説明

磁気式動力伝達装置

【課題】所望とする移動距離が大きい場合にも軽量化及び製造コストの低減を図る。
【解決手段】びベース部材30の磁石体33は、軸状部材20の軸心Cに沿って所定の基準長さXを有するように構成したものであり、軸状部材20の磁石体22は、少なくとも任意の中央磁石体22を挟んで互いに隣接する一対の側部磁石体22を備え、軸状部材20とベース部材30とが軸状部材20の軸心方向に沿って相対的に移動した場合に一方の側部磁石体22において軸状部材20の一端部側に位置する端面22aがベース部材30の磁石体33に対向する領域から逸脱すると同時に他方の側部磁石体22において軸状部材20の一端部側に位置する端面22aがベース部材30の磁石体33に対向する領域に進入する態様で互いの間に所定の間隙を確保して等間隔に配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸状部材の磁石体とベース部材の磁石体との間の磁力により、軸状部材の回転移動とベース部材の往復移動との間において動力の伝達を行う磁気式動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気式動力伝達装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1においては、自身の軸心回りに回転可能に配設した軸状部材と、軸状部材の軸心方向に沿って往復移動可能、かつ軸状部材の軸心回りには回転が規制された状態で軸状部材に貫挿されたベース部材とを備え、これら軸状部材とベース部材との間において動力を伝達するもので、軸状部材の外周面及びベース部材の内周面にそれぞれ互いに対向する態様で螺旋状の永久磁石が同一のピッチで設けられている。軸状部材の永久磁石とベース部材の永久磁石とは、互いに磁極が異なるものであり、相互間の磁力によって吸引力が作用している。
【0003】
この磁気式動力伝達装置では、例えば電動モータ等の駆動源によって軸状部材をその軸心回りに回転させると、ベース部材の永久磁石に対して軸状部材の永久磁石が相対的に螺進するため、互いの吸引力により永久磁石の螺進方向に沿ってベース部材が一方方向へ移動することになる。軸状部材の回転方向を変更すれば、螺進方向が逆向きとなるため、軸状部材に対するベース部材の移動方向も逆となる。
【0004】
この種の磁気式動力伝達装置によれば、軸状部材とベース部材とが直接接触していないため、動作中の騒音がきわめて小さい、両者が摩耗しない、過大な入力があった場合にも損傷を来す虞れがない、等々の利点がある。
【0005】
【特許文献1】特許第2777131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の磁気式動力伝達装置では、少なくとも軸状部材、もしくはベース部材の一方が、所望とする移動距離よりも十分な長さを有している必要がある。例えば、特許文献1に記載されたものにあっては、ベース部材に対して軸状部材の全長が十分に大きく構成されており、この軸状部材に沿ってベース部材を移動させることにより、所望の移動距離を得るようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成において、軸状部材の全長に亘ってベース部材を移動させるには、軸状部材のすべてに永久磁石を構成しなければならず、製造コストを考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。また、軸状部材の全長に亘って永久磁石を構成したものにあっては、その重量もきわめて大きなものとならざるを得えない。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、所望とする移動距離が大きい場合にも軽量化及び製造コストの低減を図ることのできる磁気式動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る磁気式動力伝達装置は、外周面に自身の軸心を中心として永久磁石を螺旋状に構成した磁石体を備え、自身の軸心回りに回転可能に配設した軸状部材と、軸状部材の外周面に対向する対向部分に軸状部材の軸心方向に沿って複数の永久磁石を並設した磁石体を備え、軸状部材の軸心方向に沿って直線状に往復移動可能に配設したベース部材とを備え、これら軸状部材の磁石体とベース部材の磁石体との間の磁力により、軸状部材の回転移動とベース部材の往復移動との間において動力の伝達を行う磁気式動力伝達装置であって、前記軸状部材の磁石体及び前記ベース部材の磁石体のいずれか一方は、軸状部材の軸心に沿って所定の基準長さを有するように構成したものであり、前記軸状部材の磁石体及び前記ベース部材の磁石体のいずれか他方は、少なくとも任意の中央磁石体を挟んで互いに隣接する一対の側部磁石体を備え、軸状部材とベース部材とが軸状部材の軸心方向に沿って相対的に移動した場合に一方の側部磁石体において軸状部材の一端部側に位置する端面部がベース部材の磁石体に対向する領域から逸脱すると同時に他方の側部磁石体において軸状部材の一端部側に位置する端面部がベース部材の磁石体に対向する領域に進入する態様で互いの間に所定の間隙を確保して等間隔に配設したものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る磁気式動力伝達装置は、上述した請求項1において、ベース部材に基準長さの磁石体を設ける一方、軸状部材に複数の磁石体を等間隔に配設したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る磁気式動力伝達装置は、上述した請求項1において、前記ベース部材に構成した磁石体は、前記軸状部材の軸心を中心とした半円筒状の凹面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸状部材及びベース部材のいずれか一方に設けた基準長さの磁石体に対して、他方の磁石体が常に2個対向する態様で互いの間に間隙を確保するようにしているため、他方の磁石体の数を可及的に減少させた上で両者の間に脱調を招来することなく動力を確実に伝達することが可能となる。これにより、所望とする移動距離が大きい場合にも、軽量化及び製造コストの低減を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る磁気式動力伝達装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明に係る磁気式動力伝達装置を適用した磁気式アクチュエータを示したものである。ここで例示する磁気式アクチュエータは、例えば工作機械において被加工物であるワークを保持するワークテーブルを工具に対して位置決めするための駆動源として適用されるもので、アクチュエータ本体10を備えている。アクチュエータ本体10は、一対の軸受板11と、これら軸受板11の間に架け渡した一対の側板12とを備えて直方体状に構成したものである。軸受板11は、それぞれが矩形状を成す平板状部材であり、互いに平行となるように設けてある。側板12は、図2において軸受板11の左右に位置する縁部から互いに平行となるように延在したものである。
【0015】
また、この磁気式アクチュエータは、図1〜図3に示すように、軸状部材20及びガイドレール部材13を備えている。
【0016】
軸状部材20は、一対の軸受板11の相互間距離よりも大きな全長を有した円柱状を成すもので、個々の端部が軸受板11の中心部を貫通し、かつ自身の軸心回りに回転可能となる態様で軸受板11の間に架設してある。
【0017】
この軸状部材20には、複数の太径部21が設けてある。太径部21は、軸状部材20の軸心Cを中心として径外方向に膨出した円柱状部分であり、軸状部材20の軸心方向に沿って互いに等間隔となる位置に設けてある。
【0018】
ガイドレール部材13は、一対の軸受板11の間に架け渡した唯一の平板状部材であり、図2において軸受板11の下方に位置する縁部の間に設けてある。図1〜図3からも明らかなように、ガイドレール部材13は、一対の側板12の相互間隔よりも小さい幅に構成してあり、各側板12との間にそれぞれ間隙を確保し、かつ軸状部材20の軸心方向に沿う態様で延設してある。
【0019】
このガイドレール部材13には、図1〜図3に示すように、一対の側板12の間となる部位にベース部材30が配設してある。ベース部材30は、スライドベース31及び一対の支持プレート32を備えて構成したものである。
【0020】
スライドベース31は、軸状部材20の軸心Cに直交する方向の幅がガイドレール部材13よりも大きく、かつ軸状部材20の軸心方向に沿った長さがアクチュエータ本体10の側板12よりも小さく構成した平板状部材であり、その外表面に対となるレールガイド31aを備えている。レールガイド31aは、互いの間にガイドレール部材13を嵌合することのできる間隙を確保した状態でスライドベース31から突設したものである。このスライドベース31は、対を成すレールガイド31aの間にガイドレール部材13を配置し、かつその外表面をガイドレール部材13に当接させた状態で一対の側板12の間に配設してあり、ガイドレール部材13を案内として軸状部材20の軸心方向に沿って往復移動することが可能である。
【0021】
一対の支持プレート32は、スライドベース31の両側縁部から互いに平行となる態様で立設した平板状部材である。図2及び図3に示すように、これら支持プレート32は、互いに対向する内表面が軸状部材20の外周面を覆い、かつ軸状部材20からの距離が同一となるようにスライドベース31に取り付けてある。
【0022】
さらに、上記磁気式アクチュエータには、軸状部材20における太径部21の外周面及び一対の支持プレート32の内表面にそれぞれ磁石体22,33が構成してある。
【0023】
軸状部材20の磁石体(以下、「軸磁石体22」という)は、図4に示すように、軸状部材20の軸心Cを中心として太径部21の外周部に螺旋状に構成したものである。本実施の形態では、外周面に現れる磁極が互いに異なる態様で第1永久磁石22Aと第2永久磁石22Bとを一定の等ピッチで二条の螺旋を描くように巻回させることにより、複数の太径部21にそれぞれ軸磁石体22を構成するようにしている。第1永久磁石22A及び第2永久磁石22Bは、それぞれ磁性体に予め着磁することによって構成したものである。軸状部材20の軸心Cに対して軸磁石体22の各永久磁石22A,22Bが描く螺旋の傾斜角度αは、本実施の形態の場合、それぞれ45°である。
【0024】
支持プレート32の磁石体(以下、「支持磁石体33」という)は、図5に示すように、外表面に現れる磁極が互いに異なる態様で直線状の第1永久磁石33Aと第2永久磁石33Bとを軸状部材20の軸心方向に沿って交互に並設することにより構成したものである。それぞれの永久磁石33A,33Bは、軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22の永久磁石22A,22Bに対して1対1で対向するように、太径部21の軸磁石体22に対してほぼ同一となるピッチで、かつ軸状部材20の軸心Cに対して45°の傾斜角度βをもって配設してある。
【0025】
さらに、図6の詳細構成に示すように、一方の支持プレート32に構成した支持磁石体33と、他方の支持プレート32に構成した支持磁石体33とは、軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22に対して互いに異なる方向にオフセットしてある。すなわち、図6の上方に位置する支持プレート32では、太径部21に構成した軸磁石体22の各永久磁石22A,22Bに対して軸状部材20の軸心Cに沿って右側にオフセットするように永久磁石33A,33Bが並設してある。これに対して図6の下方に位置する支持プレート32では、太径部21に構成した軸磁石体22の各永久磁石22A,22Bに対して軸状部材20の軸心Cに沿って左側にオフセットするように永久磁石33A,33Bが並設してある。
【0026】
ここで、上記のように、支持プレート32に構成した支持磁石体33の永久磁石33A,33Bと軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22の永久磁石22A,22Bとが、軸状部材20の軸心方向に沿って互いの中心軸線がオフセットされた場合には、図7に示すように、そのオフセット量に応じて軸状部材20の軸心方向に沿った磁気吸引力(磁気付勢力)が作用することになる。
【0027】
具体的には、図7の右方側に示すように、支持磁石体33の永久磁石に対して軸磁石体22の永久磁石を右側にオフセットした場合には、軸磁石体22の永久磁石と支持磁石体33の永久磁石との間に両者の中心軸線が一致するように軸状部材20に対して支持プレート32を右方向に向けて移動させる磁気吸引力Fが作用する。これに対して図7の左方側に示すように、支持磁石体33の永久磁石に対して軸磁石体22の永久磁石を左側にオフセットした場合には、軸磁石体22の永久磁石と支持磁石体33の永久磁石との間に両者の中心軸線が一致するように軸状部材20に対して支持プレート32を左方向に向けて移動させる磁気吸引力−F(図7において右側に向かう力を正とする)が作用する。軸磁石体22の永久磁石と支持磁石体33の永久磁石との間に作用する磁気吸引力の大きさは、オフセット量が増大するに従って漸次増大し、その後、オフセット量の増大に伴って漸次減少するようになる。
【0028】
本実施の形態では、軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22の任意の永久磁石22A,22Bに対して一方の支持プレート32に構成した支持磁石体33の永久磁石33A,33Bとの間に作用する磁気吸引力と、他方の支持プレート32に構成した支持磁石体33の永久磁石33A,33Bとの間に作用する磁気吸引力とがそれぞれほぼ最大値となり、かつ軸状部材20の軸心方向に沿って互いに逆向きに作用するように、それぞれの永久磁石22A,22B,33A,33Bをオフセットして配設してある。図には明示していないが、軸磁石体22の永久磁石22A,22Bに対向する支持プレート32の永久磁石33A,33Bは、一方の支持プレート32と他方の支持プレート32とで互いに同一の数となるようにそれぞれの寸法が設定してある。つまり、軸磁石体22の永久磁石22A,22Bそれぞれに対しては、一方の支持プレート32との間(第1の対向位置)において支持磁石体33の永久磁石33A,33Bが対向し、かつ他方の支持プレート32との間(第2の対向位置)において支持磁石体33の永久磁石33A,33Bが対向することになる。
【0029】
また、図3に示すように、支持プレート32の支持磁石体33及び軸状部材20の軸磁石体22は、軸状部材20に対して支持プレート32を往復移動させた場合に常に2つの軸磁石体22のみが支持プレート32の支持磁石体33と対向するようにそれぞれの寸法が設定してある。より具体的に説明すれば、支持プレート32の支持磁石体33において軸状部材20の軸心方向に沿った長さを基準長さXとした場合、任意の軸磁石体22(以下、適宜「中央磁石体」という)を挟んで互いに隣接する一対の軸磁石体22(以下、適宜「側部磁石体」という)においてそれぞれ軸状部材20の一端部側に位置する端面22aの相互間距離がこの基準長さXと合致するように、それぞれ支持プレート32の支持磁石体33及び軸状部材20の軸磁石体22が構成してある。つまり、軸状部材20とベース部材30とが軸状部材20の軸心方向に沿って相対的に移動した場合に、中央磁石体22を基準として一方の側部磁石体22の端面22aがベース部材30の支持磁石体33,33に対向する領域から逸脱すると同時に他方の側部磁石体22の端面22aがベース部材30の支持磁石体33,33に対向する領域に進入する態様で互いの間に所定の間隙を確保して等間隔に配設してある。
【0030】
上記のように構成した磁気式アクチュエータでは、例えばベース部材30の支持磁石体33,33を構成する永久磁石33A,33Bに対して軸状部材20の螺旋状を成す軸磁石体22の各永久磁石22A,22Bがそれぞれ互いに異なる磁極を対向させた状態が駆動待機状態となる。この駆動待機状態から、例えばアクチュエータ本体10の移動を規制した状態で図示せぬ電動モータ等の駆動源により軸状部材20をその軸心回りに一方方向に回転させると、ベース部材30の支持磁石体33,33に対して軸状部材20の螺旋状を成す軸磁石体22が螺進することになる。ベース部材30は、スライドベース31を介してガイドレール部材13に当接しているため、軸状部材20の軸心回りの回転が規制された状態にある。この結果、ベース部材30の支持磁石体33と軸状部材20の軸磁石体22との間に作用する磁気吸引力により、軸状部材20及びアクチュエータ本体10に対してベース部材30が軸状部材20の軸心方向に沿って一方方向へ移動することになる。軸状部材20の回転方向を変更すれば、螺旋状を成す軸磁石体22の螺進方向が逆向きとなるため、軸状部材20に対するベース部材30の移動方向も逆となる。従って、例えばアクチュエータ本体10を固定体に保持させる一方、ベース部材30をワークテーブルに保持させれば、電動モータの回転によってワークテーブルを往復移動させ、任意の位置に配置することが可能となる。
【0031】
ここで、上記の磁気式アクチュエータにおいては、軸状部材20の軸磁石体22を構成する永久磁石22A,22Bとベース部材30の支持磁石体33を構成する永久磁石33A,33Bとを互いにオフセットして配置し、対向する永久磁石22A,22B,33A,33Bの間に作用する磁気吸引力の方向が、相互に対応する複数組の対向位置において軸状部材20の軸心方向に沿って互いに逆向きとなるように構成している。従って、軸状部材20とベース部材30とは、常に逆向きの電磁吸引力が釣り合った位置で停止し、かつその位置を維持するようになる。これにより、軸状部材20の回転を停止すれば、これに応じてベース部材30の移動も直ちに停止してその位置を維持するようになり、両者の位置決め精度を向上させることが可能となる。
【0032】
この場合、軸状部材20の軸磁石体22を構成する永久磁石22A,22B及びベース部材30の支持磁石体33を構成する永久磁石33A,33Bの寸法を正確に規定する必要はなく、単に互いに逆方向に作用する磁気吸引力が釣り合えば良い。従って、軸状部材20の軸磁石体22を構成する永久磁石22A,22B及びベース部材30の支持磁石体33を構成する永久磁石33A,33Bの幅を合致させる必要がない等、磁気式アクチュエータの製造作業を容易化することも可能となる。
【0033】
しかも、軸状部材20とベース部材30とが直接接触するものではないため、ベース部材30が移動する際の騒音がきわめて小さい、両者が摩耗しない、過大な入力があった場合にも損傷を来す虞れがない、等々の利点がある。
【0034】
さらに、上記磁気式アクチュエータによれば、ベース部材30に設けた基準長さXの支持磁石体33に対して常に2つの軸磁石体22のみが支持プレート32の支持磁石体33と対向するようにそれぞれの寸法が設定してある。従って、所望とするベース部材30の往復移動距離に対して、軸状部材20はその全長が往復移動距離に応じた長さとなるものの、軸状部材20に設ける軸磁石体22の数を可及的に減少させることが可能となる。これにより、磁気式アクチュエータに大きな移動距離が要求される場合にも、軽量化及び製造コストの低減を図ることができるようになる。この場合、軸状部材20の全長に関わらず、支持プレート32の支持磁石体33に対して常に2つの軸磁石体22が対向するのであるから、軸状部材20の回転移動と支持プレート32の往復移動とが脱調してずれてしまう事態を招来する虞れもない。
【0035】
尚、上述した実施の形態では、軸状部材を回転させた場合にベース部材を往復移動させるようにした磁気式アクチュエータに適用する動力伝達装置を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、シリンダアクチュエータ等の駆動源によってベース部材を往復移動させることにより軸状部材を回転させるようにしたものにも適用することが可能である。
【0036】
また、上述した実施の形態では、軸状部材の磁石体に対してベース部材に互いに平行となる態様で一対の磁石体を設けるようにしているため、これら軸状部材の磁石体とベース部材の磁石体との間の磁力によって軸状部材に曲げ力を作用させることなく照射の間の動力伝達効率を向上させることが可能となるが、必ずしもベース部材の磁石体は一対である必要はなく、軸状部材の磁石体とベース部材の磁石体とをオフセットして配置する必要ももちろんない。
【0037】
さらに、上述した実施の形態では、図6に示すように、ベース部材に構成した磁性体の幅に比べて軸状部材に構成した磁性体の幅が小さいものを例示しているが、本発明ではこれらに限定されず、ベース部材に構成した磁性体の幅に対して軸状部材に構成した磁性体の幅を大きく構成しても良いし、両者を同一の幅(必ずしも正確に一致している必要はない)に構成しても構わない。
【0038】
尚、上述した実施の形態では、円柱状を成す軸状部材と平板状を成すベース部材との間の動力伝達を行う場合に、軸状部材の太径部に設けた円柱状を成す磁性体の外周面に対してベース部材の支持プレートに平板状を成す磁性体を配設しているが、例えば図8に示す変形例のように構成すれば、両者の間の動力伝達効率をより高めることが可能である。
【0039】
すなわち、図8の変形例では、ベース部材130の支持プレート132に半円筒状の凹面133aを有した支持磁石体133を配設し、この凹面133aを軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22に対向させるようにしたものである。図8に示す変形例のベース部材130は、実施の形態と同様に、スライドベース131及び一対の支持プレート132を備えて構成したものである。スライドベース131は、対を成すレールガイド131aの間にガイドレール部材13を配置し、かつその外表面をガイドレール部材13に当接させた状態で配設してあり、ガイドレール部材13を案内として軸状部材20の軸心方向に沿って往復移動することが可能である。軸状部材20に太径部21が構成され、さらにこの太径部21の外周部に軸磁石体22が螺旋状に構成してあるのは実施の形態と同様である。支持磁石体133の凹面133aは、軸状部材20の軸心Cを中心として形成されたものであり、軸状部材20の太径部21に構成した軸磁石体22の外周面に対して一定の間隙を確保した位置に配置してある。
【0040】
上記のように構成した変形例の磁気式アクチュエータによれば、軸状部材20の軸磁石体22とベース部材130の支持磁石体133との間の対向面積が増大することになり、上述した実施の形態が奏する作用効果に加え、両者の間の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0041】
尚、図8の変形例では、支持磁石体133に半円筒状の凹面133aを構成しているが、必ずしも半円筒状である必要はなく、円筒状の凹面であれば必ずしも半円である必要はない。また、支持磁石体133の凹面は、必ずしも一つの磁性体で構成する必要はなく、複数個の集合体として円筒状の凹面を構成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態である磁気式動力伝達装置を適用した磁気式アクチュエータの斜視図である。
【図2】図1に示した磁気式アクチュエータの横断面図である。
【図3】図1に示した磁気式アクチュエータの要部平面図である。
【図4】図1に示した磁気式アクチュエータの軸状部材に構成した磁性体の配置態様を模式的に示す概念図である。
【図5】図1に示した磁気式アクチュエータの軸状部材及びベース部材に構成した磁性体の配置態様を模式的に示す概念図である。
【図6】図1に示した磁気式アクチュエータの軸状部材及びベース部材に構成した磁性体の配置態様を詳細に説明するための概念図である。
【図7】図1に示した磁気式アクチュエータにおいて軸状部材とベース部材との間に作用する磁気力とオフセット量との関係を示すグラフである。
【図8】図1に示した磁気式アクチュエータの変形例を示す要部横断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 アクチュエータ本体
20 軸状部材
21 太径部
22 磁石体
22A,22B 永久磁石
30 ベース部材
31 スライドベース
32 支持プレート
33 支持磁石体
33A,33B 永久磁石
C 軸状部材の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に自身の軸心を中心として永久磁石を螺旋状に構成した磁石体を備え、自身の軸心回りに回転可能に配設した軸状部材と、
軸状部材の外周面に対向する対向部分に軸状部材の軸心方向に沿って複数の永久磁石を並設した磁石体を備え、軸状部材の軸心方向に沿って直線状に往復移動可能に配設したベース部材と
を備え、これら軸状部材の磁石体とベース部材の磁石体との間の磁力により、軸状部材の回転移動とベース部材の往復移動との間において動力の伝達を行う磁気式動力伝達装置であって、
前記軸状部材の磁石体及び前記ベース部材の磁石体のいずれか一方は、軸状部材の軸心に沿って所定の基準長さを有するように構成したものであり、
前記軸状部材の磁石体及び前記ベース部材の磁石体のいずれか他方は、少なくとも任意の中央磁石体を挟んで互いに隣接する一対の側部磁石体を備え、軸状部材とベース部材とが軸状部材の軸心方向に沿って相対的に移動した場合に一方の側部磁石体において軸状部材の一端部側に位置する端面部がベース部材の磁石体に対向する領域から逸脱すると同時に他方の側部磁石体において軸状部材の一端部側に位置する端面部がベース部材の磁石体に対向する領域に進入する態様で互いの間に所定の間隙を確保して等間隔に配設したものである
ことを特徴とする磁気式動力伝達装置。
【請求項2】
ベース部材に基準長さの磁石体を設ける一方、軸状部材に複数の磁石体を等間隔に配設したことを特徴とする請求項1に記載の磁気式動力伝達装置。
【請求項3】
前記ベース部材に構成した磁石体は、前記軸状部材の軸心を中心とした半円筒状の凹面を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気式動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−215429(P2008−215429A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51296(P2007−51296)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(303049418)株式会社松栄工機 (21)
【Fターム(参考)】