と、コンデンサマイクロフォンを備えた検出器と、前記コンデンサマイクロフォンから出力された電気信号のうち前記交流電源部の出力する交流電流と同じ周波数を有する電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタと、を備えているものであって、
前記交流電源部が、出力する交流電流の周波数を可逆的に変更することが可能なものであることを特徴とする磁気圧力式酸素分析計。

【図1】
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【公開番号】特開2011−133374(P2011−133374A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293646(P2009−293646)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】