説明

磁気異方性垂直磁化膜及びその形成方法並びに磁気記録媒体及びその製造方法

【解決手段】第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上に、合金で構成された磁化膜を成膜し、該磁化膜の成膜中又は成膜後に、上記下地層及び磁化膜を加熱する磁気異方性垂直磁化膜の形成方法。
【効果】本発明の磁気異方性垂直磁化膜は、垂直磁気記録媒体材料、熱アシスト磁気記録媒体材料等として非常に有用であり、例えば、600ギガビット/平方インチ以上の面記録密度を可能とする磁気ストレージ用磁性材料としての応用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度磁気記録媒体材料等として有用な磁気異方性垂直磁化膜及びその形成方法、並びにこの磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い磁気異方性を有する薄膜は、磁気記録デバイスやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用微小磁石等への応用から、極めて重要である。特に、膜面に対して垂直方向に磁化容易軸をもつ薄膜は、高密度の磁気記録媒体としての応用が期待される。永久磁石材料として著名なサマリウムとコバルトからなるSmCo5合金は、極めて高い一軸性の結晶磁気異方性を示し、バルク合金の場合には、その磁気異方性定数Kuが1.1×108erg/cm3から2.0×108erg/cm3にも達する。
【0003】
SmCo5薄膜に関して、面内磁気異方性を示すものの研究は過去に多数行われているが、垂直磁気異方性を有するSmCo5結晶性薄膜の報告は見られていなかった。例えば、Chenらは、アルゴンガス高圧条件下においてスパッタリング成膜したSmCo膜に対して、250℃以上の高温のポストアニールを施すことにより、垂直磁気異方性の発現を報告している(非特許文献1:Chen K. 他, Journal of Applied Physics, 第73巻, p. 5923-5925)。しかしながら、この膜はアモルファス構造を示し、SmCo5相の形成は確認されていない。Neuらは、レーザーアブレーション(PLD)法で、アルゴンガス雰囲気下で成膜を行うことにより、SmCo5薄膜に垂直磁気異方性を付与することが可能であると報告しているが、その実際の磁気特性はほぼ等方的なものである(非特許文献2:Neu V. 他, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 第242-245巻, p. 1290-1293)。
【0004】
本発明者らは、SmとCoとを交互に成膜した膜(Co/Sm積層膜)を適切な下地層(Cuなど)の上に形成するというユニークな方法にて、垂直磁気異方性を有するSmCo5薄膜の作製を可能としている(特許文献1:特開2005−109431号公報、非特許文献3:J. Sayama 他, Journal of Applied Physics Letter, 第85巻, p. 5640-5642、非特許文献4:J. Sayama 他, J. Phys. D, Appl. Phys., 第37巻, p. L1-L4、非特許文献5:J. Sayama 他, J. Magn. Magn. Mater., 第301巻, p. 271-278、非特許文献6:J. Sayama 他, IEEE Trans. Magn., 第41巻, p. 3133-3135)。しかしながら、将来の高磁気記録媒体にこのような膜を適用するためには、SmCo5のもつ高い磁気的な交換結合力の影響を低減させることがより望ましい環境にあった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−109431号公報
【特許文献2】特開2004−111050号公報
【非特許文献1】Chen K. 他, Journal of Applied Physics, 第73巻, p. 5923-5925
【非特許文献2】Neu V. 他, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 第242-245巻, p. 1290-1293
【非特許文献3】J. Sayama 他, Journal of Applied Physics Letter, 第85巻, p. 5640-5642
【非特許文献4】J. Sayama 他, J. Phys. D, Appl. Phys., 第37巻, p. L1-L4
【非特許文献5】J. Sayama 他, J. Magn. Magn. Mater., 第301巻, p. 271-278
【非特許文献6】J. Sayama 他, IEEE Trans. Magn., 第41巻, p. 3133-3135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気記録媒体の高記録密度化に向けて、近年さまざまな高い磁気異方性を有する材料の適用が図られている。SmCo5合金は、1.1×108erg/cm3を超える極めて高い一軸結晶磁気異方性定数(Ku)を有することから、高密度磁気記録媒体として有望な材料といえる。
【0007】
これまで我々は、Cu/Ti下地層の適用により、高い垂直な磁気異方性を示すSmCo5薄膜の開発に成功した。しかし、この薄膜を磁気記録媒体記録層へ応用するためには、更なる媒体ノイズの低減が必須である。磁気記録媒体の記録層から生じるノイズは、主に磁化膜を構成する粒子間の相互作用に起因すると考えられている。この磁性粒子間相互作用を低減するには、いわゆるグラニュラ型媒体が有効であることが知られている。グラニュラ型媒体は、酸化物を結晶粒子界面に偏析させることで、磁性粒子間を磁気的・物理的に分離した構造を有する媒体として知られ、近年、さまざまな材料への適用が試みられている。しかしながら、グラニュラ型媒体の成膜法として一般的である、酸化物の磁化膜中への直接添加は、効果的ではなく、新たな手法で本薄膜をグラニュラ化することが必要であると考えた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高密度磁気記録媒体用等として有用な高い垂直磁気異方性を示す磁気異方性垂直磁化膜及びその形成方法、並びにこの磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ね、添加元素を磁化膜であるSmCo合金層中へ添加した場合と比べて、Cu下地層中へ添加したときの垂直磁気異方性の劣化が小さいことを知見した。また、Cuと金属酸化物とのコスパッタ成膜により、グラニュラ膜を作製できることから、Cu下地層中に金属酸化物を添加し、Cu下地層をグラニュラ化し、このグラニュラ化した下地層上に磁化膜であるSmCo合金層を形成したとき、SmCo5結晶粒子間に非結晶領域が形成され、SmCo合金の磁化膜が磁気的に分断されることを知見した。加えて、下地層の結晶配向性、及び下地層からSmCo合金への拡散が、SmCo5の結晶化及びSmCo5の配向制御に重要な役割を果たすことを知見した。
【0010】
そして、更に検討を重ねた結果、第1金属又はその化合物の相中に、第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する磁気異方性垂直磁化膜が、また、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上、特に上記グラニュラ下地層上に、合金で構成された磁化膜を成膜し、磁化膜の成膜中又は成膜後に、下地層及び磁化膜を加熱することにより形成した磁気異方性垂直磁化膜が、高い垂直磁気異方性を有し、また、保磁力等の磁気特性にも優れ、ノイズの低減も可能であることから、垂直磁気記録媒体の記録層として有効に用いることができるものであることを見出した。
【0011】
そして、このような垂直磁気記録媒体を有する磁気記録媒体として、基体上に軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに形成され、第1金属又はその化合物の相中に、第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層と、グラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する磁気異方性垂直磁化膜とを備える磁気記録媒体が、また、基体上に、軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層、特に上記グラニュラ下地層を形成し、次いで、合金で構成された磁化膜を成膜し、磁化膜の成膜中又は成膜後に、下地層及び磁化膜を加熱することにより製造した磁気記録媒体が、優れた磁気記録性能を備えるものとなることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の磁気異方性垂直磁化膜、磁気記録媒体、磁気異方性垂直磁化膜の形成方法、及び磁気記録媒体の製造方法を提供する。
(1) 第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上に、合金で構成された磁化膜を成膜し、該磁化膜の成膜中又は成膜後に、上記下地層及び磁化膜を加熱することを特徴とする磁気異方性垂直磁化膜の形成方法。
(2) 上記下地層を、上記第1金属又はその化合物のターゲットと、上記第2金属のターゲットとを用いたコスパッタリングにより形成することを特徴とする(1)記載の形成方法。
(3) 上記磁化膜を、スパッタリングにより成膜することを特徴とする(2)記載の形成方法。
(4) 上記第2金属が、上記磁化膜を構成する合金に拡散可能な金属を含むことを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の形成方法。
(5) 上記第1金属が、Ta、Si又はMgであり、上記化合物が酸化物であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の形成方法。
(6) 上記第2金属が、Cu、Ag、Ti、Bi又はそれらの合金であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の形成方法。
(7) 上記磁化膜を構成する合金が、SmCo、FePt、CoPt又はCoCrPt合金であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の形成方法。
(8) 上記下地層が、第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の形成方法。
(9) (1)乃至(8)のいずれかに記載の形成方法により磁気異方性垂直磁化膜を成膜して磁気記録媒体を製造する方法であって、
基体上に、軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層を形成し、次いで、合金で構成された磁化膜を成膜し、該磁化膜の成膜中又は成膜後に、上記下地層及び磁化膜を加熱することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(10) 第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、上記合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有することを特徴とする磁気異方性垂直磁化膜。
(11) 上記磁化膜を構成する合金の結晶粒子の各々が、上記磁化膜を構成する非結晶の合金相中で孤立分散していることを特徴とする(10)記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(12) 上記磁化膜を構成する合金の結晶粒子が、該結晶粒子を取り囲む、磁化膜を構成する非結晶の合金相より高い磁気異方性を有することを特徴とする(10)又は(11)記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(13) 上記第2金属が、上記磁化膜を構成する合金に拡散可能な金属を含むことを特徴とする(10)乃至(12)のいずれかに記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(14) 上記第1金属が、Ta、Si又はMgであり、上記化合物が酸化物であることを特徴とする(10)乃至(13)のいずれかに記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(15) 上記第2金属が、Cu、Ag、Ti、Bi又はそれらの合金であることを特徴とする(10)乃至(14)のいずれかに記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(16) 上記磁化膜を構成する合金が、SmCo、FePt、CoPt又はCoCrPt合金であることを特徴とする(10)乃至(15)のいずれかに記載の磁気異方性垂直磁化膜。
(17) (10)乃至(16)のいずれかに記載の磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体であって、
基体上に軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに形成され、第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層と、
該グラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、上記合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する磁気異方性垂直磁化膜とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気異方性垂直磁化膜は、垂直磁気記録媒体材料、熱アシスト磁気記録媒体材料等として非常に有用であり、例えば、600ギガビット/平方インチ以上の面記録密度を可能とする磁気ストレージ用磁性材料としての応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の磁気異方性垂直磁化膜は、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上、好ましくは第1金属又はその化合物の相中に、第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層上に形成される。また、磁気異方性垂直磁化膜自体も、非結晶の合金の相中に、合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する。
【0015】
また、本発明の磁気記録媒体は、基体上に軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに形成され、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層、好ましくは第1金属又はその化合物の相中に、第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層と、下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、上記合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する磁気異方性垂直磁化膜とを備える。
【0016】
図1に本発明の磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体の一例の模式図を示す。この場合、下地層(グラニュラ下地層)1は、第2金属の相(例えば、Cu相など)11中に、第1金属又はその化合物の粒子(例えば、Ta25粒子など)12が分散した構造のグラニュラ構造を有している。この下地層(グラニュラ下地層)の第1金属又はその化合物の相は、結晶相であっても非結晶相(アモルファス相)であってもよく、第2金属の相も、結晶相であっても非結晶相(アモルファス相)であってもよい。また、この下地層のグラニュラ構造において分散している粒子は、柱状、針状等の異方形状であることが好ましく、特に、長手方向が、下地層の厚さ方向に沿って配向していることが好ましい。
【0017】
また、図1に示される磁気異方性垂直磁化膜2は、下地層(グラニュラ下地層)1上に形成されており、非結晶(アモルファス)の合金(例えば、SmCo合金など)の相21中に、上記合金の結晶粒子22が分散したグラニュラ構造を有している。磁気異方性垂直磁化膜の結晶粒子は、図1に示されるように、柱状、針状等の異方形状であることが好ましく、特に、長手方向が、磁化膜の厚さ方向に沿って配向していることが好ましい。更に、磁化膜を構成する個々の結晶粒子が、磁化膜を構成する非結晶の合金相中で孤立分散(独立して分散)している構造であることが好ましい。なお、図1では、下地層(グラニュラ下地層)1が、第2金属の相11中に、第1金属又はその化合物の粒子12が分散した構造のグラニュラ構造のものを示したが、下地層(グラニュラ下地層)1のグラニュラ構造が、第1金属又はその化合物の相11中に、第2金属の粒子12が分散した構造のものであってもよい。
【0018】
また、図1は、磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体を示しているが、図1中、3は基板であり、この場合は、下地層(グラニュラ下地層)1と基板3との間には密着層(例えば、Ti、Ti合金など)4が設けられている。
【0019】
本発明の磁気異方性垂直磁化膜は、グラニュラ型と呼ばれる高い一軸磁気異方性(Ku)値を示す微細な磁性粒子(具体的には、合金の結晶粒子)と、その磁性粒子より小さなKu値を示す物質(具体的には、非結晶の合金相)に取り囲まれた構造(具体的には、磁化膜を構成する合金の結晶粒子が、結晶粒子を取り囲む、磁化膜を構成する非結晶の合金相より高い磁気異方性を有する構造)とすることで、垂直記録媒体の磁気的交換結合の影響を低減することができる。また、グラニュラ構造を有する下地層の存在により、その上方に位置する磁化膜もグラニュラ化しており、グラニュラ構造に対応した優れた磁気的性質が、磁化膜に付与されている。
【0020】
下地層(グラニュラ下地層)を構成する第1金属としては、Ta、Si、Mgなどが挙げられる。また、第1金属の化合物としては、酸化物が好適である。第1金属又はその化合物としては、特に、第2金属よりも熱的に安定なものが好ましく、また、磁気異方性垂直磁化膜の合金成分との反応性が低いもの(実質的に反応しないもの)が好ましい。より具体的には、Ta25、SiO2、MgOなどが挙げられる。また、第2金属としては、Cu、Ag、Ti、Bi、それらの合金(例えばTiCr等)などが挙げられるが、磁気異方性垂直磁化膜を構成する合金に拡散可能な金属を含んでいることが好ましい。なお、第2金属の粒子には、後述する下地層(グラニュラ下地層)の第2金属の拡散に起因して混入した、磁化膜を構成する合金を構成する金属成分が含まれていてもよい。
【0021】
下地層(グラニュラ下地層)の膜厚は、1〜1000nm、特に3〜50nmであることが好ましい。また、下地層(グラニュラ下地層)中の第1金属及びその化合物と、第2金属との比率は、(第2金属)/(第1金属又はその化合物)=0.1〜500(モル比)、特に0.5〜50(モル比)、とりわけ1〜10(モル比)とすることが好ましい。
【0022】
一方、磁気異方性垂直磁化膜を構成する合金としては、SmCo合金、FePt合金、CoPt合金、CoCrPt合金などが挙げられる。これら合金は、上記した構成元素のみからなる合金のほか、更に添加元素、例えば、C、N、B、Pなどを含むものであってもよい。なお、磁気異方性垂直磁化膜の非結晶の合金の相、合金の結晶粒子又はそれらの双方には、後述する下地層(グラニュラ下地層)の第2金属の拡散に由来する第2金属が含まれていてもよい。磁気異方性垂直磁化膜の膜厚は、1〜300nm、特に5〜100nmであることが好ましい。また、磁気異方性垂直磁化膜を構成する合金が、SmCo合金の場合、下地層(グラニュラ下地層)を構成する第2金属としてCu又はその合金が特に好ましく、FePt合金の場合は、第2金属としてAg、Ti、Bi又はその合金、CoPt合金の場合は、第2金属としてAg又はその合金、CoCrPt合金の場合は、Ti又はその合金(特にTiCr)がそれぞれ特に好ましい。
【0023】
更に、基体(基板)と下地層(グラニュラ下地層)との間に、Ti、Ti合金などの密着層を設ける場合は、特に基板と密着層との間に、例えば厚さ50〜1000nm程度の、CoZrNb、CoTaZr、CoNiFe、NiFe、NiTaZr、FeTaN、FeTaC、FeC、FeAlSi、FeSiなどの軟磁性裏打ち層を設けてもよい。また、磁気異方性垂直磁化膜上に、保護層、潤滑膜などを設けることもできる。なお、基体(基板)としては、ガラス基板、Si基板、熱酸化Si基板、Al23基板、MgO基板、NiP/Al基板などを用いることができる。また、密着層は、厚さ1〜100nm、特に3〜30nmとすることが好ましい。
【0024】
本発明において、磁気異方性垂直磁化膜は、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上に、合金で構成された磁化膜を成膜し、磁化膜の成膜中又は成膜後に、下地層及び磁化膜を加熱することにより形成することができる。
【0025】
磁気異方性垂直磁化膜の成膜に先立ち、まず、下地層を形成する。下地層は、基体上に直接、又は基板上に設けられた他の膜(例えば、密着層、軟磁性裏打ち層など)の上に形成することができる。下地層は、上述したような第1金属又はその化合物と、上述したような第2金属との混合物として形成すればよい。このような混合物からなる層は、例えば、スパッタリング、特に、第1金属又はその化合物のターゲットと、第2金属のターゲットとを用いたコスパッタリングにより形成することができる。
【0026】
スパッタリングによる下地層の形成は、加熱等の更なる処理をすることなく、グラニュラ構造を含むものとして形成することができる点において優れている。また、第1金属及びその化合物と、第2金属とが、互いに固溶しないものとすることにより、両者は互いに混じり合うことがなく、実質的に合金化を引き起こすことなく層を形成することができる。混合物中の第1金属及びその化合物と、第2金属との比率を、例えば、上述した比率で適宜設定することにより、下地層を形成することができる。更に、下地層を形成した後、必要に応じて、例えば100〜1000℃、特に200〜500℃の温度で、0.1〜5時間、特に0.2〜1時間加熱することが可能であり、これにより、下地層の配向性、特に結晶配向性をより向上させ、第2金属の粒子、特に結晶粒子がより分散したグラニュラ構造を形成することができる。
【0027】
下地層のスパッタリングは、Ar等の不活性ガス雰囲気の、例えば1〜300mTorr(1Torrは約133Paである)程度の減圧下で、混合物中の第1金属及びその化合物と、第2金属との比率に合わせて、各ターゲットへの印加電力を設定して実施すればよい。なお、スパッタリング方式としては、例えばDCマグネトロンスパッタリング方式を用いることが可能である。
【0028】
次に、この下地層上に、上述したような合金で構成された磁化膜を成膜する。この磁化膜の成膜は、下地層上に直接(他の膜を介さずに)成膜することが好ましい。磁化膜は、例えば、スパッタリング、蒸着、分子線エピタキシー、PLD等の気相めっき法で成膜することができるが、特に、スパッタリングによって成膜することが好ましい。
【0029】
合金で構成された磁化膜をスパッタリングで成膜する場合、合金を構成する個々の金属のターゲットを用いてコスパッタする方法、合金を構成する金属を複数含む合金又は混合物のターゲットを用いる方法のいずれでもよい。更には、合金を構成する個々の金属のターゲットを用い、各金属を順次成膜、例えば、各々の金属を複数の層として交互に成膜し、積層膜として成膜する方法でもよい。
【0030】
例えば、合金を構成する個々の金属のターゲットを用い、各金属を順次成膜、例えば、各々の金属を複数の層として交互に成膜し、積層膜として成膜する方法の場合、例えば、SmCo合金を用いる場合であれば、Smターゲット及びCoターゲットの各々のターゲットに印加する電力量や各々のターゲットのスパッタリング時間を適宜調整することにより、Sm層及びCo層の厚さを調整することができる。この場合、特に、Smターゲットでスパッタリングしたときに積層されるSm層の平均の厚さを0.05〜5nm、特に0.1〜1nm、Coターゲットでスパッタリングしたときに積層されるCo層の平均の厚さを0.05〜5nm、特に0.1〜1nmとすることが好ましい。また、Sm層及びCo層の積層数(Sm層及びCo層の積層サイクル(Sm層及びCo層の積層数の合計の1/2が積層サイクルに相当する))は、形成する膜厚に合わせて適宜選定することができ、Sm層及びCo層の合計として4〜600層、特に20〜300層とすることができる。
【0031】
磁化膜のスパッタリングは、Ar等の不活性ガス雰囲気の、例えば1〜300mTorr程度の減圧下で、各ターゲットへの印加電力を適宜設定して実施すればよい。なお、スパッタリング方式としては、例えばDCマグネトロンスパッタリング方式を用いることが可能である。
【0032】
この磁化膜の成膜においては、例えば、200〜600℃、特に200〜300℃の温度で加熱しながら成膜することが好ましい。具体的には、例えば、下地層を形成し、磁化膜の成膜開始後に、下地層と共に磁化膜を加熱すればよく、例えば、下地層を基板上に形成した場合は、基板を加熱することにより可能である。この加熱は、磁化膜の成膜後に実施してもよく、成膜後の加熱は、成膜中の加熱の有無にかかわらず実施することができる。成膜後に加熱処理する場合、上記した成膜中の加熱温度範囲で、例えば、0.2〜2時間とすることができる。
【0033】
下地層、特にグラニュラ構造を有する下地層上へ、磁化膜を成膜し、磁化膜の成膜中又は成膜後に加熱することにより、非結晶の合金の相中に、合金の結晶粒子が分散したグラニュラ構造を有する磁化膜を形成することができる。また、特に、下地層に含まれる第2金属が、磁化膜の合金に拡散可能な金属を含む場合、この金属が磁化膜の合金へ拡散し、より高いKuを有する結晶粒子を形成できることから好ましい。
【0034】
また、磁化膜のグラニュラ構造が形成された後は、磁気異方性垂直磁化膜の結晶粒子は、非結晶の合金相で取り囲まれた構造となる。この構造は、例えば、下地層がグラニュラ化することで、Cuが磁性層中へ拡散する部分が限られることとなり、Cuが存在する部分は、Cuの拡散が進行してSmCo5結晶となり、Cuが存在しない部分は結晶化しにくいため非結晶として存在することとなり、その結果として、磁化膜が、高Kuの結晶相粒子と、その周囲を結晶相粒子より小さなKuを示す非結晶の合金相が取り囲むグラニュラ型構造となるものと考えられる。
【0035】
また、磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体を製造する場合は、基体上に、軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層を形成し、次いで、合金で構成された磁化膜を成膜し、磁化膜の成膜中又は成膜後に、下地層及び磁化膜を加熱することにより形成することができる。
【0036】
具体的には、基体上に、必要によりスパッタリング、無電解めっき等の公知の方法で軟磁性裏打ち層を形成する、また、必要により、スパッタリング等の公知の方法で密着層を形成する。そして、上述した方法で下地層を形成し、次いで、下地層上に、上述した方法で磁気異方性垂直磁化膜を成膜すればよい。
【0037】
本発明によれば、面内方向の保磁力に対する垂直方向の保磁力の比が1以上、特に2以上、とりわけ3以上である垂直磁気異方性に極めて優れた磁気異方性垂直磁化膜を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実験例1]
ガラスディスク基板上に、Tiターゲット(直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Tiターゲットに500Wの電力を印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングによりTi密着層(厚さ3nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(約20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。
【0040】
次に、Ti密着層上に、Cuターゲット及びTa25ターゲット(いずれも直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Cuターゲットに300Wの電力、Ta25ターゲットに349Wの電力を各々印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングにより下地層(厚さ10nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。この下地層の組成は、Cuに対するTa25の比が20モル%(Cu/Ta25=5(モル比))である。
【0041】
次に、下地層の結晶配向性を向上させるために、400℃で20分間、加熱処理を施した。
【0042】
[実施例1]
ガラスディスク基板上に、Tiターゲット(直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Tiターゲットに500Wの電力を印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングによりTi密着層(厚さ3nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(約20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。
【0043】
次に、Ti密着層上に、Cuターゲット及びTa25ターゲット(いずれも直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Cuターゲットに500Wの電力、Ta25ターゲットに147Wの電力を各々印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングにより下地層(厚さ10nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。この下地層の組成は、Cuに対するTa25の比が5モル%(Cu/Ta25=20(モル比))である。
【0044】
次に、下地層の結晶配向性を向上させるために、400℃で20分間、加熱処理を施した。
【0045】
次に、下地層上に、Smターゲット及びCoターゲット(いずれも直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Smターゲットに70Wの電力、Coターゲットに214Wの電力を交互に印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングにより磁化膜(厚さ25nm)を形成した。この際、成膜温度は225℃、ターゲット−基板距離は300mmとし、Co層(厚さ0.41nm)、Sm層(厚さ0.31nm)を交互にスパッタし、各々35層(計70層)形成した交互膜とした。
【0046】
[実施例2]
下地層の形成において、Cuターゲットへの印加電力を500W、Ta25ターゲットへの印加電力を102Wとし、Cuに対するTa25の比を3モル%(Cu/Ta25=100/3(モル比))とした以外は、実施例1と同様にし、基板上に、密着層、下地層及び磁化膜を形成した。
【0047】
[実施例3]
下地層の形成において、Cuターゲットへの印加電力を500W、Ta25ターゲットへの印加電力を207Wとし、Cuに対するTa25の比を7モル%(Cu/Ta25=100/7(モル比))とした以外は、実施例1と同様にし、基板上に、密着層、下地層及び磁化膜を形成した。
【0048】
[実施例4]
下地層の形成において、Cuターゲットへの印加電力を500W、Ta25ターゲットへの印加電力を296Wとし、Cuに対するTa25の比を10モル%(Cu/Ta25=10(モル比))とした以外は、実施例1と同様にし、基板上に、密着層、下地層及び磁化膜を形成した。
【0049】
[比較例1]
ガラスディスク基板上に、Tiターゲット(直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Tiターゲットに500Wの電力を印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングによりTi密着層(厚さ3nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(約20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。
【0050】
次に、Ti密着層上に、Cuターゲット(直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Cuターゲットに500Wの電力を印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングにより下地層(厚さ10nm)を形成した。この際、成膜温度は室温(20℃)、ターゲット−基板距離は220mmとした。
【0051】
次に、下地層上に、Smターゲット及びCoターゲット(いずれも直径4インチ(101.6mm))を用い、Arガス雰囲気中、1.5mTorr(約0.2Pa)の圧力で、Smターゲットに70Wの電力、Coターゲットに214Wの電力を交互に印加して、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリングにより磁化膜(厚さ25nm)を形成した。この際、成膜温度は225℃、ターゲット−基板距離は300mmとし、Co層(厚さ0.41nm)、Sm層(厚さ0.31nm)を交互にスパッタし、各々35層(計70層)形成した交互膜とした。
【0052】
得られた下地層及び磁化膜について、評価した結果を以下に示す。なお、評価は、以下の機器によって実施した。
微細構造観察:透過型電子顕微鏡(TEM 印加電圧=100kV)
磁区観察:磁気力顕微鏡(MFM)
磁気特性:振動試料型磁力計(VSM Hmax=15.0kOe(なお、1Oeは(1000/4π)A/mである)、超伝導量子干渉計(SQUID Hmax=70kOe)
【0053】
まず、Cu−Ta25下地層を評価するために、TEMを用いて下地層の微細構造を観察した。図2(A)に比較例1で得られた下地層、図2(B)に実験例1で得られた下地層の平面TEM像を各々示す。比較例1で得られた下地層と比べて、実験例1で得られた下地層の粒界に明度の異なる部分の存在が確認された。これにより、Cuの界面が偏析物により物理的に分断されていることが示された。
【0054】
次に、磁化状態を観察するために、MFMを用いて測定を行った。図3(A)に比較例1で得られた磁化膜、図3(B)に実施例1で得られた磁化膜の交流消磁後のMFM像を各々示す。また、磁区の大きさDをMFM像中に存在する粒子の平均個数から平均占有面積を求めることで算出したところ、比較例1の磁化膜はDcluster=625nm、実施例1の磁化膜はDcluster=131nmであった。CuへのTa25添加により磁区が微細化する傾向が示された。この結果により、下地層のグラニュラ化がSmCo磁化膜の磁区微細化に効果的であることが示された。
【0055】
次に、磁化膜のグラニュラ化が磁気特性に及ぼす影響を評価するために、M−Hループを測定した。図4(A)に比較例1で得られた磁化膜、図4(B)に実施例1で得られた磁化膜のM−Hループを各々示す。膜面垂直方向の保持力は、比較例1がHC=7.0kOe、実施例1がHC=10.3kOeであった。Ta25の添加により薄膜の垂直方向の保磁力が上昇し、α値が減少することがわかった。下地層がグラニュラ化することで、SmCo磁化膜中にSmCo5結晶と非結晶領域が生成し、磁区が分離されることで、磁壁の生成及び移動が制限されたと考えられる。この結果、磁化反転に要するエネルギー障壁の高い磁化回転型反転が誘引されたため、保磁力が増大し、また、この磁区分離により、磁性粒子間の交換相互作用が弱くなったため、α値が減少したものと考えられる。
【0056】
一般的に、磁化反転時に磁壁移動型磁化反転が支配的であると、磁区が拡大すると共に、磁気的相互作用に起因したノイズが発生することが知られている。磁気記録媒体においてノイズ低減の観点から、磁化反転機構を解析することは重要である。そこで、拡散グラニュラ下地層を用いた磁化膜における磁化反転機構を解析した。
【0057】
VSM及びSQUIDの測定から得られた、M−Hループの困難軸と容易軸の値から外挿して求めた異方性磁界(Hk値)は、比較例1が70kOe、実施例2が63kOe、実施例1が69kOe、実施例3が70kOe、実施例4が70kOeであり、Hk値がほぼ一定であることがわかった。上記結果から、本発明の磁化膜の磁気異方性の劣化が小さいことが示された。また、Hc/Hk値は、理想的な一斉回転型磁化反転の場合に1となり、磁化反転機構の解析において重要な指標であるが、この値は、比較例1が0.10、実施例2が0.17、実施例1が0.15、実施例3が0.19、実施例4が0.20であり、Ta25の添加によって向上した。以上の結果より、下地層をグラニュラ化することで、磁化反転機構をより一斉回転型磁化反転へと改質できることが示された。
【0058】
更に、保磁力(Hc値)の印加磁界角度依存性を評価した。比較例1及び実施例1〜4の保磁力の印加磁界角度依存性を図5に示す。測定にはVSMを用い、磁化容易軸方向を0度として困難軸方向へ印加磁界角度を変化させ、各角度毎に、M−Hループを測定することによりHc値を求めた。また、磁壁移動型磁化反転機構時における理論的な保磁力の角度依存性を図中実線で示した。図5より、Ta25の添加により保磁力の印加磁界角度依存性が理論曲線から乖離することが明らかとなった。下地層のグラニュラ化により、より一斉回転型磁化反転モードが誘起されることがわかった。これらの結果より、下地層のグラニュラ化により、磁化反転機構を磁気記録媒体に適する一斉回転型磁化反転モードに改質できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体の一例の模式図である。
【図2】比較例1及び実験例1で形成した下地層の平面TEM明視野像である。
【図3】比較例1及び実施例1で成膜した磁化膜の交流消磁後のMFM像である。
【図4】比較例1及び実施例1で成膜した磁化膜のM−Hループを示すグラフである。
【図5】比較例1及び実施例1〜4の保磁力の印加磁界角度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 下地層(グラニュラ下地層)
11 第1金属若しくはその化合物の相、又は第2金属の相
12 第2金属の粒子、又は第1金属若しくはその化合物の粒子
2 磁気異方性垂直磁化膜
21 非結晶の合金の相
22 合金の結晶粒子
3 基板
4 密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層上に、合金で構成された磁化膜を成膜し、該磁化膜の成膜中又は成膜後に、上記下地層及び磁化膜を加熱することを特徴とする磁気異方性垂直磁化膜の形成方法。
【請求項2】
上記下地層を、上記第1金属又はその化合物のターゲットと、上記第2金属のターゲットとを用いたコスパッタリングにより形成することを特徴とする請求項1記載の形成方法。
【請求項3】
上記磁化膜を、スパッタリングにより成膜することを特徴とする請求項2記載の形成方法。
【請求項4】
上記第2金属が、上記磁化膜を構成する合金に拡散可能な金属を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の形成方法。
【請求項5】
上記第1金属が、Ta、Si又はMgであり、上記化合物が酸化物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の形成方法。
【請求項6】
上記第2金属が、Cu、Ag、Ti、Bi又はそれらの合金であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の形成方法。
【請求項7】
上記磁化膜を構成する合金が、SmCo、FePt、CoPt又はCoCrPt合金であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の形成方法。
【請求項8】
上記下地層が、第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載の形成方法により磁気異方性垂直磁化膜を成膜して磁気記録媒体を製造する方法であって、
基体上に、軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに、第1金属又はその化合物と、第2金属との混合物で構成された下地層を形成し、次いで、合金で構成された磁化膜を成膜し、該磁化膜の成膜中又は成膜後に、上記下地層及び磁化膜を加熱することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、上記合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有することを特徴とする磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項11】
上記磁化膜を構成する合金の結晶粒子の各々が、上記磁化膜を構成する非結晶の合金相中で孤立分散していることを特徴とする請求項10記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項12】
上記磁化膜を構成する合金の結晶粒子が、該結晶粒子を取り囲む、磁化膜を構成する非結晶の合金相より高い磁気異方性を有することを特徴とする請求項10又は11記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項13】
上記第2金属が、上記磁化膜を構成する合金に拡散可能な金属を含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項14】
上記第1金属が、Ta、Si又はMgであり、上記化合物が酸化物であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項15】
上記第2金属が、Cu、Ag、Ti、Bi又はそれらの合金であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項16】
上記磁化膜を構成する合金が、SmCo、FePt、CoPt又はCoCrPt合金であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の磁気異方性垂直磁化膜。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれか1項記載の磁気異方性垂直磁化膜を備える磁気記録媒体であって、
基体上に軟磁性裏打ち層を介して又は介さずに形成され、第1金属又はその化合物の相中に、上記第1金属及びその化合物とは固溶しない、第2金属の粒子が分散してなる構造、又は第2金属の相中に、上記第2金属とは固溶しない、第1の金属又はその化合物の粒子が分散してなる構造であるグラニュラ構造を有するグラニュラ下地層と、
該グラニュラ下地層上に形成され、かつ非結晶の合金の相中に、上記合金の結晶粒子が分散してなるグラニュラ構造を有する磁気異方性垂直磁化膜とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−27108(P2010−27108A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184416(P2008−184416)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】