神経に対する方向を決定するための、システムおよび方法
外科手術の標的部位を評価するのに利用される、外科手術用機器(30)に対する神経の近接性および神経の方向を決定するための神経生理学ベースのモニタリングの使用を含む、外科手術手順および外科的評価を行うためのシステム(20)および関連する方法。本出願は、一般的に、外科手術を目的としたシステムおよび方法に関する。より詳細には、本出願は、外科手術の接近手順中に神経に対する外科手術機器の方向を決定するための、システムおよび方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、以下の、同時係属中であり同一人に譲渡された特許出願の、その全体を参考として援用する:米国仮出願番号60/382,318(表題「Surgical Access System and Related Methods」、2002年5月21日出願);PCT出願番号PCT/US02/22247(表題「System and Methods for Determining Nerve Proximity,Direction,and Pathology During Surgery」、2002年7月11日出願);PCT出願番号PCT/US02/30617(表題「System and Methods for Performing Surgical Procedures and Assessments」、2002年9月25日出願);およびPCT出願番号PCT/US02/35047(表題「System and Methods for Performing Percutaneous Pedicle Integrity Assessments」、2002年10月30日出願)。
【0002】
(背景)
(I.分野)
本出願は、一般的に、外科手術を目的としたシステムおよび方法に関する。より詳細には、本出願は、外科手術の接近手順の間、神経に対する外科手術機器の方向を決定するための、システムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(II.従来技術の説明)
種々の外科手術は、外科手術の標的部位へ接近するための作業路を確立することに関する。多くの場合、外科手術の標的部位の解剖学的位置(およびそれらへのアプローチ)に基づいて、作業路を形成するか、または作製するか、または維持するために必要とされる機器は、神経構造の近傍かまたはごく近くを通らなければならない可能性がある。このことは、接触されるかまたは妨害された場合、患者にとって問題がある可能性がある。このような「神経感受性」手順の例としては、脊椎手術、および前立腺(prostrate)または泌尿器形関連の手術が挙げられ得るが、必ずしもこれらに限定されない。
【0004】
神経および神経筋をモニタリングするためのシステムおよび方法が存在する。このようなシステムの一つは、いつ針が神経に接近しているかを決定する。このシステムは、針に電流を印加して、筋肉応答を引き起こす。この筋肉応答は、代表的には、振動または「単収縮」として、視覚的にモニタリングされる。このような筋肉応答がユーザーによって観察される場合、この針は、反応した筋に結合した神経の近くにあるとみなされる。これらのシステムは、ユーザーに、(この針が神経に接近していることを決定するために)筋肉応答を観察することを要求する。これは、ユーザーの競合する課題によっては、困難であり得る。さらに、手順の間に全身麻酔が使用される場合、筋肉応答が抑制され得、この応答を検出するユーザーの能力を制限する。
【0005】
このような現行のシステムは、一般的に、神経の近位性を決定するのに(大まかではあるが)有効である一方で、針に対する神経の方向、または組織を通過するかもしくは神経の側を通る機器の方向を決定し得ない。外科医が、神経が全体的に機器の近位にあることを理解し得る一方で、その機器に対する神経の方向を決定することができないことは、その機器を進める際に、外科医に推測による作業をさせ得る。このことは、神経へ不注意の接触をする不安、および神経に損傷を与える可能性を生じさせる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本出願は、先行技術による上記問題の影響を、少なくとも減少させることに関し得る。本出願は、外科手術手順の間、神経に対する外科手術用機器の方向を決定するためのシステムおよび関連する方法を包含する。本システムの一局面によると、これは、外科手術の標的部位に接近することに利用される外科手術用機器に対する神経の方向を決定するための、神経生理学ベースのモニタリングの使用に関する。本システムは、外科医が駆動するシステムを提供するために、自動で、使用が容易で、そして解釈が容易な様式で、これを実施し得る。
【0007】
本システムは、神経生理学モニタリングと、外科手術の標的部位において使用されるか、または外科手術の標的部位に接近するのに使用される、任意の種々の機器(本明細書において、「外科手術用接近用機器」と称される)とを組み合わせ得る。例のみとして、このような外科手術用接近用機器としては、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製するための多数のデバイスもしくは構成要素(例えば、K−ワイヤ、連続的に拡張するカニューレシステム、ディストラクタシステム、および/またはレトラクタシステム)が挙げられ得るが、これらに限定される必要はない。本明細書においては、主に脊髄手術における使用に関して記載されるが、本方法および本システムの教示が、外科手術の標的部位への手術用の通路を確立するために、重要な神経構造を有する組織を通過しなければならない(または重要な神経構造を有する組織の近くを通らなければならない)多数のさらなる外科手術手順における使用に適切であり得ることが、容易に理解されるべきである。
【0008】
本出願に従う一般的方法は、以下を包含し得る:(a)外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する工程;(b)この電極を刺激して、この外科手術用接近用機器の近くの神経に結合する筋肉の神経筋単位を神経支配するのに必要な電流閾値(IThresh)を同定する工程;(c)連続的近似を介して、この外科手術用接近用機器に対するこの神経の方向を決定する工程;および(d)この連続的に近似した方向の情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する工程。
【0009】
外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する行為は、当該外科手術用接近用機器に依存して、多数の適切な様式で達成され得る。例えば、電極は、連続拡張システム(初期拡張器、拡張カニューレ、および作業カニューレを備える)、ならびに鏡型接近システムおよび/またはレトラクタベースの接近システムの、任意のまたは全ての構成要素上において直交して配置され得る。刺激行為は、任意の種々の適切な刺激信号(種々の大きさおよび/または周波数の電圧パルスおよび/または電流パルスを含む)を、この外科手術用付属品上の電極に適用することによって達成され得る。刺激の実行は、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製する処理の間および/または後に実施され得る。
【0010】
連続的近似を介して神経に対する外科手術用接近用機器の方向を決定する行為は、好ましくは、特定の神経に結合され、そして所望の外科手術の標的部位への外科手術的接近を得るプロセスの間に刺激される神経によって神経支配される、筋群のEMG応答をモニタリングまたは測定することによって実施される。
【0011】
この連続的近似情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する行為は、多数の適切な様式で達成され得る。これらの様式としては、視覚的な印(例えば、英数字、発光エレメントおよび/またはグラフィックス)ならびに音伝達(例えば、スピーカーエレメント)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、これは、神経に対する全体的な方向を示す弧または他の図解的表現を提供する工程を包含し得る。この方向指標は、比較的広範囲で速やかに開始し得、(経時的に上昇する精度に基づいて)順次より狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を示す単一の矢印で終結し得る。
【0012】
この連続的近似情報の伝達は、重要な特徴であり得る。このような方向情報を提供することによって、ユーザーは、手術用の通路が外科手術の標的部位に対して確立される間および/または確立された後、神経が所定の外科手術用付属品エレメントに接近し過ぎていないか否かに関して情報を得続ける。これは、ユーザーが、能動的に神経を避け、そして外科手術用接近用構成要素を再度方向付けて、神経にぶつかることも、他の方法で神経を損なうこともなく手術用の通路をうまく作製することを可能にするという点で、外科手術の標的部位に接近する処理の間において、特に有利である。
【0013】
この神経方向付け特性に基づいて、機器は、組織内の関連する神経構造にぶつかる危険性、または他の方法で損傷を与える危険性が(あるとすれば)最小限の状態で、実質的にあらゆる組織を通過し得、これによって、本システムは、多岐にわたる外科手術用途に適切になる。
【0014】
複数の電極(例えば、4つの電極)について一度に一つの刺激閾値電流を検出する方向検出アルゴリズムは、一つの方向ベクトルで終結するために、40〜80回の刺激を必要とし得る。10Hzの刺激速度では、この方法は、どんな方向情報が外科医に利用可能となる前にも、4〜8秒を要し得る。外科医は、このシステムにしびれを切らす可能性がある。本明細書において記載される「弧」法は、方向検出アルゴリズムを改善し得、そして神経方向情報を外科医により速やかに提供し得る。このシステムは、一連の刺激の間、神経に対する方向を、「弧」(または楔)として表示し得、この「弧」(または楔)は、神経を含む一帯を表す。方向弧(楔)の計算は、正確な、最終的に計算された刺激電流閾値レベルの代わりに、刺激電流閾値範囲に基づき得る。方向弧(楔)の表示は、刺激電流閾値が一定の値の範囲にあることが知られている任意の時間に可能である。
【0015】
一つの局面は、システムに関する。このシステムは、以下を備える:少なくとも一つの刺激電極を有する、外科手術用付属品;およびこの外科手術用付属品上の少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、この刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、この感知した応答に基づいて、この外科手術用付属品からこの神経への方向を決定し得、そしてこの方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット。このシステムは、この脱分極した神経に結合している筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備える。この電極は、この応答をこの制御ユニットに送るように動作可能であり得る。
【0016】
この外科手術用付属品は、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備え得る。この手術用の通路を確立するためのシステムは、一連の連続拡張カニューレを備え得、ここで、少なくとも一つのカニューレは、遠位端の近くに上記の少なくとも一つの刺激電極を有する。この手術用の通路を確立するためのシステムは、K−ワイヤをさらに備え得る。このK−ワイヤは、遠位先端に第一の刺激電極を有し得る。このK−ワイヤは、この遠位先端から離れた第二の刺激電極を有し得る。このK−ワイヤは、この外科手術用付属品にスライド可能に受容され得、ここで、この外科手術用付属品は、複数の電極を有する。この手術用の通路を確立するためのシステムは、脊髄の標的部位に接近するように構成され得る。この手術用の通路を確立するためのシステムは、側方の腰筋を経るアプローチを介して手術用の通路を確立するように構成され得る。
【0017】
このシステムは、この外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え得る。このハンドルは、この制御ユニットからこの外科手術用付属品上の少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するため、少なくとも一つのボタンを有し得る。
【0018】
この制御ユニットは、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備え得る。この制御ユニットは、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備え得る。
【0019】
この外科手術用付属品は、複数の刺激電極を備え得る。この刺激電極は、この外科手術用付属品の遠位端近くに配置され得る。この刺激電極は、二次元平面に配置され得る。この刺激電極は、直交して配置されて十字形を形成し得る。この制御ユニットは、以下:
【0020】
【数7】
を用いることによって、この外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き得、ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す。この刺激電極は、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え得、そしてこの第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備え得る。この刺激電極は、四面体を形成し得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され得る。
【0021】
この制御ユニットは、以下:
【0022】
【数8】
を用いることによって、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定し得る。この制御ユニットは、以下:
【0023】
【数9】
を用いることによって、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され得、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【0024】
【数10】
から計算される。この制御ユニットは、ユーザーに対して上記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成され得る。
【0025】
この刺激電極は、二対の電極を備え得る。この刺激電極は、この外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え得、そしてこの外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備え得る。
【0026】
この制御ユニットは、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケット(bracket)とされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成され得る。この第一の電流信号と第二の電流信号とは、等しくてよい。この制御ユニットは、この第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そしてこの第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するように、さらに構成され得る。各範囲は、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有し得る。この制御ユニットは、以下:
【0027】
【数11】
を用いることによって、この第一の範囲と第二の範囲とを処理するように構成され得、ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す。この制御ユニットは、以下:
【0028】
【数12】
を用いることによって、この第一の範囲と第二の範囲とを処理するように構成され得、ここで、dは、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である
この制御ユニットは、この第一の範囲とこの第二の範囲とを処理して、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され得る。この制御ユニットは、この第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、この第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、この第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、この第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成され得る。
【0029】
この制御ユニットは、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、この弧を狭めるように構成され得る。この制御ユニットは、この第一の刺激電極および第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、この弧を狭めるように、構成され得る。
【0030】
この制御ユニットは、この制御ユニットがこの外科手術用付属品とこの神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、音を発するように構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品とこの神経との間の距離を示す音を発するように構成され得る。この外科手術用付属品は、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされ得る。
【0031】
別の局面は、細長い本体およびこの細長い本体上の複数の電極を備える、外科手術用機器に関する。各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成される。少なくとも一つの電流レベルは、この細長い本体が神経の近くにある場合にこの神経を脱分極するのに十分である。この細長い本体は、K−ワイヤを備え得る。この細長い本体は、カニューレを備え得る。この電極は、二次元平面に4つの直交する電極を備え得る。この電極は、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そしてこの第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備え得る。この電極は、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成され得る。この細長い本体は、連続拡張システムを備え得る。
【0032】
別の局面は、本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な処理ユニットに関する。
【0033】
別の局面は、方法に関する。この方法は、以下を包含する:本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および、このシステムにソフトウェアをインストールする工程。この方法は、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程を、さらに包含し得る。
【0034】
別の局面は、外科手術用機器からの神経の方向を検出する方法に関する。この方法は、以下を包含する:本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激する工程;この第一の刺激電流信号によって、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激する工程;および、この第二の刺激電流信号によって、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程。
【0035】
この第一の電流信号と第二の電流信号とは、等しくてよい。この方法は、この第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定する工程、およびこの第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定する工程をさらに包含し得、各範囲は、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する。この方法は、この第一の範囲と第二の範囲とを処理する工程、およびこの外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程をさらに包含し得る。
【0036】
この方法は、以下をさらに包含し得る:この第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激する工程;この第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;上記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激する工程;および、この第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程。この方法は、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激する工程をさらに包含し得る。この方法は、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、この弧を狭める工程を、さらに包含し得る。
【0037】
この方法は、この第一の刺激電極とこの第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で第一の刺激電極閾値がこの第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値がこの第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分する工程をさらに包含し得る。この方法は、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、この弧を狭める工程を、さらに包含し得る。
【0038】
(詳細な説明)
本出願の説明的実施形態が、以下に記載される。明確化の目的で、本明細書においては、実際の実施の全ての特徴がを記載されるわけではない。いずれのこのような実際の実施形態の開発においても、実施に特異的な多数の決定がなされて開発者の特定の目標(例えば、一つの実施と別の実施とでは異なる、システム関連の制約およびビジネス関連の制約への準拠)が達成されなければならないことが、当然理解される。さらに、このような開発の努力は、複雑であり得かつ時間がかかり得るが、それにもかかわらず、この開示の利益を有する当業者にとって、慣習的に行われていくであろうことが、理解される。本明細書において開示されるこのシステムは、個々に、および組合せで、特許保護に値する種々の発明の特徴および構成要素を誇る。
【0039】
図1は、本出願の一実施形態に従う一般的な特徴、すなわち:(a)外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置される)電極を提供する工程;(b)この電極を刺激して、この外科手術用接近用機器の近くの神経に結合する筋肉の神経筋単位を神経支配するのに必要な電流閾値(IThresh)を同定する工程;(c)連続的近似を介して、この外科手術用接近用機器に対するこの神経の方向を決定する工程;および(d)この連続的に近似した方向の情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する工程、を図示する。
【0040】
外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する行為は、当該外科手術用接近用機器に依存して、多数の適切な様式で達成され得る。例えば、電極は、上記に援用される、同時継続中であり同一人に譲渡された2002年5月の米国特許仮出願に開示されるように、連続拡張システム(初期拡張器、拡張カニューレ、および作業カニューレを備える)、ならびに鏡型接近システムおよび/またはレトラクタベースの接近システムの、任意のまたは全ての構成要素上において直交して配置され得る。刺激する行為は、任意の種々の適切な刺激信号(種々の大きさおよび/または周波数の電圧パルスおよび/または電流パルスを含む)を、この外科手術用付属品上の電極に適用することによって達成され得る。この刺激行為は、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製する処理の間および/または後に実施され得る。
【0041】
連続的近似を介して神経に対する外科手術用接近用機器の方向を決定する行為は、好ましくは、特定の神経に結合され、そして所望の外科手術の標的部位へ外科手術的に接近する処理の間に刺激される神経によって神経支配される筋群の、EMG応答をモニタリングまたは測定することによって実施される。
【0042】
この連続的近似情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する行為は、多数の適切な様式で達成され得る。これらの様式としては、視覚的な印(例えば、英数字、発光エレメントおよび/またはグラフィックス)ならびに音伝達(例えば、スピーカーエレメント)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、これは、神経に対する全体的な方向を示す弧または他の図解的表現を提供する工程を包含し得る。この方向指標は、比較的広範囲で速やかに開始し得、(経時的に上昇する精度に基づいて)順次、より狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を示す単一の矢印で終結し得る。
【0043】
この方向指標は、重要な特徴であり得る。このような方向情報を提供することによって、ユーザーは、手術用の通路が外科手術の標的部位に対して確立される間および/または確立された後、神経が所定の外科手術用付属品エレメントに接近し過ぎているか否かに関する情報を得続ける。これは、ユーザーが、能動的に神経を避け、そして外科手術用接近用構成要素を再度方向付けて、神経にぶつかることも、その他に神経を危うくすることもなく手術用の通路をうまく作製することを可能にするという点で、外科手術の標的部位に接近する処理の間において、特に有利である。
【0044】
そして、この神経方向付け特性に基づいて、機器は、組織内の関連する神経構造にぶつかる危険性、または組織内の関連する神経構造に他の損傷を与える危険性が(あるとすれば)最小限の状態で、実質的にあらゆる組織を通過し得、これによって、本システムは、多岐にわたる外科手術用途に適切になり得る。
【0045】
図2〜3は、例のみとして、本発明の広範な局面に従う外科手術システム20を図示する。外科手術システム20は、制御ユニット22、患者モジュール24、この患者モジュール24に接続されたEMGハーネス26および帰還電極28、ならびに(例のみとして)ケーブル32を介して患者モジュール24に接続され得る連続拡張外科手術用接近用システム34を備える。この連続拡張接近システム34は、例のみとして、K−ワイヤ46、一以上の拡張カニューレ48、および作業カニューレ50を備える。
【0046】
この制御ユニット22は、タッチスクリーンディスプレイ40および基部42を備える。これらは、集合的に、外科手術システム20を制御する本質的な処理能力(ソフトウェアおよび/またはハードウェア)を備える。この制御ユニット22は、本明細書において記載されるような、神経に対する外科手術エレメントの配置に従って音を発する音響ユニット18を備え得る。
【0047】
この患者モジュール24は、データケーブル44を介してこの制御ユニット22に接続され、制御ユニット22と患者モジュール24との間の電気的な接続および連絡(デジタルおよび/またはアナログ)を確立する。この制御ユニット22の主機能としては、タッチスクリーンディスプレイ40を介してユーザー指令を受けること、外科手術用接近用機器30上の刺激電極を作動させること、規定のアルゴリズム(以下に記載される)に従って信号データを処理すること、受けたパラメータおよび処理したデータを表示すること、そしてシステム状態をモニタリングして故障状態を報告すること、が挙げられる。このタッチスクリーンディスプレイ40は、好ましくは、情報をユーザーに連絡し、ユーザーからの指示を受け得るグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を備える。ディスプレイ40および/または基部42は、刺激供給源を支配し、患者モジュール24からデジタル化した信号および他の情報を受け、EMG応答を処理して各筋群についての特徴情報を抽出し、そして処理したデータをディスプレイ40を介して操作者に表示する患者モジュールインターフェース回路(ハードウェアおよび/またはソフトウェア)を含み得る。
【0048】
一実施形態において、この外科手術システム20は、外科手術の標的部位への手術用の通路の作製の間および/または後に、各K−ワイヤ46、拡張カニューレ48および/または作業カニューレ50に対する神経の方向を決定し得る。外科手術システム20は、種々の外科手術用接近用機器46〜50上の、直交性に配置された刺激電極1402A〜1402D(図14A〜14B)の各々(例えば、機器46〜50の遠位端上の電極)に電気刺激信号を送るように協働する制御ユニット22および患者モジュール24を有することによって、これを達成する。患者内の外科手術用接近用機器46〜50の配置に依存して、刺激信号は、外科手術用機器46〜50に隣接するかまたは全体的に近位にある神経を脱分極させ得る。これは、筋群を刺激し、そしてEMG応答を引き起こす。この応答は、EMGハーネス26を介して感知され得る。このシステム20の神経方向付け特性は、EMGハーネス26を介して外科手術システム20によってモニタリングされた、種々の筋の神経筋単位の誘発された応答の評価に基づく。
【0049】
連続拡張外科手術接近システム34は、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の組織をブラントダイセクションするように設計される。各K−ワイヤ46、拡張カニューレ48および/または作業カニューレ50は、複数の(例えば、4つの直交性に配置される)刺激電極を備えて、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の神経の配置を検出し得る。これを容易にするため、外科手術用付属品46〜50の患者モジュール24への(ケーブル32を介する)電気的接続のために、外科手術用ハンドピース52が提供される。好ましい実施形態において、外科手術用ハンドピース52は、制御ユニット22から特定の外科手術用接近用機器46〜50への刺激信号(好ましくは、電流信号)を選択的に開始するための、一以上のボタンを備える。手術用の通路を形成する際に組織を通過する間における、これらの外科手術用接近用機器46〜50上の電極の刺激は、この外科手術用接近用機器46〜50に接近したかもしくは比較的近位になった神経を脱分極させ、神経支配された神経筋単位の応答を引き起こす。
【0050】
神経に結合する神経筋単位を(EMGハーネス26および記録電極27を介して)モニタリングすること、および得られたEMG応答を(制御ユニット22を介して)評価することによって、この連続拡張接近システム34は、このような神経に対する方向を検出し得る。方向決定は、能動的にこのような神経の周辺を通り抜けるかまたはこのような神経を過ぎて、特定の外科手術の標的部位への手術用の通路を安全かつ再現性よく形成する能力を提供する。一実施形態において、例のみとして、この連続拡張接近システム34は、脊柱の骨の背側要素を避けるように背外側性に腰筋を横切る様式で椎間の標的部位への手術用の通路を確立するために、特に適切である。
【0051】
これらの機能を達成するための神経生理学の背後のアルゴリズムおよび原理の考察がここで行われ、これらの原理の種々の実施の詳細な説明がこれに続く。
【0052】
図4および図5は、本出願の基本的な局面を説明する:刺激信号(図4)および得られた誘発された応答(図5)。例のみとして、この刺激信号は、好ましくは、システムソフトウェアによって調節可能な周波数および振幅の、長方形の単相性パルスを有する刺激電流信号(Istim)である。一実施形態において、刺激電流(Istim)は、任意の適切な様式で接続され得(すなわち、ACまたはDC)、そして200μ秒の長さの長方形の単相性パルスを備える。この電流パルスの振幅は、固定され得るが、好ましくは、任意の適切な範囲の電流振幅(例えば、2〜100mA)から掃引され得る。各神経および神経筋単位について、刺激電流パルスからEMG応答までに特徴的な遅延(代表的に5〜20ms)が存在する。これを補償するため、電流パルスの周波数は、適切なレベル(例えば、好ましい実施形態においては、4Hz〜10Hz(および最も好ましくは、4.5Hz))に設定されて、神経が脱分極から回復する機会を有する前にこの神経を刺激することを防止し得る。図5に示されるEMG応答は、Vpp=Vmax−Vminの最高最低電圧によって特徴付けられ得る。
【0053】
このシステム20によって利用される神経生理学の背後の基本事項は、各神経は、それが脱分極する特徴的な閾値電流レベル(IThresh)を有する、ということである。この閾値より下では、電流刺激は、顕著なEMG応答(Vpp)を誘発しない。一旦この刺激閾値(IThresh)に達した場合、誘発された応答は、再現性があり、かつ刺激の増大に従って、飽和に達するまで増大する。この刺激電流とEMG応答との間の関係は、図6に示されるような、いわゆる「漸加曲線」を介して図解的に表現され得る。この「漸加曲線」は、開始領域、直線領域、および飽和領域を含む。例のみとして、このシステム20は、顕著なEMG応答がおよそ100μVのVppを有することを規定し得る。好ましい実施形態において、この閾値電位を誘発する最低の刺激電流(VThresh)は、刺激電流閾値または「IThresh」と呼ばれる。
【0054】
この有用な情報を得るために、このシステム20は、所定の刺激電流(Istim)に相当する各EMG応答の最高最低電圧(Vpp)を最初に同定する。しかし、刺激および/またはノイズアーチファクトの存在は、電気的に誘発されたEMG応答の、誤ったVpp測定を引き起こさせ得る。この課題を克服するため、この外科手術システム20は、多数の適切なアーチファクト排除技術を利用し得る。(刺激および/またはノイズアーチファクト排除技術によって容易にされたように)各VppEMG応答を測定した場合、このVpp情報は、神経と、刺激電流を伝達する外科手術用接近用機器46〜50上の所定の電極との間の関係を決定するために、刺激電流に対して分析される。より具体的には、このシステム20は、所定のVppEMG応答を引き起こし得る最低刺激電流(IThresh)を同定することによって、(神経と外科手術用付属品との間の)これらの関係を決定する。
【0055】
IThreshは、外科手術用接近用機器34、36と神経との間の方向を決定する目的で、4つの直交する電極1402A〜1402D(図14A〜図14B)の各々について決定され得る。これは、二部分閾値−探索アルゴリズム(two−part threshold−hunting algorithm)を利用することによって達成され得る。このアルゴリズムは、ブラケット化プロセスと、二分(二分割)プロセスとを含み、各刺激電極について段階的に進行し、逐次的方向情報をユーザーに提供し得る。
【0056】
(弧法)
一実施形態において、逐次的方向情報は、以下に記載される「弧」法に従って、神経を含む一帯を表す弧または楔(または範囲)の形態を取り得る。この逐次的方向情報は、刺激電流閾値「範囲」に基づき、そして表示され得る(図15A〜図15C)か、他に、刺激電流閾値が値の範囲に入ることが知られた時はいつでも外科医に対して連絡され得る。
【0057】
ブラケット化プロセスにおいて、電気刺激が、4つの直交する電極1402A〜1402D(図14A〜図14B)の各々に提供される。この電気刺激は、低い電流レベル(例えば、0.2mA)で始まり、そして一定の比率で増大する。「弧」法においては、4つの電極1402A〜1402Dの各々は、(別の電極1402に進む前に一つの電極1402についてのブラケット化を完了する別の方法に対して)次のより高い電流レベルに進む前に、順次、同じ電流レベルで刺激され得る。目標は、4つの刺激電極1402A〜1402Dの各々について、刺激電流の周りのブラケットを同定することである。刺激電流閾値が電極1402についてブラケットとされた場合、このブラケット化作業は、電極1402について完了し、そして刺激は、刺激電流閾値が各電極についてブラケットとされるまで、残りの電極について進行する。ブラケット化プロセスが進行するのに従って、各新しい刺激は、電極1402についての電流閾値の「範囲」についての情報を提供する。この情報は、刺激電流閾値を(例えば、1.6mAと3.2mAとの間に)ブラケットとさ得るか、またはこれは、電流閾値についてのより低い境界(例えば、閾値が5.0mAより大きい)を提供するのみであり得る。いずれの事象でも、この「弧」にブラケット化するプロセスは、刺激電極1402A〜1402Dの各々について進行し、逐次的に、外科手術用接近用機器46〜50に対する神経の方向に関するより正確な情報を提供する。
【0058】
図10に示されるように、最終的な方向ベクトルを含む弧(楔)は、4つの刺激電極1402A〜1402Dに対応する刺激電流閾値についての範囲情報から計算される。これは、ブラケット化プロセスが進行する場合に所望される頻度で行われ得る。次いで、この弧(楔)は、図15A〜図15Cにおけるように、操作者に方向情報を表示するのに使用され得る。
【0059】
この連続的近似情報は、多くの解釈が容易な様式で外科医に連絡され得る。この様式としては、視覚的な印(例えば、図15A〜図15Cおよび図20〜図21におけるような、英数字文字、発光エレメントおよび/またグラフィックス)および音響伝達(例えば、図3のスピーカーエレメント18)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、この逐次的方向情報は、「弧」1502を提供すること(ゆえに、「弧」法という名である)、または神経に対する全体的な方向を示す他の図解的表現を提供することを含み得る。これらは、比較的広範に開始し得、(時間とともに改善する精度に基づいて)逐次的により狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を指示する単一の矢印で終結し得る。図15A〜15Cは、ブラケット化プロセスおよび二分プロセスの間により多くの刺激電流パルスが作られて、EMG応答が分析される場合の、機器1500の断面のスクリーンショット、ならびに広い方向の弧1502A、より狭い方向の弧1502Bおよび矢印1502Cを図示する。
【0060】
弧情報を表示するための多くの可能性が存在する。弧または楔は、表示され得る。あるいは、矢印は、弧の中点を指し得る。別の表示が使用されて、弧の幅を図示し得る(すなわち、結果を不確実な状態にしておく)。
【0061】
ブラケット化プロセスの完了の際、二分プロセスが、刺激電流閾値をより正確に決定し得る。ブラケット化プロセスによるように、電流刺激は、刺激電極の間を「回転」し得、それによって閾値は、「弧」法により、実質的に並行して正確にされる。ブラケット化プロセスによるように、最終的な方向ベクトルを含む弧(楔)1502は、このプロセスの間、頻繁に計算されて、表示され得る(図15A〜図15C)。二分法の完了の際、全ての電極1402A〜1402Dについて、刺激電流閾値は正確に同定される。このとき、最終的な方向ベクトル1502C(図15Cおよび図20〜図21)が表示され得る。
【0062】
上記の二部分探索−アルゴリズムは、図7A〜図7Eを参照してさらに説明され得る。弧法に従って、各電極1402は、次の刺激電流レベルを通過する前に、同じ刺激電流レベルで刺激される。この様式において、逐次的方向情報は、上記のように得られ得る。閾値電流(IThresh)は、既知の閾値電圧(VThresh)よりも大きいVpp(図5)を引き起こす最低の刺激電流(IStim)(図6)である。IStimの値は、以下のようなブラケット化法によって調節され得る。第一のブラケット化は、0.2mAおよび0.3mAであり得る。これらの刺激電流の両方に対応するVppがVThreshよりも低い場合、このブラケットの大きさは、0.2mAおよび0.4mAに倍加され得る。このブラケットの大きさの倍加は、このブラケットの上端がVThresh以上のVppとなるまで継続する。
【0063】
次いで、このブラケットの大きさは、二分法によって減少し得る。このブラケットの中点の電流刺激値が使用され、そしてこの結果がVThresh以上のVppとなる場合、下半分が新しいブラケットとなる。同様に、この中点VppがVThresh以下である場合、上半分が新しいブラケットとなる。この二分法は、ブラケットの大きさがIThreshmAに減少されるまで使用される。IThreshは、このブラケットに入る値として選択され得るが、好ましくは、このブラケットの中点として定義される。
【0064】
この実施形態の閾値−探索アルゴリズムは、3つの状態:ブラケット化すること、二分すること、およびモニタリングすることを支持し得る。「刺激電流のブラケット」は、刺激電流閾値IThreshをブラケット化する刺激電流の範囲である。ブラケットの幅は、上部境界の値マイナス下部境界の値である。チャンネルの刺激電流閾値IThreshが最大刺激電流を超える場合、この閾値は、範囲外とみなされる。ブラケット化状態の間、閾値探索は、本明細書において記載される方法を利用して、範囲の各EMGチャンネルについて、刺激電流を選択し、刺激電流のブラケットを同定する。
【0065】
最初のブラケット範囲は、多数の適切な範囲で提供され得る。一実施形態において、最初のブラケット範囲は、0.2mA〜0.3mAである。上部刺激電流が応答を誘発しない場合、この範囲の上端は、上昇すべきである。例えば、範囲規模係数は、2であり得る。この刺激電流は、好ましくは、一つの繰り返しにおいて10mAよりも大きくまで増大されるべきでない。この刺激電流は、好ましくは、プログラムされた最大刺激電流を決して超えない(神経の損傷、傷害または他の望ましくない影響を防止するため)。各刺激について、アルゴリズムは、各活性チャンネルの応答を検査して、この刺激電流がそのブラケットに入るか否かを決定する。一旦各チャンネルの刺激電流閾値がブラケットとされた場合、このアルゴリズムは、二分状態に移行する。
【0066】
二分状態の間(図7Cおよび図7D)、閾値探索は、刺激電流を選択し得、そして各EMGチャンネルについて、範囲内の閾値によって選択した幅(例えば、0.1mA)にブラケットを狭め得る。最低刺激電流がブラケットとされた後(図7B)、その平方根が特定の精度であることが分かるまで、その平方根を含む範囲がより正確にされる。この二分法は、平方根を含む範囲を正確にするために使用される。一実施形態において、この平方根は、0.1mAの精度まで検出されるべきである。二分法の間、このブラケットの中点における刺激電流が使用される。刺激が応答を誘発する場合、ブラケットは、以前の範囲の下半分に縮まる。刺激が応答を誘発しない場合、ブラケットは、以前の範囲の上半分に縮まる。神経近位性/方向検出アルゴリズムは、選択された幅(すなわち、0.1mA)によって分離される応答閾値が刺激電流によってブラケットとされる場合、電極位置上に固定される。このプロセスは、全ての閾値が正確にわかるまで、活性チャンネルの各々について繰り返される。このとき、このアルゴリズムは、モニタリング状態に入り得る。
【0067】
モニタリング状態(図7E)の間、閾値探索は、以下に記載される方法を利用して、刺激電流を選択し得、そして刺激電流閾値が変化しているか否かを同定し得る。モニタリング状態において、刺激電流レベルは、特定のチャンネルの応答に依存して、0.1mAごとに減衰または増加し得る。閾値が変化しない場合、ブラケットの下端は応答を誘発せず、一方ブラケットの上端は応答を誘発するはずである。これらの条件のいずれかが成り立たない場合、このブラケットは、それに応じて調節される。このプロセスは、活性チャンネルの各々について繰り返され、各閾値が確実にブラケットとされるように継続する。刺激が予期される応答を連続して3回誘発しない場合、このアルゴリズムは、ブラケットを再構築するためにブラケット化状態に戻り得る。
【0068】
刺激電流閾値範囲情報から逐次的な弧/楔方向情報を計算するための方法が記載される。この刺激電流閾値が、神経までの距離に比例すると仮定される。神経は、単一の点としてモデル化され得る。刺激電流電極は直交するアレイの中にあるので、方向ベクトルのX次元成分およびY次元成分の計算は、独立に進められ得る。図8を参照すると、北電極および南電極800A、800Cは、Y次元成分に寄与し、一方東電極および西電極800B−800Dは、X次元成分に寄与する。神経に対する方向ベクトル<x,y>は、以下のように定義され得る:
【0069】
【数13】
ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極802B、西電極802D、北電極802Aおよび南電極802Cそれぞれの刺激電流閾値を表す。(この方程式は、便宜的に、任意のスケールで標準化し得る。)
閾値探索法を開始する場合、刺激電流閾値は、ある値の範囲内でのみ知らされる。したがって、X次元成分およびY次元成分は、ある範囲内でのみ知らされる。この方法は、以下のように、先の定義の拡張を提供する:
【0070】
【数14】
ie,最小およびie,最大のブラケットieのように、xおよびyが、[x最小,x最大]および[y最小,y最大]によってブラケットとされる。別の方法で規定すると、点(x,y)は、図9で示されるように、これらの境界によって記載される長方形900の中に位置する。図10で示されるように、点(x,y)が起点から点としてモデル化された神経へのベクトルを表すように、境界長方形900は、ベクトルを含む弧(楔)を表す。
【0071】
弧法は、いくつかの利点を有し得る。第一に、この弧は、より多くの刺激および応答が分析される場合、比較的迅速な様式で狭まり得る。この方法は、各電極1402についての電流閾値が次の電極1402に動く前に決定される場合よりずっと早く、全体的な方向情報を提供する。全体的方向情報を用いて、刺激電流ベクトルの最終的な精度を有する前に刺激を終結し得る可能性があり得る。これは、多くの場合、より速い応答を生じる。弧法は、データ分析のリアルタイムの表示を提供し得る。これは、ユーザーにさらなる刺激の値を示すのに役立つ。これは、ユーザーを教育し、力を与える。ユーザーは、この方法の進行を観察し得、このことは、システム20が最終的な方向ベクトルへの収束に向かう時間を理解するのに役立つ。より頻繁なディスプレイの更新は、ユーザーにとって時間を「早く進める」のに役立つ。この方法は、さらに長く思われ得る長い休止を避ける。方向ベクトルを検出するプロセスにおける中間的動作(狭まっていく弧)の開示は、ユーザーと接近システム30との間の相互信頼を招く。弧は、方向ベクトルよりも直感的な神経組織の可視化を提供し得る。
【0072】
弧法はまた、機器および刺激電極が神経に対して動く場合、方向を追跡するのに有用であり得る。例えば、刺激電流閾値における不確実さが増大する場合、これは、弧の大きさの増加に反映され得る。
【0073】
システム20の連続拡張接近システム34(図2)は、外科手術の標的部位への安全かつ再現性ある接近を達成し得る。これは、神経構造の存在および神経構造に対する方向を、このような神経構造を有する任意の種々の組織を通って(または近くに)手術用の通路を確立する前、間、後に検出することによって、そのようにする。神経構造が接触または衝突される場合、これは、患者にとって神経の障害を引き起こし得る。
【0074】
一実施形態において、外科手術システム20は、外科手術用ハンドピース52の使用を通じてこれを達成する。このハンドピース52は、第一ケーブルコネクタ51a、51bを介してK−ワイヤ46に電気的に接続し得、そして第二ケーブルコネクタ53a、53bを介して拡張カニューレ48または作業カニューレ50のいずれかに接続し得る。K−ワイヤ46および作業カニューレ50に対して、ケーブルは、刺激電極への電気的接続を確立するため、これらの付属品とそれぞれのケーブルコネクタ51a、53aとの間で直接的に接続される。一実施形態において、ペンチまたはクランプ型デバイス57が提供されて、外科手術用ハンドピース52とカニューレ48の遠位端上の刺激電極との間の電気的連絡を選択的に確立する。この電気的連絡は、クランプ型デバイス57を形成する対向する腕の内部表面における電気的接触部を提供することによって、達成される。ここで、この接触部は、拡張カニューレ48および作業カニューレ50上に提供された電気的接触部(好ましくは、オス−メス係合シナリオ)に係合するように寸法を決められる。外科手術用ハンドピース52は、一以上のボタンを備え、これによってユーザーは、制御ユニット22から外科手術用接近用構成要素46〜50の遠位端上の電極へ刺激電流信号を選択的に方向付け得る。重要な局面において、各外科手術用接近用構成要素46〜50は、その遠位端の電極を除いて、その長さ全体に沿って絶縁される。拡張カニューレ48および作業カニューレ50の場合、クランプ57と係合するための、その近位端における電気的接触部は、絶縁されない。このような刺激に応じたEMG応答は、ユーザーに神経の近位性および/または神経の方向の情報を提供するために、モニタリングおよび評価され得る。
【0075】
例えば、脊髄の手順に利用する場合、このようなEMGモニタリングは、好ましくは、特定の脊髄手術レベルに結合する、出力する神経根に対応する患者の脚の神経筋単位にEMGハーネス26を接続することによって達成される(図11および20〜21を参照のこと)。好ましい実施形態において、これは、その脚の主要な筋群を覆う皮膚に配置された8対のEMG電極27(図2)(片側に4つ)、刺激電極に帰還経路を提供する陽極29、および患者モジュール24の前置増幅器を基準にアースを提供する共通電極31を介して、達成される。示さないが、任意の種々の電極(針電極が挙げられるが、これらに限定されない)が利用され得ることが、理解される。EMGハーネス26を介して測定されたEMG応答は、電気刺激によって引き起こされた神経脱分極の定量測定を提供する。例として、脊髄手術について、EMG電極27の配置は、以下の表1に示される様式に従って行われ得る。
【0076】
【表1】
図16〜19は、椎間円板への手術用の通路の作製に使用する際の、図2における連続拡張接近システム34を図示する。図16に示されるように、拡張カニューレ48内の内部管腔に配置されたK−ワイヤ46を備える初期拡張カニューレ48Aは、標的部位に向かって進められる。これは、最初に、多数の市販の外科手術用ガイドフレームを用いて、K−ワイヤ46と初期拡張カニューレ48Aとを整列させることによって、容易になり得る。一実施形態において、拡大挿入図AおよびBにおいて最もよく示されるように、K−ワイヤ46および初期拡張カニューレ48Aは各々、単一の刺激電極70を備え、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の神経の存在および/または位置を検出する。より具体的には、各電極70は、K−ワイヤ46および拡張器48(および作業カニューレ50)の長軸方向に対して角度をなして、配置され得る。一実施形態において、この角度は、これらの外科手術用接近用構成要素46〜50の長軸方向から5°〜85°の範囲であり得る。このような様式で各刺激電極70を提供することによって、刺激電流は、それぞれの付属品46、48の遠位先端から角度をなして方向付けられる。この電極の構成は、本出願に従って、ユーザーが、電極70を刺激しながら、単にK−ワイヤ46および/または拡張カニューレ48を回転させて近位性および方向を決定する際に、有利である。これは、継続的に、または段階的に、そして好ましくは、固定された角度位置にある間に行われ得る。いずれの場合においても、ユーザーは、ディスプレイスクリーン40上の近位性情報を見る工程、および電極70が回転される場合の変化を観察する工程によって、神経の配置を決定し得る。これは、K−ワイヤ46および/または拡張器48(またはそれらに接続する制御要素)上に基準標識72を配置し、電極70の方向をユーザーに示すことによって、容易になり得る。
【0077】
別の実施形態において、図2のK−ワイヤ46および拡張カニューレ48は、上に記載され、かつ図14A〜図14Bに示されるように、各々複数の電極を有する。
【0078】
示される実施形態において、K−ワイヤ46および初期拡張器48Aの軌道は、脊柱の骨の背側要素を避けるように、それらが背外側性に腰筋を横切る様式で椎間の標的部位に向かって進むようになる。一旦K−ワイヤ46が、特定の椎間円板の輪に対してドッキングされる場合、次いで、図17に示されるように、直径が大きくなっていくカニューレ48B〜48Dが、所望の管腔直径が導入されるまで、先に導入されたカニューレ48Aの上に導かれ得る(連続拡張)。例のみとして、拡張カニューレ48A〜48Dは、直径が6mm〜30mmの範囲に及び得、長さは、一般的に、直径サイズが大きくなるのに従って減少する。深さの印72が、必要に応じて、各拡張カニューレ48の長さに沿って提供されて、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の深さを測定することにおいてユーザーを補助し得る。図18に示されるように、作業カニューレ50は、所望のレベルの組織拡張が達成された後に、最後の拡張カニューレ48Dの上をスライド可能に進められ得る。次いで、図19に示されるように、最後の拡張カニューレ48Dおよび全ての拡張カニューレ48は、作業カニューレ50の内部管腔の中から除去され、その管腔を通して手術用の通路が確立され得る。
【0079】
一旦、K−ワイヤ46、拡張カニューレ48、または作業カニューレ50を用いて神経が検出された場合、外科医は、図21に示されるように、方向機能を選択して、接近用構成要素46〜50上の基準標識に対する神経への角方向を決定し得る。一実施形態において、方向の矢印90が提供され、例のみとして、神経が、接近用構成要素46〜50に対してどの方向であるかをユーザーに図解的に示す目的のため、カニューレ図87の周りに配置される。この情報は、外科医がK−ワイヤ46およびカニューレ48、50を進める場合に、外科医が神経を避けるのに役立つ。一実施形態において、この方向付け性能は、K−ワイヤ46、拡張器48および作業カニューレ50に、それらの遠位先端上に直交性に配置される4つの刺激電極を備えることによって、達成される(図14A〜図14B)。これらの電極は、好ましくは、単極構成で(すなわち、各4つの電極の各々を刺激供給源として用いて)走査される。閾値電流(Ithresh)は、筋で誘発された電位応答Vppを測定する工程および既知の閾値Vthreshに対してそれを比較する工程によって、電極の各々について検出される。この情報から、刺激電極(またはデバイス46−50)から神経への方向が、本明細書中に記載されるアルゴリズムおよび技術に従って、ならびに図8〜図10、図13、図14A〜図14Bおよび図15A〜図15Cを参照して、決定され得る。図8および図13において、4つの電極800A〜800Dは、起点から半径Rで、2次元座標系のx軸およびy軸に配置される。ベクトルは、起点から、各電極に対応する軸に沿って描かれる。各ベクトルは、その電極についてのIThreshと等しい長さを有する。したがって、4つの電極800A〜800Dによって、4つのベクトルは、起点から4つの電極に対応する4つの軸に沿って描かれる。次いで、起点から神経を指す方向へのベクトルが計算される。示される幾何を用いて、単一の点とされる神経の(x,y)座標は、神経から4つの電極800A〜800Dの各々までの距離の関数として決定され得る。これは、明確に、数学的に以下のようであり得る:
図13の「丸」が、起点またはカニューレの中心に対する電極の位置を示す場合、「6角形」は、神経の位置を示し、そしてd1、d2、d3およびd4は、神経点と刺激電極1〜4(北、東、南および西)との間の距離をそれぞれ示す。これは、以下で示され得る:
【0080】
【数15】
ここで、Rは、カニューレの半径であり、角度および絶対的でない値が測定されるので、1に標準化される。
【0081】
デカルト座標(x,y)から極座標(r,θ)への変換の後、θは、神経への角方向である。次いで、この角方向は、例のみとして、図21において神経の方向を指す矢印90として、ユーザーに対して表示され得る。この様式において、外科医は、能動的に神経を避け得、これによって、外科手術の標的部位への接近の間、患者の安全性が増大する。外科医は、方向付け機能を実行するのに利用可能な4つのチャンネルのいずれか一つを選択し得るが、最も低い刺激電流閾値を有するチャンネル(この機器に最も接近する神経を示す)が、おそらくは使用されるべきである。外科医は、この方向付け機能を使用する間、好ましくは、機器を動かしたり回転させたりすべきではなく、むしろこの方向付け機能に戻って機器を進め続けるべきである。
【0082】
外科手術用接近用システム34を介して外科手術の標的部位に対する手術用の通路を確立した後、特定の型の外科手術および外科手術の必要性に依存して、多数の適切な機器および/またはインプラントが、外科手術の標的部位に導入され得る。例のみとして、脊髄での適用において、多数のインプラントおよび/または機器が、作業カニューレ50を通じて導入され得る。これらとしては、脊髄癒合構築物(例えば、同種移植片インプラント、セラミックインプラント、ケージ、メッシュなど)、固定用デバイス(例えば、椎弓根(pedicle)ねじおよび/もしくは小関節面(facet)ねじ、ならびに関連する伸張バンド(tension band)またはロッドシステム)、そして多数の動き保存デバイス(全椎間円板置換システムが挙げられるが、これに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
(幾何学的方向付けアルゴリズムモデルおよび電気的方向付けアルゴリズムモデルの分離)
上記の4つの電極の対称性から得られる他の関係が存在する:
【0084】
【数16】
ここで、d0は、神経活性化部位と電極間の中点(すなわち、起点(0,0)または「仮想的中心」)との間の距離である。これらの結果は、純粋に、幾何に基づき、そして電気的モデルとは独立に適用する。
【0085】
「弧」法に基づいて記載されたように、この幾何学的モデルは、拡張されて、神経までの距離の不確実さに基づいた不確実な領域を規定し得る。
【0086】
【数17】
図8および図13において、この2次元x−yモデルは、神経活性化部位が刺激電極と同じ平面状に位置することを仮定し、またz軸空間全体は、そのx−y平面に投射されているとみなされ得る。z次元が、「その平面において」方向に影響を与えないことが見出された。神経活性化部位が刺激電極の平面の外にある場合、前節で提示された距離方程式も、また適用される。
【0087】
(一般化1−Dモデル)
図22は、2つの電極2200A、2200Bを図示する。任意の2つの電極2200A、2200Bが与えられた場合、一次元における神経活性化部位2202の絶対位置が、これら2つの電極からの距離から計算され得る:
【0088】
【数18】
1−Dモデルは、電極を追加することによって、2次元または3次元に拡張され得る。
【0089】
(3−D幾何学的モデル)
4つの同一平面上の電極(図8および図13)を用いる場合、z軸に沿った神経への方向を同定することは、特に容易ではない。これは、元のx−y電極平面上にない一つ以上の刺激電極2300(図23)を追加することによって、容易に是正され得る。例えば、図23は、x=y=0のz軸に沿って配置するK−ワイヤ電極2300を示す。Dは、K−ワイヤ電極2300と他の4つの電極の平面2302との間の距離の半分である。
【0090】
神経に対する3−D方向付けは、K−ワイヤ電極2300から神経活性化部位までの距離を、他の電極のそれと比較することによって、可能である:
【0091】
【数19】
ここで、d0は(先に注記したように)、神経活性化部位と電極間の中点(すなわち、起点(0,0)または「仮想的中心」)との間の距離であり、そしてdkは、神経活性化部位とK−ワイヤ電極2300との間の距離である。3−D方向付けは、デカルト座標(x,y,z)から球座標(ρ,θ,φ)への変換によって、可能である。上記の弧法もまた、3次元に拡張され得る。他の3−D幾何学的モデルが構築され得る。一つの可能性は、図14Aに示されるように、平面上の4つの電極1402A〜1402Dをそのまま維持し、そしてカニューレ1400の側面に沿って第5の電極1404を追加することである。
【0092】
別の可能性は、平面上の4つの電極2502A〜2502Dを、図25に示されるような2つの対(例えば、四面体の頂点)で置き換えることである。図25は、四面体構成の4つの電極2502A〜2502Dを有するデバイス2500を図示する。これは、システム20で使用され得る。4つの電極は、3−D空間に及ぶための最低限であり得、そして刺激電流閾値を検出するのに要求される刺激の数に関して最も有効であり得る。
【0093】
(電気的モデル)
上記の方向アルゴリズムは、方程式(2)におけるように、距離と刺激電流閾値との間の直接的な比例を仮定する:
(6) ith=Kd
ここで、ithは閾値電流であり、Kは電流と距離との間の関係を示す比例定数であり、そしてdは、電極と神経と間の距離である。
【0094】
代替的モデルは、距離の二乗に従って刺激電流閾値が増大することを予測する:
(7) ith=i0+Kd2
距離二乗モデルを用いる場合、神経活性化部位についてのデカルト座標は、方程式(5)、(7)および以下に由来し得る:
【0095】
【数20】
ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、K−ワイヤ電極2602A(図26)の刺激電流閾値であり、そしてicは、以下から計算される:
【0096】
【数21】
図26は、デバイス2600(例えば、図16のカニューレ48A)およびこのデバイス2600にスライド可能に受けられる、K−ワイヤ46を図示する。K−ワイヤ46およびデバイス2600は両方とも、電極2602A〜2602Fを有する。
【0097】
方程式の他のセットは、代替的な電極幾何学について同様に導かれ得る。各々の場合において、i0が計算から消えるということに注意すること。これは、刺激電極に対する神経活性化部位の絶対位置が、Kのみが分かれば計算され得るということを示唆する。上記のように、Kは、電流と距離との間の関係を示す比例定数である。
【0098】
神経組織の距離または位置は、刺激電流閾値が各電極について検出され得る限り、神経の状態または病理(すなわち、i0の上昇)と独立に決定され得る。
【0099】
(神経の病理の測定)
神経までの距離が(おそらく上記の方法を通じて)既知である場合、i0について方程式(8)を解くことが可能である。これは、刺激閾値が上昇した神経の検出を可能し、このことは、有用な臨床(神経病理)情報を提供し得る。
(10) i0=ith−Kd2
(Kへの従属の除去)
前出の記載は、Kについての値が既知であることを仮定する。2つの異なる電極セットから同じ測定を行うことによって、Kを知ることなく、神経活性化部位までの距離を測定することが、また可能である。図24は、2つの電極対2400A、2400B、2402A、2402Bおよび神経活性化部位2404を図示する。上端の2つの電極2400A、2400Bが一つの対を形成し、そして底部の2つの電極2402A、2402Bが第二の対を形成する。電極2400A、2400B、2402A、2402Bおよび図24で定義される距離を用いて、方程式(4)からの幾何学的モデルは、以下となる:
【0100】
【数22】
方程式(7)からの電気的モデルを加えることによって、Kへの従属は除去される。dbについての方程式(11)を解き、一つに次元における距離を得る:
【0101】
【数23】
最後に、Kそのものの値について解くことが可能である:
【0102】
【数24】
図14の構成は4つの電極を示すが、この技術は、3つの同一直線上の電極を用いても実行し得る。
【0103】
(電極冗長性)
いずれの電気的モデルが使用される場合も、方程式(1)で表される関係は、4つの方位点における任意の電極での電流が、他の3つの電極の電流値から「予測」され得ることを意味する。方程式(7)の電気的モデルを用いることで、以下が得られる:
【0104】
【数25】
方程式(6)の電気的モデルを用いることで、以下が得られる:
iw+ie=is+in
これは、いずれかの電気的モデルを確証するための簡便な手段を提供する。
【0105】
幾何学的モデルおよび電気的モデルの手段を提供することは、より有効、より正確な神経位置の測定を行うことに役立ち得る。
【0106】
特定の実施形態が記載されたが、これらの教示に照らして、本出願の精神または範囲から逸脱することなく変更が達成され得ることが、当業者に理解される。例えば、システム22は、コンピュータープログラミングソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアの任意の組合せを用いて実施され得る。システム20を作動させるためまたは本出願に従う装置を構築するための、予備的な行動として、本出願に従うコンピュータープログラミングコードは(ソフトウェアであってもファームウェアであっても)、代表的に、一以上の機械読み取り可能記憶媒体(例えば、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、ROMのような半導体メモリ、PROMなど)に記憶され、それによって、本出願に従う製品を作製する。このコンピュータープログラミングコードを含む製品は、このコードを記憶デバイスから直接的に実行することによってか、このコードを記憶デバイスから別の記憶デバイス(例えば、ハードディスク、RAMなど)へとコピーすることによってか、またはこのコードを遠隔的実行のためにネットワーク上で伝達することによってかのいずれかにより、使用され得る。当業者によって企図され得るように、多くの異なる上記の組合せが、使用され得、従って、本出願は、添付の特許請求の範囲によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本出願の一実施形態に従う、神経生理学ベースの外科手術システムの基本的機能を図示するフローチャートである。
【図2】図2は、図1の機能を実施し得、そして外科手術の標的部位への接近に利用される外科手術用機器に対する神経の方向を決定し得る、例示的な外科手術システムの透視図である。
【図3】図3は、図2に示される外科手術システムのブロック図である。
【図4】図4は、図5に示される型の神経筋応答(EMG)を生成し得る刺激電流パルスのプロットを示すグラフである。
【図5】図5は、所定の神経筋単位に結合する神経束に適用された刺激電流パルス(例えば、図4に示すようなパルス)に基づいた経時的な、所定の神経筋単位の神経筋応答(EMG)のプロットを示すグラフである。
【図6】図6は、図2のシステムのための、刺激電流パルスを形成する各所定の刺激電流レベル(Istim)についてのEMG応答の最高最低電圧(Vpp)のプロット(他に「漸加曲線」として知られる)を示すグラフである。
【図7−1】図7A、図7B、および図7Cは、図2のシステムにより使用され得る電流閾値探索アルゴリズムを示すグラフである。
【図7−2】図7A、図7D、および図7Eは、図2のシステムにより使用され得る電流閾値探索アルゴリズムを示すグラフである。
【図8】図8は、図2のシステムについての、外科手術用機器(例えば、カニューレ)の遠位端近くの4つの直交する電極を図示する。電極は、二次元X−Y平面に北点、南点、東点および西点としてモデル化される。
【図9】図9は、最大および最小のx値およびy値によって結ばれた神経点(x,y)を図示する。これらは、長方形を形成する。
【図10】図10は、起点(電極を有する機器の中心軸)から神経点(x,y)へのベクトル、および図2のシステムによって検出されたそのベクトルを含む弧を図示する。
【図11】図11は、図2のシステムについての刺激部位および複数のEMG応答感知部位を図示する。
【図12】図12は、刺激電流パルスに応じた経時的な神経筋応答(EMG)のプロットを図示するグラフであり、このプロットは、時間T1およびT2において電圧の極値を示す。
【図13】図13は、図2のシステムのための、4つの直交して配置される刺激電極(「丸」で表示される)を有する機器に対する神経の方向(「6角形」で表示される)を決定する方法を図示するグラフである。
【図14】図14Aは、4つの直交する電極と第5の電極とを有する外科手術用機器(例えば、図2のカニューレ)の遠位端の側面図であり、図14Bは、その正面図である。
【図15A】図15Aは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図15B】図15Bは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図15C】図15Cは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図16】図16は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図17】図17は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図18】図18は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図19】図19は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図20】図20は、図2の外科手術用接近用システムの神経方向付け特性の一実施形態を説明する例示的なスクリーンディスプレイである。
【図21】図21は、図2の外科手術用接近用システムの神経方向付け特性の一実施形態を説明する例示的なスクリーンディスプレイである。
【図22】図22は、一般化された、一次元2電極の方向検出モデルを図示する。
【図23】図23は、x=y=0のz軸に沿って配置された電極を図示する。この電極は、複数の他の電極と異なるXY平面にある。
【図24】図24は、一平面における電極の第一の対、別の平面における電極の第二の対、および神経活性化部位を図示する
【図25】図25は、四面体構造にある4つの電極を有するデバイスを図示する。
【図26】図26は、デバイス、および電極を有するそのデバイス中にスライド可能に受容されるK−ワイヤを図示する。
【技術分野】
【0001】
本出願は、以下の、同時係属中であり同一人に譲渡された特許出願の、その全体を参考として援用する:米国仮出願番号60/382,318(表題「Surgical Access System and Related Methods」、2002年5月21日出願);PCT出願番号PCT/US02/22247(表題「System and Methods for Determining Nerve Proximity,Direction,and Pathology During Surgery」、2002年7月11日出願);PCT出願番号PCT/US02/30617(表題「System and Methods for Performing Surgical Procedures and Assessments」、2002年9月25日出願);およびPCT出願番号PCT/US02/35047(表題「System and Methods for Performing Percutaneous Pedicle Integrity Assessments」、2002年10月30日出願)。
【0002】
(背景)
(I.分野)
本出願は、一般的に、外科手術を目的としたシステムおよび方法に関する。より詳細には、本出願は、外科手術の接近手順の間、神経に対する外科手術機器の方向を決定するための、システムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(II.従来技術の説明)
種々の外科手術は、外科手術の標的部位へ接近するための作業路を確立することに関する。多くの場合、外科手術の標的部位の解剖学的位置(およびそれらへのアプローチ)に基づいて、作業路を形成するか、または作製するか、または維持するために必要とされる機器は、神経構造の近傍かまたはごく近くを通らなければならない可能性がある。このことは、接触されるかまたは妨害された場合、患者にとって問題がある可能性がある。このような「神経感受性」手順の例としては、脊椎手術、および前立腺(prostrate)または泌尿器形関連の手術が挙げられ得るが、必ずしもこれらに限定されない。
【0004】
神経および神経筋をモニタリングするためのシステムおよび方法が存在する。このようなシステムの一つは、いつ針が神経に接近しているかを決定する。このシステムは、針に電流を印加して、筋肉応答を引き起こす。この筋肉応答は、代表的には、振動または「単収縮」として、視覚的にモニタリングされる。このような筋肉応答がユーザーによって観察される場合、この針は、反応した筋に結合した神経の近くにあるとみなされる。これらのシステムは、ユーザーに、(この針が神経に接近していることを決定するために)筋肉応答を観察することを要求する。これは、ユーザーの競合する課題によっては、困難であり得る。さらに、手順の間に全身麻酔が使用される場合、筋肉応答が抑制され得、この応答を検出するユーザーの能力を制限する。
【0005】
このような現行のシステムは、一般的に、神経の近位性を決定するのに(大まかではあるが)有効である一方で、針に対する神経の方向、または組織を通過するかもしくは神経の側を通る機器の方向を決定し得ない。外科医が、神経が全体的に機器の近位にあることを理解し得る一方で、その機器に対する神経の方向を決定することができないことは、その機器を進める際に、外科医に推測による作業をさせ得る。このことは、神経へ不注意の接触をする不安、および神経に損傷を与える可能性を生じさせる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本出願は、先行技術による上記問題の影響を、少なくとも減少させることに関し得る。本出願は、外科手術手順の間、神経に対する外科手術用機器の方向を決定するためのシステムおよび関連する方法を包含する。本システムの一局面によると、これは、外科手術の標的部位に接近することに利用される外科手術用機器に対する神経の方向を決定するための、神経生理学ベースのモニタリングの使用に関する。本システムは、外科医が駆動するシステムを提供するために、自動で、使用が容易で、そして解釈が容易な様式で、これを実施し得る。
【0007】
本システムは、神経生理学モニタリングと、外科手術の標的部位において使用されるか、または外科手術の標的部位に接近するのに使用される、任意の種々の機器(本明細書において、「外科手術用接近用機器」と称される)とを組み合わせ得る。例のみとして、このような外科手術用接近用機器としては、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製するための多数のデバイスもしくは構成要素(例えば、K−ワイヤ、連続的に拡張するカニューレシステム、ディストラクタシステム、および/またはレトラクタシステム)が挙げられ得るが、これらに限定される必要はない。本明細書においては、主に脊髄手術における使用に関して記載されるが、本方法および本システムの教示が、外科手術の標的部位への手術用の通路を確立するために、重要な神経構造を有する組織を通過しなければならない(または重要な神経構造を有する組織の近くを通らなければならない)多数のさらなる外科手術手順における使用に適切であり得ることが、容易に理解されるべきである。
【0008】
本出願に従う一般的方法は、以下を包含し得る:(a)外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する工程;(b)この電極を刺激して、この外科手術用接近用機器の近くの神経に結合する筋肉の神経筋単位を神経支配するのに必要な電流閾値(IThresh)を同定する工程;(c)連続的近似を介して、この外科手術用接近用機器に対するこの神経の方向を決定する工程;および(d)この連続的に近似した方向の情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する工程。
【0009】
外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する行為は、当該外科手術用接近用機器に依存して、多数の適切な様式で達成され得る。例えば、電極は、連続拡張システム(初期拡張器、拡張カニューレ、および作業カニューレを備える)、ならびに鏡型接近システムおよび/またはレトラクタベースの接近システムの、任意のまたは全ての構成要素上において直交して配置され得る。刺激行為は、任意の種々の適切な刺激信号(種々の大きさおよび/または周波数の電圧パルスおよび/または電流パルスを含む)を、この外科手術用付属品上の電極に適用することによって達成され得る。刺激の実行は、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製する処理の間および/または後に実施され得る。
【0010】
連続的近似を介して神経に対する外科手術用接近用機器の方向を決定する行為は、好ましくは、特定の神経に結合され、そして所望の外科手術の標的部位への外科手術的接近を得るプロセスの間に刺激される神経によって神経支配される、筋群のEMG応答をモニタリングまたは測定することによって実施される。
【0011】
この連続的近似情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する行為は、多数の適切な様式で達成され得る。これらの様式としては、視覚的な印(例えば、英数字、発光エレメントおよび/またはグラフィックス)ならびに音伝達(例えば、スピーカーエレメント)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、これは、神経に対する全体的な方向を示す弧または他の図解的表現を提供する工程を包含し得る。この方向指標は、比較的広範囲で速やかに開始し得、(経時的に上昇する精度に基づいて)順次より狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を示す単一の矢印で終結し得る。
【0012】
この連続的近似情報の伝達は、重要な特徴であり得る。このような方向情報を提供することによって、ユーザーは、手術用の通路が外科手術の標的部位に対して確立される間および/または確立された後、神経が所定の外科手術用付属品エレメントに接近し過ぎていないか否かに関して情報を得続ける。これは、ユーザーが、能動的に神経を避け、そして外科手術用接近用構成要素を再度方向付けて、神経にぶつかることも、他の方法で神経を損なうこともなく手術用の通路をうまく作製することを可能にするという点で、外科手術の標的部位に接近する処理の間において、特に有利である。
【0013】
この神経方向付け特性に基づいて、機器は、組織内の関連する神経構造にぶつかる危険性、または他の方法で損傷を与える危険性が(あるとすれば)最小限の状態で、実質的にあらゆる組織を通過し得、これによって、本システムは、多岐にわたる外科手術用途に適切になる。
【0014】
複数の電極(例えば、4つの電極)について一度に一つの刺激閾値電流を検出する方向検出アルゴリズムは、一つの方向ベクトルで終結するために、40〜80回の刺激を必要とし得る。10Hzの刺激速度では、この方法は、どんな方向情報が外科医に利用可能となる前にも、4〜8秒を要し得る。外科医は、このシステムにしびれを切らす可能性がある。本明細書において記載される「弧」法は、方向検出アルゴリズムを改善し得、そして神経方向情報を外科医により速やかに提供し得る。このシステムは、一連の刺激の間、神経に対する方向を、「弧」(または楔)として表示し得、この「弧」(または楔)は、神経を含む一帯を表す。方向弧(楔)の計算は、正確な、最終的に計算された刺激電流閾値レベルの代わりに、刺激電流閾値範囲に基づき得る。方向弧(楔)の表示は、刺激電流閾値が一定の値の範囲にあることが知られている任意の時間に可能である。
【0015】
一つの局面は、システムに関する。このシステムは、以下を備える:少なくとも一つの刺激電極を有する、外科手術用付属品;およびこの外科手術用付属品上の少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、この刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、この感知した応答に基づいて、この外科手術用付属品からこの神経への方向を決定し得、そしてこの方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット。このシステムは、この脱分極した神経に結合している筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備える。この電極は、この応答をこの制御ユニットに送るように動作可能であり得る。
【0016】
この外科手術用付属品は、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備え得る。この手術用の通路を確立するためのシステムは、一連の連続拡張カニューレを備え得、ここで、少なくとも一つのカニューレは、遠位端の近くに上記の少なくとも一つの刺激電極を有する。この手術用の通路を確立するためのシステムは、K−ワイヤをさらに備え得る。このK−ワイヤは、遠位先端に第一の刺激電極を有し得る。このK−ワイヤは、この遠位先端から離れた第二の刺激電極を有し得る。このK−ワイヤは、この外科手術用付属品にスライド可能に受容され得、ここで、この外科手術用付属品は、複数の電極を有する。この手術用の通路を確立するためのシステムは、脊髄の標的部位に接近するように構成され得る。この手術用の通路を確立するためのシステムは、側方の腰筋を経るアプローチを介して手術用の通路を確立するように構成され得る。
【0017】
このシステムは、この外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え得る。このハンドルは、この制御ユニットからこの外科手術用付属品上の少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するため、少なくとも一つのボタンを有し得る。
【0018】
この制御ユニットは、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備え得る。この制御ユニットは、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備え得る。
【0019】
この外科手術用付属品は、複数の刺激電極を備え得る。この刺激電極は、この外科手術用付属品の遠位端近くに配置され得る。この刺激電極は、二次元平面に配置され得る。この刺激電極は、直交して配置されて十字形を形成し得る。この制御ユニットは、以下:
【0020】
【数7】
を用いることによって、この外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き得、ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す。この刺激電極は、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え得、そしてこの第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備え得る。この刺激電極は、四面体を形成し得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され得る。
【0021】
この制御ユニットは、以下:
【0022】
【数8】
を用いることによって、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定し得る。この制御ユニットは、以下:
【0023】
【数9】
を用いることによって、この外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され得、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【0024】
【数10】
から計算される。この制御ユニットは、ユーザーに対して上記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成され得る。
【0025】
この刺激電極は、二対の電極を備え得る。この刺激電極は、この外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え得、そしてこの外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備え得る。
【0026】
この制御ユニットは、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケット(bracket)とされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成され得る。この第一の電流信号と第二の電流信号とは、等しくてよい。この制御ユニットは、この第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そしてこの第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するように、さらに構成され得る。各範囲は、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有し得る。この制御ユニットは、以下:
【0027】
【数11】
を用いることによって、この第一の範囲と第二の範囲とを処理するように構成され得、ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す。この制御ユニットは、以下:
【0028】
【数12】
を用いることによって、この第一の範囲と第二の範囲とを処理するように構成され得、ここで、dは、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である
この制御ユニットは、この第一の範囲とこの第二の範囲とを処理して、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され得る。この制御ユニットは、この第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、この第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、この第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、この第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成され得る。
【0029】
この制御ユニットは、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、この弧を狭めるように構成され得る。この制御ユニットは、この第一の刺激電極および第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、この弧を狭めるように、構成され得る。
【0030】
この制御ユニットは、この制御ユニットがこの外科手術用付属品とこの神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、音を発するように構成され得る。この制御ユニットは、この外科手術用付属品とこの神経との間の距離を示す音を発するように構成され得る。この外科手術用付属品は、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされ得る。
【0031】
別の局面は、細長い本体およびこの細長い本体上の複数の電極を備える、外科手術用機器に関する。各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成される。少なくとも一つの電流レベルは、この細長い本体が神経の近くにある場合にこの神経を脱分極するのに十分である。この細長い本体は、K−ワイヤを備え得る。この細長い本体は、カニューレを備え得る。この電極は、二次元平面に4つの直交する電極を備え得る。この電極は、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そしてこの第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備え得る。この電極は、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成され得る。この細長い本体は、連続拡張システムを備え得る。
【0032】
別の局面は、本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な処理ユニットに関する。
【0033】
別の局面は、方法に関する。この方法は、以下を包含する:本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および、このシステムにソフトウェアをインストールする工程。この方法は、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程を、さらに包含し得る。
【0034】
別の局面は、外科手術用機器からの神経の方向を検出する方法に関する。この方法は、以下を包含する:本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激する工程;この第一の刺激電流信号によって、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激する工程;および、この第二の刺激電流信号によって、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程。
【0035】
この第一の電流信号と第二の電流信号とは、等しくてよい。この方法は、この第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定する工程、およびこの第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定する工程をさらに包含し得、各範囲は、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する。この方法は、この第一の範囲と第二の範囲とを処理する工程、およびこの外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程をさらに包含し得る。
【0036】
この方法は、以下をさらに包含し得る:この第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激する工程;この第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;上記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激する工程;および、この第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程。この方法は、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激する工程をさらに包含し得る。この方法は、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、この弧を狭める工程を、さらに包含し得る。
【0037】
この方法は、この第一の刺激電極とこの第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で第一の刺激電極閾値がこの第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値がこの第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分する工程をさらに包含し得る。この方法は、この外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、この弧を狭める工程を、さらに包含し得る。
【0038】
(詳細な説明)
本出願の説明的実施形態が、以下に記載される。明確化の目的で、本明細書においては、実際の実施の全ての特徴がを記載されるわけではない。いずれのこのような実際の実施形態の開発においても、実施に特異的な多数の決定がなされて開発者の特定の目標(例えば、一つの実施と別の実施とでは異なる、システム関連の制約およびビジネス関連の制約への準拠)が達成されなければならないことが、当然理解される。さらに、このような開発の努力は、複雑であり得かつ時間がかかり得るが、それにもかかわらず、この開示の利益を有する当業者にとって、慣習的に行われていくであろうことが、理解される。本明細書において開示されるこのシステムは、個々に、および組合せで、特許保護に値する種々の発明の特徴および構成要素を誇る。
【0039】
図1は、本出願の一実施形態に従う一般的な特徴、すなわち:(a)外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置される)電極を提供する工程;(b)この電極を刺激して、この外科手術用接近用機器の近くの神経に結合する筋肉の神経筋単位を神経支配するのに必要な電流閾値(IThresh)を同定する工程;(c)連続的近似を介して、この外科手術用接近用機器に対するこの神経の方向を決定する工程;および(d)この連続的に近似した方向の情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する工程、を図示する。
【0040】
外科手術用接近用機器の周辺に複数の(例えば、4つの直交して配置された)電極を提供する行為は、当該外科手術用接近用機器に依存して、多数の適切な様式で達成され得る。例えば、電極は、上記に援用される、同時継続中であり同一人に譲渡された2002年5月の米国特許仮出願に開示されるように、連続拡張システム(初期拡張器、拡張カニューレ、および作業カニューレを備える)、ならびに鏡型接近システムおよび/またはレトラクタベースの接近システムの、任意のまたは全ての構成要素上において直交して配置され得る。刺激する行為は、任意の種々の適切な刺激信号(種々の大きさおよび/または周波数の電圧パルスおよび/または電流パルスを含む)を、この外科手術用付属品上の電極に適用することによって達成され得る。この刺激行為は、外科手術の標的部位への手術用の通路を作製する処理の間および/または後に実施され得る。
【0041】
連続的近似を介して神経に対する外科手術用接近用機器の方向を決定する行為は、好ましくは、特定の神経に結合され、そして所望の外科手術の標的部位へ外科手術的に接近する処理の間に刺激される神経によって神経支配される筋群の、EMG応答をモニタリングまたは測定することによって実施される。
【0042】
この連続的近似情報を、解釈が容易な様式で外科医に伝達する行為は、多数の適切な様式で達成され得る。これらの様式としては、視覚的な印(例えば、英数字、発光エレメントおよび/またはグラフィックス)ならびに音伝達(例えば、スピーカーエレメント)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、これは、神経に対する全体的な方向を示す弧または他の図解的表現を提供する工程を包含し得る。この方向指標は、比較的広範囲で速やかに開始し得、(経時的に上昇する精度に基づいて)順次、より狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を示す単一の矢印で終結し得る。
【0043】
この方向指標は、重要な特徴であり得る。このような方向情報を提供することによって、ユーザーは、手術用の通路が外科手術の標的部位に対して確立される間および/または確立された後、神経が所定の外科手術用付属品エレメントに接近し過ぎているか否かに関する情報を得続ける。これは、ユーザーが、能動的に神経を避け、そして外科手術用接近用構成要素を再度方向付けて、神経にぶつかることも、その他に神経を危うくすることもなく手術用の通路をうまく作製することを可能にするという点で、外科手術の標的部位に接近する処理の間において、特に有利である。
【0044】
そして、この神経方向付け特性に基づいて、機器は、組織内の関連する神経構造にぶつかる危険性、または組織内の関連する神経構造に他の損傷を与える危険性が(あるとすれば)最小限の状態で、実質的にあらゆる組織を通過し得、これによって、本システムは、多岐にわたる外科手術用途に適切になり得る。
【0045】
図2〜3は、例のみとして、本発明の広範な局面に従う外科手術システム20を図示する。外科手術システム20は、制御ユニット22、患者モジュール24、この患者モジュール24に接続されたEMGハーネス26および帰還電極28、ならびに(例のみとして)ケーブル32を介して患者モジュール24に接続され得る連続拡張外科手術用接近用システム34を備える。この連続拡張接近システム34は、例のみとして、K−ワイヤ46、一以上の拡張カニューレ48、および作業カニューレ50を備える。
【0046】
この制御ユニット22は、タッチスクリーンディスプレイ40および基部42を備える。これらは、集合的に、外科手術システム20を制御する本質的な処理能力(ソフトウェアおよび/またはハードウェア)を備える。この制御ユニット22は、本明細書において記載されるような、神経に対する外科手術エレメントの配置に従って音を発する音響ユニット18を備え得る。
【0047】
この患者モジュール24は、データケーブル44を介してこの制御ユニット22に接続され、制御ユニット22と患者モジュール24との間の電気的な接続および連絡(デジタルおよび/またはアナログ)を確立する。この制御ユニット22の主機能としては、タッチスクリーンディスプレイ40を介してユーザー指令を受けること、外科手術用接近用機器30上の刺激電極を作動させること、規定のアルゴリズム(以下に記載される)に従って信号データを処理すること、受けたパラメータおよび処理したデータを表示すること、そしてシステム状態をモニタリングして故障状態を報告すること、が挙げられる。このタッチスクリーンディスプレイ40は、好ましくは、情報をユーザーに連絡し、ユーザーからの指示を受け得るグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を備える。ディスプレイ40および/または基部42は、刺激供給源を支配し、患者モジュール24からデジタル化した信号および他の情報を受け、EMG応答を処理して各筋群についての特徴情報を抽出し、そして処理したデータをディスプレイ40を介して操作者に表示する患者モジュールインターフェース回路(ハードウェアおよび/またはソフトウェア)を含み得る。
【0048】
一実施形態において、この外科手術システム20は、外科手術の標的部位への手術用の通路の作製の間および/または後に、各K−ワイヤ46、拡張カニューレ48および/または作業カニューレ50に対する神経の方向を決定し得る。外科手術システム20は、種々の外科手術用接近用機器46〜50上の、直交性に配置された刺激電極1402A〜1402D(図14A〜14B)の各々(例えば、機器46〜50の遠位端上の電極)に電気刺激信号を送るように協働する制御ユニット22および患者モジュール24を有することによって、これを達成する。患者内の外科手術用接近用機器46〜50の配置に依存して、刺激信号は、外科手術用機器46〜50に隣接するかまたは全体的に近位にある神経を脱分極させ得る。これは、筋群を刺激し、そしてEMG応答を引き起こす。この応答は、EMGハーネス26を介して感知され得る。このシステム20の神経方向付け特性は、EMGハーネス26を介して外科手術システム20によってモニタリングされた、種々の筋の神経筋単位の誘発された応答の評価に基づく。
【0049】
連続拡張外科手術接近システム34は、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の組織をブラントダイセクションするように設計される。各K−ワイヤ46、拡張カニューレ48および/または作業カニューレ50は、複数の(例えば、4つの直交性に配置される)刺激電極を備えて、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の神経の配置を検出し得る。これを容易にするため、外科手術用付属品46〜50の患者モジュール24への(ケーブル32を介する)電気的接続のために、外科手術用ハンドピース52が提供される。好ましい実施形態において、外科手術用ハンドピース52は、制御ユニット22から特定の外科手術用接近用機器46〜50への刺激信号(好ましくは、電流信号)を選択的に開始するための、一以上のボタンを備える。手術用の通路を形成する際に組織を通過する間における、これらの外科手術用接近用機器46〜50上の電極の刺激は、この外科手術用接近用機器46〜50に接近したかもしくは比較的近位になった神経を脱分極させ、神経支配された神経筋単位の応答を引き起こす。
【0050】
神経に結合する神経筋単位を(EMGハーネス26および記録電極27を介して)モニタリングすること、および得られたEMG応答を(制御ユニット22を介して)評価することによって、この連続拡張接近システム34は、このような神経に対する方向を検出し得る。方向決定は、能動的にこのような神経の周辺を通り抜けるかまたはこのような神経を過ぎて、特定の外科手術の標的部位への手術用の通路を安全かつ再現性よく形成する能力を提供する。一実施形態において、例のみとして、この連続拡張接近システム34は、脊柱の骨の背側要素を避けるように背外側性に腰筋を横切る様式で椎間の標的部位への手術用の通路を確立するために、特に適切である。
【0051】
これらの機能を達成するための神経生理学の背後のアルゴリズムおよび原理の考察がここで行われ、これらの原理の種々の実施の詳細な説明がこれに続く。
【0052】
図4および図5は、本出願の基本的な局面を説明する:刺激信号(図4)および得られた誘発された応答(図5)。例のみとして、この刺激信号は、好ましくは、システムソフトウェアによって調節可能な周波数および振幅の、長方形の単相性パルスを有する刺激電流信号(Istim)である。一実施形態において、刺激電流(Istim)は、任意の適切な様式で接続され得(すなわち、ACまたはDC)、そして200μ秒の長さの長方形の単相性パルスを備える。この電流パルスの振幅は、固定され得るが、好ましくは、任意の適切な範囲の電流振幅(例えば、2〜100mA)から掃引され得る。各神経および神経筋単位について、刺激電流パルスからEMG応答までに特徴的な遅延(代表的に5〜20ms)が存在する。これを補償するため、電流パルスの周波数は、適切なレベル(例えば、好ましい実施形態においては、4Hz〜10Hz(および最も好ましくは、4.5Hz))に設定されて、神経が脱分極から回復する機会を有する前にこの神経を刺激することを防止し得る。図5に示されるEMG応答は、Vpp=Vmax−Vminの最高最低電圧によって特徴付けられ得る。
【0053】
このシステム20によって利用される神経生理学の背後の基本事項は、各神経は、それが脱分極する特徴的な閾値電流レベル(IThresh)を有する、ということである。この閾値より下では、電流刺激は、顕著なEMG応答(Vpp)を誘発しない。一旦この刺激閾値(IThresh)に達した場合、誘発された応答は、再現性があり、かつ刺激の増大に従って、飽和に達するまで増大する。この刺激電流とEMG応答との間の関係は、図6に示されるような、いわゆる「漸加曲線」を介して図解的に表現され得る。この「漸加曲線」は、開始領域、直線領域、および飽和領域を含む。例のみとして、このシステム20は、顕著なEMG応答がおよそ100μVのVppを有することを規定し得る。好ましい実施形態において、この閾値電位を誘発する最低の刺激電流(VThresh)は、刺激電流閾値または「IThresh」と呼ばれる。
【0054】
この有用な情報を得るために、このシステム20は、所定の刺激電流(Istim)に相当する各EMG応答の最高最低電圧(Vpp)を最初に同定する。しかし、刺激および/またはノイズアーチファクトの存在は、電気的に誘発されたEMG応答の、誤ったVpp測定を引き起こさせ得る。この課題を克服するため、この外科手術システム20は、多数の適切なアーチファクト排除技術を利用し得る。(刺激および/またはノイズアーチファクト排除技術によって容易にされたように)各VppEMG応答を測定した場合、このVpp情報は、神経と、刺激電流を伝達する外科手術用接近用機器46〜50上の所定の電極との間の関係を決定するために、刺激電流に対して分析される。より具体的には、このシステム20は、所定のVppEMG応答を引き起こし得る最低刺激電流(IThresh)を同定することによって、(神経と外科手術用付属品との間の)これらの関係を決定する。
【0055】
IThreshは、外科手術用接近用機器34、36と神経との間の方向を決定する目的で、4つの直交する電極1402A〜1402D(図14A〜図14B)の各々について決定され得る。これは、二部分閾値−探索アルゴリズム(two−part threshold−hunting algorithm)を利用することによって達成され得る。このアルゴリズムは、ブラケット化プロセスと、二分(二分割)プロセスとを含み、各刺激電極について段階的に進行し、逐次的方向情報をユーザーに提供し得る。
【0056】
(弧法)
一実施形態において、逐次的方向情報は、以下に記載される「弧」法に従って、神経を含む一帯を表す弧または楔(または範囲)の形態を取り得る。この逐次的方向情報は、刺激電流閾値「範囲」に基づき、そして表示され得る(図15A〜図15C)か、他に、刺激電流閾値が値の範囲に入ることが知られた時はいつでも外科医に対して連絡され得る。
【0057】
ブラケット化プロセスにおいて、電気刺激が、4つの直交する電極1402A〜1402D(図14A〜図14B)の各々に提供される。この電気刺激は、低い電流レベル(例えば、0.2mA)で始まり、そして一定の比率で増大する。「弧」法においては、4つの電極1402A〜1402Dの各々は、(別の電極1402に進む前に一つの電極1402についてのブラケット化を完了する別の方法に対して)次のより高い電流レベルに進む前に、順次、同じ電流レベルで刺激され得る。目標は、4つの刺激電極1402A〜1402Dの各々について、刺激電流の周りのブラケットを同定することである。刺激電流閾値が電極1402についてブラケットとされた場合、このブラケット化作業は、電極1402について完了し、そして刺激は、刺激電流閾値が各電極についてブラケットとされるまで、残りの電極について進行する。ブラケット化プロセスが進行するのに従って、各新しい刺激は、電極1402についての電流閾値の「範囲」についての情報を提供する。この情報は、刺激電流閾値を(例えば、1.6mAと3.2mAとの間に)ブラケットとさ得るか、またはこれは、電流閾値についてのより低い境界(例えば、閾値が5.0mAより大きい)を提供するのみであり得る。いずれの事象でも、この「弧」にブラケット化するプロセスは、刺激電極1402A〜1402Dの各々について進行し、逐次的に、外科手術用接近用機器46〜50に対する神経の方向に関するより正確な情報を提供する。
【0058】
図10に示されるように、最終的な方向ベクトルを含む弧(楔)は、4つの刺激電極1402A〜1402Dに対応する刺激電流閾値についての範囲情報から計算される。これは、ブラケット化プロセスが進行する場合に所望される頻度で行われ得る。次いで、この弧(楔)は、図15A〜図15Cにおけるように、操作者に方向情報を表示するのに使用され得る。
【0059】
この連続的近似情報は、多くの解釈が容易な様式で外科医に連絡され得る。この様式としては、視覚的な印(例えば、図15A〜図15Cおよび図20〜図21におけるような、英数字文字、発光エレメントおよび/またグラフィックス)および音響伝達(例えば、図3のスピーカーエレメント18)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。例のみとして、この逐次的方向情報は、「弧」1502を提供すること(ゆえに、「弧」法という名である)、または神経に対する全体的な方向を示す他の図解的表現を提供することを含み得る。これらは、比較的広範に開始し得、(時間とともに改善する精度に基づいて)逐次的により狭くなり得、そして神経に対する相対的な方向を指示する単一の矢印で終結し得る。図15A〜15Cは、ブラケット化プロセスおよび二分プロセスの間により多くの刺激電流パルスが作られて、EMG応答が分析される場合の、機器1500の断面のスクリーンショット、ならびに広い方向の弧1502A、より狭い方向の弧1502Bおよび矢印1502Cを図示する。
【0060】
弧情報を表示するための多くの可能性が存在する。弧または楔は、表示され得る。あるいは、矢印は、弧の中点を指し得る。別の表示が使用されて、弧の幅を図示し得る(すなわち、結果を不確実な状態にしておく)。
【0061】
ブラケット化プロセスの完了の際、二分プロセスが、刺激電流閾値をより正確に決定し得る。ブラケット化プロセスによるように、電流刺激は、刺激電極の間を「回転」し得、それによって閾値は、「弧」法により、実質的に並行して正確にされる。ブラケット化プロセスによるように、最終的な方向ベクトルを含む弧(楔)1502は、このプロセスの間、頻繁に計算されて、表示され得る(図15A〜図15C)。二分法の完了の際、全ての電極1402A〜1402Dについて、刺激電流閾値は正確に同定される。このとき、最終的な方向ベクトル1502C(図15Cおよび図20〜図21)が表示され得る。
【0062】
上記の二部分探索−アルゴリズムは、図7A〜図7Eを参照してさらに説明され得る。弧法に従って、各電極1402は、次の刺激電流レベルを通過する前に、同じ刺激電流レベルで刺激される。この様式において、逐次的方向情報は、上記のように得られ得る。閾値電流(IThresh)は、既知の閾値電圧(VThresh)よりも大きいVpp(図5)を引き起こす最低の刺激電流(IStim)(図6)である。IStimの値は、以下のようなブラケット化法によって調節され得る。第一のブラケット化は、0.2mAおよび0.3mAであり得る。これらの刺激電流の両方に対応するVppがVThreshよりも低い場合、このブラケットの大きさは、0.2mAおよび0.4mAに倍加され得る。このブラケットの大きさの倍加は、このブラケットの上端がVThresh以上のVppとなるまで継続する。
【0063】
次いで、このブラケットの大きさは、二分法によって減少し得る。このブラケットの中点の電流刺激値が使用され、そしてこの結果がVThresh以上のVppとなる場合、下半分が新しいブラケットとなる。同様に、この中点VppがVThresh以下である場合、上半分が新しいブラケットとなる。この二分法は、ブラケットの大きさがIThreshmAに減少されるまで使用される。IThreshは、このブラケットに入る値として選択され得るが、好ましくは、このブラケットの中点として定義される。
【0064】
この実施形態の閾値−探索アルゴリズムは、3つの状態:ブラケット化すること、二分すること、およびモニタリングすることを支持し得る。「刺激電流のブラケット」は、刺激電流閾値IThreshをブラケット化する刺激電流の範囲である。ブラケットの幅は、上部境界の値マイナス下部境界の値である。チャンネルの刺激電流閾値IThreshが最大刺激電流を超える場合、この閾値は、範囲外とみなされる。ブラケット化状態の間、閾値探索は、本明細書において記載される方法を利用して、範囲の各EMGチャンネルについて、刺激電流を選択し、刺激電流のブラケットを同定する。
【0065】
最初のブラケット範囲は、多数の適切な範囲で提供され得る。一実施形態において、最初のブラケット範囲は、0.2mA〜0.3mAである。上部刺激電流が応答を誘発しない場合、この範囲の上端は、上昇すべきである。例えば、範囲規模係数は、2であり得る。この刺激電流は、好ましくは、一つの繰り返しにおいて10mAよりも大きくまで増大されるべきでない。この刺激電流は、好ましくは、プログラムされた最大刺激電流を決して超えない(神経の損傷、傷害または他の望ましくない影響を防止するため)。各刺激について、アルゴリズムは、各活性チャンネルの応答を検査して、この刺激電流がそのブラケットに入るか否かを決定する。一旦各チャンネルの刺激電流閾値がブラケットとされた場合、このアルゴリズムは、二分状態に移行する。
【0066】
二分状態の間(図7Cおよび図7D)、閾値探索は、刺激電流を選択し得、そして各EMGチャンネルについて、範囲内の閾値によって選択した幅(例えば、0.1mA)にブラケットを狭め得る。最低刺激電流がブラケットとされた後(図7B)、その平方根が特定の精度であることが分かるまで、その平方根を含む範囲がより正確にされる。この二分法は、平方根を含む範囲を正確にするために使用される。一実施形態において、この平方根は、0.1mAの精度まで検出されるべきである。二分法の間、このブラケットの中点における刺激電流が使用される。刺激が応答を誘発する場合、ブラケットは、以前の範囲の下半分に縮まる。刺激が応答を誘発しない場合、ブラケットは、以前の範囲の上半分に縮まる。神経近位性/方向検出アルゴリズムは、選択された幅(すなわち、0.1mA)によって分離される応答閾値が刺激電流によってブラケットとされる場合、電極位置上に固定される。このプロセスは、全ての閾値が正確にわかるまで、活性チャンネルの各々について繰り返される。このとき、このアルゴリズムは、モニタリング状態に入り得る。
【0067】
モニタリング状態(図7E)の間、閾値探索は、以下に記載される方法を利用して、刺激電流を選択し得、そして刺激電流閾値が変化しているか否かを同定し得る。モニタリング状態において、刺激電流レベルは、特定のチャンネルの応答に依存して、0.1mAごとに減衰または増加し得る。閾値が変化しない場合、ブラケットの下端は応答を誘発せず、一方ブラケットの上端は応答を誘発するはずである。これらの条件のいずれかが成り立たない場合、このブラケットは、それに応じて調節される。このプロセスは、活性チャンネルの各々について繰り返され、各閾値が確実にブラケットとされるように継続する。刺激が予期される応答を連続して3回誘発しない場合、このアルゴリズムは、ブラケットを再構築するためにブラケット化状態に戻り得る。
【0068】
刺激電流閾値範囲情報から逐次的な弧/楔方向情報を計算するための方法が記載される。この刺激電流閾値が、神経までの距離に比例すると仮定される。神経は、単一の点としてモデル化され得る。刺激電流電極は直交するアレイの中にあるので、方向ベクトルのX次元成分およびY次元成分の計算は、独立に進められ得る。図8を参照すると、北電極および南電極800A、800Cは、Y次元成分に寄与し、一方東電極および西電極800B−800Dは、X次元成分に寄与する。神経に対する方向ベクトル<x,y>は、以下のように定義され得る:
【0069】
【数13】
ここで、ie、iw、inおよびisは、東電極802B、西電極802D、北電極802Aおよび南電極802Cそれぞれの刺激電流閾値を表す。(この方程式は、便宜的に、任意のスケールで標準化し得る。)
閾値探索法を開始する場合、刺激電流閾値は、ある値の範囲内でのみ知らされる。したがって、X次元成分およびY次元成分は、ある範囲内でのみ知らされる。この方法は、以下のように、先の定義の拡張を提供する:
【0070】
【数14】
ie,最小およびie,最大のブラケットieのように、xおよびyが、[x最小,x最大]および[y最小,y最大]によってブラケットとされる。別の方法で規定すると、点(x,y)は、図9で示されるように、これらの境界によって記載される長方形900の中に位置する。図10で示されるように、点(x,y)が起点から点としてモデル化された神経へのベクトルを表すように、境界長方形900は、ベクトルを含む弧(楔)を表す。
【0071】
弧法は、いくつかの利点を有し得る。第一に、この弧は、より多くの刺激および応答が分析される場合、比較的迅速な様式で狭まり得る。この方法は、各電極1402についての電流閾値が次の電極1402に動く前に決定される場合よりずっと早く、全体的な方向情報を提供する。全体的方向情報を用いて、刺激電流ベクトルの最終的な精度を有する前に刺激を終結し得る可能性があり得る。これは、多くの場合、より速い応答を生じる。弧法は、データ分析のリアルタイムの表示を提供し得る。これは、ユーザーにさらなる刺激の値を示すのに役立つ。これは、ユーザーを教育し、力を与える。ユーザーは、この方法の進行を観察し得、このことは、システム20が最終的な方向ベクトルへの収束に向かう時間を理解するのに役立つ。より頻繁なディスプレイの更新は、ユーザーにとって時間を「早く進める」のに役立つ。この方法は、さらに長く思われ得る長い休止を避ける。方向ベクトルを検出するプロセスにおける中間的動作(狭まっていく弧)の開示は、ユーザーと接近システム30との間の相互信頼を招く。弧は、方向ベクトルよりも直感的な神経組織の可視化を提供し得る。
【0072】
弧法はまた、機器および刺激電極が神経に対して動く場合、方向を追跡するのに有用であり得る。例えば、刺激電流閾値における不確実さが増大する場合、これは、弧の大きさの増加に反映され得る。
【0073】
システム20の連続拡張接近システム34(図2)は、外科手術の標的部位への安全かつ再現性ある接近を達成し得る。これは、神経構造の存在および神経構造に対する方向を、このような神経構造を有する任意の種々の組織を通って(または近くに)手術用の通路を確立する前、間、後に検出することによって、そのようにする。神経構造が接触または衝突される場合、これは、患者にとって神経の障害を引き起こし得る。
【0074】
一実施形態において、外科手術システム20は、外科手術用ハンドピース52の使用を通じてこれを達成する。このハンドピース52は、第一ケーブルコネクタ51a、51bを介してK−ワイヤ46に電気的に接続し得、そして第二ケーブルコネクタ53a、53bを介して拡張カニューレ48または作業カニューレ50のいずれかに接続し得る。K−ワイヤ46および作業カニューレ50に対して、ケーブルは、刺激電極への電気的接続を確立するため、これらの付属品とそれぞれのケーブルコネクタ51a、53aとの間で直接的に接続される。一実施形態において、ペンチまたはクランプ型デバイス57が提供されて、外科手術用ハンドピース52とカニューレ48の遠位端上の刺激電極との間の電気的連絡を選択的に確立する。この電気的連絡は、クランプ型デバイス57を形成する対向する腕の内部表面における電気的接触部を提供することによって、達成される。ここで、この接触部は、拡張カニューレ48および作業カニューレ50上に提供された電気的接触部(好ましくは、オス−メス係合シナリオ)に係合するように寸法を決められる。外科手術用ハンドピース52は、一以上のボタンを備え、これによってユーザーは、制御ユニット22から外科手術用接近用構成要素46〜50の遠位端上の電極へ刺激電流信号を選択的に方向付け得る。重要な局面において、各外科手術用接近用構成要素46〜50は、その遠位端の電極を除いて、その長さ全体に沿って絶縁される。拡張カニューレ48および作業カニューレ50の場合、クランプ57と係合するための、その近位端における電気的接触部は、絶縁されない。このような刺激に応じたEMG応答は、ユーザーに神経の近位性および/または神経の方向の情報を提供するために、モニタリングおよび評価され得る。
【0075】
例えば、脊髄の手順に利用する場合、このようなEMGモニタリングは、好ましくは、特定の脊髄手術レベルに結合する、出力する神経根に対応する患者の脚の神経筋単位にEMGハーネス26を接続することによって達成される(図11および20〜21を参照のこと)。好ましい実施形態において、これは、その脚の主要な筋群を覆う皮膚に配置された8対のEMG電極27(図2)(片側に4つ)、刺激電極に帰還経路を提供する陽極29、および患者モジュール24の前置増幅器を基準にアースを提供する共通電極31を介して、達成される。示さないが、任意の種々の電極(針電極が挙げられるが、これらに限定されない)が利用され得ることが、理解される。EMGハーネス26を介して測定されたEMG応答は、電気刺激によって引き起こされた神経脱分極の定量測定を提供する。例として、脊髄手術について、EMG電極27の配置は、以下の表1に示される様式に従って行われ得る。
【0076】
【表1】
図16〜19は、椎間円板への手術用の通路の作製に使用する際の、図2における連続拡張接近システム34を図示する。図16に示されるように、拡張カニューレ48内の内部管腔に配置されたK−ワイヤ46を備える初期拡張カニューレ48Aは、標的部位に向かって進められる。これは、最初に、多数の市販の外科手術用ガイドフレームを用いて、K−ワイヤ46と初期拡張カニューレ48Aとを整列させることによって、容易になり得る。一実施形態において、拡大挿入図AおよびBにおいて最もよく示されるように、K−ワイヤ46および初期拡張カニューレ48Aは各々、単一の刺激電極70を備え、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の神経の存在および/または位置を検出する。より具体的には、各電極70は、K−ワイヤ46および拡張器48(および作業カニューレ50)の長軸方向に対して角度をなして、配置され得る。一実施形態において、この角度は、これらの外科手術用接近用構成要素46〜50の長軸方向から5°〜85°の範囲であり得る。このような様式で各刺激電極70を提供することによって、刺激電流は、それぞれの付属品46、48の遠位先端から角度をなして方向付けられる。この電極の構成は、本出願に従って、ユーザーが、電極70を刺激しながら、単にK−ワイヤ46および/または拡張カニューレ48を回転させて近位性および方向を決定する際に、有利である。これは、継続的に、または段階的に、そして好ましくは、固定された角度位置にある間に行われ得る。いずれの場合においても、ユーザーは、ディスプレイスクリーン40上の近位性情報を見る工程、および電極70が回転される場合の変化を観察する工程によって、神経の配置を決定し得る。これは、K−ワイヤ46および/または拡張器48(またはそれらに接続する制御要素)上に基準標識72を配置し、電極70の方向をユーザーに示すことによって、容易になり得る。
【0077】
別の実施形態において、図2のK−ワイヤ46および拡張カニューレ48は、上に記載され、かつ図14A〜図14Bに示されるように、各々複数の電極を有する。
【0078】
示される実施形態において、K−ワイヤ46および初期拡張器48Aの軌道は、脊柱の骨の背側要素を避けるように、それらが背外側性に腰筋を横切る様式で椎間の標的部位に向かって進むようになる。一旦K−ワイヤ46が、特定の椎間円板の輪に対してドッキングされる場合、次いで、図17に示されるように、直径が大きくなっていくカニューレ48B〜48Dが、所望の管腔直径が導入されるまで、先に導入されたカニューレ48Aの上に導かれ得る(連続拡張)。例のみとして、拡張カニューレ48A〜48Dは、直径が6mm〜30mmの範囲に及び得、長さは、一般的に、直径サイズが大きくなるのに従って減少する。深さの印72が、必要に応じて、各拡張カニューレ48の長さに沿って提供されて、患者の皮膚と外科手術の標的部位との間の深さを測定することにおいてユーザーを補助し得る。図18に示されるように、作業カニューレ50は、所望のレベルの組織拡張が達成された後に、最後の拡張カニューレ48Dの上をスライド可能に進められ得る。次いで、図19に示されるように、最後の拡張カニューレ48Dおよび全ての拡張カニューレ48は、作業カニューレ50の内部管腔の中から除去され、その管腔を通して手術用の通路が確立され得る。
【0079】
一旦、K−ワイヤ46、拡張カニューレ48、または作業カニューレ50を用いて神経が検出された場合、外科医は、図21に示されるように、方向機能を選択して、接近用構成要素46〜50上の基準標識に対する神経への角方向を決定し得る。一実施形態において、方向の矢印90が提供され、例のみとして、神経が、接近用構成要素46〜50に対してどの方向であるかをユーザーに図解的に示す目的のため、カニューレ図87の周りに配置される。この情報は、外科医がK−ワイヤ46およびカニューレ48、50を進める場合に、外科医が神経を避けるのに役立つ。一実施形態において、この方向付け性能は、K−ワイヤ46、拡張器48および作業カニューレ50に、それらの遠位先端上に直交性に配置される4つの刺激電極を備えることによって、達成される(図14A〜図14B)。これらの電極は、好ましくは、単極構成で(すなわち、各4つの電極の各々を刺激供給源として用いて)走査される。閾値電流(Ithresh)は、筋で誘発された電位応答Vppを測定する工程および既知の閾値Vthreshに対してそれを比較する工程によって、電極の各々について検出される。この情報から、刺激電極(またはデバイス46−50)から神経への方向が、本明細書中に記載されるアルゴリズムおよび技術に従って、ならびに図8〜図10、図13、図14A〜図14Bおよび図15A〜図15Cを参照して、決定され得る。図8および図13において、4つの電極800A〜800Dは、起点から半径Rで、2次元座標系のx軸およびy軸に配置される。ベクトルは、起点から、各電極に対応する軸に沿って描かれる。各ベクトルは、その電極についてのIThreshと等しい長さを有する。したがって、4つの電極800A〜800Dによって、4つのベクトルは、起点から4つの電極に対応する4つの軸に沿って描かれる。次いで、起点から神経を指す方向へのベクトルが計算される。示される幾何を用いて、単一の点とされる神経の(x,y)座標は、神経から4つの電極800A〜800Dの各々までの距離の関数として決定され得る。これは、明確に、数学的に以下のようであり得る:
図13の「丸」が、起点またはカニューレの中心に対する電極の位置を示す場合、「6角形」は、神経の位置を示し、そしてd1、d2、d3およびd4は、神経点と刺激電極1〜4(北、東、南および西)との間の距離をそれぞれ示す。これは、以下で示され得る:
【0080】
【数15】
ここで、Rは、カニューレの半径であり、角度および絶対的でない値が測定されるので、1に標準化される。
【0081】
デカルト座標(x,y)から極座標(r,θ)への変換の後、θは、神経への角方向である。次いで、この角方向は、例のみとして、図21において神経の方向を指す矢印90として、ユーザーに対して表示され得る。この様式において、外科医は、能動的に神経を避け得、これによって、外科手術の標的部位への接近の間、患者の安全性が増大する。外科医は、方向付け機能を実行するのに利用可能な4つのチャンネルのいずれか一つを選択し得るが、最も低い刺激電流閾値を有するチャンネル(この機器に最も接近する神経を示す)が、おそらくは使用されるべきである。外科医は、この方向付け機能を使用する間、好ましくは、機器を動かしたり回転させたりすべきではなく、むしろこの方向付け機能に戻って機器を進め続けるべきである。
【0082】
外科手術用接近用システム34を介して外科手術の標的部位に対する手術用の通路を確立した後、特定の型の外科手術および外科手術の必要性に依存して、多数の適切な機器および/またはインプラントが、外科手術の標的部位に導入され得る。例のみとして、脊髄での適用において、多数のインプラントおよび/または機器が、作業カニューレ50を通じて導入され得る。これらとしては、脊髄癒合構築物(例えば、同種移植片インプラント、セラミックインプラント、ケージ、メッシュなど)、固定用デバイス(例えば、椎弓根(pedicle)ねじおよび/もしくは小関節面(facet)ねじ、ならびに関連する伸張バンド(tension band)またはロッドシステム)、そして多数の動き保存デバイス(全椎間円板置換システムが挙げられるが、これに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
(幾何学的方向付けアルゴリズムモデルおよび電気的方向付けアルゴリズムモデルの分離)
上記の4つの電極の対称性から得られる他の関係が存在する:
【0084】
【数16】
ここで、d0は、神経活性化部位と電極間の中点(すなわち、起点(0,0)または「仮想的中心」)との間の距離である。これらの結果は、純粋に、幾何に基づき、そして電気的モデルとは独立に適用する。
【0085】
「弧」法に基づいて記載されたように、この幾何学的モデルは、拡張されて、神経までの距離の不確実さに基づいた不確実な領域を規定し得る。
【0086】
【数17】
図8および図13において、この2次元x−yモデルは、神経活性化部位が刺激電極と同じ平面状に位置することを仮定し、またz軸空間全体は、そのx−y平面に投射されているとみなされ得る。z次元が、「その平面において」方向に影響を与えないことが見出された。神経活性化部位が刺激電極の平面の外にある場合、前節で提示された距離方程式も、また適用される。
【0087】
(一般化1−Dモデル)
図22は、2つの電極2200A、2200Bを図示する。任意の2つの電極2200A、2200Bが与えられた場合、一次元における神経活性化部位2202の絶対位置が、これら2つの電極からの距離から計算され得る:
【0088】
【数18】
1−Dモデルは、電極を追加することによって、2次元または3次元に拡張され得る。
【0089】
(3−D幾何学的モデル)
4つの同一平面上の電極(図8および図13)を用いる場合、z軸に沿った神経への方向を同定することは、特に容易ではない。これは、元のx−y電極平面上にない一つ以上の刺激電極2300(図23)を追加することによって、容易に是正され得る。例えば、図23は、x=y=0のz軸に沿って配置するK−ワイヤ電極2300を示す。Dは、K−ワイヤ電極2300と他の4つの電極の平面2302との間の距離の半分である。
【0090】
神経に対する3−D方向付けは、K−ワイヤ電極2300から神経活性化部位までの距離を、他の電極のそれと比較することによって、可能である:
【0091】
【数19】
ここで、d0は(先に注記したように)、神経活性化部位と電極間の中点(すなわち、起点(0,0)または「仮想的中心」)との間の距離であり、そしてdkは、神経活性化部位とK−ワイヤ電極2300との間の距離である。3−D方向付けは、デカルト座標(x,y,z)から球座標(ρ,θ,φ)への変換によって、可能である。上記の弧法もまた、3次元に拡張され得る。他の3−D幾何学的モデルが構築され得る。一つの可能性は、図14Aに示されるように、平面上の4つの電極1402A〜1402Dをそのまま維持し、そしてカニューレ1400の側面に沿って第5の電極1404を追加することである。
【0092】
別の可能性は、平面上の4つの電極2502A〜2502Dを、図25に示されるような2つの対(例えば、四面体の頂点)で置き換えることである。図25は、四面体構成の4つの電極2502A〜2502Dを有するデバイス2500を図示する。これは、システム20で使用され得る。4つの電極は、3−D空間に及ぶための最低限であり得、そして刺激電流閾値を検出するのに要求される刺激の数に関して最も有効であり得る。
【0093】
(電気的モデル)
上記の方向アルゴリズムは、方程式(2)におけるように、距離と刺激電流閾値との間の直接的な比例を仮定する:
(6) ith=Kd
ここで、ithは閾値電流であり、Kは電流と距離との間の関係を示す比例定数であり、そしてdは、電極と神経と間の距離である。
【0094】
代替的モデルは、距離の二乗に従って刺激電流閾値が増大することを予測する:
(7) ith=i0+Kd2
距離二乗モデルを用いる場合、神経活性化部位についてのデカルト座標は、方程式(5)、(7)および以下に由来し得る:
【0095】
【数20】
ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、K−ワイヤ電極2602A(図26)の刺激電流閾値であり、そしてicは、以下から計算される:
【0096】
【数21】
図26は、デバイス2600(例えば、図16のカニューレ48A)およびこのデバイス2600にスライド可能に受けられる、K−ワイヤ46を図示する。K−ワイヤ46およびデバイス2600は両方とも、電極2602A〜2602Fを有する。
【0097】
方程式の他のセットは、代替的な電極幾何学について同様に導かれ得る。各々の場合において、i0が計算から消えるということに注意すること。これは、刺激電極に対する神経活性化部位の絶対位置が、Kのみが分かれば計算され得るということを示唆する。上記のように、Kは、電流と距離との間の関係を示す比例定数である。
【0098】
神経組織の距離または位置は、刺激電流閾値が各電極について検出され得る限り、神経の状態または病理(すなわち、i0の上昇)と独立に決定され得る。
【0099】
(神経の病理の測定)
神経までの距離が(おそらく上記の方法を通じて)既知である場合、i0について方程式(8)を解くことが可能である。これは、刺激閾値が上昇した神経の検出を可能し、このことは、有用な臨床(神経病理)情報を提供し得る。
(10) i0=ith−Kd2
(Kへの従属の除去)
前出の記載は、Kについての値が既知であることを仮定する。2つの異なる電極セットから同じ測定を行うことによって、Kを知ることなく、神経活性化部位までの距離を測定することが、また可能である。図24は、2つの電極対2400A、2400B、2402A、2402Bおよび神経活性化部位2404を図示する。上端の2つの電極2400A、2400Bが一つの対を形成し、そして底部の2つの電極2402A、2402Bが第二の対を形成する。電極2400A、2400B、2402A、2402Bおよび図24で定義される距離を用いて、方程式(4)からの幾何学的モデルは、以下となる:
【0100】
【数22】
方程式(7)からの電気的モデルを加えることによって、Kへの従属は除去される。dbについての方程式(11)を解き、一つに次元における距離を得る:
【0101】
【数23】
最後に、Kそのものの値について解くことが可能である:
【0102】
【数24】
図14の構成は4つの電極を示すが、この技術は、3つの同一直線上の電極を用いても実行し得る。
【0103】
(電極冗長性)
いずれの電気的モデルが使用される場合も、方程式(1)で表される関係は、4つの方位点における任意の電極での電流が、他の3つの電極の電流値から「予測」され得ることを意味する。方程式(7)の電気的モデルを用いることで、以下が得られる:
【0104】
【数25】
方程式(6)の電気的モデルを用いることで、以下が得られる:
iw+ie=is+in
これは、いずれかの電気的モデルを確証するための簡便な手段を提供する。
【0105】
幾何学的モデルおよび電気的モデルの手段を提供することは、より有効、より正確な神経位置の測定を行うことに役立ち得る。
【0106】
特定の実施形態が記載されたが、これらの教示に照らして、本出願の精神または範囲から逸脱することなく変更が達成され得ることが、当業者に理解される。例えば、システム22は、コンピュータープログラミングソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアの任意の組合せを用いて実施され得る。システム20を作動させるためまたは本出願に従う装置を構築するための、予備的な行動として、本出願に従うコンピュータープログラミングコードは(ソフトウェアであってもファームウェアであっても)、代表的に、一以上の機械読み取り可能記憶媒体(例えば、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、ROMのような半導体メモリ、PROMなど)に記憶され、それによって、本出願に従う製品を作製する。このコンピュータープログラミングコードを含む製品は、このコードを記憶デバイスから直接的に実行することによってか、このコードを記憶デバイスから別の記憶デバイス(例えば、ハードディスク、RAMなど)へとコピーすることによってか、またはこのコードを遠隔的実行のためにネットワーク上で伝達することによってかのいずれかにより、使用され得る。当業者によって企図され得るように、多くの異なる上記の組合せが、使用され得、従って、本出願は、添付の特許請求の範囲によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本出願の一実施形態に従う、神経生理学ベースの外科手術システムの基本的機能を図示するフローチャートである。
【図2】図2は、図1の機能を実施し得、そして外科手術の標的部位への接近に利用される外科手術用機器に対する神経の方向を決定し得る、例示的な外科手術システムの透視図である。
【図3】図3は、図2に示される外科手術システムのブロック図である。
【図4】図4は、図5に示される型の神経筋応答(EMG)を生成し得る刺激電流パルスのプロットを示すグラフである。
【図5】図5は、所定の神経筋単位に結合する神経束に適用された刺激電流パルス(例えば、図4に示すようなパルス)に基づいた経時的な、所定の神経筋単位の神経筋応答(EMG)のプロットを示すグラフである。
【図6】図6は、図2のシステムのための、刺激電流パルスを形成する各所定の刺激電流レベル(Istim)についてのEMG応答の最高最低電圧(Vpp)のプロット(他に「漸加曲線」として知られる)を示すグラフである。
【図7−1】図7A、図7B、および図7Cは、図2のシステムにより使用され得る電流閾値探索アルゴリズムを示すグラフである。
【図7−2】図7A、図7D、および図7Eは、図2のシステムにより使用され得る電流閾値探索アルゴリズムを示すグラフである。
【図8】図8は、図2のシステムについての、外科手術用機器(例えば、カニューレ)の遠位端近くの4つの直交する電極を図示する。電極は、二次元X−Y平面に北点、南点、東点および西点としてモデル化される。
【図9】図9は、最大および最小のx値およびy値によって結ばれた神経点(x,y)を図示する。これらは、長方形を形成する。
【図10】図10は、起点(電極を有する機器の中心軸)から神経点(x,y)へのベクトル、および図2のシステムによって検出されたそのベクトルを含む弧を図示する。
【図11】図11は、図2のシステムについての刺激部位および複数のEMG応答感知部位を図示する。
【図12】図12は、刺激電流パルスに応じた経時的な神経筋応答(EMG)のプロットを図示するグラフであり、このプロットは、時間T1およびT2において電圧の極値を示す。
【図13】図13は、図2のシステムのための、4つの直交して配置される刺激電極(「丸」で表示される)を有する機器に対する神経の方向(「6角形」で表示される)を決定する方法を図示するグラフである。
【図14】図14Aは、4つの直交する電極と第5の電極とを有する外科手術用機器(例えば、図2のカニューレ)の遠位端の側面図であり、図14Bは、その正面図である。
【図15A】図15Aは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図15B】図15Bは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図15C】図15Cは、図2の外科手術用機器、および図14A〜図14Bにおける複数の電極に関して、刺激閾値レベルがブラケット化され、二分され、そして検出される場合、矢印になるまで漸次小さくなり得る神経の方向の弧の表示である。
【図16】図16は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図17】図17は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図18】図18は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図19】図19は、椎間円板への手術用の通路を作製するための使用における図2の連続拡張接近システムを図示する。
【図20】図20は、図2の外科手術用接近用システムの神経方向付け特性の一実施形態を説明する例示的なスクリーンディスプレイである。
【図21】図21は、図2の外科手術用接近用システムの神経方向付け特性の一実施形態を説明する例示的なスクリーンディスプレイである。
【図22】図22は、一般化された、一次元2電極の方向検出モデルを図示する。
【図23】図23は、x=y=0のz軸に沿って配置された電極を図示する。この電極は、複数の他の電極と異なるXY平面にある。
【図24】図24は、一平面における電極の第一の対、別の平面における電極の第二の対、および神経活性化部位を図示する
【図25】図25は、四面体構造にある4つの電極を有するデバイスを図示する。
【図26】図26は、デバイス、および電極を有するそのデバイス中にスライド可能に受容されるK−ワイヤを図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、以下:
少なくとも一つの刺激電極を有する外科手術用付属品;および
該外科手術用付属品上の該少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、該刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、該感知した応答に基づいて、該外科手術用付属品から該神経への方向を決定し得、そして該方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記脱分極した神経に結合する筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備え、該電極が、該応答を前記制御ユニットに送るように動作可能である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、一連の連続拡張カニューレ、遠位端の近くに前記少なくとも一つの刺激電極を有する、少なくとも一つのカニューレを備える、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、K−ワイヤをさらに備える、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、該K−ワイヤの遠位先端に第一の刺激電極を有する、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記遠位先端から離れた第二の刺激電極を有する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記外科手術用付属品にスライド可能に受容され、該外科手術用付属品が、複数の電極を有する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、脊髄の標的部位に接近するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、側方の腰筋を経るアプローチを介して該手術用の通路を確立するように構成される、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え、該ハンドルが、前記制御ユニットから該外科手術用付属品上の前記少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するための少なくとも一つのボタンを有する、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備える、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備える、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、複数の刺激電極を備える、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の遠位端近くに配置される、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二次元平面に配置される、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、直交性に配置されて十字形を形成する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、
【数1】
を用いることによって、前記外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き、ここで、ie、iw、inおよびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記刺激電極が、四面体を形成する、システム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数2】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数3】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【数4】
から計算される、システム。
【請求項24】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーに対して前記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成される、システム。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二対の電極を備える、システム。
【請求項26】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え、そして該外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備える、システム。
【請求項27】
請求項14に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成される、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そして前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するようにさらに構成され、各範囲が、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有する、システム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数5】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、ie、iw、in、およびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項31】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数6】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、dが、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である、システム。
【請求項32】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理して、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成される、システム。
【請求項33】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、前記第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成される、システム。
【請求項34】
請求項33に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成される、システム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示し、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項36】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極および前記第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成される、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項38】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、該制御ユニットが、音を発するように構成される、システム。
【請求項39】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離を示す音を発するように構成される、システム。
【請求項40】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされる、システム。
【請求項41】
外科手術用機器であって、以下:
細長い本体;および
該細長い本体上の複数の電極であって、各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成され、少なくとも一つの電流レベルは、該細長い本体が神経の近くにある場合に該神経を脱分極するのに十分である、電極、
を備える、外科手術用機器。
【請求項42】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、K−ワイヤを備える、外科手術用機器。
【請求項43】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、カニューレを備える、外科手術用機器。
【請求項44】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、二次元平面に4つの直交する電極を備える、外科手術用機器。
【請求項45】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、外科手術用機器。
【請求項46】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成される、外科手術用機器。
【請求項47】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、連続した拡張システムを備える、外科手術用機器。
【請求項48】
本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な、処理ユニット。
【請求項49】
方法であって、以下:
本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および
該システムにソフトウェアをインストールする工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項51】
外科手術用機器からの神経の方向を検出する方法であって、該方法は、以下:
本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激する工程;
第一の刺激電流閾値が、該第一の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定する工程;
該外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激する工程;および
第二の刺激電流閾値が、該第二の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、方法。
【請求項53】
請求項51に記載の方法であって、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定する工程、および前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定する工程をさらに包含し、各範囲が、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理する工程、および前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程をさらに包含する、方法。
【請求項55】
請求項51に記載の方法であって、前記第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激する工程;前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;前記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激する工程;および、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程、をさらに包含する、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激する工程をさらに包含する、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭める工程をさらに包含する、方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、前記第一の刺激電極と前記第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分する工程をさらに包含する、方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法であって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭める工程をさらに包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、以下:
少なくとも一つの刺激電極を有する外科手術用付属品;および
該外科手術用付属品上の該少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、該刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、該感知した応答に基づいて、該外科手術用付属品から該神経への方向を決定し得、そして該方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記脱分極した神経に結合する筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備え、該電極が、該応答を前記制御ユニットに送るように動作可能である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、一連の連続拡張カニューレ、遠位端の近くに前記少なくとも一つの刺激電極を有する、少なくとも一つのカニューレを備える、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、K−ワイヤをさらに備える、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、該K−ワイヤの遠位先端に第一の刺激電極を有する、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記遠位先端から離れた第二の刺激電極を有する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記外科手術用付属品にスライド可能に受容され、該外科手術用付属品が、複数の電極を有する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、脊髄の標的部位に接近するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、側方の腰筋を経るアプローチを介して該手術用の通路を確立するように構成される、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え、該ハンドルが、前記制御ユニットから該外科手術用付属品上の前記少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するための少なくとも一つのボタンを有する、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備える、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備える、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、複数の刺激電極を備える、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の遠位端近くに配置される、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二次元平面に配置される、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、直交性に配置されて十字形を形成する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、
【数1】
を用いることによって、前記外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き、ここで、ie、iw、inおよびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記刺激電極が、四面体を形成する、システム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数2】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数3】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【数4】
から計算される、システム。
【請求項24】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーに対して前記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成される、システム。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二対の電極を備える、システム。
【請求項26】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え、そして該外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備える、システム。
【請求項27】
請求項14に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成される、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そして前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するようにさらに構成され、各範囲が、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有する、システム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数5】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、ie、iw、in、およびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項31】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数6】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、dが、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である、システム。
【請求項32】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理して、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成される、システム。
【請求項33】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、前記第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成される、システム。
【請求項34】
請求項33に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成される、システム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示し、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項36】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極および前記第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成される、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項38】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、該制御ユニットが、音を発するように構成される、システム。
【請求項39】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離を示す音を発するように構成される、システム。
【請求項40】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされる、システム。
【請求項41】
外科手術用機器であって、以下:
細長い本体;および
該細長い本体上の複数の電極であって、各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成され、少なくとも一つの電流レベルは、該細長い本体が神経の近くにある場合に該神経を脱分極するのに十分である、電極、
を備える、外科手術用機器。
【請求項42】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、K−ワイヤを備える、外科手術用機器。
【請求項43】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、カニューレを備える、外科手術用機器。
【請求項44】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、二次元平面に4つの直交する電極を備える、外科手術用機器。
【請求項45】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、外科手術用機器。
【請求項46】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成される、外科手術用機器。
【請求項47】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、連続した拡張システムを備える、外科手術用機器。
【請求項48】
本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な、処理ユニット。
【請求項49】
制御ユニットを制御するための方法であって、以下:
本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および
該システムにソフトウェアをインストールする工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項51】
外科手術用機器からの神経の方向を検出するためのシステムであって、該システムは、以下:
本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激するための手段;
第一の刺激電流閾値が、該第一の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定するための手段;
該外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激するための手段;および
第二の刺激電流閾値が、該第二の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定するための手段;
を備える、システム。
【請求項52】
請求項51に記載のシステムであって、ここで、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項53】
請求項51に記載のシステムであって、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定するための手段、および前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するための手段をさらに備え、各範囲が、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する、システム。
【請求項54】
請求項53に記載のシステムであって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するための手段、および前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段をさらに備える、システム。
【請求項55】
請求項51に記載のシステムであって、前記第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激するための手段;前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するための手段;前記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激するための手段;および、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するための手段、をさらに備える、システム。
【請求項56】
請求項55に記載のシステムであって、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激するための手段をさらに備える、システム。
【請求項57】
請求項56に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるための手段をさらに備える、システム。
【請求項58】
請求項56に記載のシステムであって、前記第一の刺激電極と前記第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するための手段をさらに備える、システム。
【請求項59】
請求項58に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるための手段をさらに備える、システム。
【請求項1】
システムであって、以下:
少なくとも一つの刺激電極を有する外科手術用付属品;および
該外科手術用付属品上の該少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、該刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、該感知した応答に基づいて、該外科手術用付属品から該神経への方向を決定し得、そして該方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記脱分極した神経に結合する筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備え、該電極が、該応答を前記制御ユニットに送るように動作可能である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、一連の連続拡張カニューレ、遠位端の近くに前記少なくとも一つの刺激電極を有する、少なくとも一つのカニューレを備える、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、K−ワイヤをさらに備える、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、該K−ワイヤの遠位先端に第一の刺激電極を有する、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記遠位先端から離れた第二の刺激電極を有する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記外科手術用付属品にスライド可能に受容され、該外科手術用付属品が、複数の電極を有する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、脊髄の標的部位に接近するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、側方の腰筋を経るアプローチを介して該手術用の通路を確立するように構成される、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え、該ハンドルが、前記制御ユニットから該外科手術用付属品上の前記少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するための少なくとも一つのボタンを有する、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備える、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備える、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、複数の刺激電極を備える、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の遠位端近くに配置される、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二次元平面に配置される、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、直交性に配置されて十字形を形成する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、
【数1】
を用いることによって、前記外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き、ここで、ie、iw、inおよびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記刺激電極が、四面体を形成する、システム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数2】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数3】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【数4】
から計算される、システム。
【請求項24】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーに対して前記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成される、システム。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二対の電極を備える、システム。
【請求項26】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え、そして該外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備える、システム。
【請求項27】
請求項14に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成される、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そして前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するようにさらに構成され、各範囲が、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有する、システム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数5】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、ie、iw、in、およびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項31】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数6】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、dが、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である、システム。
【請求項32】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理して、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成される、システム。
【請求項33】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、前記第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成される、システム。
【請求項34】
請求項33に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成される、システム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示し、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項36】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極および前記第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成される、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項38】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、該制御ユニットが、音を発するように構成される、システム。
【請求項39】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離を示す音を発するように構成される、システム。
【請求項40】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされる、システム。
【請求項41】
外科手術用機器であって、以下:
細長い本体;および
該細長い本体上の複数の電極であって、各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成され、少なくとも一つの電流レベルは、該細長い本体が神経の近くにある場合に該神経を脱分極するのに十分である、電極、
を備える、外科手術用機器。
【請求項42】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、K−ワイヤを備える、外科手術用機器。
【請求項43】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、カニューレを備える、外科手術用機器。
【請求項44】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、二次元平面に4つの直交する電極を備える、外科手術用機器。
【請求項45】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、外科手術用機器。
【請求項46】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成される、外科手術用機器。
【請求項47】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、連続した拡張システムを備える、外科手術用機器。
【請求項48】
本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な、処理ユニット。
【請求項49】
方法であって、以下:
本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および
該システムにソフトウェアをインストールする工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項51】
外科手術用機器からの神経の方向を検出する方法であって、該方法は、以下:
本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激する工程;
第一の刺激電流閾値が、該第一の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定する工程;
該外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激する工程;および
第二の刺激電流閾値が、該第二の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、方法。
【請求項53】
請求項51に記載の方法であって、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定する工程、および前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定する工程をさらに包含し、各範囲が、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理する工程、および前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程をさらに包含する、方法。
【請求項55】
請求項51に記載の方法であって、前記第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激する工程;前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程;前記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激する工程;および、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定する工程、をさらに包含する、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激する工程をさらに包含する、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭める工程をさらに包含する、方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、前記第一の刺激電極と前記第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分する工程をさらに包含する、方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法であって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示する工程、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭める工程をさらに包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、以下:
少なくとも一つの刺激電極を有する外科手術用付属品;および
該外科手術用付属品上の該少なくとも一つの刺激電極を電気的に刺激し得、該刺激によって脱分極した神経の応答を感知し得、該感知した応答に基づいて、該外科手術用付属品から該神経への方向を決定し得、そして該方向をユーザーに伝達し得る、制御ユニット、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記脱分極した神経に結合する筋肉の神経筋応答を感知するように構成された電極をさらに備え、該電極が、該応答を前記制御ユニットに送るように動作可能である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムを備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、一連の連続拡張カニューレ、遠位端の近くに前記少なくとも一つの刺激電極を有する、少なくとも一つのカニューレを備える、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、K−ワイヤをさらに備える、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、該K−ワイヤの遠位先端に第一の刺激電極を有する、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記遠位先端から離れた第二の刺激電極を有する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記K−ワイヤが、前記外科手術用付属品にスライド可能に受容され、該外科手術用付属品が、複数の電極を有する、システム。
【請求項9】
請求項3に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、脊髄の標的部位に接近するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記外科手術の標的部位に対して手術用の通路を確立するためのシステムが、側方の腰筋を経るアプローチを介して該手術用の通路を確立するように構成される、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品に接続されたハンドルをさらに備え、該ハンドルが、前記制御ユニットから該外科手術用付属品上の前記少なくとも一つの刺激電極への電気刺激を開始するための少なくとも一つのボタンを有する、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、筋肉の筋電図(EMG)応答を表示するように動作可能なディスプレイを備える、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーからの指令を受けるように動作可能なタッチスクリーンディスプレイを備える、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、複数の刺激電極を備える、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の遠位端近くに配置される、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二次元平面に配置される、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、直交性に配置されて十字形を形成する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、
【数1】
を用いることによって、前記外科手術用付属品に対する神経の方向のxデカルト座標およびyデカルト座標を導き、ここで、ie、iw、inおよびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、第一の二次元平面において、電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面において、少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記刺激電極が、四面体を形成する、システム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数2】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成される、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数3】
を用いることによって、前記外科手術用付属品上の基準点から神経への三次元ベクトルを決定するように構成され、ここで、ixは、対応する刺激電極(西、東、南または北)の刺激電流閾値であり、ikは、k−ワイヤ電極の刺激電流閾値であり、icは、以下:
【数4】
から計算される、システム。
【請求項24】
請求項21に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、ユーザーに対して前記三次元ベクトルを表示するようにさらに構成される、システム。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、二対の電極を備える、システム。
【請求項26】
請求項14に記載のシステムであって、前記刺激電極が、前記外科手術用付属品の第一の長軸方向レベルにおいて第一の電極を備え、そして該外科手術用付属品の第二の長軸方向レベルにおいて第二の電極を備える、システム。
【請求項27】
請求項14に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、第一の刺激電極を第一の電流信号で電気的に刺激して、第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、第二の刺激電極を第二の電流信号で刺激して、第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように構成される、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定し、そして前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するようにさらに構成され、各範囲が、最大刺激電流閾値と最小刺激電流閾値とを有する、システム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数5】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、ie、iw、in、およびisが、東電極、西電極、北電極および南電極についての刺激電流閾値を表す、システム。
【請求項31】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、以下:
【数6】
を用いることによって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するように構成され、ここで、dが、神経から東電極、西電極、北電極および南電極までの距離である、システム。
【請求項32】
請求項29に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理して、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成される、システム。
【請求項33】
請求項27に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極を第三の電流信号で電気的に刺激して、前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定し、前記第二の刺激電極を第四の電流信号で刺激して、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するように、さらに構成される、システム。
【請求項34】
請求項33に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、刺激電流閾値がブラケットとなるまで各電極を電気的に刺激するように構成される、システム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示し、そして刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項36】
請求項34に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記第一の刺激電極および前記第二の刺激電極を電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するようにさらに構成される、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するように構成され、そして刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるように構成される、システム。
【請求項38】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離が所定のレベルに達したと決定する場合、該制御ユニットが、音を発するように構成される、システム。
【請求項39】
請求項1に記載のシステムであって、前記制御ユニットが、前記外科手術用付属品と前記神経との間の距離を示す音を発するように構成される、システム。
【請求項40】
請求項1に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品が、孔を通じて外科手術部位へと経皮的に挿入するための寸法にされる、システム。
【請求項41】
外科手術用機器であって、以下:
細長い本体;および
該細長い本体上の複数の電極であって、各電極は、複数の電流レベルで電流パルスを発生するように構成され、少なくとも一つの電流レベルは、該細長い本体が神経の近くにある場合に該神経を脱分極するのに十分である、電極、
を備える、外科手術用機器。
【請求項42】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、K−ワイヤを備える、外科手術用機器。
【請求項43】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、カニューレを備える、外科手術用機器。
【請求項44】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、二次元平面に4つの直交する電極を備える、外科手術用機器。
【請求項45】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の二次元平面に電極の第一のセットを備え、そして該第一の平面に平行な別の平面に少なくとも一つの電極の第二のセットを備える、外科手術用機器。
【請求項46】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記電極が、第一の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生し、次いで第二の電流レベルでラウンドロビンに電流パルスを発生するように構成される、外科手術用機器。
【請求項47】
請求項41に記載の外科手術用機器であって、前記細長い本体が、連続した拡張システムを備える、外科手術用機器。
【請求項48】
本体に挿入された外科手術用機器上の複数の電極について、神経刺激閾値電流レベルの範囲を決定するように動作可能な、処理ユニット。
【請求項49】
制御ユニットを制御するための方法であって、以下:
本体に挿入された外科手術用機器からの神経の方向を決定するように動作可能なシステムを提供する工程;および
該システムにソフトウェアをインストールする工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、神経筋応答の最小閾値の最低最高電圧レベルを設定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項51】
外科手術用機器からの神経の方向を検出するためのシステムであって、該システムは、以下:
本体に挿入された外科手術用機器上の第一の刺激電極を、第一の電流信号で電気的に刺激するための手段;
第一の刺激電流閾値が、該第一の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定するための手段;
該外科手術用機器上の第二の刺激電極を、第二の電流信号で電気的に刺激するための手段;および
第二の刺激電流閾値が、該第二の刺激電流信号によってブラケットとされたか否かを決定するための手段;
を備える、システム。
【請求項52】
請求項51に記載のシステムであって、ここで、第一の電流信号と第二の電流信号とが等しい、システム。
【請求項53】
請求項51に記載のシステムであって、前記第一の刺激電流閾値についての第一の範囲を決定するための手段、および前記第二の刺激電流閾値についての第二の範囲を決定するための手段をさらに備え、各範囲が、最大刺激電流閾値および最小刺激電流閾値を有する、システム。
【請求項54】
請求項53に記載のシステムであって、前記第一の範囲と前記第二の範囲とを処理するための手段、および前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段をさらに備える、システム。
【請求項55】
請求項51に記載のシステムであって、前記第一の刺激電極を、第三の電流信号で電気的に刺激するための手段;前記第一の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するための手段;前記第二の刺激電極を、第四の電流信号で刺激するための手段;および、前記第二の刺激電流閾値がブラケットとされたか否かを決定するための手段、をさらに備える、システム。
【請求項56】
請求項55に記載のシステムであって、刺激電流閾値がブラケットとなるまで、各電極を電気的に刺激するための手段をさらに備える、システム。
【請求項57】
請求項56に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段、および刺激電流閾値がブラケットとなる場合、該弧を狭めるための手段をさらに備える、システム。
【請求項58】
請求項56に記載のシステムであって、前記第一の刺激電極と前記第二の刺激電極とを電気的に刺激して、所定の精度範囲内で、第一の刺激電極閾値が該第一の刺激電極について検出され、そして第二の刺激電極閾値が該第二の刺激電極について検出されるまで、各ブラケットを二分するための手段をさらに備える、システム。
【請求項59】
請求項58に記載のシステムであって、前記外科手術用付属品からの神経の全体的な方向を示す弧を表示するための手段、および刺激電流閾値のブラケットが二分される場合、該弧を狭めるための手段をさらに備える、システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2006−512983(P2006−512983A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566886(P2004−566886)
【出願日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/002056
【国際公開番号】WO2004/064634
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(500558182)ヌバシブ, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(505267533)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/002056
【国際公開番号】WO2004/064634
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(500558182)ヌバシブ, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(505267533)
【Fターム(参考)】
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