磁気探傷装置
【課題】磁気探傷装置にて、永久磁石を併用する構成を採用し、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成とし、被検査対象から磁気探傷シート中の感磁体に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該感磁体を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させ、被検査対象の欠陥の検出精度を、より向上させる。
【解決手段】磁気探傷装置100にて、磁極3が形成される一対の並行ヨーク部2bと連結ヨーク部2cとを備えたコ字形状のヨーク2aを備え、連結ヨーク部2cに巻回されたコイル5に通電して一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1に沿う方向に磁界を発生させ、上面視で、少なくとも一対の永久磁石50,50が、当該一対の永久磁石50,50間に磁気探傷シートDを挟み一対の並行ヨーク部2bを挟まない状態で仮想直線L1と並行に配設され、各永久磁石50が各並行ヨーク部2bの周囲に位置して配設されている。
【解決手段】磁気探傷装置100にて、磁極3が形成される一対の並行ヨーク部2bと連結ヨーク部2cとを備えたコ字形状のヨーク2aを備え、連結ヨーク部2cに巻回されたコイル5に通電して一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1に沿う方向に磁界を発生させ、上面視で、少なくとも一対の永久磁石50,50が、当該一対の永久磁石50,50間に磁気探傷シートDを挟み一対の並行ヨーク部2bを挟まない状態で仮想直線L1と並行に配設され、各永久磁石50が各並行ヨーク部2bの周囲に位置して配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、被検査対象に磁気探傷シートを接触させた状態において磁気発生機構で発生させた磁気を被検査対象に作用させることにより被検査対象から漏洩する磁束を磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記磁気探傷装置に関連する技術として、例えば、特許文献1には、被検査対象1の表面に磁気探傷シートS、押圧部材20、圧着板21の順に載置し、さらに、2本のゴムベルト25を、載置された圧着板21の表面と被検査対象1の表面とに亘って当該圧着板21に付勢力を作用させるように配置する構成が開示され、当該2本のゴムベルト25を被検査対象1の表面に固定する手段として、永久磁石27を使用してもよいことが開示されている(特許文献1の図7及び図8参照)。そして、コ字形状の磁気発生機構Mにおける磁極30P,30P間に磁気探傷シートSを配設するとともに、これら磁極30P,30Pを被検査対象1の表面に接触させた状態で電力を供給して発生した磁気により磁気探傷シートSに磁粉13のパターンを形成させ、当該パターンに基づいて磁気探傷を行うように構成されている。なお、参照番号は特許文献1中のものを引用した。
これにより、磁気探傷シートSを、押圧部材20及び圧着板21の重量、ゴムベルト25による付勢力、永久磁石27による若干の吸着力により、被検査対象1の表面にある程度密着させた状態で、磁気探傷を行うことができると考えられる。
【0003】
また、上記磁気探傷装置に関連する技術として、例えば、特許文献2には、磁気探傷シートDと、この磁気探傷シートDを挟んで一対の磁極3,3が配設されるコ字形状の磁気発生機構Aとを備え、この磁気発生機構Aに対して付勢機構Bを取り付け、この付勢機構Bにより付勢される圧着体4と磁気探傷シートDとの間に柔軟に変形自在で圧力伝達可能な押圧部材Cを備えて、磁気探傷シートDに形成される磁粉38のパターンに基づいて磁気探傷を行うように構成されている。また、上面視で圧着体4における磁気探傷シートDを挟んだ両箇所には、一対の永久磁石50,50(それぞれ3個)のうちの各永久磁石50(3個)が、磁気発生機構Aの一対の磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に対してそれぞれ並行に配設されている(特許文献2の図14〜図16参照)。なお、参照番号は特許文献2中のものを引用した。
これにより、磁気探傷シートDを、付勢機構Bによる圧着体4及び押圧部材Cを介した付勢力、永久磁石50による吸着力により、被検査対象1の表面にある程度密着させた状態で、磁気探傷を行うことができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−279545号公報
【特許文献2】特開2004−333484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記磁気探傷装置としては、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させるとともに、被検査対象に対してより強い磁束密度の磁気を作用させて、被検査対象から磁気探傷シート中の磁粉に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該磁粉を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上することが望まれる。
【0006】
この点、特許文献1の磁気探傷装置について検討すると、磁気探傷シートSを被検査対象1に密着させる際には、主として2本のゴムベルト25による付勢力が圧着板21及び押圧部材20を介して磁気探傷シートSに作用して、被検査対象1に密着する構成となるため、ゴムベルト25と圧着板21とが接触する箇所以外には充分な付勢力が作用せず、磁気探傷シートSを均一に被検査対象1に密着させることが困難となる問題がある。
また、一対の永久磁石27,27における各永久磁石27は、上面視で磁気発生機構Mの磁極30P,30P同士を結ぶ仮想直線に直交する方向に沿って配設されるが、そもそもゴムベルト25を被検査対象1に固定するために用いられているに過ぎず、磁気探傷シートSに漏洩する磁束密度を高めることを意図するものではない。さらに、当該各永久磁石27が存在する結果、各永久磁石27により発生する磁界と磁気発生機構Mにより発生する磁界とが併存し両磁界が錯綜する構成となって、被検査対象1に作用する磁界(磁束)及び磁気探傷シートSに漏洩する磁界(磁束)が複雑となり、磁粉13により形成されるパターンが不明瞭となる虞があるとともに、被検査対象1に作用する磁界(磁束)が打ち消し合う等により磁束密度を高めることができず、被検査対象1における欠陥の検出精度を向上させることが困難となる問題がある。
【0007】
特許文献2の磁気探傷装置では、磁気発生機構Aに取り付けられた付勢機構Bの付勢力により圧着体4の全体で、押圧部材Cを介して磁気探傷シートDを押圧するので、磁気探傷シートDを被検査対象1にある程度密着させることができると考えられる。
また、上面視で磁気探傷シートDを挟んで配置される一対の永久磁石50,50(それぞれ3個で合計6個)の吸着力によって、磁気探傷シートDを被検査対象1にある程度密着させることができると考えられる。
しかしながら、磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に対して直交する方向に磁気探傷シートDの長手方向が配設されており、当該長手方向で磁気探傷シートDを挟むように一対の永久磁石50,50を配設しても、磁気探傷シートDを均一に被検査対象1に密着させることが困難となる。また、当該一対の永久磁石50,50は、圧着体4に配設されているが、そもそも圧着体4を被検査対象1に吸着させるために用いられているに過ぎず、磁気探傷シートDに漏洩する磁束密度を高めることを意図するものではない。さらに、一対の永久磁石50,50における各永久磁石50(3個)は、上面視で磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に沿う方向で、各磁極3,3との間に並設され、しかも、仮想直線に直交する方向において当該仮想直線から離間した位置に配置されているが、一方側の各永久磁石50(特許文献2の図15におけるb4,b5,b6の3個)は、磁気探傷シートDの短手面(同図15における右端面)に近接している。このため、当該一方側の各永久磁石50が存在する結果、各永久磁石50により発生する磁界のそれぞれが、主な磁気探傷領域となる磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線近傍における被検査対象1に作用することとなり、さらに、磁気発生機構Aにより発生する磁界も当該仮想直線近傍の被検査対象1に作用するため、両磁界が錯綜して、当該仮想直線近傍における磁気探傷シートDに漏洩する磁界(磁束)が複雑となり、当該磁粉38により形成されるパターンが不明瞭となる虞があり、被検査対象1における欠陥の検出精度を向上させることが困難となる問題がある。また、場合によっては、当該仮想直線近傍の磁気探傷シートDに漏洩する磁束密度が低下する虞もある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気探傷シートを使用して磁気発生機構の磁気により磁気探傷する磁気探傷装置において、永久磁石を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象から磁気探傷シート中の感磁体に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該感磁体を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、前記磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより前記磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、前記被検査対象に前記磁気探傷シートを接触させた状態において前記磁気発生機構で発生させた磁気を前記被検査対象に作用させることにより前記被検査対象から漏洩する磁束を前記磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて前記被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置に係る請求項1の磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
【0010】
〔特徴〕
前記磁気発生機構が、それぞれ一方の端部に磁極が形成される一対の並行ヨーク部と、前記一対の並行ヨーク部の他方の端部同士を連結する連結ヨーク部とを備えた磁性体からなるコ字形状のヨークを備え、前記連結ヨーク部に巻回されたコイルに通電することで、前記一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う方向に磁界を発生させるように構成され、
前記磁気探傷シートが、上面視で前記一対の磁極間において前記仮想直線を含む平面と並行に配設され、
少なくとも一対の永久磁石が、当該一対の永久磁石間に前記磁気探傷シートを挟み、かつ、前記一対の並行ヨーク部を挟まない状態で前記仮想直線と並行に配設されるとともに、各永久磁石が、前記磁気発生機構の各並行ヨーク部の周囲に位置するように配設されていることにある。
【0011】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の磁極を備えたコ字形状の磁気発生機構と一対の永久磁石と磁気探傷シートとが適切な位置関係で配置されているので、磁気発生機構による磁界と一対の永久磁石による直流磁界とを重畳させることにより、より強い磁束密度の磁界を形成することができるとともに、当該磁界の基本的な形状を、磁気発生機構の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
【0012】
説明を加えると、上面視で、磁気発生機構における一対の並行ヨーク部に形成された一対の磁極は、当該一対の磁極間に磁気探傷シートを挟む状態で配設され、一方、一対の永久磁石は、当該一対の永久磁石間に磁気探傷シートを挟むが一対の並行ヨーク部(一対の磁極)を挟まない状態で、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線と並行に、当該並行ヨーク部の周囲に配設されている。この場合、一対の永久磁石を構成する各永久磁石同士は、仮想直線に沿う方向において磁気探傷シートを介して相互に対向して配置される。従って、上面視において、一対の永久磁石間に生じる直流磁界は、主として当該仮想直線に沿う方向に形成され、他方で、磁気発生機構の一対の磁極間に生じる磁界は、主として当該仮想直線上に形成される。
これにより、一対の磁極間及び一対の永久磁石間の仮想直線近傍の被検査対象(主な磁気探傷領域)に、磁気発生機構による磁界と一対の永久磁石による直流磁界とを重畳させた状態で、上面視で仮想直線に沿う方向の磁界(磁束)を作用させることができる。従って、当該仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度が強くなり、当該被検査対象から磁気探傷シートの磁気探傷領域に漏洩する磁束密度を強くすることができる。また、磁気探傷領域に漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
また、磁気探傷シートは、圧力付与手段により被検査対象に押圧され、磁気探傷シートと被検査対象の表面とが密着するように構成されるが、さらに、上面視で、一対の永久磁石が磁気探傷シートを挟んだ状態で上記仮想直線に並行に、かつ並行ヨーク部の周囲に配設されているので、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所において、磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に押圧することができる。
【0013】
よって、磁気探傷シートを使用して磁気発生機構の磁気により磁気探傷する磁気探傷装置において、永久磁石を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象から磁気探傷シート中の感磁体に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該感磁体を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置を得ることができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記圧力付与手段が、透明な樹脂からなる剛体の板状圧着体と、前記磁気発生機構の一対の磁極が発生させる磁気により前記磁極を前記被検査対象に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構と、前記仮想直線に直交する方向において、上面視で前記板状圧着体の一端部に配設される第1圧力付与手段及び他端部に配設される第2圧力付与手段とを備え、当該第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段により前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成され、
前記第1圧力付与手段が前記付勢機構を備え、前記付勢機構から付勢力を受ける前記板状圧着体の一端部は、前記被検査対象に対して接近及び離間する方向に移動自在な状態で、前記板状圧着体の一端部側に配置された前記磁気発生機構に支持されて構成され、
前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段が、上面視で前記仮想直線に対してそれぞれ並行に配置されるとともに、前記板状圧着体及び前記磁気探傷シートが、上面視で前記仮想直線を含む平面と並行で、かつ、前記仮想直線に直交する方向で前記第1圧力付与手段と前記第2圧力付与手段とに亘って配設されていることにある。
【0015】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に直交する方向において、上面視で、板状圧着体の一端側に配設される第1圧力付与手段と他端側に配設される第2圧力付与手段とを設けることにより、板状圧着体を介して磁気探傷シートの全面を被検査対象に押圧して、被検査対象の表面に均一に密着させることができる。
具体的には、仮想直線に直交する方向において、上面視で、板状圧着体の一端部に配設され磁気発生機構に支持される第1圧力付与手段の付勢機構による付勢力、及び、板状圧着体の他端部に配設される第2圧力付与手段による押圧力を、板状圧着体を介して、上面視で仮想直線を含む平面と並行で、かつ、仮想直線と並行に配設された第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段に亘って当該仮想直線と直交する方向に配設された磁気探傷シートに作用させ、当該磁気探傷シートの全面を被検査対象の表面に均一に密着させることができる。
これに加えて、上述したように、仮想直線に沿う方向において、上面視で、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所において、磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に押圧することができる。
なお、上述のとおり、磁気探傷シートが、第1圧力付与手段及び磁気発生機構の存在領域から第2圧力付与手段に亘って、仮想直線に直交する方向に延出して配設されているため、磁気探傷を行う場合に、第1圧力付与手段と第2圧力付与手段との間における延出領域及び当該延出領域を介してコ字形状に形成された磁気発生機構の一対の磁極間の磁気探傷領域を、作業者が容易に観察することができ、非常に使用勝手がよい構成とすることができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、前記板状圧着体、前記板状押圧部材及び前記磁気探傷シートの順に重ねて配設して、前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成されていることにある。
【0017】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、板状圧着体、板状押圧部材及び磁気探傷シートの順に重ねて配設することにより、板状圧着体、板状押圧部材を介して磁気探傷シートの全面を被検査対象に押圧して、凹凸のある被検査対象の表面の検査を良好に行うことができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が二組配設され、各一対の永久磁石が、上面視で、前記一対の並行ヨーク部における前記仮想直線に直交する方向の両側部位にそれぞれ配設されることにある。
【0019】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上面視で、磁気発生機構の一対の並行ヨーク部(一対の磁極)が磁気探傷シートを挟んで配設されるとともに、板状圧着体における一対の並行ヨーク部の両側部位(仮想直線に直交する方向における一方側及び他方側)に、それぞれ一対の永久磁石が磁気探傷シートを挟んだ状態で配設されているので、仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度を、一対の磁極による磁界及び二組の一対の永久磁石による直流磁界を重畳した磁界により形成することができ、より強い磁束密度を得ることができる。また、一対の磁極による磁界及び二組の一対の永久磁石による直流磁界は、上面視で仮想直線に沿って形成されるため、両磁界が錯綜することがなく、被検査対象に作用する磁界(磁束)の磁束密度を良好に強めることができるとともに、被検査対象から磁気探傷シートに漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
さらに、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、上面視において、仮想直線に沿う方向では、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所(2箇所)で、しかも、仮想直線に直交する方向では、並行ヨーク部を挟んだ両側の箇所(2箇所)に亘る、合計4箇所で磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に安定的に押圧することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が配設され、当該一対の永久磁石が、上面視で、前記仮想直線上に配設されていることにある。
【0021】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上面視で、磁気発生機構の一対の並行ヨーク部(一対の磁極)が磁気探傷シートを挟んで配設されるとともに、板状圧着体における一対の並行ヨーク部間(一対の磁極間)、すなわち、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線上に、一対の永久磁石が配設されているので、仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度を、一対の磁極による磁界及び一対の永久磁石による直流磁界を重畳した磁界により形成することができ、より強い磁束密度を得ることができる。また、一対の磁極による磁界及び一対の永久磁石による直流磁界は、上面視で仮想直線に沿って形成されるため、両磁界が錯綜することがなく、被検査対象に作用する磁界(磁束)の磁束密度を良好に強めることができるとともに、被検査対象から磁気探傷シートに漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
【0022】
本発明の請求項6に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記一対の永久磁石が、前記仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されていることにある。
【0023】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の永久磁石が、仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されているので、一対の永久磁石間において仮想直線に沿う方向に延びる比較的安定した形状の直流磁界を形成することができ、同方向に形成される一対の磁極による磁界と重畳された場合にも、比較的安定した形状の磁界を形成することが可能となる。
【0024】
本発明の請求項7に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記第1圧力付与手段を構成する前記磁気発生機構の前記連結ヨーク部が、操作者が把持可能な中間把持部として構成され、
前記第2圧力付与手段が、前記仮想直線に沿う方向における前記板状圧着体の両端部を連結されるとともに、前記板状圧着体上の空間に設けられる把持部を備えたことにある。
【0025】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上記した第1圧力付与手段による圧力に加えて、第2圧力付与手段の把持部を操作者が把持した状態で、第2圧力付与手段側を押圧操作することで、板状圧着体、板状押圧部材及び磁気探傷シートを被検査対象の表面側に押付けて、磁気探傷シートの表面への密着度を高めて、磁気探傷を行うことができる。
【0026】
本発明の請求項8に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体と前記磁気探傷シートとの間で、前記板状圧着体の広がり方向の複数箇所に、前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段により圧力を作用させて前記磁気探傷シートを前記被検査対象に接触させた状態において前記被検査対象側から前記板状圧着体が受ける圧力を検出する圧力検出手段を設けたことにある。
【0027】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、圧力検出手段を備えて、被検査対象と板状圧着体との間で発生している圧力を検出するため、この検出結果に基づいて、適切な圧力がかかった状態を確認して、信頼性の高い検査を行える。なお、例えば、この圧力検出手段が所定値以上の圧力を検出した状態でのみ、磁気探傷シートに現れる感磁体のパターンを写真撮影するように装置構成することで、磁気探傷の自動化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】磁気探傷装置の斜視図
【図2】磁気探傷装置の分解斜視図
【図3】磁気探傷装置の一部切り欠き側面図
【図4】磁気探傷装置の探傷時における一部切り欠き側面図
【図5】磁気探傷装置の上面視図
【図6】磁気探傷装置の制御系を示すブロック回路図
【図7】磁気探傷装置により形成される磁界の概略部分側面図
【図8】磁気探傷シートの上面斜視図
【図9】磁気探傷シートの縦断面図及び横断面図
【図10】別実施形態に係る磁気探傷装置の上面視図
【図11】図10の磁気探傷装置における磁束密度と時間との関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1〜図5に示すように、本発明に係る磁気探傷装置100は、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体としての磁粉38(図8参照)を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートDと、磁気探傷シートDに対して圧力を作用させることにより磁気探傷シートDを被検査対象1に接触させる圧力付与手段Pと、磁気発生機構Aとを備え、被検査対象1に磁気探傷シートDを接触させた状態において磁気発生機構Aで発生させた磁気を被検査対象1に作用させることにより被検査対象1から漏洩する磁束(磁束の乱れ)を磁気探傷シートDの磁粉38で捉え、当該磁粉38が作り出すパターンに基づいて被検査対象1の探傷を行うように構成されている。
【0030】
上述のように、磁気探傷装置100には、磁気探傷シートDの被検査対象1の表面への密着度を上げるために、磁気探傷シートDに対して圧力を付与する圧力付与手段Pが設けられ、この圧力付与手段Pとして、磁気探傷シートDの一端側に配設される第1圧力付与手段P1と、他端側に配設される第2圧力付与手段P2とが設けられている。
第1圧力付与手段P1は、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力を利用して、磁気探傷シートDを被検査対象1に押圧する。一方、第2圧力付与手段P2は、操作者が押圧することにより、同じく磁気探傷シートDを被検査対象1に押圧する。
【0031】
磁気探傷装置100は、被検査対象1の表面側から、磁気探傷シートD、板状押圧部材C及び板状圧着体4の順に配設して使用するように構成されており、この板状圧着体4の被検査対象1側への押圧は、第1圧力付与手段P1では、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力が付勢機構Bを介して板状圧着体4に伝達されることにより行われ、また、第2圧力付与手段P2では、操作者が押圧操作することで、板状圧着体4に押圧力がそのまま伝達されることにより行われる。
【0032】
検査に際しては、被検査対象1に磁気探傷シートDを接触させた状態で、磁気発生機構Aに通電して、磁気発生機構Aから発生させた磁気を被検査対象1に作用させ、被検査対象1から磁束の乱れである漏洩する磁束を磁気探傷シートDの磁粉38で捉え、この磁粉38が作り出すパターンに基づいて被検査対象1の探傷を行うことができる。
【0033】
本発明の磁気探傷装置100を使用することにより、鉄を代表とする磁性体である被検査対象1の探傷を行うことができる。具体的には、図1、図3に示すように、鉄板材の溶接箇所の余盛り部分1Aや、鉄製の配管の曲面部分の欠陥(クラック等の傷)の検査を行う際に、作業者が磁気探傷装置100を両手で操作して、磁気探傷を行うことができる。尚、この余盛り部分1Aとしては、例えば、幅10mm程度で、被検査対象1の表面から4mm程度の盛り上がり高さを有した一般的な形態のものが検査対象となる。ここで、1Cは、余盛り部分1Aに存在する欠陥を示している。また、磁気探傷装置100は比較的小型で扱いやすく構成されているので、縦壁状となる被検査対象1や、天井壁状のものでも楽に作業を行えるものとなっている。
【0034】
以下、磁気探傷装置100の各箇所についてさらに詳細に説明する。
なお、以下では、例えば、図1に示すように、磁気探傷装置100の奥行方向をX方向とし、横方向をY方向とし、高さ方向をZ方向として説明する場合がある。
【0035】
〔磁気発生機構〕
磁気発生機構Aは、ハンドマグナ(被検査対象の磁化装置)を応用したものであり、図1〜図4に示すように、このハンドマグナに、板状圧着体4、板状押圧部材Cを支持するとともに、被検査対象1側に付勢する付勢機構Bを設けている。
【0036】
具体的には、磁気発生機構Aは、図6に示すように、磁性体からなるヨーク2aを備えた本体部2を有している。ヨーク2aは、それぞれ一方の端部(被検査対象1に接触される側の端部)に磁極3が形成される一対の並行ヨーク部2bと、この一対の並行ヨーク部2bの他方の端部(被検査対象1から離間した側の端部)同士を連結する連結ヨーク部2cとを備えたコ字形状に形成されている。さらに、本体部2には、ヨーク2aの連結ヨーク部2cに巻回されるコイル5、及びこのコイル5に給電するためのケーブル7を備えて構成されている。
【0037】
磁性体で成るヨーク2aに対して銅合金等の良導体のコイル5を巻回することにより、本体部2は電磁石として機能する。さらに、本体部2にはコイル5に対して電源部6からの電流を供給するケーブル7と、電源部6からの電流のオンオフ操作可能な電源スイッチ8と、発光ダイオード(発光体の一例)で成る照明機構9とが設けられている。
【0038】
図6では、発光ダイオードで成る照明機構9を示しているが、照明機構9として蛍光灯やハロゲンランプを用いることが可能であり、又、例えば、電源部6やこの近傍に配置した光源からの光線を磁気発生機構Aの部位まで導く光ファイバーで照明機構9を構成することも可能である。そして、照明機構9として光ファイバーを用いた場合には、磁気発生機構Aの近傍にランプ類を備えずに済み、電力ケーブルを形成しなくて済むので、装置の大型化を抑制できる。
【0039】
又、電源スイッチ8は作業者が本体部2を握って操作する際に指先で押し操作できる位置に配置されている。照明機構9は、光線を透明な板状圧着板4を通過させて磁気探傷シートDを照明する位置に配置されている。これにより、夜間や照明が存在しない屋内でも、磁気探傷シートDの磁粉38が作り出すパターンを明瞭に観察できるものにしている。なお、この照明機構9による概略の照明領域は、図5に示す磁気探傷装置100を上方から見た上面視で、第1圧力付与手段P1及び磁気発生機構Aの配設位置における磁気探傷シートDの上面(主な磁気探傷領域)とされている。
【0040】
電源部6は、商用電源からの交流電流の周波数を高めて(180Hz程度・240Hzが上限)コイル5に供給するようインバータ回路(図示せず)を備え、電源スイッチ8を操作することによりコイル5に対して交流電流を供給し、この交流電流の供給と同時に照明機構9に対して電流を供給するよう機能する。これにより、磁気発生機構Aでは、電源部6から供給された交流電流がコイル5を通流することにより発生する磁気が、一対の並行ヨーク部2b間(一対の磁極3間)に、当該一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1(Y方向)に沿う交流磁界を形成することとなり(図7の破線参照)、一対の磁極3を被検査対象1の表面に接触させ、交流磁界を仮想直線L1に沿って被検査対象1の表面に作用させることができる。なお、当該交流磁界の方向は当該仮想直線L1に沿う方向(Y方向)であるが、交流磁界の向きは交流電流の周波数に応じて、Y方向で交互に逆転する向きに形成される。なお、交流電流の周波数を高める理由は、磁性体に対して交流(交番)磁界が作用する場合には、周波数が高いほど表面近くに磁界が強く作用することが知られており(表皮効果)、この現象を利用して被検査対象1の表面近くの欠陥1Cを発見しやすくするためである。
【0041】
電源部6は、商用電源の周波数で商用電源の周波数から前述した240Hzの範囲内の周波数の交流電流を供給するものであれば、実用上の不都合は無く、供給する電圧は500V以下であることが望ましい。
【0042】
〔板状圧着体〕
板状圧着体4は、図1〜図5に示すように、透明なアクリル樹脂からなる所定の厚みを備えた板状の剛体部材であり(図3及び図4参照)、上面視で概略T字形状に構成され(図5参照)、上面視でX方向(仮想直線L1に直交する方向)における一端側に第1圧力付与手段P1(磁気発生機構Aを含む)が配設され、他端側には第2圧力付与手段P2がそれぞれ並列に配設される。板状圧着体4と第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2との詳細関係は後述する。
【0043】
〔第1圧力付与手段〕
第1圧力付与手段P1は、上記磁気発生機構Aと、磁気発生機構Aの一対の磁極3が発生させる磁気により磁極3を被検査対象1に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構Bとを備え、X方向における板状圧着体4の一端側に配設されている。
具体的には、磁気発生機構Aの一対の並行ヨーク部2bの他方の端部(Z方向において被検査対象1から離間した側の端部)に、一方の端部側(Z方向において磁極3側)から透明なアクリル樹脂製の支持体20が、当該支持体20に形成された挿通孔20aに挿通状態で配置されている。この支持体20は、連結ヨーク部2cの上部と支持体20の上面とに亘って覆設される金属製のブラケット21と、当該ブラケット21を固定連結する係合機構22とにより、磁気発生機構Aの並行ヨーク部2bに係合固定されている。この支持体20の下面に対して付勢機構Bを介して一対の並行ヨーク部2bの一端側(Z方向において被検査対象1に接触する磁極側)に透明なアクリル樹脂製の板状圧着体4が配置され、この板状圧着体4の下面側に透明で柔軟に変形する板状押圧部材Cと、磁気探傷シートDとが重ね合わせ状態で支持されている。なお、支持体20は金属で形成することも可能であるが、金属を用いた場合には、磁気発生機構Aで発生する交流磁界の作用により金属内に誘導電流が発生して発熱することもあり、本実施形態では、この発熱を回避し、しかも、軽量化と視認性を向上させるために透明なアクリル樹脂を使用している。
【0044】
板状圧着体4の一端側(X方向における一端側)は、並行ヨーク部2bの長手方向(Z方向)に沿って移動自在となるように付勢機構Bに支持され、当該並行ヨーク部2bの磁極3は、板状圧着体4に貫通形成された貫通口4aに挿通され、図3に示すように非使用状態では、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1と、磁気探傷シートDの底面との間のZ方向における間隔が距離Sとなるように設定されている。
【0045】
付勢機構Bは、支持体20に形成された4つの通孔pと、板状圧着体4に形成した4つの貫通孔pとに挿通する挿通ボルト25と、支持体20と板状圧着体4との間において、夫々の挿通ボルト25に外嵌した圧縮コイルバネ26とを備えて成り、図3に示す非使用状態においては4本の挿通ボルト25によって板状圧着体4を吊り下げ状態で支持する形態となる。尚、この付勢機構Bでは圧縮コイルバネ26に限らず、弾性的に変形することにより付勢力を得るゴム、あるいは、ガス圧を利用するガススプリングも使用できる。
【0046】
これにより、第1圧力付与手段P1は、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力を、付勢機構Bを介して板状圧着体4に伝達する構成となっている。
さらに、第1圧力付与手段P1の磁気発生機構Aは、上述のように、概略コ字形状のヨーク2aを備えた本体部2を備えるため、当該ヨーク2aの連結ヨーク部2cを、操作者が把持可能な中間把持部(図示せず)として構成されている。
【0047】
〔第2圧力付与手段〕
第2圧力付与手段P2は、図1〜図5に示すように、X方向における板状圧着体4の他端側に配設される機構であり、当該板状圧着体4の他端側においてY方向の両側端部から被検査対象1に対して反対側(図1のZ方向のうち上方向)に立設される一対の概略三角形状の支持側板45と、これら一対の支持側板45間に亘って架け渡される把持部46とを備えている。従って、この第2圧力付与手段P2の把持部46は、板状圧着体4の他端側におけるY方向の両側端部を連結するとともに、板状圧着体4上の空間に配設されており、操作者が把持可能な把持部として構成されている。
【0048】
そして、第1圧力付与手段P1の中間把持部及び当該第1付与手段P1の磁気発生機構Aの一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1(Y方向)と、第2圧力付与手段P2の把持部46とは、並行に配設されている。
【0049】
〔板状押圧部材〕
板状押圧部材Cは、柔軟で透明な樹脂フィルムとして0.1〜0.5mm程度のフィルム厚のポリエチレンフィルムやポリビニルフィルムを袋状に成型したバッグ30に対して、ポリビニルアルコールと硼砂とを混合して成る透明なゲル状(スライム状)物質31(水でも良い)、又は、例えば、ポリエチレンとスチレンを共重合させた網状物質を油でゲル化したものを封入したもの、あるいは、バッグ30を使用せずに前記ゲル化したものを直接貼り付けたものであり、全体として透明で柔軟に変形し得るよう構成され、磁気探傷シートDが変形した状態にあっても、板状圧着体4から作用する圧力を均一な圧力で磁気探傷シートDに作用させるよう機能する。図3〜図5に示す例では、板状押圧部材Cは、Z方向において板状圧着体4の下方位置に配設され、X方向において第1圧力付与手段P1の位置から第2圧力付与手段P2の位置まで延設されている。
【0050】
〔磁気探傷シート〕
磁気探傷シートDは、図8及び図9に示すように、柔軟で透明な樹脂フィルムで成る上面側の表面材35と、柔軟な樹脂フィルムで成る下面側の裏面材36とを重ね合わせ、夫々の素材同士の間に繊維をメッシュ状に配置して成るスペーサ37を介在させることで20〜30μm程度の隙間dと成る空間を形成した柔軟なシート状に成形しており、この空間に対して0.1μm程度以上の磁性体で、当該隙間dの値(20〜30μm程度)より充分に小さい粒径となる粒子状の磁粉38(感磁体の一例)と、分散媒として水や灯油等の流動物質f(気体であっても良い)とを封入し、表面材35と裏面材36との外周部を熱溶着の技術や接着剤を用いて接合した密封構造を有している。
【0051】
具体的に説明すると、表面材35と裏面材36とのフィルム厚が0.02〜0.5mm程度のものが使用されており、容器の表面材35は透明であることが必須であるが、多少の着色したものを使用しても良く、裏面材36は透明である必要は無く、着色した樹脂を用いることも可能である。この表面材35と裏面材36としてポリエチレンやポリビニルやPET(polyethylene terephthalate)樹脂の使用が可能であり、又、裏面材36として樹脂フィルムに代えて軟磁性のオーステイトステンレス鋼の箔を使用することも可能である。更に、磁粉38の材料として、鉄やニッケルばかりで無く、マグネタイト、ガンマ・ヘクタイトの使用が可能である。
【0052】
又、スペーサ37として、隙間dと等しい粒径の粒子状のものを表面材35と裏面材36との間に分散させる形態で用いることや、表面材35と裏面材36との間に亘って隙間dを形成し得る複数の柱状の部材を用いることも考えられる。
【0053】
また、磁気探傷シートDは、図5に示すように、上面視で一対の磁極3間において仮想直線L1を含む平面(X方向及びY方向を含む平面)と並行に配設され、Y方向では一対の磁極3間に配設可能な幅に形成されており、X方向では板状圧着体4と同様の奥行き幅を備えて構成されている。即ち、X方向では、磁気探傷シートDは、第1圧力付与手段P1(磁気発生機構A)の位置から第2圧力付与手段P2の位置まで延設されており、当該磁気探傷シートDの両端がそれぞれ、板状圧着体4の上面に引き込まれて固定されている(図1及び図8参照)。
【0054】
具体的に、板状圧着体4に対して板状押圧部材Cと磁気探傷シートDとを支持する際には、板状圧着体4の下面側に板状押圧部材Cと磁気探傷シートDとを重ね合わせ、この磁気探傷シートDのX方向における一対の端部を、それぞれ板状圧着体4の上面まで引き込み、この磁気探傷シートDに対して適度の張力を作用させた状態で、この磁気探傷シートDの一対の端部を固定板40で圧着し、ビス41で固定している(図1参照)。
【0055】
従って、磁気探傷装置100では、第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2から、板状圧着体4、板状押圧部材C及び磁気探傷シートDを被検査対象1側へ押圧して、良好に検査を行えるように構成されている。
【0056】
なお、この磁気探傷シートDは、図5及び図8に示すように、当該磁気探傷シートDの内部を複数の感磁体移動ゾーンD1,D2,D3(図では3つ)に仕切る仕切り39が、Y方向と並行に配設されており、感磁体移動ゾーンD1,D2,D3に亘る磁粉38の移動が阻止されている。具体的には、上面視で、感磁体移動ゾーンD1は第1圧力付与手段P1と重なる位置に、感磁体移動ゾーンD3は第2圧力付与手段P2と重なる位置に、感磁体移動ゾーンD2は第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2と重ならない位置に配置されている。なお、仕切り39は、表面材35と裏面材36とを融着させることでゾーン化を図っている。
【0057】
〔圧力検出手段〕
圧力検出手段Seは、図5に示すように、Z方向における板状圧着体4と磁気探傷シートDとの間(図示する例では、板状圧着体4の下側で板状押圧部材Cとの間)で、上面視で感磁体移動ゾーンD2周りの複数箇所に配設され、第1圧力付与手段P1,第2圧力付与手段P2より圧力を作用させて磁気探傷シートDを被検査対象1に接触させた状態において、被検査対象1側から板状圧着体4が受ける圧力を検出することが可能に構成されている。
この圧力検出手段Seは、圧電素子等の感圧素子とこの感圧素子が感圧する状態で発生する電力により発光する発光素子とを備えて構成されており、一定値以上の圧力が圧力検出手段Seの位置で発生している状態で発光するように構成されている。図5には、感磁体移動ゾーンD2の四辺端位置に圧力検出手段Seを配置していることにより、この感磁体移動ゾーンD2周りで均等に所定の押圧状態を実現できている状態で、圧力検出手段Seが均等に光り、良好な押圧状態が実現できていることが確認できるように構成されている。
【0058】
〔一対の永久磁石〕
本発明の磁気探傷装置100では、さらに、図1〜図7に示すように、板状圧着体4に、一対の永久磁石50,50として一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50B(一対の永久磁石が二組で、合計4つの永久磁石)が配設されている。
【0059】
具体的には、図1〜図7に示すように、一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bの各永久磁石は、上面視で長方形の板部材からなるネオジム磁石で構成されており、長方形の平面部分が接着剤等により板状圧着体4の下面に固着されている(図3及び図4参照)。また、図5に示すように、上面視で、一対の第1永久磁石50A,50Aは、当該一対の第1永久磁石50A,50A同士の間に磁気探傷シートDを挟み、かつ、一対の並行ヨーク部2b(一対の磁極3)を挟まない状態で仮想直線L1(Y方向)と並行に配設され、一対の第2永久磁石50B,50Bも同様に、当該一対の第2永久磁石50B,50B同士の間に磁気探傷シートDを挟み、かつ、一対の並行ヨーク部2b(一対の磁極3)を挟まない状態で仮想直線L1(Y方向)と並行に配設されている。なお、板部材からなる各永久磁石50A,50Bには、長方形の平面部分に、上記付勢機構Bの挿通ボルト25をZ方向に挿通可能な挿通孔51が形成されている(図2参照)。
【0060】
また、一対の第1永久磁石50A,50Aの各永久磁石50Aは、磁気発生機構Aの各並行ヨーク部2bに対してX方向における第2圧力付与手段P2側の部位(磁気探傷シートDの他端側の部位(各並行ヨーク部2bの周囲の一例))に位置するように配設されている。同様に、一対の第2永久磁石50B,50Bの各永久磁石50Bは、磁気発生機構Aの並行ヨーク部2bに対してX方向における第2圧力付与手段P2とは反対側の部位(磁気探傷シートDの一端側の部位(各並行ヨーク部2bの周囲の一例))に位置するように配設されている。
【0061】
さらに、上面視で長方形に形成される板部材からなる各永久磁石50A,50Bは、その長尺となる両側辺を、仮想直線L1(Y方向)に沿うように板状圧着体4の下面に固着されているとともに、各永久磁石50A,50BのY方向における両端部には、それぞれN極とS極が形成され、各永久磁石50A,50BにおけるN極とS極の配設方向は同一となっている。すなわち、図7に示すように、板部材からなる各永久磁石50A,50Bは、その長尺となる両側辺がY方向に沿うとともに、図7における右側にN極、左側にS極が配置され、一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間においてN極からS極(左側から右側)に直流磁界を発生させるように配置されている(図7の実線参照)。なお、図7では、簡単のため、一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間における直流磁界を、各永久磁石50A,50Bよりも下側(Z方向の下側)に形成されるものの一部のみ示している。
【0062】
これにより、一対の磁極3間、さらに一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間における仮想直線L1近傍の被検査対象1(主な磁気探傷領域)に、磁気発生機構Aによる交流磁界と二組の一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bによる直流磁界とを重畳させた状態で、上面視で仮想直線L1に沿う方向(Y方向)の磁界(磁束)を作用させることができる。従って、当該仮想直線L1近傍の被検査対象1に作用する磁束密度が強くなり、当該被検査対象1から磁気探傷シートDの磁気探傷領域に漏洩する磁束密度を強くすることができる。また、磁気探傷領域に漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線L1に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。この場合、被検査対象1に欠陥1Cが存在することによる磁気探傷シートDに漏洩する磁束(磁束の乱れ)を容易に判別することができる。
【0063】
また、磁気探傷シートDは、第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2により被検査対象1に押圧され、磁気探傷シートDと被検査対象1の表面とが密着するように構成されるが、さらに、各永久磁石50A,50Bが被検査対象1に吸着する吸着力により、仮想直線L1近傍の磁気探傷シートDを、上面視において、仮想直線L1に沿う方向(Y方向)では、当該仮想直線L1近傍の領域を挟んだ両側の箇所(2箇所)で、しかも、仮想直線L1に直交する方向(X方向)では、並行ヨーク部2bを挟んだ両側の箇所(2箇所)に亘る、合計4箇所で磁気探傷シートDの表面側から被検査対象1側に安定的に押圧することができる。
【0064】
よって、磁気探傷シートDを使用して磁気発生機構Aの磁気により磁気探傷する磁気探傷装置100において、永久磁石50を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートDを被検査対象1の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象1から磁気探傷シートD中の磁粉38に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該磁粉38を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象1における欠陥1Cの検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置100を得ることができる。
【0065】
〔磁気探傷装置を使用した磁気探傷方法〕
この磁気探傷装置100では、被検査対象1として、石油等を貯留するタンク類を構成する鋼板の溶接箇所、あるいは、橋梁等を構成する鋼板の溶接箇所を想定しており、これらの部位の探傷を行う場合には以下のように作業が行われる。例えば、溶接箇所の余盛り部分1Aの部位の探傷を行う場合には、図3に示すように、余盛り部分1Aの部位を跨ぐ位置に一対の磁極3を配置し、かつ、探傷を行うべき部位を覆う位置に磁気探傷シートDを配置した状態で、電源スイッチ8を操作することにより、電源部6からの電流がコイル5に供給されることになり、このコイル5が磁気を発生させて一対の磁極3が被検査対象1に吸着する。
【0066】
このように磁極3が被検査対象1に吸着した場合には、第1圧力付与手段P1側では、図4に示すように、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1と磁気探傷シートDの底面との間の距離S(図3参照)に相当するだけ磁極3が板状圧着体4に対してZ方向に相対移動することになるので、付勢機構Bの圧縮コイルバネ26を圧縮して、この圧縮コイルバネ26からの付勢力を板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
【0067】
一方、第2圧力付与手段P2側では、操作者が押圧することで、この押圧力を、板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
そして、押圧力のかかり具合は、先に説明した圧力検出手段Seの発光状態により確認することができる。
【0068】
加えて、板状圧着体4の下面に設けた各永久磁石50A,50Bの磁界による被検査対象1への吸着力を、板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
【0069】
この密着状態では、溶接部分において余盛り部分1Aが存在しても、その余盛り部分1Aに沿う形状に磁気探傷シートDが変形し、この変形に従うように板状押圧部材Cが変形して、板状圧着体4から圧力を均一の圧力として磁気探傷シートDに作用させる形態となるので、磁気探傷シートDの底面(裏面材36の外面)の全面が被検査対象1の上面に対して隙間なく密着するものとなる。
【0070】
そして、このように磁気探傷シートDが被検査対象1に密着した状態で一対の磁極3と被検査対象1との間で磁気回路が形成されることになるが、この場合、図7に簡単に示すように、磁気発生機構Aにより一対の磁極3同士を結ぶ方向(Y方向)に交流磁界(磁力線)が形成され、同時に、一対の第1永久磁石50A同士及び一対の第2永久磁石50B同士を結ぶ方向(Y方向)に直流磁界(磁力線)がそれぞれ形成されて、両磁界(磁力線)が重畳されることとなる。従って、磁極3同士を結ぶ仮想直線L1近傍には、強い磁束密度の磁界を発生させることができ、当該磁界を被検査対象1に作用させることができ、被検査対象1の余盛り部分1Aの部位に欠陥1Cが存在する場合には、その欠陥1Cの部分でより強い磁束が漏洩して磁気探傷シートDの磁粉38に作用する結果、この漏洩した磁束の方向に沿って磁粉38が列を成すパターンを作り出し、欠陥1Cを視覚的に把握できるものとなる。この際、欠陥1C以外の被検査対象1から漏洩する磁束により形成される磁粉38のパターンは、仮想直線L1に沿って比較的単純で明瞭な形状に形成されているため、欠陥1Cの部位から漏洩する磁束のパターンをより容易に発見することができる。
【0071】
〔仮想直線近傍の磁束密度について〕
上記では、磁気発生機構Aにより一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1に沿う方向(Y方向)に形成される交流磁界(磁力線)と、一対の第1永久磁石50A,50A同士及び一対の第2永久磁石50B,50B同士を結ぶ方向(Y方向)にそれぞれ形成される直流磁界(磁力線)との両磁界(磁力線)が重畳される点について説明したが、実際に当該重畳された磁束密度を計測した結果を、図11に示す。
図11における磁束密度の計測結果(実施例)は、図10に示す構成を備えた磁気探傷装置、すなわち、上面視で、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1上に、一対の第3永久磁石50C,50Cを、磁気探傷シートDを挟んだ状態で、かつ、並行ヨーク部2bを挟まない状態で配設し、板部材からなる各永久磁石50Cの長尺の両側辺を仮想直線L1(Y方向)に沿って配設した構成の磁界探傷装置を用いて、一対の磁極3による交流磁界及び一対の第3永久磁石50C,50Cによる直流磁界が重畳された仮想直線L1に沿う磁界を作用させた際において、被検査対象1の表面に作用する磁束密度の計測結果である。また、図11における磁束密度の計測結果(比較例)は、図10の構成の磁気探傷装置において、一対の第3永久磁石50C,50Cを設けずに一対の磁極3のみで仮想直線L1に沿う交流磁界を発生させた際において、被検査対象1の表面に作用する磁束密度の計測結果である。なお、磁束密度の測定位置は、被検査対象1の表面における仮想直線L1上で、一対の磁極3間の略中間位置とした。
【0072】
結果、図11から判明するように、比較例では、磁束密度の範囲が、−10mT程度〜10mT程度の範囲であるのに対し、一対の第3永久磁石50C,50Cを設けた実施例では、磁束密度の範囲が、50mT程度〜70mT程度の範囲にまで強まっている。従って、一対の第3永久磁石50C,50Cを適切な位置に配設することにより、一対の磁極3間の被検査対象1に作用する磁束密度を、一対の磁極3のみによる磁束密度と比較して、より強くできることが実際に確認できた。従って、被検査対象1に作用する磁束密度を強くして、被検査対象1(欠陥1Cを含む)から漏洩する磁束をより強くすることができ、欠陥1Cの検出精度を向上させることができた。
なお、この結果より、上述のように一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bを適切な位置に配設した場合には、一対の第3永久磁石50C,50Cを配置した場合と同等或いはその倍以上の強い磁束密度を被検査対象1に作用させることができ、被検査対象1(欠陥1Cを含む)から漏洩する磁束をより強くして、欠陥1Cの検出精度を向上させることができると考えられる。
【0073】
〔別実施形態〕
本発明は上記実施の形態以外に、例えば、以下のように構成することも可能である。なお、この別実施の形態では実施の形態と同じ機能を有するものには、実施の形態と共通の番号、符号を付している。
【0074】
(1)上記の実施の形態では、一対の永久磁石50,50として、一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bを設ける構成、一対の第3永久磁石50C,50Cを設ける構成について説明したが、これら一対の第1〜第3永久磁石を設ける際の組合せについては適宜選択することができる。例えば、第1〜第3永久磁石の全てを配設する構成としてもよい。また、三組以上の一対の永久磁石を設ける構成としてもよい。
【0075】
(2)上記実施の形態では、一対の永久磁石の各永久磁石50A,50B,50Cとして、長尺の板部材を用いて説明したが、一対の磁極3による当該磁極3同士を結ぶ仮想直線L1近傍の磁界を強めることができ、当該仮想直線L1近傍に発生する磁界のパターンを明瞭にすることができるものであれば、この構成に限定されるものではない。例えば、長尺の長方体や立方体等からなる各永久磁石を採用することができる。
【0076】
(3)上記実施の形態では、一対の永久磁石の各永久磁石50A,50B,50Cとして、ネオジム磁石を用いて説明したが、自然状態で永久磁石間に磁界を発生することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0077】
(4)上記実施の形態では、各永久磁石50A,50B,50Cを板状圧着体4の下面に接着剤により固着したが、板状圧着体4への取付け方法については、特に制限されるものではない。例えば、板状圧着体4の下面に一対の取付凹部を形成し、当該取付凹部に板部材又は長方体からなる各永久磁石を嵌合し、付勢機構Bの挿通ボルト25により固定する構成としてもよい。
【0078】
(5)上記実施の形態では、圧力検出手段を、上面視で、第1圧力付与手段P1と第2圧力付与手段P2の間に形成される感磁体移動ゾーンD2の周部における四隅に配置する構成を示したが、その個数、位置を問うものではなく、さらに、板状圧着体4の四隅に対応した位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 被検査対象
1A 余盛り部分
1C 欠陥
2 本体部(磁気発生機構)
2a ヨーク
2b 並行ヨーク部
2c 連結ヨーク部
3 磁極
4 板状圧着体
5 コイル
38 磁粉(感磁体)
46 把持部
50 一対の永久磁石
50A 一対の第1永久磁石
50B 一対の第2永久磁石
50C 一対の第3永久磁石
100 磁気探傷装置
A 磁気発生機構
B 付勢機構
C 板状押圧部材
D 磁気探傷シート
P 圧力付与手段
P1 第1圧力付与手段
P2 第2圧力付与手段
L1 仮想直線
Se 圧力検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、被検査対象に磁気探傷シートを接触させた状態において磁気発生機構で発生させた磁気を被検査対象に作用させることにより被検査対象から漏洩する磁束を磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記磁気探傷装置に関連する技術として、例えば、特許文献1には、被検査対象1の表面に磁気探傷シートS、押圧部材20、圧着板21の順に載置し、さらに、2本のゴムベルト25を、載置された圧着板21の表面と被検査対象1の表面とに亘って当該圧着板21に付勢力を作用させるように配置する構成が開示され、当該2本のゴムベルト25を被検査対象1の表面に固定する手段として、永久磁石27を使用してもよいことが開示されている(特許文献1の図7及び図8参照)。そして、コ字形状の磁気発生機構Mにおける磁極30P,30P間に磁気探傷シートSを配設するとともに、これら磁極30P,30Pを被検査対象1の表面に接触させた状態で電力を供給して発生した磁気により磁気探傷シートSに磁粉13のパターンを形成させ、当該パターンに基づいて磁気探傷を行うように構成されている。なお、参照番号は特許文献1中のものを引用した。
これにより、磁気探傷シートSを、押圧部材20及び圧着板21の重量、ゴムベルト25による付勢力、永久磁石27による若干の吸着力により、被検査対象1の表面にある程度密着させた状態で、磁気探傷を行うことができると考えられる。
【0003】
また、上記磁気探傷装置に関連する技術として、例えば、特許文献2には、磁気探傷シートDと、この磁気探傷シートDを挟んで一対の磁極3,3が配設されるコ字形状の磁気発生機構Aとを備え、この磁気発生機構Aに対して付勢機構Bを取り付け、この付勢機構Bにより付勢される圧着体4と磁気探傷シートDとの間に柔軟に変形自在で圧力伝達可能な押圧部材Cを備えて、磁気探傷シートDに形成される磁粉38のパターンに基づいて磁気探傷を行うように構成されている。また、上面視で圧着体4における磁気探傷シートDを挟んだ両箇所には、一対の永久磁石50,50(それぞれ3個)のうちの各永久磁石50(3個)が、磁気発生機構Aの一対の磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に対してそれぞれ並行に配設されている(特許文献2の図14〜図16参照)。なお、参照番号は特許文献2中のものを引用した。
これにより、磁気探傷シートDを、付勢機構Bによる圧着体4及び押圧部材Cを介した付勢力、永久磁石50による吸着力により、被検査対象1の表面にある程度密着させた状態で、磁気探傷を行うことができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−279545号公報
【特許文献2】特開2004−333484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記磁気探傷装置としては、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させるとともに、被検査対象に対してより強い磁束密度の磁気を作用させて、被検査対象から磁気探傷シート中の磁粉に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該磁粉を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上することが望まれる。
【0006】
この点、特許文献1の磁気探傷装置について検討すると、磁気探傷シートSを被検査対象1に密着させる際には、主として2本のゴムベルト25による付勢力が圧着板21及び押圧部材20を介して磁気探傷シートSに作用して、被検査対象1に密着する構成となるため、ゴムベルト25と圧着板21とが接触する箇所以外には充分な付勢力が作用せず、磁気探傷シートSを均一に被検査対象1に密着させることが困難となる問題がある。
また、一対の永久磁石27,27における各永久磁石27は、上面視で磁気発生機構Mの磁極30P,30P同士を結ぶ仮想直線に直交する方向に沿って配設されるが、そもそもゴムベルト25を被検査対象1に固定するために用いられているに過ぎず、磁気探傷シートSに漏洩する磁束密度を高めることを意図するものではない。さらに、当該各永久磁石27が存在する結果、各永久磁石27により発生する磁界と磁気発生機構Mにより発生する磁界とが併存し両磁界が錯綜する構成となって、被検査対象1に作用する磁界(磁束)及び磁気探傷シートSに漏洩する磁界(磁束)が複雑となり、磁粉13により形成されるパターンが不明瞭となる虞があるとともに、被検査対象1に作用する磁界(磁束)が打ち消し合う等により磁束密度を高めることができず、被検査対象1における欠陥の検出精度を向上させることが困難となる問題がある。
【0007】
特許文献2の磁気探傷装置では、磁気発生機構Aに取り付けられた付勢機構Bの付勢力により圧着体4の全体で、押圧部材Cを介して磁気探傷シートDを押圧するので、磁気探傷シートDを被検査対象1にある程度密着させることができると考えられる。
また、上面視で磁気探傷シートDを挟んで配置される一対の永久磁石50,50(それぞれ3個で合計6個)の吸着力によって、磁気探傷シートDを被検査対象1にある程度密着させることができると考えられる。
しかしながら、磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に対して直交する方向に磁気探傷シートDの長手方向が配設されており、当該長手方向で磁気探傷シートDを挟むように一対の永久磁石50,50を配設しても、磁気探傷シートDを均一に被検査対象1に密着させることが困難となる。また、当該一対の永久磁石50,50は、圧着体4に配設されているが、そもそも圧着体4を被検査対象1に吸着させるために用いられているに過ぎず、磁気探傷シートDに漏洩する磁束密度を高めることを意図するものではない。さらに、一対の永久磁石50,50における各永久磁石50(3個)は、上面視で磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線に沿う方向で、各磁極3,3との間に並設され、しかも、仮想直線に直交する方向において当該仮想直線から離間した位置に配置されているが、一方側の各永久磁石50(特許文献2の図15におけるb4,b5,b6の3個)は、磁気探傷シートDの短手面(同図15における右端面)に近接している。このため、当該一方側の各永久磁石50が存在する結果、各永久磁石50により発生する磁界のそれぞれが、主な磁気探傷領域となる磁気発生機構Aの磁極3,3同士を結ぶ仮想直線近傍における被検査対象1に作用することとなり、さらに、磁気発生機構Aにより発生する磁界も当該仮想直線近傍の被検査対象1に作用するため、両磁界が錯綜して、当該仮想直線近傍における磁気探傷シートDに漏洩する磁界(磁束)が複雑となり、当該磁粉38により形成されるパターンが不明瞭となる虞があり、被検査対象1における欠陥の検出精度を向上させることが困難となる問題がある。また、場合によっては、当該仮想直線近傍の磁気探傷シートDに漏洩する磁束密度が低下する虞もある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気探傷シートを使用して磁気発生機構の磁気により磁気探傷する磁気探傷装置において、永久磁石を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象から磁気探傷シート中の感磁体に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該感磁体を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、前記磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより前記磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、前記被検査対象に前記磁気探傷シートを接触させた状態において前記磁気発生機構で発生させた磁気を前記被検査対象に作用させることにより前記被検査対象から漏洩する磁束を前記磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて前記被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置に係る請求項1の磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
【0010】
〔特徴〕
前記磁気発生機構が、それぞれ一方の端部に磁極が形成される一対の並行ヨーク部と、前記一対の並行ヨーク部の他方の端部同士を連結する連結ヨーク部とを備えた磁性体からなるコ字形状のヨークを備え、前記連結ヨーク部に巻回されたコイルに通電することで、前記一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う方向に磁界を発生させるように構成され、
前記磁気探傷シートが、上面視で前記一対の磁極間において前記仮想直線を含む平面と並行に配設され、
少なくとも一対の永久磁石が、当該一対の永久磁石間に前記磁気探傷シートを挟み、かつ、前記一対の並行ヨーク部を挟まない状態で前記仮想直線と並行に配設されるとともに、各永久磁石が、前記磁気発生機構の各並行ヨーク部の周囲に位置するように配設されていることにある。
【0011】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の磁極を備えたコ字形状の磁気発生機構と一対の永久磁石と磁気探傷シートとが適切な位置関係で配置されているので、磁気発生機構による磁界と一対の永久磁石による直流磁界とを重畳させることにより、より強い磁束密度の磁界を形成することができるとともに、当該磁界の基本的な形状を、磁気発生機構の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
【0012】
説明を加えると、上面視で、磁気発生機構における一対の並行ヨーク部に形成された一対の磁極は、当該一対の磁極間に磁気探傷シートを挟む状態で配設され、一方、一対の永久磁石は、当該一対の永久磁石間に磁気探傷シートを挟むが一対の並行ヨーク部(一対の磁極)を挟まない状態で、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線と並行に、当該並行ヨーク部の周囲に配設されている。この場合、一対の永久磁石を構成する各永久磁石同士は、仮想直線に沿う方向において磁気探傷シートを介して相互に対向して配置される。従って、上面視において、一対の永久磁石間に生じる直流磁界は、主として当該仮想直線に沿う方向に形成され、他方で、磁気発生機構の一対の磁極間に生じる磁界は、主として当該仮想直線上に形成される。
これにより、一対の磁極間及び一対の永久磁石間の仮想直線近傍の被検査対象(主な磁気探傷領域)に、磁気発生機構による磁界と一対の永久磁石による直流磁界とを重畳させた状態で、上面視で仮想直線に沿う方向の磁界(磁束)を作用させることができる。従って、当該仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度が強くなり、当該被検査対象から磁気探傷シートの磁気探傷領域に漏洩する磁束密度を強くすることができる。また、磁気探傷領域に漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
また、磁気探傷シートは、圧力付与手段により被検査対象に押圧され、磁気探傷シートと被検査対象の表面とが密着するように構成されるが、さらに、上面視で、一対の永久磁石が磁気探傷シートを挟んだ状態で上記仮想直線に並行に、かつ並行ヨーク部の周囲に配設されているので、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所において、磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に押圧することができる。
【0013】
よって、磁気探傷シートを使用して磁気発生機構の磁気により磁気探傷する磁気探傷装置において、永久磁石を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートを被検査対象の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象から磁気探傷シート中の感磁体に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該感磁体を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象における欠陥の検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置を得ることができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記圧力付与手段が、透明な樹脂からなる剛体の板状圧着体と、前記磁気発生機構の一対の磁極が発生させる磁気により前記磁極を前記被検査対象に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構と、前記仮想直線に直交する方向において、上面視で前記板状圧着体の一端部に配設される第1圧力付与手段及び他端部に配設される第2圧力付与手段とを備え、当該第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段により前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成され、
前記第1圧力付与手段が前記付勢機構を備え、前記付勢機構から付勢力を受ける前記板状圧着体の一端部は、前記被検査対象に対して接近及び離間する方向に移動自在な状態で、前記板状圧着体の一端部側に配置された前記磁気発生機構に支持されて構成され、
前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段が、上面視で前記仮想直線に対してそれぞれ並行に配置されるとともに、前記板状圧着体及び前記磁気探傷シートが、上面視で前記仮想直線を含む平面と並行で、かつ、前記仮想直線に直交する方向で前記第1圧力付与手段と前記第2圧力付与手段とに亘って配設されていることにある。
【0015】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に直交する方向において、上面視で、板状圧着体の一端側に配設される第1圧力付与手段と他端側に配設される第2圧力付与手段とを設けることにより、板状圧着体を介して磁気探傷シートの全面を被検査対象に押圧して、被検査対象の表面に均一に密着させることができる。
具体的には、仮想直線に直交する方向において、上面視で、板状圧着体の一端部に配設され磁気発生機構に支持される第1圧力付与手段の付勢機構による付勢力、及び、板状圧着体の他端部に配設される第2圧力付与手段による押圧力を、板状圧着体を介して、上面視で仮想直線を含む平面と並行で、かつ、仮想直線と並行に配設された第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段に亘って当該仮想直線と直交する方向に配設された磁気探傷シートに作用させ、当該磁気探傷シートの全面を被検査対象の表面に均一に密着させることができる。
これに加えて、上述したように、仮想直線に沿う方向において、上面視で、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所において、磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に押圧することができる。
なお、上述のとおり、磁気探傷シートが、第1圧力付与手段及び磁気発生機構の存在領域から第2圧力付与手段に亘って、仮想直線に直交する方向に延出して配設されているため、磁気探傷を行う場合に、第1圧力付与手段と第2圧力付与手段との間における延出領域及び当該延出領域を介してコ字形状に形成された磁気発生機構の一対の磁極間の磁気探傷領域を、作業者が容易に観察することができ、非常に使用勝手がよい構成とすることができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、前記板状圧着体、前記板状押圧部材及び前記磁気探傷シートの順に重ねて配設して、前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成されていることにある。
【0017】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、板状圧着体、板状押圧部材及び磁気探傷シートの順に重ねて配設することにより、板状圧着体、板状押圧部材を介して磁気探傷シートの全面を被検査対象に押圧して、凹凸のある被検査対象の表面の検査を良好に行うことができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が二組配設され、各一対の永久磁石が、上面視で、前記一対の並行ヨーク部における前記仮想直線に直交する方向の両側部位にそれぞれ配設されることにある。
【0019】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上面視で、磁気発生機構の一対の並行ヨーク部(一対の磁極)が磁気探傷シートを挟んで配設されるとともに、板状圧着体における一対の並行ヨーク部の両側部位(仮想直線に直交する方向における一方側及び他方側)に、それぞれ一対の永久磁石が磁気探傷シートを挟んだ状態で配設されているので、仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度を、一対の磁極による磁界及び二組の一対の永久磁石による直流磁界を重畳した磁界により形成することができ、より強い磁束密度を得ることができる。また、一対の磁極による磁界及び二組の一対の永久磁石による直流磁界は、上面視で仮想直線に沿って形成されるため、両磁界が錯綜することがなく、被検査対象に作用する磁界(磁束)の磁束密度を良好に強めることができるとともに、被検査対象から磁気探傷シートに漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
さらに、各永久磁石が被検査対象に吸着する吸着力により、仮想直線近傍の磁気探傷シートを、上面視において、仮想直線に沿う方向では、当該仮想直線近傍の領域を挟んだ両側の箇所(2箇所)で、しかも、仮想直線に直交する方向では、並行ヨーク部を挟んだ両側の箇所(2箇所)に亘る、合計4箇所で磁気探傷シートの表面側から被検査対象側に安定的に押圧することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が配設され、当該一対の永久磁石が、上面視で、前記仮想直線上に配設されていることにある。
【0021】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上面視で、磁気発生機構の一対の並行ヨーク部(一対の磁極)が磁気探傷シートを挟んで配設されるとともに、板状圧着体における一対の並行ヨーク部間(一対の磁極間)、すなわち、一対の磁極同士を結ぶ仮想直線上に、一対の永久磁石が配設されているので、仮想直線近傍の被検査対象に作用する磁束密度を、一対の磁極による磁界及び一対の永久磁石による直流磁界を重畳した磁界により形成することができ、より強い磁束密度を得ることができる。また、一対の磁極による磁界及び一対の永久磁石による直流磁界は、上面視で仮想直線に沿って形成されるため、両磁界が錯綜することがなく、被検査対象に作用する磁界(磁束)の磁束密度を良好に強めることができるとともに、被検査対象から磁気探傷シートに漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。
【0022】
本発明の請求項6に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記一対の永久磁石が、前記仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されていることにある。
【0023】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、一対の永久磁石が、仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されているので、一対の永久磁石間において仮想直線に沿う方向に延びる比較的安定した形状の直流磁界を形成することができ、同方向に形成される一対の磁極による磁界と重畳された場合にも、比較的安定した形状の磁界を形成することが可能となる。
【0024】
本発明の請求項7に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記第1圧力付与手段を構成する前記磁気発生機構の前記連結ヨーク部が、操作者が把持可能な中間把持部として構成され、
前記第2圧力付与手段が、前記仮想直線に沿う方向における前記板状圧着体の両端部を連結されるとともに、前記板状圧着体上の空間に設けられる把持部を備えたことにある。
【0025】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、上記した第1圧力付与手段による圧力に加えて、第2圧力付与手段の把持部を操作者が把持した状態で、第2圧力付与手段側を押圧操作することで、板状圧着体、板状押圧部材及び磁気探傷シートを被検査対象の表面側に押付けて、磁気探傷シートの表面への密着度を高めて、磁気探傷を行うことができる。
【0026】
本発明の請求項8に係る磁気探傷装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
前記板状圧着体と前記磁気探傷シートとの間で、前記板状圧着体の広がり方向の複数箇所に、前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段により圧力を作用させて前記磁気探傷シートを前記被検査対象に接触させた状態において前記被検査対象側から前記板状圧着体が受ける圧力を検出する圧力検出手段を設けたことにある。
【0027】
〔作用・効果〕
この構成の磁気探傷装置では、圧力検出手段を備えて、被検査対象と板状圧着体との間で発生している圧力を検出するため、この検出結果に基づいて、適切な圧力がかかった状態を確認して、信頼性の高い検査を行える。なお、例えば、この圧力検出手段が所定値以上の圧力を検出した状態でのみ、磁気探傷シートに現れる感磁体のパターンを写真撮影するように装置構成することで、磁気探傷の自動化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】磁気探傷装置の斜視図
【図2】磁気探傷装置の分解斜視図
【図3】磁気探傷装置の一部切り欠き側面図
【図4】磁気探傷装置の探傷時における一部切り欠き側面図
【図5】磁気探傷装置の上面視図
【図6】磁気探傷装置の制御系を示すブロック回路図
【図7】磁気探傷装置により形成される磁界の概略部分側面図
【図8】磁気探傷シートの上面斜視図
【図9】磁気探傷シートの縦断面図及び横断面図
【図10】別実施形態に係る磁気探傷装置の上面視図
【図11】図10の磁気探傷装置における磁束密度と時間との関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1〜図5に示すように、本発明に係る磁気探傷装置100は、磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体としての磁粉38(図8参照)を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートDと、磁気探傷シートDに対して圧力を作用させることにより磁気探傷シートDを被検査対象1に接触させる圧力付与手段Pと、磁気発生機構Aとを備え、被検査対象1に磁気探傷シートDを接触させた状態において磁気発生機構Aで発生させた磁気を被検査対象1に作用させることにより被検査対象1から漏洩する磁束(磁束の乱れ)を磁気探傷シートDの磁粉38で捉え、当該磁粉38が作り出すパターンに基づいて被検査対象1の探傷を行うように構成されている。
【0030】
上述のように、磁気探傷装置100には、磁気探傷シートDの被検査対象1の表面への密着度を上げるために、磁気探傷シートDに対して圧力を付与する圧力付与手段Pが設けられ、この圧力付与手段Pとして、磁気探傷シートDの一端側に配設される第1圧力付与手段P1と、他端側に配設される第2圧力付与手段P2とが設けられている。
第1圧力付与手段P1は、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力を利用して、磁気探傷シートDを被検査対象1に押圧する。一方、第2圧力付与手段P2は、操作者が押圧することにより、同じく磁気探傷シートDを被検査対象1に押圧する。
【0031】
磁気探傷装置100は、被検査対象1の表面側から、磁気探傷シートD、板状押圧部材C及び板状圧着体4の順に配設して使用するように構成されており、この板状圧着体4の被検査対象1側への押圧は、第1圧力付与手段P1では、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力が付勢機構Bを介して板状圧着体4に伝達されることにより行われ、また、第2圧力付与手段P2では、操作者が押圧操作することで、板状圧着体4に押圧力がそのまま伝達されることにより行われる。
【0032】
検査に際しては、被検査対象1に磁気探傷シートDを接触させた状態で、磁気発生機構Aに通電して、磁気発生機構Aから発生させた磁気を被検査対象1に作用させ、被検査対象1から磁束の乱れである漏洩する磁束を磁気探傷シートDの磁粉38で捉え、この磁粉38が作り出すパターンに基づいて被検査対象1の探傷を行うことができる。
【0033】
本発明の磁気探傷装置100を使用することにより、鉄を代表とする磁性体である被検査対象1の探傷を行うことができる。具体的には、図1、図3に示すように、鉄板材の溶接箇所の余盛り部分1Aや、鉄製の配管の曲面部分の欠陥(クラック等の傷)の検査を行う際に、作業者が磁気探傷装置100を両手で操作して、磁気探傷を行うことができる。尚、この余盛り部分1Aとしては、例えば、幅10mm程度で、被検査対象1の表面から4mm程度の盛り上がり高さを有した一般的な形態のものが検査対象となる。ここで、1Cは、余盛り部分1Aに存在する欠陥を示している。また、磁気探傷装置100は比較的小型で扱いやすく構成されているので、縦壁状となる被検査対象1や、天井壁状のものでも楽に作業を行えるものとなっている。
【0034】
以下、磁気探傷装置100の各箇所についてさらに詳細に説明する。
なお、以下では、例えば、図1に示すように、磁気探傷装置100の奥行方向をX方向とし、横方向をY方向とし、高さ方向をZ方向として説明する場合がある。
【0035】
〔磁気発生機構〕
磁気発生機構Aは、ハンドマグナ(被検査対象の磁化装置)を応用したものであり、図1〜図4に示すように、このハンドマグナに、板状圧着体4、板状押圧部材Cを支持するとともに、被検査対象1側に付勢する付勢機構Bを設けている。
【0036】
具体的には、磁気発生機構Aは、図6に示すように、磁性体からなるヨーク2aを備えた本体部2を有している。ヨーク2aは、それぞれ一方の端部(被検査対象1に接触される側の端部)に磁極3が形成される一対の並行ヨーク部2bと、この一対の並行ヨーク部2bの他方の端部(被検査対象1から離間した側の端部)同士を連結する連結ヨーク部2cとを備えたコ字形状に形成されている。さらに、本体部2には、ヨーク2aの連結ヨーク部2cに巻回されるコイル5、及びこのコイル5に給電するためのケーブル7を備えて構成されている。
【0037】
磁性体で成るヨーク2aに対して銅合金等の良導体のコイル5を巻回することにより、本体部2は電磁石として機能する。さらに、本体部2にはコイル5に対して電源部6からの電流を供給するケーブル7と、電源部6からの電流のオンオフ操作可能な電源スイッチ8と、発光ダイオード(発光体の一例)で成る照明機構9とが設けられている。
【0038】
図6では、発光ダイオードで成る照明機構9を示しているが、照明機構9として蛍光灯やハロゲンランプを用いることが可能であり、又、例えば、電源部6やこの近傍に配置した光源からの光線を磁気発生機構Aの部位まで導く光ファイバーで照明機構9を構成することも可能である。そして、照明機構9として光ファイバーを用いた場合には、磁気発生機構Aの近傍にランプ類を備えずに済み、電力ケーブルを形成しなくて済むので、装置の大型化を抑制できる。
【0039】
又、電源スイッチ8は作業者が本体部2を握って操作する際に指先で押し操作できる位置に配置されている。照明機構9は、光線を透明な板状圧着板4を通過させて磁気探傷シートDを照明する位置に配置されている。これにより、夜間や照明が存在しない屋内でも、磁気探傷シートDの磁粉38が作り出すパターンを明瞭に観察できるものにしている。なお、この照明機構9による概略の照明領域は、図5に示す磁気探傷装置100を上方から見た上面視で、第1圧力付与手段P1及び磁気発生機構Aの配設位置における磁気探傷シートDの上面(主な磁気探傷領域)とされている。
【0040】
電源部6は、商用電源からの交流電流の周波数を高めて(180Hz程度・240Hzが上限)コイル5に供給するようインバータ回路(図示せず)を備え、電源スイッチ8を操作することによりコイル5に対して交流電流を供給し、この交流電流の供給と同時に照明機構9に対して電流を供給するよう機能する。これにより、磁気発生機構Aでは、電源部6から供給された交流電流がコイル5を通流することにより発生する磁気が、一対の並行ヨーク部2b間(一対の磁極3間)に、当該一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1(Y方向)に沿う交流磁界を形成することとなり(図7の破線参照)、一対の磁極3を被検査対象1の表面に接触させ、交流磁界を仮想直線L1に沿って被検査対象1の表面に作用させることができる。なお、当該交流磁界の方向は当該仮想直線L1に沿う方向(Y方向)であるが、交流磁界の向きは交流電流の周波数に応じて、Y方向で交互に逆転する向きに形成される。なお、交流電流の周波数を高める理由は、磁性体に対して交流(交番)磁界が作用する場合には、周波数が高いほど表面近くに磁界が強く作用することが知られており(表皮効果)、この現象を利用して被検査対象1の表面近くの欠陥1Cを発見しやすくするためである。
【0041】
電源部6は、商用電源の周波数で商用電源の周波数から前述した240Hzの範囲内の周波数の交流電流を供給するものであれば、実用上の不都合は無く、供給する電圧は500V以下であることが望ましい。
【0042】
〔板状圧着体〕
板状圧着体4は、図1〜図5に示すように、透明なアクリル樹脂からなる所定の厚みを備えた板状の剛体部材であり(図3及び図4参照)、上面視で概略T字形状に構成され(図5参照)、上面視でX方向(仮想直線L1に直交する方向)における一端側に第1圧力付与手段P1(磁気発生機構Aを含む)が配設され、他端側には第2圧力付与手段P2がそれぞれ並列に配設される。板状圧着体4と第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2との詳細関係は後述する。
【0043】
〔第1圧力付与手段〕
第1圧力付与手段P1は、上記磁気発生機構Aと、磁気発生機構Aの一対の磁極3が発生させる磁気により磁極3を被検査対象1に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構Bとを備え、X方向における板状圧着体4の一端側に配設されている。
具体的には、磁気発生機構Aの一対の並行ヨーク部2bの他方の端部(Z方向において被検査対象1から離間した側の端部)に、一方の端部側(Z方向において磁極3側)から透明なアクリル樹脂製の支持体20が、当該支持体20に形成された挿通孔20aに挿通状態で配置されている。この支持体20は、連結ヨーク部2cの上部と支持体20の上面とに亘って覆設される金属製のブラケット21と、当該ブラケット21を固定連結する係合機構22とにより、磁気発生機構Aの並行ヨーク部2bに係合固定されている。この支持体20の下面に対して付勢機構Bを介して一対の並行ヨーク部2bの一端側(Z方向において被検査対象1に接触する磁極側)に透明なアクリル樹脂製の板状圧着体4が配置され、この板状圧着体4の下面側に透明で柔軟に変形する板状押圧部材Cと、磁気探傷シートDとが重ね合わせ状態で支持されている。なお、支持体20は金属で形成することも可能であるが、金属を用いた場合には、磁気発生機構Aで発生する交流磁界の作用により金属内に誘導電流が発生して発熱することもあり、本実施形態では、この発熱を回避し、しかも、軽量化と視認性を向上させるために透明なアクリル樹脂を使用している。
【0044】
板状圧着体4の一端側(X方向における一端側)は、並行ヨーク部2bの長手方向(Z方向)に沿って移動自在となるように付勢機構Bに支持され、当該並行ヨーク部2bの磁極3は、板状圧着体4に貫通形成された貫通口4aに挿通され、図3に示すように非使用状態では、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1と、磁気探傷シートDの底面との間のZ方向における間隔が距離Sとなるように設定されている。
【0045】
付勢機構Bは、支持体20に形成された4つの通孔pと、板状圧着体4に形成した4つの貫通孔pとに挿通する挿通ボルト25と、支持体20と板状圧着体4との間において、夫々の挿通ボルト25に外嵌した圧縮コイルバネ26とを備えて成り、図3に示す非使用状態においては4本の挿通ボルト25によって板状圧着体4を吊り下げ状態で支持する形態となる。尚、この付勢機構Bでは圧縮コイルバネ26に限らず、弾性的に変形することにより付勢力を得るゴム、あるいは、ガス圧を利用するガススプリングも使用できる。
【0046】
これにより、第1圧力付与手段P1は、磁気発生機構Aにより発生する磁気による吸着力を、付勢機構Bを介して板状圧着体4に伝達する構成となっている。
さらに、第1圧力付与手段P1の磁気発生機構Aは、上述のように、概略コ字形状のヨーク2aを備えた本体部2を備えるため、当該ヨーク2aの連結ヨーク部2cを、操作者が把持可能な中間把持部(図示せず)として構成されている。
【0047】
〔第2圧力付与手段〕
第2圧力付与手段P2は、図1〜図5に示すように、X方向における板状圧着体4の他端側に配設される機構であり、当該板状圧着体4の他端側においてY方向の両側端部から被検査対象1に対して反対側(図1のZ方向のうち上方向)に立設される一対の概略三角形状の支持側板45と、これら一対の支持側板45間に亘って架け渡される把持部46とを備えている。従って、この第2圧力付与手段P2の把持部46は、板状圧着体4の他端側におけるY方向の両側端部を連結するとともに、板状圧着体4上の空間に配設されており、操作者が把持可能な把持部として構成されている。
【0048】
そして、第1圧力付与手段P1の中間把持部及び当該第1付与手段P1の磁気発生機構Aの一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1(Y方向)と、第2圧力付与手段P2の把持部46とは、並行に配設されている。
【0049】
〔板状押圧部材〕
板状押圧部材Cは、柔軟で透明な樹脂フィルムとして0.1〜0.5mm程度のフィルム厚のポリエチレンフィルムやポリビニルフィルムを袋状に成型したバッグ30に対して、ポリビニルアルコールと硼砂とを混合して成る透明なゲル状(スライム状)物質31(水でも良い)、又は、例えば、ポリエチレンとスチレンを共重合させた網状物質を油でゲル化したものを封入したもの、あるいは、バッグ30を使用せずに前記ゲル化したものを直接貼り付けたものであり、全体として透明で柔軟に変形し得るよう構成され、磁気探傷シートDが変形した状態にあっても、板状圧着体4から作用する圧力を均一な圧力で磁気探傷シートDに作用させるよう機能する。図3〜図5に示す例では、板状押圧部材Cは、Z方向において板状圧着体4の下方位置に配設され、X方向において第1圧力付与手段P1の位置から第2圧力付与手段P2の位置まで延設されている。
【0050】
〔磁気探傷シート〕
磁気探傷シートDは、図8及び図9に示すように、柔軟で透明な樹脂フィルムで成る上面側の表面材35と、柔軟な樹脂フィルムで成る下面側の裏面材36とを重ね合わせ、夫々の素材同士の間に繊維をメッシュ状に配置して成るスペーサ37を介在させることで20〜30μm程度の隙間dと成る空間を形成した柔軟なシート状に成形しており、この空間に対して0.1μm程度以上の磁性体で、当該隙間dの値(20〜30μm程度)より充分に小さい粒径となる粒子状の磁粉38(感磁体の一例)と、分散媒として水や灯油等の流動物質f(気体であっても良い)とを封入し、表面材35と裏面材36との外周部を熱溶着の技術や接着剤を用いて接合した密封構造を有している。
【0051】
具体的に説明すると、表面材35と裏面材36とのフィルム厚が0.02〜0.5mm程度のものが使用されており、容器の表面材35は透明であることが必須であるが、多少の着色したものを使用しても良く、裏面材36は透明である必要は無く、着色した樹脂を用いることも可能である。この表面材35と裏面材36としてポリエチレンやポリビニルやPET(polyethylene terephthalate)樹脂の使用が可能であり、又、裏面材36として樹脂フィルムに代えて軟磁性のオーステイトステンレス鋼の箔を使用することも可能である。更に、磁粉38の材料として、鉄やニッケルばかりで無く、マグネタイト、ガンマ・ヘクタイトの使用が可能である。
【0052】
又、スペーサ37として、隙間dと等しい粒径の粒子状のものを表面材35と裏面材36との間に分散させる形態で用いることや、表面材35と裏面材36との間に亘って隙間dを形成し得る複数の柱状の部材を用いることも考えられる。
【0053】
また、磁気探傷シートDは、図5に示すように、上面視で一対の磁極3間において仮想直線L1を含む平面(X方向及びY方向を含む平面)と並行に配設され、Y方向では一対の磁極3間に配設可能な幅に形成されており、X方向では板状圧着体4と同様の奥行き幅を備えて構成されている。即ち、X方向では、磁気探傷シートDは、第1圧力付与手段P1(磁気発生機構A)の位置から第2圧力付与手段P2の位置まで延設されており、当該磁気探傷シートDの両端がそれぞれ、板状圧着体4の上面に引き込まれて固定されている(図1及び図8参照)。
【0054】
具体的に、板状圧着体4に対して板状押圧部材Cと磁気探傷シートDとを支持する際には、板状圧着体4の下面側に板状押圧部材Cと磁気探傷シートDとを重ね合わせ、この磁気探傷シートDのX方向における一対の端部を、それぞれ板状圧着体4の上面まで引き込み、この磁気探傷シートDに対して適度の張力を作用させた状態で、この磁気探傷シートDの一対の端部を固定板40で圧着し、ビス41で固定している(図1参照)。
【0055】
従って、磁気探傷装置100では、第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2から、板状圧着体4、板状押圧部材C及び磁気探傷シートDを被検査対象1側へ押圧して、良好に検査を行えるように構成されている。
【0056】
なお、この磁気探傷シートDは、図5及び図8に示すように、当該磁気探傷シートDの内部を複数の感磁体移動ゾーンD1,D2,D3(図では3つ)に仕切る仕切り39が、Y方向と並行に配設されており、感磁体移動ゾーンD1,D2,D3に亘る磁粉38の移動が阻止されている。具体的には、上面視で、感磁体移動ゾーンD1は第1圧力付与手段P1と重なる位置に、感磁体移動ゾーンD3は第2圧力付与手段P2と重なる位置に、感磁体移動ゾーンD2は第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2と重ならない位置に配置されている。なお、仕切り39は、表面材35と裏面材36とを融着させることでゾーン化を図っている。
【0057】
〔圧力検出手段〕
圧力検出手段Seは、図5に示すように、Z方向における板状圧着体4と磁気探傷シートDとの間(図示する例では、板状圧着体4の下側で板状押圧部材Cとの間)で、上面視で感磁体移動ゾーンD2周りの複数箇所に配設され、第1圧力付与手段P1,第2圧力付与手段P2より圧力を作用させて磁気探傷シートDを被検査対象1に接触させた状態において、被検査対象1側から板状圧着体4が受ける圧力を検出することが可能に構成されている。
この圧力検出手段Seは、圧電素子等の感圧素子とこの感圧素子が感圧する状態で発生する電力により発光する発光素子とを備えて構成されており、一定値以上の圧力が圧力検出手段Seの位置で発生している状態で発光するように構成されている。図5には、感磁体移動ゾーンD2の四辺端位置に圧力検出手段Seを配置していることにより、この感磁体移動ゾーンD2周りで均等に所定の押圧状態を実現できている状態で、圧力検出手段Seが均等に光り、良好な押圧状態が実現できていることが確認できるように構成されている。
【0058】
〔一対の永久磁石〕
本発明の磁気探傷装置100では、さらに、図1〜図7に示すように、板状圧着体4に、一対の永久磁石50,50として一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50B(一対の永久磁石が二組で、合計4つの永久磁石)が配設されている。
【0059】
具体的には、図1〜図7に示すように、一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bの各永久磁石は、上面視で長方形の板部材からなるネオジム磁石で構成されており、長方形の平面部分が接着剤等により板状圧着体4の下面に固着されている(図3及び図4参照)。また、図5に示すように、上面視で、一対の第1永久磁石50A,50Aは、当該一対の第1永久磁石50A,50A同士の間に磁気探傷シートDを挟み、かつ、一対の並行ヨーク部2b(一対の磁極3)を挟まない状態で仮想直線L1(Y方向)と並行に配設され、一対の第2永久磁石50B,50Bも同様に、当該一対の第2永久磁石50B,50B同士の間に磁気探傷シートDを挟み、かつ、一対の並行ヨーク部2b(一対の磁極3)を挟まない状態で仮想直線L1(Y方向)と並行に配設されている。なお、板部材からなる各永久磁石50A,50Bには、長方形の平面部分に、上記付勢機構Bの挿通ボルト25をZ方向に挿通可能な挿通孔51が形成されている(図2参照)。
【0060】
また、一対の第1永久磁石50A,50Aの各永久磁石50Aは、磁気発生機構Aの各並行ヨーク部2bに対してX方向における第2圧力付与手段P2側の部位(磁気探傷シートDの他端側の部位(各並行ヨーク部2bの周囲の一例))に位置するように配設されている。同様に、一対の第2永久磁石50B,50Bの各永久磁石50Bは、磁気発生機構Aの並行ヨーク部2bに対してX方向における第2圧力付与手段P2とは反対側の部位(磁気探傷シートDの一端側の部位(各並行ヨーク部2bの周囲の一例))に位置するように配設されている。
【0061】
さらに、上面視で長方形に形成される板部材からなる各永久磁石50A,50Bは、その長尺となる両側辺を、仮想直線L1(Y方向)に沿うように板状圧着体4の下面に固着されているとともに、各永久磁石50A,50BのY方向における両端部には、それぞれN極とS極が形成され、各永久磁石50A,50BにおけるN極とS極の配設方向は同一となっている。すなわち、図7に示すように、板部材からなる各永久磁石50A,50Bは、その長尺となる両側辺がY方向に沿うとともに、図7における右側にN極、左側にS極が配置され、一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間においてN極からS極(左側から右側)に直流磁界を発生させるように配置されている(図7の実線参照)。なお、図7では、簡単のため、一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間における直流磁界を、各永久磁石50A,50Bよりも下側(Z方向の下側)に形成されるものの一部のみ示している。
【0062】
これにより、一対の磁極3間、さらに一対の第1永久磁石50A,50A間及び一対の第2永久磁石50B,50B間における仮想直線L1近傍の被検査対象1(主な磁気探傷領域)に、磁気発生機構Aによる交流磁界と二組の一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bによる直流磁界とを重畳させた状態で、上面視で仮想直線L1に沿う方向(Y方向)の磁界(磁束)を作用させることができる。従って、当該仮想直線L1近傍の被検査対象1に作用する磁束密度が強くなり、当該被検査対象1から磁気探傷シートDの磁気探傷領域に漏洩する磁束密度を強くすることができる。また、磁気探傷領域に漏洩する磁界(磁束)は、主として当該仮想直線L1に沿う形状となり、比較的単純で明瞭な形状とすることができる。この場合、被検査対象1に欠陥1Cが存在することによる磁気探傷シートDに漏洩する磁束(磁束の乱れ)を容易に判別することができる。
【0063】
また、磁気探傷シートDは、第1圧力付与手段P1及び第2圧力付与手段P2により被検査対象1に押圧され、磁気探傷シートDと被検査対象1の表面とが密着するように構成されるが、さらに、各永久磁石50A,50Bが被検査対象1に吸着する吸着力により、仮想直線L1近傍の磁気探傷シートDを、上面視において、仮想直線L1に沿う方向(Y方向)では、当該仮想直線L1近傍の領域を挟んだ両側の箇所(2箇所)で、しかも、仮想直線L1に直交する方向(X方向)では、並行ヨーク部2bを挟んだ両側の箇所(2箇所)に亘る、合計4箇所で磁気探傷シートDの表面側から被検査対象1側に安定的に押圧することができる。
【0064】
よって、磁気探傷シートDを使用して磁気発生機構Aの磁気により磁気探傷する磁気探傷装置100において、永久磁石50を併用する構成を採用しながら、磁気探傷シートDを被検査対象1の表面に対して均一かつ確実に密着させる構成としつつ、被検査対象1から磁気探傷シートD中の磁粉38に対して漏洩する磁束密度をより強くし、当該磁粉38を適切に移動させて明瞭なパターンを形成させることで、被検査対象1における欠陥1Cの検出精度を、より向上させることが可能な磁気探傷装置100を得ることができる。
【0065】
〔磁気探傷装置を使用した磁気探傷方法〕
この磁気探傷装置100では、被検査対象1として、石油等を貯留するタンク類を構成する鋼板の溶接箇所、あるいは、橋梁等を構成する鋼板の溶接箇所を想定しており、これらの部位の探傷を行う場合には以下のように作業が行われる。例えば、溶接箇所の余盛り部分1Aの部位の探傷を行う場合には、図3に示すように、余盛り部分1Aの部位を跨ぐ位置に一対の磁極3を配置し、かつ、探傷を行うべき部位を覆う位置に磁気探傷シートDを配置した状態で、電源スイッチ8を操作することにより、電源部6からの電流がコイル5に供給されることになり、このコイル5が磁気を発生させて一対の磁極3が被検査対象1に吸着する。
【0066】
このように磁極3が被検査対象1に吸着した場合には、第1圧力付与手段P1側では、図4に示すように、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1と磁気探傷シートDの底面との間の距離S(図3参照)に相当するだけ磁極3が板状圧着体4に対してZ方向に相対移動することになるので、付勢機構Bの圧縮コイルバネ26を圧縮して、この圧縮コイルバネ26からの付勢力を板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
【0067】
一方、第2圧力付与手段P2側では、操作者が押圧することで、この押圧力を、板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
そして、押圧力のかかり具合は、先に説明した圧力検出手段Seの発光状態により確認することができる。
【0068】
加えて、板状圧着体4の下面に設けた各永久磁石50A,50Bの磁界による被検査対象1への吸着力を、板状圧着体4に作用させ、更に、この板状圧着体4からの押圧力を板状押圧部材Cから磁気探傷シートDに作用させ、この磁気探傷シートDを被検査対象1に密着させるものとなる。
【0069】
この密着状態では、溶接部分において余盛り部分1Aが存在しても、その余盛り部分1Aに沿う形状に磁気探傷シートDが変形し、この変形に従うように板状押圧部材Cが変形して、板状圧着体4から圧力を均一の圧力として磁気探傷シートDに作用させる形態となるので、磁気探傷シートDの底面(裏面材36の外面)の全面が被検査対象1の上面に対して隙間なく密着するものとなる。
【0070】
そして、このように磁気探傷シートDが被検査対象1に密着した状態で一対の磁極3と被検査対象1との間で磁気回路が形成されることになるが、この場合、図7に簡単に示すように、磁気発生機構Aにより一対の磁極3同士を結ぶ方向(Y方向)に交流磁界(磁力線)が形成され、同時に、一対の第1永久磁石50A同士及び一対の第2永久磁石50B同士を結ぶ方向(Y方向)に直流磁界(磁力線)がそれぞれ形成されて、両磁界(磁力線)が重畳されることとなる。従って、磁極3同士を結ぶ仮想直線L1近傍には、強い磁束密度の磁界を発生させることができ、当該磁界を被検査対象1に作用させることができ、被検査対象1の余盛り部分1Aの部位に欠陥1Cが存在する場合には、その欠陥1Cの部分でより強い磁束が漏洩して磁気探傷シートDの磁粉38に作用する結果、この漏洩した磁束の方向に沿って磁粉38が列を成すパターンを作り出し、欠陥1Cを視覚的に把握できるものとなる。この際、欠陥1C以外の被検査対象1から漏洩する磁束により形成される磁粉38のパターンは、仮想直線L1に沿って比較的単純で明瞭な形状に形成されているため、欠陥1Cの部位から漏洩する磁束のパターンをより容易に発見することができる。
【0071】
〔仮想直線近傍の磁束密度について〕
上記では、磁気発生機構Aにより一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1に沿う方向(Y方向)に形成される交流磁界(磁力線)と、一対の第1永久磁石50A,50A同士及び一対の第2永久磁石50B,50B同士を結ぶ方向(Y方向)にそれぞれ形成される直流磁界(磁力線)との両磁界(磁力線)が重畳される点について説明したが、実際に当該重畳された磁束密度を計測した結果を、図11に示す。
図11における磁束密度の計測結果(実施例)は、図10に示す構成を備えた磁気探傷装置、すなわち、上面視で、一対の磁極3同士を結ぶ仮想直線L1上に、一対の第3永久磁石50C,50Cを、磁気探傷シートDを挟んだ状態で、かつ、並行ヨーク部2bを挟まない状態で配設し、板部材からなる各永久磁石50Cの長尺の両側辺を仮想直線L1(Y方向)に沿って配設した構成の磁界探傷装置を用いて、一対の磁極3による交流磁界及び一対の第3永久磁石50C,50Cによる直流磁界が重畳された仮想直線L1に沿う磁界を作用させた際において、被検査対象1の表面に作用する磁束密度の計測結果である。また、図11における磁束密度の計測結果(比較例)は、図10の構成の磁気探傷装置において、一対の第3永久磁石50C,50Cを設けずに一対の磁極3のみで仮想直線L1に沿う交流磁界を発生させた際において、被検査対象1の表面に作用する磁束密度の計測結果である。なお、磁束密度の測定位置は、被検査対象1の表面における仮想直線L1上で、一対の磁極3間の略中間位置とした。
【0072】
結果、図11から判明するように、比較例では、磁束密度の範囲が、−10mT程度〜10mT程度の範囲であるのに対し、一対の第3永久磁石50C,50Cを設けた実施例では、磁束密度の範囲が、50mT程度〜70mT程度の範囲にまで強まっている。従って、一対の第3永久磁石50C,50Cを適切な位置に配設することにより、一対の磁極3間の被検査対象1に作用する磁束密度を、一対の磁極3のみによる磁束密度と比較して、より強くできることが実際に確認できた。従って、被検査対象1に作用する磁束密度を強くして、被検査対象1(欠陥1Cを含む)から漏洩する磁束をより強くすることができ、欠陥1Cの検出精度を向上させることができた。
なお、この結果より、上述のように一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bを適切な位置に配設した場合には、一対の第3永久磁石50C,50Cを配置した場合と同等或いはその倍以上の強い磁束密度を被検査対象1に作用させることができ、被検査対象1(欠陥1Cを含む)から漏洩する磁束をより強くして、欠陥1Cの検出精度を向上させることができると考えられる。
【0073】
〔別実施形態〕
本発明は上記実施の形態以外に、例えば、以下のように構成することも可能である。なお、この別実施の形態では実施の形態と同じ機能を有するものには、実施の形態と共通の番号、符号を付している。
【0074】
(1)上記の実施の形態では、一対の永久磁石50,50として、一対の第1永久磁石50A,50A及び一対の第2永久磁石50B,50Bを設ける構成、一対の第3永久磁石50C,50Cを設ける構成について説明したが、これら一対の第1〜第3永久磁石を設ける際の組合せについては適宜選択することができる。例えば、第1〜第3永久磁石の全てを配設する構成としてもよい。また、三組以上の一対の永久磁石を設ける構成としてもよい。
【0075】
(2)上記実施の形態では、一対の永久磁石の各永久磁石50A,50B,50Cとして、長尺の板部材を用いて説明したが、一対の磁極3による当該磁極3同士を結ぶ仮想直線L1近傍の磁界を強めることができ、当該仮想直線L1近傍に発生する磁界のパターンを明瞭にすることができるものであれば、この構成に限定されるものではない。例えば、長尺の長方体や立方体等からなる各永久磁石を採用することができる。
【0076】
(3)上記実施の形態では、一対の永久磁石の各永久磁石50A,50B,50Cとして、ネオジム磁石を用いて説明したが、自然状態で永久磁石間に磁界を発生することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0077】
(4)上記実施の形態では、各永久磁石50A,50B,50Cを板状圧着体4の下面に接着剤により固着したが、板状圧着体4への取付け方法については、特に制限されるものではない。例えば、板状圧着体4の下面に一対の取付凹部を形成し、当該取付凹部に板部材又は長方体からなる各永久磁石を嵌合し、付勢機構Bの挿通ボルト25により固定する構成としてもよい。
【0078】
(5)上記実施の形態では、圧力検出手段を、上面視で、第1圧力付与手段P1と第2圧力付与手段P2の間に形成される感磁体移動ゾーンD2の周部における四隅に配置する構成を示したが、その個数、位置を問うものではなく、さらに、板状圧着体4の四隅に対応した位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 被検査対象
1A 余盛り部分
1C 欠陥
2 本体部(磁気発生機構)
2a ヨーク
2b 並行ヨーク部
2c 連結ヨーク部
3 磁極
4 板状圧着体
5 コイル
38 磁粉(感磁体)
46 把持部
50 一対の永久磁石
50A 一対の第1永久磁石
50B 一対の第2永久磁石
50C 一対の第3永久磁石
100 磁気探傷装置
A 磁気発生機構
B 付勢機構
C 板状押圧部材
D 磁気探傷シート
P 圧力付与手段
P1 第1圧力付与手段
P2 第2圧力付与手段
L1 仮想直線
Se 圧力検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、前記磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより前記磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、前記被検査対象に前記磁気探傷シートを接触させた状態において前記磁気発生機構で発生させた磁気を前記被検査対象に作用させることにより前記被検査対象から漏洩する磁束を前記磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて前記被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置であって、
前記磁気発生機構が、それぞれ一方の端部に磁極が形成される一対の並行ヨーク部と、前記一対の並行ヨーク部の他方の端部同士を連結する連結ヨーク部とを備えた磁性体からなるコ字形状のヨークを備え、前記連結ヨーク部に巻回されたコイルに通電することで、前記一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う方向に磁界を発生させるように構成され、
前記磁気探傷シートが、上面視で前記一対の磁極間において前記仮想直線を含む平面と並行に配設され、
少なくとも一対の永久磁石が、当該一対の永久磁石間に前記磁気探傷シートを挟み、かつ、前記一対の並行ヨーク部を挟まない状態で前記仮想直線と並行に配設されるとともに、各永久磁石が、前記磁気発生機構の各並行ヨーク部の周囲に位置するように配設されている磁気探傷装置。
【請求項2】
前記圧力付与手段が、透明な樹脂からなる剛体の板状圧着体と、前記磁気発生機構の一対の磁極が発生させる磁気により前記磁極を前記被検査対象に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構と、前記仮想直線に直交する方向において、上面視で前記板状圧着体の一端部に配設される第1圧力付与手段及び他端部に配設される第2圧力付与手段とを備え、当該第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段により前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成され、
前記第1圧力付与手段が前記付勢機構を備え、前記付勢機構から付勢力を受ける前記板状圧着体の一端部は、前記被検査対象に対して接近及び離間する方向に移動自在な状態で、前記板状圧着体の一端部側に配置された前記磁気発生機構に支持されて構成され、
前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段が、上面視で前記仮想直線に対してそれぞれ並行に配置されるとともに、前記板状圧着体及び前記磁気探傷シートが、上面視で前記仮想直線を含む平面と並行で、かつ、前記仮想直線に直交する方向で前記第1圧力付与手段と前記第2圧力付与手段とに亘って配設されている請求項1に記載の磁気探傷装置。
【請求項3】
前記圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、前記板状圧着体、前記板状押圧部材及び前記磁気探傷シートの順に重ねて配設して、前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成されている請求項2に記載の磁気探傷装置。
【請求項4】
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が二組配設され、各一対の永久磁石が、上面視で、前記一対の並行ヨーク部における前記仮想直線に直交する方向の両側部位にそれぞれ配設される請求項2又は3に記載の磁気探傷装置。
【請求項5】
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が配設され、当該一対の永久磁石が、上面視で、前記仮想直線上に配設されている請求項2又は3に記載の磁気探傷装置。
【請求項6】
前記一対の永久磁石が、前記仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されている請求項2〜5の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【請求項7】
前記第1圧力付与手段を構成する前記磁気発生機構の前記連結ヨーク部が、操作者が把持可能な中間把持部として構成され、
前記第2圧力付与手段が、前記仮想直線に沿う方向における前記板状圧着体の両端部を連結されるとともに、前記板状圧着体上の空間に設けられる把持部を備えた請求項2〜6の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【請求項8】
前記板状圧着体と前記磁気探傷シートとの間で、前記板状圧着体の広がり方向の複数箇所に、前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段により圧力を作用させて前記磁気探傷シートを前記被検査対象に接触させた状態において前記被検査対象側から前記板状圧着体が受ける圧力を検出する圧力検出手段を設けた請求項2〜7の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【請求項1】
磁束密度に対応したパターンを形成する感磁体を封入したシート状又は袋状で柔軟な磁気探傷シートと、前記磁気探傷シートに対して圧力を作用させることにより前記磁気探傷シートを被検査対象に接触させる圧力付与手段と、磁気発生機構とを備え、前記被検査対象に前記磁気探傷シートを接触させた状態において前記磁気発生機構で発生させた磁気を前記被検査対象に作用させることにより前記被検査対象から漏洩する磁束を前記磁気探傷シートの感磁体で捉え、当該感磁体が作り出すパターンに基づいて前記被検査対象の探傷を行うように構成されている磁気探傷装置であって、
前記磁気発生機構が、それぞれ一方の端部に磁極が形成される一対の並行ヨーク部と、前記一対の並行ヨーク部の他方の端部同士を連結する連結ヨーク部とを備えた磁性体からなるコ字形状のヨークを備え、前記連結ヨーク部に巻回されたコイルに通電することで、前記一対の磁極同士を結ぶ仮想直線に沿う方向に磁界を発生させるように構成され、
前記磁気探傷シートが、上面視で前記一対の磁極間において前記仮想直線を含む平面と並行に配設され、
少なくとも一対の永久磁石が、当該一対の永久磁石間に前記磁気探傷シートを挟み、かつ、前記一対の並行ヨーク部を挟まない状態で前記仮想直線と並行に配設されるとともに、各永久磁石が、前記磁気発生機構の各並行ヨーク部の周囲に位置するように配設されている磁気探傷装置。
【請求項2】
前記圧力付与手段が、透明な樹脂からなる剛体の板状圧着体と、前記磁気発生機構の一対の磁極が発生させる磁気により前記磁極を前記被検査対象に吸着させる吸着力によって付勢力を発生させる付勢機構と、前記仮想直線に直交する方向において、上面視で前記板状圧着体の一端部に配設される第1圧力付与手段及び他端部に配設される第2圧力付与手段とを備え、当該第1圧力付与手段及び第2圧力付与手段により前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成され、
前記第1圧力付与手段が前記付勢機構を備え、前記付勢機構から付勢力を受ける前記板状圧着体の一端部は、前記被検査対象に対して接近及び離間する方向に移動自在な状態で、前記板状圧着体の一端部側に配置された前記磁気発生機構に支持されて構成され、
前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段が、上面視で前記仮想直線に対してそれぞれ並行に配置されるとともに、前記板状圧着体及び前記磁気探傷シートが、上面視で前記仮想直線を含む平面と並行で、かつ、前記仮想直線に直交する方向で前記第1圧力付与手段と前記第2圧力付与手段とに亘って配設されている請求項1に記載の磁気探傷装置。
【請求項3】
前記圧力付与手段が、透明で変形自在な板状押圧部材を備え、前記板状圧着体、前記板状押圧部材及び前記磁気探傷シートの順に重ねて配設して、前記板状圧着体を押圧して前記磁気探傷シートを前記被検査対象に押圧させるように構成されている請求項2に記載の磁気探傷装置。
【請求項4】
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が二組配設され、各一対の永久磁石が、上面視で、前記一対の並行ヨーク部における前記仮想直線に直交する方向の両側部位にそれぞれ配設される請求項2又は3に記載の磁気探傷装置。
【請求項5】
前記板状圧着体に前記一対の永久磁石が配設され、当該一対の永久磁石が、上面視で、前記仮想直線上に配設されている請求項2又は3に記載の磁気探傷装置。
【請求項6】
前記一対の永久磁石が、前記仮想直線に沿う方向に沿って長尺となる長方体又は板部材で構成されている請求項2〜5の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【請求項7】
前記第1圧力付与手段を構成する前記磁気発生機構の前記連結ヨーク部が、操作者が把持可能な中間把持部として構成され、
前記第2圧力付与手段が、前記仮想直線に沿う方向における前記板状圧着体の両端部を連結されるとともに、前記板状圧着体上の空間に設けられる把持部を備えた請求項2〜6の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【請求項8】
前記板状圧着体と前記磁気探傷シートとの間で、前記板状圧着体の広がり方向の複数箇所に、前記第1圧力付与手段及び前記第2圧力付与手段により圧力を作用させて前記磁気探傷シートを前記被検査対象に接触させた状態において前記被検査対象側から前記板状圧着体が受ける圧力を検出する圧力検出手段を設けた請求項2〜7の何れか一項に記載の磁気探傷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−202769(P2012−202769A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66396(P2011−66396)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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