説明

磁石及びその製造方法

【課題】 従来の磁石を用いた健康器具は、放射線ホルミシスやマイナスイオンの効果も付与するには、磁石以外の構成を組み合わせる必要があった。
【解決手段】 低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する混合工程1aと、所要の形状の成形体を得るプレス成形工程1bと、前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程1cと、前記焼結体を着磁する着磁工程1eとを少なくとも含む本発明の磁石の製造方法を用いる。
【効果】 磁石自体に、放射線ホルミシス効果とマイナスイオン効果が付与される。例えば、寝具に用いた場合、磁力によって筋肉のコリや疲れを取ることができる上、放射線ホルミシスによる免疫機能の活性や、マイナスイオンによる休息効果も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば健康器具や寝具、浄水器などに利用できる磁石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁石は、その磁力が筋肉に作用して血行を良くしたり、筋肉のコリや疲れを取るなどの効果があるといわれている。そこで、従来より、磁石を利用して筋肉の緊張を和らげるように構成された健康器具や寝具等が提案されている。
【特許文献1】特開平11−342057号公報
【0003】
例えば、上記特許文献1には、首部が当接する辺の中央部に凹状の切欠き部を有し、この切欠き部に沿って磁石を配置させた構成の磁石付き枕が開示されている。
【0004】
また、磁石とセラミックを組み合わせることにより、セラミックの周辺で磁界を発生させて、被処理水中に含まれる人体に有害な溶存物質を分解したり、イオン化、微細化等を行う浄水器も公知となっている。
【特許文献2】特開平2005−34781号公報
【0005】
例えば、上記特許文献2には、内部空間を有する円筒状の収容部と、この収容部に収められている多数の球状のセラミックと、収容部の上下両側に配置される一対の永久磁石とによって構成される浄水器が開示されている。
【0006】
一方、低線量の放射線は、人の免疫機能などを活性化し、自然治癒力、新陳代謝を高めて健康増進に効果があるといわれている。すなわち、高線量の放射線が人体に悪影響を及ぼすことは周知の通りであるが、例えばラドン、ラジウム等の天然放射性物質を含む温泉には、リューマチ等の老人性の病気を治癒する効能があるように、低線量の放射線には、人体に有益な刺激促進的作用(以下、「放射線ホルミシス効果」(Radiation hormesis)ともいう。)があることが報告されている。
【0007】
また、空気中に、放電、強い光線、放射線等のエネルギーが放射されると、その周囲に気体イオンが発生することが知られている。気体イオンはプラスイオンとマイナスイオンがあるが、このうちマイナスイオンは人の気を静め、休息させる効果のあることが報告されている。前述した低線量放射線を放射する放射性物質も、マイナスイオンを発生させる物質の一つであり、この放射性物質を担持させることによって、休息効果の得られる素材が提案されている。
【特許文献3】特開平7−258909号公報
【特許文献4】特開平10−195764号公報
【0008】
例えば、特許文献3には、天然放射性希有元素鉱物の微粉末と樹脂を攪拌混合し、これを繊維状に紡糸して、天然放射性希有元素鉱物の微粉末を練り込んだ構成の繊維が開示されている。また、特許文献4には、布帛を構成する繊維表面に、マイナスイオンを発生させるエネルギーを放射する磁性体鉱物の微粒子と、空気中に遠赤外線を放射するセラミックスの微粒子を所定重量比で付着させた無機微粒子付着加工布帛が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば特許文献1で提案された従来の健康枕は、磁力によって血行を良くしたり、筋肉のコリや疲れを取るなどの効果に止まるものであり、人の免疫機能を活性化したり、自然治癒力や新陳代謝を高めて健康増進を図る効果まで得られるものではなかった。また、特許文献1で提案された従来の健康枕は、マイナスイオンによる安眠効果は得られなかった。
【0010】
従って、従来は、例えば特許文献1で提案された磁石付き枕に、放射線ホルミシス効果やマイナスイオン効果も付与したい場合には、その枕カバーを、例えば特許文献3の繊維や、特許文献4の布帛で構成するようにしていた。そのため、特殊な枕カバーを使用する必要があり、コストが高くなるという問題があった。
【0011】
また、例えば特許文献2で提案された従来の浄水器についても、磁石とセラミックによる浄化作用に止まるものであり、人の免疫機能を活性化したり、自然治癒力を高めて健康増進を図る飲料水を提供できるものではなかった。そのため、例えば特許文献2で提案された浄水器に、放射線ホルミシス効果やマイナスイオン効果も付与したい場合は、円筒状の収容部内に、放射性鉱物を含有させた粒子もセットする必要があった。
【0012】
すなわち、本発明が解決しようとする問題点は、従来は、磁石を利用した健康器具、寝具、浄水器などにおいて、放射線ホルミシス効果やマイナスイオン効果を付与するためには、磁石以外の構成を組み合わせる必要があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の磁石及びその製造方法は、このような観点からなされたもので、磁石自体に、放射線ホルミシス効果とマイナスイオン効果を付与するものである。
【0014】
すなわち、本発明の磁石は、
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末を含有させた点を最も主要な特徴とし、
また、本発明の磁石の製造方法は、
上記本発明の磁石を製造する方法であって、
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉末をプレス成形して所要の形状の成形体を得るプレス成形工程と、
前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体を着磁する着磁工程と、
を少なくとも含むことを最も主要な特徴とする。
【0015】
また、本発明の磁石の製造方法は、
上記本発明の磁石を製造する方法であって、
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉末を溶解し、鋳込み成形して所要の形状の成形体を得る鋳込み成形工程と、
前記成形体を熱処理後、磁場中で冷却する冷却工程と、
前記成形体を着磁する着磁工程と、
を少なくとも含むように構成しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末を磁石に含有させたので、これを例えば寝具に用いれば、磁力によって筋肉のコリや疲れを取ることができることに加え、放射線ホルミシスによる免疫機能の活性効果や、マイナスイオンによる休息効果なども得られる。また、磁石以外の構成を組み合わせる必要がないから、コストの低減も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において用いる放射性鉱物の種類は、特に限定をするものではないが、例えば、ラジウム(Ra)は、α線・β線・γ線を半減期1,600年で半永久的に放出することのできる低線量放射性物質であり、法律で定める限度の放射能濃度であれば、人体へ悪影響を及ぼすことはなく、かえって人体に有益な効果を及ぼすことが確認されているので、このラジウムを含むラジウム鉱石を利用するのが好適である。また、ラジウムは、分子の分解・イオン化(電離作用)を促し、分裂結合しやすい状態を作り出すので、浄化器としての利用にも適している。
【0018】
本発明において用いる放射性鉱物の濃度は、特に限定をするものではないが、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律では、放射能濃度については74ベクレル/g(固体状の核原料にあっては、370ベクレル/g) 以下とすることが規定されているので、放射性鉱物の濃度は、法律上の規制にかからない370ベクレル/g以下とすることが望ましい。また、その下限値は任意であるが、放射線ホルミシス効果との関係で、5ベクレル/g以上のものが好ましい。
【0019】
ラジウムを含有する放射性鉱物の一例としては、ユークセン石、タレン石等が挙げられる。ユークセン石は、化学組成が(Y,Ca,Ce,U,Th)(Nb,Ta,Ti)26 であり、イットリウム、ニオブ、チタンなどを含む鉱物である。そして、副成分としてウラン、トリウムが含まれており、低線量のα線・β線・γ線を放出する。
【0020】
タレン石とは、化学組成がY3 Si310(OH)であり、イットリウム、ニオブ、タンタルなどの希元素を主成分とする希元素鉱物である。そして、副成分としてウラン、トリウムが含まれており、低線量のα線・β線・γ線を放出する点は、ユークセン石と同様である。
【0021】
また、本発明の磁石は、混合工程において、上記放射性鉱物に加えて、さらに磁石に抗菌性、防虫性、脱臭性等の機能を付与するために、例えば、アルミナ(Al23 )系、マグネシア(MgO)系、ジルコニア(ZrO2 )系、チタニア(TiO2 )系、二酸化ケイ素(SiO2 )系の機能セラミックスを混合するように構成しても良い。
【0022】
本発明の磁石は、例えば、磁性材料として酸化鉄、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム等を用いるフェライト磁石として構成することができる。フェライト磁石は、原料の酸化鉄が安価なため、生産コストが安くなるという利点がある上、減磁しにくいため、健康器具や寝具等への利用に適している。
【0023】
また、本発明の磁石は、アルニコ磁石として構成しても良い。アルニコ磁石は、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト等を主成分とし、鋳造によって製造されるので、寸法・形状等は、研磨加工により高精度のものが得られる。また、高温での使用が可能という利点がある。
【0024】
また、本発明の磁石は、サマコバ磁石として構成しても良い。サマコバ磁石は、サマリウムとコバルトを主成分とした希土類焼結磁石で、希土類元素の持つ強力な磁気異方性の性質を生かし、優れた保持力が得られる。
【0025】
また、本発明の磁石は、ネオジム磁石として構成しても良い。ネオジム磁石は、ネオジウム・鉄・ボロン等を主成分とした希土類焼結磁石で、非常に強力な磁場を作り出すことができるので、浄化器への利用に適している。また、同じ希土類磁石のサマコバ磁石よりも安価という利点がある。但し、他の磁石と比べて温度特性が低いが、常温で使用される浄化器であれば、問題はない。
【0026】
本発明の磁石の形状は特に制限はないが、例えば円柱型、円柱穴付型、リング型、角柱型、角柱穴付型、ボール型、蒲鉾型のもの等が利用できる。また、サイズも特に制限はないが、例えば1〜100mm程度の範囲から適宜決定することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施形態の一例について、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、フェライト磁石として構成した第1実施例の製造方法を説明するブロック図、図2は、ネオジム磁石として構成した第2実施例の製造方法を説明するブロック図、図3は、アルコニ磁石として構成した第3実施例の製造方法を説明するブロック図である。
【0028】
図1は、フェライト磁石として構成される第1実施例であり、磁性材料としては、酸化鉄、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムを使用する。また、本発明の特徴的部分である放射性鉱物としては、6.0重量%のラジウム鉱石の粉末を使用する。第1実施例の磁石の組成を示すと以下のようになる。なお、機能セラミックスである二酸化ケイ素(SiO2 )を含むように構成したので、第1実施例の磁石には、抗菌性等の機能も付与される。
【0029】
SrCO3 : 8.77%
BaCO3 : 0.34%
Fe23 :61.47%
SiO2 : 0.35%
CaCO3 : 0.80%
NH4 : 0.30%
放射性鉱物 : 6.00%
その他 :21.97%
【0030】
混合工程1aは、低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する工程である。混合された原料は、さらに0.1〜5ミクロンのサイズに粉砕される。
【0031】
プレス成形工程1bは、混合工程1aとその後の粉砕処理により得られた混合粉末をプレス成形し、たとえば円柱型の成形体を得る工程である。得られた成形体は、焼結工程1cにより、1000℃〜1250℃の温度で焼結される。加工工程1dは、焼結体を加工して形状を決定する工程である。最後に、焼結体は、着磁工程1eで着磁され、磁石製品となる。
【0032】
図2は、ネオジム磁石として構成される第2実施例であり、磁性材料としては、希土類元素であるネオジウム、鉄、ボロンを使用する。また、本発明の特徴的部分である放射性鉱物としては、ラジウム鉱石の粉末を使用する。
【0033】
混合工程2aは、低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する工程である。混合された原料は、溶解・粉砕工程20aにより高周波(アルゴン雰囲気中)または真空中で溶解され、さらに3〜5ミクロンのサイズに粉砕される。
【0034】
プレス成形工程2bは、混合工程2a及び溶解・粉砕工程20aにより得られた混合粉末をプレス成形し、成形体を得る工程である。得られた成形体は、焼結工程2cにより、1000℃〜1250℃の温度で焼結される。焼結後は、600〜1150℃で時効硬化処理を行う。
【0035】
加工工程2dは、磁石をさらに細かく加工し、形状等を決定する工程である。また、ネオジム磁石は錆びやすいため、表面処理工程20dで、表面にニッケルめっき又は樹脂塗装などを行う。最後に、焼結体は、着磁工程2eで着磁され、磁石製品となる。
【0036】
図3は、アルニコ磁石として構成される第3実施例であり、磁性材料としては、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルトを使用する。また、本発明の特徴的部分である放射性鉱物としては、ラジウム鉱石の粉末を使用する。
【0037】
混合工程3aは、低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する工程である。混合された原料は、溶解工程3bにより溶解される。
【0038】
鋳込み工程3cは、溶解工程3bにより得られた混合物を成形し、成形体を得る工程である。得られた成形体は、熱処理3dを行った後、冷却工程3eにおいて磁場中で冷却される。成形体は、加工工程2dで加工された後、着磁工程2eで着磁され、磁石製品となる。
【0039】
以上説明したように、本発明の磁石は、磁石自体に放射線ホルミシスとマイナスイオンの効果を付与できるので、これを、例えば寝具に用いれば、磁力によって筋肉のコリや疲れを取ることができる上、放射線ホルミシスによる免疫機能の活性や、マイナスイオンによる休息効果も得られる。また、本発明の磁石を、例えば浄水器に用いれば、磁石の有する浄化作用と、放射性ホルミシスによる自然治癒力の向上作用等を、相乗的に受けることができる。また、本発明の磁石を用いれば、磁石以外の構成を組み合わせる必要がなくなるので、コストの低減も図れる。
【0040】
なお、磁力と、放射線ホルミシス及びマイナスイオンの相乗効果は、人体にあっては、血行促進、新陳代謝の活発化、免疫力強化、細胞の活性化、情緒安定化、血液浄化等の生理的機能を向上させる作用として表れ、人体以外の物品にあっては、水の浄化、食品の鮮度・品質の保持、さらには殺菌、防臭、抗菌等の作用として表れる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の磁石は、寝具だけでなく、ソファー、椅子、座布団、クッション等に内装したり、それらの生地に取り付けたり、さらに、ベスト、腹巻、サポーター、ソックス、手袋等の衣料品や、靴の中敷に取り付けて利用することもできる。また、本発明の磁石は、水を浄化する浄化器だけでなく、野菜、魚介類、果物等の陳列ケースや冷蔵庫の中に配置して利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フェライト磁石として構成した第1実施例の製造方法を説明するブロック図である。
【図2】ネオジム磁石として構成した第2実施例の製造方法を説明するブロック図である。
【図3】アルコニ磁石として構成した第3実施例の製造方法を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1a,2a,3a 混合工程
1b,2b プレス成形工程
1c,2c 焼結工程
1e,2e,3g 着磁工程
3c 鋳込み成形工程
3e 冷却工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末を含有させたことを特徴とする磁石。
【請求項2】
請求項1記載の磁石を製造する方法であって、
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉末をプレス成形して所要の形状の成形体を得るプレス成形工程と、
前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体を着磁する着磁工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする焼結磁石の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の磁石を製造する方法であって、
低線量放射線とマイナスイオンを放出する放射性鉱物の粉末と、磁性材料の粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉末を溶解し、鋳込み成形して所要の形状の成形体を得る鋳込み成形工程と、
前記成形体を熱処理後、磁場中で冷却する冷却工程と、
前記成形体を着磁する着磁工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする鋳造磁石の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−230616(P2006−230616A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47690(P2005−47690)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(501075051)株式会社エコホリスティック (2)
【Fターム(参考)】