説明

磁気的に引付けられた検査機器用位置合わせ補償器および方法

磁気的に結合された検査プローブを位置合わせする装置および方法が与えられる。この点で、追跡プローブは駆動されたプローブに磁気的に結合され、一緒に協調して動くことができる。磁気的に結合された検査用の位置合わせ補償器は、駆動されたプローブと追跡プローブとの間のオフセット位置合わせ不良をオフセットする。磁気的に結合されたプローブ間の位置合わせ不良は、重力、摩擦、およびプローブの動きによって引起され得る。位置合わせ補償器は、プローブの位置合わせ不良をオフセットするために、電磁石への電力を調整するか、または磁石を位置決めし直すための制御システムを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願と同時に出願され、「流体軸受を用いた、磁気的に引付けられた検査用装置および方法」、「ボールベアリングを用いた、磁気的に引付けられた検査用装置および方法」、「アクセス制限領域のための透過超音波検査による装置および方法」、「エンドエフェクタ検査装置および方法」と題された同時係属出願の内容は、その全体が引用によって本願明細書に援用される。ケネディ(Kennedy)への米国特許第6,722,202号の内容は、その全体が引用によって援用される。
【0002】
発明の分野
この発明は、構造を検査する装置および方法に一般に関し、より特定的には、構造検査用の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
構造の非破壊検査(NDI)は、構造を傷つけたり構造の大幅な分解を必要としたりすることなく、徹底的に構造を調べることを含む。非破壊検査は典型的には、構造を損傷する可能性を回避すると同様に、検査のための部分の除去に関連したスケジュール、労力、およびコストを回避することが好ましい。非破壊検査は、構造の外部および/または内部の徹底的な検査が必要な多くの適用例のために有利である。たとえば、非破壊検査は、構造内のあらゆる型の内部および/または外部の損傷または傷について航空機構造を検査するために、航空機産業では一般に用いられる。検査は、構造の製造中、および/または構造の稼動がいったん始まってからも実行され得る。たとえば、製造中に連続して使用し、かつその後に継続して稼動するために、構造の一体性および適合性を検証するための検査が要求され得る。しかしながら多くの場合、検査のために航空機から部分を取外すような分解をすることなく内部表面にアクセスすることはより困難であり、または不可能である。
【0004】
通常非破壊的にテストされる構造の中には、複合サンドイッチ構造および他の接着性の接合されたパネルおよびアセンブリなどの複合構造がある。この点で、複合構造は、複合サンドイッチ構造の重量に対する剛性の比など、複合構造の機械工学的特性、設計の柔軟性、および軽量性に起因して、航空機産業全体にわたって一般に用いられている。そのため、複合構造の性能に悪影響を及ぼしかねない割れ、空隙、または穿孔などのいかなる傷も特定するために複合構造を検査することがしばしば望まれる。たとえば、核の各側面に複合または金属の外皮が接合された、一般に軽量のハニカムまたはフォームコア材料の1つ以上の層でできた複合サンドイッチ構造の典型的な傷は、核と外皮との間の、または核と隔膜中間外皮との間の界面で生じる剥離を含む。
【0005】
非破壊検査を実行するためにさまざまな型のセンサが用いられ得る。1つ以上のセンサが調べられる構造の部分の上を動き、構造に関するデータを受取ることができる。たとえば、パルスエコー(PE)、透過法(TT)、または剪断波センサが用いられて、厚さの測定、積層の欠陥および穿孔の検出、および/または構造における割れ検出などの超音波データを得ることができる。構造の接着性ボンド部などにおける空隙または穿孔の示唆を与えるために、共振センサ、パルスエコーセンサまたは機械インピーダンスセンサが用いられてもよい。航空機構造の高解像度検査は一般に半自動の超音波試験(UT)を用いて実行され、検査中の部分または構造の平面像を与える。固体の積層物は片側パルスエコー超音波(PEU)試験を用いて検査され得るが、複合サンドイッチ構造は典型的には高解
像度検査のために透過超音波(TTU)試験を必要とする。透過超音波検査においては、振動子などの超音波センサ、または振動子およびレシーバセンサは、互いに対面するが、複合材料の対向する両側などの検査される構造の対向する両側に接触して、位置決めされる。超音波信号は振動子の少なくとも1つによって送信され、構造を通って伝播され、他方の振動子によって受取られる。TTU振動子などのセンサによって得られたデータは典型的には処理要素によって処理され、処理されたデータは表示部を通じてユーザに提示され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非破壊検査は、典型的には構造の上で適切なセンサを動かす技術者によって手動で実行され得る。手動走査は、一般に、訓練された技術者がセンサを保持し、センサが構造の所望の部分をすべて確実にテストすることができるよう、構造に沿ってセンサを動かすことから構成される。多くの場合、技術者は、センサを繰り返し端から端まで1つの方向に動かしつつ、同時に別の方向にセンサをスライドさせなければならない。技術者が構造のそばに立っている場合は、技術者はセンサを繰り返し左右に動かし、元へ戻しつつ、通過するたびにセンサをスライドさせる。さらに、典型的にはセンサは得られたデータに位置情報を関連付けないので、手動で構造を走査しているその同じ技術者が、欠陥がもしあれば構造のどこにあるかを決定するため、構造を走査しながらセンサ表示も見ていなければならない。したがって、検査の質は、センサの動きに関してだけでなく、表示されたデータの解釈における技術者の注意深さについても、技術者の能力に大きく依存する。このように、構造の手動走査は時間がかかり、労働集約型で、人為ミスが生じがちである。
【0007】
手動検査技術の欠点のうちいくつかを克服するために、半自動検査システムが開発されてきた。たとえば、モービル自動スキャナ(Mobile Automated Scanner)(MAUS)(登録商標)システムは、典型的には超音波検査に適合された固定フレームおよび1つ以上の自動走査ヘッドを一般に採用した可動性走査システムである。MAUSシステムは、パルスエコー、剪断波センサおよび透過法センサと共に用いられてもよい。固定フレームは、真空吸着盤、磁石などの取付方法によって検査される構造の表面に取付けられてもよい。より小さなMAUSシステムは、技術者によって構造の表面上で手動で動かされる可般式装置であってもよい。しかしながら半自動検査システムは、透過法超音波検査については構造の両側または両面へのアクセスを必要とし、それは、少なくともいくつかの場合には、特に自動走査ヘッドの制御に固定フレームを用いる半自動システムについて、不可能ではないにしても問題がある。
【0008】
自動検査システムも手動検査技術の無数の欠点を克服するために開発されてきた。たとえば、自動超音波走査システム(Automated Ultrasonic Scanning System)(AUSS)(登録商標)システムは、透過超音波検査を採用した複雑な機械走査システムである。AUSSシステムは、パルスエコー検査および同時二重周波数検査を実行することもできる。AUSSシステムは、検査を受ける構造の対向する表面に近接して位置決めされなければならないロボット的に制御されたプローブアームを有し、一方のプローブアームは構造の1つの表面に沿って超音波発信機を動かし、別のプローブアームは構造の対向する表面に沿って対応して超音波受信機を動かす。したがって、AUSS−Xシステムなどの従来の自動走査システムは構造の表面の両側または両面にアクセスを必要とし、それは少なくともいくつかの場合に、特に非常に大きいかまたは小さい構造について、不可能でないにしても問題がある。超音波発信機と超音波受信機とを、互いに、および検査を受ける構造に対して、適切な位置合わせおよび間隔で維持するために、AUSS−Xシステムは、10個の軸において動きの制御を与える複雑な測位システムを有する。超音波発信機および受信機の配向および間隔が、互いに、および検査を受ける構造に対して不変であるというこの要件は、湾曲した構造の検査については特に困難である。
【0009】
さらに、手動、半自動、および自動の走査システムは、典型的には検査することができる構造の大きさに制限があり、さらに大きく、より複雑なシステムが利用可能ではあるが、一般に僅か数メートル平方の領域に限定され、典型的にはさらにはるかに小さな領域に限定され得る。剛性および重量の制限は、しばしば、手動、半自動、または自動システムが検査用の構造上に検査装置を延在させる距離を制限する。したがって、大きな複合構造では徹底的な検査ができないことがある。たとえば、現代の検査方法は、直径約4メートル、円筒長さ約5メートル、および全長12メートル以上のシーランチ(Sea Launch)のペイロード整形の検査にはうまく適しない。
【0010】
さらに、さまざまな走査システムの位置合わせは、センサを位置合わせするために一般に用いられるコンピュータ制御されるロボットアームによって与えられ得るものよりも典型的にはより複雑で、さらなる精度を必要とする。透過超音波検査などのように、2つ以上の走査プローブを用いる場合は位置合わせは特に重要である。たとえば、重力、摩擦、および運動によって、1つ以上のプローブの、または1対で用いられる場合の2つのプローブの互いに対する位置合わせ不良がしばしば引起される。
【0011】
検査を必要とする構造へのアクセス可能性およびその特定の機能は、非破壊検査装置を選ぶ際の1つの考慮事項である。検査される構造の外部および内部の表面へのアクセスを必要とするシステムに典型的に起因して、検査を必要とする構造へのアクセスが非常に限定されている結果、技術者による手動の検査、半自動システム、または自動システムができないことがある。たとえば、無人戦闘機(Unmanned Combat Air Vehicle)(UCAV)またはF−35用の入口ダクトの裏側は、検査のためのアクセスが制限される。同様に、振動子などのセンサの位置合わせおよび位置決めも、複合構造の一方側へのアクセスの困難性などの構造へのアクセス可能性によって、複雑になる。さらに、検査に用いられる装置を正しく位置合わせする能力およびそのためのアクセス可能性も、検査装置または検査システムを選び、その特性および制限を知ることにおいて考慮され得る。
【0012】
したがって、向上した非破壊検査装置および構造の検査方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
複合構造などの構造、特に湾曲した複合構造を検査するための向上した装置および方法は、磁気的に引付けられたプローブの位置合わせ不良を補償する。この発明の位置合わせ補償器を用いる検査装置または方法は、感知振動子および/またはレシーバの位置合わせおよび位置決めを維持することにより、構造の大きな領域を連続的に検査するなどの構造検査を有利に向上させることができる。この発明の方法および装置は、超音波振動子などのそれぞれの感知要素を含むプローブを用い、感知要素は構造の対向する表面に近接して配置される。プローブのうちの1つしか駆動する必要はない。いずれかのプローブまたは両方のプローブが、2つのプローブを互いに対して位置合わせするための位置合わせ補償器を含んでいてもよい。しかしながら、1つのプローブしか駆動する必要がないので、プローブは、プローブ間の磁気結合によって与えられる粗い位置合わせを越えては正確な位置合わせがされないかもしれない。したがって、この発明の方法および装置は、構造の表面に比較的アクセスしにくい構造の検査用プローブを位置合わせするよう有利に適合されている。さらに、この発明の方法および装置の実施例は、構造のそれぞれの表面に対して懸架され、それに沿って滑り、接触し、重なっているかもしれないプローブの位置合わせを可能にする。このように、この発明の実施例は、検査を受ける構造のそれぞれの表面から予め規定された配向および予め規定された間隔で超音波プローブを維持するために従来の走査システムに要求されていた運動制御システムの高度化の必要性を減じ、プローブまたはプローブのセンサ間の位置合わせを維持することができる。
【0014】
この発明の装置は、1つのプローブ上に単一の位置合わせ補償器、1つのプローブ上に複数の位置合わせ補償器、または、磁気的に引付けられたプローブ上に1つ以上の位置合わせ補償器を含んでもよい。一般に位置合わせ補償器は、装置のプローブの位置合わせ不良を起こさせるよう作用する、装置に作用する外力を補償するための装置またはシステムであって、位置合わせ補償器を用いることによって、装置のプローブは位置合わせされて維持される。位置合わせ補償器は永久磁石または電磁石であってもよい。あるプローブを別のプローブと位置合わせするよう磁石を制御するために、リニアエンコーダなどの位置合わせセンサが、コントローラおよび電源と共に用いられてもよい。
【0015】
この発明の別の局面によれば、構造の検査のためにプローブを位置合わせする方法が与えられる。この点、駆動されたプローブが構造の第1の表面に近接して位置決めされ、追跡プローブが構造の対向する第2の表面に近接して位置決めされる。プローブの少なくとも1つは位置合わせ補償器を含む。プローブを位置合わせする方法は、プローブのセンサの位置合わせ不良を測定し位置合わせ不良を補償することを含む。位置合わせ不良の補償は、永久磁石などの単一の磁石を用いて実行されてもよい。代替的には、位置合わせ不良の補償は2つ以上の磁石を用いて実行されてもよい。位置合わせ不良の補償は、電磁石によって生成される磁界強度を修正するために電磁石への電力を調整することを含んでもよい。電磁石への電力を調整するためにコントローラが用いられてもよい。プローブを位置合わせする方法は、1つのプローブから他方のプローブに送信される信号の強さを測定するか、または信号対雑音比を計算して、信号または信号対雑音比を増加させるよう電磁石への電力を調整することを含んでもよい。この発明の1つ以上の位置合わせ補償器は、異なる位置にあるプローブの位置合わせおよび任意の方向への動きについて用いることができる。位置が変化し、動きが変化するにつれて、1つ以上の位置合わせ補償器または位置合わせ補償器システムが変化を調整したり補償したりすることができ、プローブの位置合わせを維持する。
【0016】
この発明のこれらおよび他の特性も、付加的な詳細と同様に、これらおよび他の実施例を参照して、詳細な説明にさらに記載される。
【0017】
この発明について一般的な用語で記載してきたが、必ずしも縮尺通りに描かれない添付の図面にここで言及する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
詳細な説明
この発明は、添付の図面を参照してより完全に説明される。すべてではないが、いくつかの発明の実施例が示される。この発明はさまざまな形式で具体化することができ、説明された実施例に限定的に解釈されるべきではない。図面の全体にわたって、同じ番号および変数は同じ要素およびパラメータを指す。
【0019】
位置合わせ補償器は、磁気的に引付けられたプローブを有する装置に関して説明される。この発明の位置合わせ補償器の説明は、セクションIIの「位置合わせ補償」の見出しの下に現れ、磁気的に引付けられたプローブのこの説明に続く。
【0020】
I.磁気的に引付けられた検査プローブ
磁気的に引付けられたプローブを有する装置は、構造の第1の表面に近接して配置される駆動されたプローブと、構造の対向する第2の表面に近接して配置される追跡プローブとを含み、駆動されたプローブは構造の第1の表面に沿って動かされる。追跡プローブは、駆動されたプローブの動きに応答して磁力下で構造の第2の表面に沿って進む。
【0021】
駆動されたプローブに関連して追跡プローブが協調して運動することを容易にするために、両方のプローブは、典型的な磁力を用いてその間に引力を生成するよう配置される磁石を含む。プローブで環状磁石が用いられてもよい。
【0022】
駆動されたプローブは、駆動されたプローブが構造の第1の表面に沿って動く間に構造を検査するための感知要素を典型的に含む。感知要素は、X線検出器、カメラなどであってもよいが、感知要素は典型的には超音波振動子である。典型的には、追跡プローブも超音波振動子などの感知要素を含む。駆動されたプローブおよび追跡プローブの超音波振動子は、超音波発信機、超音波受信機、またはその両方であってもよい。超音波振動子などのプローブのセンサはプローブの環状磁石内に位置決めされてもよく、したがってプローブの環状磁石が構造のそれぞれの表面上で2つのプローブを位置合わせするので、プローブのセンサもまた環状磁石内で位置合わせされる。
【0023】
駆動されたプローブの超音波振動子と構造との間の超音波信号の結合を容易にするために、超音波振動子と構造のそれぞれの表面との間に接触媒質が配置されてもよい。空気噴流または水噴流が接触媒質として用いられてもよい一方で、駆動されたプローブは、超音波振動子と構造の第1の表面との間でポンプ送りされる流体のための入口を含んでもよい。この点、駆動されたプローブは、磁石および超音波振動子が配置されて入口を規定するハウジングを含んでもよい。ハウジングはさらに、流体の流れを入口から複数のチャネルへ導くための流体導管をも規定してもよく、プローブと構造の第1の表面との間の流体の流れを分配する。複数のチャネルはたとえば径方向に導かれた一連の凹部または複数の穴であってもよい。流体導管は、構造の第1の表面に面する駆動されたプローブの超音波振動子のその部分と流体伝達していてもよい。このように、超音波振動子と構造の第1の表面との間でポンプ送りされる流体は、超音波振動子によって生成された超音波信号を構造に結合することを容易にすることができる。同様に、追跡プローブは、追跡プローブの超音波振動子と構造の第2の表面との間でポンプ送りされる流体のための入口を含んでもよい。この点、追跡プローブは、磁石および超音波振動子が配置され、入口を規定するハウジングをも含むことができる。ハウジングはさらに、流体の流れを入口から複数のチャネルへ導くための流体導管をも規定してもよく、プローブと構造の第1の表面との間の流体の流れを分配する。流体導管は、構造の第2の表面に面する追跡プローブの超音波振動子のその部分と流体伝達していてもよい。このように、構造から出て来る超音波信号は、その間でポンプ送りされる流体によって、追跡プローブの超音波振動子に有効に結合されることができる。超音波振動子と構造のそれぞれの表面との間で流体をポンプ送りすることによって水噴流は必要でなくなり、その結果、駆動されたプローブおよび追跡プローブの超音波振動子は超音波振動子の配列を含むことができ、それにより、構造が検査される速さが増大し、したがって関連の検査費用が削減されることが可能になる。
【0024】
プローブは、構造の表面にわたるプローブの滑らかな平行移動を可能にするために、構造の表面に接触し、プローブを支持または懸架し、表面に対するプローブの配向および間隔を維持し、かつ検査されている構造の表面上のプローブの摩擦抵抗を減じるための、ボールソケット軸受、ウォーターベアリングまたはエアベアリングなどの軸受接触を含んでもよい。このように、プローブは構造の表面に沿って平行移動することができる。そのため、構造の表面に対するプローブの配向および構造の表面に対するプローブの間隔は、従来の走査システムで用いられていた複雑な運動制御システムを必要とすることなく、プローブと構造の表面との間の接触によって維持され得る。このような従来の走査システムで用いられていた運動制御システムに依存しないため、プローブのコストがさらに減じられ、ロボットアームまたは他の従来の運動制御システムでは比較的アクセスしにくかった構造の表面にわたって制御された態様でプローブを動かすことが可能になる。駆動されたプローブおよび追跡プローブはさらに、軸受接触に用いられる水または加圧された空気を、超音波センサなどのセンサと検査されている構造の表面との間の接触媒質として用いても
よい。流体軸受および流体結合はより完全に下記に記述される。しかしながら、軸受接触のために用いられる水または加圧された空気は接触媒質の役割をするために振動子の前を通過する必要はないが、流体チャネルの穴または凹部がプローブの振動子のまわりに配置されるところなど、プローブと構造の表面との間でのみ用いられ得る。気体、液体、または気体と液体との混合物など他の流体が接触媒質として用いられてもよく、かつ/または、プローブと検査されている表面との間に軸受接触を与える。プローブは流体軸受に支持されるのではなく、ボールソケット軸受を用いて構造の表面に接触してもよい。ボールソケット軸受を用いる場合、水または空気などの流体、プローブの入口からの泡立つ水などの流体が、プローブの超音波振動子と構造の表面との間の接触媒質として用いられてもよい。
【0025】
ここで図1A、図1Bおよび図1Cを参照して、構造12を検査するための装置10が示される。装置10は、さまざまな材料から作られたさまざまな構造を検査することができる。しかしながら、装置が、構造を通した磁界の確立にある程度依存するので、構造は磁性がないのが好ましく、すなわち、構造は透磁性を有さないのが好ましい。この発明の検査装置の実施例で検査され得る構造は、複合物、非強磁性金属(たとえばアルミニウム合金、チタン合金、またはGLAREまたはTi/Grなどのアルミニウムもしくはチタンハイブリッド積層物)、およびポリマなどを含み得るがこれらに限定されない。駆動されたプローブおよび追跡プローブがそれを通して磁気的に結合されるような材料を集合的に規定する、表面およびその間の材料、たとえば、通常は隔膜と呼ばれる中間表面は、好ましくは非強磁性材料を含むことに注意されるべきである。なぜならば、プローブ間の磁気結合は、始動部分と検査部分との間に位置する強磁性体によって縮小されるかなくされるからである。
【0026】
図1Aおよび図1Bにおいて、比較的簡単だが大きな構造であるパネル12の一部が検査中として示されるが、構造は任意の無数の形状および/または大きさであり得る。さらに、検査される構造は、航空機、船舶、自動車、宇宙船などと関連する乗り物の適用例、建造物および他の建設計画関連などの他の乗り物以外の適用例など、種々さまざまの適用例に用いられ得る。さらに構造は、所望に応じ、組立て前または組立て後に検査することができる。
【0027】
検査装置10は、構造12の第1の表面12aに近接して配置された駆動されたプローブ14と、構造の対向する第2の表面12bに近接して配置された追跡プローブ16とを含み得る。この発明の実施例も、引用によって援用される、構造検査用の磁気的に引付けられたプローブに向けられたケネディへの米国特許第6,722,202号に開示された装置と類似の検査装置と共に用いられてもよい。この発明を使用する検査プローブの形状および大きさならびにそのハウジングは、本願明細書または第6,722,202号の特許もしくは参照される同時係属出願に記載され、開示された特定の実施例に限定されず、この発明にしたがって作動することができる任意の形状または大きさであることができる。図1A、図1Bおよび図10に示されるように、駆動されたプローブおよび追跡プローブは、互いに直接対向するか、そうでなければ互いに位置的に対応するよう最初に有利に位置合わせされて位置決めされる。図1A、図1Bおよび図10に示されるように、たとえば、この位置合わせは、好ましくは一方のプローブが他方のプローブから構造12の表面を横向きにわたって平行移動またはオフセットにならないように、プローブ14および16の間に線形の関係を与える。下記に記述されるように、駆動されたプローブおよび追跡プローブのこの位置関係または対応は、プローブが構造のそれぞれの表面に沿って動かされる間維持され、この発明の実施例の位置合わせ補償器によっていかなるオフセットまたは平行移動も補正され得る。
【0028】
プローブ14、16は、それぞれハウジング24、124内に配置され得る環状磁石1
8、118を含む。プローブの磁石は、駆動されたプローブおよび追跡プローブを構造12のそれぞれの表面に向かって磁気的に引付ける。環状磁石を備えたプローブを構造の対向する表面上で用いることも、2つのプローブを他方に対して位置合わせする。棒磁石、平らな磁石、円筒状の磁石などを用いて磁気的に結合された検査用プローブは、比較すると、プローブを位置合わせするために磁石および/または強磁性体の構成を必要とする。そのような構成は、典型的には、駆動されたプローブおよび追跡プローブの環状磁石の中心内に位置する超音波振動子の位置合わせを維持しつつ追跡プローブが磁気的に結合された駆動されたプローブに対して自由に回転することを可能にする環状磁石のような柔軟性を与えることができない。この発明の実施例を使用する磁気的に結合されたプローブは、代替的に、または追加的に、プローブ間の位置合わせおよび/または磁力を与えるための磁石および/または強磁性体を用いる。各プローブは任意の個数の磁石を含んでもよいが、各プローブは1つの環状磁石しか含む必要はなく、それがプローブの大きさ、重量、コストおよび複雑さを減じる。示されたプローブの磁石はネオジムアイアンボロン(NdFeB)から形成される環状磁石であってもよく、それは標準的なセラミックまたはフェライト磁石(約3,900ガウス)よりも有利に大きな磁束(約12,000ガウス)を有している。この発明の検査プローブおよび位置合わせ補償器のさらなる実施例は、サマリウムコバルト(Samarium Cobalt)またはアルニコ(Alnico)、および/または電磁石もしくは他の磁気結合手段などの異なる材料の磁石を含んでもよい。本願明細書で用いられる用語「磁石」は電磁石を包含する。この発明の位置合わせ補償器および検査プローブはさらに磁気結合の磁束を制御するための磁気分路機構を含み、その限定的でない例は、米国特許第6,180,928号に開示された希土類金属切り換え磁気装置である。さまざまな型の環状磁石が用いられ得るが、1つの実施例の駆動されたプローブおよび追跡プローブはNdFeB環状磁石などの永久環状磁石を含む。駆動されたプローブおよび追跡プローブの両方のための環状磁石の大きさは、各プローブの重量、検査を受ける構造の厚さ、および検査を受ける構造を組織する材料に少なくとも部分的に依存する。たとえば、磁石が標準的なフェライト環状磁石である場合、プローブの環状磁石は、環状磁石の表面にわたって直径4インチ、高さ1インチ、3.9kガウスの磁束であり得、磁石がNdFeB環状磁石である場合、12kガウスであり得る。さらに、駆動されたプローブおよび追跡プローブは、同じまたは異なる大きさを有する環状磁石を含んでもよい。
【0029】
環状磁石は位置的にプローブを位置合わせするために独立して用いられてもよいが、プローブの回転的な位置合わせは、プローブの少なくとも1つに対して少なくとも1つの追加の磁石または強磁性体を組込むことにより強化することができる。たとえば、プローブのうちの1つが強磁性体のプラグなどの強磁性体を含む場合、他のプローブは、強磁性のプラグおよび追加的な磁石が位置合わせされるときにプローブが互いに対して適切に位置決めされるように、追加的な磁石、または可能であれば位置合わせ補償器を含んでもよい。なぜならば強磁性のプラグおよび他のプローブの付加的な磁石は、これらの要素が回転位置合わせでプローブを位置決めするよう正確に位置合わせするとき、互いに引付けられるからである。同様に、プローブが各々2つの付加的な磁石を含んでおり、各プローブの2つの追加の磁石が反対の極性を有する場合、プローブが位置合わせ不良であれば、プローブの付加的な磁石は退けられて、プローブの付加的な磁石が反対の極性である他のプローブの付加的な磁石と位置合わせするまで、プローブの回転を生成する。そのため、これらの型の付加的な磁石および強磁性体は、回転位置合わせキーとしてプローブに用いられることができる。
【0030】
磁石の型を決定する際、磁石の重量、磁石の表面積、および、磁石の直径に対する円筒長さの比、および/または半径幅に対する円筒長さの比に起因する消磁効果が典型的には考慮に入れられる。この点、比較的薄く、平らな磁石は、著しい磁束を生成するのに十分な表面積を有し得る。しかしながら、表面積がより小さく、より厚く、よりロッド状の環状磁石に相対して、直径に対する円筒長さの比、および/または半径幅に対する円筒長さ
の比が比較的小さいので、消磁効果が増大し、これらの磁石は一般に非能率的である。
【0031】
プローブ14、16の少なくとも1つ、通常は駆動されたプローブは、プローブが構造のそれぞれの表面上で動かされる間に構造12を検査するための感知要素32、132を含む。さらに、図2A、図2B、図3および図4に関して、感知要素32、132は、ハウジング24、124の中央キャビティ40、140内の環状磁石18、118に位置決めされる。感知要素は、カメラX線検出器、パルスエコーセンサなどであり得るが、一般には超音波振動子、たとえば超音波発信機および/または超音波受信機である。たとえば、超音波振動子は、ペンシルバニア州ルイスタウンのアグファ/クラウトクレーマー(Agfa/Krautkramer of Lewistown、PA)の1MHzの液浸型振動子であってもよい。
【0032】
このようなプローブは、透過超音波(TTU)検査をもたらす。1つのプローブの超音波振動子によって超音波信号が構造に送信され、他のプローブの超音波振動子によって受取られて、割れ、空隙、および/または穿孔を含む傷を検出する。しかしながら、パルスエコー(PE)検査などの構造12の一方側からの検査のための感知要素32、132を含む必要があるのは1つのプローブのみである。
【0033】
駆動されたプローブ14および追跡プローブ16の超音波振動子と構造12との間の超音波信号の結合を容易にするために、接触媒質が用いられてもよい。空気または水噴流が接触媒質として用いられてもよい一方で、駆動されたプローブ14および追跡プローブ16と特にそれぞれのハウジングとは、超音波振動子と構造のそれぞれの表面12aおよび12bとの間でポンプ送りされる水または空気などの流体のために入口22、122を含んでもよい。
【0034】
図2A、図2B、図3および図4に示されるように、ハウジング24は、凹部または穴などの流体分散チャネル42に流体入口22を接続する流体の導管23を含む。流体の導管23および/または流体分散チャネル42は、プローブに近接した構造12の表面に面する、超音波振動子などの感知要素32の部分とも流体伝達する。超音波振動子などの感知要素32はハウジング24内に埋め込まれてもよい。こうして、入口22を通して導入される流体は、ハウジング24によって規定される、内部チャネルを含む流体の導管23を通って流れ、超音波振動子と構造12の表面との間のギャップを有効に満たす。有利なことに、流体は、信号対雑音比に悪影響を与えかねない泡、キャビテーションまたは乱流を有することなく、超音波振動子および構造の表面の上とその間とに滑らかに流れる。
【0035】
流体は、入口22に接続された貯水池から供給される。入口22のまわりの管状のプレス嵌めが流量制御弁に繋がり、それは一定圧力を維持し、流体の過剰な圧力または容量を防ぐためのブリード弁を含んでもよい。
【0036】
図2Aおよび図2Bに示されるように、キャップ25は、ハウジング24に形成されたカップに環状磁石18を固定する。ハウジング24の底部は、さらに流体軸受を生成するよう流体の流れを導くためのチャネル42を含んでもよい。流体が接触媒質としても用いられる場合、流体は、ハウジング24の中央キャビティ40内に取付けられた超音波トランシーバなどの感知要素32の上を通り、チャネルを通って外に出る。ハウジングの形状および大きさはこの発明を決定付けないが、この発明の機能を組込むかまたは促進するよう適合することができる。たとえば、図2Aおよび図2Bに示されるハウジング24の形状および大きさは、環状磁石18および流体入口22に支持を与えるよう決定付けられる。形状は、ハウジングがこの発明の実施例の操作を妨げることを回避するために部分の表面に近接し得る滑らかな縁部を与えるようさらに決定付けられる。
【0037】
駆動されたプローブ14を部分の表面にわたって制御するために、ヨーク取付部30などのハンドルまたは他のコネクタが用いられる。図5A、図5B、図5Cおよび図9は、手動、半自動、またはロボットアーム延伸のためのヨーク取付部30を示す。
【0038】
動作において、駆動されたプローブ14および追跡プローブ16は構造12の表面12a、12bに近接して配置される。図1A、図1Bおよび図1Cに示されるように、駆動されたプローブおよび追跡プローブは、構造と接触するかまたは軸受接触によって有利に配置され得る。軸受接触は、流体軸受および/またはボールソケット軸受などによって構造の表面の上にプローブの懸架を与えてもよい。たとえば、構造上でウォーターベアリングまたはエアベアリングがプローブを支持してもよい。構造のそれぞれの表面とのプローブの接触を容易にし、プローブと接触する結果として生じる構造のそれぞれの表面のいかなる望ましくない損傷または他の傷をも回避するために、駆動されたプローブおよび追跡プローブは各々ボールソケット軸受またはスキッドなどの少なくとも1つの接触部材28をも含むことができ、それは流体軸受との関連で、または独立して使用することができる。スキッドは、当初構造にプローブを置くとき、または部分の対向する両側に2つのプローブを磁気的に結合するときに、特に、流体がプローブに与えられる前もしくは流体がプローブに流れるのを停止した後など流体軸受が使用されていない場合に、テスト中の構造の表面を損傷し、傷つけることを防ぐように、流体軸受プローブについて有益であり得る。代替的には、プローブは1つ以上のボールソケット軸受を含んでもよく、それは構造のそれぞれの表面に接触し、流体軸受を用いないときにプローブがそこに重なることを可能にする。プローブの間隔および配向を維持するために、ウォーターベアリングおよびエアベアリングなどの流体軸受ならびにボールベアリングが用いられてもよい。ウォーターベアリング、エアベアリングまたはボールベアリングは、検査プローブと検査中の構造の表面との間の摩擦を減じるため、水力または空気圧の浮遊または静圧軸受を用いて、構造の表面への接触からプローブをずらせるように用いられてもよい。さらに、検査プローブと構造の表面との間に軸受接触を用いることにより、軟質の外皮を引っ掻いたり外皮のパネルを凹ませたりすることを防ぎ得る。軸受接触の使用はさらに構造の表面の上を検査プローブが滑らかに平行移動することをももたらし、検査プローブが意図された方向を維持し、検査プローブの振動子および/またはレシーバの位置合わせを維持し、かつ、表面の大きさ、平滑性または平坦さにかかわらず表面の連続的な走査を可能にすることができるようにする。
【0039】
流体の動的な軸受とも呼ばれる流体軸受は、検査中の部分に隣接するプローブのためのハウジングの表面とプローブに隣接する部分の表面との間の流体の薄い層をポンプ送りすることによって生成され得る。プローブの磁力から流体の部分に向かう圧力と圧縮された空間への流体のポンプ送りとが流体軸受を生成する。プローブのためのハウジングは、プローブとその部分の表面との間の流体の薄い層の上に位置する。流体軸受は規定された空間の静圧流体を維持するために典型的にはシールを用いるが、流体が流体軸受から逃げる速さで流体軸受のための空間に流体をポンプ送りすることにより、流体軸受を達成するために十分な流体の容積および圧力が空間内で維持される。本願明細書に記述されるように、流体軸受のために用いられる流体は、センサと検査中の部分の表面との間に接触媒質を与えるためにも用いることができる。たとえば、ウォーターベアリングの水は、超音波振動子の送信側と検査中の部分に隣接する表面との間に流れてもよく、次にプローブのためのハウジングの表面と検査中の部分に隣接する表面との間に流れて流体軸受を生成することができる。
【0040】
図6は、ボールソケット軸受を含むプローブの分解図の底部斜視図である。ハウジング124は、超音波振動子などのセンサ132を保持するための中央キャビティ140を含むことができる。図2Bの実施例と比較すると、図6の実施例は、2つのキャップ125、127を備え、ボールソケット軸受128を有する、環状磁石118のまわりに配置さ
れる逆転した圧縮されたハウジング124を有する。代替的には、環状磁石は、ハウジングが環状磁石を保持するためのキャップを必要としないようにハウジングによって一体的に形成されたキャップを備えた、または環状磁石のための凹部を備えたハウジングに保持されてもよい。ボールソケット軸受128は、ソケット146によって各々ハウジングされた球面軸受144を含んでもよい。ソケット146は、ボールソケット支持部材148においてハウジングに取付けられてもよく、またはハウジングに一体的に接続されてハウジングによって形成されてもよい。1つの実施例では、構造の対向する表面上で磁気的に引付けられた2つのプローブの回転検査を容易にするために、3つ以上の球状ボールが対応するソケットに保持される。
【0041】
図7はプローブの平面図である。図8はプローブの底部斜視図である。ハウジング124は、超音波振動子などのセンサ132が配置される、中央キャビティ140を規定する。ハウジング124は外周部をも含み、そこでソケット146が一体的に形成され、それぞれの球144がそこに挿入される。ハウジング124の外周部と中央カラーとの間に環状磁石が配置される。第1のキャップ125および第2のキャップ127はハウジング124内の環状磁石を保持し、かつ/または固定する。流体入口122はハウジングに取付けられるか、配置されるか、そうでなければハウジングによって形成され、入口およびハウジングを通る流体の流れを可能にする。ボールベアリングの実施例では、超音波振動子と検査されている構造の表面との間の接触媒質として水などの流体が用いられてもよい。入口122は、ハウジング124を通る流体の流れを可能にする流体導管123の一部であってもよい。
【0042】
図9は、ヨーク取付部を含むプローブの上から見た斜視図である。プローブは、部分の表面にわたってプローブを制御し駆動するためのヨーク取付部130などのハンドルまたは他のコネクタを含んでも、取付けてもよい。
【0043】
駆動されたプローブ14および追跡プローブ16と構造12のそれぞれの表面12a、12bとの間で接触または軸受接触を可能にすることによって、かつ、プローブの環状磁石間の磁力によって、プローブ、より特定的には、超音波振動子などのプローブの感知要素の位置および配向が、一般に複雑な運動制御システムまたは他の型の測位システムを必要とすることなく維持され得る。さらに、駆動されたプローブおよび追跡プローブと構造のそれぞれの表面との間の接触または軸受接触は、複雑な運動制御システムまたは他の測位システムを必要とすることなく、それぞれの超音波振動子などのそれぞれの感知要素と構造との間で一貫した間隔を維持することができる。さらに、磁気的に引付けられた検査プローブの使用によって、手動、半自動、および自動の走査システムに一般に用いられ得る点ごとまたはグリッド形式の検査方法と比較して、表面全体の手動走査などの連続的な走査技術が可能になる。磁気的に引付けられたプローブが好ましくは振動子の位置決めを維持するので、検査領域が構造全体と同じくらい大きいことがあり得、一人の操作者が構造を検査することができる。
【0044】
装置10の操作は、透過超音波検査を実行するよう構成される駆動されたプローブ14および追跡プローブ16に関連して記載される。しかしながら、駆動されたプローブおよび追跡プローブは、下記に記載されるような他の態様で用いられてもよい。しかしながら、駆動されたプローブおよび追跡プローブの1つの実施例の操作例として、駆動されたプローブおよび追跡プローブは、プローブ間の位置および磁力を維持しつつ、構造12の対向する第1の表面12aおよび第2の表面12bに近接し、ほぼ接触して配置される。次いで、水などの流体が、各プローブの入口22を泡立ちながら通り、かつ超音波振動子と構造12のそれぞれの表面12a、12bとの間を泡立ちながら通ることができる。プローブと検査中の部分の表面との間に適切な間隔を維持するために、液体軸受またはエアベアリングを含む流体軸受などの軸受接触が用いられてもよい。このような態様で、プロー
ブが部分の表面に接触し、破損し得ることを防ぐために、軸受接触が用いられてもよい。さらに、軸受接触により、プローブが連続的な走査のためにその部分の表面に沿って平行移動する能力が与えられる。超音波振動子は、1つのプローブの超音波振動子が構造に対して超音波信号を放射するように活性化される。コンピュータ化された制御プログラムに接続された電圧または電流源などの駆動要素は、超音波振動子を作動させて超音波信号を放射させるため、一般に駆動されたプローブの超音波振動子と関連付けられる。この駆動要素は、駆動されたプローブと共に位置するか、またはそこから遠隔であって超音波振動子に電気的に接続されていてもよい。構造を通って超音波信号が伝播することに続いて、対応して他方のプローブの超音波振動子が元々駆動されたプローブの超音波振動子によって送信された超音波信号を受取る。
【0045】
超音波信号が構造12を通して送信され、流体がそれぞれの超音波振動子上を通過する一方、駆動されたプローブ14は、構造の第1の表面の12aに沿って動かされる。構造の第1の表面に沿って駆動されたプローブを動かすのに必要な原動力はさまざまな態様で与えられ得るが、示される実施例の駆動されたプローブは、ロボットアームなどによって係合され得るハンドルを含む。当業者に公知のように、予め規定された態様で規定されたパターンにしたがって構造の第1の表面に沿って駆動されたプローブを制御可能に動かすために、ロボットアームを運動制御システムまたは他の測位システムによって制御することができる。
【0046】
駆動されたプローブ14および追跡プローブ16の間、より特定的には、駆動されたプローブ14および追跡プローブ16の磁石18、118の間に確立された磁力の結果、追跡プローブ16は駆動されたプローブ14に従う。したがって、追跡プローブ16は、駆動されたプローブ14に相対して、好ましくは位置合わせされ、対向する位置に留まるように動く。したがって、追跡プローブ16は、円筒状の構造の内部または閉じた形状を有する他の構造など、比較的アクセスしにくい構造の第2の表面12bに近接して配置され、またはそこに沿って重なることができる。
【0047】
超音波振動子と構造12のそれぞれの表面との間に流体を通すことによって、超音波信号は有効に構造に結合され、かつ/または外に出る。さらに、図2A、図2Bおよび図6には単一の超音波振動子が示される一方、駆動されたプローブ14および/または追跡プローブ16は検査領域を増加させるために超音波振動子の配列を含んでもよく、流体によって与えられる結合により超音波配列モードにおける検査が可能になり、それによって検査が実行される速度を増加させ、潜在的に検査と関連付けられたコストを減じる。
【0048】
追跡プローブは駆動されたプローブの振動子よりも大きな直径の振動子を含んでもよい。より大きな追跡プローブ振動子を用いることは、対応するより小さな振動子が行うよりもさらに大きな領域一帯でより均一な信号を可能にする。このように、追跡プローブでより大きな振動子を用いることは、駆動されたプローブおよび追跡プローブ、ならびにその振動子との間の、構造の表面の不連続性、追跡ヘッドの位置的な遅延、および重力オフセットによる位置合わせ不良などによる、微小な位置合わせ不良の影響を最小限にする。
【0049】
II 位置合わせ補正
駆動されたプローブおよび追跡プローブは、構造の表面の不連続性、追跡ヘッドの位置的な遅延、および追跡ヘッドの重力オフセットなどの理由によって位置合わせ不良を生じたり、平行移動的にオフセットになったりすることがある。たとえば、プローブが重力に対して垂直、またはほぼ垂直であるとき、磁気的に結合された装置の追跡プローブの重量により、追跡プローブが駆動されたプローブに対して下がるようになり得る。この場合、磁気結合は、駆動されたプローブおよび追跡プローブの中心を完全に位置合わせして保持するほどには強くない。駆動されたプローブおよび追跡プローブの振動子の位置合わせが
不良であると、検査中の部分を通って送信されて受信プローブ、典型的には追跡プローブによって受取られる信号が弱まるかもしれない。重力に対して水平またはほぼ水平な位置で走査すると、プローブは、1つのプローブから送信されて検査中の部分を通って伝播し、他方のプローブによって受取られる強い信号については、許容できる精度で位置合わせされ得る。さらに、より高い走査速度においては、たとえば磁気結合および摩擦力の強さのために追跡プローブは駆動されたプローブに遅れることがあり、その結果プローブ間の振動子の位置合わせ不良を引起す。
【0050】
記載されたような駆動されたプローブと追跡プローブと間の位置合わせ不良に対応する1つの選択肢は、送信プローブから信号を受取るためのより大きな領域を与えるために、プローブのうち1つ、典型的には追跡プローブに、より大きな振動子領域を与えることであり得る。位置合わせ不良に対応する別の可能性は、振動子のうちの1つを偏心に取付けることであり得る。たとえば重力によって生じる位置合わせ不良の場合、駆動されたプローブは、追跡プローブの振動子と位置合わせするために、追跡プローブの振動子に対して振動子を低くしてもよい。同様に、より高い走査速度においては、駆動されたプローブの振動子は、追跡プローブの振動子と位置合わせされるまで後方向に動かされてもよい。しかしながら、異なる走査角度および速度に対応するように振動子を偏心にして取付けることが調整可能になされると、振動子の位置を適応させることが1つの走査方向または1つの配向でのみデータが取得されることがあるなど走査性能を限定しかねず、また、プローブの設計がより複雑になる。代替的に、または追加的に、追跡プローブは、追跡プローブと駆動されたプローブとの間の位置合わせ不良を補正するために、この発明の実施例の位置合わせ補償器を含むと有利である。たとえば、この発明の位置合わせ補償器の実施例は、重力または駆動されたプローブの急速な動きによって引起される、磁気的に結合された装置の偏心および遅延を補償することができる。
【0051】
図10は、検査されている構造を渡って位置決めされた2つのウォーターベアリングプローブの側面図である。検査中の構造212の対向する側に磁気的に結合されたプローブ214、216に見ることができるように、駆動されたプローブ214と追跡プローブ216と間の磁気結合が追跡プローブ216において重力を補償したり打ち消したりしないので、追跡プローブ216は駆動されたプローブ214よりも下に下がっている。具体的には、駆動されたプローブ214の最上部は線215でマークされ、それは下の線217によってマークされた追跡プローブ216の最上部よりも高い。1つの実施例では、図10のプローブ214、216においてプローブの最上部間の垂直の差がそれぞれ3/8インチにまでなっているが、このオフセットはプローブの重量、磁石の強さなどに基いて変動する。その結果、超音波信号は、プローブ214、216の振動子241の間を通過する際にオフセットによって減衰される。この結果は、プローブの偏心に起因する部分的な、または弱い信号252として見ることができる。
【0052】
図11は、図10の2つのウォーターベアリングプローブの直角の側面図である。図10に示される図と比較すると、図11で見えるプローブ214は駆動されたプローブ214である。追跡プローブは検査中の構造212の後ろにある。駆動されたプローブ214の最上部は、追跡プローブ216の最上部をマークする下の線217との比較において、線215によって表示される。
【0053】
図12は、2つのウォーターベアリングプローブおよびこの発明による位置合わせ補償器の側面図である。図10および図11のプローブ214、216と異なり、図12のプローブ214、216は、線215によって表示されるプローブの最上部が同じ高さで位置合わせされている。位置合わせ補償器260が駆動されたプローブ214に加えられ、駆動されたプローブ214と位置合わせするために追跡プローブ216を押し上げる。したがって、プローブ214、216の振動子241間で向上した信号254を得ることが
できる。
【0054】
図13は、2つのウォーターベアリングプローブおよび位置合わせ補償器の直角の側面図である。図11が図10に関するように、図13は図12に関する。位置合わせ補償器は、単一の線215によって表示されるようにプローブ214、216両方の最上部が位置合わせされるよう、駆動されたプローブ214と追跡プローブ216とを位置合わせするために、追跡プローブ216を持ち上げたり押し上げたりするよう作動する。
【0055】
この発明の位置合わせ補償器は、2つの対向するプローブ間の、またはより特定的には、対向するプローブの2つの環状磁石間の磁界を修正する永久磁石または電磁石であってもよい。プローブがそれぞれ支持されている構造の対向する側に隣接する環状磁石のそれぞれの表面を参照すると、プローブ間の磁気結合を生成するために用いられる環状磁石は、その平坦な面にわたっておよそ均一な磁界強度を有する。下記に記載するように、この発明による位置合わせ補償器は、駆動されたプローブの環状磁石の面に相対して対向する磁界を生成してもよい。例として、追跡プローブが駆動されたプローブに相対して別の態様で下向きにずれていてもよい図12における駆動されたプローブ214および追跡プローブに対して、位置合わせ補償器260が、駆動されたプローブ214の環状磁石の下部、すなわち位置合わせ補償器260に近接する環状磁石の部分によって生成される磁界を押したり対抗したりするために、駆動されたプローブ214の環状磁石より下側に位置し、それにより、駆動されたプローブの環状磁石の下部から結果として生じる有効磁界強度を減じる。そのため、追跡プローブ216の環状磁石は、駆動されたプローブ214の環状磁石の上部に向かってさらに大きく引付けられ、それによって、それがなければ追跡プローブが駆動されたプローブに相対して下向きにずれる傾向が克服される。この実施例では、位置合わせ補償器260の磁石の磁界強度は、位置合わせ補償器から追跡プローブを押しのける力を生成し、またはより特定的には、位置合わせ補償器260に隣接する駆動されたプローブ214の環状磁石の部分の強さに対抗する。位置合わせ補償器260の磁石が駆動されたプローブ214の環状磁石の側かその外側に位置決めされるので、かつ環状磁石の引力の結果として、追跡プローブ216の環状磁石および対応して追跡プローブ216それ自体が、駆動されたプローブ214の環状磁石と平行に動き、検査中の部分の表面から持ち上がったり分離したりしない。
【0056】
図14は環状磁石の図である。図14の図は、限定的ではない例として、検査中の構造の表面に隣接するであろう駆動されたプローブの環状磁石の表面の、方向性ガウスメータを用いて測定された磁界を示す。環状磁石の表面では、環状磁石の表面の外周で均一に3.9kガウスが記録される。磁界強度は、環状磁石の表面の1インチ前で表面場の強さの約90%で測定される。
【0057】
図15は、この発明の環状磁石および位置合わせ補償器の図である。位置合わせ補償器の磁石の存在が負の磁場強度数によって表される磁場を与え、それは環状磁石の磁場強度に対抗する。位置合わせ補償器の磁石の磁力は、この場合にそうであるように、駆動されたプローブの環状磁石に相対して追跡プローブの環状磁石を持ち上げるかまたは押す傾向にある。縦位置においては、この実施例の位置合わせ補償器は一般に環状磁石より低く配置され、したがって追跡プローブを持ち上げる。高速で走査する場合、水平位置においてはこの実施例の位置合わせ補償器は一般に環状磁石から後方向にずらされ、したがって駆動されたプローブの速度と一致するよう追跡プローブを前方に押す。環状磁石の表面と共面の位置合わせ補償器の表面で記録された磁界強度は、約3.8kガウスから4.4kガウスである。負の測定数は、環状磁石の磁力に対抗する磁力を表す。
【0058】
記載されるように、位置合わせ補償器の磁石は永久磁石または電磁石であってもよい。位置合わせ補償器の磁石が電磁石ならば、電磁石を通して電流を調整することによって位
置合わせ補償器の強さが修正され、さまざまな角度および/またはさまざまな速度で走査するために、駆動されたプローブおよび追跡プローブのセンタリング調整が可能になる。下記に記述されるように、この発明のこの局面のプローブは、位置合わせ補償器の電磁石によって生成された磁界を制御するために用いられる位置合わせセンサを含んでもよい。単一配向、一定角度の走査、および、単一配向、固定速度の走査については、位置合わせ補償器の構成要素および操作を簡単にするために、位置合わせ補償器で永久磁石が用いられてもよい。さらに、異なる適用例または異なる走査状況において、位置合わせ補償器の永久磁石または電磁石は、走査角度または走査速度が変るときなどは異なる磁石に変更されてもよい。位置合わせ補償器の異なる永久磁石または電磁石を支持し、かつ/または保持するために、位置合わせ磁石ハウジングが用いられてもよい。
【0059】
図16Aは、環状磁石を備えたプローブ、環状磁石の反対側に2個の電磁石を備えた位置合わせ補償器および位置合わせセンサの実施例の概略図である。図16Bは、各々が環状磁石を有する2つのプローブを備えた装置の実施例の概略図であって、1つのプローブは、2つの電磁石および位置合わせセンサまたは運動/方向性センサを備えた位置合わせ補償器を有し、そのセンサは検査されている構造にわたって位置決めされている。図16Aおよび図16Bに示された配置またはシステムは、駆動されたプローブと追跡プローブとの間の位置合わせ不良を補正するために位置合わせ補償器が用いられ得るような、高速の検査の状況において有利に役立ち得る。たとえば、駆動されたプローブの速度および恐らくは駆動されたプローブの動きの方向を特定するために、リニアエンコーダ270または他の方向性センサなどの位置合わせセンサが用いられてもよい。走査速度が遅い場合、駆動されたプローブと追跡プローブとの間の位置合わせ、またはより具体的には位置合わせ不良について補正は必要でないかもしれず、そのため、電磁石は励起されない。しかしながら、高速の検査については、追跡プローブの顕著な遅延を生成する追跡プローブの摩擦および/または慣性抗力によって引起されるような十分な遅延があり得、そのため受信した検査信号を減少させる。このように、高速検査については、位置合わせ補償器の電磁石を駆動されたプローブの環状磁石の対向する両側に置くことなどにより、位置合わせ補償器システムが追跡プローブ遅延を防ぐために用いられてもよい。駆動されたプローブは、環状磁石218に加えて、駆動されたプローブと追跡プローブとの間の補正の位置合わせを与えるために独立して作動し得る、2個の電磁石262を含んでもよい。電磁石262は、環状磁石218の前方向側および後方向側に置かれてもよい。運動の特定の方向に依存して、位置合わせ補償器システムのこれらの電磁石262に電力が与えられて、駆動されたプローブに遅れずについていくよう追跡プローブを押すことができる。たとえば、走査は前方向または後方向に実行されるのが好ましいが、電磁石は可変電源を用いて変化する量の電力を与えられてもよく、位置合わせ補償器システムの電磁石262の前方向位置および後方向位置と調整されていない方向に沿っている駆動されたプローブと追跡プローブとの位置合わせ不良を制御する。付加的な電磁石262は、駆動されたプローブの環状磁石218のまわりのさまざまな他の位置に位置決めされてもよく、任意の数の方向に動く駆動されたプローブおよび追跡プローブの間に付加的な補正を与える。例として、位置合わせ補償器システムの信号センサは、部分を通して送信されるTTU信号をモニタしてコントローラと通信することができ、測定されたTTU信号に基いて位置合わせ補償器の動作を変更するよう可変電源を調整し、たとえば位置合わせ補償器による信号強度を向上させるための補正を調整して、駆動されたプローブと追跡プローブと間の位置合わせ不良を補正することにより、測定される信号を増大する。たとえば、位置合わせ補償器システムの信号センサが、信号強度が構造の欠陥に起因する減衰と一致しない態様で減少していることを特定した場合、信号センサは、リニアエンコーダなどの位置合わせセンサと協調して、駆動されたプローブと追跡プローブと間の位置合わせ不良を補正するために電磁石への電力を増加させるか減少させるかをコントローラに示すことができる。同様に、2003年11月12日に米国特許出願番号第2003/0210027号として発行され、「高精度の穴開け用磁気インデクサの制御システムおよび方法(Control System and M
ethod for Magnetic Indexer for Accuracy Hole Drilling)」と題された同時係属出願であってその全体が引用により援用されたものに開示されたものなどの磁気スライドシステムは、構造を通して磁性または強磁性体材料を感知することの開示を含むがこれに限定されず、このシステムは、この発明の位置合わせ補償器を用いて磁気的に結合されたプローブを位置合わせするための位置合わせ補正システムのコントローラに用いられてもよい。位置合わせ補償器が1つを越える電磁石を含む場合、コントローラは位置合わせ補償器の動作を調整するために、1つ以上の電磁石をオフにすることができる。
【0060】
位置合わせセンサは、リニアエンコーダ270、光学センサ、方向性センサ、またはホイールエンコーダであってもよく、それは制御ヘッドに取付けられて、位置合わせ補償器システムの電磁石262の電力を修正し調整するためにコントローラ268が用い得る、瞬間的な方向および/または速度情報を与える。位置合わせセンサからの情報は、単にデコーダとも呼ばれるエンコーダ/デコーダ266に与えられてもよく、デコーダはコントローラ268に送信されたデータを規定し、コントローラは、電磁石262のための電源264を制御することによって、電磁石262の電力、したがって位置合わせ補償器を、調整し、修正する。たとえば、駆動されたプローブが前方向に動く間、位置合わせセンサは、駆動されたプローブの前方向運動を特定し、デコーダ266に情報を与え、デコーダはデータをコントローラ268に与え、コントローラ268が、電磁石262の電源を調整して位置合わせ補償器システムの前方の電磁石への電力を弱め、位置合わせ補償器システムの後方の電磁石への電力を高めて、駆動されたプローブの前方向速度に比例した量だけ追跡プローブを押して、駆動されたプローブと追跡プローブと間の位置合わせ不良を補正することを可能にする。この発明の実施例の位置合わせセンサは、デコーダ266を用いずにコントローラに情報を直接与えることができるよう適合されてもよい。この発明の実施例の位置合わせセンサはさらに、駆動されたプローブの速度および/または方向に基いて1つ以上の電磁石への電力を制御する能力を位置合わせ補償器システムに与えるために、駆動されたプローブについての方向および速度の両方の情報を与えるよう適合されてもよい。位置合わせ補償器または位置合わせ補償器システムが駆動されたプローブと追跡プローブと間の位置合わせ不良を補償する限り、位置合わせ補償器または位置合わせ補償器システムは、異なるように構成されてもよい。たとえば、環状磁石の一部に位置合わせ補償器の電磁石を打ち消すように干渉させるのではなく、たとえば位置合わせ補償器の電磁石が、追跡プローブを押すのではなく引くように積極的に干渉するようにしてもよい。
【0061】
先の説明および関連付けられた図面に示された教示の利益を有するこの発明の多くの修正および他の実施例が、当業者には想到し得るであろう。したがって、発明は開示された特定の実施例に限定的であってはならない。特定の用語は、限定する目的のためにではなく一般的、記述的な意味でのみ用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】検査用の構造の表面に磁気的に結合された装置の2つのプローブの概略図である。
【図1B】検査用の構造の表面に磁気的に結合された装置の2つのプローブの拡大された概略図である。
【図1C】ボールベアリング接触部材を用いて検査用の構造の表面に磁気的に結合された装置の2つのプローブの拡大された概略図である。
【図2A】プローブの分解図である。
【図2B】さらにプローブの別の分解である。
【図3】プローブの上から見た斜視図である。
【図4】プローブの底部斜視図である。
【図5A】ヨーク取付部を含むプローブの側面の斜視図である。
【図5B】ヨーク取付部を含むプローブの底部斜視図である。
【図5C】ヨーク取付部を含むプローブのさらに別の側面の斜視図である。
【図6】ボールソケット接触部材を含むプローブの分解である。
【図7】プローブの上面図である。
【図8】プローブの底部斜視図である。
【図9】ヨーク取付部を含むプローブの上から見た斜視図である。
【図10】検査されている構造にわたって位置決めされた2つのウォーターベアリングプローブの側面図である。
【図11】検査されている構造にわたって位置決めされた2つのウォーターベアリングプローブの直角の側面図である。
【図12】この発明による2つのウォーターベアリングプローブの側面図および位置合わせ補償器である。
【図13】2つのウォーターベアリングプローブおよび位置合わせ補償器の直角の側面図である。
【図14】環状磁石の図である。
【図15】環状磁石および位置合わせ補償器の図である。
【図16A】この発明の環状磁石を備えたプローブ、2個の電磁石を備えた位置合わせ補償器、および位置合わせ補償器の実施例の概略図である。
【図16B】各々が環状磁石を備えた2つのプローブを有する装置の実施例の概略図であって、1つのプローブは2個の電磁石を備えた位置合わせ補償器と、検査されている構造を渡って位置決めされたこの発明の位置合わせセンサとを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的に結合された検査プローブとともに用いるための位置合わせ補償器であって、
磁気的に結合された検査プローブの磁力を少なくとも部分的に変えるための第1の電磁石と、
前記第1の電磁石に電気的に結合された可変電源と、
前記可変電源に相互運用可能に接続されたコントローラとを含み、前記コントローラは磁気的に結合された検査プローブの磁力の変化を調整するために前記第1の電磁石への電力を調整することができる、位置合わせ補償器。
【請求項2】
前記コントローラに通信可能に結合される位置合わせセンサをさらに含む、請求項1に記載の位置合わせ補償器。
【請求項3】
前記コントローラおよび前記位置合わせセンサに通信可能に接続されるデコーダをさらに含み、前記位置合わせセンサはリニアエンコーダである、請求項2に記載の位置合わせ補償器。
【請求項4】
前記可変電源に相互運用可能に接続される第2の電磁石をさらに含み、前記コントローラは前記第2の電磁石への電力を調整することができる、請求項1に記載の位置合わせ補償器。
【請求項5】
超音波で構造を検査するための装置であって、
構造の第1の表面に近接して配置されるよう構成される駆動されたプローブを含み、前記駆動されたプローブは、前記駆動されたプローブが構造の第1の表面上を動かされる間、構造を検査するための磁石およびセンサを含み、さらに、
構造の対向する第2の表面に近接して配置されるよう構成される追跡プローブを含み、前記追跡プローブも、駆動されたプローブおよび追跡プローブをそれぞれ構造の第1および第2の表面の方へ引寄せるように前記駆動されたプローブの前記磁石と協働するための磁石を含み、前記駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の磁力が、前記駆動されたプローブの対応する動きに応答して、構造物の第2の表面上を前記追跡プローブが動かされるようにし、前記駆動されたプローブおよび前記追跡プローブの少なくとも1つが、前記駆動されたプローブの前記センサおよび前記追跡プローブの間の位置合わせ不良を補正するための位置合わせ補償器を含む、装置。
【請求項6】
前記位置合わせ補償器は、前記駆動されたプローブおよび前記追跡プローブの間の磁力を少なくとも部分的に変えるための永久磁石を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記位置合わせ補償器は、前記位置合わせ補償器の磁石を支持するための位置合わせ磁石ハウジングをさらに含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記位置合わせ補償器は、前記駆動されたプローブおよび前記追跡プローブの間の磁力を少なくとも部分的に変えるための電磁石を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記位置合わせ補償器はさらに、
前記位置合わせ補償器の前記電磁石に電気的に接続される可変電源と、
前記位置合わせ補償器の前記可変電源に相互運用可能に接続されるコントローラとを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは前記駆動されたプローブの前記センサに通信可能に接続される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記駆動されたプローブの前記センサによって受取られ、前記コントローラに通信される信号に基づいて前記電磁石への電力を調整することができる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記位置合わせ補償器はさらに、前記コントローラに通信可能に接続される位置合わせセンサを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記位置合わせセンサによって受取られ、前記コントローラに通信される信号に基づいて前記電磁石への電力を調整することができる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記追跡プローブはさらに、前記駆動されたプローブの前記センサからの超音波信号を受取るためのセンサをさらに含み、前記追跡プローブの前記センサは前記コントローラに通信可能に接続される、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラは、前記追跡プローブの前記センサによって受取られ、前記コントローラに通信される信号に基づいて前記電磁石への電力を調整することができる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記位置合わせ補償器は、
互いに間隔を置いて配置される少なくとも2つの電磁石と、
前記電磁石に電気的に接続される可変電源と、
前記可変電源に相互運用可能に接続されるコントローラとを含み、前記コントローラは電磁石への電力を独立して制御することができる、請求項5に記載の装置。
【請求項17】
前記コントローラは前記電磁石の少なくとも1つをオフにすることができる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記駆動されたプローブは位置合わせ補償器を含み、前記駆動されたプローブの前記磁石は環状磁石を含み、前記位置合わせ補償器は前記駆動されたプローブの前記環状磁石の対向する両側に配置される2つの電磁石を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記コントローラは、前記駆動されたプローブの前記第1の表面に対する動きの方向に依存して前記電磁石への電力を調整する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記駆動されたプローブは位置合わせ補償器を含み、前記駆動されたプローブの前記磁石は環状磁石を含み、前記位置合わせ補償器は前記駆動されたプローブの前記環状磁石の周りに間隔を置いた関係で配置される3つ以上の電磁石を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラは、前記駆動されたプローブの前記第1の表面に対する動きの方向に依存して前記電磁石への電力を調整する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
構造を検査するためのプローブであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに配置される磁石と、
前記ハウジングに配置されるセンサと、
前記ハウジングに担持される位置合わせ補償器とを含む、プローブ。
【請求項23】
前記位置合わせ補償器は永久磁石を含む、請求項22に記載のプローブ。
【請求項24】
前記位置合わせ補償器はさらに位置合わせ磁石ハウジングを含む、請求項23に記載のプローブ。
【請求項25】
前記位置合わせ補償器は電磁石を含む、請求項22に記載のプローブ。
【請求項26】
前記位置合わせ補償器はさらに、
前記位置合わせ補償器の前記電磁石に電気的に接続される可変電源と、
前記位置合わせ補償器の前記可変電源に相互運用可能に接続されるコントローラとを含む、請求項25に記載のプローブ。
【請求項27】
前記コントローラは前記センサに通信可能に接続される、請求項26に記載のプローブ。
【請求項28】
前記コントローラは、前記センサによって受取られ、前記コントローラに通信される信号に基づいて前記電磁石への電力を調整することができる、請求項27に記載のプローブ。
【請求項29】
前記位置合わせ補償器はさらに、前記コントローラに通信可能に接続される位置合わせセンサをさらに含む、請求項26に記載のプローブ。
【請求項30】
前記コントローラは、前記位置合わせセンサによって受取られ、前記コントローラに通信される信号に基づいて前記電磁石への電力を調整することができる、請求項29に記載のプローブ。
【請求項31】
構造を検査するための方法であって、
構造の第1の表面に近接して駆動されたプローブを位置決めし、構造の対向する第2の表面に近接して追跡プローブを位置決めするステップと、
駆動されたプローブおよび追跡プローブがそれぞれ構造の第1および第2の表面に向かって引寄せられるように、駆動されたプローブおよび追跡プローブの間に磁力を確立するステップと、
追跡プローブが構造の第2の表面に沿って対応して動かされるように、駆動されたプローブを構造の第1の表面に沿って動かすステップと、
結果として生じる磁力が追跡プローブおよび駆動されたプローブを位置合わせするのに非対称であるように、磁力に位置合わせ補償磁界を導入することによって駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の磁力を少なくとも部分的に変えるステップと、
駆動されたプローブが構造の第1の表面に沿って動かされ、追跡プローブが構造の第2の表面に沿って対応して動かされる間、構造に対して超音波信号を送信し、構造から超音波信号を受取るステップとを含む、方法。
【請求項32】
磁力を変える前記ステップは、駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の位置合わせ不良を補償するための位置合わせ補償器の電磁石を作動するステップを含む、請求項31に記載の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための方法。
【請求項33】
磁力を変える前記ステップは、駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の位置合わせを感知するステップをさらに含む、請求項32に記載の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための方法。
【請求項34】
駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の位置合わせを感知する前記ステップは、
駆動されたプローブおよび追跡プローブの少なくとも1つから受取られる超音波信号をモニタするステップを含む、請求項33に記載の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための方法。
【請求項35】
磁力を変える前記ステップはさらに、
駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った動きの速度、駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った動きの加速、駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った垂直から水平位置のグループから選択される少なくとも1つの特性における変化をモニタするステップと、
モニタされた変化を補償するために位置合わせ補償器の少なくとも1つの電磁石の磁界強度を調整するステップとを含む、請求項33に記載の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための方法。
【請求項36】
駆動されたプローブおよび追跡プローブを位置合わせする前記ステップはさらに、
構造の第1および第2の表面にそれぞれ沿った駆動されたプローブおよび追跡プローブの動きの方向の逆転をモニタするステップと、
方向の逆転を補償するために位置合わせ補償器の少なくとも2つの電磁石の磁界強度を調整するステップとを含み、前記電力を調整するステップは少なくとも2つの電磁石の間の位置合わせ補償を逆転させる、請求項33に記載の磁気的に引付けられたプローブを位置合わせするための方法。
【請求項37】
磁力を変える前記ステップは、駆動されたプローブから超音波信号を送信する位置および追跡プローブによって超音波信号が受取られる位置に対して少なくとも1つの磁石を位置決めし直すステップを含む、請求項31に記載の磁気的に引付けられたプローブの位置合わせのための方法。
【請求項38】
磁力を変える前記ステップはさらに、駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の位置合わせを感知するステップを含む、請求項37に記載の磁気的に引付けられたプローブの位置合わせのための方法。
【請求項39】
駆動されたプローブおよび追跡プローブの間の位置合わせを感知する前記ステップは、駆動されたプローブおよび追跡プローブの少なくとも1つから受取った超音波信号をモニタするステップを含む、ステップ38に記載の磁気的に引付けられたプローブの位置合わせのための方法。
【請求項40】
少なくとも1つの磁石を位置決めし直す前記ステップは、駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った動きの速度、駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った動きの加速、駆動されたプローブおよび追跡プローブの構造のそれぞれ第1および第2の表面に沿った垂直から水平位置のグループから選択される特性の少なくとも1つにおける変化をモニタするステップを含む、請求項38に記載の磁気的に引付けられたプローブの位置合わせのための方法。
【請求項41】
少なくとも1つの磁石を位置決めし直す前記ステップは、構造の第1および第2の表面にそれぞれ沿った駆動されたプローブおよび追跡プローブの動きの方向の逆転をモニタするステップを含む、請求項38に記載の磁気的に引付けられたプローブの位置合わせのための方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate


【公表番号】特表2008−513789(P2008−513789A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532578(P2007−532578)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033453
【国際公開番号】WO2007/001375
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】