説明

示差屈折率計

【課題】 高流速時であってもフローセルに導入する液体の温度を一定に保つことができ、かつ従来よりも小型化が可能な示差屈折率計を提供すること。
【解決の手段】 概ね平行光を生成する光源部と、内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、を備え、前記導入配管が、1つ以上の曲部を介して1回以上折り返した形状を示しており、前記温度調整部が、前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有した、示差屈折率計により前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の変化に基づき物質濃度を測定する、液体クロマトグラフ等に用いられる示差屈折率計に関する。特に、本発明は、屈折率を高感度に測定するのに適するが温度変動の影響を受けやすい、ブライス型示差屈折率計に関する。
【背景技術】
【0002】
示差屈折率計は、フローセルに試料液、参照液を流し、フローセルを通過する液体の屈折率の差を検出するものである。この示差屈折率計は参照液と試料液との温度差が問題となることがある。また、室温変動により配管内の液体の密度が変動すると、屈折率も変動するため、屈折率の差の変動がノイズとして検出される。
【0003】
特開昭63−027733号公報(特許文献1)で開示されている、ブライス型示差屈折率計は、光源部と、試料液および参照液が通過するフローセルと、位置検出光センサと、を備えており、光源部から発せられた平行光(または概ね平行光)がフローセルを透過する際、進行方向がフローセルに導入する参照液と試料液の屈折率に応じて偏向され、その偏向量を位置検出光センサにより検出する。その際多くの場合は、特許文献1で開示されているように、フローセルを透過した光をミラーで反射させて、再びフローセルに戻しており、これにより位置検出光センサで検出する、位置の偏向量を拡大させている。以上述べたとおり、ブライス型示差屈折率計は、フローセルでの屈折角の変化に起因する、位置検出光センサに照射される位置の偏向量を検出する。そのため、温度変動により前記示差屈折率計中の部品がそれぞれ熱膨張した結果、微小な歪みが発生すると、位置検出光センサに照射される位置も同様に変化するため、ノイズとして検出される。さらに、光源部の発光強度や位置検出光センサの受光感度も温度により変化し、これらを駆動する電気回路も温度によりゲインやオフセットが変化するため、温度変動によりノイズが発生する。また演算装置もアナログ回路で構成された部分は、同様に温度変動の影響をうける。
【0004】
前述した温度変動に起因するノイズを低減するためには、外気温や室温等による温度変動が、位置検出光センサ等示差屈折率計中の部品に伝わりにくくすることが必要であり、示差屈折率計の構成部に断熱処理を施したり、前記構成部の温度を一定に保つ温度調整部をさらに備えたりすることが有効であることがよく知られている。また、フローセルに導入する液体(試料液および参照液)の温度変動を抑えるために、一般には、温度調整部によって一定温度に保たれた熱交換部を、フローセルに液体を導入する配管に沿わせ、配管と熱交換部との間で熱交換させることで液体の温度を一定にし、液体の屈折率変化を抑え、ノイズを低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−027733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
示差屈折率計を小型化する場合、それに伴い温度調整部も小型化する必要がある。すると、温度調整部に設ける、フローセルに液体を導入する配管を沿わせた熱交換部の長さも短くなるため、フローセルに導入する液体(試料液および参照液)の温度が十分に一定にならなくなる。そのため、外気温や室温等による温度変動等に起因するノイズの低減効果が十分に得られなくなる。また、高流速でフローセルに液体を導入する場合、前記液体が前記熱交換部を通過する時間が短くなる。そのため、熱の出入りが不十分となり、液体の温度が十分に一定とならなくなるため、外気温や室温等による温度変動等に起因するノイズが増大する。
【0007】
そこで、本発明は、高流速時であってもフローセルに導入する液体の温度を一定に保つことができ、かつ従来よりも小型化が可能な示差屈折率計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。
【0009】
第一の態様は、
概ね平行光を生成する光源部と、
内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、
フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、
フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、
フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、
参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、
を備えた示差屈折率計において、
前記導入配管が、1つ以上の曲部を介して1回以上折り返した形状を示しており、
前記温度調整部が、前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有している、
前記示差屈折率計である。
【0010】
第二の態様は、前記導入配管が、n個(nは2以上)の直線部と(n−1)個の曲部とを有し、かつ前記n個の直線部が互いに平行である、前記第一の態様に記載の示差屈折率計である。
【0011】
第三の態様は、前記熱交換部のうち、導入配管に沿わせた熱交換部が、導入口を含む部分の導入配管に沿わせた第一の熱交換部と、前記(n−1)個の曲部を含む部分の導入配管に沿わせた第二の熱交換部からなる、前記第二の態様に記載の示差屈折率計である。
【0012】
第四の態様は、
プランジャポンプと、試料導入手段と、分析カラムと、示差屈折率計と、を備えた液体クロマトグラフ装置であって、前記示差屈折率計が
概ね平行光を生成する光源部と、
内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、
フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、
フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、
フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、
参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、
を備え、かつ
前記導入配管が、互いに平行なn個(nは2以上)の直線部と、(n−1)個の曲部とを有し、
前記温度調整部が、前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有し、
前記導入配管のうち熱交換部による熱交換が行なわれる部分の内容積が、前記プランジャポンプが有するストローク容量の0.65倍以上である、前記液体クロマトグラフ装置である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の示差屈折率計で用いる光源としては、タングステンランプ、ハロゲン封入タングステンランプ、発光ダイオードを例示できる。示差屈折率計において、フローセルを透過させる光は概ね平行光である必要があり、そのためには前記光源からでた光を平行光に変換させる必要がある。平行光への変換方法としては、以下の方法が例示できる。
(1)レンズ付ランプやレンズ付発光ダイオードを用いる方法。
(2)光源とコリメータレンズを組み合わせる方法。
(3)光源から十分離れた位置にフローセルを設置する方法。
このうち、本発明の示差屈折計における平行光への変換方法としては、良質な平行光が得られる(2)の方式が最も好ましい。レンズの口径は、その有効径が所定幅の平行光を通過させるためのアパーチャの透過部をカバーするように選択すればよい。レンズの焦点距離は特に限定されなく、レンズの焦点距離の位置に光源を設置すればよい。発光ダイオード等の光源が発した光を有効に利用するためにはレンズと光源の距離を近づけ有効立体角を広げることが好ましく、レンズは球面収差を抑えるために非球面レンズ、あるいはアクロマティックレンズに代表される貼合せレンズを使うことができる。
【0015】
平行光断面内の光強度分布は幅方向(横方向)で概ね均一であればよい。また、光強度分布の均一性を改善するために、ビーム変換レンズを使ったり、強度分布と逆の吸収特性をもたせたフィルタなどを使ったりすることもできる。
【0016】
本発明の示差屈折率計で用いる位置検出センサとしては、複数の素子からなるセンサを例示できる。一例として、受光面が左右に2分割されたフォトダイオードからなる位置検出光センサを例示できる。また、縦横に2×2分割されたフォトダイオードを使う場合には、縦の2素子を並列接続して1素子として使うことにより2分割フォトダイオードとして使用することができる。素子については、例示した左右に2分割されたフォトダイオード、及び2×2分割されたフォトダイオードの代わりに、さらに細かく分割されたフォトダイオードや1次元CCDセンサ、及び1次元CMOSセンサといった素子を用いることができる。
【0017】
前記位置検出センサにて検出した平行光は、光源の光量に変動がなければ、各素子に生じる光電流を電流電圧変換回路等を用いて電圧信号に変換した後、差回路を使うことによって、出力として示差屈折率信号を得ることができる。また、差回路と和回路を使って2素子の差信号と和信号を求め、さらに割算回路を使って差信号を和信号で割ることによって、出力として示差屈折率信号を得ることもできる。示差屈折率信号を得る際は、ノイズ信号を抑制するために適宜フィルタ回路を用いることができる。電流電圧変換回路はノイズやドリフトを減らすため、オフセット電流やバイアス電流が小さい高精度Opアンプを使うのが好ましい。
【0018】
また、アナログ演算回路を用いる代わりに、各素子から得られた電圧信号を、ΔΣ型AD変換器などのAD変換器でデジタル値に変換し、デジタル回路で割算演算を行ない、示差屈折率信号を得ることができる。AD変換器の前には適宜アンチエリアスフィルタ回路を挿入することができる。また、デジタル値に変換した後、デジタルフィルタを掛けてもよい。
【0019】
本発明の示差屈折率計において、フローセルに試料液または参照液を導入するための導入配管は、1つ以上の曲部を介して1回以上折り返した形状を示している。本発明の示差屈折計に備える導入配管の形状の具体例としては、
(1)n個の直線部(nは2以上)の直線部と(n−1)個の曲部とを有し、かつ前記n個の直線部が互いに平行である形状や(図3から5)、
(2)1つ以上の曲部を介してジグザグ状に折り返した形状(図6)、
があげられる。なお、前記(1)の形状を採用した場合、曲部数が偶数(図4)の場合は導入配管に沿わせる熱交換部は一つで済むが、奇数(図3および5)の場合は導入口を含む部分の導入配管に沿わせた熱交換部と前記(n−1)個の曲部を含む部分の導入配管に沿わせた熱交換部の二つを必要とする。
【0020】
本発明の示差屈折率計で用いる温度調整部の温度調整手法としては、温度センサで測定した温度調整部の温度を基に、示差屈折率計の各素子に搭載されているブロックを直接加熱したり冷却する方法を例示できる。また前記ブロックが存在する空間の温度を加熱したり冷却しファン等で空間内を撹拌することで、間接的にブロックの温度を調整してもよい。前記温度調整部に使用する温度センサとしては、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体等を用いることができる。また、加熱/冷却素子としては、セラミックヒータ、電熱線、抵抗器、トランジスタ、ペルチェ素子、エア・コンディショナー等を用いることができる。
【0021】
本発明の示差屈折率計に備える温度調整部が有する熱交換部は、本発明の示差屈折計に備える導入配管および排出配管に沿った形状を有していればよく、その一例として、温度調整可能なブロックに溝状の加工を施し、その溝に配管をはめ込むことで、ブロック(熱交換部)と配管との間で熱交換させることができる。なお効率的な熱交換を促進させるために、前記ブロックと前記配管との間に生じる微小な隙間を熱伝導性の物質で充填してもよい。前記熱伝導性の物質の例として、熱伝導グリス、熱伝導性充填剤、熱伝導性接着剤、はんだ等があげられる。
【0022】
本発明の示差屈折率計を備えたクロマトグラフ装置において液体を送液する送液手段としては通常、往復運動するプランジャと逆流を防ぐためのチェック弁から構成された高圧送液ポンプ(プランジャポンプ)が用いられる。また、流量変動を抑えるために2本のプランジャを並列あるいは直列に接続したダブルプランジャポンプもよく用いられる。なお、前記プランジャポンプの下流に流量変動をさらに抑えるためのアキュムレータを設ける場合が多い。
【0023】
本発明の示差屈折率計を備えたクロマトグラフ装置における分析カラムは、分析する試料により適宜選択すればよいが、均一溶媒系で溶出可能な分析カラムが好ましい。また、前記分析カラムは通常、恒温槽の中に収納されるが、本発明の示差屈折率計の全体またはその一部を前記恒温槽の中に収納してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、概ね平行光を生成する光源部と、内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、を備えた示差屈折率計において、前記導入配管が1つ以上の曲部を介して1回以上折り返した形状を示しており、前記温度調整部が前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有している、ことを特徴としている。本発明の示差屈折率計は、導入配管に沿わせる熱交換部の長さを、フローセルに導入される試料液および参照液の温度変化を十分に抑えられるだけの長さに確保しつつ、示差屈折率計の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のブライス型示差屈折率計を示す図である。aは上方向から見た図(平面図)、bは横方向から見た図(正面図)である。
【図2】図1に示すブライス型示差屈折率計のうち、光路軸方向に対して縮小させた示差屈折率計を示す図(平面図)である。
【図3】本発明の示差屈折率計の一例を示す図(aは平面図、bは正面図)である。
【図4】本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(aは平面図、bは正面図)である。
【図5】本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(平面図)である。
【図6】本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(平面図)である。
【図7】図2に示す示差屈折率計における、流速を変化させた場合のベースラインを示す図である。図中、縦軸は信号強度(μRIU)を示し、横軸は時間(分)を示す。
【図8】図3に示す示差屈折率計における、流速を変化させた場合のベースラインを示す図である。図中、縦軸は信号強度(μRIU)を示し、横軸は時間(分)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
図1は従来のブライス型示差屈折率計を示す図(aは平面図、bは正面図)である。図1に示す示差屈折率計には、
概ね平行光を生成する光源部10と、
内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセル20と、
フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口31および導入配管32と、
フローセルに試料液または参照液を排出させるための排出口33および排出配管34と、
フローセルを透過した平行光を反射し再びフローセルに平行光を透過させるためのミラー40と、
フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサ50と、
位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算部(不図示)と、
導入配管32および排出配管34に沿わせた、試料液または参照液の温度を一定に保つための熱交換部61・62を有した、示差屈折率計内の温度を一定に保つための温度調整部60と、
を備えている。
【0028】
光源部10で生成された平行光(概ね平行光)は、フローセル20を透過する際、フローセル内の参照液と試料液との屈折率差によって偏向する。偏向した透過光はミラー40で反射され、再びフローセル20を透過した後、位置検出光センサ50で偏向を検出する。そして、検出した信号出力を基に演算部で屈折率差を演算する。なお外気温や室温等による温度変動に起因したノイズを低減させるために、位置検出光センサ50の周辺に断熱処理を施し、示差屈折率計内の温度を一定に保つ温度調整部60を備えている。また温度調整部60には、導入配管32および排出配管34に沿って熱交換部61・62を設けており、これにより試料液および参照液が、温度を一定に保たれた状態で、フローセル20に導入される。図1の示差屈折率計の場合、示差屈折率計の温調部の長さ207mmに対して、導入配管32および排出配管34は内径0.2mm、長さ164mmの管であり、その内容積は5.2μLである。
【0029】
図2は図1に示すブライス型示差屈折率計のうち、光路軸方向に対して縮小させた(小型化させた)示差屈折率計を示す図(平面図)である。なお正面図は、図1(b)に示す図のうち、導入配管32および排出配管34部分(すなわちフローセル20より右側部分)を、光路軸方向に対して縮小させた他は同一となるため省略する。小型化に伴い、温度調整部60も小型化するため、熱交換部61・62の長さも短くなる。図2に示す示差屈折率計において、示差屈折率計の温度調整部60の全長120mmに対して、導入配管32および排出配管34は内径0.2mm、長さ80mmの管であり、その内容積は2.5μLである。
【0030】
図3は本発明の示差屈折率計の一例を示す図(aは平面図、bは正面図)である。図3に示す示差屈折率計は、図2に示す示差屈折率計のうち、
導入配管32が、2つの直線部と1つの曲部35を有し、かつ前記2つの直線部が互いに平行な配管であり、
温度調整部60が、導入配管32のうち導入口31を含む部分の配管に沿わせた第一の熱交換部61aと、導入配管32のうち前記1つの曲部35を含む部分の配管に沿わせた第二の熱交換部61bと、排出配管34に沿わせた熱交換部62と、を設けている。
【0031】
図3に示す示差屈折率計において、導入配管32および排出配管34の内径はそれぞれ0.2mmであり、熱交換部61a・62の長さはそれぞれ23mmであり、熱交換部61bの長さが156mmであることから、導入配管32のうち熱交換部による熱交換が行なわれる部分の内容積は5.6μLとなる。導入配管32を1つの曲部を介して1回折り返した形状をとることにより、図2の示差屈折率計と比較して、導入配管32に沿わせた熱交換部61a・61bの長さを2倍以上長くすることができる。
【0032】
図4は本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(aは平面図、bは正面図)である。図4に示す示差屈折率計は、図2に示す示差屈折率計のうち、
導入配管32が、3つの直線部と2つの曲部35を有し、かつ前記3つの直線部が互いに平行な配管であり、
温度調整部60が、導入配管32に沿わせた熱交換部61と、排出配管34に沿わせた熱交換部62と、を設けている。図4に示す示差屈折率計は、図2の示差屈折率計と比較して、導入配管32に沿わせた熱交換部61の長さを約3倍にすることができる。また導入配管32が2回(偶数回)折り返した形状であるため、図1および図2に示す示差屈折率計と同じ方向に導入口31を設けることができる。
【0033】
図5は本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(平面図)である。なお正面図は、図3(b)に示す正面図と同一となるため省略する。図5に示す示差屈折率計は、図2に示す示差屈折率計のうち、
導入配管32が、それぞれ、4つの直線部と3つの曲部35を有し、かつ前記4つの直線部が互いに平行である配管であり、
温度調整部60が、導入配管32のうち導入口31を含む部分の配管に沿わせた第一の熱交換部61aと、導入配管32のうち前記3つの曲部35を含む部分の配管に沿わせた第二の熱交換部61bと、排出配管34に沿わせた熱交換部62と、を設けている。図5に示す示差屈折率計は、図2の示差屈折率計と比較して、導入配管32に沿わせた熱交換部61の長さを約4倍にすることができる。
【0034】
図6は本発明の示差屈折率計の別の例を示す図(平面図)である。なお正面図は、図1(b)に示す図のうち、導入配管32および排出配管34部分(すなわちフローセル20より右側部分)を、光路軸方向に対して縮小させた他は同一となるため省略する。図6に示す示差屈折率計は、図2に示す示差屈折率計のうち、導入配管32が、9つの曲部を介してジグザグ状に折り返した形状を示している。図6に示す示差屈折率計は、図2の示差屈折率計と比較して、導入配管32に沿わせた熱交換部61の長さを約1.5倍にすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
比較例1
図1に示すブライス型示差屈折率計のうち、光路軸方向に対して縮小させた示差屈折率計(図2)における、流速を変化させた場合のベースラインを測定した。示差屈折率計に試料液および参照液を送るための送液手段としては、プランジャ径2mm、ストローク長2.5mmの直列ダブルプランジャポンプを用い、プランジャのストローク容量は7.85μLである。結果を図7に示す。流速1mL/min以上の高流速になると、フローセルに流入する液温を一定に保つことができなくなり、ベースラインのノイズが大きくなることがわかる。
【0037】
実施例1
本発明の示差屈折率計の一例である図3に示す示差屈折率計における、流速を変化させた場合のベースラインを測定した。示差屈折率計に試料液および参照液を送るための送液手段は比較例1で使用したものと同じである。結果を図8に示す。図3に示す示差屈折率計は、図2に示す示差屈折率計と比較し熱交換部の長さが長いため、フローセルに流入する液温を一定に保つことができる。そのため流速1mL/min以上の高流速においても、ベースラインに発生するノイズは、図2に示す示差屈折率計と比較し抑えることができ、図1に示す従来の示差屈折率計(不図示)と同等以下となった。
【0038】
図1に示す従来の示差屈折率計、図2に示す示差屈折率計、および図3に示す本発明の示差屈折率計における、熱交換部に沿わせた導入配管の容積は、それぞれ、5.2μL、2.5μL、5.6μLであり、本比較例および本実施例で使用したプランジャポンプのストローク容量(7.85μL)に対する比率は、それぞれ0.66倍、0.32倍、071倍である。したがって、導入配管のうち熱交換部による熱交換が行なわれる部分の内容積を送液手段のストローク容量の0.65倍以上とすれば、流速1mL/min以上の高流速においても、ベースラインに発生するノイズを抑えることができることが分かる。すなわち、図3に示す本発明の示差屈折率計は、送液手段のストローク容量に対する熱交換部に沿わせた導入配管の内容積を、ノイズの抑制に必要と思われる0.65倍以上としつつ、光路軸方向に対する全長を縮小させること(すなわち小型化させること)が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の示差屈折率計は、高流速時においても参照液と試料液の温度を一定に保つことができるため、外気温変動による影響を受けにくい示差屈折率計を提供することが可能となる。また本発明の示差屈折率計は、従来の示差屈折率計と比較し小型化が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:光源部
20:フローセル
31:導入口
32:導入配管
33:排出口
34:排出配管
35:曲部
40:ミラー
50:位置検出光センサ
60:温度調整部
61・62:熱交換部
63:加熱素子
64:温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね平行光を生成する光源部と、
内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、
フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、
フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、
フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、
参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、
を備えた示差屈折率計において、
前記導入配管が、1つ以上の曲部を介して1回以上折り返した形状を示しており、
前記温度調整部が、前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有している、
前記示差屈折率計。
【請求項2】
前記導入配管が、n個(nは2以上)の直線部と(n−1)個の曲部とを有し、かつ前記n個の直線部が互いに平行である、請求項1に記載の示差屈折率計。
【請求項3】
前記熱交換部のうち、導入配管に沿わせた熱交換部が、導入口を含む部分の導入配管に沿わせた第一の熱交換部と、前記(n−1)個の曲部を含む部分の導入配管に沿わせた第二の熱交換部からなる、請求項2に記載の示差屈折率計。
【請求項4】
プランジャポンプと、試料導入手段と、分析カラムと、示差屈折率計と、を備えた液体クロマトグラフ装置であって、前記示差屈折率計が
概ね平行光を生成する光源部と、
内部が平行光の光軸に対して傾斜した斜板で仕切られた、参照液を通過させるための中空部と試料液を通過させるための中空部とを有するフローセルと、
フローセルに試料液または参照液を導入するための導入口および導入配管と、
フローセルに試料液または参照液を排出するための排出口および排出配管と、
フローセルを透過した平行光の偏向を検出するための位置検出光センサと、
参照液および試料液の温度を一定に保つための温度調整部と、
を備え、かつ
前記導入配管が、互いに平行なn個(nは2以上)の直線部と、(n−1)個の曲部とを有し、
前記温度調整部が、前記導入配管および前記排出配管に沿わせた熱交換部を有し、
前記導入配管のうち熱交換部による熱交換が行なわれる部分の内容積が、前記プランジャポンプが有するストローク容量の0.65倍以上である、前記液体クロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184956(P2012−184956A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46754(P2011−46754)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】